JP2024036390A - 水添加型の消火剤 - Google Patents

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陽秀 完山
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Abstract

【課題】泥炭火災などにおける消火性能が優れ、かつ人体、生物および自然環境への負荷が少ない消火剤を提供すること。【解決手段】本発明の消火剤は、界面活性剤成分と、キレート成分と、溶媒とを含有する水添加型の消火剤であって、前記界面活性剤成分が、脂肪酸ナトリウム塩および脂肪酸カリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であり、かつ、前記脂肪酸ナトリウム塩および前記脂肪酸カリウム塩における脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびオレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記キレート成分が、L-アスパラギン酸-(N,N)-二酢酸四ナトリウム、およびメチルグリシン二酢酸三ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記溶媒は、水、或いは、水を含む混合溶媒であることを特徴とするものである。【選択図】なし

Description

本発明は、水添加型の消火剤に関する。
普通火災(家屋、木材および紙などの火災)に広く使用されている泡消火剤としては、たんぱく質泡消火剤、合成界面活性剤泡消火剤、水成膜泡消火剤、またはこれらにフッ素系界面活性剤を組み合わせたものなどが提案されている。これらはいずれも有効な消火剤であり、水単体での消火に比べて迅速に、かつ少ない液量での消火を実現できる。
しかしながら、化学合成物質を含有した消火剤は、含有成分によっては、分解して有毒な成分を発生したり、または残留物が長く分解されずに滞留し、生物に悪い影響を与える可能性もある。そのため、森林火災など広く自然環境に散布される状況を想定した場合、消火剤としては、自然環境への負荷が少ないことが求められる。
一方で、インドネシアにおいては、森林火災だけでなく、泥炭土壌が燃焼するような泥炭火災が発生している。泥炭火災は、泥炭土壌の内部でも燃焼するため、火が消えにくい。また、一度消火した後でも、泥炭土壌の内部の温度が上昇し、再び燃焼を始めることもある。このように、泥炭火災は、通常火災や森林火災と比較して、消火が困難である。
泥炭火災に使用可能な消火剤としては、例えば、炭化糖質組成物と、界面活性剤と、水とを含むフォーム形成組成物が提案されている(特許文献1参照)。
特表2005-511215号公報
しかしながら、特許文献1に記載のような水性発泡組成物は、泥炭火災のように、泥炭土壌の内部でも燃焼するような火災を主な対象としたものではなく、泥炭火災に適する消火剤ではなかった。また、泥炭火災用の消火剤として市販されているものは、泥炭火災の消火性能の点で十分なものではなく、また、消火作業者にかゆみが出るといった問題もあった。
そこで、本発明は、泥炭火災における消火性能が優れ、かつ人体、生物および自然環境への負荷が少ない火災の消火方法を提供することを目的とする。
本発明の水添加型の消火剤は、界面活性剤成分と、キレート成分と、溶媒とを含有する水添加型の消火剤であって、前記界面活性剤成分が、脂肪酸ナトリウム塩および脂肪酸カリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記キレート成分が、L-グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、L-アスパラギン酸-(N,N)-二酢酸四ナトリウム、N-2-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸二ナトリウム、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム、エチレンジアミンコハク酸、ジエチレントリノシン五酢酸、水酸化エチルエチレンジアミン三酢酸、コハク酸、イミノジコハク酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸、ジハイドロキシエチルグリシン、グリコールエーテルジアミン四酢酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、グルコン酸ナトリウム、グルコヘプトン酸ナトリウム、イノシトールヘキサホスフエイト、ヒドロキシエタン酸、2-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシコハク酸、2,3-ジヒドロキシブタン二酸、および2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記溶媒は、水、或いは、水を含む混合溶媒であることを特徴とするものである。
本発明の水添加型の消火剤においては、前記界面活性剤成分の含有量が、組成物全量に対して、8質量%以上50質量%以下であり、前記キレート成分の含有量が、組成物全量に対して、1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
本発明の水添加型の消火剤においては、前記混合溶媒が、組成物全量に対し10質量%以上50質量%以下のプロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明の水添加型の消火剤においては、前記混合溶媒が、さらに、組成物全量に対し1質量%以上15質量%以下のジプロピレングリコール、ノルマルプロパノール、ノルマルブタノール、オクタノール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1,5-ペンタジオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、グリコール酸メチル、クエン酸トリエチル、乳酸ソーダ、およびグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
