JP2024047987A - リグニン由来の有用成分の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】リグニンを含む植物系バイオマスを含有する原料から、効率よく有効成分を製造する方法を提供すること。【解決手段】(1)水と、脂肪族アルコール、ケトン及び環状エーテルからなる群より選ばれる有機溶媒との混合溶媒中で、植物系バイオマスを含有する原料を下記条件の下で処理して可溶化リグニンを得る可溶化工程と、条件A:該原料の該溶媒に対する仕込み濃度が1質量%以上20質量%以下である条件B:抽出温度が100℃以上350℃以下である条件C:抽出時間が0.1時間以上10時間以下である(2)可溶化リグニンが含まれる有機相を分液する第1分液工程と、(3)該有機相にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物水溶液を加え可溶化リグニンを水溶化する水溶化工程と、(4)水溶化された可溶化リグニンを含む水相を分液する第2分液工程と、を備えるリグニン由来の有用成分の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、リグニン由来の有用成分の製造方法に関する。
リグニンは、植物細胞壁の主要構成成分の1つで、芳香環を構成ユニットとする天然ポリマーである。そのため、リグニンを構成モノマーに分解することで、フェノール類等の有用成分が得られる。得られたフェノール誘導体等は、例えば機能性の高い芳香族ポリマーのモノマー中間体として利用することができる。
リグニン由来の有用成分の製造方法の1つとして、有機溶媒を用いたオルガノソルブ処理が検討されている。例えば、本発明者等は、水と1-ブタノール溶媒等の脂肪族アルコールとの混合溶媒による2相系のオルガノソルブ処理を開発してきた(例えば特許文献1参照)。本法では、処理温度において、水相と脂肪族アルコール相に分離するため、可溶化リグニン(リグニン分解物)を脂肪族アルコール相に選択的に回収できる。
特許第6344724号
ところで、特許文献1では、脂肪族アルコール相中に溶解した可溶化リグニンを、減圧下エバポレータ等を用いて有機溶媒を除去することによって濃縮物として回収している(以下、「濃縮法」ともいう)。この点、本発明者等が更なる検討を行った結果、有機溶媒除去の際に可溶化リグニン中の単環芳香族化合物が一緒に揮発してしまうとともに、更に濃縮することで可溶化リグニンが凝集・高分子量化反応が進行し、後工程の反応において目的とするリグニン由来のフェノール類等の有用成分の収率が低下することが明らかとなった。
そこで本発明は、リグニンを含む植物系バイオマスを含有する原料から、効率よく有効成分を製造する方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明者等は鋭意検討した結果、以下の[1]~[3]の発明を完成するに至った。
[1]
(1)水と、脂肪族アルコール、ケトン及び環状エーテルからなる群より選ばれる有機溶媒との混合溶媒中で、植物系バイオマスを含有する原料を下記条件の下で処理して可溶化リグニンを得る可溶化工程と、
条件A:該原料の該溶媒に対する仕込み濃度が1質量%以上20質量%以下である
条件B:抽出温度が100℃以上350℃以下である
条件C:抽出時間が0.1時間以上10時間以下である
(2)可溶化リグニンが含まれる有機相を分液する第1分液工程と、
(3)該有機相にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物水溶液を加え可溶化リグニンを水溶化する水溶化工程と、
(4)水溶化された可溶化リグニンを含む水相を分液する第2分液工程と、
を備えるリグニン由来の有用成分の製造方法。
[2]
有機溶媒は、0℃以上50℃以下において水と二相分離する炭素数4~10の脂肪族アルコールである、[1]に記載の製造方法。
[3]
(5)第2分液工程で得られた水溶化された可溶化リグニンを、触媒の存在下で、酸化分解する酸化分解工程を更に備える、[1]又は[2]に記載の製造方法。
本発明によれば、リグニンを含む植物系バイオマスを含有する原料から、効率よく有効成分を製造する方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態のリグニン由来の有用成分の製造方法は、
