JP2024055194A - 義歯洗浄剤及び義歯の洗浄方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、歯石、着色汚れ、臭いなどの複数の問題を同時に解決することにより、義歯の洗浄作業の負担を軽減することができる義歯洗浄剤及び義歯の洗浄方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤を含有する義歯洗浄剤を用いることにより、歯石除去、着色汚れ除去、および臭い除去という複数の問題を同時に解決できる義歯洗浄剤及び義歯の洗浄方法を見出した。【選択図】なし

Description

本発明は、歯石の除去、着色汚れの除去、臭いの除去などの複数の効果を同時に有する義歯洗浄剤及び義歯の洗浄方法に関する。
義歯を洗浄するために種々の洗浄剤組成物が使用されている。義歯は、セラミック、樹脂、金属等の様々な材料で構成されている。一般的な義歯洗浄剤には、漂白剤、界面活性剤等の洗浄成分が配合されており、これにより洗浄対象である義歯に付着した着色汚れを除去又は目立たなくすることができる。一方で、義歯には、歯石(スケール)やプラーク(歯垢)の付着という問題が発生する場合や、義歯に付着した細菌が原因となりバイオフィルム等が形成されることによる臭いの発生という問題が生じる場合がある。
例えば、歯科医院では、歯石、着色汚れ、臭いを除去するために、それぞれ専用の洗浄剤を用いて複数回の洗浄工程を得る方法が選択されることがあるが、義歯に付着した様々な汚れや臭いを除去するために、複数の洗浄剤を用いて何度も洗浄を行なうことは洗浄作業者の負担となっていた。また、洗浄剤のみでは十分に汚れを除去できない場合は、ブラッシング、スケーリング、研磨などの物理的な洗浄作業を行なう必要があり、これらの作業も洗浄作業者の負担となっていた。
例えば、特許文献1には、塩素化イソシアヌル酸及び/又はその塩、過ホウ酸塩及び/又は過炭酸塩、並びに特定の化学式で示されるベンゾトリアゾール系化合物を含む、金属部分に金銀パラジウム合金を含む義歯のための義歯洗浄剤が記載されており、漂白成分による義歯の金属部分の錆を効果的に抑制する作用を有することが期待できることが記載されているものの、義歯に付着した着色汚れ、歯石などのスケール、臭いといった多様な汚れに起因する複数の問題を解決するのには不十分であった。
特許文献2には、漂白剤粒子がコーティング層で保護されてなる固形漂白剤含有物が報告されており、このような固形漂白剤含有物は種々の洗浄剤成分と安定に配合することができ、漂白剤の劣化、失活、分解を生じないとされている。
特開2011-213639号公報 国際公開第2017/183726号
口腔内の歯や義歯には、歯や義歯の表面に付着した細菌が増殖し、プラーク(歯垢)が形成される場合がある。このようなプラークは、う蝕や歯周病の原因となるため、ブラッシングで取り除くことが必要になる。プラークの除去が不十分である場合に、プラークが長期間にわたり義歯の表面に付着していると、唾液に含まれるカルシウムやリン酸がプラークに沈着して石灰化し、歯石となる。沈着した歯石を除去するために歯科医院等で歯石除去が広く行われているが、歯科医院においても、義歯の汚れに応じて複数の洗浄剤を使用して洗浄することや、義歯に付着した歯石や着色汚れを除去するためにブラッシング、スケーリング、研磨等により物理的あるいは機械的に歯石を除去する方法などが選択される場合があり、作業負担が増大する。また、義歯に付着した細菌等を十分に除去できない場合には、洗浄作業者が義歯の洗浄時に義歯に接触した飛沫等に暴露する可能性があり、細菌による感染症のリスクを抱えていた。さらに、義歯に付着した細菌は臭いの原因ともなり、義歯の調整や洗浄を行なう際に不快な臭いが生じるという問題も作業者にとって負担となる。
歯石を除去するためには、強い酸性の洗浄剤が使用される場合がある。一方で、着色汚れの除去や細菌の除菌には塩素系漂白剤が使用される場合がある。しかしながら、酸性の洗浄剤と塩素系漂白剤を混合すると塩素ガスが発生するために、これらを同時に使用することは安全上問題があり、義歯に付着した歯石、着色汚れ、臭いなどの複数の問題を同時に解消するのは困難である。
このような諸問題に対して、歯石、着色汚れ、臭いなどの複数の問題を同時に解決することにより、義歯の洗浄作業の負担を軽減することができる義歯洗浄剤及び義歯の洗浄方法を提供することを本発明の課題とする。また、ブラッシング、スケーリング、研磨などの物理的な洗浄の負担も軽減できるように、高い洗浄効果を有する義歯洗浄剤及び義歯の洗浄方法を提供することを本発明の課題とする。本発明に係る義歯洗浄剤及び義歯の洗浄方法は一般家庭で日々の義歯の洗浄に使用することもできるし、歯科医院等での義歯のメンテナンス時等に業務用として使用することもできる。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤を含有する洗浄剤組成物を用いることにより、歯石除去、着色汚れ除去、臭い除去という複数の問題を同時に解決できる義歯洗浄剤及び義歯の洗浄方法を見出した。また、固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤を含有する義歯洗浄剤及び義歯の洗浄方法は、優れた洗浄効果を有するため、ブラッシング、スケーリング、研磨等の洗浄作業者が行う作業負荷を軽減することができる。
また、本発明の洗浄剤組成物は、固形塩素系漂白剤としてコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物を用いることにより、塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤を安定に配合できるため、優れた洗浄効果を長期間に渡って維持できる義歯洗浄剤が得られることを見出した。これらの知見に基づいて、さらに検討を加えることにより本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の義歯洗浄剤及びそれを用いた義歯の洗浄方法に関する。
項1.固形塩素系漂白剤およびアミノカルボン酸系キレート剤を含有する義歯洗浄剤。
項2.前記固形塩素系漂白剤の全部又は一部がコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物である項1記載の義歯洗浄剤。
項3.前記コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物のコーティング層が芳香族カルボン酸の金属塩を含有する項2記載の義歯洗浄剤。
項4.前記固形塩素系漂白剤が、ジクロロイソシアヌル酸の金属塩、ジクロロイソシアヌル酸の金属塩の水和物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される1以上を含有する、項1から3のいずれか1項に記載の義歯洗浄剤。
項5.前記アミノカルボン酸系キレート剤がエチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸の金属塩、エチレンジアミン四酢酸の金属塩の水和物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される1以上である、項1から4のいずれか1項に記載の義歯洗浄剤。
項6.前記固形塩素系漂白剤に対する前記アミノカルボン酸系キレート剤の含有比が1以上7以下である、項1から5のいずれか1項に記載の義歯洗浄剤。
項7.前記固形塩素系漂白剤と前記アミノカルボン酸系キレート剤の含有率の合計が45重量%以上である、項1から6のいずれか1項に記載の義歯洗浄剤。
項8.義歯洗浄剤の1重量%濃度の水溶液のpHが4以上8以下である、項1から7のいずれか1項に記載の義歯洗浄剤。
項9.項1から8のいずれか1項に記載の義歯洗浄剤を水に溶解させて水溶液を調製する工程と、前記水溶液と義歯とを接触させる工程とを含む、義歯の洗浄方法。
項10.前記水溶液に含まれるアミノカルボン酸系キレート剤の濃度が1重量%以上20重量%以下である、項9記載の義歯の洗浄方法。
本発明の義歯洗浄剤は、固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤を含有することより、歯石除去、着色汚れ除去、および臭いの除去に同時に優れた効果を有する。さらに、前記固形塩素系漂白剤にコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物を用いることにより、義歯洗浄剤中の固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤が安定に維持されるため、保存性に優れ高い洗浄効果を長期間にわたって維持することができる。
「義歯洗浄剤中の固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤が安定に維持される」とは、義歯洗浄剤を所定の条件で一定期間保存した後に、義歯洗浄剤を包装した包装材料の膨れや破断などの経時変化による劣化の程度が比較対象と比べて小さいことを意味する。
表1に示す各水溶液におけるpHとリン酸三カルシウム溶解量との関係性を示すグラフである。
(義歯洗浄剤)
本発明の義歯洗浄剤は、固形塩素系漂白剤およびアミノカルボン酸系キレート剤を含有する。本発明の義歯洗浄剤は、義歯(部分入歯や総入歯を含む)に付着した歯石などのスケール汚れ、着色汚れ、臭いなどを除去するために好適に用いることができる。
本発明の義歯の洗浄方法として、義歯に対して、義歯洗浄剤を水に投入した後に義歯を投入しても良いし、予め水を溜めてから義歯を投入した後に義歯洗浄剤を投入しても良い。また、超音波による洗浄工程を設けても良い。本発明の義歯の洗浄方法は、義歯洗浄剤を水に溶解させて水溶液を調製する工程と、前記水溶液と義歯とを接触させる工程とを含有している。また、必要に応じて、加熱、攪拌などの工程を組み合わせても良い。また、義歯洗浄剤を溶解した水溶液を用いて、吹き付け、拭き取り等の方法で洗浄を行なってもよい。
(固形塩素系漂白剤)
本発明の義歯洗浄剤に使用する固形塩素系漂白剤としては、例えば、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸の金属塩、ジクロロイソシアヌル酸の金属塩の水和物、ジクロロヒダントイン、クロロブロモヒダントイン、次亜塩素酸カルシウム、結晶化した次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸の金属塩、ジクロロイソシアヌル酸の金属塩の水和物は漂白効果に優れるとともに取り扱いが容易で入手しやすいため好ましく、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの水和物は水への溶解性に優れるため、より好ましい。これらの固形塩素系漂白剤は、単独でも2以上組み合わせて使用しても良い。
固形塩素系漂白剤の有効塩素含有量(Cl換算値)は、よう素滴定法を用いて算出することができる。すなわち、活性塩素とよう化カリウムとが反応して遊離するよう素をチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定し、次の数式1により有効塩素含有量を算出する。
(数1)
有効塩素含有量(%)=a×f×0.35452/b (数式1)
a:滴定に要した0.1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液(ml)
b:試料(g)
f:0.1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液のファクター
