JP2024054730A - 航空燃料油および航空燃料油用基材 - Google Patents

航空燃料油および航空燃料油用基材 Download PDF

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  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Abstract

【課題】イソパラフィン系基材を主たる基材として含む場合においても、析出点が低く低温流動性に優れるとともに特に潤滑性および酸化安定性に優れた航空燃料油を提供する。【解決手段】硫黄分、イソパラフィン、n-パラフィン、芳香族分を各々特定量含有するとともに、15℃における密度および蒸留範囲が各々特定範囲内にあるイソパラフィン系基材と、硫黄分を特定量含有し、15℃における密度および蒸留範囲が各々特定範囲内にある水素化脱硫灯油基材と、原油を常圧蒸留して得られる、硫黄分を特定量含有し、15℃における密度および蒸留範囲が各々特定範囲内にある直留灯油基材と、特定の原料油の水素化処理油から得られる、硫黄分を特定量含有し、15℃における密度および蒸留範囲が各々特定範囲内にある高圧水素化処理基材とが各々特定範囲内になるように含有し、30℃における動粘度が一定値以上で、メルカプタン硫黄分含有量が所定値以下であることを特徴とする航空燃料油である。【選択図】なし

Description

本発明は、航空燃料油および航空燃料油用基材に関する。
航空燃料油(「航空タービン燃料油」とも称する場合がある。)は、航空機用タービンエンジンに用いられる燃料油であって、航空機の主翼中に貯蔵され、エンジンへの供給に際し、エンジンからの排熱と熱交換することにより燃焼効率を上げると共に、エンジン冷却の役割をも担っている。
航空燃料油を構成する燃料油基材としては、通常、原油を常圧蒸留して得られる灯油留分(直留灯油)を水素化脱硫した灯油基材(水素化脱硫灯油基材)が主に用いられている。
一方、近年、持続可能な航空燃料油(SAF(Sustainable aviation fuel)または再生可能代替航空燃料油として、化石燃料に代えて、生物由来の有機性資源(バイオマス)を原料とし、発酵、搾油、熱分解処理等して製造された基材を含有する再生可能原料を用いた航空燃料油が注目されるようになっている。
例えば、特許文献1(特開2014-159597号公報)には、C1+1+炭化水素を含む水溶性酸素化炭化水素を準備する段階と、前記酸素化炭化水素を脱酸素触媒の存在下にて接触反応させ、C1+1-3炭化水素を含む酸素化物を生成する段階と;前記酸素化物を縮合触媒の存在下に縮合温度及び縮合圧力にて接触反応させ、C4+化合物を生成する段階とを施した上で、さらに蒸留処理して得られた留分を構成基材とする、航空燃料油等が提案されている。
また、バイオマスを原料とする航空燃料油として、例えば、木質バイオマスをガス化炉に投入してHとCOを主成分とする合成ガス(Syngass)を得た後、フィッシャー・トロプシュ反応(FT反応)によって炭化水素を合成し、さらに水素を添加し異性化反応を行って航空燃料油の構成基材を生成する方法が提案されるようになっている。
さらに、廃食油や藻類中の油脂や、一般的な動植物油から得られる油脂を原料として合成された、パラフィン類を主成分として含む航空燃料油の構成基材(HEFA-SPK(Hydroprocessed Esters and Fatty Acids Synthetic Paraffinic Kerosene))も知られるようになっている。
例えば、上記藻類や、ジャトロファ、カメリナ等の植物の種子から得られる油脂に対して脱酸素化処理および水素化処理を施すことにより、パラフィンを主成分とする航空燃料油の構成基材とする方法や、廃食油や一般的な油脂脂に由来するさまざまな脂質を水素化処理し、不純物を除去した後、得られたパラフィン分を異性化し、適宜分留処理してイソパラフィンを主成分とする航空燃料油の構成基材とする方法等を挙げることができる。
加えて、バイオマスを発酵させて産生したエタノールやブタノール等のいわゆるバイオアルコールを原料として合成された、分岐鎖状飽和炭化水素(イソパラフィン)を主成分として含む航空燃料油の構成基材(ATJ-SPK (Alcohol to Jet Synthetic Paraffinic Kerosene))も知られるようになっている。
例えば、発酵法により産生されたエタノールやイソブタノールを脱水反応によりエチレンやイソブテンとした後、これを重合してオリゴマー化することにより、分岐鎖状飽和炭化水素(イソパラフィン)を主成分とする航空燃料油の構成基材とする方法が知られるようになっている。
特開2014-159597号公報
再生可能原料を用いた航空燃料油の構成基材の中でも、合成反応や異性化反応を伴う生産方法を経て得られたものは、分岐鎖状飽和炭化水素(イソパラフィン)が組成の大部分を占め、ワックス分を生成し易い直鎖状飽和炭化水素(n-パラフィン)の含有量が少なく、また、芳香族分(芳香族炭化水素化合物)もほとんど含有していない。
このようなイソパラフィン系基材の製造方法としては、上記再生可能原料を用いる方法以外にも、石油精製工程から得られるイソブテン等から合成する方法も挙げることができる。
ところで、一般に航空燃料油としては、例えば、高高度飛行中に燃料閉塞や燃焼不良等を生じないように、析出点(ワックス分析出温度)が低く低温流動性に優れるものが求められるが、n-パラフィンの含有量が少ない上記イソパラフィン系基材を主たる構成基材として含む航空燃料油は、析出点を低減し得ることが期待される。
一方、一般に航空燃料油としては、析出点(ワックス分析出温度)以外にも燃料油として種々の特性に優れたものが求められ、本発明者等が検討したところ、上記イソパラフィン系基材を主たる構成基材として含む航空燃料油は、必ずしも十分な潤滑性や酸化安定性を発揮し難いことが判明した。
この場合、潤滑性を向上させる添加剤(潤滑性向上剤)や酸化安定性を向上させる添加剤(酸化安定性向上剤)を航空燃料油に配合する対応も考えられるが、潤滑性向上剤を配合した場合には水分離性が低下し易くなり、また、酸化安定性向上剤についてもその配合量に上限が設けられていることが多く、必ずしも所望の基材配合を採り難い。
また、添加剤を配合した場合、得られる航空燃料油のコスト上昇を招き易く、経済的な燃料油の製造が行い難くなる。
このような状況下、本発明は、イソパラフィン系基材を主たる基材として含む場合においても、析出点が低く低温流動性に優れるとともに特に潤滑性および酸化安定性に優れた航空燃料油を提供するとともに、イソパラフィン系基材に好適に配合し得る航空燃料油用基材を提供することを目的とするものである。
上記技術課題を解決するために本発明者等が鋭意検討したところ、イソパラフィン系基材に対し、特定の物性を有する水素化脱硫灯油基材と、特定の物性を有する高圧水素化処理基材とを各々特定の割合で配合することにより、上記技術課題を解決することを着想した。
本発明者等の検討によれば、上記各基材を配合して得られた航空燃料油は、析出点が低く低温流動性に優れるとともに一定程度の潤滑性および酸化安定性を示すものであったが、航空燃料油としては、さらに潤滑性および酸化安定性に優れるものが望まれた。
このため、本発明者等がさらに検討したところ、上記各基材とともに、原油を常圧蒸留して得られる灯油留分(直留灯油)をさらに特定の割合で配合して調製することにより上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、
(1)硫黄分含有量が10質量ppm未満、イソパラフィン含有量が85.0容量%以上、n-パラフィン含有量が7.0質量%以下、芳香族分含有量が0.5容量%以下であり、15℃における密度が0.7300~0.8000g/cm、蒸留範囲が140.0℃~300.0℃であるイソパラフィン系基材を30.0容量%~50.0容量%含有するとともに、
硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が135.0℃~290.0℃である水素化脱硫灯油基材を10.0容量%~25.0容量%、
硫黄分含有量が10質量ppm以上、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が120.0℃~290.0℃である直留灯油基材を5.0容量%~20.0容量%、
90容量%留出温度が320.0~360.0℃で、芳香族炭化水素を37.0~65.0質量%含む原料油の水素分圧10~18MPaによる水素化処理油から得られる、硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7900~0.8600g/cm、蒸留範囲が140.0℃~320.0℃である高圧水素化処理基材を25.0容量%~40.0容量%含有し、
30℃における動粘度が1.450mm/秒以上、メルカプタン硫黄分含有量が30質量ppm以下である
ことを特徴とする航空燃料油、
(2)下記式(I)
2.5×アルキルベンゼン含有量(容量%)-5.2×ナフテンベンゼン含有量(容量%) (I)
により算出される安定性指標が0.00より大きい上記(1)に記載の航空燃料油、
(3)硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が135.0℃~290.0℃である水素化脱硫灯油基材14.3容量%~45.5容量%と、
硫黄分含有量が10質量ppm以上、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が120.0℃~290.0℃である直留灯油基材7.1容量%~36.4容量%と、
90容量%留出温度が320.0~360.0℃で、芳香族炭化水素を37.0~65.0質量%含む原料油の水素分圧10~18MPaによる水素化処理油から得られる、硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7900~0.8600g/cm、蒸留範囲が140.0℃~320.0℃である高圧水素化処理基材35.7容量%~72.7容量%との混合物からなり、
メルカプタン硫黄分含有量が55質量ppm以下である
ことを特徴とする航空燃料油用基材、
を提供するものである。
本発明によれば、イソパラフィン系基材を主たる基材として含む場合においても、析出点が低く低温流動性に優れるとともに特に潤滑性および酸化安定性に優れた航空燃料油を提供するとともに、イソパラフィン系基材に好適に配合し得る航空燃料油用基材を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本明細書中、数値範囲を現す「~」は、その上限及び下限としてそれぞれ記載されている数値を含む範囲を表す。また、「~」で表される数値範囲において上限値のみ単位が記載されている場合は、下限値も同じ単位であることを意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本発明に係る航空燃料油は、
硫黄分含有量が10質量ppm未満、イソパラフィン含有量が85.0容量%以上、n-パラフィン含有量が7.0質量%以下、芳香族分含有量が0.5容量%以下であり、15℃における密度が0.7300~0.8000g/cm、蒸留範囲が140.0℃~300.0℃であるイソパラフィン系基材を30.0容量%~50.0容量%含有するとともに、
硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が135.0℃~290.0℃である水素化脱硫灯油基材を10.0容量%~25.0容量%、
硫黄分含有量が10質量ppm以上、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が120.0℃~290.0℃である直留灯油基材を5.0容量%~20.0容量%、
90容量%留出温度が320.0~360.0℃で、芳香族炭化水素を37.0~65.0質量%含む原料油の水素分圧10~18MPaによる水素化処理油から得られる、硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7900~0.8600g/cm、蒸留範囲が140.0℃~320.0℃である高圧水素化処理基材を25.0容量%~40.0容量%含有し、
30℃における動粘度が1.450mm/秒以上、メルカプタン硫黄分含有量が30質量ppm以下である
ことを特徴とするものである
以下、本発明に係る航空燃料油を構成する各基材について説明する。
本発明に係る航空燃料油は、イソパラフィン系基材を構成基材として含むものであり、本出願書類において、イソパラフィン系基材は、再生可能原料を用いて得られるものであってもよいし、石油精製工程で得られる留分や、石油精製工程で得られる留分をさらに合成ないし異性化処理して得られるものであってもよい。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、硫黄分含有量が、10質量ppm未満(0質量ppm以上10質量ppm未満)であるものであり、5質量ppm以下(0質量ppm以上5質量ppm以下)であるものが好ましく、1質量ppm以下(0質量ppm以上1質量ppm以下)であるものがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材の硫黄分含有量が上記範囲内にあることにより、燃焼時における硫黄酸化物の生成を容易に低減することができる。
なお、本出願書類において、硫黄分含有量は、通常、JIS K 2541-6:2013「原油及び石油製品-硫黄分試験方法-第6部:紫外蛍光法」により測定された値を意味し、後述する直留灯油基材については、JIS K 2541-4:2003「放射線式励起法」により測定された値を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、メルカプタン硫黄分含有量が、5質量ppm未満(0質量ppm以上5質量ppm未満)であるものであり、4質量ppm未満(0質量ppm以上4質量ppm未満)であるものが好ましく、3質量ppm未満(0質量ppm以上3質量ppm未満)であるものがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材のメルカプタン硫黄分含有量が上記範囲内にあることにより、燃料系統器材に対する腐食による不具合発生を容易に低減することができる。
なお、本出願書類において、メルカプタン硫黄分含有量は、JIS K 2276:2003「石油製品‐航空燃料油試験方法 箇条10:チオール(メルカプタン)硫黄分試験方法(電位差滴定法)」により測定された値を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、イソパラフィン(分岐鎖状飽和炭化水素)含有量が、85.0容量%以上(85.0~100.0容量%)であり、88.0容量%以上(88.0~100.0容量%)であることが好ましく、91.0容量%以上(91.0~100.0容量%)であることがより好ましい。
なお、本出願書類において、イソパラフィンの含有量は、後述するアルカン類(鎖状飽和炭化水素)含有量から、容量あたりに換算したn-パラフィン(直鎖状飽和炭化水素)含有量を差し引いた値を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、n-パラフィン(直鎖状飽和炭化水素)含有量が、7.0質量%以下(0.0質量%~7.0質量%)であり、6.0質量%以下(0.0質量%~6.0質量%)であることが好ましく、5.0質量%以下(0.0質量%~5.0質量%)であることがより好ましい。
なお、本出願書類において、n-パラフィン含有量は、以下に記載の条件下で測定、算出される値を意味し、特に断りのない場合、炭素数9以上のn-パラフィンの含有量を意味する。
<n-パラフィン含有量の測定条件>
測定装置 :Agilent社製 GC-FID
カラム :DB-1 60m×0.32mmID DF:0.25μm
測定開始温度(保持時間):60℃(5min)
測定終了温度(保持時間):340℃(14min)
オーフ゛ン昇温速度 :6℃/min
キャリアーカ゛ス :He 152kPa
FID燃焼ガス :H2 30mK/min、 Air 400mL/min
定量方法 :内部標準法 (フタル酸ジ-n-ブチル)
試料希釈 :トルエン
注入方法 :オンカラム注入
また、容量あたりに換算したn-パラフィン含有量は、上記方法で測定したn-パラフィン含有量を0.75で除した値を意味する。
本発明書に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、アルカン類(鎖状飽和炭化水素)含有量が84.0容量%以上(84.0容量%~100.0容量%)であることが好ましく、87.0容量%以上(87.0容量%~100.0容量%)であることがより好ましく、90.0容量%以上(90.0容量%~100.0容量%)であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、ナフテン(環状飽和炭化水素)含有量が、5.0容量%以下(0.0質量%~5.0容量%)であることが好ましく、4.0容量%以下(0.0容量%~4.0容量%)であることがより好ましく、3.0容量%以下(0.0容量%~3.0容量%)であることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、アルカン類(鎖状飽和炭化水素)含有量およびナフテン(環状飽和炭化水素)含有量は、以下の方法により求められる値を意味する。
<アルカン類(鎖状飽和炭化水素)含有量およびナフテン(環状飽和炭化水素)含有量の測定方法>
(1)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、以下に示す条件により飽和分(飽和炭化水素化合物)を分取する。
測定装置:(株)島津製作所製 HPLC
カラム :Develosil 30-3 (4.6mm×250mm)
移動相 :n-ヘキサン 1.0mL/min 5.3MPa
検出器 :CH1:UV254nm、 CH2:RI
試料濃度:n-ヘキサンで約20vol.%に希釈
注入量 :60μL
分取条件:飽和分溶出後にバックフラッシュを行い、芳香族分を一括して溶出させる。
(2)上記(1)で得られた飽和分について、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて以下に示す条件により平均マススペクトルを求める。
測定装置 :Agilent社製 GC-MS
カラム :DB-1HT 30m×0.32mmI.D.×0.10um
オーフ゛ン温度 :40℃(2min)-(20℃/min)-300℃(5min) Run 20min
キャリアーカ゛ス:He 定圧モード 30kPa 初期:2.1mL/min,52cm/sec
イオン化電圧 :EI 70eV
注入方法 :オンカラム注入
次いで、ASTM D 2786に記載の計算式に代入して、アルカン類の容量比率およびナフテンの容量比率をそれぞれ算出し、後述するJPI-5S-49-07で測定した飽和分の値(容量%)に上記算出した容量比率をかけることで、溶液全体に対するアルカン類の含有量およびナフテンの含有量を算出する。
なお、ASTM D 2786で計算に使用するファクターとして、平均炭素数は16、計算ファクターはn-パラフィンを使用した。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、飽和分(飽和炭化水素化合物)含有量が、99.0容量%以上(99.0容量%~100.0容量%)であり、99.2容量%以上(99.2容量%~100.0容量%)であることが好ましく、99.4容量%以上(99.4容量%~100.0容量%)であることがより好ましい。
なお、本出願書類において、飽和分の含有量は、JPI-5S-49-07「石油製品―炭化水素タイプ試験方法―高速液体クロマトグラフ法」に記載の方法により測定された値を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、オレフィン分含有量が、0.5容量%以下(0.0容量%~0.5容量%)であることが好ましく、0.4容量%以下(0.0容量%~0.4容量%)であることがより好ましく、0.3容量%以下(0.0容量%~0.3容量%)であることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、オレフィン分の含有量は、JPI-5S-49-07「石油製品―炭化水素タイプ試験方法―高速液体クロマトグラフ法」に記載の方法により測定された値を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、芳香族分(芳香族炭化水素化合物)含有量が、0.5容量%以下(0.0容量%~0.5容量%)であり、0.4容量%以下(0.0容量%~0.4容量%)であることが好ましく、0.3容量%以下(0.0容量%~0.3容量%)であることがより好ましい。
なお、本出願書類において、芳香族分の含有量は、JPI-5S-49-07「石油製品―炭化水素タイプ試験方法―高速液体クロマトグラフ法」に記載の方法により測定された値を意味する。
ただし、高圧水素化処理基材の原料油の芳香族分の含有量、及び後述する発熱量測定に用いる芳香族分については、IP548「Determination OF aromatic hydrocarbon types in middle distillates - High performance liquid chromatography method With refractive index detection」により測定される値を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材において、イソパラフィン含有量、n-パラフィン含有量および芳香族分含有量が各々上記範囲内にあり、その含有量の大部分がイソパラフィンにより構成され、ワックス分を生成し易いn-パラフィンの含有量が少ないことから、航空燃料油に配合したときに、析出点を容易に低下させることができる。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、15℃における密度が、0.7300~0.8000g/cm3であるものであり、0.7350g/cm~0.7950g/cmであることが好ましく、0.7400g/cm~0.7900g/cmであることがより好ましい。
航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材の密度が上記範囲内にあることにより、航空燃料油の燃焼時に良好な燃焼状態を容易に発揮することができる。
