JP2024041001A - 粘着シート - Google Patents

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Abstract

【課題】軽圧着接着性に優れる粘着シートを提供する。【解決手段】粘着剤層を有する粘着シートが提供される。上記粘着剤層は、アクリル系ポリマーと、アクリル系オリゴマーとを含む。上記アクリル系ポリマーは、炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、反応性官能基を有するモノマーと、を含むモノマー成分の重合物である。また、上記モノマー成分は、前記反応性官能基を有するモノマーを3重量%以上含む。そして、上記粘着剤層は、-20℃での貯蔵弾性率が220MPa未満である。【選択図】図1

Description

本発明は、粘着シートに関する。
一般に粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により被着体に接着する性質を有する。かかる性質を活かして、粘着剤は、スマートフォン等の携帯電子機器や家電製品から自動車、OA機器等の各種産業分野において、典型的には粘着剤層を含む粘着シートの形態で、部品の接合や表面保護等の目的で広く利用されている。粘着シートに関する技術文献としては、特許文献1,2が挙げられる。特許文献1,2には、ヘプチルアクリレートをモノマー成分として用いて重合されたアクリル系ポリマーを含む粘着剤が記載されている。
国際公開第2021/125247号 国際公開第2021/125278号
一般に、粘着シートは、十分な圧力で被着体に圧着することで、所期の性能(接着力等)が発現するよう設計されている。しかし、粘着シートの適用箇所や使用態様等によっては、圧着時の圧力が小さい方が望ましいことがある。例えば、電子機器内の部材固定に用いられる粘着シートでは、電子機器を構成する部材に精密機器が含まれ得るため、精密機器への負荷となるような重圧着による貼付けは望ましくない。かかる用途に用いられる粘着シートには、軽圧着で貼り付けられる場合であっても十分な接着力を発揮する性能を有することが求められ得る。軽圧着条件でも、十分な圧力で圧着した場合の接着力と遜色のない接着力(軽圧着接着性)を発揮し得る粘着シートを実現できれば、上記用途に好適な粘着シートとして利用することができる。また、上記のような軽圧着接着性に優れる粘着シートによると、圧着条件の制限が少なく、粘着シートの適用範囲が拡大され、有益である。
本発明は、上記の事情に鑑みて創出されたものであり、軽圧着接着性に優れる粘着シートを提供することを目的とする。
この明細書によると、粘着剤層を有する粘着シートが提供される。上記粘着剤層は、アクリル系ポリマーと、アクリル系オリゴマーとを含む。上記アクリル系ポリマーは、炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、反応性官能基を有するモノマーと、を含むモノマー成分の重合物である。また、上記モノマー成分は、前記反応性官能基を有するモノマーを3重量%以上含む。そして、上記粘着剤層は、-20℃での貯蔵弾性率が220MPa未満である。上記構成の粘着シートによると、軽圧着条件でも、十分な圧力で圧着した場合と比べて同等の接着性(軽圧着接着性)が実現される。
いくつかの態様において、上記炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、炭素原子数が7または8の鎖状アルキル基を有するアルキルアクリレートである。炭素原子数が7または8の鎖状アルキル基を有するアルキルアクリレートの重合物を含む粘着剤によると、-20℃での貯蔵弾性率を低下させやすく、ここに開示される技術による効果が好ましく実現される。
いくつかの好ましい態様において、上記炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートはヘプチルアクリレートを含む。モノマー成分としてヘプチルアクリレートを含むアクリル系ポリマーを用いることにより、-20℃貯蔵弾性率が所定値以下となる柔軟な粘着剤を形成しやすく、軽圧着接着性に優れる粘着剤が得られやすい。
いくつかの好ましい態様において、上記炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を含む。ここに開示される技術によると、モノマー成分として2EHAを含むアクリル系ポリマーを用いる組成で、軽圧着接着性に優れる粘着剤を得ることができる。
いくつかの態様において、上記反応性官能基を有するモノマーとしては、カルボキシ基含有モノマーおよび水酸基含有モノマーから選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。カルボキシ基含有モノマーや水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーによると、適度に向上した凝集力に基づき、良好な接着信頼性が得られやすい。
いくつかの態様において、上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は30万以上150万以下の範囲内である。上記モノマー組成を有し、かつ上記範囲のMwを有するアクリル系ポリマーを使用することにより、ここに開示される技術による効果は好ましく実現される。
いくつかの態様において、上記アクリル系オリゴマーのガラス転移温度(Tg)は20℃以上200℃以下である。上記範囲内で適当なTgを有するアクリル系オリゴマーを適量使用することにより、軽圧着接着力および通常圧着接着力をバランスよく向上することができる。
いくつかの態様において、上記粘着剤層における上記アクリル系オリゴマーの含有量は、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して30重量部未満である。上記範囲でアクリル系オリゴマーを適量使用することにより、軽圧着接着性に優れる粘着剤が得られやすい。
いくつかの好ましい態様において、上記粘着剤層は粘着付与樹脂をさらに含む。粘着付与樹脂を含ませることにより、アクリル系オリゴマーと粘着付与樹脂との併用の作用に基づき、軽圧着接着力を含む接着力を好ましく向上することができる。
ここに開示される粘着シートは、優れた軽圧着接着性を有するので、圧着時の圧力を制限することが望ましい用途に好ましく利用され得る。例えば、家電製品や、OA機器、スマートフォン等の携帯電子機器を含む電子機器における部材の固定に好適である。上記より、この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着シートが用いられた電子機器、換言すると、当該粘着シートを含む電子機器が提供される。
一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。 他の一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。 他の一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。 粘着シートを含んで構成された携帯電子機器の一例を模式的に示す正面図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
本明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamentals and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。
この明細書において、バイオマス由来の炭素とは、バイオマス材料、すなわち再生可能な有機資源に由来する材料に由来する炭素(再生可能炭素)を意味する。上記バイオマス材料とは、典型的には、太陽光と水と二酸化炭素とが存在すれば持続的な再生産が可能な生物資源(典型的には、光合成を行う植物)に由来する材料のことをいう。したがって、採掘後の使用によって枯渇する化石資源に由来する材料(化石資源系材料)は、ここでいうバイオマス材料の概念から除かれる。粘着剤層および粘着シートのバイオマス炭素比、すなわち該粘着剤層および粘着シートに含まれる全炭素に占めるバイオマス由来炭素の割合は、ASTM D6866に準拠して測定される質量数14の炭素同位体含有量から見積もることができる。
<粘着シートの構成>
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層を含んで構成されている。上記粘着シートは、例えば、粘着剤層の一方の表面により構成された第1粘着面と、該粘着剤層の他方の表面により構成された第2粘着面と、を備える基材レス両面粘着シートの形態であり得る。あるいは、ここに開示される粘着シートは、上記粘着剤層が支持基材の片面または両面に積層された基材付き粘着シートの形態であってもよい。以下、支持基材のことを単に「基材」ということもある。なお、ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
一実施形態に係る粘着シートの構造を図1に模式的に示す。この粘着シート1は、粘着剤層21からなる基材レスの両面粘着シートとして構成されている。粘着シート1は、粘着剤層21の一方の表面(第1面)により構成された第1粘着面21Aと、粘着剤層21の他方の表面(第2面)により構成された第2粘着面21Bとを、被着体の異なる箇所に貼り付けて用いられる。粘着面21A,21Bが貼り付けられる箇所は、異なる部材のそれぞれの箇所であってもよく、単一の部材内の異なる箇所であってもよい。使用前(すなわち、被着体への貼付け前)の粘着シート1は、図1に示すように、第1粘着面21Aおよび第2粘着面21Bが、少なくとも粘着剤層21に対向する側がそれぞれ剥離面となっている剥離ライナー31,32によって保護された形態の剥離ライナー付き粘着シート100の構成要素であり得る。剥離ライナー31,32としては、例えば、シート状の基材(ライナー基材)の片面に剥離処理剤による剥離層を設けることで該片面が剥離面となるように構成されたものを好ましく使用し得る。あるいは、剥離ライナー32を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー31を用い、これと粘着シート1とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第2粘着面21Bが剥離ライナー31の背面に当接して保護された形態(ロール形態)の剥離ライナー付き粘着シートを構成していてもよい。
他の一実施形態に係る粘着シートの構造を図2に模式的に示す。この粘着シート2は、第1面10Aおよび第2面10Bを有するシート状の支持基材(例えば樹脂フィルム)10と、その第1面10A側に設けられた粘着剤層21とを備える基材付き片面粘着シートとして構成されている。粘着剤層21は、支持基材10の第1面10A側に固定的に、すなわち当該支持基材10から粘着剤層21を分離する意図なく、設けられている。使用前の粘着シート2は、図2に示すように、粘着剤層21の表面(粘着面)21Aが、少なくとも粘着剤層21に対向する側が剥離面となっている剥離ライナー31によって保護された形態の剥離ライナー付き粘着シート200の構成要素であり得る。あるいは、剥離ライナー31を省略し、第2面10Bが剥離面となっている支持基材10を用い、粘着シート2を巻回することにより粘着面21Aが支持基材10の第2面(背面)10Bに当接して保護された形態(ロール形態)であってもよい。
さらに他の一実施形態に係る粘着シートの構造を図3に模式的に示す。この粘着シート3は、第1面10Aおよび第2面10Bを有するシート状の支持基材(例えば樹脂フィルム)10と、その第1面10A側に固定的に設けられた第1粘着剤層21と、第2面10B側に固定的に設けられた第2粘着剤層22と、を備える基材付き両面粘着シートとして構成されている。使用前の粘着シート3は、図3に示すように、第1粘着剤層21の表面(第1粘着面)21Aおよび第2粘着剤層22の表面(第2粘着面)22Aが剥離ライナー31,32によって保護された形態の剥離ライナー付き粘着シート300の構成要素であり得る。あるいは、剥離ライナー32を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー31を用い、これと粘着シート3とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第2粘着面22Aが剥離ライナー31の背面に当接して保護された形態(ロール形態)の剥離ライナー付き粘着シートを構成していてもよい。上記他の一実施形態に係る基材付き粘着シートは、加工性や取扱い性等に優れるので好ましい。
なお、上記基材付き両面粘着シートにおいては、第1粘着剤層および第2粘着剤層の少なくとも一方の粘着剤層(例えば第1粘着剤層)が、以下で説明される粘着剤層であればよく、他方の粘着剤層(例えば第2粘着剤層)は、ここに開示される粘着剤層であってもよく、ここに開示される粘着剤層(具体的には、上記一方の粘着剤層。例えば第1粘着剤層)とは異なる組成を有する粘着剤層であってもよい。そのような他方の粘着剤層は、例えば、公知ないし慣用の粘着剤から形成されたものであり得る。
ここに開示される技術は、基材レス両面粘着シートを備える形態で好ましく実施され得る。基材レス両面粘着シートは、基材を有しない分、薄厚化することが可能であり、両面粘着シートが適用される製品の小型化、省スペース化に貢献し得る。また、基材レス粘着シートによると、粘着剤層の厚さを最大限利用して、軽圧着接着性を発現させることができる。
<粘着剤層>
(粘弾性特性)
ここに開示される粘着剤層(第1粘着剤層および第2粘着剤層を備える態様においては、第1粘着剤層および第2粘着剤層の少なくとも一方。特に断りがないかぎり以下同じ。)は、-20℃での貯蔵弾性率(-20℃貯蔵弾性率)が220MPa未満であることによって特徴付けられる。-20℃貯蔵弾性率が220MPa未満の粘着剤層を備える粘着シートによると、軽圧着条件でも、十分な圧力で圧着した場合と比べて同等の接着性(軽圧着接着性)が実現される。本発明者らの検討の結果、低温域の-20℃での貯蔵弾性率は、常温域の貯蔵弾性率よりも軽圧着接着性と高い相関を示すことが明らかになった(例えば、後述の比較例1と3との対比や、実施例3~4と実施例13~14との対比等)。そして、さらに検討を進めた結果、所定のモノマー組成を有するアクリル系ポリマーとアクリル系オリゴマーとを含む粘着剤の-20℃貯蔵弾性率を220MPa未満とすることにより、優れた軽圧着接着性が得られることを確認し、本発明を完成するに至った。なお、上記-20℃貯蔵弾性率を有することによって優れた軽圧着接着性が得られる理由は、特に限定的に解釈されるものではないが、上記-20℃貯蔵弾性率を有する粘着剤は、圧着時の圧力が軽くても、被着体に対して良好な初期密着状態を発現しやすく、その結果、軽圧着接着力が高まり、通常圧着の場合と比べて遜色のない軽圧着接着性が実現されるものと考えられる。
いくつかの態様において、上記-20℃貯蔵弾性率は、200MPa以下であってもよく、150MPa以下でもよく、100MPa以下でもよく、80MPa以下でもよく、60MPa以下でもよく、50MPa以下でもよい。より優れた軽圧着接着性性を得る観点から、いくつかの好ましい態様において、上記-20℃貯蔵弾性率は、45MPa以下であり、より好ましくは40MPa以下、さらに好ましくは35MPa以下、特に好ましくは30MPa以下であり、25MPa以下であってもよく、20MPa以下でもよく、15MPa以下でもよく、10MPa以下でもよく、5MPa以下でもよい。上記-20℃貯蔵弾性率は、通常、凡そ0.1MPa以上であり、0.5MPa以上であってもよい。いくつかの好ましい態様において、上記-20℃貯蔵弾性率は、凡そ1MPa以上であり、3MPa以上であってもよく、5MPa以上でもよく、8MPa以上でもよく、10MPa以上でもよく、12MPa以上でもよい。-20℃貯蔵弾性率が高くなるほど、粘着剤層の凝集力は向上する傾向があり、例えば、加工性が向上する傾向がある。また、適度な凝集力を有することで良好な粘着特性(接着力等)が得られやすい傾向がある。他のいくつかの好ましい態様において、上記-20℃貯蔵弾性率は、凡そ15MPa以上であり、20MPa以上であってもよく、25MPa以上でもよく、30MPa以上でもよく、35MPa以上でもよい。さらに他のいくつかの態様において、上記-20℃貯蔵弾性率は、凡そ50MPa以上であり、100MPa以上であってもよく、150MPa以上でもよく、180MPa以上でもよく、200MPa以上でもよい。
特に限定するものではないが、粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率(23℃貯蔵弾性率)は、被着体への密着性等の観点から、いくつかの態様において、凡そ0.15MPa以下であり、好ましくは0.13MPa以下、より好ましくは0.12MPa以下、さらに好ましくは0.11MPa以下であり、0.10MPa未満であってもよい。上記23℃貯蔵弾性率を有することは、軽圧着接着性の点でも好ましい。上記23℃貯蔵弾性率は、0.09MPa以下であってもよく、0.08MPa以下でもよく、0.07MPa以下でもよい。また、いくつかの態様において、上記23℃貯蔵弾性率は、凡そ0.01MPa以上であり、凡そ0.03MPa以上であってもよい。いくつかの好ましい態様において、上記23℃貯蔵弾性率は、凡そ0.05MPa以上であり、0.07MPa以上であってもよい。23℃貯蔵弾性率が高くなるほど、粘着剤層の凝集力は向上する傾向があり、例えば、加工性が向上する傾向がある。また、適度な凝集力を有することで良好な粘着特性が得られやすい傾向がある。
ここに開示される技術において、粘着剤層の貯蔵弾性率(具体的には-20℃貯蔵弾性率および23℃貯蔵弾性率)は、動的粘弾性測定により求めることができる。具体的には、測定対象である粘着剤層(基材レス両面粘着シートの場合は、両面粘着シート)を複数枚重ね合わせることにより、厚さ約2mmの粘着剤層を作製する。この粘着剤層を直径7.9mmの円盤状に打ち抜いた試料をパラレルプレートで挟み込んで固定し、粘弾性試験機(例えば、ティー・エー・インスツルメント社製、ARESまたはその相当品)により以下の条件で動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率(具体的には-20℃貯蔵弾性率および23℃貯蔵弾性率)を求める。
・測定モード:せん断モード
・温度範囲 :-70℃~150℃
・昇温速度 :5℃/min
・測定周波数:1Hz
後述の実施例においても上記の方法で測定される。なお、測定対象である粘着剤層としては、対応する粘着剤組成物を層状に塗布し、乾燥または硬化することにより形成したものを使用してもよい。
(アクリル系ポリマー)
ここに開示される粘着シートを構成する粘着剤層はアクリル系ポリマーを含む。上記粘着剤層は、典型的にはアクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤層である。そのような粘着剤層は、アクリル系粘着剤層ともいう。なお、ベースポリマーとは、粘着剤層に含まれるゴム状ポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマー)の主成分をいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。また、粘着剤および粘着剤層に含まれ得る成分に関する下記の説明は、特に断りがないかぎり粘着剤(層)を形成するために用いられる粘着剤組成物にも適用可能である。
