JP2024120490A - 熱融着性積層フィルム及びその用途 - Google Patents

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拓生 遠藤
和臣 石井
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Abstract

【課題】ポリプロピレンを含有するポリオレフィン系の積層フィルムであって、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを使用し高いバイオマス度を有することにより環境負荷が低減された積層フィルムにおいて、更に低温ヒートシール強度が低く、易開封性等に優れた積層フィルムを提供する。【解決手段】(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層フィルムであって、(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層がそれぞれポリプロピレンを含有し、(B)コア層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、DSC曲線の第2回昇温行程の100から140℃の温度範囲で観測される結晶融解熱量ΔHが1.5J/g以上48.0J/g未満であり、(B)コア層を構成するポリプロピレンの230℃、2160g荷重における平均MFRが1.0から8.0(g/10min)である、上記積層フィルム。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリプロピレンを含有するポリオレフィン系の積層フィルムに関し、より具体的にはパン包装用フィルム等において好適に用いられ、特に低温ヒートシール強度が低く易開封性に優れるとともに、バイオマス由来の樹脂を使用することにより環境負荷も低減された、積層フィルムに関する。
近年、環境負荷低減を目的に、各種の包装材に使用する樹脂フィルムを構成する材料の一部を、石油等の化石燃料由来の樹脂から、植物由来の樹脂に置き換える検討がなされている。
例えば、基材層、中間層、シーラント層の3層からなる無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムであって、前記基材層はポリプロピレン系樹脂を主体とし、前記中間層はバイオマス由来ポリエチレン系樹脂単独又は前記バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を1重量%以上とポリプロピレン系樹脂とからなり、前記シーラント層はポリプロピレン系樹脂を主体とすることを特徴とする無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムが提案されており、またここで上記バイオマス由来ポリエチレン系樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレンを使用することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1記載の様な構成の積層フィルムは、透明性や耐衝撃性に優れるとともに、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を使用することで、環境への負荷が低減された無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを提供するものであるため、レトルト食品用包装材のシーラントフィルムや雑貨の包装、各種工業用として広く活用されているが、一層広い用途への展開にあたり、易開封性等の観点から低温ヒートシール強度を一層低いものとすることが求められている。
特開2020-75400号公報
上記技術背景に鑑み、本発明は、ポリプロピレンを含有するポリオレフィン系の積層フィルムであって、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを使用し高いバイオマス度を有することにより環境負荷が低減された積層フィルムにおいて、更に低温ヒートシール強度が低く、易開封性等に優れた積層フィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層 フィルムであって、(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層がそれぞれポリプロピレンを含有し、(B)コア層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含有する積層フィルムにおいて、積層フィルムの結晶融解熱量ΔH及び(B)コア層を構成するポリプロピレンの平均MFRをそれぞれ所定範囲内に設定することで、低温ヒートシール強度を効果的に低減し、従来技術の限界を超えた高い水準で、高バイオマス度と易開封性等とをバランスさせることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1]
(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層フィルムであって、
(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層がそれぞれポリプロピレンを含有し、
(B)コア層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、
DSC曲線の第2回昇温行程の100から140℃の温度範囲で観測される結晶融解熱量ΔHが1.5J/g以上48.0J/g未満であり、
(B)コア層を構成するポリプロピレンの230℃、2160g荷重における平均MFRが1.0から8.0(g/10min)である、上記積層フィルム、に関する。
以下、[2]から[7]は、いずれも本発明の好ましい一態様又は一実施形態である。
[2]
(B)コア層のバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの含有量が3.0から95.0質量%である、[1に記載の積層フィルム。
[3]
(B)コア層に含有される前記ポリプロピレン、及び/又は(C)ラミネート層に含有される前記ポリプロピレンが、ブロックポリプロピレンである、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[4]
(A)シール層に含有される前記ポリプロピレンが、ランダムポリプロピレンである、[1]から[3]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
[5]
(A)シール層が更に密度920kg/m以下のエチレン系(共)重合体を含有する、[1]から[4]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
[6]
前記バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnが、8.0以下である、[1]から[5]のいずれか1項に記載の積層フィルム。
[7]
パン包装用フィルムに使用される、[1]から6]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
本発明の積層フィルムは、ポリプロピレンに起因する優れた特性を維持しながら、低温ヒートシール強度を低減できるとともに、バイオマス由来の樹脂を使用することによりその製造等における環境負荷も低減されるなど、実用上高い価値を有する性質を、従来技術の限界を超えた高いレベルで兼ね備えたものであり、パン包装用フィルムをはじめとする各種用途において、好適に使用することができる。
本発明は、(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層フィルムであって、
(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層がそれぞれポリプロピレンを含有し、
(B)コア層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、
DSC曲線の第2回昇温行程の100から140℃の温度範囲で観測される結晶融解熱量ΔHが1.5J/g以上48.0J/g未満であり、
(B)コア層を構成するポリプロピレンの230℃、2160g荷重における平均MFRが1.0から8.0(g/10min)である、上記積層フィルム、である。
すなわち、本発明の積層フィルムは、その(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層がいずれもポリプロピレンを含有する。
また本発明の積層フィルムは、その(B)コア層に、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含有する。
以下、上記各成分について詳述する。
ポリプロピレン
本発明の積層フィルムの少なくとも(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層において使用されるポリプロピレンは、一般にポリプロピレン、プロピレン重合体、プロピレン系重合体の名称で製造・販売されている樹脂で、通常、密度が890~930kg/m程度のプロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)又は、プロピレン共重合体、すなわち、プロピレンと共に、他の少量のα-オレフィン等から選ばれる少なくとも1種以上のコモノマーから導かれる共重合体である。本発明においてはホモポリプロピレン、及びプロピレン共重合体のいずれを用いてもよく、プロピレン共重合体は、ブロックポリプロピレン、及びランダムポリプロピレンのいずれであってもよいが、(A)シール層においてはランダムポリプロピレンを用いることが好ましく、(B)コア層、及び(C)ラミネート層においてはブロックポリプロピレンを用いることが好ましい。
