JP2024053843A - 排水処理方法及び排水処理装置 - Google Patents

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Misato Matsubayashi
一将 蒲池
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Abstract

【課題】従来の汚泥可溶化技術におけるコスト、オゾン発生器、臭気、分離水の色度などの問題を解決して、汚泥の脱水性を改善し、メタンガス生成速度及びメタン転換率を向上させることができる嫌気性処理を含む排水処理方法及び装置を提供する。【解決手段】生物処理後に発生する余剰汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化処理工程15と、嫌気性消化処理後の汚泥を脱水処理する脱水工程16と、を含む排水処理方法であって、嫌気性消化処理工程15の前に、30mg/L以上600mg/L以下の鉄及び1mg/L以上150mg/L以下の亜硝酸性窒素(NO2-N)の存在下で、酸を添加してpHを5以下に調整し、10℃以上25℃以下で、余剰汚泥中の微生物の細胞外高分子物質を細分化して易分解化汚泥を得る前処理工程14を含むことを特徴とする排水処理方法。【選択図】図1

Description

本発明は、排水処理方法及び装置に関し、特に汚泥の脱水性を改善し、メタンガス生成速度及びメタン転換率を向上させることができる嫌気性処理を含む排水処理方法及び装置に関する。
汚泥減容化を図るため、メタン発酵槽に導入する汚泥を可溶化する方法が用いられている。汚泥の可溶化技術としては、マイクロ波、オゾン、熱、超音波、アルカリ処理などを利用する方法が知られている。
たとえば、特開2009-255088号公報(特許文献1)には、オゾンを利用する可溶化処理において、オゾン処理化された余剰汚泥を圧縮空気により撹拌し、生物処理槽に送り戻す熟成槽と、熟成槽で発生するオゾンを含む気体からオゾンを吸着する脱オゾン槽を備える余剰汚泥可溶化装置により、少ないオゾンの消費量で十分に可溶化してから生物処理槽に戻すことによって、実質的に全ての余剰汚泥を生物分解することが開示されている。
特開2016-221491号公報(特許文献2)には、汚泥をpH11以上のアルカリ性雰囲気で40℃以上100℃以下に加熱することにより汚泥を可溶化処理した後に、嫌気性生物処理することにより、可溶化汚泥の分解によるメタンガスを発生させ、嫌気処理におけるメタンガス発生量を向上させることが開示されている。
特開2012-183510号公報(特許文献3)には、嫌気性消化汚泥をpH5~7、50℃~90℃にて高温可溶化菌又は超高温可溶化菌の作用により可溶化して、可溶化有機性廃棄物と可溶化の際に発生したHを含むガスを嫌気性消化処理することにより、水素、メタンガスの増収及び有機性廃棄物の残渣の減容化率の向上を図ることが開示されている。
特開2011-5359号公報(特許文献4)には、生物処理後の余剰汚泥を可溶化した後に再び生物処理に戻す処理方法において、生物処理後の余剰汚泥を噴射する噴射ノズル内で超音波処理を行い、超音波処理されている汚泥を噴射ノズルから液滴状に加圧噴射することにより、従来の超音波処理において生じていた噴射ノズル孔内での目詰まりを防止し、より高いキャビテーション効果により可溶化が促進されることが開示されている。
しかし、従来の方法にはコストやオゾン発生器の問題、臭気、分離水の色度などに課題があり、実用的には普及していない。また、アルカリ処理では、汚泥脱水性の悪化や分離水の色度などに課題がある。
高温処理及びオゾン処理の際に問題となるエネルギー使用量及び稼働コストを改善し、アルカリ処理の際に問題となる処理水の色度及び汚泥の脱水性を改善する方法として、OSAプロセスが提案されている。たとえば、特開2020―142168号公報(特許文献5)には、生物処理後の汚泥の一部を嫌気槽に導入して、鉄の存在下で微曝気処理して汚泥を分解し再基質化させた後に、活性汚泥槽に返送して再び生物処理する方法が開示されている。特許文献5に記載のOSAプロセスは、従来のOSAプロセスよりは滞留時間が短縮でき、嫌気槽も小型化できているが、他の処理方法と比較するとやはり滞留時間が長く、嫌気槽も大きいという問題が残る。
特開2009-255088号公報 特開2016-221491号公報 特開2012-183510号公報 特開2011-5359号公報 特開2020―142168号公報
本発明は、従来の汚泥可溶化技術におけるコスト、オゾン発生器、臭気、分離水の色度などの問題を解決して、汚泥の脱水性を改善し、メタンガス生成速度及びメタン転換率を向上させることができる嫌気性処理を含む排水処理方法及び装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究した結果、嫌気性消化処理に供する余剰汚泥を、亜硝酸性窒素及び鉄の存在下でpHを5以下、好ましくは3以下の酸性雰囲気下で処理することにより、余剰汚泥中の微生物の細胞壁(細胞膜)を破壊せずに、細胞外高分子物質を1μm程度に細分化させることができ、微生物由来の有機物による色度の悪化を防止しながら、溶解性CODCr(S-CODCr)成分及び分解しやすいCODCr成分が増加した汚泥(易分解化汚泥)を得ることができ、易分解化汚泥を嫌気性消化処理することによって、メタンガス発生量を有意に増加できることを知見し、本発明を完成するに至った。
