JP2024034889A - 化粧シミュレーションシステム、化粧シミュレーション方法、化粧シミュレーションプログラム、及び、化粧シミュレーション装置 - Google Patents

化粧シミュレーションシステム、化粧シミュレーション方法、化粧シミュレーションプログラム、及び、化粧シミュレーション装置 Download PDF

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Abstract

【課題】化粧シミュレーションの再現精度を高める化粧シミュレーションシステム、装置、方法及びプログラムを提供する。【解決手段】システムにおいて、サーバのGPUは、塗布対象物の化粧前の画像である第1画像又は照明環境推定用画像を用いて照明環境を推定する照明環境推定部、第1画像の第1RGB値から化粧前の塗布対象物における第1分光反射率を算出する第1分光反射率算出部、第1三次元反射特性モデルを用いて化粧前の塗布対象物における第1色信号を算出する第1色信号算出部、第2三次元反射特性モデルを用いて化粧料の第2色信号を算出する第2色信号算出部、化粧状態の塗布対象物における第3色信号を算出する第3色信号算出部、化粧状態の塗布対象物における第2RGB値を算出する第2RGB値算出部、第2RGB値に基づいて第2画像を生成する第2画像生成部及び第1画像と第2画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成部を備える。【選択図】図4

Description

本発明は、塗布対象物に化粧料を塗布した状態を再現するための化粧シミュレーションシステム、化粧シミュレーション方法、化粧シミュレーションプログラム、及び、化粧シミュレーション装置に関する。
ユーザの顔画像を用いて化粧料を塗布した後の顔のシミュレーション画像を表示する化粧シミュレーションシステムが知られている。例えば、特許文献1には、未化粧状態におけるユーザの顔画像に化粧料ごとのパターンを重畳することで、化粧料を塗布した状態の顔のシミュレーション画像を生成する化粧シミュレーション方法が記載されている。
特開2007-257194号公報
顔に化粧料を塗布した場合、化粧料が塗布された領域は、肌の色と化粧料の色とが組み合わされた色を有する。すなわち、使用者の肌の色が異なる場合には、同じ化粧料を塗布した場合であっても、化粧料が塗布された領域は、異なる色を有する。しかし、上記のようなユーザの顔画像に対して単純に化粧料のパターンを重畳する方法では、肌の色がシミュレーション画像に反映されず、シミュレーション画像とユーザが実際に化粧をした際の外観との乖離が大きくなってしまう。したがって、上記方法では、再現精度の高い化粧シミュレーションを行うことが困難である。
そこで、本発明は、化粧シミュレーションの再現精度を高めることが可能な技術を提供することを主目的とする。
本発明は、
化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における照明環境を推定する照明環境推定部と、
前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する第1分光反射率算出部と、
前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する第1色信号算出部と、
前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する第2色信号算出部と、
前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する第3色信号算出部と、
前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する第2RGB値算出部と、
前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する第2画像生成部と、
前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成部と、
を備える、化粧シミュレーションシステム
を提供する。
前記第1画像又は前記照明環境推定用画像は、RGBカラー画像、マルチバンド画像、又はマルチスペクトル画像であってよい。
前記第1画像と前記照明環境推定用画像とは、同一の画像であってよい。
前記化粧シミュレーションシステムは、前記塗布対象物に照射されうる照明光の分光分布である照明分光分布と前記照明光を発生させる照明光源の空間分布との組合せである光源情報を照明環境ごとに記憶する照明環境データベースをさらに備えていてよい。
前記照明環境の推定において用いられる前記第1画像又は前記照明環境推定用画像がRGB画像又はマルチバンド画像である場合において、前記化粧シミュレーションシステムは、RGB値から照明光の分光分布を求めるためのシステム変換マトリックスを記憶する変換マトリックス記憶部をさらに備えていてよく、前記照明環境推定部は、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像から推定された照明方向ベクトルと、前記照明光の分光分布を求めるためのシステム変換マトリックスを用いて前記第1画像又は前記照明環境推定用画像のRGB値から求められた前記照明光の分光分布と、に基づいて照明光源の空間分布を推定することにより、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における前記照明環境を推定してよい。
前記照明環境の推定において用いられる前記第1画像又は前記照明環境推定用画像がマルチスペクトル画像である場合において、前記照明環境推定部は、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像から取得された照明光の分光分布に基づいて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における前記照明環境を推定してよい。
前記化粧シミュレーションシステムは、前記第2反射特性パラメータと化粧料の物理的特性に関する情報とを対応付けて記憶する化粧料データベースをさらに備えていてよく、前記第2色信号算出部は、前記化粧料データベースから前記化粧料の物理的特性に関する情報に対応する前記第2反射特性パラメータを読み出し、読み出された前記第2反射特性パラメータと、前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件と、で表現される第2三次元反射特性モデルを用いて前記化粧料の前記第2色信号を算出してよい。
前記第2RGB値算出部は、人間の視覚特性と前記重畳画像が出力されるカラー画像出力装置の特性とに基づいて前記第3色信号を補正し、補正された前記第3色信号から前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出してよい。
また、本発明は、
化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像から前記塗布対象物の三次元形状を推定する形状推定部と、
前記第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における照明環境を推定する照明環境推定部と、
前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する第1分光反射率算出部と、
前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する第1色信号算出部と、
前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する第2色信号算出部と、
前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する第3色信号算出部と、
前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する第2RGB値算出部と、
前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する第2画像生成部と、
前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成部と、
を備える、化粧シミュレーションシステム
も提供する。
また、本発明は、
化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における照明環境を推定する照明環境推定部と、
前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する第1分光反射率算出部と、
前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する第1色信号算出部と、
前記第1画像から前記塗布対象物の特徴部分を特定する特徴部分特定部と、
前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する第2色信号算出部と、
前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する第3色信号算出部と、
前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する第2RGB値算出部と、
前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する第2画像生成部と、
