JP2024501108A - 区域気孔率が制御された充填床バイオリアクタ - Google Patents

区域気孔率が制御された充填床バイオリアクタ Download PDF

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Abstract

細胞を培養するための充填床バイオリアクタ・システムが提示されている。該システムは、入口、出口、および、該入口と該出口の間の流体経路に流体連絡状態に接続され該経路中に配置された内部貯留器が設けられた細胞培養容器を含んでいる。細胞培養マトリクスは該貯留器ないに配置されており、該細胞培養マトリクスは、複数の細孔を画定している基質素材を用いた構造的に定められた基質を有しており、該基質素材はそこに細胞を付着させるためにある。透過性区域が該細胞培養マトリクスの一部に配置されており、少なくとも1つの該透過性区域はその外側の該細胞培養マトリクスの標準透過性よりも高い透過性を有している。該透過性区域は該基質に開口を有しており、該開口は該複数の細孔のいずれの直径よりも大きい。

Description

関連出願との相互参照
本願は、合衆国法典第35巻第119条(米国特許法)に基づき、2020年11月30日出願の米国特許予備出願第63/119,006号の優先権を主張するものであり、斯かる出願の内容はその全体がここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。
本件開示は広義には、多様な充填床構成の各種の細胞培養基質は元より、細胞培養システムおよびその方法に関するものである。特に、本件開示は、気孔率が制御されて可変である特定区域が設けられた充填床細胞培養基質は元より、そのような基質を組み込んだバイオリアクタ・システム、および、そのような基質を使用して細胞を培養する方法に関連している。
バイオプロセス産業では、各種のホルモン、酵素、抗体、ワクチン、細胞治療品の生産を目的として、細胞の大規模培養が実施されている。細胞治療市場および遺伝子治療市場は急速に成長しており、有望な治療法が臨床試験に移行し、急速に商業化に向かっている。しかしながら、細胞治療品の1服分投与量には、数十億の細胞または数兆のウイルスが必要となる場合がある。従って、臨床上の成功には、短期間のうちに大量の細胞産物を提供できることが重要である。
バイオプロセスで使用される細胞の相当な部分は足場依存性があり、その意味は、細胞が成長し機能するために接着する表面が必要とする、ということである。従来、接着細胞の培養は、Tフラスコ、ペトリ皿、セル・ファクトリ、セル積載容器、ローラー・ボトル、HYPERStack(登録商標)容器などのような多数の容器様式のうちの1つに組込まれた、2次元(2D)細胞接着表面上で行われてきた。これらの手法には重大な欠陥を生じる恐れがあり、例えば、治療品や細胞の大規模生産を実現するのに十分な細胞密度を達成することが難しいことなどが挙げられる。
培養細胞の体積密度を増加させるための代替法が提案されてきた。これらには、撹拌タンク内で行われるマイクロキャリア培養も含まれている。この手法では、マイクロキャリアの表面に付着した細胞が一定の剪断応力を被り、その結果、増殖性能および培養性能に重大な影響を及ぼすこととなる。高密度細胞培養システムのもう1つ別の例が中空繊維バイオリアクタであり、ここでは細胞は、繊維間空間で増殖するにつれて、大きな3次元凝集体を形成する。しかし、栄養素が不足により、細胞の成長と性能が著しく阻害される。この問題を軽減するために、これらのバイオリアクタは小型に作られており、大規模産生には適していない。
足場依存性細胞の高密度培養システムのもう1つ別の例が、充填床バイオリアクタ・システムである。この種のバイオリアクタでは、接着細胞の付着のための表面を提供するために細胞基質が使用される。表面に沿って、または、半多孔質基質を通して培地を灌流することで、細胞増殖に必要な栄養素と酸素を供給する。例えば、細胞を捕捉するための支持体またはマトリクスシステムの充填床を含む充填床バイオリアクタ・システムが、米国特許第4,833,083号明細書、第5,501,971号明細書、および、第5,510,262号明細書に既に開示されている。充填床マトリクス群は、通常、基質としての多孔質粒子群または重合体の不織の超極細繊維で作られている。このようなバイオリアクタは、再循環貫流バイオリアクタとして機能する。このようなバイオリアクタに関する重大問題の1つが、充填床内の細胞分布の不均一性である。例えば、充填床は主に入口領域で細胞を捕捉するデプス・フィルタ(深層部濾過器)として機能し、その結果、接種工程中に細胞分布の勾配が生じる。更に、繊維充填が不揃いなせいで、充填床の断面の流動抵抗と細胞捕捉効率が均一にならない。例えば、培地は、細胞充填密度が低い領域を通るときは速く流れ、捕捉された細胞の数が多いせいで抵抗が高い領域を通るときにはゆっくりと流れる。これによりチャネリング効果が生じ、その場合、細胞体積密度が低い領域に栄養素と酸素がより効率的に送達されるが、細胞密度が高い領域は準最適の培養条件に維持される。
従来技術で既に開示されている充填床システムのもう1つ別の重大な欠陥は、培養処理過程の最後に無傷の生細胞を効率的に収穫できないことである。最終産生物が細胞である場合、または、バイオリアクタが「シード・トレイン」の一部として使用されている場合、すなわち、細胞集団を1個の容器で増殖させてから別の容器に移すことで更に増殖させようとしている場合、細胞の収穫は重要となる。米国特許第9,273,278号明細書は、細胞収穫工程中に充填床から細胞を回収する効率を向上させるためのバイオリアクタ設計を開示している。該設計は、充填床マトリクスをほぐしたうえで充填床粒子を攪拌する、すなわち、掻き混ぜることで多孔質マトリクスを衝突させることにより細胞を剥離することに基づいている。しかしながら、この手法は手間がかかり、重大な細胞損傷を引き起こす可能性があるため、全体的な細胞生存率を低下させる。
現在市販されている充填床バイオリアクタの一例は、ポール社(Pall Cоrpоratiоn)が製造するiCellis(登録商標)である。iCellisは、不織構成の不揃いに配向された繊維からなる細胞基質素材の小細片を使用している。これらの小細片を容器に詰めることで、充填床を形成している。しかしながら、市販されている類似する各解決策と同様、この種の充填床基質にも欠陥がある。詳細に述べると、基質細片を不均一に詰めたことで充填床内に目に見えるチャネル(導水路)が形成され、充填床を通る選択的かつ不均一な培地流れと栄養素分布が生じることになる。iCellis(登録商標)の研究で注目してきたのは、「細胞の全系統不均一分布で細胞数が固定床の上から下に向かって数が増加する状態にあること」と「栄養素勾配により細胞成長と細胞産生が制限されてしまうこと」であり、これらは全て、「トランスフェクション効率を損なう可能性のある細胞の不均等な分布」を生じることとなる。(「哺乳動物細胞における組み換えアデノ随伴ウイルス(AAV)生産性を高めるための合理的なプラスミド設計とバイオプロセスの最適化」『Biоtechnоl. J.(バイオテクノロジー・ジャーナル)』11号、2016年、290頁-297頁)。研究では、充填床の撹拌により分散を向上させることはできても、それ以外の欠陥が残ることになると強調してきた。すなわち、「接種中とトランスフェクション中に分散をより良好にするのに必要な撹拌は、剪断応力の増加を誘発し、延いては、細胞生存率の低下につながる」(出典同上)。もう1つ別の研究では、iCellis(登録商標)について、細胞が不均一に分布しているため、バイオマス・センサを使用した細胞集団の監視が困難になると強調している。すなわち、「…細胞が不均一に分布した状態にある場合、最上層キャリアの細胞からのバイオマス信号が全バイオリアクタの全体像を示してはいない場合もある」(「固定床バイオリアクタにおけるアデノウイルス・ベクター産生のプロセス開発―研究規模から商業規模まで」『Human Gene Therapy(ヒューマン・ジーン・セラピー)』第26巻第8号、2015年刊)。
これに加えて、基質細片内の繊維の不揃いな配置のせいで、また、iCellis(登録商標)の充填床ごとに細片の充填にばらつきがあるせいで、消費者が細胞培養性能を予測することが困難な場合があるが、これは培養ごとに基質が異なっているのが原因である。更に、細胞が充填床により捕捉されたままと考えられているとおり、iCellis(登録商標)の充填基質が細胞を効率的に収穫することを非常に困難にしている、いやむしろ、不可能にしている。
早期段階の臨床試験用のウイルス・ベクターの産生は既存のプラットフォームでも可能であるが、最新段階の商業生産規模に到達するには、高品質の産生物をより多く生産できるプラットフォームを必要とする。上述のように、既存の細胞培養プラットフォームは、不揃いで制御されていない構造または気孔率の接着細胞基質に依存しているため、不揃いな充填、チャネリング効果、細胞捕捉などが原因で、不均一かつ予測できさえしない基質構造と基質性能が生じる結果となる。充填床の基質マトリクスが均一であるか不揃いであるかに関わらず、充填床を通る流体の流れを所望どおりに制御するのは依然として困難となる場合があり、それにより、均一な細胞播種と細胞増殖分布、細胞培養培地の流れの均一性、および、収穫能力などのような細胞培養の多様な曲面で難儀を生じることになる。
高密度形式で細胞培養を行えるようにしながらも、細胞分布が均一で、容易に達成できるうえに増大した収穫量が得られて、また、播種、培養、収穫性能、または、それらの各種組合せを向上させる目的で充填床気孔率を制御することができる、充填床細胞培養マトリクス、そのシステム、および、その方法が必要である。
本件開示の一実施形態に従って、細胞を培養するための充填床バイオリアクタ・システムを提示する。該システムは、入口、出口、および、該入口と該出口の間の流体経路に流体連絡状態に接続され該経路中に配置された少なくとも1つの内部貯留器を含んでいる細胞培養容器と、該貯留器内に配置された細胞培養マトリクスであって、複数の細孔を画定している基質素材を用いた構造的に定められた基質を含んでいるとともに、該基質素材がそこに細胞を付着させるよう構成されている細胞培養マトリクスと、該細胞培養マトリクスの一部に設けられた少なくとも1つの透過性区域とを含んでいる。該少なくとも1つの透過性区域はその外側の該細胞培養マトリクスの標準透過性よりも高い透過性を有している。該透過性区域は該基質に開口を含んでおり、該開口は該複数の細孔のいずれの直径よりも大きい。
1つ以上の実施形態の各態様によると、上記細胞培養マトリクスは複数の層の上記基質を含んでいる。該複数の層の上記基質は各層が、規則正しく概ね均一な配列の細孔を含んでいるとよい。上記透過性区域は、該複数の層から成る、上記開口が設けられている多重層を含んでいる。該多重層の少なくとも一部に設けられている上記開口は、上記多重層のうちの少なくとも1層に設けられた開口のある部位とは異なる、上記細胞培養マトリクスの水平横断面の領域にあってもよい。上記開口が設けられている該多重層は各々が、開口配置が同じであってもよい。上記開口が設けられている該多重層の少なくとも一部は、上記開口が設けられている該多重層のうち少なくとも1層に相対的に回転させられていてもよいが、その場合、回転の中心は上記細胞培養マトリクスの長軸線である。更なる態様では、上記複数の層のうちの1層以上が上記基質に多重開口が設けられている。上記複数の層のうち、該多重開口が設けられているの該1層以上が、上記細胞培養マトリクスの長軸線を中心として回転対称性を呈しているとよい。
態様によっては、上記開口の形状は、長方形、正方形、円形、楕円形、円弧、および、三角形のうちの少なくとも1つを含んでいる場合もある。上記開口は、上記基質の端縁からその中心に向かって伸び広がっているとよい。実施形態によっては、上記システムは、上記入口と上記細胞培養マトリクスとの間に配備された流量分配板を更に含んでいるものもあり、その場合、上記入口および該流量分配板の配置は、上記入口を通って上記内部貯留器に入ってくる流体が該流量分配板を通り抜けるにあたり、上記内部貯留器の全幅に亘って多数の異なる速度で流れるように設定されており、また、上記細胞培養マトリクスの上記透過性区域が該流量分配板による多数の異なる速度を埋め合わせるように設計されていることで、上記細胞培養マトリクスを貫く灌流速度プロファイルは上記細胞培養マトリクスの全幅に亘って均一となる。
本件開示のもう1つ別の実施形態に従って、バイオリアクタ内で接着して増殖する細胞を培養するための細胞培養マトリクスを提示している。該細胞培養マトリクスは、複数の細孔を画定している基質素材を用いた構造的に定められた基質であって、該基質素材がそこに細胞を付着させるよう構成されている基質と、該細胞培養マトリクスの一部に設けられた少なくとも1つの透過性区域であって、その外側の該細胞培養マトリクスの標準透過性よりも高い透過性を有している透過性区域とを含んでいる。該透過性区域は該基質に開口を備えており、該開口は該複数の細孔のいずれの直径よりも大きい。
幾つかの実施形態の一態様として、上記細胞培養マトリクスは、複数の層の上記基質を含んでいるとよい。該複数の層の上記基質は各層が、規則正しく概ね均一な配列の細孔を備えているとよい。上記透過性区域は、該複数の層から成る、上記開口が設けられている多重層を含んでいてもよい。該多重層の少なくとも一部の上記開口は、上記多重層のうちの少なくとも1層に設けられた開口のある部位とは異なる、上記細胞培養マトリクスの水平横断面の領域にあるようにしてもよい。上記開口が設けられている該多重層は各々が、開口配置が同じであってもよい。上記開口が設けられている該多重層の少なくとも一部は、上記開口が設けられている該多重層のうちの少なくとも1層に相対的に回転させられていてもよいが、その場合、回転の中心は上記細胞培養マトリクスの長軸線である。上記複数の層のうちの1層以上は、上記基質に多重開口が設けられている。上記複数の層のうち、該多重開口が設けられている該1層以上は、上記細胞培養マトリクスの長軸線を中心として回転対称を呈していてもよい。上記開口は、長方形、正方形、円形、楕円形、円弧、および、三角形のうちの少なくとも1つの形状を有しているとよい。
