JP2024060562A - ヘパロサン生産微生物、ヘパロサンの製造方法及びヘパロサン由来化合物の製造方法 - Google Patents

ヘパロサン生産微生物、ヘパロサンの製造方法及びヘパロサン由来化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、ヘパロサンを製造するための非病原性の組換え微生物を提供すること、及び該組換え微生物を用いてヘパロサンおよびヘパロサン由来化合物を製造する方法を提供することを目的とする。【解決手段】以下の(a)の遺伝子改変を有し、かつ(b)の特徴を有する、ヘパロサン生産微生物。(a)kfiA遺伝子およびkfiC遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変、(b)炭素源からUDP-グルクロン酸およびUDP-N-アセチルグルコサミンを供給する能力を有する微生物【選択図】なし

Description

本発明は、ヘパロサン生産微生物、ヘパロサンの製造方法及びヘパロサン由来化合物の製造方法に関する。
硫酸化された多糖であるヘパリンは抗凝固薬の1つであり、血栓閉塞症、播種性血管内凝固症候群の治療や人工透析、体外循環での凝固防止などに用いられる。工業的には主に豚の腸粘膜から抽出、精製されたヘパリンが利用されている。
2008年に豚由来ヘパリンへの不純物混入を原因とする死亡事故が発生したことから、製造および品質が管理された非動物由来のヘパリンの生産が求められている(非特許文献1)。具体例として、微生物の莢膜多糖であるN-アセチルヘパロサン(以下「ヘパロサン」と記載する)を化学的手法および酵素的手法により脱アセチル化および硫酸化することで、豚由来品と同等の構造、抗凝固活性を有するヘパリンを生産する方法が報告されている(特許文献1、2)。
上記のヘパリン生産方法において原料となるヘパロサンは、グルクロン酸(GlcA)とN-アセチルD-グルコサミン(GlcNAc)の二糖繰り返し構造で構成される多糖である。ヘパロサンを生産する微生物としてはエシェリヒア・コリ(Escherichia coli) K5株やパスツレラ-ムルトシダ D型(Pasteurella multocida typeD)などが知られている(特許文献3、非特許文献2、3、4)。
ヘパロサンはGroup2莢膜多糖に分類される。エシェリヒア・コリ K5株でのヘパロサンの合成、輸送にはゲノム上でクラスターを形成しているRegion I、IIおよびIIIの遺伝子群が関わっていることが知られている(非特許文献5)。
これらの遺伝子群にコードされる蛋白質は以下のようにしてヘパロサンを合成する。まず、β-KdoトランスフェラーゼであるKpsS、KpsCにより内膜のホスファチジルグリセロールに複数の3-deoxy-D-manno-oct-2-ulosonic acid(Kdo)残基が転移されてβ-Kdoリンカーが形成され(非特許文献6)、さらに糖転移酵素KfiA、KfiCにより前駆体糖ヌクレオチドが付加されることでヘパロサンの合成が進行するとされている(非特許文献5)。
ところで、前述のヘパロサン生産能を持つ微生物であるエシェリヒア・コリ K5株及びパスツレラ-ムルトシダ D型は両者ともに病原性が知られており、ヘパロサンの大量生産には不向きである。ヘパロサンの安全な生産のためには既知の安全性の高い菌株にヘパロサン合成に関わる遺伝子を導入して作らせるという方法がある。例えば安全な実験室株であるエシェリヒア・コリ K-12株に、エシェリヒア・コリ K5株由来のヘパロサン合成に関わる遺伝子を導入してヘパロサンを作らせたという報告がある(非特許文献4)。また別の安全な実験室株であるエシェリヒア・コリ BL21株に、エシェリヒア・コリ K5株由来のヘパロサン合成に関わる遺伝子を導入してヘパロサンを作らせたという報告がある(非特許文献7)。
米国特許第8,771,995号明細書 国際公開第2018/048973号 国際公開第2011/028668号
Natural Product Reports, 2009, 26, 313-321 Biotechnology and Bioengineering, 2010, 107, 964-973 Applied Microbiology and Biotechnology, 2019, 103, 6771-6782 Carbohydrate Research, 2012, 360, 19-24 Annual Review of Biochemistry, 2006, 75, 39-68 Proceedings of the National Academy of Sciences of USA, 2013, 110, 20753-20758 Applied Microbiology and Biotechnology, 2016, 100, 10355-10361
しかしながら、上述の方法によるヘパロサンの生産性は十分でなく、また病原性微生物由来の遺伝子を必要としている。
上記したように、安全な菌株でヘパロサンを生産することの重要性が認識されているが、生産性および遺伝子源の面で満足のいくものはない。
そのため、本発明は、ヘパロサンを製造するための非病原性の組換え微生物を提供すること、及び該組換え微生物を用いてヘパロサンおよびヘパロサン由来化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、非病原性の微生物を宿主に用いて、該微生物にヘパロサン生産に関わる遺伝子を導入することでヘパロサンの製造ができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]
以下の(a)の遺伝子改変を有し、かつ(b)の特徴を有する、ヘパロサン生産微生物。
(a)kfiA遺伝子およびkfiC遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変
(b)炭素源からUDP-グルクロン酸およびUDP-N-アセチルグルコサミンを供給する能力を有する微生物
[2]
前記(a)の遺伝子改変が、kfiC遺伝子にトリガーファクターをコードする遺伝子を連結することを含む、上記[1]に記載のヘパロサン生産微生物。
[3]
さらに以下の(c)の遺伝子改変を有する、上記[1]または[2]に記載のヘパロサン生産微生物。
(c)kfiD遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変
[4]
さらに以下の(d)の遺伝子改変を有する、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のヘパロサン生産微生物。
(d)glmS遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変
[5]
前記(d)の遺伝子改変が、glmS遺伝子の発現調節領域の改変および前記glmS遺伝子のコピー数を高めることの少なくとも一方である、上記[4]に記載のヘパロサン生産微生物。
[6]
上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のヘパロサン生産微生物を培地で培養することを含む、ヘパロサンの製造方法。
[7]
上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のヘパロサン生産微生物を培地で培養することを含む、ヘパロサン由来化合物の製造方法。
本発明では、非病原性の微生物を宿主に用いて、該微生物にヘパロサン生産に関わる遺伝子を導入することで、ヘパロサンを生産しうる。
図1は、ヘパロサン生産遺伝子発現用プラスミドの模式図である。
以下、本発明について詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、これらの内容に特定されるものではない。
数値範囲の「~」は、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%~100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。
[ヘパロサン生産微生物]
本発明の一態様のヘパロサン生産微生物は、以下の(a)の遺伝子改変を有し、かつ(b)の特徴を有する。
(a)kfiA遺伝子およびkfiC遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変
(b)炭素源からUDP-グルクロン酸およびUDP-N-アセチルグルコサミンを供給する能力を有する微生物
本発明の一態様のヘパロサン生産微生物は、KfiAおよびKfiCの働きにより、UDP-グルクロン酸およびUDP-N-アセチルグルコサミンを用いて、ヘパロサンを生産する。
