JP2024065254A - 回転電機用ロータ - Google Patents
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Abstract
【課題】ロータコアと磁石との間の接触に起因した損失を低減しつつ、磁石表面における絶縁被覆に係る被覆面積の低減を図る。【解決手段】複数の鋼板の積層体の形態であり、軸方向の磁石孔を有するロータコアと、磁石孔に軸方向に挿入された磁石とを備え、複数の鋼板は、磁石孔において対の第1突起を形成する第1鋼板と、磁石孔において対の第2突起を形成する第2鋼板とを含み、対の第1突起は、軸方向に視て、磁石におけるd軸に交差する方向での両側の磁石側面に対して、該磁石側面に垂直な方向でそれぞれ対向し、対の第2突起は、軸方向に視て、磁石における両側の磁石側面に対して、該磁石側面に垂直な方向でそれぞれ対向し、対の第2突起の間の距離であって、磁石側面に垂直な方向に沿った距離は、対の第1突起の間の同距離よりも、短い、回転電機用ロータが開示される。【選択図】図9
Description
本開示は、回転電機用ロータに関する。
磁石孔における磁石の位置ズレを防止するために、磁石孔において磁石側面に対して当接可能な段差(突起の一形態)を設ける技術が知られている。
しかしながら、上述したような突起は、磁石孔内における位置ズレを規制できる反面、位置ズレによって突起に磁石側面が当接した状態が形成されると、不都合が生じる。具体的には、磁石とロータコアが接触すると、接触部で導通してしまい、磁石の発熱等による有意な損失が発生してしまう。これに対して、磁石表面に絶縁機能を持たせた被覆を付与することで、磁石側面とロータコアが接触しても導通が発生しないようにすることも可能である。この場合、ロータコアと磁石との間の接触に起因した損失の低減を図ることが可能となる。しかしながら、かかる絶縁被覆に係る被覆面積の増加は、コスト増加につながるため、絶縁被覆に係る被覆面積の最小化を図ることが有用となる。
そこで、1つの側面では、本開示は、ロータコアと磁石との間の接触に起因した損失を低減しつつ、磁石表面における絶縁被覆に係る被覆面積の低減を図ることを目的とする。
1つの側面では、複数の鋼板の積層体の形態であり、軸方向の磁石孔を有するロータコアと、
前記磁石孔に軸方向に挿入された磁石とを備え、
前記複数の鋼板は、前記磁石孔において対の第1突起を形成する第1鋼板と、前記磁石孔において対の第2突起を形成する第2鋼板とを含み、
前記対の第1突起は、軸方向に視て、前記磁石におけるd軸に交差する方向での両側の磁石側面に対して、該磁石側面に垂直な方向でそれぞれ対向し、
前記対の第2突起は、軸方向に視て、前記磁石における両側の前記磁石側面に対して、該磁石側面に垂直な方向でそれぞれ対向し、
前記対の第2突起の間の距離であって、前記磁石側面に垂直な方向に沿った距離は、前記対の第1突起の間の同距離よりも、短い、回転電機用ロータが提供される。
前記磁石孔に軸方向に挿入された磁石とを備え、
前記複数の鋼板は、前記磁石孔において対の第1突起を形成する第1鋼板と、前記磁石孔において対の第2突起を形成する第2鋼板とを含み、
前記対の第1突起は、軸方向に視て、前記磁石におけるd軸に交差する方向での両側の磁石側面に対して、該磁石側面に垂直な方向でそれぞれ対向し、
前記対の第2突起は、軸方向に視て、前記磁石における両側の前記磁石側面に対して、該磁石側面に垂直な方向でそれぞれ対向し、
前記対の第2突起の間の距離であって、前記磁石側面に垂直な方向に沿った距離は、前記対の第1突起の間の同距離よりも、短い、回転電機用ロータが提供される。
1つの側面では、本開示によれば、ロータコアと磁石との間の接触に起因した損失を低減しつつ、磁石表面における絶縁被覆に係る被覆面積の低減を図ることが可能となる。
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
図1は、一実施例によるモータ1の断面構造を概略的に示す断面図である。図2は、ロータ30の断面図(軸方向に垂直な平面による断面図)である。なお、図2等では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部しか参照符号が付されていない場合がある。また、図2では、磁石孔121の形状等については非常に概略的に示されており、詳細の形状は、図6及び図7を参照して後述する。
