JP2024083883A - アルミニウム合金押出材及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金押出材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低コストで、引張強さ及び耐力が高いアルミニウム合金押出材を提供する。【解決手段】アルミニウム合金押出材であって、Si:0.90質量%以上2.00質量%以下、Mg:0.65質量%以上0.90質量%以下、Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下、Fe:0.050質量%以上0.49質量%以下、Zr:0.10質量%以上0.25質量%以下、Ti:0.010質量%以上0.10質量%以下、B:質量基準でTiの1.0倍以下、及び残部がAlと不可避不純物からなり、前記アルミニウム合金押出材の長さ方向で、一端から20%以上30%未満の位置における0.2%耐力をαとし、他端から20%以上30%未満の位置における0.2%耐力をβとしたとき、前記αが300MPa以上であり、前記βが300MPa以上であり、前記αと前記βとの比が0.95以上1.05以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム合金押出材及びその製造方法に関する。
アルミニウム合金は軽量かつ強度が高く、近年では、自動車、鉄道車両等の輸送機器、土木、建築分野、さらには家具、日用雑貨等の生活用品、家電製品等、用途が広がっている。アルミニウム合金材料には、肉薄化等によるさらなる軽量化が求められており、そのために、材料としてさらなる強度の向上が求められている。
特許文献1には、アルミニウム-マグネシウム-シリコン系のアルミニウム合金押出材の製造方法であって、質量%でマグネシウムを0.5~0.9%、シリコンを0.9~1.3%、鉄を0.3~0.5%、チタンを0.005~0.1%含有し、更に、銅を0.4%以下、マンガンを0.30%以下、クロムを0.10%以下、ジルコニウムを0.10%以下に制限し、残部をアルミニウムと不可避不純物からなるアルミニウム合金を押出成形し、空冷による焼入れを行った後、更に加工歪みを2~5%導入し、その後、人工時効を施すアルミニウム合金押出材の製造方法が記載されている。
特許文献2には、Si:0.70~1.3%(質量%、以下同じ)、Mg:0.45~1.2%、Cu:0.15~0.40%未満、Mn:0.10~0.40%、Cr:0.06%以下(0%を含まず)、Zr:0.05~0.20%、Ti:0.005~0.15%を含有し、Fe:0.30%以下、V:0.01%以下に規制し、残部Alおよび不可避不純物からなる化学成分を有し、耐力が350MPa以上であり、晶出物の粒径が5μm以下に規制されており、熱間押出方向と平行な断面における繊維状組織の面積比率が95%以上であるアルミニウム合金押出材が記載されている。
特許文献3には、Si:0.8~2.0質量%、Mg:0.7~1.0質量%、Cu:0.3~1.0質量%、Fe:≦0.20質量%、Mn:0.2~0.8質量%、Cr:0.1~0.4質量%、Mn+Cr:0.3~0.9質量%、残部がAlと不可避的不純物からなり、さらにMgとSi量がMg/1.73+0.2≦Si≦Mg/1.73+1.6の関係式を満たす成分組成を有しており、金属組織がファイバー組織である切削加工用アルミニウム合金押出材が記載されている。
特開2007-254809号公報 特開2014-074213号公報 特開2017-110238号公報
特許文献1では、焼入れ後に加工歪みを導入する工程が組み込まれており、通常の工程より工程数が多いことで、高コストとなりやすい。
特許文献2では、押出方向に繊維状組織を有しており、押出方向と平行な方向に対し、押出方向と垂直方向の機械的特性が劣ることがある。
特許文献3では、押出成形性が不十分で、十分な押出速度で成形するには、押出圧力を高くする必要があり、また、押出品の歪みが大きくなりやすい。そのため、押出材としての品質を保持するためには高コストとなりやすい。
そこで、本発明の目的は、低コストで、機械的特性に優れたアルミニウム合金押出材及びその製造方法を提供することとする。
上記課題を解決するための本発明の構成は以下のとおりである。
[1]所定の長さに切断されたアルミニウム合金押出材であって、
Si:0.90質量%以上2.00質量%以下、
Mg:0.65質量%以上0.90質量%以下、
Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下、
Fe:0.050質量%以上0.49質量%以下、
Zr:0.10質量%以上0.25質量%以下、
Ti:0.010質量%以上0.10質量%以下、
B:質量基準でTiの1.0倍以下、
及び残部がAlと不可避不純物からなり、
前記アルミニウム合金押出材の長さ方向で、一端から20%以上30%未満の位置における0.2%耐力をαとし、他端から20%以上30%未満の位置における0.2%耐力をβとしたとき、
前記αが300MPa以上であり、
前記βが300MPa以上であり、
前記αと前記βとの比が0.95以上1.05以下であるアルミニウム合金押出材。
[2]所定の長さに切断されたアルミニウム合金押出材であって、
Si:0.90質量%以上2.00質量%以下、
Mg:0.65質量%以上0.90質量%以下、
Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下、
Fe:0.050質量%以上0.49質量%以下、
Zr:0.10質量%以上0.25質量%以下、
Ti:0.010質量%以上0.10質量%以下、
B:質量基準でTiの1.0倍以下、
及び残部がAlと不可避不純物からなり、
