JP2024507232A - 前立腺がんの治療に用いるブロモドメイン(bet)阻害剤 - Google Patents

前立腺がんの治療に用いるブロモドメイン(bet)阻害剤 Download PDF

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Abstract

本願は概して、前立腺がんを治療する方法において、ブロモドメイン阻害剤として使用するための置換ヘテロ環誘導体、4-[2-(シクロプロピルメトキシ)-5-メチルスルホニルフェニル]-2-メチルイソキノリン-1-オン、またはその医薬的に許容される塩に関する。

Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年2月22日出願の米国仮出願番号第63/152,305号の優先権を米国特許法第119条の下に主張するものであって、その全てを参照により本明細書に組み込むものである。
(技術分野)
本願は、概して、置換ヘテロ環誘導体化合物、またはその医薬的に許容される塩をブロモドメイン阻害剤として用いて、前立腺がんを治療するための組成物および方法に関する。
前立腺がんは、がん関連の死亡原因で2番目に多く、男性が最も多く診断されるがんである。前立腺がん腫瘍は主に前立腺上皮細胞からなる。前立腺上皮細胞の分化は、アンドロゲン受容体(AR)が活性化されて前立腺特有のマーカーが発現することにより、ある程度制御されている。ARはステロイド受容体であり、転写因子として機能し、未だに解明されていないメカニズムを介して細胞の生存を制御している。アンドロゲンの低下により正常な前立腺上皮細胞が死ぬため、それらの細胞が生き延びるためにはAR経路が重要な役割を果たすことを示す。前立腺のがん細胞はARを発現し続け、それらの細胞の生死がアンドロゲンの存在にも依存していることから、アンドロゲンの除去が進行前立腺がんの患者に選択される治療法となる。前立腺がんにおいて最初に選択される治療は、循環アンドロゲン濃度を低下させることを目的とするアンドロゲン除去療法(ADT)である。しかし、ADTは初めは前立腺がんの増殖の抑制に効果的だが、2~3年の治療後には大多数の患者で去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)が進行し、アンドロゲンが除去された条件下でも腫瘍の増殖が進む。疾患進行の時点では、治療の選択肢は非常に限られる。
従って、より効果的な前立腺がんの治療は依然として必要とされており、本開示はこの需要を満たすものである。
本願は概して、前立腺がんを治療するための組成物および方法に関する。当該方法は、治療上有効量の式(I):
Figure 2024507232000002
の構造を有する化合物、またはその医薬的に許容される塩のブロモドメイン阻害剤を投与することを特徴とする。
本開示の態様および実施態様は、前立腺がん(例えば去勢抵抗性前立腺がん(CPRC)、神経内分泌前立腺がん(NEPC)、および抗アンドロゲン抵抗性前立腺がん)の対象を治療するための方法および医薬組成物を提供する。
ある態様において、治療が必要な対象の前立腺がんの治療方法であって、治療上有効量の、式(I)
Figure 2024507232000003
の構造を有する化合物またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とし、ここで前立腺がんが、去勢抵抗性前立腺がん(CPRC)、神経内分泌前立腺がん(NEPC)、抗アンドロゲン抵抗性前立腺がん、またはその任意の組合せである方法を提供する。
一部の実施態様において、前立腺がんは転移性である。一部の実施態様において、治療する前立腺がんは進行がんである。一部の実施態様において、治療する前立腺がんは、対象の体の前立腺以外の領域に転移している。一部の実施態様において、治療する対象の前立腺がんは、顕著な寛解期間の後に再発している。一部の実施態様において、前立腺がんは去勢抵抗性前立腺がん(CPRC)である。一部の実施態様において、去勢抵抗性前立腺がん(CPRC)は、ARの発現が少ないかまたは無い、神経内分泌表現型を特徴とする、アンドロゲン受容体(AR)非依存性疾患である。一部の実施態様において、前立腺がんは神経内分泌前立腺がん(NEPC)である。
一部の実施態様において、この方法は、実質的に前立腺がんの細胞周期を引き起こす。一部の実施態様において、「実質的に」とは、前立腺がんの細胞周期が少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%停止することとして定義される。一部の実施態様において、この方法は前立腺がんの細胞周期の完全停止を引き起こす。
一部の実施態様において、この方法は、アンドロゲン非依存性がん細胞のアポトーシスを引き起こす。一部の実施態様において、この方法は、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%のアンドロゲン非依存性がん細胞のアポトーシスを引き起こすことを含む。
一部の実施態様において、(a)この方法により、がん細胞の増殖が少なくとも約70%減少する;(b)この方法により、がん細胞の増殖が約70%~約99%減少する;(c)この方法により、がん細胞の増殖が少なくとも約80%減少する;(d)この方法により、がん細胞の増殖が約80%~約99%減少する;および/または(e)この方法により、がん細胞の増殖が約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%減少する。
一部の実施態様において、(a)この方法により、腫瘍体積が少なくとも約40%減少する;(b)この方法により、腫瘍体積が約40%~約99%減少する;および/または(c)この方法により、腫瘍体積が約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%減少する。
一部の実施態様において、本願化合物、またはその医薬的に許容される塩は、経口投与に適している。一部の実施態様において、本願化合物、またはその医薬的に許容される塩は、錠剤、丸剤、サシェ、またはハードあるいはソフトゼラチンカプセル剤の形態である。
前述の「発明の概要」および続く図面の説明および「発明を実施するための形態」は、いずれも例および説明を記載し、本発明をより詳しく記載することを意図するものであって、それらに限定されると解釈されるべきではない。その他の事項、利点および新規な特徴は、下記の本発明の詳細な説明から当業者に容易に明らかであろう。
図1Aは、表示された化合物Aの濃度で3日間処理したVCaP細胞を示す。0日目および3日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
図1Bは、表示された化合物Aの濃度で6日間処理したVCaP細胞を示す。0日目および6日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
図2は、表示された化合物Aの濃度で48時間処理したVCaP細胞を示す。KLK3、TMPRSS2、MYCおよびHEXIM1遺伝子の発現をqPCRにより決定した。
図3Aは、表示された化合物Aの濃度で3日間処理したLNCaP細胞を示す。0日目および3日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
図3Bは、表示された化合物Aの濃度で6日間処理したLNCaP細胞を示す。0日目および6日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
図4Aは、表示された化合物Aの濃度で3日間処理したLNCaP_AR細胞を示す。0日目および3日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