図1には、モータ1の回転軸12が図示されている。以下の説明において、軸方向とは、モータ1の回転軸(回転中心)12が延在する方向を指し、径方向とは、回転軸12を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、回転軸12から離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸12に向かう側を指す。また、周方向とは、回転軸12まわりの回転方向に対応する。
モータ1は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用される車両駆動用のモータであってよい。ただし、モータ1は、他の任意の用途に使用されるものであってもよい。
モータ1は、インナロータタイプであり、ステータ21がロータ30の径方向外側を囲繞するように設けられる。ステータ21は、径方向外側がモータハウジング10に固定される。ステータ21は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなるステータコア211を備え、ステータコア211の径方向内側には、コイル22が巻回される複数のスロット(図示せず)が形成される。
ロータ30は、ステータ21の径方向内側に配置される。
ロータ30は、ロータコア32と、ロータシャフト34と、永久磁石61とを備える。
ロータコア32は、ロータシャフト34の径方向外側の表面に固定され、ロータシャフト34と一体となって回転する。ロータコア32は、軸孔320(図2参照)を有し、軸孔320にロータシャフト34が嵌合される。ロータコア32は、ロータシャフト34に焼き嵌め、圧入、又はその類により固定されてよい。例えば、ロータコア32は、ロータシャフト34にキー結合やスプライン結合により結合されてもよい。ロータシャフト34は、モータハウジング10にベアリング14a、14bを介して回転可能に支持される。なお、ロータシャフト34は、モータ1の回転軸12を画成する。
ロータコア32は、円環状の磁性体の鋼板を複数積層して形成される。すなわち、ロータコア32は、複数の鋼板の積層体の形態である。本実施例では、ロータコア32を形成する複数の鋼板は、複数の種類の鋼板を含むが、以下では、特にこれらの種類を区別しない場合、単に「鋼板120」とも称する。
ロータコア32の内部には、永久磁石61が埋め込まれる。すなわち、ロータコア32は、軸方向に貫通する磁石孔121を有し、磁石孔121内に永久磁石61が挿入され固定される。
本実施例では、ロータコア32の軸方向端面は、一の鋼板120により形成されてよい。すなわち、本実施例では、ロータコア32の軸方向端部には、エンドプレートのような部材であって、ロータコア32の両端面を覆う部材が設けられなくてよい。この場合、ロータ30の軸方向端面で鋼板120が露出する。
ロータコア32は、図2に示すように、軸方向に視て、回転軸12を中心とした回転対称の形態を有する。図2に示す例では、ロータコア32は、回転軸12を中心として45度回転するごとに、各組の永久磁石61が重なる形態である。
複数の永久磁石61は、ネオジウム等により形成されてよい。複数の永久磁石61は、焼結磁石であってよい。本実施例では、一例として、図2に示すように、複数の永久磁石61は、軸方向に視て、永久磁石61がそれぞれ対をなして配置されている。この場合、対の永久磁石61の間に磁極が形成される。なお、複数の永久磁石61は、周方向でS極とN極とが交互に現れる態様で配置される。なお、本実施例では、磁極数が8つであるが、磁極数は任意である。
なお、図1には、特定の構造を有するモータ1が示されるが、モータ1の構造は、かかる特定の構造に限定されない。例えば、図1では、ロータシャフト34は、中空であるが、中実であってもよい。また、永久磁石61は、径方向内側と径方向外側とに2層又は3層以上に分けて、それぞれ、層ごとに、d軸に関して対をなす態様で、配置されてもよい。
次に、図3以降を参照して、永久磁石61及びロータコア32の磁石孔121を更に詳細に説明する。以下では、ある一の磁極に係る構成について説明するが、他の磁極に係る構成についても同様であってよい。
以下の説明において、後出する図6に示すように、永久磁石61の側面610とは、永久磁石61におけるd軸に交差する方向での両側の磁石側面を指す。この際、永久磁石61の両側の側面610とは、2つの側面610を指す。また、永久磁石61の両側の側面610のうちの、外周に近い側の側面を、「外周側表面6101」とも称し、d軸に近い側の側面を、「d軸側表面6102」とも称する。