((a)kfiA遺伝子およびkfiC遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変)
kfiA又はkfiC遺伝子としては、エシェリヒア属由来のkfiA又はkfiC遺伝子が好ましい。具体的には例えば、エシェリヒア・コリ Nissle株のkfiA又はkfiC遺伝子が挙げられる。エシェリヒア・コリ Nissle株のkfiA又はkfiC遺伝子の塩基配列及び該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列は、公用のデータベースから取得できる。kfiAはGenBank Accession No.CAE55825.1;kfiCはGenbank Accession No. CAE55821.1として登録されている。
kfiA遺伝子としては、配列番号18に示す塩基配列を含むDNAまたは、配列番号18に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、かつKfiC共存下でヘパロサン合成活性を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。KfiC共存下でヘパロサン合成活性を有するタンパク質をコードするDNAであることは、例えばKfiAを発現せずKfiCを発現する微生物および炭素源からUDP-グルクロン酸およびUDP-N-アセチルグルコサミンを供給する能力を有する微生物との特徴を有する微生物において、該DNAを導入した際に同微生物がヘパロサン生産能を有することによって確認できる。
kfiC遺伝子としては、配列番号19に示す塩基配列を含むDNAまたは、配列番号19に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、かつKfiA共存下でヘパロサン合成活性を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。KfiA共存下でヘパロサン合成活性を有するタンパク質をコードするDNAであることは、例えばKfiCを発現せずKfiAを発現する微生物および炭素源からUDP-グルクロン酸およびUDP-N-アセチルグルコサミンを供給する能力を有する微生物との特徴を有する微生物において、該DNAを導入した際に同微生物がヘパロサン生産能を有することによって確認できる。
((遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変))
本明細書において、「遺伝子の発現の増大」とは、非改変株と比較して該遺伝子の発現が上昇することをいう。遺伝子の発現の増大の一態様としては、例えば、非改変株と比較して、該遺伝子の発現が好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上に上昇していることが挙げられる。
また、「遺伝子の発現が増大する」とは、もともと標的の遺伝子が発現している菌株において同遺伝子の発現量を上昇させることだけでなく、もともと標的の遺伝子が発現していない菌株において、同遺伝子を発現させることを含む。すなわち、「遺伝子の発現が増大する」とは、例えば、標的の遺伝子を保持しない菌株に同遺伝子を導入し、同遺伝子を発現させることを含む。なお、「遺伝子の発現が増大する」ことを、「遺伝子の発現が増強される」、「遺伝子の発現が上昇する」ともいう。
遺伝子の発現の増大は、例えば、遺伝子のコピー数を増加させることにより達成できる。遺伝子のコピー数の増加は、宿主の染色体へ同遺伝子を導入することにより達成できる。染色体への遺伝子の導入は、例えば、相同組み換えを利用して行うことができる(Miller I, J. H. Experiments in Molecular Genetics, 1972, Cold Spring Harbor Laboratory)。遺伝子は、1コピーのみ導入されてもよく、2コピーまたはそれ以上導入されてもよい。
例えば、染色体上に多数のコピーが存在する配列を標的として相同組み換えを行うことで、染色体へ遺伝子の多数のコピーを導入することができる。染色体上に多数のコピーが存在する配列としては、反復DNA配列(repetitive DNA)、トランスポゾンの両端に存在するインバーテッド・リピートが挙げられる。
また、目的物質の生産に不要な遺伝子等の染色体上の適当な配列を標的として相同組み換えを行ってもよい。相同組み換えは、例えば、直鎖状DNAを用いる方法、温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法、接合伝達可能なプラスミドを用いる方法、宿主内で機能する複製起点を持たないスイサイドベクターを用いる方法、またはファージを用いたtransduction法により行うことができる。また、遺伝子は、トランスポゾンやMini-Muを用いて染色体上にランダムに導入することもできる(特開平2-109985号公報)。
染色体上に標的遺伝子が導入されたことの確認は、同遺伝子の全部又は一部と相補的な配列を持つプローブを用いたサザンハイブリダイゼーション、又は同遺伝子の配列に基づいて作成したプライマーを用いたPCR等によって確認できる。
また、遺伝子のコピー数の増加は、同遺伝子を含むベクターを宿主に導入することによっても達成できる。例えば、標的遺伝子を含むDNA断片を、宿主で機能するベクターと連結して同遺伝子の発現ベクターを構築し、当該発現ベクターで宿主を形質転換することにより、同遺伝子のコピー数を増加させることができる。標的遺伝子を含むDNA断片は、例えば、標的遺伝子を有する微生物のゲノムDNAを鋳型とするPCRにより取得できる。形質転換の方法は特に限定されず、従来公知の方法を使用できる。
ベクターとしては、宿主の細胞内において自律複製可能なベクターを用いることができる。ベクターは、マルチコピーベクターであることが好ましい。また、形質転換体を選択するために、ベクターは抗生物質耐性遺伝子などのマーカーを有することが好ましい。また、ベクターは、挿入された遺伝子を発現するためのプロモーターやターミネーターを備えていてもよい。ベクターとしては、例えば、細菌プラスミド由来のベクター、酵母プラスミド由来のベクター、バクテリオファージ由来のベクター、コスミド、またはファージミド等が挙げられる。
エシェリヒア・コリ等の腸内細菌科の細菌において自律複製可能なベクターとしては、具体的には例えば、pUC19、pUC18、pHSG299、pHSG399、pHSG398、pBR322、pSTV29(いずれもタカラバイオ社)、pACYC184、pMW219、pMW118、pMW119(いずれもニッポンジーン社)、pTrc99A(ファルマシア社)、pPROK系ベクター(クロンテック社)、pKK233-2(クロンテック社)、pET系ベクター(ノバジェン社)、pQE系ベクター(キアゲン社)、広宿主域ベクターRSF1010が挙げられる。
遺伝子を導入する場合、遺伝子は、本発明における遺伝子改変を有する細菌に保持されていればよい。具体的には、遺伝子は、本発明の細菌で機能するプロモーター配列による制御を受けて発現するように導入されていればよい。プロモーターは、宿主由来のプロモーターであってもよく、異種由来のプロモーターであってもよい。プロモーターは、導入する遺伝子の固有のプロモーターであってもよく、他の遺伝子のプロモーターであってもよい。プロモーターとしては、例えば、後述するような、より強力なプロモーターを利用してもよい。
遺伝子の下流には、転写終結用のターミネーターを配置することができる。ターミネーターは、本発明の細菌において機能するものであれば特に制限されない。ターミネーターは、宿主由来のターミネーターであってもよく、異種由来のターミネーターであってもよい。ターミネーターは、導入する遺伝子の固有のターミネーターであってもよく、他の遺伝子のターミネーターであってもよい。ターミネーターとしては、具体的には例えば、T7ターミネーター、T4ターミネーター、fdファージターミネーター、tetターミネーター、およびtrpAターミネーターが挙げられる。
各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネーターに関しては、例えば「微生物学基礎講座8 遺伝子工学、共立出版、1987年」に詳細に記載されており、それらを利用することが可能である。
また、2以上の遺伝子を導入する場合、各遺伝子が、発現可能に本発明の細菌に保持されていればよい。例えば、各遺伝子は、全てが単一の発現ベクター上に保持されていてもよく、全てが染色体上に保持されていてもよい。また、各遺伝子は、複数の発現ベクター上に別々に保持されていてもよく、単一または複数の発現ベクター上と染色体上とに別々に保持されていてもよい。また、2以上の遺伝子でオペロンを構成して導入してもよい。「2以上の遺伝子を導入する場合」としては、例えば、2またはそれ以上の酵素をそれぞれコードする遺伝子を導入する場合、単一の酵素を構成する2またはそれ以上のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子を導入する場合、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
