JP2024037468A - 加圧・歪装置、それを用いたx線回折装置、顕微ラマン散乱測定装置、および、光学顕微鏡 - Google Patents

加圧・歪装置、それを用いたx線回折装置、顕微ラマン散乱測定装置、および、光学顕微鏡 Download PDF

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Abstract

【課題】 一軸方向に加圧し、かつ、それと垂直な方向の回転を加えた状態で、一軸方向、および、それと垂直な方向から試料の物性評価を自動で測定可能な加圧・歪装置、それを用いたX線回折装置、顕微ラマン散乱測定装置、および、光学顕微鏡を提供すること。【解決手段】 本発明の加圧・歪装置は、試料を挟持するための第1および第2のダイヤモンドアンビルを備え、第1のダイヤモンドアンビルが回転する試料用保持部と、第1のダイヤモンドアンビルを回転させる回転機構と、第1のダイヤモンドアンビル側から機械的に圧力を印加する押圧機構と、第2のダイヤモンドアンビルに電気信号による圧力を印加し、中空であるアクチュエータと、第1および第2のダイヤモンドアンビルに挟持される試料に印加される圧力を検知する圧力センサと、これらの動作を制御し、検知する制御機構とを備える。【選択図】 図1

Description

本発明は、加圧・歪装置、それを用いたX線回折装置、顕微ラマン散乱測定装置、および、光学顕微鏡に関し、詳細には、ダイヤモンドアンビルを用いた超高圧加圧・歪装置、それを用いたX線回折装置、顕微ラマン散乱測定装置、および、光学顕微鏡に関する。
ダイヤモンドアンビルセル(DAC)は、100万気圧を超えるような非常に高い圧力を発生することが知られるが、12GPa以上の圧力下では、あらゆる物質は固体となってしまうため、等方圧力下での実験とはならずに、差応力下での実験となる。よって、歪み・差応力下での物質の状態を知ることも必要となる。高圧下で加圧される試料の物性評価が数々おこなわれてきている(例えば、非特許文献1~7を参照)。
非特許文献1によれば、モータ駆動により、加圧状態のDAC内の試料に回転方向の歪みを与え、加圧軸方向でX線回折をおこなう装置が示されているが、ラディアル方向のX線回折には対応していないため、歪み状態に関する情報は得られない。非特許文献2、3によれば、DACの回転機構を有するが、ラディアル方向のX線回折には対応していない。
非特許文献4、5は、炭化タングステンアンビルを用いた加圧装置を開示するが、炭化タングステンはX線透過能が小さく、圧力下でのX線回折測定には向いていない。
非特許文献6によれば、ピエゾアクチュエータを使ったリモート加圧を実現しているが、ピエゾアクチュエータのみでは圧力のダイナミックレンジが小さい。さらに、非特許文献6ではDAC内の試料に歪みを与えることはできない。非特許文献7では、ガス圧メンブレンによる加圧機構、これと独立したピエゾアクチュエータにより自動加圧を実現しているが、やはり歪みを与える回転機構はない。
N.Novikovら,Journal of Superhard Materials,2015,Vol.37,pp.1-7 R.Nomuraら,Review of Scientific Instruments,2017,Vol.88,Issue 4,pp.044501 V.Blankら,Physics Letters A,1994,Vol.188,Issue 3,pp.281-286 H.Razavi-Khosroshahiら,Journal of Materials Chemistry A,2017,Vol.5,Issue 38,pp.20298-20303 R.Z.Valievら,JOM,2006,Vol.58,Issue 4,pp.33-39 William J. Evansら,Review of Scientific Instruments,2007,78,073904 Stanislav V.Sinogeikinら,Review of Scientific Instruments,2015,86,072209
以上から、本発明の課題は、一軸方向に加圧し、かつ、それと垂直な方向の回転を加えた状態で、一軸方向、および、それと垂直な方向から試料の物性評価を自動で測定可能な加圧・歪装置、それを用いたX線回折装置、顕微ラマン散乱測定装置、および、光学顕微鏡を提供することである。
本発明による加圧・歪装置は、試料を挟持するための第1および第2のダイヤモンドアンビルを備え、前記第1のダイヤモンドアンビルが回転する試料用保持部と、前記第1のダイヤモンドアンビルを回転させる回転機構と、前記第1のダイヤモンドアンビル側から電気信号による圧力を印加し、中空であるアクチュエータと、前記第2のダイヤモンドアンビル側から機械的に圧力を印加する押圧機構と、前記第1および第2のダイヤモンドアンビルによって挟持される前記試料に印加される圧力を検知する圧力センサと、前記回転機構と、前記アクチュエータと、前記押圧機構との動作を制御し、前記圧力センサの動作を検知する制御機構とを備え、前記回転機構は、駆動部と、前記駆動部によって回転する、中空の回転軸とを備え、前記試料用保持部は、前記第1のダイヤモンドアンビルと接合し、前記第1のダイヤモンドアンビルを固定する、中空の第1の受け台と、前記第1の受け台を支持し、中空の第1の支持台であって、前記アクチュエータによる圧力を受け、前記第1のダイヤモンドアンビルに伝える圧力伝達部と、前記第1の受け台と接合され、前記回転軸と係合して回転する回転部と、前記圧力伝達部から受けた荷重に抗し、前記回転部を回転させるベアリングとを備える、第1の支持台と、前記第2のダイヤモンドアンビルと接合し、前記第2のダイヤモンドアンビルを固定する、中空の第2の受け台と、前記第2の受け台を支持し、前記押圧機構による圧力を受け、前記第2のダイヤモンドアンビルに伝える、中空の第2の支持台と、前記第1および第2のダイヤモンドアンビルを露出させつつ、前記第1の受け台と、前記第1の支持台と、前記第2の受け台と、前記第2の支持台とを保持する、シリンダとを備え、前記回転軸は、前記アクチュエータ内に位置し、前記第1の支持台の前記回転部と係合し、前記第1のダイヤモンドアンビルを回転させ、これにより上記課題を達成する。
前記圧力伝達部と前記回転部との間には段差を有し、前記圧力伝達部は、前記回転部に対して凸であってよい。
前記押圧機構は、ステッピングモータ、油圧ピストン、および、ガス圧メンブレンからなる群から選択されてよい。
前記アクチュエータは、積層型ピエゾアクチュエータであってよい。