(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層においてポリプロピレンを使用することで、本発明の積層フィルムに、強度、軽量性等の優れた特性を付与することができる。
プロピレン共重合体である場合における他のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテンなどの、エチレンと炭素原子数が4~20程度のα-オレフィンを例示することができる。このような他のα-オレフィンは、1種類を単独で共重合させてもよいし、2種以上のα-オレフィンを組み合わせて共重合させてもよい。
これらポリプロピレンの中でも、得られる積層フィルムの耐熱性や(B)コア層との相溶性等のバランスから、示差走査熱量計(DSC)に基づく融点が110~170℃、とくに115~165℃の範囲にあるプロピレン重合体が好ましく用いられる。
ランダムポリプロピレンの場合には、上記融点が110~150℃であることが好ましく、115~145℃であることが特に好ましい。
ブロックポリプロピレンの場合には、上記融点が125~165℃であることが好ましく、130~165℃であることが特に好ましい。
本発明において用いられるポリプロピレンが単独で、又はエチレン系重合体、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体、粘着付与樹脂等の他の樹脂とのブレンドで、フィルム形成能を有する限りにおいて、そのメルトフローレート(MFR)は特に限定はされないが、押出加工性等の点からメルトフローレート(MFR)(JIS K 7210:99、230℃、2160g荷重)は通常、0.01~100g/10分、好ましくは0.1~70g/10分の範囲にある。
ランダムポリプロピレンの場合には、上記MFRが1.0~40g/10分であることが好ましく、2.0~20g/10分であることが特に好ましい。
ブロックポリプロピレンの場合には、上記MFRが0.3~40g/10分であることが好ましく、0.5~20g/10分であることが特に好ましい。
(B)コア層を構成するポリプロピレンの平均MFRを1.0から8.0(g/10min)とすることを容易にする観点からは、(B)コア層に使用するポリプロピレン、好ましくはブロックポリプロピレン、の上記MFRは0.5~15g/10分であることが好ましく、0.5~10g/10分であることが特に好ましい。
本発明において用いられるポリプロピレンとしては、2種以上のポリプロピレンを組合せて使用することもできる。
本発明において用いられるポリプロピレンは、種々公知の製造方法、具体的には、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒やシングルサイト触媒のようなオレフィン重合用触媒を用いて製造することができる。特にはシングルサイト触媒を用いて製造することができる。シングルサイト触媒は、活性点が均一(シングルサイト)である触媒であり、例えばメタロセン触媒(いわゆるカミンスキー触媒)やブルックハート触媒などがあげられる。メタロセン触媒は、メタロセン系遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物及び上記メタロセン系遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されていてもよい。
ポリプロピレンには、本発明の目的に反しない限りにおいて、シリカ、タルクなどの無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料等の各種添加剤を配合することができる。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン
本発明において少なくとも(B)コア層に用いられる、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンとは、バイオマス由来の原料を用いて製造したエチレンを重合して得られる密度900~940kg/mの直鎖状低密度ポリエチレンを指称する。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、炭素数1000個あたり、SCB(炭素数1から5の側鎖。「短鎖分岐」ともいう。)を10~30個有することが好ましい。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは、905~935kg/m、より好ましくは、910~930kg/mである。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンのMFR(2.16kg、190℃)には特に制限はないが、成形性等の観点から、好ましくは0.5~20.0g/10分、より好ましくは、0.6~15.0g/10分であり、さらに好ましくは0.7~10.0g/10分であり、特に好ましくは0.8~5.0g/10分である。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの分子量分布にも特に制限はないが、一層良好な易開封性、柔軟性、成形性等の観点から、分子量分布(重量平均分子量:Mw、と数平均分子量:Mn、との比:Mw/Mnで表示)が8.0以下であることが好ましく、2.5~7.5であることがより好ましく、さらに好ましくは2.5~7.0の範囲にある。このMw/Mnはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定でき、より具体的には例えば本願実施例に記載の方法により測定することができる。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、示差走査熱量計(DSC)の昇温速度10℃/分で測定した吸熱曲線から求めた鋭いピークが1個ないし複数個あり、該ピークの最高温度、すなわち融点が90~140℃であることが好ましく、さらに好ましくは100~130℃の範囲にある。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、市販品でもよく、例えば、Braskem社から製造販売されているものを用いることができる。具体的な銘柄としては、SLH118、SLL118等を好適に使用することができる。
本発明において用いられる、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、バイオマス由来のエチレン(及び/又はバイオマス由来のコモノマー)を含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンには、下記の製造方法により得られたものを用いることが好ましいが、それには限定されない。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレン(及び/又はバイオマス由来のコモノマー)を用いているため、重合されてなる直鎖状低密度ポリエチレンはバイオマス由来となる。なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレン(及びバイオマス由来のコモノマー)を100質量%含むものでなくてもよく、バイオマス由来ではないエチレンや、エチレン以外の原料モノマーを含んでいてもよい。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの原料となるバイオマスエチレン等の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により得ることができる。以下、バイオマスエチレンの製造方法の一例を説明する。
バイオマスエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。植物原料は、特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、およびマニオクを挙げることができる。
本発明において、バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物原料より得られる炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールを指す。培養液からのエタノールの精製は、蒸留、膜分離、および抽出等の従来公知の方法が適用可能である。例えば、ベンゼン、シクロヘキサン等を添加し、共沸させるか、または膜分離等により水分を除去する等の方法が挙げられる。
バイオマスエチレンを得るために、この段階で、エタノール中の不純物総量が1ppm以下にする等の高度な精製をさらに行ってもよい。
エタノールの脱水反応によりエチレンを得る際には通常触媒が用いられるが、この触媒は、特に限定されず、従来公知の触媒を用いることができる。プロセス上有利なのは、触媒と生成物の分離が容易な固定床流通反応であり、例えば、γ-アルミナ等が好ましい。
この脱水反応は吸熱反応であるため、通常加熱条件で行う。商業的に有用な反応速度で
反応が進行すれば、加熱温度は限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上の温度が適当である。上限も特に限定されないが、エネルギー収支および設備の観点から、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下である。
反応圧力も特に限定されないが、後続の気液分離を容易にするため常圧以上の圧力が好ましい。工業的には触媒の分離の容易な固定床流通反応が好適であるが、液相懸濁床、流動床等でもよい。
