JP2024043214A - イヌher2の検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】イヌHER2陽性腫瘍を検出する方法を提供する。【解決手段】イヌHER2陽性エクソソームあるいは遊離型イヌHER2タンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体分子を使用することを特徴とする方法、ならびにイヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離された特定のモノクローナル抗体分子、その変異モノクローナル抗体分子およびそれらの誘導体、当該抗体分子をコードする単離された核酸分子に関する。【選択図】なし

Description

本発明は一般に、腫瘍診断の分野に関する。具体的には、本発明は、イヌ体液中のタンパク質を定量する方法、より具体的にはイヌHER2タンパク質を定量および定性する方法、それに使用する抗イヌHER2モノクローナル抗体等に関する。
HER2 (ヒト上皮成長因子受容体2(human epidermal growth factor receptor 2))は、EGF(上皮成長因子)受容体のファミリーに属する1型膜タンパク質であり、細胞外からの増殖シグナルを細胞内に伝える機能を有している。HER2遺伝子はヒトの乳がんの15~30%、胃がんの10~20%などにおいて増幅が観察され、そのようながんでは過剰発現したHER2タンパク質ががんの発症や悪性化に大きく関与しているものと考えられている。がん患者の組織におけるHER2の発現は、免疫組織化学検査によるHER2タンパク質、あるいはFISH (蛍光 in situ ハイブリダイゼーション)法によるHER2遺伝子の検出により調べられている(非特許文献1)。
がん組織で発現しているがん特異抗原は、がん細胞から分泌されるエクソソームにも含まれることが知られており、がん特異抗原が膜タンパク質の場合には抗体を用いた検出系で抗原陽性エクソソームを定量することができる(非特許文献2)。ヒトのがんにおいては、がん組織から放出されるHER2陽性エクソソームに対して、抗ヒトHER2抗体を用いた検出系が考案されている(非特許文献3)。このように、エクソソーム上のがん特異抗原を検出するには、エクソソームの表面に発現している抗原の立体構造を認識し強く結合する抗体を取得することが必要となる。
イヌは長らくペットとして飼育されてきた動物の代表であるが、近年では盲導犬や聴導犬、警察犬、災害救助犬など、単なるペットではなく、コンパニオン動物とも呼ばれるように人間の生活における重要な伴侶として位置づけられている。したがって、イヌの健康を維持することは豊かな人間生活にも繋がると言える。イヌの疾病の診断法に対する研究開発、特に初老期のイヌの死因の第1位であるがん(非特許文献4)の新規診断法の開発は、イヌのがんを早期に発見し速やかに治療を進めることにより、多くのイヌの健康を維持するために重要である。
イヌHER2タンパク質はヒトの場合と同様にイヌのがん組織で発現していることが近年明らかにされている(非特許文献5)。しかしながら、イヌHER2タンパク質を指標としたがん診断法はまだ開発されておらず、PCRによってがん細胞内でのHER2遺伝子の増幅が検出されるに止まっている。特許文献1では、エキソソームバイオマーカーを検出および定量するための方法として、HER2陽性エクソソームが抗体を用いて検出できると概念的に記載されているに過ぎない。
特表2021-511510公報
日本乳癌学会 乳癌心療ガイドライン(2018年版ver.4/2020年8月23日改訂)「HER2検査はどのような目的で、どのように行うか」 Yoshioka Y, Kosaka N, Konishi Y, Ohta H, Okamoto H, Sonoda H, Nonaka R, Yamamoto H, Ishii H, Mori M, Furuta K, Nakajima T, Hayashi H, Sugisaki H, Higashimoto H, Kato T, Takeshita F, Ochiya T (2014) Ultra-sensitive liquid biopsy of circulating extracellular vesicles using ExoScreen. Nat Commun. 5, doi:10.1038/ncomms4591 Kabe Y, Suematsu M, Sakamoto S, Hirai M, Koike I, Hishiki T, Matsuda A, Hasegawa Y, Tsujita K, Ono M, Minegishi N, Hozawa A, Murakami Y, Kubo M, Itonaga M, Handa H (2018) Development of a highly sensitive device for counting the number of disease-specific exosomes in human sera. Clin Chem. 64 (10), 1463-1473. アニコムグループ 家庭どうぶつ白書2021 Tsuboi M, Sakai K, Maeda S, Chambers JK, Yonezawa T, Matsuki N, Uchida K, Nakayama H (2019) Assessment of HER2 Expression in Canine Urothelial Carcinoma of the Urinary Bladder. Vet Pathol. 56 (3), 369-376. J Martin de las Mulas 1 , J Ordas, Y Millan, V Fernandez-Soria, S Ramon y Cajal (2003) Oncogene HER-2 in canine mammary gland carcinomas: an immunohistochemical and chromogenic in situ hybridization study. Breast Cancer Res Treat80 (3), 363-367. Yoshimoto S, Kato D, Kamoto S, Yamamoto K, Tsuboi M, Shinada M, Ikeda N, Tanaka Y, Yoshitake R, Eto S, Saeki K, Chambers J, Kinoshita R, Uchida K, Nishimura R, Nakagawa T (2019) Immunohistochemical evaluation of HER2 expression in canine thyroid carcinoma. Heliyon 5 (7) e02004. Yoshimoto S, Kato D, Kamoto S, Yamamoto K, Tsuboi M, Shinada M, Ikeda N, Tanaka Y, Yoshitake R, Eto S, Saeki K, Chambers JK, Kinoshita R, Uchida K, Nishimura R, Nakagawa T (2019) Detection of human epidermal growth factor receptor 2 overexpression in canine anal sac gland carcinoma. J Ver Med Sci 81 (7) 1034-1039. Perrier A, Gligorov J, Lefevre G, Boissan M (2018) The extracellular domain of Her2 in serum as a biomarker of breast cancer. Lab Invest. 98 (6) 696-707.