導入される遺伝子は、宿主で機能するタンパク質をコードするものであれば特に制限されない。導入される遺伝子は、宿主由来の遺伝子であってもよく、異種由来の遺伝子であってもよい。導入される遺伝子は、例えば、同遺伝子の塩基配列に基づいて設計したプライマーを用い、同遺伝子を有する生物のゲノムDNAや同遺伝子を搭載するプラスミド等を鋳型として、PCRにより取得することができる。また、導入される遺伝子は、例えば、同遺伝子の塩基配列に基づいて全合成してもよい[Gene, 60(1), 115-127 (1987)]。
また、遺伝子の発現の上昇は、遺伝子の転写効率を向上させることにより達成できる。遺伝子の転写効率の向上は、例えば、染色体上の遺伝子のプロモーターをより強力なプロモーターに置換することにより達成できる。「より強力なプロモーター」とは、遺伝子の転写が、もともと存在している野生型のプロモーターよりも向上するプロモーターを意味する。
「より強力なプロモーター」としては、例えば、公知の高発現プロモーターであるuspAプロモーター、T7プロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、thrプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、tetプロモーター、araBADプロモーター、rpoHプロモーター、PRプロモーター、およびPLプロモーターが挙げられる。
また、より強力なプロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターの高活性型のものを取得してもよい。例えば、プロモーター領域内の-35、-10領域をコンセンサス配列に近づけることにより、プロモーターの活性を高めることができる(国際公開第2000/18935号)。
高活性型プロモーターとしては、各種tac様プロモーター(Katashkina JI et al. Russian Federation Patent application 2006134574)やpnlp8プロモーター(国際公開第2010/027045号)が挙げられる。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、公知の文献[Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1, 105-128 (1995)等]に記載されている。
また、遺伝子の発現の上昇は、遺伝子の翻訳効率を向上させることにより達成できる。遺伝子の翻訳効率の向上は、例えば、染色体上の遺伝子のシャインダルガノ(SD)配列[リボソーム結合部位(RBS)ともいう]をより強力なSD配列に置換することにより達成できる。
「より強力なSD配列」とは、mRNAの翻訳が、もともと存在している野生型のSD配列よりも向上するSD配列を意味する。より強力なSD配列としては、例えば、ファージT7由来の遺伝子10のRBSが挙げられる(Olins P. O. et al, Gene, 1988, 73, 227-235)。さらに、RBSと開始コドンとの間のスペーサー領域、特に開始コドンのすぐ上流の配列(5’-UTR)における数個のヌクレオチドの置換、あるいは挿入、あるいは欠失がmRNAの安定性および翻訳効率に非常に影響を及ぼすことが知られており、これらを改変することによっても遺伝子の翻訳効率を向上させることができる。
本発明においては、プロモーター、SD配列、およびRBSと開始コドンとの間のスペーサー領域等の遺伝子の発現に影響する部位を総称して「発現調節領域」ともいう。発現調節領域は、プロモーター検索ベクターやGENETYX等の遺伝子解析ソフトを用いて決定することができる。これら発現調節領域の改変は、例えば、温度感受性ベクターを用いた方法や、Redドリブンインテグレーション法(国際公開第2005/010175号)により行うことができる。
遺伝子の翻訳効率の向上は、例えば、コドンの改変によっても達成できる。具体的には例えば、遺伝子の異種発現を行う場合等には、遺伝子中に存在するレアコドンを、より高頻度で利用される同義コドンに置き換えることにより、遺伝子の翻訳効率を向上させることができる。
コドンの置換は、例えば、DNAの目的の部位に目的の変異を導入する部位特異的変異法により行うことができる。部位特異的変異法としては、PCRを用いる方法[Higuchi, R., 61, in PCR technology, Erlich, H. A. Eds., Stockton press (1989);Carter, P., Meth. in Enzymol., 154, 382 (1987)]や、ファージを用いる方法[Kramer,W. and Frits, H. J., Meth. in Enzymol., 154, 350 (1987);Kunkel, T. A. et al., Meth. in Enzymol., 154, 367 (1987)]が挙げられる。また、コドンが置換された遺伝子断片を全合成してもよい。種々の生物におけるコドンの使用頻度は、「コドン使用データベース」[http://www.kazusa.or.jp/codon; Nakamura, Y. et al, Nucl. Acids Res., 28, 292 (2000)]に開示されている。
また、遺伝子の発現の増大は、遺伝子の発現を増大させるようなレギュレーターを増幅すること、または、遺伝子の発現を低下させるようなレギュレーターを欠失または弱化させることによっても達成できる。上記のような遺伝子の発現を増大させる手法は、単独で用いてもよく、任意の組み合わせで用いてもよい。
遺伝子の発現が増大したことは、例えば、該遺伝子の転写量が上昇したことを確認することや、該遺伝子から発現するタンパク質の量が上昇したことを確認することにより確認できる。また、遺伝子の発現が増大したことは、例えば、該遺伝子から発現するタンパク質の活性が増大したことを確認することにより確認できる。
遺伝子の転写量が上昇したことの確認は、該遺伝子から転写されるmRNAの量を野生株または親株等の非改変株と比較することによって行うことができる。mRNAの量を評価する方法としてはノーザンハイブリダイゼーション、RT-PCR等が挙げられる[Sambrook, J., et al., Molecular Cloning A Laboratory Manual/Third Edition, Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001]。mRNAの量の上昇としては、非改変株と比較して、例えば、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上に上昇することが挙げられる。
タンパク質の量が上昇したことは、例えば、抗体を用いてウエスタンブロットによって確認できる。タンパク質の量の上昇としては、非改変株と比較して、例えば、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上に上昇することが挙げられる。
タンパク質の活性が増大したことは、例えば、同タンパク質の活性を測定することで確認できる。タンパク質の活性の増大としては、タンパク質の活性が、非改変株と比較して、例えば、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上に上昇することが挙げられる。
上記した遺伝子の発現を増大させる手法は、上記した(a)並びに後述の(c)及び(d)の各遺伝子の発現を増大させる手法として利用できる。
kfiA及びkfiC遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変としては、kfiA及びkfiC遺伝子の発現調節領域の改変及び該遺伝子のコピー数を高めることの少なくとも一方であることが好ましい。kfiA及びkfiC遺伝子はオペロンを構成しており、kfiA及びkfiC遺伝子により構成されるオペロン全体を強化する遺伝子改変が好ましく、kfiA及びkfiC遺伝子の発現調節領域の改変がより好ましい。
((トリガーファクターをコードする遺伝子の連結))
