JP2024078878A - インクジェット用インク及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】記録ヘッドからの吐出ヨレの発生を抑制でき、分散安定性に優れるインクジェット用インクを提供する。【解決手段】インクジェット用インクは、キナクリドン顔料と、水性媒体とを含有する。インクジェット用インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液の10倍希釈液における硫黄濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下である。上澄み液の25倍希釈液の紫外線可視光線吸収スペクトルにおいて、所定ピークの吸光度は0.17以下である。所定ピークは、波長400nm以上490nm以下の範囲における最大ピークである。【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット用インク及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録装置が備える記録ヘッドから、インクジェット用インクが吐出される。インクジェット用インクには、記録ヘッドからの吐出安定性が要求される。このような要求に対して、特許文献1には、例えば、水系顔料分散体を含むインクジェット用記録液が記載されている。この水系顔料分散体は、水性の液体と、水性の液体に分散したキナクリドン顔料の粒子と、キナクリドン顔料の粒子の表面に吸着した水溶性キナクリドン誘導体と、未吸着の水溶性キナクリドン誘導体とを含む。
特開2000-273383号公報
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット用記録液は、インクジェット記録装置が備える記録ヘッドからの吐出ヨレの発生を抑制する点、及び分散安定性の点で、不十分である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録ヘッドからの吐出ヨレの発生を抑制でき、分散安定性に優れるインクジェット用インクと、このインクジェット用インクを用いたインクジェット記録装置とを提供することである。
本発明に係るインクジェット用インクは、キナクリドン顔料と、水性媒体とを含有する。前記インクジェット用インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液の10倍希釈液における硫黄濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下である。前記上澄み液の25倍希釈液の紫外線可視光線吸収スペクトルにおいて、所定ピークの吸光度は0.17以下である。前記所定ピークは、波長400nm以上490nm以下の範囲における最大ピークである。
本発明に係るインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送部と、インクを前記記録媒体に吐出する記録ヘッドとを備える。前記インクは、既に述べたインクジェット用インクである。
本発明に係るインクジェット用インク、及びインクジェット記録装置は、記録ヘッドからの吐出ヨレの発生を抑制でき、分散安定性に優れる。
上澄み液の25倍希釈液の紫外線可視光線吸収スペクトルの一例を示す図である。 本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置の一例を示す図である。 図2で示す記録ヘッドの下面を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。体積中位径(D50)は、何ら規定していなければ、動的光散乱式粒径分布測定装置(スペクトリス株式会社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて測定された値である。酸価は、何ら規定していなければ、「JIS(日本産業規格)K0070:1992」に従い測定した値である。質量平均分子量(Mw)は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。本明細書では、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。式の説明における「各々独立に」は、同一の基を表してもよく異なる基を表してもよいことを意味する。本明細書に記載の各成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以上、本明細書で用いられる用語について説明した。
[第1実施形態:インクジェット用インク]
以下、本発明の第1実施形態のインクジェット用インク(以下、単にインクと記載することがある)を説明する。
第1実施形態のインクは、キナクリドン顔料と、水性媒体とを含有する。インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液の10倍希釈液における硫黄濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下である。インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液の25倍希釈液の紫外線可視光線吸収スペクトルにおいて、所定ピークの吸光度は0.17以下である。所定ピークは、波長400nm以上490nm以下の範囲における最大ピークである。
以下、「インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液」を、単に、「上澄み液」と記載することがある。また、「インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液の10倍希釈液における硫黄濃度」を、「所定硫黄濃度」と記載することがある。「インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液の25倍希釈液の紫外線可視光線吸収スペクトルにおける、所定ピークの吸光度」を、「所定吸光度」と記載することがある。本明細書において、「所定ピーク」は、「紫外線可視光線吸収スペクトルにおいて、波長400nm以上490nm以下の範囲における最大ピーク」と定義する。
第1実施形態のインクは、上記構成を備えることにより、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制でき、分散安定性に優れる。その理由は以下のように推察される。
まず、理解を助けるために、キナクリドン顔料の合成方法の概要について説明する。キナクリドン顔料は、例えば、式(D)で表される化合物である。キナクリドン顔料は、例えば、反応式(r-a)、(r-b)、及び(r-c)で表される反応を実施することにより合成される。
Figure 2024078878000002
式(A)、(B)、(C)、及び(D)中、RA、RB、R1、及びR2は、各々独立に、一価の基を表す。以下「反応式(r-a)、(r-b)、及び(r-c)で表される反応」を、各々、「反応(r-a)、(r-b)、及び(r-c)」と記載することがある。また、「式(A)、(B)、(C)、及び(D)で表される化合物」を、各々、「化合物(A)、(B)、(C)、及び(D)」と記載することがある。R1及びR2がメチル基を表す場合、化合物(D)は、C.I.ピグメントレッド122となる。R1及びR2が水素原子を表す場合、化合物(D)は、C.I.ピグメントバイオレット19となる。反応(r-a)、(r-b)、及び(r-c)を実施する過程において、合成中間体である化合物(B)及び(C)が生じる。以上、キナクリドン顔料の合成方法の概要について説明した。
反応(r-a)、(r-b)、及び(r-c)を実施する過程において生じた合成中間体(より具体的には、化合物(B)及び(C))が、不純物として、キナクリドン顔料に残存していることがある。このようなキナクリドン顔料をインクが含有することで、インクも合成中間体を含有することとなる。合成中間体の極性は、比較的高い。このため、キナクリドン顔料を含有したインクを用いて画像を形成する場合、記録ヘッドの吐出面及びノズル孔の内壁に、合成中間体が静電気的に付着することがある。インクが乾燥して増粘した際に、付着した合成中間体は凝集物となり、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの一因となる。そこで、第1実施形態のインクにおいて、所定吸光度を、0.17以下とする。所定ピークは、例えば、キナクリドン顔料の合成中間体(より具体的には、化合物(B)及び(C))に由来するピークである。所定吸光度が0.17以下であれば、不純物である合成中間体が比較的少ないため、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制できる。
また、キナクリドン顔料は水性媒体に分散し難いため、キナクリドン顔料に、分散剤として、硫黄原子を有するキナクリドン誘導体が添加されることがある。以下、「硫黄原子を有するキナクリドン誘導体」を、「硫黄含有顔料誘導体」と記載することがある。硫黄含有顔料誘導体が添加されたキナクリドン顔料をインクが含有することで、インクも硫黄含有顔料誘導体を含有することとなる。硫黄含有顔料誘導体の極性は、比較的高い。このため、キナクリドン顔料を含有したインクを用いて画像を形成する場合、記録ヘッドの吐出面及びノズル孔の内壁に、硫黄含有顔料誘導体が静電気的に付着することがある。インクが乾燥して増粘した際に、付着した硫黄含有顔料誘導体は凝集物となり、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの一因となる。そこで、第1実施形態のインクにおいて、所定硫黄濃度を、6.0ppm以下とする。所定硫黄濃度が6.0ppm以下であれば、硫黄含有顔料誘導体が比較的少ないため、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制できる。