本件開示の更なる態様は、部分的には、以下の詳細な説明、図面、および、添付の特許請求の範囲の請求項のいずれかに明示されているが、部分的には、詳細な説明から導き出されるか、または、本件開示を実施することで知ることができる。前述の一般的な説明と後段の詳細な説明はいずれも例示的かつ説明的なものに過ぎず、開示されているとおりに開示を限定するものではないものと解釈するべきである。
本件開示の1つ以上の実施形態による、細胞培養基質の3次元モデルの斜視図。 図1Aの基質の2次元平面図。 図1Bの基質の線A-Aに沿った縦断面図である。 幾つかの実施形態による、細胞培養基質の一例を示す図。 幾つかの実施形態による、細胞培養基質の一例を示す図。 幾つかの実施形態による、細胞培養基質の一例を示す図。 1つ以上の実施形態による、多重層細胞培養基質の斜視図。 1以上の実施形態による、多重層細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、図3Bの多重層細胞培養基質の線B-Bに沿った縦断面図。 1つ以上の実施形態による、図4の多重層細胞培養基質の線C-Cに沿った横断面図。 1つ以上の実施形態による、細胞培養システムの概略図。 1つ以上の実施形態による、細胞培養システムの概略図。 1つ以上の実施形態による、ロール状の円筒形構成の細胞培養マトリクスを示す図。 1つ以上の実施形態による、ロール状の円筒形構成の細胞培養マトリクスを組み込んだ細胞培養システムを示す図。 1つ以上の実施形態による、2つの透過性区域が設けられた細胞培養マトリクスの斜視図。 1つ以上の実施形態による、2つの透過性区域が設けられた細胞培養マトリクスの斜視図。 1つ以上の実施形態による、透過性区域が設けられた細胞培養マトリクスの斜視図。 1つ以上の実施形態による、実質上の導水路のない細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、実質上の導水路が複数設けられた細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、実質上の導水路が複数設けられた細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、実質上の導水路が複数設けられた細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、実質上の導水路が複数設けられた細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、実質上の導水路が複数設けられた細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、実質上の導水路が複数設けられた細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、図12Aの細胞培養基質に類似してはいるがその中心軸線まわりに約30°回転させた細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、図12Aおよび図12Bに由来する各細胞培養基質の積載体の平面図。 1つ以上の実施形態による、図12Aに由来する細胞培養基質の積載体の分解斜視図。 1つ以上の実施形態による、実質上の導水路が複数設けられた細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、図13Aの細胞培養基質に類似してはいるがその中心軸線まわりに約15°回転させた細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、図13Aの細胞培養基質に類似してはいるがその中心軸線まわりに約30°回転させた細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、図13Aの細胞培養基質に類似してはいるがその中心軸線まわりに約45°回転させた細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、図13Aないし図13Dに由来する各細胞培養基質の積載体の平面図。 1つ以上の実施形態による、図13Eに由来する細胞培養基質の積載体の分解斜視図。 1つ以上の実施形態による、流量分配板を通過した後の培地の流速プロファイルの不均一性を示す概略図。 1つ以上の実施形態による、特殊設計の透過性区域が設けられた充填床の流速プロファイルを示す図。 1つ以上の実施形態による、図14Aの流量分配板と集成された際の図14Bの充填床の、結果として生じる流れの均一性を示す図。 1以上の実施形態による、実質上の導水路が設けられていない細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、実質上の導水路が複数設けられた細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、実質上の導水路が設けられていない細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、図15Bの細胞培養基質に類似してはいるがその中心軸線まわりに約30°回転させた細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、実質上の導水路が設けられていない細胞培養基質の平面図。 1つ以上の実施形態による、図15Aないし図15Eに由来する各細胞培養基質の積層体の分解斜視図。 1つ以上の実施形態による、実質上の導水路が複数設けられた基質の積載体の概略平面図。 1つ以上の実施形態による、図16Aに由来する積載体の線A-Aにおける縦断面の写真。 1つ以上の実施形態による、細胞培養システムの概略図。
本発明の多様な実施形態について、図面がある場合にはそれらを参照しながら詳細に説明してゆく。多様な実施形態への言及は本発明の範囲を限定するものではなく、発明の範囲は本明細書に添付されている特許請求の範囲によってのみ限定される。加えて、本明細書に明示されている例はいずれも限定的なものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の多数の考えられ得る実施形態の一部を明示するにすぎない。
本件開示の各実施形態は、充填床細胞培養基質は元より、そのような充填床基質を組み込んだ細胞培養システムまたはバイオリアクタ・システム、ならびに、そのような充填床基質およびバイオリアクタ・システムを使用して細胞を培養する方法である。
従来の大規模細胞培養バイオリアクタでは、様々なタイプの充填床バイオリアクタが使用されてきた。通常、これらの充填床には多孔質基質またはそのマトリクスが含まれていることで、付着細胞または浮遊細胞を保持し、また、成長と増殖を支援するよう図っている。充填床マトリクスは体積に対する表面積の比率が高いため、他のシステムよりも細胞密度を高くすることができる。しかし、充填床は深層部濾過器として機能することが多く、その場合、細胞がマトリクスの繊維に物理的に捕捉されたり絡み取られたりする。従って、充填床を通る細胞接種材料の直線的な流れが原因で、細胞は充填床内で不均一に分布し、充填床の全深度または全幅に亘る細胞密度にばらつきが生じることとなる。例えば、細胞密度はバイオリアクタの入口領域ほど高く、バイオリアクタの出口に近づくほどかなり低くなる。充填床内の細胞のこのような不均一な分布は、バイオプロセス産生における上述のようなバイオリアクタの拡張性と予測可能性を著しく妨げるうえに、充填床の単位表面積あたり、または、単位体積あたりの細胞の増殖またはウイルス・ベクター産生物の増殖という点では効率の低下につながることにさえなりかねない。
従来技術で開示されている充填床バイオリアクタで遭遇するもう1つ別の問題がチャネリング効果である。詰込まれた不織繊維が不揃いな性質であるせいで、充填床のどの所与の断面においても局所的な繊維密度は均一ではなくなる。培地は、繊維密度が低い(充填床の透過性が高い)領域では速く流れるが、繊維密度が高い(充填床の透過性が低い)領域では遥かにゆっくり流れる。その結果として生じる、充填床全体に亘って不均一な培地灌流がチャネリング効果を生じ、それ自体は栄養素および代謝物の顕著な勾配として現れるが、細胞培養全体およびバイオリアクタの性能全体に悪影響を与える。培地の灌流量が低い領域にある細胞は飢餓状態になり、栄養素の不足や代謝物中毒により死ぬことがよくあります。不織繊維の足場を詰め込んだバイオリアクタを使用する場合、細胞収穫がさらに別の問題に直面する。充填床が深層部濾過器として機能するせいで、細胞培養処理過程の最後に放出された細胞が充填床内に捕捉されてしまい、細胞回収率が非常に低くなる。これにより、生細胞が産生物となるバイオプロセスにおける上記のようなバイオリアクタの活用が著しく制約されてしまう。従って、不均一性により、流れや剪断に晒される領域が異なってくるため、使用可能な細胞培養領域が事実上減少し、不均一な培養が引き起こされ、トランスフェクション効率と細胞放出の妨げとなる。
既存の細胞培養溶液の上記およびそれ以外の諸問題に対処する目的で、本件開示の各実施形態は、細胞増殖用の各種基質、そのような各種基質の充填床マトリクス、足場依存細胞の効率的かつ高収率の細胞培養を可能にするとともに細胞産生物(例えば、蛋白質、抗体、ウイルス粒子など)の生産を可能にするような基質を利用する各種の充填床システム、または、それらの各種組合せを提示している。各実施形態は、均一な細胞播種および培地・栄養素の灌流は元より効率的な細胞収穫を可能にする、多孔質基質素材の規則正しく整然とした配列から作られた多孔質細胞培養マトリクスを含んでいる。各実施形態はそれらの均一性性能を犠牲にすることなく、プロセス開発規模から十分な生産量規模まで、細胞を播種および増殖させることができ、細胞産生物を回収することができ、または、その両方を実施することができる各種の基質とバイオリアクタを用いて拡張可能な細胞培養の改良案を実施できるようにしている。例えば、実施形態によっては、バイオリアクタは、生産規模全般に亘り基質の単位表面積あたり同等のウイルス・ゲノム(VG/cm)を利用して、プロセス開発規模から生産規模へと容易に規模拡張することができるものもある。本明細書の各実施形態の収穫能力と拡張性により、同じ細胞基質で細胞集団を数倍規模で増殖させるための効率的なシード・トレインでそれら両方の能力を利用することができるようになる。加えて、本明細書の各実施形態は、記載された上記以外の特徴と組み合わせて、高収率の細胞培養の解決策を実施できるようにする大きな表面積を有する細胞培養マトリクスを提示している。実施形態によっては、例えば、本明細書で論じている細胞培養基質、バイオリアクタ、または、その両方は、1回分(1バッチ)あたりウイルス・ゲノム(VG)数にして1016vgないし1018vgを産生することができるものもある。各実施形態は、細胞培養マトリクスを通る流体の流れと言う点については、充填床の全般的性能を制御する方法として、区域気孔率が制御されているとともに充填床を通る実質上の導水路が画定されている充填床細胞培養マトリクスをも含んでいる。充填床内に多様な気孔率の複数区域を形成することができるこの能力により、例えば、細胞播種の均一性、培地灌流の均一性、細胞培養と細胞増殖の均一性、細胞収穫などが向上することとなる。
一実施形態では、マトリクスには、付着細胞が付着して増殖するための構造的に定められた表面積が設けられており、そこは良好な機械的強度を有しているとともに、充填床またはそれ以外のバイオリアクタに集成された際に、非常に均一な多数の相互接続された流体ネットワークを形成する。本明細書で使用する場合、「構造的に定められた」とは、不揃いで不規則的な構造とは対照的に、定められた規則的な構造を有する基質またはマトリクスを意味する。例えば、不織基質は不揃い、不規則、または、その両方であると考えられる。構造的に定められたマトリクスまたは基質では、気孔率、繊維の寸法と配向、更には、基質素材の別個の細片の配向さえも設計および制御することができる。
特定の各実施形態では、機械的に安定で非分解性の織物メッシュを、付着細胞産生を支援するための基質として使用するとよい。本明細書に開示している細胞培養マトリクスは、足場依存性細胞の付着および増殖を高体積密度形式で支援する。このようなマトリクスへの均一な細胞播種は、細胞またはそれ以外のバイオリアクタ産生物の効率的な収穫と同様に達成することができる。加えて、本件開示の各実施形態が細胞培養を支援することで、接種工程中に均一な細胞分布を提供するとともに、開示されているマトリクス上で接着細胞の密集単層または密集多重層を達成し、各実施形態はまた、栄養素の拡散を制限するとともに代謝産物濃度を増大させることで、大きな、制御不能な、または、その両方の3次元細胞凝集塊の形成を回避することができる。従って、マトリクスはバイオリアクタの作動中の拡散制限を排除する。加えて、マトリクスにより、バイオリアクタからの細胞収穫が簡単かつ効率的に行えるようになる。1つ以上の実施形態の構造的に定められたマトリクスは、完全な細胞回収を行えるようにし、また、バイオリアクタの充填床からの着実な細胞収穫を行えるようにする。
実施形態によっては、治療用蛋白質、抗体、ウイルス・ワクチン、または、ウイルス・ベクターのバイオプロセシング産生のためのマトリクスを備えているバイオリアクタを使用する細胞培養法を提示しているものもある。