上記の通り、イヌHER2タンパク質を指標としたがん診断法は未だ、開発されていない。その原因の一つとして、イヌHER2タンパク質に対する高性能な抗体が存在しないことが考えられる。
本発明者は、イヌHER2陽性エクソソームを用いたスクリーニング法によってイヌHER2タンパク質の細胞外ドメインに対する高性能なモノクローナル抗体を作製し、その抗体を用いてイヌのHER2タンパク質を高感度に定量するELISA測定系を構築した。さらに、担がん犬の血液中のHER2タンパク質の存在量を測定することによって、イヌがんの診断を可能にすることにより本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
<検出方法>
[1]
イヌHER2タンパク質を認識する抗体を用いる、イヌHER2陽性腫瘍を検出する方法。
[2]
イヌHER2タンパク質を認識する抗体が、イヌHER2陽性エクソソームまたは遊離型イヌHER2タンパク質を認識する抗体である、[1]記載の方法。
[3]
イヌHER2陽性エクソソームの表面抗原を認識する抗体をさらに用いる、[2]記載の方法。
[4]
イヌHER2タンパク質を認識する抗体が、
モノクローナル抗体1A:
(i)配列番号10のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号11のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号12のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、ならびに
(ii)配列番号13のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号14のL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号15のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体1B:
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体1C-1:
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;および
モノクローナル抗体1C-2:
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;ならびに
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;ならびに、
モノクローナル抗体2A:
(i)配列番号16のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号17のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号18のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、ならびに
(ii)配列番号19のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号20のL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号21のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体2B:
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体2C-1:
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体;ならびに、
モノクローナル抗体2C-2:
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;
の中から選ばれるモノクローナル抗体分子、変異モノクローナル抗体分子、またはその誘導体である、[1]記載の方法。
[5]
モノクローナル抗体分子または変異モノクローナル抗体分子の誘導体が、Fab、F(ab')2、Fvまたは単鎖Fv断片(scFv)である、[4]記載の方法。
[6]
検出を、免疫沈降によって行う、[1]記載の方法。
[7]
[1]記載の方法によって、イヌHER2陽性腫瘍を有するイヌ被検体を選別する方法。
<モノクローナル抗体分子>
[8]
モノクローナル抗体1A:
(i)配列番号10のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号11のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号12のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、ならびに
(ii)配列番号13のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号14のL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号15のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体1B:
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体1C-1:
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;および
モノクローナル抗体1C-2:
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;ならびに
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;
の中から選ばれる、イヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離されたモノクローナル抗体分子、変異モノクローナル抗体分子、またはその誘導体。
[9]
モノクローナル抗体2A:
(i)配列番号16のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号17のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号18のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、ならびに
(ii)配列番号19のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号20のL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号21のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体2B:
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体2C-1:
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体;
モノクローナル抗体2C-2:
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;
の中から選ばれる、イヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離されたモノクローナル抗体分子、変異モノクローナル抗体分子、またはその誘導体。
[10]
Fab、F(ab')2、Fvまたは単鎖Fv断片(scFv)である、[8]または[9]記載のモノクローナル抗体分子または変異モノクローナル抗体分子の誘導体。
<核酸分子>
[11]
[8]または[9]記載のモノクローナル抗体分子または変異モノクローナル抗体分子のH鎖またはL鎖可変領域をコードする単離された核酸分子。
[12]
H鎖CDR1、CDR2およびCDR3をコードする単離された核酸分子であって、それぞれ配列番号20、21および22、またはそれぞれ配列番号23、24および25のヌクレオチド配列を含む、[11]記載の核酸分子。
[13]
L鎖CDR1、CDR2およびCDR3をコードする単離された核酸分子であって、それぞれ配列番号26、配列GCTGCATCCおよび配列番号27、またはそれぞれ配列番号28、配列AAAGTTTCCおよび配列番号29のヌクレオチド配列を含む、[11]記載の核酸分子。
[14]
[11]から[13]のいずれか記載の核酸分子を含む発現ベクター。
[15]
[14]記載のベクターを含む宿主細胞。
[16]
遺伝子発現に適した条件下、[15]記載の宿主細胞を培養することを含む、抗体分子またはその断片を産生する方法。
<キット>
[17]
[8]または[9]記載の単離されたモノクローナル抗体分子または変異モノクローナル抗体分子、またはその誘導体を含む、イヌHER2陽性エクソソームあるいは遊離型イヌHER2タンパク質を定量するためのキット。
本発明によれば、イヌHER2タンパク質を指標としたがん診断法を確立できる。
図1は、HER2発現エクソソームに対する各ハイブリドーマの上清の反応性試験の結果を示すグラフである。 図2Aは、イヌHER2タンパク質測定用ELISAにおける各種抗体の組み合わせの検出感度を検討した各グラフである。 図2Bは、イヌHER2タンパク質測定用ELISAにおける各種抗体の組み合わせの検出感度を検討した各グラフである。 図3Aは、イヌHER2 ELISAにおける組み合わせ1(固相抗体B1-15C2;標識抗体A2-1G6)による添加回収試験の結果を示すグラフである。図3Bは、イヌHER2 ELISAにおける組み合わせ2(固相抗体A2-10C1;標識抗体B1-15C2)による添加回収試験の結果を示すグラフである。 図4Aは、イヌHER2 ELISAにおける組み合わせ1(固相抗体B1-15C2;標識抗体A2-1G6)による希釈直線性試験の結果を示すグラフである。図4Bは、イヌHER2 ELISAにおける組み合わせ2(固相抗体A2-10C1;標識抗体B1-15C2)による希釈直線性試験の結果を示すグラフである。
図5は、抗イヌHER2タンパク質抗体クローンA2-10C1のH鎖可変領域の構造を示す。 図6は、抗イヌHER2タンパク質抗体クローンA2-10C1のL鎖可変領域の構造を示す。 図7は、抗イヌHER2タンパク質抗体クローンB1-15C2のH鎖可変領域の構造の構造を示す。 図8は、抗イヌHER2タンパク質抗体クローンB1-15C2のL鎖可変領域の構造の構造を示す。 図9は、組み合わせ2(固相抗体A2-10C1;標識抗体B1-15C2)によるイヌ臨床検体の測定結果の結果を示すグラフである。
<イヌHER2陽性腫瘍を検出>
本発明は、ひとつの態様として、イヌHER2タンパク質を認識する抗体を用いる、イヌHER2陽性腫瘍を検出する方法に関する。