また、第1実施形態のインクにおいて、所定硫黄濃度を1.0ppm以上とする。所定硫黄濃度が1.0ppm以上であるインクは、分散剤である硫黄含有顔料誘導体がインクに十分に含有されている。このため、キナクリドン顔料を含む顔料粒子の分散粒子径が小さくなり、顔料粒子が沈降し難くなる。その結果、インクの分散安定性が向上する。
以上、第1実施形態のインクが、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制でき、分散安定性に優れる理由について、説明した。以下、第1実施形態のインクについて、更に詳細に説明する。
<所定吸光度>
以下、図1を参照して、所定吸光度の求め方について説明する。図1は、参考インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られた上澄み液を水で25倍に希釈した25倍希釈液の紫外線可視光線吸収スペクトルを示す図である。なお、参考インクは、後述する実施例及び比較例のインクとは異なるものであるが、所定吸光度の求め方を説明するための一例として示している。この参考インクは、キナクリドン顔料(より具体的には、C.I.ピグメントレッド122)と、後述する硫黄含有顔料誘導体(1-1)と、水性媒体とを少なくとも含有している。図1の縦軸は、吸光度を示し、横軸は、波長(単位:nm)を示す。
図1において、所定ピークPは、波長400nm以上490nm以下の範囲における最大ピークである。最大ピークは、400nm以上490nm以下の波長範囲に現れるスペクトルの凸曲線におけるピーク(即ち、頂点)のうち、最大吸光度を有するピークである。
図1に示すスペクトルにおいて、波長400nm以上490nm以下の範囲に現れるピークのうち、最大吸光度を有する所定ピークPを決定する。そして、図1に示すスペクトルから、上澄み液の25倍希釈液の所定ピークPの波長Wp(単位:nm)と吸光度Apとを読み取る。読み取った上澄み液の25倍希釈液の所定ピークPの吸光度Apが、上澄み液の25倍希釈液の紫外線可視光線吸収スペクトルにおける、所定ピークの吸光度(即ち、所定吸光度)である。なお、図1に示す例では、波長400nm以上490nm以下の範囲に現れるスペクトルのピークのうち、最大吸光度を有する所定ピークPの波長Wpは、429nmに確認される。
以上、図1を参照して、所定吸光度の求め方について説明した。以下、所定吸光度について、更に説明する。
既に述べたように、所定吸光度は、0.17以下である。所定吸光度は、その下限は特に限定されないが、例えば、0.05以上である。
上澄み液の25倍希釈液の所定ピークは、例えば、キナクリドン顔料に残存しているキナクリドン顔料の合成中間体に由来するピークである。従って、所定吸光度は、例えば、インクに含まれるキナクリドン顔料に残存している合成中間体の量を変更することで、調整できる。合成中間体の量は、例えば、後述する活性炭処理工程において、顔料分散液の活性炭処理のパス回数を変更することで、変更できる。顔料分散液の活性炭処理のパス回数が多い程、合成中間体の少なくとも一部が取り除かれて、所定吸光度が小さくなる傾向がある。
キナクリドン顔料を合成するためのキナクリドン顔料の合成中間体としては、例えば、式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)と記載することがある)が挙げられる。上澄み液の25倍希釈液の所定ピークは、例えば、インクに含有される化合物(2)に由来するピークである。
Figure 2024078878000003
式(2)中、RA及びRBは、各々独立に、一価の基を表す。R3は、ヒドロキシ基又は式(3)で表される基を表す。R4は、ヒドロキシ基又は式(4)で表される基を表す。
Figure 2024078878000004
式(3)及び(4)中、R1及びR2は、各々独立に、一価の基を表す。*は、結合手を表す。より具体的には、式(3)中の*は、式(2)中のR3が結合している炭素原子に対する結合手である。式(4)中の*は、式(2)中のR4が結合している炭素原子に対する結合手である。
化合物(2)としては、例えば、既に述べた化合物(B)及び(C)が挙げられる。
式(2)、並びに既に述べた式(A)、(B)、及び(C)中のRA及びRBが表す一価の基としては、例えば、アルキル基、及びアリール基が挙げられる。RA及びRBが表す一価の基としては、アルキル基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、エチル基が更に好ましい。
式(3)及び(4)、並びに既に述べた式(C)、及び(D)中、R1及びR2が表す一価の基としては、例えば、水素原子、アルキル基、及びハロゲン原子が挙げられる。R1及びR2が表すハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。R1及びR2が表すアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R1及びR2は、何れも水素原子を表すことが好ましい。また、R1及びR2は、何れもメチル基を表すことも好ましい。
<キナクリドン顔料>
インクは、キナクリドン顔料を含有する。キナクリドン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(19、及び42)、C.I.ピグメントレッド(122、202、206、207、及び209)、及びC.I.ピグメントオレンジ(48、及び49)が挙げられる。キナクリドン顔料の結晶型としては、例えば、α型、γ型、及びβ型が挙げられる。キナクリドン顔料の結晶が安定化することから、キナクリドン顔料としては、γ型及びβ型が好ましい。キナクリドン顔料は、硫黄含有顔料誘導体とは異なり、硫黄原子を有していなくてもよい。
キナクリドン顔料として使用可能な市販品としては、例えば、大日精化工業株式会社製「RED63」、大日精化工業株式会社製「TRM-11」、BASF社製「Cinquasia(登録商標)Magenta D4550」、BASF社製「Cinquasia(登録商標)Pink D4450」、クラリアント社製「Inkjet Magenta E-S」、クラリアント社製「HOSTAPERM PINK E 02」、クラリアント社製「HOSTAPERM RED E3B」、及びクラリアント社製「HOSTAPERM RED E5B 02」が挙げられる。
所定硫黄濃度を所定範囲内に容易に調整できることから、キナクリドン顔料の含有率は、キナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体の合計質量に対して、88質量%以上96質量%以下であることが好ましい。
インクにおけるキナクリドン顔料の含有割合としては、1質量%以上12質量%以下が好ましく、4質量%以上8質量%以下がより好ましい。キナクリドン顔料の含有割合を1質量%以上とすることで、インクを用いて所望の画像濃度の画像を形成できる。キナクリドン顔料の含有割合を12質量%以下とすることで、インクの流動性を好適化できる。インクは、顔料として、キナクリドン顔料のみを含有してもよい。また、インクの色相を調整するために、インクは、顔料として、キナクリドン顔料に加えて、これ以外の顔料を更に含有してもよい。顔料におけるキナクリドン顔料の含有割合としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。インクにおけるキナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体の合計含有割合としては、1質量%以上12質量%以下が好ましく、4質量%以上8質量%以下がより好ましい。
<硫黄含有顔料誘導体>
インクは、硫黄含有顔料誘導体(即ち、硫黄原子を有するキナクリドン誘導体)を更に含有することが好ましい。硫黄含有顔料誘導体の少なくとも一部は、キナクリドン顔料に吸着されている。キナクリドン顔料は疎水性であり、硫黄含有顔料誘導体は親水性である。このため、硫黄含有顔料誘導体がキナクリドン顔料に吸着することで、水性媒体にキナクリドン顔料が好適に分散する。キナクリドン顔料は非水溶性であり、硫黄含有顔料誘導体は水溶性であることが好ましい。硫黄含有顔料誘導体の一部は、水性媒体中に遊離していてもよい。
所定硫黄濃度は、上澄み液の25倍希釈液における硫黄含有顔料誘導体が有する硫黄原子の濃度に相当する。即ち、所定硫黄濃度は、上澄み液の25倍希釈液に含まれる硫黄含有顔料誘導体が有する硫黄原子の濃度である。所定硫黄濃度は、例えば、インクに含まれる硫黄含有顔料誘導体が有する硫黄原子に由来している。
既に述べたように、所定硫黄濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下である。水性媒体にキナクリドン顔料を更に好適に分散性させるために、所定硫黄濃度は、1.5pm以上であることが好ましく、2.0ppm以上であることがより好ましく、3.0ppm以上であることが更に好ましく、5.0ppm以上であることが一層好ましい。一方、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を更に抑制するためには、所定硫黄濃度は、5.0ppm以下であることが好ましく、3.0ppm以下であることがより好ましく、2.0ppm以下であることが更に好ましく、1.5ppm以下であることが一層好ましい。
