JP2024063877A - 被覆固形製剤 - Google Patents

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雅典 長岡
Masanori Nagaoka
良貴 衛藤
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Abstract

【課題】 シェラックを含むコーティング剤により被覆されている被覆固形製剤の崩壊時間を短縮することができる新規な技術を提供する。【解決手段】固形製剤と、シェラックとヒドロキシプロピルセルロースとを含有し、前記固形製剤を被覆するコーティング剤とを含み、シェラックを前記固形製剤に被覆させる場合の該シェラックの崩壊時間に対する前記コーティング剤の崩壊時間の百分率が15%以上90%以下である、被覆固形製剤。【選択図】 なし

Description

本発明は固形製剤と該固形製剤を被覆するコーティング剤とを含む被覆固形製剤に関する。
苦味などのマスキング、有効成分の安定化、充填包装時の粉落ち防止、腸溶性付加、手や下への着色防止などのために、医薬活性成分、栄養補給活性成分、食物成分等を含む錠剤などの固形製剤をコーティング剤で被覆した被覆固形製剤が知られている。
また、コーティング剤に含まれる成分の一つとしてシェラックが知られており、該シェラックをコーティング剤として使用するものについては例えば特許文献1~3に記載の被覆固形製剤が知られている。
特開2016-164149号公報 特開2008-52073号公報 特開2021-70663号公報
本発明は、シェラックを含むコーティング剤により被覆されている被覆固形製剤の崩壊時間を短縮することができる新規な技術を提供することを目的とする。
シェラックはバリア性が強い反面、疎水性が高いため、シェラックをコーティング剤として使用する被覆固形製剤においてはその崩壊が進みづらい傾向がある。
鋭意研究の結果、本発明者は、コーティング剤にシェラックとともにヒドロキシプロピルセルロースを所定の条件を満足するように含有させることで被覆固形製剤の崩壊時間を短縮することができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
固形製剤と、
シェラックとヒドロキシプロピルセルロースとを含有し、前記固形製剤を被覆するコーティング剤とを含み、
シェラックを前記固形製剤に被覆させる場合の該シェラックの崩壊時間に対する前記コーティング剤の崩壊時間の百分率が15%以上90%以下である、被覆固形製剤。
[2]
前記コーティング剤においてシェラックに対するヒドロキシプロピルセルロースの比率が0.05以上0.45以下である、[1]に記載の被覆固形製剤。
[3]
固形製剤をシェラックとヒドロキシプロピルセルロースとを含有するコーティング剤で被覆することを備え、
前記被覆処理は、シェラックおよびヒドロキシプロピルセルロースの合計の固形分濃度が3質量%以上15質量%以下である前記コーティング剤の溶液または分散液を前記固形製剤に塗布し、乾燥することを含む、被覆固形製剤の製造方法。
[4]
前記コーティング剤においてシェラックに対するヒドロキシプロピルセルロースの比率が0.05以上0.45以下である、[3]に記載の被覆固形製剤の製造方法。
本発明によれば、シェラックを含むコーティング剤により被覆されている被覆固形製剤の崩壊時間を短縮することができる新規な技術を提供することができる。
実施例1の被覆固形製剤と実施例2の被覆固形製剤の写真である。
以下、本発明の1つの実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態は被覆固形製剤に関する。
本明細書において、被覆固形製剤とは、内部の固形製剤と該固形製剤を被覆するコーティング剤とを含む組成物をいう。
固形製剤は種類、大きさや形状も特に限定されない。固形製剤として、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、トローチ剤、カプセル剤などが挙げられる。このうち、被膜形成の容易性などの観点から、錠剤が好ましい。固形製剤を錠剤とする場合のその大きさや厚さについては特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
固形製剤には、例えば、医薬品、医薬部外品、OTC医薬品、漢方薬、生薬、化粧品、健康食品、サプリメント、食品、動物用医薬品などに用いられる医薬成分、健康増進の目的等に用いられる各種機能性成分、タブレット型の錠菓食品などを含むことができる。
また、固形製剤は、上記の成分以外の他の成分を含んでいてもよい。該他の成分としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑択剤、増粘安定剤、保存剤、流動化剤、着色剤、溶解補助剤、界面活性剤、乳化剤、抗酸化剤、光沢化剤、発泡剤、防湿剤、防腐剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、着香剤、香料、芳香剤などを挙げることができ、例えばこれらのうち一種または二種以上を含むようにすることもできる。