細胞培養バイオリアクタで使用される既存の細胞培養基質(すなわち、無秩序に整えた繊維の不織基質)とは対照的に、本件開示の各実施形態は、定められた規則的な構造を有する、構造的に定められた細胞培養基質を含んでいる。定められた規則的な構造により、むらが無く予測可能な細胞培養の成果が得られる。加えて、基質は開放多孔質構造を有しており、これにより細胞の捕捉を防ぐとともに充填床を通る流れを均一にすることができる。この構造により、細胞の播種、栄養素の送達、細胞の増殖、および、細胞の収穫を向上させることができる。1つ以上の特定の実施形態によれば、マトリクスは、第1面および第2面が比較的小さい厚みで分離された薄いシート状構造を有している基質素材で形成されていることで、該シートの厚みが基質の第1面および第2面の幅、長さ、または、その両方に対して小さくなるよう図っている。加えて、複数の穴または開口が基質の厚みを貫通して形成されている。開口間の基質素材は、それがほぼ2次元(2D)表面であるかのように細胞が接着することができる寸法と形状を持ち、同時に基質素材の周囲および各開口を通過する流体の流れが適切になることができるようにする寸法と形状を持つ。実施形態によっては、基質は重合体から作られる素材であり、成形重合体シートとして形成されるか、パンチング処理により厚みを貫通する多数開口が設けられた重合体シートとして形成されるか、多数の線条物を融合によりメッシュ状の層に形成されるか、3次元印刷加工された基質に形成されるか、または、多数の線条物を織加工したメッシュ層として形成されるものもある。マトリクスの物理的構造は、足場依存性細胞を培養するのに適するように面積対体積比を高くしてある。多様な実施形態に従って、均一な細胞播種と細胞増殖、均一な培地灌流、および、効率的な細胞収穫を目的として、マトリクスは本明細書で論じる特定の各種方法でバイオリアクタ内に配置または充填されているとよい。
本件開示の各実施形態は、バッチあたり約1014個より多数のウイルス・ゲノム規模で、バッチあたり約1015個より多数のウイルス・ゲノム規模で、バッチあたり約1016個より多数のウイルス・ゲノム規模で、バッチあたり約1017個より多数のウイルス・ゲノム規模で、バッチあたり最大約1018個までのウイルス・ゲノム規模、または、約1018個より多数のウイルス・ゲノム規模でウイルス・ゲノムを産生することができる実用的な寸法のウイルス・ベクター・プラットフォームを達成することができる。実施形態によっては、産生率が1バッチあたり約1015ないし約1018以上のウイルス・ゲノムであるものもある。例えば、実施形態によっては、ウイルス・ゲノム収量は、1バッチあたり約1015個ないし約1016個のウイルス・ゲノム、1バッチあたり約1016個ないし約1019個のウイルス・ゲノム、1バッチあたり約1016個ないし約1018個のウイルス・ゲノム、1バッチあたり約1017個ないし約1019個のウイルス・ゲノム、1バッチあたり約1018個ないし約1019個のウイルス・ゲノム、または1バッチあたり約1018個以上のウイルス・ゲノムにするとよいものもある。
加えて、本明細書に開示されている各実施形態は、細胞培養基質への細胞付着と細胞増殖だけではなく、培養細胞の生存可能な収穫も行えるようにする。生存細胞を収穫できないことが現在のプラットフォームの重大な欠陥であり、生産能力に十分な数の細胞を構築および維持することが困難となる。本件開示の各実施形態の一態様によれば、80%ないし100%の生存率、もしくは、約85%ないし約99%の生存率、または、約90%ないし約99%の生存率などの生存細胞を細胞培養基質から収穫することが可能である。例えば、収穫される細胞のうち、少なくとも80%が生存できる、少なくとも85%が生存できる、少なくとも90%が生存できる、少なくとも91%が生存できる、少なくとも92%が生存できる、少なくとも93%が生存できる、少なくとも94%が生存できる、少なくとも95%が生存できる、少なくとも96%が生存できる、少なくとも97%が生存できる、少なくとも98%が生存できる、または、少なくとも99%が生存できる。細胞は、例えば、トリプシン、TrypLE、または、Accutaseを使用して細胞培養基質から放出されるとよい。
図1Aおよび図1Bはそれぞれ、本件開示の1つ以上の実施形態の一例による、細胞培養基質100の3次元(3D)斜視図および2次元(2D)平面図を示している。細胞培養基質100は、第1の方向に延びる第1の複数の繊維102と、第2の方向に延びる第2の複数の繊維104とからなる織メッシュ層である。基質100の織り加工された繊維は複数の開口106を形成しており、該開口は1種類以上の幅または直径(例えば、D、D)によって定めることができる。開口の寸法および形状は、織り加工の種類(例えば、線条の数、形状、および、寸法、交差する線条間の角度など)に基づいて変動させることができる。織メッシュは、マクロ規模では、2次元のシートまたは2次元層と特徴付けられる。しかし、織メッシュを詳しく観察すると、メッシュの交差する繊維が浮き沈みするせいで3次元構造が露呈する。従って、図1Cに示すように、織メッシュ100の厚さTは、一本の繊維の厚さ(例えば、t1)より厚くなる。本明細書で使用される場合、厚さTは、織メッシュの第1面108と第2面110との間の最大厚さである。理論に束縛されるものではないが、基板100の3次元構造は、接着細胞を培養するための表面積を広くするのに有利であるうえに、メッシュの構造的剛性により、流体の流れを均一にすることができる、むらが無く予測可能な細胞培養マトリクス構造をもたらすことができると考えられる。
図1Bでは、開口106は、対向する繊維102相互間の距離と定義される直径Dと、対向する繊維104相互間の距離と定義される直径D2を有している。織りの幾何学的形状に応じて、DとDは等しくてもよいし、等しくなくてもよい。DとDが等しくない場合、大きい方を長径、小さい方を短径と呼ぶ。実施形態によっては、開口の直径は、開口の最も広い部分を指しているものもある。別段の指定がない限り、本明細書で使用される場合、開口の直径は、開口の対向する両側の平行な繊維間の距離を指すことになる。
複数の繊維102のうちの所与の繊維は太さtを有し、複数の繊維104のうちの所与の繊維は太さtを有している。図1Aに示すような円形横断面の繊維、または、それ以外の各種3次元横断面の繊維の場合、太さtおよび太さtは繊維横断面の最大直径または最大厚さである。実施形態によっては、複数の繊維102はすべて同じ太さtを有し、複数の繊維104はすべて同じ太さtを有しているものもある。なお、tとtは等しくても構わない。しかしながら、1つ以上の各実施形態において、複数の繊維102が複数の繊維104とは異なっているなどのような場合は、tおよびtは等しくない。加えて、複数の繊維102および複数の繊維104は各々が、2種類以上の異なる太さ(例えば、t1a、t1bなど、および、t2a、t2bなど)を有していても構わない。各実施形態に従って、太さtおよび太さtは、その上で培養される細胞の寸法に比べて大きいため、繊維は細胞の観点からほぼ平坦な表面を提供しており、これにより、線維寸法が小さい(例えば、細胞径の規模で)上記以外の改良案と比較した場合、より良好な細胞付着および細胞増殖を行うことができると推察される。図1Aないし図1Cで分かるように、織メッシュの3次元特性が原因で、細胞付着および細胞増殖に利用できる繊維の2D表面積は、これと均等な平坦な2D表面上の付着表面積を超えて広い。
1つ以上の実施形態で、繊維は約50μmないし約1000μmの範囲の直径を有していることもあり、約100μmないし約750μmの範囲、約125μmないし約600μmの範囲、約150μmないし約500μmの範囲、約200μmないし約400μmの範囲、約200μmないし約300μmの範囲、または、約150μmないし約300μmの範囲の直径を有していることもある。マイクロ級微小規模レベルでは、細胞と比較した繊維の規模(例えば、繊維の直径が細胞よりも大きい)が原因で、単一線条繊維の表面は、接着細胞が付着して増殖するための2次元表面の近似としているように表示されている。繊維は織り加工により、約100μm×100μmないし約1000μm×1000μmの範囲の開口が設けられたメッシュになっているとよい。実施形態によっては、開口の直径は約50μmないし約1000μmであるとよく、約100μmないし約750μm、約125μmないし約600μm、約150μmないし約500μm、約200μmないし約400μm、または、約200μmないし約300μmであってもよい。線条径および開口径のこれらの範囲は、幾つかの実施形態の例であるが、全ての実施形態によるメッシュの考えられる特徴的寸法を制約することを意図するものではない。繊維径と開口径の組合せは、例えば、細胞培養マトリクスが多数の隣接するメッシュ層(例えば、個別の複数層の積載体、または、ロール状メッシュ層)から成る場合は、基質を通る効率的かつ均一な流体の流れをもたらすように選択される。
繊維径、開口径、織りの種類、織りのパターンなどのような各種要因により、細胞の付着と増殖に利用できる表面積が決まる。加えて、細胞培養マトリクスが積載体、ロール、または、それ以外の、重なり合う基質の配置などを含んでいる場合、細胞培養マトリクスの充填密度は充填床マトリクスの表面積に影響を与えることになる。充填密度は、基質素材の充填厚さ(例えば、基質の層に必要な空間)に伴って変動することがある。例えば、細胞培養マトリクスの積載体が特定の高さを持つ場合、積載体の各層は、積載体の全高を積載体内の層の数で除算することによって決定される充填厚さを有すると言える。充填厚さは繊維径と織り方によって異なってくるが、積載体内の隣接する層の整列状態によっても変わる場合がある。例えば、織物層の3次元的な性質が原因で、隣接する層が互いの整列状態に基づいて調整し合うことができる或る程度の噛み合いまたは重なりが存在する。最初の列調整では、隣り合う層をきっちりと連ならせることができても、2番目の列調整では、上層の最下点が下層の最上点と直接接触している場合など、隣り合う層との重なりがゼロになることがある。特定の適用例については、層の充填密度が低い(例えば、より高い透過性が優先される場合の)細胞培養マトリクス、または、充填密度が高い(例えば、基質表面積の最大化が優先される場合)細胞培養マトリクスを供与することが望ましい場合がある。1つ以上の実施形態によれば、充填厚さは約50μmないし約1000μmであるとよいが、約100μmないし約750μm、約125μmないし約600μm、約150μmないし約500μm、約200μmないし約400μm、約200μmないし約300μmであってもよい。
単層の細胞培養基質の細胞培養マトリクスであろうと、多重層の基質を有する細胞培養マトリクスであろうと、その表面積を上記の各構造因子が決定することができる。例えば、特定の実施形態では、円形形状で直径が6cmの織メッシュ基質の単層は、約68cmの有効表面積を有しているとよい。本明細書で使用される場合の「有効表面積」とは、細胞の付着と増殖に利用できる基質素材の一部における繊維の総表面積である。別途言及されていない限り、「表面積」への言及はこの有効表面積を指す。1つ以上の実施形態によれば、直径6cmの織メッシュ基質単一層は、約50cmないし約90cmの有効表面積を有しているとよいが、約53cmないし約81cm、約68cm、約75cm、または、約81cmを有していてもよい。これらの有効表面積の範囲は例として提供されているにすぎず、実施形態によってはこれらと異なる有効表面積を有していてもよい。細胞培養マトリクスは、本明細書の実施例の項目で論じるように、気孔率の観点から特徴付けることもできる。
基質メッシュは、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン・テレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン・オキシド、ポリピロール、ポリプロピレン・オキシドなどのような細胞培養の応用例に適合する各種重合体素材の単線条または多線条の繊維から製造することができる。メッシュ基質は、例えば、編み加工、縦編み加工、または、織り加工などの(例えば、平織り、綾織り、オランダ織り、五本針織り)、多様なパターンまたは織りを有していてもよい。
望ましい細胞接着特性をもたらすには、メッシュ線条の表面化学を改質することが必要になる場合がある。このような改質は、メッシュの重合体素材の化学処理によって、または、細胞接着分子を線条表面に移植することにより実施することができる。これに代わるものとして、メッシュを、例えば、コラーゲンまたはMatrigel(登録商標)などのような細胞接着特性を示す生体適合性ヒドロゲルの薄層で被膜するようにしてもよい。これに代わるものとして、メッシュの線条繊維の表面は、業界で周知の多様な種類のプラズマ、プロセス・ガス、化学物質、または、これらの各種組合せを用いた処理加工法により細胞接着特性を与えるようにしてもよい。しかしながら、1つ以上の実施形態で、メッシュは、表面処理を行わずに効率的な細胞増殖表面を供与することができる。
図2Aないし図2Cは、本件開示の幾つかの熟考を重ねた実施形態による織メッシュの上記とは異なる例を示している。これらのメッシュの繊維径と開口寸法を後段の表1にまとめるとともに、これらに匹敵する2次元表面と比較したそれぞれのメッシュの単層によってもたらされる細胞培養表面積増大のおおよその規模も示す。表1では、メッシュAは図2Aのメッシュを指し、メッシュBは図2Bのメッシュを指し、メッシュCは図2Cのメッシュを指している。表1の3つのメッシュ形状は具体例にすぎず、本件開示の各実施形態はこれら特定の例に限定されない。メッシュCの供する表面積が最も大きいため、細胞の接着と増殖において高密度を達成するのに有利であり、従って、細胞培養に最も効率的な基質を供与している。しかしながら、実施形態によっては、細胞培養マトリクスが、培養チャンバ内で所望の細胞分布または所望の流れ特性を達成するためには、メッシュAまたはメッシュBなどのような、表面積がより狭いメッシュ、または、多様な表面積のメッシュの組合せを含んでいることが有利となるものもあり、以下に事例を示す。
Figure 2024501108000002
上段の表に示されているように、メッシュの3次元品質により、同等の寸法の平坦な2次元表面と比較した場合の、細胞の付着と増殖のための表面積増加をもたらす。この表面積増加は、本件開示の各実施形態により達成される拡張可能な性能の助けとなる。プロセス開発およびプロセス検証を研究するには、試薬経費を節約しつつ実験スループットを向上させるために、小規模バイオリアクタが必要になることがよくある。本件開示の各実施形態は、そのような小規模な研究に適用可能であり、産業規模または生産規模に規模拡張することも同様に可能である。例えば、100層の直径2.2cmの円形のメッシュCを内径2.2cmの円筒形充填床に詰め込むと、細胞が付着して増殖するために利用できる総表面積は約935cmに等しくなる。このようなバイオリアクタを10倍に規模拡張するとすれば、内径7cmで100層の同じメッシュを詰めた円筒形充填床というよく似た段取り一式を使用するとよい。そのような場合、総表面積は9,350cmに等しくなる。実施形態によっては、利用可能な表面積は約99,000cm/L以上である。充填床内の灌流が栓流式の流れであるせいで、充填床の断面表面積の単位ml/min/cmで表されるのと同一流量を、小規模版バイオリアクタと大規模版バイオリアクタで利用することができる。より大きな表面積により、より高い播種密度とより高い細胞増殖密度が得られるようになる。1つ以上の実施形態に従って、本明細書に記載の細胞培養基質は細胞数が最大22,000個/cm以上の細胞播種密度を実証している。参考までに、Cоrning HyperFlask(登録商標)は2次元表面で細胞数にして約20,000個/cmの播種密度である。