エタノールの脱水反応においては、原料として供給するエタノール中に含まれる水分量によって反応の収率が左右される。一般的に、脱水反応を行う場合には、水の除去効率を考えると水が無いほうが好ましい。しかしながら、固体触媒を用いたエタノールの脱水反応の場合、水が存在しないと他のオレフィン、特にブテンの生成量が増加する傾向にあることが判明した。恐らく、少量の水が存在しないと脱水後のエチレン二量化を押さえることができないためと推察している。許容される水の含有量の下限は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上必要である。上限は特に限定されないが、物質収支上および熱収支の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
このようにしてエタノールの脱水反応を行うことによりエチレン、水および少量の未反応エタノールの混合部が得られるが、常温において約5MPa以下ではエチレンは気体であるため、これら混合部から気液分離により水やエタノールを除きエチレンを得ることができる。この方法は公知の方法で行えばよい。
気液分離により得られたエチレンはさらに蒸留され、このときの操作圧力が常圧以上であること以外は、蒸留方法、操作温度、および滞留時間等は特に制約されない。
原料がバイオマス由来の発酵エタノールの場合、得られたエチレンには、エタノール発酵工程で混入した不純物であるケトン、アルデヒド、およびエステル等のカルボニル化合物ならびにその分解物である炭酸ガスや、酵素の分解物・夾雑物であるアミンおよびアミノ酸等の含窒素化合物ならびにその分解物であるアンモニア等が極微量含まれる。ポリエチレンの製造や使用においては、これら極微量の不純物が問題となるおそれがあるので、精製により除去しても良い。精製方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。好適な精製操作としては、例えば、吸着精製法をあげることができる。用いる吸着剤は特に限定されず、従来公知の吸着剤を用いることができる。例えば、高表面積の材料が好ましく、吸着剤の種類としては、バイオマス由来の発酵エタノールの脱水反応により得られるエチレン中の不純物の種類・量に応じて選択される。
なお、エチレン中の不純物の精製方法として苛性水処理を併用してもよい。苛性水処理をする場合は、吸着精製前に行うことが望ましい。その場合、苛性処理後、吸着精製前に水分除去処理を施す必要がある。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンをさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
上記のバイオマス由来のα-オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3~20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの多量化により製造することが可能となるからである。また、このようなバイオマス由来のα-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリオレフィンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(14C)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、14Cが一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中の14C含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中には14Cが殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれる14Cの割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、ポリエチレン中の14Cの含有量をP14Cとした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
bio(%)=P14C/105.5×100
本発明で用いることのできるバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンにおいては、理論上、ポリエチレンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリエチレンのバイオマス度は100%となる。なお、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリエチレンのバイオマス度は0%となる。
本発明において、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、バイオマス度が100%である必要はない。バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの一部にでもバイオマス由来の原料が用いられていれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減できるからである。
本発明で用いることができるバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンにおいて、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。
重合触媒として、チーグラー触媒、フィリップス触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。
分子量分布が広く柔軟性や成形性に優れたバイオマスポリエチレンを得る観点からは、チーグラー触媒、フィリップス触媒等のマルチサイト触媒を用いることが好ましい。
好ましいチーグラー触媒としては、エチレン、α-オレフィンの配位重合に用いるチーグラー触媒として一般的に知られているものでよく、例えばチタン化合物および有機アルミニウム化合物を含む触媒であり、ハロゲン化チタン化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒、チタニウム、マグネシム、塩素等からなる固体触媒成分と有機アルミニウム化合物からなる触媒等を例示することができる。このような触媒としては、より具体的には、無水マグネシウムジハロゲン化物のアルコール予備処理物と有機金属化合物との反応生成物にチタン化合物を反応させて得られる触媒成分(a)と有機金属化合物(b)からなる触媒、マグネシウム金属と水酸化有機化合物またはマグネシウムなどの酸素含有有機化合物、遷移金属の酸素含有有機化合物、およびアルミニウムハロゲン化物を反応させて得られる触媒成分(A)と有機金属化合物の触媒成分(B)とからなる触媒、(i)金属マグネシウムと水酸化有機化合物、マグネシウムの酸素含有有機化合物、およびハロゲン含有化合物から選んだ少なくとも一員、(ii)遷移金属の酸素含有有機化合物およびハロゲン含有化合物から選ばれた少なくとも一員、(iii)ケイ素化合物を反応させて得られる反応物と、(iv)ハロゲン化アルミニウム化合物を反応させて得られる固体触媒成分(A)と有機金属化合物の触媒成分(B)とからなる触媒等を例示することができる。
また、フィリップス触媒としては、エチレン、α-オレフィンの配位重合に用いるフィリップス触媒として一般的に知られているものでよく、たとえば酸化クロム等のクロム化合物を含む触媒系であり、具体的には、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア等の固体酸化物に、三酸化クロム、クロム酸エステル等のクロム化合物を担持した触媒を例示することができる。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、通常、エチレンとαーオレフィンとの共重合体であるが、重合とともにエチレンの多量化を進行させることで、エチレンのみを原料として製造することもできる。
α-オレフィンとしては、炭素数が3~20の化合物を用いることができ、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。α-オレフィンは、好ましくは、炭素数4、6又は8の化合物若しくはこれらの混合物であり、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン若しくはこれらの混合物である。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。また、他のエチレン系重合体をはじめとする、他のポリマーと共に用いてもよい。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンには、本発明の目的を損なわない範囲で、通常オレフィン重合体に添加される種々公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤(滑剤)等を必要に応じて配合することができる。
本発明の積層フィルムは、以下に説明する(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する。
(A)シール層
本発明の積層フィルムを構成する(A)シール層は、ポリプロピレンを含有する。(A)シール層がポリプロピレンを含有することで、本発明の積層フィルムは、強度、透明性、軽量性、弾性率等の好ましい効果を実現することができる。
良好なヒートシール性を実現する等の観点からは、(A)シール層が含有するポリプロピレンは、その一部または全部がランダムポリプロピレンであることが好ましい。
(A)シール層中のポリプロピレンの含有量は、40質量%以上であることが好ましく、45~99.9質量%であることがより好ましく、50~99.8質量%であることが特に好ましい。