本発明の水添加型の消火剤においては、前記界面活性剤成分が、組成物全量に対し4質量%以上15質量%以下のオレイン酸カリウムおよびオレイン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種、並びに、組成物全量に対し1質量%以上7質量%以下のラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、およびステアリン酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
本発明の水添加型の消火剤においては、前記消火剤が、さらに、pH調整成分を含有し、前記pH調整成分が、グルコン酸、フィチン酸、酒石酸、リンゴ酸、および乳酸からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の泥炭火災の消火方法は、前記水添加型の消火剤を用いて、泥炭火災を消火することを特徴とする方法である。
本発明によれば、泥炭火災における消火性能が優れ、かつ人体、生物および自然環境への負荷が少ない火災の消火方法を提供できる。
消火性能の試験における一次消火の方法を説明するための説明図である。 消火性能の試験における二次消火の方法を説明するための説明図である。 実施例1の1%消火剤水溶液を用いた消火性能の試験の結果を示す写真であり、(A)は、燃焼前の状態を示し、(B)は、二次消火後の状態を示し、(C)は、消火性能の試験から10箇月が経過した後の状態を示す。 比較例2の消火剤(水)を用いた消火性能の試験の結果を示す写真であり、(A)は、燃焼前の状態を示し、(B)は、二次消火後の状態を示し、(C)は、消火性能の試験から10箇月が経過した後の状態を示す。 消火剤濃度および消火剤中のキレート成分濃度と、熱帯泥炭土壌への浸透性との関係を示すグラフである。 界面活性剤成分濃度とピートモスへの浸透性との関係を示すグラフである。 キレート成分濃度とピートモスへの浸透性との関係を示すグラフである。 pHとピートモスへの浸透性との関係を示すグラフである。 キレート成分の種類とピートモスへの浸透性との関係を示すグラフである。 実施例6の消火剤に対して添加した脂肪酸の種類とピートモスへの浸透性との関係を示すグラフである。 実施例6の消火剤においてオレイン酸カリウムをオレイン酸ナトリウムに変更した場合、また、その上でpH調整を行った場合におけるピートモスへの浸透性を示すグラフである。 消火剤濃度と、ピートモスへの浸透性の関係を示すグラフである。
以下、本発明の水添加型の消火剤および泥炭火災の消火方法の実施形態を説明する。
[消火剤]
先ず、本実施形態の水添加型の消火剤について説明する。本実施形態の水添加型の消火剤は、以下説明する界面活性剤成分、キレート成分および溶媒を含有する水添加型の消火剤である。
[界面活性剤成分]
本実施形態に用いる界面活性剤成分としては、合成界面活性剤ではなく、天然系の界面活性剤である脂肪酸塩を使用する。
この脂肪酸塩としては、脂肪酸ナトリウム塩および脂肪酸カリウム塩などが挙げられる。これらの中でも、植物性の脂肪酸塩を用いることが好ましい。脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸などが挙げられる。これらの中でも、水への溶解性、安定性、界面活性作用(発泡性、浸透性など)の観点から、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびオレイン酸を用いることがより好ましく、ラウリン酸、およびオレイン酸を用いることが特に好ましい。これらの脂肪酸塩は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの脂肪酸塩は、合成界面活性剤ではないため、人体、生物および自然環境への負荷が少ない。
これらの脂肪酸塩のうち、主なものについて詳細に説明する。
(i)オレイン酸カリウム[CH(CHCH=CH(CHCOOK]およびオレイン酸ナトリウム[CH(CHCH=CH(CHCOOK]
脂肪酸比率が同率のナトリウム石けんとカリウム石けんとを比較すると、ナトリウム石けんの方が浸透力は強く、カリウム石けんの方が液体になりやすい。オレイン酸塩は、ラウリン酸塩よりも表面張力が低い傾向にある。表面張力が低いことにより、火災時の可燃物への水分の浸透性が増し、早期消火、再燃防止に有効である。
(ii)ラウリン酸カリウム[CH(CH10COOK]
起泡力に富み良好な少し荒い泡を大量に生成する。泡は火災時に可燃物の表面にまとわりつき、酸素の供給を防ぐ窒息効果が得られるため、早期消火が可能となる。アルキル基が短いために湿潤性が大きい。ラウリン酸ナトリウムは固形になり易いためカリウム塩の方が好ましい。
界面活性剤成分の含有量は、組成物全量に対して、8質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。含有量が8質量%以上であれば、消火性能を更に向上でき、含有量が50質量%以下であれば、消火剤のゲル化を十分に抑制できる。また、消火性能の観点からは、界面活性剤成分の含有量がより多いことが好ましい。
また、界面活性剤成分として、2種以上の脂肪酸塩を併用する場合には、組成物全量に対し4質量%以上15質量%以下のオレイン酸カリウムおよびオレイン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種と、組成物全量に対し1質量%以上7質量%以下のラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、およびステアリン酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種と、を含有することが好ましい。このようにすれば、より付着物や可燃物への水分の浸透性が良く、且つ泡立ちの良いものとできる。