より広い表面積、および、より高い細胞播種密度または細胞増殖密度のもう1つ別の利点は、本明細書に開示されている各実施形態の経費が競合する解決策と同額かそれより廉価になり得ることである。具体的には、細胞産生物1単位あたり(例えば、細胞1個あたりまたはウイルス・ゲノム1個あたり)の経費は、他の充填床バイオリアクタと同等かそれより廉価にすることができる。
以下に論じる本件開示の更なる実施形態では、織メッシュ基質をバイオリアクタ内で円筒ロール形式に詰めることができる(図8および9を参照のこと)。このような実施形態では、充填床バイオリアクタの拡張性は、メッシュ細片の全長およびその高さを増大させることにより達成することができる。この円筒ロール構成で使用されるメッシュの量は、充填床の所望の充填密度に基づいて変動させることができる。例えば、円筒形ロールは、きつく締めたロールに密に詰めることも、緩く締めたロールに緩く詰めることもできる。充填密度は、多くの場合、所与の適用例または規模に必要な細胞培養基質の所要表面積によって決まる。一実施形態では、メッシュの必要な長さは、次の式を使って充填床バイオリアクタの直径から算定することができる。
Figure 2024501108000003
ここでは、Lはバイオリアクタを充填するのに必要なメッシュの全長(すなわち、図8のH)、Rは充填床培養チャンバの内径、rはメッシュをロール状に巻く中心となる内部支持体(図9の支持体366)の半径であり、tはメッシュの 1 層の厚さである。このような構成では、バイオリアクタの拡張性は、充填床円筒ロールの直径または幅(すなわち、図8のW)を大きくすること、充填床円筒ロールの高さHを増やすこと、または、その両方によって達成することができ、従って、接着細胞を播種して増殖させるのにより広い基質表面積を供与することになる。
十分な剛性を備えた構造的に定められた細胞培養マトリクスを使用することにより、マトリクスまたは充填床全体に亘る高い流れ抵抗の均一性が達成される。多様な実施形態によれば、マトリクスは単層形式または多重層形式で配備することができる。この柔軟性により、拡散の制限がなくなり、マトリクスに付着した細胞に栄養素と酸素が均一に送達される。加えて、開放系マトリクスは充填床構成中に細胞捕捉領域が皆無であるため、培養終了時に高い生存率で完全な細胞収穫を行うことができるようになる。このマトリクスはまた、充填床の包装均一性を実現し、プロセス開発ユニットから大規模な産業用バイオプロセス・ユニットへの直接的な拡張性を可能にしている。充填床から細胞を直接収穫できるため、複雑さが増すうえに細胞に有害な剪断応力を与える恐れのある攪拌容器や機械振動に付される容器内でマトリクスを再懸濁する必要がなくなる。更に、細胞培養マトリクスの高い充填密度により、工業規模で管理可能な量で高いバイオプロセス生産性が得られる。
図3Aは、多重層基質200を有するマトリクスの実施形態を示しており、図3Bは同じ多重層基質200の平面図である。多重層基質200は、第1メッシュ基質層202と第2メッシュ基質層204とを含んでいる。第1基質層202および第2基質層204の重なりにも関らず、メッシュ形状(例えば、開口径の繊維径に対する比)は、第1基質層202の開口および第2基質層204の開口が重なり合って、多重層基質200の全厚さを通り抜けて流体が流れる経路を供与するようになっているが、これは図3Bに線条のない開口206によって示されている通りである。
図4は、図3Bの線B-Bにおける多重層基質200の縦断面図を示している。矢印208は、第2基質層204の開口を通過した後で第1基質層202の線条の周辺を通る、考えられ得る流体流れの経路を示している。メッシュ基質層の幾何学的形状は、1つ以上の基質層を通り抜ける効率的かつ均一な流れを可能にするように設計されている。加えて、マトリクス200の構造は、多数配向でマトリクスを通る流体流れに適応することができる。例えば、図4に示すように、バルク流体流れの方向(矢印208で示すような)は、第1基質層202および第2基質層204の主表面に対して直交している。しかしながら、マトリクスは流れに関するその配向を、両基質層の主表面がバルク流れの方向と平行になるように設定することもできる。図5は、図4の線C-Cに沿った多重層基質200の横断面図を示しており、マトリクス200の構造により、多重層基質200内で流体経路を通る流体流れ(矢印210)が可能になる。メッシュ層の第1主表面および第2主表面に直交するまたは平行である流体流れに加えて、マトリクスはその中間の角度で基質の多重細片を配置するようにしてもよいし、或いは、流体流れに関しては不揃いの配置にしてさえかまわない。このような配向の柔軟性は、織り基質の本質的に等方性の流れ挙動により可能となる。これとは対照的に、既存のバイオリアクタの接着細胞用の基質はこの挙動を示さず、その代わりに既存のバイオリアクタの充填床が優先的な流れの導水路を形成して基質素材が異方性透過性を示す傾向がある。本件開示のマトリクスの柔軟性により、バイオリアクタ容器全体に亘りより良好でより均一な透過性を可能にしながら、多様な適用例とバイオリアクタ設計または容器設計においてマトリクス使用が可能となる。
本明細書で論じてきたように、1つ以上の実施形態によれば、細胞培養基質はバイオリアクタ容器内で使用することができる。例えば、基質は、充填床バイオリアクタ構成で使用されてもよいし、3次元培養チャンバ内に他の構成で使用されてもよい。しかしながら、各実施形態は3次元培養空間に限定されず、基質は、1層以上の基質が平らに置かれる、例えば、平底の培養皿などのような2次元培養表面構成にすることで細胞の培養表面を供与すると考えられるものにおいて使用されるとよいと思料される。汚染の懸念があるせいで、容器は使用後に廃棄できる使い捨て容器にするとよい。
1つ以上の実施形態に従って、細胞培養マトリクスがバイオリアクタ容器の培養チャンバ内で使用される細胞培養システムを提示する。図6は、バイオリアクタ容器302を備えている細胞培養システム300であって、細胞培養チャンバ304がバイオリアクタ容器302の内部に含んでいる一例を示しているが。細胞培養チャンバ304の内側には、複数の基質層308の積載体から成る細胞培養マトリクス306がある。基質層308は、いずれの1層であれその第1主面または第2主面がそこに隣接している基質層の第1主面または第2主面に対面するように積載されている。バイオリアクタ容器300はその一端に入口310が設けられていることで、培地、細胞、栄養素、または、その各種組合せを培養チャンバ304に投入するよう図っており、また、その反対端に出口312が設けられていることで、培地、細胞、または、細胞産生物を培養チャンバ304から除去するよう図っている。この方法で各基質層を積載できるようにすることで、該システムは細胞接着と細胞増殖に悪影響を及ぼさずに容易に規模拡張することができるが、これは、定められた構造と、積載された各基質を通り抜ける効率的な流体流れのおかげである。容器300は、入口310および出口312が設けられているものと概説されてもよいが、実施形態によっては、培地、細胞、または、それ以外の内容物を培養チャンバ304に流入と流出の両方を実施させるために入口310と出口312の一方または両方を使用するようにしたものもある。例えば、入口310は、細胞播種段階、灌流段階、または、培養段階の持続中に培地または細胞を培養チャンバ304に流入させるために使用することができて、尚且つ、収穫段階では、入口310はそこを通して培地、細胞、および、細胞産物のうちの1種以上を除去するためにも使用することができる。従って、「入口」および「出口」という用語は、それぞれの開口の機能を制約することを意図したものではない。
1つ以上の各実施形態では、充填床の流れ抵抗および体積密度は、異なる幾何学的形状の基質層を交互に配置することによって制御することができる。特に、メッシュの寸法と形状(例えば、繊維径、開口径、開口形状、または、その各種組合せ)は、充填床の形式における流体流れ抵抗を規定する。異なる寸法と形状のメッシュを介在させて配置することにより、バイオリアクタの1つ以上の特定の部分で流れ抵抗を制御したり、変動させることができる。これにより、充填床内の液体灌流の均一性をより良好にすることができる。例えば、10層のメッシュA(表 1)に続いて10層のメッシュB(表1)、更にそれに続いて10層のメッシュC(表1)を積載することで、所望の充填床特性を達成することができる。もう1つ別の例として、充填床は10層のメッシュBで始まり、これに50層メッシュCが続き、更にこれに10層のメッシュBが続く。このような繰り返しパターンが、バイオリアクタ全体がメッシュで充填されてしまうまで継続するようにするとよい。これらは具体例にすぎず、考えられ得る組合せに制約を加えることを意図せずに例証するために利用されている。実際、細胞増殖表面の体積密度と流れ抵抗の様々なプロファイルを得るのに、異なる寸法のメッシュの多様な組合せが考えられる。例えば、多様な細胞体積密度の区域(例えば、低-高-低-高-などの密度パターンを作り出している一連の区域)が設けられた充填床カラムは、異なる寸法のメッシュを交互に配置することによって集成するとよい。以下で説明するように、充填床の全体または一部を通る導水路を設けることにより、可変気孔率の区域を設けるようにしてもよい。
図6では、バルク流れの方向は入口310から出口312に向かう方向であり、この例では、基質層308の第1主面および第2主面はバルク流れの方向に直交している。これと対照的に図7に示される例の実施形態では、システム320は培養空間324内にバイオリアクタ容器322と基質328の積載体を含んでおり、基質はそれぞれの第1主面と第2種面がバルク流れ方向に平行に設けられており、この方向は入口330に入って出口332から出る流れラインによって示された方向と一致している。このように、本件開示の各実施形態のマトリクスは、いずれの構成でも使用することができる。システム300およびシステム320において、その各々の基質308および基質328は寸法と形状が、培養チャンバ304および培養チャンバ324によって画定された内部空間を満たすように設定されているため、各容器内の培養空間は、細胞増殖面が単位体積あたりの細胞個数に関しての効率を最大にするように満たされている。図7は多数の入口330および多数の出口332を示しているが、システム320が単一の入口により供給され、出口を1つのみ有していてもよいと思料される。しかし、本明細書の多様な実施形態によれば、分配板を使用して、充填床の縦断面に亘って培地、細胞、または、栄養素を分配するのを助け、従って、充填床を通る流体流れの均一性を向上させることができる。そのため、多数の入口330は、より均一な流れを生成するために分配板にどのようにして充填床の断面に亘って複数の穴を設けるとよいかを表している。
図8は、基質が円筒ロール350に形成されるマトリクスの実施形態を示している。例えば、メッシュ基質352を含んでいるマトリクス素材のシートは、中心長軸線yを中心として円筒状に巻かれる。円筒ロール350は、中心長軸線yに直交する寸法に沿って幅Wを有し、中心長軸線yに直交する方向に沿って高さHを有している。1つ以上の好ましい実施形態では、円筒ロール350がバイオリアクタ容器内にあるように設計されるにあたり、円筒ロールを収容するバイオリアクタまたは培養チャンバを通る流体のバルク流れFの方向と中心長軸線yが平行になるようにされる。図9は、そのような円筒ロール構成で細胞培養マトリクス364を収容するバイオリアクタ容器362を有する細胞培養システム360を示している。図8の円筒ロール350と同様に、細胞培養マトリクス364は、図9では紙面内に延びる中心長軸線を有している。システム360は中心支持部材366を更に含んでおり、該部材を取り巻いて細胞培養マトリクス364が配置されている。中心支持部材366は、純粋に細胞培養マトリクス364の物理的支持、整列、または、その両方のために設けられているとよいが、実施形態によっては、それ以外の諸機能を提供することができるものもある。例えば、中心支持部材366には1つ以上の開口が設けられていることで、マトリクスの長さHに沿って細胞培養マトリクス364に培地を供給するよう図ってもよい。他の実施形態では、中心支持部材366には1つ以上の取付部位を含んでいることで、円筒ロールの内側部分で細胞培養マトリクス364の1つ以上の部分を保持することができるように図っている。これらの取り付け部位は、フック、クラスプ留め具、支柱部材、クランプ部材、または、これら以外の、メッシュシートを中心支持部材366に取り付ける手段であってもよい。
先に論じたように、図3Aないし図9に示すものなどのような充填床細胞培養マトリクスは、その均一で、むらが無く、予測可能で、または、その全部を兼ね備えた構造的に定められた基質のおかげで、多くの性能上の利点をもたらすことができる。本明細書に開示されている実施形態によっては、そのような細胞培養マトリクスは、充填床の幅、高さ、または、その両方の全体に亘ってむらが無い気孔率と構造を有している。例えば、図6に示されるように、基質層308は各々が均一かつ概ね同一の構造(例えば、基質層308全体に途切れのない織りを有する織物円盤)を有しているとよい。これは、充填床全体でむらが無く均一な流体流れを達成するのに役立つ。しかしながら、場合によっては、所望の方法で充填床を通る流体流れを制御するために、充填床の全部または一部の気孔率と構造を変えることが望ましい場合がある。従って、本件開示の各実施形態は充填床マトリクスを含んでおり、当該充填床マトリクスの1つ以上の定められた透過性区域が残余の領域のものとは異なる気孔率、透過性、または、その両方を有している。これらの実施形態のうちの一部の態様として、細胞培養マトリクスの特定領域の流れを増大させるために事実上の導水路が設けられ、従って、上記のような透過性区域を設けている。
