JP2024086238A - アイオノマー樹脂粒状物の製造方法およびアイオノマー樹脂粒状物 - Google Patents

アイオノマー樹脂粒状物の製造方法およびアイオノマー樹脂粒状物 Download PDF

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Abstract

【課題】EMMAけん化法において生成する塩の除去性を向上して、透明性に優れたアイオノマー樹脂粒状物を製造する方法を提供すること。【解決手段】アイオノマー樹脂および溶媒を含むゾル状混合物を徐冷することによりゾル状混合物中のアイオノマー樹脂をゲル化させ、任意に粉砕して、多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルを得る工程、および多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルから溶媒を除去してアイオノマー樹脂粒状物を得る工程を含み、前記アイオノマー樹脂は、(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)およびエチレン単位(C)を含み、前記単位(A)および前記単位(B)の合計含有量は、前記アイオノマー樹脂を構成する全単量体単位を基準として6モル%以上10モル%以下である、アイオノマー樹脂粒状物の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、アイオノマー樹脂粒状物の製造方法、多孔質のアイオノマー樹脂粒状物、該アイオノマー樹脂粒状物を樹脂成分として含む層を1層以上含む樹脂シート、該樹脂シートからなる合わせガラス中間膜、および該合わせガラス中間膜を有する合わせガラスに関する。
アイオノマー樹脂の製造方法の1つとして、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を原料とし、該共重合体をけん化する工程を含む方法(以降「EMMAけん化法」ともいう)が知られている(例えば、特許文献1~3)。この方法は、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合工程を含む他のアイオノマー樹脂の製造方法(例えば、特許文献4)が耐腐食性の設備を必要とするのに対し、耐腐食性の設備は不要であるという利点を有する。さらに、EMMAけん化法では、様々な共重合組成のアイオノマー樹脂を製造できる。
特開昭60-240704号公報 特許第5554477号 特開昭63-270709号公報 米国特許8,399,096号
しかしながら、本発明者らの検討によれば、EMMAけん化法では、アルカリによるけん化反応および酸による脱金属反応を含むため、アルカリと酸との中和反応によって塩が生成し、この生成した塩により、アイオノマー樹脂の透明性、とりわけ、アイオノマー樹脂が吸水したときの透明性が低下する場合があることがわかった。
そこで、本発明者らは、けん化反応および脱金属反応後の反応液に貧溶媒を添加してアイオノマー樹脂を析出させる方法(以降、再沈殿法ともいう)により、上記反応によって生成した塩をアイオノマー樹脂から除去することを試みた。しかしながら、再沈殿法では、十分に塩を除去することができない場合があった。
したがって、本発明の目的は、EMMAけん化法において生成する塩の除去性を向上して、透明性に優れたアイオノマー樹脂粒状物を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、以下の好適な形態を提供するものである。
[1]アイオノマー樹脂および溶媒を含むゾル状混合物を徐冷することによりゾル状混合物中のアイオノマー樹脂をゲル化させ、任意に粉砕して、多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルを得る工程、および
多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルから溶媒を除去してアイオノマー樹脂粒状物を得る工程
を含み、
前記アイオノマー樹脂は、(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)およびエチレン単位(C)を含み、前記単位(A)および前記単位(B)の合計含有量は、前記アイオノマー樹脂を構成する全単量体単位を基準として6モル%以上10モル%以下である、
アイオノマー樹脂粒状物の製造方法。
[2]前記徐冷のための冷媒には貧溶媒を用いない、[1]に記載の方法。
[3]前記ゾル状混合物の温度は50℃以上である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記ゾル状混合物を40℃以下の温度まで徐冷する、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記アイオノマー樹脂粒状物の細孔のメディアン径は1.2μmより大きく50μm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記アイオノマー樹脂粒状物の空隙率は60%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記アイオノマー樹脂粒状物は、粒度0.01~8mmのペレット形状または不定形状を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記アイオノマー樹脂は、アイオノマー樹脂を構成する全単量体単位を基準として0.01モル%以上1.0モル%以下の(メタ)アクリル酸エステル単位(D)をさらに含む、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記ゾル状混合物中のアイオノマー樹脂の濃度は、ゾル状混合物の質量に対して18.5質量%以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物を洗浄液で洗浄することを含む、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]前記洗浄液は水、アルコールまたはこれらの混合液である、[10]に記載の方法。
[12]前記ゾル状混合物に含まれるアイオノマー樹脂中の強酸および強塩基からなる塩の含有量は100,000mg/kg以上である、[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]前記アイオノマー樹脂粒状物中の強酸および強塩基からなる塩の含有量は1000mg/kg以下である、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14]エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)を原料とする、[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15]細孔のメディアン径は1.2μmより大きく50μm以下である、多孔質のアイオノマー樹脂粒状物。
[16]空隙率は60%以上である、[15]に記載の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物。
[17]空隙率(%)を細孔のメディアン径(μm)で除した値は1~50である、[16]に記載の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物。
[18]粒度0.01~8mmのペレット形状または不定形状を有する、[15]~[17]のいずれかに記載の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物。
[19]強酸および強塩基からなる塩の含有量は1000mg/kg以下である、[15]~[18]のいずれかに記載の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物。
[20][15]~[19]のいずれかに記載の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物を樹脂成分として含む層を1層以上含む、樹脂シート。
[21][20]に記載の樹脂シートからなる合わせガラス中間膜。
[22]2つのガラス板と、該2つのガラス板の間に配置された[21]に記載の合わせガラス中間膜とを有する、合わせガラス。
本発明によれば、EMMAけん化法において生成する塩の除去性を向上して、透明性に優れたアイオノマー樹脂粒状物を製造する方法を提供できる。
図1は、ペレット形状のアイオノマー樹脂粒状物の粒度の算出に用いる該アイオノマー樹脂粒状物のX軸の長さ(Lx)、Y軸の長さ(Ly)およびZ軸の長さ(Lz)を示す概念図であり、図1中の右図は、図1中の左図に記載のペレット形状のアイオノマー樹脂粒状物をX軸方向から見た平面図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
[アイオノマー樹脂粒状物の製造方法]
本発明のアイオノマー樹脂粒状物の製造方法は、アイオノマー樹脂および溶媒を含むゾル状混合物を徐冷することによりゾル状混合物中のアイオノマー樹脂をゲル化させ、任意に粉砕して、多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルを得る工程(以降、「工程(I)」ともいう)、および多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルから溶媒を除去してアイオノマー樹脂粒状物を得る工程(以降、「工程(II)」ともいう)を含み、前記アイオノマー樹脂は、(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)およびエチレン単位(C)を含み、前記単位(A)および前記単位(B)の合計含有量は、前記アイオノマー樹脂を構成する全単量体単位を基準として6モル%以上10モル%以下である。
本発明者らは、EMMAけん化法により製造されたゾル状混合物に含まれるアイオノマー樹脂から、けん化反応および脱金属反応により生成した塩を除去する方法について検討をすすめたところ、前記アイオノマー樹脂を多孔質体とすれば、樹脂表面だけでなく、細孔を通じて樹脂内部からも塩を除去できるため、塩の除去性を向上できることを見出した。そこで、本発明者らは多孔質体の細孔のメディアン径と塩の除去性との関係に着目してさらに検討をすすめた結果、前記アイオノマー樹脂を、細孔のメディアン径が1.2μmより大きく50μm以下である多孔質の粒状物とすると、樹脂中の塩を十分に除去することができ、透明性に優れたアイオノマー樹脂粒状物が得られること、および、そのような細孔メディアン径を有する多孔質のアイオノマー樹脂は、前記ゾル状混合物を徐冷することにより前記アイオノマー樹脂をゲル化させ、得られたゲルから溶媒を除去することを含む方法により製造できることを見出した。したがって、工程(I)および(II)を含む方法でアイオノマー樹脂粒状物を製造すると、樹脂中の塩を除去でき、透明性に優れたアイオノマー樹脂粒状物を得ることができる。また、本発明者らは、本発明の方法が再沈殿法と比較して、溶媒の使用量および実施する場合の洗浄回数の工程を低減できることも見出した。
<工程(I)>
工程(I)は、アイオノマー樹脂および溶媒を含むゾル状混合物を徐冷することによりゾル状混合物中のアイオノマー樹脂をゲル化させ、任意に粉砕して、多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルを得る工程である。
(ゾル状混合物に含まれるアイオノマー樹脂)
工程(I)におけるゾル状混合物に含まれるアイオノマー樹脂(以降、「アイオノマー樹脂(Y)」ともいう)は、(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)およびエチレン単位(C)を含み、前記単位(A)および前記単位(B)の合計含有量は、前記アイオノマー樹脂(Y)を構成する全単量体単位を基準として6モル%以上10モル%以下である。
本明細書において、「単位」とは、「由来の構成単位」を意味するものであり、例えば(メタ)アクリル酸単位とは、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を示し、(メタ)アクリル酸中和物単位とは、(メタ)アクリル酸中和物由来の構成単位を示し、エチレン単位とはエチレン由来の構成単位を示す。また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸またはアクリル酸を示す。
前記合計含有量が上記上限を超えると、アイオノマー樹脂粒状物の成形加工時における溶融粘度の上昇を抑制し難く、それにより、アイオノマー樹脂粒状物の成形加工性が低下する傾向にある。さらに、前記合計含有量が上記下限未満であると、得られるアイオノマー樹脂粒状物の透明性、特に徐冷してアイオノマー樹脂の結晶化を促進させた場合における透明性(以降、徐冷時の透明性ともいう)が低下する傾向にある。前記合計含有量は、アイオノマー樹脂粒状物の透明性(特に徐冷時の透明性)およびガラス等の基材に対する接着性を向上できる観点から、6モル%以上、好ましくは6.5モル%以上、より好ましくは7.0モル%以上、さらに好ましくは7.5モル%以上であり、また、成形加工性を向上できる観点から、10モル%以下、好ましくは9.9モル%以下、より好ましくは9.5モル%以下である。
前記単位(A)および前記単位(B)の合計含有量は、後述のアイオノマー樹脂(Y)の製造方法により調整できる。より具体的には、アイオノマー樹脂(Y)の原料であるエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル単位を、前記けん化反応および脱金属反応によって、(メタ)アクリル酸単位(A)および(メタ)アクリル酸中和物単位(B)に変換する各反応の反応度(変換割合)によって調整できる。
(メタ)アクリル酸単位(A)を構成する単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、耐熱性および基材に対する接着性の観点から好ましくはメタクリル酸である。これら(メタ)アクリル酸単位は1種単独でも2種の組み合わせでもよい。
(メタ)アクリル酸単位(A)のアイオノマー樹脂(Y)中の含有量は、前記単位(A)および前記単位(B)の合計含有量が、アイオノマー樹脂(Y)を構成する全単量体単位を基準として6モル%以上10モル%以下の範囲内であれば特に制限されない。本発明の一実施形態において、(メタ)アクリル酸単位(A)のアイオノマー樹脂(Y)中の含有量は、アイオノマー樹脂(Y)を構成する全単量体単位を基準として、好ましくは4.5モル%以上、より好ましくは5.0モル%以上、さらに好ましくは5.5モル%以上、特に好ましくは5.8モル%以上であり、また、好ましくは9.0モル%以下、より好ましくは8.5モル%以下、さらに好ましくは8.0モル%以下、特に好ましくは7.5モル%以下である。単位(A)の前記含有量が上記下限以上であると、アイオノマー樹脂粒状物の透明性および基材に対する接着性を向上できる。また、上記上限以下であると、成形加工性を向上できる。
(メタ)アクリル酸中和物単位(B)としては、前記(メタ)アクリル酸単位(A)の中和物単位が好ましい。なお、(メタ)アクリル酸中和物は、(メタ)アクリル酸の水素イオンを金属イオンで置き換えたものである。前記金属イオンの例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等の1価金属のイオン、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、チタン等の多価金属のイオンが挙げられる。このような金属イオンは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。例えば、1種以上の1価金属イオンと1種以上の2価金属イオンとの組み合わせであってもよい。
(メタ)アクリル酸中和物単位(B)のアイオノマー樹脂(Y)中の含有量は、前記単位(A)および前記単位(B)の合計含有量が、前記アイオノマー樹脂(Y)を構成する全単量体単位を基準として6モル%以上10モル%以下の範囲内であれば特に制限されない。本発明の一実施形態において、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)の含有量は、アイオノマー樹脂(Y)を構成する全単量体単位を基準として、好ましくは0.65モル%以上、より好ましくは1.0モル%以上、さらに好ましくは1.5モル%以上、特に好ましくは1.7モル%以上であり、また、好ましくは3.0モル%以下、より好ましくは2.7モル%以下、さらに好ましくは2.6モル%以下、特に好ましくは2.5モル%以下である。単位(B)の含有量が上記下限以上であると、透明性および弾性率を向上でき、上記上限以下であると、成形加工時の溶融粘度の上昇を抑制できる。
