JP2024063529A - 定着用回転体、定着装置、電子写真画像形成装置及び定着用回転体の製造方法 - Google Patents

定着用回転体、定着装置、電子写真画像形成装置及び定着用回転体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高導電で耐久性に優れた定着用回転体。【解決手段】定着用回転体であって、該定着用回転体は、基材と、該基材上の導電層と、を具備し、該導電層は、該基材の外周面の周方向に延在してなり、該導電層は、銀を含み、該導電層の周方向に沿う方向の断面において観察される該銀の結晶の平均結晶粒径が、20~200nmであり、該導電層の体積抵抗率が、1.0×10-8~8.0×10-8Ω・mであることを特徴とする定着用回転体。【選択図】図1

Description

本開示は、電子写真方式の複写機やプリンタ等の電子写真画像形成装置の定着装置に用いられる定着用回転体、定着装置、電子写真画像形成装置及び定着用回転体の製造方法に関する。
電子写真方式の複写機やプリンタ等の電子写真画像形成装置に搭載される定着装置は、加熱される定着用回転体と、それに接触する加圧ローラと、で形成されたニップ部で未定着トナー像を担持した記録材を搬送しながら加熱してトナー像を記録材に定着するものが一般的である。
定着用回転体に導電層を有し、その導電層を直接発熱させることができる電磁誘導加熱方式の定着装置が開発され実用化されている。電磁誘導加熱方式の定着装置は、ウォームアップ時間が短いという利点がある。
導電層には導電性と加熱下での繰り返し歪みに対する耐久性が求められる。
繰り返し歪みを生じる屈曲部での導電層の割れを抑制するために、特許文献1には、銅を含む導電層の平均結晶粒径が0.1μm以上3.10μm以下である定着部材が開示されている。
特許文献2では、銅又は銅合金からなる基材にアンチモンを含有する銀めっき層が形成された端子材が開示されている。この端子材では、銀めっき層は、アンチモン含有量が0.1質量%以上1.5質量%以下である。
特開2021-051136号公報 特開2020-105551号公報
近年、プリンタの高速化が進み、導電層の更なる耐久性向上が求められている。導電層で一般的に使われる銅は酸化しやすく、長期にわたる使用では導電性の低下の懸念があるため、酸化しにくく導電性も高い銀の使用が望まれている。しかしながら銀めっきで導電層を形成すると結晶粒径が大きく引張強度が弱いため耐久性が劣る。
一方、銀メッキで形成した導電層の結晶粒径を小さく維持しようとすると、特許文献2のように、アンチモンなどの添加物を添加する必要があるため、導電性が低下し、定着装置として必要な発熱量が得られない。
本開示は、高導電で耐久性に優れた定着用回転体及びその製造方法に向けたものである。また、本開示は、上記定着用回転体を用いた定着装置に向けたものである。また、本開示は、上記定着装置を用いた電子写真画像形成装置に向けたものである。
本開示の一態様によれば、定着用回転体であって、
該定着用回転体は、
基材と、該基材上の導電層と、
を具備し、
該導電層は、該基材の外周面の周方向に延在してなり、
該導電層は、銀を含み、
該導電層の周方向に沿う方向の断面において観察される該銀の結晶の平均結晶粒径が、20~200nmであり、
該導電層の体積抵抗率が、1.0×10-8~8.0×10-8Ω・mである、定着用回転体が提供される。
本開示の他の一態様によれば、上記定着用回転体と、
該定着用回転体を誘導加熱によって発熱させる誘導加熱装置と、を具備する定着装置が提供される。
本開示のさらに他の一態様によれば、電子写真画像形成装置であって、
該電子写真画像形成装置は、
トナー像を担持する像担持体と、
該トナー像を記録材に転写する転写装置と、
転写された該トナー像を該記録材に定着させる定着装置と、
を備え、
該定着装置が上記定着装置である、電子写真画像形成装置が提供される。
本開示のさらに他の一態様によれば、上記定着用回転体の製造方法であって、
(i)前記基材を得る工程、
(ii)前記基材の外周面に銀ナノ粒子インクを塗布し、焼成することで前記導電層を得る工程、
を有する、定着用回転体の製造方法が提供される。
本開示の一態様によれば、高導電で耐久性に優れた定着用回転体及びその製造方法が提供される。本開示の他の一態様によれば、上記定着用回転体を用いた定着装置が提供される。本開示の他の一態様によれば、上記定着装置を用いた電子写真画像形成装置が提供される。
(a)導電層の断面SEM観察像(図面代用写真);(b)SEM観察像から得られる二値化画像 実施形態に係る電子写真画像形成装置の概略図 実施形態に係る定着装置の断面構成を表す概略図 実施形態に係る定着装置の断面構成を表す概略図 実施形態に係る定着装置の磁性コア及び励磁コイルの模式図 実施形態に係る励磁コイルに電流を流した際に形成される磁界を表す図 実施形態に係る定着用回転体の断面構成図
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
定着用回転体は加熱下、ニップ部で繰り返し歪みを受けるが、長期にわたる耐久性が求められる。耐久性を左右する破壊モードの一つに導電層の破断が有る。これは、銀を含む導電層にかかる応力のうち回転方向に沿って引張応力が発生し、導電層を形成する銀の結
晶の界面にクラックが生じる。そこを起点に導電層が破断し、導電性が損なわれる。
そこで本発明者らが検討したところ、導電層に含まれる銀の平均結晶粒径が特定の範囲にあることにより多数の安定した結晶界面が形成されるため、結晶界面でのクラックの発生を抑制し、耐久性が向上することを見出した(図1(a)参照)。
その理由については、平均結晶粒径が特定の範囲であることにより、平均結晶粒径が当該範囲よりも大きい場合に比べ、多数の結晶界面が形成されると考えられる。それにより、引張応力が特定の結晶界面に集中することなく分散され、結晶界面でのクラックの発生が抑制されると推測される。
また、平均結晶粒径が特定の範囲よりも小さい場合に比べ、単結晶の結晶構造が安定すると考えられる。そのため、安定した結晶界面が形成され、引張応力に対して結晶界面でのクラックが生じにくくなると推測される。
具体的には、導電層の周方向に沿う方向の断面において観察される銀の結晶の平均結晶粒径が、20~200nmである。ここで、導電層に含まれる銀の結晶の平均結晶粒径は、以下のようにして求める。
まず、評価用サンプルを作製する。定着用回転体から、縦5mm、横5mm、厚みが定着用回転体の全厚みである試料を、定着用回転体の任意の箇所から6個採取する。得られた6個の試料について、定着用回転体の周方向の断面を、イオンビームを用いて研磨加工する。このとき、イオンビームの研磨加工によって導電層の周方向の断面が露出するよう加工位置を調整する。
イオンビームによる断面の研磨加工には、クロスセクションポリッシャ(商品名:JSM-F100、日本電子社製SM09010)を用いる。イオンビームによる断面の研磨加工では、試料からのフィラーの脱落や研磨剤の混入を防ぐことができ、また、研磨痕の少ない断面を形成することができる。
続いて、導電層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:JSM-F100、日本電子社製)で観察し、断面画像を取得する(図1(a))。観察条件は20000倍の反射電子像モードで、反射電子像取得条件は、加速電圧:3.0kV、ワーキングディスタンス:3mmである。
次に、得られた画像を後述する市販の画像ソフトにより、結晶粒子部分を白く、結晶粒子以外の部分を黒くなるように、二値化処理を行う。二値化の手法としては、大津法を用いることができる。
そして、断面画像図1(a)の結晶粒子間の明暗差又は結晶方位の違いによるコントラスト差から、結晶粒子を区切る線を、得られた二値化画像に加え、各結晶粒子が区切られた二値化画像を取得する(図1(b))。
具体的には、まず、MediaCybernetics社製画像解析ソフトImageProPlusで反射電子像を読み込み、画像の輝度分布を求める。次いで、求めた輝度分布の輝度範囲を設定することで結晶粒子と結晶粒子以外の部分を判別する二値化ができる。具体的な二値化の手順は下記の通りである。