本明細書で使用される場合、「透過性区域」は、不変の細胞培養基質のみを含んでいる細胞培養マトリクスの部分とは対照的に、定められた領域におけるマトリクスの透過性または気孔率を高めるように細胞培養基質を変質させた、細胞培養マトリクスの一部と定義される。細胞培養マトリクスは、そうしなければ細胞培養基質の均一で規定どおりで規則的な構造が途絶されることで、不変の部位とは対照的に変質部位の透過性または気孔率を増大させている場合に「変質した」と見なされる。このような変質は、基質素材の各部を除去することにより(例えば、基質素材を切り取ること、基質素材に多数の空隙が成形されていること、溶解可能な基質の各部の溶解を制御すること、または、それ以外の何らかの方法、例えば、3D印刷などのような方法により作製された基質素材に多数の空孔を残存させることにより)達成されるとよい。「変質した」という用語は、基質素材が元の形状から変化する暫定性を暗示していることもあるが、本件開示の文脈範囲では、「変質した」は、細胞培養基質の規定の均一な構造に何であれ変化があることを意味し、そのような変化が、基質素材それ自体が作製された時点で生じたものなのか、それとも、そのような変化が、基質素材が既に作製完了状態になった後でそれを変化させることで達成されるかの如何を問わない。換言すると、この変質の結果として、基質素材またはマトリクスに開口が生じ、その寸法はマトリクスの構造的に定められた細胞培養基質の平均細孔径よりも大きい。細胞培養基質の「不変の」領域とは、どの部位であれ、構造的に定められた基質の規定の規則的な構造を有し、その構造に何らの変質も途絶も伴わない、細胞培養基質の部分を意味すると解釈するべきである。透過性区域は細胞培養基質の部位変質の結果であるため、透過性区域は、先に論じた既存の各充填床システムにおける不均一な基質または不揃いに充填された基質が原因である透過性の局所的ばらつきとは区別される。
本明細書で使用するとき、「事実上の導水路」とは、不変の細胞培養基質のみを含むマトリクスの部位よりも高い局所透過性を有するマトリクスを通る流体流れの経路と定義される。このような導水路は、物理的に(例えば、壁や管状部などにより)拘束されておらず、むしろ、開放多孔質構造を有している細胞培養マトリクス内に存在するせいで「ヴァーチャル(事実上の)」と記載されている。従って、事実上の導水路を細胞培養マトリクスの残余の部分から隔離する障壁は何であれ必ずしも存在しない。事実上の導水路は、マトリクスの水平方向(すなわち、細胞培養マトリクスまたはバイオリアクタを通り抜ける培地のバルク流れ方向に直交する)断面に延びていると考えられることもあれば、充填床の一部または全体を貫く縦方向(すなわち、バルク流れ方向に平行)に延びていると考えられる場合もある。
本明細書で使用される場合の「透過性区域」および「事実上の導水路」は、変質基質素材と不変基質素材の両方の領域を含んでいることもある。例えば、本件開示の各実施形態は、細胞培養基質の積載層を有する多重層充填床細胞培養マトリクスを含んでいる。透過性区域または事実上の導水路は、充填床の垂直断面から基質素材を除去することによって積載層中に設けることができるが、垂直断面内の全ての層または一部の層のみがその素材が除去されることで、透過性を高めることができる。例えば、垂直断面内の一部の層のみがその素材が除去されたとしても、その垂直断面の全体に亘る透過性は、不変基質層のみを含んでいるマトリクスのもう1つ別の垂直断面の全体に亘る透過性よりも高くすることができる。
図10Aないし図10Cは、本件開示の1つ以上の実施形態による、透過性区域が設けられた細胞培養マトリクスの斜視図を示している。図10Aでは、幅w、高さh、および、長軸線381を有している細胞培養マトリクス380が、2つの透過性区域、382および384、と共に示されている。細胞培養マトリクス380を通り抜けて矢印Fの方向(すなわち、長軸線381に平行な方向)に培地またはそれ以外の流体が流動すると、透過性区域382および透過性区域384は、細胞培養マトリクス380の他の部分と比較してより高い透過性を示す。先に論じたように、透過性区域382および透過性区域384は、細胞培養マトリクス380の1つ以上の開口を含んでおり、そのようなマトリクスは両区域において通常よりも高い透過性を生じる結果となっている。図10Aには、透過性区域382および透過性区域384が細胞培養マトリクス380の高さhの範囲に沿って延びているのが示されているが、これは区域382および区域384の全体が開放状態にあって遮るものがないことを必ずしも意味するわけではない。むしろ、透過性区域382および透過性区域384はそれぞれの1カ所だけまたは限定された多数領域だけに、細胞培養マトリクス380の一部に開口が設けられていて、透過性を高めるようになっていてもよい。しかし、それでも尚、透過性区域382および透過性区域384は高さhの範囲に沿って延びていると見なすことができるが、それは、これらの区域内の流れ抵抗が幾らかであれ減少すると、流れ方向Fに沿って区域382、384内の透過性を増大させることになるかもしれないからである。図10Aには2つの透過性区域しか示されていないが、多数の実施形態はこの構成に限定されず、透過性を高めた区域の数はそれより少ないこともあれば、多いこともある。同様に、透過性区域は円筒形の区域として例示されているが、多数の実施形態はこの形状の区域に限定されず、その代わりにどんな形状であれ、細胞培養マトリクスに多数の開口を組み入れることによって達成できる所望の形状を呈していても構わない。
図10Aと同様に、図10Bは、幅wおよび高さhを有している細胞培養マトリクス386を示しており、長軸線387が2つの透過性区域、388および390、と共に図示されている。長方形の透過性区域388および透過性区域390は互いに異なる高さで細胞培養マトリクス386の内部にあるのが示されていることで、実施形態によっては、これら透過性区域が細胞培養マトリクス内の局所的な区域であると考えてもよい場合もあることを例示している。例えば、透過性区域が細胞培養基質に形成された事実上の導水路または開口から形成されている実施形態では、透過性区域とは、それら事実上の導水路自体、該導水路それぞれの間近な部位、または、その両方と定義することができる。
図10Cは、透過性区域394が設けられた細胞培養マトリクス392のもう1つ別の例を示しており、今度のものは中空円筒の形状である。本明細書で論じている通り、各実施形態は、透過性区域が設けられた細胞培養マトリクスはその長軸線(393)を中心として対称である。ここでもまた、透過性区域394は、細胞培養マトリクス392内にあって中空円筒開口の形状である事実上の導水路または開口を必ずしも必要としないことに留意するべきである。むしろ、透過性区域394は、細胞培養マトリクス392に形成された相互に異なる開口または事実上の導水路の複合効果の結果であり、それにより、図10Cの中空円筒形に似た区域の透過性が増大するという結果を生じる。
本件開示の実施形態によっては、細胞培養基質の積載層(例えば、織メッシュ円盤の積載体)から作製された細胞培養マトリクスを供与するものもある。基質層の積載体から作成された充填床細胞培養マトリクスの場合、透過性区域を成している事実上の導水路は、1 つ以上の個別の基質層に開口を設けることにより達成することができる。例えば、図11Aは基質素材の層400aの一例を示しているが、1つ以上の実施形態において、該層を積載することで充填床細胞培養マトリクスを形成することができる。層400aは、規則正しく均一な構造と併せて、構造的に定められた基質素材から作製されている。この例では、層400aの素材は多孔性基質(例えば、織メッシュ)であり、それ以外には何であれ、透過性を向上させた透過性区域を得る目的で事実上の導水路を設けることになる開口を層400aは有していない。しかし、図11Bないし図11Fは、上記と同じ多孔性基質素材の層400bないし400fの各例を示しており、付加的に事実上の導水路402bないし402fがそれぞれに層400bないし400fに形成されている。図11Bないし図11Fに示すように、事実上の導水路402bないし402fは、多孔性基質に形成された開口または切取り孔であり、多様な形状および配置を有していてもよい。例えば、事実上の導水路は長方形の切取り孔(図11Bないし図11Dの事実上の導水路402bないし402d)であるとよいし、円、半円、または、円弧から成る多数円(図11Eの事実上の導水路402e)でもよいし、或いは、三角形の切取り孔(図11Fの事実上の導水路402f)でも構わない。加えて、各層は多数の事実上の導水路または開口を含んでいてもよいが、これらの事実上の導水路は層を回転対称とする態様で配置するようにしてもよい。しかし、これらは具体例にすぎず、本件開示の各実施形態の範囲内で上記以外の形状、配置、または、その両方が考えられ得ると思料される。たとえ基質素材が多孔性であっても、事実上の導水路により形成される開口が多孔性基質素材の細孔よりもかなり大きいせいで、事実上の導水路402bないし402fが基質の残余の各部分よりも流れ抵抗が低いことは、当業者には正しく理解されるだろう。
図12Aは、図11Bと同様、複数の事実上の導水路が設けられた細胞培養基質層410aの平面図である。図12Bでは、もう1つ別の基質層410bによく似た配置の事実上の導水路が設けられており、層410bは層410aに対して約30°回転した位置にあるのが例示されている。図12Cに示すように、層410aが回転された層410bと積層されると、その結果得られる積載体412の事実上の導水路は重なり合わない代わりに、積載体412を平面図で見たときには2倍の数の事実上の導水路を供与している。加えて、事実上の導水路を積載体412の中心に向けて半径方向内向きに進むにつれて、事実上の導水路の密集度が増し、その結果、事実上の導水路の最高密集度の領域における透過性が増大することになる。しかし、積載体412の中心では、事実上の導水路が存在せず、透過性は本質的に不変の多孔性基質層(すなわち、事実上の導水路の無い基質層)の透過性となる。図12Dは、積載体412の複合的な事実上の導水路に由来する修正された流れプロファイルF412を示しており、流れの方向は積載体412の長軸線411に平行である。図示のとおり、積載体412の、事実上の導水路が皆無である中心域では、透過性が最も低くなる。積載体の、事実上の導水路は存在しているが地域密集度が最低となる外縁域では、透過性は積載体412の中心域よりは高くとも、積載体412の事実上の導水路の密集度が最高値となる部位の透過率よりは低くなる。
図12Dの例では、積載体412は、事実上の導水路が形成されている積載体領域(すなわち、積載体の外周域)に透過性区域があると考えるとよい。しかし、図12Dに示すように、透過性区域の全体に亘る透過性にはむらがある。このように、実施形態によっては、積載体412を説明するにあたり、透過性が変動する透過性区域すなわち多様な透過性を示す多数区域(例えば、事実上の導水路の密集度が最高であるピーク透過性区域、事実上の導水路の密集度が最低だがゼロではない低透過性区域、そして、ピーク透過性区域と低透過性区域の間の、いくつあるにせよ、中間透過性区域)があると説明しても構わないと思料される。
図12Aないし図12Dと同様に、図13Aないし図13Fは、一連の層420aないし420dが積載されて充填床積載体422にされ、その結果として生じる流れプロファイルF422を有しているのを示しているが、この場合は面積の大きさは、積載体422の、矢印真上の部分の相対透過性に対応している。積載体422の矢印の真上にある。4層420aないし420dも同様に構成されているが、その各々が前の層に対して15°回転した状態にある。従って、層420bは層420aに対して15°回転した状態にあり、層420cは層420bに対して15°(層420aに対しては30°)回転した状態にあり、層420dは層420cに対して15°(層420aに対しては45°)回転した状態にある。その結果として得られる積載体422は図12Cの積載体412よりも、積載体422の領域全体に亘って事実上の導水路の数は更にいっそう増え、事実上の導水路の最高密集度は更にいっそう高くなる。従って、流れプロファイルF422は、透過性区域と、積載体422の、事実上の導水路が皆無である中心域との間の透過性差が大きくなっているのを示している。
定められた透過性区域を利用して充填床細胞培養マトリクスの透過性を制御するやりで、多くの用途が見いだせる。例えば、細胞培養の種類または段階に応じて、特定の透過性プロファイルを達成するのが望ましい場合がある。透過性区域の用途の1つは、バイオリアクタ・システムの不均一な流れ特性の埋め合わせをすることである。すなわち、バイオリアクタ・システムが本質的に培地または流体の流れが不均一である場合、充填床の透過性区域を利用してその不均一性の埋め合わせをすると、結果的により均一な複合流れプロファイルを得ることができるようになる。
図14Aないし図14Cは、透過性区域を利用することで細胞培養システムに内在する不均一性の埋め合わせをするようにした具体例を示している。図14Aは、培地入口432および流量分配板434が設けられたバイオリアクタ430を示している。培地は、入口432を経由してバイオリアクタ430に入った後、矢印Fの方向に流れて、流量分配板434を通り抜ける。しかし、入口432の近傍で流量分配板434を通過する培地は、入口432からより遠く離れた領域よりも高速度で流量分配板434から出てくる傾向がある。それゆえ、結果として得られる流速プロファイルFは不均一であり、そのことが下流側の充填床を通る培地の流れの(不)均一性に影響を与える可能性がある。しかしながら、本件開示の実施形態によれば、細胞培養マトリクス430(図14B)は、1つ以上の透過性区域を設けることで細胞培養マトリクス430の透過性を制御して流量分配板の不均一な流速プロファイルFを打ち消す流速プロファイルFを達成するよう設計することができる。流量分配板434と細胞培養マトリクス430を組み合わせると、細胞培養マトリクス430の制御された透過性は、流量分配板434から現れる不均一な流れと効果的に相殺し合うことができ、結果として均一な流速プロファイルFが得られる。