前記単位(A)および前記単位(B)の各含有量は、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を原料とし、該共重合体のけん化反応工程および脱金属反応工程を含む方法によりアイオノマー樹脂を製造する場合、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル単位を、前記けん化反応および脱金属反応によって(メタ)アクリル酸単位(A)および(メタ)アクリル酸中和物単位(B)に変換する、各反応における反応度によって調整できる。
エチレン単位(C)の含有量は、アイオノマー樹脂(Y)を構成する全単量体単位を基準として、アイオノマー樹脂粒状物の耐衝撃性を向上できる観点、また融点を高め耐熱性を保持できる観点から、好ましくは90モル%以上、より好ましくは90.5モル%以上、さらに好ましくは91モル%以上であり、また、アイオノマー樹脂粒状物の透明性(特に徐冷時の透明性)を向上できる観点から、好ましくは94モル%以下、より好ましくは93モル%以下、さらに好ましくは92.5%以下である。エチレン単位(C)の含有量が上記下限以上であると、機械的特性および成形加工性を向上でき、また、上記上限以下であると、透明性を向上できる。
本発明の一実施形態において、アイオノマー樹脂(Y)は、(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)、およびエチレン単位(C)に加えて、より高い透明性を得ることができる観点から、さらに(メタ)アクリル酸エステル単位(D)を含むことが好ましい。
アイオノマー樹脂(Y)が(メタ)アクリル酸エステル単位(D)を含む場合、(メタ)アクリル酸エステル単位(D)のアイオノマー樹脂(Y)中の含有量は特に制限されない。本発明の一実施形態において、(メタ)アクリル酸エステル単位(D)のアイオノマー樹脂(Y)中の含有量は、アイオノマー樹脂(Y)を構成する全単量体単位を基準として、好ましくは0モル%超、より好ましくは0.01モル%以上、さらに好ましくは0.05モル%以上、特に好ましくは0.08モル%以上であり、また、好ましくは1.0モル%以下、より好ましくは0.7モル%以下、さらに好ましくは0.5モル%以下である。単位(D)の含有量が上記下限以上、かつ上記上限以下であるとアイオノマー樹脂粒状物の透明性を向上できる。
アイオノマー樹脂(Y)が(メタ)アクリル酸エステル単位(D)を含む場合の前記単位(D)の含有量は、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を原料とし、該共重合体のけん化反応工程および脱金属反応工程を含む方法によりアイオノマー樹脂を製造する場合、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル単位(D)を、(メタ)アクリル酸単位(A)に変換する前記けん化反応の反応度によって調整できる。
アイオノマー樹脂(Y)が(メタ)アクリル酸エステル単位(D)を含む場合、前記単位(A)、前記単位(B)および前記単位(D)の合計含有量は、透明性(特に徐冷時の透明性)を向上できる観点から、前記アイオノマー樹脂(Y)を構成する全単量体単位を基準として6モル%超10モル%以下であることが好ましい。アイオノマー樹脂(Y)が(メタ)アクリル酸エステル単位(D)を含む場合、前記単位(A)、前記単位(B)および前記単位(D)の合計含有量が上記上限以下であると、アイオノマー樹脂粒状物の成形加工時における溶融粘度の上昇を抑制でき、それにより、アイオノマー樹脂粒状物の成形加工性を向上できる。また、前記合計含有量が下限より大きいと、アイオノマー樹脂粒状物の透明性、特に徐冷時の透明性を向上できる。
アイオノマー樹脂(Y)が(メタ)アクリル酸エステル単位(D)を含む場合において、前記単位(A)、前記単位(B)および前記単位(D)の前記合計含有量は、透明性(特に徐冷時の透明性)および基材に対する接着性を向上できる観点から、好ましくは6モル%超、より好ましくは6.5モル%以上、さらに好ましくは7.0モル%以上、特に好ましくは7.5モル%以上であり、また、成形加工性の観点から、好ましくは10モル%以下、より好ましくは9.9モル%以下、さらに好ましくは9.5モル%以下である。
前記単位(A)、前記単位(B)および前記単位(D)の合計含有量は、アイオノマー樹脂(Y)の原料により調整できる。具体的には、アイオノマー樹脂(Y)の原料であるエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の(メタ)アクリル酸エステル変性量により調整できる。
(メタ)アクリル酸エステル単位(D)を構成する単量体の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリル等が挙げられる。
これらのうち、透明性または耐熱性の観点から、好ましい単量体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルであり、より好ましい単量体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルであり、さらに好ましい単量体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルであり、特に好ましい単量体は、(メタ)アクリル酸メチルである。これら(メタ)アクリル酸エステルは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
本発明の一実施形態において、アイオノマー樹脂(Y)は、(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)、およびエチレン単位(C)、ならびに場合により含まれる(メタ)アクリル酸エステル単位(D)以外の他の単量体単位を含んでいてもよい。他の単量体単位の例としては、(メタ)アクリル酸単位以外のカルボン酸単位(A1)、(メタ)アクリル酸中和物単位以外のカルボン酸中和物単位(B1)等が挙げられる。前記カルボン酸単位(A1)を構成する単量体の例としては、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等が挙げられ、好ましくはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルである。前記カルボン酸中和物単位(B1)を構成する単量体の例としては、前記カルボン酸単位(A1)の中和物単位等が挙げられる。なお、カルボン酸中和物は、カルボン酸の水素イオンを金属イオンで置き換えたものである。前記金属イオンとしては、上述の(メタ)アクリル酸中和物単位(B)における金属イオンと同様のものが挙げられ、該金属イオンは、1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
これらの他の単量体単位は1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
アイオノマー樹脂(Y)が上記他の単量体単位を含む場合、その上記他の単量体単位の合計含有量、例えば、(A1)および(B1)の合計含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択すればよく、例えば、アイオノマー樹脂(Y)を構成する全単量体単位を基準として、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下であり、また、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上である。
本発明におけるアイオノマー樹脂(Y)中の(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)、およびエチレン単位(C)、ならびに含まれる場合の(メタ)アクリル酸エステル単位(D)および他の単量体単位(例えば単位(A1)および単位(B1))の各含有量は、まず、アイオノマー樹脂(Y)中の単量体単位を熱分解ガスクロマトグラフィーで同定し、次いで、核磁気共鳴分光法(NMR)および元素分析を用いることによって、求めることができる。また、本発明の製造方法により得られたアイオノマー樹脂粒状物中の単量体単位の各含有量はアイオノマー樹脂(Y)中の単量体単位の各含有量に相当するため、アイオノマー樹脂(Y)に代えて、得られたアイオノマー樹脂粒状物を分析することにより、アイオノマー樹脂(Y)中の単量体単位の各含有量を求めてもよく、より具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。また、上記分析と、IRおよび/またはラマン分析とを組合せた方法で求めることもできる。これらの分析の前にアイオノマー樹脂(Y)または得られたアイオノマー樹脂粒状物以外の成分を、再沈殿法またはソックスレー抽出法にて除去しておくことが好ましい。
(アイオノマー樹脂(Y)の製造方法)
アイオノマー樹脂(Y)の製造方法は特に制限されず、例えばEMMAけん化法、具体的にはエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)を原料とし、該共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル単位の全部または一部を(メタ)アクリル酸単位および(メタ)アクリル酸中和物単位に変換する方法が挙げられる。
上記の(メタ)アクリル酸エステル単位の全部または一部を(メタ)アクリル酸単位および(メタ)アクリル酸中和物単位に変換する方法としては、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)を、アルカリによってけん化することにより、(メタ)アクリル酸エステル単位の全部または一部を(メタ)アクリル酸中和物単位に変換して、エチレン-(メタ)アクリル酸中和物共重合体またはエチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸中和物共重合体を得、次いで、得られた共重合体中の(メタ)アクリル酸中和物単位の一部を酸によって脱金属して、(メタ)アクリル酸単位に変換する方法(以下、方法(1)ともいう)が挙げられる。
前記方法(1)以外の方法としては、上記方法(1)におけるけん化によって得られるエチレン-(メタ)アクリル酸中和物共重合体またはエチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸中和物共重合体中の(メタ)アクリル酸中和物単位を全て酸によって脱金属して、(メタ)アクリル酸単位に変換し、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体またはエチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体を得、次いで、得られた共重合体中の(メタ)アクリル酸単位の一部を金属イオンによって中和する方法(以下、方法(2)ともいう)が挙げられる。
上記方法(1)および方法(2)のうち、反応回数を減らしてアイオノマー樹脂の製造効率を向上できる観点から、方法(1)によりアイオノマー樹脂(Y)を製造することが好ましい。
上記エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の(メタ)アクリル酸エステル単位を構成する単量体の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリル等が挙げられる。これらのうち、好ましい単量体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、より好ましい単量体は(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、さらに好ましい単量体は(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、特に好ましくは(メタ)アクリル酸メチルである。これら(メタ)アクリル酸エステルは1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の具体例としては、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン-メタクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン-アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン-メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン-アクリル酸n-ブチル共重合体、エチレン-メタクリル酸n-ブチル共重合体、エチレン-アクリル酸sec-ブチル共重合体、エチレン-メタクリル酸sec-ブチル共重合体等が挙げられる。
これらの共重合体として、市販品を用いてもよく、US2013/0274424、特開2006-233059または特開2007-84743に記載の高温高圧ラジカル重合法によって合成したものを用いてもよい。前記市販品としては、例えば、住友化学(株)製「アクリフト」(登録商標)WD301F、WK307、日本ポリエチレン(株)製「レクスパール」(登録商標)A4250、NUC株式会社製NUC-6070等が挙げられる。
エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)中の(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量は、好ましくは6モル%以上、より好ましくは6.5モル%以上、さらに好ましくは7モル%以上、特に好ましくは7.5モル%以上であり、また、好ましくは10モル%以下、より好ましくは9.9モル%以下、さらに好ましくは9.5モル%以下である。共重合体(X)中の(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量によって、得られるアイオノマー樹脂(Y)およびアイオノマー樹脂粒状物中の(メタ)アクリル酸単位(A)および(メタ)アクリル酸中和物単位(B)、ならびに含まれる場合の(メタ)アクリル酸エステル単位(D)の合計含有量が調整できるため、共重合体(X)中の(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が上記下限以上であると、得られるアイオノマー樹脂粒状物の透明性、特に徐冷時の透明性を向上でき、また、前記含有量が上記上限以下であると、得られるアイオノマー樹脂の成形加工性を向上できる。
上記含有量は、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合比によって調整できる。なお、上記含有量は、上述のアイオノマー樹脂(Y)中の(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)、およびエチレン単位(C)、ならびに含まれる場合の(メタ)アクリル酸エステル単位(D)および他の単量体単位(例えば単位(A1)および単位(B1))の各含有量と同様に、熱分解ガスクロマトグラフィー、核磁気共鳴分光法(NMR)および元素分析によって求めることができる。
本発明の一実施形態において、JIS K7210-1:2014に準拠し、190℃、2.16Kgの条件で測定されるエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは5g/10分以上、さらに好ましくは10g/10分以上、さらにより好ましくは50g/10分以上、特に好ましくは100g/10分以上であり、好ましくは400g/10分以下、より好ましくは350g/10分以下、さらに好ましくは300g/10分以下、さらにより好ましくは250g/10分以下である。エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)のMFRが上記下限以上かつ上記上限以下であると、得られるアイオノマー樹脂粒状物の成形加工性を向上できる。また、得られるアイオノマー樹脂粒状物の強度を向上できる。エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)のMFRは、重合度および(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量によって調整できる。前記MFRは、例えば、実施例に記載の方法で測定できる。
エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の重量平均分子量は、得られるアイオノマー樹脂粒状物の成形加工性および強度を向上できる観点から、好ましくは15,000g/モル以上、より好ましくは20,000g/モル以上、さらに好ましくは30,000g/モル以上であり、好ましくは200,000g/モル以下、より好ましくは100,000g/モル以下である。また、同様の観点から、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の数平均分子量は、好ましくは5,000g/モル以上、より好ましくは10,000g/モル以上、さらに好ましくは15,000g/モル以上であり、好ましくは100,000g/モル以下、より好ましくは50,000g/モル以下である。前記重量平均分子量および数平均分子量は、重合時の重合開始剤および/または連鎖移動剤の量により調整できる。これらのエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の分子量(重量平均分子量および数平均分子量)は、カラム(TSKgel GMHHR-H(20)HTの3本直列)および1,2,4-トリクロロベンゼン溶媒を用いて、カラム温度140℃の条件で、ポリスチレン換算で測定できる。
エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の炭素1000個当たりの分岐度は、特に制限されず、好ましくは5~30、より好ましくは6~20である。前記分岐度は、共重合体(X)を重合する際の重合温度により調整できる。炭素1000個当たりの分岐度は、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)を重水素化オルトジクロロベンゼンに溶解させ、13C-NMRのインバースゲートデカップリング法によって測定できる。
上記方法(1)および(2)におけるけん化反応に用いるアルカリの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の強塩基が挙げられる。けん化反応に使用する溶媒への溶解性または経済性の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
上記けん化反応に用いる溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロベンゼン等のハロゲン含有溶媒;メチルブチルケトン等の炭素数6以上のケトン類;炭化水素化合物とメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等のアルコール類との混合溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族化合物;芳香族化合物とアルコール類との混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2以上組み合わせて使用してもよい。
これらのうち、けん化反応前後の樹脂の溶解性の観点から、好ましい溶媒は炭化水素化合物とアルコール類との混合溶媒、芳香族化合物とアルコール類との混合溶媒であり、より好ましい溶媒はトルエン等の芳香族化合物とメタノール等のアルコール類との混合溶媒である。前記混合溶媒における炭化水素化合物または芳香族化合物とアルコール類との割合は、用いる各溶媒の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、炭化水素化合物または芳香族化合物とアルコール類との質量割合(炭化水素化合物または芳香族化合物/アルコール類)は、50/50~90/10であってよい。
上記けん化反応を行う際の温度としては、その反応性およびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の溶解性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上である。該温度の上限は、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)が分解する温度未満であれば特に制限されず、例えば300℃以下である。
上記けん化反応は、空気中で行っても、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス中で行ってもよい。また、上記けん化反応は、常圧下、加圧下、または減圧下のいずれで行ってもよく、好ましくは加圧下で行われる。
上記方法(1)および(2)における脱金属化に用いる酸の例としては、塩酸、硝酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の強酸が挙げられる。脱金属化後の塩の除去し易さの観点から、好ましくは塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸である。上記脱金属化に用いる溶媒としては、上述のけん化反応に用いる溶媒と同様の溶媒を選択できる。
上記脱金属化を行う際の温度は、樹脂の溶解性の観点および反応液の粘度を低下できる観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下、さらにより好ましくは60℃以下である。
上記脱金属化は、上記けん化反応と同様に、空気中で行っても、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス中で行ってもよい。また、上記けん化反応は、常圧下、加圧下、または減圧下のいずれで行ってもよく、好ましくは加圧下で行われる。
上記方法(2)において、(メタ)アクリル酸単位の一部を中和して(メタ)アクリル酸中和物単位に変換する際に用いる中和剤は、金属イオンを含有するイオン性化合物であれば特に制限されない。前記金属イオンの例としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオン、亜鉛、ニッケル、鉄、チタン等の遷移金属イオン、アルミニウムイオン等が挙げられる。例えば、金属イオンがナトリウムイオンである場合、中和剤の例としては、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸ナトリウム単位を含有するアイオノマー樹脂等の重合体も中和剤として用いることができる。
本発明の一実施形態において、上記EMMAけん化法により得られるアイオノマー樹脂(Y)中のけん化度、すなわち(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)の合計の、(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)および(メタ)アクリル酸エステル単位(D)の合計に対する割合は、ガラスとの接着性を向上できる観点から、好ましくは85~100%、より好ましくは87~99.5%、さらにより好ましくは90~99%であってよい。また、本発明の一実施形態において、上記EMMAけん化法により得られるアイオノマー樹脂(Y)の中和度、すなわち(メタ)アクリル酸中和物単位(B)の(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)の合計に対する割合は、樹脂シートへの成形性を向上できる観点、および得られる樹脂シートの徐冷時の透明性を向上できる観点から、好ましくは0~55%、より好ましくは10~40%、さらに好ましくは15~30%である。
本発明の一実施形態において、アイオノマー樹脂(Y)には、アイオノマー樹脂(Y)を製造する過程においてアルカリと酸との中和反応により生成した塩が、例えば100,000mg/kg以上、500,000mg/kg以下の量で含有されている。アイオノマー樹脂(Y)の製造過程で生成する塩とは、けん化反応に用いるアルカリとして上述した強塩基および脱金属反応に用いる酸として上述した強酸からなる塩である。該塩は1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。アイオノマー樹脂(Y)中の塩の含有量は、イオンクロマトグラフを用いて測定できる。また、原料樹脂の量等から公知の方法で算出できる塩の理論含有量を、アイオノマー樹脂(Y)中の塩の含有量とすることができる。
(溶媒)
工程(I)における溶媒は、アイオノマー樹脂(Y)を溶解可能な溶媒であれば特に制限されず、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロベンゼン等のハロゲン含有溶媒;メチルブチルケトン等の炭素数6以上のケトン類;ピリジン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素化合物;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族化合物;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
なかでも、アイオノマー樹脂(Y)の溶解性の観点から、トルエン等の芳香族化合物とメタノール等のアルコール類との混合溶媒が好ましい。前記混合溶媒における芳香族化合物とアルコール類との割合は、用いる各溶媒の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、芳香族化合物とアルコール類との質量割合(芳香族化合物/アルコール類)は、50/50~90/10、好ましくは60/40~85/15、より好ましくは65/35~80/20であってよい。
工程(I)におけるこれらの溶媒はアイオノマー樹脂(Y)が溶解可能な範囲内で水を含んでいてもよい。本発明の一実施形態において、水の含有量は、アイオノマー樹脂(Y)の溶解性の観点から、溶媒の総質量に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは14質量%以下であり、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。
(アイオノマー樹脂(Y)および溶媒を含むゾル状混合物)
工程(I)におけるアイオノマー樹脂(Y)および溶媒を含むゾル状混合物(以降、単に「ゾル状混合物」ともいう)は、アイオノマー樹脂(Y)と溶媒とを混合することにより調製できる。本発明の一実施形態において、アイオノマー樹脂を上述の方法(1)または(2)によって製造することにより得られるアイオノマー樹脂(Y)の反応液を、または当該反応液にさらに溶媒を加えて得られる混合物を、アイオノマー樹脂(Y)および溶媒を含むゾル状混合物として用いてもよい。
ゾル状混合物は流動性を有している。ゾル状混合物は、アイオノマー樹脂(Y)と溶媒、または前記反応液(ゾル状混合物)と溶媒とが分離しておらず、アイオノマー樹脂(Y)が溶媒中に溶解または分散している液状混合物である。
本発明の一実施形態において、ゾル状混合物の50℃での粘度は、特に限定されないが、例えば、取扱い性の観点から、好ましくは20Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以下、さらに好ましくは6Pa・s以下である。ゾル状混合物の粘度の測定に用いる粘度計は、特に限定されないが、例えば、E型粘度計やB型粘度計を好適に用いることができる。
本発明の一実施形態において、工程(I)におけるゾル状混合物(徐冷前のゾル状混合物)の温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは52℃以上、さらに好ましくは54℃以上、特に好ましくは56℃以上である。ゾル状混合物の温度が前記下限以上であると、ゾル状混合物の流動性を高めることができ、より均一なゾル状混合物を得ることができる。また、ゾル状混合物の温度は、好ましくは68℃以下、より好ましくは65℃以下、さらに好ましくは63℃以下、特に好ましくは60℃以下である。ゾル状混合物の温度が前記上限以下であると、塩の除去性により優れた多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物を得ることができる。ゾル状混合物の温度は、公知の方法で測定できる。
本発明の一実施形態において、ゾル状混合物中のアイオノマー樹脂(Y)の濃度は、ゾル状混合物の質量に対して好ましくは18.5質量%以下、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは16質量%以下、さらにより好ましくは14質量%以下、特に好ましくは12質量%以下である。ゾル状混合物中のアイオノマー樹脂(Y)の濃度が低いほど得られる粒状物のメディアン径を増大できるため、前記濃度が上記上限以下であると、所望のメディアン径を得ることができる結果、塩の除去性を高めることができ、透明性に優れたアイオノマー樹脂粒状物を得ることができる。また、ゾル状混合物中のアイオノマー樹脂(Y)の濃度は好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは8質量%以上である。前記濃度が上記下限以上であると、得られるゲルの強度を高くでき、取扱い性を向上できる。
(徐冷およびゲル化)
ゾル状混合物を徐冷することにより、アイオノマー樹脂(Y)をゲル化できる。その理由は明らかではなく、下記理由に限定されるものでもないが、徐冷の過程でアイオノマー樹脂の溶媒への溶解性が徐々に低下することでゲル骨格が形成され、その際、該ゲル骨格内に溶媒が好適に残存するおよび/または該ゲル骨格に溶媒が好適に取り込まれるためと考えられる。ゾル状混合物を徐冷ではなく冷却または急冷した場合、例えば、ゾル状混合物を5℃以下の冷媒中(例えば貧溶媒中)に排出または押し出した場合、アイオノマー樹脂のゲルを得ることはできない。
また、ゾル状混合物を徐冷することにより、粒状アイオノマー樹脂ゲルおよびアイオノマー樹脂粒状物のメディアン径を好適な範囲に調整できる。
ゾル状混合物の徐冷方法は、アイオノマー樹脂(Y)をゲル化できる方法であればよく、特に限定されない。容器に入っているゾル状混合物を放冷または徐々に冷却することにより、または容器から取り出した若しくは排出した若しくは押し出したゾル状混合物を放冷または徐々に冷却することにより、ゾル状混合物を徐冷できる。
ここで、容器またはゾル状混合物の放冷とは、所定の温度域(例えば-10℃~50℃、好ましくは0℃~40℃、より好ましくは5℃~30℃)の気体雰囲気中に所定時間(例えば1秒~60分、好ましくは1秒~30分、より好ましくは1秒~10分、より好ましくは1秒~5分、よりさらに好ましくは1秒~1分、よりさらに好ましくは1秒~50秒)、容器またはゾル状混合物を放置することを意味する。気体雰囲気は、空気、窒素の雰囲気であってよく、通常は空気である。また空気は乾燥空気でも、加湿された空気でもよい。
前記冷却には、気体流(例えば空気流)等の公知の冷却手段を使用できる。気体流における気体の流速は、好ましくは1~300m/分、より好ましくは5~100m/分である。
容器に入っているゾル状混合物を徐冷する場合、撹拌棒またはマグネチックスターラー等の撹拌手段により撹拌しながら徐冷してもよい。
本発明の一実施形態において、徐冷前のゾル状混合物の温度と、徐冷を放冷により行う場合の気体雰囲気の温度または徐冷を前記冷却により行う場合の気体流の温度との温度差は、ゲル化に好適な徐冷速度を得ることができる観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは50℃以下(例えば、40℃以下、30℃以下)である。
本発明の一実施形態において、ゾル状混合物は、好ましくは40℃以下、より好ましくは38℃以下、特に好ましくは35℃以下の温度まで徐冷する。前記上限以下の温度までゾル状混合物を徐冷することにより好適に、ゾル状混合物に含まれている溶媒が該ゲル骨格内に残存でき、および/または取り込まれ得、その結果、所望のゲルを得ることができる。
ゾル状混合物を徐冷する温度の下限は特に限定されないが、生産性の観点化から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上である。
本発明の好ましい一実施形態において、徐冷のための冷媒には貧溶媒を用いない。徐冷によりアイオノマー樹脂のゲル骨格が形成される過程で貧溶媒を用いないことにより、ゾル状混合物に含まれている溶媒が該ゲル骨格内に好適に残存でき、および/または好適に取り込まれ得、その結果、所望のメディアン径を有するアイオノマー樹脂ゲルおよびアイオノマー樹脂粒状物を得ることができると考えられる。
本発明の一実施形態において、アイオノマー樹脂のゲル骨格が形成された後、すなわち、ゲル化の後に、得られたゲルを冷却するための冷媒に貧溶媒を用いてもよい。貧溶媒を冷媒に使用する方法は特に限定されず、例えばゲルを貧溶媒に浸したり、ゲルに貧溶媒をかけたりする方法が挙げられる。
冷媒に使用する場合の貧溶媒の温度は、ゲルを冷却できる限り、すなわちゲルの温度より低い限り特に制限されない。本発明の一実施形態において、冷媒に使用する場合の貧溶媒の温度は、冷却速度を高める観点から、好ましくは40℃未満、より好ましくは35℃以下、さらに好ましくは30℃以下、特に好ましくは20℃以下である。また、前記温度は0℃以上であってよい。
貧溶媒により、アイオノマー樹脂ゲルの冷却と同時に、アイオノマー樹脂ゲル中の塩の少なくとも一部を除去することもできる。
前記貧溶媒は、アイオノマー樹脂ゲルを溶解せずに冷却できる溶媒であれば特に制限されない。アイオノマー樹脂ゲル中の塩を溶解でき除去できるという観点から、水、アルコールまたはこれらの混合溶媒が好ましい。アルコールとしてはメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等が挙げられ、好ましくはメタノール、エタノール、より好ましくはメタノールである。アルコールは単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの貧溶媒の中でも水が好ましい。