kfiA遺伝子およびkfiC遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変は、kfiC遺伝子にトリガーファクターをコードする遺伝子を連結することを含むことが好ましい。kfiC遺伝子にトリガーファクターをコードする遺伝子を連結することで、後述のように、KfiCが安定化する。kfiA遺伝子およびkfiC遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変は、さらに、kfiC遺伝子の上流に配列番号21で表される塩基配列または配列番号23で表される塩基配列によってトリガーファクターをコードする遺伝子を連結することを含むことが好ましく、kfiC遺伝子の上流に配列番号23で表される塩基配列によってトリガーファクターをコードする遺伝子を連結することを含むことが最も好ましい。
本明細書において、トリガーファクターとは、イン・ビトロでの大腸菌外膜タンパク質のOmpAの前駆体であるproOmpAの膜への輸送に必要な細胞質因子として発見された因子をいう(Crooke, E. and Wickner, W., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84,5216-5220 (1987))。トリガーファクターはFK506結合タンパク質(FKBP)ドメインを有し、FK506との結合活性とペプチジル-プロリルイソメラーゼ(PPIase)活性の発現に必要なすべてのアミノ酸が保存されていることが明らかにされている(Callebaut, I. and Mornon, J. -P., FEBS Lett., 374, 211-21 (1995))。トリガーファクターは、シャペロンとしてタンパク質のフォールディングを促進するものであり、トリガーファクターとKfiCを融合させると、KfiCが安定化することが明らかにされている(Sugiura N et al. J Biol Chem (2010)285:1597-1606)。
トリガーファクターをコードする遺伝子(以下、「tig遺伝子」とも称する。)は、エシェリヒア属由来のtig遺伝子が好ましい。具体的には例えば、エシェリヒア・コリK-12株のtig遺伝子が挙げられる。エシェリヒア・コリK-12株のtig遺伝子の塩基配列及び該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列は、公用のデータベースから取得できる。エシェリヒア・コリK-12株の一種であるW3110株のtigのアミノ酸配列はGenbank Accession番号BAE76216.1で登録されており、このアミノ酸配列をコードする遺伝子配列はGenBank Accession番号AP009048.1の454357番目の塩基から455655番目の塩基の部分に示されている。
tig遺伝子は、配列番号20に表される塩基配列からなる遺伝子が挙げられる。配列番号20に表される塩基配列からなる遺伝子をコードするDNAは、例えば、アメリカタイプカルチャーコレクション(ATCC)にATCC27325として寄託されているエシェリヒア・コリK-12株の一種であるW3110株から常法によりゲノム抽出することにより得ることができる。
また、本発明において、tig遺伝子は、kfiC遺伝子と連結し、融合タンパクとして発現させることにより、KfiCを可溶化した状態で、かつ正常な立体構造を保持した状態で発現させうる因子をコードする遺伝子であれば、前記配列番号20に示される塩基配列において、1個以上の塩基に置換、欠失、付加もしくは挿入などの変異が導入された配列からなる遺伝子をも包含する。
さらに、本発明において、tig遺伝子は、kfiC遺伝子と連結し、融合タンパクとして発現させることにより、KfiCを可溶化した状態で、かつ正常な立体構造を保持した状態で発現させうる因子をコードする遺伝子であれば、前記配列番号:20に示される塩基配列からなるDNAまたは前記配列番号:20に示される塩基配列において、1個以上の塩基に置換、欠失、付加もしくは挿入などの変異が導入された配列を有するDNAのいずれかのDNAにストリンジェントな条件下にハイブリダイズするDNAからなる遺伝子をも包含する。
なお、ハイブリダイゼーションの条件は、例えば、モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル第2版〔Sambrook, J. et al., Cold Spring Harbour Laboratory Press, New York, (1989) 〕に記載の条件などが挙げられる。
((親株))
本明細書において、親株とは、遺伝子改変および形質転換等の対象となる元株のことをいう。DNAの導入による形質転換の対象となる元株を宿主株という。
親株としては、原核生物または酵母菌株が好ましく、より好ましくはエシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属、若しくはシュードモナス属等に属する原核生物、またはサッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、クルイベロミセス属、トリコスポロン属、シワニオミセス属、ピチア属、若しくはキャンディダ属等に属する酵母菌株であり、これらの中でもエシェリヒア属に属する原核生物(大腸菌)が好ましく、特に大腸菌K-12株および大腸菌W株が好ましい。
親株として、具体的には例えば、Escherichia coli BL21 codon plus、Escherichia coli XL1-Blue、Escherichia coli XL2-Blue(いずれもアジレント・テクノロジー社製)、Escherichia coli BL21(DE3)pLysS(メルクミリポア社製)、Escherichia coli BL21、Escherichia coli DH5α、Escherichia coli HST08 Premium、Escherichia coli HST02、Escherichia coli HST04 dam-/dcm-、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia coli CJ236、Escherichia coli BMH71-18 mutS、Escherichia coli MV1184、Escherichia coli TH2(いずれもタカラバイオ社製)、Escherichia coli W(ATCC9637)、Escherichia coli JM101、Escherichia coli W3110、Escherichia coli MG1655、Escherichia coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli W1485、Escherichia coli MP347、Escherichia coli NM522、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia liquefaciens、Serratia marcescens、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Brevibacterium immariophilum ATCC14068、Brevibacterium saccharolyticum ATCC14066、Corynebacterium ammoniagenes、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium glutamicum ATCC14067、Corynebacterium glutamicum ATCC13869、Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870、Microbacterium ammoniaphilum ATCC15354、若しくはPseudomonas sp.D-0110等の原核生物、又はSaccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Trichosporon pullulans、Schwanniomyces alluvius、Pichia pastoris、若しくはCandida utilis等の酵母菌株が挙げられる。
((b)炭素源からUDP-グルクロン酸およびUDP-N-アセチルグルコサミンを供給する能力を有する微生物)
炭素源は、本発明の細菌が資化してヘパロサンを生成し得るものであれば、特に限定されない。炭素源としては、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、廃糖蜜、澱粉加水分解物、バイオマスの加水分解物等の糖類、酢酸、フマル酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸類、グリセロール、粗グリセロール、エタノール等のアルコール類、脂肪酸類が挙げられる。炭素源としては、1種の炭素源を用いてもよく、2種以上の炭素源を組み合わせてもよい。