本発明において、「易分解化」とは汚泥中の微生物の細胞外高分子物質を細分化させ分解しやすい汚泥にするが、細胞壁(細胞膜)は破壊せずに残し、細分化された細胞外高分子物質と、微生物とを含む、分解しやすい汚泥にすることであり、「易分解化汚泥」とは易分解化処理により得られる細分化された細胞外高分子物質と微生物とを含む分解しやすい汚泥であり、[(処理後S-CODCr)-(処理前S-CODCr)]/処理前CODCrで求められる可溶化度が10%未満である汚泥をいう。汚泥処理において一般的な「可溶化」は、汚泥中の微生物の細胞壁(細胞膜)を破壊して溶解性有機物を増加させ、固形物を減らすことで汚泥を減容化する技術であり、本発明における「易分解化」及び「易分解化汚泥」は「可溶化」及び「可溶化汚泥」とは区別される。
本発明によれば、下記態様の排水処理方法及び排水処理装置が提供される。
[1] 生物処理後に発生する余剰汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化処理工程と、嫌気性消化処理後の汚泥を脱水処理する脱水工程と、を含む排水処理方法であって、
当該嫌気性消化処理工程の前に、30mg/L以上600mg/L以下の鉄及び1mg/L以上150mg/L以下の亜硝酸性窒素(NO-N)の存在下で、酸を添加してpHを5以下に調整し、10℃以上25℃以下で、当該余剰汚泥中の微生物の細胞外高分子物質を細分化して易分解化汚泥を得る前処理工程を含むことを特徴とする排水処理方法。
[2] 前記前処理工程にて、前記余剰汚泥に亜硝酸性窒素(NO-N)及び/又は鉄を添加することを特徴とする上記[1]に記載の排水処理方法。
[3] 前記前処理工程の前に、前記余剰汚泥を濃縮する余剰汚泥濃縮工程を含むことを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の排水処理方法。
[4] 排水を汚泥と分離水とに分離する固液分離工程と、当該固液分離工程からの分離水を生物処理する生物処理工程と、当該固液分離工程からの分離汚泥を濃縮する分離汚泥濃縮工程と、前記嫌気性消化処理工程の前に、当該分離汚泥濃縮工程からの濃縮汚泥と前記前処理工程からの易分解化汚泥とを混合する汚泥混合工程を含むことを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか1に記載の排水処理方法。
[5] 前記脱水工程からの分離液に含まれるアンモニア性窒素を酸化させて、亜硝酸性窒素(NO-N)を生成させる亜硝酸性窒素(NO-N)生成工程をさらに含み、
前記前処理工程に、前記亜硝酸性窒素(NO-N)生成工程からの亜硝酸を添加することを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか1に記載の排水処理方法。
[6] 排水処理装置であって、
生物処理後の余剰汚泥を、30mg/L以上600mg/L以下の鉄及び1mg/L以上150mg/L以下の亜硝酸性窒素(NO-N)の存在下で、酸を添加してpHを5以下に調整し、10℃以上25℃以下で、微生物の細胞外高分子物質を細分化して易分解化汚泥を得る前処理槽と、
当該前処理槽からの易分解化汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化槽と、
当該嫌気性消化槽からの汚泥を脱水処理する脱水機と、
を備えることを特徴とする嫌気性消化処理装置。
[7] 前記前処理槽の前段に、前記余剰汚泥を濃縮する余剰汚泥濃縮槽をさらに備えることを特徴とする上記[6]に記載の排水処理装置。
[8] 排水を分離汚泥と分離水とに固液分離する第1の固液分離手段と、
当該第1の固液分離手段からの分離水を生物処理する生物処理槽と、
当該第1の固液分離手段からの分離汚泥を濃縮する分離汚泥濃縮槽と、
前記嫌気性処理装置の前段に、当該分離汚泥濃縮槽からの濃縮汚泥と、前記前処理槽からの易分解化汚泥とを混合する汚泥濃縮混合槽と、をさらに含むことを特徴とする上記[6]又は[7」に記載の排水処理装置。
[9] 前記脱水機からの分離液に含まれるアンモニア性窒素を酸化させて、亜硝酸性窒素(NO-N)を生成させる亜硝酸性窒素生成槽をさらに含み、
前記前処理槽に、前記亜硝酸性窒素生成槽からの亜硝酸性窒素(NO-N)を添加することを特徴とする上記[6]~[8]のいずれか1に記載の排水処理装置。
本発明の排水処理方法によれば、従来の汚泥可溶化技術と異なり、細胞外高分子物質を細分化させるが細胞壁を破壊しないため、従来の可溶化方法よりもエネルギー使用量及び稼働コストを低減し、嫌気性消化処理に要する時間(滞留時間)が短縮されるなど操作性に優れ、処理水の色度及び汚泥の脱水性を改善し、メタンガス生成速度及びメタン転換率を向上させることができる。前処理時に、微生物の細胞外高分子物質が細分化されると、細胞外高分子物質に抱えられていた結合水が遊離水となり、汚泥処理工程における脱水性を向上させることができる。