ゲル化の後に貧溶媒を用いてアイオノマー樹脂ゲルを冷却した場合、その冷却前後で、アイオノマー樹脂ゲルの形状、粒度、細孔のメディアン径、および空隙率はほとんどまたは全く変化しない。なお、アイオノマー樹脂ゲルにおける細孔は溶媒で満たされており、細孔内に空気は存在しない。本明細書に記載するアイオノマー樹脂ゲルの空隙率とは、溶媒が細孔に存在しないと仮定した場合のアイオノマー樹脂ゲルの空隙率を指す。
ゾル状混合物を徐冷することにより、ゲル化が起こる。ゲル化により、ゾル状混合物の流動性は低下する。ゲル化が起こる温度は、アイオノマー樹脂(Y)における構成単位の種類およびその割合ならびに分子量、ゾル状混合物におけるアイオノマー樹脂(Y)の濃度、ゾル状混合物に含まれる溶媒の組成等により変動する。ゲル化の判定は、例えば、ゲルを入れた容器を90°傾けた際に、その温度でゲルの90体積%以上が1分以上流動しないことにより実施できる。
工程(I)では、前記ゲル化により得られた多孔質のアイオノマー樹脂ゲルを、任意に粉砕してよい。本発明における粉砕とは、粒度低下を意味する。すなわち、本発明における粉砕には、容器から取り出したまたは排出したまたは押し出したアイオノマー樹脂ゲルの、粉砕機、ペレタイザーまたはカッター等の装置による粉砕または破砕または切断等に加えて、徐冷時の撹拌、または容器からの取り出し等によるアイオノマー樹脂ゲルの分断または断裂等も包含される。例えば前記ゲル化の過程で既に所望の粒状アイオノマー樹脂ゲルが得られる場合は、粉砕工程を実施しなくてもよい。
粉砕機の例としては、ロールクラッシャー、カッティングミル、リングミル等の中砕機、ローラーミル、ピンミル、回転ミル、振動ミル、遊星ミル等の微粉砕機等が挙げられる。
(多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲル)
工程(I)におけるゲル化および任意の粉砕により、多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルを得る。ゲルは流動性に乏しく、ゲルを、例えば水平面に対して90°まで傾斜させても流動しない。
多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルは、アイオノマー樹脂(Y)および溶媒を含む。アイオノマー樹脂ゲルにおける細孔は、溶媒で満たされている。本発明の一実施形態において、多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルでは、徐冷の過程でアイオノマー樹脂が結晶化して溶媒と相分離し、複数の細孔が形成されると推測される。冷却速度が速い場合は、十分に相分離せず、塩を洗浄除去できる多孔質のアイオノマー樹脂ゲルを得ることは困難である。本発明で得られる多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルの固形分濃度としては、ゲル化前のゾル状混合物中のアイオノマー樹脂(Y)の濃度と同じ範囲が好ましい。
本発明の一実施形態において、工程(I)において得られる粒状アイオノマー樹脂ゲルの細孔のメディアン径は、塩の除去性を向上でき、透明性に優れたアイオノマー樹脂粒状物を得ることができる観点から、好ましくは1.2μmより大きく、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは1.8μm以上、特に好ましくは2.0μm以上である。また、前記細孔のメディアン径は、強度に優れたアイオノマー樹脂粒状物を得ることができる観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは5.0μm以下である。
工程(I)において得られる多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルのメディアン径は、ゾル状混合物中のアイオノマー樹脂(Y)の濃度、溶媒の種類、2種類以上の溶媒の場合はその比率、温度等により調整できる。例えば、ゾル状混合物中のアイオノマー樹脂(Y)の濃度を高めたり、貧溶媒の割合を小さくしたりすると、メディアン径を小さくでき、また、ゾル状混合物中のアイオノマー樹脂(Y)の濃度を低くしたり、貧溶媒の割合を大きくしたりすると、メディアン径を大きくできる。
本発明の一実施形態において、工程(I)において得られる多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルの空隙率は、好ましくは60%以上、より好ましくは62%以上、さらに好ましくは64%以上、よりさらに好ましくは68%以上、特に好ましくは70%以上である。前記空隙率が上記下限以上であると、塩の除去性を向上できるため、透明性に優れたアイオノマー樹脂粒状物を得ることができる。また、前記空隙率は好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下、特に好ましくは75%以下である。前記空隙率が上記上限以下であると、強度に優れたアイオノマー樹脂粒状物を得ることができる。
この一実施形態において、多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルは、空隙率(%)を細孔のメディアン径(μm)で除した値〔空隙率(%)/細孔のメディアン径(μm)〕が、塩の除去性を向上でき、透明性に優れたアイオノマー樹脂粒状物を得ることができる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは5以上である。前記値は、強度が高いアイオノマー樹脂粒状物を得ることができる観点から、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは20以下である。
工程(I)において得られる多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルの空隙率は、ゾル状混合物中のアイオノマー樹脂(Y)の濃度、ゾル状混合物の徐冷前の温度、ゾル状混合物を排出する若しくは押し出す場合の排出若しくは押出速度、徐冷速度、粒状アイオノマー樹脂ゲルの粒度等により調整できる。例えば、ゾル状混合物中のアイオノマー樹脂(Y)の濃度を高めたり、徐冷速度を遅くしたり、粒状アイオノマー樹脂ゲルの粒度を大きくしたりすると、空隙率を小さくでき、また、ゾル状混合物の濃度を低くしたり、徐冷速度を速めたり、粒状アイオノマー樹脂ゲルの粒度を小さくしたりすると、空隙率を大きくできる。
空隙率および細孔のメディアン径は、細孔分布測定装置を用いて水銀圧入法により測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。なお、工程(I)において得られる粒状アイオノマー樹脂ゲルの空隙率および細孔のメディアン径は、後述の溶媒除去工程等によりほとんどまたは全く変化しないため、得られたアイオノマー樹脂粒状物の空隙率および細孔のメディアン径を、工程(I)において得られる粒状アイオノマー樹脂ゲルの空隙率および細孔のメディアン径とすることもできる。空隙率(%)を細孔のメディアン径(μm)で除した値についても同様である。
本発明の一実施形態において、工程(I)において得られる多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルは、生産性および塩の除去性の観点から、球状、円柱状、楕円柱状、多角柱状またはラグビーボール状等のペレット形状、または不定形状を有することが好ましい。
本発明の一実施形態において、粒状アイオノマー樹脂ゲルの粒度は、取り扱い性の観点から、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは1mm以上である。また、粒状アイオノマー樹脂ゲルの粒度は、より高い塩の除去性を得ることができる観点から、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。粒状アイオノマー樹脂ゲルの粒度は、後述のアイオノマー樹脂粒状物の粒度と同じ方法で測定できる。
なお、工程(I)において得られる多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルの形状および粒度は、後述の溶媒除去工程等によりほとんどまたは全く変化しないため、得られたアイオノマー樹脂粒状物の形状および粒度を、工程(I)において得られる粒状アイオノマー樹脂ゲルの形状および粒度とすることもできる。
<工程(II)>
工程(II)は、多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルから溶媒を除去してアイオノマー樹脂粒状物を得る工程である。
前記溶媒の除去方法は特に限定されない。例えば、任意に減圧を印加しながら粒状アイオノマー樹脂ゲルを窒素等の不活性雰囲気下、40~80℃の温度で処理する方法、または粒状アイオノマー樹脂ゲルを洗浄液で洗浄する方法等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、本発明の方法は、好ましくは、工程(I)で得られた多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルまたは工程(II)で得られたアイオノマー樹脂粒状物を洗浄液で洗浄することを含む。多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物を洗浄液で洗浄することにより、得られるアイオノマー樹脂粒状物中の塩の含有量を低減できるため、透明性、特に吸水時の透明性に優れたアイオノマー樹脂粒状物を得ることができる。
粒状アイオノマー樹脂ゲルからの前記溶媒の除去を迅速に実施でき、粒状アイオノマー樹脂ゲルから溶媒と塩とを同時に除去できる観点から、工程(II)における多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルからの溶媒の除去は、粒状アイオノマー樹脂ゲルの洗浄液での洗浄により行うことが好ましい。したがって、本発明の一実施形態では、本発明の方法は、工程(II)として、多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルを洗浄液で洗浄することを含み、これにより、多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルから溶媒は除去されてアイオノマー樹脂粒状物が得られる。
溶媒の除去を前記温度での処理により行う場合は、溶媒を除去した後のアイオノマー樹脂粒状物を洗浄液で洗浄することにより、アイオノマー樹脂粒状物から塩を除去できる。したがって、本発明の一実施形態では、本発明の方法は、工程(I)および(II)の後に、アイオノマー樹脂粒状物を洗浄液で洗浄することを含む。
洗浄液は、粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物が溶解せず、前記塩を溶解でき、好ましくは粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物から溶媒を除去できる溶媒であれば特に制限されない。好ましい洗浄液の例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-イソプロパノール等のアルコール;水;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。
これらの洗浄液のなかでも、粒状アイオノマー樹脂ゲルから溶媒を除去でき、塩の溶解性が高く、粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物に含有される塩を除去できる観点から、アルコール、水、およびこれらの混合液が好ましく、水とアルコールとの混合液がより好ましい。洗浄液が水とアルコールとの混合液であると、塩の溶解性が高く、また、洗浄液の比重を前記粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物よりも低くできるため、洗浄液と前記粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物との接触面積を増大でき、塩の除去性を向上できる。また、前記粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物に含まれる有機化合物等の不純物を除去でき、さらに洗浄後に得られるアイオノマー樹脂粒状物を乾燥し易い。好ましいアルコールは、乾燥し易いこと、および水との相溶性が高いことから、メタノール、エタノールであり、より好ましくはメタノールである。
水とアルコールとの混合液における水とアルコールとの割合(水/アルコール(質量%))は、好ましくは20/80~80/20、より好ましくは30/70~70/30である。
粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物を洗浄液で洗浄する方法は特に制限されないが、例えば、粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物を洗浄液と混合後、脱液する方法が挙げられる。より具体的には、前記粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物と洗浄液とを混合後、洗浄液からゲルまたは粒状物を濾取し(以下、洗浄工程(a)ともいう)、次いで、濾取したゲルまたは粒状物を新たな洗浄液と混合後、洗浄液からゲルまたは粒状物を濾取する(以下、洗浄工程(b)ともいう)ことにより、洗浄する方法が挙げられる。
粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物に含有される塩の含有量を低減させて、透明性、特に吸水時の透明性に優れたアイオノマー樹脂粒状物を得ることができる観点、および粒状アイオノマー樹脂ゲル若しくはアイオノマー樹脂粒状物の分離精製工程の効率を向上できる観点から、粒状物の洗浄は、バッチプロセスの場合、例えば1回の洗浄工程(a)の後、洗浄工程(b)を1~8回行うことが好ましく、1回の洗浄工程(a)の後の洗浄工程(b)の回数は、より好ましくは1~5回、さらに好ましくは1~3回である。
1回の洗浄工程あたりの前記洗浄液の使用量は、洗浄する粒状物の量に応じて適宜選択してよい。例えば、1回の洗浄工程あたりの前記洗浄液の使用量は乾燥時の粒状物100質量部に対して、好ましくは100質量部~2000質量部、より好ましくは200質量部~1000質量部、さらに好ましくは300質量部~700質量部である。
洗浄されたアイオノマー樹脂粒状物は、必要に応じて乾燥してもよい。乾燥温度としては、好ましくはアイオノマー樹脂粒状物の融点以下、より好ましくは80℃以下であってよい。
<アイオノマー樹脂粒状物>
本発明の方法は、工程(I)および工程(II)を含むため、塩の除去性を向上できる。そのため、本発明の方法により得られる多孔質のアイオノマー樹脂粒状物は透明性に優れる。
先に述べたように、本発明の一実施形態において、アイオノマー樹脂(Y)には、アイオノマー樹脂(Y)を製造する過程においてアルカリと酸との中和反応により生成した塩が、例えば100,000mg/kg以上、500,000mg/kg以下の量で含有されている。しかし、本発明の方法により得られるアイオノマー樹脂粒状物は、アイオノマー樹脂(Y)を製造する過程において生成した塩が十分に低減されているため、優れた透明性を有する。
本発明の一実施形態において、アイオノマー樹脂粒状物中の塩の含有量は、アイオノマー樹脂粒状物の透明性、とりわけ吸水時の透明性を向上できる観点から、好ましくは1000mg/kg以下、より好ましくは700mg/kg以下、さらに好ましくは400mg/kg以下、さらにより好ましくは350mg/kg以下、特に好ましくは300mg/kg以下、特により好ましくは250mg/kg以下である。アイオノマー樹脂粒状物中の塩の含有量が少ないほどアイオノマー樹脂粒状物の透明性(特に吸水時の透明性)が高まる傾向にあるため、下限値は特に制限されず、0mg/kg以上であってよく、アイオノマー樹脂粒状物の耐熱分解性を向上できる観点からは好ましくは1mg/kg以上であってもよい。なお、アイオノマー樹脂粒状物中の塩の含有量は、イオンクロマトグラフを用いて測定でき、例えば、実施例に記載の方法で測定できる。