また、本明細書において、「アクリル系ポリマー」とは、該ポリマーを構成するモノマー単位として、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を含む重合物をいう。以下、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを「アクリル系モノマー」ともいう。したがって、この明細書におけるアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーとして定義される。なお、この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含むモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1~20の鎖状アルキル基である。以下、このような炭素原子数の範囲を「C1-20」と表すことがある。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、RがC1-14(例えばC1-10、典型的にはC4-8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとすることが適当である。
がC1-20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分に占めるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、典型的には50重量%超であり、例えば70重量%以上とすることができ、85重量%以上としてもよく、90重量%以上(例えば90重量%超)としてもよく、92重量%以上としてもよく、94重量%以上としてもよく、95重量%超としてもよい。アルキル(メタ)アクリレートの割合の上限は、反応性官能基を有するモノマーを共重合する観点から、97重量%以下である。いくつかの好ましい態様において、モノマー成分中のアルキル(メタ)アクリレートの割合は、96重量%以下であり、95重量%以下であってもよく、94重量%以下でもよい。上記の範囲でアルキル(メタ)アクリレートの割合を制限することで、反応性官能基を有するモノマー等の共重合性モノマーの使用に基づく特性(例えば凝集力等)が好ましく発揮され得る。
また、ここに開示される技術で用いられるアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、炭素原子数7以上の鎖状アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、「C7+アルキル(メタ)アクリレート」を略す場合がある。)を含む。ここに開示される技術によると、モノマー成分としてC7+アルキル(メタ)アクリレートを含むアクリル系ポリマーを用いることにより、所望の-20℃貯蔵弾性率を得て、軽圧着接着性を実現することができる。C7+アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記C7+アルキル(メタ)アクリレートは、典型的には、炭素原子数7以上20以下の鎖状アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレート(すなわち、C7-20アルキル(メタ)アクリレート)である。上記C7-20アルキル(メタ)アクリレートの鎖状アルキル基の炭素原子数は、軽圧着接着性、他成分との相溶性等の観点から、18以下が適当であり、14以下であってもよく、好ましくは12以下、より好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下であり、特に好ましくは7である。いくつかの態様において、上記C7+アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数7以上(例えば7以上20以下、7以上18以下、7以上14以下、7以上12以下、7以上9以下、7または8)の鎖状アルキル基をエステル末端に有するアルキルアクリレートが好ましく用いられる。
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分に占めるC7+アルキル(メタ)アクリレートの割合は、典型的には50重量%超であり、例えば70重量%以上とすることができ、85重量%以上としてもよく、90重量%以上(例えば90重量%超)としてもよく、92重量%以上としてもよく、94重量%以上(例えば95重量%超)としてもよい。C7+アルキル(メタ)アクリレートの割合の上限は、反応性官能基を有するモノマーを共重合する観点から、97重量%以下である。いくつかの好ましい態様において、モノマー成分中のC7+アルキル(メタ)アクリレートの割合は、96重量%以下であり、95重量%以下であってもよく、94重量%以下でもよい。上記の範囲でC7+アルキル(メタ)アクリレートの割合を制限することで、反応性官能基を有するモノマー等の共重合性モノマーの使用に基づく特性(例えば凝集力等)が好ましく発揮され得る。
いくつかの態様において、上記式(1)中のRが水素原子であってRがC7-8の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレート(以下、単にC7-8アルキルアクリレートともいう。)を主モノマーとすることが好ましい。C7-8アルキルアクリレートをモノマー成分として含むアクリル系ポリマーによると、上記-20℃貯蔵弾性率の低い粘着剤層を形成しやすい。モノマー成分としてC7-8アルキルアクリレートを使用する場合、該モノマー成分中に含まれるC7-8アルキルアクリレートの割合は、例えば50重量%超であり、70重量%以上であることが好ましく、90重量%以上(例えば90重量%超)であってもよく、92重量%以上でもよく、94重量%以上(例えば95重量%超)でもよい。C7-8アルキルアクリレートの割合の上限は、反応性官能基を有するモノマーを共重合する観点から、97重量%以下である。いくつかの好ましい態様において、モノマー成分中のC7-8アルキルアクリレートの割合は、96重量%以下であり、95重量%以下であってもよく、94重量%以下でもよい。上記の範囲でC7-8アルキルアクリレートの割合を制限することで、反応性官能基を有するモノマー等の共重合性モノマーの使用に基づく特性(例えば凝集力等)が好ましく発揮され得る。C7-8アルキルアクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。C7-8アルキルアクリレートの好適例として、n-ヘプチルアクリレート(n-HpA)および2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。
いくつかの好ましい態様において、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は2EHAを含む。アクリル系ポリマーのモノマー成分に占める2EHAの割合は、例えば50重量%超であり、好ましくは70重量%以上であり、80重量%以上であってもよく、85重量%以上でもよく、90重量%以上(例えば90重量%超)でもよく、92重量%以上でもよく、94重量%以上でもよく、95重量%以上(例えば95重量%超)でもよい。また、モノマー成分中の2EHAの割合は、反応性官能基を有するモノマーを共重合する観点から、97重量%以下である。いくつかの好ましい態様において、モノマー成分中の2EHAの割合は、96重量%以下であり、95重量%以下であってもよい。他のいくつかの好ましい態様において、モノマー成分中の2EHAの割合は、92重量%以下であり、より好ましくは90重量%以下(例えば90重量%未満)、さらに好ましくは85重量%以下(例えば85重量%未満)、特に好ましくは80重量%以下(例えば80重量%未満)である。
いくつかの好ましい態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分はヘプチルアクリレートを含む。ヘプチルアクリレートを含むモノマー成分を用いて重合されたアクリル系ポリマーは、n-ブチルアクリレート(BA)や2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)等の他のアルキルアクリレートの重合物よりも柔軟性に優れるので、かかる重合物を含む粘着剤は、所定値未満の-20℃貯蔵弾性率を実現しやすい。ヘプチルアクリレートの重合物が柔軟性に優れる理由は、特に限定的に解釈されるものではないが、ヘプチルアクリレートをモノマー単位として含むポリマーは、ガラス転移温度が低いことに加え、粘着剤内において主鎖間の空間が相対的に大きいためと考えられる。ヘプチルアクリレートのなかでも、柔軟性の観点から、n-ヘプチルアクリレートが好ましい。n-ヘプチルアクリレートをモノマー成分として含んで合成されたアクリル系ポリマーは、比較的長い直鎖状の側鎖を有するため、主鎖間の空間がより大きくなりやすいと考えられる。
アクリル系ポリマーのモノマー成分に占めるヘプチルアクリレートの割合は、例えば、いくつかの態様において、50重量%以上(例えば50重量%超)であり、70重量%以上が適当であり、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上(例えば90重量%超)、特に好ましくは92重量%以上であり、94重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、96重量%以上でもよい。ヘプチルアクリレートの使用量を増大することにより、その使用効果(例えば、粘着剤の-20℃貯蔵弾性率の低下)を効果的に発現させることができる。一方、モノマー成分中のヘプチルアクリレートの割合の上限は、反応性官能基を有するモノマーを共重合する観点から、97重量%以下である。いくつかの好ましい態様において、モノマー成分中のヘプチルアクリレートの割合は、96重量%以下であり、95重量%以下であってもよく、94重量%以下でもよい。上記の範囲でヘプチルアクリレートの割合を制限することは、適度な凝集力を得る点で好ましい。
モノマー成分としてヘプチルアクリレートを使用する態様において、アクリル系ポリマーには、ヘプチルアクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートが共重合されていてもよい。上記ヘプチルアクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば上記式(1)で表される化合物であって、ヘプチルアクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。上記ヘプチルアクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
いくつかの態様において、上記モノマー成分に含まれるアルキル(メタ)アクリレートの総量に占めるヘプチルアクリレートの割合は、例えば50重量%以上(具体的には50~100重量%、例えば50重量%超)であり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上であり、99重量%以上であってもよく、100重量%でもよい。このようなモノマー組成を採用することにより、ヘプチルアクリレートの使用効果が効果的に発揮され得る。
いくつかの態様において、上記モノマー成分は、バイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレート(以下「バイオマスアルキル(メタ)アクリレート」ともいう。)を含み得る。近年、地球温暖化等の環境問題が重視されるようになり、石油等の化石資源系材料の使用量を低減することが望まれている。このような状況下、粘着剤の分野においても化石資源系材料の使用量を低減することが求められている。バイオマスアルキル(メタ)アクリレートを用いることにより、化石資源系材料への依存抑制に配慮されたアクリル系粘着剤を好適に実現することができる。
バイオマスアルキル(メタ)アクリレートは、特に限定されず、例えば、バイオマス由来のアルカノールと、バイオマス由来または非バイオマス由来の(メタ)アクリル酸とのエステルである。バイオマス由来のアルカノールの例には、バイオマスエタノール、パーム油やパーム核油、ヤシ油、ヒマシ油等の植物原料に由来するアルカノール、等が含まれる。バイオマス由来のアルカノールの炭素原子数が3以上である場合、該アルカノールは、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。いくつかの態様において、アクリル系ポリマーの合成に用いられるバイオマスアルキル(メタ)アクリレートとして、バイオマス由来のアルカノールと、非バイオマス由来の(メタ)アクリル酸とのエステルが用いられる。かかるバイオマスアルキル(メタ)アクリレートでは、アルカノールの炭素原子数が多いほど、該バイオマスアルキル(メタ)アクリレートに含まれる総炭素数に占めるバイオマス由来炭素の個数割合、すなわちアルキル(メタ)アクリレートのバイオマス炭素比が高くなる。したがって、上記のバイオマスアルキル(メタ)アクリレートでは、バイオマス由来となるアルキル基の炭素数が多いことが、化石資源系材料への依存度低減の点で望ましい。その一方で、アルキル(メタ)アクリレートを構成するアルキル基の炭素数が多すぎると、接着力等の粘着特性が得られにくくなる傾向があり、また合成や取扱い性、コストなど生産性の点でも不利になり得る。バイオマスアルキル(メタ)アクリレートとして、バイオマス由来のアルカノールと、非バイオマス由来の(メタ)アクリル酸とのエステルを用いる態様では、粘着特性と、化石資源系材料への依存度低減(より具体的には上記アルキル(メタ)アクリレートのバイオマス炭素比)とをバランスよく両立する材料を用いることが望ましい。
いくつかの好ましい態様において、ヘプチルアクリレートとして、バイオマス由来のヘプチルアクリレート(バイオマスヘプチルアクリレート)が用いられる。バイオマスヘプチルアクリレートを用いることにより、化石資源系材料への依存度を低減しつつ、ここに開示される技術による効果を実現することができる。上記バイオマスヘプチルアクリレートは、バイオマス由来のアルカノールと、バイオマス由来または非バイオマス由来のアクリル酸とのエステルであり、例えば、バイオマス由来のアルカノールと非バイオマス由来のアクリル酸とのエステルが用いられ得る。かかる化合物では、ヘプチル基のみがバイオマス由来となる。バイオマス由来のヘプチルアクリレートとしては、バイオマス由来のn-ヘプチルアクリレート(バイオマスn-ヘプチルアクリレート)の使用が好ましい。
上記アクリル系ポリマーのモノマー成分に占めるバイオマスアルキル(メタ)アクリレート(好ましくはバイオマスヘプチルアクリレート)の割合は、例えば、いくつかの態様において、50重量%以上(例えば50重量%超)であり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、92重量%以上でもよく、94重量%以上でもよく、96重量%以上でもよい。また、モノマー成分のうちバイオマスアルキル(メタ)アクリレート(好ましくはバイオマスヘプチルアクリレート)の割合は、97重量%以下であり、いくつかの態様において、95重量%以下であってもよく、93重量%以下でもよく、91重量%以下でもよい。
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、反応性官能基を有するモノマーを含む。アクリル系ポリマーに、反応性官能基を有するモノマーが共重合されることで、アクリル系ポリマーに架橋基点となり得る官能基が導入される。また、反応性官能基を有するモノマーの作用に基づき、被着体に対する接着力が向上され得る。かかる反応性官能基を有するモノマーとしては、カルボキシ基含有モノマー、水酸基(OH基)含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー((メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等)、アミノ基含有モノマー(アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)、エポキシ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー(N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等)、アルコキシシリル基含有モノマー、イミド基含有モノマー類等が挙げられる。上記反応性官能基を有するモノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマーが好ましい。水酸基含有モノマーは、モノマー成分としての2EHAとともに用いられることが好ましい。
アクリル系ポリマーのモノマー成分中の反応性官能基を有するモノマーの割合は、3重量%以上(例えば3.0重量%超)である。上記所定量以上の反応性官能基を有するモノマーを使用することで、反応性官能基を有するモノマーの使用効果が効果的に発揮され、適度な凝集力を有して、良好な粘着特性を実現することができる。いくつかの好ましい態様において、上記反応性官能基を有するモノマーの割合は、4.0重量%以上であってもよく、4.5重量%以上でもよく、5.0重量%以上(例えば5.0重量%超)でもよく、5.5重量%以上でもよく、6.0重量%以上でもよく、6.5重量%以上でもよく、7.0重量%以上でもよい。また、いくつかの態様において、反応性官能基を有するモノマーの量は、例えば、全モノマー成分の20重量%以下とすることが適当であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは12重量%以下である。いくつかの好ましい態様において、上記反応性官能基を有するモノマーの量は、10重量%以下(例えば10重量%未満)であってもよく、8重量%以下でもよく、6重量%以下でもよく、5重量%以下(例えば5重量%未満)でもよい。また、他のいくつかの好ましい態様において、モノマー成分中の反応性官能基を有するモノマーの割合は8重量%以上であり、10重量%以上(例えば10重量%超)であってもよく、15重量%以上(例えば15重量%超)でもよく、20重量%以上(例えば20重量%超)でもよい。かかる態様において、モノマー成分中の反応性官能基を有するモノマーの割合は40重量%以下とすることが適当であり、35重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、25重量%以下であってもよい。反応性官能基を有するモノマーの使用量を上記範囲内で適切に調節することにより、軽圧着接着性に優れ、かつ良好な粘着特性を有する粘着剤が得られやすい。