前記アクチュエータのストロークは、50μm以上200μm以下の範囲であってよい。
前記圧力センサは、水晶圧電式センサであってよい。
前記駆動部は、トルクを発生させるステッピングモータと、前記トルクを歯車によって前記回転軸に伝えるアーム部とを備え、前記アーム部は、前記回転軸に対して回動してよい。
前記制御機構は、(A)前記押圧機構が前記第2のダイヤモンドアンビル側から前記試料に圧力を印加し、(B)前記試料に圧力が印加された状態で、前記圧力センサが前記アクチュエータによる圧力値を測定し、前記アクチュエータの圧力開始点となるよう前記アクチュエータを調整し、(C)前記試料に圧力が印加された状態で、前記圧力開始点に調整された前記アクチュエータが前記第1のダイヤモンドアンビル側から連続的に圧力を印加し、(D)前記試料に圧力が印加された状態で、前記回転機構が前記第1のダイヤモンドアンビルを回転させる、ように前記回転機構と、前記押圧機構と、前記アクチュエータとの動作を制御し、前記圧力センサの動作を検知してよい。
前記試料の位置を決める位置決め機構をさらに備え、前記位置決め機構は、下部ステージと、前記第1の支持台と接続されて、前記試料の位置を調整する支持脚と、前記第2の支持台と当接する当て板とを備えてもよい。
前記下部ステージと接続され、前記加圧・歪装置の水平方向の向きを変える変向機構をさらに備えてもよい。
前記変向機構は、前記試料の水平方向および垂直方向の位置を調整してもよい。
前記制御機構は、前記変向機構の動作をさらに制御してもよい。
前記制御機構は、前記アクチュエータに電気信号を印加するアクチュエータ駆動回路と、前記圧力センサの圧力を変換し、測定する変換測定部と、前記押圧機構に駆動信号を送る押圧駆動回路と、前記回転機構に駆動信号を送る回転駆動回路と、前記アクチュエータ駆動回路、前記変換測定部、前記押圧駆動回路、および、前記回転駆動回路を制御する中央演算処理部とを備えてもよい。
前記回転駆動回路に接続されたパルスジェネレータをさらに備えてもよい。
本発明によるX線回折装置は、上述の加圧・歪装置を備え、これにより上記課題を解決する。
本発明による顕微ラマン散乱測定装置は、上述の加圧・歪装置を備え、これにより上記課題を解決する。
本発明による光学顕微鏡装置は、上述の加圧・歪装置を備え、これにより上記課題を解決する。
本発明の加圧・歪装置は、機械的に圧力を印加する押圧機構と電気信号による圧力を印加するアクチュエータとを備えるため、アクチュエータによる連続的加圧と、押圧機構による段階的な大きな加圧とが併用され、一軸方向(すなわち、加圧方向)にダイナミックレンジの大きな圧力を試料に連続的に印加できる。そのような圧力が印加された状態で回転機構により第1のダイヤモンドアンビルを回転させるので、試料には一軸方向に対して垂直な方向(ラディアルな方向)の回転が加わり、試料に歪みを付加できる。これら回転機構、アクチュエータ、押圧機構の動作は、圧力センサの検知とともに制御機構によって制御されるため、試料への圧力印加および歪み付与を自動で行うことができる。
また、本発明の加圧・歪装置は、試料用保持部の第1および第2の受け台、アクチュエータ、第1の受け台に係合する回転軸のいずれもが中空となっているため、一軸方向へ、例えば、X線を入射し、試料のX線回折測定を行うことができる。また、試料用保持部において第1および第2のダイヤモンドアンビルは露出されているので、一軸方向に対して垂直な方向からX線を入射し、試料のラディアル方向のX線回折測定を行うことができる。
本発明の加圧・歪装置を、X線源や光源、散乱光や回折光を受光する受光部、検出器等と組み合わせることにより、X線回折装置、顕微鏡ラマン散乱測定装置を提供できる。また、本発明の加圧・歪装置と顕微鏡とを組み合わせることにより、光学顕微鏡装置を提供できる。
本発明の加圧・歪装置を示す模式図 本発明の回転機構を示す模式図 位置決め機構を示す模式図 本発明の加圧・歪装置に適用される制御機構を示すブロック図 参考例1における圧力センサでモニタした荷重と発生圧力との関係を示す図 図5のAの領域を拡大して示す図 図5のBの領域を拡大して示す図 参考例1における一軸方向のX線回折パターンを示す図 参考例1におけるラディアル方向のX線回折図形を示す図 実施例1における圧力センサでモニタした荷重と発生圧力との関係を示す図 図10のCの領域を拡大して示す図 実施例1における一軸方向のX線回折パターンを示す図 実施例1におけるラディアル方向のX線回折図形を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
本発明の加圧・歪装置について説明する。
図1は、本発明の加圧・歪装置を示す模式図である。
本発明の加圧・歪装置100は、試料11Xを挟持する第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112を備え、第1のダイヤモンドアンビル111が回転する試料用保持部110と、第1のダイヤモンドアンビル111を回転させる回転機構120と、第1のダイヤモンドアンビル111側から電気信号による圧力を印加し、中空であるアクチュエータ130と、第2のダイヤモンドアンビル112側から機械的に圧力を印加する押圧機構140と、第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112によって挟持される試料11Xに印加される圧力を検知する圧力センサ150と、少なくともこれら回転機構120、アクチュエータ130、押圧機構140の動作を制御し、さらに、圧力センサ150の動作を検知する制御機構160とを備える。
本発明の加圧・歪装置100は、アクチュエータ130による電気信号に基づく連続的加圧と、押圧機構140による段階的かつ大きな機械的加圧との併用により、一軸方向(図1の水平方向)にダイナミックレンジの大きな圧力を試料11Xに連続的に印加できる。
そのような圧力が印加された状態で回転機構120により第1のダイヤモンドアンビル111を回転させるので、試料11Xには一軸方向に対して垂直な方向(ラディアル方向)の回転が加わり、試料11Xに歪みを付加できる。これら回転機構120、アクチュエータ130、押圧機構140の動作は、圧力センサ150の検知とともに制御機構160によって制御されるため、試料11Xへの圧力印加および歪み付与を自動で行うことができる。本願明細書では、試料に対して加圧のみならず、歪みも付与できる装置を称して、加圧・歪装置と呼ぶが、本発明の装置を与歪み加圧装置、あるいは、高圧下歪印加装置と呼んでもよい。