本発明において、血液中に存在するイヌHER2タンパク質は、エクソソーム上に存在する場合と細胞外ドメインが切断されて細胞から遊離して存在する場合とがある。よって、本発明において、「イヌHER2タンパク質を認識する抗体」には、エクソソーム上に存在するイヌHER2タンパク質を認識する抗体、すなわち「イヌHER2陽性エクソソームを認識する抗体」、および細胞外ドメインが切断されて細胞から遊離して存在するイヌHER2タンパク質を認識する抗体、すなわち「遊離型イヌHER2タンパク質を認識する抗体」が含まれる。
本明細書において、「イヌHER2陽性エクソソーム」とは、イヌHER2をその表面に発現しているエクソソームを意味する。イヌHER2陽性エクソソームは主として、イヌHER2陽性腫瘍から放出され、その存在は、非特許文献5に記載されている。エクソソームは30~120nmサイズの微小胞であり、通常、エキソサイトーシス経路を介して能動的に、血液などの体液中に分泌される。エクソソームは、主要組織適合性複合体タンパク質(MHCI、MHCII)や抗原提示に関与するタンパク質に加え、多くの細胞機能に関与する膜および細胞質タンパク質を担持する。エクソソームは特定の生理的条件下で、樹状細胞、リンパ球、マスト細胞および上皮細胞のような多様な細胞タイプから分泌される。
上記の通り、血液中に存在するイヌHER2タンパク質は、エクソソーム上に存在する場合と細胞外ドメインが切断されて細胞から遊離して存在する場合とがある。従って、本発明のイヌHER2陽性腫瘍を検出する方法は、イヌHER2陽性エクソソームまたは遊離型イヌHER2タンパク質を、生物学的試料について検出することを特徴とする。
本発明は、この形態において、以下の実施態様を包含する:
・あるイヌHER2陽性エクソソームに発現している複数のイヌHER2タンパク質のうちの1つのイヌHER2タンパク質を認識する抗体を固相抗体として、および前記のエクソソームと同じエクソソームに発現している複数のイヌHER2タンパク質のうちの前記のものとは別のイヌHER2タンパク質を認識する抗体を標識抗体として用いる態様;
・あるイヌHER2陽性エクソソームに発現している複数のイヌHER2タンパク質のうちの1つのイヌHER2タンパク質を認識する抗体を固相抗体として、および前記のエクソソームと同じエクソソームに発現している複数のイヌHER2タンパク質のうちの前記のものと同じイヌHER2タンパク質を認識する抗体を標識抗体として用いる態様;および
・ある遊離型HER2タンパク質を認識する抗体を固相抗体として、および前記と同じ遊離型イヌHER2タンパク質を認識する抗体を標識抗体として用いる態様。
より具体的には、イヌHER2陽性エクソソームまたは遊離型HER2タンパク質を認識する抗体として、以下に詳述するモノクローナル抗体1およびモノクローナル抗体2から選ばれる少なくとも1つの抗イヌHER2モノクローナル抗体、好ましくは固相抗体をモノクローナル抗体1かつ標識抗体をモノクローナル抗体2として、用いる方法が挙げられる。
本発明は、イヌHER2陽性エクソソームを認識する抗体を用いる態様において、ひとつの実施態様では、イヌHER2陽性エクソソームを検出できる別の抗体、すなわちイヌHER2陽性エクソソームの表面抗原(エクソソーム部分)を認識する抗体をさらなる抗体として利用する。より好ましくは、本発明の抗体を利用する方法である。イヌHER2陽性エクソソームの表面抗原を認識する抗体としては、エクソソームを認識する抗体、例えば、抗CD9モノクローナル抗体(コスモ・バイオ社製)または抗CD63モノクローナル抗体(コスモ・バイオ社製)、または抗CD81モノクローナル抗体(コスモ・バイオ社製)を挙げることができる。
本発明において、「イヌHER2陽性腫瘍」とは、イヌHER2をその細胞表面に発現している腫瘍を意味する。イヌHER2は、これまでにイヌの乳がん、膀胱がん、甲状腺がん、肛門腺がんなどでの発現が報告されている(非特許文献5、6、7、8)。ヒト乳がんと同様にこれらのイヌのがんからもHER2陽性エクソソームが分泌されることが予想される。一方、ヒト乳がん細胞で発現したHER2タンパク質は、その細胞外ドメインが細胞表面で切断され細胞から血液中に遊離することが知られており、この遊離型HER2タンパク質がバイオマーカーとなる可能性が報告されている(非特許文献9)。したがって、イヌにおいても血液中のHER2陽性エクソソームおよび遊離型HER2タンパク質を検出することによってがんの診断が可能であることが予想される。
本発明のイヌHER2陽性腫瘍を検出する方法は、イヌHER2陽性エクソソームまたは遊離型HER2タンパク質、および/またはイヌHER2陽性エクソソームの表面抗原を、生物学的試料について検出することを特徴とする。生物学的試料とは、体液、特に血液、血漿、血清などの血液検体を意味し、さらには腹水、脳液、骨髄、尿、糞便または気管支肺胞洗浄液であってもよい。
本発明の抗体は遊離型HER2タンパク質との結合性能によって選別されたものであり、これらを用いたELISAによりイヌHER2陽性精製エクソソームを定量したところ、いずれも濃度依存的な測定値が得られ、これらのELISAが遊離型HER2タンパク質あるいはイヌHER2陽性エクソソームの定量に適していることが示された。さらに、固相抗体をA2-10C1かつ標識抗体をB1-15C2(組み合わせ2)とするELISAにおいて、血清の存在下における抗体とエクソソームの結合特異性を評価するために添加回収試験を行った結果、回収率が100%前後となり、本発明では、生物学的試料からHER2HER陽性エクソソームを分離することなく直接検出できることが示された。
本発明の好ましい態様において、イヌHER2陽性エクソソームは、免疫沈降法によって検出できる。免疫沈降法では、可溶性の抗原と抗体が特異的に反応して不溶化することを利用し、比較的穏和な条件で抗原を検出・分離・精製することが可能である。例えば、基質と抗体を多数架橋させることによって、大きな構造体として不溶化させる。一般に、セファロースビーズなどの担体に抗体を結合させるが、磁気ビーズを使用する方法もよく行われる。免疫沈降法では、遠心分離によって非特異的に吸着する成分を取り除いてもよい。磁気ビーズを用いる場合は、遠心分離の代わりに磁場による分離を行う。
詳細には、固体支持体に結合させたイヌHER2タンパク質特異的な抗体にイヌHER2陽性エクソソームあるいは遊離型イヌHER2タンパク質を接触させ、複合体を形成させる。固体支持体は、抗体の付着または会合のための適切な部位を含むように改変できる材料である。固体支持体の材料としては、アクリル樹脂、ポリスチレン、およびスチレンと他物質とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、またはテフロンJ(登録商標)、ナイロン、ニトロセルロース、ポリサッカライドを含むプラスチック;シリカ、またはケイ素;および金属、無機ガラス等の物質が挙げられる。固体支持体のサイズおよび形状は、イヌHER2陽性エクソソームを結合できるのであれば制限はない。固体支持体は、平面であってもよく、ウエル(穴)、すなわち96穴あるいは384穴を有するプレートであってもよく、または固体支持体は、ビーズであってもよい。いくつかの実施形態では、固体支持体は、複数壁を有するプレートのウエルである。
本発明のイヌHER2陽性腫瘍を検出する方法は、イヌHER2陽性腫瘍を有するイヌ被検体を選別する方法に応用することができ、かかる態様も本発明の範囲に入る。
本発明は、かかる形態において、さらなる実施態様として、
(i) イヌ被検体から生物学的試料を入手し、
(ii) 得られた生物学的試料と、本発明の単離された抗体分子またはその誘導体とを接触させ、そして
(iii) イヌHER2陽性エクソソームあるいは遊離型イヌHER2タンパク質および抗体分子またはその誘導体の間の複合体の形成を検出すること
を含む、生物学的試料におけるイヌHER2陽性エクソソームあるいは遊離型HER2タンパク質を検出する方法に関する。
本発明のイヌHER2陽性腫瘍を検出する方法と同様、本発明のイヌHER2陽性エクソソームあるいは遊離型イヌHER2タンパク質を検出する方法は、イヌHER2陽性エクソソームあるいは遊離型イヌHER2タンパク質を、生物学的試料から分離することなく直接検出することを特徴とする。生物学的試料とは、体液、特に血液、血漿、血清を意味し、さらには腹水、脳液、骨髄、尿、糞便または気管支肺胞洗浄液であってもよい。本発明のイヌHER2陽性エクソソームあるいは遊離型イヌHER2タンパク質を検出する方法は、イヌHER2陽性腫瘍を有するイヌ被検体を選別する方法に応用することができ、かかる態様も本発明の範囲に入る。
イヌHER2陽性エクソソームあるいは遊離型イヌHER2タンパク質および抗体分子またはその誘導体の間の複合体の形成を検出する手法は、プラスチック・プレートやマグネティック・ビーズなどの担体に抗イヌHER2抗体を結合させ、そこにエクソソームを含む生物学的試料を接触させることによりエクソソームあるいはタンパク質を担体上の抗体に結合させ、さらにそのエクソソームあるいはタンパク質にホースラディッシュペルオキシダーゼなどの標識体で標識した抗イヌHER2抗体を結合させた複合体に対して発光基質を作用させて、プレートリーダなどで発光強度を検出することにより、複合体を定量するものである。
<モノクローナル抗体分子>
本発明は、ひとつの形態として、イヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離された抗体分子、またはその誘導体に関する。
詳細には、本発明は、かかる形態の一実施態様として、
モノクローナル抗体1A(クローンA2-10C1関連):
(i)配列番号10のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列(111-GYTFTRYW-118)、配列番号11のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列(136-ISPNSGT-142)および配列番号12のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列(181-CAREDYGGRFGYFDVW-196)を含むH鎖可変領域、ならびに
(ii)配列番号13のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列(47-ESVEYFGTSL-56)、配列:AASのL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列(74-AAS-76)および配列番号14のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列(112-CQQSRKVPYTF-122)を含むL鎖可変領域、
を含む、イヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離された抗体分子、またはその誘導体;または