なお、トリクロロイソシアヌル酸の理論上の有効塩素含有量は91.5%であり、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムでは64.5%であり、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物では55.4%である。
義歯洗浄剤中の固形塩素系漂白剤の含有率は、義歯洗浄剤の有効塩素含有量を一定以上にして着色汚れ除去効果、臭いの除去効果、微生物の殺菌又は除菌効果を得るために、義歯洗浄剤の合計量を100重量%とした場合に、1重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、7重量%以上であることがさらに好ましく、10重量%以上であることが特に好ましく、12重量%以上であることが最も好ましい。また、義歯洗浄剤中の固形塩素系漂白剤の含有率はアミノカルボン酸系キレート剤、その他の添加剤等の洗浄剤として有用な化合物を含有できる観点と過剰な固形塩素系漂白剤による義歯の金属部材の腐食等を軽減するという観点から、義歯洗浄剤の合計量を100重量%とした場合に、80重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
本発明の洗浄剤組成物には、固形塩素系漂白剤とは別途、固形酸素系漂白剤を含有しても良い。固形酸素系漂白剤としては、例えば、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、安息香酸過酸化物等の有機過酸化物、モノ過硫酸カリウム複塩等が挙げられる。入手のし易さや取扱い性の観点から過炭酸ナトリウム、モノ過硫酸カリウム複塩が好ましい。これらの固形酸素系漂白剤は、単独でも2以上組み合わせて使用しても良い。
(コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物)
本発明で用いる固形塩素系漂白剤は、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物を使用することが好ましい。コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物は、固形塩素系漂白剤がコーティング層により保護されている。コーティング層に使用する化合物は、固形塩素系漂白剤をコーティングして、保存時の固形塩素系漂白剤とその他の洗浄剤成分との相互作用を抑制できる化合物であれば特に限定されない。
コーティング層として使用できる化合物としては、例えば、カルボン酸の金属塩、界面活性剤、多糖類、高級脂肪酸、パラフィンワックス、ゼオライト、樹脂等を使用することができる。これらの化合物を単独で、又は2以上の化合物を組み合わせて使用しても良い。2以上の化合物を組み合わせて使用する態様としては、2以上の化合物を混合し複数の化合物を含有するコーティング層としても良いし、1の化合物でコーティング層を形成した後に他の化合物でさらにコーティング層を形成し多層構造としても良い。また、コーティング層は固形塩素系漂白剤を完全に覆うように形成しても良いし、本発明の効果を損なわない範囲で部分的に形成しても良い。コーティング層に使用できる化合物の中では、カルボン酸の金属塩及び界面活性剤は水への溶解性が良好でありかつ固形塩素系漂白剤との安定性に優れるため好ましく、カルボン酸の金属塩はコーティング層として加工し易く、コーティング層として固形塩素系漂白剤を保護する機能に優れ、入手や取り扱いが容易であることからより好ましい。
カルボン酸の金属塩としては、例えば、芳香族カルボン酸の金属塩、非環状ジカルボン酸の金属塩、非環状モノカルボン酸の金属塩、その他のカルボン酸の金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上が挙げられる。カルボン酸の金属塩としては、カルボン酸のカルボキシル基を金属塩として完全に中和したものでも良いし、金属塩として部分的に中和したものでも良く、金属塩となっていないカルボン酸を含んでも良い。カルボン酸の金属塩を用いることにより、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物及びこれを含有した義歯洗浄剤は、固形塩素系漂白剤を劣化、失活、分解から保護することにより安定化されうる。
さらに、カルボン酸の金属塩を含有したコーティング層は、固形塩素系漂白剤と接触しても安定であり、固形塩素系漂白剤とコーティング層の間で不都合な副反応が生じないため、固形塩素系漂白剤とコーティング層とを隔絶する別途の層を設ける必要が無く、固形塩素系漂白剤の表面に直接コーティング層を設けることができる。加えて、カルボン酸の金属塩を含有したコーティング層は凝集し難く、加工性に優れるため好ましい。
芳香族カルボン酸の金属塩とは、化合物の構造中に芳香環を有しかつカルボキシル基を有する化合物の金属塩を意味する。芳香族カルボン酸の金属塩としては、安息香酸、フタル酸(オルト体)、イソフタル酸(メタ体)、テレフタル酸(パラ体)、トリメリット酸、パラ-t-ブチル安息香酸の金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上が好ましい。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。入手の容易性の観点からアルカリ金属塩が好ましく、水への溶解性の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。芳香族カルボン酸の金属塩としては、安息香酸のアルカリ金属塩、パラ-t-ブチル安息香酸のアルカリ金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上が特に好ましい。安息香酸のアルカリ金属塩としては安息香酸ナトリウムが好適であり、パラ-t-ブチル安息香酸のアルカリ金属塩としてはパラ-t-ブチル安息香酸ナトリウムが好適である。
非環状ジカルボン酸の金属塩とは、化合物の構造中に環状構造を有さずかつ2のカルボキシル基を有する化合物の金属塩を意味する。非環状ジカルボン酸の金属塩としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、D-酒石酸、L-酒石酸、D-リンゴ酸、L-リンゴ酸、D-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸、グルタル酸、D-グルタミン酸、L-グルタミン酸、イタコン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸の金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上が好ましい。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。入手の容易性の観点からアルカリ金属塩が好ましく、水への溶解性の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。非環状ジカルボン酸の金属塩としては、アジピン酸のアルカリ金属塩、セバシン酸のアルカリ金属塩、ウンデカン二酸のアルカリ金属塩、ドデカン二酸のアルカリ金属塩及びこれらの混合物からなる群から選択される1以上がより好ましい。アジピン酸のアルカリ金属塩としてはアジピン酸二ナトリウムが好適であり、セバシン酸のアルカリ金属塩としてはセバシン酸二ナトリウムが好適であり、ウンデカン二酸のアルカリ金属塩としてはウンデカン二酸二ナトリウムが好適であり、ドデカン二酸のアルカリ金属塩としてはドデカン二酸二ナトリウムが好適である。
非環状モノカルボン酸の金属塩とは、化合物の構造中に環状構造を有さずかつ1のカルボキシル基を有する化合物の金属塩を意味する。非環状モノカルボン酸の金属塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イソ酪酸、イソ吉草酸の金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上が好ましい。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。入手の容易性の観点からアルカリ金属塩が好ましく、水への溶解性の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。非環状モノカルボン酸の金属塩としては、ヘプタン酸(エナント酸)のアルカリ金属塩、オクタン酸のアルカリ金属塩、ノナン酸のアルカリ金属塩、デカン酸のアルカリ金属塩、ドデカン酸のアルカリ金属塩、ラウリン酸のアルカリ金属塩、ミリスチン酸のアルカリ金属塩、パルミチン酸のアルカリ金属塩、ステアリン酸のアルカリ金属塩及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上がより好ましい。ヘプタン酸(エナント酸)のアルカリ金属塩としてはヘプタン酸ナトリウムが好適であり、オクタン酸のアルカリ金属塩としてはオクタン酸ナトリウムが好適であり、ノナン酸のアルカリ金属塩としてはノナン酸ナトリウムが好適であり、デカン酸のアルカリ金属塩としてはデカン酸ナトリウムが好適であり、ドデカン酸のアルカリ金属塩としてはドデカン酸ナトリウムが好適であり、ラウリン酸のアルカリ金属塩としてはラウリン酸ナトリウムが好適であり、ミリスチン酸のアルカリ金属塩としてはミリスチン酸ナトリウムが好適であり、パルミチン酸のアルカリ金属塩としてはパルミチン酸ナトリウムが好適であり、ステアリン酸のアルカリ金属塩としてはステアリン酸ナトリウムが好適である。
その他のカルボン酸の金属塩とは、化合物の構造中に環状構造を有していても良くかつ3以上のカルボキシル基を有する化合物の金属塩を意味する。その他のカルボン酸の金属塩としては、例えば、クエン酸の金属塩が好ましい。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。入手の容易性の観点からアルカリ金属塩が好ましく、水への溶解性の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。クエン酸のアルカリ金属塩としてはクエン酸三ナトリウムが好適である。
芳香族カルボン酸の金属塩、非環状ジカルボン酸の金属塩、非環状モノカルボン酸の金属塩、その他のカルボン酸の金属塩はそれぞれ単独で使用しても良く、複数の化合物を組み合わせて使用しても良い。
義歯洗浄剤中のコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の含有率は、義歯洗浄剤の有効塩素含有量を一定以上にして着色汚れ除去効果、臭いの除去効果、微生物の殺菌又は除菌効果を得るために、義歯洗浄剤の合計量を100重量%とした場合に、1重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、7重量%以上であることがさらに好ましく、10重量%以上であることが特に好ましく、15重量%以上であることが最も好ましい。また、義歯洗浄剤中のコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の含有率はアミノカルボン酸系キレート剤、その他の添加剤等の洗浄剤として有用な化合物を含有できる観点と過剰な塩素系漂白剤による義歯の金属部材の腐食等を軽減するという観点から、義歯洗浄剤の合計量を100重量%とした場合に、80重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物中のコーティング層に含有する、カルボン酸の金属塩の含有率は、固形塩素系漂白剤にコーティング層が形成しやすくなるという観点から、コーティング層の全量を100重量%とした場合に、30重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。
コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物中のコーティング層には本発明の効果を阻害しない範囲で、無機物、有機物等の種々の化合物を含有しても良い。無機物としては、リン酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、塩化物塩、よう化物塩、臭化物塩等が挙げられるがこれらに限定されない。有機物としては、多糖類、高分子化合物、界面活性剤、有機物の塩等が挙げられるがこれらに限定されない。
コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物におけるコーティング層の割合(重量%)は、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の全量を100重量%とした場合に、コーティング層による固形塩素系漂白剤の安定化効果を得ることができる観点から、下限値として5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましい。また、コーティング層の割合を過剰とすることなく十分な固形塩素系漂白剤の安定化効果を得られる観点から、上限値としては70重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、45重量%以下がさらに好ましい。
コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物中のコーティング層の割合を算出するために、次の数式2による算出方法を採用することができる。
(数2)
コーティング層の割合(重量%)=Q1×100/Q2 (数式2)
Q1:コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物中のコーティング層の重量(g)
Q2:コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の重量(g)
例えば、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物1g中に、コーティング層が0.3g含まれる場合には、数式2によりコーティング層の割合(重量%)は、0.3×100/1=30となり、30重量%となる。コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物中のコーティング層の重量は、例えばコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物を水などの溶媒に溶解させ、当該溶液を液体クロマトグラフィー等の既知の分析方法で分析することによりコーティング層に使用している化合物の重量を定量しても良いし、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の重量から固形塩素系漂白剤の重量を差し引くことにより求めても良い。固形塩素系漂白剤の重量は、液体クロマトグラフィー等の既知の分析方法を用いて定量しても良い。
コーティング層の同定及び定量は既に知られている方法により測定することができる。例えば、コーティング層に用いた化合物の吸光度が既知である場合は、コーティング層に用いた化合物を既知の濃度に調節して検量線を作成する方法(吸光度法)によりコーティング層の割合(重量%)を算出することができるし、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等広く知られた方法を用いて測定してもよい。コーティング層を定量するよりも、固形塩素系漂白剤を定量する方が容易である場合には、固形塩素系漂白剤の重量からコーティング層の重量を算出できる。
コーティング層の割合は、次の数式3により固形塩素系漂白剤含有物の有効塩素含有量から算出することができる。
(数3)
コーティング層の割合(重量%)=(P1-P2)×100/P1 (数式3)
P1:原料に用いた固形塩素系漂白剤の有効塩素含有量(%)
P2:コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の有効塩素含有量(%)
即ち、例えば有効塩素含有量が64.5%のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを固形塩素系漂白剤として用いてコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物を作成した場合、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の有効塩素含有量が40.0%であったとすると数式3よりコーティング層の割合は38.0重量%と計算される。
コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物中のコーティング層中に含まれるカルボン酸の金属塩の含有率は、液体クロマトグラフィー等既知の分析方法を用いて定量してもよい。例えば、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物中のカルボン酸の金属塩の含有率が5重量%であったとして、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物中のコーティング層の割合が30重量%であったとすると、コーティング層中に含まれるカルボン酸の金属塩の含有率は、コーティング層の全量を100重量%とした場合16.7重量%と計算される。
コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物中のコーティング層の割合及びコーティング層中に含まれる化合物の含有率を定量する方法は、前記の方法の他、従来知られた方法を適宜採用することができる。測定方法によって結果に誤差が生じたとしても、いずれか一の方法で測定した結果の数値が所定の範囲に入っていれば、他の測定方法で測定した結果が所定の範囲外であったとしても、要件を充足すると見なすことができる。
義歯洗浄剤中には、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物に加えて、本発明の効果を損なわない範囲においてコーティング層を有さない固形漂白剤(単に、固形漂白剤ということがある)をさらに含有することができる。固形漂白剤は塩素系漂白剤でも良いし、酸素系漂白剤でも良い。固形漂白剤を含有する場合において、義歯洗浄剤中の固形漂白剤とコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物との含有比(固形漂白剤の含有率/コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の含有率)は、1以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましい。該含有比が1以下であれば、義歯洗浄剤中のコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の含有率が、固形漂白剤の含有率と同じかそれ以上であるため、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物による、保存安定性に優れるという効果を得られやすく、かつ全量がコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物である場合よりも経済的に有利となる。
コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の製造方法は、従来知られた製造方法を採用することができる。製造装置としては攪拌装置、転動造粒装置、流動層造粒装置又はこれらを組み合せた装置の群から選択される1以上の装置を使用することができる。複数の工程を別々の加工装置で行ってもよい。加工の容易性の観点から転動造粒装置、流動層造粒装置及びこれらを組み合わせた装置の群から選択される1以上の装置が好ましい。また、前記特許文献2に記載された製造方法を採用することもできる。
コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の形状は、粉末又は粒子であることが好ましく、その平均粒子径は、1~5000μmであることが好ましく、10~3000μmであることがより好ましく、100~1500μmであることがさらに好ましい。この平均粒子径は、後述する義歯洗浄剤の粉末の平均粒子径の測定方法を用いて測定することができる。
(キレート剤)
本発明の義歯洗浄剤はキレート剤として、アミノカルボン酸系キレート剤を含む。アミノカルボン酸系キレート剤としては、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、β-アラニンジ酢酸、アスパラギン酸ジ酢酸、メチルグリシンジ酢酸、イミノジコハク酸、グルタミン酸二酢酸、セリンジ酢酸、ヒドロキシイミノジコハク酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、これらの金属塩、これらの水和物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される1以上が挙げられる。入手容易性、取り扱い容易性、歯石除去効果の観点から、アミノカルボン酸系キレート剤の金属塩としては、ナトリウム塩が好ましい。アミノカルボン酸系キレート剤のナトリウム塩としては、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩が好ましい。エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩としては、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、これらの水和物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される1以上がさらに好ましい。なお、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのエチレンジアミン四酢酸の金属塩は、エチレンジアミン四酢酸を水酸化ナトリウムなどのナトリウムイオンを含むアルカリ性化合物で中和した塩と考えることができる。エチレンジアミン四酢酸は水溶液のpHを酸やアルカリを加えることにより変動させると多段階に解離する。従って、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムのいずれかを使用したとしても、これらの化合物は水溶液のpHによって解離状態が変化し得るので、同じpHにおいては同じ解離状態となっていると考えることができる。また、本発明の義歯洗浄剤にはアミノカルボン酸系キレート剤の他に、リン酸系キレート剤、ホスホノカルボン酸系キレート剤を含有することができる。リン酸系キレート剤としてはトリポリリン酸、ヘキサメタリン酸、これらの金属塩、これらの水和物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される1以上が挙げられる。ホスホノカルボン酸系キレート剤としては、1-ジホスホン酸、α-メチルホスホノコハク酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、これらの金属塩、これらの水和物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される1以上が挙げられる。