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーのモノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを含むことが好ましい。カルボキシ基含有モノマーは、その極性に基づき凝集力を向上することができる。また、イソシアネート系、エポキシ系架橋剤等の架橋剤を使用する場合には、当該カルボキシ基がアクリル系ポリマーの架橋点となり得る。また、カルボキシ基含有モノマーの使用により、例えば高極性材料等の被着体に対して、より優れた接着性が発揮され得る。軽圧着接着性の観点から、カルボキシ基含有モノマーは、ヘプチルアクリレートとともに使用されることが好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イソクロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸が挙げられる。また、カルボキシ基含有モノマーは、カルボキシ基の金属塩(例えばアルカリ金属塩)を有するモノマーであってもよい。カルボキシ基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも好ましいカルボキシ基含有モノマーとして、AAおよびMAAが挙げられる。AAが特に好ましい。1種または2種以上のカルボキシ基含有モノマーを使用する場合、上記カルボキシ基含有モノマーに占めるAAの割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。特に好ましい態様において、カルボキシ基含有モノマーは、実質的にAAのみからなる。AAは、そのカルボキシ基に基づく極性、架橋点としての役割、Tg(106℃)等の複合的な作用から、ここに開示されるカルボキシ基含有モノマーのなかで最適なモノマー材料の一つと考えられる。
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーのモノマー成分中のカルボキシ基含有モノマーの割合は、3重量%以上(例えば3.0重量%超)であり、好ましくは4.0重量%以上、より好ましくは4.5重量%以上、さらに好ましくは5.0重量%以上(例えば5.0重量%超)、特に好ましくは5.5重量%以上であり、6.0重量%以上であってもよく、6.5重量%以上でもよく、7.0重量%以上でもよい。カルボキシ基含有モノマーの使用量を多くすることで、カルボキシ基含有モノマーの作用に基づき粘着剤層の凝集力が向上し、適度な凝集力を有することで、良好な粘着特性(接着力等)が得られやすい。また、カルボキシ基含有モノマーの量は、例えば、モノマー成分の20重量%以下とすることが適当であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは12重量%以下である。いくつかの好ましい態様において、上記カルボキシ基含有モノマーの量は、10重量%以下(例えば10重量%未満)であってもよく、8重量%以下でもよく、6重量%以下でもよく、5重量%以下(例えば5重量%未満)でもよい。カルボキシ基含有モノマーの使用量を上記範囲内で適切に調節することにより、優れた軽圧着接着性が得られやすく、良好な粘着特性を有する粘着剤が得られやすい。
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分がカルボキシ基含有モノマーを含有する態様において、アクリル系ポリマーには、カルボキシ基含有モノマー以外の官能基含有モノマーが共重合されていてもよい。カルボキシ基含有モノマー以外の官能基含有モノマーとしては、上記反応性官能基を有するモノマーとして例示したもののうち、カルボキシ基含有モノマー以外の1種または2種以上を用いることができる。
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分がカルボキシ基含有モノマー以外の官能基含有モノマーを含む場合、該モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマー以外の官能基含有モノマーの含有量は特に限定されない。カルボキシ基含有モノマー以外の官能基含有モノマーの使用による効果を適切に発揮する観点から、モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマー以外の官能基含有モノマーの含有量は、例えば0.1重量%以上とすることができ、0.5重量%以上とすることが適当であり、1重量%以上としてもよい。また、例えば、アクリル系ポリマーのモノマー成分がヘプチルアクリレートおよびカルボキシ基含有モノマーを含む態様において、これらのモノマー成分との関係で粘着性能のバランスをとりやすくする観点から、モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマー以外の官能基含有モノマーの含有量は、30重量%以下とすることが適当であり、20重量%以下とすることが好ましく、10重量%以下(例えば5重量%以下)としてもよい。いくつかの態様において、モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマー以外の官能基含有モノマーの含有量は、例えば3重量%未満であり、1重量%未満であってもよく、0.5重量%未満でもよく、0.3重量%未満でもよく、0.1重量%未満でもよい。ここに開示される技術は、アクリル系ポリマーのモノマー成分がカルボキシ基含有モノマー以外の官能基含有モノマーを実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。
なお、本明細書において、モノマー成分がモノマーA(例えば上記任意官能基含有モノマー)を実質的に含まないとは、少なくとも意図的には当該モノマーAを用いないことをいい、当該モノマーAが例えば0.01重量%以下程度、非意図的に含まれることは許容され得る。
また、上記カルボキシ基含有モノマー以外の官能基含有モノマーとして水酸基含有モノマーを用いてもよい。後述する水酸基含有モノマーの具体例のなかから適当な1種または2種以上を使用し得る。水酸基含有モノマーを使用する場合、水酸基含有モノマーの含有量は、モノマー成分中、凡そ10重量%以下(例えば0.001~10重量%)とすることが適当であり、好ましくは凡そ5重量%以下、より好ましくは凡そ2重量%以下である。いくつかの態様において、モノマー成分における水酸基含有モノマーの含有量は、例えば1重量%未満であってもよく、0.5重量%未満でもよく、0.3重量%未満でもよく、0.1重量%未満でもよく、0.01重量%未満でもよい。アクリル系ポリマーのモノマー成分は水酸基含有モノマーを実質的に含まなくてもよい。ここに開示される技術においては、水酸基含有モノマーの使用量を制限したり、不使用とする組成で、所望の特性および効果を好ましく実現することができる。
上記モノマー成分がカルボキシ基含有モノマーを含有する態様において、アクリル系ポリマーの共重合成分として使用される反応性官能基を有するモノマー全体(カルボキシ基含有モノマーを含む官能基含有モノマー全体)に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合は、カルボキシ基含有モノマーを共重合する効果を効果的に発揮させる観点から、30重量%以上が適当であり、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、例えば95重量%以上であってもよく、97重量%以上であってもよく、98重量%以上でもよく、99重量%以上(例えば99.9重量%以上)でもよい。上記反応性官能基を有するモノマー全体に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合の上限は100重量%であり、例えば95重量%以下であってもよい。例えば、アクリル系ポリマーのモノマー成分がヘプチルアクリレートおよびカルボキシ基含有モノマーを含む態様において、上記カルボキシ基含有モノマーの割合が好ましく採用される。
他のいくつかの態様において、アクリル系ポリマーのモノマー成分は、水酸基含有モノマーを含むことが好ましい。水酸基含有モノマーは、例えばイソシアネート系架橋剤との架橋反応して、良好な凝集力を有する粘着剤形成に寄与し得る。軽圧着接着性の観点から、水酸基含有モノマーは、2EHAとともに使用されることが好ましい。
水酸基含有モノマーとしては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート;等が挙げられる。水酸基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも好ましい水酸基含有モノマーとして、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)が挙げられる。
上記他のいくつかの態様(モノマー成分が水酸基含有モノマーを含有する態様)において、アクリル系ポリマーのモノマー成分中の水酸基含有モノマーの割合は、3重量%以上(例えば3.0重量%超)であり、好ましくは4.0重量%以上、より好ましくは4.5重量%以上であり、5.0重量%以上であってもよい。これにより、水酸基含有モノマーの使用効果が好適に発揮される。また、水酸基含有モノマーの量は、例えば、モノマー成分の20重量%以下とすることが適当であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは12重量%以下である。いくつかの好ましい態様において、上記水酸基含有モノマーの量は、10重量%以下であってもよく、8重量%以下でもよく、6重量%以下でもよい。また、他のいくつかの好ましい態様において、モノマー成分中の水酸基含有モノマーの割合は8重量%以上であり、10重量%以上(例えば10重量%超)であってもよく、15重量%以上(例えば15重量%超)でもよく、20重量%以上(例えば20重量%超)でもよい。かかる態様において、モノマー成分中の水酸基含有モノマーの割合は40重量%以下とすることが適当であり、35重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、25重量%以下であってもよい。水酸基含有モノマーの使用量を上記範囲内で適切に調節することにより、軽圧着接着性に優れ、かつ良好な粘着特性を有する粘着剤が得られやすい。
上記他のいくつかの態様(モノマー成分が水酸基含有モノマーを含有する態様)において、アクリル系ポリマーの共重合成分として使用される反応性官能基を有するモノマー全体(水酸基含有モノマーを含む官能基含有モノマー全体)に占める水酸基含有モノマーの割合は、水酸基含有モノマーを共重合する効果を効果的に発揮させる観点から、30重量%以上が適当であり、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、例えば95重量%以上であってもよく、97重量%以上であってもよく、98重量%以上でもよく、99重量%以上(例えば99.9重量%以上)でもよい。上記反応性官能基を有するモノマー全体に占める水酸基含有モノマーの割合の上限は100重量%であり、例えば95重量%以下であってもよい。例えば、アクリル系ポリマーのモノマー成分が2EHAおよび水酸基含有モノマーを含む態様において、上記水酸基含有モノマーの割合が好ましく採用される。
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、凝集力向上等の目的で、上述した反応性官能基を有するモノマー以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他の共重合成分の例としては、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;オレフィン系モノマー;塩素含有モノマー;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。上記他の共重合成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
かかる他の共重合成分の量は、目的および用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、使用による効果を適切に発揮する観点から、0.05重量%以上とすることが適当であり、0.5重量%以上としてもよい。また、粘着性能のバランスをとりやすくする観点から、モノマー成分における他の共重合成分の含有量は、20重量%以下とすることが適当であり、必須モノマー成分に基づく粘着特性を好適に発揮させる観点から、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、さらに好ましくは5重量%未満であり、例えば3重量%未満であってもよく、1重量%未満でもよい。ここに開示される技術は、モノマー成分が他の共重合成分を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
アクリル系ポリマーは、他のモノマー成分として、(メタ)アクリロイル基やビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性官能基(典型的にはラジカル重合性官能基)を少なくとも2つ有する多官能モノマーを含んでもよい。モノマー成分として、多官能モノマーを用いることにより、粘着剤層の凝集力を高めることができる。多官能モノマーは、架橋剤として用いることができる。多官能モノマーとしては、特に限定されず、例えば1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。多官能モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
多官能モノマーの使用量は特に限定されず、該多官能モノマーの使用目的が達成されるように適切に設定することができる。多官能モノマーの使用量は、上記モノマー成分の凡そ3重量%以下とすることができ、凡そ2重量%以下が好ましく、凡そ1重量%以下(例えば凡そ0.5重量%以下)がより好ましい。多官能モノマーを使用する場合における使用量の下限は、0重量%より大きければよく、特に限定されない。通常は、多官能モノマーの使用量をモノマー成分の凡そ0.001重量%以上(例えば凡そ0.01重量%以上)とすることにより、該多官能モノマーの使用効果が適切に発揮され得る。
特に好ましい態様において、アクリル系ポリマーとして、実質的にヘプチルアクリレート(好ましくはn-ヘプチルアクリレート)とカルボキシ基含有モノマー(好ましくはアクリル酸)とからなるモノマー成分を用いて合成されたアクリル系ポリマーが用いられる。上記のモノマー組成によると、ヘプチルアクリレートおよびカルボキシ基含有モノマーの作用が効果的に発揮され、-20℃貯蔵弾性率が低く、軽圧着接着性により優れた粘着剤を好ましく実現することができる。このような観点から、上記モノマー成分に占めるヘプチルアクリレートおよびカルボキシ基含有モノマーの合計割合は、90重量%以上(90~100重量%)が適当であり、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上、さらに好ましくは99.5重量%超、特に好ましくは99.9重量%超(例えば99.99重量%超)であり、上記モノマー成分に占めるヘプチルアクリレートおよびカルボキシ基含有モノマーの合計割合は、100重量%であってもよい。
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のバイオマス炭素比(アクリル系ポリマーのバイオマス炭素比)は、例えば1%以上であってもよく、10%以上が適当であり、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上(例えば50%超)であり、70%以上でもよく、80%以上でもよく、90%~100%でもよい。このように設計することにより、化石資源系材料への依存抑制に配慮したアクリル系粘着剤が得られる。
特に限定するものではないが、アクリル系ポリマーの共重合組成は、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)が凡そ-15℃以下(例えば凡そ-70℃以上-15℃以下)となるように設計されていることが適当である。ここで、アクリル系ポリマーのTgとは、該ポリマーの合成に用いられるモノマー成分の組成に基づいて、Foxの式により求められるTgをいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料、具体的には「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。上記Polymer Handbookにも記載されていない場合には、特開2007-51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
特に限定するものではないが、耐衝撃性や、被着体に対する密着性の観点から、アクリル系ポリマーのTgは、凡そ-25℃以下であることが有利であり、好ましくは凡そ-35℃以下、より好ましくは凡そ-40℃以下、さらに好ましくは-50℃以下であり、-55℃以下であってもよく、-60℃以下でもよい。上記Tgが低くなるようモノマー組成を適切に設計することで、優れた軽圧着接着性が得られやすい傾向がある。いくつかの態様において、凝集力の観点から、アクリル系ポリマーのTgは、例えば凡そ-70℃以上であり、凡そ-65℃以上でもよく、凡そ-60℃以上でもよい。
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく採用し得る。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃~170℃程度(典型的には40℃~140℃程度)とすることができる。
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル等の酢酸エステル類;ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1~4の一価アルコール類);tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤の1種または2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して凡そ0.005~1重量部程度(典型的には凡そ0.01~1重量部程度)の範囲から選択することができる。
アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、上記の-20℃貯蔵弾性率特性を実現し得る適当なMwを有するアクリル系ポリマーが用いられる。例えば、アクリル系ポリマーのMwは、凡そ10×10~500×10の範囲であり得る。粘着性能の観点から、ベースポリマーのMwは、凡そ20×10以上であってもよく、凡そ30×10以上でもよく、凡そ40×10以上でもよく、50×10以上でもよい。いくつかの態様において、アクリル系ポリマーのMwは60万よりも大きく、65万よりも大きくてもよく、70万以上が適当であり、75万以上でもよい。アクリル系ポリマーのMwが大きいほど、良好な凝集力を示す粘着剤が得られやすい傾向がある。いくつかの好ましい態様において、アクリル系ポリマーのMwは80万以上であり、85万以上であってもよく、90万以上でもよく、100万以上(例えば100万超)でもよく、120万以上でもよい。例えば、ヘプチルアクリレートを含むモノマー組成によると、粘度を低く維持しやすいため、高分子量体の合成性がよく、上記Mwを有するアクリル系ポリマーが得られやすい。また、モノマー単位としてヘプチルアクリレートを含み、かつMwが所定値以上のアクリル系ポリマーを使用することにより、ポリマーの化学構造に基づく柔軟性と、分子量に基づく凝集力に基づき、上記の粘弾性特性(具体的には-20℃貯蔵弾性率)を満足しやすく、軽圧着接着性を好ましく実現することができる。一方、接着力、合成容易性等の観点から、アクリル系ポリマーのMwは、通常、凡そ300万以下であることが適当であり、好ましくは250万以下、より好ましくは200万以下、さらに好ましくは180万以下であり、150万以下であってもよく、130万以下でもよい。いくつかの好ましい態様において、アクリル系ポリマーのMwは、110万以下であってもよく、100万以下でもよく、95万以下でもよく、90万以下でもよい。アクリル系ポリマーのMwを適度に制限することにより、より低い-20℃貯蔵弾性率が得られやすい。他のいくつかの好ましい態様において、アクリル系ポリマーのMwは、80万以下であり、60万以下であってもよく、50万未満でもよく、45万以下でもよい。