なお、本出願書類において、15℃における密度は、JIS K 2249-1:2011「原油及び石油製品-密度の求め方―(振動法)」により測定される密度を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、蒸留範囲が、140.0℃~300.0℃であるものであり、145.0℃~290.0℃であるものが好ましく、150.0℃~280.0℃であるものがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材の蒸留範囲が上記範囲内にあることにより、航空燃料油とした際に、航空機での使用に適した蒸留性状を付与することができる。
なお、本出願書類において、蒸留範囲とは、初留点(IBP)~終点(EP)における温度範囲を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、常圧蒸留における初留点(IBP)が、140.0~220.0℃であるものが好ましく、145.0~210.0℃であるものがより好ましく、150.0~200.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、常圧蒸留における10容量%留出温度(T10)が、150.0~230.0℃であるものが好ましく、155.0~220.0℃であるものがより好ましく、160.0~210.0℃であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、常圧蒸留における50容量%留出温度(T50)が、170.0~250.0℃であるものが好ましく、175.0~240.0℃であるものがより好ましく、180.0~220.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、常圧蒸留における90容量%留出温度(T90)が、180.0~280.0℃であるものが好ましく、185.0~270.0℃であるものがより好ましく、190.0~260.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、(c)常圧蒸留における95容量%留出温度(T95)が、190.0~290.0℃であり、195.0~280.0℃であるものが好ましく、200.0~270.0℃であるものがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、終点(EP)が、195.0~300.0℃であるものが好ましく、200.0~290.0℃であるものがより好ましく、205.0~280.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、IBP、T10、T50、T90、T95およびEPが上記範囲内にあることにより、航空機用タービンエンジンにおける噴霧状態や燃焼状態が適切に保たれ、デポジット生成や排出ガス性状の低下を容易に抑制することができる。
なお、本出願書類において、IBP、T10、T50、T90、T95およびEPは、JIS K2254:1998「石油製品-蒸留試験方法」により測定される常圧蒸留における留出温度を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、引火点が、38.0℃以上であるものが好ましく、40.0℃以上であるものがより好ましく、42.0℃以上であるものがさらに好ましい。
イソパラフィン系基材の引火点の上限は特に制限されないが、イソパラフィン系基材の引火点は、通常、90.0℃以下である。
航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材の引火点が上記範囲内にあることにより、より容易な取り扱いが可能となる。
なお、本出願書類において、引火点は、JIS K 2265-1 引火点の求め方―第1部:タグ密閉法により測定される値を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、析出点が、-61℃以下であるものが好ましく、-65℃以下であるものがより好ましく、-70℃以下であるものがさらに好ましい。
イソパラフィン系基材の析出点の下限は特に制限されないが、イソパラフィン系基材の析出点の測定限界は-75℃である。
航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材の析出点が上記範囲内にあることにより、航空機燃料油に配合したときにワックス分の析出を容易に抑制することができる。
なお、本出願書類において、析出点は、JIS K 2276:2003「石油製品―航空燃料油試験方法 析出点試験方法」により測定された値を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、煙点が、25.0mm以上であるものが好ましく、30.0mm以上であるものがより好ましく、35.0mm以上であるものがさらに好ましい。
イソパラフィン系基材の煙点の上限は特に制限されないが、イソパラフィン系基材の煙点は、通常、60.0mm以下である。
航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材の煙点が上記範囲内にあることにより、航空機燃料油に配合したときに燃焼性を容易に向上させることができる。
なお、本出願書類において、煙点は、JIS K 2537の規定により測定された値を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、バイオマス由来のものであってもよいし、石油精製工程から得られるイソブテン等から合成されたものであってもよく、バイオマス由来のものであることが好適である。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材がバイオマス由来のものである場合、脂質を原料として製造されたものやバイオアルコールを原料として合成されたものまたはバイオマス由来の合成ガスをFT(Fischer-Tropsch(フィッシャー・トロプシュ))合成して得られたものが好ましい。
脂質を原料として製造されたイソパラフィン系基材として、具体的には、廃食油や一般的な動植物油に由来するさまざまな脂質を水素化処理し、不純物を除去した後、得られたパラフィン分を異性化し、適 宜分留処理してなるもの等を挙げることができる。
また、バイオアルコールを原料として合成されたイソパラフィン系基材として、具体的には、発酵法により産生されたエタノールやイソブタノールを脱水反応によりエチレンやイソブテンとした後、これを重合してオリゴマー化し、適宜分留処理してなるもの等を挙げることができる。
さらに、バイオマス由来の合成ガスをFT合成して製造されたイソパラフィン系基材としては、熱分解炉を用いてバイオマスを熱分解してガス化し、得られた合成ガスをFT合成してなるものを挙げることができる。
なお、本出願書類において、バイオアルコールとは、バイオマスを発酵し、適宜濾過処理して得られるエタノールやブタノール等のアルコール類を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、その少なくとも一部が、石油由来のイソパラフィン系基材であってもよく、石油由来のイソパラフィン系基材としては、石油精製工程で得られる留分や、石油精製工程で得られる留分をさらに合成ないし異性化処理した留分、具体的には石油精製工程から得られるイソブテン等から合成した留分等を挙げることができる。
本発明に係る航空燃料油を構成するイソパラフィン系基材は、バイオマス由来の基材のみで構成されていることが好適である。
本発明に係る航空燃料油は、構成基材として、上記イソパラフィン系基材を、30.0容量%~50.0容量%含み、35.0容量%~50.0容量%含むことが好ましく、40.0容量%~50.0容量%含むことがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油は、上記イソパラフィン系基材を主たる基材として上記割合で含むものであることにより、析出点が低く低温流動性に優れるとともに、他の特定の基材を特定割合で含むことにより、優れた潤滑性および酸化安定性を発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油は、硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が135.0℃~290.0℃である水素化脱硫灯油基材を構成基材として含むものである。
本出願書類において、水素化脱硫灯油基材とは、原油を常圧蒸留して得られる灯油留分(直留灯油)を水素化脱硫してなるものを意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、硫黄分含有量が、10質量ppm未満(0質量ppm以上10質量ppm未満)であるものであり、9質量ppm以下(0質量ppm以上9質量ppm以下)であるものが好ましく、8質量ppm以下(0質量ppm以上8質量ppm以下)であるものがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材の硫黄分含有量が上記範囲内にあることにより、燃焼時における硫黄酸化物の生成を容易に低減することができる。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、15℃における密度が、0.7600g/cm~0.8200g/cm3であるものであり、0.7650g/cm~0.8000g/cmであることが好ましく、0.7700g/cm~0.8000g/cmであることがより好ましい。
航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材の密度が上記範囲内にあることにより、航空燃料油の燃焼時に良好な燃焼状態を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、蒸留範囲が、135.0℃~290.0℃であるものであり、137.0℃~285.0℃であるものが好ましく、139.0℃~280.0℃であるものがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材の蒸留範囲が上記範囲内にあることにより、航空燃料油に配合した際に、航空機での使用に適した蒸留性状を容易に付与することができる。