[キレート成分]
本実施形態に用いるキレート成分は、水中の硬度分である金属成分を捕捉して石けんカス生成による石けん分の損失を防ぎ、また、石けんカスによる起泡の生成妨害を防止する作用を持つものである。すなわち、本実施形態に用いる天然系の脂肪酸塩を界面活性剤として含有する組成物は、水中の金属成分と脂肪酸塩である石けん成分とが結合し、石けんカスが発生しやすい傾向にある。石けんカスが発生すると、泥炭土壌への浸透性が低下する傾向にあり、結果として、泥炭火災の消火性能が低下する傾向にある。そこで、本実施形態においては、石けんカスの発生を抑制し、泥炭火災の消火性能を向上するために、キレート成分を用いている。本実施形態に用いるキレート成分としては、自然環境への影響という観点から、生分解性を有するものが好ましい。
このようなキレート成分としては、L-グルタミン酸二酢酸四ナトリウム(GLDA・4Na)、L-アスパラギン酸-(N,N)-二酢酸四ナトリウム(ASDA)、N-2-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸二ナトリウム(HIDA)、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム(MGDA)、エチレンジアミンコハク酸、ジエチレントリノシン五酢酸、水酸化エチルエチレンジアミン三酢酸、コハク酸、イミノジコハク酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸、ジハイドロキシエチルグリシン、グリコールエーテルジアミン四酢酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、グルコン酸ナトリウム、グルコヘプトン酸ナトリウム、イノシトールヘキサホスフエイト、ヒドロキシエタン酸、2-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシコハク酸、2,3-ジヒドロキシブタン二酸、および2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、生分解性があるという観点から、GLDA・4Na、ASDA、HIDA、MGDA、エチレンジアミンコハク酸、ジエチレントリノシン五酢酸、水酸化エチルエチレンジアミン三酢酸、コハク酸、イミノジコハク酸およびニトリロ三酢酸が好ましい。また、生分解性があるとともに、界面活性剤成分との相性が良いという観点から、GLDA・4Na、ASDA、HIDAおよびMGDAがより好ましい。
キレート成分の含有量は、組成物全量に対して、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。含有量が1質量%以上であれば、石けんカスの生成を十分に抑制でき、消火性能を更に向上でき、50質量%以下であれば、消火剤の粘度を低くでき、消火剤のゲル化を十分に抑制できる。
ただし、界面活性剤成分とキレート成分とを混合すると常温でもゲル化してしまい、使用することができなくなるという欠点がある。
使用時に水の中に別々に界面活性剤成分とキレート成分とを入れれば問題はないが、実際の火災現場では、界面活性剤成分とキレート成分とを別々に混合することは手数を要し、面倒なことであり、対応し難い場合がある。そこで、界面活性剤成分とキレート成分とを組成物として混合する際にゲル化しないように添加物を入れることが好ましい。
[溶媒]
本実施形態に用いる溶媒は、水、或いは、水を含む混合溶媒である。上記したようなゲル化の現象を解決するためには、溶媒である水に、アルコール類またはエステル類などを添加した混合溶媒を用いることが好ましい。溶媒が水のみの場合には、液体の界面活性剤成分の含有量が20~30質量%くらいとなると消火剤がゲル化する。これに対し、アルコール類などの溶媒を加えることによってゲル化を抑制し、界面活性剤成分が高濃度の消火剤を作製できる。
水と混合して用いることができる溶媒としては、例えば、アルコール類およびエステル類が挙げられる。具体的には、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ノルマルプロパノール、ノルマルブタノール、オクタノール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1,5-ペンタジオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、グリコール酸メチル、クエン酸トリエチル、乳酸ソーダ、およびグリセリンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
混合溶媒は、プロピレングリコールを含むことが好ましい。プロピレングリコール(PG)を用いることにより、より確実に消火剤のゲル化を抑制できる。また、PGは不凍液としての役割も果たし、これを添加することにより、流動点がかなり低下し、消火剤の寒冷地での使用を可能とできる。なお、PGの含有量は、組成物全量に対して、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、15質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。含有量が10質量%以上50質量%以下の範囲内であれば、引火点を下げ過ぎることなく、消火剤のゲル化を抑制できる。
