JP2024065982A - カーボンナノチューブ分散液 - Google Patents

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Abstract

【課題】 分散性に優れたカーボンナノチューブ分散液を提供する。【解決手段】 少なくとも、カーボンナノチューブ、酸化セルロースナノファイバー、及び水を含むカーボンナノチューブ分散液であって、酸化セルロースナノファイバーが、X線回折法で測定した際の結晶化度が70%未満であることを特徴とするカーボンナノチューブ分散液。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン電池の電極などの製造原料となるカーボンナノチューブ分散液に関する。
電気自動車の普及、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータなどの携帯機器の小型軽量化及び高性能化に伴い、高いエネルギー密度を有する二次電池、さらに、その二次電池の高容量化が求められている。このような背景の下で高エネルギー密度、高電圧という特徴から非水系電解液を用いるリチウムイオン二次電池が多くの機器に使われるようになっている。
これらリチウムイオン二次電池に用いられる負極材料や正極材料にカーボンナノチューブ分散液などを用いることにより、良好な導電性能、電極抵抗を低減でき少量で効率的に導電ネットワークを形成することができることなどの検討が行われており、最近では、分散剤として、セルロースナノファイバーを用いたカーボンナノチューブ分散液なども知られている。
例えば、特許文献1には、カーボンナノチューブの凝集を抑え、高い分散安定性を示すカーボンナノチューブ分散液を提供するために、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバー、及び分散媒を含むカーボンナノチューブ分散液、前記セルロースナノファイバーが、最大繊維径が1000nm以下かつ数平均繊維径が2nm以上150nm以下の微細セルロース繊維であって、該微細セルロース繊維は、水酸基の一部がカルボキシル基およびアルデヒド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基に置換されており、且つセルロースI型結晶構造を有することなどが開示されている。
特許文献2に、成形体としたときの表面硬度を向上させることができるナノ材料組成物を提供するために、分散媒と、前記分散媒に分散されたセルロースナノファイバー及びカーボンナノチューブとを含むことを特徴とするナノ材料組成物が開示されている。
また、特許文献3には、電極活物質および導電材の分散安定性に優れ、弱いせん断力の分散装置を使用しても均一な電極作製が可能である蓄電デバイスの電極塗工液用分散安定剤を含む組成物を提供するために、(a)短幅の方の数平均幅が2~200nm(b)アスペクト比が7.5以上250以下(c)セルロースI型結晶を有し、その結晶化度が70%以上95%以下を満たすセルロース繊維を含有する蓄電デバイスの電極塗工液用分散剤、更に、(d)アニオン性官能基を有する、(e)アニオン性官能基がカルボキシル基であり、その含有量が1.2~2.5mmol/gである、電極塗工用分散液が開示されている。
さらに、特許文献4には、体積変化の大きな活物質を用いた場合でも、高い耐久性を示す電極が得られる電極用結着剤組成物、およびそれを用いて作製された蓄電デバイス用電極、およびその蓄電デバイス用電極を備える蓄電デバイスを提供するために、(A)フッ素系ポリマー、ブタジエン系ポリマー、および熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種類またはニ種以上のポリマー成分、(B)平均繊維径が0.5nm以上20nm以下、繊維長が0.5μm以上1mm以下の繊維状ナノカーボン材料、(C)セルロース材料、(D)ナノセルロース繊維、ならびに(E)水を含有する電極用結着剤組成物であって、上記(A)と(B)の質量比が(A)/(B)=60/40~98/2であることを特徴とする電極用結着剤組成物などが開示されている。
特許文献5には、分散媒と、ナトリウム以外の金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーと、単層ナノチューブと、を含む分散液が開示されている。酸化セルロースナノファイバーとして、TEMPO酸化により得られるカルボキシル化セルロースナノファイバーが記載されているが、その性状については記載されていない。セルロースナノファイバーのTEMPO酸化は、通常、酸化反応が可能な限りまで完全に行われる。
更に、非特許文献1となる「平成29年度セルロースナノファイバー活用製品の性能評価事業委託業務(平成29年度環境省委託業務)における(セルロースナノファイバーを適用したアイドリングストップ車用リチウムイオン電池の実用化に向けた課題抽出)成果報告書、平成30年3月16日:第一工業製薬株式会社」には、リチウムイオン電池の電極製造にセルロースナノファイバーを応用することで、正極塗工液を水系化することを可能にするとともに、充放電に伴う電池劣化の大幅な改善を見出していることが記載され、また、サイクル時の放電容量保持率が向上することなどが記載されている。
しかしながら、これらの特許文献1~5、非特許文献1などのカーボンナノチューブ分散液等では、経時的に分散性が低下したりし、安定性と導電性能を高度に両立することが難しいなどの課題が未だあるのが現状である。特に、セルロースナノファイバーを混合する際、分散不足を防ぐために分散工程に時間がかかったり、電池の耐久性を向上させるためにバインダーを多く含むため電池の抵抗値が高くなるなどの課題があり、更なる改善が切望されているのが現状である。