本実施形態の被覆固形製剤において、コーティング剤はシェラックとヒドロキシプロピルセルロースとを含有する。
シェラックは、樹木、果樹などに寄生するラックカイガラムシ(Laccifer lacca)およびその近縁の数種のカイガラムシが分泌する樹脂状物質の精製物である。
シェラックは、シェロリン酸、アロイリット酸などの樹脂酸やそのエステル化物、脂肪酸、色素成分などの混合物である。シェラックの種類としては、特に制限されないが、食品、健康食品、サプリメント、医薬品、化粧品などの用途で使用されるものが好ましい。
本実施形態の被覆固形製剤に係るシェラックは、例えば、塩の形態でもよい。シェラック塩の具体例としては、例えば、カリウム塩、アンモニウム塩、アルギニンやリシンなどの塩基性アミノ酸塩などが挙げられる。
また、これらのシェラック、シェラック塩は、コーティング剤に単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
ヒドロキシプロピルセルロースは、天然に広く存在するセルロースを原料とし、水酸化ナトリウムで処理をすることにより水酸基の一部がエーテル化してヒドロキシプロピル基が結合した非イオン性の高分子である。
本実施形態の被覆固形製剤に係るヒドロキシプロピルセルロースのヒドロキシプロピル基の結合数、分子量は、特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
また、ヒドロキシプロピルセルロースは、同一のものを単独で配合してもよいし、ヒドロキシルプロピル基の結合数、分子量の異なるものを二種以上組み合わせて配合してもよい。
また、ヒドロキシプロピルセルロースの粘度も、特に限定されず、例えば20℃における2質量%水溶液において2mPa・s以上6000mPa・s以下とすることができる。なお、ヒドロキシプロピルセルロースの粘度は、第十八改正日本薬局方に記載の毛細管粘度計法により測定できる。
コーティング剤におけるシェラックの含有量は、特に限定されるものではなく、当業者が適宜設定でき、例えば1質量%以上99質量%以下である。また、コーティング剤におけるヒドロキシプロピルセルロースの含有量も特に限定されず、例えば1質量%以上99質量%以下である。
一方、本実施形態において、コーティング剤におけるシェラックに対するヒドロキシプロピルセルロースの比率は、0.05以上0.45以下が好ましく、より好ましくは0.2以上0.45以下である。シェラックに対するヒドロキシプロピルセルロースの比率を0.05以上とすることで崩壊時間をより短縮することができる。また、比率が0.50以上とすると、吸湿による被覆固形製剤表面の外観変化が大きくなるため、比率を0.45以下とすることで、被覆固形製剤表面の外観変化を抑制することができる。被覆固形製剤表面の外観変化の抑制は、例えば服用に関するコンプライアンス向上の観点などから好ましい。
コーティング剤は本発明の目的を達成できる限り他の成分を含んでいてもよく、特に限定されない。他の成分としては、例えば、可塑剤、香味物質、着色剤などを挙げることができる。
可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、グリセロール、ポリオール、クエン酸トリエチル、アセチルモノグリセリド、ブチルフタリルブチルグリコレート、酒石酸ジブチル、プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセロール、トリプロピオイン、ジアセチン、クエン酸、有機酸、多価アルコール、ラウリン酸やカプリル酸等の中鎖脂肪酸油、大豆油や菜種油等の植物油などが挙げられ、例えばこれらのうち一種または二種以上を含むようにすることもできる。
香味物質としては、例えば、スペアミント油やペパーミント油などのハーブ類、樹木の内樹皮等から得られたシナモン油、イチゴやパイナップル等の果実から得られる果実エッセンス、芳香族アルデヒド等のベンズアルデヒド、精油中に含まれるネラール、その他香味を有するエキスや精油及び合成化合物などが挙げられ、例えばこれらのうち一種または二種以上を含むようにすることもできる。
着色剤としては、例えば、ラックカイガラムシ等から得られるコチニールやカルミン等、植物より得られるクルクミンやベニバナ、アンナット等、栄養素としても利用可能なリボフラビンやシアノコバラミン等、鉱物等より得られる酸化チタンや黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、タルク、焼成シリカ、炭酸マグネシウム等、化学合成により得られる食用合成着色料である食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用赤色2号などが挙げられ、例えばこれらのうち一種または二種以上を含むようにすることもできる。
次に、本実施形態の被覆固形製剤の製造方法について説明する。
本実施形態の被覆固形製剤は、例えば、固形製剤をシェラックとヒドロキシプロピルセルロースとを含有するコーティング剤で被覆することを備える製造方法により製造することができる。また、当該被覆は、例えば上記コーティング剤の溶液または分散液を固形製剤に塗布し、乾燥することにより行うことができる。