強酸および強塩基からなる塩の例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩等が挙げられ、好ましくはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。アイオノマー樹脂粒状物の耐熱分解性を向上できる観点から、好ましい塩はナトリウム塩、カリウム塩である。より好ましい塩の例としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンおよびカルシウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種のカチオンと、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオンおよびスルホン酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンとからなる塩が挙げられる。アイオノマー樹脂粒状物の耐熱分解性を向上できる観点から、好ましい塩はナトリウムイオンおよびカリウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種のカチオンと、ハロゲンイオン、硫酸イオンおよび硝酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンとからなる塩である。
より具体的には、好ましい強酸および強塩基からなる塩の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸カリウム、p-トルエンスルホン酸マグネシウム、p-トルエンスルホン酸カルシウムが挙げられる。透明性および耐熱性を向上できる観点から、より好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、さらに好ましくは塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムが挙げられる。
アイオノマー樹脂粒状物は、(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)およびエチレン単位(C)を含み、前記単位(A)および前記単位(B)の合計含有量は、アイオノマー樹脂粒状物を構成する全単量体単位を基準として6~10モル%である。また、前記アイオノマー樹脂粒状物は、前記単位(A)、前記単位(B)およびエチレン単位(C)に加えて、(メタ)アクリル酸エステル単位(D)、および/または、(メタ)アクリル酸単位以外のカルボン酸単位(A1)、(メタ)アクリル酸中和物単位以外のカルボン酸中和物単位(B1)等の他の単量体単位を含んでいてもよい。
アイオノマー樹脂粒状物における前記単位(A)および前記単位(B)、ならびに、場合により含まれる前記単位(D)、他の単量体単位(A1)および(B1)の例としては、前記アイオノマー樹脂(Y)に含まれる単位(A)、単位(B)、単位(D)、単位(A1)および単位(B1)として上述した単位と同様のものがそれぞれ挙げられ、好ましい形態も上述のアイオノマー樹脂(Y)と同様である。また、アイオノマー樹脂粒状物中の各単位の含有量、および単位(A)、および単位(B)の合計含有量、ならびにアイオノマー樹脂粒状物が(メタ)アクリル酸エステル単位(D)を含む場合の、前記単位(A)、前記単位(B)および前記単位(D)の合計含有量も、前記アイオノマー樹脂(Y)について上述した含有量と好ましい形態を含め同様である。
アイオノマー樹脂粒状物は、多孔質状であることが好ましい。アイオノマー樹脂粒状物の空隙率、細孔のメディアン径、形状および粒度に関しては、工程(I)において得られた粒状アイオノマー樹脂ゲルの空隙率、細孔のメディアン径、形状および粒度に関する記載が同様にあてはまる。なお、アイオノマー樹脂粒状物の空隙率、細孔のメディアン径、形状および粒度は、工程(I)において得られる多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルの空隙率、細孔のメディアン径、形状および粒度からほとんどまたは全く変化しないため、工程(I)において得られる多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルの空隙率、細孔のメディアン径、形状および粒度を、アイオノマー樹脂粒状物の空隙率、細孔のメディアン径、形状および粒度とすることもできる。アイオノマー樹脂粒状物の、空隙率(%)を細孔のメディアン径(μm)で除した値についても同様である。
本発明において、アイオノマー樹脂粒状物が円柱状、楕円柱状または多角柱状のペレット形状を有する場合、1粒あたりのアイオノマー樹脂粒状物の粒度は、ペレット形状粒状物のX軸の長さ(Lx)、Y軸の長さ(Ly)およびZ軸の長さ(Lz)の平均値((Lx+Ly+Lz)/3)であり、前記粒度は少なくとも10粒以上の各ペレット形状粒状物のX軸、Y軸およびZ軸の長さの平均値の算術平均値であることが好ましい。ここで、ペレット形状粒状物のX軸の長さ(Lx)は、ペレット形状粒状物の高さであり、Y軸の長さ(Ly)はX軸に垂直な面(ペレット形状粒状物の底面)の直径または対角線のうち最も長い部分の長さであり、Z軸の長さ(Lz)はペレット形状粒状物の底面の直径または対角線のうち最も短い部分の長さである。なお、底面が三角形の場合は、Y軸の長さ(Ly)は底面の最も長い辺であり、Z軸の長さ(Lz)は底面の最も短い辺の長さである。したがって、例えば楕円柱状のペレット形状粒状物である場合、1粒あたりの粒度は楕円柱の高さ(Lx)、長軸直径(Ly)および短軸直径(Lz)の平均値((高さ+長軸直径+短軸直径)/3)である。ペレット形状粒状物におけるX軸の長さ(Lx)、Y軸の長さ(Ly)およびZ軸の長さ(Lz)の概念図を図1に示す。図1中の右図は、図1中の左図に記載のペレット形状粒状物をX軸方向から見た平面図である。粒度は、各ペレット形状粒状物のX軸の長さ(Lx)、Y軸の長さ(Ly)およびZ軸の長さ(Lz)をマイクロメーター等により測定することにより算出でき、例えば実施例に記載の方法で求められる。また、本発明において、ペレット形状粒状物が球状である場合、1粒あたりの粒度はペレット形状粒状物の直径であり、粒度は10粒以上の各ペレット形状粒状物の直径の平均値であることが好ましい。本発明において、ペレット形状粒状物がラグビーボール状である場合、1粒あたりの粒度はペレット形状粒状物の長径および短径の平均値((長径+短径)/2)であり、粒度は10粒以上の各ペレット形状粒状物の長径および短径の平均値の算術平均値であることが好ましい。本発明の一実施形態において、粒度は、ゾル状混合物の撹拌条件(撹拌手段の選択、撹拌速度、および/または撹拌時間等)、容器からのゾル状混合物の排出条件若しくは押出条件(排出口若しくはダイス若しくはノズルの直径、切断時の排出若しくは押出されたゾル状混合物の排出若しくは押出方向の長さ)等により調整できる。
本発明において、アイオノマー樹脂粒状物が不定形状を有する場合、その粒度は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置、マイクロメーター、測定顕微鏡を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法で求められる。なお、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いた粒度測定における、横軸に粒子径(μm)、縦軸に頻度(%)をプロットすることにより得たグラフにおいて、2以上の粒子径ピークが発現した場合は、最も頻度の高いピークにおける粒子径を、不定形状粒状物の粒度とする。
アイオノマー樹脂粒状物の炭素1000個当たりの分岐度は、特に制限されず、好ましくは5~30、より好ましくは6~20である。前記分岐度は、アイオノマー樹脂の原料であるエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)を合成する際の重合温度により調整できる。炭素1000個当たりの分岐度は、固体NMRを用いてDDMAS法にて測定できる。
アイオノマー樹脂粒状物の融点は、耐熱性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、また、合わせガラスを作製する際、基材に対する好適な接着力を発現できる観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。前記融点は、JIS K7121:2012に基づき測定できる。具体的には、示差走査熱量計(DSC)を用いて、冷却速度-10℃/分、昇温速度10℃/分の条件で測定し、2回目の昇温の融解ピークのピークトップ温度から求めることができる。
アイオノマー樹脂粒状物の融解熱は、好ましくは0J/g以上、25J/g以下である。前記融解熱は、JIS K7122:2012に基づき測定できる。具体的には、示差走査熱量計(DSC)を用いて、冷却速度-10℃/分、昇温速度10℃/分の条件で測定し、2回目の昇温時の融解ピークの面積から算出することができる。
JIS K7210-1:2014に準拠し、190℃、2.16Kgの条件で測定されるアイオノマー樹脂粒状物のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.7g/10分以上、さらにより好ましくは1.0g/10分以上、特に好ましくは1.5g/10分以上であり、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下、特に好ましくは10g/10分以下である。前記MFRが上記下限以上かつ上限以下であると、熱による劣化を抑えた成形加工をすることができ、耐貫通性に優れる樹脂シートを得ることができる。
アイオノマー樹脂粒状物の融点、融解熱およびMFRは、アイオノマー樹脂の分子量、ならびに(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)、およびエチレン単位(C)、ならびに場合により含まれる(メタ)アクリル酸エステル単位(D)の含有量により調整できる。
アイオノマー樹脂粒状物の動的粘弾性測定で測定される50℃での貯蔵弾性率(E’)は、良好な自立性(すなわち、高い弾性率)、特に高温環境下における自立性(高温環境下における高い弾性率)の観点から、好ましくは20MPa以上、より好ましくは30MPa以上、さらに好ましくは40MPa以上、特に好ましくは50MPa以上である。貯蔵弾性率(E’)の上限値は特に制限されず、1000MPaであってよい。前記貯蔵弾性率はアイオノマー樹脂の分子量、ならびにアイオノマー樹脂の(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)、およびエチレン単位(C)、ならびに場合により含まれる(メタ)アクリル酸エステル単位(D)の含有量によって調整できる。
本発明の方法により得られるアイオノマー樹脂粒状物は、アイオノマー樹脂粒状物中の塩の含有量が低減されているため、高い透明性を有している。アイオノマー樹脂粒状物のヘイズは、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。ヘイズが小さいほどアイオノマー樹脂粒状物の透明性が高まるため、下限値は特に制限されず、例えば、0.01%以上であってもよい。なお、アイオノマー樹脂粒状物のヘイズは、ヘイズメーターを用いてJIS K7136:2000に準拠して測定される。
本発明の方法により得られるアイオノマー樹脂粒状物は、アイオノマー樹脂粒状物中の塩が十分に除去され、塩の含有量が低いため、アイオノマー樹脂粒状物が吸水した状態(吸水時)においても高い透明性を有する。アイオノマー樹脂粒状物が吸水した状態のヘイズ(吸水ヘイズ)は、好ましくは9.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下、さらにより好ましくは3.0%以下、特に好ましくは2.5%以下である。吸水ヘイズが小さいほどアイオノマー樹脂粒状物の吸水時の透明性が高まるため、下限値は特に制限されず、例えば、0.01%以上であってもよい。なお、吸水ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠して測定できる。具体的には、アイオノマー樹脂粒状物から形成される樹脂シートを23℃のイオン交換水に300時間浸漬した後に取出し、表面に付着した水分をふき取った樹脂シートを試験片として用い、ヘイズメーターで測定でき、例えば、実施例に記載の方法で測定できる。
本発明者らの検討によれば、アイオノマー樹脂の結晶性が高すぎるとアイオノマー樹脂が白化する傾向にあるため、アイオノマー樹脂を徐冷して、該樹脂の結晶化を促進させた状態における透明性(徐冷時の透明性)は低下する傾向にある。本発明により得られるアイオノマー樹脂粒状物は、樹脂中の(メタ)アクリル酸単位(A)および(メタ)アクリル酸中和物単位(B)の合計含有量が6モル%以上であるため、結晶性が高くなりすぎず、徐冷時においても高い透明性を有する。
本発明の方法により得られるアイオノマー樹脂粒状物の徐冷により該樹脂の結晶化を促進させた状態のヘイズ(徐冷ヘイズ)は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらにより好ましくは2.5%以下、特に好ましくは2.0%以下である。ヘイズが小さいほどアイオノマー樹脂の透明性が高まるため、下限値は特に制限されず、例えば、0.01%以上であってもよい。徐冷ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠して測定できる。具体的には、アイオノマー樹脂粒状物から形成される樹脂シートを中間膜として2つのガラス板の間に配置して合わせガラスを作製し、該合わせガラスを140℃まで加熱した後、140℃から0.1℃/分の速度で23℃まで徐冷した後のヘイズを、ヘイズメーターで測定することによって得られる。
本発明の一実施形態において、本発明のアイオノマー樹脂粒状物は着色度が小さく、好ましくは無色である。本発明のアイオノマー樹脂粒状物の黄色度(YI)は、低着色性の観点から、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下である。黄色度(YI)が小さいほどアイオノマー樹脂粒状物の着色性が小さくなるため、下限値は特に制限されず、例えば、0以上であってよい。なお、黄色度(YI)は測色色差計を用い、JIS Z8722:2009に準拠して測定できる。
[多孔質のアイオノマー樹脂粒状物]
本発明は、細孔のメディアン径が1.2μmより大きく50μm以下である、多孔質のアイオノマー樹脂粒状物も包含する。本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物は、細孔のメディアン径が1.2μmより大きく50μm以下である粒状の多孔質アイオノマー樹脂であるため、アイオノマー樹脂粒状物中の溶媒の乾燥容易性および塩の除去性に優れる。本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物のメディアン径に関しては、本発明の方法により得られる上記アイオノマー樹脂粒状物のメディアン径に関する記載が同様にあてはまる。
本発明の一実施形態において、本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物は、アイオノマー樹脂粒状物中の溶媒の乾燥容易性および塩の除去性の観点から、空隙率が60%以上であることが好ましい。本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物の空隙率に関しては、本発明の方法により得られる上記アイオノマー樹脂粒状物の空隙率に関する記載が同様にあてはまる。
この一実施形態において、本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物は、アイオノマー樹脂粒状物中の塩の除去性の観点から、空隙率(%)を細孔のメディアン径(μm)で除した値〔空隙率(%)/細孔のメディアン径(μm)〕が好ましくは1~50である。本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物の前記値に関しては、本発明の方法により得られる上記アイオノマー樹脂粒状物の前記値に関する記載が同様にあてはまる。
本発明の一実施形態において、本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物は、取り扱い性およびアイオノマー樹脂粒状物中の塩の除去性の観点から、粒度が0.01mm以上、8mm以下であることが好ましい。また、本発明の一実施形態において、本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物は、生産性および塩の除去性の観点から、ペレット形状または不定形状を有することが好ましい。本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物の粒度および形状に関しては、本発明の方法により得られる上記アイオノマー樹脂粒状物の粒度および形状に関する記載が同様にあてはまる。