本発明の処理装置は、余剰汚泥を易分解化汚泥に変換するために要する時間(滞留時間)が短いため、従来の可溶化槽よりも小型の前処理槽を用いることができ、ラインミキサーなど管状構造の前処理槽とすることもできる。また、ヒーターやオゾン発生器などの特別な機器を必要とせずに、簡易な構成でメタン生成速度及びメタン転換率の高い処理装置を提供することができる。
本発明の排水処理方法の概略説明図である。 本発明の排水処理方法の一実施形態の概略説明図である。 本発明の排水処理方法の別の実施形態の概略説明図である。 本発明の排水処理方法のまた別の実施形態の概略説明図である。 本発明の排水処理装置の概略説明図である。 本発明の排水処理装置の一実施形態の概略説明図である。 本発明の排水処理装置の別の実施形態の概略説明図である。 本発明の排水処理装置のまた別の実施形態の概略説明図である。 鉄濃度と亜硝酸性窒素(NO-N)の濃度変化を示すグラフである。 鉄濃度と硝酸性窒素(NO-N)の濃度変化を示すグラフである。 実施例におけるS-CODCr濃度測定結果を示すグラフである。
好ましい実施形態
以下、添付図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。添付図面に示す実施形態は本発明の代表例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1に、本発明の排水処理方法の基本の処理フローの概略を示す。本発明の排水処理方法は、生物処理後に発生する余剰汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化処理工程15と、嫌気性消化処理後の汚泥を脱水処理する脱水工程16と、を含み、嫌気性消化処理工程15の前に、30mg/L以上600mg/L以下の鉄及び1mg/L以上150mg/L以下の亜硝酸性窒素(NO-N)の存在下で、酸を添加してpHを5以下に調整し、10℃以上25℃以下で、当該余剰汚泥中の微生物の細胞外高分子物質を細分化して易分解化汚泥を得る前処理工程14を含むことを特徴とする。図示した実施形態においては、排水を分離汚泥と分離水とに固液分離する第1の固液分離工程11と、第1の固液分離工程11からの分離水を生物処理する生物処理工程12と、生物処理工程12からの生物処理水を汚泥と処理水とに分離する第2の固液分離工程13と、を含み、第2の固液分離工程13からの汚泥の一部は返送汚泥として生物処理工程12に戻され、汚泥の残部は余剰汚泥として前処理工程14に送られる。第1の固液分離工程は必須ではなく、省略することもできる。
図2に、本発明の排水処理方法の一実施形態の処理フローの概略を示す。図2に示す排水処理方法は、排水を汚泥と分離水とに固液分離する第1の固液分離工程11と、第1の固液分離工程11からの分離水を生物処理する生物処理工程12と、生物処理後に発生する余剰汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化処理工程15と、嫌気性消化処理後の汚泥を脱水処理する脱水工程16と、を含み、嫌気性消化処理工程15の前に、30mg/L以上600mg/L以下の鉄及び1mg/L以上150mg/L以下の亜硝酸性窒素(NO-N)の存在下で、酸を添加してpHを5以下に調整し、10℃以上25℃以下で、当該余剰汚泥中の微生物の細胞外高分子物質を細分化して易分解化汚泥を得る前処理工程14を含み、第1の固液分離工程11からの分離汚泥を濃縮する分離汚泥濃縮工程17と、分離汚泥濃縮工程17からの濃縮汚泥と前処理工程14からの易分解化汚泥とを混合する汚泥混合工程18をさらに含み、濃縮汚泥及び易分解化汚泥の混合汚泥を嫌気性消化処理工程15に供給して処理することを特徴とする。生物処理工程12からの生物処理水は第2の固液分離工程13にて汚泥と処理水とに分離され、汚泥の一部は返送汚泥として生物処理工程12に返送され、残部は余剰汚泥として前処理工程14に送られる。余剰汚泥を前処理工程14に供給する前に濃縮する余剰汚泥濃縮工程19をさらに含むこともできる。前処理工程14の前段に、余剰汚泥濃縮工程19を含む場合には、前処理工程の効率化(酸使用量の削減、前処理槽の小型化)を図ることができる。