ImageProPlusで反射電子像を読み込み、結晶粒子と結晶粒子以外、結晶粒子どうしの界面が明確になるよう、「処理」タブ内の2Dフィルタから、例えばバンドパスフィルタやハイガウスフィルタ等の画像処理を施す。その後、「カウント/サイズタブ」内で対象抽出手法の中から「手動」を選択する。その後、2値化ツールウィンドウ内に読み込んだ画像の輝度分布が表示されるので、画像内の結晶粒子に対応した輝度範囲を指定する。これにより結晶粒子とそれ以外とで二値化することができた。
その後、分割ツールを用いて各結晶粒子を区切る界面を設定することで図1(b)のような銀の各結晶粒子が区切られた二値化画像が取得できる。具体的な界面の設定手順は下記の通りである。ImageProPlusで二値化後の画像に対し「カウント/サイズタブ」内の手動分割ツールを選択し、結晶界面に沿って結晶粒子を分割することができる。
なお、図1(b)で黒く塗りつぶされた部分は、導電層に含まれる間隙や、導電層以外の層の材料、例えば基材であるポリイミドやポリアミドイミドである。
このようにして得られた導電層断面の二値化画像から、平均結晶粒径を算出する方法について説明する。これらの画像にはデジタル画像処理技術を適用することから、画像は全て格子状に画素の並んだ一般的なデジタル画像フォーマットであることが前提となる。また、二値化画像は輝度情報のみのグレースケール画像であり、その後これらの画像に対して画像処理を実施して得られる画像は、断りのない限り全て同一フォーマットのグレースケール画像である。
まず、各結晶粒子の円相当径を算出する。なお、各結晶粒子の円相当径とは、当該結晶粒子の面積と同じ面積を有する円の直径をいう。具体的には、各結晶粒子ごとに構成する画素数を算出し、この画素数に1画素の面積を乗ずることで実際の結晶粒子の面積を算出する。
本開示で使用したSEM画像では、1画素の1辺の長さが0.15μmに相当しているため、各結晶粒子が構成する画素数に0.15×0.15μmを乗じる。さらに、この面積を有する円の直径を求めることで円相当径を算出する。
このようにして得られた各結晶粒子の円相当径の総和を、結晶粒子の総数で除すことで平均結晶粒径を算出する。
以上の操作を、定着用回転体の任意の箇所から採取した6個の試料について繰り返し行い、それぞれの試料の平均結晶粒径を算出する。さらに、これら6つの平均結晶粒径の算術平均値を算出し、導電層の銀の結晶の平均結晶粒径を算出する。
導電層における銀の結晶粒径の変動係数が、0.60未満であることが好ましい。該変動係数は、より好ましくは0.55以下であり、さらに好ましくは0.51以下である。上記範囲であると、より安定した結晶界面が形成され、結晶界面でのクラックがより発生しにくくなる。下限は小さいほど好ましいため、特に制限されないが、好ましくは0.00以上、0.10以上である。該変動係数は、例えば、0.00以上0.60未満、0.00~0.55,0.10~0.55、0.10~0.51が挙げられる。
銀の結晶粒径の変動係数は、上記平均結晶粒径の測定で得られた各結晶粒子の円相当径の標準偏差及び算術平均値から算出(標準偏差/算術平均値)する。
導電層を有する定着用回転体と、それを用いて作られる定着装置及び電子写真画像形成装置について、以下に具体的な構成に基づき詳細に説明する。
ただし、この形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、開示が適用される部材の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この開示の範囲を以下の形態に限定する趣旨のものではない。また、以下の説明では、同一の機能を有する構成には図面中に同一の番号を付し、その説明を省略する場合がある。
(電子写真画像形成装置)
電子写真画像形成装置(以下、単に「画像形成装置」ともいう)は、トナー像を担持する像担持体と、トナー像を記録材に転写する転写装置と、転写されたトナー像を記録材に定着させる定着装置と、を備える。
図2は、実施形態に係る定着装置(像加熱装置)15を搭載した画像形成装置の例として、カラーレーザービームプリンタ(以下、プリンタ)1の全体構成を示す横断面図である。プリンタ1の下部には、カセット2が引き出し可能に収納されている。カセット2は、記録材としてのシートPを積載収容する。カセット2のシートPは分離ローラ3で1枚毎に分離された状態で、レジストレーションローラ4に給送される。
なお、記録材であるシートPとしては、普通紙及び厚紙等の紙、プラスチックフィルム、布、コート紙のような表面処理が施されたシート材、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート材等、サイズ及び材質の異なる多様なシートを使用可能である。
プリンタ1は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応する画像形成ステーション5Y,5M,5C,5Kを、横一列に並設してある画像形成手段としての画像形成部5を備えている。画像形成ステーション5Yには、トナー像を担持する像担持体(電子写真感光体)である感光ドラム6Y、その感光ドラム6Yの表面を均一に帯電する帯電手段としての帯電ローラ7Yが設けられている。
さらに、画像形成部5の下部にはスキャナユニット8が配設されている。スキャナユニット8は、画像情報に基づいて不図示のコンピュータ等の外部機器から入力され、画像処理手段によって生成されたデジタル画像信号に対応してオン/オフ変調されたレーザービームを照射して感光ドラム6Y上に静電潜像を形成する。さらに、画像形成ステーション5Yは、感光ドラム6Yの静電潜像にトナーを付着させてトナー像(トナー画像)として現像する現像手段としての現像ローラ9Yと、感光ドラム6Y上のトナー像を中間転写ベルト10に転写する一次転写部11Yとを備える。
一次転写部11Yでトナー像が転写された中間転写ベルト10のトナー像には、他の画像形成ステーション5M,5C,5Kで同様のプロセスで形成されるトナー像が多重転写される。これによって中間転写ベルト10上にフルカラーのトナー像が形成される。このフルカラーのトナー像は、転写手段としての二次転写部12でシートPに転写される。一次転写部11Y及び二次転写部12は、転写されたトナー像を記録材に定着させる定着装置の例である。
その後、シートP上(記録材上)に転写されたトナー像は、定着装置15を通過し、固着画像として定着される。さらにシートPは、排出搬送部13を通り、積載部14に排出・積載される。
なお、上記画像形成部5は画像形成手段の一例である。定着装置として、一次転写部11Y及び二次転写部12を例示したが、定着装置は、例えば像担持体からシートPにトナー像を直接転写する直接転写方式の定着装置であってもよい。また、画像形成装置は、1色のみのトナーを用いるモノクロ方式の構成を用いてもよい。
(定着装置)
本実施形態の定着装置15は定着用回転体を電磁誘導によって発熱させる誘導加熱方式の定着装置(像加熱装置)である。図3は定着装置15の断面構成を表し、図4は定着装置15の斜視図である。なお、定着装置15の筐体等は図3及び図4において省略されている。以下の説明において、定着装置15を構成する部材に関し、長手方向X1とは、記録材の搬送方向及び記録材の厚さ方向に直交する方向である。
定着装置15は、定着用回転体20、フィルムガイド25、加圧ローラ21、加圧用ステイ22、磁性コア26、励磁コイル27(図5)、サーミスタ40及び電流センサ30を備えている。定着装置15は、画像が形成された記録材を加熱し画像を記録材に定着する。定着用回転体20は本実施形態の回転体であり、加圧ローラ21は本実施形態の対向部材である。また、励磁コイル27は本実施形態の磁場発生手段として機能する。定着用
回転体の詳細については後述する。
定着用回転体20は、基材上に発熱層となる導電層20bを有する。導電層20bは、例えば誘導電流によって発熱しうる。導電層(発熱層)20bは、各々が周方向で電気的に接続されてリング状に形成され、かつ、長手方向X1(定着用回転体20の回転軸方向)で電気的に分割されている発熱リング201(図4)が、長手方向に並んだ発熱パターンとして形成されている。
つまり、導電層20bは、各々が定着用回転体20の周方向に接続された複数の環状領域であって、定着用回転体20の回転軸方向に関して互いに導通していない複数の環状領域に分かれている。発熱パターンの構成要素である各発熱リング201は、長手方向X1に関して均一な幅で形成されている。