また、永久磁石61の径方向外側の表面611(以下、「外側表面611」とも称する)は、側面610以外の2表面のうちの、回転軸12を通る径方向の直線が径方向外側で交わる表面である。また、永久磁石61の径方向内側の表面612(以下、「内側表面612」)は、側面610以外の2表面のうちの、回転軸12を通る径方向の直線が径方向内側で交わる表面である。
また、永久磁石61の長手方向とは、永久磁石61の両側の側面610に対して垂直な方向に対応し、永久磁石61の幅方向とは、軸方向に視て、永久磁石61の長手方向に垂直な方向である。
また、磁石孔121の形状的な特徴(ロータコア32の磁石孔121まわりの縁部)に関して、径方向内側の縁部1214とは、永久磁石61の幅方向で永久磁石61の内側表面612に対向する縁部を指す。なお、その他、縁部1213は、永久磁石61の幅方向で永久磁石61の外側表面611に対向する縁部であり、縁部1211は、永久磁石61の長手方向で永久磁石61の外周側表面6101に対向する縁部であり、縁部1212は、永久磁石61の長手方向で永久磁石61のd軸側表面6102に対向する縁部である。
図3は、図2のラインA-Aに沿った断面図である。図3では、説明の都合上、ロータコア32を形成する複数の鋼板120のうちの、突起321を形成する鋼板120Aだけ、他の鋼板とは異なるハッチングで図示している。
本実施例では、ロータコア32は、磁石孔121に、径方向内側の縁部1214において、径方向外側に突出する径方向の突起321を有する。なお、径方向の突起321は、径方向(回転軸12を通る径方向)に平行である必要はなく、永久磁石61の幅方向に平行に突出してもよい。径方向の突起321は、ロータコア32の一部としてロータコア32と一体形成されてよい。例えば、径方向の突起321は、ロータコア32を形成する鋼板120のうちの、一部の鋼板(以下、区別する際、「鋼板120A」とも称する)に形成される。径方向の突起は、鋼板120Aのプレスの際に形成されてもよい。
径方向の突起321は、磁石孔121における軸方向の1つ以上の位置に設けられる。径方向の突起321は、磁石孔121における軸方向に沿って等間隔に設けられてもよい。すなわち、鋼板120Aは、軸方向に沿って等間隔に設けられてもよい。
本実施例では、永久磁石61は、永久磁石61の外側表面611に、接着層162を有する。接着層162は、永久磁石61の外側表面611に強固に接合される。接着層162は、絶縁性を有する。接着層162は、磁石孔121内において、永久磁石61の外側表面611とロータコア32との間に延在する。これにより、永久磁石61の外側表面611とロータコア32との間の電気的な絶縁性を確保できる。
特に本実施例では、永久磁石61の外側表面611に接合する接着層162は、ロータコア32に接合する。すなわち、接着層162は、径方向内側で永久磁石61の外側表面611に接合し、かつ、径方向外側でロータコア32の磁石孔121における径方向内側の側面に接合する。接着層162は、永久磁石61が自重等に起因して磁石孔121から離脱しないような接合力で、ロータコア32に接合する。また、接着層162は、永久磁石61の外側表面611から剥離しないような接合力で、永久磁石61の外側表面611に接合する。
ところで、本実施例の突起321とは異なり、より大きい弾性力を発生する径方向の突起を設ける場合、永久磁石の表面上の絶縁被覆を破壊してしまうおそれがある。永久磁石61の表面上の絶縁被覆が破壊されると、永久磁石61とロータコア32の間で通電が発生し、損失につながる。すなわち、回転電機の動作時にロータコア32に流れる渦電流が永久磁石61にも流れ、永久磁石61が発熱し、当該発熱に起因して損失が発生する。
このため、本実施例において、永久磁石61における突起321に対向する側の磁石表面(すなわち内側表面612)には、絶縁被覆(図示せず)が形成されてもよい。この場合、上述した渦電流による永久磁石61の発熱に起因して損失が生じる可能性を低減できる。
次に、図4及び図5を参照して、本実施例によるロータ30の製造方法について概説する。
図4は、本実施例によるロータ30の製造方法の説明図である。図4は、弾性変形前の状態の突起321を模式的に示す斜視図である。図5は、本製造方法の挿入工程中におけるワークの状態を示す図である。
本製造方法は、ロータコア32の磁石孔121に、接着層162に係る材料(接着剤)が付与された永久磁石61を挿入する挿入工程を含む。挿入工程は、図5に示すように、突起321を弾性変形させることを伴う。突起321は、図4に示すような弾性変形前の形態(まっすぐに径方向に延在する形態)での突出長さL10が適切に設定されてよい。