炭素源からUDP-グルクロン酸およびUDP-N-アセチルグルコサミンを供給する能力を有する微生物としては、炭素源からUDP-グルクロン酸およびUDP-N-アセチルグルコサミンを供給する能力を元来有する微生物であることが好ましい。炭素源からUDP-グルクロン酸およびUDP-N-アセチルグルコサミンを供給する能力を有する微生物としては、炭素源からUDP-グルクロン酸およびUDP-N-アセチルグルコサミンの少なくとも一方を供給する能力を元来有しない微生物であって、炭素源からUDP-グルクロン酸およびUDP-N-アセチルグルコサミンを供給するための遺伝子改変を有する微生物であってもよい。
((c)kfiD遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変)
本発明の一態様のヘパロサン生産微生物は、さらに以下の(c)の遺伝子改変を有することが好ましい。
(c)kfiD遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変
KfiDは、UDP-グルクロン酸の合成にかかわる酵素である。ヘパロサン生産微生物において、kfiD遺伝子の発現を増大させることで、UDP-グルクロン酸を供給する能力を向上しうる。
kfiD遺伝子としては、エシェリヒア属由来のkfiD遺伝子が好ましい。具体的には例えば、エシェリヒア・コリ Nissle株のkfiD遺伝子が挙げられる。エシェリヒア・コリ Nissle株のkfiD遺伝子の塩基配列及び該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列は、公用のデータベースから取得できる。kfiDはGenBank Accession番号CAE55820.1として登録されている。
kfiD遺伝子としては、配列番号25に示す塩基配列を含むDNAまたは、配列番号25に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含み、かつUDP-グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。UDP-グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAであることは、例えばUDP-グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有さない微生物に該DNAを導入し、該微生物から調製した粗酵素液を用いて、UDP-グルコースを基質としてUDP-グルクロン酸を生成できることを確認することにより確認できる。
kfiD遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変としては、kfiD遺伝子の発現調節領域の改変及び該遺伝子のコピー数を高めることの少なくとも一方であることが好ましい。kfiD遺伝子はオペロンを構成しており、kfiD遺伝子により構成されるオペロン全体を強化する遺伝子改変が好ましく、kfiD遺伝子の発現調節領域の改変がより好ましい。
((d)glmS遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変)
本発明の一態様のヘパロサン生産微生物は、さらに以下の(d)の遺伝子改変を有することが好ましい。
(d)glmS遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変
GlmSは、UDP-N-アセチルグルコサミン供給経路の第1酵素であり、フルクトース-6-リン酸からグルコサミン-6-リン酸への反応を触媒する酵素(L-グルタミン:D-フルクトース6リン酸アミノトランスフェラーゼ)である。
glmS遺伝子は、エシェリヒア属由来のglmS遺伝子が好ましい。具体的には例えば、エシェリヒア・コリ W株のglmS遺伝子が挙げられる。エシェリヒア・コリ W株のglmS遺伝子の塩基配列及び該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列は、公用のデータベースからGenBank Accession番号 ADT77366.1として登録されている。glmS遺伝子はGenBank Accession番号 CP002185.1の4139271番目の塩基から4141100番目の塩基の部分に示されている。
glmS遺伝子としては、配列番号26に示す塩基配列を含むDNAまたは、配列番号26に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含みかつL-グルタミン:D-フルクトース6リン酸アミノトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。L-グルタミン:D-フルクトース6リン酸アミノトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAであることは、L-グルタミン:D-フルクトース6リン酸アミノトランスフェラーゼ活性を有さない微生物に該DNAを導入し、該微生物から調製した粗酵素液を用いて、L-グルタミンおよびD-フルクトース6リン酸を基質としてD-グルコサミン6リン酸を生成できることを確認することにより、確認できる。
glmS遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変としては、(イ)glmS遺伝子の発現調節領域の改変および前記遺伝子のコピー数を高めることの少なくとも一方、並びに(ロ)yhbJ遺伝子の機能を欠損させる遺伝子改変、のうち、少なくとも一方を含むことが好ましく、特に(イ)を含むことが好ましい。
YhbJは、GlmSをネガティブに制御する酵素である。
yhbJ遺伝子としては、エシェリヒア属由来のyhbJ遺伝子が好ましい。具体的には例えば、エシェリヒア・コリ K-12株のyhbJ遺伝子が挙げられる。エシェリヒア・コリ K-12株のyhbJ遺伝子の塩基配列及び該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列は、公用のデータベースから取得できる。エシェリヒア・コリ K-12株のyhbJ遺伝子は、GenBank accession BAE77249.1として登録されている。
yhbJ遺伝子としては、配列番号27に示す塩基配列を含むDNAまたは、配列番号27に示す塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含みかつヘパロサン生産能を有するエシェリヒア属細菌においてyhbJ遺伝子の機能を欠損させる遺伝子改変をした際にglmS遺伝子の発現を増大させるDNAが挙げられる。
yhbJ遺伝子の活性は、GlmSの発現量をノーザンブロット法、ウエスタンブロット法などで調べることにより確認できる[Kalamorz F. et al, (2007) “Feedback control of glucosamine-6-phosphate synthase GlmS expression depends on the small RNA GlmZ and involves the novel protein YhbJ in Escherichia coli.” Mol Microbiol. 65(6):1518-33]。
((遺伝子の機能を欠損させる遺伝子改変))
本明細書において、標的の遺伝子の機能を欠損させる遺伝子改変としては、宿主の細菌のゲノムDNAのうち標的の遺伝子に相当する部分をコードするDNAに改変を加えることにより、標的の遺伝子の機能を欠損させ、標的の遺伝子に相当する部分がコードするタンパク質の機能を低減若しくは完全に停止させることが挙げられる。
本発明の方法において、標的の遺伝子に相当する部分をコードするDNAに加える改変の形態は、標的の遺伝子に相当する部分がコードするタンパク質の機能を低減若しくは完全に停止させるような形態であれば特に限定されず、公知の方法を適宜用いることができる。
標的の遺伝子に相当する部分がコードするタンパク質の機能を低減若しくは完全に停止させるような形態としては、例えば、次の(I)から(III)のいずれか1の改変が例示できる。
(I)標的の遺伝子に相当する部分をコードするDNAの全部または一部を除去する。
(II)標的の遺伝子に相当する部分をコードするDNAに、1または数個の塩基を置換、欠失もしくは付加する。
(III)標的の遺伝子に相当する部分をコードするDNAを、改変前のDNA配列との同一性が80%未満であるDNA配列と置き換える。
標的の遺伝子の機能の欠損としては、例えば、非改変株と比較して、標的の遺伝子の活性が好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下であることが挙げられる。