図12Aないし図13Fは、細胞培養マトリクスの全層または連続した複数層に事実上の導水路が設けられていることで透過性区域を画定するようにした実施形態を例示している。しかし、本件開示の各実施形態は、事実上の導水路が設けられた層と事実上の導水路が設けられていない層の組み合わせから形成された透過性区域を有している充填床マトリクスを含んでいる。図15Aないし図15Fは、そのような一実施形態の例を示している。特に、図15A、図15C、および、図15Eはそれぞれに、事実上の導水路が皆無の細胞培養基質の層440a、440c、および440eを示している。しかしながら、層440bは事実上の導水路442bを、層440dは事実上の導水路442dをそれぞれ含んでいる。集成された積載体では、図15Fに示すように、事実上の導水路が皆無である隣接し合う層の間に層440bおよび440dが挿入される。充填床に更により多くの層がある場合、事実上の導水路が設けられた層の数と配置は元より、事実上の導水路それら自体の設計に関して考えられ得る順列はほぼ無限であり、充填床マトリクスの全体に亘る透過性を無尽蔵に特注仕様化して制御することができるようにする。
図16Aは、図15Fの層400aないし層440eの積載体と同様に、2層に複数の事実上の導水路が設けられている基質の積載体450の概略平面図である。線A-Aは、図16Bに示されている縦破断図を示しており、同図では事実上の導水路452および導水路454が2つの別々の層にあるのが見て取れるが、当該2層は事実上の導水路の設けられていない1層により離隔されている。
図16Bの例では、事実上の導水路452を形成している開口の幅は約1319μmであり、事実上の導水路454を形成している開口の幅は約1330μmである。しかしながら、各実施形態はこれらの寸法に限定されない。実施形態によっては、事実上の導水路の開口は幅が約200μmないし約3000μm、約300μmないし約2500μm、約400μmないし約2000μm、約500μmないし約1500μm、約600μmないし約1800μm、約1000μmないし約2000μm、約1000μmないし約1800μm、または、約1300μmないし約1400μmであるとよい。また、先に論じたように、事実上の導水路の形状は大きく変動する場合があり、開口の寸法も同様である。
先に論じた具体例の或るものは限られた数の基質層の積載体を含んでいるが、図示された層の数は本件開示の各実施形態を限定することを意図するものではなく、例証を簡単にするために使用されている。本件開示の各実施形態は、充填床マトリクスの特定数の層に限定されず、例えば、数十、数百、または数千の層を含む充填床細胞培養マトリクスを含んでいる。
図17は、1つ以上の実施形態による細胞培養システム500を示している。システム500は、本明細書に開示されている1つ以上の実施形態の細胞培養マトリクスを収容するバイオリアクタ502を含んでいる。バイオリアクタ502は、培地調整容器504に流体接続されているとよいが、該システムは調整容器504内の細胞培養培地506をバイオリアクタ502に供給することができる。培地調整容器504は、バイオプロセス産業で懸濁液のバッチ(回分)培養、流加培養、または、灌流培養を目的として使用される、典型的バイオリアクタに見られる各種のセンサおよび制御コンポーネントを含んでいるとよい。これらには、溶存酸素(DO)センサ、pHセンサ、酸素供給器・気体散布装置、温度プローブ、栄養素添加ポートおよび塩基添加ポートなどが含まれているが、これらに限定されない。散布装置に供給される気体混合物は、窒素(N)ガス、酸素(O)ガス、二酸化炭素(CO)ガスの気体流量制御装置によって制御することができる。培地調整容器504は培地混合用のインペラも備えている。先に列挙したセンサによって測定されるすべての培地パラメータは、培地調整容器504と連絡状態にある培地調整制御装置518により制御されるが、細胞培養培地506の状態を測定し、所望のレベルに調整し、または、その両方を実施することができる。図17に示すように、培地調整容器504は、バイオリアクタ容器502とは別個の容器として提供される。これは、細胞が培養される場所から隔離して培地を調整することができるうえに、その後、細胞培養空間に調整済みの培地を供給することができるという点で利点をもたらすことができる。しかし、実施形態によっては、培地調整はバイオリアクタ容器502内で実施されてもよいものもある。
培地調整容器504からの培地506は、入口508を経由してバイオリアクタ502に搬入されるが、ここには、細胞を播種して培養を開始するための細胞接種材料の注入ポートも設けられていてもよい。バイオリアクタ容器502は1つ以上の出口510も含んでおり、ここを通って細胞培養培地506が容器502から出る。加えて、細胞または細胞産生物は出口510を通って出射されるとよい。バイオリアクタ502からの流出物の内容を分析する目的で、1つ以上のセンサ512がライン内に設けられているとよい。実施形態によっては、システム500がバイオリアクタ502に入る流れを制御するための流量制御装置514を含んでいるものもある。例えば、流量制御装置514は、1つ以上のセンサ512(例えば、酸素センサ)から信号を受信し、その信号に基づいて、バイオリアクタ502への入口508の上流側にあるポンプ516(例えば、蠕動ポンプ)に信号を送ることにより、バイオリアクタ502に入る流れを調節することができる。このように、センサ512により測定された因子の1つ以上の組合せに基づいて、ポンプ516は、バイオリアクタ502への流れを制御することで、所望の細胞培養条件を得ることができる。
培地灌流速度は、培地調整容器504からのセンサ信号および充填床バイオリアクタ出口510に配置されたセンサからのセンサ信号を収集して比較する信号処理装置514により制御される。充填床バイオリアクタ502を通り抜ける培地灌流の充填床内流れの性質が原因で、栄養素の勾配、pHの勾配、酸素の勾配が充填床に沿って発生する。バイオリアクタの灌流流量は、図11のフローチャートに従って、蠕動ポンプ516に動作可能に接続された流量制御装置514により自動制御することができる。
本件開示の1つ以上の実施形態は、従来の方法とは異なる細胞接種工程を提供している。従来の方法では、従来のマトリクスを備えた充填床ベッドが培地で満たされ、濃縮された接種材料が培地循環ループに注入される。細胞懸濁液はポンプでバイオリアクタの全体に亘って流量を増大させて送り出されることで、従来の充填床マトリクス上での捕捉による細胞播種の不均一性を軽減しようと図っている。このような従来の方法では、細胞の大部分が充填床バイオリアクタに捕捉されるまで、循環ループ内の細胞をポンプで高流速で送り出す処理が数時間と推察される期間に亘り継続される。しかし、従来の充填床バイオリアクタの不均一な深床域濾過の性質が原因で、細胞は充填床内に不均一に分布し、バイオリアクタの入口領域では細胞密度が高くなり、バイオリアクタの出口領域では細胞密度が低くなる。
これとは対照的に、本件開示の各実施形態によれば、バイオリアクタ内の培養チャンバの空隙容積と等しい体積の細胞接種材料が、バイオリアクタ502の入口508(図17)にある細胞接種材料注入ポートを通して充填床に直接注入される。次いで、本明細書に記載の細胞培養マトリクス中に存在する均一かつ連続的な流体通路のおかげで、細胞懸濁液が充填床内に均一に分布される。播種の初期段階に重力のせいで細胞が沈降するのを防ぐ目的で、接種材料の注入直後に培地の灌流を開始することができる。灌流流量が事前プログラミングされた閾値より低く維持されることで、重力に拮抗するとともに充填床バイオリアクタから細胞が洗い流されるのを避けるよう図っている。従って、初期の細胞接着段階では、細胞は充填床内で穏やかに転がり、均一な細胞の分布と利用できる基質表面への接着が達成される。
細胞培養マトリクスは、所望のシステム次第では、培養チャンバ内に多数の構成で配置されていてもよい。例えば、1つ以上実施形態で、当該システムは1層以上の基質を含んでおり、その幅が培養チャンバ内の規定の細胞培養空間の全幅に亘って延びている状態にある。このようにして、多重層の基質が所定の高さまで積載されているとよい。先に論じたように、各基質層は、1つ以上の層の第1主面および第2主面が培養チャンバ内の定められた培養空間を通る培地のバルク流れ方向に直交するように配置されていてもよいし、或いは、1つ以上の層の第1主面および第2主面がバルク流れ方向に平行になるよう配置されていても構わない。1つ以上の実施形態で、細胞培養マトリクスは、バルク流れに対して第1配向にある1つ以上の基質層と、第1配向とは異なる第2配向にある1つ以上の他の層とを含んでいる。例えば、多様な層においてその第1主面と第2主面が、バルク流れ方向に対して平行もしくは直交していてもよいし、或いは、その間のいずれかの角度であっても構わない。
1つ以上の実施形態では、細胞培養システムは、充填床構成中に複数の個別の細片状の細胞培養基質を含んでおり、該細片状の基質の長さ、幅、または、その両方は、培養チャンバに比べて小さい。本明細書で使用される場合、細片状の基質はその長さ、幅、または、その両方は、その各々が培養空間のものの約50%以下である場合、培養チャンバに比べて小さいと見なされる。このように、細胞培養システムは、複数の細片状の基質が培養空間に所望の配置で詰め込まれているとよい。基質片の配置は、不揃いでも半ば不揃いでもよいし、或いは、例えば、各基質片が概ね類似した配向(例えば、バルク流れ方向に対して水平、垂直、または、0°から90°の間の何らかの角度の配向)に設定されているなど、所定の規則または整列状態を有していても構わない。
本明細書で使用される場合、「定められた培養空間」とは、細胞培養マトリクスによって占有されており、また、細胞播種、細胞培養、または、その両方を行うことができる培養チャンバ内の空間を指す。定められた培養空間は、培養チャンバのほぼ全体を満たしている場合もあり、或いは、培養チャンバ内の空間の一部を占めている場合もある。本明細書で使用する場合、「バルク流れ方向」とは、細胞の培養中、培養培地の細胞培養マトリクスへの流入中またはそこからの流出中、もしくは、その各種組合せの同時持続中に、細胞培養マトリクスを通り抜ける、または、細胞培養マトリクス上を移動する流体または培養培地のバルク質量流れの方向と定義される。
1つ以上の実施形態では、細胞培養マトリクスは、培養チャンバ内に固定機構により固着される。固定機構は細胞培養マトリクスの一部を、マトリクスを包囲している培養チャンバの壁に固着させるようにしてもよいし、或いは、培養チャンバの一端のチャンバ壁に固着されるようにしても構わない。実施形態によっては、固定機構は細胞培養マトリクスの一部を、例えば、培養チャンバの長軸線に平行に延びている部材などのような、培養チャンバを貫いて延びている部材に付着させるか、または、長軸線に直交して延びている部材に付着させる。しかし、それ以外の1つ以上の実施形態では、細胞培養マトリクスは、チャンバまたはバイオリアクタ容器の壁に固定的に付着されることなく、培養チャンバ内に収容されていてもよい。例えば、マトリクスは培養チャンバの境界域に包含されていてもよいし、或いは、チャンバ内の上記以外の構造部材に包含されてもよいが、それにより、そのような境界域や構造部材にマトリクスを固定的に固着させずとも、マトリクスがバイオリアクタ容器の所定領域内に保持されるようにするとよい。
幾つかの実施形態の一態様は、ローラー・ボトル構成のバイオリアクタ容器を供与している。培養チャンバは、本件開示に記載している1つ以上の実施形態による細胞培養マトリクスおよび基質を収容することができる。ローラー・ボトル構成では、バイオリアクタ容器は、該容器をその中心長軸線を中心として移動させる手段に動作可能に取り付けることができる。例えば、バイオリアクタ容器は、該容器の中心長軸線を中心として回転させることができる。回転は、連続的であってもよいし(例えば、一方向に連続している)、不連続的であってもよい(例えば、単一方向または交互双方向に断続的に回転する、もしくは、前後両回転方向に揺動する)。動作中、バイオリアクタ容器の回転により、チャンバ内の細胞、流体、または、その両方の移動が生じる。この移動は、チャンバの壁に関して相対的であると考えてよい。例えば、バイオリアクタ容器がその中心長軸線を中心として回転すると、重力により、液体、培養培地、未接着細胞、または、それらの各種組合せをチャンバの下方部位に向かうほど残留させることができる。但し、1つ以上の実施形態では、細胞培養マトリクスは本質的に容器に対して固定されており、従って、容器とともに回転する。それ以外の1つ以上の実施形態では、細胞培養マトリクスは取り付け式ではなく、容器が回転すると、容器に対して所望の程度まで自由に運動することができる。細胞は細胞培養マトリクスに付着することができる一方で、容器の運動により細胞は培養チャンバ内の細胞培養培地または液体と酸素またはそれ以外の気体の両方に曝露させることができるようになる。
本件開示の各実施形態による細胞培養マトリクスにより、例えば、織物またはメッシュ基質を含むマトリクスなどを使用することにより、ローラー・ボトル容器には、付着細胞がくっつき、増殖し、機能するために利用できるより広い表面積が設けられる。特に、単線条重合体素材の織メッシュの基質をローラー・ボトル内に使用すると、表面積は標準的なローラー・ボトルの表面積の約2.4倍から約4.8倍、または、約10倍に増大する可能性がある。本明細書で論じてきたように、メッシュ基質の単線条撚糸は一本一本がそれ自体を付着細胞がくっつくための2D表面として発現させることができる。これに加えて、多重層のメッシュをローラー・ボトル内に配置することで、利用可能な総表面積が標準的なローラー・ボトルの約2倍ないし約20倍の範囲で増大する結果が得られる。このように、本明細書に開示されている改良された細胞培養マトリクスを加えることにより、既存の操作インフラストラクチャおよび各種処理工程への影響を最小限に抑えながら、既存のローラー・ボトル設備と、細胞播種、培地交換、細胞収穫などを含む処理とを共に修正することができる。
