JP2024055573A - ダンプトラック - Google Patents
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Abstract
【課題】鉱山の走行サイクルにおいて蓄電池の過放電を防止することにより走行性能を確保することが可能なダンプトラックを提供する。【解決手段】コントローラ30は、走行サイクルの開始時点の蓄電池16の充電率を初期SoCとして検出し、前記走行サイクルの終了時点の蓄電池16の充電率を最終SoCとして検出し、前記最終SoCが前記初期SoCより高い場合は、第1電力閾値P1をプラス側に補正し、または、第2電力閾値P2をマイナス側に補正し、前記最終SoCが前記初期SoCより低い場合は、第1電力閾値P1をマイナス側に補正し、または、第2電力閾値P2をプラス側に補正する。【選択図】 図5
Description
本発明は、ダンプトラックに関する。
地球温暖化への対策として、自動車や鉄道分野では蓄電池を活用したシステムが普及している。例えばハイブリッド自動車はエンジンと蓄電池を搭載しており、車両制動時の回生エネルギーを蓄電池に蓄えるとともに加速時に電力アシストすることでエンジンの燃料使用量を削減できる。また、蓄電池の電力アシストによりエンジンの出力を低減できるため、エンジンを小型化することができる。
鉱山現場における搬送用ダンプトラックのような大型作業車両も自動車と同様にエンジンで駆動される発電機の発電電力を利用してモータを駆動する。ダンプトラック制動時の回生エネルギーは抵抗器で熱として消費していたが、蓄電池を搭載することでハイブリッド自動車のようにエンジンの燃料使用量を削減できる。一方で、蓄電池の搭載によりエンジンを小型化する場合、ダンプトラックの登坂時など大電力が必要な場合にエンジンと蓄電池の双方を用いて走行する必要がある。
本技術分野の背景技術を開示する先行技術文献として、特許文献1がある。特許文献1には、「走行制御装置は、動力源である電動機および内燃エンジンと、電動機を駆動するエネルギーおよび電動機の回生制動によって回収される回生エネルギーを貯蔵する蓄電池とを備える車両に搭載される。走行制御装置は、車両の速度を予想した速度プロファイルを作成する作成部と、速度プロファイルに基づいて、回収可能な回生エネルギーの予想量を推定する推定部と、回生エネルギーの予想量と、車両の熱に関する要求を表す熱情報とに基づいて、走行に用いる動力源を決定する決定部とを備える。」と記載されている。特許文献1に記載の走行制御装置によれば、回生エネルギーの回収量の予想と、車両の熱に関する要求を表す熱情報とに基づいて、電動機に供給する駆動用エネルギーを決定することで、内燃エンジンによる熱量の発生や蓄電池の冷却や加熱のような熱管理を好適に行うことができる。
しかしながら、特許文献1には、蓄電池の残量を管理する方法については記載されていない。ダンプトラックで蓄電池の残量が不足すると、登坂時などに蓄電池の電力アシストが得られず、走行性能が低下するおそれがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉱山の走行サイクルにおいて蓄電池の過放電を防止することにより走行性能を確保することが可能なダンプトラックを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、動力源である電動機と、前記電動機に電力を供給する発電機と、前記電動機に供給する電力および前記電動機の回生電力を蓄える蓄電池と、前記蓄電池の出力電力を調整する双方向コンバータと、前記双方向コンバータを制御するコントローラとを備え、積荷場と放土場との間の走行経路で構成される走行サイクルを繰り返し走行するダンプトラックにおいて、前記コントローラは、前記ダンプトラックの必要電力が所定の第1電力閾値未満である場合は、前記蓄電池の出力電力指令値を前記必要電力に設定し、前記必要電力が、前記第1電力閾値より大きい値に設定された第2電力閾値より大きい場合は、前記出力電力指令値を前記必要電力から前記第2電力閾値を引いた差分に設定し、前記必要電力が前記第1電力閾値以上でかつ前記第2電力閾値未満である場合は、前記出力電力指令値を前記第1電力閾値より小さい値に設定し、前記走行サイクルの開始時点の前記蓄電池のSoCを初期SoCとして検出し、前記走行サイクルの終了時点の前記蓄電池の充電率を最終SoCとして検出し、前記最終SoCが前記初期SoCより高い場合は、前記第1電力閾値をプラス側に補正し、または、前記第2電力閾値をマイナス側に補正し、前記最終SoCが前記初期SoCより低い場合は、前記第1電力閾値をマイナス側に補正し、または、前記第2電力閾値をプラス側に補正するものとする。
以上のように構成した本発明によれば、各走行サイクルの初期SoCと最終SoCとが一致するように(蓄電池の充放電収支がゼロとなるように)第1電力閾値または第2電力閾値が補正される。これにより、蓄電池の過放電を防止することができるため、ダンプトラックの走行性能を確保することが可能となる。
本発明によれば、鉱山の走行サイクルにおいて蓄電池の過放電を防止することによりダンプトラックの走行性能を確保することが可能となる。
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の要素には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
図1は、本発明の第1の実施例におけるダンプトラックの構成図である。ダンプトラックは、フレーム1上に土砂等を積載するためのボディ5が搭載され、両者がホイストシリンダ6により連結されている。またフレーム1には、機構部品(図示せず)を介して前輪2、後輪3、燃料タンク9などが取り付けられている。後輪3の回転軸部には、後輪3を駆動する電動機としてのモータ10と、後輪3の回転数を調整する減速機(図示せず)が収められている。
フレーム1にはさらに、オペレータが歩行可能なデッキが取り付けられている。デッキにはダンプトラックの操作を行うためにオペレータが搭乗するためのキャブ4、各種電力機器が収納されたコントロールキャビネット8、余剰エネルギーを熱として放散するための複数のグリッド抵抗7が搭載されている。