なお、本出願書類において、蒸留範囲とは、初留点(IBP)~終点(EP)に係る温度範囲を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、常圧蒸留における初留点(IBP)が、135.0~165.0℃であるものが好ましく、140.0~160.0℃であるものがより好ましく、145.0~155.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、常圧蒸留における10容量%留出温度(T10)が、145.0~190.0℃であるものが好ましく、150.0~185.0℃であるものがより好ましく、155.0 ~180.0℃であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、常圧蒸留における50容量%留出温度(T50)が、170.0~230.0℃であるものが好ましく、175.0~225.0℃であるものがより好ましく、180.0~220.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、常圧蒸留における90容量%留出温度(T90)が、210.0~245.0℃であるものが好ましく、215.0~250.0℃であるものがより好ましく、220.0~255.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、常圧蒸留における95容量%留出温度(T95)が、220.0~270.0℃であり、225.0~265.0℃であるものが好ましく、230.0~260.0℃であるものがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、終点(EP)が、230.0~290.0℃であるものが好ましく、235.0~285.0℃であるものがより好ましく、240.0~280.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、IBP、T10、T50、T90、T95およびEPが上記範囲内にあることにより、航空機用タービンエンジンにおける噴霧状態や燃焼状態が適切に保たれ、デポジット生成や排出ガス性状の低下を容易に抑制することができる。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、引火点が、38.0℃以上であるものが好ましく、39.0℃以上であるものがより好ましく、40.0℃以上であるものがさらに好ましい。
水素化脱硫灯油基材の引火点の上限は特に制限されないが、水素化脱硫灯油基材の引火点は、通常、60.0℃以下である。
航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材の引火点が上記範囲内にあることにより、より容易な取り扱いが可能となる。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、析出点が、-47℃以下であるものが好ましく、-49℃以下であるものがより好ましく、-51℃以下であるものがさらに好ましい。
水素化脱硫灯油基材の析出点の下限は特に制限されないが、水素化脱硫灯油基材の析出点は、通常、-59℃以上である。
航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材の析出点が上記範囲内にあることにより、航空機燃料油に配合したときにワックス分の析出を抑制し易くなる。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、煙点が、17.0mm以上であるものが好ましく、19.0mm以上であるものがより好ましく、21.0mm以上であるものがさらに好ましい。
水素化脱硫灯油基材の煙点の上限は特に制限されないが、水素化脱硫灯油基材の煙点は、通常、60.0mm以下である。
航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材の煙点が上記範囲内にあることにより、航空機燃料油に配合したときに燃焼性を容易に向上させることができる。
本発明に係る航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材は、誘導期間が、80分間以上であることが好ましく、90分間以上であることがより好ましく、100分間以上であることがさらに好ましい。
航空燃料油を構成する水素化脱硫灯油基材の誘導期間が80分間以上であることにより、航空機燃料油に配合したときに優れた酸化安定性を発揮して、スラッジやデポジットの生成を抑制し、その結果、エンジンの燃料噴射ノズルの詰まりや出力低下を抑制することができる。
なお、本出願書類において、誘導期間は、ASTM D7545-09「Standard Test Method for Oxidation Stability of Middle Distillate Fuels-Rapid Small Scale Oxidation Test」により測定される誘導期間を意味する。
本発明に係る航空燃料油において、水素化脱硫灯油基材中の飽和分の含有割合は、75.0~95.0容量%であることが好ましく、77.0~93.0容量%であることがより好ましく、79.0~91.0容量%であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油において、水素化脱硫灯油基材中の飽和分の含有割合が上記範囲内にあることにより、良好な燃焼性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油において、水素化脱硫灯油基材中のオレフィン分の含有割合は、0.5容量%以下(0.0容量%~0.5容量%)であることが好ましく、0.4容量%以下(0.0容量%~0.4容量%)であることがより好ましく、0.3容量%以下(0.0容量%~0.3容量%であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油において、水素化脱硫灯油基材中の飽和分の含有割合が上記範囲内にあることにより、良好な酸化安定性を発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油において、水素化脱硫灯油基材中の芳香族分の含有割合は、5.0~25.0容量%であることが好ましく、5.0~24.0容量%であることがより好ましく、5.0~23.0容量%であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油において、水素化脱硫灯油基材中の芳香族分の含有割合が上記範囲内にあることにより、良好な燃焼性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油は、構成基材として、上記水素化脱硫灯油基材を、10.0容量%~25.0容量%含み、15.0容量%~25.0容量%含むことが好ましく、20.0容量%~25.0容量%含むことがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油は、イソパラフィン系基材を主たる基材として含む場合においても、水素化脱硫灯油基材を上記割合で含むものであることにより、析出点が低く低温流動性に優れるとともに、優れた酸化安定性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油は、硫黄分含有量が10質量ppm以上、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が120.0℃~290.0℃である直留灯油基材を構成基材として含む。
本出願書類において、直留灯油基材とは、原油を常圧蒸留して得られる灯油留分を意味する。
上述した水素化脱硫灯油基材が直留灯油基材をさらに水素化脱硫処理してなるものであるのに対し、直留灯油基材は水素化脱硫処理を施さないものである点で上記水素化脱硫灯油基材とは相違する。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、硫黄分含有量が、10質量ppm以上であるものであり、10~3000質量ppm(0.001~0.300質量%)であるものが適当であり、100~2500質量ppm(0.01~0.25質量%)であるものがより適当であり、1000~2000質量ppm(0.100~0.200質量%)であるものがさらに適当である。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材の硫黄分含有量が上記範囲内にあることにより、燃焼時における硫黄酸化物の生成を容易に低減することができる。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、メルカプタン硫黄分含有量が10~150質量ppmであるものが好ましく、10~100質量ppmであるものがより好ましく、10~50質量ppmであるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材のメルカプタン硫黄分含有量が上記範囲内にあることにより、燃料系統器材に対する腐食による不具合発生を容易に低減することができる。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、15℃における密度が、0.7600g/cm~0.8200g/cm3であるものが好ましく、0.7700g/cm~0.8150g/cmであるものがより好ましく、0.7800g/cm~0.8100g/cmであるものがさらに好ましい。
航空燃料油を構成する直留灯油基材の密度が上記範囲内にあることにより、航空燃料油の燃焼時に良好な燃焼状態を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、蒸留範囲が、120.0℃~290.0℃であるものが好ましく、130.0℃~280.0℃であるものがより好ましく、140.0℃~270.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材の蒸留範囲が上記範囲内にあることにより、航空燃料油に配合した際に、航空機での使用に適した蒸留性状を容易に付与することができる。
なお、本出願書類において、蒸留範囲とは、初留点(IBP)~終点(EP)に係る温度範囲を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、常圧蒸留における初留点(IBP)が、120.0~150.0℃であるものが好ましく、125.0~145.0℃であるものがより好ましく、130.0~140.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、常圧蒸留における10容量%留出温度(T10)が、140.0~180.0℃であるものが好ましく、145.0~175.0℃であるものがより好ましく、150.0~170.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留硫灯油基材は、常圧蒸留における50容量%留出温度(T50)が、160.0~210.0℃であるものが好ましく、165.0~205.0℃であるものがより好ましく、170.0~200.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、常圧蒸留における90容量%留出温度(T90)が、190.0~260.0℃であるものが好ましく、200.0~250.0℃であるものがより好ましく、210.0~240.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、常圧蒸留における95容量%留出温度(T95)が、195.0~265.0℃であるものが好ましく、200.0~260.0℃であるものがより好ましく、210.0~250.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、終点(EP)が、220.0~290.0℃であるものが好ましく、225.0~280.0℃であるものがより好ましく、230.0~270.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、IBP、T10、T50、T90、T95およびEPが上記範囲内にあることにより、航空機用タービンエンジンにおける噴霧状態や燃焼状態が適切に保たれ、デポジット生成や排出ガス性状の低下を容易に抑制することができる。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、引火点が、25.0℃以上であるものが好ましく、30.0℃以上であるものがより好ましく、35.0℃以上であるものがさらに好ましい。