特開2017-206412号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2020-019924号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2010-254546号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2007-169120号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2021-57271号公報(特許請求の範囲、実施例等) 平成29年度セルロースナノファイバー活用製品の性能評価事業委託業務(平成29年度環境省委託業務)における「セルロースナノファイバーを適用したアイドリングストップ車用リチウムイオン電池の実用化に向けた課題抽出」成果報告書、平成30年3月16日、第一工業製薬株式会社
本発明は、上記従来の課題等について解消しようとするものであり、特に、カーボンナノチューブを水等の分散媒に分散する際、カーボンナノチューブが凝集して分散が不足したり、分散を完全にするために分散工程に長時間かかるという課題を解決する手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題について鋭意検討した結果、少なくとも、カーボンナノチューブと、特定物性の酸化セルロースナノファイバーと、水とを含む組成により、上記目的のカーボンナノチューブ分散液が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明のカーボンナノチューブ分散液は、少なくとも、カーボンナノチューブ、酸化セルロースナノファイバー、及び水を含むカーボンナノチューブ分散液であって、
酸化セルロースナノファイバーが、X線回折法で測定した際の結晶化度が70%未満であることを特徴とするカーボンナノチューブ分散液である。
セルロースナノファイバーをTEMPO酸化することによりカルボキシル化された酸化セルロースナノファイバーが得られることは知られているが、通常、これはTEMPO酸化反応が可能な限りまで完全に行われたものである。TEMPO酸化反応を調整して、酸化セルロースナノファイバーが特定の物性を有するように制御することは行われないものである。一方、本発明においては、酸化セルロースナノファイバーが特定の諸物性を有するように、セルロースナノファイバーのTEMPO酸化反応を完全には行わないことが重要である。
本発明によれば、カーボンナノチューブの溶媒への分散において、カーボンナノチューブの分散が容易で、短時間で分散工程を完了することができるという効果を奏する。本発明のカーボンナノチューブ分散液は、分散性に優れ、燃料電池、各種電極、電磁波シールド材、導電性樹脂、電界放出ディスプレイ用部材などの原料として有用である。特に、本発明のカーボンナノチューブ分散液を使用して、リチウムイオン二次電池の電極(正極又は負極)の製造に好適な電極層形成用塗工液を提供することができる。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述する実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識(設計事項、自明事項を含む)に基づいて実施することができる。
〈カーボンナノチューブ分散液〉
本発明のカーボンナノチューブ分散液は、少なくとも、カーボンナノチューブと、特定の酸化セルロースナノファイバーと、水とを含むことを特徴とするものである。
〈カーボンナノチューブ(CNT)〉
本発明に用いるカーボンナノチューブ(CNT)としては、実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有するものであれば特に限定されず、グラファイトの1枚面を1層に巻いた単層CNT、二層又は三層以上の多層に巻いた多層CNTのいずれも用いることができる。
また、カーボンナノチューブの形態としては、例えば、グラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンチューブ、カーボンフィブリル、カーボンマイクロチューブ及びカーボンナノファイバーを挙げることができるが、これらに限定されず、これらを各単独又は二種以上組み合わせ(以下、単に「少なくとも1種」という)であってもよい。
更に、カーボンナノチューブの平均外径は、分散液の粘度、導電性、安定性の点から、1nm以上90nm以下であることが好ましく、3nm以上30nm以下であることがより好ましく、3nm以上15nm以下であることがさらに好ましい。
本発明において、カーボンナノチューブの平均外径とは、透過型電子顕微鏡の10万倍以上の倍率の画像を用いて測定した十分なn数の外形の算術平均値をいう。
また、本発明に用いるカーボンナノチューブの純度は、90~100質量%が好ましく、特に95~100質量%が好ましい。なお、カーボンナノチューブの純度は、JIS K 1469やJIS K 6218に準拠して測定した灰分を不純物とし、その不純物量に基づき算出される。
具体的に用いることができるカーボンナノチューブ(CNT)としては、例えば、Nanocyl社製のNC7000(平均外径10nm)、バイエル社製のBaytubesC150P(平均外径11nm)、Cnano社製のFloTube9000(平均外径19nm)、FloTube7320(平均外径9nm)、FloTube7010(平均外径9nm)、FloTube6810(平均外径8nm)、FloTube6120(平均外径8nm)、FloTube6100(平均外径8nm)、FloTube2020(平均外径4nm)、名城ナノカーボン社製のMEIJOeDIPS EC2.0(平均外径2.0nm)、KORBON社製のKORBON-A7(平均外径1.2nm)、高圧ガス工業社製のNFT-7(平均外径30nm)、高圧ガス工業社製のNFT-15(平均外径30nm)、などの少なくとも1種を用いることができる。