(A)シール層は、ポリプロピレンのみで構成されていてもよく、ポリプロピレンに加えて、各種樹脂、各種添加剤等の、それ以外の成分を含んでいてもよい。
上記各種樹脂として、オレフィン系(共)重合体を挙げることができ、ヒートシール特性の調整、低温耐衝撃性の調整等の観点から、密度920kg/m以下のオレフィン系(共)重合体を使用することが好ましい。
密度920kg/m以下のオレフィン系(共)重合体は、エチレン及び炭素数3から20のα-オレフィンから選ばれる、1種又は2種以上のオレフィンの(共)重合体である。上記1種又は2種以上のオレフィンには特に制限は無いが、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等を好ましい例として挙げることができる。
密度920kg/m以下のオレフィン系(共)重合体の好ましい具体例として、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4―メチル―1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等の各種エチレン系共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体等の各種プロピレン系共重合体、1-ブテン・プロピレン共重合体(BPR)等の各種1-ブテン系共重合体等を挙げることができるが、これらには限定されない。
中でも、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、エチレン・1-ブテン共重合体(EBR)、プロピレン・エチレン共重合体(PER)1-ブテン・プロピレン共重合体(BPR)等を好ましく使用することができる。
密度920kg/m以下のオレフィン系(共)重合体の密度は、好ましくは、850~915kg/mであり、より好ましくは、860~910kg/mである。
オレフィン系(共)重合体の密度は、コモノマー含量を調整することで適宜調整することができ、また触媒や重合温度等の重合条件を選択、調製することでも適宜調整することができる。
密度920kg/m以下のオレフィン系(共)重合体の融点は、好ましくは、30~120℃であり、より好ましくは、40~100℃である。
オレフィン系(共)重合体の融点は、コモノマー含量や分子量を調整することで適宜調整することができ、また触媒や重合温度等の重合条件を選択、調製することでも適宜調整することができる。
オレフィン系(共)重合体のMFR(230℃、2160g荷重)は、1.0~20g/10分であることが好ましく、2.0~17g/10minであることがより好ましく、3.0~15g/10minであることが特に好ましい。
オレフィン系(共)重合体のMFR(230℃、2160g荷重)は、従来公知の方法により適宜調整することが可能であり、重合温度等の重合条件を調整したり、分子量調整剤を導入したりすること等で調整することが可能である。
オレフィン系(共)重合体は、チーグラー触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒をはじめとする従来公知の触媒を用いた従来公知の製造法により製造することができる。
分子量分布が狭く、高強度のフィルムを形成し得るオレフィン系(共)重合体を得る等の観点からは、シングルサイト触媒を用いることが好ましい。
分子量分布が広く柔軟性や成形性に優れたオレフィン系(共)重合体を得る等の観点からは、チーグラー触媒、フィリップス触媒等のマルチサイト触媒を用いることが好ましい。
各種添加剤として、アンチブロッキング剤、スリップ剤、造核剤、静防剤等を挙げることができる。フィルムの貯蔵やハンドリングの際の利便性、内容物の充填適性等の観点から、アンチブロッキング剤、及び/又はスリップ剤を使用することが好ましく、アンチブロッキング剤、及び/又はスリップ剤として、シリカ、タルク、珪藻土、高級脂肪酸アミド等を使用することができる。
アンチブロッキング剤、及び/又はスリップ剤はマスターバッチの形態で添加してもよく、(A)シール層を構成するポリプロピレンとの親和性等の観点からは、プロピレン系の樹脂をベース樹脂としたマスターバッチを好ましく使用することができる。
(A)シール層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含有していてもよい。
(A)シール層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含有することで、積層フィルムのバイオマス度を一層向上することができる。
(A)シール層におけるバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2~41質量%であることがより好ましく、0.3~40質量%であることが特に好ましい。
(A)シール層のバイオマス度の測定方法は、(B)コア層のバイオマス度に関して後述するものと同様である。
(A)シール層の厚みには特に制限はないが、弾性率等の観点から、1.3μm以上であることが好ましく、2.5μm以上であることが特に好ましい。
一方、透明性等の観点からは、25μm以下であることが好ましく、23μm以下であることが特に好ましい。
(B)コア層
本発明の積層フィルムを構成する(B)コア層は、ポリプロピレン及びバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含有する。
(B)コア層がポリプロピレンを含有することで、腰感、耐熱性等の好ましい効果を実現することができる。上記効果を効果的に発揮する観点から、(B)コア層におけるポリプロピレンはブロックポリプロピレンであることが好ましい。
(B)コア層におけるポリプロピレンの含有量に特に制限はないが、5.0~99.9質量%であることが好ましく、7.0~99.8質量%であることが特に好ましい。
(B)コア層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含有することで、バイオマス度が向上し環境負荷が低減されるとともに、本発明の他の要件をも具備することと相俟って、低い低温ヒートシール強度等の好ましい効果を実現することができる。
(B)コア層におけるバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、3.0~95.0質量%であることが好ましく、4.3~90.0質量であることがより好ましく、4.7~87.0質量%であることが特に好ましい。(B)コア層におけるバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの含有量が上記範囲内にあることで、DSC曲線の第2回昇温行程の100から140℃の温度範囲で観測される積層フィルムの結晶融解熱量ΔHを1.5J/g以上48.0J/g未満の範囲内とすることが一層容易となり、ひいては、積層フィルムの結晶融解熱量ΔHを1.5J/g以上48.0J/g未満の範囲内、かつ、(B)コア層を構成するポリプロピレンの230℃、2160g荷重における平均MFRを1.0から8.0(g/10min)の範囲内とすることが一層容易となり、ポリプロピレンに起因する優れた特性を維持しながら、低温ヒートシール強度を低減し、バイオマス由来の樹脂を使用することによりその製造等における環境負荷も低減することが一層容易となる。
上述の高いバイオマス度、低い低温ヒートシール強度等の好ましい効果を一層顕著なものとする観点から、(B)コア層の厚みを、(A)シール層の厚み及び(C)ラミネート層の厚みよりも大きなものとすることが好ましく、(A)シール層の厚み及び(C)ラミネート層の厚みの和と同等又はそれよりも大きなものとすることが特に好ましい。具体的には、(B)コア層の厚みが、(A)シール層の厚み及び(C)ラミネート層の厚みの和の55%以上であることが好ましく、70%から240%であることがより好ましく、85%から160%であることが特に好ましい。
なお、(B)コア層の厚みは、2.5~50μmであることが好ましく、より好ましくは5.0~45μmの範囲にある。
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、例えば、(B)コア層を製造する際の樹脂組成物の配合を調整することによって適宜増減させることができる。
製造後の(B)コア層のバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、例えば、放射性炭素(14C)測定によってフィルム中のバイオマス由来の炭素の含有量を測定し、この測定結果とバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン中のバイオマス由来の炭素の含有量とから計算することができる。
本発明においては、(B)コア層を構成するポリプロピレンの平均MFRは、1.0から8.0(g/10min)である。(B)コア層を構成するポリプロピレンの平均MFRが上記範囲内にあることで、本発明の他の要件を具備することとも相俟って、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを添加しても、低温ヒートシール強度が低く、ポリプロピレンに起因する優れた特性を維持することができる、という実用上高い価値を有する技術的効果を実現することができる。
(B)コア層を構成するポリプロピレンの平均MFRは、コア層を構成する各成分のうちポリプロピレンに該当するもののMFR(JIS K 7210:99、230℃、2160g荷重)を測定し、複数種のポリプロピレンが存在する場合にはそのlogベースでの平均値を計算することで特定することができる。より具体的には、下式にしたがい(B)コア層を構成するポリプロピレンの平均MFRを計算することができる。