前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成部と、
を備える、化粧シミュレーションシステム
も提供する。
また、本発明は、
化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像から前記塗布対象物の表面の凹凸を数学モデルとして特定する肌質特定部と、
前記第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における照明環境を推定する照明環境推定部と、
前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する第1分光反射率算出部と、
前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する第1色信号算出部と、
前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する第2色信号算出部と、
前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する第3色信号算出部と、
前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する第2RGB値算出部と、
前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する第2画像生成部と、
前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成部と、
を備える、化粧シミュレーションシステム。
前記第1色信号算出部又は前記第2色信号算出部は、前記塗布対象物の表面の凹凸による陰影又は光沢の変化を計算し、前記計算により得られた前記塗布対象物の表面の凹凸による陰影又は光沢に関する情報を含む質感情報をさらに用いて、前記第1色信号又は前記第2色信号を算出してよい。
また、本発明は、
化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における照明環境を推定する工程と、
前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する工程と、
前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する工程と、
前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する工程と、
前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する工程と、
前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する工程と、
前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する工程と、
前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する工程と、
を含む、化粧シミュレーション方法
も提供する。
また、本発明は、
コンピュータに、
化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における照明環境を推定する処理と、
前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する処理と、
前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する処理と、
前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する処理と、
前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する処理と、
前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する処理と、
前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する処理と、
前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する処理と、
を実行させる、化粧シミュレーションプログラム
も提供する。
また、本発明は、
化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は照明環境推定用画像における照明環境を推定する照明環境推定部と、
前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する第1分光反射率算出部と、
前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する第1色信号算出部と、
前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する第2色信号算出部と、
前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する第3色信号算出部と、
前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する第2RGB値算出部と、
前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する第2画像生成部と、
前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成部と、
を備える、化粧シミュレーション装置
も提供する。
本発明により、化粧シミュレーションの再現精度を高めることが可能な技術が提供される。特には、本発明により、3DCG技術に基づいて化粧膜を3Dレンダリングした三次元画像と塗布対象物の画像とを合成することが可能な技術が提供される。なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
化粧シミュレーションシステムの全体構成を示す模式図。 ユーザ端末の構成を示すブロック図。 サーバの構成を示すブロック図。 サーバが備えるGPUの機能ブロック図。 第1画像が表示されたアプリ画像を表す模式図。 化粧料選択領域が表示されたアプリ画像を表す模式図。 化粧シミュレーションシステムにおける処理手順を示すフローチャート。 化粧シミュレーションシステムにおける反射の幾何学モデルを示す模式図。 図8に示す反射の幾何学モデルにおける反射光分布を示す模式図。 化粧料に含まれる光輝剤の多層膜で生じる干渉光を表す模式図。 重畳画像が表示されたアプリ画像を表す模式図。
1.第1実施形態
以下、化粧シミュレーションシステム、化粧シミュレーション方法、化粧シミュレーションプログラム、及び、化粧シミュレーション装置の第1実施形態について図1~図11を参照して説明する。本実施形態では、化粧シミュレーションが行われる対象が顔であり、化粧料が塗布される塗布対象物が顔の肌又は唇である場合を例に挙げる。なお、以下の説明において「画像」は、静止画及び動画を包含する概念である。また、「動画」はリアルタイムに撮影されている動画映像や撮影済みの動画映像も包含する概念である。
〔全体構成〕
図1に示すように、化粧シミュレーションシステム1は、ユーザ端末10と、サーバ20とを備える。ユーザ端末10は、ユーザ2が所有する情報処理装置であって、一例として、スマートフォンである。なお、ユーザ端末10は、タブレット、ラップトップパソコン、デスクトップパソコンなどの情報処理装置であってもよい。
サーバ20は、化粧シミュレーションシステム1における各種処理を実行するサーバコンピュータであって、化粧シミュレーションを行うための化粧シミュレーション装置の一例である。具体的に、サーバ20は、化粧料を塗布した状態である化粧状態における顔の肌及び唇の画像である第2画像を生成する。また、サーバ20は、化粧料を塗布する前の状態である未化粧状態における顔の肌及び唇の画像である第1画像に、第2画像を重畳させる。なお、本実施形態において、第1画像は、塗布対象物を含む画像であればよく、塗布対象物以外の物を含んでいてよい。例えば塗布対象物が唇である場合、第1画像は、唇と唇以外の部位とを含む画像であってよく、具体的には顔画像であってよい。
ユーザ端末10及びサーバ20は、通信回線であるネットワーク3を介して接続されている。ネットワーク3は、一例として、携帯電話の4G、5Gなどの移動通信システム、Wi‐Fi(登録商標)などの無線LAN通信システムである。
ユーザ端末10には、アプリケーションプログラムとしての画像表示プログラムがインストールされている。画像表示プログラムは、ユーザ端末10に第1画像、及び第1画像と第2画像とを重畳した重畳画像などの各種画像を表示する処理を実行させるプログラムである。画像表示プログラムは、ネットワークを介してアプリケーション配信装置からダウンロードされ、ユーザ端末10にインストールされる。
ユーザ端末10は、タッチパネル13を備える。タッチパネル13には、未化粧状態の画像である第1画像30aや、シミュレーション結果としての重畳画像30bなどの各種画像が表示される。
〔ユーザ端末〕
図2に示すように、ユーザ端末10は、制御部11と、メモリ12と、タッチパネル13と、撮像部14と、通信部15とを備える。制御部11は、一例として、CPUであり、ユーザ端末10における全体の動作を制御する。