図4Bは、表示された化合物Aの濃度で6日間処理したLNCaP_AR細胞を示す。0日目および6日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
図5は、表示された化合物Aの濃度で計14日間処理した0日目および6日目のLNCaP_AR細胞を示す。0日目および14日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
図6は、表示された化合物Aの濃度で3日間処理した22Rv1細胞を示す。0日目および3日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
図7は、表示された化合物Aの濃度で48時間処理した22Rv1細胞を示す。KLK3、TMPRSS2、MYCおよびHEXIM1遺伝子の発現をqPCRにより決定した。
図8Aは、表示された化合物Aの濃度で計14日間処理した0日目および6日目のLNCaP_AR CRISPRi TP53/RB1細胞を示す。0日目および14日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
図8Bは、表示された化合物Aの濃度で計14日間処理した0日目および6日目のLNCaP_AR shTP53/RB1細胞を示す。0日目および14日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
図9Aは、表示された化合物Aの濃度で計6日間処理した0日目および3日目のTKO細胞を示す。0日目および6日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
図9Bは、表示された化合物Aの濃度で計14日間処理した0日目および6日目のDKO細胞を示す。0日目および14日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
図10は、表示された化合物Aの濃度で3日間処理したDU145細胞を示す。0日目および3日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
図11は、表示された化合物Aの濃度で3日間処理したPC3細胞を示す。0日目および3日目の両方で体積を測定し、増殖率をルシフェラーゼアッセイにより決定した。
I.概要
本発明は、治療上有効量の式(I)の構造を有するブロモドメイン阻害剤、またはその医薬的に許容される塩を用いた前立腺がんの治療方法に関する。具体的に、前立腺がんは去勢抵抗性前立腺がん(CPRC)、神経内分泌前立腺がん(NEPC)、抗アンドロゲン抵抗性前立腺がん、またはその任意の組合せである。
本開示は、本明細書に記載の任意の実施態様において、ブロモドメイン阻害剤が、実質的におよび/または完全に前立腺がん細胞の細胞周期を停止させ、前立腺がんおよび神経内分泌前立腺がん細胞の細胞死を誘起することを示す。本開示は、前立腺がんの転移を阻止するおよび/または遅延させる方法も含む。別の態様において、本開示は、短い投与期間(例えば約1月未満)の後に前立腺がんの細胞増殖の停止が観測される方法を含む。別の態様において、前立腺がんの細胞増殖の停止が、約20日未満、約15日未満、約14日未満、約13日未満、約12日未満、約11日未満、約10日未満、約9日未満、約8日未満、約7日未満、約6日未満、約5日未満、約4日未満、または約3日未満で観測された。上記の任意の期間経過後に観測される、前立腺がん細胞の増殖停止率が、例えば、約100%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、または約20%であり得る。
特に実施例1は、ブロモドメインおよびエクストラターミナルドメインの阻害剤(BETi)である化合物A(4-[2-(シクロプロピルメトキシ)-5-メチルスルホニルフェニル]-2-メチルイソキノリン-1-オン)が、前立腺がんおよび神経内分泌前立腺がんの細胞において、細胞増殖を完全に停止させ、細胞死を誘起できることを詳述している。実験では、(i)前立腺特異抗原(PSA)およびアンドロゲン受容体(AR)の発現など、前立腺がんの臨床的特徴を示すVCaP細胞;(ii)ヒト前立腺癌の転移細胞から樹立されたLNCaP細胞;(iii)ARが過剰発現したLNCaP細胞;(iv)エンザルタミドのようなARアンタゴニストに対する抵抗性をもたらす、ARスプライシングバリアントであるAR-V7を発現する22Rv1細胞;(v)腫瘍タンパク質53(TP53)および網膜芽細胞腫タンパク質1(RB1)を除去したLNCaP_AR細胞(BETiが神経内分泌前立腺がん(NEPC)で機能し得るかを調べるため);(vi)ホスファターゼ・テンシンホモログ(Pten)、Rb1、およびTrp53を欠失させる遺伝子操作がされたマウスモデルから得た、NEPC表現型を研究するために用いられる細胞;および(vii)NEPC細胞モデルで幅広く受け入れられているDU145細胞およびPC3細胞など、複数の臨床的に許容される細胞モデルを利用した。
特に、PSAおよびARの発現など、前立腺がんの臨床的特徴を示すVCaP細胞が、前立腺がんの進行および転移を研究するためのモデルとして使用される。前立腺がんにおけるBET阻害効果を調べるために、VCaP細胞をBETi化合物Aで処理した。図1A~1Bに示すように、これらは全て、化合物Aの量(X軸)に対する0日目およびDMSOと比較したVCaP細胞増殖率(Y軸)をグラフで示す。また、0.3uMの化合物AでVCaPの増殖が完全に(100%)停止した。さらに、化合物Aは、最も高い濃度で細胞毒性を示した(図1A~1B)。
さらに、BETタンパク質はAR標的遺伝子を調節し、ARシグナル伝達を制御する。BETiがAR標的遺伝子を調節するかを調べるために、VCaP細胞を化合物Aで処理し、遺伝子の発現を測定した。2つのAR標的遺伝子、カリクレイン関連ペプチダーゼ3(KLK3)およびII型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)は、化合物Aで処理した後、いずれもダウンレギュレーションが起こった。最も高い化合物Aの濃度(400nM)で細胞を処理すると、DMSOと比較して80.2%のKLK3がダウンレギュレーションを起こし、DMSOと比較して26.3%のTMPRSS2がダウンレギュレーションを起こした(図2上)。BET標的遺伝子、例えばMYCおよびヘキサメチレンビスアセトアミド誘導タンパク質1(HEXIM1)も調節された。40nMの化合物Aで処理した細胞では、MYCの発現が18.9%減少した。400nMの化合物Aで処理した細胞では、81.1%のMYCダウンレギュレーションを起こした。VCaP細胞に40nMまたは400nMの化合物Aのいずれが投与されると、HEXIM1は121.1%アップレギュレーションを起こし、DMSOと比較して754%アップレギュレーションを起こした(図2下)。
さらに、前立腺がんにおけるBETiの効果をさらに確認するために、LNCaP細胞をBETi化合物Aで処理した。化合物Aで3日間のみ処理した後、完全に(100%)増殖が停止した(図3A)。図3A~3Bのグラフでは、化合物Aの量(X軸)に対する0日目およびDMSOと比較したLNCaP細胞増殖率(Y軸)を示す。さらに、長期間処理(6日間)すると、化合物Aの半数最大阻害濃度(IC50=0.49)で細胞死が誘起された(図3B)。これらの結果は、細胞増殖が100%減少し、VCaP細胞およびLNCaP細胞の両方において細胞死が誘起されたことを示す。