また、図1で前輪2により隠れた部分には、エンジン11(図2に示す)および主に走行モータ用電力源としての主機発電機12(図2に示す)、主に補機類用電力源としての補機発電機(図示せず)、主に油圧機器用油圧源としてのメインポンプ(図示せず)などが搭載されている。なお、後述する蓄電池16(図2に示す)や双方向コンバータ17(図2に示す)はダンプトラックの車体上(デッキの上やフレーム1など)に取り付けられている。
次に、オペレータがダンプトラックの操作方法について説明する。キャブ4内にはアクセルペダル、ブレーキペダル、ホイストペダル、ハンドル(いずれも図示せず)が設置されている。また、オペレータはキャブ4内のアクセルペダル、ブレーキペダルの踏み込み量によりダンプトラックの加速力、制動力を制御することができる。
さらにオペレータはハンドルを左右に回転させることによって油圧駆動による操舵操作を行い、ホイストペダルを踏み込むことにより油圧駆動によるダンプ操作を行うが、操舵操作、ダンプ操作のシステムについては従来と同様であるため、詳述しない。
図2は、本実施例におけるダンプトラックに搭載された電力変換システムの構成図である。電力変換システムはエンジン11、主機発電機(以下、発電機)12、整流器13、直流電圧を検出するための電圧センサ21、インバータ14、モータ10、モータ10の電流を検出するための電流センサ22a,22b、モータ10の速度センサ15、蓄電池16、蓄電池16の電流を検出するための電流センサ22c、蓄電池16の充電率(以下、SoC:State of Charge)検出するためのSoC検出装置31、蓄電池16の電力を制御する双方向コンバータ17、グリッド抵抗7、グリッド抵抗7の電力を制御するグリッドチョッパ18、コントローラ30で構成される。また、補機類(図示せず)の消費電力は蓄電池16から供給されるか、整流器13およびインバータ14の直流側からコンバータ(図示せず)を介して供給される。
以下、ダンプトラック加速時のパワーフローを説明する。燃料タンク9からエンジン11に燃料が供給されエンジンの回転動力が発生する。この回転動力を発電機12に入力することで、機械エネルギーを電気エネルギーに変換し三相交流電力を得る。得られた三相交流電力は整流器13により交流から直流に変換される。ここで、整流器13はダイオード整流器またはスイッチング素子を用いたPWMコンバータのいずれでもよい。
インバータ14は直流電力を交流電力に変換しモータ10を駆動する。インバータの回路構成は2レベル回路または3レベル回路のいずれでもよい。蓄電池16は双方向コンバータ17を介して整流器13およびインバータ14の直流側に接続される。すなわち、ダンプトラック加速時に蓄電池16から出力される電力は双方向コンバータ17によって制御される。グリッド抵抗7はグリッドチョッパを介して整流器13およびインバータ14の直流側に接続される。グリッドチョッパは整流器13およびインバータ14の直流電圧に応じて動作を開始する。
本実施例におけるダンプトラックは、モータ10の電力供給源として、エンジン11により駆動される発電機12と蓄電池16とを備えており、蓄電池の電力アシストによりエンジンの出力を低減できるため、モータ10の最大電力が同一でかつ蓄電池16を搭載していないダンプトラックと比べて、エンジン11を小型化することができる。
以下、ダンプトラック制動時のパワーフローを説明する。ダンプトラックが制動する場合にはモータ10が発電機となり回生エネルギーを発生し、ダンプトラックの運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。発電された交流電力をインバータが直流電力に変換する。変換された直流電力は双方向コンバータ17を介して蓄電池16を充電またはグリッドチョッパ18を介してグリッド抵抗7で熱として消費される。
蓄電池16に充電された回生エネルギーはダンプトラック加速時にエンジン11をアシストする電力として使用する。このとき、蓄電池16で充電する回生エネルギーが大きい、すなわちグリッド抵抗7で消費するエネルギーが小さいほど、ダンプトラック加速時のエンジン11の出力を低減できるためエンジン11の燃料使用量を削減することができる。
以下、コントローラ30の構成を説明する。コントローラ30は整流器13およびインバータ14の直流側に接続された電圧センサ21で検出した直流電圧、電流センサ22a,22bで検出したモータ10の電流、速度センサ15で検出したモータ10の速度、電流センサ22cで検出した蓄電池16の電流、蓄電池のSoCおよびオペレータのペダル操作量に基づいて、エンジン11、発電機12、インバータ14、双方向コンバータ17、グリッドチョッパ18に指令値を出力する。
図3は、電力変換システムによるダンプトラック加速時の電力制御を示す概略図である。本実施例における電力変換システムはダンプトラックの必要電力Pに対して二つの電力閾値P1,P2を設けており、必要電力Pと電力閾値P1,P2の大小関係により3つのモードを有する。本実施例では電力閾値P1は電力閾値P2未満の値とする。なお、必要電力Pはオペレータのペダル操作量に基づいてコントローラ30により算出される。また、必要電力Pと電力閾値P1,P2との比較もコントローラ30により行われる。
以下では3つのモードに関して説明する。まず、Mode1はダンプトラックの必要電力Pが電力閾値P2よりも高い場合である。本実施例では電力閾値P2はエンジン11の定格出力に等しい値に設定する。すなわち、Mode1では、必要電力Pがエンジン11の定格出力である電力閾値P2よりも高く、エンジン11のみで必要電力Pを賄うことができないため、エンジン11と蓄電池16の双方を用いてダンプトラックを駆動する。
このように必要電力Pが高くなるのは、例えばダンプトラックが土砂などを積載した状態で上り坂を登坂するケースである。このようなケースでは、エンジン11の定格出力(=電力閾値P2)が必要電力Pを下回るため、蓄電池16すなわち双方向コンバータ17の電力指令値は不足分の電力である“P-P2”となる。なお、Mode1での走行が必要であるにも関わらず、蓄電池16のSoC不足などにより蓄電池16から所望の電力を出力できない場合は、モータ10のトルクが不足しダンプトラックの加速性能が低下する。すなわち、ダンプトラックの走行サイクル時間を遵守するためには、Mode1で所望の電力を出力する必要がある。