以降では各構成要素について詳細に説明する。
第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112は、ガスケット11Yを介して試料11Xを挟持するようになっている。第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112の試料11Xを挟持する端部は平坦となっており、その面積が小さいほど、試料11Xにかかる荷重は大きくなる。第1のダイヤモンドアンビル111の試料11Xを挟持する端部は、好ましくは、円形を有し、第2のダイヤモンドアンビル112の試料11Xを挟持する端部は、四角形、六角形、八角形等の多角形を有する。これにより、回転機構120によって第1のダイヤモンドアンビル111のみが容易に回転するので、試料11Xにラディアル方向の回転を加えることができる。試料11Xは、塩化ナトリウム(NaCl)などの圧力媒体物質、金などの標準試料とともに保持されてよい。
試料用保持部110は、第1のダイヤモンドアンビル111と接合し、第1のダイヤモンドアンビル111を固定する第1の受け台113と、第1の受け台113を支持する第1の支持台114と、第2のダイヤモンドアンビル112と接合し、第2のダイヤモンドアンビル112を固定する第2の受け台118と、第2の受け台118を支持し、押圧機構140による圧力を受け、これを第2のダイヤモンドアンビル112に伝える第2の支持台119と、これら第1の受け台113、第1の支持台114、第2の受け台118、および、第2の支持台119を保持するシリンダ11とを備える。
第1の受け台113、第1の支持台114、第2の受け台118、および、第2の支持台119は、いずれも、中空であるため、例えば、図1の水平方向からのX線を照射した際に試料11XのX線回折測定を可能にしたり、顕微鏡と組み合わせてその場観察を可能にしたりする。
また、試料用保持部110に保持された第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112は、220nmからテラヘルツ、ミリ波、さらにはマイクロ波までの非常に広い波長帯の光を透過することから、例えば、第2のダイヤモンドアンビル112側より赤外線レーザを照射し、高圧状態の試料11Xを加熱したり、単色光を入射し、高圧状態の試料11Xのラマン散乱スペクトルを測定したりできる。
シリンダ11は、第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112を露出させて保持するので、第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112によって挟持された、高圧状態の試料11Xに、一軸方向とは垂直な方向(ラディアル方向)からX線を照射し、X線回折測定を可能にする。図1では見やすさの観点から、ラディアル方向を紙面の下から上向きの矢印で示すが、実際には、紙面に対して垂直な方向を意図したものである。
シリンダ11は、第1、第2の受け台113、118を押しねじ11Zによって保持するようにしてもよい。これにより、試料11Xの水平方向の微妙な位置調整を可能にする。
第1の支持台114は、アクチュエータ130による圧力を受け、その圧力を第1のダイヤモンドアンビル111に伝える圧力伝達部115と、第1の受け台113と接合され、後述する回転軸122と係合して回転する回転部117と、圧力伝達部115から受けた荷重に抗し、回転部117を回転させるベアリング116とを備える。圧力伝達部115と回転部117との間には段差を有し、圧力伝達部115は、回転部117に対して凸となっていてよい。これにより、アクチュエータ130がベアリング116を介することで、回転部117と面接触しないので、アクチュエータ130による圧力によって回転部117が阻害されることなく、効果的に回転することを可能にする。
第1、第2の受け台113、118は、好ましくは、炭化タングステン等の硬質材料からなる。これにより、第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112を固定できる。第1、第2の受け台113、118は、好ましくは、それぞれ、六角穴付き止めねじ等の押しねじ11Zによって回転部117、および、第2の支持台119に固定され、位置決めされる。
アクチュエータ130は、外部からの電気信号を物理的な伸縮運動に変化できるものであれば特に制限はないが、代表的には、電気信号として電圧を力に変換する圧電素子である。中でも、積層型ピエゾアクチュエータであってよい。積層型であれば、電圧の印加によって、圧電素子の積層数に応じて、数nm~数百μmの範囲の伸縮が可能である。このようなナノメートルオーダの伸縮により、押圧機構140とは異なる連続的加圧が可能となる。このような圧電素子は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT、Pb(Zr,Ti)O)、ニオブ酸カリウム(KNN、(K,Na)NbO)等の積層構造体からなる。
アクチュエータ130のストローク(すなわち、最大伸縮の幅)には制限がある。しかしながら、ストロークが短ければ、押圧機構140との連動を多く制御すればよく、ストロークが長ければ、押圧機構140との連動を少なく制御すればよい。アクチュエータ130のストロークは、好ましくは、50μm以上200μm以下の範囲である。この範囲であれば、特別なアクチュエータとすることなく、超高圧(350GPaまで)まで連続加圧可能な加圧・歪装置を提供できる。中でも、ストロークが60μm以上100μm以下の範囲を有するアクチュエータは、入手が容易である。
アクチュエータ130は、回転軸122を内部に備えた状態でシリンダチューブ131に装填されていてよく、アクチュエータ130の伸縮に応じて、シリンダチューブ131内でアクチュエータ130は位置調整され得る。シリンダチューブ131の一方の端部は、第1の支持台114の圧力伝達部115に篏合されており、アクチュエータ130による圧力を、効率的に第1のダイヤモンドアンビル111に印加する。シリンダチューブ131のもう一方の端部には、筒状連結部132が取り付けられていてよい。筒状連結部132がアクチュエータ130に設けられた圧力センサ150を覆っていてよい。
押圧機構140は、機械的に第2のダイヤモンドアンビル112側に圧力を印加するものであれば特に制限はない。なお、本明細書において、機械的に圧力を印加するとは、第2のダイヤモンドアンビル112側に、てこの原理、バネの力、ねじの力、ガス圧、油圧などによる加圧であり、段階的ダイナミックに加圧をするものを意図する。