定着用回転体20に対向する対向体(加圧部材)としての加圧ローラ21は、芯金21aと、芯金周りに同心一体にローラ状に成形被覆させた弾性層21bとを備え、表層に離型層21cが設けられている。弾性層21bは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等で耐熱性がよい材質が好ましい。そして、芯金21aの長手方向における両端部は、装置の不図示のシャーシ側板金間に導電性軸受けを介して回転自由に保持させて配設してある。
また、図4に示すように、加圧用ステイ22の長手方向の両端部と装置シャーシ側のバネ受け部材23a,23bとの間に、それぞれ加圧バネ24a,24bを縮設することで、加圧用ステイ22に押し下げ力を作用させている。
なお、本実施形態の定着装置15では、総圧約100N~300N(約10kgf~約30kgf)の押圧力を与えている。これにより、耐熱性樹脂PPS等で構成されたフィルムガイド25の下面と加圧ローラ21の上面が、円筒形回転体である定着用回転体20を挟んで圧接して所定幅の定着ニップ部Nが形成される。
フィルムガイド25は、加圧ローラ21と共に、定着用回転体20を介してトナー画像を担持した記録材を挟持搬送するニップ部を形成するニップ部形成部材として機能する。ここで、PPSはポリフェニレンサルファイドである。
加圧ローラ21は、不図示の駆動手段により時計方向に回転駆動し、定着用回転体20の外面との摩擦力で定着用回転体20に反時計方向の回転力が作用する。これにより、定着用回転体20はフィルムガイド25に摺動しながら回転する。
図5は、図3の磁性コア26及び励磁コイル27の模式図であり、定着用回転体20との位置関係を説明するために定着用回転体20を破線で示している。定着用回転体20を電磁誘導によって発熱させる誘導加熱方式の定着装置における誘導加熱装置は、磁性コア26及び励磁コイル27を備えてもよい。
励磁コイル27は、定着用回転体20の内部に配置されている。励磁コイル27は、らせん軸が定着用回転体20の回転軸に沿う方向と略平行であるらせん形状部を有し、導電層20bを電磁誘導発熱させる交番磁界を形成する。略平行とは、2つの軸が完全に平行な状態だけではなく、導電層を電磁誘導発熱可能な程度に若干のズレを許容することを意味する。
磁性コア26は、らせん形状部の中に配置され、定着用回転体20の回転軸方向に延びて定着用回転体20の外側でループを形成しない。磁性コア26は、交番磁界の磁力線を誘導する。
図5では、磁性コア26は筒状の回転体である定着用回転体20の中空部に挿通されている。また、励磁コイル27は、磁性コア26の外周にらせん状に巻き付けられて定着用回転体20の長手方向に延びている。磁性コア26は、円柱形状をしており、不図示の固
定手段で長手方向に見た断面で定着用回転体20のほぼ中央に位置するように固定されている(図3参照)。
励磁コイル27の内部に設けられる磁性コア26は、励磁コイル27にて生成された交番磁場の磁力線(磁束)を定着用回転体20の導電層20bより内側に誘導し、磁力線の通路(磁路)を形成する役割がある。磁性コア26の材質は、強磁性体である。強磁性体である磁性コア26の材質は、ヒステリシス損が小さく比透磁率の高い材料、例えば、焼成フェライト、フェライト樹脂等からなる群から選択される少なくとも一の高透磁率の軟磁性体が好ましい。
好ましくは、磁性コア26の回転軸方向の一方の長手端部から出た磁束の70%以上は、導電層20bの外側を通過して磁性コア26の他方の長手端部に戻る形状となっている。
磁性コア26の断面形状は、定着用回転体20の中空部に収納可能な形状であればよく、円形状である必要はないものの、断面積ができるだけ大きくできる形状が好ましい。本実施形態では磁性コア26の直径は10mmとし、長手方向の長さ280mmとした。
励磁コイル27は、耐熱性のポリアミドイミドで被覆した直径1~2mmの銅線材(単一導線)を、磁性コア26に20巻でらせん状に巻いて形成した。励磁コイル27は、磁性コア26に定着用回転体20の回転軸方向に交差する方向に捲回されている。このため、この励磁コイル27に高周波の交番電流を流すと、回転軸方向に平行な方向に交番磁場が発生し、定着用回転体20の導電層20bの各発熱リング201に、後述する原理で誘導電流(周回電流)が流れて発熱する。
図3及び図4に示すように、定着用回転体20の温度を検知する温度検知手段としてのサーミスタ40は、バネ板40a及びサーミスタ素子40bによって構成される。バネ板40aは、定着用回転体20の内面に向かって延びているバネ弾性を有する支持部材である。温度検知素子としてのサーミスタ素子40bは、バネ板40aの先端部に設置されている。サーミスタ素子40bの表面は、電気絶縁性を確保するために50μm厚のポリイミドテープで覆われている。
サーミスタ40は、長手方向における定着用回転体20の略中央部の位置に、フィルムガイド25に固定して設置される。そして、サーミスタ素子40bが、定着用回転体20の内面にバネ板40aのバネ弾性により押圧されて接触状態に保持される。なお、サーミスタ40は、定着用回転体20の外周側に配置してもよい。
導電層20bの周方向の導通を監視する導通監視装置を構成する電流センサ30は、定着装置15の長手方向に関してサーミスタ40と同一位置に配置される。すなわち、電流センサ30で監視するのは、定着用回転体20の発熱パターンを構成する複数の発熱リング201の内、サーミスタ素子40bが接触している位置にある発熱リング201の導通状態である。
(加熱原理)
誘導加熱方式の定着装置15における定着用回転体20の加熱原理を説明する。図6は、励磁コイル27に矢印I0の向きに電流が増加している瞬間を示している概念図である。励磁コイル27は、定着用回転体20に挿通され、交番電流を流すことで定着用回転体20の回転軸方向に交番磁場を形成し、定着用回転体20の周方向に誘導電流Iを生じさせる磁場発生手段として機能する。
また、磁性コア26は、励磁コイル27にて生成された磁力線B(図中点線)を誘導し、磁路を形成する部材として機能する。一般的な誘導加熱方式が、磁力線が導電層中を貫
通して渦電流を発生させるのに対し、本実施形態では磁力線Bが定着用回転体中の外側でループする構成になっている。すなわち、磁性コア26の一方の長手端部から出て導電層20bの外側を通過し、磁性コア26の他方の長手端部に戻る磁力線によって誘導された誘導電流によって導電層20bは主に発熱される。こうすることで導電層の厚みが、例えば4μm以下と薄くても効率的に発熱することができる。
励磁コイル27により交番磁場が形成されると、定着用回転体20の導電層20bの各発熱リング201には、ファラデーの法則に従う誘導電流Iが流れる。ファラデーの法則とは、「回路の中の磁界を変化させると、その回路の中に電流を流そうとする誘導起電力が生じ、誘導起電力は回路を垂直に貫く磁束の時間変化に比例する」というものである。
図6に示す磁性コア26の長手方向における中央部に位置する発熱リング201cについて、励磁コイル27に高周波の交番電流を流した場合に発熱リング201cに流れる誘導電流Iを考える。高周波の交番電流を流した場合、磁性コア26内部には交番磁場が形成される。その際に発熱リング201cに作用する誘導起電力は、次の数式1に従い、発熱リング201cの内側を垂直に貫く磁束の時間変化に比例する。
Figure 2024063529000002
V:誘導起電力
N:コイル巻き数
ΔΦ/Δt:微小時間Δtでの回路(発熱リング201c)を垂直に貫く磁束の変化
この誘導起電力Vにより、発熱リング201cを周回する周回電流である誘導電流Iが流れて、誘導電流Iに伴って生じるジュール熱によって発熱リング201cが発熱する。しかし、発熱リング201cが断線している場合、誘導電流Iは流れず、その発熱リング201cは発熱しない。
(1)定着用回転体の構成概略
本実施形態の定着用回転体の詳細について図面を用いて説明する。
本開示の一態様にかかる定着用回転体は、例えば、エンドレスベルト形状などの回転可能な部材とすることができる。
図7は、定着用回転体の周方向の断面図である。図7に示すように、定着用回転体は、基材20aと、基材20aの外表面上の導電層20bと、該導電層の外表面上の樹脂層20eを有する。樹脂層20e上に必要に応じて弾性層20cや、表層(離型層)20dを有することもでき、また、弾性層20cと表層20dとの間に、接着層20fを有することもできる。
(2)基材