(平均MFR)=10^(((M)×log(MFR)+(M)×log(MFR)+...+(M)×log(MFR))/(M+M+...+M))

式中、
:1番目のポリプロピレンの添加量(質量%)
:2番目のポリプロピレンの添加量(質量%)
:n番目のポリプロピレンの添加量(質量%)
MFR:1番目のポリプロピレンのMFR(g/10min)
MFR:2番目のポリプロピレンのMFR(g/10min)
MFR:n番目のポリプロピレンのMFR(g/10min)
である。
また、logの底は10である。
(B)コア層を構成するポリプロピレンの平均MFRは、2.0から7.7(g/10min)であることがより好ましく、2.5から7.3(g/10min)であることが更に好ましく、2.8から7.0(g/10min)であることが特に好ましい。
(B)コア層を構成するポリプロピレンの平均MFRは、各ポリプロピレンのMFR及び添加量を調整することによって、適宜調整することができる。
(B)コア層が各種樹脂、各種添加剤等の、それ以外の成分を含んでいてもよいこと、及びその好ましい成分、態様等の詳細は、(A)シール層の場合と同様である。
(C)ラミネート層
本発明の積層フィルムを構成する(C)ラミネート層はポリプロピレンを含有する。
ポリプロピレンは、耐熱性が高く、軽量で、低コストなので、これを含有することで(C)ラミネート層を、耐熱性が高く、軽量で、低コストなものとすることができる。
更に、層間の親和性の点からも、(C)ラミネート層にポリプロピレンを用いることで、隣接する(B)コア層等との親和性を高いものとすることができる。また、積層フィルム全体を耐熱性が高く、軽量で、低コストなものとすることができる。
(C)ラミネート層におけるポリプロピレンの含有量は、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。
(B)コア層におけるポリプロピレンと同様に、(C)ラミネート層におけるポリプロピレンもブロックポリプロピレンであることが好ましい。
本発明の積層フィルムを構成する(C)ラミネート層は、必要又は所望に応じて、後述の(D)基材層をはじめとする他の層と積層することができる。
従って、(C)ラミネート層は、(D)基材層をはじめとする他の層との間のラミネート強度等を考慮して設計することが好ましい。
例えば、(D)基材層をはじめとする他の層と同種の材料を添加してもよく、他の層との間のラミネート強度を更に向上するため、(C)ラミネート層の表面((B)コア層と積層する面とは反対側の面)に、コロナ処理、粗面化処理等の処理を行ってもよい。
本発明の積層フィルムを保管等する際のブロッキング防止の観点からは、(C)ラミネート層は、アンチブロッキング剤、及び/又はスリップ剤を含んでいてもよい。
アンチブロッキング剤、及び/又はスリップ剤としては、粉末状のシリカ、好ましくは合成シリカ、等を好適に使用することができる。粉末状のシリカを(C)ラミネート層中に均一に分散させる観点からは、粉末状のシリカを、(C)ラミネート層を構成するポリプロピレンとの混和性に優れた樹脂中、例えば各種ポリオレフィンに分散してマスターバッチを形成し、次いでマスターバッチをポリプロピレン中に添加してもよい。
(C)ラミネート層の厚みには特に制限はないが、1.3~25μmであることが好ましく、より好ましくは2.5~23μmの範囲にある。
(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層のいずれも、本発明の目的に反しない限りにおいて、ポリプロピレン以外の、各種添加材、充填材、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、染料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク、クレー、抗菌剤、防曇剤等を添加することができる。さらにまた、その他の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム類、炭化水素樹脂、石油樹脂等を本発明の目的に反しない範囲で配合してもよい。
積層フィルム
本発明の積層フィルムは、上述の様に、(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する。本発明の積層フィルムにおいては、好ましくは(B)コア層を介して、(C)ラミネート層と(A)シール層とが積層されるが、それ以外の層が存在していてもよい。
本発明の積層フィルムは、種々公知のフィルム成形方法、例えば、予め、(C)ラミネート層、(B)コア層、及び(A)シール層となるフィルムをそれぞれ成形した後、当該フィルムを貼り合せて積層フィルムとする方法、多層ダイを用いて(B)コア層及び(A)シール層からなる複層フィルムを得た後、当該(B)コア層面に、(C)ラミネート層を押出して積層フィルムとする方法、多層ダイを用いて(C)ラミネート層及び(B)コア層からなる複層フィルムを得た後、当該(B)コア層面に、(A)シール層を押出して積層フィルムとする方法、あるいは、多層ダイを用いて(C)ラミネート層、(B)コア層及び(A)シール層からなる積層フィルムを得る方法などを採用することができる。
また、フィルム成形方法は、種々公知のフィルム成形方法、具体的には、T-ダイキャストフィルム成形方法、インフレーションフィルム成形方法を採用し得る。
T-ダイ法により各層を成形する場合、成膜温度は100から300℃であることが好ましく、110から290℃であることが特に好ましい。
本発明の積層フィルム及びそれを構成する各層は、延伸されていないフィルム(無延伸フィルム)であっても、延伸フィルムであってもよい。
本発明の積層フィルムの厚さには特に限定はされないが、実用的な強度を確保する等の観点から、5μm以上であり、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。一方、例えば(D)基材層と積層された後においても実用的な可撓性を有する等の観点からは、通常100μm以下であり、好ましくは90μm以下、より好ましくは80μm以下である。
本発明の積層フィルムの、DSC測定より得られる第2回昇温工程の融解曲線より算出した100℃~140℃の結晶融解熱量ΔHは、1.5J/g以上48.0J/g未満である。
本発明の積層フィルムは、100℃~140℃の結晶融解熱量ΔHが上記範囲にあることで、特定の数値範囲内の(B)コア層のポリプロピレンの平均MFR等の本発明の他の要件をも具備することと相俟って、バイオマス由来の樹脂を使用することによりその製造等における環境負荷を低減しながら、低温ヒートシール強度が低く、ポリプロピレンに起因する優れた特性を維持することができる、という実用上高い価値を有する技術的効果を実現することができる。