永久磁石61が最終の挿入位置まで挿入されることで挿入工程が終了すると、永久磁石61は、弾性変形した各突起321により径方向外側に向けて力を受ける。その結果、ロータコア32の磁石孔121内において永久磁石61が径方向外側に押し付けられた状態(押圧状態)となり、ロータコア32に対して接着層162を介して永久磁石61が強固に接着される。
次に、図6以降を参照して、ロータコア32の磁石孔121の更なる特徴について説明する。本実施例では、ロータコア32を形成する複数の鋼板120のうちの、特定の複数の鋼板120Bは、他の鋼板120Cとは磁石孔121の形態の詳細が異なる。以下では、鋼板120Bにおける磁石孔121の部分については、磁石孔形成部121Bと称し、その形状的特徴に係る要素には、符号Bを最後につける場合がある。また、鋼板120Cにおける磁石孔121の部分については、磁石孔形成部121Cと称し、その形状的特徴に係る要素には、符号Cを最後につける場合がある。
図6は、鋼板120Bの磁石孔形成部121Bの説明図であり、鋼板120Bにおける一の磁極における構成(図2のQ1に係る範囲の詳細な構成)を示す断面図である。図6は、軸方向に対して垂直な平面による鋼板120Bの板厚中心を通る断面図に対応する。なお、図6等では、図3を参照して上述し例えば接着層162の図示は省略されている。
本実施例では、図6に示すように、鋼板120Bは、磁石孔形成部121Bの径方向内側の縁部1214Bにおいて、永久磁石61の幅方向に沿った突起322Bを有する。突起322Bは、対をなし、永久磁石61の両側の側面610に対して、永久磁石61の長手方向で対向する。すなわち、対の突起322Bのうちの、d軸から遠い側の突起322Bは、永久磁石61の外周側表面6101に対向し、d軸に近い側の突起322Bは、永久磁石61のd軸側表面6102に対向する。
本実施例では、対の突起322Bは、一のロータコア32を形成する複数の鋼板120のうちの、一部の鋼板120Bに設けられる。以下では、後述する別の対の突起322Cとの区別のため、対の突起322Bを、「対のガイド突起322B」とも称する。
対のガイド突起322Bは、図4及び図5を参照して上述した挿入工程において、永久磁石61を磁石孔121に挿入する際のガイドとして機能する。すなわち、対のガイド突起322Bは、複数の鋼板120Bに形成されることで、軸方向に延在する2本の凸条を形成し、2本の凸条間が、永久磁石61の挿入空間の端部(永久磁石61の長手方向の端部)を境界付ける。
対のガイド突起322Bの距離であって、永久磁石61の長手方向に沿った距離(以下、単に「対のガイド突起322Bの距離L1」とも称する)は、このようなガイド機能を適切に実現できるように、永久磁石61の長手方向の寸法A1よりもわずかに大きい値に設定されてよい。すなわち、L1=A1+αである。ここで、αは、許容寸法公差等に起因して取りうるL1の最小値から、許容寸法公差等に起因して取りうるA1の最大値を引いた差分よりも有意に大きくてよい。
図7は、鋼板120Cの磁石孔形成部121Cの説明図であり、鋼板120Cにおける一の磁極における構成(図2のQ1に係る範囲の詳細な構成)を示す断面図である。図7は、軸方向に対して垂直な平面による鋼板120Cの板厚中心を通る断面図に対応する。
本実施例では、図7に示すように、鋼板120Cは、磁石孔形成部121Cの径方向内側の縁部1214Cにおいて、永久磁石61の幅方向に沿った突起322Cを有する。突起322Cは、対をなし、永久磁石61の両側の側面610に対して、永久磁石61の長手方向で対向する。すなわち、対の突起322Cのうちの、d軸から遠い側の突起322Cは、永久磁石61の外周側表面6101に対向し、d軸に近い側の突起322Cは、永久磁石61のd軸側表面6102に対向する。
本実施例では、対の突起322Cは、一のロータコア32を形成する複数の鋼板のうちの、一部の鋼板に設けられる。以下では、上述したガイド突起322Bとの区別のため、対の突起322Cを、「対の係止突起322C」とも称する。
対の係止突起322Cは、磁石孔121に永久磁石61の位置ズレであって、正規位置に対する永久磁石61の長手方向の位置ズレを防止するストッパとして機能する。