現在の前立腺がんの標準的な治療法にはアンドロゲン除去療法(ADT)が挙げられるが、迅速な寛解後、後にがん細胞は耐性を獲得し、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)が進行する。ARの過剰発現は既にCRPCのモデルとして用いられている。CRPCにおいてBETiが機能し得るかを調べるため、AR過剰発現LNCaP細胞(LNCaP_AR)を化合物Aで処理した。BETi化合物Aは、LNCaP_ARの増殖の完全停止を引き起こし(図4A)、最も高い用量でより長い期間処理すると、細胞毒性活性を示す(図4B)。図4A~4Bおよび図5は、化合物Aの量(X軸)に対する0日目およびDMSOと比較したLNCaP_AR細胞増殖率(Y軸)をグラフで示す。化合物Aでの再処理も細胞毒性作用が強化され、≧1uMで細胞死を起こした(図5)。
CRPCにおけるBETiの効果を確認するために、22Rv1細胞を化合物Aで処理した。図6は、BETiが22Rv1の増殖に悪影響を及ぼすことを示す(IC50=0.20)。
AR標的遺伝子に対する化合物Aの効果を決定するために、22Rv1細胞を2つの異なる濃度(40nMおよび400nM)の化合物Aで処理した。40nMまたは400nMの化合物Aを細胞に加えると、AR標的遺伝子はいずれも強いダウンレギュレーションが起こり、KLK3では98.8%または99.51%がダウンレギュレーションを起こした。細胞を40nMまたは400nMの化合物Aで処理すると、TMPRSS2はそれぞれ93.2%または95.3%低下した(図7上)。BET標的遺伝子であるMYCはダウンレギュレーションが起こった。40nMの化合物Aを加えると64%のダウンレギュレーションを観測し、細胞を400nMの化合物Aで処理すると93.9%のダウンレギュレーションが起こった。HEXIM1はアップレギュレーションを起こし、細胞を400nMの化合物Aで処理すると、31%の誘導が観測された(図7下)。
BETi化合物Aで処理した細胞では、VCaPおよびLNCaPで観測したものと同様に、CRPCの細胞増殖が完全に停止(100%減少)し、細胞死が誘起される。CRPC患者の一部では、AR発現が少ないまたは無い神経内分泌(NE)表現型が特徴の、AR非依存性疾患が進行する。薬剤抵抗性およびNE表現型の進行が起こるメカニズムは未だ完全には解明されていないが、近年の研究では、TP53およびRB1の除去により抗アンドロゲン感受性LNCaP-AR前立腺細胞が耐性を得ることが報告されている。神経内分泌前立腺がん(NEPC)においてBETiが機能し得るかを調べるために、(CRISPRi技術またはshRNAを利用したノックダウンのいずれかを用いて)TP53およびRB1を除去したLNCaP_AR細胞を化合物Aで処理した。LNCaP_AR CRISPRi手法TP53/RB1細胞およびLNCaP_AR shTP53/RB1細胞は、化合物Aで処理後、完全に(100%)増殖が停止し、同様の増殖障害を示す。LNCaP_AR CRISPRi手法TP53/RB1細胞ではIC50が0.22であり(図8A)、LNCaP_AR shTP53/RB1細胞ではIC50が0.06である(図8B)。図8A~8Bは、化合物Aの量(X軸)に対する0日目およびDMSOと比較したTP53およびRB1除去済みLNCaP_AR細胞の細胞増殖率(Y軸)をグラフで示す。
ホスファターゼ・テンシンホモログ(Pten)、Rb1、およびTrp53を除去する遺伝子操作がされたマウスモデルがNEPC表現型を研究するために用いられている。遺伝子発現のプロファイルでは、これらのマウス由来の腫瘍がヒト前立腺がん神経内分泌バリアントと類似することが示された。NEPCにおけるBETiの効果を調べるために、PtenおよびRb1を除去したダブルノックアウトマウス(DKO)およびPten、Rb1、およびTpr53を除去したトリプルノックアウトマウス(TKO)を化合物Aで治療した。TKO細胞では濃度3uM、DKO細胞では1uMの化合物Aで処理することにより、増殖が100%完全に停止し、最も高い濃度では両細胞株で細胞毒性活性を示す(TKOは図9A、およびDKOは図9B)。
前立腺がん細胞DU145およびPC3は、幅広く受けれいられているNEPC細胞モデルである。NEPCに対するBETiの効果をさらに確認するために、DU145細胞およびPC3細胞を化合物Aで処理した。化合物Aは、DU145およびPC3の増殖をそれぞれ76%および80%減少させ、DU145では化合物AのIC50は0.68(図10)であり、PC3では化合物AのIC50は0.55であった(図11)。図10~11は、化合物Aの量(X軸)に対する0日目およびDMSOと比較したPC3細胞の細胞増殖率(Y軸)をグラフで示す。
これらのデータは、BETi化合物Aが、試験した全ての神経内分泌前立腺がんモデルにおいて≧76%細胞増殖を減少させ、TP53およびRB1を除去したLNCaP_AR細胞およびTKOおよびDKOマウス由来の細胞において細胞死を誘起することを示した。
すなわち、これらのデータは、前立腺がん細胞においてBETi化合物Aが、実質的におよび/または完全に細胞増殖を停止させ、細胞死を誘起することができ、固体腫瘍に対する新規な標的療法として化合物Aおよび構造上類似する化合物を利用できることを示す。
ブロモドメイン阻害剤として有用な置換ヘテロ環誘導体化合物には、一般にアリール、ヘテロアリールまたはその類似の基が4位で置換されたイソキノリノン類および関連するヘテロ環構造、ならびにイソキノリノン類または関連するヘテロ環構造の窒素原子に低級アルキル基(例えばメチル基)が置換されたものが含まれる。そのような化合物の例は米国特許出願番号第14/517,705号(米国特許第9,034,900号)に開示されている。
本明細書に記載の任意の実施態様において、化合物は以下の式(I):
Figure 2024507232000004
の構造を有する、4-[2-(シクロプロピルメトキシ)-5-メチルスルホニルフェニル]-2-メチルイソキノリン-1-オンまたはその医薬的に許容される塩である。上記化合物は化学式がC21H21NO4Sであり、分子量は383.46である。この化合物の合成は米国特許出願番号第14/517,705号(米国特許第9,034,900号)に開示されている。
医薬的に許容される塩には、以下に限らないが、医薬的に許容される無機酸と化合物が反応して形成される酸付加塩であって、例えば、医薬的に許容される無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタリン酸など);または有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、酢酸tert-ブチル、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸、酪酸、フェニル酢酸、フェニル酪酸、バルプロ酸など)と化合物が反応して形成される酸付加塩が挙げられる。
II.医薬組成物
本明細書に記載の任意の実施態様において、本明細書に記載のブロモドメイン阻害剤、またはその医薬的に許容される塩は、医薬組成物に製剤化される。
医薬組成物は、活性化合物を処理して容易に医薬的に用いられる製剤とするための、医薬的に許容される1以上の不活性成分を用いて従来の方法で製剤化される。適切な製剤とは、選択した投与経路による。一部の実施態様において、本開示の医薬組成物は、1以上の医薬的に許容される担体(例えば水溶液の担体、緩衝液、および/または希釈剤)を含む。
作用部位に化合物を送達できる任意の方法によって、本明細書に記載の化合物および組成物の投与が達成され得る。これらの方法には、経腸投与(経口投与チューブ、胃管または十二指腸チューブ、直腸用坐剤および直腸浣腸を含む)、非経口投与(動脈内、心臓内、皮内、十二指腸内、髄腔内、筋肉内、骨内、腹腔内、髄腔内、脈管内、静脈内、硝子体内、硬膜外および皮下などの注射または点滴)、吸入、経皮、経粘膜、舌下、頬側および局所投与(表皮、真皮、浣腸、点眼、点耳、鼻腔内、腟内など)からの送達が挙げられるが、これらに限られない。最も適切な経路は、例えばレシピエントの症状および障害に依存し得る。一例として、本明細書に記載の化合物は例えば、外科手術中の局所点滴、局所に塗布するクリームまたは軟膏など、注射、カテーテル、またはインプラントなどにより、治療が必要な部分に局所投与され得る。罹患組織または罹患臓器の部位に直接注射することにより投与されてもよい。