前記アルミニウム合金押出材の長さ方向で、一端から20%以上30%未満の位置において、押出方向に垂直な断面における、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の存在密度をγとし、他端から20%以上30%未満の位置において、押出方向に垂直な断面における、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の存在密度をδとしたとき、
前記γが1.5×10個/mm以上5.4×10個/mm以下であり、
前記δが1.5×10個/mm以上5.4×10個/mm以下であり、
前記γと前記δとの比が0.92以上1.08以下であるアルミニウム合金押出材。
[3]衝突壁面板と、前記衝突壁面板と略平行に配置された背面板と、前記衝突壁面板および前記背面板を所定の間隔で連結する複数の連結板とを備え、
前記衝突壁面板、前記背面板および前記連結板のうち少なくとも1つが前項1または2に記載のアルミニウム合金押出材を用いて構成された衝撃吸収部材。
[4]前項1または2に記載のアルミニウム合金押出材の製造方法であって、
前記製造方法は、均質化されたアルミニウム合金からなるビレットの加熱工程と、前記加熱されたビレットを押出加工して押出材を得る押出工程と、前記押出加工により得られた押出材を冷却するダイクエンチ工程と、前記冷却された押出材を人工時効処理する時効工程と、を含み、
前記ビレットは、直径15cm以上、長さ30cm以上であり、
前記加熱工程は、前記ビレットの押出方向先端部の温度が400℃以上500℃以下であり、押出方向終端部の温度が350℃以上450℃以下であり、前記押出方向先端部の温度が前記押出方向終端部の温度より60℃以下の範囲内で高く、
前記加熱工程によって加熱されたビレットの押出方向先端部の押出方向に垂直な断面において、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の存在密度が1.6×10個/mm以上2.0×10個/mm以下であり、
前記ダイクエンチ工程は、冷却速度を、7.0℃/sec以上80℃/sec以下として、150℃以下まで冷却し、
前記時効工程は、120℃以上240℃以下で、2時間以上48時間以下行う、
アルミニウム合金押出材の製造方法。
前項[1]および[2]に記載の組成を有するアルミニウム合金材は、加熱することで変形しやすくなるため、押出圧力を低くすることが可能で、アルミニウム合金押出材の生産性が向上し、製造コストの低減を図れる。
アルミニウム合金押出材が前項[1]に記載の組成、0.2%耐力値および0.2%耐力値の比を有することで、押出材の長さ方向について均一な優れた機械的特性を得ることができる。
アルミニウム合金押出材が前項[2]に記載の組成、MgSi粒子の存在密度およびMgSi粒子の存在密度の比を有することで、押出方向について均一な優れた機械的特性を得ることができる。
前項[4]に記載の製造方法により、押出材の長さ方向について均一な優れた機械的特性のアルミニウム合金押出材を得ることができる。
よって、本発明によれば、低コストで、押出材の長さ方向について均一な優れた機械的特性を有するアルミニウム合金押出材及びその製造方法を提供することができる。
図1は、アルミニウム合金押出材の一例である。 図2は本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の押出方向に垂直な断面における走査電子顕微鏡(SEM)による写真の一例を示す図である。 図3は図2の写真を二値化した画像を示す図である。 図4は、本実施形態にかかるアルミニウム合金押出材を用いて製造された衝撃吸収部材の一例を示す平面図である。 図5は本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の製造方法の一例を示すフロー図である。 図6は各実施例及び各比較例において用いられたダイスの押出断面を示す図である。 図7は各実施例及び各比較例で作製されたアルミニウム合金押出材を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
なお、以下の説明において、「押出材」「アルミ合金押出材」とある場合、特に断りがなければ、アルミニウム合金押出材を意味する。
<1.アルミニウム合金押出材>
本実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の化学組成は、それぞれ後述する含有量のSi、Mg、Cu、Fe、Zr、Ti、B、及び残部からなり、残部がAl及び不可避不純物からなる。なお、後述するが、本実施形態にかかる押出材は、Bを含まなくてもよい。すなわち、本実施形態にかかる押出材は、Si、Mg、Cu、Fe、Zr、Ti、B、及び残部(Al及び不可避不純物からなる)からなる化学組成でもよく、Si、Mg、Cu、Fe、Zr、Ti、及び残部(Al及び不可避不純物からなる)からなる化学組成でもよい。
〔1-1.アルミニウム合金押出材の各成分〕
[1-1-1.Si]
押出材中のSiの含有率は0.90質量%以上であり、1.03質量%以上であることが好ましく、1.05質量%以上であることがより好ましい。Siは、Mgとの相互作用にて化合物を形成しやすく、MgSi析出物が形成されると、押出材の強度向上に寄与するためである。また、後述するMgの添加量に対して、MgSiを生成するための添加量を超えて過剰に添加することにより、人工時効処理(後述する時効工程)後の押出材の強度等の特性をより高めることができるためである。
押出材中のSiの含有率は、1.30質量%以上であってもよく、1.50質量%以上であってもよい。
押出材中のSiの含有率は2.00質量%以下であり、1.78質量%以下であることが好ましい。この理由は、Si単体の粒界析出を抑制し、押出材の靭性をより高めるためである。また、押出圧力を低減し、生産性及び歩留まりを向上させるためである。
押出材中のSiの含有率は1.50質量%以下であってもよく、1.25質量%以下であってもよい。