本発明の一実施形態において、本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物中の強酸および強塩基からなる塩の含有量は、アイオノマー樹脂粒状物の透明性、とりわけ吸水時の透明性を向上できる観点から、1000mg/kg以下であることが好ましい。本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物における塩の種類および含有量に関しては、本発明の方法により得られる上記アイオノマー樹脂粒状物における塩の種類および含有量に関する記載が同様にあてはまる。
本発明の好適な一実施形態では、本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物は、本発明の方法により得られる上記アイオノマー樹脂粒状物であることが好ましく、<アイオノマー樹脂粒状物>の項に記載の本発明の方法により得られるアイオノマー樹脂粒状物に関する記載が同様にあてはまる。
[樹脂組成物]
本発明の方法により得られるアイオノマー樹脂粒状物または本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物に、必要に応じて添加剤を添加して樹脂組成物としてもよい。本発明における樹脂組成物は、本発明の方法により得られるアイオノマー樹脂粒状物または本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物と添加剤とを含んでなる。
任意に含まれる添加剤の例としては、紫外線吸収剤、老化防止剤、酸化防止剤、熱劣化防止剤、光安定剤、膠着防止剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、有機色素、艶消し剤、蛍光体等が挙げられる。これらの添加剤は1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。これらの添加剤のなかでも、紫外線吸収剤、老化防止剤、酸化防止剤、熱劣化防止剤、光安定剤、膠着防止剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、有機色素が好ましい。
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物であり、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる。紫外線吸収剤の例としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
ベンゾトリアゾール類は紫外線被照による着色等の光学特性低下を抑制する効果が高いため、紫外線吸収剤として好ましい。好ましいベンゾトリアゾール類の例としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;商品名:TINUVIN329)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF社製;商品名:TINUVIN234)、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-オクチルフェノール]((株)ADEKA製;商品名:アデカスタブLA-31)、2-(5-オクチルチオ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-tert-ブチル-4-メチルフェノール等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
トリアジン類の紫外線吸収剤の例としては、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン((株)ADEKA製;商品名:アデカスタブLA-F70)、その類縁体であるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製;商品名:TINUVIN477、TINUVIN460)、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
老化防止剤としては、公知の材料が例示される。具体的な老化防止剤の例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ(t-ブチル)-4-メチルフェノール、モノ(またはジ、またはトリ)(α-メチルベンジル)フェノール等のフェノール系化合物;2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のビスフェノール系化合物;2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトメチルベンズイミダゾール等のベンズイミダゾール系化合物;6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの反応物、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体等のアミン-ケトン系化合物;N-フェニル-1-ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン等の芳香族二級アミン系化合物;1,3-ビス(ジメチルアミノプロピル)-2-チオ尿素、トリブチルチオ尿素等のチオウレア系化合物等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は1種を単独でも2種以上の組み合わせでもよい。なかでも、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との組み合わせがより好ましい。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを組み合わせる場合、リン系酸化防止剤の使用量:ヒンダードフェノール系酸化防止剤の使用量は、質量比で、好ましくは1:5~2:1、より好ましくは1:2~1:1である。
好ましいリン系酸化防止剤の例としては、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト((株)ADEKA製;商品名:アデカスタブHP-10)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製;商品名:IRGAFOS168)、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン((株)ADEKA製;商品名:アデカスタブPEP-36)等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
好ましいヒンダードフェノール系酸化防止剤の例としては、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(BASF社製;商品名:IRGANOX1010)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製;商品名:IRGANOX1076)等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
熱劣化防止剤は、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。好ましい熱劣化防止剤の例としては、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学(株)製;商品名:スミライザーGM)、2,4-ジ-t-アミル-6-(3’,5’-ジ-t-アミル-2’-ヒドロキシ-α-メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学(株)製;商品名:スミライザーGS)等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好ましい光安定剤の例としては、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物等のヒンダードアミン類が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
膠着防止剤の例としては、脂肪酸の塩若しくはエステル、多価アルコールのエステル、無機塩、無機酸化物、粒子状の樹脂が挙げられる。好ましい膠着防止剤の例としては、ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化ケイ素(エボニック社製;商品名:アエロジル)、粒子状のアクリル樹脂等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
滑剤の例としては、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
離型剤の例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
高分子加工助剤としては、通常、乳化重合法によって製造できる、0.05~0.5μmの粒子径を有する重合体粒子が用いられる。該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよく、組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。これらは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましい。高分子加工助剤の極限粘度は好ましくは3~6dl/gである。極限粘度が小さすぎると成形性の改善効果が低い傾向があり、極限粘度が大きすぎると共重合体の成形加工性の低下を招く傾向がある。
有機色素の例としては、紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。有機色素は1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
蛍光体の例としては、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
各種添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択でき、各種添加剤の合計含有量は、樹脂組成物の総質量に対して、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
本発明の一実施形態において、本発明の方法により得られるアイオノマー樹脂粒状物または本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物の含有量は、透明性を向上できる観点から、樹脂組成物の総質量に対して、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらにより好ましくは99質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.99質量%以下である。
各種の添加剤は、アイオノマー樹脂粒状物を製造する際に添加してもよく、アイオノマー樹脂粒状物の製造後に添加してもよく、後述の樹脂シートの製造時に添加してもよい。
本発明における樹脂組成物は、保存、運搬、または成形時の利便性を高めるために、ペレット等の粒状形態にしてよい。樹脂組成物をペレット化する場合は、例えば、溶融押出法にて得られるストランドをカットすることにより得ることができる。溶融押出法によってペレット化する場合における溶融押出時の樹脂または樹脂組成物の温度は、押出機からの吐出を安定化できる観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上である。また、前記温度は、樹脂が熱分解して劣化することを抑制できる観点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。本発明のアイオノマー樹脂粒状物および本発明における樹脂組成物は、このように溶融押出法により樹脂をペレット化する際に、揮発する物質が少なく、臭気が発生し難いため、作業環境が悪化し難い。
[樹脂シート]
本発明は、本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物を樹脂成分として含む層を1層以上含んでなる樹脂シートも包含する。本発明の樹脂シートは、本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物を樹脂成分として含む層を含んでなるため、透明性に優れている。
本発明の樹脂シートは、本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物を樹脂成分として含んでなる層(以下、層(x)ともいう)を1層以上含む。層(x)は、本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物および任意に添加剤を含んでなる層である。
本発明の樹脂シートは、層(x)のみから構成されていてもよく、層(x)を少なくとも1層含む積層体であってもよい。前記積層体としては、特に限定されないが、例えば、2層以上の層(x)を含む積層体、1層以上の層(x)と1層以上の他の層とを含む積層体等が挙げられる。層(x)または他の層が複数の層である場合、各層を構成する樹脂粒状物または樹脂組成物は、同じでも異なっていてもよい。
前記他の層としては、公知の樹脂を含む層が例示される。該樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステルのうちポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリイミド、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。また、他の層も、必要に応じて、前記添加剤、ならびに、可塑剤、顔料、染料、遮熱材料(例えば、赤外線吸収能を有する、無機遮熱性微粒子または有機遮熱性材料)、機能性無機化合物等の添加剤を1種以上含有してよい。
本発明の一実施形態において、樹脂シートと基材とを熱圧着する際の泡抜け性に優れる観点から、本発明の樹脂シートは表面にメルトフラクチャーまたはエンボス等、従来公知の方法で凹凸構造を有することが好ましい。メルトフラクチャーおよびエンボスの形状は、従来公知のものを適宜選択してよい。
本発明の樹脂シートにおける層(x)1層の厚さは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上、特に好ましくは0.4mm以上であり、また、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下、さらに好ましくは2mm以下、特に好ましくは1mm以下である。樹脂シートにおける層(x)が複数の層である場合、樹脂シートにおける複数の層(x)1層の厚さは同じでも異なっていてもよい。
本発明の樹脂シートの厚さは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上、さらにより好ましくは0.4mm以上、とりわけ好ましくは0.5mm以上、とりわけより好ましくは0.6mm以上、とりわけさらに好ましくは0.7mm以上、特に好ましくは0.75mm以上であり、また、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下、さらに好ましくは10mm以下、さらにより好ましくは5mm以下、とりわけ好ましくは4mm以下、とりわけより好ましくは2mm以下、とりわけさらに好ましくは1mm以下である。
樹脂シートの厚さは従来公知の方法、例えば接触式または非接触式の厚み計等を用いて測定される。樹脂シートはロール状に巻き取った状態であっても、1枚1枚の枚葉の状態であってもよい。
本発明の好適な一実施形態において、本発明の樹脂シートは、<アイオノマー樹脂粒状物>の項に記載の本発明の方法により得られるアイオノマー樹脂粒状物の50℃での貯蔵弾性率、ヘイズ、吸水ヘイズ、徐冷ヘイズ、黄色度と同じ値を示す。
本発明の樹脂シートは、合わせガラスを製造する際に発泡し難いという観点から、含水量が少ない方が好ましい。樹脂シートの含水量は好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以下である。前記含有量は電量滴定法により測定できる。
本発明の樹脂シートの製造方法は特に限定されない。例えば、本発明の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物または本発明における樹脂組成物を均一に混練した後、押出法、カレンダー法、プレス法、溶液キャスト法、溶融キャスト法、インフレーション法等の公知の製膜方法により層(x)を製造できる。層(x)は単独で樹脂シートとして使用してもよい。また、必要に応じて、2層以上の層(x)、または1層以上の層(x)と1層以上の他の層とをプレス成形等で積層させて積層樹脂シートにしてもよく、2層以上の層(x)、または1層以上の層(x)と1層以上の他の層とを共押出法により成形して積層樹脂シートとしてもよい。層(x)または他の層が複数の層である場合、各層を構成する樹脂組成物は、同じでも異なっていてもよい。