次に、Mode2はダンプトラックの必要電力Pが電力閾値P1以上かつ電力閾値P2未満の場合である。電力閾値P2をエンジン11の定格出力に設定している場合、必要電力Pが電力閾値P2より低ければ、必要電力Pはエンジン11のみで賄うことができる。このため、Mode2において蓄電池16からの出力は不要であるため、双方向コンバータ17の電力指令値は“0”となる。なお、Mode2における電力指令値は必ずしも“0”にする必要はなく、必要電力Pに対して十分小さい値(例えば電力閾値P1の数%以下)であれば、後述する本発明の効果は得られる。
最後に、Mode3はダンプトラックの必要電力Pが電力閾値P1未満の場合である。蓄電池16を搭載したダンプトラックの燃費改善効果を向上するためには、鉱山走行の1サイクルまたは複数サイクルを通じて蓄電池16の充放電収支をゼロとすることが望ましい。ここでいう充放電収支とは、ダンプトラック制動時に発生する回生エネルギーのうち蓄電池16に充電される電力量(回生電力量)から、ダンプトラック加速時や補機駆動時に蓄電池16から出力される電力量(出力電力量)を差し引いた差分である。
上記のMode1では蓄電池16の出力電力を用いて走行するが、蓄電池16の出力電力を用いて走行するモードがMode1のみでは回生電力量が出力電力量を上回ってしまい、充放電収支がプラスとなってしまう場合がある。この場合、燃費改善効果を向上するためには蓄電池16の電力を用いてモータ10を駆動する機会を増やす必要がある。そこで、Mode3でも蓄電池16の出力電力を用いてモータ10を駆動することとする。Mode3ではMode2と同様にエンジン11の出力のみで必要電力Pを賄うことができるが、一般的にエンジン11は出力が低い場合に燃料消費量が高いためダンプトラックの燃費が悪化する傾向にある。すなわち、エンジン11の燃費が悪い領域では蓄電池16のみを用いてモータ10を駆動する方が燃費を改善できる。従って、Mode3ではエンジン11の出力をゼロとし、双方向コンバータ17の電力指令値を必要電力“P”とする。
なお、蓄電池16のSoCが低下した場合にエンジン11を用いて蓄電池16を充電することが考えられる。その場合、エンジン11から双方向コンバータ17を介して蓄電池16を充電し、蓄電池16から双方向コンバータ17を介してインバータ14に電力を供給することとなる。ただし、双方向コンバータ17で発生する損失を考慮すると、燃費を改善するためにはエンジン11から蓄電池16を充電するモードは使用しない方がよいケースがある。
図4は、双方向コンバータ17の構成図である。なお、本実施例における双方向コンバータ17は非絶縁型のチョッパ回路で構成されているが、絶縁型の双方向コンバータでもよい。以下、双方向コンバータ17の回路構成を説明する。
双方向コンバータ17はリアクトル24、スイッチング素子Q1,Q2、スイッチング素子Q1,Q2にそれぞれ逆並列接続されたダイオードD1,D2、キャパシタ23で構成される。リアクトル24は空芯または鉄心でよい。スイッチング素子Q1,Q2は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)などの電圧駆動型の半導体素子で良い。
スイッチング素子Q1,Q2がMOSFETの場合は外付けにダイオードD1,D2を接続せず、スイッチング素子Q1,Q2のボディダイオードを用いてもよい。ボディダイオードを使用することで外付けダイオードD1,D2を削除することができ、双方向コンバータ17を小型化することができる。また、スイッチング素子Q1,Q2およびダイオードD1,D2の半導体母材としてSi(シリコン)やSiよりバンドギャップが広いSiC(Silicon Carbide:炭化ケイ素)やGaN(Gallium Nitride:窒化ガリウム)でもよい。SiCやGaNを用いることでSiに比べて双方向コンバータ17で発生する損失を低減することができ、スイッチング素子Q1,Q2、ダイオードD1,D2の冷却器を簡素化することで、双方向コンバータ17を小型化することができる。
以下、双方向コンバータ17と蓄電池16の動作を説明する。ここではダンプトラック加速時の動作、すなわち、蓄電池16から双方向コンバータ17を介してインバータ14(図2に示す)に電力を供給する動作を説明する。コントローラ30は、電流センサ22cで検出した蓄電池16の電流、電圧センサ21で検出した整流器13およびインバータ14の直流電圧、SoC検出装置31で検出した蓄電池16のSoCに基づいて、双方向コンバータ17の出力電圧、出力電流、出力電力が所望の値となるようにスイッチング素子Q1,Q2のゲート信号を出力する。なお、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2は同時にONしないようにデッドタイムが挿入される。
スイッチング素子Q2にON信号が入力されると蓄電池16、リアクトル24、スイッチング素子Q2の電流経路が形成される。すなわち、リアクトル24にエネルギーが蓄えられる。次に、スイッチング素子Q2にOFF信号が入力され、スイッチング素子Q1にON信号が入力されると、蓄電池16、リアクトル24、ダイオードD1、インバータ14(図2に示す)の電流経路が形成される。このように動作することで、蓄電池16の電圧が整流器13およびインバータ14の直流電圧よりも低い場合でも、リアクトルのエネルギーを利用することで蓄電池16の電圧を昇圧でき、インバータ14に電力を供給することができる。前述の通り、インバータ14に供給する電力はスイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2のON比率により制御することができる。
図5は、双方向コンバータ17の制御に関わるコントローラ30の処理を示すフローチャートである。以下、各ステップを順に説明する。
まず、蓄電池16の初期SoCを取得する(ステップ100)。初期SoCは、ダンプトラックが鉱山走行の1サイクルを開始した時点のSoCである。鉱山走行の1サイクルとは、積荷場と放土場との間の走行経路で構成される走行サイクルである。1サイクルの開始時点と終了時点の検出方法は後述する。