(1)水と、脂肪族アルコール、ケトン及び環状エーテルからなる群より選ばれる有機溶媒との混合溶媒中で、植物系バイオマスを含有する原料を下記条件の下で処理して可溶化リグニンを得る可溶化工程と、
条件A:該原料の該溶媒に対する仕込み濃度が1質量%以上20質量%以下である
条件B:抽出温度が100℃以上350℃以下である
条件C:抽出時間が0.1時間以上10時間以下である
(2)可溶化リグニンが含まれる有機相を分液する第1分液工程と、
(3)該有機相にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物水溶液を加え可溶化リグニンを水溶化する水溶化工程と、
(4)水溶化された可溶化リグニンを含む水相を分液する第2分液工程と、
を備える。
かかる製造方法によれば、効率よくリグニン由来の有用成分を製造することができる。
以下、各工程について詳述する。
<(1)可溶化工程>
本実施形態の可溶化工程において原料として用いられる植物系バイオマスとしては、木本系バイオマス、草本系バイオマスが挙げられる。木本系バイオマスとしては、スギ、サクラ、ユーカリ、ヒノキ、ヒバ、ブナ、ヤナギなどが挙げられる。また草本系バイオマスとしては、タケ、パームヤシの樹幹・空房、パームヤシ果実の繊維及び種子、バガス(サトウキビ搾汁後の残渣)、稲わら、麦わら、トウモロコシ残渣(コーンストーバー、コーンコブ、コーンハル)、ヤトロファ種皮・殻、スイッチグラス、エリアンサス、エネルギー作物などの植物油搾取過程で発生する残渣が挙げられる。
これら植物系バイオマスには、通常15~40質量%程度のリグニンが含まれるため、好適である。なお、原料の植物系バイオマスとしては、粉砕されたものを用いてもよい。原料の植物系バイオマスは、ブロック、チップ、粉末、いずれの形状でもよい。また、原料の植物系バイオマスとしては、リグニン以外の成分を除去等するための前処理を行ったものを用いてもよい。例えば、植物系バイオマスについて水熱処理を行い、原料に含まれるヘミセルロースを除いたものを用いてもよい。
可溶化工程における溶媒としては、水と、脂肪族アルコール、ケトン及び環状エーテルからなる群より選ばれる有機溶媒との混合溶媒を用いる。
脂肪族アルコールとしては、例えば炭素数1~10の脂肪族アルコール、好ましくは炭素数4~10の脂肪族アルコール、より好ましくは炭素数4~6の脂肪族アルコールを用いることができる。脂肪族アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール等の飽和直鎖アルコール;イソプロパノール、イソブタノール等の飽和分岐鎖アルコールが挙げられる。
ケトンの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン等が挙げられる。環状エーテルの具体例としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
これらの有機溶媒の中で、脂肪族アルコールが好ましく、炭素数1~10の脂肪族アルコールがより好ましく、0℃以上50℃以下において水と二相分離する炭素数4~10の脂肪族アルコールが更に好ましい。特に水と二層分離する炭素数4~10の脂肪族アルコールを用いると、次工程の第1分液工程において特別の操作無しに有機相を分液することができるので望ましい。
本発明の実施形態において、溶媒に用いられる水としては、例えば、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。水と有機溶媒の混合比の範囲は、モル比で、水(mol)/有機溶媒(mol)が0.5/1~45/1であることが好ましく、より好ましくは、0.7/1~30/1、さらに好ましくは、0.9/1~20/1、さらに好ましくは、1.8/1~10/1である。
条件Aにおける原料の溶媒に対する仕込み濃度は、1質量%以上20質量%以下であり、好ましくは、2質量%以上18質量%以下、より好ましくは、3質量%以上15質量%以下である。
条件Bにおける反応温度は、100℃以上350℃以下であり、好ましくは、150℃以上300℃以下であり、より好ましくは、170℃以上270℃以下である。