義歯洗浄剤中のアミノカルボン酸系キレート剤の含有率は、歯石除去効果の観点から所定量以上含有させることが必要であるため、義歯洗浄剤の合計量を100重量%とした場合に、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましく、20重量%以上であることが特に好ましく、30重量%以上であることが最も好ましい。一方で、アミノカルボン酸系キレート剤を過剰に含有しても更なる効果の向上が望めないため、義歯洗浄剤の合計量を100重量%とした場合に、90重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましく、80重量%以下がさらに好ましい。
(固形塩素系漂白剤に対するアミノカルボン酸系キレート剤の含有比)
本発明の義歯洗浄剤に含有する固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤の含有比について、本発明者らは、歯石除去、着色汚れの除去、臭いの除去という問題を同時に解決するという観点から、所定の範囲であることが好ましいことを見出した。固形塩素系漂白剤に対するアミノカルボン酸系キレート剤の含有比は、義歯洗浄剤中のアミノカルボン酸系キレート剤の含有率を固形塩素漂白剤の含有率で除することによって算出される。固形塩素系漂白剤に対するアミノカルボン酸系キレート剤の含有比の数値が小さ過ぎる場合は、相対的に固形塩素系漂白剤の含有率がアミノカルボン酸系キレート剤の含有率より高過ぎるため、固形塩素系漂白剤に対するアミノカルボン酸系キレート剤の含有比は、1以上が好ましく、1.7以上がより好ましく、2以上がさらに好ましく、3以上が特に好ましく、4以上が最も好ましい。また、反対に固形塩素系漂白剤に対するアミノカルボン酸系キレート剤の含有比の数値が大き過ぎる場合は、相対的にアミノカルボン酸系キレート剤の含有率が固形塩素系漂白剤の含有率より高過ぎるため、固形塩素系漂白剤に対するアミノカルボン酸系キレート剤の含有比は、7以下が好ましく、6以下がより好ましく、5.7以下がさらに好ましい。
固形塩素系漂白剤として、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物を使用した場合は、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物中の固形塩素系漂白剤の含有率を基準として算出すれば良い。例えば、固形塩素系漂白剤として有効塩素含有量が63.0%のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを使用して製造したコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の有効塩素含有量が46.2%である場合は、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物中の固形塩素系漂白剤(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム)の含有率は、46.2を63.0で除して100を乗じることにより、73.3%と計算できる。従って、当該コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物を10.0重量%の含有率で含有する義歯洗浄剤における固形塩素系漂白剤(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム)の含有率は、7.33重量%であると計算できる。このように、義歯洗浄剤にコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物を使用した場合には、義歯洗浄剤中の正味の固形塩素系漂白剤の含有率を算出した後に、当該固形塩素系漂白剤に対するアミノカルボン酸系キレート剤の含有比を算出する。
(固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤の含有率の合計)
本発明の義歯洗浄剤に含有する固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤の含有率の合計について、本発明者らは、歯石除去、着色汚れの除去、臭いの除去という問題を同時に解決するという観点から、所定の数値以上であることが好ましいことを見出した。即ち、固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤の含有率の合計の数値は、義歯洗浄剤中の有効成分として重要な固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤の含有量を高めるという観点から、固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤の含有率の合計は45重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、75重量%以上がさらに好ましい。
固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤の含有率の合計は、義歯洗浄剤中の固形塩素系漂白剤の含有率とアミノカルボン酸系キレート剤の含有率を足し合わせることによって算出される。固形塩素系漂白剤がコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物である場合は、前記の固形塩素系漂白剤に対するアミノカルボン酸系キレート剤の含有比を算出する場合と同様に、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物中の固形塩素系漂白剤の含有率を基準として算出すれば良い。
また、固形塩素系漂白剤に対するアミノカルボン酸系キレート剤の含有比と、固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤の含有率の合計の両方を好ましい範囲とすることにより、義歯洗浄剤中における固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤の含有比率を好ましい範囲に維持しつつ、有効成分として重要である固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤の含有率を、本願所望の効果を発揮するのに好ましい範囲に維持できるので、好ましい。
(その他の成分)
本発明の義歯洗浄剤は、種々の洗浄に有益な化合物を組み合わせて含有することができる。本発明の義歯洗浄剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、アルカリ性化合物、界面活性剤、有機酸、有機酸塩、有機高分子、防錆剤、香料、色素、酵素、無機物等の他の添加剤を含有させることができる。固体の添加物に限らず液体の添加物も使用でき、例えば、液体の添加物を、ゼオライト等の多孔質無機粉体等と予め混合して、液体成分を無機物に担持させてから含有させても良い。
アルカリ性化合物とは無機物及び有機物の金属塩の中で、水に溶解した際にアルカリ性を呈する化合物をいう。アルカリ性化合物としては、例えば、ケイ酸の金属塩、リン酸の金属塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸の金属塩、これらの水和物、及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上等が挙げられる。金属塩としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩が好ましく、アルカリ性の強さ、入手のし易さ、取り扱いの容易さといった観点からアルカリ金属塩が好ましく、アルカリ金属塩の中でも水への溶解性及び入手し易さの観点からナトリウム塩及びカリウム塩が特に好ましい。2以上のアルカリ性化合物を組み合わせて義歯洗浄剤に含有しても良い。
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、これらの混合物からなる群より選択される1以上が挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては水酸化ベリリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、これらの混合物からなる群より選択される1以上が挙げられる。炭酸の金属塩としては、炭酸ナトリウム(以下、ソーダ灰ということがある)、炭酸水素ナトリウム(以下、重曹ということがある)、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、これらの混合物からなる群から選択される1以上が好ましく、入手容易性および取り扱いの容易性から炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及びこれらの混合物からなる群から選択される1以上がより好ましい。ケイ酸塩の金属塩としては、オルトケイ酸金属塩、オルトケイ酸金属塩の水和物、メタケイ酸金属塩、メタケイ酸金属塩の水和物並びにこれらの混合物からなる群より選択される1以上が好ましく、取り扱い性、入手のし易さ、アルカリ性の強さの観点から、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムの水和物がより好ましい。メタケイ酸ナトリウムの水和物としてはメタケイ酸ナトリウム五水和物、メタケイ酸ナトリウム九水和物並びにこれらの混合物からなる群より選択される1以上がより好ましい。リン酸の金属塩としては、リン酸水素金属塩、リン酸金属塩、ピロリン酸金属塩、テトラポリリン酸金属塩、ペンタポリリン酸金属塩、メタリン酸金属塩、これらの水和物及びこれらの混合物からなる群から選択される1以上が好ましく、トリポリリン酸ナトリウム、二リン酸ナトリウム、これらの水和物並びにこれらの混合物からなる群から選択される1以上がより好ましい。リン酸の金属塩は前記のリン酸系キレート剤として使用されるものが、アルカリ性化合物として使用される場合もある。
義歯洗浄剤中におけるアルカリ性化合物の含有率は、特に限定されないが、アルカリ性化合物を過剰に投入すると相対的に固形塩素系漂白剤やアミノカルボン酸系キレート剤の含有率を下げることになるため、所定の範囲内であることが好ましい。義歯洗浄剤としての洗浄効果の観点から、義歯洗浄剤の合計量を100重量%とした場合に、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がより好ましい。また、アルカリ性化合物の含有率が少なすぎる場合にはpH調節の効果が不十分になるとの観点から、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましい。アルカリ性化合物は、義歯洗浄剤水溶液のpHを調整するためのpH調整剤として使用することもできるし、アルカリ性化合物の中で特に炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩は、水溶液のpHを中性乃至酸性とすると炭酸ガスを発生して起泡するため、起泡剤としても使用することができる。
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が使用できるが、入手のし易さ等の観点から陰イオン界面活性が好ましい。界面活性剤を含有することにより、義歯に対して洗浄剤成分を接触させやすくすると共に、界面活性剤自体が義歯の汚れの除去に寄与する。