混合溶媒は、さらに、ジプロピレングリコール、ノルマルプロパノール、ノルマルブタノール、オクタノール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1,5-ペンタジオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、グリコール酸メチル、クエン酸トリエチル、乳酸ソーダ、およびグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの中でも、消火剤の安定性の観点から、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1,5-ペンタジオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、およびプロピレングリコールモノエチルエーテルがより好ましく、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、および3-メチル-1,5-ペンタジオールが特に好ましい。なお、これらの溶媒の含有量は、組成物全量に対して、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。含有量が1質量%以上15質量%以下の範囲内であれば、引火点を下げ過ぎることなく、消火剤のゲル化を抑制できる。
溶媒の含有量は、消火剤のゲル化の抑制という観点から、組成物全量に対して、10質量%以上85質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上75質量%以下であることが特に好ましい。
[その他添加剤]
本実施形態の消火剤は、さらに、pH調整成分を含有していてもよい。例えば、消火剤のpHが高くなり過ぎた場合には、pH調整成分により、例えばpH値を9までに抑えることができる。
pH調整成分としては、グルコン酸、フィチン酸、酒石酸、リンゴ酸、および乳酸などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
pH調整成分の含有量は、消火剤のpHを適当な範囲に調整するという観点から、組成物全量に対して、0.001質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.002質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の消火剤は、必要に応じて、前記成分の他に、ゲル化抑制成分、金属腐食防止剤、泡安定剤(ポリエチレングリコールなど)、防錆剤、および酸化防止剤などの添加剤を含有していてもよい。
これらの添加剤の含有量は、本願発明の作用効果を阻害しないという観点から、組成物全量に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
[消火剤の物性]
本実施形態の消火剤は、保存容器および自然環境への負荷を少なくするという観点から、鉄、アルミニウムおよび銅の腐食による質量損失が、以下の条件(1a)~(1c)を満たすことが好ましい。腐食による質量損失は、後述する実施例で記載する方法で測定できる。
条件(1a):鉄の腐食による質量損失は、3mg/20cm/day以下であることが好ましく、2mg/20cm/day以下であることがより好ましく、1mg/20cm/day以下であることが特に好ましい。
条件(1b):アルミニウムの腐食による質量損失は、3mg/20cm/day以下であることが好ましく、2mg/20cm/day以下であることがより好ましく、1mg/20cm/day以下であることが特に好ましい。
条件(1c):銅の腐食による質量損失は、3mg/20cm/day以下であることが好ましく、1mg/20cm/day以下であることがより好ましく、0.5mg/20cm/day以下であることが特に好ましい。
[泥炭火災の消火方法]
次に、本実施形態の泥炭火災の消火方法について説明する。
本実施形態の泥炭火災の消火方法は、前記本実施形態の消火剤を用いて、泥炭火災を消火することを特徴とする方法である。
泥炭とは、有機質炭素を含有する泥であるが、熱帯泥炭と北方泥炭とに大別される。そして、熱帯泥炭とは、地球の低緯度地域で採取される泥炭であり、樹木に由来する泥炭である。なお、通常、熱帯泥炭のpHは、3.5程度である。他方、北方泥炭とは、地球の高緯度地域で採取される泥炭であり、コケ類、地衣類、およびリター(落枝および落葉など)などに由来する泥炭である。なお、通常、北方泥炭のpHは、4から4.5の範囲内である。
本実施形態においては、前記消火剤を水で希釈して、消火剤水溶液として使用する。ここで、消火剤の含有量(消火剤濃度)は、消火剤水溶液全量に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることが特に好ましい。消火剤の含有量が0.1質量%以上であれば、消火性能の向上という観点から好ましく、他方、消火剤の含有量が10質量%以下であれば、コストの観点から好ましい。なお、消火剤の含有量が多くなるほど、消火性能が向上する傾向がある。
本実施形態においては、燃焼している箇所に、消火資器材を用いて、消火剤水溶液を散布することで、泥炭火災を消火する。消火資器材としては、適宜公知のものを使用できる。また、本実施形態においては、燃焼している箇所に、離れた場所から消火可能な消火資器材を用いて、消火剤水溶液を散布して、一次消火をし、その後に、近距離で消火可能な消火資器材を用いて、高温となっている箇所に、消火剤水溶液を散布して、二次消火をしてもよい。
本実施形態に用いる消火剤水溶液は、消火性能の向上という観点から、発泡性能(倍率、還元時間)が以下の条件(2a)および(2b)を満たすことが好ましい。発泡性能(倍率、還元時間)は、後述する実施例で記載する方法で測定できる。
条件(2a):発泡倍率は、5倍以上であることが好ましく、7倍以上であることがより好ましい。
条件(2b):還元時間は、60秒以上であることが好ましく、120秒以上であることがより好ましい。
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
先ず、界面活性剤成分を、次のようにして生成した。
・ラウリン酸カリウムの生成(A槽)
反応槽(A槽)に、精製水7.067kgを投入し、その後、プロピレングリコール(PG)2.507kgを投入した。この反応槽を60℃の温浴に入れ、攪拌機により攪拌しながら、ラウリン酸2.160kgを加え、次いで、水酸化カリウム水溶液(48質量%KOH)0.891kgを加えて、反応させた。こうして、ラウリン酸カリウムを得た。