[1-1-2.Mg]
押出材中のMgの含有率は0.65質量%以上であり、0.70質量%以上であることが好ましく、0.72質量%以上であることがより好ましく、0.74質量%以上であることがさらに好ましい。Mgは、Siとの相互作用にて化合物を形成しやすく、MgSi析出物が形成されると、押出材の強度向上に寄与するためである。
押出材中のMgの含有率は0.90質量%以下であり、0.88質量%以下であることが好ましく、0.83質量%以下であることがより好ましい。この理由は、析出物の量を適切な範囲とすることで、焼き入れ感受性を向上させ、押出時の圧力が上昇を抑制するためである。また、生成したMgSi析出物を低温で固溶させやすくして、製品(押出材)の形状の精度をより向上させるためである。
[1-1-3.Cu]
押出材中のCuの含有率は0.25質量%以上であり、0.28質量%以上であることが好ましく、0.32質量%以上であることがより好ましく、0.36質量%以上であることがさらに好ましい。Cuの含有により、MgSi析出物の見かけの過飽和量を増加させ、MgSi析出物の析出量を増加させることにより、押出材の時効硬化性が向上するためである。また、Cuを含む化合物が結晶粒内に微細に析出すると強度向上に寄与する。
押出材中のCuの含有率は0.50質量%以下であり、0.45質量%以下であることが好ましく、0.42質量%以下であることがより好ましい。この理由は、押出加工性を向上させ、低い押出圧力で押出成形が可能になるためである。また、押出材の耐食性が向上するためである。
[1-1-4.Fe]
押出材中のFeの含有率は0.050質量%以上であり、0.080質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましく、0.13質量%以上であることがさらに好ましい。FeはAl、Siと結合して鋳造時に晶出すると共に、結晶粒の粗大化を抑制する効果があるためである。
押出材中のFeの含有率は0.49質量%以下であり、0.45質量%以下であることが好ましく、0.35質量%以下であることがより好ましく、0.30質量%以下であることがさらに好ましく、0.27質量%以下であることがさらに好ましく、0.24質量%以下であることが特に好ましい。この理由は、針状のAl-Fe-Si系の化合物の晶出を抑制し、押出成形性及び押出品の靭性をより向上させるためである。
[1-1-5.Zr]
Zrは、均質化処理時にZr含有微粒子として析出し、押出加工時に発生する結晶粒の核となる。押出材中のZrの含有率は0.10質量%以上であり、0.11質量%以上であることが好ましく、0.13質量%以上であることがより好ましい。この理由は、Zr含有微粒子、すなわち再結晶の核の数を増加させ、後述する結晶粒の粗大化を抑制するためである。
押出材中のZrの含有率は0.25質量%以下であり、0.20質量%以下であることが好ましく、0.17質量%以下であることがより好ましい。この理由は、鋳造時に合金溶湯の流動性が向上し、鋳造による押出用素材の形成が容易となり、結果として押出材の生産性が向上するためである。
[1-1-6.Ti]
Tiは、鋳造時の結晶粒を微細化する働きがあり、加えて鋳造時の鋳塊割れを抑制する効果がある。押出材中のTiの含有率は0.010質量%以上であり、0.020質量%以上であることが好ましく、0.025質量%以上であることがより好ましい。
押出材中のTiの含有率は0.10質量%以下であり、0.085質量%以下であることが好ましく、0.060質量%以下であることがより好ましい。この理由は、鋳造時に合金溶湯の流動性が向上し、鋳造による押出用素材の形成が容易となり、結果として押出材の生産性が向上するためである。
[1-1-7.B]
BもTiと同様に結晶粒微細化に有効であり、添加することにより、TiB粒子が生成し、分散すると考えられる。さらに、TiB粒子が結晶の凝固核となり、後述する結晶粒の微細化をもたらすと考えられる。Bは含んでもよく、含まなくてもよい。ここで「Bを含まない」とは、不可避不純物以外のBを含まないということであり、不可避不純物としてのBは含んでもよい。Bを含む場合、押出材中のBの含有量は質量基準でTiの0.050倍以上であることが好ましく、0.10倍以上であることがより好ましく、0.15倍以上であることがさらに好ましい。この理由は、後述する結晶粒の粗大化を抑制するためである。
押出材中のBの含有量は質量基準でTiの1.0倍以下であり、0.50倍以下であることが好ましく、0.25倍以下であることがより好ましい。この理由は、余剰のBがMgと結合することを抑制して、Siと結合すべきMgが消費されることを抑制するためである。
[1-1-8.その他の元素]
押出材中の不可避不純物として、例えば、Mn及びCrは可能な限り含有率を少なくすることが好ましい。この理由は、焼入れ感受性を鈍化させ、冷却速度のばらつきが強度に与える影響を小さくし、押出材の品質をより安定させることができるためである。具体的には、Mn及びCrの含有率は、0.05質量%未満が好ましく、0.01質量%未満がより好ましく、0.0005質量%未満か含有させないことが最も好ましい。
〔1-2.0.2%耐力〕
図1は、アルミニウム合金押出材の一例である。
アルミニウム合金押出材は、取り扱いやすいように、所定の長さ、たとえば5m程度にに切断されている。
本実施形態にかかるアルミニウム押出材は、長さ方向(押出方向)で、一端から20%以上30%未満の位置における0.2%耐力をαとし、他端から20%以上30%未満の位置における0.2%耐力をβとしたとき、前記αが300MPa以上であり、前記βが300MPa以上であり、前記αと前記βとの比が0.95以上1.05以下であることが好ましい。
ここで0.2%耐力は、後述する実施例の方法にて測定される値である(JISZ2241で、5号試験片(寸法は後述する)を用いて得られる値)。