例えば、キナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体の合計質量に対する硫黄含有顔料誘導体の含有率を変更することにより、所定硫黄濃度を調整できる。硫黄含有顔料誘導体の含有率が低い程、所定硫黄濃度は低下する傾向にある。例えば、後述するキナクリドン顔料の合成の工程A及び工程Bにおいて、添加される硫黄含有顔料誘導体の量を変更することにより、所定硫黄濃度を調整できる。市販のキナクリドン顔料を使用する場合には、所望の硫黄含有顔料誘導体の含有率を有する製造ロットを選択することにより、所定硫黄濃度を調整できる。また、後述する顔料分散液の調製工程において湿式分散機の吐出量を変更することにより、所定硫黄濃度を調整できる。所定硫黄濃度は、例えば、実施例に記載の方法で測定される。
硫黄含有顔料誘導体は、例えば、硫黄含有基を有する。硫黄含有基としては、例えば、スルホ基、スルフィノ基、スルフェノ基、チオカルボキシ基、ジチオカルボキシ基、及びスルフィド基が挙げられる。硫黄含有顔料誘導体は、例えば、上記で例示したキナクリドン顔料の水素原子が硫黄含有基で置換された化合物である。
硫黄含有顔料誘導体は、金属塩であることが好ましい。硫黄含有顔料誘導体が金属塩であると、水性媒体に対する硫黄含有顔料誘導体の親和性が高くなる。その結果、硫黄含有顔料誘導体を吸着したキナクリドン顔料が、水性媒体に好適に分散する。金属塩である硫黄含有顔料誘導体としては、式(1)で表される化合物(以下、硫黄含有顔料誘導体(1)と記載することがある)が好ましい。
Figure 2024078878000005
式(1)中、nは、1以上3以下の整数を表し、mは、1以上3以下の整数を表し、Xは、金属イオンを表す。
式(1)中、nは、2又は3を表すことが好ましい。mは、1を表すことが好ましい。式(1)中のXは、1価以上3価以下の金属イオンを表すことが好ましく、2価又は3価の金属イオンを表すことがより好ましく、Al3+又はMg2+を表すことが更に好ましい。
硫黄含有顔料誘導体(1)としては、例えば、式(1-1)及び(1-2)で表される化合物(以下、それぞれを、硫黄含有顔料誘導体(1-1)及び(1-2)と記載することがある)が挙げられる。なお、式(1-1)及び(1-2)中のmは1を表すが、これを省略して示している。
Figure 2024078878000006
硫黄含有顔料誘導体の含有率は、キナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体の合計質量に対して、4質量%以上12質量%以下であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。硫黄含有顔料誘導体の含有率が4質量%以上12質量%以下であると、所定硫黄濃度を所定範囲内に容易に調整できる。硫黄含有顔料誘導体の含有率が低くなる程、所定硫黄濃度が低くなる傾向にある。
インクにおける硫黄含有顔料誘導体の含有割合としては、0.01質量%以上2.00質量%以下が好ましく、0.20質量%以上0.75質量%以下がより好ましい。
<顔料分散樹脂>
インクは、顔料分散樹脂を更に含有することが好ましい。顔料分散樹脂は、吸着樹脂と、未吸着樹脂とを含む。吸着樹脂は、キナクリドン顔料に吸着されている。キナクリドン顔料は、例えば、吸着樹脂とともに顔料粒子を構成する。顔料粒子は、例えば、キナクリドン顔料を含むコアと、コアを被覆する被覆層とを有する。被覆層は、吸着樹脂により構成される。顔料分散樹脂は親水性を有するため、キナクリドン顔料の表面に吸着した吸着樹脂によって、水性媒体にキナクリドン顔料が分散する。一方、未吸着樹脂は、キナクリドン顔料に吸着されていない。未吸着樹脂は、水性媒体中に遊離している。顔料分散樹脂に対する未吸着樹脂の含有率(以下、未吸着樹脂比率と記載することがある)は、20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
顔料分散樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。キナクリドン顔料を安定的に分散させる観点から、顔料分散樹脂としては、スチレンアクリル樹脂が好ましい。
スチレンアクリル樹脂は、繰り返し単位として、少なくとも1種のスチレン及びその誘導体に由来する繰り返し単位と、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位とを少なくとも有する。スチレンアクリル樹脂は、繰り返し単位として、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を更に有することが好ましい。
スチレン又はその誘導体に由来する繰り返し単位を形成可能な第1モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、及びビニルトルエンが挙げられる。第1モノマーとしては、スチレンが好ましい。顔料分散樹脂の有する全繰り返し単位に対する、スチレン又はその誘導体に由来する繰り返し単位の含有割合は、25.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位を形成可能な第2モノマーとしては、例えば、アクリル酸、及びメタクリル酸が挙げられる。第2モノマーとしては、メタクリル酸が好ましい。顔料分散樹脂の有する全繰り返し単位に対する、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位の含有割合は、4.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以上11.0質量%以下であることがより好ましい。顔料分散樹脂がアクリル酸及びメタクリル酸の両方に由来する繰り返し単位を有する場合、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位の含有割合は、アクリル酸及びメタクリル酸に由来する繰り返し単位の合計含有割合である。
(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を形成可能な第3モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素原子数が1以上8以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素原子数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸ブチルが更に好ましく、メタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチルが特に好ましい。顔料分散樹脂の有する全繰り返し単位に対して、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位の含有割合は、35.0質量%以上70.0質量%以下であることが好ましく、40.0質量%以上70.0質量%以下であることがより好ましい。顔料分散樹脂が2種以上の(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を有する場合、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位の含有割合は、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位の合計含有割合である。
顔料分散樹脂は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位と、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルに由来する繰り返し単位と、スチレンに由来する繰り返し単位とを有することが好ましい。顔料分散樹脂は、1種の(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位と、1種又は2種の(メタ)アクリル酸アルキルに由来する繰り返し単位と、スチレンに由来する繰り返し単位とを有することがより好ましい。顔料分散樹脂は、メタクリル酸に由来する繰り返し単位と、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位と、アクリル酸ブチルに由来する繰り返し単位と、スチレンに由来する繰り返し単位とを有することが特に好ましい。少なくとも1種の(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位の含有割合(好ましくは、1種の(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位の含有割合、より好ましくは、メタクリル酸に由来する繰り返し単位の含有割合)は、顔料分散樹脂が有する全繰り返し単位に対して、8.0質量%以上11.0質量%以下であることが好ましい。
顔料分散樹脂の酸価は、60mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることがより好ましく100mgKOH/g以上130mgKOH/g以下であることが更に好ましい。顔料分散樹脂の酸価が60mgKOH/g以上であれば、水性媒体に顔料粒子が好適に分散し、インクの発色及び着色力が好適化される。一方、顔料分散樹脂の酸価が300mgKOH/g以下であれば、インクの保存安定性が好適化される。
顔料分散樹脂の質量平均分子量は、10000以上50000以下であることが好ましく、15000以上30000以下であることがより好ましい。顔料分散樹脂の質量平均分子量が10000以上50000以下であることで、インクの粘度が好適化される。
記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制しつつ、水性媒体に顔料粒子を好適に分散させるために、顔料分散樹脂の質量に対する顔料の質量の比率(以下、顔料/樹脂比率と記載することがある)は、5.0以下であることが好ましく、0.1以上2.5以下であることがより好ましく、0.5以上2.5以下であることが更に好ましい。顔料/樹脂比率は、計算式「顔料/樹脂比率=顔料の質量/顔料分散樹脂の質量」から算出できる。顔料分散樹脂の質量は、吸着樹脂及び未吸着樹脂の合計質量である。