基材20aの材質は、特に限定されるものではない。基材20aは樹脂(好ましくは耐熱性樹脂)を含むことが好ましい。ベルトを電磁誘導方式の定着装置に用いる場合、基材20aは導電層が発熱した状態で物性の変化が少なく、高強度を維持する層であることが好ましい。このため、基材20aは、主成分として耐熱性樹脂を含むことが好ましく、耐熱性樹脂から構成されることが好ましい。
基材20aに含まれる樹脂(好ましくは基材を構成する樹脂)は、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、変性ポリイミド及び変性ポリアミドイミドからなる群から選択される少なくとも一を含むことが好ましい。より好ましくは、ポリイミド及びポリ
アミドイミドからなる群から選択される少なくとも一である。これらの中でも特にポリイミドが好ましい。なお、本開示において、主成分とは、対象物(ここでは基材)を構成する成分のうち、最も多く含まれる成分を意味する。
なお、変性ポリイミド、及び変性ポリアミドイミドにおける変性とは、シロキサン変性、カーボネート変性、フッ素変性、ウレタン変性、トリアジン変性、フェノール変性などが挙げられる。
基材20a中には、断熱性や強度向上のために充填剤が配合されていてもよい。
基体の形状は、定着用回転体の形状に応じて適宜選択することができ、例えば、エンドレスベルト形状、中空円筒状、フィルム状等、様々な形状とすることができる。
定着ベルトの場合、基材20aの厚さは、例えば、10~100μmとすることが好ましく、20~60μmとすることがより好ましい。基材20aの厚みを、上記の範囲内とすることで、強度及び可撓性を高いレベルで両立させ得る。
また、基材20aの導電層20bに対向する側とは反対側の表面上には、例えば、定着ベルトの内周面が他部材と接する場合における定着ベルトの内周面の摩耗を防ぐための層や、他部材との摺動性を向上させるための層を設けることもできる。
なお、基材20aの外周面は、導電層20bとの密着性や濡れ性改善のために、ブラストなどの粗面化処理や、紫外線やプラズマ、化学的エッチングなどの改質処理が施されていてもよい。
(3)導電層
導電層20bは通電時に発熱する層である。励磁コイルを用いた誘導加熱による発熱原理では、定着用回転体の近傍に配置された励磁コイルに交番電流が供給されると、磁界が誘起され、その磁場により定着用回転体の導電層20bに電流が発生し、ジュール熱により発熱する。
上述した通り、導電層20bの周方向に沿う方向の断面において観察される銀の結晶の平均結晶粒径は、20~200nmである。なぜなら、平均結晶粒径が上記範囲にあると、ニップ部Nにおいて定着用回転体20が加圧・変形され、繰り返し応力を受けても、導電層20bに多数の安定した結晶界面が形成されることで、結晶界面でのクラックの発生が抑制されるからである。これにより、繰り返し屈曲が、定着装置の耐久寿命まで加えられ続けても、定着用回転体20の導電層20bは、疲労破壊を起こさない。
該平均結晶粒径は、好ましくは20~150nmであり、より好ましくは20~120nmであり、さらに好ましくは20~100nmである。該平均結晶粒径は、焼成温度及び焼成時間により大きくすることができる。
導電層20bの体積抵抗率は、1.0×10-8~8.0×10-8Ω・mである。体積抵抗率が上記範囲にあると、安定したジュール熱が発生するためである。上記範囲より小さい体積抵抗率では、導電層20bに発生する電流量は大きくなるものの、抵抗が小さく、発生するジュール熱が小さくなり、トナーを固着させるために十分な発熱量が得られない。一方、体積抵抗率が上記範囲より大きい場合、導電層20bに発生する電流量が小さく、発生するジュール熱が小さくなり、トナーを固着させるために十分な発熱量が得られない。
導電層20bの体積抵抗率は、2.0×10-8Ω・m以上が好ましく、2.5×10-8Ω・m以上がより好ましい。また、7.0×10-8Ω・m以下が好ましく、6.0×10-8Ω・m以下がより好ましい。例えば、好ましくは、2.0×10-8~7.0
×10-8Ω・m、2.0×10-8~6.0×10-8Ω・mの範囲が挙げられる。
導電層20bの体積抵抗率は、例えば、導電層の材質、導電層の製造方法、により制御できる。具体的には、導電層の材質に、例えば、導電層を銀ナノインクを用いて形成する場合、基材の表面上に形成した銀ナノインクの膜の焼成温度が高いほど、体積抵抗率の低い導電層を得ることができる。これは、銀ナノインクに含まれる分散剤のような有機材料が高温での焼成過程において揮発し、銀以外の成分の含有量が少ない導電層とすることができるためである。
定着用回転体における導電層の体積抵抗率は、4探針法による抵抗測定(JIS KJ7194)で測定することができる。
本開示においては低抵抗 抵抗率計(ロレスタ―GX MCP-T700、日東精工アナリテック製)を用いて体積抵抗率を測定した。
導電層20bにおける銀の含有割合(銀純度)は、99.0質量%以上が好ましい。より好ましくは99.2質量%以上、さらに好ましくは99.3質量%以上である。銀の純度が99.0質量%以上であると、導電層20bに電流を発生させることに対する阻害要因となる不純物の割合が少なく、導電層としての抵抗が好適になり、発生するジュール熱が大きくなるためである。
銀の含有割合は高いほど好ましく、上限は特に制限されないが、例えば、好ましくは100.0質量%以下、99.9質量%以下、99.8質量%以下が挙げられる。
定着用回転体における銀の含有割合は、以下の方法で測定することができる。
定着用回転体から、縦5mm、横5mm、厚みが定着用回転体の全厚みである試料を、定着用回転体の任意の箇所から6個採取する。得られた6個の試料について、定着用回転体の周方向の断面を、クロスセクションポリッシャ(商品名:SM09010、日本電子社製)で露出させる。
続いて、露出させた導電層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:JSM-F100、日本電子社製)で観察し、観察画像内の銀結晶粒子のエネルギー分散型X線分光法(EDS)分析を行う。観察条件は20000倍、二次電子像取得モード、EDS分析条件は、加速電圧5.0kV、ワーキングディスタンス:10mmである。EDS分析を行う空間範囲はエリア指定を行い、観察画像内の銀結晶粒子だけを選択するよう調整する。
1個の試料について1画像を取得し、1画像内で3か所のEDS分析を行う。試料6個で計18か所での銀含有割合を分析し、算術平均値を算出することで定着回転体における銀の含有割合を測定することができる。
導電層20bの最大厚みは4μm以下が好ましい。なぜなら、定着用回転体に適度な可撓性を持たせ、かつ熱容量を小さくしたいためである。さらにもう一つのメリットが耐屈曲性能の向上である。図3に示すように定着用回転体20は、フィルムガイド25と、加圧ローラ21とに押圧された状態で回転駆動される。その一回転毎に定着用回転体20はニップ部Nにおいて加圧・変形され、応力を受けることとなる。
この繰り返し屈曲が、定着装置の耐久寿命まで加えられ続けても、定着用回転体20の導電層20bは、疲労破壊を起こさないように設計することが好ましい。導電層20bの厚みを薄くすると、導電層20bの疲労破壊に対する耐性は大幅に向上する。なぜなら、導電層20bを、フィルムガイド25の曲面の形状に沿わせて押圧し変形させた場合、導電層20bに働く内部応力は、導電層20bが薄い程小さくなるからである。
以上の理由により、熱容量の低下と疲労破壊に対する耐性をより向上させる観点から、導電層20bの最大厚みを4μm以下とすることが好ましい。導電層20bの最大厚みは
、より好ましくは3μm以下である。下限は特に制限されないが、好ましくは1μm以上である。導電層20bの最大厚みは、例えば、1~4μm、1~3μmが挙げられる。
定着用回転体における導電層の最大厚みは、以下の方法で測定することができる。
定着用回転体から、縦5mm、横5mm、厚みが定着用回転体の全厚みである試料を、定着用回転体の任意の箇所から6個採取する。得られた6個の試料について、定着用回転体の周方向の断面を、クロスセクションポリッシャ(商品名:SM09010、日本電子社製)で露出させる。
続いて、露出させた導電層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:JSM-F100、日本電子社製)で加速電圧3kV、ワーキングディスタンス2.9mm、倍率10000倍で観察し、幅13μm、高さ10μmの画像を得る。得られた画像中の導電層について、もっとも基材側寄りにある箇所と、その反対側の最も樹脂層側にある箇所で平行線を引いて、その距離をその画像中の厚みとし、6個の試料の算術平均値を最大厚みと定義した。なお平行線は観察領域中の基材の導電層とは反対側の面を基準として引くものとした。