本発明では、切断された所定の長さのアルミニウム合金押出材において、一端から20%以上30%未満の位置と、他端から20%以上30%未満の位置とに着目し、これらの両位置で300MPa以上という0.2%耐力を有することで高い機械的特性を確保している。
そして、本発明では、両位置での0.2%耐力の比(α/β)が0.95以上1.05以下であることで、アルミニウム合金押出材の長さ方向について、機械的特性の均一性を確保している。
〔1-3.MgSi粒子〕
図2は、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の押出方向に垂直な断面における走査電子顕微鏡(SEM)による写真の一例(実施例1)を示す図である。ここで、MgSi粒子は、同じ視野のEDXマッピングにおける各元素量の定量分析に基づいて確認される粒子である。具体的には、MgSi粒子は、この分析においてMgの含有率が30mass%以上80mass%以下、Siの含有率が10mass%以上40mass%以下、残部がAl(不可避不純物を含んでもよい。また、MgとSiとの合計含有率が100mass%(残部なし)でもよい)であり、MgとSiとの質量基準の比の値Mg/Siが1.5以上2.5以下である粒子とする。図2の写真内の黒い点がMgSi粒子である。
図3は、図2の写真を二値化した図である。MgSi粒子の粒径は0.10μm以上5.0μm以下である(この範囲にないサイズの粒子は、本発明におけるMgSi粒子ではない)。MgSi粒子の粒径は、SEM画像を二値化した画像に基づいて判定される。MgSi粒子の粒径は、二値化されて画像の黒い部分を円とみなしたうえでその面積から算出された直径である。
本実施形態にかかるアルミニウム押出材は、長さ方向(押出方向)で、一端から20%以上30%未満の位置において、押出方向に垂直な断面における、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の存在密度をγとし、他端から20%以上30%未満の位置において、押出方向に垂直な断面における、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の存在密度をδとしたとき、前記γが1.5×10個/mm以上5.4×10個/mm以下であり、前記δが1.5×10個/mm以上5.4×10個/mm以下であり、前記γと前記δとの比が0.92以上1.08以下であることが好ましい。
前記γ、前記δは、2.0×10個/mm以上であることがより好ましく、2.4×10個/mm以上であることがさらに好ましい。Mg元素の固溶が抑制され、押出性が向上するためである。
前記γ、前記δは、5.2×10個/mm以下であることがより好ましく、4.7×10個/mm以下であることがさらに好ましい。押出材の耐力が向上するためである。
なお、MgSi粒子の数は、日本電子社製電界放出形走査電子顕微鏡JSM-7000Fを用いて、倍率1,000倍、視野121μm×90.9μm=10998.9μmを4視野で数えられる。4視野でのMgSi粒子の合計数NMを、4視野分の面積で割ることで、MgSi粒子の存在密度が算出される。すなわち、MgSi粒子の存在密度は、NM/(4×10998.9)[個/μm]=10×NM/(4×10998.9)[個/mm]となる。
本発明では、切断された所定の長さのアルミニウム合金押出材において、一端から20%以上30%未満の位置と、他端から20%以上30%未満の位置とに着目し、これらの両位置での所定サイズのMgSi粒子の存在密度を1.5×10個/mm以上5.4×10個/mm以下とすることで高い機械的特性を確保している。
そして、本発明では、両位置でのMgSi粒子の存在密度(γ/δ)が0.92以上1.08以下であることで、アルミニウム合金押出材の長さ方向について、機械的特性の均一性を確保している。
〔1-4.衝撃吸収部材〕
本実施形態にかかるアルミニウム合金押出材は、衝撃吸収部材として好適である。
本実施形態の衝撃吸収部材は、例えば、自動車等の車両においては、フロントピラー、センターピラー、リアピラー等のビーム材や、サイドメンバーやバンパーステイなどのフレーム材、バンパーリンフォース、クラッシュボックス、バッテリーケース、フロントアンダーランプロテクター、リヤアンダーランプロテクター等への適用が挙げられるがこれに限定されず、鉄道車両等の衝撃吸収構造にも適用できる。
図4は、本実施形態にかかるアルミニウム合金押出材を用いて製造された衝撃吸収部材の一例を示す平面図である。
この図に示すように、この衝撃吸収部材2は、衝突壁面板3と、前記衝突壁面板3と略平行に配置された背面板4と、前記衝突壁面板3および前記背面板4を所定の間隔で連結する複数の連結板5,5とを備える。
衝突壁面板3、背面板4および連結板5,5は、いずれも本実施形態に係るアルミニウム合金材で構成してよいが、これらの一部だけを本実施形態に係るアルミニウム合金材で構成してもよい。
<2.アルミニウム合金押出材の製造方法>
図5は、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の製造方法の一例を示すフロー図である。以下、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の製造方法の一例について説明するが、本発明にかかる押出材の製造方法はこれに限られない。
図5に示すように本実施形態の一例にかかるアルミニウム合金押出材の製造方法は、溶融工程と、鋳造工程と、均質化工程と、加熱工程と、押出工程と、ダイクエンチ工程と、時効工程とを含む。なお、これらの工程は全て必要とは限らず、例えば、鋳造後の材料が入手可能であれば、溶融工程及び鋳造工程は不要であり、均質化後の材料が入手可能であれば、均質化工程までの各工程は不要である。
〔2-1.溶融工程〕