インクにおける顔料分散樹脂の含有割合としては、0.5質量%以上8.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上4.0質量%以下がより好ましい。顔料分散樹脂の含有割合が0.5質量%以上であれば、キナクリドン顔料の凝集を好適に抑制できる。顔料分散樹脂の含有割合が8.0質量%以下であれば、記録ヘッドのノズル詰まりを好適に抑制できる。
<水性媒体>
インクは、水性媒体を含有する。水性媒体は、水を含む媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体の例としては、水及び有機溶媒を含む媒体が挙げられる。水との相溶性を高めるために、水性媒体に含まれる有機溶媒は、水溶性有機溶媒であることが好ましい。水溶性有機溶媒は、水に任意の割合で均一に混和する有機溶媒である。
水溶性有機溶媒としては、例えば、グリコール化合物、トリオール化合物、グリコールエーテル化合物、ラクタム化合物、含窒素化合物、アセテート化合物、γ-ブチロラクトン、チオジグリコール、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
グリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-へキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、2-エチル-1,2-ヘキサンジオール、及びチオジグリコールが挙げられる。グリコール化合物としては、3-メチル-1,5-ペンタンジオールが好ましい。
トリオール化合物としては、例えば、グリセリン、1,2,3-ブタントリオール、及び1,2,6-ヘキサントリオールが挙げられる。トリオール化合物としては、グリセリンが好ましい。
グリコールエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。グリコールエーテル化合物としては、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
ラクタム化合物としては、例えば、2-ピロリドン、及びN-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。
含窒素化合物としては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ホルムアミド、及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
アセテート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
水性媒体としては、水、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、及びグリセリンの混合溶媒が好ましい。
インクにおける水溶性有機溶媒の含有割合としては、10質量%以上40質量%以下が好ましく、20質量%以上30質量%以下がより好ましい。インクにおける水性媒体の含有割合としては、30質量%以上95質量%以下が好ましく、70質量%以上95質量%以下がより好ましい。
<界面活性剤>
インクは、界面活性剤を更に含有することが好ましい。界面活性剤は、インクに含まれる各成分の相溶性及び分散安定性を好適化させる。また、界面活性剤は、記録媒体に対するインクの浸透性を好適化させる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、アセチレンジオール及びアセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。アセチレンジオールとしては、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び2,4-ジメチル-5-ヘキシン-3-オールが挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物、及びアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が好ましい。ノニオン界面活性剤のHLB値は、4以上14以下であることが好ましく、4以上8以下又は10以上14以下であることがより好ましい。インクが界面活性剤を含有する場合、インクにおける界面活性剤の含有割合としては、0.01質量%以上1.00質量%以下が好ましい。
<その他の成分>
インクは、必要に応じて、公知の添加剤(より具体的には、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、中和剤、及び防カビ剤等)を更に含有してもよい。
<キナクリドン顔料の合成方法>
キナクリドン顔料の合成方法の概要について既に述べたが、以下、キナクリドン顔料の合成方法の一例について更に詳細に説明する。
反応(r-a)において、化合物(A)から、化合物(B)を得る。次いで、反応(r-b)において、1モル当量の化合物(B)と、2モル当量のアニリン誘導体とを反応させて、1モル当量の化合物(C)を得る。次いで、反応(r-c)において、化合物(C)を酸化することで化合物(C)の酸化物を得る。次いで、反応(r-c)において、化合物(C)の酸化物を加水分解することで、加水分解物を得る。次いで、反応(r-c)において、触媒を用いて加水分解物を脱水閉環反応することで、化合物(D)が得られる。脱水閉環反応の反応温度は、例えば、90℃以上120℃以下である。脱水閉環反応の反応時間は、例えば、1時間以上2時間以下である。
上記反応(r-c)を実施した後、キナクリドン顔料に、例えば、溶剤処理工程(以下、工程Aと記載することがある)、及び後処理工程(以下、工程Bと記載することがある)が実施されてもよい。
(工程A)
工程Aでは、溶剤を用いて、キナクリドン顔料が処理される。工程Aが実施される前のキナクリドン顔料は、クルードとも呼ばれ、結晶化度の低い凝集粒子である。工程Aが実施される前のキナクリドン顔料は、着色性が十分でない。そこで、工程Aを実施することで、キナクリドン顔料の結晶成長、及びキナクリドン顔料の微粒子化を促す。キナクリドン顔料の結晶化及び微粒子化が促されることで、キナクリドン顔料の着色性及び彩度が好適化される。より具体的には、工程Aを実施することで、キナクリドン顔料のクルードが、キナクリドン顔料のβ型又はγ型結晶となり、キナクリドン顔料の着色性及び彩度が向上する。キナクリドン顔料の処理方法としては、例えば、ニーダー(例えば、ソルトミリングニーダー)を用いて、キナクリドン顔料と溶剤とを混練する方法が挙げられる。キナクリドン顔料を処理する温度及び時間は、特に限定されず、所望のキナクリドン顔料の粒子径及び粒度分布となるように適宜設定されればよい。工程Aは、キナクリドン顔料を加熱しながら実施されてもよい。また、工程Aにおいて、摩砕助剤として無機塩基(より具体的には、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等)が、必要に応じて添加されてもよい。工程Aで得られたキナクリドン顔料の混練物は、必要に応じて水又は溶剤で洗浄され、例えばウェットケーキ状となる。
(工程B)
工程Bでは、工程Aで得られたキナクリドン顔料の混練物が後処理される。工程Bを実施することで、微粒子化したキナクリドン顔料の凝集が抑制される。工程Bを実施することで、工程Aで付与されたキナクリドン顔料の着色性及び彩度に加え、良好な分散性及び保存安定性をキナクリドン顔料に付与できる。後処理方法としては、例えば、キナクリドン顔料の混練物から溶剤を除去してキナクリドン顔料を分離する方法が挙げられる。キナクリドン顔料分離する方法としては、例えば、ろ過、乾燥、及びロータリーエバポレーターを用いた溶剤の留去が挙げられる。溶剤が留去される場合、溶剤留去の温度は、例えば、溶剤の沸点以上の温度である。
工程A及び工程Bの一方又は両方において、硫黄含有顔料誘導体が添加されることが好ましい。硫黄含有顔料誘導体の添加により、キナクリドン顔料の凝集が抑制され、キナクリドン顔料の分散性及び保存安定性の両立が可能となる。工程Bにおいて硫黄含有顔料誘導体が添加される場合、硫黄含有顔料誘導体は、混練物から顔料組成物を分離する処理を開始した時点で添加されてもよく、分離処理中に添加されてもよい。硫黄含有顔料誘導体の質量(工程A及び工程Bの両方において硫黄含有顔料誘導体が添加される場合には、工程A及び工程Bで添加される硫黄含有顔料誘導体の合計質量)は、キナクリドン顔料100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下であることが好ましく、1質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、4質量部以上14質量部以下であることが更に好ましい。硫黄含有顔料誘導体の質量がキナクリドン顔料100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下であると、キナクリドン顔料の色相が好適化される。硫黄含有顔料誘導体の質量がキナクリドン顔料100質量部に対して4質量部以上14質量部以下であると、所定硫黄濃度を所望の範囲内の値に容易に調整できる。
工程A及び工程Bの両方において硫黄含有顔料誘導体が添加される場合には、工程Bで添加される硫黄含有顔料誘導体の種類(例えば、化学構造)は、工程Aで添加される硫黄含有顔料誘導体の種類と同一であってもよく、異なっていてもよい。また、工程A及び工程Bの両方において硫黄含有顔料誘導体が添加される場合には、キナクリドン顔料の着色性を好適化する観点から、工程Bで添加される硫黄含有顔料誘導体の質量は、工程Aで添加される硫黄含有顔料誘導体の質量と同等又はそれよりも多いことが好ましい。