以降の説明では、図1の押圧機構140は、中空のガス圧メンブレンであり、外部ガス(図示せず)、必要に応じて増圧装置に接続されているものとするが、ガス圧メンブレン以外にも、ステッピングモータ、油圧ピストンを用いることができる。
アクチュエータ130と押圧機構140とを併用することにより、押圧機構140で印加される最小圧力ステップの間を0.1%ステップで埋めることができる。例えば、2GPa~350GPaのダイナミックレンジの大きな範囲を押圧機構140により達成し、その間の圧力をアクチュエータ130により0.1%ステップで埋め、連続加圧を可能にする。
圧力センサ150は、アクチュエータ130および/または押圧機構140によって第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112の間の試料11Xに印加される圧力を検知するものであれば特に制限はないが、例示的には、水晶式圧力センサ、ひずみゲージ式圧力センサ、半導体圧力センサなどがある。中でも、圧電効果を利用した水晶圧電式センサであれば、高荷重を測定でき、繰り返し利用できるため好ましい。
圧力センサ150を使用することにより、アクチュエータ130の加圧開始点を設定できる。詳細には、アクチュエータ130による圧力値が0であり、圧力値を検知し始める点をアクチュエータ130の加圧開始点となるように、圧力センサ150が検知する圧力値の変化に伴い、アクチュエータ130の印加電圧および位置が調整される。設定した加圧開始点からアクチュエータ130のストローク分だけ常に連続的な加圧が可能である。
当然ながら、圧力センサ150を用いれば、アクチュエータ130のストロークが最大値であることを検知して、加圧終了点を設定することもできる。設定した加圧終了点からアクチュエータ130のストローク分だけ連続的な減圧も可能である。
図2は、本発明の回転機構を示す模式図である。
回転機構120は、駆動部121と、駆動部121によって回転する回転軸122とを備える。回転軸122は、中空となっており、同じく中空のアクチュエータ130内に装填されるように位置し、第1の支持台114の回転部117に嵌め込まれるようにして係合している。駆動部121によって発生したトルクによって回転軸122が回転する。次いで、回転軸122の回転とともに、回転部117、それに接合した第1の受け台113および第1のダイヤモンドアンビル111が回転し、試料11Xがラディアル方向に回転する。この結果、試料11Xにはラディアル方向の歪みが付加される。
駆動部121は、好ましくは、トルクを発生させるステッピングモータ210と、トルクを回転軸122に伝える平歯車220と、回動可能なアーム部230とを備える。アーム部230は、ボルト240によってステッピングモータ210と回転可能に固定されており、回転軸122に対して回動するようになっている。アーム部230が回動することにより、回転軸122のアクチュエータ130内への装填を容易にする。平歯車220は、平歯車カバー250で覆われ、保護されていてよい。
図3は、位置決め機構を示す模式図である。
本発明の加圧・歪装置100は、試料11Xの位置を決める位置決め機構300をさらに備えてもよい。これにより、試料11Xの水平方向および垂直方向(ここでは、図1の紙面の上下方向)の微妙な位置を調節できる。この結果、水平方向およびラディアル方向のいずれにおいても、試料11Xの同じ位置に対してX線回折測定等の各種測定を正確に実施できる。
図3に示すように、位置決め機構300は、下部ステージ310と、第1の支持台114と接続されて、試料11Xの位置を調整する微動調整ネジ32Xを備えた支持脚320(以降では単に微動調整ネジ付支持脚と称する)と、第2の支持台119と当接する当て板330とを備える。微動調整ネジ付き支持脚320および当て板330は、下部ステージ310に固定されている。
微動調整ネジ付き支持脚320は、第1の支持台114と押し引きねじによって接続される。これにより、水平方向の微動を可能にする。微動調整ネジ付き支持脚320は、第1の支持台114に加えてシリンダチューブ131とも接続されてよい。これにより、安定した垂直方向の微動を達成できる。
本発明の加圧・歪装置100は、下部ステージ310に接続される変向機構340をさらに備えてもよい。変向機構340は回転可能となっており、加圧・歪装置100の水平方向の向きを変えることができる。これにより、自動で水平方向およびラディアル方向のX線回折測定等の各種測定を可能にする。変向機構340は、試料11Xの水平方向および垂直方向の位置を制御できるようになっていてよい。このような変向機構340は、1以上のステージおよびエンコーダを備えて構成されてよい。
再度図1を参照する。制御機構160は、上述したように、回転機構120、アクチュエータ130および押圧機構140の動作を制御し、圧力センサ150の動作を検知するので、加圧・歪装置100は、試料11Xに自動で圧力および歪みを付与できる。
詳細には、制御機構160は、次のように動作を制御する。
動作(A):まず、押圧機構140は、試料11Xに第2のダイヤモンドアンビル112側から機械的な圧力を印加する。押圧機構140がガス圧メンブレンであれば、外部ガス(図示せず)よりガスを導入すればよい。
動作(B):試料11Xに押圧機構140による機械的な圧力が印加された状態で、圧力センサ150がアクチュエータ130による圧力値を測定し、アクチュエータ130の圧力開始点となるよう、アクチュエータ130を調整する。このとき、好ましくは、アクチュエータ130のストロークは0であり、全く伸びていない状態である。このようにして、アクチュエータ130の圧力開始点が設定される。
例えば、アクチュエータ130が圧力を印加している場合には、印加電圧を調整し、アクチュエータ130のストロークを0にし、加圧直前となるようにする。例えば、アクチュエータ130が圧力を印加していない場合には、シリンダチューブ131内のアクチュエータ130の位置を調整し、加圧直前となるように位置調整する。このときも、アクチュエータ130のストロークが0である。
動作(C):次いで、押圧機構140が試料11Xに圧力を印加した状態で、加圧開始点に調整されたアクチュエータ130が第1のダイヤモンドアンビル111側に連続的に圧力を印加する。例えば、アクチュエータ130が積層型ピエゾアクチュエータであれば、電圧を徐々に印加するだけで、アクチュエータ130のストロークだけ第1のダイヤモンドアンビル111側に圧力を印加できるが、アクチュエータ130の伸縮量を制御することにより、ストローク内で細かく圧力を印加できる。