ステップ100に続き、電力閾値P1,P2を設定する(ステップ101)。本実施例では電力閾値P2はエンジン11の定格出力に等しい値に設定し、電力閾値P1はゼロに設定する。なお、電力閾値P1は鉱山走行の計算結果を用いて蓄電池16の充放電収支がゼロとなる値を入力してもよく、また以前に同一鉱山を走行した同ダンプトラックや別ダンプトラックのデータを参照してもよい。このように電力閾値P1をゼロではなく適切な値に予め設定しておくことで、後述する電力閾値P1の補正期間を短縮することが可能となる。
ステップ101に続き、ダンプトラックの必要電力Pが電力閾値P2より高いか否かを判定する(ステップ102)。必要電力Pが電力閾値P2より高い場合はMode1の動作となり、双方向コンバータ17の電力指令値を“P-P2”とする(ステップ103)。必要電力Pが電力閾値P2以下の場合はステップ104に進む。
ステップ104では、ダンプトラックの必要電力Pが電力閾値P1以上であるか否かを判定する。必要電力Pが電力閾値P1以上の場合はMode2の動作となり、双方向コンバータ17の電力指令値を“0”とする(ステップ105)。必要電力Pが電力閾値P1未満の場合はMode3の動作となり、双方向コンバータ17の電力指令値を“P1”とする(ステップ106)。
ステップ103,105,106のいずれかに続き、ダンプトラックが1サイクルの走行を終了したか否かを判定する(ステップ107)。当該判定は、後述する1サイクル終了フラグを用いて行われる。1サイクル終了フラグがOFFの場合は、ステップ102に戻る。すなわち、ダンプトラックの走行中は、ステップ102~106が繰り返し実行されることにより、双方向コンバータ17の電力指令が生成される。1サイクル終了フラグがONの場合は、ステップ108に進む。
ステップ108では、蓄電池16の最終SoCを取得する。最終SoCは、ダンプトラックが鉱山走行の1サイクルを終了した時点のSoCである。
ステップ108に続き、初期SoCと最終SoCに基づいて電力閾値P1の補正量αを算出する(ステップ109)。補正量αは一定値でもよいが、図6に示すように初期SoCと最終SoCの差分の絶対値が大きいほど補正量αを大きくしてもよい。このようにすることで、蓄電池16の充放電収支を少ない走行サイクル数でゼロにすることができる。
ステップ109に続き、初期SoCが最終SoCより高いか否かを判定する(ステップ110)。初期SoCが最終SoCより高い場合、蓄電池16の出力電力量が回生電力量を上回っているため、次サイクルでは蓄電池16の出力電力量を減少させる必要がある。出力電力量を減少させず次サイクルでも蓄電池16の出力電力量が回生電力量を上回ると、蓄電池16のSoCが下限値に達し、蓄電池16から電力を出力できなくなるおそれがある。そこで、本実施例では、初期SoCが最終SoCより高い場合は、次サイクルの電力閾値P1をマイナス側に補正して出力電力量を減少させる。具体的には、次サイクルの電力閾値P1を“P1-α”とする(ステップ111)。初期SoCが最終SoC以下の場合は、ステップ112に進む。
ステップ112では、初期SoCが最終SoCより低いか否かを判定する。初期SoCが最終SoCより低い場合、蓄電池16の出力電力量が回生電力量を下回るため、次サイクルでは蓄電池16の出力電力量を増加させる必要がある。出力電力量を増加させず次サイクルでも出力電力量が回生電力量を下回ると、蓄電池16のSoCが上限値に達し、蓄電池16に充電できなくなるおそれがある。そこで、本実施例では、初期SoCが最終SoCより低い場合は次サイクルの電力閾値P1をプラス側に補正して出力電力量を増加させる。具体的には、次サイクルの電力閾値P1を“P1+α”とする(ステップ113)。
ステップ112で初期SoCが最終SoC以下であると判定した場合は、初期SoCと最終SoCとが一致しているため、電力閾値P1は補正せず前回値を踏襲する(ステップ114)。この場合は、鉱山走行の1サイクルにて蓄電池16の充放電収支がゼロであり、蓄電池16の残量が不足することなくMode1~Mode3の動作が成立しているため、ダンプトラックの走行性能を確保できている。
補正された電力閾値P1をコントローラ30に記憶させた後にステップ100に戻り、再び鉱山走行の1サイクルを開始する。このように電力閾値P1を各サイクルで補正することにより、路面の状態などに応じて各サイクルの出力電力量と回生電力量が変動したとしても、蓄電池16の充放電収支がゼロとなるように双方向コンバータ17を制御することができる。
図7は、ダンプトラック走行時の蓄電池16のSoCの変化を示すタイミングチャートである。上から必要電力P、蓄電池16の出力電力、蓄電池16のSoCを示す。鉱山を3サイクル走行した場合の一例であり、同一鉱山の走行を想定し1~3サイクル目のいずれも必要電力Pは同じパターンとしている。また、補機電力は考慮していない。
1サイクル中のダンプトラックの動作モードを以下に説明する。1サイクル目の電力閾値P1はゼロ、P2はエンジン11の定格出力に設定する。期間(1)は必要電力Pが電力閾値P2より高い状態である。この時、電力閾値P2を上回る分の電力P-P2は蓄電池16から出力される。その結果、蓄電池16のSoCは低下する。
期間(2)は必要電力Pが電力閾値P1以上かつ電力閾値P2以下の状態である。この時、エンジン11のみを用いて走行するモードであるため、蓄電池16の出力電力はゼロであり、蓄電池16のSoCは変化しない。
期間(3)は下り坂を走行する状態である。この時、ダンプトラックの制動動作に伴い発生する回生エネルギーが蓄電池16に充電され、蓄電池16のSoCは上昇する。
期間(4)は期間(1)と同様に必要電力Pが電力閾値P2より高い状態である。この時、電力閾値P2を上回る分の電力P-P2は蓄電池16から出力される。その結果、蓄電池16のSoCは低下する。
期間(5)と期間(6)は期間(2)と同様に必要電力Pが電力閾値P1以上かつ電力閾値P2以下の状態である。この時、エンジン11のみを用いて走行するモードであるため、蓄電池16の出力電力はゼロであり、蓄電池16のSoCは変化しない。
1サイクル目の蓄電池16の初期SoCと最終SoCを比較すると、最終SoCは初期SoCよりも高くなっている。すなわち、蓄電池16の出力電力量が回生電力量を下回っているため、次サイクルである2サイクル目は電力閾値P1をプラス側に補正する。