導電層20bは、基材20aの外周面の周方向に延在してなる。導電層20bは、通電時に発熱可能であればよく、所定のパターンで構成されていてもよい。特に図4に示すように定着用回転体の周方向にリング形状を成した導電層20bが回転軸方向に、電気的に分割した状態で複数形成されている構成が安全性の観点で好ましい。このような構成を取ることで導電層20bにクラックが生じた場合の局所的な温度上昇を抑えることができる。リング形状は、回転体軸方向の幅が略一定であることが好ましい。
しかしながら、このようなパターン構成を取ると、導電層20bの表面積が増え、酸化による劣化のリスクが増大するので銀を使用する。また、屈曲に対する耐久性という観点でもパターン形成することで均一で一様な膜と比べると負荷がかかりやすくなるため、上記特定の平均結晶粒径とすることで耐久性を向上させる。
導電層20bのリングの幅は、製造性、発熱性の観点から100μm以上であることが好ましく、200μm以上がより好ましい。発熱ムラや安全性の観点から、500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましい。リングの幅は、例えば、100~500μm、200~400μmが挙げられる。
導電層20bのリングとリングの間隔は、製造性、発熱性の観点から50μm以上であることが好ましく、100μm以上がより好ましい。発熱ムラの観点から、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。リングとリングの間隔は、例えば、50~300μm、100~300μmが挙げられる。
(4)樹脂層
定着用回転体は、導電層20bの基材20aに対向する側とは反対側の面上の樹脂層20eを備えてもよい。樹脂層20eは導電層20bを保護するものであり、導電層20bの酸化防止や、絶縁確保、強度向上の機能を有する。
樹脂層20eを構成する材料は特に制限されない。樹脂層20eの材質は少なくとも樹脂を含む層であることが好ましい。ベルトを電磁誘導方式の定着装置に用いる場合、基材20aと同様に、樹脂層20eは導電層が発熱した状態で物性の変化が少なく、高強度を維持する層であることが好ましい。
このため、樹脂層20eは、耐熱性樹脂を含むことが好ましく、主成分として耐熱性樹脂を含むことがより好ましく、耐熱性樹脂から構成されることがさらに好ましい。耐熱性樹脂は、例えば200℃未満(好ましくは250℃未満)の温度で融解又は分解しない樹脂である。
樹脂層20eを構成する樹脂は、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、変性ポリイミド及び変性ポリアミドイミドからなる群から選択される少なくとも一を含むことが好ましい。より好ましくは、ポリイミド及びポリアミドイミドからなる群から選択される少なくとも一である。変性に関しては基材20aで説明したものと同様である。
これらの中でも特にポリイミドが好ましい。なお、主成分とは、対象物(ここでは樹脂層)を構成する成分のうち、最も多く含まれる成分を意味する。基材20aや樹脂層20eの形成方法は特に制限されない。例えば、イミド系材料をワニスという液状で、公知の方法を用いて、塗工し、焼成することで膜化できる。
樹脂層20eは、伝熱性の観点から熱伝導性フィラーを含有してもよい。伝熱性を向上させることで、導電層20bで発生した熱を定着用回転体の外表面に効率よく伝達することができる。
樹脂層20eの厚みは10~100μmが好ましく、20~60μmがより好ましい。導電層20bの耐屈曲性の観点から、樹脂層20eの厚みは基材20aの厚みと同じとすることが好ましい。例えば、基材と樹脂層の厚みの差の基材の厚みに対する割合が、好ましくは20%以下、10%以下、5%以下である。厚みの差を小さくすることで、ニップ部で繰り返し屈曲を受けた場合、導電層20bにかかる応力に偏りがない状態とすることで、導電層20bのクラック発生を抑制することができるためである。
定着用回転体において、基材20a及び樹脂層20eの材質の分析は、以下の手順で行うことができる。
定着用回転体から10mm角のサンプルを切り出し、弾性層や表層がある場合は剃刀や溶剤等で除去する。得られたサンプルについて赤外分光分析装置(FT-IR)(例えば、商品名:Frontier FT IR,PerkinElmer社製)を用いた全反射(ATR)測定を行うことにより材質の確認が可能である。
(5)弾性層
定着用回転体は、樹脂層20eの外表面に弾性層20cを有してもよい。弾性層20cは、定着装置において定着ニップを確保するために定着用回転体に柔軟性を付与するための層である。なお、定着用回転体を、紙上のトナーと接する加熱部材として用いる場合には、弾性層20cは、加熱部材の表面が、紙の凹凸に追従し得るような柔軟性を付与するための層としても機能する。
弾性層20cは、例えば、マトリックスとしてのゴムと、該ゴム中に分散された粒子とを含む。より具体的には、弾性層20cは、ゴムと、熱伝導性フィラーとを含むことが好ましく、ゴムの原料(ベースポリマー、架橋剤等)と、熱伝導性フィラーとを少なくとも含む組成物を硬化させた硬化物から構成されることが好ましい。
上述した弾性層20cの機能を発現させる観点から、弾性層20cは、熱伝導性粒子を含むシリコーンゴム硬化物から構成されることが好ましく、付加硬化型のシリコーンゴム組成物の硬化物から構成されることがより好ましい。
シリコーンゴム組成物は、例えば、熱伝導性粒子、ベースポリマー、架橋剤及び触媒、並びに、必要に応じて、添加剤を含むことができる。シリコーンゴム組成物は液状のものが多いため、熱伝導性フィラーが分散しやすく、熱伝導性フィラーの種類や添加量に応じて、その架橋度を調整することで、作製する弾性層20cの弾性を調整しやすい。
マトリックスは、弾性層20cにおいて弾性を発現する機能を担う。マトリックスは、上記した弾性層20cの機能を発現させる観点から、シリコーンゴムを含むことが好ましい。シリコーンゴムは、非通紙部領域で240℃程度の高温になる環境においても柔軟性
を保持できる高い耐熱性を有しており、好ましい。シリコーンゴムとしては、例えば、後述する付加硬化型の液状シリコーンゴム組成物の硬化物を用いることができる。弾性層20cは液状シリコーンゴム組成物を公知の方法で塗布・加熱することにより、形成しうる。
液状シリコーンゴム組成物は、通常、下記成分(a)~(d)を含む:
成分(a):不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン;
成分(b):ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサン;
成分(c):触媒;
成分(d):熱伝導性フィラー
以下、各成分について説明する。
成分(a)
不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンは、ビニル基などの不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンであり、例えば、下記式(1)及び(2)に示すものが挙げられる。
Figure 2024063529000003
式(1)中、mは0以上の整数を示し、nは3以上の整数を示す。また、構造式(1)中、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基を表し、ただし、Rのうちの少なくとも1つはメチル基を表し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を表す。
Figure 2024063529000004
式(2)中、nは正の整数を示し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基を表し、ただし、Rのうちの少なくとも1つはメチル基を表し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を表す。
式(1)及び(2)において、R及びRが表すことのできる、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基としては、例えば、以下の基を挙げることができる。