溶融工程では、アルミニウム合金の溶湯を調製する。溶湯の化学組成は、得ようとするアルミニウム合金押出材の化学組成と同じであることが好ましく、アルミニウム合金押出材に含まれる各元素については上記したとおりである。
〔2-2.鋳造工程〕
鋳造工程では、溶融工程で得られた溶湯を鋳造することによりビレット(押出用素材)を得る。鋳造方法は、特に限定されないが、例えば、垂直型フロート連続鋳造法、垂直型ホットトップ連続鋳造法、水平型連続鋳造法等が挙げられる。
ビレットのサイズは、直径15cm以上、長さ30cm以上であることが好ましい。
〔2-3.均質化工程〕
均質化工程では均質化処理を行い、鋳造工程で得られたビレットの金属組織を均質化する、及びアルミニウム合金に含まれる原子を十分に固溶させる。均質化工程によって強度の高い押出材が得られる。均質化工程に用いられるアルミニウム合金(ビレット)の化学組成は、得ようとするアルミニウム合金押出材の化学組成と同じであることが好ましく、アルミニウム合金押出材に含まれる各元素については上記したとおりである。
均質化処理の温度は500℃以上であることが好ましく、530℃以上であることがより好ましく、550℃以上であることがさらに好ましい。この理由は、ビレットの金属組織を十分に均質化せるため、及びアルミニウム合金に含まれる原子を十分に固溶させるためである。均質化処理の温度は600℃以下であることが好ましく、570℃以下であることがより好ましい。こうして金属間化合物の溶融を抑制することで、金属間化合物の粒子の粗大化を抑制し、押出材の機械的特性を向上させるためである。
均質化処理の時間は3時間以上であることが好ましく、8時間以上であることがより好ましく、12時間以上であることがさらに好ましい。この理由は、ビレットの金属組織を十分に均質化せるため、及びアルミニウム合金に含まれる原子を十分に固溶させるためである。均質化処理の時間は24時間以下であることが好ましく、20時間以下であることがより好ましく、18時間以下であることがさらに好ましい。この理由は、金属間化合物の粒子の粗大化を抑制し、押出材の機械的特性を向上させるためである。
均質化処理の後、ビレットを冷却することが好ましい。冷却後のビレットの温度は150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。ビレットを50℃以下まで冷却して保管してもよい。冷却方法としては、水冷、ミスト冷却、空冷、ファン冷、放冷等が挙げられるが、特に限定されない。冷却速度は、100℃/h以上であることが好ましく、150℃/h以上であることがより好ましい。
〔2-4.加熱工程〕
加熱工程では、均質化工程で均質化されたビレットを加熱し、ビレットの変形抵抗を低下させる。また、加熱工程によりビレットを構成する成分を固溶させる。加熱工程において用いられるビレットを構成するアルミニウム合金材に含まれる元素及びその含有量は、アルミニウム合金押出材の説明にて上記したとおりである。
本実施形態のアルミニウム合金押出材では、上述したとおり、最終的に、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の存在密度を1.5×10個/mm以上5.4×10個/mm以下の範囲に収めることを目標の1つとしている。
この押出材におけるMgSi粒子は、後述する時効工程において析出させることが望ましい。析出するMgSi粒子の粒径および存在密度を適切に制御するためである。
このため、時効工程前のアルミニウム合金材中にはMgSi粒子が含まれないようにすることが望ましい。時効工程前のアルミニウム合金材中にMgSi粒子が含まれていると、その分だけアルミニウム合金材中に固溶するMgやSiが減少し、時効処理でMgSi粒子を十分に析出させることができなくなるためである。
時効工程前のアルミニウム合金材中にはMgSi粒子が含まれないようにするには、押出工程において所定の温度域を通過させてMgSi粒子をMgとSiとして固溶させることが望ましい。
加熱工程における加熱温度は、押出工程におけるビレット自身の加工発熱およびダイスとの摩擦等による材料の加熱を考慮するが、加熱温度が低すぎると押出工程におけるビレットの変形抵抗が大きくなる。
一方、加熱工程における加熱温度が高すぎると、加熱工程においてMgSi粒子が過剰に成長して粗大化してしまい、押出工程においてMgSi粒子をMgとSiとして十分に固溶させることができなくなる。
また押出の初期は、中期以降と比較して、ビレット自身の加工発熱およびダイスとの摩擦等による材料の加熱による熱量が低い。このため加熱工程における加熱温度が押出方向全域で同じ加熱温度にすると、押出方向先端部が押出工程において所定の温度まで昇温できず、MgSi粒子をMgとSiとして十分に固溶させることができなくなるおそれがある。あるいは押出方向終端部が押出工程において高温となりすぎるおそれがある。
そこで本実施形態では、加熱工程における加熱温度は、ビレットの押出方向先端部において400℃以上500℃以下とし、押出方向終端部において350℃以上450℃以下とし、押出方向先端部の温度が押出方向終端部の温度より高いものとする。
このように押出方向先端部の温度を、押出方向終端部の温度より高くすることにより、押出の初期においてもMgSi粒子がMgとSiとして十分に固溶させることができ、押出方向終端部が高温になりすぎることを防止できる。
また上記の加熱温度により、押出工程におけるビレットの変形抵抗が大きくなることを防止できるとともに、加熱工程においてMgSi粒子が過剰に成長して粗大化することを防止できる。
押出方向先端部と押出方向終端部の温度差は60℃以下とすることが好ましい。温度差が60℃を超えると、加熱工程においてビレットの先端部でMgSi粒子が過剰に成長しやすくなるからである。
一方、押出方向先端部と押出方向終端部の温度差は15℃以上とすることが好ましい。ビレットの押出方向終端部近傍で押出加工時に高温となりすぎるおそれがあるからである。