これらのカーボンナノチューブ(CNT)の含有量は、用途に応じて、好適な含有量を設定することができ、特に限定されるものではない。
例えば、導電ペースト、二次電池用電極ペースト、二次電池用電極などに用いる場合は、高い安定性と導電性能を両立する点、分散液製造時の粘度の点から、その含有量は、分散液全量に対して、0.1~15.0質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは0.1~10.0質量%、より好ましくは0.5~8.0質量%、1.0~6.0質量%、特に2.0~5.0質量%とすることが望ましい。
このカーボンナノチューブ(CNT)の含有量を0.1質量%以上とすることにより、充分な導電性を確保できるようになり、一方、15.0質量%以下とすることにより、分散液の安定性と良好な導電性を確保することができるものとなる。
〈酸化セルロースナノファイバー(CeNF)〉
本発明の酸化セルロースナノファイバー(CeNF)は、カーボンナノチューブ分散液の分散剤として用いるものであり、下記の要件を満たす酸化セルロースナノファイバーである。
本発明に用いる酸化セルロースナノファイバーは、好ましくは、X線回折法で測定した際の結晶化度が70%未満である。結晶化度は、より好ましくは25%以上70%未満である。
結晶化度が70%未満であれば、適度な酸化処理と解繊が行われ、カーボンナノチューブの分散性が良好なものとなる。結晶化度が70%を超えると、カーボンナノチューブの解繊不足となりやすく、分散性も不十分となる。
用いる酸化セルロースナノファイバーは、セルロースI型結晶を有することが好ましい。
本発明における酸化セルロースの結晶化度は、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したセルロースI型結晶化度であり、下記式(1)により求めることができる。
〔式1〕
結晶化度(%)=〔(I22.6-I18.5)/I22.6〕×100 …(1)
上記式(1)中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。なお、セルロースI型とは、天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうちセルロースI型結晶領域の占める割合のことを意味する。
酸化セルロースナノファイバーの結晶化度が低いと、カーボンナノチューブの分散性が向上する機構は明らかではないが、セルロースナノファイバーのメチロール基が酸化反応することによって生じたカルボン酸基又はその塩によってセルロースナノファイバーの高次構造が変化して、結晶化度が低下する。これと同時に、セルロースナノファイバーがカーボンナノチューブに浸透しやすくなり、これによりカーボンナノチューブが溶媒中に容易に分散できるようになるものと推定される。
カーボンナノチューブ分散液に配合される酸化セルロースナノファイバーの繊維長は、50nm~250nmであるものが全体の85%以上を占めることが好ましく、100nm~150nmであるものが全体の30%以上を占めることがより好ましい。
また、カーボンナノチューブ分散液に配合される酸化セルロースナノファイバーは、数平均繊維長Lが100nm~150nmで、数平均繊維長Lと長さ加重平均繊維長Llの比(Ll/L)が1.0~1.4であることが好ましい。
酸化セルロースナノファイバーの繊維長は、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。TEM画像から、酸化セルロースナノファイバーの繊維長のヒストグラムを、例えば50nmきざみで作成し、繊維長が50nm~250nmの範囲内であるもの、又は、100nm~150nmの範囲内であるものが全体に占める割合を計算することによって、繊維長の分布を評価することができる。また、前記繊維長のヒストグラムから、数平均繊維長L及び長さ加重平均繊維長Ll、並びに、数平均繊維長Lと長さ加重平均繊維長Llの比(Ll/L)を求めることができる。
酸化セルロースナノファイバーの繊維長が前記範囲にあると、カーボンナノチューブの分散性が良い。その機構は明らかではないが、酸化セルロースナノファイバーのカーボンナノチューブへの浸透性に関係するものと推定される。
さらに、用いる酸化セルロースナノファイバーは、アルコール性水酸基がある一定量残存していることで、分子同士がより強く水素結合し、構造復元性が得られる。また、組成物を塗工した際、塗工中は粘度が下がり均一に塗工しやすく、塗工後には粘度が回復し、その後も均一な状態を維持できる。また塗工後に粘度が回復する(高くなる)ことで乾燥時に材料が凝集しにくく反りにくくなる。アルコール性水酸基は、赤外分光スペクトルによって検出される。
酸化セルロースナノファイバーは、赤外分光スペクトルにおけるC-O由来のピーク(1062cm-1付近)高さと、C=O由来のピーク(1610cm-1付近)高さとのピーク高さ比(C=O/C-O)が0.70以下、または、O-H由来のピーク(3340cm-1付近)高さと、C=O由来のピーク(1610cm-1付近)高さとのピーク高さ比(C=O/O-H)が1.35以下であるものが好ましい。
上記ピーク高さ比(C=O/C-O)が0.70以下、または、上記ピーク高さ比(C=O/O-H)が1.35以下であれば、カーボンナノチューブの分散性が良好なTEMPO酸化セルロースとして用いることができる。
一方、上記ピーク高さ比(C=O/C-O)が0.70超過、または、上記ピーク高さ比(C=O/O-H)が1.35超過では、過度に酸化が進んだ状態となり、カーボンナノチューブの分散性に悪影響を及ぼす。