以下、2サイクル目の動作を説明する。期間(1)は必要電力Pが電力閾値P2より高い状態である。この時、電力閾値P2を上回る分の電力P-P2は蓄電池16から出力される。その結果、蓄電池16のSoCは低下する。
期間(2)は必要電力Pが電力閾値P1より低い状態である。この時、蓄電池16のみを用いて走行するモードであるため、蓄電池16の出力電力は必要電力Pに等しい。その結果、蓄電池16のSoCは低下する。1サイクル目の期間(2)はエンジン11のみを用いて走行するモードであったが、2サイクル目は電力閾値P1をプラス側に補正したため、本期間は蓄電池16のみを用いて走行するモードに切り替わる。
期間(3)は下り坂を走行する状態である。この時、ダンプトラックの制動動作に伴い発生する回生エネルギーが蓄電池16に充電され、蓄電池16のSoCは上昇する。
期間(4)は期間(1)と同様に必要電力Pが電力閾値P2より高い状態である。この時、電力閾値P2を上回る分の電力P-P2は蓄電池16から出力される。その結果、蓄電池16のSoCは低下する。
期間(5)と期間(6)は期間(2)と同様に必要電力Pが電力閾値P1以上かつ電力閾値P2以下の状態である。この時、エンジン11のみを用いて走行するモードであるのため、蓄電池16の出力電力はゼロであり、蓄電池16のSoCは変化しない。
2サイクル目の蓄電池16の初期SoCと最終SoCを比較すると、最終SoCは初期SoCよりも高くなっている。すなわち、蓄電池16の出力電力量が回生電力量を下回っているため、次サイクルである3サイクル目は電力閾値P1をプラス側に補正する。
以下、3サイクル目の動作を説明する。期間(1)は必要電力Pが電力閾値P2より高い状態である。この時、電力閾値P2を上回る分の電力P-P2は蓄電池16から出力される。その結果、蓄電池16のSoCは低下する。
期間(2)は必要電力Pが電力閾値P1より低い状態である。この時、蓄電池16のみを用いて走行するモードであるのため、蓄電池16の出力電力は必要電力Pに等しい。その結果、蓄電池16のSoCは低下する。
期間(3)は下り坂を走行する状態である。この時、ダンプトラックの制動動作に伴い発生する回生エネルギーが蓄電池16に充電され、蓄電池16のSoCは上昇する。
期間(4)は期間(1)と同様に必要電力Pが電力閾値P2より高い状態である。この時、電力閾値P2を上回る分の電力P-P2は蓄電池16から出力される。その結果、蓄電池16のSoCは低下する。
期間(5)は期間(2)と同様に必要電力Pが電力閾値P1以上かつ電力閾値P2以下の状態である。この時、エンジン11のみを用いて走行するモードであるため、蓄電池16の出力電力はゼロであり、蓄電池16のSoCは変化しない。
期間(6)は必要電力Pが電力閾値P1より低い状態である。この時、蓄電池16のみを用いて走行するモードであるため、蓄電池16の出力電力は必要電力Pに等しい。その結果、蓄電池16のSoCは低下する。2サイクル目の期間(6)はエンジン11のみを用いて走行するモードであったが、2サイクル目は電力閾値P1をプラス側に補正したため、本期間は蓄電池16のみを用いて走行するモードに切り替わる。
3サイクル目の蓄電池16の初期SoCと最終SoCを比較すると、最終SoCと初期SoCは等しくなっている。すなわち、蓄電池16の充放電収支がゼロとなり蓄電池16から適切な電力が出力されている。さらに、必要電力Pに対して過不足なく電力を供給できており、走行性能も確保することができている。
図8は、コントローラ30による1サイクル終了フラグの更新処理の一例を示すフローチャートである。1サイクル終了フラグは、ダンプトラックが1サイクルの走行を終了したタイミングを示すフラグである。図7に示す例では、ダンプトラックの現在位置に基づいて1サイクル終了フラグが更新される。以下、各ステップを順に説明する。
まず、ダンプトラックの現在位置を検出する(ステップ200)。現在位置は、GPSなどの位置検出装置32(図2に示す)を用いて検出される。
ステップ200に続き、ダンプトラックの現在位置が基準位置と一致するか否かを判定する(ステップ201)。基準位置は、走行サイクル上の予め設定された任意の一地点である。現在位置が基準位置と一致しない場合は、1サイクル終了フラグをOFFにする(ステップ202)。現在位置が基準位置と一致する場合は、1サイクル終了フラグをONにする(ステップ203)。
図9は、コントローラ30による1サイクル終了フラグの更新処理のその他の例を示すフローチャートである。鉱山用ダンプトラックは一般的に、鉱山内の特定の1か所で積荷または放土を行う。従って、積荷または放土が行われる地点を走行サイクル上の基準位置とすることにより、積載量の変化に基づいて1サイクル終了のタイミングを検出することができる。図8に示す例では、積荷が行われる地点を基準位置としている。以下、各ステップを順に説明する。
まず、ダンプトラックの積載量を検出する(ステップ300)。積載量は、ホイストシリンダ6の圧力を検出する圧力センサなどの積載量検出装置33(図2に示す)を用いて検出される。ステップ300に続き、積載量が増加中であるか否かを判定する(ステップ301)。積載量が増加中でない場合は、1サイクル終了フラグをOFFにする(ステップ302)。積載量が増加中である場合は、1サイクル終了フラグをONにする(ステップ303)。なお、放土が行われる地点を基準位置とする場合は、ステップ301に代えて、積載量が減少中であるか否かを判定すればよい。
図8および図9は、1サイクルの終了時点を検出する方法を示すものであるが、1サイクルの終了時点は次回の1サイクルの開始時点でもあるため、1サイクルの開始時点を検出する方法と読み替えてもよい。また、図8および図9に示す1サイクル終了フラグの更新処理は、組み合わせて用いてもよい。いずれか一方を選択的に行うことにより、位置検出装置32または積載量検出装置33が故障した場合にも1サイクル終了フラグの更新を継続することができる。また、双方の更新結果を照合することにより、1サイクル終了フラグ誤更新を防ぐことができる。なお、1サイクル終了フラグの更新は他の手法はこれらに限られない。
(まとめ)