メモリ12は、メインメモリとデータ記憶部とを備える。メモリ12が備えるメインメモリは、一例として、RAMであり、ユーザ端末10のデータやプログラムなどを一時的に記憶する。メモリ12が備えるデータ記憶部は、不揮発性メモリであって、一例として、フラッシュメモリである。メモリ12が備えるデータ記憶部には、例えば、画像表示プログラムなど、ユーザ端末10における各種処理を実行するためのプログラムが記憶されている。
タッチパネル13は、液晶パネルや有機ELパネルなどの表示デバイスと、位置入力デバイスとを組み合わせたタッチ操作入力が可能なディスプレイである。すなわち、タッチパネル13は、ユーザ端末10において、画像30が表示される表示部であり、また、サーバ20に対して操作入力を行う操作部である。
撮像部14は、一例として、CCDやCMOS等の撮像素子を備えるRGBカメラである。撮像部14は、可視光等の光を検出し、赤(R)、緑(G)、青(B)のRGB値で構成された画像データを出力する。以下では、撮像部14で取得された画像のRGB値を第1RGB値とする。
撮像部14は、第1RGB値で構成される、未化粧状態でのユーザ2の顔画像(未化粧状態の顔の肌及び唇を含む第1画像)を取得する。また、撮影部14は、後述する照明環境推定部において用いられる照明環境推定用画像を取得してもよい。
通信部15は、ネットワーク3を介して、サーバ20と通信する。具体的に、通信部15は、ユーザ端末10からの信号をサーバ20に送信し、また、サーバ20が生成した画像などのデータを受信する。また、通信部15は、ネットワーク3を介してサーバ20以外の情報処理装置(図示せず)と通信可能であってよい。この場合、通信部15は、例えばサーバ20以外の情報処理装置から第1画像又は上記照明環境推定用画像を受信してもよい。
〔サーバ〕
図3に示すように、サーバ20は、制御部21と、メモリ24と、通信部25とを備える。制御部21は、一例として、CPU22とGPU23とを備える。CPU22は、サーバ20における画像の生成処理以外の全体の動作を制御する。GPU23は、サーバ20における画像の生成処理を実行する。
メモリ24は、メインメモリとデータ記憶部とを備える。メモリ24が備えるメインメモリは、一例として、RAMであり、サーバ20のデータやプログラムなどを一時的に記憶する。メモリ24が備えるデータ記憶部は、不揮発性メモリであって、一例として、HDDやSSDなどのフラッシュメモリである。
メモリ24が備えるデータ記憶部には、例えば、化粧シミュレーションプログラムなど、サーバ20における各種処理を実行するためのプログラムが記憶されている。化粧シミュレーションプログラムは、第2画像を生成し、第1画像と第2画像とを重畳した重畳画像を生成する処理をサーバ20に実行させるプログラムである。化粧シミュレーションプログラムにおける処理は、制御部21が備えるGPU23によって制御される。
メモリ24は、データ記憶部としての分光変換データベース24aと、照明環境データベース24bと、化粧料データベース24cとを備える。また、メモリ24は、RGB値から照明光の分光分布を求めるためのシステム変換マトリックスを記憶する変換マトリックス記憶部24dをさらに備えていてもよい。
分光変換データベース24aは、第1画像において、化粧料が塗布される対象である塗布対象物を構成する第1RGB値を未化粧状態における塗布対象物の分光反射率である第1分光反射率S(λ)に変換するための第1変換関数Mを記憶する。本実施形態では、分光変換データベース24aは、塗布対象物の一例である顔における素肌及び唇のそれぞれについて、第1RGB値を第1分光反射率S(λ)に変換するための第1変換関数Mを記憶する。
第1変換関数Mは、多数の人々を対象として塗布対象物のRGB値及び分光反射率を実測し、塗布対象物のRGB値及び分光反射率の対応関係を実測対象者の塗布対象物の色ごとに統計的に分析することで得られる変換マトリックスである。第1変換関数Mは、一例として、400nm~700nmの可視波長域を5nm間隔に区分した61×3の変換行列である。
具体例として、分光変換データベース24aは、塗布対象物の一例である肌に含まれるメラニン色素量に応じて、第1タイプの肌と、第2タイプの肌と、第3タイプの肌との3つのタイプに分けて、肌の色に応じた第1変換関数Mを記憶する。第1タイプの肌は、メラニン色素量が第2タイプ及び第3タイプよりも少ない第1範囲内にある肌であって、肌に光を当てた時の各波長の相対反射率が高い肌である。第2タイプの肌は、メラニン色素量が第1範囲より多い第2範囲内にある肌であって、肌に光を当てた時の各波長の相対反射率が中程度の肌である。第3タイプの肌は、メラニン色素量が第2範囲より多い第3範囲内にある肌であって、肌に光を当てた時の各波長の相対反射率が低い肌である。なお、分光変換データベース24aは、例えば、肌のRGB値を所定の範囲ごとに区分し、肌のRGB値における区分ごとの第1変換関数Mを記憶してもよい。
照明環境データベース24bは、塗布対象物に照射されうる照明光の分光分布である照明分光分布E(λ)と、照明光を発生させる照明光源の空間分布との組合せである光源情報を照明環境ごとに記憶する。ここでの照明光源には、例えば、塗布対象物に対して照明光を直接照射する直接光源と、照明環境中に存在する物体が直接光源からの照明光を塗布対象物に向けて反射する反射光源とがあるものの、本実施形態ではこれらは特に区別されない。したがって、照明環境データベース24bは、塗布対象物を中心とした全方位について、直接光源と反射光源とを含めた照明光源の空間分布と、照明光源から照射される照明光の照明分光分布E(λ)を記憶する。なお、照明光源の空間分布は、塗布対象物に対する照明光の入射角度などの幾何条件を規定するための情報として用いられる。
また、ここでの照明環境とは、塗布対象物に対して特定のシーンにおける照明効果を再現するための照明分光分布E(λ)及び照明光源の空間分布の組合せである。照明環境の具体例としては、人工の直接光源が適用される屋内環境、また、自然の直接光源が適用される屋外環境などがあり、屋外環境としては、朝、昼、夕、夜などの時間帯ごとに区分される。人工の直接光源としては、例えば、白熱電球、蛍光灯、LEDライトなどであり、自然の直接光源としては、例えば、太陽、月などである。
照明分光分布E(λ)、及び、照明光源の空間分布は、例えば、実際の照明環境において、全方位の分光画像を取得して、可視波長域(例えば、400~700nm)において、5nmごとの分光分布を全方位に対してサンプリングすることで求めることができる。この場合、照明環境データベース24bは、分光画像の各画素における照明分光分布E(λ)を記憶する。詳述すると、分光画像における各画素の位置は、塗布対象物を中心とした全方位の空間に分布する照明光源の空間分布を特定する情報となる。そして、各画素に割り当てられた照明分光分布E(λ)は、塗布対象物に照射される照明光の照明分光分布E(λ)となる。換言すると、分光画像における各画素を照明光源とみなし、各画素に照明分光分布E(λ)を割り当てることで、全方位における照明光源の空間分布と、各照明光源から照射される照明光の照明分光分布E(λ)とを得ることができる。このような手法によれば、実際の照明環境において、各直接光源及び各反射光源を区別せずにシーン全体の照明光源をまとめて処理できる。したがって、照明光の境界が区別できない複数の照明光源が存在する場合であっても、照明環境の再現が可能となる。
化粧料データベース24cは、第2変換関数T(λ)を化粧料の製品ごとに記憶する。第2変換関数T(λ)は、第1分光反射率S(λ)に基づいて、化粧料の分光反射率である第2分光反射率S(λ)を算出するための変換マトリックスである。ここでの化粧料とは、塗布対象物に塗布される化粧料であって、例えば、ファンデーション、チーク、アイカラー、リップなどである。すなわち、化粧料データベース24cは、ファンデーション、チークなどの化粧料の種類ごと、かつ、各化粧料の色、用途等のバリエーションごとの第2変換関数T(λ)を記憶する。
より具体的に、化粧料データベース24cは、化粧料の製品ごとに、塗布対象物の色に応じた第2変換関数T(λ)を記憶する。例えば、化粧料データベース24cは、肌に塗布される化粧料であれば、化粧料の製品ごとに、第1タイプの肌、第2タイプの肌、第3タイプの肌のそれぞれについての第2変換関数T(λ)を記憶する。
第2変換関数T(λ)は、例えば、多数の人々を対象として、被験者の塗布対象物における分光反射率Sと、被験者の塗布対象物に化粧料を塗布した状態の分光反射率Sとを実測し、分光反射率S及び分光反射率Sの変化量から測定対象者の塗布対象物の色ごとに統計的に算出される。
また、化粧料データベース24cは、化粧料の反射特性パラメータを化粧料の製品ごとに記憶する。詳細は後述するが、反射特性パラメータとは、物体表面の粗さなど物体の表面性状に依存するパラメータであって、物体表面における照明光の入射角に対する反射光の強度や光沢の広がりなどの反射特性を規定するパラメータである。化粧料の反射特性パラメータは、例えば、実際の化粧料に対して光沢計などの測定機器で計測された実測値から求めることができる。
他にも、化粧料データベース24cは、アイカラーなどの化粧料に含まれるパールやラメなどの光輝剤の分光反射率及び反射特性パラメータを記憶してもよい。なお、光輝剤の分光反射率は、化粧料が肌に塗布された状態でも塗布対象物の色の影響を受けにくいことから、肌自体の分光反射率と独立した反射成分で計算される。したがって、第2変換関数T(λ)による算出処理は行われない。そのため、光輝剤の分光反射率は、測定機器で計測された実測値が記憶される。
変換マトリックス記憶部24dは、RGB値から照明光の分光分布を求めるためのシステム変換マトリックスを記憶する。当該システム変換マトリックスは、事前に既知光源の分光分布に対して、多くの肌の分光反射率をかけた色信号を記憶したデータベースから作成されうる。