・非置換炭化水素基
アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)。
アリール基(例えば、フェニル基)。
・置換炭化水素基
置換アルキル基(例えば、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-シアノプロピル基、3-メトキシプロピル基)。
式(1)及び(2)で示されるオルガノポリシロキサンは、鎖構造を形成するケイ素原子に、直接結合したメチル基を少なくとも1つ有する。しかしながら、合成や取扱いが容易であることから、R及びRそれぞれの50%以上がメチル基であることが好ましく、すべてのR及びRがメチル基であることがより好ましい。
また、式(1)及び(2)中の、R及びRが表すことのできる不飽和脂肪族基としては、例えば、以下の基を挙げることができる。すなわち、不飽和脂肪族基としては、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基等を挙げることができる。これらの基の中でも、合成や取扱いが容易かつ安価で、架橋反応も容易に行われることから、R及びRはいずれもビニル基であることが好ましい。
成分(a)としては、成形性の観点から、粘度は1000mm/s以上50000mm/s以下であることが好ましい。1000mm/sより低いと弾性層20cに必要な硬度に調整するのが難しくなり、50000mm/sより高いと組成物の粘度が高くなりすぎて塗工が難しくなる。粘度(動粘度)は、JIS Z 8803:2011に基づき、毛管粘度計や回転粘度計等を用いて測定することができる。
成分(a)の配合量は、弾性層20cの形成に用いる液状シリコーンゴム組成物を基準として、耐久性の観点から55体積%以上、伝熱性の観点から65体積%以下とすることが好ましい。
成分(b)
ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサンは、触媒の作用により、成分(a)の不飽和脂肪族基と反応し、硬化シリコーンゴムを形成する架橋剤として機能する。
成分(b)としては、Si-H結合を有するオルガノポリシロキサンであれば、いずれのものも用いることができる。特に、成分(a)の不飽和脂肪族基との反応性の観点から、1分子中における、ケイ素原子に結合した水素原子の数が平均3個以上のものが好適に用いられる。
成分(b)の具体例としては、例えば、下記式(3)に示す直鎖状のオルガノポリシロキサン及び下記式(4)に示す環状オルガノポリシロキサンを挙げることができる。
Figure 2024063529000005
式(3)中、mは0以上の整数を示し、nは3以上の整数を示し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基を表す。
Figure 2024063529000006
式(4)中、mは0以上の整数を示し、nは3以上の整数を示し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基を表す。
式(3)及び(4)中のR及びRが表すことのできる不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基としては、例えば、上述した構造式(1)中のRと同様の基を挙げることができる。これらの中でも、合成や取扱いが容易で、優れた耐熱性が容易に得られることから、R及びRそれぞれの50%以上がメチル基であることが好ましく、すべてのR及びRがメチル基であることがより好ましい。
成分(c)
シリコーンゴムの形成に用いる触媒としては、例えば、硬化反応を促進するためのヒドロシリル化触媒を挙げることができる。ヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金化合物やロジウム化合物などの公知の物質を用いることができる。触媒の配合量は適宜設定することができ、特に限定されない。
成分(d)
熱伝導性フィラーとしては、金属、金属化合物、炭素繊維を挙げることができる。高熱伝導性フィラーが更に好ましく、その具体例としては、以下の材料が挙げられる。
金属ケイ素(Si)、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(Si)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、シリカ(SiO)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、気相成長法炭素繊維、PAN系(ポリアクリロニトリル)炭素繊維、ピッチ系炭素繊維。
これらのフィラーは、単独であるいは2種類以上を混合して用いることができる。
フィラーの平均粒径は、取扱い上、および分散性の観点から1μm以上50μm以下が好ましい。また、フィラーの形状としては、球状、粉砕状、針状、板状、ウィスカ状が用いられる。特に、分散性の観点から、フィラーは、球状のものが好ましい。さらに、補強性フィラー、耐熱性フィラー及び着色フィラーの少なくも1種を添加してもよい。
(6)接着層
定着用回転体は、弾性層20cの外表面に、後述する表層20dを接着するための接着層20fを有してもよい。接着層20fは、弾性層20cと、表層20dとを接着させるための層である。接着層20fに用いる接着剤は、既知のものから適宜選択して使用することができ、特に限定されない。しかしながら、扱いやすさの観点から、自己接着成分が配合された付加硬化型シリコーンゴムを用いることが好ましい。
この接着剤は、例えば、自己接着成分と、ビニル基に代表される不飽和脂肪族基を分子鎖中に複数有するオルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンと、架橋触媒としての白金化合物とを含有することができる。弾性層20c表面に付与された該接着剤を付加反応により硬化することによって、表層20dを弾性層20cに接着させる接着層20fを形成することができる。
なお、上記自己接着成分としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
・ビニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロキシ基、ヒドロシリル基(SiH基)、エポキシ基、アルコキシシリル基、カルボニル基、及びフェニル基からなる群より選択される少なくとも1種、好ましくは2種以上の官能基を有するシラン。
・ケイ素原子数が2個以上30個以下、好ましくは4個以上20個以下の、環状又は直鎖状のシロキサン等の有機ケイ素化合物。
・分子中に酸素原子を含んでもよい、非ケイ素系(即ち、分子中にケイ素原子を含有しない)有機化合物。ただし、1価以上4価以下、好ましくは2価以上4価以下のフェニレン構造等の芳香環を1分子中に1個以上4個以下、好ましくは1個以上2個以下含有する。かつ、ヒドロシリル化付加反応に寄与し得る官能基(例えば、アルケニル基、(メタ)アクリロキシ基)を1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上4個以下含有する。
上記の自己接着成分は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、接着剤中には、粘度調整や耐熱性確保の観点から、本発明の趣旨に沿う範囲内においてフィラー成分を添加することができる。当該フィラー成分としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
・シリカ、アルミナ、酸化鉄、酸化セリウム、水酸化セリウム、カーボンブラック等。
接着剤に含有される各成分の配合量は特に限定されず、適宜、設定することができる。このような付加硬化型シリコーンゴム接着剤は市販もされており、容易に入手することができる。接着層20fの厚みは20μm以下であることが好ましい。接着層20fの厚みを20μm以下とすることで、本態様に係る定着ベルトを加熱ベルトとして熱定着装置に用いた際に、熱抵抗を容易に小さく設定でき、内面側からの熱を効率的に記録媒体に伝えやすい。
(7)表層
定着用回転体は、表層20dを有してもよい。表層20dは、定着用回転体の外表面へのトナーの付着を防止する離型層としての機能を発現させるうえで、フッ素樹脂を含有させることが好ましい。表層20dの形成には、例えば、以下に例示する樹脂をチューブ状に成形したものを用いてもよいし、樹脂分散液をコーティングして表層20dを成形してもよい。
・テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等。
上記例示した樹脂材料中、成形性やトナー離型性の観点から、PFAが特に好適に用いられる。
表層20dの厚みは、10μm以上50μm以下とすることが好ましい。表層20dの厚みをこの範囲内とすることで、定着用回転体の適度な表面硬度を維持し易い。
以上のように、本開示の一態様によれば、定着用回転体が配置された定着装置が提供される。したがって、高導電で耐久性に優れた定着用回転体を配置した定着装置を提供することができる。
(8)定着用回転体の製造方法
本開示の一態様に係る、基材、該基材上の導電層とを具備し、該導電層が銀を含む定着用回転体(加圧ベルト又は加圧ローラ)の非限定的な製造方法を例示する。銀ナノ粒子材料を利用した製造方法として、例えば、下記工程(i)~(ii)を含む方法が挙げられる。
(i)基材を得る工程、
(ii)該工程(i)で得られた基材の外周面に銀ナノ粒子インクを塗布し、焼成することで導電層を得る工程。
基材を得る工程は特に制限されない。例えば、エンドレスベルト形状又はローラ形状を有する基材とすることができる。例えば、円筒形などの型の表面に基材の樹脂材料を塗布し、必要に応じて加熱することにより基材を得ることができる。
次に、得られた基材の外周面に銀ナノ粒子インクを塗布し、焼成(焼結)することで導電層を形成する。焼成の際の温度は特に制限されないが、好ましくは150~450℃であり、より好ましくは190~350℃である。すなわち、導電層は、銀ナノ粒子の焼成体(焼結体)であることが好ましい。焼成時間も特に制限されず、例えば、10~120分が挙げられる。
本発明者らの検討の結果、基材の外周面に銀ナノ粒子インクを塗布し、焼成することにより、導電層を形成する銀結晶粒子の粒径及び導電層の体積抵抗率を所定の範囲内におさめやすいことを見出した。
上記の方法によって銀結晶粒子の粒径及び導電層の体積抵抗率が所定の範囲におさまる導電層を形成することができる理由を以下のように推測している。
銀ナノ粒子インクは一次粒径が数十nm程度の銀である金属成分と、インクの溶媒や分散安定剤等の有機成分とで構成されている。銀ナノ粒子インクを塗布し、焼成すると有機成分は分解され、揮発する。これにより導電層の導電機能を阻害する不純物が減り、導電層の体積抵抗率が低くなる。しかしながら、銀結晶そのものの体積抵抗率より小さくなることはないため、所定の範囲内に収めることができる。
一方、塗布した銀ナノ粒子インクを焼成することで、銀結晶が成長するが、インクの原料である銀が数十nmの粒径のため、平均結晶粒径を200nm以下におさめやすい。また、焼成により原料の粒径以下に小さくなることはないので、上記の方法によって銀の平均結晶粒径を所定の範囲におさめるやすい。
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
外径30mmの円筒形ステンレス型の表面に離型処理を施し、市販のポリイミド前駆体溶液(UワニスS、宇部興産社製)を浸漬法によって塗布することにより、塗膜を形成した。次にこの塗膜を140℃で30分乾燥させることにより、前記塗膜中の溶媒を揮発させた後、200℃30分、400℃30分焼成しイミド化させ、膜厚40μm、長さ300mmのポリイミド皮膜を形成した。
次いで、このポリイミド皮膜上に、銀ナノ粒子配合インク(DNS163、ダイセル社製)を用いて、インクジェット法により幅300μm、間隔200μmとなるようにリング状パターンを形成した。その後200℃、30分で焼成行い、最大厚み2μmの導電層20bを形成した。
次いで、導電層20b上に、PAI溶液(バイロマックスHR-16NN、東洋紡社製)をリングコートで全面塗布した後、200℃30分焼成し、膜厚40μmの樹脂層20eを形成した。
次いで、樹脂層20eの外周面にプライマー(商品名:DY39-051A/B、ダウ・東レ社製)を乾燥重量が20mgとなるように略均一に塗布し、溶媒を乾燥させた後、
160℃に設定した電気炉で30分間の焼付け処理を行った。
このプライマー上に、リングコート法で、厚さ250μmのシリコーンゴム組成物層を形成し、160℃1分で一次架橋した後、200℃30分二次架橋して、弾性層20cを形成した。
なお、シリコーンゴム組成物は以下のものを使用した。
成分(a)としてのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとして、1分子中にビニル基を少なくとも2個以上有する、ビニル化ポリジメチルシロキサン(商品名:DMS-V41、Gelest社製、数平均分子量68000(ポリスチレン換算)、ビニル基のモル当量0.04ミリモル/g)を準備した。
また、成分(b)としてのSi-H基を有するオルガノポリシロキサンとして、1分子中にSi-H基を少なくとも2個以上有する、メチルハイドロジェンポリシロキサン(商品名:HMS-301、Gelest社製、数平均分子量1300(ポリスチレン換算)、Si-H基のモル当量3.60ミリモル/g)を準備した。成分(a)100質量部に対して、成分(b)を0.5質量部添加し、十分に混合し、付加硬化型シリコーンゴム原液を得た。
さらに、成分(c)触媒量の微量の付加硬化反応用触媒(白金触媒:白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体)とインヒビターとを添加し、十分に混合した。
この付加硬化型シリコーンゴム原液に対し、成分(d)熱伝導性フィラーとして高純度真球状アルミナ(商品名:アルナビーズCB-A10S;昭和タイタニウム(株)製)を、弾性層を基準として体積比率で45%となるように配合、混練した。そして、硬化後のJIS K 6253A準拠デュロメータ硬度が10°の付加硬化型のシリコーンゴム組成物を得た。
次いで、得られた弾性層20c上に、接着層20fを形成するための付加硬化型シリコーンゴム接着剤(商品名:SE1819CV A/B、ダウ・東レ社製)を、厚さがおよそ20μm程度になるように略均一に塗布した。これに、表層20dを形成するための内径29mm、厚み50μmのフッ素樹脂チューブ(商品名:NSE、グンゼ社製)を拡径しつつ積層した。
その後、フッ素樹脂チューブの上からベルト表面を均一に扱くことにより、過剰の接着剤を弾性層20cとフッ素樹脂チューブの間から、5μm程度まで薄くなるように扱き出した。次いで、200℃で30分加熱して接着剤を硬化させて、当該フッ素樹脂チューブを弾性層20c上に固定して、最後に長さが240mmとなるように両端部を切断し、定着用回転体を得た。
[実施例2]
導電層20bの焼成温度を250℃とした以外は実施例1と同様にして定着用回転体を作製した。
[実施例3]
導電層20bの焼成温度を300℃とした以外は実施例1と同様にして定着用回転体を作製した。
[実施例4]
樹脂層20e材料をポリイミド前駆体溶液(UワニスS、宇部興産社製)とし、140℃30分乾燥、200℃30分、400℃30分焼成し、イミド化して形成した以外は実施例1と同様にして定着用回転体を作製した。
[実施例5]
導電層20bの焼成温度を250℃とした以外は実施例4と同様にして定着用回転体を
作製した。
[実施例6]
導電層20bの焼成温度を300℃とした以外は実施例4と同様にして定着用回転体を作製した。
[比較例1]
導電層20bの形成方法をめっき法とし銀メッキの導電層とした以外は実施例1と同様にして定着用回転体を作製した。
具体的には、円筒状のポリイミドフィルムを用意し、その表面にリング状のマスキング材を配置した。続いて銀メッキ浴としてシアン化銀カリウム浴を用い、メッキ処理を行った。メッキ浴のpHは8~9、メッキ浴の温度は50℃~70℃に維持した。メッキ浴から取り出したのち、洗浄工程を経て、マスキング材を除去して最大厚み2μmの導電層が形成された基材を得た。
[比較例2]
導電層20bの形成方法をめっき法とし銀メッキの導電層とした以外は実施例4と同様にして定着用回転体を作製した。
具体的には円筒状のポリイミドフィルムを用意し、その表面にリング状のマスキング材を配置した。続いて銀メッキ浴としてシアン化銀カリウム浴を用い、メッキ処理を行った。メッキ浴のpHは8~9、メッキ浴の温度は50℃~70℃に維持した。メッキ浴から取り出したのち、洗浄工程を経て、マスキング材を除去して最大厚み2μmの導電層が形成された基材を得た。