直留硫灯油基材の引火点の上限は特に制限されないが、直留灯油基材の引火点は、通常、50.0℃以下である。
航空燃料油を構成する直留灯油基材の引火点が上記範囲内にあることにより、より容易な取り扱いが可能となる。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、析出点が、-40℃以下であるものが好ましく、-43℃以下であるものがより好ましく、-46℃以下であるものがさらに好ましい。
直留灯油基材の析出点の下限は特に制限されないが、直留灯油基材の析出点は、通常、-60℃以上である。
航空燃料油を構成する直留灯油基材の析出点が上記範囲内にあることにより、航空機燃料油に配合したときにワックス分の析出を抑制し易くなる。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、煙点が、17.0mm以上であるものが好ましく、19.0mm以上であるものがより好ましく、21.0mm以上であるものがさらに好ましい。
直留灯油基材の煙点の上限は特に制限されないが、直留灯油基材の煙点は、通常、60.0mm以下である。
航空燃料油を構成する直留灯油基材の煙点が上記範囲内にあることにより、優れた燃焼性を維持できる。
航空燃料油を構成する直留灯油基材の煙点が上記範囲内にあることにより、航空機燃料油に配合したときに燃焼性を容易に向上させることができる。
本発明に係る航空燃料油を構成する直留灯油基材は、誘導期間が、90分間以上であることが好ましく、100分間以上であることがより好ましく、180分間以上であることがさらに好ましい。
航空燃料油を構成する直留灯油基材の誘導期間が90分間以上であることにより、航空機燃料油に配合したときに優れた酸化安定性を発揮して、スラッジやデポジットの生成を抑制し、その結果、エンジンの燃料噴射ノズルの詰まりや出力低下を抑制することができる。
なお、本出願書類において、誘導期間は、ASTM D7545-09「Standard Test Method for Oxidation Stability of Middle Distillate Fuels-Rapid Small Scale Oxidation Test」により測定される誘導期間を意味する。
本発明に係る航空燃料油において、直留灯油基材中の飽和分の含有割合は、70.0~99.0容量%であることが好ましく、73.0~90.0容量%であることがより好ましく、75.0~85.0容量%であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油において、直留灯油基材中の飽和分の含有割合が上記範囲内にあることにより、良好な燃焼性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油において、直留灯油基材中のオレフィン分の含有割合は、0.5容量%以下(0.0容量%~0.5容量%)であることが好ましく、0.4容量%以下(0.0容量%~0.4容量%)であることがより好ましく、0.3容量%以下(0.0容量%~0.3容量%であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油において、直留灯油基材中の飽和分の含有割合が上記範囲内にあることにより、良好な酸化安定性を発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油において、直留灯油基材中の芳香族分の含有割合は、1.0~30.0容量%であることが好ましく、1.0~25.0容量%であることがより好ましく、1.0~23.0容量%であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油において、直留灯油基材中の芳香族分の含有割合が上記範囲内にあることにより、良好な燃焼性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油は、構成基材として、上記直留灯油基材を、5.0容量%~20.0容量%含み、10.0容量%~20.0容量%含むことが好ましく、15.0容量%~20.0容量%含むことがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油は、イソパラフィン系基材を主たる基材として含む場合においても、他の基材とともに直留灯油基材を上記割合で含むものであることにより、特に優れた潤滑性および酸化安定性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油は、90容量%留出温度が320.0~360.0℃で、芳香族分を37.0~65.0質量%含む原料油の水素分圧10~18MPaによる水素化処理油から得られる、硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7900~0.8600g/cm、蒸留範囲が140.0℃~320.0℃である高圧水素化処理基材を構成基材として含む。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、硫黄分含有量が、10質量ppm未満(0質量ppm以上10質量ppm未満)であるものであり、7質量ppm以下(0質量ppm以上7質量ppm以下)であるものが好ましく、3質量ppm以下(0質量ppm以上3質量ppm以下)であるものがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材の硫黄分含有量が上記範囲内にあることにより、燃焼時における硫黄酸化物の生成を容易に低減することができる。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、15℃における密度が、0.7900g/cm~0.8600g/cm3であるものであり、0.8000g/cm~0.8500g/cmであることが好ましく、0.8100g/cm~0.8500g/cmであることがより好ましい。
航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材の密度が上記範囲内にあることにより、容量あたりの炭化水素含有量が多くなり、発熱量が向上して航空燃料油の燃焼時に良好な燃焼状態を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、蒸留範囲が、140.0℃~320.0℃であるものであり、145.0℃~310.0℃であるものが好ましく、150.0℃~300.0℃であるものがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材の蒸留範囲が上記範囲内にあることにより、航空燃料油に配合した際に、航空機での使用に適した蒸留性状を容易に付与することができる。
なお、本出願書類において、蒸留範囲とは、初留点(IBP)~終点(EP)に係る温度範囲を意味する。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、常圧蒸留における初留点(IBP)が、140.0~210.0℃であるものが好ましく、150.0~210.0℃であるものがより好ましく、160.0~205.0℃であるものがさらに好ましく、170.0~200.0℃であるものが一層好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、常圧蒸留における10容量%留出温度(T10)が、170.0~220.0℃であるものが好ましく、180.0~210.0℃であるものがより好ましく、190.0~210.0℃であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、常圧蒸留における50容量%留出温度(T50)が、180.0~240.0℃であるものが好ましく、190.0~230.0℃であるものがより好ましく、200.0~220.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、常圧蒸留における90容量%留出温度(T90)が、185.0~265.0℃であるものが好ましく、200.0~260.0℃であるものがより好ましく、210.0~250.0℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、常圧蒸留における95容量%留出温度(T95)が、190.0~270.0℃であり、200.0~265.0℃であるものが好ましく、210.0~260.0℃であるものがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、終点(EP)が、225.0~320.0℃であるものが好ましく、230.0~310.0℃であるものがより好ましく、240.0~300.0℃であるものがさらに好ましく、250.0~300.0℃が一層好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、IBP、T10、T50、T90、T95およびEPが上記範囲内にあることにより、航空機用タービンエンジンにおける寒冷地での始動時や高高度で飛行中の再着火時に点火しやすく、燃料配管内で気化ガスによる燃料供給が閉塞する「ベイパーロック」を抑制し得るとともに、容量あたりの炭化水素の含有量が多くなり発熱量が向上するため好ましい。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、引火点が、40.0℃以上であるものが好ましく、50.0℃以上であるものがより好ましい。
高圧水素化処理基材の引火点の上限は特に制限されないが、高圧水素化処理基材の引火点は、通常、130.0℃以下である。
航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材の引火点が上記範囲内にあることにより、常温で可燃性蒸気が発生し難く、静電気等による着火を抑制し易くなる。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、析出点が、-65℃~-40℃であるものが好ましく、-63℃~-45℃であるものがより好ましく、-61℃~-50℃であるものがさらに好ましい。
航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材の析出点が上記範囲内にあることにより、航空機燃料油に配合したときにワックス分の析出を抑制し易くなり、燃料フィルターや配管系内部での詰まりの発生を抑制し易くなる。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、煙点が、13.0mm以上であるものが好ましく、15.0mm以上であるものがより好ましく、17.0mm以上であるものがさらに好ましい。