通信部25は、ネットワーク3を介して、ユーザ端末10と通信する。具体的に、通信部25は、ユーザ端末10からの信号を受信し、また、サーバ20が生成した画像などのデータをユーザ端末10に送信する。
〔GPU〕
図4に示すように、制御部21が備えるGPU23は、形状推定部23a、肌質特定部23b、照明環境推定部23c、第1分光反射率算出部23d、第1色信号算出部23e、特徴部分特定部24f、第2分光反射率算出部23g、第2色信号算出部23h、第3色信号算出部23i、第2RGB値算出部23j、第2画像生成部23k、及び重畳画像生成部23lとして機能する。
形状推定部23aは、未化粧状態での塗布対象物の画像である第1画像から塗布対象物の三次元形状を推定する。化粧材や肌の質感を再現する対象の形状情報から各画素に対応する法線ベクトルを算出することができる。法線ベクトルは、三次元反射特性モデルにおいて、陰影や光沢などの化粧塗膜の質感の表現を計算するために用いられる。特にAR(拡張現実)技術等において、顔の向きや表情のように刻々と変化する対象物体や化粧塗膜の質感を再現するためには、形状推定部23aが画像からリアルタイムかつ連続的に法線ベクトルを算出することにより対象物体の質感変化に即時対応できることが好ましい。塗布対象物の形状推定は第1画像を取得した後、第1分光反射率を算出する前に実施することが好ましい。形状推定部23aによる三次元形状の推定は、例えば既知の推定処理によって実現されうる。
肌質特定部23bは、肌表面の微細な凹凸含む肌質を特定するために第1画像から塗布対象物の表面の凹凸を数学モデルとして特定する。塗布対象物の表面の凹凸は、塗布対象物が顔の一部である場合、例えば皮膚表面の微細な凹凸であってよい。皮膚表面の微細な凹凸とは、皮膚表面に存在する不均一な形状のことであり、具体例としては、シワ、キメ、吹き出物、及び傷跡などである。
肌の質感に影響を与える微細な肌のシワやキメ等に関する質感の特徴情報は、直接形状情報を与えるのではなく、数学モデルを用いて陰影や色の変化として表現できるようにする。この場合、数学モデルに与えるパラメータの値を変更することでシワの質感の違いが表現できるので、画像からこの数学モデルのパラメータを推定することで質感が推定可能となる。
照明環境推定部23cは、第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、第1画像又は照明環境推定用画像における照明環境を推定する。詳細は後述するが、照明環境推定部23cは、第1画像又は照明環境推定用画像から推定された照明方向ベクトルと、照明光の分光分布を求めるためのシステム変換マトリックスを用いて第1画像又は照明環境推定用画像のRGB値から求められた照明光の分光分布と、に基づいて照明光の空間分布を推定することにより、第1画像又は照明環境推定用画像における照明環境を推定する。具体的に推定される光源情報はシーン内の照明光の空間分布と分光分布として推定する。
第1分光反射率算出部23dは、第1RGB値及び第1変換関数Mに基づいて、第1分光反射率S(λ)を算出する。第1色信号算出部23eは、化粧前の塗布対象物における三次元反射特性モデルである第1三次元反射特性モデルに基づいて、化粧前の塗布対象物に対して照明光が反射した際の色信号である第1色信号C(λ)を算出する。
ここでの三次元反射特性モデルとは、物体の光反射のプロセスを記述した数学モデルであり、三次元反射特性モデルを構成する物体の分光反射率及び反射特性パラメータによって、物体の色や質感が規定される。そして、三次元反射特性モデルに対して、照明光の分光分布と照明光の入射角度などの幾何条件とを与えることで、照明光が物体に反射した際の色信号が算出される。すなわち、第1三次元反射特性モデルとは、未化粧状態の塗布対象物における光反射のプロセスを記述した数学モデルである。
また、ここでの色信号とは、照明光が物体に反射して人の目やカメラなどの視覚系に入射する電磁波の分光分布(エネルギースペクトル分布)である。色信号は、RGB等色関数などを用いて実際に人間が知覚するRGB値などの色情報に変換される。なお、第1色信号C(λ)は、未化粧状態の塗布対象物に対して照明光が反射した際の色信号に相当する。
特徴部分特定部23fは、未化粧状態の塗布対象物の画像である第1画像から塗布対象物の特徴部分を特定する。塗布対象物の特徴部分を特定することは、一例として、塗布対象物の位置及び領域を特定することであってよい。例えば、第1画像が顔画像である場合、特徴部分特定部23fは、目、鼻、及び口といった顔を構成する要素を特定し、これにより顔を構成する要素の位置と領域(輪郭や輪郭で囲まれた部分)を特定する。特徴部分特定部23fによる特徴部分の特定は、例えば既知の画像認識技術により実現されうる。
第2分光反射率算出部23gは、第1分光反射率S(λ)及び第2変換関数T(λ)に基づいて、第2分光反射率S(λ)を算出する。第2色信号算出部23hは、化粧料の三次元反射特性モデルである第2三次元反射特性モデルに基づいて、化粧料に対して照明光が反射した際の色信号である第2色信号C(λ)を算出する。第2三次元反射特性モデルとは、化粧料における光反射のプロセスを記述した数学モデルである。なお、以下では、未化粧状態の塗布対象物についての反射特性パラメータを第1反射特性パラメータとし、化粧料についての反射特性パラメータを第2反射特性パラメータとする。
第3色信号算出部23iは、第1色信号C(λ)及び第2色信号C(λ)に基づいて、化粧状態の塗布対象物の色信号である第3色信号C(λ)を算出する。第3色信号C(λ)は、化粧状態の塗布対象物、すなわち、塗布対象物と当該塗布対象物に塗布された化粧料とに対して照明光が反射した際の色信号に相当する。第2RGB値算出部23jは、第3色信号算出部23iが算出した第3色信号C(λ)に基づいて、化粧状態の塗布対象物におけるRGB値である第2RGB値を算出する。
第2画像生成部23kは、第2RGB値算出部23jが算出した第2RGB値に基づいて、化粧状態の塗布対象物の画像である第2画像を生成する。重畳画像生成部23lは、未化粧状態の塗布対象物の画像である第1画像と、第2画像生成部23kが生成した第2画像とを重畳した重畳画像を生成する。重畳画像は、シミュレーション結果を示す画像である。
〔アプリ画像〕
図5に示すように、ユーザ端末10のタッチパネル13には、画像表示プログラムによって表示されるアプリケーション画像であるアプリ画像40が表示される。アプリ画像40は、画像表示領域41と、操作領域42とを備える。画像表示領域41は、第1画像、及び第1画像と第2画像とを重畳した重畳画像などの画像30が表示される領域である。
操作領域42は、例えば、切換オブジェクト42a、化粧領域選択オブジェクト42b、化粧料選択オブジェクト42c、照明選択オブジェクト42d、及び、操作オブジェクト42eを備える。切換オブジェクト42aは、化粧料ごとにシミュレーション結果のON、OFFを切り換えるオブジェクトである。
化粧領域選択オブジェクト42bは、塗布対象物における化粧料が適用される領域である化粧領域31を手動で指定するためのオブジェクトである。化粧領域31を指定する方法の一例としては、画像表示領域41に表示された第1画像30aにおいて、化粧料を塗布したい領域をタップ操作入力で指定する。化粧領域31としては、例えば、ファンデーションであれば顔の肌全体が指定され、チークであれば頬骨付近の肌が指定され、アイカラーであれば目元付近の肌が指定され、リップであれば唇が指定される。なお、化粧領域31は、画像認識機能等を用いて自動で設定される構成でもよい。
化粧料選択オブジェクト42cは、シミュレーションしたい化粧料の製品を選択するためのオブジェクトである。図6に示すように、化粧料選択オブジェクト42cをタップ操作することで、画像表示領域41に化粧料選択領域43が表示される。化粧料選択領域43には、化粧料データベース24cに登録された化粧料が、製品オブジェクト43aとして製品ごとに表示される。製品オブジェクト43aをタップ操作することで、化粧シミュレーションにおいて適用される化粧料の製品が選択される。
具体例として、ファンデーションの場合では、リキッドファンデーション、パウダーファンデーションなどファンデーションの種類ごと、及び、色ごとに表示された製品オブジェクト43aの中から、シミュレーションしたい製品の製品オブジェクト43aを選択する。
他の一例として、化粧領域及び化粧料の選択は、化粧領域選択オブジェクト42b及び化粧料選択オブジェクト42cを介さずに行われてもよい。例えば、画像表示領域41に表示された第1画像において、化粧料を塗布したい領域をタップすることにより、タップされた領域に応じた化粧料が自動で選択されてよい。具体例として、第1画像において頬骨付近がタップされた場合、化粧料としてチークが自動で選択され、化粧の専門家が指定したそのチークに適した塗布方法で塗布される。これにより、様々な化粧ノウハウを有する化粧の専門家が化粧料を塗布した時のイメージを再現できる。上記塗布方法は複数から選択されてよく、例えば年齢、雰囲気、又はTPOに合わせて塗布方法が選択されてよい。
照明選択オブジェクト42dは、化粧シミュレーションにおける照明環境を選択するためのオブジェクトである。化粧料選択オブジェクト42cをタップ操作することで、画像表示領域41に照明選択領域(非図示)が表示される。照明選択領域には、照明環境データベース24bに登録された各種照明環境が、照明オブジェクトとして照明環境ごとに表示される。照明オブジェクトをタップ操作することで、化粧シミュレーションにおいて適用される照明環境が選択される。例えば、第1画像が撮影された場所の照明環境とは異なる照明環境で化粧シミュレーションを行いたい場合に、照明選択オブジェクトをタップ操作して、任意の照明環境が選択されてよい。