100℃~140℃の結晶融解熱量ΔHが1.5J/g以上48.0J/g未満の範囲内にあることが上記の有利な技術的効果に寄与するメカニズムは必ずしも明らかではないが、ヒートシール温度に近い上記の温度範囲内で融解する結晶成分の量が適切な範囲内にあることで、低い低温ヒートシール強度を実現しやすい樹脂分散構造の形成が促進され得ることと何らかの関係が有ることが推定できる。
DSCによる第2回昇温工程の融解曲線の測定、及び当該融解曲線からの100℃~140℃の融解熱量ΔHの算出は、従来公知の方法により行うことができ、より具体的には、例えば本願実施例記載の方法により行うことができる。
100℃~140℃の結晶融解熱量ΔHは、3.5~48.0J/gであることがより好ましく、5.0~46.0J/gであることがさらに好ましい。
100℃~140℃の融解熱量ΔHは、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの添加量を増加することや、添加している層の厚み割合を増加すること等により増加させることができる。
本発明の積層フィルムのDSC測定より得られる第2回昇温工程の融解曲線より算出した100℃~140℃の結晶融解熱量ΔHは1.5J/g以上48.0J/g未満であり、かつ、(B)コア層を構成するポリプロピレンの230℃、2160g荷重における平均MFRは1.0から8.0(g/10min)である。
ΔHと(B)コア層を構成するポリプロピレンの平均MFRとがそれぞれ上記特定の数値範囲内にあることで、本発明の他の要件をも具備することと相俟って、本発明の積層フィルムは、バイオマス由来の樹脂を使用することによりその製造等における環境負荷を低減しながら、低温ヒートシール強度が低く、ポリプロピレンに起因する優れた特性を維持することができる、という実用上高い価値を有する技術的効果を実現することができる。
ΔHと(B)コア層を構成するポリプロピレンの平均MFRとがそれぞれ上記特定の数値範囲内にあることで、環境負荷を低減しながら、低温ヒートシール強度が低く、ポリプロピレンに起因する優れた特性を維持することができるメカニズムは必ずしも明らかではないが、ヒートシール温度に近い上記の温度範囲内で融解する結晶成分の量と(B)コア層のポリプロピレンの平均MFRとがそれぞれ適切な値であることで、低温ヒートシール強度を低減しやすい樹脂分散構造の形成が促進され得るところ、両者の値にそれぞれ最適範囲があり得るものと推定される。
積層フィルムの100℃~140℃のΔH及び(B)コア層を構成するポリプロピレンの平均MFRの好ましい数値範囲、及びそれらを適宜調整する手段は、それぞれ上記にて詳述したとおりである。
本発明の積層フィルムは、(B)コア層、並びに所望により(A)シール層、及び/又は(C)ラミネート層、にバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含有することで、製造における化石燃料の使用量を低減し、環境負荷を低減することができる。
積層フィルムのバイオマス度は、各層のバイオマス度を各層の質量で加重平均して計算することができる。
積層フィルムのバイオマス度は、各層のバイオマス度を調整することで適宜増減することができ、各層のバイオマス度は、各層に使用する樹脂のバイオマス度及びその使用量を調整することで適宜増減することができる。
本発明の積層フィルムのバイオマス度は、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.07質量%以上であることが特に好ましい。
本発明の積層フィルムのバイオマス度には特に上限は存在しないが、100℃~140℃の結晶融解熱量ΔHの上限48.0J/gや、コスト等との関係から、通常70質量%以下であり、多くの場合60質量%以下である。
本発明の積層フィルムは延伸フィルムであっても無延伸フィルムであってもよいが、
機械的物性の向上の観点からは、延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることが特に好ましい。
二軸延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、多段延伸等の方法が適宜採用される。
二軸延伸の条件としては、公知の二軸延伸フィルムの製造条件、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度を100~145℃、延伸倍率を4~7倍の範囲、横延伸温度を150~190℃、延伸倍率を8~11倍の範囲とすることが挙げられる。
本発明の積層フィルムのヘーズには特に制限は無く、低ヘーズ品であっても高ヘーズ品であっても、高バイオマス度、低い低温ヒートシール強度等を高いレベルでバランスさせるという本発明の効果を実現することができるが、意匠性、遮光性等の観点からは、高ヘーズであることが好ましい。より具体的には、本発明の積層フィルムのヘーズは、68%以上であることが好ましく、69~99%であることがより好ましく、70~98%であることが特に好ましい。
本発明の積層フィルムのヘーズは、JIS K7136にしたがって測定することが可能であり、より具体的には、本願実施例に記載の方法によって測定することができる。
本発明の積層フィルムのヘーズは、積層フィルムを構成する各成分の種類及び配合量を調整することで適宜調整することが可能であり、例えば、ラミネート層におけるブロックポリプロピレンの使用量を増やすことによってヘーズを増大させることができる。
本発明の積層フィルムの弾性率には特に制限は無いが、腰感、製袋適性等の観点から、MD方向において220~850MPaであることが好ましく、230~840MPaであることがより好ましく、240~830MPaであることが特に好ましい。
また、TD方向においては、210~830MPaであることが好ましく、220~820MPaであることがより好ましく、230~810MPaであることが特に好ましい。
本発明の積層フィルムの弾性率は、本技術分野において従来公知の方法にしたがって測定することが可能であり、より具体的には、本願実施例に記載の方法によって測定することができる。
本発明の積層フィルムの弾性率は、積層フィルムを構成する各成分の種類及び配合量を調整することで適宜調整することが可能であり、例えば、コア層における造核剤の使用量を増やすことによって弾性率を増大させることができる。
また、延伸を行う場合には、その条件によっても積層フィルムの弾性率を調整することが可能であり、例えばMD方向の延伸倍率を1.0から10.0倍にすることにより、MD方向の弾性率を増大させることができる。