加熱工程において上記の加熱温度の加熱工程を経たビレットは、ビレットの押出方向先端部で、押出方向に垂直な断面において、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の存在密度が1.6×10個/mm以上2.0×10個/mm以下であることが好ましい。
加熱工程において上記のMgSi粒子の存在密度であれば、押出工程においてMgSi粒子をMgとSiとして十分に固溶させて、時効工程前のアルミニウム合金材中に固溶するMgとSiを確保して、時効工程において析出するMgSi粒子の粒径および存在密度を適切に制御することができる。
〔2-5.押出工程〕
押出工程では、加熱工程において加熱されたビレットを押出加工して、押出材を得る。具体的には、例えば、加熱工程において加熱されたビレットをコンテナに装填し、所定の開口部形状を有する押出用金型(以降、ダイスと呼ぶ)に押し付けることで、所望の断面形状を有する押出材が得られる。本実施形態にかかる押出材は、中空形状を有することが好ましい。押出速度は5.0m/min以上であることが好ましく、6.5m/min以上であることがより好ましい。この理由は、材料にひずみを与えて、所定形状の結晶粒を有する金属組織がより形成しやすくなるためである。また、押出材の生産性が向上するためである。
また押出工程では、上述したとおり、ビレット自身の加工発熱およびダイスとの摩擦等による加熱により昇温し、ビレット中に含まれるMgSi粒子がMgとSiとしてアルミニウム合金材中に固溶する。
〔2-6.ダイクエンチ工程〕
ダイクエンチ工程では、押出加工(押出工程)により得られた押出材の冷却をする。冷却方法は、特に限定されないが、水冷、ミスト冷却、ファン空冷、放冷等が挙げられる。ダイクエンチ工程により、過飽和固溶体が形成される。冷却速度は7.0℃/sec以上であり、10℃/sec以上であることが好ましく、12℃/sec以上であることがより好ましい。この理由は、固溶している成分の析出を抑制し、過飽和固溶体を維持しやすいためである。また、押出材の生産性が向上するためである。
冷却速度は、80℃/sec以下であり、40℃/sec以下であることが好ましく、20℃/sec以下であることがより好ましい。この理由は、冷却時の熱収縮による押出材の変形を抑制するためである。
ダイクエンチ工程の目標温度は、150℃以下であり、100℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましい。
ダイクエンチ工程の後、後述する時効工程までの間、押出材を常温、例えば30℃以下で保管してもよい。ダイクエンチ工程から時効工程までの時間(自然時効工程)は、72時間以内とすることが好ましい。室温であっても時効が進行するが、72時間以内であれば後の金属組織や機械的特性に影響を与えないためである。
〔2-7.時効工程〕
時効工程では、ダイクエンチ工程において冷却された押出材に、人工時効処理を行う。時効工程により、押出材においてMgSi系析出物が成長し、押出材の強度が向上する。
時効処理温度は、120℃以上であり、140℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。この理由は、押出材においてMgSi系析出物を析出させやすくなるためである。時効処理温度は、240℃以下であり、220℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。この理由は、押出材におけるMgSi系析出物の過剰な成長を抑制し、押出材の強度を向上させるためである。
時効処理時間は、2時間以上であり、4時間以上であることが好ましく、5時間以上であることがより好ましい。この理由は、MgSi系析出物を十分に析出させるためである。時効処理時間は、48時間以下であり、16時間以下であることが好ましく、8時間以下であることがより好ましい。この理由は、押出材におけるMgSi系析出物の過剰な成長を抑制し、押出材の強度を向上させるためである。また、押出材の生産性が向上するためである。
以下、本発明にかかるアルミニウム合金押出材及びその製造方法について、実施例及び比較例を示しながら、より具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されない。
<1.アルミニウム合金押出材の作製>
Si:0.94質量%、Mg:0.73質量%、Cu:0.38質量%、Fe:0.26質量%、Zr:0.14質量%、Ti:0.042質量%、B:0.004質量%、残部がアルミニウムと不可避不純物からなるアルミニウム合金を用いて、直径156mmの円形断面を有するビレットを連続鋳造にて作成した。
Bの含有量0.004質量%は、質量基準でTiの含有量0.042質量%の0.095倍である。
得られたビレットに560℃、14時間の均質化処理を施した。その後、ビレットを30℃まで、180℃/hで冷却した。次に、押出工程に先立って、冷却されたビレットを加熱した(加熱工程)。この加熱工程における各実施例および各比較例のビレットの先端部温度、ビレット後端部温度およびビレット先端部と後端部との温度差を表1に示した。
Figure 2024083883000002
図6は、各実施例及び各比較例において用いられたダイスの押出断面(押出孔)を示す図である。各実施例及び比較例においては、このダイスD1によって図7に示す押出材1を成形するものである。この押出材1は、断面矩形状の外周壁11に、その内部(中空部)を2分割する中仕切壁12が一体に形成された中空形状の押出型材である。
そして図6に示すダイスD1は、押出材1の外周壁11を成形するための外周壁成形孔D11と、中仕切壁12を成形するための中仕切壁成形孔D12とを有する押出孔D10を備えている。またこのダイスD1は、外周壁成形孔D11の横寸法L1が150mmであり、縦寸法L2が125mmである。更に外周壁成形孔D11および中仕切り壁12の幅T1は、5.5mmであり、外周壁成形孔D11における内側の曲率半径Riは、3mmであり、外側の曲率半径Roは、6mmである。