本実施例では、動力源である電動機10と、電動機10に電力を供給する発電機12と、電動機10に供給する電力および電動機10の回生電力を蓄える蓄電池16と、蓄電池16の入出力電力を調整する双方向コンバータ17と、双方向コンバータ17を制御するコントローラ30とを備え、積荷場と放土場との間の走行経路で構成される走行サイクルを繰り返し走行するダンプトラックにおいて、コントローラ30は、前記ダンプトラックの必要電力Pが所定の第1電力閾値P1未満である場合は、蓄電池16の出力電力指令値を必要電力Pに設定し、必要電力Pが、第1電力閾値P1より大きい値に設定された第2電力閾値P2より大きい場合は、前記出力電力指令値を必要電力Pから第2電力閾値P2を引いた差分に設定し、必要電力Pが第1電力閾値P1以上でかつ第2電力閾値P2未満である場合は、前記出力電力指令値を第1電力閾値P1より小さい値(例えば第1電力閾値P1の数%以下)に設定し、前記走行サイクルの開始時点の蓄電池16のSoCを初期SoCとして検出し、前記走行サイクルの終了時点の蓄電池16の充電率を最終SoCとして検出し、前記最終SoCが前記初期SoCより高い場合は、第1電力閾値P1をプラス側に補正し、前記最終SoCが前記初期SoCより低い場合は、第1電力閾値P1をマイナス側に補正する。
本実施例では、動力源である電動機10と、電動機10に電力を供給する発電機12と、電動機10に供給する電力および電動機10の回生電力を蓄える蓄電池16と、蓄電池16の入出力電力を調整する双方向コンバータ17と、双方向コンバータ17を制御するコントローラ30とを備え、積荷場と放土場との間の走行経路で構成される走行サイクルを繰り返し走行するダンプトラックにおいて、コントローラ30は、前記ダンプトラックの必要電力Pが所定の第1電力閾値P1未満である場合は、蓄電池16の出力電力指令値を必要電力Pに設定し、必要電力Pが、第1電力閾値P1より大きい値に設定された第2電力閾値P2より大きい場合は、前記出力電力指令値を必要電力Pから第2電力閾値P2を引いた差分に設定し、必要電力Pが第1電力閾値P1以上でかつ第2電力閾値P2未満である場合は、前記出力電力指令値を第1電力閾値P1より小さい値(例えば第1電力閾値P1の数%以下)に設定し、前記走行サイクルの開始時点の蓄電池16のSoCを初期SoCとして検出し、前記走行サイクルの終了時点の蓄電池16の充電率を最終SoCとして検出し、前記最終SoCが前記初期SoCより高い場合は、第1電力閾値P1をプラス側に補正し、前記最終SoCが前記初期SoCより低い場合は、第1電力閾値P1をマイナス側に補正する。
以上のように構成した本実施例によれば、各走行サイクルの初期SoCと最終SoCとが一致するように(蓄電池16の充放電収支がゼロとなるように)第1電力閾値P1が補正される。これにより、蓄電池16の過放電を防止することができるため、ダンプトラックの走行性能を確保することが可能となる。
また、本実施例におけるダンプトラックは、前記ダンプトラックの現在位置を検出する位置検出装置32を備え、コントローラ30は、前記現在位置が前記走行経路上の所定の基準位置と一致しているタイミングを、前記走行サイクルの終了時点として検知する。これにより、ダンプトラックの位置に基づいて走行サイクルの終了時点を検出することが可能となる。
また、本実施例におけるコントローラ30は、前記ダンプトラックの積載量が増加しているタイミングを、前記走行サイクルの終了時点として検出する。これにより、ダンプトラックの積載量に基づいて走行サイクルの終了時点を検出することが可能となる。
また、本実施例におけるコントローラ30は、最終SoCが初期SoCより高い場合は、最終SoCから初期SoCを引いた差分が増加するに従って第1電力閾値P1のプラス側の補正量αを増加させ、最終SoCが初期SoCより低い場合は、初期SoCから最終SoCを引いた差分が増加するに従って第1電力閾値P1のマイナス側の補正量αを増加させる。これにより、蓄電池16の充放電収支を少ない走行サイクル数でゼロにすることが可能となる。
図10は、本発明の第2の実施例におけるコントローラ30の双方向コンバータ17の制御に関わる処理を示すフローチャートである。以下、第1の実施例(図5に示す)との相違点を中心に説明する。
まず、蓄電池16の基準SoCを設定する(ステップ400)。基準SoCは、蓄電池16の性能を発揮することが可能なSoCである。具体的には、蓄電池16の劣化を抑制することが可能なSoCであり、満充電や過放電の状態を避けた値(例えば50%)に設定される。
ステップ400に続き、初期SoCを取得するとともに、電力閾値P1,P2を設定する(ステップ401)。電力閾値P2はエンジン11の定格出力に等しい値に設定し、電力閾値P1はゼロに設定する。
ステップ401に続き、ステップ102~110を実行する。ステップ110で初期SoCが最終SoC以下であると判定した場合は、初期SoCと最終SoCとが一致するか否かを判定する(ステップ402)。初期SoCと最終SoCとが一致しない場合は、ステップ107に鑑みて最終SoCは初期SoCより高く、蓄電池16の出力電力量が回生電力量を下回るため、次サイクルでは蓄電池16の出力電力量を増加させる必要がある。そこで、本実施例では、電力閾値P1をプラス側に補正して次サイクルの出力電力量を増加させる。具体的には、次サイクルの電力閾値P1を“P1+α”とする(ステップ113)。なお、本実施例では電力閾値P1をプラス側に補正しているが、電力閾値P2をマイナス側に補正して出力電力量を増加させてもよい。初期SoCと最終SoCが一致する場合はステップ403に進む。
ステップ403では、最終SoCが基準SoCより低いか否かを判定する。最終SoCが基準SoCより低い場合、最終SoCを基準SoCに一致させるためには蓄電池16の出力電力量を減少させる必要がある。そこで、本実施例では、電力閾値P1をマイナス側に補正して出力電力量を減少させる。具体的には、次サイクルの電力閾値P1を“P1-α”とする(ステップ111)。なお、本実施例では電力閾値P1をマイナス側に補正しているが、電力閾値P2をプラス側に補正して出力電力量を減少させてもよい。最終SoCが基準SoC以上の場合、ステップ404に進む。