本発明の積層フィルムは低い低温ヒートシール強度等と高バイオマス度とを従来技術の限界を超えて高いレベルで両立させるものであるが、その低温ヒートシール強度自体には特に制限は無い。尤も、パン包装用フィルム等に使用した場合の易開封性等の観点からは、ヒートシール温度100℃における面々ヒートシール強度が、2.2(N/15mm)以下であることが好ましい。ヒートシール温度100℃における面々ヒートシール強度は、0.1~2.1(N/15mm)であることがより好ましく、0.2~2.0(N/15mm)であることが特に好ましい。
本発明の積層フィルムの面々ヒートシール強度は、本技術分野において従来公知の方法にしたがって測定することが可能であり、より具体的には、本願実施例に記載の方法によって測定することができる。
(D)基材層
所望に応じて、本発明の積層フィルムを、その(C)ラミネート層において、(D)基材層と積層することができる。
(D)基材層には特に制限はなく、例えば通常プラスチック包装に使用されるフィルムを、好適に使用することができる。
好ましい(D)基材層の材質としては、例えば、各種ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン、結晶性プロピレン-エチレン共重合体、結晶性ポリブテン-1、結晶性ポリ4-メチルペンテン-1、低-、中-、或いは高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ナイロン6、ナイロン66、パラまたはメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂から構成されたプラスチックフィルムを挙げることができる。また、包装する内容物が酸素に敏感なものの場合には、上記フィルムに金属酸化物等を蒸着したフィルム、或いは有機化合物を被覆したフィルムや、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなる層を設けてもよい。
これらの材料からなるプラスチックフィルムは、未延伸、一軸延伸、或いは二軸延伸して用いられる。
(D)基材層として、これらのプラスチックフィルムを単層で、或いは、二種以上を積層したものとして使用することができ、また、これらのプラスチックフィルムの一種、或いは、二種以上と、アルミニウム等の金属箔、紙、セロファン等を貼合わせて構成することもできる。
好ましい(D)基材層として、例えば、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエステルフィルムからなる単層フィルム、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムとPETを積層した二層構成のフィルム、PET/ナイロン/ポリエチレンを積層した三層構成のフィルム等が挙げられる。これらの積層フィルムの製造に際しては、各層間に必要に応じて接着剤、アンカー剤を介在させることもできる。また、デザインを表現するインキ層を設けてもよい。
(D)基材層を(C)ラミネート層に積層する方法には特に制限はないが、例えば押出しラミネート等により(C)ラミネート層に(D)基材層を直接積層することができる。また、ドライラミネート等により接着剤を介して(C)ラミネート層に(D)基材層を積層してもよい。接着剤としては、ウレタン系接着剤、酸変性ポリオレフィン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリアミド系接着剤等、通常のものを使用することができる。
(D)基材層の厚さは任意に設定することができるが、通常は、5~1000μm、好ましくは9~100μmの範囲から選択される。
本発明の積層フィルム、及び本発明の積層フィルムの(C)ラミネート層に(D)基材層を積層した積層フィルムは、各種用途において好ましく使用され、特に包材として使用するのに適している。
その様な包材の好ましい例として、パン包装用フィルム、容器を挙げることができる。
本発明の積層フィルムは、低い低温ヒートシール強度を有するので、適宜ヒートシール温度を調節することで、必要な箇所の易開封性に優れたパン包装用フィルム、容器を実現することができる。
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
実施例/比較例における物性、特性の評価は、以下の方法により行った。
(1)分子量分布(Mw/Mn)
下記の条件で、ポリマー試料を前処理後、GPCで分子量を測定し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)を分子量分布とした。
i)前処理
試料(30mg)にGPC測定用移動相(o-ジクロロベンゼン)20mLを加えて145℃で振とう溶解し、得られた溶液を孔径が1.0μmの焼結フィルタで熱ろ過したものをGPC測定に供した。
ii)GPC
装置:東ソー株式会社製、ゲル浸透クロマトグラフHLC-8321
カラム:東ソー株式会社製、内径7.5mm×30cm、4本(TSKgel GMH6-HT:2本、及びTSKgel GMH6-HTL:2本)
カラム温度:140℃
検出器:示差屈折計
流量:1mL/min
サンプリング間隔:0.5秒
(2)融解熱量
示差走査熱量計(DSC)としてティー・エイ・インスツルメント社製Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JISK7121を参考にし、窒素ガス流入量:50ml/分の条件下で、-50℃から加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して熱融解曲線を測定し、得られた熱融解曲線(第2回昇温時)の100~140℃における試料の結晶融解熱量ΔHを求めた。
(3)面々ヒートシール強度
各実施例/比較例/参考例で製造した積層フィルムをその(C)ラミネート層側の面で厚み12μmのセロハンフィルムに重ね試料フィルム(50mm×150mm)を作製した。
上記の試料フィルムのシール面同士を合わせ、精密ヒートシーラー(テスター産業製)を用いて温度100℃、圧力0.2MPaで幅5mmのシールバーにより、1秒間ヒートシールした後、放冷し、次いでヒートシールしたサンプルから15mm幅の試験片を切り取り、23℃、50%RHの恒温室において引張速度500mm/分の条件で、万能型引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)で180度方向に剥離して最大荷重を測定し、100℃ヒートシール強度(N/15mm)とした。
(4)MFR
(B)コア層を構成するポリプロピレンのMFRを、JIS K 7210:99に準拠し、230℃、2160g荷重にて測定した。
(B)コア層が複数種のポリプロピレンを含有する場合には、上記の方法で測定した各ポリプロピレンのMFRから、下式にしたがい(B)コア層を構成するポリプロピレンの平均MFRを計算した。