バイオリアクタ容器は、選択的に、入口手段、出口手段、または、その両方に取り付けることができる1つ以上の出口を含んでいる。1つ以上の出口を通して、液体、培地、または、細胞をチャンバに供給したり、チャンバから除去したりすることができる。容器内の単一ポートが入口と出口の両方として作用するようにしてもよいし、或いは、多数のポートが専用入口用と専用出口用に設けられていてもよい。
1つ以上の実施形態の充填床細胞培養マトリクスは織加工の細胞培養メッシュ基質から構成されているとよいが、それ以外の何らの形状の細胞培養基質も細胞培養マトリクス内に配置されず、組込まれもしない。すなわち、本件開示の各実施形態の細胞培養織メッシュ基質は、既存の解決策で使用されるむらのある類の不織基質を必要としない、効果的な細胞培養基質である。これによりデザインと構成を簡素化することができる一方で、流れの均一性、収穫性などに関連して本明細書で説明してきたそれ以外の利点を備えた、高密度細胞培養基質を供与することができる。
本明細書で論じているように、供与される細胞培養基質およびバイオリアクタ・システムは、多くの利点を提供する。例えば、本件開示の各実施形態は、アデノ随伴ウイルス(AAV)やレンチウイルスなどのような多数のウイルス・ベクターのうちいずれかの産生を支援することができるうえに、インビボとエクスビボの遺伝子治療応用に充てることができる。均一な細胞播種と細胞分布により1容器あたりのウイルス・ベクター収量が最大化され、設計により生存細胞の収穫ができるようになるが、これは、同じプラットフォームを使用した多重的な増殖期間から成るシード・トレインに役立てることができる。これに加えて、本明細書の各実施形態は、プロセス開発規模から生産規模まで拡張可能であり、最終的には開発時間と経費の節約になる。本明細書に開示されている各種の方法およびシステムはまた、細胞培養プロセスの自動化と制御をも可能にすることで、ベクター収量を最大化し、再現性を向上させるよう図っている。最後に、ウイルス・ベクターの生産レベルの規模(例えば、1回分(1バッチ)あたりアデノ随伴ウイルス(AAV)のベクターゲノム数(VG)にして1016vgないし1018vg)に達するために必要な容器の数は、他の細胞培養の解決策に比べて大幅に削減することができる。
各実施形態は、中心長軸線を中心とした容器の回転に限定されない。例えば、容器は、容器に関して中心位置にはない軸線を中心として回転するようにしてもよい。また、回転軸線は水平軸線でもよいし、垂直軸でもよい。
具体的な実装例
以下は、開示されている主題の各種の実装例の多様な態様の説明である。各態様は、開示の主題の多様な機能、特徴、または、利点のうちの1つまたは複数を含んでいる場合がある。これらの実装例は、開示の主題の幾つかの態様を例示することを目的としており、考え得る全ての実装例の包括的または網羅的な説明と考えるべきではない。
態様1は、細胞を培養するための充填床バイオリアクタ・システムに関するものであり、該システムは、入口、出口、および、該入口と該出口の間の流体経路に流体連絡状態に接続され該経路中に配置された少なくとも1つの内部貯留器が設けられた細胞培養容器と、該貯留器内に配置された細胞培養マトリクスであって、複数の細孔を画定している基質素材から成る構造的に定められた基質を含んでいるとともに、該基質素材がそこに細胞を付着させるよう構成されている細胞培養マトリクスと、該細胞培養マトリクスの一部に設けられた少なくとも1つの透過性区域であって、その外側の該細胞培養マトリクスの標準透過性よりも高い透過性を有している少なくとも1つの透過性区域とを備えており、該透過性区域は該基質に開口を備えており、該開口は該複数の細孔のいずれの直径よりも大きい。
態様2は、態様1の充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記充填床バイオリアクタ・システムにおいて、上記細胞培養マトリクスは複数の層の上記基質を備えている。
態様3は、態様2の充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記複数の層の上記基質は各層に、規則的で概ね均一な配列の細孔が設けられている。
態様4は、態様2または態様3の充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記透過性区域は、上記複数の層から成る多重層を備えており、該多重層に上記開口が設けられている。
態様5は、態様4の充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記多重層の少なくとも一部に設けられた上記開口は、上記多重層のうちの少なくとも1層に設けられた開口のある部位とは異なる、上記細胞培養マトリクスの水平横断面の領域にある。
態様6は、態様4または態様5の充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記開口が設けられている上記多重層の各々は同じ開口配置を有している。
態様7は、態様6の充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記開口が設けられている上記多重層の少なくとも一部は、上記開口が設けられている上記多重層のうち少なくとも1層に相対的に回転させられており、回転の中心は上記細胞培養マトリクスの長軸線である。
態様8は、態様2から態様7のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記複数の層のうちの1層以上は上記基質に多重開口が設けられている。
態様9は、態様8の充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記複数の層のうち、上記多重開口が設けられた上記1層以上は、上記細胞培養マトリクスの長軸線を中心に回転対称を呈している。
態様10は、態様1から態様9のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記開口は、長方形、正方形、円、楕円形、円弧、および、三角形のうちの少なくとも1つを含む形状を呈している。
態様11は、態様1から態様10のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記開口は上記基質の端縁から上記基質の中心に向かって延びている。
態様12は、態様1から態様11のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記システムは、上記入口と上記細胞培養マトリクスとの間に配備された流量分配板を更に備えており、上記入口および該流量分配板の配置は、上記入口を通って上記内部貯留器に入った流体が該流量分配板を通り抜けるにあたり、上記内部貯留器の幅全体に亘り異なる多数の速度で流動するように設定されており、また、上記細胞培養マトリクスの上記透過性区域が該流量分配板からの該異なる多数の速度を埋め合わせるように設計されていることで、上記細胞培養マトリクスを貫く灌流速度プロファイルが上記細胞培養マトリクスの幅全体に亘って均一となるよう図っている。
態様13は、態様1から態様12のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記標準透過性は上記細胞培養マトリクスの平均透過性である。
態様14は、態様1から態様13のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記標準透過性は、上記基質から成る上記細胞培養マトリクスの、上記開口の無い区分の透過性である。
態様15は、態様1から態様14のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システムに関連しており、上記開口はその幅が、約200μmないし約3000μm、約300μmないし約2500μm、約400μmないし約2000μm、約500μmないし約1500μm、約600μmないし約1800μm、約1000μmないし約2000μm、約1000μmないし約1800μm、または、約1300μmないし約1400μmである。
態様16は、バイオリアクタ内で接着して増殖する細胞を培養するための細胞培養マトリクスに関連しており、該細胞培養マトリクスは、複数の細孔を画定している基質素材から成る構造的に定められた基質であって、該基質素材がそこに細胞を付着させるよう構成されている基質と、該細胞培養マトリクスの一部に設けられた少なくとも1つの透過性区域であって、その外側の該細胞培養マトリクスの標準透過性よりも高い透過性を有しているとともに、該基質に開口を備えており、該開口が該複数の細孔のいずれの直径よりも大きい少なくとも1つの透過性区域とを備えている。
態様17は、態様16の細胞培養マトリクスに関連しており、複数の層の上記基質を備えている。
態様18は、態様17の細胞培養マトリクスに関連しており、上記複数の層の上記基質は各層に、規則的で概ね均一な配列の細孔が設けられている。
態様19は、態様17または態様18の細胞培養マトリクスに関連しており、上記透過性区域は、上記複数の層から成る多重層を備えており、該多重層に上記開口が設けられている。
態様20は、態様19の細胞培養マトリクスに関連しており、上記多重層の少なくとも一部に設けられた上記開口は、上記多重層のうちの少なくとも1層に設けられた開口のある部位とは異なる、上記細胞培養マトリクスの水平横断面の領域にある。
態様21は、態様19または態様20の細胞培養マトリクスに関連しており、上記開口が設けられている上記多重層の各々は同じ開口配置を有している。
態様22は、態様21の細胞培養マトリクスに関連しており、上記開口が設けられている上記多重層の少なくとも一部は、上記開口が設けられている上記多重層のうち少なくとも1層に相対的に回転させられており、回転の中心は上記細胞培養マトリクスの長軸線である。
態様23は、態様17から態様22のいずれか1つの細胞培養マトリクスに関連しており、上記複数の層のうちの1層以上は上記基質に多重開口が設けられている。
態様24は、態様23の細胞培養マトリクスに関連しており、上記複数の層のうち、上記多重開口が設けられた上記1層以上は、上記細胞培養マトリクスの長軸線を中心に回転対称を呈している。
態様25は、態様16から態様24のいずれか1つの細胞培養マトリクスに関連しており、上記開口は、長方形、正方形、円、楕円形、円弧、および、三角形のうちの少なくとも1つを含む形状を呈している。
態様26は、態様16から態様25のいずれか1つの細胞培養マトリクスに関連しており、上記開口は上記基質の端縁から上記基質の中心に向かって延びている。
態様27は、態様16から態様26のいずれか1つの細胞培養マトリクスに関連しており、上記標準透過性は上記細胞培養マトリクスの平均透過性である。
態様28は、態様16から態様27のいずれか1つの細胞培養マトリクスに関連しており、上記標準透過性は、上記基質から成る上記細胞培養マトリクスの、上記開口の無い区分の透過性である。
態様29は、態様16から態様28のいずれか1つの細胞培養マトリクスに関連しており、上記開口はその幅が、約200μmないし約3000μm、約300μmないし約2500μm、約400μmないし約2000μm、約500μmないし約1500μm、約600μmないし約1800μm、約1000μmないし約2000μm、約1000μmないし約1800μm、または、約1300μmないし約1400μmである。
定義
「全面的に合成」または「完全に合成」とは、マイクロキャリアまたは培養容器の表面などのような細胞培養品のうち、もっぱら合成原料材料から構成されているうえに、動物由来材料または動物性素材を全く含んでいないものを指す。開示された全面的に合成された細胞培養物品は、異種汚染の危険性を排除している。
「(複数のものが構成部材の1部として)含む・含んでいる」、「(単一のものが構成部材の1部として)含む・含んでいる」、または、これらと同様の用語は、網羅するが限定されない、つまり、包括的であっても排他的ではないことを意味する。
「ユーザー」とは、本明細書に開示されている各種のシステム、方法、物品、キットなどを使用する人を指し、細胞または細胞産生物を収穫する目的で細胞を培養している人や、本明細書の各実施形態に従って培養され、収穫され、もしくは、培養収穫された細胞または細胞産生物を利用している人を含んでいる。
例えば、構成中の要素の量、濃度、体積、加工処理温度、加工処理時間、収量、流量、圧力、粘度などの各種の値、および、それらの各範囲、または、構成要素の寸法やそれに類似した各種の値、および、それらの各範囲などを修飾する「約」は、本件開示の各実施形態を説明する際に使用されるが、数量のばらつきを指しており、それが生じる原因は、例えば、上記処置手順における想定外の誤差や、本件各種方法を実行するために使用される出発物質や出発原料の量産品差、調達源差、または、純度差や、これらに類似する各種検討事項である。「約」なる語は、特定の初期濃度または混合処方を有する組成物または調合物の経時変化が原因で異なってくる量や、特定の初期濃度または混合処方を有する組成物または調合物を混合または加工処理が原因で異なってくる量も網羅している。
「選択的な・任意の」または「選択的に・任意に」とは、その後に説明される事象または状況が生じてもよいし生じなくてもよいことを意味するとともに、当該説明が斯かる事象または状況が生じる各種事例と生じない各種事例とを含んでいることを意味する。
本明細書で使用される場合の英語不定冠詞「a(或る、或る種の)」または「an(或る、或る種の)」と、それに呼応する英語定冠詞「the(その、該、上記)」とは、別段の指定がない限り、少なくとも1つ、または、1つ以上を意味する。
略語は、当業者には周知でもあり、使用されている場合がある(例えば、1時間の「h」または1時間を超える時間の「hrs」、グラムの「g」または「gm(」、ミリリットルの「mL」、室温の「rt(ルーム・テンペラチャ)」、ナノメートルの「nm」、および、これらに類似する各種略語)。