操作オブジェクト42eは、画像表示領域41に表示された画像を移動、回転、拡大、縮小させるためのオブジェクトである。
〔第1実施形態の作用〕
次に、化粧シミュレーションシステム1の作用について説明する。
図7に示すように、ステップS1において、ユーザ端末10の制御部11は、撮像部14に未化粧状態でのユーザ2の顔画像(未化粧状態の顔の肌及び唇を含む第1画像)を取得する処理を実行させる。そして、制御部11は、第1RGB値で構成される第1画像をサーバ20に送信する処理を実行する。
ここで取得される第1画像は、例えば、1枚の静止画でもよいし、角度を変えて撮影された複数枚の静止画であってもよく、又は動画であってもよい。
また、ステップS1において第1画像を撮影する際には、撮影環境における照明等の様々な要因の影響を受ける。より化粧シミュレーションに適した第1画像を取得する観点から、例えば、撮影環境における影響を低減するための補正として、撮影された第1画像に対してメモリ12に記憶させた画像処理プログラムなどによって周囲の照明環境に応じて明度や彩度を適切な色になるように自動的を調整することも可能である。また、照明環境データベース24bを用いることで、撮影時とは異なるシーンでの化粧品の見え方(色の変化)を想定した映像再現をしてもよい。
ステップS2において、サーバ20の形状推定部23aは、第1画像から塗布対象物の三次元形状を推定する。
ステップS3において、肌質特定部23bは、第1画像から塗布対象物の表面の凹凸を数学モデルとして特定する。肌質特定部23bは、例えば、Torrance-SparrowモデルのV字溝モデルやOren-Nayerモデルを改良し、塗布対象物の表面の凹凸を数学モデルで特定する。
ステップS4において、照明環境推定部23cは、ユーザ端末10から送信された第1画像を用いて、第1画像における照明環境を推定する。または、照明環境推定部23cは、照明環境推定用画像を用いて、照明環境推定用像における照明環境を推定する。一実施態様において、照明環境推定用画像は、第1画像と異なる画像であり、例えば、塗布対象物を被写体として含まない画像であってよく、又は、塗布対象物を被写体として含むが第1画像とは異なる画像であってもよい。これにより、例えば、塗布対象物が被写体に含まれていない画像における環境光やキャスマッチの画像から照明環境を推定するなど、第1画像に限定されない照明環境の推定が可能となる。また、一実施態様において、第1画像と照明環境推定用画像とは、同一の画像であってよい。
照明環境推定部23cは、具体的には、第1画像又は照明環境推定用画像から照明方向ベクトルを推定する。また、照明環境推定部23cは、変換マトリックス記憶部14dに記憶された照明光の分光分布を求めるためのシステム変換マトリックスを用いて、第1画像又は照明環境推定用画像のRGB値から照明光の分光分布を求める。照明環境推定部23cは、得られた照明方向ベクトルと照明光の分光分布とに基づいて照明光源の空間分布を推定することにより、第1画像又は照明環境推定用画像における照明環境を推定する。具体的に推定される光源情報はシーン内の照明光の空間分布と分光分布として推定する。この推定した照明環境情報(シーン情報)は独立した照明環境の情報としても記録されるので、他のシーンで撮影した画像にも適用できる。たとえば、あるオフィスで推定した照明環境情報があった場合に、それを別の場所で撮影した顔の映像再現に使用できる。
照明環境推定部23cにおいて照明方向ベクトルを推定する処理の一例として、顔画像を用いて推定する場合について説明する。まず、形状推定部23aによって推定された顔の三次元形状の情報に基づいて、顔画像の各画素に対応する法線ベクトルを算出する。頬や額であれば顔を凸包物体と仮定できるため、対象が光沢のない物体(マットな反射)であれば周囲と比較して一番明るい画素を探すことにより、その画素の法線ベクトルが照明方向と一致するので照明方向を推定できる。また、光沢がある物体であれば、周囲と比較して一番明るい画素を探せば、その画素の法線ベクトルについて視線方向ベクトルの正反射方向ベクトルが照明方向と一致するので照明方向を推定できる。
次いで、ユーザ2は、タッチパネル13に表示された操作領域42のオブジェクトに対してタップ操作入力を行い、化粧料が適用される化粧領域31を設定し、さらに、シミュレーションする化粧料の製品を選択する。ユーザ端末10の制御部11は、ユーザ2が設定した化粧領域31と、ユーザ2が選択した化粧料の製品とを特定する信号をサーバ20に送信する。なお、例えば、チークとファンデーションのように、異なる種類の化粧料を複数選択してもよい。
ステップS5において、第1分光反射率算出部23dは、第1画像を構成する第1RGB値に基づいて、化粧領域31における第1分光反射率S(λ)を算出する処理を実行する。具体的に、第1分光反射率算出部23dは、分光変換データベース24aから化粧領域31における塗布対象物の色に応じた第1変換関数Mを読み出し、化粧領域31における第1分光反射率S(λ)を算出する処理を実行する。
ここで読み出される第1変換関数Mは、例えば、第1画像の化粧領域31を構成する第1RGB値に応じて自動で決定されてもよいし、ユーザ2がカラーコードのような色見本から塗布対象物に近い色を選択することで決定されてもよい。
第1分光反射率S(λ)は、第1変換関数Mと、第1RGB値における各要素の値であるR,G,Bとを用いて、400nm~700nmの可視波長域を5nm間隔で区分した離散的な61次元の分光反射ベクトルsとして近似できる。第1分光反射率S(λ)は、以下の式(1),(2)で表すことができる。
塗布対象物の色に応じた第1変換関数Mに基づいて第1分光反射率S(λ)を算出することで、塗布対象物が有する実際の分光反射率により近い第1分光反射率S(λ)を算出できる。また、例えば、塗布対象物が顔における肌の場合、一般的に、分光光度計などの測定機器における測定範囲が小さいことから、顔における肌全体の分光反射率を直接測定することは困難である。これに対して、本実施形態のように、未化粧状態の顔画像が有する第1RGB値から第1分光反射率S(λ)を算出することで、好適に未化粧状態における塗布対象物の分光反射率を得ることができる。
なお、本実施形態では、例えば、髪の毛やピアスなどのアクセサリなど、化粧料が適用されない領域、すなわち、化粧領域31以外の領域では、第1RGB値から第1分光反射率S(λ)を算出する処理は実行されない。これにより、第1RGB値から第1分光反射率S(λ)を算出する際の計算処理を簡略化できる。
ステップS6において、第1色信号算出部23eは、第1分光反射率S(λ)、第1反射特性パラメータ、照明光の照明分光分布E(λ)、及び、照明光の幾何条件で表現される第1三次元反射特性モデルに基づいて第1色信号C(λ)を算出する処理を実行する。
具体的に、第1色信号算出部23eは、照明環境推定部23cによって推定された照明環境における照明分光分布E(λ)及び照明光源の空間分布と、第1三次元反射特性モデルとを用いて、第1色信号C(λ)を算出する処理を実行する。
第1三次元反射特性モデルは、第1分光反射率S(λ)、照明分光分布E(λ)、第1拡散反射関数D、及び、第1鏡面反射関数Gを用いて、以下の式(3)で表すことができる。なお、第1拡散反射関数Dは、未化粧状態の塗布対象物における拡散反射を規定する関数である。第1鏡面反射関数Gは、未化粧状態の塗布対象物における鏡面反射を規定する関数である。また、第1三次元反射特性モデルでは、右辺第1項が拡散反射成分を表し、右辺第2項が鏡面反射成分を表す。
ここで、図8及び図9を参照して、本実施形態における反射の幾何学モデルについて説明する。図8に示すように、仮想空間50は、仮想点51と、仮想光源52と、仮想視点53とを備える。仮想点51は、仮想光源52からの光を受ける未化粧状態の塗布対象物の表面S上の点である。仮想光源52は、仮想点51に対して照明光を照射する。仮想視点53は、仮想点51を観測する視点である。
また、照明方向ベクトルLは、仮想点51から仮想光源52に向かうベクトルである。法線ベクトルNは、表面S上の仮想点51における法線方向のベクトルである。視線方向ベクトルVは、仮想点51から仮想視点53に向かうベクトルである。照明方向ベクトルL、法線ベクトルN、及び、視線方向ベクトルVは、三次元反射特性モデルにおける照明光の幾何条件を規定するためのパラメータである。そして、照明方向ベクトルLと法線ベクトルNとのなす角を入射角θとし、法線ベクトルNと視線方向ベクトルVとのなす角を受光角θとする。
一般的に、物体が照明光を受けた場合、物体表面において生じる色信号C(λ)は、物体の分光反射率S(λ)と、照明光の分光分布E(λ)とを用いて、C(λ)=E(λ)S(λ)として表現される。
本実施形態では、単に物体の分光反射率及び照明光の分光分布から物体の色信号を算出するだけでなく、物体表面における拡散反射及び鏡面反射を考慮した三次元反射特性モデルを用いることで、物体表面の光沢や質感をより正確に再現している。
具体的に、仮想点51が仮想光源52からの光を受けた場合、仮想点51において全方位に生じる拡散反射光と、入射角θと受光角θとが近似する場合に生じる鏡面反射光とで構成される反射光が生じる。
図9に示すように、仮想点51において生じる反射光の強度分布は、拡散反射光強度αと、鏡面反射光強度Iとを足し合わせた強度分布である反射光分布RDで表現される。仮想点51において生じる反射光の強度は、受光角θに応じて異なる値を示す。具体的に、図9における仮想点51から反射光分布RDまでの距離が受光角θにおける反射光の強度を表す。