上記ピーク高さ比(C=O/C-O)は好ましくは、0.25以上0.70以下、または、上記ピーク高さ比(C=O/O-H)が0.45以上1.35以下がより好ましい。
本発明では、上記ピーク高さ比(C=O/C-O)が0.70以下、または、上記ピーク高さ比(C=O/O-H)が1.35以下であることが好ましい。分析時に材料由来の不純物の混入によりピークにノイズの影響を受ける場合があるが、上記ピーク高さ比のどちらか一方を満たせばよい。
上記ピーク高さ比(C=O/C-O)が0.70以下であり、かつ、上記ピーク高さ比(C=O/O-H)が1.35以下であるものがカーボンナノチューブの分散性の点から更に好ましい。
上記ピーク高さ比(C=O/C-O)が0.70以下、または、上記ピーク高さ比(C=O/O-H)が1.35以下とするためには、後述する製造の際などにおいて、セルロース繊維の酸化工程で用いる共酸化剤の添加量や反応時間を調整することにより、カルボキシル基量を制御することにより得ることができる。
酸化セルロースナノファイバーの赤外分光スペクトルは、赤外分光計を用いて測定することができる。本発明では、酸化セルロースナノファイバーに赤外線を照射し、それぞれの官能基に特徴的な波長における赤外線吸収強度を測定し、当該吸収強度の比率をピーク高さ比として比較する。
酸化セルロースナノファイバーとしては、グルコースユニットの6位の水酸基が選択的に酸化されてカルボン酸基(COOH)を有したものであることが好ましい。カルボン酸基がカルボン酸塩基(COOX、ここでXはカルボン酸と塩を形成するカチオンを示す)に中和されたものでもよい。酸化セルロースがグルコースユニット上の6位の水酸基が選択的に酸化されたものであることは、例えば、13C-NMRチャートにより確認することができる。なお、酸化セルロースナノファイバーは、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基と共に、アルデヒド基又はケトン基を有していてもよいが、アルデヒド基及びケトン基を実質的に有していないことが好ましい。
上記酸化セルロースナノファイバーのカルボン酸基の含有量(以下、カルボキシル基量という)は、セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、0.5mmol/g~3.0mmol/gになるように調整することが好ましい。上記カルボキシル基量が上記範囲内である場合、カーボンナノチューブ分散液を使用して電極材料用塗液を作成した際の分散性が良好となる。
上記酸化セルロースナノファイバーのカルボキシル基量の測定は、例えば、乾燥質量を精秤したセルロース試料から0.5~1質量%スラリーを60mL調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行う。測定はpHが約11になるまで続ける。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記の式(2)に従いカルボキシル基量を求めることができる。
〔式2〕
カルボキシル基量(mmol/g)=V(mL)×〔0.05/セルロース質量〕…(2)
なお、カルボキシル基量の調整は、後述するように、セルロース繊維の酸化工程で用いる共酸化剤の添加量や反応時間等の因子を制御することにより行うことができる。
上記酸化セルロース繊維は、天然セルロース繊維を原料とし、水中においてN-オキシル化合物を酸化触媒とし、共酸化剤を作用させることにより該天然セルロース繊維を酸化して反応物を得る酸化反応工程(1)、不純物を除去して水を含浸させた反応物を得る精製工程(2)、および水を含浸させた反応物を溶媒に分散させる分散工程(3)を含む製造方法により得ることができる。
(1)酸化反応工程
天然セルロース繊維とN-オキシル化合物とを水(分散媒体)に分散させた後、共酸化剤を添加して、反応を開始する。反応中は、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10~11に保ちつつ、共酸化剤を添加する。ここで、共酸化剤とは、直接的にセルロース水酸基を酸化する物質ではなく、酸化触媒として用いられるN-オキシル化合物を酸化する物質のことである。
上記天然セルロース繊維は、植物,動物,バクテリア産生ゲル等のセルロースの生合成系から単離した精製セルロース繊維を意味する。より具体的には、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター,コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプ、バクテリアセルロース繊維(BC)、ホヤから単離されるセルロース繊維、海草から単離されるセルロース繊維等をあげることができる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプが好ましい。
上記天然セルロース繊維は、叩解等の表面積を高める処理を施すと、反応効率を高めることができ、生産性を高めることができるため好ましい。また、上記天然セルロース繊維として、単離、精製の後、乾燥させない(ネバードライ)で保存していたものを使用すると、ミクロフィブリルの集束体が膨潤しやすい状態であるため、反応効率を高め、微細化処理後の数平均繊維径を小さくすることができるため好ましい。
セルロース原料としては、セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体等の何らかの溶媒に溶解した後に紡糸された再生セルロース、及び上記セルロース原料に加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル等の機械的処理等をすることによってセルロースを解重合した微細セルロースなどが、特に好ましい。