一部の実施態様において、経口投与に適した医薬組成物は、それぞれ所定の活性成分量を含むカプセル、カシェーまたは錠剤などの個々の単位;粉末または顆粒;水溶性または非水溶性の溶液または懸濁液;または水中油型液体エマルションまたは油中水型液体エマルションとして存在する。一部の実施態様において、活性成分は、ボーラス剤、舐剤、またはペーストであってもよい。
経口投与に使用され得る医薬組成物には、錠剤、ゼラチンでできたプッシュフィットカプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えばグリセロールまたはソルビトール)でできたソフトな密封カプセルが挙げられる。錠剤は、適宜1以上の補助成分を含み、圧縮または成形により形成されてもよい。圧縮錠剤は、流動性のある形態(例えば粉末または顆粒)の活性成分を、結合剤、不活性希釈剤、または滑沢剤、界面活性剤または分散剤と適宜混合して、適切な機器で圧縮することにより製造されてもよい。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を適切な機器で成形することにより製造されてもよい。一部の実施態様において、錠剤はコーティングまたは割線を入れられ、その活性成分が徐放放出または制御放出されるように製剤化されている。経口投与用の全ての製剤が、その投与に適切な用量でなければならない。プッシュフィットカプセルは、活性成分と増量剤(例えばラクトース)、結合剤(例えばデンプン)、および/または滑沢剤(例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム)および、適宜安定化剤を混合して含み得る。ソフトカプセルでは、活性化合物が適切な液体(例えば脂肪油、パラフィン(液体)、またはポリエチレングリコール(液体))に溶解または懸濁され得る。毒性のない適切な固体担体には医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなども挙げられる。
本明細書に記載の化合物は、投与経路に応じて、適切な担体またはビークルと組み合わせて、または一体となって投与されてもよい。本明細書で用いる用語「担体」は、医薬的に許容される固体または液体の増量剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。水含有液体担体には、医薬的に許容される添加剤(例えば酸性化剤、アルカリ化剤、抗菌性防腐剤、抗酸化剤、緩衝剤、キレート剤、錯化剤、可溶化剤、保湿剤、溶媒、懸濁剤および/または増粘剤、等張化剤、湿潤剤またはその他の生体適合性物質)が含まれ得る。上述の分類で列記された成分の一覧はU.S. Pharmacopeia National Formulary(1857~1859および1990)で確認できる。医薬的に許容される担体として機能する物質の例の一部には、糖(例えばラクトース、グルコースおよびスクロース); デンプン(例えばトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン); セルロースおよびその誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース); 粉末トラガカント; 麦芽; ゼラチン; タルク; 賦形剤(例えばカカオバターおよび坐剤用ワックス); 油(例えばピーナツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油); グリコール(例えばプロピレングリコール); ポリオール(例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール); エステル(例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル); 寒天; 緩衝剤(例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸; パイロジェンフリー水; 生理食塩水; リンゲル液、エチルアルコールおよびリン酸緩衝液溶液、ならびにその他医薬製剤に用いられ、毒性がなく適合する物質が挙げられる。製剤開発者の所望により、組成物には湿潤剤、乳化剤および滑沢剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤および香料、防腐剤および酸化防止剤も含まれ得る。医薬的に許容される抗酸化剤の例には、水溶性酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど); 油溶性酸化防止剤(例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど);および金属キレート剤(例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)が挙げられる。
本発明に記載の医薬組成物には、1以上の結合剤、増量剤、滑沢剤、懸濁化剤、甘味剤、風味剤、防腐剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、およびその他の賦形剤が含まれてもよい。そのような賦形剤は当業者に公知である。増量剤の例としては、ラクトース一水和物、無水ラクトース、および各種デンプン;結合剤の例としては、各種セルロースおよび架橋型ポリビニルピロリドン、微結晶性セルロース(例えばAvicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102、微結晶性セルロース、およびケイ酸処理結晶セルロース(ProSolv SMCCTM))が挙げられる。圧縮される粉末の流動性に作用する物質などの適切な滑沢剤には、コロイド状二酸化ケイ素(例えばAerosil(登録商標)200)、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびシリカゲルが含まれ得る。甘味剤の例としては、任意の天然甘味料または人工甘味料(例えばスクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、チクロ、アスパルテーム、およびアセスルファム)が含まれ得る。風味剤の例には、Magnasweet(MAFCOの登録商標)、バブルガム風味、および果実風味などが挙げられる。防腐剤の例には、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩、p-ヒドロキシ安息香酸のその他のエステル(例えばブチルパラベン)、アルコール(例えばエチルアルコールまたはベンジルアルコール)、フェノール類(例えばフェノール)、または4級化合物(例えば塩化ベンザルコニウム)が挙げられる。
治療目的の投与に用いられる任意の薬剤は滅菌され得る。滅菌は、例えば無菌濾過膜(例えば0.2μの膜)で濾過することにより容易に行われる。医薬的に許容される任意の滅菌方法が本発明の組成物において使用され得る。
本明細書に記載の化合物、またはその塩を含む医薬組成物は、各患者の臨床症状、投与方法、投与計画、およびその他の医療関係者に公知の因子を考慮して製剤化され、適正な医療行為に合致する方法で投薬される。
III.治療方法
本出願は、本明細書に記載のブロモドメイン阻害剤、またはその医薬的に許容される塩の任意の1つを用いて、前立腺がんを治療する方法を提供する。