モノクローナル抗体2A(クローンB1-15C2関連):
(i)配列番号15のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列(45-GYTFTSYG-52)、配列番号16のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列(70-LSSNIGES-77)および配列番号17のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列(115-CARGAYYRNYYYAMDSW-131)を含むH鎖可変領域、ならびに
(ii)配列番号18のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列(46-QTIVHSNGNTY-56)、配列:KVSのL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列(74-KVS-76)および配列番号19のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列(112-CFQGSHVPYTF-122)を含むL鎖可変領域、
を含む、イヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離された抗体分子、またはその誘導体;
を含む、イヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離された抗体分子、またはその誘導体に関する。
本発明はまた、上記形態の別の一実施態様として、
モノクローナル抗体1B(クローンA2-10C1関連):
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含む、イヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離された抗体分子、またはその誘導体;または
モノクローナル抗体2B(クローンB1-15C2関連):
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含む、イヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離された抗体分子、またはその誘導体;
を含む、イヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離された抗体分子、またはその誘導体に関する。
本発明において、「モノクローナル抗体分子」は、2本の同一のH鎖(重鎖)と2本の同一のL鎖(軽鎖)との間でジスルフィド結合により相互に結合されたテトラペプチド鎖構造の免疫グロブリン分子を意味する。抗体H鎖およびL鎖のN末端に隣接する約110個のアミノ酸配列は、高度に変化しやすく、可変領域(Fv領域)として知られている。C末端に近い残りの部分のアミノ酸配列は、相対的に安定であり、定常領域として知られている。可変領域は、3つの超可変領域(HVR)と相対的に保存された4つのフレームワーク領域(FR)を備える。3つの超可変領域は、抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)としても知られている。各L鎖可変領域(LCVR)および各H鎖可変領域(HCVR)は、アミノ末端からカルボキシル末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4の連続した順番で、3つのCDR領域および4つのFR領域からなる。3つのL鎖CDRは、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を指し、また3つのH鎖CDRは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を指す。
本発明において、「単離された」とは、その本来の天然環境から分離された試料を意味する。例えば、生きている動物に存在する天然起源のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されていないが、天然の系において共存する試料の一部または全部から人為的に分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されている。
本発明において、「モノクローナル抗体分子の誘導体」とは、ダイアボディおよび単鎖分子、ならびに「抗原結合断片」を意味する。「抗原結合断片」は、抗原結合活性を有するFab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、およびSARS-CoV-2と結合するFv断片、scFv断片を指し、本発明で規定されている抗体における1つ以上のCDR領域を含むことができる。Fv断片は、H鎖可変領域、L鎖可変領域、および定常領域を持たないすべての抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。一般に、Fv抗体は、H鎖可変領域およびL鎖可変領域ドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、抗原結合に必要な構造を形成することができる。また、異なるリンカーが、2つの抗体の可変領域を連結するのに用いられ、単鎖抗体または単鎖Fv (scFv)と名付けられたポリペプチドを形成する。本明細書では、本発明の「抗原結合部位」は、本発明のモノクローナル抗体または抗原結合断片により認識される、抗原上の不連続の3次元部位を指す。本明細書では、「イヌHER2タンパク質を特異的に認識する」とは、イヌHER2タンパク質に結合する能力を有することを意味し、これは、「イヌHER2タンパク質に結合するモノクローナル抗体」、または「イヌHER2タンパク質に対するモノクローナル抗体」と同義である。
本発明は、上記形態の一実施態様として、
モノクローナル抗体1C-1(クローンA2-10C1関連):
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体;
モノクローナル抗体2C-1(クローンB1-15C2関連):
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体に関する。本発明において、変異を有するモノクローナル抗体分子、すなわち変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体は、元のモノクローナル抗体分子が有している結合特性および機能と同等の結合特性および機能を有するものである。
本発明は、上記形態におけるさらなる一実施態様として、
モノクローナル抗体1C-2(クローンA2-10C1関連):
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;および
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体;
モノクローナル抗体2C-2(クローンB1-15C2関連):
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体;体に関する。本発明において、変異を有するモノクローナル抗体分子、すなわち変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体は、元のモノクローナル抗体分子が有している結合特性および機能と同等の結合特性および機能を有するものである。
モノクローナル抗体クローンA2-10C1:
H鎖可変領域アミノ酸配列(図5):配列番号2
1-MVYTCGAFGLPLVLEMVFSMGAGKAALLTLHLNSLPLSQSWCMMGSSLTERKVTVLTTITEHTDLTMGWSTIILFLVATTTGVHSQVQLQQPGAELVRPGALVKLSCKASGYTFTRYWIQWVKQRPGQGLELIGNISPNSGTTKYNEKFKDKATLTVDKSSSTAYMQLKSLTSADSAAYYCAREDYGGRFGYFDVWGTGTTVTVSS-206;
H鎖可変領域塩基配列:配列番号3
ATGGTGTACACCTGTGGAGCCTTCGGTCTGCCTTTGGTTTTGGAGATGGTTTTCTCGATGGGGGCAGGGAAAGCTGCACTGTTGACCCTGCATTTGAACTCCTTGCCATTGAGCCAGTCCTGGTGCATGATGGGAAGTTCACTGACTGAGCGGAAAGTCACTGTTCTCACTACAATTACTGAGCACACAGACCTCACCATGGGATGGAGCACTATCATCCTCTTTTTGGTAGCAACAACTACAGGTGTCCACTCCCAGGTCCAACTGCAGCAGCCTGGGGCTGAGCTGGTGAGGCCTGGAGCTTTAGTGAAGCTGTCCTGCAAGGCGTCTGGCTACACATTCACCAGATACTGGATACAGTGGGTGAAGCAGAGGCCTGGACAAGGCCTTGAGTTAATTGGAAACATTAGTCCTAATAGTGGTACTACTAAGTACAATGAGAAGTTCAAGGACAAGGCCACACTGACTGTAGACAAATCCTCCAGCACAGCCTACATGCAGCTCAAGAGCCTGACATCTGCGGACTCTGCGGCCTATTACTGTGCAAGAGAGGACTATGGTGGTAGGTTCGGCTACTTCGATGTCTGGGGCACAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCA
L鎖可変領域アミノ酸配列(図6):配列番号4
1-MESDTLLLWVLLLWVPGSTGDIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVEYFGTSLMQWYQQKPGQPPKLLIYAASNVESGVPARFSGSGSGTDFSLNIHPVEEDDIAMYFCQQSRKVPYTFGGGTKLEIKRADAAPTVSIFPPSSEQL-149
L鎖可変領域塩基配列:(配列番号5)
ATGGAGTCAGACACACTCCTGCTATGGGTGCTGCTGCTCTGGGTTCCAGGCTCCACTGGTGACATTGTGCTCACCCAATCTCCAGCTTCTTTGGCTGTGTCTCTAGGGCAGAGAGCCACCATCTCCTGCAGAGCCAGTGAAAGTGTTGAATATTTTGGCACAAGTTTAATGCAGTGGTACCAACAGAAACCAGGACAGCCACCCAAACTCCTCATCTATGCTGCATCCAACGTAGAATCTGGGGTCCCTGCCAGGTTTAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCAGCCTCAACATCCATCCTGTGGAGGAGGATGATATTGCAATGTATTTCTGTCAGCAAAGTAGGAAGGTTCCTTACACGTTCGGAGGGGGGACCAAGCTGGAAATAAAAC