アクリル系ポリマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。具体的には、GPC測定装置として商品名「HLC-8220GPC」(東ソー社製)を用いて、下記の条件で測定して求めることができる。後述の実施例においても同様である。
[GPCの測定条件]
サンプル濃度:0.2重量%(テトラヒドロフラン溶液)
サンプル注入量:10μL
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流量(流速):0.6mL/分
カラム温度(測定温度):40℃
カラム:
サンプルカラム:商品名「TSKguardcolumn SuperHZ-H」1本+商品名「TSKgel SuperHZM-H」2本」(東ソー社製)
リファレンスカラム:商品名「TSKgel SuperH-RC」1本(東ソー社製)
検出器:示差屈折計(RI)
標準試料:ポリスチレン
(アクリル系オリゴマー)
粘着剤層は、アクリル系オリゴマーを含有する。アクリル系オリゴマーを含有させることにより、軽圧着接着力および通常圧着接着力をバランスよく向上させ、優れた軽圧着接着性を実現することができる。アクリル系オリゴマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アクリル系オリゴマーは、Tgが約0℃以上約300℃以下、好ましくは約20℃以上約300℃以下、さらに好ましくは約40℃以上約300℃以下であることが望ましい。Tgが上記範囲内であることにより、接着力を好適に向上させることができる。いくつかの好ましい態様において、粘着剤の凝集性の観点から、アクリル系オリゴマーのTgは約30℃以上であり、より好ましくは約50℃以上(例えば約60℃以上)であり、また接着性の観点から、好ましくは約200℃以下、より好ましくは約150℃以下、さらに好ましくは約100℃以下(例えば凡そ80℃以下)である。上記範囲内で適当なTgを有するアクリル系オリゴマーを使用することにより、軽圧着接着力および通常圧着接着力をバランスよく向上することができる。なお、本明細書において、アクリル系オリゴマーのTgとは、上述のアクリル系ポリマーのTgと同様、上記モノマー成分の組成に基づいて、Foxの式により求められるTgをいう。
アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、典型的には約1000以上約30000未満、好ましくは約1500以上約20000未満、さらに好ましくは約2000以上約10000未満であり得る。Mwが上記範囲内にあることで、良好な接着力が得られやすい。いくつかの好ましい態様において、アクリル系オリゴマーのMwは約2500以上(例えば約3000以上)であり、また、接着性の観点から、好ましくは約7000以下、より好ましくは約5000以下(例えば約4500以下、典型的には約4000以下)である。アクリル系オリゴマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。具体的には、東ソー社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH-H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速約0.5mL/分の条件にて測定される。
アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル(脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート);フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート;等を挙げることができる。このような(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
アクリル系オリゴマーとしては、イソブチル(メタ)アクリレートやt-ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートやイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環式アルコールとのエステル(脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート);フェニル(メタ)アクリレートやベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレートに代表される、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが、粘着剤層の接着性をさらに向上させることができる観点から好ましい。また、アクリル系オリゴマーの合成の際や粘着剤層の作製の際に紫外線を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、飽和結合を有するものが好ましく、アルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート、または脂環式アルコールとのエステル(脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート)を、アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとして好適に用いることができる。なお、上記の分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレート、脂環式炭化水素基(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレートはいずれも、ここに開示される技術における(メタ)アクリレートモノマーに該当する。脂環式炭化水素基は飽和または不飽和の脂環式炭化水素基であり得る。
アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分に占める(メタ)アクリレートモノマー(例えば、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート)の割合は、典型的には50重量%超であり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上(例えば80重量%以上、さらには90重量%以上)である。いくつかの好ましい態様において、アクリル系オリゴマーは、実質的に(メタ)アクリレートモノマーのみからなるモノマー組成を有する。
アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分としては、上記の(メタ)アクリレートモノマーに加えて、官能基含有モノマーを用いることができる。上記官能基含有モノマーの好適例としては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環(典型的には窒素原子含有複素環)を有するモノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;AA、MAA等のカルボキシ基含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;が挙げられる。これらの官能基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、AAが特に好ましい。例えば、官能基含有モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーを使用することにより、高極性被着体に対する接着力を向上させることができ、かかる被着体に対して優れた軽圧着接着性を好ましく実現することができる。
アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分が官能基含有モノマーを含む場合、上記モノマー成分に占める官能基含有モノマー(例えば、AA等のカルボキシ基含有モノマー)の割合は、凡そ1重量%以上とすることが適当であり、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上であり、また凡そ15重量%以下とすることが適当であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。
アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分を重合することにより形成され得る。重合方法や重合態様は特に限定されず、従来公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合、放射線重合等)を、適宜の態様で採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤(例えば、AIBN等のアゾ系重合開始剤)の種類は、概ねアクリル系ポリマーの合成にて例示したとおりであり、重合開始剤量や、任意に使用されるn-ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤の量は、所望の分子量となるよう技術常識に基づいて適切に設定されるので、ここでは詳細な説明は省略する。
上記の観点から、好適なアクリル系オリゴマーとしては、例えば、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA)、1-アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1-アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体のほか、CHMAとイソブチルメタクリレート(IBMA)との共重合体、CHMAとIBXMAとの共重合体、CHMAとアクリロイルモルホリン(ACMO)との共重合体、CHMAとジエチルアクリルアミド(DEAA)との共重合体、CHMAとAAとの共重合体、ADAとメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、DCPMAとIBXMAとの共重合体、DCPMAとMMAの共重合体、等を挙げることができる。
ここに開示される粘着剤層にアクリル系オリゴマーを含有させる場合、その含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して例えば0.1重量部以上(例えば1重量部以上)とすることが適当である。アクリル系オリゴマーの効果をよりよく発揮させる観点からは、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、好ましくは凡そ3重量部以上、より好ましくは凡そ5重量部以上であり、凡そ8重量部以上であってもよく、凡そ10重量部以上でもよく、凡そ12重量部以上でもよく、凡そ15重量部以上でもよく、凡そ18重量部以上でもよい。また、アクリル系ポリマーとの相溶性等の観点から、いくつかの態様において、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して50重量部未満(例えば40重量部未満)とすることが適当であり、-20℃貯蔵弾性率を低く維持する観点から、好ましくは30重量部未満、より好ましくは凡そ25重量部以下、さらに好ましくは凡そ20重量部以下である。いくつかの態様において、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して20重量部未満であり、15重量部以下であってもよく、12重量部以下でもよく、10重量部以下でもよく、8重量部以下でもよく、6重量部以下でもよい。このように制限されたアクリル系オリゴマー使用量とすることで、ここに開示される技術による効果は好ましく発揮され得る。
(粘着付与樹脂)
いくつかの好ましい態様において、粘着剤層は粘着付与樹脂を含む。粘着付与樹脂を用いることで、高い接着力を得ることができる。より具体的には、アクリル系オリゴマーと粘着付与樹脂との併用の作用に基づき、軽圧着接着力を含む接着力を好ましく向上することができる。粘着付与樹脂としては、特に制限されず、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ロジン系粘着付与樹脂の具体例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等。以下同じ。);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。なかでも、ロジンエステルが好ましい。
特に限定するものではないが、ロジンエステル類の具体例として、未変性ロジンまたは変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)のエステル、例えばメチルエステル、トリエチレングリコールエステル、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。
テルペン系粘着付与樹脂の例としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン樹脂;これらのテルペン樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂の一例としてテルペンフェノール樹脂が挙げられる。
テルペンフェノール樹脂とは、テルペン残基およびフェノール残基を含むポリマーを指し、テルペン類とフェノール化合物との共重合体(テルペン-フェノール共重合体樹脂)と、テルペン類の単独重合体または共重合体をフェノール変性したもの(フェノール変性テルペン樹脂)との双方を包含する概念である。このようなテルペンフェノール樹脂を構成するテルペン類の具体例としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン(d体、l体およびd/l体(ジペンテン)を包含する。)等のモノテルペン類が挙げられる。水素添加テルペンフェノール樹脂とは、このようなテルペンフェノール樹脂を水素化した構造を有する水素添加テルペンフェノール樹脂をいう。水添テルペンフェノール樹脂と称されることもある。
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系(C5/C9系)石油樹脂、これらの水素添加物(例えば、芳香族系石油樹脂に水素添加して得られる脂環族系石油樹脂)、これらの各種変性物(例えば、無水マレイン酸変性物)、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の、各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
いくつかの態様において、粘着付与樹脂として、ロジン系粘着付与樹脂およびテルペン系粘着付与樹脂から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。ロジン系粘着付与樹脂および/またはテルペン系粘着付与樹脂をアクリル系粘着剤に含有させることで、接着力を向上することができ、また、優れた軽圧着接着性が得られやすい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占めるロジン系粘着付与樹脂およびテルペン系粘着付与樹脂の合計割合は、例えば凡そ50重量%超(50重量%超100重量%以下)とすることができ、凡そ70重量%以上としてもよく、凡そ80重量%以上としてもよく、凡そ90重量%以上としてもよく、95重量%以上としてもよく、99重量%以上としてもよい。
いくつかの好ましい態様として、上記粘着付与樹脂が1種または2種以上のテルペンフェノール樹脂を含む態様が挙げられる。ここに開示される技術は、例えば、粘着付与樹脂の総量の凡そ25重量%以上(より好ましくは凡そ30重量%以上)がテルペンフェノール樹脂である態様で好ましく実施され得る。粘着付与樹脂の総量に占めるテルペンフェノール樹脂の割合は、凡そ50重量%以上であってもよく、凡そ70重量%以上でもよく、凡そ80重量%以上でもよく、凡そ90重量%以上でもよい。粘着付与樹脂の実質的に全部(例えば凡そ95重量%以上100重量%以下、さらには凡そ99重量%以上100重量%以下)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。
粘着剤層中のテルペンフェノール樹脂の含有量は、目的とする粘弾性特性を満足する限りにおいて特に制限はない。いくつかの態様において、テルペンフェノール樹脂の含有量は、接着力向上の観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対して通常は凡そ1重量部以上であり、凡そ5重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ8重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは凡そ12重量部以上(例えば15重量部以上)である。また、いくつかの態様において、粘着剤層中のテルペンフェノール樹脂の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば70重量部以下であり、60重量部以下であってもよく、50重量部以下でもよく、40重量部以下でもよく、30重量部以下でもよい。いくつかの好ましい態様において、上記テルペンフェノール樹脂の含有量は、30重量部未満であり、より好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは22重量部以下であり、20重量部以下であってもよい。
粘着付与樹脂の軟化点は特に限定されない。凝集力向上の観点から、軟化点(軟化温度)が凡そ80℃以上である粘着付与樹脂を好ましく採用し得る。粘着付与樹脂の軟化点は、凡そ100℃以上であってもよく、凡そ110℃以上でもよい。また、被着体への接着性の観点から、軟化点が凡そ200℃以下(より好ましくは凡そ180℃以下)の粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。いくつかの態様において、粘着付与樹脂の軟化点は160℃未満であってもよく、150℃未満でもよい。