本明細書に記載の任意の実施態様において、治療上有効量のブロモドメイン阻害剤が使用され得る。一部の実施態様において、治療上有効量のブロモドメイン阻害剤、またはその医薬的に許容される塩は、実質的に前立腺がん細胞の細胞周期を停止させる。一部の実施態様において、治療上有効量のブロモドメイン1阻害剤、またはその医薬的に許容される塩は、完全に前立腺がん細胞の細胞周期を停止させる。一部の実施態様において、治療上有効量のブロモドメイン阻害剤、またはその医薬的に許容される塩は、アンドロゲン非依存性がん細胞のアポトーシスを引き起こす。
本明細書に記載の方法のある態様において、この方法は実質的に前立腺がん細胞の細胞周期の停止を引き起こす。ここで「実質的に」とは、前立腺がん細胞の細胞周期を少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%停止させるものとして定義される。前立腺がん細胞の細胞周期停止率は、任意の臨床的に許容される技術を用いて測定され得る。
本明細書に記載の方法の別の態様において、この方法は、前立腺がん細胞の細胞周期の完全停止を引き起こす。前立腺がん細胞の細胞周期の停止は、任意の臨床的に許容される技術を用いて測定され得る。
最終的に、本明細書に記載の方法の別の態様において、この方法はアンドロゲン非依存性がん細胞のアポトーシスを引き起こす。例えば、この方法は、アンドロゲン非依存性がん細胞のアポトーシスを約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%引き起こし得る。アンドロゲン非依存性がん細胞のアポトーシスは、任意の臨床的に許容される技術を用いて測定され得る。
ある態様は、前立腺がんの治療方法であって、その治療が必要な対象に、ブロモドメイン阻害剤、またはその医薬的に許容される塩を含む組成物を投与することを特徴とする方法を提供する。
本明細書に記載の任意の実施態様において、前立腺がんは、去勢抵抗性前立腺がん(CPRC)、神経内分泌前立腺がん(NEPC)、抗アンドロゲン抵抗性前立腺がん、またはその任意の組合せであり得る。一部の実施態様において、前立腺がんは去勢抵抗性前立腺がん(CPRC)である。一部の実施態様において、前立腺がんは神経内分泌前立腺がん(NEPC)である。一部の実施態様において、前立腺がんは抗アンドロゲン抵抗性前立腺がんである。
本明細書に記載の任意の実施態様において、治療する前立腺がんは進行がんであり得る。本明細書に記載の任意の実施態様において、前立腺がんは転移性であり得る。本明細書に記載の任意の実施態様において、治療する前立腺がんは患者の体の前立腺以外の領域に転移したものであり得る。本明細書に記載の任意の実施態様において、治療する患者の前立腺がんは顕著な寛解期間の後に再発したものであり得る。
本明細書に記載の任意の実施態様において、この方法により(a)がん細胞の増殖が少なくとも約40%減少する;(b)がん細胞の増殖が約40%~約99%減少する; および/または(c)約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%がん細胞の増殖が減少し得る。一部の実施態様において、この方法により、がん細胞の増殖が少なくとも約40%減少する。一部の実施態様において、この方法により、がん細胞の増殖が約40%~約99%減少する。一部の実施態様において、この方法により、がん細胞の増殖が約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%減少する。
本明細書に記載の任意の実施態様において、この方法により、(a)少なくとも約40%腫瘍体積が減少する;(b)約40%~約99%腫瘍体積が減少する; および/または(c)約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%腫瘍体積が減少する。一部の実施態様において、この方法により、少なくとも約40%腫瘍体積が減少する。一部の実施態様において、この方法により、約40%~約99%腫瘍体積が減少する。一部の実施態様において、この方法により、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%腫瘍体積が減少する。
A.投与経路
投与は任意の経路で行われてもよい。以下の例に限らないが、経鼻、舌下、頬側、直腸、腟内、静脈内、動脈内、皮内、腹腔内、髄腔内、筋肉内、硬膜外、脳内、脳室内、経皮、またはその任意の組合せの投与が挙げられる。
本明細書に記載の化合物または医薬組成物は、治療および/または予防する疾患に対して適切な方法で投与される。患者の症状、患者の疾患の種類および重症度、活性成分の個別の形態、および投与方法などの要素で、適当な投与量および適切な投与時間および投与頻度が決定される。一般に、適当な用量および治療レジメンは、治療上および/または予防上の効果(例えば臨床転帰の改善(例えば完全寛解率または部分寛解率の上昇、または無病生存期間および/または全生存期間の長期化、または症状の緩和))が得られるのに十分な量で組成物を提供する。最適な投与量は一般に、実験モデルおよび/または臨床試験を経て決定され、患者の体格、体重、または血液量によって異なる。
本明細書に記載の任意の実施態様において、ブロモドメイン阻害剤、またはその医薬的に許容される塩は、経口投与に適している。経口投与に適切な形態として、以下に限らないが、錠剤、丸剤、サシェ、またはハードまたはソフトゼラチンカプセル剤が挙げられる。
B.キット
本明細書に記載の本発明の化合物または組成物は、説明書または添付文書と一緒に包装されているか、またはキットに含まれていてもよい。当該説明書または添付文書には、ブロモドメイン阻害剤またはその塩の使用期限を考慮して、望ましい保管条件(例えば期間、温度および光)が記載されていてもよい。また、これらには本明細書に記載の化合物またはその誘導体または塩の特有の有用性(例えば野外や、病院、クリニックまたは診療室の管理された環境の外で使用する必要が生じ得る製剤の保管のしやすさ)が記載されていてもよい。
また、本発明は、本開示の1以上の医薬組成物が充填されたものを1つ以上含む、医薬品のパックまたはキットも提供する。キットには例えば、粉末、錠剤、溶解するもの、または無菌溶液として、いずれかの医薬組成物が適当な量充填された入れ物が含まれ得る。それらの入れ物には、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関が、ヒトへの投与のための製造、使用または販売を承認していることを示す、当該機関が規定した様式の通知が添付されていてもよい。さらに、ブロモドメイン阻害剤またはその塩は、その他の治療用化合物と併用して用いられてもよい。
ある態様において、当該キットは1以上のデバイスを含んでいてもよく、そのデバイスは製品が物理的に破損しないようにするための第1の保護包装、または第2の保護包装、または第3の保護包装で封がされていてもよい。第1、第2、または第3の保護包装の1以上がアルミ袋であってもよい。キットにはさらに当該デバイスの取扱説明書が含まれていてもよい。ある態様において、キットには2つ以上のデバイスが含まれる。
ある態様において、キットにはデバイスが含まれていてもよく、さらに取扱説明書が含まれていてもよい。ある態様において、当該説明書には、デバイスを管理する人に向けた視覚的補助/絵および/または文書で示した説明が記載されていてもよい。
IV.定義
以下の定義は、この明細書で用いられる特定の用語を理解しやすくするために記載される。
特に断りが無い限り、本明細書で用いるあらゆる専門用語および科学用語は、当業者により一般に理解される意味である。当業者に公知の任意の適切な物質および/または手段が本明細書に記載の方法を実行するために利用され得る。