高圧水素化処理基材の煙点の上限は特に制限されないが、高圧水素化処理基材の煙点は、通常、40.0mm以下である。
高圧水素化処理基材の煙点が上記範囲内にあることにより、航空燃料油に配合したときに優れた燃焼性を容易に維持することができる。
本発明に係る航空燃料油において、高圧水素化処理基材中の飽和分の含有割合は、2.0~95.0容量%であることが好ましく、77.0~93.0容量%であることがより好ましく、79.0~91.0容量%であることがさらに好ましい。
高圧水素化処理基材中の飽和分の含有割合が上記範囲内にあることにより、航空燃料油に配合したときに、良好な燃焼性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油において、高圧水素化処理基材中のオレフィン分の含有割合は、0.5容量%以下(0.0容量%~0.5容量%)であることが好ましく、0.4容量%以下(0.0容量%~0.4容量%)であることがより好ましく、0.3容量%以下(0.0容量%~0.3容量%であることがさらに好ましい。
高圧水素化処理基材中のオレフィン分の含有割合が上記範囲内にあることにより、航空燃料油に配合したときに、良好な酸化安定性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油において、高圧水素化処理基材中の芳香族分の含有割合は、10.0~45.0容量%であることが好ましく、13.0~40.0容量%であることがより好ましく、20.0~35.0容量%であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油において、高圧水素化処理基材中の芳香族分の含有割合が上記範囲内にあることにより、航空機用タービンエンジンにおける燃焼時にガス化し易く燃焼後に炭素粒子である「すす」の発生量が低減して良好な燃焼性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油において、高圧水素化処理基材中のナフテン(環状飽和炭化水素)の含有割合は、35.0~65.0容量%であることが好ましく、40.0~60.0容量%であることがより好ましく、45.0~55.0容量%であることがさらに好ましい。
高圧水素化処理基材中のナフテン(環状飽和炭化水素)の含有割合が上記範囲内にあることにより、航空燃料油に配合した際に、優れた潤滑性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油において、高圧水素化処理基材の発熱量は、35,000~36,500J/mLが好ましく、35,100~36,300J/mLがより好ましく、35,150~36,000J/mLがさらに好ましく、35,500~36,000J/mLが一層好ましい。
発熱量が上記範囲内にあることにより、航空機用タービンエンジンにおける燃焼時に燃焼効率を容易に向上させることができる。
なお、本出願書類において、発熱量とは、JIS K2279「原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算による推定方法」により測定される値を意味する。
ここで、JIS K2279に規定される式中の芳香族分(容量%)は、IP548「Determination OF aromatic hydrocarbon types in middle distillates - High performance liquid chromatography method With refractive index detection」により測定される芳香族分(質量%)の値を用い、密度を0.9g/mLとして容量%に換算した値を使用する。
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、摩耗痕径が、660μm以下であることが好ましく、655μm以下であることがより好ましく、650μm以下であることがさらに好ましい。
航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材の摩耗痕径が660μm以下であることにより、航空機燃料油に配合したときに安定した潤滑性を容易に発揮することができる。
なお、本出願書類において、摩耗痕径は、JPI-5S-50-98「軽油-潤滑性試験方法」の規定により、高周波往復動リグ(High Frequency Reciprocating Rig:HFRR)を用いて測定される値を意味する。
次に、本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材を製造する方法について説明する。
(高圧水素化処理基材の原料油)
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材の原料油は、90容量%留出温度が320.0~360.0℃であり、芳香族炭化水素を37.0~65.0質量%含むものである。
高圧水素化処理基材の原料油は、90容量%留出温度(T90)が、320.0~360.0℃であり、330.0~360.0℃が好ましく、340.0~360.0℃がより好ましい。
高圧水素化処理基材の原料油は、芳香族炭化水素化合物の含有量が、37.0~65.0質量%であり、40.0~60.0質量%が好ましく、45.0~60.0質量%がより好ましく、50.0~60.0質量%が一層好ましい。
なお、本出願書類において、高圧水素化処理基材の原料油中の芳香族炭化水素の含有量とは、IP548「Determination OF aromatic hydrocarbon types in middle distillates - High performance liquid chromatography method With refractive index detection」により測定される値を意味する。
高圧水素化処理基材の原料油は、硫黄分含有量が、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
上記原料油の硫黄分含有量は低い程好ましいため、硫黄分の含有量の下限値は特に限定されないが、通常0.5質量%以上である。
高圧水素化処理基材の原料油は、窒素分含有量が、1,000質量ppm以下であることが好ましく、800質量ppm以下であることがより好ましい。
窒素分の含有量は低い程好ましいため、窒素分の含有量の下限値は特に限定されないが、通常100質量ppm以上である。
なお、本出願書類において、窒素分の含有量とは、JIS K 2609「原油及び石油製品-窒素分試験方法」により測定される値を意味する。
高圧水素化処理基材の原料油の15℃における密度は、0.8600~0.9100g/mLが好ましく、0.8650~0.9050g/mLがより好ましい。
高圧水素化処理基材の原料油としては、熱分解軽質軽油、接触分解軽油、及び熱分解重質軽油を水素化処理して得られた軽質軽油から選ばれる一種以上を挙げることができ、芳香族炭化水素化合物含有量が多い熱分解軽質軽油、及び接触分解軽油から選ばれる一種以上であることが好ましい。
原料油の総容積に対する熱分解軽質軽油と接触分解軽油の合計含有量は、30.0~100.0容量%が好ましく、40.0~98.0容量%がより好ましく、50.0~95.0容量%がさらに好ましく、60.0~95.0容量%が一層好ましい。
例えば、原料油の総容積に対して、熱分解軽質軽油の含有量が30.0~60.0容量%で、かつ接触分解軽油の含有量が35.0~65.0容量%が好ましい。
高圧水素化処理基材の原料油としては、上記熱分解軽質軽油、接触分解軽油、熱分解重質軽油を水素化処理して得られた軽質軽油以外の留分として、例えば、常圧蒸留装置から得られる直留軽油、間接脱硫装置から得られる軽油留分、直接脱硫装置から得られる軽油留分等を含んでもよい。
原料油の総容積に対する上記熱分解軽質軽油、接触分解軽油、熱分解重質軽油を水素化処理して得られた軽質軽油以外の留分の含有割合は、0~70容量%が好ましく、2~60容量%がより好ましく、5~50容量%がさらに好ましい。
(原料油の高圧水素化処理)
本発明に係る航空燃料油を構成する高圧水素化処理基材は、上記原料油を水素分圧10~18MPaで高圧水素化処理した水素化処理油から得られるものである。
(水素化処理触媒)
上記高圧水素化処理時に使用する水素化処理触媒としては、担体が、アルミナを含有する多孔質無機酸化物であるものが好ましい。
水素化処理触媒を構成する活性成分としては、周期表第6族から選ばれる少なくとも1種の金属元素、周期表第8~10族から選ばれる少なくとも1種の金属元素が例として挙げられる。
周期表第6族から選ばれる少なくとも1種の金属元素としては、モリブデン、タングステンが好ましい。モリブデン化合物としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム等が好ましく、タングステン化合物としては、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウム等が好ましい。第6族金属の担持量は、酸化物換算で水素化処理触媒の総質量に対して8~20質量%が好ましい。
周期表第8~10族から選ばれる少なくとも1種の金属元素としては、コバルト、ニッケルが好ましい。コバルト化合物としては、炭酸コバルト、塩基性炭酸コバルト、硝酸コバルト等が好ましく、ニッケル化合物としては、炭酸ニッケル、塩基性炭酸ニッケル、硝酸ニッケル等が好ましい。第9族と第10族の金属元素の担持量は、酸化物換算で水素化処理触媒の総質量に対して2~6質量%が好ましい。
上述した活性成分のなかでは、モリブデンとニッケルとを組み合わせたモリブデンニッケル系触媒が好ましい。
また、上述の水素化処理触媒を、水素雰囲気下で、300~400℃で、1~36時間、水素還元処理して使用することが好ましい。
(水素化処理条件)
原料油の高圧水素化処理時における水素分圧は、10~18MPaであり、11~16MPaが好ましく、13~15MPaがより好ましい。
高圧水素化処理を流通式反応装置で実施する場合、反応器入口の水素/油比(以下、「水素/油比」と称する)は、例えば100~800Nm/KLであり、200~700Nm/KLが好ましく、300~650Nm/KLがより好ましい。
また、反応器内の発熱に応じてクエンチ水素を加えても良い。
高圧水素化処理を流通式反応装置で実施する場合、液空間速度(LHSV)は、例えば0.1~3hr-1であり、0.2~2hr-1が好ましく、0.25~1hr-1がより好ましい。
触媒層の温度は、例えば、300~420℃が好ましく、310~400℃がより好ましく、310~390℃がさらに好ましい。
高圧水素化処理時における反応形式としては、固定床、移動床又は流動床が例として挙げられ、この反応器に上記の原料油を導入し、上記の水素化処理条件で処理すればよい。最も一般的には、上述した触媒を上記の態様で固定床として維持し、原料油が固定床を下方に通過するようにする。
水素化処理して得られた処理油を蒸留分離して、目的とする高圧水素化処理基材を得る。
上記蒸留分離には、蒸留装置を用いることが好ましい。ここで、蒸留装置とは、液体混合物を沸点の差を利用して分離する装置で、常温、常圧で液体又は固体の混合物でも温度と圧力調節により液体混合物として蒸留により分離できる装置を意味する。