条件Cにおける反応時間は、0.1時間以上10時間以下であり、好ましくは、0.2時間以上8時間以下であり、より好ましくは、1時間以上6時間以下であり、さらに好ましくは、1時間以上3時間以下である。
上述した条件のほかに、可溶化工程における反応系の圧力は、0.5MPa~30MPaが望まれる。より好ましい条件は、水、アルコール量と温度によって影響されるため適宜設定する。また、可溶化工程は、空気下で行うことができる。可溶化工程は、酸化反応による重合を抑えるために、窒素パージを行って酸素を減らした雰囲気下で行われることが好ましい。
可溶化工程における反応方式に、特に制限はない。例えば、一般的な回分式反応器、半回分式反応器などを利用することができる。また、原料と、水と、有機溶媒とからなるスラリーをスクリュー又はポンプ等で押し出しながら反応させる方式も適用可能である。さらに、静置反応も可能である。
<(2)第1分液工程>
第1分液工程では、可溶化工程で得られた可溶化リグニンが含まれる有機相を分液する。
上記有機溶媒として、0℃以上50℃以下において水と二相分離する溶媒を用いた場合には、そのまま有機相を分液することができる。
上記有機溶媒として、水と相溶する溶媒を用いた場合には、適宜水及び/又は抽出用有機溶媒を二相分離するまで添加した後に、有機相を分液することができる。抽出用有機溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、酢酸エチル、炭素数4~10の脂肪族アルコール(例えば1-ブタノール)、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。
分液後に、更に抽出用溶媒を用いて、抽出を行ってもよい。なお、分液された有機相における有機溶媒の量が多すぎる場合には、適宜エバポレータ等を用いて溶媒を揮発させてもよいが、可溶化リグニン中の単環芳香族化合物の揮発を避けるために、ドライアップしない程度とすることが望ましい。
揮発の際の有機相の温度は、揮発にかかる時間と目的物の揮発量を減らすことができる点から、好ましくは30℃~120℃、より好ましくは40℃~80℃、更に好ましくは40℃~60℃である。
揮発の際の減圧は、揮発にかかる時間と目的物の揮発量を減らすことができる点から、好ましくは1kPa~20kPa、より好ましくは5kPa~15kPaである。
<(3)水溶化工程>
水溶化工程では、第1分液工程で得られた有機相にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物水溶液を加え可溶化リグニンを水溶化する。
アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。これらのうち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適に用いられる。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物水溶液の濃度は、例えば、0.5~5mol/Lとすることができる。
<(4)第2分液工程>
第2分液工程では、水溶化工程で得られた水溶化された可溶化リグニンを含む水相を分液する。第2分液工程では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物水溶液を複数回有機相に接触させて、より確実に水溶化された可溶化リグニンを水相に移すことができる。また、水相に含まれる脂肪族アルコール等の有機溶媒を除くために、上述の抽出有機溶媒を水相に接触させて、さらなる分液を行ってもよい。
<(5)酸化分解工程>
本実施形態のリグニン由来の有用成分の製造方法は、更に第2分液工程で得られた水溶化された可溶化リグニンを、触媒及び酸化剤の存在下で、酸化分解する酸化分解工程を備えていてもよい。
第2分液工程後に得られる可溶化リグニンは既にある程度低分子量化しているが、酸化分解工程では、その中からさらに低分子量の有用成分に効率的に変換することを目的として、更にもう一段の分解をすることができる。酸化分解方法としては、従来のリグニン分解法を適用することができる。