界面活性剤の含有率が多すぎる場合には、界面活性剤以外の洗浄剤成分の含有率が制限される場合がある上、過剰に含有しても更なる洗浄効果への寄与が望めない。そのため、義歯洗浄剤中の界面活性剤の含有率は、義歯洗浄剤の合計量を100重量%とした場合に、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、8重量%以下であることがさらに好ましい。一方で、界面活性剤の含有率が少なすぎる場合には、界面活性剤による洗浄効果の向上が望めないため、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましく、1重量%以上であることがさらに好ましい。
また、界面活性剤は義歯洗浄剤には含有せず、別途添加しても良い。例えば、義歯洗浄剤を入れる水に予め界面活性剤を投入しておいてから、義歯洗浄剤を投入しても良い。この場合、別途添加する界面活性剤の使用量は、特に限定はなく、例えば、義歯洗浄剤に界面活性剤を含有させる場合と同様の範囲とすることができる。別途添加する界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、これらの混合物からなる群から選択される1以上を使用できる。
陰イオン界面活性剤としては、例えば、オレイン酸カリウム石ケン、ヒマシ油カリウム石ケン、半硬化牛脂脂肪酸ナトリウム石ケン、半硬化牛脂脂肪酸カリウム石ケン等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;C12~C14の分岐又は直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;C14~C18のα-オレフィンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジアリールエーテルスルホン酸塩;アルキルリン酸カリウム等のアルキルリン酸塩;β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等の芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;アルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;及びこれらの混合物からなる群から選択される1以上が挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えば、ラウリルアルコールアルコキシレート(例えば、ラウリルアルコールエトキシレートなど)、オレイルアルコールエトキシレート、第1級アルコールエトキシレート等のアルキルエーテル;ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、リバースタイプのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物、エチレンジアミンのポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンブロックポリマー、リバースタイプのエチレンジアミンのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー等のEO・POブロックポリマー;ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールラウレート、ポリエチレングリコールステアレート、ポリエチレングリコールオレエート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、エチレンジアミン-ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー等のポリオキシエチレンアルキルアミン;ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等のアルキルアルカノールアミド;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、パルミチン酸モノグリセライド、パルミチン酸ジグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、オレイン酸ジグリセライド等のグリセリン脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;及びこれらの混合物からなる群から選択される1以上が挙げられる。
陽イオン界面活性剤としては、例えば、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジイソテトラデシルジメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩;及びこれらの混合物からなる群から選択される1以上が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルベタイン;ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド;及びこれらの群から選択される1以上が挙げられる。
界面活性剤としては、入手のしやすさ及びジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等の固形塩素系漂白剤との配合安定性に優れるという観点から、陰イオン性界面活性剤が好ましい。固形塩素系漂白剤との配合安定性に特に優れ、泡がきめ細かいという観点から、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム及びこれらの混合物からなる群から選択される1以上であることがより好ましい。
有機酸としては、特に限定されないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、D-酒石酸、L-酒石酸、D-リンゴ酸、L-リンゴ酸、D-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸、グルタル酸、D-グルタミン酸、L-グルタミン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、クエン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される1以上が挙げられる。常温常圧において固形で取扱いが容易であることから、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、D-酒石酸、L-酒石酸、D-リンゴ酸、L-リンゴ酸、D-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸、グルタル酸、D-グルタミン酸、L-グルタミン酸、クエン酸、及びこれらの混合物から選択される1以上が好ましく、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等の固形塩素系漂白剤(次亜塩素酸発生源)との配合安定性に優れるという観点からコハク酸、フマル酸、及びこれらの混合物から選択される1以上がさらに好ましい。
義歯洗浄剤中における有機酸の含有率は、特に限定されないが、有機酸を過剰に投入すると相対的に固形塩素系漂白剤やアミノカルボン酸系キレート剤の含有率を下げることになるため、所定の範囲内であることが好ましい。義歯洗浄剤としての洗浄効果の観点から、義歯洗浄剤の合計量を100重量%とした場合に、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がより好ましい。また、有機酸の含有率が少なすぎる場合にはpH調節の効果が不十分になるとの観点から、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましい。
有機酸塩として、前記の有機酸の金属塩並びにコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物のコーティング層で使用する有機酸の金属塩を本発明の義歯洗浄剤中に含んでも良いし、酢酸塩を含有しても良い。金属塩としては、アルカリ金属塩としてカリウム塩、ナトリウム塩が挙げられ、アルカリ土類金属塩としてはカルシウム塩やマグネシウム塩が挙げられる。有機酸の金属塩としては入手容易性および取扱い容易性の観点からナトリウム塩が好ましい。
有機高分子としては、例えば、カラギーナン、グアガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アルギン酸のアルカリ金属塩、デキストリン、キサンタンガム、ペクチン、デンプンあるいはこれらの誘導体等の多糖類;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、その他のセルロース誘導体及びこれらの混合物からなる群から選択される1以上が挙げられる。或いは、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、オレフィン-無水マレイン酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸共重合体、ジアリルジメチルアンモニウム-アクリル酸共重合体、ジアリルメチルアミン-マレイン酸共重合体、これらのアルカリ金属塩及びこれらの混合物からなる群から選択される1以上である合成高分子が挙げられる。また、複数の有機高分子を組み合わせて使用しても良い。
有機高分子の中では、汚れの再付着防止効果の観点から多糖類が好ましい。多糖類の中では、固形塩素系漂白剤との配合安定性の観点から、例えば、カラギーナン、グアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上が好ましく、グアガムがより好ましい。また、水に含まれる硬度成分の分散性を付与するという観点から合成高分子が好ましい。合成高分子の中では、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、オレフィン-無水マレイン酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、これらのアルカリ金属塩及びこれらの混合物からなる群から選択される1以上が好ましい。合成高分子及びこれらのアルカリ金属塩は重量平均分子量が5,000以上200,000以下のものが好ましく、10,000以上180,000以下のものがより好ましい。
義歯洗浄剤中における有機高分子の含有率は、特に限定されないが、有機高分子を過剰に投入すると相対的に固形塩素系漂白剤やアミノカルボン酸系キレート剤の含有率を下げることになるため、所定の範囲内であることが好ましい。義歯洗浄剤としての洗浄効果の観点から、義歯洗浄剤の合計量を100重量%とした場合に、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がより好ましい。また、有機高分子の含有率が少なすぎる場合には、含有したとしても汚れの再付着防止効果や水に含まれる硬度成分の分散性が不十分になるとの観点から、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましい。
義歯には金属の部品を含むものがあり、義歯洗浄剤には防錆剤を含有することができる。防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、4-又は5-カルボキシベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾールが挙げられる。入手容易性および防錆効果の観点からベンゾトリアゾールがより好ましい。