(平均MFR)=10^(((M)×log(MFR)+(M)×log(MFR)+...+(M)×log(MFR))/(M+M+...+M))

式中、
:1番目のポリプロピレンの添加量(質量%)
:2番目のポリプロピレンの添加量(質量%)
:n番目のポリプロピレンの添加量(質量%)
MFR:1番目のポリプロピレンのMFR(g/10min)
MFR:2番目のポリプロピレンのMFR(g/10min)
MFR:n番目のポリプロピレンのMFR(g/10min)
である。
また、logの底は10である。
(5)ヘーズ
ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH5000)を用い、JIS K7136に準拠し、1枚ヘーズを測定した。測定値は5回の平均値である。
(6)弾性率
試験片として、積層フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、RTG1210)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:5mm/分の条件で引張試験を行い、ヤング率(MPa)を求めた。測定値は5回の平均値である。
実施例/比較例で用いた樹脂等の各構成成分の詳細は、以下のとおりである。
・バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(B-LLDPE-1)
MFR(2.16kg、190℃):1.0g/10min
密度:916kg/m
分子量分布(Mw/Mn):4.43
バイオマス度:84質量%

・ランダムポリプロピレン-1(rPP-1)
密度:910kg/m
MFR(2.16kg、230℃):7.0g/10分
融点:133℃

・ブロックポリプロピレン-1(bPP-1)
密度:910kg/m
MFR(2.16kg、230℃):3.0g/10分
融点:164℃

・ブロックポリプロピレン-2(bPP-2)
密度:910kg/m
MFR(2.16kg、230℃):6.8g/10分
融点:161℃

・ブロックポリプロピレン-3(bPP-3)
密度:900kg/m
MFR(2.16kg、230℃):8.7g/10分
融点:161℃

・ブロックポリプロピレン-4(bPP-4)
密度:910kg/m
MFR(2.16kg、230℃):3.8g/10分
融点:162℃

・1-ブテン・プロピレン共重合体-1(BPR-1)
密度:900kg/m
MFR(2.16kg、230℃):9.0g/10分
融点:58℃

・PP系アンチブロッキング/スリッピング剤マスターバッチ-1(AB/SL-1)
アンチブロッキング/スリッピング剤として脂肪酸アミド及びシリカをベース樹脂であるランダムポリプロピレン中に配合した組成物
MFR(2.16kg、230℃):8.9g/10分
脂肪酸アミド:15,000ppm
平均粒径3μmの合成シリカ:20,000ppm
平均粒径5μmの合成シリカ:50,000ppm

・PP系スリッピング剤マスターバッチ-1(SL-1)
スリッピング剤として脂肪酸アミドをベース樹脂であるホモポリプロピレン中に配合した組成物
MFR(2.16kg、230℃):26.5g/10分
脂肪酸アミド:200,000ppm
(参考例1)
各層を構成する成分を表1に示す配合(質量部)で、それぞれ別々の押出機に供給し、Tダイ法によって(A)シール層/(B)コア層/(C)ラミネ-ト層となる構成の三層共押出フィルムからなる、厚み30μmの積層フィルムを成形し、(C)ラミネ-ト層にコロナ処理を施して熱融着性を有する積層フィルムを得た。製膜温度は200~240℃、圧力は(A)シール層4.8~6.2MPa、(B)コア層:8.8~22.0MPa、(C)ラミネート層;4.8~5.6MPa、各層の厚み比率は(A)シール層:(B)コア層:(C)ラミネ-ト層=15:70:15であった。
得られた積層フィルムについて、上記(2)、(3)、(5)及び(6)の方法にしたがい評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例1から13、比較例1、及び参考例2から3)
各層の組成を表1に示す通りに変更したことを除くほか、参考例1と同様にして積層フィルムを作製して、評価した。
結果を表1に示す。
本発明の積層フィルムは、ポリプロピレンに起因する優れた特性を維持しながら、低温ヒートシール強度を低減できるので易開封性等の点で有利であるとともに、バイオマス由来の樹脂を使用することによりその製造等における環境負荷も低減されるなど、実用上高い価値を有する性質を、従来技術の限界を超えた高いレベルで兼ね備えたものであり、しばしば易開封性が求められるパン包装用フィルムをはじめとする各種包材等の広汎な用途において好適に使用することができるので、食品製造、流通、小売り、外食等の産業の各分野において高い利用可能性を有する。

Claims (7)

  1. (A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有する積層フィルムであって、
    (A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層がそれぞれポリプロピレンを含有し、
    (B)コア層がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、
    DSC曲線の第2回昇温行程の100から140℃の温度範囲で観測される結晶融解熱量ΔHが1.5J/g以上48.0J/g未満であり、
    (B)コア層を構成するポリプロピレンの230℃、2160g荷重における平均MFRが1.0から8.0(g/10min)である、上記積層フィルム。
  2. (B)コア層のバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの含有量が3.0から95.0質量%である、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. (B)コア層に含有される前記ポリプロピレン、及び/又は(C)ラミネート層に含有される前記ポリプロピレンが、ブロックポリプロピレンである、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  4. (A)シール層に含有される前記ポリプロピレンが、ランダムポリプロピレンである、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  5. (A)シール層が更に密度920kg/m以下のエチレン系(共)重合体を含有する、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  6. 前記バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnが、8.0以下である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  7. パン包装用フィルムに使用される、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
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