工程Bが実施された後、必要に応じて、分離されたキナクリドン顔料に、洗浄(例えば、フィルタープレスによる洗浄)、乾燥、及び粉砕が実施される。しかしながら、洗浄後も、キナクリドン顔料に合成中間体が残存することがある。そこで、インクの製造時に顔料分散液に活性炭処理等を実施することで、合成中間体の少なくとも一部を取り除くことが好ましい。これにより、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制できる。
<インクの製造方法>
第1実施形態のインクの製造方法の一例について、説明する。製造されるインクは、第1実施形態のインクである。インクに含有される水性媒体は、第1水性媒体と、第2水性媒体とを含む。第1実施形態のインクの製造方法は、顔料組成物準備工程と、顔料分散液調製工程と、除去工程と、インク調製工程とを含む。次に、第1実施形態のインクの製造方法の詳細について、説明する。
(顔料組成物準備工程)
顔料組成物準備工程において、キナクリドン顔料組成物を準備する。キナクリドン顔料組成物は、キナクリドン顔料と、硫黄含有顔料誘導体(即ち、硫黄原子を有するキナクリドン顔料誘導体)とを含む。顔料組成物準備工程で準備されるキナクリドン組成物において、硫黄含有顔料誘導体の含有率は、キナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体の合計質量に対して、4質量%以上12質量%以下であることが好ましい。市販のキナクリドン顔料組成物を使用する場合には、所望の硫黄含有顔料誘導体の含有率(例えば、4質量%以上12質量%以下の含有率)を有する製造ロットを選択することが好ましい。硫黄含有顔料誘導体の含有率が4質量%以上12質量%以下であれば、所定硫黄濃度を所定の範囲内に好適に調整できる。
(顔料分散液調製工程)
顔料分散液調製工程において、キナクリドン顔料組成物と、顔料分散樹脂と、第1水性媒体とを混合して、顔料分散液を得る。
メディア型湿式分散機を用いた湿式分散により、顔料分散液に含有される成分を混合することで、顔料分散液が調製される。メディア型湿式分散機としては、例えば、ビーズミル(より具体的には、浅田鉄工株式会社製「ナノグレンミル」、日本コークス工業株式会社製「MSCミル」、及びウィリー・エ・バッコーフェン社製「ダイノ(登録商標)ミル」等)が挙げられる。
メディア型湿式分散機の吐出量は、例えば、200g/分以上600g/分以下である。メディア型湿式分散機の吐出量が少なくなる程、未吸着樹脂比率が低くなる傾向がある。
メディア型湿式分散機による湿式分散では、メディアとして、例えば、小粒径ビーズ(例えば、直径が0.5mm以上1.0mm以下のビーズ)を用いる。ビーズの直径を変更することで、例えば、顔料粒子の分散度合い、及び未吸着樹脂比率を変更できる。ビーズの直径が小さい程、顔料粒子のD50が小さくなる傾向がある。ビーズの直径が小さい程、キナクリドン顔料を含むコアが顔料分散樹脂により被覆され易くなり、未吸着樹脂比率が低下する傾向がある。ビーズの材質としては、特に限定されないが、硬質の材料(例えば、ガラス及びジルコニア)が好ましい。
顔料分散液におけるキナクリドン顔料の含有割合としては、5質量%以上25質量%以下が好ましく、10質量%以上20質量%以下がより好ましい。顔料分散液における顔料分散樹脂の含有割合としては、2質量%以上10質量%以下が好ましく、4質量%以上8質量%以下がより好ましい。顔料分散液が界面活性剤を含有する場合、顔料分散液における界面活性剤の含有割合としては、0.1質量%以上2質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1質量%以下がより好ましい。
第1水性媒体は、水であることが好ましい。顔料分散液調製工程において、任意に添加される成分(例えば、界面活性剤)が更に混合されてもよい。顔料分散液に分散している顔料粒子の体積中位径(D50)としては、70nm以上130nm以下が好ましい。
(除去工程)
除去工程において、顔料分散液から、キナクリドン顔料に残存しているキナクリドン顔料の合成中間体の少なくとも一部を除去する。除去工程において、所定吸光度が0.17以下となるように、キナクリドン顔料に残存しているキナクリドン顔料の合成中間体の少なくとも一部が除去される。
市販のキナクリドン顔料組成物を使用する場合には、キナクリドン顔料組成物における合成中間体の残存量が、製造ロットによって異なることがある。除去工程を実施することで、製造ロットによる合成中間体の残存量のばらつきを均一化でき、所定吸光度が所望の範囲内の値であるインクを得ることができる。
顔料分散液から、合成中間体の少なくとも一部を除去する方法としては、活性炭処理が挙げられる。活性炭処理は、例えば、活性炭フィルターに顔料分散液を通しながら、顔料分散液を循環させることで実施される。合成中間体の少なくとも一部が除去された顔料分散液をインクが含有することで、所定吸光度が所望の範囲内の値に容易に調整される。
活性炭処理において、循環させる顔料分散液の流速は、例えば、100g/分以上300g/分以下である。顔料分散液を循環させる時間は、例えば、5分以上30分以下である。1000gの顔料分散液が活性炭フィルターを通過することを1パスとした場合に、活性炭処理において1パスした回数(パス回数)は、例えば5回以下であり、好適には2回以上5回以下である。
(インク調製工程)
インク調製工程において、除去工程後の顔料分散液と、第2水性媒体とを混合して、インクを得る。混合には、例えば攪拌機が用いられる。第2水性媒体は、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒であることが好ましく、水、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、及びグリセリンの混合溶媒であることがより好ましい。インクの全原料における顔料分散液の割合は、例えば、25質量%以上60質量%以下である。インク調製工程において、必要に応じて配合される成分(例えば、界面活性剤)が、更に混合されてもよい。インクの各成分を混合した後、フィルター(例えば孔径5μm以下のフィルター)により異物及び粗大粒子を除去してもよい。なお、第1実施形態のインクは、例えば、後述するインクジェット記録装置に好適に用いることができる。
[第2実施形態:インクジェット記録装置]
次に、本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置について説明する。第2実施形態のインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送部と、記録ヘッドとを備える。記録ヘッドは、第1実施形態のインクを記録媒体に吐出する。以下、図面を参照して第2実施形態のインクジェット記録装置の詳細について説明する。なお、参照する図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数等は、実際とは異なる場合がある。
図2は、第2実施形態に係るインクジェット記録装置の一例であるインクジェット記録装置1を示す図である。図2及び後述する図3に示すX軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。
図2に示すインクジェット記録装置1は、給紙部3と、第1記録ヘッド4Cと、第2記録ヘッド4Mと、第3記録ヘッド4Yと、第4記録ヘッド4Kと、液体収容部5と、第1搬送部6と、第2搬送部7と、排出部8と、メンテナンス部9とを備える。以下、第1記録ヘッド4C~第4記録ヘッド4Kを区別する必要がない場合には、単に「記録ヘッド4」と記載することがある。
給紙部3は、複数の給紙カセット31と、複数のピックアップローラー32と、複数の搬送ローラー33と、レジストローラー対34とを備える。給紙カセット31には、記録媒体Sが積み重ねられて収容されている。ピックアップローラー32は、給紙カセット31に収容されている記録媒体Sを1枚ずつ取り出す。搬送ローラー33は、ピックアップローラー32によって取り出された記録媒体Sを搬送する。レジストローラー対34は、搬送ローラー33によって搬送された記録媒体Sを、一時待機させた後に、所定のタイミングで第1搬送部6に供給する。
記録ヘッド4は、第1搬送ベルト63の上方に配設される。第1記録ヘッド4C~第4記録ヘッド4Kは、記録媒体Sの搬送方向Dに、この順番で並設されている。第1記録ヘッド4C~第4記録ヘッド4Kの各々は、同じ高さに配設されている。第1記録ヘッド4C~第4記録ヘッド4Kには、それぞれ異なる4色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック)のインクが充填されている。第2記録ヘッド4Mに充填されるインクが、マゼンタ色である第1実施形態のインクである。記録ヘッド4は、各々、インクを、記録媒体Sに吐出する。記録ヘッド4のうち、第2記録ヘッド4Mは、マゼンタ色である第1実施形態のインクを記録媒体Sに吐出する。その結果、第1搬送ベルト63が搬送する記録媒体S上に画像(例えば、カラー画像)が形成される。
第1実施形態のインクを用いるため、第1実施形態で述べたのと同じ理由により、第2実施形態のインクジェット記録装置1は、第2記録ヘッド4Mからのインクの吐出ヨレの発生を抑制でき、インクの分散安定性に優れる。