(評価:部材耐久試験)
実施例1~6、比較例1~2について、繰り返し引張試験(動的粘弾性測定装置、日立ハイテクノロジーズ社製)を行い、耐久後の導電層の破断有無の評価を通電試験によって行った。定着回転体を縦5mm、横5mmで、導電層のリングパターンが10本含まれるように切り出したサンプルを用いて、回転体の周方向に一致する向きに引っ張られるよう装置に固定した。
試験温度は200℃、歪みの振幅3μm(正弦波)、応力の周波数1Hzで200万回引張試験を行った。耐久前後の体積抵抗率計測を行い、初期値からの変動幅が±2%以内の場合A、変動幅が±2%を超え±5%以内の場合B、変動幅が±5%を超える場合Cとした。耐久後の以上の結果を表1に示す。
(評価:定着装置耐久試験)
実施例1~6、比較例1~2の定着用回転体について、次の条件で通紙耐久試験を行った。
実施例1~6、比較例1~2それぞれの定着用回転体を定着装置に組み込み、この定着装置をレーザープリンタに搭載し、気温15℃、湿度10%の環境において、画像を印字せず200万枚のプリントをする通紙耐久試験を行い、10万枚毎に印字プリントをおこない画像不良を確認した。
レーザープリンタはキヤノンマーケティングジャパン社製Satera LBP961Ci(商品名)を基に加圧ローラ及び定着用回転体を通常よりも高速(線速400mm/s)で回転できるよう改造した装置を用いた。評価用の記録材Pとしては記録用紙である
GF-C081(A4サイズ81.4g/m、厚さ97μm、キヤノンマーケティングジャパン)を用いた。
評価基準は、200万枚のプリント終了時に行った印字プリントの際に、導電層の破断による定着不良の発生がなく良好である場合を「A(良好)」、定着不良が発生することがあった場合を「B(不良)」とした。
各実施例・比較例の導電層の物性(平均結晶粒径、結晶粒径の変動係数、体積抵抗率、膜厚(最大厚み)、銀純度)と評価結果を表1に示す。
Figure 2024063529000007
耐久後抵抗率の値は、×10-8Ω・mである。
表1の結果から、実施例と比較例を比較すると、導電層20bの平均結晶粒径が20~200nmのものは部材の耐久試験後でも導電層が破断しない。そのため、体積抵抗率が小さく、実機での耐久試験後でも定着不良を起こさず、耐久性が良好なことが確認できる。
以上説明したように、本開示は、高導電で耐久性に優れた導電層を持つ定着用回転体に利用可能である。
本開示は、以下の構成及び方法に関する。
(構成1)
定着用回転体であって、
該定着用回転体は、
基材と、該基材上の導電層と、
を具備し、
該導電層は、該基材の外周面の周方向に延在してなり、
該導電層は、銀を含み、
該導電層の周方向に沿う方向の断面において観察される該銀の結晶の平均結晶粒径が、20~200nmであり、
該導電層の体積抵抗率が、1.0×10-8~8.0×10-8Ω・mであることを特徴とする定着用回転体。
(構成2)
前記導電層の最大厚みが、4μm以下である、構成1に記載の定着用回転体。
(構成3)
前記導電層における前記銀の含有割合が、99.0質量%以上である、構成1又は2に記載の定着用回転体。
(構成4)
前記導電層が、銀ナノ粒子の焼結体である、構成1~3のいずれかに記載の定着用回転体。
(構成5)
前記導電層における前記銀の結晶粒径の変動係数が、0.60未満である、構成1~4のいずれかに記載の定着用回転体。
(構成6)
前記定着用回転体が、前記導電層の前記基材に対向する側とは反対側の面上の樹脂層を備え、
前記基材が、耐熱性樹脂を含み、
該樹脂層が、耐熱性樹脂を含む、構成1~5のいずれかに記載の定着用回転体。
(構成7)
構成1~6のいずれかに記載の定着用回転体と、
該定着用回転体を誘導加熱によって発熱させる誘導加熱装置と、を具備することを特徴とする定着装置。
(構成8)
前記誘導加熱装置が、
前記定着用回転体の内部に配置され、らせん軸が前記定着用回転体の回転軸に沿う方向と略平行であるらせん形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するための励磁コイルと、
該らせん形状部の中に配置され、該回転軸方向に延びて前記定着用回転体の外側でループを形成しない磁性コアであって、該交番磁界の磁力線を誘導するための磁性コアと、
を備え、
該磁性コアの材質が、強磁性体であり、
該磁性コアの一方の長手端部から出て前記導電層の外側を通過し該磁性コアの他方の長手端部に戻る磁力線によって誘導された誘導電流によって前記導電層は主に発熱する、構成7に記載の定着装置。
(構成9)
電子写真画像形成装置であって、
該電子写真画像形成装置は、
トナー像を担持する像担持体と、
該トナー像を記録材に転写する転写装置と、
転写された該トナー像を該記録材に定着させる定着装置と、
を備え、
該定着装置が構成7又は8に記載の定着装置である、ことを特徴とする電子写真画像形成装置。
(方法10)
構成1~6のいずれかに記載の定着用回転体の製造方法であって、
(i)前記基材を得る工程、
(ii)前記基材の外周面に銀ナノ粒子インクを塗布し、焼成することで前記導電層を得る工程、
を有することを特徴とする、定着用回転体の製造方法。
1 画像形成装置、15 定着装置、20 定着用回転体、20a 基材、20b 導電層、20c 弾性層、20d 表層、20e 樹脂層、20f 接着層、21 加圧ローラ

Claims (10)

  1. 定着用回転体であって、
    該定着用回転体は、
    基材と、該基材上の導電層と、
    を具備し、
    該導電層は、該基材の外周面の周方向に延在してなり、
    該導電層は、銀を含み、
    該導電層の周方向に沿う方向の断面において観察される該銀の結晶の平均結晶粒径が、20~200nmであり、
    該導電層の体積抵抗率が、1.0×10-8~8.0×10-8Ω・mであることを特徴とする定着用回転体。
  2. 前記導電層の最大厚みが、4μm以下である、請求項1に記載の定着用回転体。
  3. 前記導電層における前記銀の含有割合が、99.0質量%以上である、請求項1に記載の定着用回転体。
  4. 前記導電層が、銀ナノ粒子の焼結体である、請求項1に記載の定着用回転体。
  5. 前記導電層における前記銀の結晶粒径の変動係数が、0.60未満である、請求項1に記載の定着用回転体。
  6. 前記定着用回転体が、前記導電層の前記基材に対向する側とは反対側の面上の樹脂層を備え、
    前記基材が、耐熱性樹脂を含み、
    該樹脂層が、耐熱性樹脂を含む、請求項1に記載の定着用回転体。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の定着用回転体と、
    該定着用回転体を誘導加熱によって発熱させる誘導加熱装置と、を具備することを特徴とする定着装置。
  8. 前記誘導加熱装置が、
    前記定着用回転体の内部に配置され、らせん軸が前記定着用回転体の回転軸に沿う方向と略平行であるらせん形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するための励磁コイルと、
    該らせん形状部の中に配置され、該回転軸方向に延びて前記定着用回転体の外側でループを形成しない磁性コアであって、該交番磁界の磁力線を誘導するための磁性コアと、
    を備え、
    該磁性コアの材質が、強磁性体であり、
    該磁性コアの一方の長手端部から出て前記導電層の外側を通過し該磁性コアの他方の長手端部に戻る磁力線によって誘導された誘導電流によって前記導電層は主に発熱する、請求項7に記載の定着装置。
  9. 電子写真画像形成装置であって、
    該電子写真画像形成装置は、
    トナー像を担持する像担持体と、
    該トナー像を記録材に転写する転写装置と、
    転写された該トナー像を該記録材に定着させる定着装置と、
    を備え、
    該定着装置が請求項7に記載の定着装置である、ことを特徴とする電子写真画像形成装置。
  10. 請求項1~6のいずれか1項に記載の定着用回転体の製造方法であって、
    (i)前記基材を得る工程、
    (ii)前記基材の外周面に銀ナノ粒子インクを塗布し、焼成することで前記導電層を得る工程、
    を有することを特徴とする、定着用回転体の製造方法。
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