公知の製膜方法のなかでも、押出機を用いて樹脂シートを製造する方法が好適に用いられる。押出時の樹脂温度は、押出機からの樹脂の吐出を安定化でき、機械トラブルを低減できる観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上である。押出し時の樹脂温度は、樹脂の分解および分解に伴う樹脂の劣化を低減できる観点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。また、揮発性物質を効率的に除去するために、減圧によって押出機のベント口から、揮発性物質を除去することが好ましい。
[合わせガラス中間膜および合わせガラス]
本発明の樹脂シートは、合わせガラス中間膜(単に中間膜ともいう)として好適に使用できる。したがって、本発明は、本発明の樹脂シートからなる合わせガラス中間膜を包含する。また、本発明は、2つのガラス板と、該2つのガラス板の間に配置された本発明の合わせガラス中間膜とを有する、合わせガラスも包含する。本発明の合わせガラスは、前記樹脂シートからなる合わせガラス中間膜を有するため、優れた透明性を有することができる。
本発明の中間膜と積層させるガラス板としては、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラス等の無機ガラスのほか、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等の従来公知の有機ガラス等を使用できる。これらは無色または有色のいずれであってもよい。これらは1種を使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、1枚のガラス板の厚さは、100mm以下であることが好ましく、2枚のガラス板の厚さは同じでも異なっていてもよい。
本発明の樹脂シートを2枚のガラスに挟んでなる合わせガラスは、従来公知の方法で製造できる。例えば真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法等が挙げられる。また上記方法により仮圧着した後に、オートクレーブに投入して本接着する方法も挙げられる。
真空ラミネーター装置を用いる場合、例えば1×10-6~1×10-1MPaの減圧下、60~200℃、特に80~160℃でガラス板、中間膜、および任意の層(例えば接着性樹脂層等)をラミネートすることにより、合わせガラスを製造できる。真空バッグまたは真空リングを用いる方法は、例えば欧州特許第1235683号明細書に記載されており、約2×10-2~3×10-2MPa程度の圧力下、100~160℃でガラス板、中間膜および任意の層をラミネートすることにより、合わせガラスを製造できる。
ニップロールを用いる製造方法の例としては、ガラス板、中間膜および任意の層を積層し、中間膜の流動開始温度以下の温度でロールにより脱気した後、さらに流動開始温度に近い温度で圧着を行う方法が挙げられる。具体的には、例えば赤外線ヒーター等で30~70℃に加熱した後、ロールで脱気し、さらに50~120℃に加熱した後ロールで圧着させる方法が挙げられる。
上述の方法を用いて圧着させた後にオートクレーブに投入してさらに圧着を行う場合、オートクレーブ工程の運転条件は合わせガラスの厚さおよび/または構成により適宜選択されるが、例えば0.5~1.5MPaの圧力下、100~160℃にて0.5~3時間処理することが好ましい。
本発明のアイオノマー樹脂粒状物および本発明の樹脂シートが高い透明性およびガラスへの高い接着性を有するため、本発明の合わせガラスは透明性に優れる。本発明の一実施形態において、本発明の合わせガラスのヘイズは、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。ヘイズが小さいほど合わせガラスの透明性が高まるため、下限値は特に制限されず、例えば、0.01%であってもよい。なお、合わせガラスのヘイズは、ヘイズメーターを用いてJIS K7136:2000に準拠して測定される。
本発明の合わせガラスは、徐冷時の透明性にも優れている。徐冷時の透明性は、徐冷時のヘイズ(徐冷ヘイズ)によって評価できる。本発明の合わせガラスの徐冷ヘイズは、好ましくは5.0%以下、より好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらにより好ましくは2.5%以下、特に好ましくは2.0%以下である。ヘイズが小さいほど合わせガラスの透明性が高まるため、下限値は特に制限されず、例えば、0.01%以上であってもよい。合わせガラスの徐冷ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠して測定できる。具体的には、合わせガラスを140℃まで加熱した後、140℃から0.1℃/分の速度で23℃まで徐冷した後のヘイズを、ヘイズメーターを用いて測定することにより求められ、例えば実施例に記載の方法で求めることができる。
本発明の合わせガラスは着色が少なく、可能な限り、無色であることが好ましい。本発明の合わせガラスの黄色度(YI)は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下であり、好ましくは0以上であってよい。なお、黄色度(YI)は測色色差計を用い、JIS Z8722に準拠して測定できる。
本発明の合わせガラスにおけるガラス板と中間膜の接着力は、例えば、WO1999/058334号公報に記載の圧縮せん断強度試験(Compression shear strength test)により測定される。圧縮せん断強度は、前記接着力を向上できる観点から、好ましくは15MPa以上、より好ましくは20MPa以上、特に好ましくは25MPa以上である。また、圧縮せん断強度は、合わせガラスの耐貫通性を向上できる観点から、50MPa以下であってよい。
上記のように、本発明のアイオノマー樹脂粒状物を樹脂成分として含む層を1層以上含んでなる樹脂シートは合わせガラス中間膜として有用である。該合わせガラス中間膜は、ガラス等の基材への接着性、透明性、自立性に優れる点から、特に、構造材料用(ファサード用)合わせガラスの中間膜として好ましい。
また、構造材料用合わせガラスの中間膜に限らず、本発明の合わせガラスは、自動車用フロントガラス、自動車用サイドガラス、自動車用サンルーフ、自動車用リアガラス、ヘッドアップディスプレイ用ガラス、外壁および屋根のためのラミネート、パネル、ドア、窓、壁、屋根、サンルーフ、遮音壁、表示窓、バルコニー、手摺壁等の建材、会議室の仕切りガラス部材、ソーラーパネル等に好適に用いることができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
[アイオノマー樹脂(Y)および原料樹脂の各単量体単位の含有量]
実施例および比較例で得られたアイオノマー樹脂粒状物について、該アイオノマー樹脂粒状物における(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)、エチレン単位(C)および(メタ)アクリル酸エステル単位(D)の各単量体単位の含有量を以下のように分析して求めた。その各含有量は、実施例および比較例におけるゾル状混合物に含まれるアイオノマー樹脂(Y)の各単量体単位の含有量に相当する。
実施例および比較例で得られたアイオノマー樹脂粒状物をそれぞれ脱水トルエン/脱水酢酸(75/25質量%)の混合溶媒に溶解し、100℃にて2時間反応させた後、アセトン/水(80/20質量%)の混合溶媒に再沈殿させることで、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)を(メタ)アクリル酸単位(A)に変換した。得られた樹脂を十分水で洗浄した後、乾燥し、乾燥した樹脂について下記(1)~(3)を行った。
(1)熱分解GC-MSにより、樹脂を構成する単量体単位の成分を分析した。
(2)JIS K0070:1992に準じて、樹脂の酸価を測定した。
(3)重水素化トルエンと重水素化メタノールとの混合溶媒を用いて、樹脂のH-NMR(400MHz、日本電子(株)製)測定を行った。
(4)また、実施例および比較例で得られたアイオノマー樹脂粒状物を、それぞれ、硝酸によるマイクロ波分解前処理に付した。その後、ICP発光分析(Thermo Fisher Scientific iCAP6500Duo)によって、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)の金属イオンの種類と量を同定した。
上記(1)から、(メタ)アクリル酸エステル単位(D)および(メタ)アクリル酸単位(A)の種類と構造を同定した。その情報、ならびに上記(2)および(3)の情報から、エチレン単位(C)/(メタ)アクリル酸エステル単位(D)/((メタ)アクリル酸単位(A)と(メタ)アクリル酸中和物単位(B)の合計)の比率を算出した。さらに、上記(4)の情報からエチレン単位(C)/(メタ)アクリル酸エステル単位(D)/(メタ)アクリル酸単位(A)/(メタ)アクリル酸中和物単位(B)の比率を算出した。
また、原料であるエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の各単量体単位の含有量については、重トルエンまたは重THFに溶解させ、H-NMR(400MHz、日本電子(株)製)にて測定し、算出した。
[原料樹脂のメルトフローレート(MFR)]
JIS K7210-1:2014に準拠して、実施例および比較例で用いた原料樹脂のメルトフローレートを測定した。具体的には、各樹脂をシリンダ内で溶融し、190℃、2.16kg荷重条件の下で、シリンダ底部に設置された公称孔径2.095mmのダイから押し出し、10分間あたりに押し出される樹脂量(g/10分)を測定した。
[アイオノマー樹脂粒状物の空隙率および細孔のメディアン径]
実施例および比較例で得られたアイオノマー樹脂粒状物を-80℃にて凍結乾燥した後、その0.5gを標準5cc粉体用セル(ステム容積0.4cc)に採った。初期圧2.6kPaの条件で、マイクロメリティックス細孔分布測定装置(株式会社島津製作所製、オートポアV9620)を用いて、アイオノマー樹脂粒状物の空隙率および細孔のメディアン径を測定した。細孔のメディアン径は、Log微分細孔容積分布において、細孔直径が0.005~100μmの範囲内における全ての細孔に対するメディアン径(d50)である。なお、水銀パラメータは、水銀接触角130degrees、水銀表面張力485hynes/cmとした。
[アイオノマー樹脂粒状物の粒度]
実施例および比較例で得られた粒状物の粒度を下記の手順で算出した。
アイオノマー樹脂粒状物がペレット形状を有する場合、得られたペレット形状粒状物から無作為に10粒のペレット形状粒状物を抽出し、当該10粒のペレット形状粒状物について、それぞれX軸の長さ(Lx)としてペレット形状粒状物の高さ、Y軸の長さ(Ly)としてペレット形状粒状物の底面の直径のうち最も長い部分の長さ、およびZ軸の長さ(Lz)としてペレット形状粒状物の底面の直径のうち最も短い部分の長さをマイクロメーターで測定した。各ペレット形状粒状物のX軸、Y軸およびZ軸の長さの平均値((Lx+Ly+Lz)/3)を算出した。各ペレット形状粒状物のX軸、Y軸、Z軸の長さの平均値の算術平均値をペレット形状粒状物の粒度とした。
アイオノマー樹脂粒状物が不定形状を有する場合、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA-950)を用いて、不定形状粒状物の粒子径分布を測定した。横軸に粒子径(μm)、縦軸に頻度(%)をプロットして得られたグラフにおけるピークトップの粒子径を、不定形状粒状物の粒度として採用した。なお、2以上のピークが得られた場合は、最も頻度の高いピークにおける粒子径を、不定形状粒状物の粒度とした。
[強酸および強塩基からなる塩の含有量(残存無機塩量)]
実施例および比較例で得られたアイオノマー樹脂粒状物をそれぞれ0.1g秤取し、超純水10mLを加え、90℃で1時間加温した。その後放冷し、目開き0.45μmのフィルターで濾過した。濾過して得た濾液をサンプル液とし、イオンクロマトグラフ((株)島津製作所製)を用いて、下記の条件にて測定を実施した。測定で得られたピーク面積により、塩素イオンまたは硝酸イオンを定量し、該塩素イオンまたは硝酸イオンの量をナトリウム塩の量に換算し、残存無機塩量を求めた。
(測定条件)
溶離液:炭酸ナトリウム水溶液(0.6mmol/L)と炭酸水素ナトリウム水溶液(12mmol/L)との混合溶液;
流速:1.0mL/分;
カラム温度:40℃;
カラム:IC-SA2(250L×4.0)
実施例および比較例で得られたゾル状混合物に含まれるアイオノマー樹脂(Y)に含まれる残存無機塩の量を、原料樹脂、けん化反応に用いた強塩基および脱金属反応に用いた強酸の量、原料樹脂における(メタ)アクリル酸エステル変性量、中和度、ならびに該強塩基および強酸の分子量から算出した。
[吸水時の透明性(吸水ヘイズ)]
実施例および比較例で得られたアイオノマー樹脂粒状物をそれぞれ210℃で溶融混練し、さらにその溶融混練物を210℃での加熱下、4.9MPa(50kgf/cm)の圧力にて5分間圧縮成形し、厚さ0.8mmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを50mm四方に切り出し、切り出したサンプルを23℃のイオン交換水に浸漬させた状態で300時間保持し、吸水サンプルを得た。イオン交換水から取出した吸水サンプルの表面に付着した水分を拭き取った後、吸水サンプルのヘイズをヘイズメーターHZ-1(スガ試験機(株)製)を用いてJIS K7136:2000に準拠して測定した。
[徐冷時の透明性(徐冷ヘイズ)]
上述の方法と同様にして得られた樹脂シートを厚さ2.7mmのフロートガラス2枚に挟み、真空ラミネーター(日清紡メカトロニクス(株)製 1522N)を使用し、100℃で真空ラミネーター内を1分間減圧し、減圧度および温度を保持したまま30kPaで5分間プレスして、仮接着体を得た。得られた仮接着体をオートクレーブに投入し、140℃、1.2MPaで30分間処理して、合わせガラスを得た。
得られた合わせガラスを140℃まで加熱したのち、0.1℃/分の速度で23℃まで徐冷した。徐冷操作後の合わせガラスのヘイズをヘイズメーターHZ-1(スガ試験機(株)製)を用いてJIS K7136:2000に準拠して測定した。
[原料樹脂]
実施例および比較例において、原料として用いた各エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)のメタクリル酸メチル(MMA)変性量またはアクリル酸エチル(EA)変性量およびMFRを表1に示す。
EMMA1としては住友化学(株)製「アクリフト」(登録商標)WK307を用い、EEA1としては(株)NUC製 NUC-6070を用いた。
Figure 2024086238000001
[実施例1]
SUS製の耐圧容器に、表1記載のEMMA1、100質量部を導入し、そこにトルエン233質量部を加えて、0.02MPaの加圧下、60℃で撹拌し、EMMA1を溶解させた。得られた溶液に水酸化ナトリウムのメタノール溶液(20質量%)96質量部を添加し、100℃で4時間撹拌し、EMMA1をけん化して、メタクリル酸メチル単位の一部をメタクリル酸ナトリウム単位に変換した。次いで、この溶液を50℃まで冷却した後に、硝酸(30質量%)92質量部を添加し、50℃で1時間撹拌して、メタクリル酸ナトリウム単位の一部をメタクリル酸に変換し、アイオノマー樹脂(Y)を含むゾル状混合物(1)を得た。ゾル状混合物(1)に含まれるアイオノマー樹脂(Y)のけん化度は96%であり、中和度は24%であった。
得られたゾル状混合物(1)を60℃に昇温し、そこにトルエン97質量部およびメタノール32質量部を加えてゾル状混合物(1)におけるアイオノマー樹脂(Y)の濃度が15質量%となるように希釈した。上記より得られた60℃のゾル状混合物(1)を、耐圧容器の底に装着した直径1mmのダイスより容器に排出し、ベルトコンベア上にて室温(約25℃)で放冷することにより徐冷したところ、混合物は温度38℃にてゲル化した。ゲル化は、ゲルの入った容器を90°傾け、ゲルの90体積%以上が1分以上流動しないことにより判定した(以下の実施例においても同様に、ゲル化を判定した)。23℃まで徐冷し、得られた多孔質のストランド状アイオノマー樹脂ゲルをカッティングミル(Retsch社、SM100)にて粉砕し、0.4mmの粒度を有する多孔質の不定形状アイオノマー樹脂ゲル1-1を得た。
次いで、得られた不定形状アイオノマー樹脂ゲル1-1の100質量部と、水/メタノール(50/50質量%)の混合溶媒400質量部とを混合した。前記混合により得られたスラリーを40℃で1時間撹拌し、その後、アイオノマー樹脂ゲルを室温にて濾取した。水/メタノール(50/50質量%)の混合溶媒によるアイオノマー樹脂ゲルの洗浄をさらに2回行い、洗浄された不定形状アイオノマー樹脂粒状物1-2を得た。上記洗浄の過程で、アイオノマー樹脂ゲル1-1から溶媒(ゾル状混合物(1)に含まれる溶媒、ここではトルエンおよびメタノール)が除去された。得られたアイオノマー樹脂粒状物1-2は、アイオノマー樹脂ゲル1-1と同様の空隙率、細孔のメディアン径および粒度を有していた。