本発明の明細書および添付の請求項で用いられる、単数形の「a」「an」および「the」は同義で用いられ、文中で明らかな断りが無い限り、複数形も含むことを意図しており、それぞれの意味が含まれる。また、本明細書で用いる「および/または」は、列記された項目の、1以上のあらゆる可能な組み合わせを含むことも指し、代替案として解釈される場合(「or」)には一部の組み合わせが含まれないことを指す。
本明細書で用いる「約」は当業者に理解され、その語が用いられる文脈によってある程度変化する。使用された文脈を考慮しても当業者により自明でない用語の使用がある場合、「約」は特定の用語の±10%までを意味する。
本明細書で用いる用語「投与」には、投与の指示ならびに実際の投与、および治療される本人またはその他の者による身体的投与が含まれる。
本明細書で用いる「対象」、「患者」または「個人」は、任意の対象、患者、または個人を指し、これらの用語は本明細書において同義で使用される。これに関し、用語「対象」、「患者」および「個人」には、哺乳動物、特にヒトを含む。用語「対象」、「患者」または「個人」と「が必要な」を組み合わせて使用する場合、特定の症状または障害を有するか、そのリスクがある任意の対象、患者、または個人を意味する。
本明細書において、「用量」または「量」の文脈で用いるフレーズ「治療上有効」または「有効」とは、投与される1つの化合物または複数の化合物の特定の薬理効果が得られる用量または量を意味する。治療上の有効量は、当業者が治療上の有効量であると判断した用量であっても、投与された対象において意図した効能を発揮するために、常に有効であるとは限らないことが強調される。参考までに、投与量の例を本明細書に記載する。当業者は、特定の症状または疾患を患う特定の対象を治療するために、本開示の方法に従って投与量を調節できる。治療上の有効量は、投与経路および剤形によって変化してもよい。
用語「治療」、「処理」またはその任意の変化形の語には、(i)1以上の特定の症状および/または(ii)特定の障害の1以上の症状または影響を緩和すること、改善すること、または排除することが含まれる。用語「予防」、「予防する」またはその任意の変化形の語には、(i)1以上の特定の症状および/または(ii)特定の障害の1以上の症状または影響の進行の危険性を緩和すること、改善すること、または排除することが含まれる。
「医薬的に許容される塩」には、酸付加塩および塩基付加塩の両方が含まれる。本明細書に記載の置換ヘテロ環誘導体化合物の、いずれか1つの医薬的に許容される塩には、あらゆる医薬的に適切な塩形態を含むことが意図される。本明細書に記載の化合物の医薬的に許容される好ましい塩とは、医薬的に許容される酸付加塩および医薬的に許容される塩基付加塩である。
「医薬的に許容される酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的有効性および特性を有し、生物学的に望ましくないことが生じない塩であって、無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、リン酸など)と形成される塩を指す。また、有機酸(例えば脂肪族モノカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカンジオン酸、芳香族酸、脂肪族スルホン酸および芳香族スルホン酸など(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが含まれる))と形成される塩も含まれる。塩の例として、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、クロライド、ブロマイド、アイオダイド、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニルアセテート、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが挙げられる。また、アミノ酸塩(例えばアルギニン酸塩、グルコン酸塩)、およびガラクツロン酸塩が考えられる(例えば、Berge S.M. et al., Pharmaceutical Salts, J. Pharma. Sci. 66:1-19 (1997)参照)。一部の実施態様において、塩基性化合物の酸付加塩は、遊離塩基形態を十分な量の所期の酸と接触させることで製造され、当業者に周知の方法および技術に従って塩が得られる。
「医薬的に許容される塩基付加塩」とは、遊離酸の生物学的有効性および特性を有し、生物学的に望ましくないことが生じない塩を指す。これらの塩は、遊離酸に無機塩基または有機塩基が付加することにより製造される。一部の実施態様において、医薬的に許容される塩基付加塩は、金属またはアミン(例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミン)と形成される。無機塩由来の塩には、以下に限らないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩などが挙げられる。有機塩基由来の塩には、以下に限らないが、1級アミン、2級アミン、および3級アミン、天然置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂を含む置換アミン(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、エチレンジアニリン、N-メチルグルカミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミンレジンなど)の塩が挙げられる。Berge et al., supraを参照のこと。
実施例
以下の実施例で使用されているように、化合物Aは、4-[2-(シクロプロピルメトキシ)-5-メチルスルホニルフェニル]-2-メチルイソキノリン-1-オンを指す。
以下に下記の実施例で用いられる略語を列記する。
Figure 2024507232000005
実施例1
以下の実施例は、BETi化合物Aの、前立腺がん細胞および神経内分泌前立腺がん細胞における細胞増殖の完全停止および細胞死の誘起効果を評価する。
使用するものおよび方法
細胞培養: VCaP、LNCaP、22Rv1、DU145およびPC3がん細胞株をATCCから入手した。VCaP細胞は8%FBSを添加したDMEM培地で培養し、LNCaP細胞は10%FBSを添加したRPMI1640培地で培養し、PC3細胞は10%FBSを添加したF12K培地で培養した。LNCaP_AR CRISPRi gCTR、LNCaP_AR CRISPRi gTP53/RB1、およびLNCaP_AR shTP53/RB1細胞をCharles L. Sawyers labから入手し、10%FBS+2mM L-グルタミン+1mMピルビン酸ナトリウム+10mM Hepesを添加したRPMI1640で培養した。DKO細胞およびTKO細胞をDavid W. Goodrich labから入手し、2.5%活性炭処理済FBS+インスリン/トランスフェリン/セレン(ITS、5μg/mL)+ウシ脳下垂体抽出物(BPE、10g/mL)+上皮成長因子(10μg/mL)+コレラ菌毒素(1μg/mL)を添加したDMEM培地で培養した。DKO細胞はインタクトなマウスから得たため、R1881(1nM)の存在下でも培養した。
増殖アッセイ:細胞を384ウェルにプレーティングし、処理する前に24時間接着させた。10μM~0.1nMの9種の用量(1:3)で薬剤を漸増する操作を、3回再現した。CellTiter-Glo試薬(Promega)を用いて、処理した日(0日目)および3日目または6日目または14日目の細胞の増殖体積をメーカーの説明書に従って測定した。GraphPad Prism 7.03(GraphPad Software, Inc.)を用いて、DMSOビークルのコントロールおよび0日目で正規化した細胞増殖率を非線形回帰によりフィッティングした。