モノクローナル抗体クローンB1-15C2:
H鎖可変領域アミノ酸配列(図7):配列番号6
1-MAWVWTLLFLMAAAQSAQAQIQLVQSGPERKKPGETVKISCKASGYTFTSYGMNWVKQAPGKGLKWMGWLSSNIGESTYADDFKGRFAFSLETSASTAYLQINNVKNEDTATYFCARGAYYRNYYYAMDSWGQGTSVTVSS-141
H鎖可変領域塩基配列:配列番号7
ATGGCTTGGGTGTGGACCTTGCTATTCCTGATGGCAGCTGCCCAAAGTGCCCAAGCACAGATCCAGTTGGTGCAGTCTGGACCTGAGCGGAAGAAGCCTGGAGAGACAGTCAAGATCTCCTGCAAGGCTTCTGGGTATACCTTCACAAGCTATGGGATGAACTGGGTGAAGCAGGCTCCAGGAAAGGGTTTAAAGTGGATGGGCTGGCTAAGCTCCAACATTGGAGAGTCAACATATGCTGATGACTTCAAGGGACGGTTTGCCTTCTCTTTGGAAACCTCTGCCAGCACTGCCTATTTGCAGATCAACAACGTCAAAAATGAGGACACGGCTACATATTTCTGTGCAAGAGGGGCCTATTATAGGAACTATTACTATGCTATGGACTCGTGGGGTCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCCTCA
L鎖可変領域アミノ酸配列(図8):配列番号8
1-MKLPVRLLVLMFWIPASSSDVLMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQTIVHSNGNTYLDWYLQKPGQSPKLLIYKVSNRFSGVPDRFTGSGSGTDFTLKISSVEAEDLGVYYCFQGSHVPYTFGGGTKLEIK-131
L鎖可変領域塩基配列:配列番号9
ATGAAGTTGCCTGTTAGGCTGTTGGTGCTGATGTTCTGGATTCCTGCTTCCAGCAGTGATGTTTTGATGACCCAAACTCCACTCTCCCTGCCTGTCAGTCTTGGAGATCAAGCCTCCATCTCTTGCAGATCTAGTCAGACCATTGTACATAGTAATGGAAACACCTATTTAGACTGGTACCTGCAGAAACCAGGCCAGTCTCCAAAGCTCCTGATCTACAAAGTTTCCAACCGATTTTCTGGGGTCCCAGACAGGTTCACTGGCAGTGGATCAGGGACAGATTTCACACTCAAGATCAGCAGCGTGGAGGCTGAGGATCTGGGAGTTTATTACTGCTTTCAAGGGTCACATGTTCCGTACACGTTCGGAGGGGGGACCAAGCTGGAAATAAAAC
本発明のモノクローナル抗体分子の一実施態様として、モノクローナル抗体1B(クローンA2-10C1関連)、およびモノクローナル抗体2B(クローンB1-15C2関連)は、H鎖可変領域アミノ酸配列およびL鎖可変領域アミノ酸配列として、特定アミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有することができる。80%は、好ましくは85%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%である。H鎖可変領域およびL鎖可変領域は、「フレームワーク領域」(FRまたはFW)と命名されるより保存された領域が散りばめられた、「相補性決定領域」(CDR)と命名される高頻度可変性の領域へと細分することができることからの変異体である。
ある形態では、イヌHER2タンパク質に対するモノクローナル抗体分子のL鎖またはH鎖可変フレームワークはヒトコンセンサス配列に由来するL鎖もしくはH鎖可変フレームワーク残基の少なくとも80%、85%、87%、90%、93%、95%、97%、99%を含むL鎖またはH鎖可変フレームワークを含むことができる。
<核酸分子>
本発明は別の態様として、本発明の抗体分子の抗体重鎖または軽鎖可変領域をコードする単離された核酸分子、具体的には重鎖CDR1、CDR2およびCDR3をコードする単離された核酸分子であって、それぞれ配列番号20、21および22(クローンA2-10C1関連)、またはそれぞれ配列番号23、24および25(クローンB1-15C2関連)のヌクレオチド配列を含む核酸分子、および/または軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3をコードする単離された核酸分子であって、それぞれ配列番号26、配列GCTGCATCCおよび配列番号27(クローンA2-10C1関連)、あるいはそれぞれ配列番号28、配列AAAGTTTCCおよび配列番号29(クローンB1-15C2関連)のヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。
クローンA2-10C1 H鎖CDR1塩基配列:配列番号20
GGCTACACATTCACCAGATACTGG
クローンA2-10C1 H鎖CDR2塩基配列:配列番号21
ATTAGTCCTAATAGTGGTACT
クローンA2-10C1 H鎖CDR3塩基配列:配列番号22
TGTGCAAGAGAGGACTATGGTGGTAGGTTCGGCTACTTCGATGTCTGG
クローンB1-15C2 H鎖CDR1塩基配列:配列番号23
GGGTATACCTTCACAAGCTATGGG
クローンB1-15C2 H鎖CDR2塩基配列:配列番号24
CTAAGCTCCAACATTGGAGAGTCA
クローンB1-15C2 H鎖CDR3塩基配列:配列番号25
TGTGCAAGAGGGGCCTATTATAGGAACTATTACTATGCTATGGACTCGTGG
クローンA2-10C1 L鎖CDR1塩基配列:配列番号26
GAAAGTGTTGAATATTTTGGCACAAGTTTA
クローンA2-10C1 L鎖CDR2塩基配列:配列
GCTGCATCC
クローンA2-10C1 L鎖CDR3塩基配列:配列番号27
TGTCAGCAAAGTAGGAAGGTTCCTTACACGTTC
クローンB1-15C2 L鎖CDR1塩基配列:配列番号28
CAGACCATTGTACATAGTAATGGAAACACCTAT
クローンB1-15C2 L鎖CDR2塩基配列:配列
AAAGTTTCC
クローンB1-15C2 L鎖CDR3塩基配列:配列番号29
TGCTTTCAAGGGTCACATGTTCCGTACACGTTC
本発明において、用語「核酸分子」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」または「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用される。これらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはこれらのアナログのいずれかである、いずれかの長さのヌクレオチドのポリマー型を意味する。
別の態様として、本発明は、本発明の核酸分子を含む発現ベクター、および本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。
ある態様では、ベクターは、本明細書に記載の抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含む。ある態様では、ベクターは、本明細書に記載のヌクレオチド配列を含む。ベクターとしては、限定されないが、ウイルス、プラスミド、コスミド、ラムダファージ、または酵母人工染色体(YAC)が挙げられる。さらに、DNAが染色体に安定的に統合された細胞を、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つまたは複数のマーカーを導入することにより選択してもよい。マーカーは、栄養要求性宿主に、例えば原栄養性、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質)、または銅などの重金属への耐性を付与し得る。選択性マーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接連結させてもよく、または同じ細胞に共形質転換により導入してもよい。さらに追加的なエレメントが、mRNAの最適な合成のために必要であり得る。これらのエレメントは、スプライスシグナル、転写プロモーター、エンハンサー、および終止シグナルを含んでもよい。
ある態様では、宿主細胞は抗体分子をコードする核酸分子を含むように遺伝子的に改変されている。ある態様では、宿主細胞は、発現カセットの使用によって遺伝子的に改変されている。表現「発現カセット」は、配列が適合する宿主において遺伝子の発現に影響を与えることのできるヌクレオチド配列を指す。そのようなカセットは、プロモーター、イントロン有りまたは無しのオープンリーディングフレーム、および終止シグナルを含んでもよい。発現を有効にするために必要なさらなる因子、例えば誘導性プロモーターを使用してもよい。細胞は、真核細胞、細菌細胞、昆虫細胞またはヒト細胞であり得る。適切な真核細胞には、限定されないが、Vero細胞、HeLa細胞、CHO細胞等が含まれる。適切な昆虫細胞としては、限定されないが、Sf9細胞が挙げられる。別の態様として、本発明は、遺伝子発現に適した条件下、本発明の宿主細胞を培養することを含む、抗体分子またはその断片を産生する方法に関する。
本発明は別の態様として、本発明の単離された抗体分子またはその誘導体を含む、イヌHER2陽性エクソソームを定量するためのキットに関する。
本発明のキットは、次に挙げる1つまたは複数の他の要素を含むことができる:
使用説明書;他の試薬、例えば、抗体を標識するための薬剤。
本発明のキットは好ましくは、標準試薬を含有する。標準試薬としては、例えば、イヌHER2タンパク質を挙げることができる。
以下、本発明を実施例により、詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものでなく、単なる例示であることに留意すべきである。
実施例1
抗イヌHER2モノクローナル抗体の調製
1-1:抗原の調製