各実施例及び各比較例いずれにおいても、表1に示したビレット温度に加熱されたビレットに、上記図6のダイスD1を用いて、8インチ直接押出機にて押出加工を行った。この押出工程における各実施例及び各比較例における押出速度は8.0m/minとした。押出工程による押出材の長さは33.4mであった。
押出工程の直後に、冷却速度30℃/secで40℃まで冷却した(ダイクエンチ工程)。
ダイクエンチ工程後の押出材を長さ5mに切断した。
ダイクエンチ工程後の押出材に180℃、6時間の人工時効処理(時効工程)を行い、所定長さ(5m)のアルミニウム合金押出材を得た。以下の説明において、特に断りがなければ、押出材は時効工程後に得られたアルミニウム合金押出材とする。また、時効処理後のアルミニウム合金押出材が、本発明にかかるアルミニウム合金押出材となる。
<2.各種測定>
〔2-1.ビレットのMgSi粒子の存在密度の測定〕
各実施例および比較例において、加熱工程時にビレットの押出方向先端部の温度履歴(昇温速度および保持時間)を熱電対で測定した。その後、加熱工程前の別のビレット(各実施例および比較例に用いたビレットと同等のもの)から1cm角の立方体状の試験片を切り出し、この試験片に対して測定した温度履歴をラボ熱処理炉で再現した。その後、試験片を急冷して加熱工程終了時の状態を固定した。この試験片を押出方向に垂直にカットし、日本電子社製クロスセクションポリッシャにて観察用断面を形成させた。
日本電子社製電界放出形走査電子顕微鏡JSM-7000Fを用いて、倍率1,000倍で、121μm×90.9μm=10998.9μmの視野の画像を4個取得し、EDXマッピング分析を行った。
得られたマッピング分析結果、及び二値化した画像(例えば図3)を用いて、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の個数を4視野分カウントした。カウントされたMgSi粒子の数を4視野分の面積で割って、MgSi粒子の存在密度を算出した。なお、カウントされるMgSi粒子の定義は、上記の通りである。
各実施例及び各比較例にかかるビレットについて測定されたMgSi粒子の存在密度を表1に示した。
〔2-2.押出材の0.2%耐力の測定〕
各実施例及び各比較例において得られたアルミニウム合金押出材から、長さ方向(押出方向)で、一端から21%の位置と、他端から20%の位置において試験片を切り出し、JISZ2241に規定されている方法により測定した。測定は5号試験片を切り出して行った。
なお、本発明において一端から21%の位置から切り出した試験片とは、一端から21%の位置を中間部に含む試験片との意味とする。
具体的な試験片サイズは、押出方向に沿って標点間距離50mm及び平行部長さ60mm、幅25mm、厚さ2mm、肩部R30mmで切り出した。引張試験片の常温(24℃)における引張試験(JISZ2241に準拠)を、クロスヘッド速度2mm/minにて行うことで、引張強さを算出し、オフセット法にて0.2%耐力を測定した。
長さ方向(押出方向)で、一端から21%の位置における0.2%耐力をαとし、他端から20%の位置における0.2%耐力をβとして、各実施例及び各比較例にかかる押出材について測定された0.2%耐力α、βを表1に示した。
また、一端から21%の位置における0.2%耐力αと、他端から20%の位置における0.2%耐力βの比α/βを表1に示した。
〔2-3.押出材のMgSi粒子の存在密度の測定〕
各実施例及び各比較例において得られたアルミニウム合金押出材から、長さ方向(押出方向)で、一端から21%の位置と、他端から20%の位置において試験片を切り出し、切り出された試験片を押出方向に垂直にカットし、日本電子社製クロスセクションポリッシャにて観察用断面を形成させた。日本電子社製電界放出形走査電子顕微鏡JSM-7000Fを用いて、倍率1,000倍で、121μm×90.9μm=10998.9μmの視野の画像を4個取得し、EDXマッピング分析を行った。
得られたマッピング分析結果、及び二値化した画像(例えば図3)を用いて、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の個数NMを4視野分カウントした。カウントされたMgSi粒子の数NMを4視野分の面積で割って、MgSi粒子の存在密度を算出した。なお、カウントされるMgSi粒子の定義は、上記の通りである。
長さ方向(押出方向)で、一端から21%の位置において、押出方向に垂直な断面における、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の存在密度をγとし、他端から20%の位置において、押出方向に垂直な断面における、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の存在密度をδとし、各実施例及び各比較例にかかる押出材について測定されたMgSi粒子の存在密度γ、δを表1に示した。
また、一端から21%の位置におけるMgSi粒子の存在密度γと、他端から20%の位置におけるMgSi粒子の存在密度δの比γ/δを表1に示した。
<3.評価>
各実施例にかかるアルミニウム合金は、いずれも押出性に優れている。そのため、各実施例にかかるアルミニウム合金押出材の生産性を向上させることができ、結果として押出材の製造コストの低減が可能である。また、各実施例にかかるアルミニウム合金押出材は、いずれも一端側および他端側の0.2%耐力α、βがともに高く、かつその比α/βが1に近く、押出方向について均一性が高い。また、各実施例にかかるアルミニウム押出材は、いずれも一端側および他端側のMgSiの存在密度γ、δが所定の範囲にあり、かつその比γ/δが1に近く、押出方向について均一性が高い。