その他、高圧水素化処理基材の製造方法の詳細は、特開2019-178250号公報においてジェット燃料基材の製造方法として記載されているとおりである。
本発明に係る航空燃料油は、構成基材として、上記高圧水素化処理基材を、25.0容量%~40.0容量%含み、27.0容量%~38.0容量%含むことが好ましく、29.0容量%~36.0容量%含むことがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油は、イソパラフィン系基材を主たる基材として含む場合においても、高圧水素化処理基材を上記割合で含むものであることにより、析出点が低く低温流動性に優れるとともに、優れた潤滑性および酸化安定性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油は、上記構成基材の他に、各種添加剤を配合してなるものであってもよい。
上記添加剤としては、氷結防止剤、酸化防止剤、金属不活性剤、静電気防止剤、潤滑性向上剤、導電度調整剤、腐食防止剤等の公知の燃料添加剤から選択される一種以上が挙げられる。
氷結防止剤を除いた添加剤の含有量は、構成基材合計に対して70mg/L以下とすることが好ましく、58mg/L以下とすることがより好ましい。また、氷結防止剤の含有量は、構成基材全合計量に対して0.2容量%以下であることが好ましく、含まれていないことがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油は、上記イソパラフィン系基材、水素化脱硫灯油基材、直留灯油基材および高圧水素化処理基材を、合計で、85.0~100.0容量%含むものであることが好ましく、90.0~100.0容量%含むものであることがより好ましく、95.0~100.0容量%含むことがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油が、上記イソパラフィン系基材、水素化脱硫灯油基材、直留灯油基材および高圧水素化処理基材を、合計で上記割合で含むことにより、イソパラフィン系基材を主たる基材として含む場合においても、適切な燃焼特性を有するとともに特に潤滑性および酸化安定性に優れた航空燃料油を容易に提供することができる。
本発明に係る航空燃料油は、30℃における動粘度が、1.450mm/秒以上であり、1.460mm/秒以上であることが好ましく、1.470mm/秒以上であることがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油の30℃における動粘度の上限は特に制限されないが、本発明に係る航空燃料油の30℃における動粘度は、通常、1.900mm/秒以下である。
本発明に係る航空燃料油の30℃における動粘度が上記範囲内にあることにより、移送時等に既存設備を大きく変更することなく容易に取り扱うことができる。
なお、本出願書類において、30℃における動粘度は、JIS K 2283:2000「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定された値を意味する。
本発明に係る航空燃料油は、メルカプタン硫黄分含有量が、30質量ppm以下であり、20質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油のメルカプタン硫黄分含有量が上記範囲内にあることにより、燃料系統器材に対する腐食による不具合発生を容易に低減することができる。
本発明に係る航空燃料油は、下記式(I)
2.5×アルキルベンゼン含有量(容量%)-5.2×ナフテンベンゼン含有量(容量%) (I)
により算出される安定性指標が、0.00より大きいことが好ましく、1.00以上であることがより好ましく、2.00以上であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油において、上記式(I)で表される安定性指標の上限値に特に制限はないが、上記式(I)で表される安定性指標は、通常、25.00以下である。
本発明に係る航空燃料油において、上記式(I)により算出される安定性指標が、0.00より大きいことにより、優れた貯蔵安定性を容易に発揮することができる。
なお、本出願書類において、上記安定性指標を算出するために使用される、航空燃料油中のアルキルベンゼン含有量(容量%)およびナフテンベンゼン含有量(容量%)は、以下の方法により測定し算出した値を意味する。
<アルキルベンゼン含有量(容量%)およびナフテンベンゼン含有量(容量%)の測定方法>
(1)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりを用いて、以下に示す条件で芳香族分(芳香族炭化水素化合物)を分取する。
測定装置:(株)島津製作所製 HPLC
カラム :Develosil 30-3 (4.6mm×250mm)
移動相 :n-ヘキサン 1.0mL/min 5.3MPa
検出器 :CH1:UV254nm、 CH2:RI
試料濃度:n-ヘキサンで約20vol.%に希釈
注入量 :60μL
分取条件:飽和分溶出後にバックフラッシュを行い、芳香族分を一括して溶出させ、分取する。
(2)上記(1)で得られた芳香族分について、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて以下に示す条件により平均マススペクトルを求める。
測定装置:Agilent社製 GC-MS
カラム :DB-1HT 30m×0.32mmI.D.×0.10um
オーフ゛ン温度 :40℃(2min)-(20℃/min)-300℃(5min) Run 20min
キャリアーカ゛ス:He 定圧モード 30kPa 初期:2.1mL/min,52cm/sec
イオン化電圧:EI 70eV
注入方法 :オンカラム注入
次いで、ASTM D 3239に記載の計算式に代入して、各芳香族成分の容量比率をそれぞれ算出し、JPI-5S-49-07で測定した芳香族の値(容量%)に算出した容量比率をかけることで、溶液全体に対するアルキルベンゼン含有量及びナフテンベンゼン含有量を算出する。
本発明に係る航空燃料油は、誘導期間が、90分間以上であることが好ましく、120分間以上であることがより好ましく、180分間以上であることがさらに好ましい。
航空燃料油の誘導期間が90分間以上であることにより、優れた酸化安定性を発揮して、スラッジやデポジットの生成を抑制し、その結果、エンジンの燃料噴射ノズルの詰まりや出力低下を抑制することができる。
本発明に係る航空燃料油は、摩耗痕径が、650μm以下であることが好ましく、649μm以下であることがより好ましく、648μm以下であることがさらに好ましい。
航空燃料油の摩耗痕径が650μm以下であることにより、航空機燃料油に配合したときに安定した潤滑性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油は、析出点が、-47.0℃以下であることが好ましく、-52.0℃以下であることがより好ましく、-57.0℃以下であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油の析出点の下限値は、特に制限されないが、上記析出点は、通常、-75.0℃以上である。
本発明に係る航空燃料油の析出点が-47.0℃以下であることにより、優れた低温流動性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油は、引火点が、38.0~70.0℃であることが好ましく、39.0~69.0℃であることがより好ましく、40.0~68.0℃であることがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油の引火点が上記範囲内にあることにより、容易かつ安全に取り扱うことができる。
本発明に係る航空燃料油は、上述したイソパラフィン系基材、水素化脱硫灯油基材、直留灯油基材および高圧水素化処理基材を必須基材として所定量混合するとともに、さらに本発明の効果を阻害しない範囲において公知の基材または添加剤を混合することにより調製することができる。
上述したイソパラフィン系基材、水素化脱硫灯油基材、直留灯油基材および高圧水素化処理基材を混合して本発明に係る航空燃料油を調製する場合、その混合順序は特に制限されない。
例えば、上述した水素化脱硫灯油基材、高圧水素化処理基材および直留灯油基材を混合し、得られた混合物とイソパラフィン系基材とをさらに混合して本発明に係る航空燃料油を調製してもよい。
本発明に係る航空燃料油は、上記構成基材の他に、各種添加剤を配合してなるものであってもよい。
上記添加剤としては、氷結防止剤、酸化防止剤、金属不活性剤、静電気防止剤、潤滑性向上剤、導電度調整剤、腐食防止剤等の公知の燃料添加剤から選択される一種以上が挙げられる。
本発明によれば、イソパラフィン系基材を主たる基材として含む場合においても、析出点が低く低温流動性に優れるとともに特に潤滑性および酸化安定性に優れた航空燃料油を提供することができる。
次に、本発明に係る航空燃料油用基材について説明する。
本発明に係る航空燃料油用基材は、
硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が135.0℃~290.0℃である水素化脱硫灯油基材14.3容量%~45.5容量%と、
硫黄分含有量が10質量ppm以上、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が120.0℃~290.0℃である直留灯油基材7.1容量%~36.4容量%と、
90容量%留出温度が320.0~360.0℃で、芳香族炭化水素を37~65質量%含む原料油の水素分圧10~18MPaによる水素化処理油から得られる、硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7900~0.8600g/cm、蒸留範囲が140.0℃~320.0℃である高圧水素化処理基材35.7容量%~72.7容量%との混合物からなり、
メルカプタン硫黄分含有量が55質量ppm以下である
ことを特徴とするものである。
本発明に係る航空燃料油用基材を構成する水素化脱硫灯油基材、直留灯油基材および高圧水素化処理基材の詳細は、上述したとおりである。
本発明に係る航空燃料油用基材は、上記水素化脱硫灯油基材を、14.3容量%~45.5容量%含むものであり、21.4容量%~43.6容量%含むものであることが好ましく、28.6容量%~41.8容量%含むものであることがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油用基材は、上記直留灯油基材を、7.1容量%~36.4容量%含むものであり、8.6容量%~32.7容量%含むものであることが好ましく、10.0容量%~27.3容量%含むものであることがより好ましい。
また、本発明に係る航空燃料油用基材は、上記高圧水素化処理基材を、35.7容量%~72.7容量%含むものであり、37.1容量%~63.6容量%含むものであることが好ましく、38.6容量%~54.5容量%含むものであることがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油用基材は、上記水素化脱硫灯油基材、直留灯油基材および高圧水素化処理基材を、合計で、85.0~100.0容量%含むものであることが好ましく、90.0~100.0容量%含むものであることがより好ましく、95.0~100.0容量%含むことがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油用基材は、イソパラフィン系基材への配合に用いられることが好ましく、具体的には、本発明に係る航空燃料油の説明で詳述したイソパラフィン系基材への配合に用いられることがより好ましい。