液体収容部5は、第1インクタンク51Cと、第2インクタンク51Mと、第3インクタンク51Yと、第4インクタンク51Kと、クリーニング液タンク52とを備える。以下、第1インクタンク51C~第4インクタンク51Kを区別する必要がない場合には、単に「インクタンク51」と記載することがある。第1インクタンク51C~第4インクタンク51Kには、それぞれ異なる4色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック)のインクが収容されている。第2インクタンク51Mに収容されるインクが、マゼンタ色である第1実施形態のインクである。第1インクタンク51C~第4インクタンク51Kは、各々、第1記録ヘッド4C~第4記録ヘッド4Kにインクを供給する。クリーニング液タンク52は、液含侵体91にクリーニング液を供給する。
第1搬送部6は、給紙部3よりも、記録媒体Sの搬送方向Dの下流側に配設される。第1搬送部6は、第1従動ローラー61と、第1駆動ローラー62と、第1搬送ベルト63とを備える。第1駆動ローラー62は、第1従動ローラー61よりも、記録媒体Sの搬送方向Dの下流側に配設される。第1搬送ベルト63は、第1従動ローラー61及び第1駆動ローラー62に掛け渡された無端ベルトである。第1駆動ローラー62は、図2において反時計回り方向に回転駆動される。これにより、第1駆動ローラー62は、第1搬送ベルト63を従動駆動させる。これにより、第1搬送ベルト63は、搬送方向Dに、給紙部3から給紙された記録媒体Sを第2搬送部7へ搬送する。第1従動ローラー61は、第1搬送ベルト63を介して、第1駆動ローラー62に従動して回転する。
第2搬送部7は、第1搬送部6よりも、記録媒体Sの搬送方向Dの下流側に配設される。第2搬送部7は、第2従動ローラー71と、第2駆動ローラー72と、第2搬送ベルト73とを備える。第2駆動ローラー72は、第2従動ローラー71よりも、記録媒体Sの搬送方向Dの下流側に配設される。第2搬送ベルト73は、第2従動ローラー71及び第2駆動ローラー72に掛け渡された無端ベルトである。第2駆動ローラー72は、図2において反時計回り方向に回転駆動される。これにより、第2駆動ローラー72は、第2搬送ベルト73を従動駆動させる。これにより、第2搬送ベルト73は、搬送方向Dに、第1搬送部6から搬送された記録媒体Sを排出部8へ搬送する。第2従動ローラー71は、第2搬送ベルト73を介して、第2駆動ローラー72に従動して回転する。
排出部8は、第2搬送部7よりも、記録媒体Sの搬送方向Dの下流側に配設される。排出部8は、排出トレイ81と、排出駆動ローラー82と、排出従動ローラー83とを備える。排出駆動ローラー82と、排出従動ローラー83とは、互いに対向する位置で圧接されている。排出駆動ローラー82は、図2において反時計回り方向に回転駆動される。排出従動ローラー83は、排出駆動ローラー82の回転に従動して回転する。これにより、排出駆動ローラー82と、排出従動ローラー83とは、第2搬送部7から搬送された記録媒体Sを排出トレイ81へ排出する。排出トレイ81には、排出された記録媒体Sが載置される。
メンテナンス部9は、液含侵体91と、クリーニング部材92とを備える。液含侵体91及びクリーニング部材92は、各々、第2搬送部7の下方位置と記録ヘッド4の吐出面42(図3参照)に接触する位置との間を移動可能に設けられる。液含侵体91は、クリーニング液を含浸する。液含侵体91は、記録ヘッド4が有する吐出面42(図3参照)に接触して、吐出面42にクリーニング液を供給する。液含侵体91は、例えば、スポンジ、不織布、又は吸水性シートである。クリーニング部材92は、記録ヘッド4が有する吐出面42を払拭する。これにより、吐出面42に付着したインクがクリーニングされる。クリーニング部材92は、例えば、ゴム製ワイパーである。
次に、図3を参照して、記録ヘッド4を更に説明する。図3は、図2で示す記録ヘッド4の下面を示す図である。
図3に示すように、記録ヘッド4は、第1ノズル列N1と、第2ノズル列N2と、吐出面42とを備える。理解を容易にするために、図3において、第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2を、各々、破線で囲んでいる。第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2の各々は、複数のノズル41を含む。ノズル41は、インクを記録媒体Sに吐出する。ノズル41は、吐出面42に開口している。第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2は、記録媒体Sの搬送方向Dに並設されている。第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2の各々において、複数のノズル41は、記録媒体Sの搬送方向Dと直交する方向に間隔をあけて設けられる。記録ヘッド4は、例えば、ラインヘッドである。
第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2の各々の幅41w(即ち、記録ヘッド4によって記録可能な領域の幅)は、記録媒体Sの幅と同等又はそれよりも広い。そのため、記録ヘッド4は、固定された状態で、第1搬送ベルト63上を搬送される記録媒体Sに画像を記録することができる。即ち、インクジェット記録装置1には、シャトル運動を行わない方式であるシングルパス方式が採用されている。第2実施形態のインクジェット記録装置1は、このような記録ヘッド4を備えるため、シリアルヘッドを備えるインクジェット記録装置と比較し、高速で印刷できる。
以上、第2実施形態のインクジェット記録装置の一例であるインクジェット記録装置1について説明した。但し、第2実施形態のインクジェット記録装置は、インクジェット記録装置1に限定されない。第2実施形態のインクジェット記録装置は、マルチパス方式が採用されていてもよい。また、第1記録ヘッド4C~第4記録ヘッド4Kにおいて、ノズル41の個数、ノズル41の間隔、及びノズル41の位置関係は、装置の仕様に応じて適宜設定することができる。また、第1記録ヘッド4C~第4記録ヘッド4Kの並び順は、図示されるものに限られず、他の並び順であってもよい。また、記録ヘッド4の個数は、4個に限られず、1~3個、又は5個以上であってもよい。
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、イオン交換水を、単に、水と記載することがある。
[顔料分散樹脂の準備]
インクの調製に用いる顔料分散樹脂として、樹脂(R-A)を準備した。樹脂(R-A)は、繰り返し単位として、メタクリル酸に由来する繰り返し単位(MAA単位)と、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位(MMA単位)と、アクリル酸ブチルに由来する繰り返し単位(BA単位)と、スチレンに由来する繰り返し単位(ST単位)とを有していた。樹脂(R-A)は、質量平均分子量(Mw)が20000であり、酸価が100mgKOH/gであった。樹脂(R-A)が有する全繰り返し単位の質量に対する、MAA単位、MMA単位、BA単位、及びST単位の含有割合は、各々、8.1質量%、36.9質量%、30.0質量%、及び25.0質量%であった。
<樹脂の酸価の測定>
樹脂(R-A)の酸価は、「JIS(日本産業規格)K0070:1992」に従い測定した。
<樹脂の質量平均分子量の測定>
樹脂(R-A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC-8020GPC」)を用いて下記測定条件により測定した。検量線は、東ソー株式会社製のTSKgel標準ポリスチレンであるF-40、F-20、F-4、F-1、A-5000、A-2500、及びA-1000と、n-プロピルベンゼンとを用いて作成した。
(質量平均分子量の測定条件)
・カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」(4.6mmI.D.×15cmのセミミクロカラム)
・カラム本数:3本
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:0.35mL/分
・サンプル注入量:10μL
・測定温度:40℃
・検出器:RI(屈折率)検出器
[キナクリドン顔料組成物の準備]
<顔料組成物(PR122-A)の調製>
固形分量96質量部のキナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)のウェットケーキと、5質量部のメタノールとを混合し、混合液Aを得た。混合液Aの全量と、4質量部の硫黄含有顔料誘導体(1-1)とを混合し、混合液Bを得た。80℃で混合液Bからメタノールを減圧留去し、残渣を得た。水を用いて残渣を濾過し、80℃で乾燥させ、乾燥物を得た。カウンタジェットミル(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて乾燥物を粉砕することで、顔料組成物(PR122-A)を得た。顔料組成物(PR122-A)において、キナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体の合計質量に対する硫黄含有顔料誘導体の含有率は、4質量%であった。
<顔料組成物(PR122-B)~(PR122-E)の調製>
キナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体の合計質量に対する硫黄含有顔料誘導体の含有率が表3に示す値となるように、キナクリドン顔料のウェットケーキの固形分量と、硫黄含有顔料誘導体の添加量とを変更した以外は、顔料組成物(PR122-A)の調製と同様の方法で、顔料組成物(PR122-B)~(PR122-E)を調製した。顔料組成物(PR122-B)~(PR122-E)の調製において、キナクリドン顔料の固形分量と硫黄含有顔料誘導体の添加量との合計は、何れも、100質量部とした。
<顔料組成物(PR122-F)の調製>