図3に、本発明の排水処理方法の別の実施形態の処理フローの概略を示す。図3に示す排水処理方法は、生物処理後に発生する余剰汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化処理工程15と、嫌気性消化処理後の汚泥を脱水処理する脱水工程16と、を含み、嫌気性消化処理工程15の前に、30mg/L以上600mg/L以下の鉄及び1mg/L以上150mg/L以下の亜硝酸性窒素(NO-N)の存在下で、酸を添加してpHを5以下に調整し、10℃以上25℃以下で、当該余剰汚泥中の微生物の細胞外高分子物質を細分化して易分解化汚泥を得る前処理工程14を含み、脱水工程16からの分離液に含まれるアンモニア性窒素を酸化させて、亜硝酸性窒素(NO-N)を生成させる亜硝酸性窒素(NO-N)生成工程20をさらに含み、前処理工程14に、亜硝酸性窒素(NO-N)生成工程20からの亜硝酸性窒素(NO-N)を添加することを特徴とする。図示した実施形態においては、排水を汚泥と分離水とに固液分離する第1の固液分離工程11と、第1の固液分離工程11からの分離水を生物処理する生物処理工程12と、生物処理工程12からの生物処理水を汚泥と処理水とに分離する第2の固液分離工程13と、を含み、第2の固液分離工程13からの汚泥の一部は返送汚泥として生物処理工程12に返送され、残部は余剰汚泥として前処理工程14に送られる。余剰汚泥を前処理工程14に供給する前に濃縮する余剰汚泥濃縮工程19をさらに含むこともできる。前処理工程14の前段に、余剰汚泥濃縮工程19を含む場合には、前処理工程の効率化(酸使用量の削減、前処理槽の小型化)を図ることができる。第1の固液分離工程11は必須ではなく省略することができる。
図4に、本発明の排水処理方法のまた別の実施形態の処理フローの概略を示す。図4に示す排水処理方法は、排水を汚泥と分離水とに固液分離する第1の固液分離工程11と、第1の固液分離工程11からの分離水を生物処理する生物処理工程12と、生物処理後に発生する余剰汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化処理工程15と、嫌気性消化処理後の汚泥を脱水処理する脱水工程16と、を含み、嫌気性消化処理工程15の前に、30mg/L以上600mg/L以下の鉄及び1mg/L以上150mg/L以下の亜硝酸性窒素(NO-N)の存在下で、酸を添加してpHを5以下に調整し、10℃以上25℃以下で、当該余剰汚泥中の微生物の細胞外高分子物質を細分化して易分解化汚泥を得る前処理工程14を含み、第1の固液分離工程11からの分離汚泥を濃縮する分離汚泥濃縮工程17と、分離汚泥濃縮工程17からの濃縮汚泥と前処理工程14からの易分解化汚泥とを混合する汚泥混合工程18をさらに含み、濃縮汚泥及び易分解化汚泥の混合汚泥を嫌気性消化処理工程15に供給して処理すること、及び脱水工程16からの分離液に含まれるアンモニア性窒素を酸化させて、亜硝酸性窒素(NO-N)を生成させる亜硝酸性窒素(NO-N)生成工程20をさらに含み、前処理工程14に、亜硝酸性窒素(NO-N)生成工程20からの亜硝酸性窒素(NO-N)を添加することを特徴とする。生物処理工程12からの生物処理水は、第2の固液分離工程13にて汚泥と処理水とに分離され、汚泥の一部は返送汚泥として生物処理工程12に戻され、残部は余剰汚泥として前処理工程14に送られる。余剰汚泥を前処理工程14に供給する前に濃縮する余剰汚泥濃縮工程19をさらに含むこともできる。
まず、図1~4に示す本発明の排水処理方法における前処理工程14について説明する。前処理工程において、鉄及び亜硝酸性窒素(NO-N)の存在下、pH5以下、好ましくは4以下、より好ましくはpH3以下pH2以上の酸性雰囲気にて、室温にて余剰汚泥を処理することにより、鉄イオン、亜硝酸イオン、ヒドロキシラジカルに加えて、溶出した金属イオンの作用により余剰汚泥中の微生物の細胞外高分子物質を細分化して、分解しやすい汚泥(易分解化汚泥)にすることができる。また、細胞外高分子物質が抱えていた結合水が遊離水に変化して放出されることで、脱水工程における嫌気性消化汚泥の脱水性も向上し、汚泥減容化に資する。
前処理工程において処理対象となる余剰汚泥中の鉄は、30mg/L以上600mg/L以下、好ましくは50mg/L以上とする。鉄が高濃度になるほど細胞外高分子物質の細分化は進むが、鉄が高濃度すぎると嫌気性消化処理後の汚泥の発生量が増え、鉄の添加量が増えてコストが増えるので、600mg/Lを上限とすることが好ましい。
鉄は、汚泥由来、凝集剤由来で処理対象となる余剰汚泥に含まれていることもあるが、本発明においては30mg/L以上600mg/L以下に調整する。pHを5以下、好ましくは3以下に低下させることで、余剰汚泥に含まれている鉄が溶解して三価の鉄イオン(Fe3+)となる。ただし、余剰汚泥中の有機物に取り込まれている鉄イオンは溶出しにくいため、不足する場合には鉄を添加する。添加する鉄としては、FeClやFeClなどの鉄化合物を好ましく用いることができる。
前処理工程において処理対象となる余剰汚泥中の亜硝酸性窒素(NO-N)は1mg/L以上150mg/L以下、好ましくは50mg/L以下とする。亜硝酸性窒素(NO-N)が過剰に存在すると、嫌気性消化槽での脱窒により有機物が消費され、メタンガス生成量が減少する。pHを5以下、好ましくは3以下に低下させることで、遊離亜硝酸(FNA)が生成する。1mg/Lの亜硝酸性窒素(NO-N)は0.02mg/Lの遊離亜硝酸(FNA)と0.98mg/Lの亜硝酸イオン(NO )となる。よって、余剰汚泥中に遊離亜硝酸(FNA)が0.02mg/L以上3mg/L以下、好ましくは1mg/L以下存在すると言い換えることもできる。