この酸化分解工程においては、適度な分解性が求められ、分解性が高すぎる場合は目的とする有用成分の分解が進みすぎ収率が低下してしまう。一方、分解性が低すぎる場合は反応が進まず、同じく有用成分の収率が低下してしまう。
酸化分解工程で用いることができる触媒としては、塩基性触媒、酸性触媒、遷移金属触媒、リグニン分解酵素等が挙げられる。
塩基性触媒としては、アルカリ金属・アルカリ土類金属・遷移金属等の金属水酸化物、これら金属のアルコキシド類、ジアザビシクロウンデセン(DBU)・ジアザビシクロノネン(DBN)等の含窒素系有機塩基触媒類等が挙げられる。
酸性触媒としては、塩酸・硫酸・硝酸・リン酸等の鉱酸類、トルエンスルホン酸・メタンスルホン酸等の有機酸類が挙げられる。
遷移金属触媒としては、マンガン・クロム・鉄・コバルト・銅等の第一遷移金属、ルテニウム・パラジウム・ロジウム等の第二遷移金属、タングステン・オスミウム・イリジウム・白金等の第三遷移金属の塩類、それらのポルフィリン錯体・サレン錯体等に代表される錯体類が挙げられる。
リグニン分解酵素としては、例えばラッカーゼ、ペルオキシターゼ、オキシターゼ等が挙げられる。
これらのうち、適度な分解性をもつ第一遷移金属、金属塩、金属錯体が好適に用いることができ、特に銅系触媒、例えば銅塩、銅錯体、ラッカーゼ等が好適に用いられ、工業的な観点からは特に水酸化銅(II)が好ましい。
酸化剤としては、酸素(空気)、過酸化水素、オゾン、次亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、硝酸、クロム酸塩、二クロム酸塩、マンガン酸塩、過マンガン酸塩等が挙げられる。
これらは触媒や反応条件により適宜選択することができるが、適度な酸化性と取り扱いの容易さから酸素、過酸化水素が好ましく、特に酸素が好ましい。
酸化分解工程における触媒量としては、その反応の形態によって適宜調整されるべきものではあるが、金属、特に銅化合物を用いる場合においては、水抽出液中、金属(銅)の重量%濃度として、0.01以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上であり、また、10以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1以下である。
酸化分解工程における反応温度は、反応触媒の形態により適宜好適な条件を用いることができるが、水酸化銅(II)を用いる場合においては、100℃以上350℃以下であり、好ましくは、150℃以上300℃以下であり、より好ましくは、170℃以上270℃以下である。なお、反応を制御するために、所定の反応温度まで加温した直後に冷却することが望ましい。
酸化分解工程は、好ましくは、酸素ガスを含む雰囲気下で行われるが、反応性、安全性を考慮し、酸素分圧を調整する目的で窒素ガス等の不活性ガスを含んでいてもよい。
酸化分解工程における反応方式に、特に制限はない。例えば、一般的な回分式反応器、半回分式反応器などを利用することができる。
本実施形態のリグニン由来の有用成分の製造方法によれば、コークの生成が抑制されるため、酸化分解工程において、触媒に付着するコークの量を低減することができる。コークの付着は触媒の能力低減の大きな原因であることは広く知られており、本実施形態の製造方法を適用することにより、触媒の機能を長期間維持することができる。
本実施形態の製造方法により得られるリグニン由来の有用成分は、バニリンやヒドロキシ安息香酸等の化合物単体として活用することもできるし、これを化学的に変性してより機能性を高めた用途に用いることもできる。例えば、石油・石炭資源に由来しない、再生可能な資源を由来とした機能性の高い芳香族系樹脂材料のモノマー中間体として利用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
実施例1(スギ、水熱処理、オルガノソルブ処理(水/BuOH)、液液抽出法)
<リグニン可溶化>
原料には、スギを粉砕機で破砕し、篩分けにより300μm以下とした粉末を用いた。前処理として水熱処理を行い、原料に含まれるヘミセルロースを除去した後、水/1-ブタノール溶媒による処理(オルガノソルブ処理)により、リグニンを可溶化させた。
水熱処理は、内容積150mLのSUS製耐圧回分式反応装置を用い、原料/溶媒水=1/30(重量比)で行った。回分式反応装置の反応器内を窒素でパージした後、165℃に昇温し、2時間反応を行った。なお、反応器内温を熱電対により測定し、反応時間は165℃に達してからの経過時間とした。