義歯洗浄剤中の防錆剤の含有率が多すぎる場合には、防錆剤以外の洗浄剤成分の含有率が制限される場合がある上、過剰に含有しても更なる防錆効果の向上が望めない。そのため、義歯洗浄剤中の防錆剤の含有率は、義歯洗浄剤の合計量を100重量%とした場合に、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、8重量%以下であることがさらに好ましい。一方で、防錆剤の含有率が少なすぎる場合には、防錆剤を含有したとしても防錆効果の向上が望めないため、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましく、1重量%以上であることがさらに好ましい。
色素としては、例えば、スカーレットGコンク、パーマネントレッドGY、セイカファースト(登録商標)カーミン3870、セイカファーストエロー2200、セイカファーストエロー2700(B)(以上、商品名、大日精化工業社製)、Acid Blue 9、Direct Yellow 12(以上、商品名、東京化成工業社製)、フタロシアニンブルー、リボフラビン(以上、商品名、富士フイルム和光純薬社製)、ウルトラマリンブルー(以上、商品名、林純薬工業社製)等が挙げられる。これらの色素は、単独でも又は2種以上を組み合わせて含有させても良い。義歯洗浄剤中の色素の含有率としては0.1~5重量%であることが好ましい。
香料としては、従来知られた天然香料及び合成香料を使用することができる。例えば、ミント、ライム、シトラス等様々な香りを有する香料を使用できる。義歯洗浄剤中の香料の含有率としては0.1~8重量%であることが好ましい。
酵素としては、洗浄に有用な種々の酵素を使用することができる。
無機物(アルカリ性化合物を除く)としては、例えば、硫酸塩、アルカリ金属の塩化物、硫酸アルミニウム塩、シロキサン類、粘土状鉱物、ホウ素化合物等が挙げられる。義歯洗浄剤中に無機物(アルカリ性化合物を除く)を含む場合、義歯洗浄剤中の当該無機物の含有率は、少な過ぎると所定の効果を発揮できない一方で過剰に含有させると固形塩素系漂白剤やアミノカルボン酸系キレート剤の含有率が制限されることになるという観点から、義歯洗浄剤の合計量を100重量%とした場合に、0.1~60重量%が好ましく、1~40重量%がより好ましく、1~20重量%がさらに好ましい。
硫酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸のアルカリ金属塩や硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の硫酸のアルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属の塩化物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。硫酸アルミニウム塩としては、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバンということがある)が挙げられる。粘土状鉱物としては、ヘクトライト等が挙げられる。ホウ素化合物としては、ホウ砂、ホウ酸、メタホウ酸、酸化ホウ素等が挙げられる。シロキサン類としては、ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらの無機物は、単独でも又は2種以上を組み合わせて洗浄剤組成物中に含有しても良い。
(義歯洗浄剤の剤形)
本発明の義歯洗浄剤は固体であり、例えば、粉末、錠剤、固形の剤形を取り得る。また、粉末、錠剤、固形の剤形を組み合わせてもよい。さらに、粉末、錠剤、固形はそれぞれ複数の成分を含有した組成物としてもよく、成分の一部分を粉末とし、粉末とは同一又は異なる特定の成分を錠剤又は固形として、粉末と錠剤及び固形を組み合わせて使用しても良い。本発明の義歯洗浄剤は、速やかに水に溶解して効果を発揮することができるという観点から、粉末とすることがより好ましい。粉末は、固形塩素系漂白剤(例えば、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物)及びアミノカルボン酸系キレート剤を含有する複数成分の粉末原料をミキサー等の一般に知られた方法で混合することにより調製することができるし、混合工程を省略して、複数の原料を直接包装材料に入れることで調整することもできる。
本明細書において「粉末」とは、粒子の集まりを意味する。当該粒子の形状は特に限定されず、不定形、球形、回転楕円形等が挙げられる。粉末には、例えば、微粉を流動層造粒等の従来知られた方法で加工した場合や、チルソネーター等での従来知られた方法で圧縮成形した後に粉砕した場合等のように、二次的に加工して顆粒状にした場合をも包含する。原料化合物を予め混合してから造粒等の二次的な加工を施しても良いし、予め造粒等の二次的な加工を施した原料を混合して調製しても良い。
粉末の平均粒子径は、1~5000μmであることが好ましく、10~3000μmであることがより好ましく、100~1500μmであることがさらに好ましい。平均粒子径が5000μm以下の場合は、粒子として大きすぎず取り扱い性がよく使用し易い。平均粒子径が1μm以上であれば、取り扱い時に僅かな風や静電気で飛散することが少ないため使用し易い。
粉末の平均粒子径の測定は、次のようにして行うことができる。目開き75μm、106μm、150μm、250μm、425μm、600μm、710μm、850μm、1000μm、1180μm、1400μm、1700μm、2000μmの13段のふるいと受け皿を用いて、受け皿の上に目開きの大きいふるいが上段になるように積み重ねる。最上部の目開き2000μmのふるいの上から試料を入れ、受け皿の上に目開きの大きいふるいが上段になるように積み重ねる。重ねたふるいをふるい振とう機にセットし、10分間振とうし、ふるい分けを行う。ふるい振とう機は振動数3600回/分で振幅1 mmの条件で使用してよい。粒度分布の測定にはJIS Z 8815やJIS Z 8801に記載された方法や器具(ふるい)を用いても良い。
ふるい振とう機としては、例えば、レッチェ社製「AS200CONTROL」を使用することができるが、これに限定されるものではない。ふるい振とう機を使用できない場合は、重ねたふるいを片手で支え、1分間に約120回の割合でふるいの枠をたたく。時折、ふるいを水平に置き、ふるい枠を数回強くたたく。この操作を繰り返し、ふるい分けを十分に行なう。試料が凝集している場合や、ふるいの内側や裏面に微粉が付着している場合には、ブラシで静かに試料をほぐし、ふるい分け操作を再度行ない、ふるい網を通過したものはふるい下とする。なお、ふるい下とは、ふるい分け終了までに、ふるい網を通過した試験試料のことをいう。
試料に粒径2000μmを超える粒子が含まれる場合は、目開き2000μmを超える段階的に目開きの異なる複数のふるいを追加してもよい。例えば、目開き2360μm、2800μm、3350μm、4000μm、4750μm、5600μm、又はそれ以上の目開きのふるいを追加してもよい。粒径75μm以下の粒子が多い場合には、目開き75μm未満の段階的に目開きの異なる複数のふるいを追加してもよい。例えば、目開き63μm、53μm、45μm、38μm、又はそれ以下の目開きのふるいを追加してもよい。その他の目開きのふるいを選択することもできる。
それぞれのふるい及び受け皿上に残留した粒子の重量を測定し、各ふるい上の粒子の重量割合(%)を算出する。受け皿から順に目開きの小さなふるい上の粒子の重量割合を足し合わせることにより積算していく。積算した重量割合が50%以上となる最初のふるいの目開きをaμmとし、aμmよりも一段大きいふるいの目開きをbμmとし、受け皿から目開きaμmのふるいまでの積算した重量割合をc%、また目開きaμmのふるい上の重量割合をd%とした場合、平均粒子径は次の数式4から求められる。
Figure 2024055194000001
(義歯洗浄剤の水溶液のpH)
本発明の義歯洗浄剤は、着色汚れの除去、スケール汚れの除去、塩素ガスの抑制といった観点から水に溶解した際のpHが所定の範囲であることが好ましい。固形塩素系漂白剤を用いた場合において、着色汚れを除去するためにはpHをアルカリ性領域にすることが有利である一方で、スケール汚れの除去は酸性領域が有利であると考えられる。さらに、固形塩素系漂白剤の水溶液を酸性とすると、塩素ガスが発生するため、塩素ガスの発生を抑制するという観点ではpHを中性からアルカリ性の領域とすることが有利である。本発明者らは、これらの観点を総合的に考慮した結果、義歯洗浄剤の1重量%濃度の水溶液のpHの下限値は3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、4.5以上であることがさらに好ましく、また、pHの上限値は10以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8.5以下であることがさらに好ましく、8以下であることが特に好ましいことを見出した。
(義歯洗浄剤の好適な態様)
本発明の義歯洗浄剤は、水への溶解性の観点から粉末であることが好ましい。
固形塩素系漂白剤としては、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物を使用することが好ましい。コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の固形塩素系漂白剤としては、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの水和物、ジクロロイソシアヌル酸カリウムが好ましく、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムがより好ましい。
コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物のコーティング層としては、水への溶解性が良好であるため、カルボン酸の金属塩が好ましい。カルボン酸の金属塩としては芳香族カルボン酸の金属塩、非環状ジカルボン酸のアルカリ金属塩、非環状モノカルボン酸のアルカリ金属塩、これらの混合物からなる群より選択される1以上が挙げられる。カルボン酸の金属塩としては芳香族カルボン酸の金属塩がコーティング層として加工し易く、入手も容易で特に好ましい。芳香族カルボン酸の金属塩としては、安息香酸ナトリウム、パラ-t-ブチル安息香酸ナトリウムが好適である。
本発明に使用するアミノカルボン酸系キレート剤としては、スケール汚れの除去または抑制の観点からエチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸の金属塩、エチレンジアミン四酢酸の金属塩の水和物、およびこれらの混合物からなる群から選択される1以上が好ましい。エチレンジアミン四酢酸の金属塩としてはナトリウム塩が好ましい。エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、これらの水和物、およびこれらの混合物からなる群から選択される1以上が好ましい。
(コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の好適な製造方法)
コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物は、従来知られた方法で製造することができる。例えば、コーティング層に使用する化合物を水やアルコール等の溶媒に溶解し、溶液として、固形塩素系漂白剤を転動造粒機や流動層造粒機で流動させ、コーティング層に使用する化合物の水溶液をスプレーすることにより、固形塩素系漂白剤にコーティング層を形成することができる。その他の製造方法を採用しても良い。