亜硝酸性窒素は余剰汚泥に含まれていることもあるが、本発明においては亜硝酸性窒素(NO-N)を1mg/L以上150mg/L以下、好ましくは50mg/L以下に調整する。亜硝酸性窒素(NO-N)は、亜硝酸塩として余剰汚泥に添加してもよいし、余剰汚泥や嫌気性消化汚泥の分離液に含まれるアンモニア性窒素を酸化させて亜硝酸性窒素(NO-N)を生成させてもよい。本発明において、亜硝酸性窒素(NO-N)の少なくとも一部は、既存の水処理又は汚泥処理で発生する亜硝酸性窒素(NO-N)を利用することが好ましい。また、前処理工程において、微曝気することにより、余剰汚泥中のアンモニア性窒素(NH-N)の一部を亜硝酸性窒素(NO-N)に酸化することもできる。
前処理工程において、酸を添加して余剰汚泥のpHを5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下に調整する。pHが低すぎると、嫌気性消化処理に最適なpH(中性)に調整するためにアルカリ剤を多量に添加する必要が生じ、コストが高くなるため、pHは2以上にすることが好ましい。通常、高濃度汚泥を嫌気性消化処理に供すると、嫌気性消化に伴い生成するアンモニア性窒素(NH-N)によりアルカリ度が増加し、脱水効果が低下するため、嫌気性消化処理の前にpHを低下させることは高濃度汚泥を処理する上でも効果的である。また、従来のアルカリ処理や高温処理の課題であった色度悪化の原因となる細胞を構成している有機物が放出されることが防止され、さらにフミン質は酸性域で凝集しやすく、脱水工程で除去できるため、色度悪化を効果的に防止できる。さらに、従来のアルカリ処理による可溶化汚泥と比べて、本発明の前処理で生成される易分解化汚泥は、臭気が少なく、粘性が低く、流動性が高いため、取り扱いが容易で、移送動力や撹拌動力を削減できる。
前処理工程において添加する酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸などを用いることができる。なかでも塩酸は、嫌気性消化処理時に還元反応による有機物の消費が少なく、メタンガス発生量を増加させることができるため、好ましい。他の酸は、塩酸よりはメタンガス発生量の増加が少ないが、汚泥減容効果は同等である。なお、酸はアルカリ剤より廉価であり、薬剤コストを抑制できるという利点もある。
前処理工程においては、pH5以下で、三価の鉄イオンFe3+が亜硝酸イオン(NO )により還元され、硝酸イオン(NO )と二価の鉄イオンFe2+と水素イオンHが生成され、汚泥中の微生物の細胞外高分子物質が溶解すると考えらえる。微生物の細胞外高分子物質を細分化させるが細胞壁を完全に溶解させない程度の緩やかな反応であり、前処理の滞留時間は0.01時間以上24時間以内、好ましくは0.5時間以上12時間以内とすることが望ましい。
前処理工程は、-50mV以上150mV以下のORP(標準電極電位)で行うことができ、積極的な嫌気化又は曝気は必要ではない。また、常温(10℃~25℃程度)でよく、加温の必要はない。前処理工程からの易分解化汚泥は酸性であるため、嫌気性消化処理による嫌気性消化汚泥のアルカリ度が高くなり過ぎず、脱水処理時の凝集剤添加量も削減できる。本発明における前処理工程を含む排水処理方法は、従来の汚泥可溶化工程を含む嫌気性排水処理よりも、pH調整剤及び凝集剤の添加量、及び加温及びORP制御のためのエネルギー必要量を低減できるため、稼働コストを抑制することができる。
次に、図1~4における他の処理工程について説明する。
第1の固液分離工程11は、処理対象の排水を汚泥と分離水とに固液分離する工程であり、処理対象の排水量が多量であるため、重力沈降分離が好ましい。
生物処理工程12は、活性汚泥処理による好気性生物処理が好ましい。
第2の固液分離工程13は、活性汚泥を含む生物処理後の汚泥を余剰汚泥と処理水とに固液分離する工程であり、重力沈降分離又は膜分離が好ましい。
余剰汚泥濃縮工程19は、第2の固液分離工程13からの余剰汚泥を前処理に供する前に、余剰汚泥を濃縮する工程であり、機械濃縮が好ましい。濃縮余剰汚泥を前処理に供することにより、単位容積当たりの細胞外高分子由来の有機物(可溶性CODCr成分)が増え、嫌気性消化処理によるメタンガス発生効率を向上させることができる。
嫌気性消化工程15は、余剰汚泥を嫌気性消化処理してメタンガスを発生させる工程である。本発明においては、易分解化汚泥を嫌気性消化処理することにより、メタンガスの発生量を増加させることができる。通常、嫌気性消化工程はpH6~8.5で行われる。本発明においては、前処理工程において常温でpHを5以下に調整して得た易分解化汚泥を嫌気性消化工程に導入するため、遊離アンモニア濃度が下がり、易分解化汚泥のアルカリ度は高過ぎず、通常はpHを低下させるために必要となるpH調整剤を低減できる。たとえば一般的な嫌気性消化工程における汚泥のアルカリ度が3000mg/Lの場合、アンモニア性窒素濃度は500~1000mg/L程度であり、高濃縮汚泥を嫌気性消化処理する場合には嫌気性消化工程における汚泥のアルカリ度が6000mg/L、アンモニア性窒素濃度は5000mg/L程度に上昇することが多いが、本発明の易分解化汚泥を嫌気性消化工程に供給する場合には、嫌気性消化汚泥のアルカリ度が高すぎないため、脱水処理時の凝集剤の添加量を削減することができる。