[ヘパロサンの製造方法]
本発明の一態様のヘパロサンの製造方法は、上述の本発明の一態様のヘパロサン生産微生物を培地で培養することを含む。
使用する培地は、本発明の一態様のヘパロサン生産微生物が増殖でき、ヘパロサンが生成蓄積される限り、特に制限されない。本明細書において、培地としては、例えば、細菌の培養に用いられる通常の培地を用いることができる。培地として、例えば、LB培地(Luria-Bertani培地)、ミネラル培地(Carbohydrate Research, 2012, 360, 19-24)が挙げられるが、これらに限定されない。培地としては、例えば、炭素源、窒素源、リン酸源、硫黄源、その他の各種有機成分や無機成分から選択される成分を必要に応じて含有する培地を用いることができる。培地成分の種類や濃度は、当業者が適宜設定してよい。
本明細書において、炭素源は、本発明の細菌が資化してヘパロサンを生成し得るものであれば、特に限定されない。炭素源としては、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、廃糖蜜、澱粉加水分解物、バイオマスの加水分解物等の糖類、酢酸、フマル酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸類、グリセロール、粗グリセロール、エタノール等のアルコール類、脂肪酸類が挙げられる。炭素源としては、1種の炭素源を用いてもよく、2種以上の炭素源を組み合わせてもよい。
本明細書において、窒素源としては、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、大豆タンパク質分解物等の有機窒素源、アンモニア、ウレアが挙げられる。窒素源としては、1種の窒素源を用いてもよく、2種またはそれ以上の窒素源を組み合わせてもよい。
本明細書において、リン酸源としては、例えば、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム等のリン酸塩、ピロリン酸等のリン酸ポリマーが挙げられる。リン酸源としては、1種のリン酸源を用いてもよく、2種またはそれ以上のリン酸源を組み合わせてもよい。
本明細書において、硫黄源としては、例えば、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩等の無機硫黄化合物、システイン、シスチン、グルタチオン等の含硫アミノ酸が挙げられる。硫黄源としては、1種の硫黄源を用いてもよく、2種またはそれ以上の硫黄源を組み合わせてもよい。
本明細書において、その他の各種有機成分や無機成分として、具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類;鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の微量金属類;ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ビタミンB12等のビタミン類;アミノ酸類;核酸類;これらを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆タンパク質分解物等の有機成分が挙げられる。その他の各種有機成分や無機成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
また、本明細書において、生育にアミノ酸などを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には、培地に要求される栄養素を補添することが好ましい。また、抗生物質耐性遺伝子を搭載するベクターを用いて遺伝子を導入した際は、培地に対応する抗生物質を添加するのが好ましい。
本明細書において、培養条件は、本発明の細菌が増殖でき、ヘパロサンが生成蓄積される限り、特に制限されない。培養は、例えば、細菌の培養に用いられる通常の条件で実施できる。培養条件は、当業者が適宜設定してよい。
本明細書において、培養は、例えば、液体培地を用いて、通気培養または振盪培養により、好気的に実施できる。培養温度は、例えば、30~37℃であってよい。培養期間は、例えば、16~72時間であってよい。培養は、回分培養(batch culture)、流加培養(Fed-batch culture)、連続培養(continuous culture)、またはそれらの組み合わせにより実施できる。また、培養は、前培養と本培養とに分けてもよい。前培養は、例えば、平板培地や液体培地を用いて行ってよい。
本明細書において、培養中の液体培地のpHは、例えば、pH4.0~9.0が好ましく、pH5.0~8.0がより好ましく、pH6.0~7.5が最も好ましい。特にpH6.0~7.5に保って培養を行うことにより、重量平均分子量(Mw)250000~500000のヘパロサンが得られ、このようなヘパロサンは、ヘパロサン由来化合物の製造に好ましい。
上記のようにして本発明の一態様のヘパロサン生産微生物を培養することにより、該微生物内及び培地中の少なくとも一方にヘパロサンが蓄積する。
培養液からヘパロサンを回収する方法は、ヘパロサンが回収されうる限り、特に制限されない。培養液からヘパロサンを回収する方法としては、例えば、実施例に記載する方法が挙げられる。具体的には、例えば、培養後の微生物を含む培養液を破砕後、培養液から培養上清を分離し、次いで、プロパノールまたはエタノール沈殿によって上清中のヘパロサンを沈降できる。添加するプロパノールまたはエタノールの量は、例えば、上清液量の2.5~3.5倍量であってよい。ヘパロサンの沈降には、プロパノールまたはエタノールに限られず、水と任意に混和する有機溶媒を使用できる。
前記有機溶媒としては、プロパノールおよびエタノールに加えて、メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、sec-ブタノール、プロピレングリコール、アセトニトリル、アセトン、DMF、DMSO、N-メチルピロリドン、ピリジン、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、THFが挙げられる。
沈殿したヘパロサンは、例えば、元の上清液量の2倍量の水に溶解できる。回収されるヘパロサンは、ヘパロサン以外に、細菌菌体、培地成分、水分、及び細菌の代謝副産物等の成分を含んでいてもよい。ヘパロサンは、所望の程度に精製されていてよい。ヘパロサンの純度は、例えば、30%(w/w)以上、50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、80%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以上であってよい。
ヘパロサンの検出および定量は、公知の方法により実施できる。具体的には例えば、実施例で後述するように、HPLC分析によって培養液中のヘパロサン濃度を測定できる。
本発明の一態様のヘパロサンの製造方法により得られるヘパロサンの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100000~700000、より好ましくは200000~600000、最も好ましくは250000~500000である。ヘパロサンの重量平均分子量の測定は、公知の方法により実施できる(国際公開第2017/115674号)。
[ヘパロサン由来化合物の製造方法]
本発明の一態様のヘパロサン由来化合物の製造方法は、上述の本発明の一態様のヘパロサン生産微生物を培地で培養することを含む。
製造されるヘパロサン由来化合物としては、N-脱アセチル化ヘパロサン、N-硫酸化ヘパロサン、N-硫酸化エピメリ化ヘパロサン、N-硫酸化低分子化ヘパロサン、N-硫酸化エピメリ化低分子化ヘパロサン、N-硫酸化6-O-硫酸化ヘパロサン、N-硫酸化6-O-硫酸化エピメリ化ヘパロサン、N-硫酸化2-O-硫酸化6-O-硫酸化ヘパロサン、N-硫酸化2-O-硫酸化6-O-硫酸化エピメリ化低分子化ヘパロサン、N-硫酸化6-O-硫酸化低分子化ヘパロサン、N-硫酸化6-O-硫酸化エピメリ化低分子化ヘパロサン、N-硫酸化2-O-硫酸化6-O-硫酸化低分子化ヘパロサン、N-硫酸化2-O-硫酸化6-O-硫酸化エピメリ化低分子化ヘパロサン、ヘパラン硫酸、低分子量ヘパリン又はヘパリンが好ましく、N-脱アセチル化ヘパロサン又はヘパリンがより好ましく、ヘパリンが最も好ましい。
「N-脱アセチル化」とは、ヘパロサンのN-アセチル-D-グルコサミン残基のN-アセチル基が脱アセチル化されていることを意味する。
「N-硫酸化」とは、N-脱アセチル化ヘパロサンのアミノ基が硫酸化されていることを意味する。