対の係止突起322Cの距離であって、永久磁石61の長手方向に沿った距離(以下、単に「対の係止突起322Cの距離L2」とも称する)は、このようなストッパ機能を適切に実現できるように、適合される。具体的には、対の係止突起322Cの距離L2は、永久磁石61の長手方向の寸法A1と略同じ値、又は、寸法A1よりもわずかに大きい値に設定されてよい。この場合、永久磁石61の長手方向の寸法A1に対して、対の係止突起322Cの距離L2の最小化を図ることで、永久磁石61の長手方向の寸法A1に対して、対のガイド突起322Bの距離L1の最小化を図ることができる。
本実施例では、対の係止突起322Cの距離L2は、上述した対のガイド突起322Bの距離L1よりも有意に小さい。すなわち、すなわち、L2=L1-βである。ここで、βは、許容寸法公差等に起因して取りうるL1の最小値から、許容寸法公差等に起因して取りうるL2の最大値を引いた差分よりも有意に大きくてよい。
ここで、図8及び図9を参照して、本実施例の効果について説明する。
図8は、比較例によるロータコア32’の構成を示す平面図であり、一の磁極に関する部分の平面図である。図8Aは、図8のQ8部の拡大図である。図9は、本実施例の効果の説明図であり、図7のQ9部の拡大図である。図9には、説明の都合上、対のガイド突起322Bと対の係止突起322Cとを透視で重ねて図示されている。
図8に示す比較例では、対の係止突起322Cが設けられない点が、本実施例とは異なる。すなわち、比較例によるロータコア32’は、対のガイド突起322Bを有する鋼板120Bを複数積層してなる。
このような比較例では、磁石孔121において永久磁石61の位置ズレが発生すると、永久磁石61の一方側の側面610が、対のガイド突起322Bに当接する(図8A参照)。なお、このような位置ズレは、例えば永久磁石61の挿入工程(組け付け)の際に生じうる。図8に示す例では、図の左側の永久磁石61の左側の側面610(すなわち外周側表面6101)が、左側の磁石孔121の左側のガイド突起322Bに接触している。なお、図8に示す例とは異なり、図の左側の永久磁石61の右側の側面610(すなわちd軸側表面6102)が、左側の磁石孔121の右側のガイド突起322Bに接触する場合もありうる。また、右側の磁石孔121で同様の接触が発生する場合もありうる。
従って、比較例において、永久磁石61の側面610上の絶縁被覆が形成されていない場合、永久磁石61とロータコア32の間で通電が発生し、損失につながる。すなわち、回転電機の動作時にロータコア32に流れる渦電流が永久磁石61にも流れ、永久磁石61が発熱し、当該発熱に起因して損失が発生する。
特に比較例では、ロータコア32’を形成する各鋼板120Bにおいて、対のガイド突起322Bに永久磁石61が当接した状態が実現される。従って、この場合、軸方向全体にわたって永久磁石61とロータコア32の間で通電が発生し、永久磁石61による発熱量(及びそれに伴う損失)が顕著となりやすい。
なお、永久磁石61の両側の側面610に絶縁被覆を塗布等により付与すると、このような損失は低減できるものの、永久磁石61における絶縁被覆に係る被覆面積の増加(及びそれに伴うコストの増加)を招く。
これに対して、本実施例では、上述したように対の係止突起322Cが設けられるので、比較例において生じる上述した不都合を低減できる。すなわち、本実施例によれば、磁石孔121において永久磁石61の位置ズレが発生すると、永久磁石61の一方側の側面610が、対のガイド突起322Bに代えて、対の係止突起322Cに当接する。従って、本実施例においては、磁石孔121において永久磁石61の位置ズレが発生した場合でも、永久磁石61の一方側の側面610が、対のガイド突起322Bに当接することを、防止できる。
ここで、本実施例でも、対の係止突起322Cと永久磁石61とが接触すると、上述した永久磁石61に渦電流が発生しうる。しかしながら、対の係止突起322Cを有する鋼板120Cは、ロータコア32を形成する複数の鋼板120の一部である。従って、本実施例によれば、すべての鋼板120Bと永久磁石61との間で通電が発生しうる比較例に比べて、損失低減を図ることができる。すなわち、位置ズレが生じた場合の接触範囲(ロータコア32と永久磁石61との間の接触範囲)の最小化を図ることができる。あるいは、永久磁石61の両側の側面610に絶縁被覆を付与する場合でも、対の係止突起322Cを有する鋼板120Cに対応する軸方向範囲だけに絶縁被覆を付与することで、絶縁被覆に係る被覆面積の有意な増加を防止できる。
このようにして、本実施例によれば、ロータコア32と永久磁石61との間の接触に起因した損失を低減しつつ、永久磁石61の表面(特に側面610)における絶縁被覆に係る被覆面積の低減を図ることができる。