脱水工程16は、嫌気性消化処理後の汚泥を脱水処理して、脱水汚泥と分離液とに分離する工程である。本発明においては、易分解化汚泥を嫌気性消化処理することにより、嫌気性消化工程15からの汚泥が減少するため、脱水工程における脱水効率も上がり、最終的に排出される脱水汚泥も減少する。易分解化汚泥の嫌気性処理による嫌気性処理汚泥のアンモニア濃度が高すぎないため、凝集剤の添加量を削減でき、稼働コストを抑制することができる。
分離汚泥濃縮工程17は、第1の固液分離工程11からの汚泥を濃縮する工程であり、重力濃縮を好ましく用いることができる。汚泥混合工程18は、嫌気性消化処理の前に、濃縮汚泥及び易分解化汚泥を混合する工程であり、嫌気性消化処理する際の汚泥濃度を好適範囲に調整することができる。
亜硝酸性窒素(NO-N)生成工程20は、脱水工程16からの分離液に含まれるアンモニア性窒素(NH-N)を亜硝酸性窒素(NO-N)に酸化させる工程である。亜硝酸性窒素(NO-N)生成工程から前処理工程に導入するまでに、亜硝酸性窒素(NO-N)が酸化されてしまうことを防止することが望ましい。亜硝酸性窒素(NO-N)の酸化を阻害する方法としては、pHを5~6.5程度に低くして、亜硝酸性窒素(NO-N)を100mg/L以上に維持し、遊離亜硝酸を生成させる方法、pHを7~8.5程度に高くして、アンモニア性窒素(NH-N)を100mg/L以上に維持し、遊離アンモニアを生成させる方法、溶存酸素(DO)を1mg/L以下に維持して亜硝酸性窒素(NO-N)の酸化を阻害する方法、SRTとして1~2日で汚泥を引き抜くなどして滞留時間を短縮して亜硝酸性窒素(NO-N)の濃度を高く維持する方法などを好ましく用いることができる。
次に、図5~8を参照しながら、本発明の排水処理装置を説明する。
図5~8は、図1~4に示す排水処理方法を実施するに適した排水処理装置の構成を示す概略説明図である。図5~8は、図1~4に示す各工程を実施するための装置構成を具体的に記載したものであり、各工程を実施するための構成には同じ符号を用いる。
本発明の排水処理装置は、図5に示すように、生物処理後の余剰汚泥を、30mg/L以上600mg/L以下の鉄及び1mg/L以上150mg/L以下の亜硝酸性窒素(NO-N)の存在下で、酸を添加してpHを5以下に調整し、10℃以上25℃以下で、余剰汚泥中の微生物の細胞外高分子物質を細分化して易分解化汚泥を得る前処理槽14と、前処理槽14からの易分解化汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化槽15と、嫌気性消化槽15からの汚泥を脱水処理する脱水機16と、を備えることを特徴とする。図示した実施形態では、排水を固液分離する第1の固液分離手段11と、第1の固液分離手段11からの分離水を生物処理する生物処理槽12と、生物処理槽12からの生物処理水を汚泥と処理水とに分離する第2の固液分離手段13と、余剰汚泥の発生量を抑制し、生物処理時の汚泥濃度を十分に高く維持するために、第2の固液分離手段13からの返送汚泥を生物処理槽12に返送する汚泥返送ライン12aが設けられている。第1の固液分離手段11は省略することもできる。第2の固液分離手段13は、図示したように生物処理槽12とは別に設けてもよいが、浸漬型分離膜などを生物処理槽12内に設けてもよい。
本発明の排水処理装置は、図6に示すように、第1の固液分離手段11と、嫌気性消化処理槽15との間に、第1の固液分離手段11からの分離汚泥を濃縮する分離汚泥濃縮槽17と、分離汚泥濃縮槽17からの濃縮汚泥と、前処理槽14からの易分解化汚泥とを混合する汚泥濃縮混合槽18と、をさらに含むこともできる。
本発明の排水処理装置は、図7に示すように、脱水機16からの分離液に含まれるアンモニア性窒素を酸化させて、亜硝酸性窒素を生成させる亜硝酸性窒素生成槽20をさらに含み、前処理槽14に、亜硝酸性窒素生成槽20からの亜硝酸性窒素(NO-N)を添加する構成としてもよい。
図5~8に示す実施形態では、第1の固液分離手段11として最初沈殿池、第2の固液分離手段13として最終沈殿池を用いているが、これらに限らず、排水処理において通常用いられる固液分離手段、たとえば重力ろ過装置、圧縮ろ過装置、真空ろ過装置、常圧浮上濃縮装置、遠心濃縮装置、ベルト式ろ過濃縮装置、浸漬型膜分離装置、槽外型膜分離装置などを用いることができる。また、固液分離手段11及び13に、汚泥を沈殿させやすくするために凝集剤を添加する凝集剤添加手段を設けることもできる、あるいは、固液分離手段11及び13の前段に、汚泥に凝集剤を添加して凝集させる凝集槽を備えることもできる。
生物処理槽12としては、活性汚泥槽、散水ろ床、オキシデーションディッチ槽などを好ましく用いることができる。嫌気性消化槽15としては、UASB型嫌気槽、嫌気性膜分離槽、担体投入型消化槽などを好ましく用いることができる。脱水機16としては、通常の汚泥処理に用いられる脱水機、たとえば重力ろ過脱水装置、圧縮ろ過脱水装置、真空ろ過脱水装置、スクリュープレス型脱水装置、遠心脱水装置、フィルタープレス脱水装置、ベルトプレス脱水装置などを好ましく用いることができる。