硫黄含有顔料誘導体(1-1)を硫黄含有顔料誘導体(1-2)に変更したこと、並びにキナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体の合計質量に対する硫黄含有顔料誘導体の含有率が表5に示す値となるように、キナクリドン顔料のウェットケーキの固形分量と、硫黄含有顔料誘導体の添加量とを変更したこと以外は、顔料組成物(PR122-A)の調製と同様の方法で、顔料組成物(PR122-F)を調製した。顔料組成物(PR122-F)の調製において、キナクリドン顔料の固形分量と硫黄含有顔料誘導体の添加量との合計は、100質量部とした。
<顔料組成物(PV19)の調製>
キナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)のウェットケーキをキナクリドン顔料(C.I.ピグメントバイオレット19)のウェットケーキに変更したこと、並びにキナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体の合計質量に対する硫黄含有顔料誘導体の含有率が表5に示す値となるように、キナクリドン顔料のウェットケーキの固形分量と、硫黄含有顔料誘導体の添加量とを変更したこと以外は、顔料組成物(PR122-A)の調製と同様の方法で、顔料組成物(PV19)を調製した。顔料組成物(PV19)の調製において、キナクリドン顔料の固形分量と硫黄含有顔料誘導体の添加量との合計は、100質量部とした。
[検討1:所定硫黄濃度]
所定硫黄濃度について検討した。検討に用いるインク(A-1)~(A-3)及び(B-1)~(B-2)を、以下の方法により調製した。
<インク(A-1)の調製>
(顔料分散液の調製)
表1に示す配合d-aとなるように、顔料分散液を調製した。
Figure 2024078878000007
表1における用語は、以下の通りである。「オルフィンE1010」は、ノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」、内容:アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物、有効成分濃度:100質量%、HLB値:13.5±0.5)を示す。
まず、6.0質量部の樹脂(R-A)と、水酸化ナトリウム水溶液とを混合した。水酸化ナトリウム水溶液には、所定量の水酸化ナトリウムが含まれていた。表1に示す水酸化ナトリウムの添加量である「所定量」は、樹脂(R-A)の等量中和に必要な量の1.05倍量を示す。これにより、樹脂(R-A)を、等量(厳密には、105%等量)の水酸化ナトリウムで中和し、樹脂(R-A)を含有する水溶液Iを得た。
得られた水溶液Iの全量と、15.0質量部のキナクリドン顔料組成物(PR122-A)と、0.5質量部のノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」)と、残量の水とを、ベッセルに投入した。メディア型湿式分散機(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製「DYNO(登録商標)-MILL」)を用いて、ベッセルの内容物を混合し、混合液IIを得た。
なお、表1に示す水の添加量である「残量」とは、混合液IIが100.0質量部となる量を意味する。表1に示す水の残量は、上記ベッセルに投入した水と、水溶液Iに含まれていた水(詳しくは、樹脂の中和に用いた水酸化ナトリウム水溶液に含まれていた水、並びに樹脂及び水酸化ナトリウムの中和反応で生じた水)との合計量である。
続けて、メディアとしてのジルコニアビーズ(粒子径0.5mm)と、ビーズミル(浅田鉄工株式会社製「ナノグレンミル」)とを用いて、上記ベッセルの内容物を分散処理した。ビーズミルによる分散条件は、温度10℃、周速8m/秒、且つ吐出量300g/分とした。これにより、活性炭処理前の顔料分散液IIIを得た。
顔料分散液IIIに、体積中位径が70nm以上130nm以下の範囲の顔料粒子が分散されていることを確認した。顔料粒子の体積中位径は、顔料分散液IIIを水で300倍に希釈した希釈液を測定試料として、動的光散乱式粒径分布測定装置(スペクトリス株式会社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて測定した。
(活性炭処理)
得られた顔料分散液IIIを、活性炭処理した。詳しくは、1800gの顔料分散液IIIを活性炭フィルター(日本フィルター株式会社製「YCC-1L」、活性炭の種類:ヤシガラ粒状活性炭)に通しながら、顔料分散液IIIを190g/分の流速で循環させた。以下、1000gの顔料分散液IIIが活性炭フィルターを通過することを、1パスと記載する。流速が190g/分であるため、1パスに要した時間は、5分15秒(=(1000g)/(190g/分))であった。2パスした時点で、顔料分散液IIIの循環を停止し、活性炭処理後の顔料分散液IVを得た。従って、活性炭処理において1パスした回数(パス回数)は、2回であった。
(インクの調製)
表2に示す配合i-aとなるように、インク(A-1)を調製した。
Figure 2024078878000008
表2における用語は、以下の通りである。「サーフィノール420」は、ノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)420」、内容:アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、有効成分濃度:100質量%、HLB値:4)を示す。
まず、攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター(登録商標)BL-600」)を装備したフラスコに、水を投入した。攪拌機を用いて攪拌速度400rpmでフラスコ内容物を攪拌しながら、上記活性炭処理で得られた顔料分散液IVと、ノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)420」)と、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、3-メチル-1,5-ペンタンジオールと、グリセリンとを投入し、混合液Vを得た。各原料の投入量は、表2に示す通りとした。表2に示す水の添加量である「残量」とは、混合液Vが100.0質量部となる量である。孔径5μmのフィルターを用いて混合液Vをろ過し、混合液Vから異物及び粗大粒子を除去した。これにより、インク(A-1)を得た。
<インク(A-2)~(A-3)及び(B-1)~(B-2)の調製>
キナクリドン顔料組成物の種類、及び分散処理のビーズミルの吐出量を後述の表3に示す通りに変更した以外は、インク(A-1)の調製と同様の方法により、インク(A-2)~(A-3)及び(B-1)~(B-2)を調製した。
[測定]
以下の方法により、測定対象(インク(A-1)~(A-3)及び(B-1)~(B-2)の各々)を遠心分離した。そして、得られた各上澄み液について、所定硫黄濃度と、所定ピークの波長及び所定吸光度とを測定した。
<遠心処理>
温度23℃の環境下、容器に密閉した1gの測定対象に対して、超遠心機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製「himac(登録商標)CS150FNX」、ローター:S140AT)を用いて、回転数140,000rpm(遠心力1,050,000Gに相当)で3時間遠心処理した。これにより測定対象であるインクに含まれる顔料粒子を沈殿させた。なお、インク1gから、約0.4gの上澄み溶液が得られた。
<所定硫黄濃度>
遠心処理後のインクに含まれる上澄み液を、1mLのシリンジで回収した。回収した上澄み液を水で10倍に希釈し、これを測定試料とした。ICP(高周波誘導結合プラズマ)質量分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィク社製「iCAP PRO ICP-OES Duo」)を用いて、測定試料を測定した。測定試料の測定値(即ち、上澄み液の10倍希釈液の硫黄濃度)を、所定硫黄濃度(単位:ppm)とした。所定硫黄濃度を、表3に示す。なお、硫黄濃度を求める際には、硫黄濃度が既知である試料を用いて作成した検量線を使用した。
<所定ピークの波長及び所定吸光度>
遠心処理後のインクに含まれる上澄み液を、1mLのシリンジで回収した。回収した上澄み液を水で25倍に希釈し、これを測定試料とした。分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製「U-3000」)を用いて、セルに入れた測定試料を以下の条件で測定し、測定試料の紫外線可視光線吸収スペクトルを得た。測定試料の紫外線可視光線吸収スペクトルから、測定試料(即ち、上澄み液の25倍希釈液)の所定ピークが現れる波長(単位:nm)を読み取った。また、測定試料の紫外線可視光線吸収スペクトルから、測定試料(即ち、上澄み液の25倍希釈液)の所定ピークの吸光度を読み取り、読み取った吸光度を所定吸光度とした。所定ピークの波長と所定吸光度とを、表3に示す。なお、表3に示す所定ピークの波長がインクによって異なっている理由は、インクに含有される硫黄含有顔料誘導体の硫黄原子の影響により、所定ピークが若干シフトしたからだと考えられる。
(吸光度の測定条件)
・測定波長範囲:200nm以上800nm以下の範囲
・スキャンスピード:300nm/分
・サンプリング間隔:1.00nm
・スリット幅:1nm
・セル:石英ガラス製のセル
・光路長:10mm
・ビーム方式:ダブルビーム
・ベースライン測定:有
・リファレンス:イオン交換水
[評価]
以下の方法により、評価対象(インク(A-1)~(A-3)及び(B-1)~(B-2)の各々)について、吐出ヨレと、分散安定性とを評価した。評価結果を、表3に示す。
<吐出ヨレ>