上記反応における天然セルロース繊維の分散媒体は水であり、反応水溶液中の天然セルロース繊維濃度は、試薬(天然セルロース繊維)の充分な拡散が可能な濃度であれば任意である。通常は、反応水溶液の質量に対して約5%以下であるが、機械的撹拌力の強い装置を使用することにより反応濃度を上げることができる。
また、上記N-オキシル化合物としては、例えば、一般に酸化触媒として用いられるニトロキシラジカルを有する化合物があげられる。上記N-オキシル化合物は、水溶性の化合物が好ましく、なかでもピペリジンニトロキシオキシラジカルが好ましく、特に2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)または4-アセトアミド-TEMPOが好ましい。上記N-オキシル化合物の添加は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01~10mmolが好ましく、0.02~1mmolがより好ましく、0.05~0.5mmolがさらに好ましい。また、反応系に対し0.1~4mmol/L程度がよい。
上記共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。そして、上記次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、反応速度の点から、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが好ましい。上記臭化アルカリ金属の添加量は、上記N-オキシル化合物に対して約1~40倍モル量、好ましくは約10~20倍モル量である。
上記反応水溶液のpHは約8~11の範囲で維持されることが好ましい。水溶液の温度は約4~40℃の範囲から選ばれる。所望のカルボキシル基量等を得るためには、共酸化剤の添加量と反応時間により、酸化の程度を制御する。酸化反応における反応時間は、酸化の程度によって適宜設定することができ、通常は0.5~6時間、例えば、1~4時間程度である。また、酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一または異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
これらに加えて、共酸化剤の添加量と反応水溶液のpH等の因子を制御する事により、セルロース分子の酸化及び加水分解の程度を制御し、酸化セルロースナノファイバーの諸特性を任意に設定することができる。通常は、セルロースナノファイバーのTEMPO酸化は、酸化反応が可能な限りまで完全に行われる。しかし、本発明においては、酸化セルロースナノファイバーが前記の特定の諸物性を有するように、TEMPO酸化を進めすぎないことが重要である。
(2)精製工程
次に、未反応の共酸化剤(次亜塩素酸等)や、各種副生成物等を除く目的で精製を行う。反応物繊維は通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散しているわけではないため、通常の精製法、すなわち水洗とろ過を繰り返すことで高純度(99質量%以上)の反応物繊維と水の分散体とすることができる。
上記精製工程における精製方法は、遠心脱水を利用する方法(例えば、連続式デカンダー)のように、上述した目的を達成できる装置であればどのような装置を利用しても差し支えない。このようにして得られる反応物繊維の水分散体は、絞った状態で固形分(セルロース繊維)濃度としておよそ10質量%~50質量%の範囲にある。この後の分散工程を考慮すると、50質量%よりも高い固形分濃度としてしまうと、分散に極めて高いエネルギーが必要となることから好ましくない。
(3)分散工程(微細化処理工程)
上記精製工程にて得られる水を含浸した反応物(水分散体)を、分散媒体中に分散させ分散処理を行う。処理に伴って粘度が上昇し、微細化処理されたセルロース繊維の分散体を得ることができる。なお、セルロース繊維の微細化に伴ってセルロース繊維の長さ方向の切断も同時に生じるため、微細化処理の程度(例えば、分散機の処理せん断力、処理圧力、処理回数、処理時間など)を制御することによって、任意にセルロース繊維のアスペクト比を設定することが可能である。その後、必要に応じて上記セルロース繊維を乾燥してもよく、上記セルロース繊維の分散体の乾燥法としては、例えば、分散媒体が水である場合は、スプレードライ、凍結乾燥法、真空乾燥法等が用いられ、分散媒体が水と有機溶媒の混合溶液である場合は、ドラムドライヤーによる乾燥法、スプレードライヤーによる噴霧乾燥法等が用いられる。なお、上記セルロース繊維の分散体を乾燥することなく、分散体の状態で用いても差し支えない。
上記分散工程で使用する分散機としては、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理機、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダー等の強力で叩解能力のある装置を使用することにより、より効率的かつ高度なダウンサイジングが可能となり、経済的に有利に含水潤滑剤組成物を得ることができる点で好ましい。なお、上記分散機としては、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ペブルミル、ビーズミル粉砕機等を用いても差し支えない。また、2種類以上の分散機を組み合わせて用いても差し支えない。
(4)還元工程
本発明においては、酸化セルロースナノファイバーは、上記酸化反応工程後に、さらに還元反応を行うことが好ましい。具体的には、酸化反応後の微細酸化セルロース繊維を精製水に分散し、水分散体のpHを約10に調整し、各種還元剤により還元反応を行う。本発明に使用する還元剤としては、一般的なものを使用することが可能であるが、好ましくは、LiBH4、NaBH3CN、NaBH4等が挙げられる。中でも、コストや利用可能性の点から、NaBH4が好ましい。