拡散反射光強度αは、拡散反射光の強度を規定するための反射特性パラメータである。拡散反射光強度αは、入射角θに対して受光角θが何れの値であってもほぼ一定の値である。鏡面反射光強度Iは、拡散反射光強度αに対する鏡面反射光の相対的な強度を規定するための反射特性パラメータである。鏡面反射光強度Iは、入射角θに対して受光角θの値が近づくにつれて増大し、入射角θと受光角θとが一致したときに最大値となる。
例えば、受光角θが入射角θと大きく異なる受光角θr1である場合、仮想視点53aにおいて観測される反射光の強度は、拡散反射光強度αの値となる。これに対して、受光角θが入射角θと近似する受光角θr2である場合、仮想視点53bにおいて観測される反射光の強度は、拡散反射光強度αと鏡面反射光強度Iとを足し合わせた値となる。
第1拡散反射関数Dは、第1拡散反射光強度αと、照明光の幾何条件としての照明方向ベクトルL及び法線ベクトルNとを用いて、以下の式(4)で表すことができる。第1拡散反射光強度αは、未化粧状態の塗布対象物における拡散反射光の強度を規定するための第1反射特性パラメータである。ここでは、第1拡散反射光強度α=1として扱う。なお、以下の計算で用いられる照明光の幾何条件は、照明光源の空間分布、塗布対象物の形状、及び、塗布対象物を観測する視点位置等から算出される。
また、反射光分布RDにおいて、鏡面反射光が生じる範囲は、鏡面反射パラメータmで表現される。鏡面反射パラメータmは、物体表面の粗さなど物体の表面性状に依存するパラメータであって、光沢の広がりを規定する反射特性パラメータである。鏡面反射パラメータmが大きいほど、鏡面反射光が生じる範囲が大きくなる。
第1鏡面反射関数Gは、第1鏡面反射光強度I、及び、第1鏡面反射パラメータmと、照明光の幾何条件としての照明方向ベクトルL、法線ベクトルN、及び、視線方向ベクトルVとを用いて、以下の式(5)~(7)で表すことができる。なお、式(6)は、Beckmann関数である。また、第1鏡面反射光強度Iは、未化粧状態の塗布対象物における鏡面反射光の強度を規定するための第1反射特性パラメータである。そして、第1鏡面反射パラメータmは、未化粧状態の塗布対象物における光沢の広がりを規定するための第1反射特性パラメータである。第1鏡面反射光強度I及び第1鏡面反射パラメータmは、あらかじめ任意の値が設定される。
なお、第1鏡面反射光強度I及び第1鏡面反射パラメータmは、例えば、未化粧状態でのユーザ2の顔に対して、照明光の入射角度を変えた複数の画像から求めることもできる。例えば、ステップS1において、未化粧状態でのユーザ2の顔画像を取得する際に、ユーザ2の顔に対して照明光の入射角度を変えた複数の画像を取得することで、第1鏡面反射光強度I及び第1鏡面反射パラメータmを求めることもできる。
このように、第1三次元反射特性モデルを用いて第1色信号C(λ)を算出することで、未化粧状態における塗布対象物の色、及び、照明光によって生じる陰影や光沢を第1色信号C(λ)として再現できる。
なお、ステップS6において、第1色信号算出部23eは、塗布対象物の表面の凹凸による陰影又は光沢の変化を計算し、計算により得られた塗布対象物の表面による陰影又は光沢に関する情報を含む質感情報をさらに用いて、第1色信号C(λ)を算出してもよい。これにより、塗布対象物の凹凸に対応する陰影や光沢(質感)を計算して、塗布対象物の色に対して陰影や光沢の情報を付与できる。
ステップS7において、特徴部分特定部23fは、第1画像から塗布対象物の特徴部分を特定する。具体的に、特徴部分特定部23fは、第1画像から、目、鼻、及び口といった顔を構成する要素の位置と領域を特定する。
ステップS8において、第2分光反射率算出部23gは、化粧領域31において、第1分光反射率S(λ)及び第2変換関数T(λ)に基づいて、第2分光反射率S(λ)を算出する処理を実行する。具体的に、第2分光反射率算出部23gは、化粧料データベース24cから化粧領域31における塗布対象物の色に応じた第2変換関数T(λ)を読み出し、化粧領域31における第2分光反射率S(λ)を算出する処理を実行する。
なお、ここで読み出される第2変換関数T(λ)は、例えば、ステップS5において、第1変換関数Mと合わせて決定されてもよく、ユーザ2がカラーコードのような色見本から塗布対象物に近い色を選択することで決定されてもよい。第2分光反射率S(λ)は、第1分光反射率S(λ)と、第2変換関数T(λ)とを用いて、以下の式(8)で表すことができる。
第1分光反射率S(λ)と、塗布対象物の色に応じた第2変換関数T(λ)とに基づいて第2分光反射率S(λ)を算出することで、実際に化粧料が塗布対象物に塗布されてなじんだ状態での化粧料の分光反射率により近い第2分光反射率S(λ)を算出できる。
ステップS9において、第2色信号算出部23hは、第2分光反射率S(λ)、第2反射特性パラメータ、照明光の照明分光分布E(λ)、及び、照明光の幾何条件で表現される第2三次元反射特性モデルに基づいて、第2色信号C(λ)を算出する処理を実行する。
具体的に、第2色信号算出部23hは、化粧料データベース24cからユーザ2によって選択された化粧料の第2反射特性パラメータを読み出す。さらに、第2色信号算出部23hは、照明環境推定部23cによって推定された照明環境における照明分光分布E(λ)及び照明光源の空間分布と、第2三次元反射特性モデルとを用いて、第2色信号C(λ)を算出する処理を実行する。
第2三次元反射特性モデルは、第2分光反射率S(λ)、照明分光分布E(λ)、第2拡散反射関数D、及び、第2鏡面反射関数Gを用いて、以下の式(9)~(11)で表すことができる。なお、第2拡散反射関数Dは、化粧料における拡散反射を規定する関数である。第2鏡面反射関数Gは、化粧料における鏡面反射を規定する関数である。また、式(11)に含まれるB(N,V,L,m)は、Beckmann関数である。式(9)では、右辺第1項が拡散反射成分を表し、右辺第2項が鏡面反射成分を表す。
第2三次元反射特性モデルにおいて、第2拡散反射光強度αは、化粧料の製品ごとに設定されるパラメータであって、化粧料の拡散反射光の強度を規定するための第2反射特性パラメータである。ここでは、第2拡散反射光強度α=1として扱う。第2鏡面反射光強度Iは、化粧料の製品ごとに設定されるパラメータであって、化粧料の鏡面反射光の強度を規定するための第2反射特性パラメータである。第2鏡面反射パラメータmは、化粧料の製品ごとに設定されるパラメータであって、化粧料の光沢の広がりを規定するための第2反射特性パラメータである。
また、シミュレーションする化粧料として、例えば、ファンデーション及びチークのように複数の化粧料が選択された場合、ステップS9において、第2色信号算出部23hは、各化粧料の第2色信号C(λ)を算出する処理を実行する。
このように、第2三次元反射特性モデルを用いて第2色信号C(λ)を算出することで、化粧料の色、及び、照明光によって生じる陰影や光沢を第2色信号C(λ)として再現できる。
なお、ステップS9において、第2色信号算出部23hは、アイカラーなどの化粧料に含まれるパール、ラメなどの光輝剤について、光輝剤の三次元反射特性モデルである第3三次元反射特性モデルを用いて、光輝剤の色信号C(λ)を算出することもできる。この場合、光輝剤を含む化粧料のベース部分、すなわち、化粧料における光輝剤以外の部分についての第2色信号C(λ)が第2三次元反射特性モデルによって算出され、光輝剤の色信号C(λ)が第3三次元反射特性モデルによって算出される。
図10に示すように、化粧料に含まれる光輝剤60は、複数の薄膜61が積層された多層膜構造を有する。仮想光源52からの光が光輝剤60に照射された際には、仮想視点53において、各薄膜61の厚さdに依存する干渉光が観測される。したがって、このような多層膜による干渉光について、光輝剤の色信号C(λ)を算出することで、虹色のような光輝剤の干渉色を再現できる。なお、光輝剤60における薄膜61の数および厚さdなどの多層膜構造についての情報は、化粧料データベース24cに記憶される。
第3三次元反射特性モデルは、光輝剤の分光反射率S、光輝剤の反射特性パラメータ、照明分光分布E(λ)、及び、照明光の幾何条件を用いて、以下の式(12),(13)で表すことができる。なお、第3三次元反射特性モデルでは、光輝剤の鏡面反射成分のみについての色信号C(λ)を算出しており、拡散反射成分は無視している。また、光輝剤は、照明光の幾何条件に依存する分光反射率Sを有する。式(13)に含まれるB(N,V,L,m)は、Beckmann関数である。
光輝剤鏡面反射関数Gは、光輝剤における鏡面反射を規定する関数である。鏡面反射光強度Iは、光輝剤の反射特性パラメータであって、光輝剤ごとの鏡面反射光の強度を規定するパラメータである。鏡面反射パラメータmは、光輝剤の反射特性パラメータであって、光輝剤ごとの光沢の広がりを規定するパラメータである。
また、光輝剤の色信号C(λ)を算出する処理は、化粧領域31内で光輝剤が点在する領域において実行される。具体的に、化粧領域31内で光輝剤が点在する領域は、光輝剤の粒形状の大きさなどを規定する形状情報、及び、実際に化粧料が塗布された領域中での光輝剤の分散状態を規定する分散情報に基づいて推定できる。化粧領域31内で光輝剤が点在する領域を推定し、当該領域において光輝剤の色信号C(λ)を算出することで、実際の化粧料に含まれる光輝剤の粒形状、及び、光輝剤の分散状態を再現できる。なお、光輝剤の形状情報及び分散情報は、予め化粧料データベース24cに記憶される。
なお、光輝剤の色信号C(λ)を算出する際に、光輝剤の色信号C(λ)における特定の波長におけるスペクトル強度を高める補正を行ってもよい。また、第3三次元反射特性モデルは、光輝剤の配向性を規定する配向パラメータ、各薄膜61の厚さdなどのパラメータを含む構成であってもよい。