評価に使用する評価機として、インクジェット記録装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の試作機)を使用した。この評価機は、搬送部と、記録ヘッドとしてノズル(開口部の半径:10μm)を有するピエゾ方式のラインヘッドとを備えていた。評価機のマゼンタインク用記録ヘッドに、評価対象であるインクをセットした。用紙として、普通紙(富士ゼロックス株式会社製「C2」、A4サイズのPPC用紙)を用いた。
記録ヘッドの温度を、40℃に設定した。1画素当たりのインクの吐出量を、3.5pLに設定した。評価機を用いて、記録ヘッドの全ノズルからインクを吐出する画像処理設定の画像(20.5mm×29.0mm)を、用紙に1時間連続して印刷した。連続印刷の最初に印刷された画像(初期画像)と、連続印刷の最後に印刷された画像(耐刷画像)とを、肉眼で観察した。そして、初期画像及び耐刷画像における白筋の有無を確認した。白筋は、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレに起因する画像不良である。記録ヘッドからのインクの吐出ヨレを、下記基準に沿って判定した。
(吐出ヨレの基準)
良好(A):耐刷画像において、白筋が、初期画像よりも多く発生していない。
不良(B):耐刷画像において、白筋が、初期画像よりも多く発生している。
<分散安定性>
容積50mLの容器に30gのインクを入れて密閉した。内温40℃に設定された恒温器に容器を入れ、2週間保管した。2週間保管後、容器内のインクを水で100倍に希釈し、これを測定試料とした。動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて、測定試料に含まれる顔料粒子の体積中位径(保管後D50)を測定した。分散安定性を、下記基準に沿って判定した。なお、保管後D50が140nm以上であると、インク中の顔料粒子の分散安定性が低く、インクの保管中に顔料粒子の沈降及びインクの濃度低下が引き起こされる傾向にある。
(分散安定性の基準)
良好:保管後D50が、140nm未満である。
不良:保管後D50が、140nm以上である。
Figure 2024078878000009
表3、及び後述する表4~表5における用語は、以下の通りである。「顔料組成物」は、キナクリドン顔料組成物を示す。「誘導体」は、キナクリドン顔料組成物に含まれる硫黄含有顔料誘導体を示す。「含有率」は、キナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体の合計質量に対する硫黄含有顔料誘導体の含有率を示す。「吐出量」は、上記顔料分散液の調製におけるビーズミルの吐出量を示す。「硫黄濃度」は、所定硫黄濃度を示す。「パス回数」は、上記活性炭処理において1パスした回数を示す。「吸光度」及び「波長」は、各々、所定吸光度及び所定ピークの波長を示す。「ヨレ」は、吐出ヨレの評価結果を示す。「D50」は、分散安定性の評価で測定された保管後D50を示す。
表3に示すように、インク(B-1)の所定硫黄濃度は、1.0ppm未満であった。インク(B-1)は、保管後D50が140nm以上であり、分散安定性の評価が不良であった。
表3に示すように、インク(B-2)の所定硫黄濃度は、6.0ppm超であった。インク(B-2)の吐出ヨレの評価は、不良であった。
一方、表3に示すように、インク(A-1)~(A-3)は、キナクリドン顔料と、水性媒体とを含有していた。所定硫黄濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下であった。所定吸光度は0.17以下であった。インク(A-1)~(A-3)の分散安定性の評価及び吐出ヨレの評価は、良好であった。
[検討2:所定吸光度]
所定吸光度について検討した。検討2には、インク(A-4)~(A-6)及び(B-3)を用いた。以下の点を変更した以外は、インク(A-1)の調製と同様の方法により、インク(A-4)~(A-6)及び(B-3)を調製した。上記顔料分散液の調製において、キナクリドン顔料組成物(PR122-A)の代わりに、キナクリドン顔料組成物(PR122-B)を用いた。上記顔料分散液の調製において、ビーズミルの吐出量を後述の表4に示す通りに変更した。上記活性炭処理において、パス回数を後述の表4に示す通りに変更した。
インク(A-4)~(A-6)及び(B-3)について、上記検討1と同様の方法により、所定硫黄濃度と、所定ピークの波長及び所定吸光度とを測定し、吐出ヨレと、分散安定性とを評価した。測定結果及び評価結果を表4に示す。
Figure 2024078878000010
表4に示すように、インク(B-3)の所定吸光度は、0.17超であった。インク(B-3)の吐出ヨレの評価は、不良であった。
一方、表4に示すように、インク(A-4)~(A-6)は、キナクリドン顔料と、水性媒体とを含有していた。所定硫黄濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下であった。所定吸光度は、0.17以下であった。インク(A-4)~(A-6)の分散安定性の評価及び吐出ヨレの評価は、良好であった。
[検討3:硫黄含有顔料誘導体の種類、及びキナクリドン顔料の種類]
硫黄含有顔料誘導体の種類、及びキナクリドン顔料の種類について検討した。検討3には、インク(A-7)~(A-8)を用いた。以下の点を変更した以外は、インク(A-1)の調製と同様の方法により、インク(A-7)~(A-8)を調製した。上記顔料分散液の調製において、キナクリドン顔料組成物(PR122-A)の代わりに、後述の表5に記載のキナクリドン顔料組成物を用いた。上記顔料分散液の調製において、ビーズミルの吐出量を後述の表5に示す通りに変更した。
インク(A-7)~(A-8)について、上記検討1と同様の方法により、所定硫黄濃度と、所定ピークの波長及び所定吸光度とを測定し、吐出ヨレと、分散安定性とを評価した。測定結果及び評価結果を表5に示す。
Figure 2024078878000011
表5に示すように、キナクリドン顔料組成物に含まれるキナクリドン顔料又は硫黄含有顔料誘導体はインク(A-1)~(A-6)とは異なるものの、インク(A-7)~(A-8)は、何れもキナクリドン顔料を含有していた。所定硫黄濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下であった。所定吸光度は、0.17以下であった。インク(A-7)~(A-8)の分散安定性の評価及び吐出ヨレの評価は、良好であった。
以上のことから、インク(A-1)~(A-8)を包含する本発明のインク、及びこのようなインクを用いる本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制でき、インクの分散安定性に優れると判断される。
本発明のインク及びインクジェット記録装置は、画像を形成するために用いることができる。
1 :インクジェット記録装置
4 :記録ヘッド
6 :第1搬送部
S :記録媒体

Claims (9)

  1. キナクリドン顔料と、水性媒体とを含有する、インクジェット用インクであって、
    前記インクジェット用インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液の10倍希釈液における硫黄濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下であり、
    前記上澄み液の25倍希釈液の紫外線可視光線吸収スペクトルにおいて、所定ピークの吸光度は0.17以下であり、前記所定ピークは、波長400nm以上490nm以下の範囲における最大ピークである、インクジェット用インク。
  2. 硫黄原子を有するキナクリドン誘導体を更に含有し、
    前記硫黄濃度は、前記上澄み液の前記10倍希釈液における前記キナクリドン誘導体が有する前記硫黄原子の濃度である、請求項1に記載のインクジェット用インク。
  3. 前記キナクリドン誘導体は、式(1)で表される化合物である、請求項2に記載のインクジェット用インク。
    Figure 2024078878000012
    (前記式(1)中、nは、1以上3以下の整数を表し、mは、1以上3以下の整数を表し、Xは、金属イオンを表す。)
  4. 前記式(1)中のXは、Al3+又はMg2+を表す、請求項3に記載のインクジェット用インク。
  5. 前記キナクリドン誘導体の含有率は、前記キナクリドン顔料及び前記キナクリドン誘導体の合計質量に対して、4質量%以上12質量%以下である、請求項2又は3に記載のインクジェット用インク。
  6. 前記所定ピークは、前記キナクリドン顔料に残存している前記キナクリドン顔料の合成中間体に由来するピークである、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
  7. 前記キナクリドン顔料の前記合成中間体は、式(2)で表される化合物である、請求項6に記載のインクジェット用インク。
    Figure 2024078878000013
    (前記式(2)中、RA及びRBは、各々独立に、一価の基を表し、R3は、ヒドロキシ基又は式(3)で表される基を表し、R4は、ヒドロキシ基又は式(4)で表される基を表す。)
    Figure 2024078878000014
    (前記式(3)及び(4)中、R1及びR2は、各々独立に、一価の基を表し、*は、結合手を表す。)
  8. 記録媒体を搬送する搬送部と、
    インクを前記記録媒体に吐出する記録ヘッドとを備え、
    前記インクは、請求項1又は2に記載のインクジェット用インクである、インクジェット記録装置。
  9. 前記記録ヘッドは、ラインヘッドである、請求項8に記載のインクジェット記録装置。
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