前処理槽14は、生物処理槽12からの余剰汚泥を鉄、亜硝酸性窒素の存在下で酸を添加してpH5以下、常温で処理して、余剰汚泥中の微生物の細胞外高分子物質を細分化させるために必要な滞留時間を確保できる容積を有するものであればよく、槽形状に限定されず、ラインミキサーなどの管形状でもよい。前処理工程は、微生物の細胞該高分子物質を細分化させるが細胞壁を完全に溶解させる処理ではないため、短時間での処理が好ましく、滞留時間は0.01時間以上24時間以下、好ましくは0.5時間以上12時間以下とすることが望ましい。前処理槽14は、酸添加手段14aに加えて、鉄添加手段14b及び亜硝酸性窒素添加手段14cを備えていることが好ましく、さらにpH調整剤添加手段(図示せず)を備えていてもよい。また、汚泥と酸、鉄及び亜硝酸性窒素とを均一に接触させるために、撹拌手段(図示せず)を備えていることが好ましい。さらに、図示してはいないが、前処理槽14は、処理中の汚泥の鉄及び亜硝酸の存在量を検出する鉄検出手段及び亜硝酸性窒素検出手段並びにpH計を備え、酸添加手段、pH調整剤添加手段、鉄添加手段及び亜硝酸性窒素添加手段は、汚泥中の存在量に応じてこれらの添加量を調整する酸添加量調整手段、pH調整剤添加量調整手段、鉄添加量調整手段、及び亜硝酸性窒素添加量調整手段をそれぞれ備えることが好ましい。さらに、前処理槽14は、余剰汚泥中のアンモニア性窒素の一部を亜硝酸性窒素に酸化させるための微曝気手段を備えていてもよい。
本発明の処理装置は、前処理槽14に添加する亜硝酸性窒素を生成する亜硝酸性窒素生成槽20をさらに備えることが好ましい。亜硝酸性窒素生成槽20は、脱水機16からの分離液の一部を導入する分離液導入手段20aと、生成した亜硝酸性窒素を前処理槽14に供給する亜硝酸性窒素添加手段14cを備えていることが好ましい。亜硝酸性窒素生成槽20は、分離液中のアンモニア性窒素(NH-N)を亜硝酸性窒素(NO-N)に酸化させ、亜硝酸性窒素として前処理槽14に供給することができるものであれば、特に限定されない。たとえば、アンモニア性窒素を酸化させるための曝気手段、分離液のpHを所定範囲に維持するpH調整手段、溶存酸素(DO)濃度を1mg/L以下に維持する曝気調整手段などを備えていてもよい。
25℃の恒温槽内の容器に、純水と、亜硝酸性窒素(NO-N)が150mg/Lとなるように亜硝酸ナトリウムを添加し、鉄濃度が0mg/L、65mg/L、280mg/L及び580mg/Lとなるように塩化第二鉄の添加量を変えて、4日間撹拌処理し、処理前、処理1日後、処理4日後の汚泥中の亜硝酸性窒素(NO-N)及び硝酸性窒素(NO-N)の濃度変化を測定した結果を図9及び10に示す。鉄が存在しない場合には亜硝酸性窒素(NO-N)及び硝酸性窒素(NO-N)の濃度に変化は認められず、鉄が存在する場合には塩化第二鉄添加後の時間が長くなるほど、亜硝酸性窒素(NO-N)が減少し、硝酸性窒素(NO-N)が増加し、鉄濃度が高くなるほど、亜硝酸性窒素(NO-N)の減少及び硝酸性窒素(NO-N)の増加が大きくなることから、下記の反応が進行していることがわかる。
Figure 2024053843000002
次に、500mLのポリ容器に、表1に示す性状を有する余剰汚泥300mg/L、塩酸、亜硝酸ナトリウム、塩化第二鉄を添加して、25℃の恒温槽で24時間振とうした。塩酸は、添加後の余剰汚泥のpHが3又は5になるように添加した。亜硝酸ナトリウムは、添加後の余剰汚泥中の亜硝酸性窒素濃度が0又は2mg/Lとなるように添加した。塩化第二鉄は、添加後の余剰汚泥中のFe3+濃度が30mg/L又は100mg/Lになるように添加した。振とうする前の添加後10分及び振とうした後の添加後24時間のS-CODCr濃度を測定した結果を表2及び図11に示す。
Figure 2024053843000003
Figure 2024053843000004
pHが5及び亜硝酸性窒素濃度が0mg/LであるNo.3とNo.5の対比、並びにpHが5及び亜硝酸性窒素濃度が2mg/LであるNo.4とNo.6の対比から、鉄濃度よりも亜硝酸性窒素濃度がS-CODCr濃度の増加に対する影響が大きいことがわかる。
pHが5及び鉄濃度が30mg/LであるNo.3とNo.4の対比、並びにpHが5及び鉄濃度が100mg/LであるNo.5とNo.6の対比から、10分後及び24時間後のS-CODCr濃度は、亜硝酸性窒素が0mg/LのNo.3及びNo.5より2mg/LのNo.4及びNo.6の方が高く、亜硝酸性窒素が存在することによって易分解性が向上することがわかる。特にNo.4の24時間後のS-CODCr濃度は、No.3のS-CODCr濃度の約4倍に増加し、No.6の24時間後のS-CODCr濃度は、No.5のS-CODCr濃度の約6倍に増加しており、汚泥と亜硝酸性窒素とが十分に接触することにより、易分解化反応が進行することがわかる。