[実施例2]
実施例1で得られたゾル状混合物(1)を50℃に調整し、そこにトルエン342質量部とメタノール114質量部を加えてゾル状混合物(1)におけるアイオノマー樹脂濃度が10質量%となるように希釈した。上記より得られた50℃のゾル状混合物(1)を、耐圧容器の底に装着した直径1mmのダイスより排出し、ベルトコンベア上にて室温で放冷することにより徐冷したところ、混合物は温度32℃にてゲル化した。23℃まで徐冷し、得られた多孔質のストランド状アイオノマー樹脂ゲルをカッティングミル(Retsch社、SM100)にて粉砕し、1mmの粒度を有する多孔質の不定形状アイオノマー樹脂ゲル2-1を得た。
次いで、得られた不定形状アイオノマー樹脂ゲル2-1を実施例1と同様に洗浄し、洗浄された不定形状アイオノマー樹脂粒状物2-2を得た。得られたアイオノマー樹脂粒状物2-2は、アイオノマー樹脂ゲル2-1と同様の空隙率、細孔のメディアン径および粒度を有していた。
[実施例3]
SUS製の耐圧容器に、表1記載のEMMA1、100質量部を導入し、そこにトルエン233質量部を加えて、0.02MPaの加圧下、60℃で撹拌し、EMMA1を溶解させた。得られた溶液に水酸化ナトリウムのメタノール溶液(20質量%)96質量部を添加し、100℃で4時間撹拌し、EMMA1をけん化して、メタクリル酸メチル単位の一部をメタクリル酸ナトリウム単位に変換した。次いで、この溶液を50℃まで冷却した後に、塩酸(20質量%)81質量部を添加し、50℃で1時間撹拌して、メタクリル酸ナトリウム単位の一部をメタクリル酸に変換し、アイオノマー樹脂(Y)を含むゾル状混合物(2)を得た。ゾル状混合物(2)に含まれるアイオノマー樹脂(Y)のけん化度は96%であり、中和度は22%であった。
得られた50℃のゾル状混合物(2)に、トルエン351質量部とメタノール117質量部を加えてゾル状混合物(2)におけるアイオノマー樹脂(Y)の濃度が10質量%となるように希釈した。上記より得られた50℃のゾル状混合物(2)を、耐圧容器の底に装着した直径1mmのダイスより排出し、ベルトコンベア上にて室温(約25℃)で放冷することにより徐冷したところ、混合物は温度32℃にてゲル化した。23℃まで徐冷し、得られた多孔質のストランド状アイオノマー樹脂ゲルをカッティングミル(Retsch社、SM100)にて粉砕し、0.8mmの粒度を有する多孔質の不定形状アイオノマー樹脂ゲル3-1を得た。
次いで、得られた不定形状アイオノマー樹脂ゲル3-1を実施例1と同様に洗浄し、洗浄された不定形状アイオノマー樹脂粒状物3-2を得た。得られたアイオノマー樹脂粒状物3-2は、アイオノマー樹脂ゲル3-1と同様の空隙率、細孔のメディアン径および粒度を有していた。
[実施例4]
実施例3で得られたゾル状混合物(2)を60℃に調整し、そこにトルエン106質量部とメタノール35質量部を加えてゾル状混合物(2)におけるアイオノマー樹脂(Y)の濃度が15質量%となるように希釈した。上記より得られた60℃のゾル状混合物(2)を、耐圧容器の底に装着した直径1mmのダイスより排出し、ベルトコンベア上にて室温で放冷することにより徐冷したところ、混合物は温度37℃にてゲル化した。23℃まで徐冷し、得られた多孔質のストランド状アイオノマー樹脂ゲルをファンカッター((株)星プラスチック社製)にて切断し、1mmの粒度を有する多孔質のペレット形状アイオノマー樹脂ゲル4-1を得た。
次いで、得られたペレット形状アイオノマー樹脂ゲル4-1を実施例1と同様に洗浄し、洗浄されたペレット形状アイオノマー樹脂粒状物4-2を得た。得られたアイオノマー樹脂粒状物4-2は、アイオノマー樹脂ゲル4-1と同様の空隙率、細孔のメディアン径および粒度を有していた。
[実施例5]
実施例1で得られたゾル状混合物(1)を55℃に調整し、そこにトルエン97質量部とメタノール32質量部を加えてゾル状混合物(1)におけるアイオノマー樹脂(Y)の濃度が15質量%となるように希釈した。上記より得られた55℃のゾル状混合物(1)を、耐圧容器の底に装着した直径1mmのダイスより排出し、ベルトコンベア上にて室温で放冷することにより徐冷したところ、混合物は温度37℃にてゲル化した。23℃まで徐冷し、得られた多孔質のストランド状アイオノマー樹脂ゲルをファンカッター((株)星プラスチック社製)にて切断し、1.4mmの粒度を有する多孔質のペレット形状アイオノマー樹脂ゲル5-1を得た。
次いで、得られたペレット形状アイオノマー樹脂ゲル5-1を実施例1と同様に洗浄し、洗浄されたペレット形状アイオノマー樹脂粒状物5-2を得た。得られたアイオノマー樹脂粒状物5-2は、アイオノマー樹脂ゲル5-1と同様の空隙率、細孔のメディアン径および粒度を有していた。
[実施例6]
実施例3で得られたゾル状混合物(2)を55℃に調整し、そこにトルエン106質量部とメタノール35質量部を加えてゾル状混合物(2)におけるアイオノマー樹脂(Y)の濃度が15質量%となるように希釈した。上記より得られた55℃のゾル状混合物(2)を、耐圧容器の底に装着した直径1mmのダイスより排出し、ベルトコンベア上にて室温で放冷することにより徐冷したところ、混合物は温度38℃にてゲル化した。23℃まで徐冷し、得られた多孔質のストランド状アイオノマー樹脂ゲルをファンカッター((株)星プラスチック社製)にて切断し、1.2mmの粒度を有する多孔質のペレット形状アイオノマー樹脂ゲル6-1を得た。
次いで、得られたペレット形状アイオノマー樹脂ゲル6-1を実施例1と同様に洗浄し、洗浄されたペレット形状アイオノマー樹脂粒状物6-2を得た。得られたアイオノマー樹脂粒状物6-2は、アイオノマー樹脂ゲル6-1と同様の空隙率、細孔のメディアン径および粒度を有していた。
[実施例7]
SUS製の耐圧容器に、表1記載のEEA1、100質量部を導入し、そこにトルエン233質量部を加えて、0.02MPaの加圧下、60℃で撹拌し、EEA1を溶解させた。得られた溶液に水酸化ナトリウムのメタノール溶液(20質量%)96質量部を添加し、100℃で4時間撹拌し、EEA1をけん化して、アクリル酸エチル単位の一部をアクリル酸ナトリウム単位に変換した。次いで、この溶液を50℃まで冷却した後に、硝酸(30質量%)93質量部を添加し、50℃で1時間撹拌して、アクリル酸ナトリウム単位の一部をアクリル酸に変換し、アイオノマー樹脂(Y)を含むゾル状混合物(3)を得た。ゾル状混合物(3)に含まれるアイオノマー樹脂(Y)のけん化度は96%であり、中和度は23%であった。
得られた50℃のゾル状混合物(3)に、トルエン1020質量部とメタノール340質量部を加えてゾル状混合物(3)におけるアイオノマー樹脂(Y)の濃度が5質量%となるように希釈した。上記より得られた50℃のゾル状混合物(3)を、耐圧容器の底に装着した直径1mmのダイスより排出し、ベルトコンベア上にて室温で放冷することにより徐冷したところ、混合物は温度25℃にてゲル化した。23℃まで徐冷し、得られた多孔質のストランド状アイオノマー樹脂ゲルをカッティングミル(Retsch社、SM100)にて粉砕し、0.1mmの粒度を有する多孔質の不定形状アイオノマー樹脂ゲル7-1を得た。
次いで、得られた不定形状アイオノマー樹脂ゲル7-1を実施例1と同様に洗浄し、洗浄された不定形状アイオノマー樹脂粒状物7-2を得た。得られたアイオノマー樹脂粒状物7-2は、アイオノマー樹脂ゲル7-1と同様の空隙率、細孔のメディアン径および粒度を有していた。
[実施例8]
実施例7で得られたゾル状混合物(3)を60℃に昇温し、そこにトルエン80質量部とメタノール27質量部を加えてゾル状混合物(3)におけるアイオノマー樹脂(Y)の濃度が15質量%となるように希釈した。上記より得られた60℃のゾル状混合物(3)を、耐圧容器の底に装着した直径1mmのダイスより排出し、ベルトコンベア上にて室温で放冷することにより徐冷したところ、混合物は温度38℃にてゲル化した。23℃まで徐冷し、得られた多孔質のストランド状アイオノマー樹脂ゲルをファンカッター((株)星プラスチック社製)にて切断し、2mmの粒度を有する多孔質のペレット形状アイオノマー樹脂ゲル8-1を得た。
次いで、得られたペレット形状アイオノマー樹脂ゲル8-1を実施例1と同様に洗浄し、洗浄されたペレット形状アイオノマー樹脂粒状物8-2を得た。得られたアイオノマー樹脂粒状物8-2は、アイオノマー樹脂ゲル8-1と同様の空隙率、細孔のメディアン径および粒度を有していた。
[実施例9]
SUS製の耐圧容器に、表1記載のEMMA1、100質量部を導入し、そこにトルエン233質量部を加えて、0.02MPaの加圧下、60℃で撹拌し、EMMA1を溶解させた。得られた溶液に水酸化ナトリウムのメタノール溶液(20質量%)96質量部を添加し、100℃で4時間撹拌し、EMMA1をけん化して、メタクリル酸メチル単位の一部をメタクリル酸ナトリウム単位に変換した。次いで、この溶液を50℃まで冷却した後に、硝酸(30質量%)95質量部を添加し、50℃で1時間撹拌して、メタクリル酸ナトリウム単位の一部をメタクリル酸に変換し、アイオノマー樹脂(Y)を含むゾル状混合物(4)を得た。ゾル状混合物(4)に含まれるアイオノマー樹脂(Y)のけん化度は96%であり、中和度は20%であった。
得られたゾル状混合物(4)を60℃に昇温し、そこにトルエン96質量部とメタノール32質量部を加えてゾル状混合物(4)におけるアイオノマー樹脂(Y)の濃度が15質量%となるように希釈した。上記より得られた60℃のゾル状混合物(4)を、耐圧容器の底に装着した直径1mmのダイスより排出し、ベルトコンベア上にて室温で放冷することにより徐冷したところ、混合物は温度38℃にてゲル化した。23℃まで徐冷し、得られた多孔質のストランド状アイオノマー樹脂ゲルをファンカッター((株)星プラスチック社製)にて切断し、3mmの粒度を有する多孔質のペレット形状アイオノマー樹脂ゲル9-1を得た。
次いで、得られたペレット形状アイオノマー樹脂ゲル9-1を実施例1と同様に洗浄し、洗浄されたペレット形状アイオノマー樹脂粒状物9-2を得た。得られたアイオノマー樹脂粒状物9-2は、アイオノマー樹脂ゲル9-1と同様の空隙率、細孔のメディアン径および粒度を有していた。
[比較例1]
実施例1で得られたゾル状混合物(1)を50℃に調整した。ゾル状混合物(1)におけるアイオノマー樹脂濃度が18.9質量%のまま、ゾル状混合物(1)を耐圧容器の底に装着した直径1mmのダイスより、20℃の水中に押出して冷却(急冷)することで凝固させ、多孔質のストランド状アイオノマー樹脂を得た。得られたストランド状アイオノマー樹脂を切断し、3mmの粒度を有する多孔質のペレット形状アイオノマー樹脂1’-1を得た。
次いで、得られたペレット形状アイオノマー樹脂1’-1を実施例1と同様に洗浄し、洗浄されたペレット形状アイオノマー樹脂粒状物1’-2を得た。得られたアイオノマー樹脂粒状物1’-2は、アイオノマー樹脂1’-1と同様の空隙率、細孔のメディアン径および粒度を有していた。
[比較例2]
実施例3で得られたゾル状混合物(2)を43℃に調整し、そこにトルエン109質量部とメタノール36質量部を加えて混合物におけるアイオノマー樹脂濃度が15質量%となるように希釈した。上記より得られた43℃の混合物を、そのまま1時間撹拌したが、希釈前のゾル状混合物(2)と希釈溶媒(トルエン)とは分離したままであった。
実施例および比較例で得られた洗浄後のアイオノマー樹脂粒状物を8時間以上真空乾燥した後、分析および評価を行った。分析結果および評価結果を表2に示す。なお、表2中の「Tol」はトルエンを表し、「MeOH」はメタノールを表す。また、表2において、ゾル状混合物中のアイオノマー樹脂の量(質量部)は、原料樹脂100質量部から得られたアイオノマー樹脂の量を表す。
表2に示されるように、実施例1~9で得られたアイオノマー樹脂粒状物は、洗浄回数が少なくても塩の含有量が低く、透明性に優れていた。一方、比較例1で得られたアイオノマー樹脂粒状物は透明性が低かった。

Claims (22)

  1. アイオノマー樹脂および溶媒を含むゾル状混合物を徐冷することによりゾル状混合物中のアイオノマー樹脂をゲル化させ、任意に粉砕して、多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルを得る工程、および
    多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルから溶媒を除去してアイオノマー樹脂粒状物を得る工程
    を含み、
    前記アイオノマー樹脂は、(メタ)アクリル酸単位(A)、(メタ)アクリル酸中和物単位(B)およびエチレン単位(C)を含み、前記単位(A)および前記単位(B)の合計含有量は、前記アイオノマー樹脂を構成する全単量体単位を基準として6モル%以上10モル%以下である、
    アイオノマー樹脂粒状物の製造方法。
  2. 前記徐冷のための冷媒には貧溶媒を用いない、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ゾル状混合物の温度は50℃以上である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記ゾル状混合物を40℃以下の温度まで徐冷する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記アイオノマー樹脂粒状物の細孔のメディアン径は1.2μmより大きく50μm以下である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記アイオノマー樹脂粒状物の空隙率は60%以上である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記アイオノマー樹脂粒状物は、粒度0.01~8mmのペレット形状または不定形状を有する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記アイオノマー樹脂は、アイオノマー樹脂を構成する全単量体単位を基準として0.01モル%以上1.0モル%以下の(メタ)アクリル酸エステル単位(D)をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記ゾル状混合物中のアイオノマー樹脂の濃度は、ゾル状混合物の質量に対して18.5質量%以下である、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
  10. 多孔質の粒状アイオノマー樹脂ゲルまたはアイオノマー樹脂粒状物を洗浄液で洗浄することを含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記洗浄液は水、アルコールまたはこれらの混合液である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記ゾル状混合物に含まれるアイオノマー樹脂中の強酸および強塩基からなる塩の含有量は100,000mg/kg以上である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
  13. 前記アイオノマー樹脂粒状物中の強酸および強塩基からなる塩の含有量は1000mg/kg以下である、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
  14. エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)を原料とする、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
  15. 細孔のメディアン径は1.2μmより大きく50μm以下である、多孔質のアイオノマー樹脂粒状物。
  16. 空隙率は60%以上である、請求項15に記載の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物。
  17. 空隙率(%)を細孔のメディアン径(μm)で除した値は1~50である、請求項16に記載の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物。
  18. 粒度0.01~8mmのペレット形状または不定形状を有する、請求項15~17のいずれかに記載の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物。
  19. 強酸および強塩基からなる塩の含有量は1000mg/kg以下である、請求項15~18のいずれかに記載の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物。
  20. 請求項15~19のいずれかに記載の多孔質のアイオノマー樹脂粒状物を樹脂成分として含む層を1層以上含む、樹脂シート。
  21. 請求項20に記載の樹脂シートからなる合わせガラス中間膜。
  22. 2つのガラス板と、該2つのガラス板の間に配置された請求項21に記載の合わせガラス中間膜とを有する、合わせガラス。
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