イヌHER2タンパク質の細胞外領域(Cys311~Gly462)をコードするcDNAを全合成し、そのN末端側にヒト免疫グロブリンのシグナル配列、ならびにC末端側にウサギ免疫グロブリンのFc領域およびヒスチジン・タグを接続した形のcDNAを発現ベクターpD603(ATUM社製)に挿入し、プラスミドpD603-hIg-dHER2-rFcを構築した。このプラスミドをHEK293細胞由来の浮遊培養細胞であるExpi293細胞(サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)にトランスフェクトし、7日後の培養液を回収した。培養液からは直接ニッケルカラム(サイティヴァ社製)によりウサギFc融合イヌHER2タンパク質を精製した。合計720mLの培養液から5.5mgのウサギFc融合イヌHER2タンパク質が精製された。
参考までに、イヌHER2タンパク質における細胞外ドメインのほか、膜貫通ドメインと細胞内ドメインも含まれるHER2の全長DNA配列を、配列番号1に示す。
1-2:モノクローナル抗体の調製
ウサギFc融合イヌHER2タンパク質を、初回免疫には完全フロイント・アジュバント(ベクトン・ディッキンソン社製)と、2回目以降は不完全フロイント・アジュバント(ベクトン・ディッキンソン社製)と等量混和することにより、免疫原としての乳剤を調製した。
モノクローナル抗体は、K. Watanabe et al., Vasohibin as an endothelium-drived negative feedback regulator of angiogenesis, J. Clin. Inves. 114(2004), 898-907に記載されている方法で作製した。即ち、A-JacksonマウスおよびBALB/cマウスに、投与1回につき、一匹あたり100μgのFc融合タンパク質を皮下と腹腔内に等量に分けて投与した。その後、抗体価の上昇が確認され最終のブースター(細胞融合の4日前)を行ったマウスより脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。脾細胞とミエローマ細胞(P3U1)との細胞融合は、K. Watanabe et al., Vasohibin as an endothelium-drived negative feedback regulator of angiogenesis, J. Clin. Inves. 114(2004), 898-907に記載されている方法で行った。
1-3:モノクローナル抗体の評価
抗血清とハイブリドーマ上清の抗体価の評価(1次評価)は下記に記述するDELFIA(Dissociation Enhanced Lanthanide Fluoroimmunoassay)法にて行った。詳細には、ヤギ抗マウスIgG抗体を固相した96穴マイクロプレートに、抗血清またはハイブリドーマ上清を添加し、さらにビオチン(サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)を標識したイヌHER2タンパク質とユーロピウム標識ストレプトアビジン(パーキンエルマー社製)を混合攪拌後、室温で2時間反応させた。反応後、洗浄液(0.01%Tween20と0.05%ProClin150を含む生理食塩水)にて3回洗浄し、100μl増強試薬(Delfia Enhancement Solution、 パーキンエルマー社製)を加え、5分間撹拌した。時間分解蛍光強度をNivo (Perkin Elmer社製)にて測定し、抗血清やハイブリドーマ上清を未添加の場合に得られるシグナルの3倍を超えるシグナル強度を示す場合を陽性と判断し、3匹のマウスから作製したハイブリドーマより合計20クローンのハイブリドーマを選択した。
担がん犬の血液中に存在するHER2タンパク質がエクソソーム表面に存在している場合、HER2陽性エクソソーム表面膜面上のHER2タンパク質の立体構造と強く反応する抗体を取得することが望ましい。上記の20クローンのハイブリドーマが産生する抗体について、HER2を発現するイヌ乳腺腫瘍由来AZACB細胞株(コスモ・バイオ社製)およびイヌ尿路上皮がん由来AZACU細胞株(コスモ・バイオ社製)の培養液より調製したエクソソームとの反応性を調べた。エクソソームはこれらの細胞株を無血清培地であるAdvanced DMEM(サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)で2日間培養した培養上清を2,000 x gで10分遠心したのち、孔径0.2μmのaPES膜(サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)で濾過し、ベックマン・コールター社製SW41Tiスイングローターにて35,000rpmで70分超遠心し、沈殿物をPBSで洗浄後、再度同じ条件で超遠心することにより調製した。ヤギ抗マウスIgG抗体を固相した96穴マイクロプレートに、ハイブリドーマ上清を添加し、室温で2時間反応させた。反応後、前述の洗浄液にて3回洗浄し、AZACB細胞株、AZACU細胞株あるいは陰性対照とするExpi293細胞由来エクソソームをウエルあたり2.3μg添加し、室温で3時間攪拌反応した。3回洗浄後、ビオチン標識抗CD9抗体(ハカレル社製)とユーロピウム標識ストレプトアビジン(パーキンエルマー社製)を混合攪拌後、室温で2時間反応させた。3回洗浄後、増強試薬(DELFIA Enhancement Solution, パーキンエルマー社製)を100μL添加し、室温で5分間撹拌後、各ウエルの時間分解蛍光強度を測定した。得られた結果を図1に示す。これにより、表1に示される、陰性対照に比べAZACB細胞あるいはAZACU細胞に対して強く反応するハイブリドーマ10クローンを選択した。
表1:選択したハイブリドーマ
Figure 2024043214000001
実施例2
サンドイッチELISAの構築
2-1:抗体の組み合わせの検討
実施例1-3にて特定した10クローンのモノクローナル抗体を用いたイヌHER2タンパク質を定量するためのサンドイッチELISAについて、固相抗体と標識抗体としての10クローンすべての組み合わせによる検出感度を検討した。詳細には、96穴マイクロプレートに固相した抗体の10クローン(B1-13E12、B1-15C2、A2-1G6、A2-2E7、A2-3G9、A2-5E9、A2-9C2、A2-9G12、A2-10C1、あるいはA3-3A4)それぞれにウエルあたり0.5ngのイヌHER2タンパク質を添加し、室温で2時間反応した。洗浄液(0.01%Tween20と0.05%Proclin150を含むリン酸緩衝液)で3回洗浄後、10クローン(B1-13E12、B1-15C2、A2-1G6、A2-2E7、A2-3G9、A2-5E9、A2-9C2、A2-9G12、A2-10C1、およびA3-3A4)のビオチン標識抗体それぞれと室温2時間反応させた。3回洗浄後、さらにペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(R&D社製)と室温で20分間反応を行なった。3回洗浄後、TMB基質液(モス社製)を添加し、発色を確認した後、2N硫酸で反応を止め、450nmにおける吸光度を測定した。得られた結果を図2Aおよび図2Bに示す。いくつかの組み合わせで高い反応性が確認でき、その中から、固相抗体をB1-15C2かつ標識抗体をA2-1G6(組み合わせ1)、および固相抗体をA2-10C1かつ標識抗体をB1-15C2(組み合わせ2)とする2通りの組み合わせが最も高い反応性を有している。よって、これらの組み合わせを以下の実験にて使用した。
2-2:ELISAにおける添加回収試験
実施例2-1で選択したELISAにおいて、健常イヌ血清の存在下における抗体とイヌHER2タンパク質の結合特異性を評価するために添加回収試験を行った。測定方法の詳細は、標識抗体に関して高感度化を図るため、ビオチン標識抗体からペルオキシダーゼ標識キット(dojindo社製)によるHRP(horseradish peroxidase)標識抗体へ変更して行った点を除き、実施例2-1に記載した通りである。具体的には、組み合わせ1あるいは組み合わせ2のELISAに健常犬由来プール血清(大阪公立大学大学院獣医学研究科獣医外科学教室提供)をウエルあたり0、2.5、5、10、25、50μLとイヌHER2タンパク質を濃度が150、600、2400pg/mLになるように加えて測定し、血清0μL(無添加)時に得られたシグナルに対して各濃度の血清を加えた際に得られたシグナルの割合(回収率)を求めた。得られた結果を図3に示す。組み合わせ1では血清添加量が10μLの場合に150pg/mLの回収率が14.5%と低値を示したのに対し、組み合わせ2では血清添加量が10μLの場合の回収率は93.4~102.3%と良好であった。
2-3:ELISAにおける希釈直線性試験
組み合わせ1および組み合わせ2のELISAにおいて、バッファー系および血清存在下での標準曲線の希釈直線性を調べ、検出されるHER2測定値に対する血清成分の影響について検討した。具体的には、アッセイバッファー(1%ウシ血清アルブミン、0.15M NaCl、0.1M NaH2PO4、0.1%プロクリン)あるいは健常イヌ血清に3000pg/mLの濃度でイヌHER2タンパク質を加え、アッセイバッファーで2倍ずつ希釈した際に、それぞれのELISAでの検量線が直線を示すかどうかを調べた。得られた結果を図4Aおよび図4Bに示す。組み合わせ1ではHER2タンパク質が500pg/mL以下の低濃度になるまで希釈しても血清存在下での測定値はバッファー系での測定値と大きく乖離したのに対し、組み合わせ2では1500pg/mLまでほぼ一致しており、測定系に対する血清成分の影響が少ないことが示された。
実施例3
抗イヌHER2タンパク質モノクローナル抗体の構造解析
3-1:クローンA2-10C1およびクローンB1-15C2抗体の構造解析
実施例2-2および実施例2-3の結果より、イヌ血清に含まれるHER2タンパク質を検出するためのELISAとしては組み合わせ2が適当であると考えられた。また、実施例2-1の結果より、イヌ血清に含まれるHER2タンパク質がエクソソームの表面に発現しているものであっても、組み合わせ2によって検出可能であると考えられる。組み合わせ2に用いたモノクローナル抗体であるクローンA2-10C1およびクローンB1-15C2のH鎖可変領域およびL鎖可変領域の構造解析をRepertoire Genesis株式会社のバイオインフォマティクス解析システムにより行った。それぞれの抗体を産生するハイブリドーマから抽出したメッセンジャーRNAを鋳型にしてcDNAを合成し、次世代シーケンサーによりH鎖可変領域およびL鎖可変領域の遺伝子配列を決定し、各配列をアミノ酸配列に置換した。
クローンA2-10C1ついては、H鎖可変領域は図5(アミノ酸配列:配列番号2および塩基配列:配列番号3)に示し、L鎖可変領域は図6(アミノ酸配列:配列番号4および塩基配列:配列番号5)に示す。クローンB1-15C2については、H鎖可変領域は図7(アミノ酸配列:配列番号6および塩基配列:配列番号7)に示し、L鎖可変領域は図8(アミノ酸配列:配列番号8および塩基配列:配列番号9)に示す。
実施例4
担がん犬の検体の測定
4-1:尿路上皮がんのイヌ、乳腺腫瘍のイヌ、健常犬の血清の測定