「エピメリ化」とは、ヘパロサンのβ-D-グルクロン酸残基がα-L-イズロン酸残基に変換されていることを意味する。
「低分子化」(depolymerization)とは、分子量が小さくなるように処理されることを意味する。例えば、「低分子化」ヘパロサン化合物は、プルランを標準としてGPCにより測定される値として、1000~150000、好ましくは、8000~60000の数平均分子量(Mn)、および2000~300000、好ましくは、10000~100000の重量平均分子量(Mw)を有する。
「6-O-硫酸化」とは、N-アセチル-D-グルコサミン残基の6位の水酸基が硫酸化されていることを意味する。
「2-O-硫酸化」とは、ヘキスロン酸残基(好ましくはα-L-イズロン酸残基)の2位の水酸基が硫酸化されていることを意味する。
本発明のヘパロサン由来化合物の製造方法の一態様は、上述の本発明の一態様のヘパロサン生産微生物を培地で培養する工程に加えて、以下の工程の少なくとも1つを有していてもよい。以下の工程は、ヘパロサンからヘパリンを製造する際の工程の例である(国際公開第2017/115674号、国際公開第2017/115675号、国際公開第2018/048973号、国際公開第2021/201282号)。
・ヘパロサンを部分的にN-脱アセチル化する工程
・N-脱アセチル化ヘパロサンのアミノ基を硫酸化する工程
・ヘパロサンを分解して、より低分子量のヘパロサンを生成する工程
・ヘパロサン中のβ-D-グルクロン酸残基を、エピマーであるα-L-イズロン酸(IdoA)残基に異性化する工程
・ヘパロサン中のヘキスロン酸残基(好ましくはα-L-イズロン酸残基)中の2位の水酸基を硫酸化する工程
・ヘパロサン中のα-D-グルコサミン残基の6位の水酸基を硫酸化する工程
・ヘパロサン中のα-D-グルコサミン残基の3位の水酸基を硫酸化する工程
・ヘパリンを分解して、低分子量ヘパリンを生成する工程
上記の工程により、培養物中または反応液中にヘパロサン由来化合物を生成させることにより、ヘパロサン由来化合物を製造できる。培養物中及び反応液中のヘパロサン由来化合物の定量は、カルバゾール法(Bitter and Muir, Anal Biochem, 1962, 4: 330-334)を用いて実施できる。
該培養物中または該反応液中からのヘパロサン由来化合物の採取は、通常、イオン交換樹脂法、沈殿法、その他の公知の方法を組み合わせることにより実施できる。採取したヘパロサン由来化合物の定量、分析としては、紫外可視吸光度検出器(UV)および示差屈折率検出器(RI)を使用した水系サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(SEC-RI/UV法)、HPLC、LC/MS、NMRが挙げられる。これらの手法は、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。
以下に、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[分析例]
実施例において、ヘパロサンの濃度(g/L)の測定は以下に示す手順で行った。
培養後の微生物を含む培養液をビーズショッカーにて破砕後、遠心分離し上清を回収した。該上清に10N水酸化ナトリウムを6%(v/v)、濃塩酸を10%(v/v)添加し、イソプロパノール沈殿によりヘパロサンを回収した。回収したヘパロサンを蒸留水に溶解したものをヘパロサンサンプルとした。下記の条件でHPLC分析を行った。
[HPLC分析条件]
カラム:TSK Gel G6000 PW
カラム温度:30℃
遊離液組成:100mM 酢酸アンモニウム水溶液
流速:0.6ml/min
検出器;RID-10A(株式会社島津製作所製)
標準試薬としてヘパリン(Celsus社製)を用いた。標準試薬を5g/Lとなるよう蒸留水に溶解させ、HPLC分析を行った。得られたエリア値からヘパロサンサンプルの濃度を相対的に定量した。
[実施例1]ヘパロサンの製造に用いる微生物の造成
(1)ヘパロサン生産遺伝子発現用プラスミドの造成
大腸菌 Nissle 1917株のヘパロサン合成遺伝子kfiA、kfiCおよびkfiDを発現させるプラスミドを、2種類のリンカー配列を使用して以下の手順で作成した。
大腸菌 Nissle 1917株および大腸菌 K株を周知の培養方法により培養し、微生物のゲノムDNAを単離精製した。トリガーファクター断片とkfiCD断片間のリンカー配列がリンカー1(配列番号21、22)となるよう設計した表1に示すプライマーセットを用いて、表1の「鋳型」に記載されたDNAを鋳型としてPCRを行い、各増幅DNA断片を得た。
Figure 2024060562000001
上記で得られたkfiA断片、kfiCD断片及びトリガーファクター断片を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号1および配列番号4で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとしてPCRを実施し、kfiA断片、トリガーファクター断片およびkfiCD断片を連結させた約5.3KBのDNA断片(以下、kfiA-TFリンカー1-kfiCD断片という)を得た。
kfiA-TFリンカー1-kfiCD断片と発現ベクターpQE80L(Qiagen社製)をIn-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて連結することにより、発現プラスミドpQE80L-kfiA-TFリンカー1-kfiCD(以下、pKfiACD1という)を得た。
またトリガーファクター断片とkfiCD断片間のリンカー配列がリンカー2(配列番号23、24)となるよう設計した表2に示すプライマーセットを用いて、表2の「鋳型」に記載されたDNAを鋳型としてPCRを行い、各増幅DNA断片を得た。
Figure 2024060562000002
上記で得られたkfiA-トリガーファクター断片、kfiCD断片を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号1および9で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとしてPCRを実施し、kfiA-トリガーファクター断片およびkfiCD断片を結合させた約5.3kbのDNA断片(以下、kfiA-TFリンカー2-kfiCD断片という)を得た。
kfiA-TFリンカー2-kfiCD断片と発現ベクターpQE80LをIn-Fusion HD Cloning Kitを用いて連結することにより、発現プラスミドpQE80L-kfiA-TFリンカー2-kfiCD(以下、pKfiACD2という)を得た。
(2)前駆体であるUDP-GlcNAc生産強化株の造成
UDP-GlcNAc生合成に関わるL-グルタミン-D-フルクトース6リン酸アミノトランスフェラーゼをコードするglmS遺伝子の発現プラスミドを導入した大腸菌株および、glmS遺伝子の活性を負に制御する転写制御因子をコードするyhbJ遺伝子を破壊した大腸菌株を以下の手順で作成した。
1:glmS発現プラスミド導入株の造成
glmS遺伝子を発現させるプラスミドを以下の手順で作製した。
大腸菌 W株を周知の培養方法により培養し、微生物のゲノムDNAを単離精製した。表3に示すプライマーセットを用いて、表3の「鋳型」に記載されたDNAを鋳型としてPCRを行い、各増幅DNA断片を得た。
Figure 2024060562000003
上記で得られたglmS断片およびトリプトファンプロモーター断片を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号12および11で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとしてPCRを実施し、トリプトファンプロモーター断片とglmS断片を連結させた約2.2kbのDNA断片(以下、トリプトファンプロモーター-glmS断片という)を得た。
トリプトファンプロモーター-glmS断片と発現ベクターpMW219(ニッポンジーン社製)をIn-Fusion HD Cloning Kitを用いて連結することにより、発現プラスミドpMW219―glmSを得た。
pMW219―glmSをBW25113株(Keio collection(Systematic single-gene knock-out mutants of E.coli K-12))に形質転換した。形質転換にあたっては、カナマイシン硫酸塩50mg/Lを含む寒天培地で選抜した。この形質転換によって得られた菌株をBW25113/pMW219-glmS株とした。
2:yhbJ破壊株の造成