反応後、生成物はろ過により固液分離した。固形分は、蒸留水により室温で15分、撹拌しながら洗浄した。これを3回繰り返した後、一晩風乾してから60℃、3時間の条件で真空乾燥した固形分をオルガノソルブ処理に供した。
オルガノソルブ処理は、内容積150mLのSUS製耐圧回分式反応装置を用い、水熱処理後固形分/溶媒=1/30(重量比)、溶媒:水/1-ブタノール=4/1(モル比)で行った。回分式反応装置の反応器内を窒素でパージした後、200℃まで昇温し、2時間反応を行った。なお、反応器内温を熱電対により測定し、反応時間は200℃に達してからの経過時間とした。
反応終了後、回分式反応容器を氷水に浸漬させて冷却し、反応器内温が室温付近まで下がった後、反応器内容物を全て取り出した。固形分と液成分をろ別後、ろ液を分液漏斗により液液分離することで、水相と1-ブタノール相(以下、「1-ブタノール可溶分」という。)を得た。
<液液抽出>
1-ブタノール可溶分10mLに対し、等量の2mol/L水酸化ナトリウム水溶液を接触させ、室温下で液液抽出を行った。これを3回繰り返した。
次に、水酸化ナトリウム抽出液30mLに溶解した1-ブタノールを除くために、等量のジエチルエーテルを接触させ、室温下で液液抽出を行った。これを3回繰り返した。
<酸化分解>
水酸化ナトリウム水溶液に抽出された可溶化リグニンの酸化分解反応は、テフロン(登録商標)内筒容器を備えたSUS製耐圧回分式反応器を用いて実施した。
内筒容器に原料の水酸化ナトリウム抽出液30mL、触媒として水酸化銅(II)0.24gを導入し、反応器内を窒素でパージし、酸素と窒素を300kPaずつ導入した後、180℃まで昇温した。昇温時間は、反応器内温の熱電対により測定し、約1時間要した。180℃に達した直後に、反応器を急冷させることで反応を停止させた。その後、固体成分と液成分をろ別して、以下の生成物分析に供した。
<生成物分析>
(固体成分)
固体成分は、付着したコーク成分を熱重量計により測定した。窒素雰囲気下、120℃で120分保持することで水分を除去した後、380℃まで15℃/minで昇温した。コーク量は、120℃で乾燥した時の重量(W(T=120℃))を基準に、380℃に昇温した時の重量減少(W(T=380℃)-W(T=120℃))に基づき、下記の式より算出した。
(液成分)
回収した液成分は、蒸留水を用いて200mLにメスアップし、等量のテトラヒドロフランを添加することで、リグニンとその分解物の溶解性を高めた。30wt%の硫酸溶液を用いてpH=3程度まで酸性化することで、生成したフェノール類の遊離を促進した。
酸性化後の生成液中に含まれる単環フェノール類を、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフを用いて、内部標準法により定量した。この時、アルデヒド基、カルボキシル基を含まない生成物は、誘導体化処理を行わずに定量し、アルデヒド基、カルボキシル基を含む生成物に対しては、誘導体化処理(シリル化)を行った後に定量した。
誘導体化処理は、次のように実施した。酸性化後の生成液1mLに対し、2倍量の酢酸エチルにより3回抽出することで、酢酸エチル可溶分を調製した。エバポレータを用いて、酢酸エチル可溶分から溶媒を除去した後、ピリジンに溶解させた。その後、シリル化剤(N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、BSTFA)を添加し、60℃、30分の条件で酢酸エチル可溶分の誘導体化を進行させた。
フェノール類の収率は、原料中のリグニンに含まれる炭素基準で算出し、リグニンの定量は、既往のNREL法に従って実施した。
比較例1(スギ、水熱処理、オルガノソルブ処理(水/BuOH)、濃縮法)
<リグニン可溶化>
実施例1と同様に行った。
<濃縮>
エバポレータを用いて、1-ブタノール可溶分から溶媒を留去させた後、130℃、0.5時間の条件で真空乾燥を行った。その後、一部残存する1-ブタノールを取り除くため、アセトンを過剰量添加し、再度、130℃、0.5時間の条件で真空乾燥して溶媒を除去し、可溶化リグニン濃縮物を得た。
<酸化分解>