なお、本明細書における粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K5902およびJIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値として定義される。具体的には、試料をできるだけ低温ですみやかに融解し、これを平らな金属板の上に置いた環の中に、泡ができないように注意して満たす。冷えたのち、少し加熱した小刀で環の上端を含む平面から盛り上がった部分を切り去る。つぎに、径85mm以上、高さ127mm以上のガラス容器(加熱浴)の中に支持器(環台)を入れ、グリセリンを深さ90mm以上となるまで注ぐ。つぎに、鋼球(径9.5mm、重量3.5g)と、試料を満たした環とを互いに接触しないようにしてグリセリン中に浸し、グリセリンの温度を20℃プラスマイナス5℃に15分間保つ。つぎに、環中の試料の表面の中央に鋼球をのせ、これを支持器の上の定位置に置く。つぎに、環の上端からグリセリン面までの距離を50mmに保ち、温度計を置き、温度計の水銀球の中心の位置を環の中心と同じ高さとし、容器を加熱する。加熱に用いるブンゼンバーナーの炎は、容器の底の中心と縁との中間にあたるようにし、加熱を均等にする。なお、加熱が始まってから40℃に達したのちの浴温の上昇する割合は、毎分5.0プラスマイナス0.5℃でなければならない。試料がしだいに軟化して環から流れ落ち、ついに底板に接触したときの温度を読み、これを軟化点とする。軟化点の測定は、同時に2個以上行い、その平均値を採用する。
いくつかの態様において、粘着付与樹脂として、軟化点が150℃未満の粘着付与樹脂Tが用いられる。粘着付与樹脂Tを用いることにより、より高い接着力を得ることができる。いくつかの好ましい態様において、上記粘着付与樹脂Tの軟化点は、140℃未満であり、より好ましくは130℃未満、さらに好ましくは120℃未満であり、110℃以下であってもよく、100℃以下でもよく、90℃以下でもよい。上記所定値以下の軟化点を有する粘着付与樹脂を使用することにより、-20℃貯蔵弾性率を低く維持しやすい傾向がある。粘着付与樹脂Tの軟化点の下限は特に制限されない。いくつかの態様において、粘着付与樹脂Tの軟化点は、適度な凝集力を発揮させる観点から、例えば凡そ50℃以上であってよく、60℃以上でもよく、70℃以上でもよく、80℃以上でもよく、90℃以上でもよく、100℃以上でもよく、110℃以上でもよい。
粘着付与樹脂Tとしては、上記で例示した粘着付与樹脂のうち軟化点が150℃未満のものから適宜選択される1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様において、粘着付与樹脂Tは、ロジン系粘着付与樹脂およびテルペン系粘着付与樹脂から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。粘着付与樹脂Tは、1種のロジン系粘着付与樹脂を単独で含んでもよく、2種以上のロジン系粘着付与を組み合わせて含んでもよい。また、粘着付与樹脂Tは、1種のテルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)を単独で含んでもよく、2種以上のテルペン系粘着付与樹脂を組み合わせて含んでもよい。
いくつかの態様において、粘着付与樹脂T全体に占めるテルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)の割合は、例えば凡そ50重量%超とすることができ、凡そ65重量%以上としてもよく、凡そ75重量%以上としてもよく、85重量%以上としてもよく、95重量%以上としてもよい。ここに開示される技術は、粘着付与樹脂Tの実質的に全部(例えば凡そ97重量%以上、または99重量%以上であり、100重量%でもよい。)がテルペン系粘着付与樹脂である態様で好ましく実施され得る。
特に限定するものではないが、粘着付与樹脂Tとして好ましく採用し得るロジン系粘着付与樹脂の例として、未変性ロジンエステルおよび変性ロジンエステル等のロジンエステル類が挙げられる。変性ロジンエステルの好適例として水素添加ロジンエステルが挙げられる。例えば、未変性ロジンまたは変性ロジン(例えば水素添加ロジン)のエステル、例えばメチルエステル、グリセリンエステル等のロジンエステル類を、粘着付与樹脂Tとして用いることができる。
いくつかの態様において、粘着付与樹脂Tは水素添加ロジンエステルを含んでもよい。また例えば、粘着付与樹脂Tは、非水素添加ロジンエステルを含んでもよい。ここで非水素添加ロジンエステルとは、上述したロジンエステル類のうち水素添加ロジンエステル以外のものを包括的に指す概念である。非水素添加ロジンエステルの例には、未変性ロジンエステル、不均化ロジンエステルおよび重合ロジンエステルが含まれる。粘着付与樹脂Tは、ロジンエステル類として、水素添加ロジンエステルと非水素添加ロジンエステルとを組み合わせて含んでもよく、1種または2種以上の水素添加ロジンエステルのみを含んでいてもよく、1種または2種以上の非水素添加ロジンエステルのみを含んでいてもよい。いくつかの好ましい態様に係る粘着剤層は、粘着付与樹脂Tに含まれるロジンエステル類として、1種または2種以上の水素添加ロジンエステルのみを含む。
いくつかの態様において、粘着付与樹脂T全体に占めるロジン系粘着付与樹脂(例えばロジンエステル類)の割合は、例えば凡そ50重量%超とすることができ、凡そ65重量%以上としてもよく、凡そ75重量%以上としてもよく、85重量%以上としてもよく、95重量%以上としてもよい。ここに開示される技術は、粘着付与樹脂Tの実質的に全部(例えば凡そ97重量%以上、または99重量%以上であり、100重量%でもよい。)がロジン系粘着付与樹脂である態様で好ましく実施され得る。
また、粘着付与樹脂Tとして、例えば、軟化点が50℃未満、より好ましくは凡そ40℃以下の粘着付与樹脂(典型的にはロジン系、テルペン系、炭化水素系等の粘着付与樹脂、例えば水添ロジンメチルエステル等)を含んでもよく、含まなくてもよい。このような低軟化点粘着付与樹脂は、30℃において液状を呈する液状粘着付与樹脂であり得る。液状粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。液状粘着付与樹脂の含有量は、凝集力等の観点から、粘着付与樹脂T全体の凡そ30重量%以下とすることができ、凡そ10重量%以下(例えば0~10重量%)とすることが適当であり、凡そ2重量%以下(0.5~2重量%)であってもよく、1重量%未満でもよい。
粘着付与樹脂Tの含有量は、特に限定されないが、いくつかの態様において、アクリルポリマー100重量部に対して70重量部以下程度とすることが適当であり、60重量部以下であってもよく、50重量部以下でもよく、40重量部以下でもよく、30重量部以下でもよい。粘着付与樹脂Tの使用量を所定量以下に制限することにより、-20℃貯蔵弾性率が所定値以下となる粘着剤を形成しやすい傾向がある。いくつかの好ましい態様において、粘着付与樹脂Tの含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、30重量部未満であり、より好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは22重量部以下であり、20重量部以下であってもよい。また、いくつかの態様において、軽圧着接着力を含む接着力向上の観点から、粘着付与樹脂Tの含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば1重量部以上であり、5重量部以上が適当であり、好ましくは8重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは12重量部以上であり、15重量部以上であってよい。他のいくつかの態様において、アクリル系ポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂Tの含有量は、凡そ20重量部以上であってもよく、凡そ25重量部以上でもよく、凡そ30重量部以上でもよく、凡そ35重量部以上でもよい。かかる含有量は、例えば、比較的分子量の小さいアクリル系ポリマーを使用する態様において、好ましく適用され得る。
いくつかの態様において、上記粘着剤層は、発明の効果を損なわない範囲で、粘着付与樹脂Tと、軟化点が150℃以上(例えば150℃~200℃)の粘着付与樹脂Tを組み合わせて含んでもよい。粘着付与樹脂Tとしては、上記で例示した粘着付与樹脂のうち軟化点が150℃以上のものから1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
いくつかの態様において、粘着付与樹脂Tは、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂の総量の50重量%超を占めることが好ましい。これにより、粘着付与樹脂T含有の効果が効果的に発現しやすい。粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂の総量に占める粘着付与樹脂Tの割合は、粘着付与樹脂Tの使用効果をより効果的に発揮する観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、95重量%以上であってもよく、98重量%以上でもよい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂は、実質的に粘着付与樹脂Tのみからなる。かかる態様において、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂の総量に占める粘着付与樹脂Tの割合は99~100重量%の範囲である。
特に限定するものではないが、いくつかの態様において、上記粘着付与樹脂は、水酸基価が20mgKOH/gより高い粘着付与樹脂を含み得る。なかでも水酸基価が30mgKOH/g以上の粘着付与樹脂が好ましい。以下、水酸基価が30mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を「高水酸基価樹脂」ということがある。このような高水酸基価樹脂を含む粘着付与樹脂によると、被着体に対する密着性に優れ、かつ凝集力の高い粘着剤層が実現され得る。いくつかの態様において、上記粘着付与樹脂は、水酸基価が50mgKOH/g以上(例えば70mgKOH/g以上)の高水酸基価樹脂を含んでいてもよい。特に限定するものではないが、上記のような高水酸基価樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)は、例えば、ヘプチルアクリレートをモノマー成分として含むアクリル系ポリマーと組み合わせて好ましく用いられて、接着力と凝集力とを両立し得る。
高水酸基価樹脂の水酸基価の上限は特に限定されない。アクリル系ポリマーとの相溶性等の観点から、高水酸基価樹脂の水酸基価は、通常、凡そ300mgKOH/g以下であり、凡そ200mgKOH/g以下が適当であり、好ましくは凡そ180mgKOH/g以下、より好ましくは凡そ160mgKOH/g以下、さらに好ましくは凡そ140mgKOH/g以下であり、120mgKOH/g以下であってもよく、100mgKOH/g以下でもよく、80mgKOH/g以下(例えば65mgKOH/g以下)でもよい。ここに開示される技術は、粘着付与樹脂が水酸基価30~160mgKOH/gの高水酸基価樹脂(例えばテルペン系粘着付与樹脂、好ましくはテルペンフェノール樹脂)を含む態様で好ましく実施され得る。いくつかの態様において、水酸基価30~80mgKOH/g(例えば30~65mgKOH/g)の高水酸基価樹脂を好ましく採用し得る。
ここで、上記水酸基価の値としては、JIS K0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される値を採用することができる。具体的な測定方法は以下に示すとおりである。
[水酸基価の測定方法]
1.試薬
(1)アセチル化試薬としては、無水酢酸約12.5g(約11.8mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を50mLにし、充分に攪拌したものを使用する。または、無水酢酸約25g(約23.5mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を100mLにし、充分に攪拌したものを使用する。
(2)測定試薬としては、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を使用する。
(3)その他、トルエン、ピリジン、エタノールおよび蒸留水を準備する。
2.操作
(1)平底フラスコに試料約2gを精秤採取し、アセチル化試薬5mLおよびピリジン10mLを加え、空気冷却管を装着する。
(2)上記フラスコを100℃の浴中で70分間加熱した後、放冷し、冷却管の上部から溶剤としてトルエン35mLを加えて攪拌した後、蒸留水1mLを加えて攪拌することにより無水酢酸を分解する。分解を完全にするため再度浴中で10分間加熱し、放冷する。
(3)エタノール5mLで冷却管を洗い、取り外す。次いで、溶剤としてピリジン50mLを加えて攪拌する。
(4)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を、ホールピペットを用いて25mL加える。
(5)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行う。得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。
(6)空試験は、試料を入れないで上記(1)~(5)を行う。
3.計算
以下の式により水酸基価を算出する。
水酸基価(mgKOH/g)=[(B-C)×f×28.05]/S+D
ここで、
B: 空試験に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
C: 試料に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
f: 0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、
S: 試料の重量(g)、
D: 酸価、
28.05: 水酸化カリウムの分子量56.11の1/2、
である。
高水酸基価樹脂としては、上述した各種の粘着付与樹脂のうち所定値以上の水酸基価を有するものを用いることができる。高水酸基価樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、高水酸基価樹脂として、水酸基価が50mgKOH/g以上のテルペンフェノール樹脂を好ましく採用し得る。テルペンフェノール樹脂は、フェノールの共重合割合によって水酸基価を任意にコントロールすることができるので好都合である。
特に限定するものではないが、高水酸基価樹脂を使用する場合、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占める高水酸基価樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)の割合は、凡そ5重量%以上であってもよく、10重量%以上でもよく、15重量%以上でもよく、20重量%以上でもよい。いくつかの態様において、粘着付与樹脂全体に占める高水酸基価樹脂の割合は、例えば凡そ30重量%以上とすることが好ましい。これにより、高水酸基価樹脂使用の効果が好ましく発揮される。いくつかの好ましい態様において、粘着付与樹脂全体に占める高水酸基価樹脂の割合は、凡そ40重量%以上であり、凡そ50重量%以上(例えば50重量%超)であってもよく、凡そ60重量%以上でもよく、凡そ70重量%以上でもよく、凡そ80重量%以上でもよく、凡そ90重量%以上でもよい。粘着付与樹脂の実質的に全部(例えば凡そ95~100重量%、さらには凡そ99~100重量%)が高水酸基価樹脂であってもよい。
上記高水酸基価樹脂の軟化点は特に限定されない。高水酸基価樹脂の軟化点は、例えば凡そ50℃以上であってよく、凝集力向上の観点から、軟化点(軟化温度)が凡そ80℃以上である高水酸基価樹脂を好ましく採用し得る。例えば、このような軟化点を有するテルペンフェノール樹脂を好ましく用いることができる。高水酸基価樹脂の軟化点は、凡そ100℃以上であってもよく、凡そ110℃以上でもよい。高水酸基価樹脂の軟化点の上限は特に制限されない。被着体への接着性の観点から、軟化点が凡そ200℃以下(より好ましくは凡そ180℃以下)の高水酸基価樹脂を好ましく使用し得る。いくつかの態様において、高水酸基価樹脂の軟化点は160℃未満であってもよく、150℃未満でもよく、145℃未満でもよく、140℃未満でもよく、130℃未満でもよく、120℃未満でもよい。
粘着剤層中の高水酸基価樹脂の含有量は、目的とする粘弾性特性を満足する限りにおいて特に制限はない。いくつかの態様において、高水酸基価樹脂の含有量は、接着力向上の観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対して通常は凡そ1重量部以上であり、凡そ5重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ8重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは凡そ12重量部以上(例えば15重量部以上)である。また、いくつかの態様において、粘着剤層中の高水酸基価樹脂の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば70重量部以下であり、60重量部以下であってもよく、50重量部以下でもよく、40重量部以下でもよく、30重量部以下でもよい。いくつかの好ましい態様において、上記高水酸基価樹脂の含有量は、30重量部未満であり、より好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは22重量部以下であり、20重量部以下であってもよい。
ここに開示される粘着剤層が粘着付与樹脂を含む場合、粘着付与樹脂としては、粘着剤層のバイオマス炭素比向上の観点から、植物に由来する粘着付与樹脂(植物性粘着付与樹脂)を好ましく作用し得る。植物性粘着付与樹脂の例としては、例えば上述のロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂が挙げられる。植物性粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される粘着剤層が粘着付与樹脂を含む場合、粘着付与樹脂の総量に占める植物性粘着付与樹脂の割合は、30重量%以上(例えば50重量%以上、典型的には80重量%以上)とすることが好ましい。いくつかの態様において、粘着付与樹脂の総量に占める植物性粘着付与樹脂の割合は、90重量%以上(例えば95重量%以上、典型的には99~100重量%)である。ここに開示される技術は、植物性粘着付与樹脂以外の粘着付与樹脂を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。