動作(D):試料11Xに機械的な圧力および電気信号による圧力が印加された状態で、回転機構120が第1のダイヤモンドアンビル111を回転させる。これにより、試料11Xにはラディアル方向の歪みが加わる。
なお、制御機構160は、動作(D)に先立って、押圧機構140、アクチュエータ130および圧力センサ150の上述した動作(A)~(C)に続いて、押圧機構140による機械的な加圧、および、アクチュエータ130による電気信号による加圧を繰り返すことにより、超高圧(例えば350GPa)まで連続的に試料11Xに圧力を印加することができる。
動作(E):制御機構160は、アクチュエータ130が第1のダイヤモンドアンビル111側に圧力を印加した状態で、押圧機構140が第2のダイヤモンドアンビル112側にさらなる圧力を印加する。例えば、アクチュエータ130が積層型ピエゾアクチュエータであり、押圧機構140がガス圧メンブレンであれば、積層型ピエゾアクチュエータに印加した電圧を維持した状態で、さらにガスを導入すればよい。これにより、アクチュエータ130と第1のダイヤモンドアンビル111とが物理的に近接するため、アクチュエータ130による圧力は第1のダイヤモンドアンビル111側にさらに印加される。
なお、動作(E)に先立って、アクチュエータ130への電圧を除去し、第1のダイヤモンドアンビル111側に印加される圧力を減圧してもよい。また、この減圧をアクチュエータ130のストロークだけ連続的に行ってもよい。
動作(F):次いで、押圧機構140が第2のダイヤモンドアンビル112側にさらなる圧力を印加した状態で、圧力センサ150はアクチュエータ130が第1のダイヤモンドアンビル111側に印加する圧力を検知し、その圧力値を検知し始める状態となるようにアクチュエータ130を調整する。この動作(F)は、上述した動作(B)と同様である。
動作(G):次いで、押圧機構140が試料11Xにさらなる圧力を印加した状態で、再度圧力開始点に調整されたアクチュエータ130が第1のダイヤモンドアンビル111側に連続的に圧力を印加する。動作(G)は、動作(C)と同様であるが、押圧機構140が印加する圧力が異なっている。このため、新たな圧力範囲において、アクチュエータ130の伸縮量を制御することにより、細かく圧力を印加できる。
このようにして、動作(E)~動作(G)を繰り返すことにより、超高圧(例えば350GPa)まで連続的に圧力を印加できる。本発明の加圧・歪装置100を用いれば、第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112が破壊するまで加圧でき、しかも破壊の終点を特定することができる。ここでは、超高圧まで加圧する動作について説明してきたが、アクチュエータ130のストロークが0である加圧開始点に代えて、ストロークの最大値を減圧開始点とし、逆の動作を行うことにより、超高圧から連続的に減圧することも可能であることは、当業者であれば容易に理解する。
また、動作(D)を動作(E)~動作(G)の所望の圧力において実施することにより、任意の圧力下での試料の歪み状態に関する情報を得ることができる。
制御機構160は、変向機構340の動作をさらに制御してもよい。本発明の加圧・歪装置100を、例えば、X線源およびX線検出器と組み合わせることにより、水平方向のみならずラディアル方向の試料11Xの歪み状態に関する情報を自動で得ることができる。
図4は、本発明の加圧・歪装置に適用される制御機構を示すブロック図である。
制御機構160は、少なくとも、アクチュエータ130に電圧などの電気信号を印加するアクチュエータ駆動回路410と、圧力センサ150の圧力を変換し、測定する変換測定部420と、押圧機構140に駆動電流などの駆動信号を送る押圧駆動回路430と、回転機構120に駆動電流などの駆動信号を送る回転駆動回路460と、アクチュエータ駆動回路410、変換測定部420、押圧駆動回路430および回転駆動回路460を制御する中央演算処理部440とを備える。これにより、上述の動作(A)~(G)による超高圧までの加圧、あるいは、その逆の超高圧からの減圧、ならびに、試料へのラディアル方向の歪み付加を可能にする。
アクチュエータ駆動回路410にはファンクションジェネレータ450がさらに接続されてもよい。これにより、アクチュエータ駆動回路410は、ファンクションジェネレータ450から出力される電気信号の波形(パルス信号)を有するパルス電圧を増幅し、アクチュエータ130に印加できる。すなわち、パルス幅に応じて、連続的にアクチュエータ130に電圧を印加できるので、連続的な加圧あるいは減圧を可能にする。例えば、1Hzのパルス電圧を用いれば、1秒周期で電圧を印加できるので、周期的な加減圧を可能にする。なお、ファンクションジェネレータはパルスジェネレータであってもよい。また、アクチュエータ駆動回路410は、パルス電圧を増幅して出力する電圧増幅機能を備えてもよい。
変換測定部420は、圧力センサ150の圧力を電荷量等の電気信号に変換し、測定するものであれば特に制限はない。例示的には、変換測定部420としてチャージアンプを使用できる。
押圧駆動回路430は駆動信号(例えば、駆動電流)を押圧機構140に送り、押圧機構140を作動させる。例えば、押圧機構140がガス圧メンブレンであれば、好ましくは、押圧駆動回路430は圧力コントローラであってよく、圧力コントローラからの電気信号によってガス圧メンブレンに供給されるガス圧が加減され、第2のダイヤモンドアンビル112側に印加される機械的な圧力を制御する。
回転駆動回路460は、駆動信号(例えば、駆動電流)を回転機構120に送り、回転機構120を作動させるが、好ましくは、パルスジェネレータ470がさらに接続される。パルスジェネレータ470が回転駆動回路460にパルス信号を与え、パルス信号の周波数を加減することによって、回転機構120の備えるステッピングモータ210(図2)のトルクを調整する。発生したトルクは、平歯車220(図2)を介して回転軸122に伝えられ、第1のダイヤモンドアンビル111とともに試料11Xにラディアル方向の歪みを付加する。