還元剤の量は、酸化セルロースナノファイバー乾燥重量を基準として、0.1~4質量%の範囲が好ましく、特に好ましくは1~3質量%の範囲である。反応は、室温または室温より若干高い温度で、通常、10分~10時間、好ましくは30分~2時間行う。
上記還元工程により、酸化セルロースナノファイバーに含有されるアルデヒド基及びケトン基を水酸基に転化させることができる。
本発明の諸特性を満たす酸化セルロースナノファイバーは、上記製造の際に下記手段・方法等を採用することにより製造することができ、また、上記各特性を有する市販品があれば、それらを用いることができる。
酸化セルロースナノファイバーの結晶化度、繊維長の分布、赤外分光スペクトルにおけるピーク高さ比(C=O/C-O)または(C=O/O-H)を所定の範囲とするためには、上記の製造方法において、セルロースナノファイバーの酸化反応時の共酸化剤の添加量や反応時間、解繊の時間などを制御することによって調整することができる。
本発明において、カーボンナノチューブ分散液に含まれる酸化セルロースナノファイバーの含有量は、用途に応じて、好適な含有量を設定することができる。
例えば、導電ペースト、二次電池用電極ペースト、二次電池用電極などに用いる場合は、高い安定性と導電性能を両立する点、分散液製造時の粘度の点から、カーボンナノチューブ分散液に含まれる酸化セルロースナノファイバーの含有量は、活物質量に対して、0.1~2質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは、0.1~1.5質量%、より好ましくは0.1~1質量%、特に0.1~0.8質量%とすることが望ましい。
酸化セルロースナノファイバーの含有量を活物質に対して0.1質量%以上とすることにより、カーボンナノチューブ分散液に充分な分散性と電池としてのサイクル特性を確保できるようになり、一方、2質量%以下とすることにより、分散液の安定性と良好な導電性を確保することができるものとなる。
本発明のカーボンナノチューブ分散液における分散媒(分散体の残部)は、水(例えば、精製水、蒸留水、純水、超純水、水道水、イオン交換水等)であり、水の他、水溶性溶媒を用いることができる。
用いることができる水溶性溶媒としては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル1,3-ブタンジオール、2メチルペンタン-2,4-ジオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、1,2,3-ヘキサントリオール等のアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール等のグリセロール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等のグリコールの低級アルキルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダリジノン等の少なくとも1種が挙げられる。
その他にも、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類等の水溶性溶媒を混合することもできる。
これらの水溶性溶媒の含有量は、分散体の固形分調整により変動するが、カーボンナノチューブ分散液全量に対して、0.1~7質量%が好ましく、スラリーの混合性を向上させる点、保存安定性の点から、10質量%未満であることがより好ましく、0.1~5質量%であることが更に好ましい。
本発明のカーボンナノチューブ分散液には、保存安定性の点、雑菌の繁殖防止の点から、防腐剤を含有することが好ましい。また、その他、用途に応じた添加剤を加えてもよい。例えば、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム、沈降防止剤、湿潤剤、乳化剤、たれ防止剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤等が挙げられる。
本発明のカーボンナノチューブ分散液の製造は、例えば、少なくとも、カーボンナノチューブ、上記特性の酸化セルロースナノファイバー、水の他、平板上のグラファイト、水溶性溶媒、防腐剤等を投入し、撹拌・混合後、分散工程を経て得ることができる。
上記分散体の分散処理は、例えば、超音波分散機や、ディスパー、ホモミキサー、自転公転ミキサー、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、(高圧)ホモジナイザー、ペイントコンディショナー、コロイドミル類、ビーズミル、コーンミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、パールミル、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル、薄膜旋回型高速ミキサー等のメディアレス分散機、その他ロールミル等の分散装置を用いて分散処理することができるが、これらに限定されるものではない。
好ましい分散装置としては、安定性や分散効率の点から、薄膜旋回型高速ミキサーやビーズミルなどが好ましい。
また、本発明のカーボンナノチューブ分散液は、これを添加して調製する電極用スラリーの流動性を得る点などから、E型回転粘度計〔東機産業株式会社製、TV-25〕を用い、ローター(1°34’×R24mm)回転数10rpmにおける25℃の粘度(mPa・s)が、5~700であることが好ましく、5~200であることが更に好ましい。