・オレイン酸カリウムの生成(B槽)
反応槽(B槽)に、精製水7.067kgを投入し、その後、プロピレングリコール(PG)3.963kgを投入した。この反応槽を60℃の温浴に入れ、攪拌機により攪拌しながら、オレイン酸(純分:80.7質量%)3.415kgを加え、次いで、水酸化カリウム水溶液(48質量%KOH)1.409kgを加えて、反応させた。こうして、オレイン酸カリウムを得た。
次いで、消火剤を、次のようにして調製した。
混合槽に、キレート剤(メチルグリシン二酢酸三ナトリウム(MGDA)、純分:81質量%)10.200kg、乳酸(純分:50質量%)0.005kg、および精製水7.066kgを投入した。この混合槽に、攪拌機により攪拌しながら、ヘキシレングリコール3.475kg、キレスト社製の「キレスライトALF」0.650kg、およびキレスト社製の「キレスライトWP-10」0.125kgを加え、次いで、A槽で得られたラウリン酸カリウム(純分:20.4質量%)12.625kg、およびB槽で得られたオレイン酸カリウム(純分:19.7質量%)15.854kgを加えて、消火剤を調製した。なお、消火剤の組成を下記表1に示す。
Figure 2024036390000001
[比較例1]
市販されている泥炭火災用の消火剤(PT. BASUKI ENERGI INDONESIA社製の「FLAME FREEZE」)を入手し、比較例1の消火剤とした。
[比較例2]
水(水道水)を、比較例2の消火剤とした。
<消火剤の評価>
消火剤の評価(外観、比重、動粘度、pH、腐食、発泡性能(1%消火剤水溶液)、人への影響、表面張力(1%消火剤水溶液)、泥炭土壌への浸透性(1%消火剤水溶液))を以下のような方法で行った。なお、比較例2については、泥炭土壌への浸透性のみについて評価を行った。実施例1、比較例1および比較例2について得られた結果を表2に示す。また、本明細書において、「1%消火剤水溶液」とは、消火剤1質量%と水99質量%とからなる水溶液のことをいう。
(1)外観
消火剤の外観を目視にて観察し、光の透過性および色目を評価した。
(2)比重
JIS Z8804に記載の方法に準拠して、消火剤の比重を測定した。
具体的には、試料として400mLの消火剤を、500mLのメスシリンダーに採取し、温度20℃に設定した恒温槽内に10分間静置した。その後、比重計(浮ひょう)を試料中に沈め、上から数回つついて軽く沈めた。なお、このときに、比重計とメスシリンダーの底が接触している場合には、比重計番号を変更し、上記と同様の操作を行う。そして、自然に浮き上がった比重計の目盛と液面とが合う部分を読み取り、比重(単位:g/cm)を測定した。
(3)動粘度
JIS K2283に記載の方法に準拠して、20℃および30℃における動粘度を測定した。
具体的には、先ず、毛管および二箇所の測時標準を有する粘度計(ウベローデ粘度計)、および、この粘度計を十分に浸すことができる恒温槽を準備した。次に、試料として消火剤を粘度計に採取し、粘度計をホルダにセットして、測定温度(20℃、30℃)にて30分間静置した。その後、試料を流下させて、試料が一方の測時標準から他方の測時標準までを通過するのに要する時間(測定時間、単位:秒)を測定した。そして、使用した粘度計の粘度計定数を用いて、得られた測定時間から、動粘度(単位:mm/s)を算出した。
(4)pH
JIS Z8802に記載の方法に準拠して、消火剤のpHを測定した。
(5)腐食
先ず、試験片(材質は、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)および銅(Cu)の3種類)を準備し、ノギスおよびマイクロメーターを用いて、試験片の長さ、幅および厚さを測定し、その結果から、試験片の表面積(単位:cm)を算出した。次に、電子天秤を用いて、試験片の試験前の質量(単位:mg)を測定した。
次いで、消火剤の入った試験用瓶に、試験片を投入し、温度38度に設定した恒温槽中で、21日間保管した。その後、試験後の試験片を取り出し、電子天秤を用いて、その質量(単位:mg)を測定した。そして、下記数式(F1)から、試験片の表面積20cmおよび1日あたりの質量損失を算出した。
質量損失={(質量変化量(mg))/(表面積(cm))}×20/21…(F1)
また、試験後の試験片の表面に変色または孔食がないか、目視にて確認した。そして、変色および孔食がない場合は、「A」と判定し、変色または孔食がある場合は、「C」と判定した。
(6)発泡性能(1%消火剤水溶液)
先ず、消火剤を水(水道水)で希釈して、1%消火剤水溶液を調製した。この1%消火剤水溶液4Lを機械泡消火器に投入し、温度を18℃~22℃の範囲に保った。次に、機械泡消火器に、窒素ガス注入バルブを取り付け、機械泡消火器内の圧力が約0.85MPaとなるように、窒素ガスを注入した。
次いで、泡収集器内に1%消火剤水溶液が入るように、機械泡消火器から放水を行い、放水後は、速やかに、泡収集器内の泡の高さ(単位:cm)を測定した。そして、下記数式(F2)から、発泡倍率を算出した。
発泡倍率=[{(泡の高さ(cm))×(泡収集器の面積(cm))}/(1%消火剤水溶液の体積(cm))]…(F2)
また、放水した泡の体積の1/4が1%消火剤水溶液に戻る時間、すなわち、泡収集器内の泡の高さが、放水後から3/4の高さとなるのに要する時間を、還元時間(単位:秒)として測定した。
(7)人への影響
消火剤を人の肌に付着させて、人への影響を評価した。そして、肌にかゆみが発生した場合は、「C」と判定し、肌に何ら影響がなかった場合は、「A」と判定した。
(8)表面張力(1%消火剤水溶液)
先ず、消火剤を水(精製水)で希釈して、1%消火剤水溶液を調製した。この1%消火剤水溶液をガラスシャーレに投入し、このガラスシャーレを各温度(20℃、30℃および40℃)に保った。
そして、表面張力計(協和界面化学社製の「DY-500」)を用いて、Wilhelmy法により、1%消火剤水溶液の表面張力を測定した。
(9)泥炭土壌への浸透性(1%消火剤水溶液)