ところで、このような対の係止突起322Cを有する鋼板120Cは、渦電流に起因した損失を低減する観点からは、数が少ないほうが望ましい。他方、鋼板120Cは、上述したストッパ機能を適切に確保する観点(磁石孔121内における永久磁石61の傾斜を防止する観点)からは、少なくとも2つ以上、軸方向に離れた位置に配置されることが望ましい。
従って、対の係止突起322Cを有する鋼板120Cは、好ましくは、一のロータコア32あたり2枚であり、軸方向に離れて配置される。これにより、渦電流に起因した損失の最小化を図ることができる。この場合、鋼板120Cは、ロータコア32の軸方向端面に近い位置に配置されてよい。例えば、鋼板120Cは、ロータコア32の軸方向両端面のうちの、少なくとも一方の端面を形成してもよい。
ここで、本実施例において、上述した鋼板120Aは、鋼板120B及び鋼板120Cとは別の鋼板であってもよい。あるいは、上述した鋼板120Aは、鋼板120B及び鋼板120Cのいずれか一方により実現されてもよい。すなわち、鋼板120B及び鋼板120Cのいずれか一方には、上述した突起321が形成されてもよい。
例えば、本実施例において、上述した突起321は、対の係止突起322Cを有する鋼板120Cだけに形成されてもよい。この場合、複数の鋼板120は、複数の鋼板120Bと、1つ以上の鋼板120C(好ましくは2つ以上の鋼板120C)とからなることができる。従って、この場合、一のロータコア32を形成する複数の鋼板120のうちの、径方向内側の縁部1214が永久磁石61と接触する鋼板120の数を効率的に低減できる。これにより、渦電流に起因した損失を効果的に低減できる。例えば、永久磁石61の内側表面612に絶縁被覆を形成しない場合でも、永久磁石61の内側表面612又は両側の側面610に接触する鋼板120は、鋼板120Cだけとなり、渦電流に起因した損失を効果的に低減できる。
このように鋼板120Cが突起321を有する構成では、鋼板120Cは、ロータコア32の軸方向端面に対して、突起321の軸方向の延在距離以上、軸方向内側に位置してよい。突起321の軸方向の延在距離は、上述した曲げ変形された状態の突起321の軸方向の延在距離であり、例えば図4に示した突出長さL10として概算されてもよい。この場合、突起321の先端部がロータコア32の軸方向端面から軸方向外側にはみ出してしまうことを防止できる。
また、鋼板120Cが突起321を有する構成では、永久磁石61の挿入方向で最も先導側に位置する鋼板120Cは、ロータコア32の先導側の軸方向端面に対して、突起321の軸方向の延在距離以上、軸方向内側に位置してよい。
また、鋼板120Cが突起321を有する構成では、鋼板120Cは、軸方向で対称に配置されてもよい。例えば、ロータコア32に含まれる鋼板120Cの枚数が2枚であるとき、鋼板120Cのそれぞれは、ロータコア32の両側の軸方向端面からそれぞれ同じ距離(鋼板120の枚数分の距離)だけ軸方向内側に、配置されてもよい。この際、ロータコア32の軸方向端面からの距離は、突起321の軸方向の延在距離以上とされてよい。ただし、鋼板120Cが突起321を有さない構成においても、鋼板120Cは、軸方向で対称に配置されてもよい。
なお、上述した実施例によるロータコア32は、一の磁石孔121に軸方向に永久磁石61が、1つだけ、挿入されるが、2つ以上の永久磁石61が軸方向に並ぶ態様で挿入されてもよい。この場合、一のロータコア32を形成する複数の鋼板120は、永久磁石61ごとに少なくとも1つの鋼板120C、好ましくは、永久磁石61ごとに2つの鋼板120Cが対応付けられる態様で、複数の鋼板120Cを含んでよい。
このような構成は、ロータコア32を複数の積層ブロック325を転積することで形成する場合に好適である。
図10は、複数の積層ブロック325を転積して形成されるロータコア32Aの説明図である。例えば図10に示す例では、ロータコア32Aは、4つの積層ブロック325(1)~325(4)により形成される。積層ブロック325(1)~325(4)のそれぞれには、互いに分離した形態で永久磁石61が設けられる。図10に示す例では、複数の積層ブロック325(1)~325(4)のそれぞれは、同じ枚数の鋼板120を有し、その内訳は、2枚の鋼板120Cと、それ以外は鋼板120Bであってよい。2枚の鋼板120Cは、それぞれの積層ブロック325において、上下対称の位置(層)に配置されてよい。これにより、積層ブロック325(1)~325(4)のそれぞれにおいて、ロータコア32Aと永久磁石61との間の接触に起因した損失を低減しつつ、永久磁石61の表面(特に側面610)における絶縁被覆に係る被覆面積の低減を図ることができる。