原料には、実施例1で使用したのと同量の1-ブタノール可溶分(10mL)から得られた可溶化リグニン濃縮物0.11gを用い、溶媒として30mLの2mol/L水酸化ナトリウム水溶液に加えた。その他については、実施例1と同様に行った。
<生成物分析>
実施例1と同様に行った。
実施例1及び比較例1における液成分の分析結果
実施例1のリグニン可溶化工程後の1-ブタノール可溶分、実施例1における液成分、及び比較例1における液成分のそれぞれについて分析を行い、検出されたリグニン由来の生成物量(単位:C-mol%:リグニン炭素基準)を表1に示す。表1から明らかであるように、比較例1と比べると、実施例1ではリグニン由来の有用成分(フェノール類)がより多く得られた。なお、1-ブタノール可溶分には、その他のフェノール類(アルキルフェノール、アルキルメトキシフェノール及びアルキルカテコール)が含まれるが、更なる処理を行った実施例1及び比較例1における液成分には含まれなかった。
実施例2(スギ、オルガノソルブ処理(水/EtOH)、液液抽出法)
<リグニン可溶化>
原料には、スギを粉砕機で破砕し、篩分けにより300μm以下の粉末を用いた。オルガノソルブ処理は、内容積150mLのSUS製耐圧回分式反応装置を用い、原料/溶媒=1/30(重量比)、溶媒:水/エタノール=1/1(モル比)で行った。回分式反応装置の反応器内を窒素でパージした後、200℃まで昇温し、2時間反応を行った。なお、反応器内温を熱電対により測定し、反応時間は200℃に達してからの経過時間とした。
反応終了後、回分式反応容器を氷水に浸漬させて冷却し、反応器内温が室温付近まで下がった後、反応器内容物を全て取り出した。固形分と液成分をろ別することで、水/エタノール可溶分を得た。
<液液抽出>
20mLの水/エタノール可溶分に対し、6倍量(120mL)の蒸留水を添加後、等量(140mL)の1-ブタノールを用いて室温下、液液抽出を3回行った。
エバポレータにより、420mLの1-ブタノール相から溶媒を留去し、ドライアップしない程度に濃縮した。その後、1-ブタノールを加えることで、10mLにメスアップした。等量の2mol/L水酸化ナトリウム水溶液を接触させ、室温下で液液抽出を行った。これを3回繰り返した。
次に、水酸化ナトリウム抽出液30mLに溶解した1-ブタノールを除くために、等量のジエチルエーテルを接触させ、室温下で液液抽出を行った。これを3回繰り返した。
<酸化分解、生成物分析>
実施例1と同様に行った。
比較例2(スギ、オルガノソルブ処理(水/EtOH)、濃縮法)
<リグニン可溶化>
実施例2と同様に行った。
<濃縮>
エバポレータを用いて、水/エタノール可溶分から溶媒を留去させた後、130℃、0.5時間の条件で真空乾燥を行った。その後、一部残存する水、エタノールを取り除くため、アセトンを過剰量添加し、再度、130℃、0.5時間の条件で真空乾燥して溶媒を除去し、可溶化リグニン濃縮物を得た。
<酸化分解>
原料には、実施例2で使用したのと同量の水/エタノール可溶分(20mL)から得られた可溶化リグニン濃縮物0.12gを用い、溶媒として30mLの2mol/L水酸化ナトリウム水溶液に加えた。その他については、実施例1と同様に行った。
<生成物分析>
実施例1と同様に行った。
実施例2及び比較例2における液成分の分析結果
実施例2における液成分及び比較例2における液成分のそれぞれについて分析を行ったところ、それぞれバニリンの量が3.2C-mol%(リグニン炭素基準)、2.1C-mol%(リグニン炭素基準)であった。この結果から明らかであるように、比較例2と比べると、実施例2ではリグニン由来の有用成分としてバニリンが多く得られた。
実施例1、2及び比較例1、2における固体成分の分析結果
実施例1、2における固体成分及び比較例1、2における固体成分のそれぞれについて分析を行い、算出されたコーク量(単位:C-mol%)を表2に示す。表2から明らかであるように、実施例ではコークの析出量を抑えることができた。
実施例3(バガス、水熱処理、オルガノソルブ処理(水/BuOH)、液液抽出法)
<リグニン可溶化>
原料にバガス(サトウキビ搾汁後の残渣)を用い、オルガノソルブ処理条件は、水熱処理後固形分/溶媒=1/10(重量比)、溶媒:水/1-ブタノール=8/1(モル比)とした。その他については、実施例1と同様に行った。