粘着剤層中の粘着付与樹脂の含有量は、目的とする粘弾性特性を満足する限りにおいて特に制限はない。いくつかの態様において、粘着付与樹脂の含有量は、軽圧着接着力を含む接着力向上の観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対して通常は凡そ1重量部以上であり、凡そ5重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ8重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは凡そ12重量部以上(例えば15重量部以上)である。他のいくつかの態様において、アクリル系ポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、凡そ20重量部以上であってもよく、凡そ25重量部以上でもよく、凡そ30重量部以上でもよく、凡そ35重量部以上でもよい。かかる含有量は、例えば、比較的分子量の小さいアクリル系ポリマーを使用する態様において、好ましく適用され得る。また、いくつかの態様において、粘着剤層中の粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば70重量部以下であり、60重量部以下であってもよく、50重量部以下でもよく、40重量部以下でもよく、30重量部以下でもよい。いくつかの好ましい態様において、粘着付与樹脂の含有量は、30重量部未満であり、より好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは22重量部以下であり、20重量部以下であってもよい。粘着付与樹脂の含有量を制限することにより、-20℃貯蔵弾性率を低く維持しやすい。
いくつかの好ましい態様において、粘着剤層は、上述の粘着付与樹脂の1種または2種以上と、アクリル系オリゴマーの1種または2種以上と、を含む。粘着付与樹脂とアクリル系オリゴマーとを併用することにより、より高い接着力(例えば軽圧着接着力等)を得ることができる。粘着剤層におけるアクリル系オリゴマーの含有量C[重量%]に対する粘着付与樹脂の含有量C[重量%]の比(C/C)は、特に限定されず、例えば、0.1以上10以下とすることが適当である。いくつかの態様において、上記比(C/C)は、0.25以上であり、0.4以上であってもよく、0.7以上でもよく、0.8以上でもよい。上記比(C/C)が高いほど、粘着付与樹脂の添加効果が効果的に発揮され得る。いくつかの好ましい態様において、上記比(C/C)は凡そ1以上(例えば1.0超)であり、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上であり、2.5以上であってもよく、3.0以上でもよく、3.5以上でもよい。また、アクリル系オリゴマーの添加効果を得る観点から、いくつかの態様において、上記比(C/C)は凡そ9以下であり、7以下が適当であり、5以下であってもよく、3以下でもよい。他のいくつかの態様において、上記比(C/C)は、2以下であってもよく、1.5以下でもよく、1.2以下でもよい。
いくつかの好ましい態様において、粘着剤層に含まれるアクリル系オリゴマーおよび粘着付与樹脂の合計量(総量)は、ここに開示される技術による効果を好ましく発揮する観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ1重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ10重量部以上、より好ましくは凡そ16重量部以上、さらに好ましくは20重量部以上、特に好ましくは25重量部以上である。他のいくつかの態様において、上記アクリル系オリゴマーおよび粘着付与樹脂の合計量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ30重量部以上であり、凡そ35重量部以上であることが適当であり、凡そ40重量部以上でもあってもよく、凡そ45重量部以上でもよく、凡そ50重量部以上でもよい。かかる合計量は、比較的分子量の小さいアクリル系ポリマーを使用する態様において、好ましく適用され得る。また、上記アクリル系オリゴマーおよび粘着付与樹脂の合計量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して120重量部未満(例えば凡そ80重量部以下)とすることが適当であり、凡そ70重量部以下であってもよい。いくつかの好ましい態様において、上記アクリル系オリゴマーおよび粘着付与樹脂の合計量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、60重量部未満であり、より好ましくは凡そ50重量部以下、さらに好ましくは凡そ40重量部以下、特に好ましくは35重量部以下であり、30重量部以下であってもよく、28重量部以下でもよく、26重量部以下でもよい。
ここに開示される技術において、粘着剤層中のアクリル系ポリマー、粘着付与樹脂およびアクリル系オリゴマーの合計量(総量)は、ここに開示される技術による効果が発揮されるよう適切に設定され、特定の範囲に限定されるものではない。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層全体に占めるアクリル系ポリマー、粘着付与樹脂およびアクリル系オリゴマーの合計量(総量)は、ここに開示される技術による効果を好ましく発揮する観点から、50重量%超であることが適当であり、好ましくは凡そ70重量%以上、より好ましくは凡そ90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上(例えば95重量%以上100重量%以下あるいは100重量%未満)であり、98重量%以上であってもよい。
(架橋剤)
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は、必要に応じて架橋剤を含んでもよい。架橋剤の種類は特に制限されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アミン系架橋剤、シランカップリング剤等が挙げられる。架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤が好ましく、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤がより好ましい。架橋剤を適切に選定して使用することにより、粘着剤層は適度な凝集力を得て、接着力と凝集力のバランスのよい粘着剤を形成することができる。なお、ここに開示される技術における粘着剤層は、上記架橋剤を、架橋反応後の形態、架橋反応前の形態、部分的に架橋反応した形態、これらの中間的または複合的な形態等で含有し得る。上記架橋剤は、典型的には、専ら架橋反応後の形態で粘着剤層に含まれている。
イソシアネート系架橋剤としては、多官能イソシアネート(1分子当たり平均2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、イソシアヌレート構造を有するものを包含する。)が好ましく使用され得る。イソシアネート系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
多官能イソシアネートの例として、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート類の具体例としては、1,2-エチレンジイソシアネート;1,2-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-テトラメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート等のテトラメチレンジイソシアネート;1,2-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5-ヘキサメチレンジイソシアネート等のヘキサメチレンジイソシアネート;2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネート類の具体例としては、イソホロンジイソシアネート;1,2-シクロヘキシルジイソシアネート、1,3-シクロヘキシルジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート等のシクロヘキシルジイソシアネート;1,2-シクロペンチルジイソシアネート、1,3-シクロペンチルジイソシアネート等のシクロペンチルジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネート類の具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート等が挙げられる。
好ましい多官能イソシアネートとして、1分子当たり平均して3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートが例示される。かかる3官能以上のイソシアネートは、2官能または3官能以上のイソシアネートの多量体(典型的には2量体または3量体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上の多官能イソシアネートとの付加反応生成物)、重合物等であり得る。例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの2量体や3量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート構造の3量体付加物)、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、等の多官能イソシアネートが挙げられる。かかる多官能イソシアネートの市販品としては、旭化成ケミカルズ社製の商品名「デュラネートTPA-100」、東ソー社製の商品名「コロネートL」、同「コロネートHL」、同「コロネートHK」、同「コロネートHX」、同「コロネート2096」等が挙げられる。
ここに開示される技術は、架橋剤として少なくともイソシアネート系架橋剤を使用する態様で好ましく実施され得る。イソシアネート系架橋剤の使用量は特に限定されない。いくつかの態様において、イソシアネート系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば、凡そ0.1重量部以上とすることができる。凝集力と密着性との両立等の観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は、通常、凡そ0.3重量部以上(例えば0.5重量部以上)とすることが好ましい。いくつかの好ましい態様において、アクリル系ポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は凡そ1.0重量部以上であり、より好ましくは凡そ1.5重量部以上、さらに好ましくは凡そ2.0重量部以上、特に好ましくは凡そ2.5重量部以上であり、凡そ2.8重量部以上であってもよい。また、被着体に対する密着性向上の観点から、上記イソシアネート系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して10重量部以下とすることが適当であり、好ましくは8重量部以下、より好ましくは6重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下、特に好ましくは4重量部以下であり、3.5重量部以下であってもよく、3.2重量部以下でもよい。特に限定するものではないが、モノマー成分としてカルボキシ基含有モノマーを含むアクリル系ポリマーに対して、上記イソシアネート系架橋剤含有量が好ましく適用され得る。
他のいくつかの態様において、イソシアネート系架橋剤の使用量は、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して、凡そ0.01重量部以上とすることができ、凝集力と密着性との両立等の観点から、凡そ0.02重量部以上とすることが適当であり、凡そ0.05重量部以上とすることが好ましく、0.1重量部以上がより好ましい。かかる態様において、上記イソシアネート系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して5重量部以下とすることが適当であり、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下(例えば1.0重量部未満)、さらに好ましくは0.7重量部以下、特に好ましくは0.4重量部以下であり、0.3重量部以下であってもよい。特に限定するものではないが、モノマー成分として水酸基含有モノマーを含むアクリル系ポリマーに対して、上記イソシアネート系架橋剤含有量が好ましく適用され得る。
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を特に制限なく用いることができる。1分子中に3~5個のエポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましい。エポキシ系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に限定するものではないが、エポキシ系架橋剤の具体例として、例えばN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「TETRAD-C」および商品名「TETRAD-X」、DIC社製の商品名「エピクロンCR-5L」、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX-512」、日産化学工業社製の商品名「TEPIC-G」等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤の使用量は特に限定されない。エポキシ系架橋剤の使用量は、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0重量部を超えて凡そ1重量部以下(典型的には凡そ0.001~1重量部)とすることができる。凝集力の向上効果を好適に発揮する観点から、通常、エポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.002重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ0.005重量部以上であり、例えば凡そ0.01重量部以上であってもよく、凡そ0.02重量部以上でもよい。また、被着体に対する密着性向上の観点から、エポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.7重量部以下とすることができ、凡そ0.5重量部以下が適当であり、凡そ0.2重量部以下が好ましく、凡そ0.1重量部以下(例えば0.1重量部未満)がより好ましく、0.07重量部以下であってもよく、0.04重量部以下でもよく、0.03重量部以下でもよい。エポキシ系架橋剤の使用量を所定の範囲で制限することにより、十分な接着力を保持しやすい。
いくつかの好ましい態様において、架橋剤として、イソシアネート系架橋剤と、該イソシアネート系架橋剤とは架橋性官能基の種類が異なる少なくとも1種の架橋剤とが組み合わせて用いられる。ここに開示される技術は、イソシアネート系架橋剤以外の架橋剤(すなわち、イソシアネート系架橋剤とは架橋性反応基の種類の異なる架橋剤。以下「非イソシアネート系架橋剤」ともいう。)とイソシアネート系架橋剤とを組み合わせて用いる態様で好ましく実施され得る。
イソシアネート系架橋剤と組み合わせて用いられ得る非イソシアネート系架橋剤の種類は特に制限されず、上述の架橋剤から適宜選択して用いることができる。非イソシアネート系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの好ましい態様において、非イソシアネート系架橋剤としてエポキシ系架橋剤を採用することができる。例えば、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用することにより、より優れた粘着特性が実現され得る。
イソシアネート系架橋剤の含有量と非イソシアネート系架橋剤(好適にはエポキシ系架橋剤)の含有量との関係は特に限定されず、所定の粘弾性特性を満足する範囲で適切に設定される。イソシアネート系架橋剤の含有量は、例えば、非イソシアネート系架橋剤(好適にはエポキシ系架橋剤)の含有量に対して1倍よりも大きく、凡そ10倍以上であることが適当であり、好ましくは凡そ50倍以上、より好ましくは凡そ80倍以上、さらに好ましくは凡そ100倍以上(例えば100倍超)、特に好ましくは凡そ120倍以上(例えば凡そ140倍以上)である。また、イソシアネート系架橋剤と非イソシアネート系架橋剤(好適にはエポキシ系架橋剤)とを組み合わせて用いることによる効果を好適に発揮する観点から、通常、非イソシアネート系架橋剤(好適にはエポキシ系架橋剤)の含有量に対するイソシアネート系架橋剤の含有量は、例えば凡そ1000倍以下であり、凡そ500倍以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ300倍以下、より好ましくは凡そ200倍以下、さらに好ましくは凡そ180倍以下(例えば凡そ160倍以下)である。
ここに開示される粘着剤組成物における架橋剤の含有量(架橋剤の総量)は、特に限定されない。凝集性の観点から、上記架橋剤の含有量は、通常、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.001重量部以上であり、凡そ0.01重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ0.1重量部以上であり、凡そ1重量部以上であってもよく、凡そ2重量部以上でもよく、凡そ2.5重量部以上でもよい。また、粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、通常、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ20重量部以下であり、凡そ15重量部以下とすることが適当であり、凡そ10重量部以下とすることが好ましい。いくつかの好ましい態様において、アクリル系ポリマー100重量部に対する架橋剤の含有量は5.0重量部以下であり、4.0重量部以下であってもよく、3.5重量部以下でもよい。
(その他の添加剤)
粘着剤組成物には、上述した各成分以外に、必要に応じてレベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防錆剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤が含まれていてもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
ここに開示される粘着剤層(粘着剤からなる層)は、水系粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、典型的には、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称されるものが含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。溶剤型粘着剤組成物に含まれる有機溶媒としては、上述の溶液重合で用いられ得る有機溶媒(トルエンや酢酸エチル等)として例示した1種または2種以上を特に制限なく用いることができる。ここに開示される技術は、粘着特性等の観点から、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える態様で好ましく実施され得る。