コーティング剤を溶解または分散するための液体は特に制限されず当業者が適宜設定でき、該液体として、水や、エタノールなどのアルコール、ヘキサン、酢酸エチル、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒が挙げられる。このうち、コーティング剤を溶解しやすいため、エタノール、または、水とエタノールを混合したエタノール水溶液が好ましい。該エタノール水溶液におけるエタノールの含有量はシェラックの形態が塩である場合や塩でない場合も特に制限されないが、例えば塩でないシェラックを用いる場合にはその溶解性を高める観点から、60~99体積%とすることが好ましい。
塗布液におけるコーティング剤の含有量は、特に限定されるものではなく、当業者が適宜設定でき、例えば3質量%以上90質量%以下とすることができる。一方で、塗布液におけるシェラックとヒドロキシプロピルセルロースの合計の固形分濃度は3質量%以上15質量%以下であり、好ましくは5質量%以上13質量%以下である。シェラックとヒドロキシプロピルセルロースの合計の固形分濃度を3質量%以上とすることにより被覆固形製剤を覆うコーティング剤の崩壊を早めることができる。一方、15質量%を超える固形分濃度としても崩壊時間短縮への影響は小さく、製造適性の観点から15質量%以下とすることができる。
コーティング剤の溶液または分散液(以下、塗布液、ともいう)を塗布する手段としては、特に制限されないが、例えば、噴霧器などを用いて塗布液を固形製剤の表面に噴霧することにより塗布する手段、塗布液を固形製剤の表面にかけ流すことにより塗布する手段、塗布液に固形製剤を浸漬することにより塗布する手段、刷毛などの塗布具を用いて塗布液を固形製剤の表面に塗布する手段などが挙げられる。
このうち、崩壊時間をより短くすることができるため、塗布液を固形製剤の表面に噴霧することにより塗布することが好ましい。
続いて、塗布液を塗布した固形製剤を乾燥する。乾燥する手段は、特に制限されず、例えば、加熱により乾燥する手段や、除湿した空気により乾燥する手段、自然乾燥により乾燥する手段などが挙げられる。
なお、具体的な塗布および乾燥処理を行うにあたっては、パンコーティング法、流動コーティング法、転動コーティング法などの従来公知のコーティング手段を用いることができる。これらのコーティング方法で用いるパンコーティング装置、ドラムタイプコーティング装置などに付帯する噴霧装置は、エアースプレー型であってもよいし、エアレススプレー型などでもよい。例えば、使用できる装置として、ハイコーターやハイコーターFZ(フロイント産業(株)社製)、パウレックコーターやドリアコーター((株)パウレック社製)、レボルビングパンやコータロー・ネクスト((株)チップトン社製)などのパンコーティング装置が挙げられる。
このようにシェラックとヒドロキシプロピルセルロースの合計固形分濃度が3質量%以上15質量%以下であるコーティング剤(好ましくは、コーティング剤におけるシェラックに対するヒドロキシプロピルセルロースの比率が0.05~0.45、より好ましくは0.2~0.45)の溶液または分散液を固形製剤に塗布し、乾燥することにより、被覆固形製剤を覆うコーティング剤の崩壊を早めることができる。
その結果、例えば、崩壊試験に供したときの、シェラックを固形製剤の被覆に用いる場合の崩壊時間に対するコーティング剤の崩壊時間の百分率(コーティング剤の崩壊時間/シェラックの崩壊時間の百分率)が15%以上90%以下(より好ましい態様においては15%以上50%以下)である、被覆固形製剤を得ることも可能である。このため、固形製剤の組成にもよるが、被覆固形製剤の崩壊時間を短縮(例えば、10%から85%短縮、より好ましい態様においては50%から85%短縮)することが可能である。
なお、崩壊時間は第十八改正日本薬局方崩壊試験法に準じて崩壊試験を行うことにより得ることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<試験1>
[コーティング剤の塗布液の調製、実施例の被覆固形製剤の調製]
シェラックとヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を表1に示す比率で混合し、99%エタノール水溶液に表1に示す固形分濃度となるようにして溶解させ、コーティング剤の塗布液とした。
得られた塗布液を用いて、素錠(各種ビタミン及びピロリン酸第二鉄を含む、直径(φ)9mm、厚さ(R)7.5mm、360mg/粒の固形製剤)300gに対して、コーティング装置(ハイコーター-LABO(フロイント産業(株)社製))により吸気温度30℃~35℃、パン回転数20~25rpm、排気温度27℃~29℃で規定量の固形分としてのコーティング剤を塗布したのちに乾燥処理を行い、コントロールの被覆固形製剤を得た。なお、塗布液の塗布は表1に示す時間で行った。
また、コーティング剤におけるシェラックとヒドロキシプロピルセルロースの配合比をコントロールから変更し、それ以外はコントロールと同様の条件にて実施し、実施例1~4の被覆固形製剤を得た。




