<液液抽出、酸化分解、生成物分析>
生成物分析に関して、固体成分の分析を割愛した。その他については、実施例1と同様に行った。
比較例3(バガス、水熱処理、オルガノソルブ処理(水/BuOH)、濃縮法)
<リグニン可溶化>
実施例3と同様に行った。
<濃縮>
比較例1と同様に行った。
<酸化分解>
原料には、実施例3で使用したのと同量の1-ブタノール可溶分(10mL)から得られた可溶化リグニン濃縮物0.62gを用い、溶媒として30mLの2mol/L水酸化ナトリウム水溶液に加えた。その他については、実施例3と同様に行った。
<生成物分析>
実施例3と同様に行った。
実施例3及び比較例3における液成分の分析結果
実施例3のリグニン可溶化工程後の1-ブタノール可溶分、実施例3における液成分、及び比較例3における液成分のそれぞれについて分析を行い、検出されたリグニン由来の生成物量(単位:C-mol%:リグニン炭素基準)を表3に示す。表3から明らかであるように、比較例3と比べると、実施例3ではリグニン由来の有用成分(フェノール類)がより多く得られた。なお、1-ブタノール可溶分には、その他のフェノール類(アルキルフェノール、アルキルメトキシフェノール及びアルキルカテコール)が含まれるが、更なる処理を行った実施例3及び比較例3における液成分には含まれなかった。
実施例4(ヤナギ、水熱処理、オルガノソルブ処理(水/BuOH)、液液抽出法)
<リグニン可溶化>
原料にヤナギを用いた。その他については、実施例1と同様に行った。
<液液抽出、酸化分解、生成物分析>
生成物分析に関して、固体成分の分析を割愛した。その他については、実施例1と同様に行った。
比較例4(ヤナギ、水熱処理、オルガノソルブ処理(水/BuOH)、濃縮法)
<リグニン可溶化>
実施例4と同様に行った。
<濃縮>
比較例1と同様に行った。
<酸化分解>
原料には、実施例4で使用したのと同量の1-ブタノール可溶分(10mL)から得られた可溶化リグニン濃縮物0.12gを用い、溶媒として30mLの2mol/L水酸化ナトリウム水溶液に加えた。その他については、実施例4と同様に行った。
<生成物分析>
実施例4と同様に行った。
実施例4及び比較例4における液成分の分析結果
実施例4のリグニン可溶化工程後の1-ブタノール可溶分、実施例4における液成分、及び比較例4における液成分のそれぞれについて分析を行い、検出されたリグニン由来の生成物量(単位:C-mol%:リグニン炭素基準)を表4に示す。表4から明らかであるように、比較例4と比べると、実施例4ではリグニン由来の有用成分(フェノール類)がより多く得られた。なお、1-ブタノール可溶分には、その他のフェノール類(アルキルフェノール、アルキルメトキシフェノール及びアルキルカテコール)が含まれるが、更なる処理を行った実施例4及び比較例4における液成分には含まれなかった。

Claims (3)

  1. (1)水と、脂肪族アルコール、ケトン及び環状エーテルからなる群より選ばれる有機溶媒との混合溶媒中で、植物系バイオマスを含有する原料を下記条件の下で処理して可溶化リグニンを得る可溶化工程と、
    条件A:該原料の該溶媒に対する仕込み濃度が1質量%以上20質量%以下である
    条件B:抽出温度が100℃以上350℃以下である
    条件C:抽出時間が0.1時間以上10時間以下である
    (2)可溶化リグニンが含まれる有機相を分液する第1分液工程と、
    (3)該有機相にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物水溶液を加え可溶化リグニンを水溶化する水溶化工程と、
    (4)水溶化された可溶化リグニンを含む水相を分液する第2分液工程と、
    を備えるリグニン由来の有用成分の製造方法。
  2. 前記有機溶媒は、0℃以上50℃以下において水と二相分離する炭素数4~10の脂肪族アルコールである、請求項1に記載の製造方法。
  3. (5)第2分液工程で得られた水溶化された可溶化リグニンを、触媒の存在下で、酸化分解する酸化分解工程を更に備える、請求項1又は2に記載の製造方法。
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