ここに開示される粘着剤層は、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、剥離性を有する表面(剥離面)または非剥離性の表面に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法を採用することができる。基材を有する構成の粘着シートでは、例えば、該基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。生産性の観点から、転写法が好ましい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。なお、ここに開示される粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、このような形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の、従来公知のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。
架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40~150℃程度とすることができ、通常は60~130℃程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
(厚さ)
粘着剤層の厚さは特に制限されず、用途や使用目的等に応じて、例えば0.1~500μmの範囲で適当な厚さを有する粘着剤層を有する構成が採用され得る。いくつかの態様において、粘着シートが過度に厚くなることを避ける観点から、粘着剤層の厚さは、通常、凡そ100μm以下が適当であり、好ましくは凡そ70μm以下、より好ましくは凡そ60μm以下、さらに好ましくは凡そ50μm以下である。粘着剤層の厚さは凡そ35μm以下とすることができ、例えば凡そ30μm以下であってもよく、20μm以下でもよく、15μm以下でもよく、10μm以下でもよく、5μm以下でもよい。厚さの制限された粘着剤層は、薄厚化、軽量化の要請によく対応したものとなり得る。また一般に、粘着剤層の厚さが小さくなると、被着体に対する密着性は低下しやすい傾向にあるが、ここに開示される技術によると、制限された厚さの粘着剤層を有する構成で、軽圧着接着力等、十分な接着力を実現することができる。粘着剤層の厚さの下限は、被着体に対する密着性の観点からは、いくつかの態様において、凡そ0.5μm以上が適当であり、凡そ1μm以上であってもよく、凡そ3μm以上とすることが有利であり、軽圧着接着力を含む接着力向上の観点から、好ましくは凡そ10μm以上、より好ましくは凡そ12μm以上(例えば12μm超)、さらに好ましくは凡そ15μm以上であり、例えば凡そ18μm以上であってもよい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層の厚さは20μm超であり、24μm以上であってもよく、27μm以上でもよく、凡そ30μm以上でもよく、凡そ35μm以上でもよく、凡そ40μm以上でもよい。なお、基材の各面に第1粘着剤層と第2粘着剤層とをそれぞれ有する基材付き両面粘着シートにおいては、第1粘着剤層と第2粘着剤層とは同一の厚さであってもよく、相互に異なる厚さであってもよい。
(バイオマス炭素比)
いくつかの態様において、粘着剤層はバイオマス由来材料を含み、そのバイオマス炭素比が所定値以上であり得る。粘着剤層のバイオマス炭素比は、例えば1%以上であり、10%以上であってもよく、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。粘着剤のバイオマス炭素比が高いことは、石油等に代表される化石資源系材料の使用量が少ないことを意味する。かかる観点において、粘着剤のバイオマス炭素比は高いほど好ましい。例えば、粘着剤層のバイオマス炭素比は、55%以上であってよく、60%以上であってもよく、70%以上でもよく、75%以上でもよく、80%以上でもよく、80%超でもよい。バイオマス炭素比の上限は、定義上100%であり、99%以下であってもよく、材料の入手容易性の観点から、95%以下でもよく、90%以下でもよい。良好な粘着性能を発揮しやすくする観点から、いくつかの態様において、粘着剤層のバイオマス炭素比は、例えば90%以下であってよく、85%以下でもよく、80%以下でもよい。
<基材>
ここに開示される粘着シートが片面粘着タイプまたは両面粘着タイプの基材付き粘着シートの形態である態様において、粘着剤層を支持する基材としては、樹脂フィルム、紙、布、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体等を用いることができる。紙の例としては、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が挙げられる。布の例としては、各種繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布等が挙げられる。上記繊維状物質としては、綿、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等が例示される。ゴムシートの例としては、天然ゴムシート、ブチルゴムシート等が挙げられる。発泡体シートの例としては、発泡ポリオレフィンシート、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリクロロプレンゴムシート等が挙げられる。金属箔の例としては、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。なお、粘着剤層を支持する基材は、粘着シートにおいて基材層ともいう。
基材は、バイオマス由来の材料から形成されたものであってもよく、非バイオマス由来の材料から形成されたものであってもよい。化石資源系材料への依存抑制に配慮した粘着シート作製の観点から、バイオマス由来の基材材料(典型的には樹脂フィルム)が好ましく使用される。
また、基材は、リサイクル可能な材料やリサイクルされた材料(リサイクル材料ともいう。)を用いて形成されたものであってもよい。かかるリサイクル材料としては、樹脂フィルムが好ましく用いられる。樹脂フィルム(例えばPETフィルム等のポリエステルフィルム)はリサイクルが可能であるので、植物由来の材料を用いているか否かにかかわらず、使用後の樹脂フィルムを再利用することで、持続的な再生産が可能であり、環境負荷を低減することができる。このような、リサイクル可能な樹脂フィルムや、リサイクルされた樹脂フィルムは、リサイクルフィルムともいう。上記リサイクル材料(例えばリサイクルフィルム)は、バイオマス由来の材料から形成されたものであってもよく、非バイオマス由来の材料から形成されたものであってもよい。
基材付き粘着シートを構成する基材としては、ベースフィルムとして樹脂フィルムを含むものを好ましく用いることができる。上記ベースフィルムは、典型的には、独立して形状維持可能な(非依存性の)部材である。ここに開示される技術における基材は、このようなベースフィルムから実質的に構成されたものであり得る。あるいは、上記基材は、上記ベースフィルムの他に、補助的な層を含むものであってもよい。上記補助的な層の例としては、上記ベースフィルムの表面に設けられた着色層、反射層、下塗り層、帯電防止層等が挙げられる。
上記樹脂フィルムは、樹脂材料を主成分(例えば、当該樹脂フィルム中に50重量%を超えて含まれる成分)とするフィルムである。樹脂フィルムの例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂フィルム;塩化ビニル系樹脂フィルム;酢酸ビニル系樹脂フィルム;ポリイミド系樹脂フィルム;ポリアミド系樹脂フィルム;フッ素樹脂フィルム;セロハン;等が挙げられる。樹脂フィルムは、天然ゴムフィルム、ブチルゴムフィルム等のゴム系フィルムであってもよい。なかでも、ハンドリング性、加工性の観点から、ポリエステルフィルムが好ましく、そのなかでもPETフィルムが特に好ましい。
なお、本明細書において「樹脂フィルム」とは、典型的には非多孔質のシートであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念(換言すると、不織布や織布を除く概念)である。上記樹脂フィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。また、そのような樹脂フィルムは非発泡であり得る。ここで非発泡の樹脂フィルムとは、発泡体とするための意図的な処理を行っていない樹脂フィルムのことを指す。非発泡の樹脂フィルムは、具体的には、発泡倍率が1.1倍未満(例えば1.05倍未満、典型的には1.01倍未満)の樹脂フィルムであり得る。
上記基材(例えば樹脂フィルム)には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、着色剤、分散剤(界面活性剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。各種添加剤の配合割合は、30重量%未満(例えば20重量%未満、典型的には10重量%未満)程度である。
上記基材(例えば樹脂フィルム)は、単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上の多層構造を有するものであってもよい。形状安定性の観点から、基材は単層構造であることが好ましい。多層構造の場合、少なくとも一つの層(好ましくは全ての層)は上記樹脂(例えばポリエステル系樹脂)の連続構造を有する層であることが好ましい。基材(典型的には樹脂フィルム)の製造方法は、従来公知の方法を適宜採用すればよく、特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的なフィルム成形方法を適宜採用することができる。
基材の表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。
また、ここに開示される技術が、基材付き片面粘着シートの形態で実施される場合、基材の背面に、必要に応じて剥離処理が施されていてもよい。剥離処理は、例えば、一般的なシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系等の剥離処理剤を、典型的には0.01μm~1μm(例えば0.01μm~0.1μm)程度の薄膜状に付与する処理であり得る。かかる剥離処理を施すことにより、粘着シートをロール状に巻回した巻回体の巻き戻しを容易にする等の効果が得られる。
基材を含む態様の粘着シートにおいて、該基材の厚さは特に限定されない。粘着シートが過度に厚くなることを避ける観点から、基材の厚さは、例えば凡そ200μm以下、好ましくは凡そ150μm以下、より好ましくは凡そ100μm以下とすることができる。粘着シートの使用目的や使用態様に応じて、基材の厚さは、凡そ70μm以下であってよく、凡そ50μm以下でもよく、凡そ30μm以下(例えば凡そ25μm以下)でもよい。いくつかの態様において、基材の厚さは、凡そ20μm以下であってよく、凡そ15μm以下でもよく、凡そ10μm以下(例えば凡そ5μm以下)でもよい。基材の厚さを小さくすることにより、粘着シートの総厚さが同じであっても粘着剤層の厚さをより大きくすることができる。被着体や基材との密着性向上の観点から有利となり得る。また、厚さの制限された基材は、薄厚化、軽量化の要請によく対応したものとなり得る。基材の下限は特に制限されない。粘着シートの取扱い性(ハンドリング性)や加工性等の観点から、基材の厚さは、通常は凡そ0.5μm以上(例えば1μm以上)、好ましくは凡そ2μm以上、例えば凡そ6μm以上である。いくつかの態様において、基材の厚さは、凡そ15μm以上とすることができ、凡そ25μm以上でもよい。
<剥離ライナー>
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成、粘着シートの作製、使用前の粘着シートの保存、流通、形状加工等の際に、剥離ライナーを用いることができる。剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。ライナー基材としては、前述の粘着シートの基材と同様、バイオマス由来の材料を用いて形成されたものや、リサイクル材料(リサイクルフィルム等)が好ましく用いられ得る。
<粘着シートの総厚>
ここに開示される粘着シート(粘着剤層を含み、基材層をさらに含み得るが、剥離ライナーは含まない。)の総厚さは特に限定されない。粘着シートの総厚さは、例えば凡そ1mm以下であり、凡そ500μm以下であってもよく、凡そ300μm以下とすることができ、薄型化の観点から、凡そ200μm以下が適当であり、凡そ150μm以下(例えば凡そ100μm以下)であってもよい。いくつかの好ましい態様では、粘着シートの厚さは凡そ50μm以下とすることができ、例えば凡そ35μm以下であってもよい。粘着シートの厚さの下限は、例えば0.1μm以上(例えば0.5μm以上)であり、凡そ3μm以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ10μm以上、より好ましくは凡そ15μm以上であり、さらに好ましくは凡そ20μm以上であり、凡そ30μm以上であってもよく、凡そ50μm以上でもよい。所定値以上の厚さを有する粘着シートは、被着体への密着性が得られやすく、また、取扱い性にも優れる傾向がある。なお、基材レスの粘着シートでは、粘着剤層の厚さが粘着シートの総厚さとなる。
<粘着シートの特性>
(軽圧着接着力)
いくつかの態様において、粘着シートは、23℃、50%RHの環境下において、0.5kgのローラを用いて、被着体としてステンレス鋼板(SUS板)に圧着し、同環境下に30分間放置した後、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される剥離強度(軽圧着接着力)が凡そ3N/25mm以上であることが好ましい。このような軽圧着接着力を示す粘着シートは、軽圧着条件でも良好な接着力を発揮し得る。上記軽圧着接着力は、凡そ5N/25mm以上であってもよく、凡そ10N/25mm以上でもよい。いくつかの好ましい態様において、上記軽圧着接着力は、凡そ15N/25mm以上(例えば17N/25mm以上)であり、凡そ20N/25mm以上であってもよく、23N/25mm以上でもよく、25N/25mm以上(例えば26N/25mm以上)でもよい。上記軽圧着接着力の上限は特に制限されないが、例えば凡そ50N/25mm以下であってもよい。上記軽圧着接着力は、より具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
(通常圧着接着力)
特に限定するものではないが、いくつかの態様において、粘着シートは、23℃、50%RHの環境下において、2kgのローラを用いて、被着体としてステンレス鋼板(SUS板)に圧着し、同環境下に30分間放置した後、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される剥離強度(通常圧着接着力)凡そ3N/25mm以上であることが好ましい。上記接着力を示す粘着シートは、良好な接着力を発揮し得る。上記通常圧着接着力は、凡そ5N/25mm以上であってもよく、凡そ10N/25mm以上でもよい。いくつかの好ましい態様において、上記通常圧着接着力は、凡そ15N/25mm以上(例えば17N/25mm以上)であり、凡そ20N/25mm以上であってもよく、23N/25mm以上でもよく、25N/25mm以上(例えば26N/25mm以上)でもよい。上記通常圧着接着力の上限は特に制限されないが、例えば凡そ50N/25mm以下であってもよい。上記通常圧着接着力は、より具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
(接着力比(軽圧着/通常圧着))
ここに開示される粘着シートは、上記通常圧着接着力P1[N/25mm]に対する上記軽圧着接着力P2[N/25mm]の比(P2/P1)が百分率で85%よりも大きいことが好ましい。かかる特性を満足する粘着シートは、軽圧着条件でも、十分な圧力で圧着した場合と同等の接着力(軽圧着接着性)を発揮し得る。上記比(P2/P1)は、90%以上であることが好ましく、92%以上がより好ましく、94%以上がさらに好ましい。いくつかの好ましい態様において、上記比(P2/P1)は95%よりも大きく、97%以上であってもよく、98%以上でもよく、99%以上でもよく、100%でもよい。
(バイオマス炭素比)
いくつかの態様において、粘着シートはバイオマス由来材料を含み、そのバイオマス炭素比が所定値以上であり得る。粘着シートのバイオマス炭素比は、例えば1%以上であり、10%以上であってもよく、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。粘着シートのバイオマス炭素比が高いことは、石油等に代表される化石資源系材料の使用量が少ないことを意味する。かかる観点において、粘着シートのバイオマス炭素比は高いほど好ましい。例えば、粘着シートのバイオマス炭素比は、55%以上であってよく、60%以上であってもよく、70%以上でもよく、75%以上でもよく、80%以上でもよく、80%超でもよい。バイオマス炭素比の上限は、定義上100%であり、99%以下であってもよく、材料の入手容易性の観点から、95%以下でもよく、90%以下でもよい。良好な粘着性能を発揮しやすくする観点から、いくつかの態様において、粘着シートのバイオマス炭素比は、例えば90%以下であってよく、85%以下でもよく、80%以下でもよい。
<用途>
ここに開示される粘着シートの用途は特に限定されず、各種用途に用いられ得る。ここに開示される粘着シートは、優れた軽圧着接着性を有するので、圧着時の圧力を制限することが望ましい用途において、例えば部材の接着固定に好ましく利用され得る。例えば、家電製品や、OA機器、スマートフォン等の携帯電子機器を含む電子機器における部材の固定に好適である。
上記携帯電子機器の非限定的な例には、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等が含まれる。なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは充分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。また、上記電子機器の例としては、パソコン(デスクトップ型、ノート型、タブレット型等)、テレビ等が挙げられる。これらは、液晶や有機EL等の表示装置(ディスプレイデバイス)を内蔵したものであり得る。
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートは、高極性材料に対して高い接着力を発揮することができる。そのような高極性面を構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼等の金属材料やガラス材料、PET等のポリエステル樹脂製部材が挙げられる。そのような高極性材料は、例えば、携帯電子機器等の電子機器の部材を構成するものであり得る。
特に限定するものではないが、いくつかの態様において、粘着シートは、例えば、LED(light emitting diode)等の各種光源や、自己発光する有機EL等の発光要素を含む電子機器に好ましく用いられる。例えば、有機EL表示装置や液晶表示装置を備える電子機器(典型的には携帯電子機器)に好ましく用いることができる。