また、ステップS9において、第2色信号算出部23hは、塗布対象物の表面の凹凸による陰影又は光沢の変化を計算し、計算により得られた塗布対象物の表面による陰影又は光沢に関する情報を含む質感情報をさらに用いて第2色信号C(λ)を算出してもよい。これにより、塗布対象物の凹凸に対応する陰影や光沢(質感)を計算して、化粧膜に対して陰影や光沢の情報を付与できる。
ステップS10において、第3色信号算出部23iは、第1色信号C(λ)及び第2色信号C(λ)に基づいて、化粧状態の塗布対象物を含む第2画像の色信号である第3色信号C(λ)を算出する処理を実行する。なお、化粧領域31のうち複数の化粧料が重畳される領域においては、それぞれの化粧料の第2色信号C(λ)を足し合わせることで、第3色信号C(λ)が算出される。
具体例として、第3色信号算出部23iは、化粧領域31のうちファンデーションとチークとが重畳される領域において、第1色信号C(λ)、第2色信号C2f(λ)、C2c(λ)、及び、重み係数w~wを用いた以下の式(14)に基づいて第3色信号C(λ)を算出する処理を実行する。第2色信号C2f(λ)は、化粧料の一例であるファンデーションの色信号である。第2色信号C2c(λ)は、化粧料の一例であるチークの色信号である。また、重み係数w~wは、各色信号に対して重み付けをするための係数であり、シミュレーションにおける化粧料の厚みや、化粧料を重ねて塗布する順序などによって適宜決定される。
このように、第1色信号C(λ)及び第2色信号C(λ)に基づいて第3色信号C3(λ)を算出することで、化粧状態における塗布対象物の色信号として、化粧料に塗布対象物の色が反映された状態の第3色信号C(λ)を算出できる。
複数の化粧料が重畳された状態のシミュレーションを行う場合でも、第1色信号C(λ)及び各化粧料の第2色信号C(λ)に基づいて第3色信号C(λ)を算出することで、最表面の化粧料に塗布対象物の色と下地となる化粧料の色とが反映された色信号を算出できる。
なお、ステップS10において、第3色信号算出部23iは、第1色信号C(λ)、第2色信号C(λ)、及び、光輝剤の色信号C(λ)に基づいて、第3色信号C(λ)を算出する処理を実行することもできる。
具体例として、第3色信号算出部23iは、化粧領域31のうちファンデーションと光輝剤としてパール及びラメを含むアイカラーとが重畳される領域において、以下の式(15)に基づいて、第3色信号C(λ)を算出する処理を実行する。第2色信号C2e(λ)は、アイカラーのうち光輝剤を除いた部分の色信号である。色信号CGp(λ)は、アイカラーに含まれる光輝剤の一例であるパールの色信号である。色信号CGl(λ)は、アイカラーに含まれる光輝剤の一例であるラメの色信号である。
このように、第1色信号C(λ)、第2色信号C(λ)、及び、光輝剤の色信号C(λ)に基づいて化粧状態の色信号を算出することで、化粧料に含まれる光輝剤の色や光沢が反映された第3色信号C(λ)を算出できる。
ステップS11において、第2RGB値算出部23jは、第3色信号算出部23iが算出した第3色信号C(λ)に基づいて、第2画像のRGB値である第2RGB値を算出する処理を実行する。具体的に、第2RGB値算出部23jは、第3色信号C(λ)及びRGB等色関数を用いた以下の式(16)に基づいて第2RGB値を算出する処理を実行する。なお、式(16)における左辺のR,G,Bは、第2RGB値における各要素の値である。
ステップS12において、第2画像生成部23kは、第2RGB値算出部23jが算出した第2RGB値に基づいて、第2画像を生成する処理を実行する。
ステップS13において、重畳画像生成部23lは、第1画像と第2画像とを重畳した重畳画像を生成する。さらに、重畳画像生成部23lは、生成した重畳画像のデータをユーザ端末10に送信して、シミュレーション結果である重畳画像をタッチパネル13に表示させる処理を実行する。
図11に示すように、タッチパネル13には、アプリ画像40の画像表示領域41において、重畳画像30bが表示される。重畳画像30bの化粧領域31には、塗布対象物の一例である肌の色や下地となる化粧料の色、及び、照明光による陰影が反映された化粧状態の肌が表示される。また、化粧領域31のうち受光角θが入射角θと近似する領域である光沢領域32では、鏡面反射による光沢が再現された状態が表示される。以上の処理により、化粧シミュレーションが完了する。
なお、重畳画像30bが表示された状態で、別の化粧料を選択することで、再度ステップS5~S11の処理を実行し、別の化粧料が適用された重畳画像30bを生成、表示させることもできる。この際、例えば、一度算出した第1色信号C(λ)をメモリ24のメインメモリに記憶させることで、ステップS5,S6の処理を省略してもよい。このように、様々な化粧料を繰り返しシミュレーションすることで、自身の希望に合う化粧料を探すこともできる。
第1色信号C(λ)及び第2色信号C(λ)を、照明環境推定部23cによって推定された照明環境の照明分光分布E(λ)及び照明光源の空間分布に基づいて算出することで、シミュレーション結果としての重畳画像30bに第1画像が撮影された場所の照明環境が反映される。したがって、第1画像における照明環境の照明効果を反映した化粧シミュレーションを行うことができる。また、実際の照明環境における分光分布の実測値から算出される照明分光分布E(λ)を用いることで、様々な照明環境を容易に再現できる。これにより、例えば、任意の照明環境を指定した化粧シミュレーションを容易に行うことができる。また、照明環境が異なる化粧シミュレーションの結果を比較することも容易に行うことができる。
ステップS2~S13の処理をサーバ20が備えるGPU23が実行することで、ステップS2~S13の処理を高速で行うことができ、リアルタイムでの化粧シミュレーションが可能となる。そのため、例えば、拡張現実(AR)又は複合現実(MR)での化粧シミュレーションが可能となる。
また、例えば、化粧シミュレーションシステム1を用いて、ユーザ2に対して各種化粧料のシミュレーションを行うことで、ユーザ2の要望に合わせた最適な化粧料を提案するためのカウンセリングを行うこともできる。
なお、図7に示される各ステップの処理順序は、処理に支障が無い範囲において適宜変更されてよい。例えば、S4及びS5は、この順で実行されてもよく、順序を入れ替えて実行されてもよい。すなわち、上記のとおりステップS4の後にステップS5が実行されてもよく、又は、ステップS5の後にステップS4が実行されてもよい。また、例えば、ステップS3は、第1色信号算出部23eにおいて塗布対象物の表面の凹凸が考慮されない場合、ステップS6よりも後に実行されてもよい。
〔第1実施形態の効果〕
上記第1実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1-1)第1三次元反射特性モデルを用いて第1色信号C(λ)を算出し、第2三次元反射特性モデルを用いて第2色信号C(λ)を算出することで、化粧状態における塗布対象物の色信号として、化粧料に塗布対象物の色が反映された第3色信号C(λ)を算出できる。そして、第3色信号C(λ)から第2RGB値を算出することで、化粧状態の塗布対象物を含む第2画像を生成できる。これにより、化粧料に塗布対象物の色が反映された化粧状態の第2画像を得ることができる。したがって、単に塗布対象物の領域に化粧料の色を重畳する場合よりも、再現精度の高い化粧シミュレーションを行うことができる。なお、本明細書において「再現精度」とは、実際の化粧料において塗布対象物の位置、向き、又は照明環境に対応して刻一刻と変化する化粧料の光沢、色、及び陰影等の三次元的な質感をリアルタイムに再現できることを意味する。また、照明光による光沢を再現できるため、第2画像において、塗布対象物に化粧料を塗布した状態の質感を再現できる。
(1-2)塗布対象物としての肌や唇の色に応じた第1変換関数Mに基づいて第1分光反射率S(λ)を算出することで、より実際の肌や唇における分光反射率に近い第1分光反射率S(λ)を算出できる。
(1-3)第1分光反射率S(λ)と、塗布対象物の色に応じた第2変換関数T(λ)とに基づいて第2分光反射率S(λ)を算出することで、実際に化粧料が塗布対象物に塗布されて塗布対象物になじんだ状態での化粧料の分光反射率により近い第2分光反射率S(λ)を算出できる。
(1-4)化粧料の製品ごとの第2分光反射率S(λ)及び第2反射特性パラメータを用いて第2色信号C(λ)を算出することで、化粧料の製品ごとの色及び反射特性が反映された第2画像を生成できる。
(1-5)第3三次元反射特性モデルを用いることで、化粧料に含まれる光輝剤の色信号C(λ)を算出できる。そして、第1色信号C(λ)、第2色信号C(λ)、及び、光輝剤の色信号C(λ)に基づいて算出される第3色信号C(λ)から第2RGB値を算出することで、化粧状態における光輝剤の光沢が再現された第2画像を生成できる。また、形状情報及び分散情報から推定される光輝剤が点在する領域において、光輝剤の色信号C(λ)を算出することで、実際の化粧料に含まれる光輝剤の粒形状及び光輝剤の分散状態を再現できる。
(1-6)第1色信号C(λ)及び第2色信号C(λ)を、第1画像の照明環境として推定された照明環境の照明分光分布E(λ)及び照明光源の空間分布に基づいて算出することで、第2画像にも照明環境が反映される。したがって、第1画像における照明環境を反映した再現精度の高い化粧シミュレーションを行うことができる。
(1-7)GPU23を用いて化粧シミュレーションシステム1におけるステップS2~S13の処理を実行することで、リアルタイムでの画像処理が可能となり、より好適に化粧シミュレーションを行うことができる。例えば、拡張現実(AR)又は複合現実(MR)で化粧シミュレーションを行うことができる。