結果
BETi化合物Aは前立腺がん細胞の増殖を完全に停止させ、細胞死を誘起した。
VCaP細胞は、前立腺特異抗原(PSA)およびアンドロゲン受容体(AR)の発現などの前立腺がんの臨床的特徴を示すため、前立腺がんの進行および転移を研究するためのモデルとして用いられる。前立腺がんにおけるブロモドメインおよびエクストラターミナルドメイン(BET)の阻害機能を調べるために、VCaP細胞をBETi化合物Aで処理した。その結果、0.3uMの化合物AでVCaP細胞の増殖が完全(100%)に停止した。さらに、化合物Aは、最も高い濃度で細胞毒性効果を示した(図1Aおよび1B)。
BETタンパク質は、AR標的遺伝子の調節によりARシグナル伝達を制御する。BETiがAR標的遺伝子を調節するかを調べるために、VCaP細胞を化合物Aで処理し、遺伝子の発現を測定した。化合物Aでの処理後、カリクレイン関連ペプチダーゼ3(KLK3)およびII型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)の2つのAR標的遺伝子の両方でダウンレギュレーションが起こった。細胞を最も高い濃度(400nm)の化合物Aで処理した場合、DMSOと比較して80.2%のKLK3でダウンレギュレーションが観測された。また、DMSOと比較して26.3%のTMPRSS2でダウンレギュレーションが観測された(図2上)。また、BET標的遺伝子(例えばMYCおよびヘキサメチレンビスアセトアミド誘導タンパク質1(HEXIM1))も調節された。40nMの化合物Aで処理した細胞では、MYCの発現が18.9%低下することを観測し、400nMの化合物Aで処理した細胞では、81.1%のMYCでダウンレギュレーションが起こった。40nMまたは400nMの化合物AがVCaP細胞に投与されると、HEXIM1はDMSOと比較して121.1%、または754%アップレギュレーションを起こした(図2下)。
前立腺がんにおけるBETiの機能をさらに確認するために、ヒト前立腺癌の転移細胞から樹立されたLNCaP細胞をBETi化合物Aで処理した。化合物Aで3日間のみ処理した後、完全に(100%)増殖が停止する結果を示した(図3A)。さらに、長期間処理(6日間)すると化合物Aの半数最大阻害濃度(IC50=0.49)で細胞死が誘起された(図3B)。
これらの結果は、化合物Aにより細胞増殖が100%減少し、VCaP細胞およびLNCaP細胞の両方において細胞死が誘起されたことを示す。
BETi化合物Aは去勢抵抗性前立腺がん細胞の増殖を完全に停止させ、細胞死を誘起する。
現在の前立腺がんの標準的な治療法にはアンドロゲン除去療法(ADT)が含まれるが、ADTで迅速ながんの寛解が見られた後、がん細胞は後に薬剤抵抗性を獲得しCRPCが進行する。ARの過剰発現は既にCRPCのモデルとして用いられている。CRPCにおいてBETiが機能し得るかを調べるため、AR過剰発現LNCaP細胞(LNCaP_AR)を化合物Aで処理した。その結果、化合物AはLNCaP_AR細胞の増殖の完全停止を引き起こし(図4A)、最も高い用量でより長い期間処理すると、細胞毒性活性を示した(図4B)。化合物Aでの再処理も細胞毒性作用が強化され、≧1uMで細胞死を起こす(図5)。
22Rv1前立腺がん細胞は、エンザルタミドのようなARアンタゴニストに対する抵抗性をもたらす、ARスプライシングバリアントであるAR-V7を発現する。この細胞株はCRPCの別モデルとして用いられる。CRPCにおけるBETiの機能を確認するため、22Rv1細胞を化合物Aで処理した。BETiはIC50=0.20で22Rv1細胞の増殖に悪影響を及ぼす(図6)。
AR標的遺伝子に対する化合物Aの効果を決定するために、22Rv1細胞を2つの異なる濃度(40nMおよび400nM)の化合物Aで処理した。40nMまたは400nMの化合物Aを細胞に加えると、AR標的遺伝子はいずれも強いダウンレギュレーションが起こり、KLK3では98.8%または99.51%がダウンレギュレーションを起こした。細胞を40nMまたは400nMの化合物Aで処理すると、TMPRSS2はそれぞれ93.2%または95.3%低下した(図7上)。BET標的遺伝子であるMYCは、40nMの化合物Aで細胞を処理すると64%ダウンレギュレーションが起こり、400nMの化合物Aでは93.9%ダウンレギュレーションを観測した。細胞を400nMの化合物Aで処理するとHEXIM1はアップレギュレーションを起こし、31%の誘起が見られた(図7下)。
BETiで処理した細胞では、VCaPおよびLNCaPで観測したものと同様に、CRPCの細胞増殖が減少した。
BETi化合物Aは神経内分泌前立腺がん細胞の増殖を大幅に減少させる
CRPC患者の一部では、AR発現が少ないまたは無い神経内分泌(NE)表現型が特徴のAR非依存性疾患が進行する。薬剤抵抗性およびNE表現型の進行が起こるメカニズムは未だ完全には解明されていないが、近年の研究では、腫瘍タンパク質53(TP53)および網膜芽細胞腫タンパク質1(RB1)の除去により、抗アンドロゲン感受性LNCaP-AR前立腺細胞が耐性を得ることが報告されている。神経内分泌前立腺がん(NEPC)においてBETi化合物Aが機能し得るか調べるために、(CRISPRi技術またはshRNAを利用したノックダウンのいずれかを用いて)TP53およびRB1を除去したLNCaP_AR細胞を化合物Aで処理した。その結果、化合物Aで処理後、LNCaP_AR CRISPRi手法TP53/RB1細胞およびLNCaP_AR shTP53/RB1細胞は、完全に(100%)増殖が停止し、同様の増殖障害を示した。LNCaP_AR CRISPRi手法TP53/RB1細胞でのIC50は0.22であり(図8A)、LNCaP_AR shTP53/RB1細胞でのIC50=は0.06である(図8B)。
ホスファターゼ・テンシンホモログ(Pten)、Rb1、およびTrp53を除去する遺伝子操作がされたマウスモデルがNEPC表現型を研究するために用いられている。遺伝子発現のプロファイルでは、これらのマウス由来の腫瘍がヒト前立腺がん神経内分泌バリアントと類似することが示されていた。PtenおよびRb1を除去したNEPCダブルノックアウトマウス(DKO)およびPten、Rb1、およびTpr53を除去したトリプルノックアウトマウス(TKO)においてBETiの効果を調べるために、マウスを化合物Aで処理した。その結果、TKO細胞では濃度3uM、DKO細胞では1uMの化合物Aで処理することにより増殖が100%完全停止し、最も高い濃度では両細胞株で細胞毒性活性を示した(図9Aおよび9B)。
前立腺がん細胞DU145およびPC3は、NEPC細胞モデルで幅広く受けれいられている。NEPCに対するBETiの効果をさらに確認するために、DU145およびPC3細胞を化合物Aで処理した。その結果、化合物Aは、DU145の増殖を76%減少させ(化合物AのIC50=0.68)、PC3の増殖を80%減少させた(化合物AのIC50=0.55)(図10~11)。
これらのデータは、BETi化合物Aが、試験した全ての神経内分泌前立腺がんモデルにおいて細胞増殖を76%以上減少させ、TP53およびRB1を除去したLNCaP_AR細胞、およびTKOおよびDKOマウス由来の細胞において細胞死を誘起することを示した。
すなわち、これらのデータは、BETi化合物Aが前立腺がん細胞において、完全に細胞増殖を停止させ、細胞死を誘起することができ、前立腺がんに対する新規な標的療法として化合物Aを利用できることを示す。
特定の実施態様が図示および記述されているが、下記の特許請求の範囲で定義されている、より広い態様の技術から離れることなく、当該分野の通常の手法に従って変更および改良がなされ得ることが理解されるべきである。