ステップ404では、最終SoCと基準SoCとが一致するか否かを判定する。最終SoCと基準SoCとが一致しない場合、ステップ403に鑑みて最終SoCは基準SoCより高いため、次サイクルでは蓄電池16の出力電力量を増加させる必要がある。そこで、本実施例では、電力閾値P1をプラス側に補正して次サイクルの出力電力量を増加させる。具体的には、次サイクルの電力閾値P1を“P1+α”とする(ステップ113)。なお、本実施例では電力閾値P1をプラス側に補正しているが、電力閾値P2をマイナス側に補正して出力電力量を増加させてもよい。最終SoCと基準SoCとが一致する場合、ステップ402に鑑みて初期SoCと最終SoCも一致している。すなわち、基準SoCと初期SoCと最終SoCは一致しており、蓄電池16の充放電収支がゼロかつ走行性能が確保可能な電力閾値P1を設定できていることとなる。そのため、次サイクルの電力閾値P1は前サイクルの電力閾値P1を踏襲する(ステップ114)。
図11は、ダンプトラック走行時の蓄電池16のSoCの変化を示すタイミングチャートである。3サイクル目において初期SoCと最終SoCは一致し、充放電収支がゼロとなるため、車両の走行性能を確保することができている。しかし、一般的にSoCが高すぎるまたは低すぎると、蓄電池の劣化が進行しやすい。蓄電池16の劣化を防ぐためには、蓄電池のSoCを基準SoC近傍に保つことが望ましい。そこで、本実施例では、初期SoCと最終SoCとが一致した後は、初期SoCと最終SoCが基準SoCと一致するように電力閾値P1を補正する。
具体的には、3サイクル目の初期SoCと最終SoCは基準SoCを上回っているため、初期SoCと最終SoCを基準SoCに一致させるには蓄電池16の出力電力量を増加させる必要がある。そこで、第1電力閾値P1をプラス側に補正して出力電力量を増加させる。このようにすることで、4サイクル目の終了時点で最終SoCを基準SoCに一致させ、5サイクル目以降で初期SoCと最終SoCを基準SoCに一致させることができる。
(まとめ)
本実施例におけるコントローラ30は、最終SoCが初期SoCと等しくかつ所定の基準SoCより高い場合は、第1電力閾値P1をプラス側に補正し、または、第2電力閾値P2をマイナス側に補正し、最終SoCが初期SoCと等しくかつ基準SoCより低い場合は、第1電力閾値P1をマイナス側に補正し、または、第2電力閾値P2をプラス側に補正する。
本実施例におけるコントローラ30は、最終SoCが初期SoCと等しくかつ所定の基準SoCより高い場合は、第1電力閾値P1をプラス側に補正し、または、第2電力閾値P2をマイナス側に補正し、最終SoCが初期SoCと等しくかつ基準SoCより低い場合は、第1電力閾値P1をマイナス側に補正し、または、第2電力閾値P2をプラス側に補正する。
以上のように構成した本実施例においても、第1の実施例と同様に、ダンプトラックの走行性能を確保することが可能となる。また、初期SoCと最終SoCを基準SoCに一致させることにより、蓄電池16の劣化を抑制することが可能となる。
図12は、本発明の第3の実施例における双方向コンバータ17の制御に関わるコントローラ30の処理を示すフローチャートである。以下、第1の実施例(図5に示す)との相違点を中心に説明する。
第1の実施例における電力変換システムでは、第1電力閾値P1を補正し第2電力閾値P2は固定としたが、本実施例における電力変換システムでは、第1電力閾値P1は固定とし第2電力閾値P2を補正する。具体的には、ステップ110で初期SoCが最終SoCより高いと判定した場合は、第2電力閾値P2を“P2+α”とする(ステップ500)。これにより、次サイクルの蓄電池16の出力電力量が減少する。
ステップ112で初期SoCが最終SoCより低いと判定した場合は、第2電力閾値P2を“P2-α”とする(ステップ501)。これにより、次サイクルの蓄電池16の出力電力量が増加する。
ステップ112で初期SoCが最終SoC以上であると判定した場合は、初期SoCと最終SoCとが一致しているため、第2電力閾値P2は補正せず、前回値を踏襲する(ステップ502)。
このように第2電力閾値P2を補正することで、第1の実施例における電力変換システムと同様に、蓄電池16の充放電収支をゼロとしつつ車両の走行性能を確保することができる。ただし、第2電力閾値P2の上限値はエンジン11の定格出力以下とする必要がある。図3において、必要電力Pが第1電力閾値P1以上かつ第2電力閾値P2以下の場合、Mode2となりエンジン11の出力のみで走行するモードとなる。ここで、第2電力閾値P2をエンジン11の定格出力よりも高くするとエンジン11のみでは出力が不足する。例えば、第1電力閾値P1が500kW、エンジン11の定格出力が2000kWの場合、第2電力閾値P2が2500kWになると、必要電力Pが500kW以上2500kW以下の場合はエンジン11のみで走行することとなる。しかし、エンジン11の定格出力は2000kWであるため、必要電力Pが2500kWのときに500kW不足し、走行性能が低下することとなる。従って、本実施例電力変換システムでは、補正後の第2電力閾値P2がエンジン11の定格出力を上回らないように、第2電力閾値P2の上限値をエンジン11の定格出力以下に設定することが望ましい。
(まとめ)
本実施例では、動力源である電動機10と、電動機10に電力を供給する発電機12と、電動機10に供給する電力および電動機10の回生電力を蓄える蓄電池16と、蓄電池16の入出力電力を調整する双方向コンバータ17と、双方向コンバータ17を制御するコントローラ30とを備え、積荷場と放土場との間の走行経路で構成される走行サイクルを繰り返し走行するダンプトラックにおいて、コントローラ30は、前記ダンプトラックの必要電力Pが所定の第1電力閾値P1未満である場合は、蓄電池16の出力電力指令値を必要電力Pに設定し、必要電力Pが、第1電力閾値P1より大きい値に設定された第2電力閾値P2より大きい場合は、前記出力電力指令値を必要電力Pから第2電力閾値P2を引いた差分に設定し、必要電力Pが第1電力閾値P1以上でかつ第2電力閾値P2未満である場合は、前記出力電力指令値を第1電力閾値P1より小さい値(例えば電力閾値P1の数%以下)に設定し、前記走行サイクルの開始時点の蓄電池16のSoCを初期SoCとして検出し、前記走行サイクルの終了時点の蓄電池16の充電率を最終SoCとして検出し、前記最終SoCが前記初期SoCより高い場合は、第2電力閾値P2をマイナス側に補正し、前記最終SoCが前記初期SoCより低い場合は、第2電力閾値P2をプラス側に補正する。