中央演算処理部440は、押圧機構140による機械的な段階的圧力の印加と、アクチュエータ130による電気的な微細な連続的圧力の印加とを繰り返し行うプログラム、および、所定の圧力において回転機構120による第1のダイヤモンドアンビル111を回転するプログラムが記録されたメモリ(図示せず)を備えてもよい。これにより、超高圧(例えば350GPa)までの加圧/超高圧からの減圧を自動的に行うとともに、所望の圧力において試料11Xにラディアル方向の歪みを付加ができる。また、キーボード、タッチパネルなどの入力装置(図示せず)を介して、押圧機構140のための駆動信号(駆動電流)の設定、アクチュエータ130および/または回転機構120のためのパルス信号の設定をしてもよく、これら設定値をメモリに記録させてもよい。
このような中央演算処理部440は、ハードウェアロジックによって構成されてもよいし、CPU(Central Processing Unit)を備えたパーソナルコンピュータを用いてソフトウェアによって実現されてもよい。
なお、加圧・歪装置100が変向機構340をさらに備える場合には、制御機構160は、変向機構340に駆動電流などの駆動信号を送る変向駆動回路(図示せず)をさらに備え、中央演算処理部440のメモリに、加圧・歪装置100の向きを変えるプログラムが格納されてもよい。
上述したように、本発明の加圧・歪装置100に、各種光源、あるいは、X線源、散乱光や回折光を受光する受光部、検出器等を備えることにより、高圧かつ歪みが付与された試料の物性を測定可能なX線回折装置や顕微ラマン散乱測定装置を構築できる。また、本発明の加圧・歪装置100を顕微鏡に搭載すれば、高圧かつ歪みが付与された試料を観察可能な光学顕微鏡装置を提供できる。当然ながら、これら各種測定装置を複数組み合わせてもよい。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[加圧・歪装置]
図1に示す加圧・歪装置100を次のようにして構築した。
第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112として先端0.3mmφのダイヤモンドアンビルを用いた。第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112の先端はいずれも平坦であったが、第1のダイヤモンドアンビル111の先端は円形に、第2のダイヤモンドアンビル112の先端は八角形に加工された。第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112は、それぞれ、炭化タングステンからなる、中空の第1、第2の受け台113、118に接合された。第1、第2の受け台113、118は六角穴付き止めねじ11Zにより、それぞれ、回転部117、第2の支持台119に固定された。
ここで、第1の受け台113は、後述のアクチュエータによる圧力を受ける圧力伝達部115、ベアリング116、および、回転軸と係合して回転する回転部117を備える第1の支持台114に保持された。回転部117が回転することにより、第1の受け台113とともに第1のダイヤモンドアンビル111を回転可能とした。一方、第2の受け台118は、後述の押圧機構140による圧力を受ける第2の支持台119と結合された。第1、第2の受け台113、118および第1、第2の支持台114、119は、第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112を露出させ状態で、ステンレス製のシリンダ11によって保持され、試料用保持部110を構成した。
押圧機構140としてガス圧メンブレン(DIAX社製)が、第2の受け台118側に設置された。ガス圧メンブレンは、アルゴンガス(図示せず)に接続され、押圧駆動回路430として圧力コントローラ(GE社製 PACE5000)によってガス圧が調整されるようにした。これを中央演算処理部440としてCPUを備えたパーソナルコンピュータに接続した。
アクチュエータ130は、中空積層圧電アクチュエータ(Piezosys
tem Jena GmbH製、HPSt 1000/25-15/80 VS35、チタン酸ジルコン酸鉛、ストローク長:80μm)であり、シリンダチューブ131に配置され、その一部が試料用保持部110に収容された。ピエゾアクチュエータには、アクチュエータ駆動回路410としてピエゾアクチュエータアンプ(Piezosystem Jena GmbH製、SVR 1000)410およびファンクションジェネレータ450(株式会社エヌエフ回路設計ブロック製、WF1973)を接続し、これをコンピュータに接続した。
圧力センサ150として水晶圧電式センサ(HBK製、CLP/62KN)をシリンダチューブに設置し、ガス圧メンブレンおよびピエゾアクチュエータによる負荷を測定した。変換測定部420として圧電センサアンプ(HBK製、CMD600)を接続し、イーサネットハブを介して、コンピュータに接続した。なお、圧力変化(負荷の変化)を、X線回折による金の格子定数から決定した(例えば、Taku Tsuchiya,JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH, VOL. 108, NO. B10, 2462,2003)。
回転機構120は、駆動部121としてギヤード型ステッピングモータ(オリエンタルモーター社製、PK564BW-H1005)と、そのトルクによって回転する中空の回転軸122とを備えた。回転駆動回路460は、パルスジェネレータ(ツジ電子製PM16C―04XDL)に接続されたステッピングモータードライバであった。回転軸122は、中空のアクチュエータ130内に装填され、回転部117と係合した。ステッピングモータの回転駆動回路460はコンピュータに接続された。
制御機構160は、ピエゾアクチュエータアンプ、ファンクションジェネレータ、圧電センサアンプ、押圧駆動回路(ガス圧メンブレンの回路)、回転駆動回路(回転機構の回路)、および、CPUを備え、これにより、回転機構120、押圧機構140およびアクチュエータ130の動作を制御し、圧力センサ150の動作を検知した。
加圧・歪装置100は、下部ステージ310と、微動調整ネジ付き支持脚320と、当て板330とを備える位置決め機構をさらに備え、試料の位置決めを行った。
[参考例1]
参考例1では、構築した加圧・歪装置において、試料11Xとしてガスケット11Y中心部の穴に金とBaF(フッ化バリウム)との混合物をセットし、第1のダイヤモンドアンビルを回転させることなく、試料に圧力を印加した際の試料の物性を調べた。