先ず、インドネシアの泥炭土壌を採取し、温度105℃に設定したオーブンで乾燥させて、乾燥後の泥炭土壌サンプルを得た。なお、乾燥後の泥炭土壌サンプルは、体積変化により、乾燥前の46体積%に減少した。次に、消火剤を水(地下水)で希釈して、1%消火剤水溶液を調製した。
次いで、乾燥後の泥炭土壌サンプル10gをガラスシャーレに採取し、その上に、1%消火剤水溶液を200μL滴下した。そして、1%消火剤水溶液が、乾燥後の泥炭土壌サンプルに完全に浸透するまでに要する時間(単位:秒)を測定した。
Figure 2024036390000002
表2に示す結果からも明らかなように、実施例1の消火剤は、比較例1の消火剤と比較して、人への影響が少ないことが確認された。このことから、本発明の消火剤は、人体および生物への負荷が少ないことが確認された。
また、実施例1の1%消火剤水溶液は、比較例1の1%消火剤水溶液、および、比較例2の消火剤(水)と比較して、泥炭土壌への浸透性が高いことが確認された。泥炭火災における消火性能については、泥炭土壌への浸透性と相関関係があることが分かっていることから、本発明の消火剤は、泥炭火災における消火性能が優れることが推定される。
<消火性能および環境性能の評価>
消火性能および環境性能の評価を以下のような方法で行った。なお、実施例1の1%消火剤水溶液と、比較例2の消火剤(水)とを、評価対象である評価液とした。
(10)消火性能
図1および図2に示すようにして、消火性能を評価した。
具体的には、先ず、インドネシアの泥炭土壌の土地2において、大きさ7m×7mの土地を不燃性の柵1で囲った。そして、その土地の中心部に、着火剤(416枚)を配置した(着火範囲:2.34m×2.56m)。
次に、着火剤により、泥炭土壌の土地を燃焼させて、4時間放置した。その後、図1に示すようにして、柵1に囲われた泥炭土壌の土地2に、約3L/mの評価液を、消火資器材3を用いて散布した(一次消火)。消火資器材3としては、薬剤注入器(YONE社製の「ラインプロポーショナー」)、噴射ノズル(YONE社製の「クアドラフォグノズル」)、およびポンプ(HALE社製の「ファイヤーパック」)を準備し、ポンプ中に評価液を注入したものを用いた。なお、ここで、柵1に囲われた泥炭土壌の土地2が未だ燃焼している場合には、改めて、柵1に囲われた泥炭土壌の土地2に、約3L/mの評価液を、消火資器材3を用いて散布する。そして、この作業を、柵1に囲われた泥炭土壌の土地2が消火できるまで繰り返す。一次消火に要した、1m当たりの評価液の量(一次消火必要量、単位:L/m)を表3に示す。
一次消火が完了した後には、図2に示すようにして、簡易水のう4および熱画像カメラ5を用いて、柵1に囲われた泥炭土壌の土地2の中で、未だ100℃以上のホットスポットに対し、評価液を散布した(二次消火)。簡易水のう4としては、芦森工業社製の「ジェットシューター」を用い、熱画像カメラ5としては、日綜電工業社製の「CPA-E4」を用いた。具体的には、熱画像カメラ5を用いて、未だ100℃以上のホットスポットを探し、そこに、簡易水のう4を用いて、ホットスポットの温度が50℃以下に低下するまで評価液を散布した。この作業を、柵1に囲われた泥炭土壌の土地2の中に、ホットスポットが確認できなくなるまで、繰り返した。二次消火に要した、1m当たりの評価液の量(二次消火必要量、単位:L/m)を表3に示す。また、一次消火および二次消火に要した、1m当たりの評価液の合計量(合計消火必要量、単位:L/m)を表3に示す。
また、二次消火後に、柵1に囲われた泥炭土壌の土地2中の温度を、熱画像カメラ5を用いて測定し、このときの最高温度を測定した。得られた結果を表3に示す。
Figure 2024036390000003
表3に示す結果からも明らかなように、実施例1の1%消火剤水溶液は、比較例2の消火剤(水)と比較して、一次消火および二次消火に要する液量が少なくて済むことが確認された。また、比較例2の消火剤(水)を用いて消火した場合には、泥炭土壌中で温度が再び上昇して100℃以上となる箇所(ホットスポット)があることが分かった。これに対し、実施例1の1%消火剤水溶液を用いて消火した後には、100℃以上となる箇所は確認されなかった。これらのことから、本発明の消火剤は、泥炭火災における消火性能が優れることが確認された。
(11)環境性能
前記(10)消火性能の試験において、燃焼前の状態を示す写真、および、二次消火後の状態を示す写真を撮影した。また、前記(10)消火性能の試験から10箇月が経過した後の状態を示す写真を撮影した。
実施例1の1%消火剤水溶液について、燃焼前の状態(図3(A))、二次消火後の状態(図3(B))、および、消火性能の試験から10箇月が経過した後の状態(図3(C))を示す写真を図3に示す。
また、比較例2の消火剤(水)について、燃焼前の状態(図4(A))、二次消火後の状態(図4(B))、および、消火性能の試験から10箇月が経過した後の状態(図4(C))を示す写真を図4に示す。
図3および図4に示すように、燃焼前の状態(図3(A)および図4(A))では、草木の緑色が残っている。また、二次消火後の状態(図3(B)および図4(B))では、土地が燃焼した後であり、黒色または灰色となっている。そして、消火性能の試験から10箇月が経過した後の状態(図3(C)および図4(C))では、新たに草が成長し、緑色となっている。このように、実施例1の1%消火剤水溶液を用いた場合でも、水を用いた場合と同様に、植物が十分に再生していることが確認された。このことから、本発明の消火剤は、自然環境への負荷が少ないことが確認された。
[実施例2~5および比較例3]
下記表4に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、消火剤を調製した。
Figure 2024036390000004
<消火剤濃度および消火剤中のキレート成分濃度と、熱帯泥炭土壌への浸透性との関係の調査>