BW25113株を宿主として用い、Babaら[Baba T. et al. (2006) Mol systems Biol]と同様の方法により、yhbJ遺伝子を完全に欠損させたBW25113ΔyhbJ株を得た。
なお、遺伝子破壊の際にマーカーとして用いるDNA断片の取得は以下の方法で行った。まず、Bacillus Subtilis 168株のゲノムDNAを定法により調製した。表4の「プライマーセット」に表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして、表4の「鋳型」に記載されたDNAを鋳型としてPCRを行い、各増幅DNA断片を得た。
Figure 2024060562000004
次に、増幅DNA断片のcatおよびsacBを等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号14および17で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いてPCRを行い、cat遺伝子およびsacB遺伝子を含むDNA断片を得た。これをyhbJ破壊の際にマーカーとして用いた。
(3)ヘパロサン生産用プラスミドを有する微生物の造成
上記(2)で得られたBW25113/pMW219-glmS株およびBW25113ΔyhbJ株に、上記(1)で得られたpKfiACD1またはpKfiACD2プラスミドを形質転換した。形質転換にあたっては、BW25113/pMW219-glmS株の場合はアンピシリンナトリウム50mg/L、カナマイシン硫酸塩50mg/Lを含む寒天培地で、BW25113ΔyhbJ株の場合はアンピシリンナトリウム50mg/Lを含む寒天培地で選抜した。形質転換により取得した株をそれぞれ、BW25113/pMW219-glmS、pKfiACD1株、BW25112/pMW219-glmS、pKfiACD2株、BW25113ΔyhbJ/pKfiACD1株、BW25113ΔyhbJ/pKfiACD2株と命名した。
[実施例2]発酵法によるヘパロサンの製造
実施例1で得られたBW25113/pMW219-glmS、pKfiACD1株、BW25112/pMW219-glmS、pKfiACD2株、BW25113ΔyhbJ/pKfiACD1株、BW25113ΔyhbJ/pKfiACD2株を下記の手順で培養し、ヘパロサンの生産試験を行った。なお、各菌株について3サンプルずつ培養及び培養液の分析を行い、測定結果は3サンプルの平均値で示した。
まず、各菌株をLBプレート上で30℃にて終夜培養した後、LB培地5mlが入った太型試験管に植菌して、30℃で17時間培養した。
次に該培養液を生産培地[グルコース 20g/L、硫酸マグネシウム7水和物 1.0g/L、リン酸1カリウム 13.5g/L、リン酸アンモニウム 4g/L、クエン酸 1.7g/L、ビタミンB1 10mg/L、硫酸鉄7水和物 100mg/L、塩化カルシウム 10mg/L、硫酸亜鉛7水和物 22mg/L、硫酸マンガン4水和物 5mg/L、硫酸銅5水和物 10mg/L、モリブデン酸アンモニウム4水和物 1mg/L、ホウ酸ナトリウム10水和物 0.2mg/L(水酸化ナトリウム水溶液によりpH6.8に調整した後オートクレーブした)(硫酸鉄7水和物、塩化カルシウム、硫酸亜鉛7水和物、硫酸マンガン4水和物、硫酸銅5水和物、モリブデン酸アンモニウム4水和物およびホウ酸ナトリウム10水和物は塩酸に溶解させ別途調整し、オートクレーブ前に混合した)(グルコースおよび硫酸マグネシウム7水和物は別途調整してオートクレーブし、冷却後に混合した)]が5ml入った太型試験管に1%植菌後、30℃で振盪培養した。6時間後に誘導剤であるIPTGを終濃度1mMとなるよう添加しさらに24時間振盪培養した。なお、BW25113/pMW219-glmS、pKfiACD1株、BW25112/pMW219-glmS、pKfiACD2株の培養には上記の各培地にアンピシリンナトリウム50mg/Lおよびカナマイシン硫酸塩50mg/Lを、BW25113ΔyhbJ/pKfiACD1株、BW25113ΔyhbJ/pKfiACD2株の培養にはアンピシリンナトリウム50mg/Lをそれぞれ添加した培地を使用した。
また、培養液を分析例に記載の方法で前処理し、HPLC分析によって培養液中のヘパロサン濃度を測定した。結果を表5に示す。
Figure 2024060562000005
表5の結果から、大腸菌K株にヘパロサン生産に関与するkfiAおよびkfiC遺伝子を導入することにより、ヘパロサンの生産が可能となることが分かった。また、L-グルタミン-D-フルクトース6リン酸アミノトランスフェラーゼの発現強化に関しては、yhbJ遺伝子の機能を欠損させる遺伝子改変を導入した株と比較して、glmS遺伝子のコピー数を高める遺伝子改変を導入した株において培養液中のヘパロサン濃度が高かった。
配列番号1:大腸菌 Nissle 1917株由来kfiA遺伝子増幅用プライマーFの塩基配列
配列番号2:大腸菌 Nissle 1917株由来kfiA遺伝子増幅用プライマーRの塩基配列
配列番号3:大腸菌 Nissle 1917株由来kfiCD遺伝子増幅用プライマーFの塩基配列
配列番号4:大腸菌 Nissle 1917株由来kfiCD遺伝子増幅用プライマーRの塩基配列
配列番号5:大腸菌 K株由来tig遺伝子増幅用プライマーFの塩基配列
配列番号6:大腸菌 K株由来tig遺伝子増幅用プライマーRの塩基配列
配列番号7:大腸菌 K株由来tig遺伝子増幅用プライマーRの塩基配列
配列番号8:大腸菌 Nissle 1917株由来kfiCD遺伝子増幅用プライマーFの塩基配列
配列番号9:大腸菌 Nissle 1917株由来kfiCD遺伝子増幅用プライマーRの塩基配列
配列番号10:大腸菌 W株由来glmS遺伝子増幅用プライマーFの塩基配列
配列番号11:大腸菌 W株由来glmS遺伝子増幅用プライマーRの塩基配列
配列番号12:大腸菌 W株由来トリプトファンプロモーター遺伝子増幅用プライマーFの塩基配列
配列番号13:大腸菌 W株由来トリプトファンプロモーター遺伝子増幅用プライマーRの塩基配列
配列番号14:pHSG396のcat遺伝子増幅用プライマーFの塩基配列
配列番号15:pHSG396のcat遺伝子増幅用プライマーRの塩基配列
配列番号16:Bacillus Subtilis 168株由来sacB遺伝子増幅用プライマーFの塩基配列
配列番号17:Bacillus Subtilis 168株由来sacB遺伝子増幅用プライマーRの塩基配列
配列番号18:大腸菌 Nissle株由来kfiA遺伝子の塩基配列
配列番号19:大腸菌 Nissle株由来kfiC遺伝子の塩基配列
配列番号20:大腸菌 K-12株由来tig遺伝子の塩基配列
配列番号21:リンカー1の塩基配列
配列番号22:リンカー1のアミノ酸配列
配列番号23:リンカー2の塩基配列
配列番号24:リンカー2のアミノ酸配列
配列番号25:大腸菌 Nissle株由来kfiD遺伝子の塩基配列
配列番号26:大腸菌 W株由来glmS遺伝子の塩基配列
配列番号27:大腸菌 K-12株由来yhbJ遺伝子の塩基配列

Claims (7)

  1. 以下の(a)の遺伝子改変を有し、かつ(b)の特徴を有する、ヘパロサン生産微生物。
    (a)kfiA遺伝子およびkfiC遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変
    (b)炭素源からUDP-グルクロン酸およびUDP-N-アセチルグルコサミンを供給する能力を有する微生物
  2. 前記(a)の遺伝子改変が、kfiC遺伝子にトリガーファクターをコードする遺伝子を連結することを含む、請求項1に記載のヘパロサン生産微生物。
  3. さらに以下の(c)の遺伝子改変を有する、請求項1または2に記載のヘパロサン生産微生物。
    (c)kfiD遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変
  4. さらに以下の(d)の遺伝子改変を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のヘパロサン生産微生物。
    (d)glmS遺伝子の発現を増大させる遺伝子改変
  5. 前記(d)の遺伝子改変が、glmS遺伝子の発現調節領域の改変および前記glmS遺伝子のコピー数を高めることの少なくとも一方である、請求項4に記載のヘパロサン生産微生物。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載のヘパロサン生産微生物を培地で培養することを含む、ヘパロサンの製造方法。
  7. 請求項1~5のいずれか1項に記載のヘパロサン生産微生物を培地で培養することを含む、ヘパロサン由来化合物の製造方法。
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