ガス圧メンブレンにより第1、第2のダイヤモンドアンビル111、112に約2GPaとなるよう機械的に加圧した。次いで、水晶圧電式センサによりピエゾアクチュエータの加圧開始点を調整した。その後、ファンクションジェネレータにより発生させたパルス信号(ピエゾ電圧)をピエゾアクチュエータアンプに入力し、その120倍の電圧をピエゾアクチュエータに供給し、アクチュエータを伸長させ第1のダイヤモンドアンビル111側を加圧した。ピエゾ電圧を1175Vまで加圧・固定し、再度、ガス圧メンブレンにより機械的に加圧した。このようにして得られた試料への圧力変化の様子を図5~図7に示す。各圧力を印加したときの、一軸方向(図1の水平方向)およびラディアル方向(図1の紙面に対して垂直方向)からのX線回折測定を行った。これらの結果を図8および図9に示す。
[実施例1]
実施例1では、構築した加圧・歪装置に変向機構340をさらに備え、回転可能とした加圧・歪装置を用いた。詳細には、加圧・歪装置の下部ステージ310を、X、Y、Z軸方向の位置を調整する各種ステージとロータリーエンコーダおよびリング型精密エンコーダとを組み合わせた変向機構340と接続した。
回転可能にした加圧・歪装置において、試料11Xとして金とBaF(フッ化バリウム)との混合物をガスケット11Y中心部の穴にセットし、試料に圧力を印加し、第1のダイヤモンドアンビルを回転させた際の試料の物性を調べた。試料に圧力を印加した状態で180°回転歪みを付与し、さらに180°(合計360°)回転歪みを付与した。これらの動作は自動にて行った。このときの圧力変化、一軸方向およびラディアル方向(図1の紙面に対して垂直方向)からのX線回折測定の結果を図10~図13に示す。
これらの結果をまとめて説明する。
図5は、参考例1における圧力センサでモニタした荷重と発生圧力との関係を示す図である。
図6は、図5のAの領域を拡大して示す図である。
図7は、図5のBの領域を拡大して示す図である。
図5によれば、本発明の加圧・歪装置を用いれば、一軸方向(図1の水平方向)に連続的に試料へ加圧できることが分かる。詳細には、図5のAの領域は、アクチュエータによる電気的な加圧を示し、図5のBの領域は、ガス圧メンブレンによる機械的な加圧を示し、その圧力範囲も2GPa~10GPaとダイナミックレンジも大きい。図6は、ピエゾ電圧を変化させた際の圧力の変化を示し、各ピエゾ電圧における試料番号をBaF3-1~BaF3-11とした。図7は、ピエゾ電圧を1175Vに固定し、ガス圧を変化させた際の圧力の変化を示し、各ガス圧における試料番号をBaF3-12~BaF3-18とした。
図8は、参考例1における一軸方向のX線回折パターンを示す図である。
図9は、参考例1におけるラディアル方向のX線回折図形を示す図である。
図8によれば、BaFは、3.6GPa未満では、Fluorite型構造が残存するが、3.6GPa以上ではCotunnite形構造に完全に変化することが分かった。このことから、試料に回転歪みを付与しない場合、Fluorite型構造からCotunnite形構造への相転移には、3.6GPa以上の圧力の印加が必要であることが分かった。
図9は、デバイ回折図形を方位ごとに展開した図であり、回折線中の「うねり」が歪みの大きさの度合いを示す。3.87GPa印加したBaF3-12のうねり(図9A)は、3.03GPa印加したBaF3-8のそれ(図9B)と比較すると大きかった。このことから、BaF中の歪みが増大することにより、Fluorite型構造からCotunnite形構造への相転移が進行することが分かった。
図10は、実施例1における圧力センサでモニタした荷重と発生圧力との関係を示す図である。
図11は、図10のCの領域を拡大して示す図である。
図10および図11には、ピエゾ電圧を980V、ガス圧を30Barに固定し、第1のダイヤモンドアンビルを2.60GPaで180°回転させ、次いで、さらに180°(合計360°)回転させたときの圧力変化が示される。図10および図11によれば、回転に伴う圧力の変化はわずかであった(2.60GPa→2.67GPa→2.64GPa)。なお、回転前、180°回転、360°回転の試料番号をBaF2-5~BaF2-7とした。
図12は、実施例1における一軸方向のX線回折パターンを示す図である。
図12によれば、回転前のBaF(BaF2-5)は、Fluorite型構造を有したが、180°回転後のBaF(BaF2-6)は、完全にCotunnite型構造を有することが分かった。さらに、180°回転したBaF(BaF2-7)では、Cotunnite型構造が安定化した。
試料に回転歪みを付与しなかった参考例1による図8と、試料に回転歪みを付与した実施例1による図12とを比較すると、回転歪みを付与することにより、より低い圧力(ここでは、わずか2.6GPa程度)にて、Fluorite型構造からCotunnite形構造への相転移を生じさせることができることが分かった。
図13は、実施例1におけるラディアル方向のX線回折図形を示す図である。
図13によれば、360°回転後のBaF2-7のうねり(図13A)は、回転前のBaF2-5のそれ(図13B)と比較すると大きかった。このことは、BaF中の歪みが増大することにより、Fluorite型構造からCotunnite形構造への相転移が進行することを示し、図9の結果に一致した。
以上説明してきたように、本発明の加圧・歪装置を用いれば、一軸方向に超高圧を印加した状態で、一軸方向に対して垂直方向に試料に回転歪みを加えることができることが示された。また、本発明の加圧・歪装置をX線回折装置と組み合わせることにより、一軸方向およびラディアル方向について、高圧下における歪みの物性に及ぼす効果を調べることができることが示された。本発明の加圧・歪装置は、制御機構を搭載しているため、加圧から回転歪みの付与までを自動で行うことができる。本発明の加圧・歪装置を、X線回折装置以外にも、光学顕微鏡や顕微ラマン散乱測定装置と組み合わせても、試料の観察、分子構造、化学結合、結晶状態等の各種物性を調べることができることは言うまでもない。
本発明の加圧・歪装置を用いれば、回転方向への歪みを付与し、高圧試料に任意の圧力で強制的に差応力を印加し、その状態で試料に対して垂直ならびに水平方向からX線を照射し、ラディアル方向を含めた回折X線によりその構造と応力状態を観察することができる。これらの動作をリモートでおこなえるように構築しているため、放射光施設等のハッチ内で強力X線を照射しながら安全に測定できる。
11 シリンダ
11X 試料
11Y ガスケット
11Z 押しねじ
11Z 六角穴付き止めねじ
100 加圧・歪装置
110 試料用保持部