イヌのがんにおいてHER2タンパク質が高発現しているとされている尿路上皮がんのイヌ6症例、乳腺腫瘍のイヌ4症例、および健常犬16例の血清(大阪公立大学大学院獣医学研究科獣医外科学教室提供)各10μLについて、組み合わせ2(固相抗体A2-10C1;標識抗体B1-15C2)のELISAでHER2タンパク質量を測定した。得られた結果を図9に示す。その結果、乳腺腫瘍のイヌ4症例のうち2症例が極めて高値(9250、7280pg/mL)を示し、他の症例はすべて2100pg/mL以下であった。したがって、イヌHER2 ELISAで血清を測定することによって、イヌ乳腺腫瘍を診断することが可能であることが示唆された。
本発明は別の形態として、以下の態様を含む。
<検出方法>
[101]
イヌHER2タンパク質を認識する抗体を用いる、イヌHER2陽性腫瘍を検出する方法。
[102]
イヌHER2タンパク質を認識する抗体が、イヌHER2陽性エクソソームまたは遊離型イヌHER2タンパク質を認識する抗体である、[101]記載の方法。
[103]
イヌHER2陽性エクソソームの表面抗原を認識する抗体をさらに用いる、[101]または[102]記載の方法。
[104]
イヌHER2タンパク質を認識する抗体が、
モノクローナル抗体1A:
(i)配列番号10のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号11のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号12のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、ならびに
(ii)配列番号13のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号14のL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号15のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体1B:
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体1C-1:
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;および
モノクローナル抗体1C-2:
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;ならびに
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;ならびに、
モノクローナル抗体2A:
(i)配列番号16のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号17のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号18のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、ならびに
(ii)配列番号19のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号20のL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号21のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体2B:
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体2C-1:
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体;ならびに、
モノクローナル抗体2C-2:
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;
の中から選ばれるモノクローナル抗体分子、変異モノクローナル抗体分子、またはその誘導体である、[101]から[103]のいずれか記載の方法。
[105]
モノクローナル抗体分子または変異モノクローナル抗体分子の誘導体が、Fab、F(ab')2、Fvまたは単鎖Fv断片(scFv)である、[101]から[104]のいずれか記載の方法。
[106]
検出を、免疫沈降によって行う、[101]から[105]のいずれか記載の方法。
[107]
[101]から[106]のいずれか記載の方法によって、イヌHER2陽性腫瘍を有するイヌ被検体を選別する方法。
<モノクローナル抗体分子>
[108]
モノクローナル抗体1A:
(i)配列番号10のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号11のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号12のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、ならびに
(ii)配列番号13のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号14のL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号15のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体1B:
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体1C-1:
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;および
モノクローナル抗体1C-2:
(i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;ならびに
(ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;
の中から選ばれる、イヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離されたモノクローナル抗体分子、変異モノクローナル抗体分子、またはその誘導体。
[109]
モノクローナル抗体2A:
(i)配列番号16のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号17のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号18のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、ならびに
(ii)配列番号19のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号20のL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号21のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体2B:
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含むモノクローナル抗体分子;
モノクローナル抗体2C-1:
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体;
モノクローナル抗体2C-2:
(i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;および
(ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;
の中から選ばれる、イヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離されたモノクローナル抗体分子、変異モノクローナル抗体分子、またはその誘導体。
[110]
Fab、F(ab')2、Fvまたは単鎖Fv断片(scFv)である、[108]または[109]記載のモノクローナル抗体分子または変異モノクローナル抗体分子の誘導体。
<核酸分子>
[111]
[108]または[109]記載のモノクローナル抗体分子または変異モノクローナル抗体分子の重鎖または軽鎖可変領域をコードする単離された核酸分子。
[112]
重鎖CDR1、CDR2およびCDR3をコードする単離された核酸分子であって、それぞれ配列番号20、21および22、またはそれぞれ配列番号23、24および25のヌクレオチド配列を含む、[111]記載の核酸分子。
[1013]
軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3をコードする単離された核酸分子であって、それぞれ配列番号26、配列GCTGCATCCおよび配列番号27、またはそれぞれ配列番号28、配列AAAGTTTCCおよび配列番号29のヌクレオチド配列を含む、[111]または[112]記載の核酸分子。
[114]
[111]から[113]のいずれか記載の核酸分子を含む発現ベクター。
[115]
[114]記載のベクターを含む宿主細胞。
[116]
遺伝子発現に適した条件下、[115]記載の宿主細胞を培養することを含む、抗体分子またはその断片を産生する方法。
<キット>
[117]
[18]または[109]記載の単離されたモノクローナル抗体分子または変異モノクローナル抗体分子、またはその誘導体を含む、イヌHER2陽性エクソソームあるいは遊離型イヌHER2タンパク質を定量するためのキット。

Claims (17)

  1. イヌHER2タンパク質を認識する抗体を用いる、イヌHER2陽性腫瘍を検出する方法。
  2. イヌHER2タンパク質を認識する抗体が、イヌHER2陽性エクソソームまたは遊離型イヌHER2タンパク質を認識する抗体である、請求項1記載の方法。
  3. イヌHER2陽性エクソソームの表面抗原を認識する抗体をさらに用いる、請求項2記載の方法。
  4. イヌHER2タンパク質を認識する抗体が、
    モノクローナル抗体1A:
    (i)配列番号10のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号11のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号12のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、ならびに
    (ii)配列番号13のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号14のL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号15のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