(義歯洗浄剤の好適な製造方法)
本発明の義歯洗浄剤は、固形塩素系漂白剤としてコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物とアミノカルボン酸系キレート剤を混合することにより製造することができ、その他の添加剤をさらに含有しても良い。義歯洗浄剤に含有する成分を、既知のミキサーに投入して混合し、さらにフィルムやパウチやボトル等に小分け容器に包装してもよい。また、ミキサーを使用せず、義歯洗浄剤に含有する成分をフィルムやパウチやボトル等の小分け容器に直接投入しても良い。
(義歯の洗浄方法)
義歯の洗浄方法として、義歯洗浄剤を水に投入した後義歯を投入しても良いし、義歯を水に投入した後に義歯洗浄剤を投入しても良い。義歯及び義歯洗浄剤のいずれか一方または両方を投入した後に、超音波洗浄機を用いて水溶液を超音波処理しても良い。例えば、ガラスビーカーに水を入れ、義歯洗浄剤を投入した後義歯を投入し、前記ガラスビーカーを超音波洗浄機にセットして、超音波洗浄を行っても良い。義歯洗浄剤の水溶液に義歯を浸漬する時間は特に限定されないが、本発明の義歯洗浄剤は洗浄効果に優れるため、短時間の浸漬でも効果を発揮し得る。浸漬時間が長いほど洗浄効果を得やすいため、浸漬時間としては1分以上浸漬することが好ましく、5分以上浸漬することがより好ましく、8分以上浸漬することがさらに好ましい。また浸漬時間が過剰に長時間となっても更なる洗浄効果の向上は見込めないので、洗浄作業性の観点から12時間以内とすることが好ましく、3時間以内とすることがより好ましい。
本発明の義歯洗浄剤の効果を有効に発揮するためには、義歯洗浄剤を投入後の水溶液に含まれるアミノカルボン酸系キレート剤の濃度を所定の範囲とすることが好ましい。アミノカルボン酸系キレート剤の濃度が高濃度であるほど歯石除去効果が得られやすいが、過剰量を投入しても更なる効果の向上は望めないという観点から、義歯洗浄剤を投入後の水溶液に含まれるアミノカルボン酸系キレート剤の濃度の下限値は1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましく、また、濃度の上限値は20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、12重量%以下であることがさらに好ましい。
(歯石)
歯石は、成分の大部分がリン酸カルシウムで構成されており、その他にタンパク質、炭水化物や細菌などから構成されることが知られている。例えば、厚生労働省の生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yh-034.html)の健康用語辞典の「歯石」の説明においては、歯石の成分の約80%がリン酸カルシウムであるとされている。従って、リン酸カルシウムの一形態であるリン酸三カルシウム(Ca(PO)を用いて、本来水に溶解し難いリン酸三カルシウムを水に溶解することができる効果(リン酸三カルシウム溶解量)を測定することにより、歯石除去効果を評価することができる。即ち、義歯洗浄剤により、水に溶解していないリン酸三カルシウムを水に溶解あるいは分散する効果が高い(リン酸三カルシウム溶解量が多い)程、高い歯石除去効果を有すると評価することができる。
(その他の用途)
本発明の義歯洗浄剤は高いスケール除去効果、漂白効果、消臭効果を有することに加えて、固形塩素系漂白剤による微生物の殺菌や除菌などの効果も期待できるので、義歯洗浄剤以外の様々な用途に幅広く応用して洗浄剤としても使用することができる。例えば、銭湯などの浴用施設、プール、景観用の循環水、冷却塔処理水などの熱交換器を有する循環経路内を水が循環する機構を有する設備においては、循環経路内で微生物によるバイオフィルムの形成や、長期間の水の循環に伴い水中の硬度成分の析出によるスケール汚れ、水の汚れに伴う臭いの発生などの問題を有する場合があり、本発明の義歯洗浄剤を使用することにより洗浄効果が得られることが期待できる。本発明の義歯洗浄剤を循環水の循環経路に対して洗浄剤として使用する場合は、循環経路のいずれかの場所から、所定の濃度になるように洗浄剤を循環水中に投入し、洗浄剤を溶解した水溶液が循環経路内を循環することにより洗浄を行なっても良い。
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例及び比較例において使用した原材料や実験機器は次のとおりである。
[原材料]
・ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム:四国化成工業社製、商品名「ネオクロール60G」(有効塩素含有量 63.0%)
・安息香酸ナトリウム:試薬(富士フイルム和光純薬社製)
・コハク酸:試薬(富士フイルム和光純薬社製)
・炭酸水素ナトリウム:試薬(富士フイルム和光純薬社製)
・エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物:試薬(同仁化学研究所社製)
・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物:試薬(同仁化学研究所社製)
・ヘキサメタリン酸ナトリウム:試薬(富士フィルム和光純薬社製)
・リン酸三カルシウム:試薬(富士フイルム和光純薬社製)
[資材]
[アルミラミネートフィルム]
・材質構成(μm)PET12/AL7/CPP50
[機器、器具]
[気体検知管]
・ガステック社製 「気体検知管 No.71 メチルメルカプタン」
[ふるい振とう機]
・レッチェ社製「AS200CONTROL」
[転動造粒機]
・アズワン社製「DPZ-1」
[pHメーター]
・堀場製作所社製「F-51」
[pH電極]
・堀場製作所社製「9615S-10D」
[超音波洗浄機]
・柴田科学社製「SU-9TH」
[高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置]
・パーキンエルマー社製「Optima 8300 ICP-OES」
(コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物の製造)
・コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物1
コーティング層に使用する化合物として安息香酸ナトリウムを30重量%になるように水に溶解しコーティング用水溶液とした。転動造粒機に粉末のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを入れ、60℃に加熱しながら転動造粒機を回転させた。転動造粒機内で流動するジクロロイソシアヌル酸ナトリウムに、コーティング用水溶液をスプレー噴霧した。所定量のコーティング層が形成された時点でスプレーを終了しコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物1を得た。乾燥したコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物1の有効塩素含有量は46.2%で、コーティング層の割合は26.7重量%であった。なお、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物は乾燥することなく少量の水分を含んだ状態で使用しても良い。平均粒子径は500~1000μmの範囲内であった。
(義歯洗浄剤の製造)
(A)固形塩素系漂白剤、(B)アミノカルボン酸系キレート剤、(C)アルカリ性化合物、(D)有機酸の各原材料を表2および表4に記載した配合比率になるように混合し、粉末状の義歯洗浄剤を製造した。粉末の平均粒子径は、本明細書に記載した方法により測定した。本発明で使用した原材料の粉末は、いずれも平均粒子径が200~1000μmの範囲内であった。
(歯石除去試験(リン酸三カルシウム溶解試験))
歯石の主成分であるリン酸カルシウムの一形態であるリン酸三カルシウム(Ca(PO)を用いて、本来水に溶解し難いリン酸三カルシウムを水に溶解する効果(リン酸三カルシウム溶解量)を測定することにより、歯石除去効果を評価した。ガラスビーカーに100gの水を入れ、実施例1から10に記載した義歯洗浄剤は12.3g、実施例11に記載した義歯洗浄剤は15.6g、実施例12に記載した義歯洗浄剤は12.8g、実施例13に記載した義歯洗浄剤は15.0gをそれぞれ100gの水に溶解した。なお、比較例1~5については後述の通りの濃度とした。その後、水溶液にリン酸三カルシウムを加えていき、溶け残ったリン酸三カルシウムが目視で確認できるまで添加した。ガラスビーカーを超音波洗浄機に入れ、超音波処理を10分間実施して、リン酸三カルシウムの溶け残りがあることを確認し、その後、水溶液を0.45μmのフィルターでろ過した。ろ液中のカルシウム濃度を、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いて測定した。測定結果から、水溶液に溶解したスケール量としてのリン酸三カルシウム溶解量を算出した。
(着色汚れ除去試験)
義歯を0.5%アルブミン水溶液、タンニン抽出液、0.6%塩化鉄水溶液の順で30分ずつ含侵した。タンニン抽出液は、沸騰したイオン交換水1.2Lに日本茶葉約50g、紅茶葉約9g、インスタントコーヒー粉末12gを入れて調製した。この含浸操作を10回繰り返し実施した後、室温で義歯を24時間以上乾燥させて試験片とした。ガラスビーカーに入れた25℃の水100gに試験片を含侵し、直ぐに実施例1から10に記載した義歯洗浄剤は12.3g、実施例11に記載した義歯洗浄剤は15.6g、実施例12に記載した義歯洗浄剤は12.8g、実施例13に記載した義歯洗浄剤は15.0gをそれぞれガラスビーカーに入れ、ガラスビーカーを超音波洗浄機にセットし、10分間超音波洗浄を行なった。なお、比較例1~5については後述の通りの濃度とした。超音波洗浄後の試験片の外観を目視確認し、義歯洗浄剤を使用せず水のみで超音波洗浄を行なったブランク試験での試験片と比較して、着色汚れが明らかに除去されている場合を〇、着色汚れが多少除去されているが汚れが残っている場合を△、ブランク試験の試験片と差が無い場合を×として評価した。
(臭い除去試験(消臭試験))
樹脂片(レジン)約1gを15重量%濃度のメチルメルカプタン水溶液に30分含侵後、取り出して試験片とした。ガラスビーカーに入れた25℃の水100gに試験片(レジン)を含侵し、実施例1から10に記載した義歯洗浄剤は12.3g、実施例11に記載した義歯洗浄剤は15.6g、実施例12に記載した義歯洗浄剤は12.8g、実施例13に記載した義歯洗浄剤は15.0gをそれぞれガラスビーカーに入れ、ガラスビーカーを超音波洗浄機にセットし、10分間超音波洗浄を行った。なお、比較例1~5については後述の通りの濃度とした。洗浄後、試験片(レジン)を水溶液から取り出して密閉容器に入れて10分間静置し、気体検知管で密閉容器内の気体のメチルメルカプタンガス濃度を測定した。
(保存安定性試験)
表4に記載した各組成の義歯洗浄剤12.3~15.6gをアルミラミネートフィルムに入れ、ヒートシールにより密閉し、アルミラミネートフィルムで袋状に包装した義歯洗浄剤を得た。当該義歯洗浄剤を50℃に設定したオーブンに入れ、4週間保管した。開始から4週間経過後に義歯洗浄剤を密閉包装したアルミラミネートフィルムの膨張率を評価した。膨張率は、試験開始前の包装した義歯洗浄剤の体積を100%として、4週間経過後の包装した義歯洗浄剤の体積を、試験前の包装した義歯洗浄剤の体積で除することにより算出した。体積は密閉した包装をメスシリンダーに計量した水に浸漬して、上昇した水面の体積を読み取ることにより測定した。膨張率が100%を超えて数値が大きいほど、包装材料の膨れが激しいことを意味する。