本実施例では、動力源である電動機10と、電動機10に電力を供給する発電機12と、電動機10に供給する電力および電動機10の回生電力を蓄える蓄電池16と、蓄電池16の入出力電力を調整する双方向コンバータ17と、双方向コンバータ17を制御するコントローラ30とを備え、積荷場と放土場との間の走行経路で構成される走行サイクルを繰り返し走行するダンプトラックにおいて、コントローラ30は、前記ダンプトラックの必要電力Pが所定の第1電力閾値P1未満である場合は、蓄電池16の出力電力指令値を必要電力Pに設定し、必要電力Pが、第1電力閾値P1より大きい値に設定された第2電力閾値P2より大きい場合は、前記出力電力指令値を必要電力Pから第2電力閾値P2を引いた差分に設定し、必要電力Pが第1電力閾値P1以上でかつ第2電力閾値P2未満である場合は、前記出力電力指令値を第1電力閾値P1より小さい値(例えば電力閾値P1の数%以下)に設定し、前記走行サイクルの開始時点の蓄電池16のSoCを初期SoCとして検出し、前記走行サイクルの終了時点の蓄電池16の充電率を最終SoCとして検出し、前記最終SoCが前記初期SoCより高い場合は、第2電力閾値P2をマイナス側に補正し、前記最終SoCが前記初期SoCより低い場合は、第2電力閾値P2をプラス側に補正する。
以上のように構成した本実施例によれば、各走行サイクルの初期SoCと最終SoCとが一致するように(蓄電池16の充放電収支がゼロとなるように)第2電力閾値P2が補正される。これにより、蓄電池16の過放電を防止することができるため、ダンプトラックの走行性能を確保することが可能となる。
また、本実施例におけるコントローラ30は、最終SoCが初期SoCより高い場合は、最終SoCから初期SoCを引いた差分が増加するに従って第2電力閾値P2のマイナス側の補正量αを増加させ、最終SoCが初期SoCより低い場合は、初期SoCから最終SoCを引いた差分が増加するに従って第2電力閾値P2のプラス側の補正量αを増加させる。これにより、蓄電池16の充放電収支を少ない走行サイクル数でゼロにすることが可能となる。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、本発明は必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
1…フレーム、2…前輪、3…後輪、4…キャブ、5…ボディ、6…ホイストシリンダ、7…グリッド抵抗、8…コントロールキャビネット、9…燃料タンク、10…モータ(電動機)、11…エンジン、12…発電機、13…整流器、14…インバータ、15…速度センサ、16…蓄電池、17…双方向コンバータ、18…グリッドチョッパ、21…電圧センサ、22a,22b,22c…電流センサ、23…キャパシタ、24…リアクトル、30…コントローラ、31…SoC検出装置、32…位置検出装置、33…積載量検出装置、D1,D2…ダイオード、Q1,Q2…スイッチング素子。
Claims (5)
- 動力源である電動機と、
前記電動機に電力を供給する発電機と、
前記電動機に供給する電力および前記電動機の回生電力を蓄える蓄電池と、
前記蓄電池の出力電力を調整する双方向コンバータと、
前記双方向コンバータを制御するコントローラとを備え、
積荷場と放土場との間の走行経路で構成される走行サイクルを繰り返し走行するダンプトラックにおいて、
前記コントローラは、
前記ダンプトラックの必要電力が所定の第1電力閾値未満である場合は、前記蓄電池の出力電力指令値を前記必要電力に設定し、
前記必要電力が、前記第1電力閾値より大きい値に設定された第2電力閾値より大きい場合は、前記出力電力指令値を前記必要電力から前記第2電力閾値を引いた差分に設定し、
前記必要電力が前記第1電力閾値以上でかつ前記第2電力閾値未満である場合は、前記出力電力指令値を前記第1電力閾値より小さい値に設定し、
前記走行サイクルの開始時点の前記蓄電池の充電率を初期SoCとして検出し、
前記走行サイクルの終了時点の前記蓄電池の充電率を最終SoCとして検出し、
前記最終SoCが前記初期SoCより高い場合は、前記第1電力閾値をプラス側に補正し、または、前記第2電力閾値をマイナス側に補正し、
前記最終SoCが前記初期SoCより低い場合は、前記第1電力閾値をマイナス側に補正し、または、前記第2電力閾値をプラス側に補正する
ことを特徴とするダンプトラック。 - 請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記ダンプトラックの現在位置を検出する位置検出装置を備え、
前記コントローラは、前記現在位置が前記走行経路上の所定の基準位置と一致しているタイミングを、前記走行サイクルの終了時点として検出する
ことを特徴とするダンプトラック。 - 請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記コントローラは、前記ダンプトラックの積載量が増加しているタイミングを、前記走行サイクルの終了時点として検出する
ことを特徴とするダンプトラック。 - 請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記コントローラは、
前記最終SoCが前記初期SoCと等しくかつ所定の基準SoCより高い場合は、前記第1電力閾値をプラス側に補正し、または、前記第2電力閾値をマイナス側に補正し、
前記最終SoCが前記初期SoCと等しくかつ前記基準SoCより低い場合は、前記第1電力閾値をマイナス側に補正し、または、前記第2電力閾値をプラス側に補正する
ことを特徴とするダンプトラック。 - 請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記コントローラは、
前記最終SoCが前記初期SoCより高い場合は、前記最終SoCから前記初期SoCを引いた差分が増加するに従って前記第1電力閾値のプラス側の補正量を増加させ、または、前記第2電力閾値のマイナス側の補正量を増加させ、
前記最終SoCが前記初期SoCより低い場合は、前記初期SoCから前記最終SoCを引いた差分が増加するに従って前記第1電力閾値のマイナス側の補正量を増加させ、または、前記第2電力閾値のプラス側の補正量を増加させる
ことを特徴とするダンプトラック。
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