111 第1のダイヤモンドアンビル
112 第2のダイヤモンドアンビル
113 第1の受け台
114 第1の支持台
115 圧力伝達部
116 ベアリング
117 回転部
118 第2の受け台
119 第2の支持台
120 回転機構
121 駆動部
122 回転軸
130 アクチュエータ
131 シリンダチューブ
132 筒状連結部
140 押圧機構
150 圧力センサ
160 制御機構
210 ステッピングモータ
220 平歯車
230 アーム部
240 ボルト
250 平歯車カバー
300 位置決め機構
310 下部ステージ
320 微動調整ネジ付き支持脚
32X 微動調整ネジ
330 当て板
340 変向機構
410 アクチュエータ駆動回路
420 変換測定部
430 押圧駆動回路
440 中央演算処理部
450 ファンクションジェネレータ
460 回転駆動回路
470 パルスジェネレータ

Claims (17)

  1. 試料を挟持するための第1および第2のダイヤモンドアンビルを備え、前記第1のダイヤモンドアンビルが回転する試料用保持部と、
    前記第1のダイヤモンドアンビルを回転させる回転機構と、
    前記第1のダイヤモンドアンビル側から電気信号による圧力を印加し、中空であるアクチュエータと、
    前記第2のダイヤモンドアンビル側から機械的に圧力を印加する押圧機構と、
    前記第1および第2のダイヤモンドアンビルによって挟持される前記試料に印加される圧力を検知する圧力センサと、
    前記回転機構と、前記アクチュエータと、前記押圧機構との動作を制御し、前記圧力センサの動作を検知する制御機構と
    を備え、
    前記回転機構は、駆動部と、前記駆動部によって回転する、中空の回転軸とを備え、
    前記試料用保持部は、
    前記第1のダイヤモンドアンビルと接合し、前記第1のダイヤモンドアンビルを固定する、中空の第1の受け台と、
    前記第1の受け台を支持し、中空の第1の支持台であって、前記アクチュエータによる圧力を受け、前記第1のダイヤモンドアンビルに伝える圧力伝達部と、前記第1の受け台と接合され、前記回転軸と係合して回転する回転部と、前記圧力伝達部から受けた荷重に抗し、前記回転部を回転させるベアリングとを備える、第1の支持台と、
    前記第2のダイヤモンドアンビルと接合し、前記第2のダイヤモンドアンビルを固定する、中空の第2の受け台と、
    前記第2の受け台を支持し、前記押圧機構による圧力を受け、前記第2のダイヤモンドアンビルに伝える、中空の第2の支持台と、
    前記第1および第2のダイヤモンドアンビルを露出させつつ、前記第1の受け台と、前記第1の支持台と、前記第2の受け台と、前記第2の支持台とを保持する、シリンダと
    を備え、
    前記回転軸は、前記アクチュエータ内に位置し、前記第1の支持台の前記回転部と係合し、前記第1のダイヤモンドアンビルを回転させる、加圧・歪装置。
  2. 前記圧力伝達部と前記回転部との間には段差を有し、前記圧力伝達部は、前記回転部に対して凸である、請求項1に記載の加圧・歪装置。
  3. 前記押圧機構は、ステッピングモータ、油圧ピストン、および、ガス圧メンブレンからなる群から選択される、請求項1または2に記載の加圧・歪装置。
  4. 前記アクチュエータは、積層型ピエゾアクチュエータである、請求項1~3のいずれかに記載の加圧・歪装置。
  5. 前記アクチュエータのストロークは、50μm以上200μm以下の範囲である、請求項1~4のいずれかに記載の加圧・歪装置。
  6. 前記圧力センサは、水晶圧電式センサである、請求項1~5のいずれかに記載の加圧・歪装置。
  7. 前記駆動部は、トルクを発生させるステッピングモータと、前記トルクを歯車によって前記回転軸に伝えるアーム部とを備え、
    前記アーム部は、前記回転軸に対して回動する、請求項1~6のいずれかに記載の加圧・歪装置。
  8. 前記制御機構は、
    (A)前記押圧機構が前記第2のダイヤモンドアンビル側から前記試料に圧力を印加し、
    (B)前記試料に圧力が印加された状態で、前記圧力センサが前記アクチュエータによる圧力値を測定し、前記アクチュエータの圧力開始点となるよう前記アクチュエータを調整し、
    (C)前記試料に圧力が印加された状態で、前記圧力開始点に調整された前記アクチュエータが前記第1のダイヤモンドアンビル側から連続的に圧力を印加し、
    (D)前記試料に圧力が印加された状態で、前記回転機構が前記第1のダイヤモンドアンビルを回転させる、
    ように前記回転機構と、前記押圧機構と、前記アクチュエータとの動作を制御し、前記圧力センサの動作を検知する、請求項1~7のいずれかに記載の加圧・歪装置。
  9. 前記試料の位置を決める位置決め機構をさらに備え、
    前記位置決め機構は、
    下部ステージと、
    前記第1の支持台と接続されて、前記試料の位置を調整する支持脚と、
    前記第2の支持台と当接する当て板と
    を備える、請求項1~8のいずれかに記載の加圧・歪装置。
  10. 前記下部ステージと接続され、前記加圧・歪装置の水平方向の向きを変える変向機構をさらに備える、請求項9に記載の加圧・歪装置。
  11. 前記変向機構は、前記試料の水平方向および垂直方向の位置を調整する、請求項10に記載の加圧・歪装置。
  12. 前記制御機構は、前記変向機構の動作をさらに制御する、請求項11に記載の加圧・歪装置。
  13. 前記制御機構は、
    前記アクチュエータに電気信号を印加するアクチュエータ駆動回路と、
    前記圧力センサの圧力を変換し、測定する変換測定部と、
    前記押圧機構に駆動信号を送る押圧駆動回路と、
    前記回転機構に駆動信号を送る回転駆動回路と、
    前記アクチュエータ駆動回路、前記変換測定部、前記押圧駆動回路、および、前記回転駆動回路を制御する中央演算処理部と
    を備える、請求項1~12のいずれかに記載の加圧・歪装置。
  14. 前記回転駆動回路に接続されたパルスジェネレータをさらに備える、請求項13に記載の加圧・歪装置。
  15. 請求項1~14のいずれかに記載の加圧・歪装置を備えたX線回折装置。
  16. 請求項1~14のいずれかに記載の加圧・歪装置を備えた顕微ラマン散乱測定装置。
  17. 請求項1~14のいずれかに記載の加圧・歪装置を備えた光学顕微鏡装置。
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