本明細書に記載の具体的に実施態様は、本明細書で具体的に開示されていない、任意の1以上の要素、任意の1以上の限定がない場合でも、適切に実施され得る。そのため、例えば、「含む」、「有する」、「含有」などの用語は広範囲かつ無制限に理解されるものとする。さらに、本明細書で使用される用語および表現は説明のための用語であって、限定するために用いられるものではなく、これらの用語および表現の使用において、記載された特徴またはその一部の任意の同質物を除外する意図はなく、様々な調整が請求する技術の範囲内で可能であると認識される。さらにフレーズ「を本質的に含む」は、具体的に列挙される要素および請求する技術の基本的特徴および新規特徴に実質的に影響しない付随の要素を含むと理解される。フレーズ「からなる」は、具体的ではない任意の要素を除外する。
本開示は、本出願に記載の特定の実施態様によって制限されない。その本質および範囲から離れることなく、当業者に明らかな多くの改良および変更がなされ得る。本明細書で列記された方法および組成物に加え、本開示の範囲と機能的に同等の方法および組成物は、前述の説明から当業者に明かであろう。添付の請求項の範囲には、これらの改良および変更が含まれることが意図される。本開示は、添付の特許請求の範囲の請求項によってのみ限定され、それらの請求項による権利範囲と同等の全範囲とともに限定される。方法、試薬、化合物、または組成物は当然に変化し得るため、本開示によりそれらが特定のものに限定されないことが理解される。本明細書で使用する専門用語は、特定の実施態様を説明する目的でのみ使用され、限定を目的としないことも理解される。
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ形式で記載されている場合、当業者は本開示が、マーカッシュ形式に含まれる任意の各選択肢、または一部の選択肢をまとまめた群によって記述されていることを認識するであろう。
当業者によって理解される通り、あらゆる目的、特に文章による説明を記載する目的で、本開示の全範囲には、考えられる全ての部分的範囲およびその部分的範囲の組み合わせが端点を含んで包含される。任意の列記範囲は同一の範囲が十分に記述され、少なくとも2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに等しく分けられることが容易に認識され得る。例として、これに限定されないが、本明細書に記載の各範囲は、下3分の1、中3分の1および上3分の1などに容易に分割され得る。例えば「まで」、「少なくとも」、「越」、「未満」などの全ての用語も当業者によって理解される通り、記載されている数を含み、上述したような部分的範囲に分割され得る範囲をいう。当業者に理解される通り、最終的な範囲には各値が含まれる。
本明細書で引用されるあらゆる出版物、特許出願、交付済み特許、およびその他の文献は参照により本明細書に組み込まれ、それぞれの各出版物、特許出願、交付済み特許、またはその他の文献が具体的かつ個別に示されているように、参照によりその全てが援用される。参照により組み込まれる文章に含まれる定義は、本開示の定義と矛盾する範囲が除外される。
その他の実施態様は、以下の特許請求の範囲で示される。

Claims (17)

  1. 治療が必要な対象の前立腺がんを治療するための方法に用いる、式(I)
    Figure 2024507232000006
    の構造を有する化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物であり、
    ここで前立腺がんが、去勢抵抗性前立腺がん(CPRC)、神経内分泌前立腺がん(NEPC)、抗アンドロゲン抵抗性前立腺がん、またはその任意の組合せである、組成物。
  2. 前立腺がんが転移性である、請求項1に記載の使用のための組成物。
  3. 治療する前立腺がんが進行がんである、請求項1または2に記載の使用のための組成物。
  4. 治療する前立腺がんが、対象の体の前立腺以外の領域に転移している、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  5. 治療する前立腺がんが、顕著な寛解期間の後に、対象において再発したものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  6. 前立腺がんが去勢抵抗性前立腺がん(CPRC)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  7. 去勢抵抗性前立腺がん(CPRC)が、ARの発現の少ないまたは無い、神経内分泌表現型を特徴とする、アンドロゲン受容体(AR)非依存性疾患である、請求項6に記載の使用のための組成物。
  8. 前立腺がんが神経内分泌前立腺がん(NEPC)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  9. 上記方法により、実質的に前立腺がんの細胞周期の停止を引き起こす、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  10. 「実質的に」とは、前立腺がんの細胞周期が少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%停止することとして定義される、請求項9に記載の使用のための組成物。
  11. 上記方法により、完全に前立腺がんの細胞周期の停止を引き起こす、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  12. 上記方法がアンドロゲン非依存性がん細胞のアポトーシスを引き起こす、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  13. 上記方法により、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%のアンドロゲン非依存性がん細胞のアポトーシスを引き起こす、請求項12に記載の使用のための組成物。
  14. ここで
    (a)上記方法により、がん細胞の増殖が少なくとも約70%減少する;
    (b)上記方法により、がん細胞の増殖が約70%~約99%減少する;
    (c)上記方法により、がん細胞の増殖が少なくとも約80%減少する;
    (d)上記方法により、がん細胞の増殖が約80%~約99%減少する; および/または
    (e)上記方法により、がん細胞の増殖が約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%減少する、
    請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  15. ここで
    (a)上記方法により、腫瘍体積が少なくとも約40%減少する;
    (b)上記方法により、腫瘍体積が約40%~約99%減少する; および/または
    (c)上記方法により、腫瘍体積が約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%減少する、
    請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  16. 上記化合物、またはその医薬的に許容される塩が、経口投与に適している、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  17. 上記化合物、またはその医薬的に許容される塩が、錠剤、丸剤、サシェ、またはハードあるいはソフトゼラチンカプセル剤の形態である、請求項16に記載の使用のための組成物。
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