本発明のカーボンナノチューブ分散液は、リチウムイオン二次電池の電極(正極又は負極)の製造に好適な電極層形成用塗工液(以下、電極用スラリーともいう。)に利用でき、電極形成のため塗工する際に導電材となるカーボンナノチューブ及び活物質を均一に分散させ、かつ、分散安定性に優れたものとなる。しかも、電極自体の抵抗値等に悪影響が及ぼすことがなく、高効率のリチウムイオン電池などの電池電極などの製造に好適となる電極用組成物となる。この電極層形成用塗工液から得られる電極層は、サイクル特性、自己放電特性を高度に維持した上で、高い安定性と導電性能を両立することができるものとなり、Li等のイオンの出し入れや電極の抵抗値に悪影響を及ぼすことがない。
〈正極用スラリー〉
正極用スラリーは、本発明のカーボンナノチューブ分散液に、正極用活物質を混合して作成することができる。
用いることができる正極用活物質としては、リチウムイオン電池の正極に使用可能な通常の正極活物質(リチウムイオンを可逆的に出入りさせる活物質)であれば、特に限定されずに用いることができる。
例えば、リチウム-ニッケル複合酸化物、リチウム-コバルト複合酸化物、リチウム-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン-アルミニウム複合酸化物等のリチウムと遷移金属との複合酸化物、TiS、FeS、MoS等の遷移金属硫化物、MnO、V---、V13、TiO等の遷移金属酸化物、オリビン型リチウムリン酸化物等が挙げられる。オリビン型リチウムリン酸化物は、例えば、Mn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nb、およびFeよりなる群のうちの少なくとも1種の元素と、リチウムと、リンと、酸素とを含んでいる。これらの化合物はその特性を向上させるために一部の元素を部分的に他の元素に置換したものであってもよい。
好ましい正極用活物質としては、リチウム-ニッケル複合酸化物であり、更に好ましくは、該リチウム-ニッケル複合酸化物が、式:LiNiM1M2(M1およびM2は、Al、B、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の元素のうち少なくとも1種以上の金属元素で、0.8≦X≦1.0、0≦Y≦0.2、0≦Z≦0.2)で表されるリチウム-ニッケル複合酸化物が望ましい。
これらの正極用の活物質は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の正極用スラリーにおいて、上記正極用活物質の含有量は、正極用スラリー全量に対して、電池容量を確保する点、スラリーの流動性を確保する点から、50~70質量%が好ましく、50~63質量%が更に好ましい。
また、カーボンナノチューブの含有量は、正極用スラリー全量に対して、固形分量で、0.5~10質量%が好ましく、0.5~7質量%が更に好ましい。
本発明の正極用スラリーは、カーボンナノチューブ及び、正極用活物質を含むと共に、必要に応じて、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ドライポリマー電解質、ゲルポリマー電解質、疑似固体電解質等の固体電解質を含有することができる。
〈負極用スラリー〉
負極用スラリーは、本発明のカーボンナノチューブ分散液に、負極用活物質を混合して作成することができる。
用いることができる負極用活物質としては、黒鉛の他、特に制限なく用いることができ、導電性を有しないものであれば、例えば金属酸化物系活物質粒子、シリコン系活物質粒子、特に金属酸化物系負極活物質粒子を用いることができる。
金属酸化物系負極活物質粒子としては、例えば、チタン酸化物を使用できる。チタン酸化物としては、リチウムを吸蔵放出可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、スピネル型チタン酸リチウム、ラムスデライト型チタン酸リチウム、チタン含有金属複合酸化物、単斜晶系の結晶構造を有する二酸化チタン(TiO(B))、並びにアナターゼ型二酸化チタンなどを用いることができる。
スピネル型チタン酸リチウムとしては、Li+xTi12(xは充放電反応により-1≦x≦3の範囲で変化する)などが挙げられる。ラムスデライト型チタン酸リチウムとしては、Li+yTi(yは充放電反応により-1≦y≦3の範囲で変化する)などが挙げられる。TiO(B)及びアナターゼ型二酸化チタンとしては、Li+zTiO(zは充放電反応により-1≦z≦0の範囲で変化する)などが挙げられる。
チタン含有金属複合酸化物としては、TiとP、V、Sn、Cu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素とを含有する金属複合酸化物などが挙げられる。TiとP、V、Sn、Cu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物としては、例えば、TiO-P、TiO-V、TiO-P-SnO、TiO-P-MeO(MeはCu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素)などを挙げることができる。
このような金属複合酸化物は、結晶性が低く、結晶相とアモルファス相とが共存しているか、又は、アモルファス相が単独で存在しているミクロ構造であることが好ましい。ミクロ構造であることにより、サイクル性能を更に向上させることができる。
本発明の負極用スラリーにおいて、上記負極用活物質の含有量は、負極用スラリー全量に対して、電池容量を確保する点、スラリーの流動性を確保する点から、好ましくは、30~60質量%が好ましく、更に好ましくは、35~55質量%が望ましい。
また、カーボンナノチューブ分散液の含有量は、負極用スラリー全量に対して、固形分量で、好ましくは、0.5~10質量%が好ましく、更に好ましくは、0.5~7質量%が望ましい。
本発明の負極用スラリーは、カーボンナノチューブ及び、負極用活物質を含むと共に、必要に応じて、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ドライポリマー電解質、ゲルポリマー電解質、疑似固体電解質等の固体電解質を含有することができる。