硝酸性窒素が2mg/L及び鉄濃度が30mg/LであるNo.2とNo.4から、10分後及び24時間後のS-CODCr濃度は、pHが5であるNo.4よりpHが3であるNo.2の方が高く、pHが低いほど効果が高いことがわかる。特に、No.2の10分後のS-CODCr濃度は、未処理汚泥のNo.1のS-CODCr濃度の10倍以上に増加しており、pHが低いほど即効性が高いことがわかる。
S-CODCr濃度は、メタンガス発生量と相関があり、メタンガス発生量の指標となることは知られている。pH5以下で、鉄及び亜硝酸性窒素が共存することによって、S-CODCr濃度の顕著な増加が認められることから、メタンガス発生量も顕著に増加すると考えられる。
表3に示すように、本発明の前処理を用いる排水処理方法においては、従来の可溶化処理を用いる排水処理よりもエネルギー使用量が少なく、稼働コストを低減でき、操作性が良好で、処理水の色度もクリアで、汚泥の脱水性も良好である。
Figure 2024053843000005
11:第1の固液分離工程(最初沈殿池)
12:生物処理工程(生物処理槽)
13:第2の固液分離工程(最終沈殿池)
14:前処理工程(前処理槽)
15:嫌気性消化処理工程(嫌気性消化処理槽)
16:脱水工程(脱水機)
17:分離汚泥濃縮工程(重力濃縮装置)
18:汚泥混合工程(汚泥混合貯槽)
19:余剰汚泥濃縮工程(機械濃縮装置)
20:亜硝酸性窒素生成工程(亜硝酸性窒素生成槽)

Claims (9)

  1. 生物処理後に発生する余剰汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化処理工程と、嫌気性消化処理後の汚泥を脱水処理する脱水工程と、を含む排水処理方法であって、
    当該嫌気性消化処理工程の前に、30mg/L以上600mg/L以下の鉄及び1mg/L以上150mg/L以下の亜硝酸性窒素(NO-N)の存在下で、酸を添加してpHを5以下に調整し、10℃以上25℃以下で、当該余剰汚泥中の微生物の細胞外高分子物質を細分化して易分解化汚泥を得る前処理工程を含むことを特徴とする排水処理方法。
  2. 前記前処理工程にて、前記余剰汚泥に亜硝酸性窒素(NO-N)及び/又は鉄を添加することを特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
  3. 前記前処理工程の前に、前記余剰汚泥を濃縮する余剰汚泥濃縮工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の排水処理方法。
  4. 排水を汚泥と分離水とに分離する固液分離工程と、当該固液分離工程からの分離水を生物処理する生物処理工程と、当該固液分離工程からの分離汚泥を濃縮する分離汚泥濃縮工程と、前記嫌気性消化処理工程の前に、当該分離汚泥濃縮工程からの濃縮汚泥と前記前処理工程からの易分解化汚泥とを混合する汚泥混合工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の排水処理方法。
  5. 前記脱水工程からの分離液に含まれるアンモニア性窒素を酸化させて、亜硝酸性窒素(NO-N)を生成させる亜硝酸性窒素(NO-N)生成工程をさらに含み、
    前記前処理工程に、前記亜硝酸性窒素(NO-N)生成工程からの亜硝酸を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の排水処理方法。
  6. 排水処理装置であって、
    生物処理後の余剰汚泥を、30mg/L以上600mg/L以下の鉄及び1mg/L以上150mg/L以下の亜硝酸性窒素(NO-N)の存在下で、酸を添加してpHを5以下に調整し、10℃以上25℃以下で、微生物の細胞外高分子物質を細分化して易分解化汚泥を得る前処理槽と、
    当該前処理槽からの易分解化汚泥を嫌気性消化処理する嫌気性消化槽と、
    当該嫌気性消化槽からの汚泥を脱水処理する脱水機と、
    を備えることを特徴とする嫌気性消化処理装置。
  7. 前記前処理槽の前段に、前記余剰汚泥を濃縮する余剰汚泥濃縮槽をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の排水処理装置。
  8. 排水を分離汚泥と分離水とに固液分離する第1の固液分離手段と、
    当該第1の固液分離手段からの分離水を生物処理する生物処理槽と、
    当該第1の固液分離手段からの分離汚泥を濃縮する分離汚泥濃縮槽と、
    前記嫌気性処理装置の前段に、当該分離汚泥濃縮槽からの濃縮汚泥と、前記前処理槽からの易分解化汚泥とを混合する汚泥濃縮混合槽と、をさらに含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の排水処理装置。
  9. 前記脱水機からの分離液に含まれるアンモニア性窒素を酸化させて、亜硝酸性窒素(NO-N)を生成させる亜硝酸性窒素生成槽をさらに含み、
    前記前処理槽に、前記亜硝酸性窒素生成槽からの亜硝酸性窒素(NO-N)を添加することを特徴とする請求項6又は7に記載の排水処理装置。
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