この場合、複数の積層ブロック325(1)~325(4)を転積して形成されるロータコア32Aは、それぞれ軸方向に対称な積層ブロック325(1)~325(4)を組み合わせつつ、全体として軸方向に対称な構成を有することができる。すなわち、ロータコア32Aは、ロータコア32Aの軸方向の中心を通る平面であって、軸方向に垂直な平面に関して対称な構成を実現できる。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
30・・・ロータ(回転電機用ロータ)、32、32A・・・ロータコア、121・・・磁石孔、321・・・突起(第3突起)、322B・・・ガイド突起(第1突起)、322C・・・係止突起(第2突起)、61・・・永久磁石(磁石)、610・・・側面(磁石側面)、612・・・内側表面(径方向内側の磁石表面)、120・・・鋼板、120B・・・鋼板(第1鋼板)、120C・・・鋼板(第2鋼板)
Claims (6)
- 複数の鋼板の積層体の形態であり、軸方向の磁石孔を有するロータコアと、
前記磁石孔に軸方向に挿入された磁石とを備え、
前記複数の鋼板は、前記磁石孔において対の第1突起を形成する第1鋼板と、前記磁石孔において対の第2突起を形成する第2鋼板とを含み、
前記対の第1突起は、軸方向に視て、前記磁石におけるd軸に交差する方向での両側の磁石側面に対して、該磁石側面に垂直な方向でそれぞれ対向し、
前記対の第2突起は、軸方向に視て、前記磁石における両側の前記磁石側面に対して、該磁石側面に垂直な方向でそれぞれ対向し、
前記対の第2突起の間の距離であって、前記磁石側面に垂直な方向に沿った距離は、前記対の第1突起の間の同距離よりも、短い、回転電機用ロータ。 - 前記対の第2突起に係る前記距離は、前記磁石における両側の前記磁石側面の間の同方向に沿った距離以上である、請求項1に記載の回転電機用ロータ。
- 前記ロータコアは、前記磁石孔において、前記磁石における径方向内側の磁石表面に向けて径方向に突出する第3突起を有し、
前記第3突起は、前記第2鋼板により形成される、請求項1に記載の回転電機用ロータ。 - 前記第3突起は、軸方向に曲げ変形する形態であり、
前記第2鋼板は、前記ロータコアの軸方向端面に対して、前記第3突起の軸方向の延在距離以上、軸方向内側に位置する、請求項3に記載の回転電機用ロータ。 - 前記第2鋼板は、一の磁石の軸方向の延在範囲内に少なくとも2つ設けられる、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の回転電機用ロータ。
- 前記磁石は、一の前記磁石孔に対して軸方向に並ぶ態様で複数個挿入され、
前記第2鋼板は、複数の前記磁石のそれぞれに対して、前記磁石の軸方向の延在範囲内に少なくとも1つ設けられる、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の回転電機用ロータ。
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JP2022174004A JP2024065254A (ja) | 2022-10-31 | 2022-10-31 | 回転電機用ロータ |
Applications Claiming Priority (1)
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Family Applications (1)
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JP2022174004A Pending JP2024065254A (ja) | 2022-10-31 | 2022-10-31 | 回転電機用ロータ |
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JP (1) | JP2024065254A (ja) |
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2022
- 2022-10-31 JP JP2022174004A patent/JP2024065254A/ja active Pending
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