上記で得られた正極用スラリー及び負極用スラリーを用いることにより、二次電池用電極を得ることができる。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
酸化セルロースナノファイバー(CeNF)として、CeNF-1及びCeNF-2を使用した。
(結晶化度の測定法)
デスクトップ型X線回折装置(株式会社リガク製、MiniFlex600)を用いて、管電圧:40Kv、管電流:15mA、測定範囲:2θ=5~35°、スキャンスピード:10°/minにて、X線回折法で酸化セルロースナノファイバーの結晶化度をSegal法によって算出した。
使用した酸化セルロースナノファイバーの結晶化度の測定結果は、以下の通りである。
*CeNF-1:結晶化度54%
*CeNF-2:結晶化度78%
(繊維長の測定法)
透過型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製、H-7650;TEM)により測定された画像から、酸化セルロースナノファイバーの繊維長を計測し、50nm~250nmであるもの、又は、100nm~150nmであるものの個数が全体の個数に占める割合を算出した。n数は100とした。また、その分布から、数平均繊維長L、及び、長さ加重平均繊維長Llを求め、数平均繊維長Lと長さ加重平均繊維長Llの比(Ll/L)を算出した。 使用した酸化セルロースナノファイバーの繊維長の測定結果は、以下の通りである。
*CeNF-1:繊維長50nm~250nmであるもの90%、繊維長100nm~150nmであるもの35%、数平均繊維長Lと長さ加重平均繊維長Llの比Ll/L 1.3
*CeNF-2:繊維長50nm~250nmであるもの60%、繊維長100nm~150nmであるもの13%、数平均繊維長Lと長さ加重平均繊維長Llの比Ll/L 1.6
(赤外分光スペクトルにおけるC-O由来のピーク(1062cm-1付近)高さと、C=O由来のピーク(1610cm-1付近)高さとのピーク高さ比(C=O/C-O)と、O-H由来のピーク(3340cm-1付近)高さと、C=O由来のピーク(1610cm-1付近)高さとのピーク高さ比(C=O/O-H)の測定法)
自然乾燥させたセルロースナノファイバーを赤外分光光度計(Thermo SCIENTIFIC社製、NICOLET iZ10)により、赤外スペクトルを測定した。得られた赤外スペクトルの各官能基に特徴的な波長における最大吸収をピークとし、それぞれの吸収比率の比をピーク高さ比とした。
*CeNF-1:ピーク高さ比(C=O/C-O)0.61、ピーク高さ比(C=O/O-H)1.16
*CeNF-2:ピーク高さ比(C=O/C-O)0.72、ピーク高さ比(C=O/O-H)1.39
〔カーボンナノチューブ分散液の調製〕
蒸留水に、カーボンナノチューブ、平板上のグラファイト(日本黒鉛株式会社製、J-SP-α)及び前記酸化セルロースナノファイバーCNT-A又はCNT-Bをそれぞれ所定量加え、分散装置(φ1.0mmのジルコニアビーズを用いたビーズミル;周速を10m/sに設定)により 撹拌操作を行い、カーボンナノチューブ分散液を得た。カーボンナノチューブ分散液の配合組成は、下記表1に示す通りである。
(分散性の評価)
得られたカーボンナノチューブ分散液について、SEMで観察した。5μm角の枠内に見出される最大径500nm以上の固体の数をカウントした。10個の格子において観察し、カウントされた固体の数の平均値を求め、下記評価基準で分散性を評価した。当該固体は、未分散のカーボンナノチューブ凝集体であった。
評価基準:
○:カウントされた固体の数が5個未満
△:カウントされた固体の数が6個以上~10個未満
×:カウントされた固体の数が10個以上
これらの評価結果を下記表1に示す。
Figure 2024065982000001
表1の評価結果から明らかなように、本発明のカーボンナノチューブ分散液は、分散性が良好であった。
本発明のカーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブの分散性に優れ、燃料電池、各種電極、電磁波シールド材、導電性樹脂、電界放出ディスプレイ用部材など、特に、リチウムイオン二次電池の電極の製造原料に利用できる。

Claims (4)

  1. 少なくとも、カーボンナノチューブ、酸化セルロースナノファイバー、及び水を含むカーボンナノチューブ分散液であって、
    酸化セルロースナノファイバーが、X線回折法で測定した際の結晶化度が70%未満であることを特徴とするカーボンナノチューブ分散液。
  2. 酸化セルロースナノファイバーが、繊維長が50~250nmであるものが85%以上を占める
    請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散液。
  3. 酸化セルロースナノファイバーが、赤外分光スペクトルにおけるC-O由来のピーク(1062cm-1付近)高さと、C=O由来のピーク(1610cm-1付近)高さとのピーク高さ比(C=O/C-O)が0.70以下、または、O-H由来のピーク(3340cm-1付近)高さと、C=O由来のピーク(1610cm-1付近)高さとのピーク高さ比(C=O/O-H)が1.35以下である
    請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ分散液。
  4. 請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散液を使用することを特徴とする電極用組成物。
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