図4は、ここに開示される粘着シートが用いられた携帯電子機器(スマートフォン)を模式的に示す一例である。図4に示すように、携帯電子機器500の筐体520の内部には、バッテリー(発熱要素)540が内蔵されている。また、携帯電子機器500は、粘着シート550を含んで構成されている。この構成例では、粘着シート550は、携帯電子機器500を構成する部材を固定する両面接着性のシート(両面粘着シート)の形態を有する。なお、携帯電子機器500は、表示部が入力部としても機能するタッチパネル570を備えている。ここに開示される粘着シートは、上記のような携帯電子機器の構成要素(部材接合手段)として好ましく用いられる。
また、ここに開示される粘着シートは、いくつかの態様において、バイオマス炭素比の高いアクリル系ポリマーを含む粘着剤層を有するものであり得ることから、従来の一般的なアクリル系粘着剤(すなわち、バイオマス炭素比の低いアクリル系粘着剤)が使用されている各種の用途において該アクリル系粘着剤の代替として用いられることで、化石資源系材料の依存抑制に貢献することができる。ここに開示される粘着シートは、化石資源系材料への依存度が低減された粘着シートとして好ましく利用され得る。
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
〔1〕 携帯電子機器であって、
前記携帯電子機器を構成する部材には、粘着シートが接合されており、
前記粘着シートは、粘着剤層を有し、
前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーと、アクリル系オリゴマーとを含み、
前記アクリル系ポリマーは、
炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、
反応性官能基を有するモノマーと、
を含むモノマー成分の重合物であり、
前記モノマー成分は、前記反応性官能基を有するモノマーを3重量%以上含み、
前記粘着剤層は、-20℃での貯蔵弾性率が220MPa未満である、携帯電子機器。
〔2〕 前記炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、炭素原子数が7または8の鎖状アルキル基を有するアルキルアクリレートである、上記〔1〕に記載の携帯電子機器。
〔3〕 前記炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートはヘプチルアクリレートを含む、上記〔1〕または〔2〕に記載の携帯電子機器。
〔4〕 前記炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは2-エチルヘキシルアクリレートを含む、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の携帯電子機器。
〔5〕 前記反応性官能基を有するモノマーは、カルボキシ基含有モノマーおよび水酸基含有モノマーから選択される少なくとも1種である、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の携帯電子機器。
〔6〕 前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は30万以上150万以下の範囲内である、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の携帯電子機器。
〔7〕 前記アクリル系オリゴマーのガラス転移温度は20℃以上200℃以下である、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の携帯電子機器。
〔8〕 前記粘着剤層における前記アクリル系オリゴマーの含有量は、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して30重量部未満である、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の携帯電子機器。
〔9〕 前記粘着剤層は粘着付与樹脂をさらに含む、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の携帯電子機器。
〔11〕 粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーと、アクリル系オリゴマーとを含み、
前記アクリル系ポリマーは、
炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、
反応性官能基を有するモノマーと、
を含むモノマー成分の重合物であり、
前記モノマー成分は、前記反応性官能基を有するモノマーを3重量%以上含み、
前記粘着剤層は、-20℃での貯蔵弾性率が220MPa未満である、粘着シート。
〔12〕 前記炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、炭素原子数が7または8の鎖状アルキル基を有するアルキルアクリレートである、上記〔11〕に記載の粘着シート。
〔13〕 前記炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートはヘプチルアクリレートを含む、上記〔11〕または〔12〕に記載の粘着シート。
〔14〕 前記炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは2-エチルヘキシルアクリレートを含む、上記〔11〕~〔13〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔15〕 前記反応性官能基を有するモノマーは、カルボキシ基含有モノマーおよび水酸基含有モノマーから選択される少なくとも1種である、上記〔11〕~〔14〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔16〕 前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は30万以上150万以下の範囲内である、上記〔11〕~〔15〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔17〕 前記アクリル系オリゴマーのガラス転移温度は20℃以上200℃以下である、上記〔11〕~〔16〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔18〕 前記粘着剤層における前記アクリル系オリゴマーの含有量は、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して30重量部未満である、上記〔11〕~〔17〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔19〕 前記粘着剤層は粘着付与樹脂をさらに含む、上記〔11〕~〔18〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔20〕 電子機器において部材の固定に用いられる、上記〔11〕~〔19〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔21〕 上記〔11〕~〔20〕のいずれかに記載の粘着シートを含む電子機器。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<実施例1>
(アクリル系ポリマーの合成)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてのn-ヘプチルアクリレート(n-HpA)93部およびアクリル酸(AA)7部と、重合溶媒としての酢酸エチルとを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部を加え、60℃~70℃で8時間溶液重合してアクリル系ポリマーの溶液を得た。このアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は90万であった。Mwの調整は、重合時のモノマー成分の濃度を調節することにより行った。なお、上記n-HpAは、バイオマス由来のヘプチルアルコールを用いて合成された、バイオマス由来のヘプチル基をエステル末端に有する化合物である。
(粘着剤組成物の調製)
上記で得たアクリル系ポリマーの溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部に対して、粘着付与樹脂として、テルペンフェノール樹脂A(商品名「YSポリスターT-115」、ヤスハラケミカル社製のテルペンフェノール樹脂、軟化点約115℃、水酸基価30~60mgKOH/g)20部と、アクリル系オリゴマー5部と、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物の75%酢酸エチル溶液、東ソー社製)3部(固形分基準)と、エポキシ系架橋剤(商品名「TETRAD-C」、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン、三菱ガス化学社製)0.02部とを加え、攪拌混合して本例に係る粘着剤組成物を調製した。
アクリル系オリゴマーとしては、次の方法で調製したものを用いた。具体的には、撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)95部およびAA5部と、重合開始剤としてのAIBN10部と、重合溶媒としての酢酸エチルとを仕込み、窒素気流中で1時間撹拌して重合系内の酸素を除去した後、85℃に昇温し、5時間反応させて固形分濃度50%のアクリルオリゴマーを得た。得られたアクリル系オリゴマーのMwは3600であった。
(粘着シートの作製)
得られた粘着剤組成物を、厚さ38μmのポリエステル製剥離ライナー(商品名「ダイアホイルMRF」、三菱ケミカル社製)の剥離面に塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ35μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層に、厚さ25μmのポリエステル製剥離ライナー(商品名「ダイアホイルMRF」、三菱ケミカル社製)の剥離面を貼り合わせた。このようにして、両面が上記2枚のポリエステル製剥離ライナーで保護された厚さ35μmの基材レス両面粘着シートを得た。
<実施例2~7、10~16および比較例1~2>
アクリル系ポリマーのモノマー組成、Mw、粘着付与樹脂の種類および量、アクリル系オリゴマーの量、架橋剤の種類および量、粘着剤層の厚さを表1に示すように変更した他は基本的に実施例1と同様の方法により、各例に係る粘着剤組成物をそれぞれ調製し、得られた粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして各例に係る基材レス両面粘着シートを作製した。アクリル系ポリマーのMwの調整は、重合時のモノマー成分の濃度を調節することにより行った。
なお、表1中、2EHAは2-エチルヘキシルアクリレートを、BAはn-ブチルアクリレートを、HEAはヒドロキシエチルアクリレートを表す。また、表1中、粘着付与樹脂としてのテルペンフェノール樹脂Bは、ヤスハラケミカル社製の商品名「YSポリスターS-145」(軟化点約145℃、水酸基価70~110mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂)であり、ロジンエステルは、ハリマ化成社製の商品名「ハリタック SE10」(水添ロジングリセリンエステル、軟化点75~85℃、水酸基価25~40mgKOH/g)である。
<実施例8>
実施例1に記載の方法で調製した粘着剤組成物を用意し、上記粘着剤組成物を、基材層としての厚さ2μmのPETフィルム(商品名「ルミラー」、東レ社製)の一方の表面(第1面)に塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ17μmの第1粘着剤層を形成した。上記第1粘着剤層に、厚さ25μmのポリエステル製剥離ライナー(商品名「ダイアホイルMRF」、三菱ケミカル社製)の剥離面を貼り合わせた。また、厚さ38μmのポリエステル製剥離ライナー(商品名「ダイアホイルMRF」、三菱ケミカル社製)を用意し、上記剥離ライナーの剥離面に上記粘着剤組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ17μmの第2粘着剤層を形成した。この第2粘着剤層を、第1粘着剤層が形成された基材層の粘着剤層非形成面に転写した。このようにして、本例に係る基材付き両面粘着シートを作製した。
<実施例9>
第1粘着剤層および第2粘着剤層の厚さをそれぞれ2μmに変更した他は実施例8と同様にして、本例に係る基材付き両面粘着シートを作製した。
<比較例3>
粘着剤層の組成を表1に示すように変更した他は実施例8と同様にして、本例に係る基材付き両面粘着シートを作製した。
<評価方法>
(通常圧着接着力)
粘着シート(両面粘着シート)の一方の粘着面に厚さ50μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちし、幅25mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製した。23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの他方の粘着面を、酢酸エチルで洗浄したステンレス鋼板(SUS304BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度(通常圧着接着力)[N/25mm]を測定した。上記剥離強度の測定において、引張試験機としては、島津製作所社製の「精密万能試験機、オートグラフ AG-IS 50N」またはその相当品が用いられる。なお、片面粘着シートについて上記剥離強度測定を実施する場合、PETフィルムの裏打ちは不要である。基材厚さが薄い場合(例えば基材厚さ25μm以下の場合)は、PETフィルムの裏打ちをしてもよい。
(軽圧着接着力)
被着体への圧着に使用したローラを、2kgのものから0.5kgのものに変更した他は上記通常圧着接着力の測定と同様の方法により剥離強度(軽圧着接着力)[N/25mm]を測定した。
(軽圧着/通常圧着の接着力比)
上記の方法で測定した通常圧着接着力[N/25mm]に対する軽圧着接着力[N/25mm]の接着力比(軽圧着/通常圧着)を百分率[%]で求めた。接着力比(軽圧着/通常圧着)が85%よりも高ければ、優れた軽圧着接着性を有すると判定される。
各例の概要および評価結果を表1に示す。
Figure 2024041001000002
表1に示されるように、実施例1~16に係る粘着剤は、アクリル系ポリマーと、アクリル系オリゴマーとを含み、アクリル系ポリマーのモノマー成分として、アルキル基の炭素原子数が7以上のアルキル(メタ)アクリレート(具体的にはn-HpAまたは2EHA)を含み、さらにカルボキシ基含有モノマー(具体的にはAA)または水酸基含有モノマー(具体的にはHEA)を3%以上含み、-20℃貯蔵弾性率が220MPa未満であった。上記実施例1~16に係る粘着シートは、接着力比(軽圧着/通常圧着)が85%よりも高かった。一方、比較例1は、実施例1~12と同じく、アクリル系ポリマーがモノマー成分としてn-HpAおよびAA3%以上を含むものであったが、粘着剤の-20℃貯蔵弾性率が220MPaであり、接着力比(軽圧着/通常圧着)は実施例よりも劣っていた。また、比較例2~3の結果から、-20℃貯蔵弾性率が220MPaよりも大きくなるほど、接着力比(軽圧着/通常圧着)が低下する傾向が認められた。特に、アクリル系ポリマーのモノマー成分として、アルキル基の炭素原子数が7以上のアルキル(メタ)アクリレートを使用せず、BAを使用した比較例2では、アクリル系ポリマーのMwが相対的に低く、架橋剤使用量も相対的に少量であったが、-20℃貯蔵弾性率が527MPaという高い値となり、接着力比(軽圧着/通常圧着)の低下が最も大きかった。
上記の結果から、アクリル系ポリマーとアクリル系オリゴマーとを含み、アクリル系ポリマーが、炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、反応性官能基を有するモノマーと、を含むモノマー成分の重合物であり、反応性官能基を有するモノマーの割合が3%以上であり、-20℃での貯蔵弾性率が220MPa未満である粘着剤を用いることにより、優れた軽圧着接着性が実現され得ることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1,2,3 粘着シート
10 支持基材
10A 第1面
10B 第2面(背面)
21 粘着剤層(第1粘着剤層)
21A 粘着面(第1粘着面)
21B 第2粘着面
22 粘着剤層(第2粘着剤層)
22A 粘着面(第2粘着面)
31,32 剥離ライナー
100,200,300 剥離ライナー付き粘着シート

Claims (10)

  1. 粘着剤層を有する粘着シートであって、
    前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーと、アクリル系オリゴマーとを含み、
    前記アクリル系ポリマーは、
    炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、
    反応性官能基を有するモノマーと、
    を含むモノマー成分の重合物であり、
    前記モノマー成分は、前記反応性官能基を有するモノマーを3重量%以上含み、
    前記粘着剤層は、-20℃での貯蔵弾性率が220MPa未満である、粘着シート。
  2. 前記炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、炭素原子数が7または8の鎖状アルキル基を有するアルキルアクリレートである、請求項1に記載の粘着シート。
  3. 前記炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートはヘプチルアクリレートを含む、請求項1または2に記載の粘着シート。
  4. 前記炭素原子数が7以上の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは2-エチルヘキシルアクリレートを含む、請求項1または2に記載の粘着シート。
  5. 前記反応性官能基を有するモノマーは、カルボキシ基含有モノマーおよび水酸基含有モノマーから選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の粘着シート。
  6. 前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は30万以上150万以下の範囲内である、請求項1または2に記載の粘着シート。
  7. 前記アクリル系オリゴマーのガラス転移温度は20℃以上200℃以下である、請求項1または2に記載の粘着シート。
  8. 前記粘着剤層における前記アクリル系オリゴマーの含有量は、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して30重量部未満である、請求項1または2に記載の粘着シート。
  9. 前記粘着剤層は粘着付与樹脂をさらに含む、請求項1または2に記載の粘着シート。
  10. 電子機器において部材の固定に用いられる、請求項1または2に記載の粘着シート。
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