[崩壊試験]
得られた被覆固形製剤の崩壊時間は第十八改正日本薬局方崩壊試験法に準じて崩壊試験を行うことにより測定した。なお、シェラックのみをコーティング剤とした以外は同様の方法で調製した被覆固形製剤をコントロール(CTRL)とした。また、素錠についても同様の崩壊試験を行った。
[コーティング剤の崩壊時間]
コーティング剤の崩壊時間の短縮率については、以下の手順により求めた。
1)被覆固形製剤について得られた崩壊時間から素錠の崩壊時間を減じた。
2)次に、得られた値を、素錠を被覆しているコーティング剤の重量(被膜重量)で除した(被膜量補正)。
3)1)、2)の手順に従って得られた値について、シェラックのみを固形製剤の被覆に用いた場合の同様の手順で得られた値(CTRL)に対する百分率(対CTRL)を算出した。
なお、当該試験1においては噴霧時間20分のものと30分のものについて、それぞれ崩壊時間を測定し、上記3)においては2)で得た値の平均値を用いて算出を行った。
結果を表2に示す。
表2に示す結果から理解できるように、実施例の被覆固形製剤においては、シェラックのみをコーティング剤として用いた場合(CTRL)と比較して崩壊時間を短縮することができた。
[被覆固形製剤の外観の評価]
得られた実施例1~4の被覆固形製剤について目視によりその外観の状態を評価した。実施例1の被覆固形製剤と実施例2の被覆固形製剤の写真を図1に示す。図1から理解できるとおり、コーティング剤においてシェラックに対するヒドロキシプロピルセルロースの比率が0.05以上0.45以下である実施例2の被覆固形製剤においては、実施例1の被覆固形製剤に比べて表面の外観変化(褐色化)が抑制されていることが理解できる。

Claims (4)

  1. 固形製剤と、
    シェラックとヒドロキシプロピルセルロースとを含有し、前記固形製剤を被覆するコーティング剤とを含み、
    シェラックを前記固形製剤に被覆させる場合の該シェラックの崩壊時間に対する前記コーティング剤の崩壊時間の百分率が15%以上90%以下である、被覆固形製剤。
  2. 前記コーティング剤においてシェラックに対するヒドロキシプロピルセルロースの比率が0.05以上0.45以下である、請求項1に記載の被覆固形製剤。
  3. 固形製剤をシェラックとヒドロキシプロピルセルロースとを含有するコーティング剤で被覆することを備え、
    前記被覆処理は、シェラックおよびヒドロキシプロピルセルロースの合計の固形分濃度が3質量%以上15質量%以下である前記コーティング剤の溶液または分散液を前記固形製剤に塗布し、乾燥することを含む、被覆固形製剤の製造方法。
  4. 前記コーティング剤においてシェラックに対するヒドロキシプロピルセルロースの比率が0.05以上0.45以下である、請求項3に記載の被覆固形製剤の製造方法。
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