消火剤濃度および消火剤中のキレート成分濃度を変化させながら、浸透性(熱帯泥炭土壌)がどのように変化するかを調査した。浸透性(熱帯泥炭土壌)については、以下のような方法で行った。なお、比較例3(キレート成分濃度:0質量%)、実施例2(キレート成分濃度:4.05質量%)および実施例3(キレート成分濃度:8.1質量%)については、消火剤濃度が1質量%および5質量%の場合の浸透性を測定した。また、実施例4(キレート成分濃度:12.15質量%)については、消火剤濃度が5質量%の場合の浸透性を測定した。さらに、実施例5(キレート成分濃度:16.524質量%)については、消火剤濃度が1質量%、3質量%および5質量%の場合の浸透性を測定した。
(12)浸透性(熱帯泥炭土壌)
熱帯泥炭土壌サンプル(インドネシアの泥炭土壌サンプル、土壌中の水分量:約48質量%)を準備した。そして、この熱帯泥炭土壌サンプル5gをガラスシャーレに採取し、その上に、所定の濃度に調製された消火剤サンプルを200μL滴下した。そして、消火剤サンプルが、熱帯泥炭土壌サンプルに完全に浸透するまでに要する時間(単位:秒)を測定した。得られた結果を図5に示す。なお、この測定は2回行い、測定値の平均値をグラフにプロットし、測定値の範囲にはエラーバーを付けた。
図5に示す結果から、消火剤濃度が高くなるほど、浸透性が高まることが確認された。また、消火剤濃度が1質量%である場合には、消火剤中のキレート成分濃度が高くなるほど、浸透性が高まることが確認された。
[実施例6~10]
下記表5に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、消火剤を調製した。
[実施例11~15]
下記表6に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、消火剤を調製した。
[実施例16~20]
下記表7に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、消火剤を調製した。
[実施例21~25]
下記表8に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、消火剤を調製した。
[実施例26~28]
下記表9に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、消火剤を調製した。
<消火剤の評価>
消火剤の評価(pH、ピートモスへの浸透性(1%消火剤水溶液))を行った。pHについては、上記(4)pHに記載の方法で行い、ピートモスへの浸透性(1%消火剤水溶液)は、以下のような方法で行った。実施例6~10について得られた結果を表5に示し、実施例11~15について得られた結果を表6に示し、実施例16~20について得られた結果を表7に示し、実施例21~25について得られた結果を表8に示し、実施例26~28について得られた結果を表9に示す。
(13)ピートモスへの浸透性(1%消火剤水溶液)
先ず、消火剤を水(精製水)で希釈して、1%消火剤水溶液を調製した。
次いで、ピートモス(北方泥炭の1種、有限会社園芸資材グリン北九製の「ピートモス」、土壌中の水分量:48質量%)5gをガラスシャーレに採取し、その上に、1%消火剤水溶液を200μL滴下した。そして、1%消火剤水溶液が、ピートモスに完全に浸透するまでに要する時間(単位:秒)を測定した。なお、この測定は4回行い、測定値の平均値を算出した。
Figure 2024036390000005
Figure 2024036390000006
Figure 2024036390000007
Figure 2024036390000008
Figure 2024036390000009
表5~表9に示す結果からも明らかなように、実施例6~28の1%消火剤水溶液は、ピートモスへの浸透性、すなわち泥炭土壌への浸透性が高いことが確認された。泥炭火災における消火性能については、泥炭土壌への浸透性と相関関係があることが分かっていることから、本発明の消火剤は、泥炭火災における消火性能が優れる。
界面活性剤成分濃度を変化させた場合、ピートモスへの浸透性がどのように変化するかを確認するために、実施例の中から、実施例6および13~22を選択して、比較を行った。実施例6および13~22について、界面活性剤成分濃度とピートモスへの浸透性との関係を図6に示す。なお、界面活性剤成分濃度については、実施例6の消火剤における界面活性剤成分濃度(11.094質量%)に対する比(実施例の消火剤における界面活性剤成分濃度/11.094)を表記した。また、ピートモスへの浸透性の測定は4回行い、測定値の平均値をグラフにプロットし、測定値の範囲にはエラーバーを付けている。
図6に示す結果から、界面活性剤成分濃度が高くなるほど、ピートモスへの浸透性が高くなることが分かった。
キレート成分濃度を変化させた場合、ピートモスへの浸透性がどのように変化するかを確認するために、実施例の中から、実施例6~9および11を選択して、比較を行った。実施例6~9および11について、キレート成分濃度とピートモスへの浸透性との関係を図7に示す。なお、キレート成分濃度については、実施例6の消火剤におけるキレート成分濃度(15.334質量%)に対する比(実施例の消火剤におけるキレート成分濃度/15.334)を表記した。また、ピートモスへの浸透性の測定は4回行い、測定値の平均値をグラフにプロットし、測定値の範囲にはエラーバーを付けている。
図7に示す結果から、キレート成分濃度を実施例6~9および11の範囲内で変化させても、ピートモスへの浸透性はそれほど変化しないことが分かった。
pHを変化させた場合、ピートモスへの浸透性がどのように変化するかを確認するために、実施例の中から、実施例10~13を選択して、比較を行った。実施例10~13について、pHとピートモスへの浸透性との関係を図8に示す。なお、実施例10および11が、実施例6よりもキレート成分濃度が1.2倍高い例であり、実施例12および13が、実施例6よりも活性剤成分濃度が0.8倍低い例である。また、ピートモスへの浸透性の測定は4回行い、測定値の平均値をグラフにプロットし、測定値の範囲にはエラーバーを付けている。