    を含むモノクローナル抗体分子;
    モノクローナル抗体1B:
    (i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
    (ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
    を含むモノクローナル抗体分子;
    モノクローナル抗体1C-1:
    (i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
    (ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
    を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;および
    モノクローナル抗体1C-2:
    (i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;ならびに
    (ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
    を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;ならびに、
    モノクローナル抗体2A:
    (i)配列番号16のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号17のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号18のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、ならびに
    (ii)配列番号19のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号20のL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号21のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
    を含むモノクローナル抗体分子;
    モノクローナル抗体2B:
    (i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
    (ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
    を含むモノクローナル抗体分子;
    モノクローナル抗体2C-1:
    (i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
    (ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
    を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体;ならびに、
    モノクローナル抗体2C-2:
    (i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;および
    (ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
    を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;
    の中から選ばれるモノクローナル抗体分子、変異モノクローナル抗体分子、またはその誘導体である、請求項1記載の方法。
  5. モノクローナル抗体分子または変異モノクローナル抗体分子の誘導体が、Fab、F(ab')2、Fvまたは単鎖Fv断片(scFv)である、請求項4記載の方法。
  6. 検出を、免疫沈降によって行う、請求項1記載の方法。
  7. 請求項1記載の方法によって、イヌHER2陽性腫瘍を有するイヌ被検体を選別する方法。
  8. モノクローナル抗体1A:
    (i)配列番号10のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号11のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号12のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、ならびに
    (ii)配列番号13のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号14のL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号15のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
    を含むモノクローナル抗体分子;
    モノクローナル抗体1B:
    (i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
    (ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
    を含むモノクローナル抗体分子;
    モノクローナル抗体1C-1:
    (i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
    (ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
    を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;および
    モノクローナル抗体1C-2:
    (i)配列番号2のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;ならびに
    (ii)配列番号4のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
    を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体1Aまたはモノクローナル抗体1Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;
    の中から選ばれる、イヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離されたモノクローナル抗体分子、変異モノクローナル抗体分子、またはその誘導体。
  9. モノクローナル抗体2A:
    (i)配列番号16のH鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号17のH鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号18のH鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、ならびに
    (ii)配列番号19のL鎖可変領域CDR1アミノ酸配列、配列番号20のL鎖可変領域CDR2アミノ酸配列および配列番号21のL鎖可変領域CDR3アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
    を含むモノクローナル抗体分子;
    モノクローナル抗体2B:
    (i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
    (ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
    を含むモノクローナル抗体分子;
    モノクローナル抗体2C-1:
    (i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域、および
    (ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域、
    を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子またはその誘導体;
    モノクローナル抗体2C-2:
    (i)配列番号6のH鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク(FW)領域を含むH鎖可変領域;および
    (ii)配列番号8のL鎖可変領域アミノ酸配列において、それと比較して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1個のフレームワーク領域を含むL鎖可変領域、
    を含む変異モノクローナル抗体分子であって、該変異モノクローナル抗体分子はモノクローナル抗体分子モノクローナル抗体2Aまたはモノクローナル抗体2Bが有している結合特性および機能と同等の結合特定および機能を有する該変異モノクローナル抗体分子;
    の中から選ばれる、イヌHER2タンパク質を特異的に認識する単離されたモノクローナル抗体分子、変異モノクローナル抗体分子、またはその誘導体。
  10. Fab、F(ab')2、Fvまたは単鎖Fv断片(scFv)である、請求項8または9記載のモノクローナル抗体分子または変異モノクローナル抗体分子の誘導体。
  11. 請求項8または9記載のモノクローナル抗体分子または変異モノクローナル抗体分子のH鎖またはL鎖可変領域をコードする単離された核酸分子。
  12. H鎖CDR1、CDR2およびCDR3をコードする単離された核酸分子であって、それぞれ配列番号20、21および22、またはそれぞれ配列番号23、24および25のヌクレオチド配列を含む、請求項11記載の核酸分子。
  13. L鎖CDR1、CDR2およびCDR3をコードする単離された核酸分子であって、それぞれ配列番号26、配列GCTGCATCCおよび配列番号27、またはそれぞれ配列番号28、配列AAAGTTTCCおよび配列番号29のヌクレオチド配列を含む、請求項11記載の核酸分子。
  14. 請求項11から13のいずれか記載の核酸分子を含む発現ベクター。
  15. 請求項14記載のベクターを含む宿主細胞。
  16. 遺伝子発現に適した条件下、請求項15記載の宿主細胞を培養することを含む、抗体分子またはその断片を産生する方法。
  17. 請求項8または9記載の単離されたモノクローナル抗体分子または変異モノクローナル抗体分子、またはその誘導体を含む、イヌHER2陽性エクソソームあるいは遊離型イヌHER2タンパク質を定量するためのキット。
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