構成要素、成分、添加物、寸法、条件、および、これらに類する各種態様について開示している特定の値や好ましい値、ならびに、それらの各範囲は例示を目的としているにすぎず、残余の規定値や規定範囲内の残余の値を除外するものではない。本件開示の各種のシステム、キット、および、方法は本明細書に記載しているあらゆる値、各値のあらゆる組合せ、特定の値、より特定的な値、好ましい値などを、明示的または黙示的な中間域の各値および各範囲などまでも、含んでいることがある。
別途明記しているのでもない限り、本明細書に記載のどの1つ方法であれ、その各工程が特定の順序で実施されるのが要件であると解釈するべきなどとは決して意図していない。従って、方法の請求項がその各工程が踏襲するべき順序を実際には記載していない場合や、各工程が特定の順序に限定されるべきとのことが特許請求の範囲または詳細な説明に別途特に言及されていない場合は、何らかの特定の順序を仄めかす意図は全くない。
開示されている各実施形態の真髄または範囲から逸脱することなく、多様な修正および変形を行うことができることは、当業者には明らかとなるであろう。開示の各実施形態の各種の修正、組合せ、副次的組合せ、および、変形が当業者に思い浮かぶ可能性があるのであるから、開示の各実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内のすべてを含んでいるものと解釈するべきである。
以下に、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
細胞を培養するための充填床バイオリアクタ・システムであって、該システムは、
入口、出口、および、該入口と該出口の間の流体経路に流体連絡状態に接続され該経路中に配置された少なくとも1つの内部貯留器が設けられた細胞培養容器と、
該貯留器内に配置された細胞培養マトリクスであって、複数の細孔を画定している基質素材から成る構造的に定められた基質を含んでいるとともに、該基質素材がそこに細胞を付着させるよう構成されている細胞培養マトリクスと、
該細胞培養マトリクスの一部に設けられた少なくとも1つの透過性区域であって、その外側の該細胞培養マトリクスの標準透過性よりも高い透過性を有している少なくとも1つの透過性区域と
を備えており、
該透過性区域は該基質に開口を備えており、該開口は該複数の細孔のいずれの直径よりも大きい、充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態2
上記細胞培養マトリクスは複数の層の上記基質を備えている、実施形態1の充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態3
上記複数の層の上記基質は各層に、規則的で概ね均一な配列の細孔が設けられている、実施形態2の充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態4
上記透過性区域は、上記複数の層から成る多重層を備えており、該多重層に上記開口が設けられている、実施形態2または実施形態3の充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態5
上記多重層の少なくとも一部に設けられた上記開口は、上記多重層のうちの少なくとも1層に設けられた開口のある部位とは異なる、上記細胞培養マトリクスの水平横断面の領域にある、実施形態4の充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態6
上記開口が設けられている上記多重層の各々は同じ開口配置を有している、実施形態4または実施形態5の充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態7
上記開口が設けられている上記多重層の少なくとも一部は、上記開口が設けられている上記多重層のうち少なくとも1層に相対的に回転させられており、回転の中心は上記細胞培養マトリクスの長軸線である、実施形態6の充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態8
上記複数の層のうちの1層以上は上記基質に多重開口が設けられている、実施形態2から実施形態7のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態9
上記複数の層のうち、上記多重開口が設けられた上記1層以上は、上記細胞培養マトリクスの長軸線を中心に回転対称を呈している、実施形態8の充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態10
上記開口は、長方形、正方形、円、楕円形、円弧、および、三角形のうちの少なくとも1つを含む形状を呈している、実施形態1から実施形態9のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態11
上記開口は上記基質の端縁から上記基質の中心に向かって延びている、実施形態1から実施形態10のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態12
上記システムは、上記入口と上記細胞培養マトリクスとの間に配備された流量分配板を更に備えており、
上記入口および該流量分配板の配置は、上記入口を通って上記内部貯留器に入った流体が該流量分配板を通り抜けるにあたり、上記内部貯留器の幅全体に亘り異なる多数の速度で流動するように設定されており、また、
上記細胞培養マトリクスの上記透過性区域が該流量分配板からの該異なる多数の速度を埋め合わせるように設計されていることで、上記細胞培養マトリクスを貫く灌流速度プロファイルが上記細胞培養マトリクスの幅全体に亘って均一となるよう図っている、実施形態1から実施形態11のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態13
上記標準透過性は上記細胞培養マトリクスの平均透過性である、実施形態1から実施形態12のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態14
上記標準透過性は、上記基質から成る上記細胞培養マトリクスの、上記開口の無い区分の透過性である、実施形態1から実施形態13のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態15
上記開口はその幅が、約200μmないし約3000μm、約300μmないし約2500μm、約400μmないし約2000μm、約500μmないし約1500μm、約600μmないし約1800μm、約1000μmないし約2000μm、約1000μmないし約1800μm、または、約1300μmないし約1400μmである、実施形態1から実施形態14のいずれか1つの充填床バイオリアクタ・システム。
実施形態16
バイオリアクタ内で接着して増殖する細胞を培養するための細胞培養マトリクスであって、該細胞培養マトリクスは、
複数の細孔を画定している基質素材から成る構造的に定められた基質であって、該基質素材がそこに細胞を付着させるよう構成されている基質と、
該細胞培養マトリクスの一部に設けられた少なくとも1つの透過性区域であって、その外側の該細胞培養マトリクスの標準透過性よりも高い透過性を有している少なくとも1つの透過性区域と
を備えており、
該透過性区域は該基質に開口を備えており、該開口は該複数の細孔のいずれの直径よりも大きい、細胞培養マトリクス。
実施形態17
複数の層の上記基質を備えている、実施形態16の細胞培養マトリクス。
実施形態18
上記複数の層の上記基質は各層に、規則的で概ね均一な配列の細孔が設けられている、実施形態17の細胞培養マトリクス。
実施形態19
上記透過性区域は、上記複数の層から成る多重層を備えており、該多重層に上記開口が設けられている、実施形態17または実施形態18の細胞培養マトリクス。
実施形態20
上記多重層の少なくとも一部に設けられた上記開口は、上記多重層のうちの少なくとも1層に設けられた開口のある部位とは異なる、上記細胞培養マトリクスの水平横断面の領域にある、実施形態19の細胞培養マトリクス。
実施形態21
上記開口が設けられている上記多重層の各々は同じ開口配置を有している、実施形態19または実施形態20の細胞培養マトリクス。
実施形態22
上記開口が設けられている上記多重層の少なくとも一部は、上記開口が設けられている上記多重層のうち少なくとも1層に相対的に回転させられており、回転の中心は上記細胞培養マトリクスの長軸線である、実施形態21の細胞培養マトリクス。
実施形態23
上記複数の層のうちの1層以上は上記基質に多重開口が設けられている、実施形態17から実施形態22のいずれか1つの細胞培養マトリクス。
実施形態24
上記複数の層のうち、上記多重開口が設けられた上記1層以上は、上記細胞培養マトリクスの長軸線を中心に回転対称を呈している、実施形態23の細胞培養マトリクス。
実施形態25
上記開口は、長方形、正方形、円、楕円形、円弧、および、三角形のうちの少なくとも1つを含む形状を呈している、実施形態16から実施形態24のいずれか1つの細胞培養マトリクス。
実施形態26
上記開口は上記基質の端縁から上記基質の中心に向かって延びている、実施形態16から実施形態25のいずれか1つの細胞培養マトリクス。
実施形態27
上記標準透過性は上記細胞培養マトリクスの平均透過性である、実施形態16から実施形態26のいずれか1つの細胞培養マトリクス。
実施形態28
上記標準透過性は、上記基質から成る上記細胞培養マトリクスの、上記開口の無い区分の透過性である、実施形態16から実施形態27のいずれか1つの細胞培養マトリクス。
実施形態29
上記開口はその幅が、約200μmないし約3000μm、約300μmないし約2500μm、約400μmないし約2000μm、約500μmないし約1500μm、約600μmないし約1800μm、約1000μmないし約2000μm、約1000μmないし約1800μm、または、約1300μmないし約1400μmである、実施形態16から実施形態28のいずれか1つの細胞培養マトリクス。
380 細胞培養マトリクス
382 透過性区域
384 透過性区域
410 細胞培養基質層
412 基質層積載体
412 流れプロファイル
420 細胞培養基質層
422 基質層積載体
430 細胞培養マトリクスまたはバイオリアクタ
432 入口
434 流量分配板
流速プロファイル
流速プロファイル
流速プロファイル
500 細胞培養システム
502 バイオリアクタ容器
506 細胞培養培地
508 入口
510 出口

Claims (12)

  1. 細胞を培養するための充填床バイオリアクタ・システムであって、該システムは、
    入口、出口、および、該入口と該出口の間の流体経路に流体連絡状態に接続され該経路中に配置された少なくとも1つの内部貯留器が設けられた細胞培養容器と、
    該貯留器内に配置された細胞培養マトリクスであって、複数の細孔を画定している基質素材から成る構造的に定められた基質を含んでいるとともに、該基質素材がそこに細胞を付着させるよう構成されている細胞培養マトリクスと、
    該細胞培養マトリクスの一部に設けられた少なくとも1つの透過性区域であって、その外側の該細胞培養マトリクスの標準透過性よりも高い透過性を有している少なくとも1つの透過性区域と
    を備えており、
    該透過性区域は該基質に開口を備えており、該開口は該複数の細孔のいずれの直径よりも大きい、充填床バイオリアクタ・システム。
  2. 上記細胞培養マトリクスは複数の層の上記基質を備えている、請求項1に記載の充填床バイオリアクタ・システム。
  3. 上記複数の層の上記基質は各層に、規則的で概ね均一な配列の細孔が設けられている、請求項2に記載の充填床バイオリアクタ・システム。
  4. 上記透過性区域は、上記複数の層から成る多重層を備えており、該多重層に上記開口が設けられている、請求項2または請求項3に記載の充填床バイオリアクタ・システム。
  5. 上記多重層の少なくとも一部に設けられた上記開口は、上記多重層のうちの少なくとも1層に設けられた開口のある部位とは異なる、上記細胞培養マトリクスの水平横断面の領域にある、請求項4に記載の充填床バイオリアクタ・システム。
  6. 上記開口が設けられている上記多重層の各々は同じ開口配置を有している、請求項4または請求項5に記載の充填床バイオリアクタ・システム。
  7. 上記開口が設けられている上記多重層の少なくとも一部は、上記開口が設けられている上記多重層のうち少なくとも1層に相対的に回転させられており、回転の中心は上記細胞培養マトリクスの長軸線である、請求項6に記載の充填床バイオリアクタ・システム。
  8. 上記複数の層のうちの1層以上は上記基質に多重開口が設けられている、請求項2から請求項7のいずれか1つに記載の充填床バイオリアクタ・システム。
  9. 上記複数の層のうち、上記多重開口が設けられた上記1層以上は、上記細胞培養マトリクスの長軸線を中心に回転対称を呈している、請求項8に記載の充填床バイオリアクタ・システム。
  10. 上記システムは、上記入口と上記細胞培養マトリクスとの間に配備された流量分配板を更に備えており、
    上記入口および該流量分配板の配置は、上記入口を通って上記内部貯留器に入った流体が該流量分配板を通り抜けるにあたり、上記内部貯留器の幅全体に亘り異なる多数の速度で流動するように設定されており、また、
    上記細胞培養マトリクスの上記透過性区域が該流量分配板からの該異なる多数の速度を埋め合わせるように設計されていることで、上記細胞培養マトリクスを貫く灌流速度プロファイルが上記細胞培養マトリクスの幅全体に亘って均一となるよう図っている、請求項1から請求項9のいずれか1つに記載の充填床バイオリアクタ・システム。
  11. 上記標準透過性は上記細胞培養マトリクスの平均透過性である、請求項1から請求項10のいずれか1つに記載の充填床バイオリアクタ・システム。
  12. 上記標準透過性は、上記基質から成る上記細胞培養マトリクスの、上記開口の無い区分の透過性である、請求項1から請求項11のいずれか1つに記載の充填床バイオリアクタ・システム。
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