図8に示す結果から、pHが低くなるほど、ピートモスへの浸透性が高くなることが分かった。
キレート成分の種類を変化させた場合、ピートモスへの浸透性がどのように変化するかを確認するために、実施例の中から、実施例6、23および24を選択して、比較を行った。実施例6、23および24について、キレート成分の種類とピートモスへの浸透性との関係を図9に示す。なお、ピートモスへの浸透性の測定は4回行い、測定値の平均値をグラフにプロットし、測定値の範囲にはエラーバーを付けている。
図9に示す結果から、キレート成分がASDA、MGDAおよびEDTAのいずれかであれば、ピートモスへの浸透性が良好であることが分かった。また、浸透性の観点からは、ASDAは、より好ましいことが分かった。
実施例6の消火剤に対して各種脂肪酸を添加した場合、ピートモスへの浸透性がどのように変化するかを確認するために、実施例の中から、実施例6、25、26および27を選択して、比較を行った。実施例6、25、26および27について、実施例6の消火剤に対して添加した脂肪酸の種類とピートモスへの浸透性との関係を図10に示す。なお、ピートモスへの浸透性の測定は4回行い、測定値の平均値をグラフにプロットし、測定値の範囲にはエラーバーを付けている。
図10に示す結果から、実施例6の消火剤に対して各種脂肪酸(カプリン酸カリウム(C10)、ミリスチン酸カリウム(C14)、パルミチン酸カリウム(C16))を添加した場合は、いずれもピートモスへの浸透性が良好であることが分かった。
実施例6の消火剤においてオレイン酸カリウムをオレイン酸ナトリウムに変更した場合、また、その上でpH調整を行った場合、ピートモスへの浸透性がどのように変化するかを確認するために、実施例の中から、実施例6および28を選択して、比較を行った。実施例6および28について、実施例6の消火剤においてオレイン酸カリウムをオレイン酸ナトリウムに変更し、その上でpH調整を行った場合におけるピートモスへの浸透性を図11に示す。なお、ピートモスへの浸透性の測定は4回行い、測定値の平均値をグラフにプロットし、測定値の範囲にはエラーバーを付けている。
図11に示す結果から、実施例6の消火剤においてオレイン酸カリウムをオレイン酸ナトリウムに変更し、さらにpH調整を行った場合には、ピートモスへの浸透性が高くなることが分かった。
<消火剤濃度と、ピートモスへの浸透性の関係の調査>
消火剤濃度を変化させながら、ピートモスへの浸透性がどのように変化するかを調査した。ピートモスへの浸透性については、以下のような方法で行った。そして、実施例6の消火剤について、消火剤濃度が0.5質量%、1質量%、1.5質量%、3質量%、5質量%および10質量%の場合の浸透性(ピートモス)を測定した。
(14)浸透性(ピートモス)
ピートモス(北方泥炭の1種、有限会社園芸資材グリン北九製の「ピートモス」、土壌中の水分量:48質量%)を準備した。そして、このピートモス5gをガラスシャーレに採取し、その上に、所定の濃度に調製された消火剤サンプルを200μL滴下した。そして、消火剤サンプルが、ピートモスに完全に浸透するまでに要する時間(単位:秒)を測定した。得られた結果を図12に示す。なお、この測定は4回行い、測定値の平均値をグラフにプロットし、測定値の範囲にはエラーバーを付けた。
図12に示す結果から、消火剤濃度が高くなるほど、ピートモスへの浸透性が高まることが確認された。

Claims (4)

  1. 面活性剤成分と、キレート成分と、溶媒とを含有する水添加型の消火剤であって、
    前記界面活性剤成分が、脂肪酸ナトリウム塩および脂肪酸カリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であり、かつ、前記脂肪酸ナトリウム塩および前記脂肪酸カリウム塩における脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびオレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、
    前記キレート成分が、L-アスパラギン酸-(N,N)-二酢酸四ナトリウム、およびメチルグリシン二酢酸三ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
    前記溶媒は、水、或いは、水を含む混合溶媒であり、
    前記界面活性剤成分の含有量が、組成物全量に対して、8質量%以上50質量%以下であり、
    前記キレート成分の含有量が、組成物全量に対して、10質量%以上20質量%以下であり、
    前記消火剤を水で希釈して、下記条件(i)および(ii)の全てを満たす消火剤水溶液として使用し、火災を消火する
    ことを特徴とする消火剤。
    (i)前記消火剤水溶液における前記消火剤の含有量は、前記消火剤水溶液の全量に対して、0.5質量%以上10質量%以下である。
    (ii)ピートモス(北方泥炭の1種、有限会社園芸資材グリン北九製の「ピートモス」、土壌中の水分量:48質量%)5gをガラスシャーレに採取し、その上に、前記消火剤水溶液を200μL滴下した場合に、前記消火剤水溶液が、前記ピートモスに完全に浸透するまでに要する時間が165秒間以下である。
  2. 請求項1に記載の消火剤において、
    前記界面活性剤成分が、オレイン酸ナトリウムを含有する、
    ことを特徴とする消火剤。
  3. 請求項1または請求項2に記載の消火剤において、
    前記混合溶媒が、組成物全量に対し10質量%以上50質量%以下のプロピレングリコールを含む
    ことを特徴とする消火剤。
  4. 請求項3に記載の消火剤において、
    前記混合溶媒が、さらに、組成物全量に対し1質量%以上15質量%以下のヘキシレングリコール、および3-メチル-1,5-ペンタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種を含有する
    ことを特徴とする消火剤。
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