(pHの測定)
表2および表4に記載した組成の粉末状の義歯洗浄剤を、1重量%の濃度になるように蒸留水に溶解し、25℃に調整した。撹拌後の水溶液約50mlを用いて、pHメーターでpHを測定した。pHメーターは測定の直前にpH4標準液、pH7標準液、pH9標準液を用いて3点校正を実施した。
(キレート剤の違いによる歯石除去効果(リン酸三カルシウム溶解量))
アミノカルボン酸系キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物(以下、EDTA4Naと表記することがある)とリン酸系キレート剤であるヘキサメタリン酸ナトリウムの10重量%濃度の水溶液をそれぞれ作成し、前述の歯石除去試験(リン酸三カルシウム溶解試験)の方法に従ってリン酸三カルシウム溶解量を評価した。結果は表1および図1の通りであった。なお、各キレート剤の水溶液のpHはコハク酸または炭酸水素ナトリウムを加えることにより調整した。アルカリ性から酸性のいずれのpH領域においても、ヘキサメタリン酸ナトリウムより、EDTA4Naは高いリン酸三カルシウム溶解性を示した。なお、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムなどのエチレンジアミン四酢酸金属塩は、エチレンジアミン四酢酸を水酸化ナトリウムなどのナトリウムイオンを含むアルカリ性化合物で中和した塩と考えることができるが、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムの水溶液のpHを酸やアルカリで変動するとエチレンジアミン四酢酸は多段階に解離する。従って、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムを使用したとしても、pHによってはエチレンジアミン四酢酸の解離状態が異なり得ることが理解される。
Figure 2024055194000002
(実施例1~13、比較例1~5)
表2および表4に記載の組成で、粉末状の義歯洗浄剤(実施例1~13)を作製した。これらの義歯洗浄剤の水溶液を用いて、着色汚れ除去試験、歯石除去試験、消臭試験、およびpHの測定を実施した。また、表3の通り、市販の義歯洗浄剤(比較例1~5)を用いて、着色汚れ除去試験、歯石除去試験、および消臭試験を実施した。市販の義歯洗浄剤はそれぞれの商品の使用法に従い、以下の濃度の水溶液を各試験に用いた。
・市販品1:0.017g/ml(2.6gの錠剤を150mlの水に溶解)
・市販品2:0.018g/ml(2.7gの錠剤を150mlの水に溶解)
・市販品3:0.017g/ml(顆粒1回分2.5gを150mlの水に溶解)
・市販品4:0.020g/ml(粉末1回分3.0gを150mlの水に溶解)
・市販品5:0.020g/ml(3.0gの錠剤を150mlの水に溶解)
結果は表2~4の通りであった。本発明の義歯洗浄剤は、固形塩素系漂白剤とアミノカルボン酸系キレート剤の両方を含有していない市販の義歯洗浄剤と比較して、高い歯石除去効果、着色汚れ除去効果、および消臭効果を示した。
Figure 2024055194000003
Figure 2024055194000004
Figure 2024055194000005
なお、市販の義歯洗浄剤は下記のものを使用した。なお、成分情報は各商品の成分表示をもとに記載し、商品に成分表示が記載されていない場合は、各商品のホームページを参考に成分情報を記載した。
・市販品1:商品名「タフデント(登録商標)」(小林製薬社製)、成分:発泡剤(炭酸塩、有機酸)、酸素系漂白剤(過硫酸塩、過ホウ酸塩)、賦形剤、歯石防止剤、界面活性剤(アルファオレフィンスルホン酸塩)、漂白活性化剤(TAED)、酵素、香料、防錆剤、色素。
・市販品2:商品名「酵素入りポリデント(登録商標)」(グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン社製)、成分:発泡剤(重炭酸ナトリウム、クエン酸)、漂白・除菌剤(過硫酸カリウム・過炭酸ナトリウム)、安定化剤(炭酸ナトリウム)、滑沢剤(安息香酸ナトリウム、ポリエチレングリコール)、漂白活性化剤(テトラアセチルエチレンジアミン(TAED))、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)、結合剤(ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、セルロースガム)、香料、酵素、色素。
・市販品3:商品名「デント・エラック(登録商標)義歯洗浄剤」(ライオン歯科材料社製)、成分:酸素系洗浄成分、タンパク質分解酵素。(https://www.lion-dent.com/dental/products/basic/erac_senjho.htm)
・市販品4:商品名「入れ歯爽快」(和田精密歯研社製)、成分:クエン酸、リンゴ酸、スルファミン酸。(http://www.labowada.co.jp/lineup/ireba_soukai.html)
・市販品5:商品名「フィジオ(登録商標)クリーン歯石くりん 義歯洗浄剤」(ニッシン社製)、成分:有機酸、スルファミン酸、炭酸塩、酸素系漂白剤、色素、結合剤、崩壊剤。(http://www.nissin―dental.jp/products/materials/allmaterials/kurin/index.html)
(実施例5、実施例11~13:保存安定性試験)
表4に記載した含有率となるように各原料を混合し、義歯洗浄剤(実施例5、11~13)を得た。実施例5に記載した義歯洗浄剤は12.3g、実施例11に記載した義歯洗浄剤は15.6g、実施例12に記載した義歯洗浄剤は12.8g、実施例13に記載した義歯洗浄剤は15.0gとなるようにそれぞれアルミラミネートフィルムに入れ、ヒートシールにより密閉し、アルミラミネートフィルムで袋状に包装した義歯洗浄剤を得た。なお、実施例5と12、実施例11と13は、それぞれアミノカルボン酸系キレート剤とアルカリ性化合物または有機酸を共通にして、固形塩素系漂白剤を、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物とする場合と、(コーティング層を有さない)ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムとする場合で比較することができる。固形塩素系漂白剤の含有率が、実施例5と12で異なるのは、固形塩素系漂白剤としてコーティング層の有無により有効塩素含有量が異なるため、義歯洗浄剤としての有効塩素含有量が近い値となるように含有率を調整したものである。実施例11と13で固形塩素系漂白剤の含有率が異なるのも同様の理由である。
包装した義歯洗浄剤を50℃で4週間保管した結果、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物を使用した実施例5はジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを使用した実施例12より膨張率が抑制された。また、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物を使用した実施例11はジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを使用した実施例13より膨張率が抑制された。従って、固形塩素系漂白剤にコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物を用いた義歯洗浄剤は、(コーティング層を有さない)ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを用いた義歯洗浄剤より、保存安定性に優れることが確認された。
以上の結果より、本発明の義歯洗浄剤は、比較例と比べて、歯石除去効果、着色汚れ除去効果、および臭い除去効果に優れることが確認された。さらに、固形塩素系漂白剤を、コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物とすることで、保存安定性が改善されることが確認できた。
本発明は、高い洗浄効果を有し、着色汚れ、スケール汚れ、臭いに対して、高い除去効果を有する義歯組成物および義歯の洗浄方法を提供することができるので、産業上の利用可能性を有する。

Claims (16)

  1. 固形塩素系漂白剤およびアミノカルボン酸系キレート剤を含有する義歯洗浄剤。
  2. 前記固形塩素系漂白剤の全部又は一部がコーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物である請求項1記載の義歯洗浄剤。
  3. 前記コーティング層を有する固形塩素系漂白剤含有物のコーティング層が芳香族カルボン酸の金属塩を含有する請求項2記載の義歯洗浄剤。
  4. 前記固形塩素系漂白剤が、ジクロロイソシアヌル酸の金属塩、ジクロロイソシアヌル酸の金属塩の水和物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される1以上を含有する、請求項3記載の義歯洗浄剤。
  5. 前記アミノカルボン酸系キレート剤がエチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸の金属塩、エチレンジアミン四酢酸の金属塩の水和物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される1以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載の義歯洗浄剤。
  6. 前記固形塩素系漂白剤に対する前記アミノカルボン酸系キレート剤の含有比が1以上7以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の義歯洗浄剤。
  7. 前記固形塩素系漂白剤と前記アミノカルボン酸系キレート剤の含有率の合計が45重量%以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載の義歯洗浄剤。
  8. 義歯洗浄剤の1重量%濃度の水溶液のpHが3以上10以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の義歯洗浄剤。
  9. 前記固形塩素系漂白剤に対する前記アミノカルボン酸系キレート剤の含有比が1以上7以下である、請求項5記載の義歯洗浄剤。
  10. 前記固形塩素系漂白剤と前記アミノカルボン酸系キレート剤の含有率の合計が45重量%以上である、請求項5記載の義歯洗浄剤。
  11. 義歯洗浄剤の1重量%濃度の水溶液のpHが3以上10以下である、請求項5記載の義歯洗浄剤。
  12. 前記固形塩素系漂白剤と前記アミノカルボン酸系キレート剤の含有率の合計が45重量%以上である、請求項6記載の義歯洗浄剤。
  13. 前記固形塩素系漂白剤と前記アミノカルボン酸系キレート剤の含有率の合計が45重量%以上である、請求項9記載の義歯洗浄剤。
  14. 義歯洗浄剤の1重量%濃度の水溶液のpHが3以上10以下である、請求項13記載の義歯洗浄剤。
  15. 請求項1から4のいずれか1項に記載の義歯洗浄剤を水に溶解させて水溶液を調製する工程と、前記水溶液と義歯とを接触させる工程とを含む、義歯の洗浄方法。
  16. 前記水溶液に含まれるアミノカルボン酸系キレート剤の濃度が1重量%以上20重量%以下である、請求項15に記載の義歯の洗浄方法。

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