比較例1および2は、ビレット先端部と終端部の温度差が大きく、ビレット先端部のMgSiの存在密度が高い。その結果、比較例1および2の押出材は一端側および他端側の0.2%耐力の比α/βが1よりかなり小さく、押出方向について均一性が低く、一端側および他端側のMgSiの存在密度の比γ/δが1よりかなり大きく、押出方向について均一性が低い。
比較例3は、ビレット先端部の温度が極めて高く、ビレット先端部のMgSiの存在密度が極めて高い。その結果、比較例3の押出材は、一端側および他端側の0.2%耐力の比α/βが1よりかなり小さく、一端側のMgSiの存在密度が高く、一端側および他端側のMgSiの存在密度の比γ/δが1よりかなり大きく、押出方向について均一性がかなり低い。
比較例4は、ビレット終端部温度が極めて高く、ビレット先端部と終端部の温度差が小さく、ビレット先端部のMgSiの存在密度が高い。その結果、比較例4の押出材は、一端側および他端側の0.2%耐力の比α/βが1よりかなり大きく、一端側および他端側のMgSiの存在密度の比γ/δが1よりかなり小さく、押出方向について均一性がかなり低い。
以上のことから、本発明にかかるアルミニウム合金押出材は、低コストで、耐力が高く、押出方向について機械的特性の均一性が高いことがわかる。また、本発明にかかるアルミニウム合金押出材の製造方法によれば、低コストで、耐力が高く、押出方向について機械的特性の均一性が高いアルミニウム合金押出材が得られることがわかる。
この発明のアルミニウム合金押出材は、高強度構造材として利用可能である。
1:アルミニウム合金押出材
2:衝撃吸収部材
3:衝突壁面板
4:背面板
5:連結板

Claims (4)

  1. 所定の長さに切断されたアルミニウム合金押出材であって、
    Si:0.90質量%以上2.00質量%以下、
    Mg:0.65質量%以上0.90質量%以下、
    Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下、
    Fe:0.050質量%以上0.49質量%以下、
    Zr:0.10質量%以上0.25質量%以下、
    Ti:0.010質量%以上0.10質量%以下、
    B:質量基準でTiの1.0倍以下、
    及び残部がAlと不可避不純物からなり、
    前記アルミニウム合金押出材の長さ方向で、一端から20%以上30%未満の位置における0.2%耐力をαとし、他端から20%以上30%未満の位置における0.2%耐力をβとしたとき、
    前記αが300MPa以上であり、
    前記βが300MPa以上であり、
    前記αと前記βとの比が0.95以上1.05以下であるアルミニウム合金押出材。
  2. 所定の長さに切断されたアルミニウム合金押出材であって、
    Si:0.90質量%以上2.00質量%以下、
    Mg:0.65質量%以上0.90質量%以下、
    Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下、
    Fe:0.050質量%以上0.49質量%以下、
    Zr:0.10質量%以上0.25質量%以下、
    Ti:0.010質量%以上0.10質量%以下、
    B:質量基準でTiの1.0倍以下、
    及び残部がAlと不可避不純物からなり、
    前記アルミニウム合金押出材の長さ方向で、一端から20%以上30%未満の位置において、押出方向に垂直な断面における、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の存在密度をγとし、他端から20%以上30%未満の位置において、押出方向に垂直な断面における、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の存在密度をδとしたとき、
    前記γが1.5×10個/mm以上5.4×10個/mm以下であり、
    前記δが1.5×10個/mm以上5.4×10個/mm以下であり、
    前記γと前記δとの比が0.92以上1.08以下であるアルミニウム合金押出材。
  3. 衝突壁面板と、前記衝突壁面板と略平行に配置された背面板と、前記衝突壁面板および前記背面板を所定の間隔で連結する複数の連結板とを備え、
    前記衝突壁面板、前記背面板および前記連結板のうち少なくとも1つが請求項1または2に記載のアルミニウム合金押出材を用いて構成された衝撃吸収部材。
  4. 請求項1または2に記載のアルミニウム合金押出材の製造方法であって、
    前記製造方法は、均質化されたアルミニウム合金からなるビレットの加熱工程と、前記加熱されたビレットを押出加工して押出材を得る押出工程と、前記押出加工により得られた押出材を冷却するダイクエンチ工程と、前記冷却された押出材を人工時効処理する時効工程と、を含み、
    前記ビレットは、直径15cm以上、長さ30cm以上であり、
    前記加熱工程は、前記ビレットの押出方向先端部の温度が400℃以上500℃以下であり、押出方向終端部の温度が350℃以上450℃以下であり、前記押出方向先端部の温度が前記押出方向終端部の温度より60℃以下の範囲内で高く、
    前記加熱工程によって加熱されたビレットの押出方向先端部の押出方向に垂直な断面において、粒径0.10μm以上5.0μm以下のMgSi粒子の存在密度が1.6×10個/mm以上2.0×10個/mm以下であり、
    前記ダイクエンチ工程は、冷却速度を、7.0℃/sec以上80℃/sec以下として、150℃以下まで冷却し、
    前記時効工程は、120℃以上240℃以下で、2時間以上48時間以下行う、
    アルミニウム合金押出材の製造方法。

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