上記イソパラフィン系基材は、バイオマス由来のものであってもよいし、石油精製工程から得られるイソブテン等から合成されたものであってもよく、バイオマス由来のものであることが好適である。
上記イソパラフィン系基材がバイオマス由来のものである場合、脂質(油脂)を原料として製造されたものやバイオアルコールを原料として合成されたものまたはバイオマス由来の合成ガスをFT(Fischer-Tropsch(フィッシャー・トロプシュ))合成して得られたものが好ましい。
脂質を原料として製造されたイソパラフィン系基材として、具体的には、廃食油や、一般的な動植物油に由来するさまざまな脂質を水素化処理し、不純物を除去した後、得られたパラフィン分を異性化し、適宜分留処理してなるもの等をあげることができる。
また、バイオアルコールを原料として合成されたものとして、具体的には、発酵法により産生されたエタノールやイソブタノールを脱水反応によりエチレンやイソブテンとした後、これを重合してオリゴマー化し、適宜分留処理してなるもの等を挙げることができる。
さらに、バイオマス由来の合成ガスをFT合成して製造されたイソパラフィン系基材としては、熱分解炉を用いてバイオマスを熱分解してガス化し、得られた合成ガスをFT合成してなるものを挙げることができる。
本発明に係る航空燃料油用基材は、上記水素化脱硫灯油基材。直留灯油基材および高圧水素化処理基材を特定割合で混合した混合物からなるものであるために、イソパラフィン系基材に配合した場合においても、析出点が低く低温流動性に優れるとともに、特に優れた潤滑性および酸化安定性を容易に発揮することができる。
本発明に係る航空燃料油用基材は、上記構成基材の他に、各種添加剤を配合してなるものであってもよい。
上記添加剤としては、氷結防止剤、酸化防止剤、金属不活性剤、静電気防止剤、潤滑性向上剤、導電度調整剤、腐食防止剤等の公知の燃料添加剤から選択される一種以上が挙げられる。
本発明に係る航空燃料油用基材の混合対象としては、硫黄分含有量が10質量ppm未満、イソパラフィン含有量が85.0容量%以上、n-パラフィン含有量が7.0質量%以下、芳香族分含有量が0.5容量%以下であり、15℃における密度が0.7300~0.8000g/cm、蒸留範囲が140.0℃~300.0℃であるイソパラフィン系基材を挙げることができる。
係るイソパラフィン系基材の詳細は、上述したとおりである。
本発明に係る航空燃料油用基材を上記イソパラフィン系基材と混合する場合、得られる航空燃料油中のイソパラフィン系基材の含有割合が、30.0容量%~50.0容量%となるように混合することが好ましく、35.0容量%~50.0容量%となるように混合することがより好ましく、40.0容量%~50.0容量%となるように混合することがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油用基材を上記イソパラフィン系基材と混合する場合、得られる航空燃料油中の水素化脱硫灯油基材の含有割合が、10.0容量%~25.0容量%となるように混合することが好ましく、15.0容量%~25.0容量%となるように混合することがより好ましく、20.0容量%~25.0容量%となるように混合することがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油用基材を上記イソパラフィン系基材と混合する場合、得られる航空燃料油中の直留灯油基材の含有割合が、5.0容量%~20.0容量%となるように混合することが好ましく、10.0容量%~20.0容量%となるように混合することがより好ましく、15.0容量%~20.0容量%となるように混合することがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油用基材を上記イソパラフィン系基材と混合する場合、得られる航空燃料油中の高圧水素化処理基材の含有割合が、25.0容量%~40.0容量%となるように混合することが好ましく、27.0容量%~38.0容量%となるように混合することがより好ましく、29.0容量%~36.0容量%となるように混合することがさらに好ましい。
本発明に係る航空燃料油用基材は、メルカプタン硫黄分含有量が、55質量ppm以下であり、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることがより好ましい。
本発明に係る航空燃料油用基材のメルカプタン硫黄分含有量が上記範囲内にあることにより、航空燃料油に配合したときに燃料系統器材に対する腐食による不具合発生を容易に低減することができる。
本発明に係る航空燃料油用基材を、イソパラフィン系基材に対して上記各割合となるように混合することにより、析出点が低く低温流動性に優れるとともに特に潤滑性および酸化安定性に優れた航空燃料油を容易に調製することができる。
このとき得られる航空燃料油の詳細は、本発明に係る航空燃料油の説明で述べたとおりである。
本発明によれば、イソパラフィン系基材に好適に配合し得る航空燃料油用基材を提供することができる。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれ等の例により何ら限定されるものではない。
(基材)
以下の実施例および比較例においては、以下の基材を使用した。各基材の特性を表1に示す。
・イソパラフィン系基材
イソパラフィンを93.2容量%含むもの。
・水素化脱硫灯油基材
中東系原油を常圧蒸留して得られる灯油留分(直留灯油)を水素化脱硫処理したもの。
・高圧水素化処理基材
90容量%留出温度(T90)が352.0℃で、芳香族炭化水素を44.3質量%含む原料油を水素分圧14MPaで高圧水素化処理して得られる高圧水素化処理油を蒸留処理したもの。
・直留灯油基材1~直留灯油基材2
Figure 2024054730000001
Figure 2024054730000002
(実施例1~実施例4、比較例1~比較例14)
上記イソパラフィン系基材、水素化脱硫灯油基材、直留灯油基材および高圧水素化処理基材を以下の表3~表7に示す割合となるように配合して、実施例1~実施例4および比較例1~比較例14に係る各航空燃料油を調製した。
得られた各航空燃料油の特性を表3~表7に示す。
Figure 2024054730000003
Figure 2024054730000004
Figure 2024054730000005
Figure 2024054730000006
Figure 2024054730000007
表3より、実施例1~実施例4で得られた航空燃料油は、各々特定の性状を有する、イソパラフィン系基材、水素化脱硫灯油基材、直留灯油基材および高圧水素化処理基材を特定の割合で配合してなるものであることにより、析出点が-58.5℃以下と低温流動性に優れ、摩耗痕径が622~649μmと低いことから潤滑性に特に優れ、安定性指標が0.00より大きく誘導期間が180分間超と長いことから酸化安定性にも特に優れることが分かる。
一方、表4~表7より、比較例1~比較例14で得られた航空燃料油は、各々、イソパラフィン系基材、水素化脱硫灯油基材、直留灯油基材および高圧水素化処理基材を特定の割合で含まないものであることにより、析出点が-58.0℃超となって低温流動性に劣っていたり(比較例4、比較例6~比較例10)、摩耗痕径が650μmを超えて潤滑性に劣っていたり(比較例1~比較例3、比較例5~比較例7、比較例10、比較例12)、安定性指標が0.00以下であったり(比較例4、比較例8、比較例9、比較例13、比較例14)、誘導期間が90未満と短いことから(比較例1、比較例2、比較例5、比較例7~11、比較例13~比較例14)酸化安定性に劣っていたり、メルカプタン硫黄分含有量が30質量ppmを超えていることから(比較例3)燃料系統器材の腐食による不具合発生リスクが高くなっていることが分かる。
本発明によれば、イソパラフィン系基材を主たる基材として含む場合においても、析出点が低く低温流動性に優れるとともに、特に潤滑性および酸化安定性に優れた航空燃料油を提供するとともに、イソパラフィン系基材に好適に配合し得る航空燃料油用基材を提供することができる。

Claims (3)

  1. 硫黄分含有量が10質量ppm未満、イソパラフィン含有量が85.0容量%以上、n-パラフィン含有量が7.0質量%以下、芳香族分含有量が0.5容量%以下であり、15℃における密度が0.7300~0.8000g/cm、蒸留範囲が140.0℃~300.0℃であるイソパラフィン系基材を30.0容量%~50.0容量%含有するとともに、
    硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が135.0℃~290.0℃である水素化脱硫灯油基材を10.0容量%~25.0容量%、
    硫黄分含有量が10質量ppm以上、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が120.0℃~290.0℃である直留灯油基材を5.0容量%~20.0容量%、
    90容量%留出温度が320.0~360.0℃で、芳香族炭化水素を37.0~65.0質量%含む原料油の水素分圧10~18MPaによる水素化処理油から得られる、硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7900~0.8600g/cm、蒸留範囲が140.0℃~320.0℃である高圧水素化処理基材を25.0容量%~40.0容量%含有し、
    30℃における動粘度が1.450mm/秒以上、メルカプタン硫黄分含有量が30質量ppm以下であることを特徴とする航空燃料油。
  2. 下記式(I)
    2.5×アルキルベンゼン含有量(容量%)-5.2×ナフテンベンゼン含有量(容量%) (I)
    により算出される安定性指標が0.00より大きい請求項1に記載の航空燃料油。
  3. 硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が135.0℃~290.0℃である水素化脱硫灯油基材14.3容量%~45.5容量%と、
    硫黄分含有量が10質量ppm以上、15℃における密度が0.7600~0.8200g/cm、蒸留範囲が120.0℃~290.0℃である直留灯油基材7.1容量%~36.4容量%と、
    90容量%留出温度が320.0~360.0℃で、芳香族炭化水素を37.0~65.0質量%含む原料油の水素分圧10~18MPaによる水素化処理油から得られる、硫黄分含有量が10質量ppm未満、15℃における密度が0.7900~0.8600g/cm、蒸留範囲が140.0℃~320.0℃である高圧水素化処理基材35.7容量%~72.7容量%との混合物からなり、
    メルカプタン硫黄分含有量が55質量ppm以下である
    ことを特徴とする航空燃料油用基材。
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