(1-8)化粧料の特性を示すパラメータとして、分光光度計、光沢計、及び色彩計測器などの各種測定機器によって計測された結果そのものを、化粧料データベース24cに記憶させることができる。これにより、測定機器による計測結果を直接的に化粧シミュレーションに利用することができる。
(1-9)数学モデル(例えば三次元反射特性モデル)を用いて化粧シミュレーションを行うことにより、化粧料の反射特性を物理シミュレーションに基づいて再現することができる。このことにより、化粧料を構成する材質ごとに個々の数学モデルとして分解して、それぞれを独立したブロック構造として記述することが可能となる。
上記構造を採用することによる利点は次のとおりである。
(利点1)
光沢や陰影、照明や視点の角度に応じた色の変化など、三次元的な変化に対応する映像再現が可能なので、実在の化粧料の質感や観測条件の変化に対応する質感の変化を実物と同様に再現することが可能となる。
(利点2)
化粧料開発において、個々の組成を数学モデルのブロック構造で記述することで、特定の成分を除去したり、追加したりすることがシミュレーション上で可能となる。つまり、実物の化粧料を用意しなくても、化粧料の成分組成の変化に対応するコンピュータシミュレーション(視覚シミュレーション)が可能となる。
(利点3)
数学モデルの精度を引き上げることで化粧シミュレーションシステム1の高機能化を図ることができる。一方、システムの高機能化は処理速度の低下をもたらしうるため、この点を考慮して、数学モデルの精度を引き下げることで化粧シミュレーションシステム1の高速化を図ることできる。
(利点4)
複雑な組成を持つ化粧料等、全体のモデル化が難しい化粧料の場合、部分的に簡略化したモデルや仮定を含んだモデルなどの精度の低いモデルをブロックとして独立して記述することができる。この場合、計測精度の向上などに伴い、精度の低いモデル(ブロック)を高精度なモデルに置き換えていくことでモデル全体の精度を徐々に向上させることができる。
化粧シミュレーションシステム1は、以上の4つの利点に説明したようなスケーラビリティの高いシステムであるといえる。
(1-10)化粧シミュレーションシステム1を用いて、ユーザ2に対して各種化粧料のシミュレーションを行うことで、ユーザ2の要望に合わせた最適な化粧料を提案するためのカウンセリングを行うこともできる。
(1-11)化粧シミュレーションシステム1は、ユーザの要望に合わせたパラメータ調整が可能であり、この機能を用いて各種化粧料のシミュレーションを行うことで、ユーザ2の要望に合わせた最適な化粧料を提案するためのカウンセリングを行うこともできる。
2.第1実施形態の変形例
上記で説明した第1実施形態に関し、その変形例を以下にて説明する。変形例については、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。以下で特段の説明がない構成又は要素は、第1実施形態と同一である。
2-1.第1変形例
第1実施形態の第1変形例は、化粧料データベース24cが化粧料の物理的特性に関する情報を記憶している点、及び、第2色信号算出部23hが化粧料の物理的特性に関する情報に対応する第2反射特性パラメータを用いて第2色信号C(λ)を算出する点において、第1実施形態と相違する。
具体的に、化粧料データベース24cは、第2反射特性パラメータと化粧料の物理的特性に関する情報とを対応付けて記憶する。化粧料データベース24cは、化粧料の物理的特性を化粧料の製品ごとに記憶する。化粧料の物理的特性としては、例えば、化粧料の処方及び化粧料に含まれる原材料の特性などが挙げられる。より具体的には、原材料の分光反射率、種類、配合割合、並びに、光輝剤の形状及び大きさなどが挙げられる。また、複数の材質から構成されている複雑な材質や未知の材質の場合は、対象の材質の物理的な性質を近似した数学モデルとモデルパラメータ(光沢度、粗さ、反射光の波長変化等)を化粧料データベース24cに記録することもできる。
第2色信号算出部23hは、化粧料データベース24cから化粧料の物理的特性に関する情報に対応する第2反射特性パラメータを読み出し、読み出された第2反射特性パラメータと、第2三次元反射特性モデルとを用いて化粧料の第2色信号C(λ)を算出する。第2色信号算出部23hが化粧料データベース24cから第2反射特性パラメータを読み出すために用いられる化粧料の物理的特性に関する情報は、例えば、ユーザ2によって設定された情報であってよい。具体例として、当該化粧料の物理的特性に関する情報は、ユーザ2によってユーザ端末10を介して入力され、ユーザ端末10からサーバ20に送信された情報であってよい。
第1変形例に係る化粧シミュレーションシステム1において、第2三次元反射特性モデルを構成する第2反射特性パラメータは、化粧料の物理的特性に応じて設定されうる。すなわち、数学モデルである第2三次元反射特性モデルのモデルパラメータに、化粧料の物理的特性を反映させることができる。これにより、化粧料の物理的特性に基づいて第2色信号C(λ)を算出することができる。
第1変形例に係る化粧シミュレーションシステム1を用いることにより、ユーザ2は、化粧料の物理的特性を設定して化粧シミュレーションを行うことができる。例えば、ユーザ2が、光輝剤を含有する化粧料の化粧シミュレーションを行う場合を想定する。一例として、ユーザ2は、化粧料の物理的特性に関する情報として光輝剤のサイズの数値を設定することができる。これにより、例えば、光輝剤のサイズを大きくした場合に光沢がどの程度増加して見えるのかをシミュレーションすることができる。他の一例として、ユーザ2は、化粧料の物理的特性に関する情報として油性成分の含有量の数値を設定することができる。これにより、例えば、化粧料に含まれる油性成分を増量した場合に光輝剤の光沢がどの程度低減して見えるのかをシミュレーションすることができる。
また、第1変形例に係る化粧シミュレーションシステム1は、ユーザの要望に合わせたパラメータ調整が可能であり、この機能を用いて各種化粧料のシミュレーションを行うことで、ユーザ2の要望に合わせた最適な化粧料を提案するためのカウンセリングを行うこともできる。
また、第1変形例に係る化粧シミュレーションシステム1は、例えば、化粧料の開発者が化粧料の設計を行う際に利用することができる。すなわち、当該化粧シミュレーションシステム1は、例えば、化粧料の設計のために用いられるシステムであってよい。化粧料の開発者は、化粧料の物理的特性を変化させた際に塗布対象物の化粧状態がどのように変化するのかをシミュレーションすることができる。当該開発者は、シミュレーションの結果を参考にして、化粧料に含まれる原材料の種類や配合組成を検討することができる。当該化粧シミュレーションシステム1は、化粧料の設計において、物理的特性の異なる複数の化粧料を実際に試作する労力及び時間を削減することに寄与しうる。
2-2.第2変形例
第1実施形態の第2変形例は、第2RGB値算出部23jが、人間の視覚特性と重畳画像が出力されるカラー画像出力装置の特性とに基づいて、第3色信号C(λ)を補正する点において、第1実施形態と相違する。詳細には、第2RGB値算出部23jは、人間の視覚特性とカラー画像出力装置の特性とに基づいて第3色信号C(λ)を補正し、補正された第3色信号C(λ)から化粧状態の塗布対象物における第2RGB値を算出する。これにより、第2RGB値を実物との色差の少ない値に補正することができる。
具体的に、第2RGB値算出部23jは、第3色信号C(λ)からCIE L*a*b*空間上で表示する色に変換する。その後、CIE L*a*b*から、カラー画像出力装置(モニター、プロジェクタ、プリンタ等)の色特性に基づいてデバイスRGBあるいはデバイスCMYKに色を変換する。表示するカラー画像出力装置は事前に、ガンマ特性、白色点を含むRGB値あるいはCMYK値各色の色座標を計測し、その情報に基づいて色変換を行う。この場合、各装置は、RGB3色型のディスプレイに限定されず、多原色ディスプレイ(たとえば、シャープ社製のクアトロンRGBYの4色モニターなどのRGB3原色よりも多い原色を持ったディスプレイ)や多色プリンタ(4原色を超える多色インクを持つプリンタ(たとえば、6色プリンタCMYK+ライトシアン+ライトマゼンタなどの4原色を超える多色インクを持つプリンタ)であってもよい。
2-3.第3変形例
第1実施形態の第3変形例は、化粧料データベース24cが、印象又は場面に応じた化粧料の塗布方法をさらに記憶している点において第1実施形態と相違する。上記で述べたとおり、化粧料データベース24cは、化粧料の種類ごと、かつ、各化粧料の色ごとの第2変換関数T(λ)を記憶している。今回の相違点は、この関数2変換関数T(λ)に加えて、各化粧料の塗布のための空間分布(空間的な濃淡や輪郭等)を記録し印象又は場面に応じた化粧料の塗布方法をデータベース内に組み込むことが可能となる。
上記印象とは、例えば、明るい、活発、大人しい、優しいなどである。上記場面とは、例えば、仕事をする、面接を受ける、友人と遊びに行く、結婚式に出席するなどである。上記化粧料の塗布方法とは、例えば、化粧料の塗布位置、塗布範囲、及び塗布量などである。
第3変形例において、図5に示されるユーザ端末10の操作領域42には、例えば、印象選択オブジェクト及び場面選択オブジェクト(いずれも図示せず)が表示されてよい。印象選択オブジェクトをタップ操作することにより、ユーザ2が希望する印象を選択可能であってよい。また、場面選択オブジェクトをタップ操作することにより、ユーザ2が想定したい場面を選択可能であってよい。
第3変形例に係る化粧シミュレーションシステム1を用いることにより、ユーザ2は、所望する印象又は場面に適した化粧状態をシミュレーションすることができる。
同じ化粧料であっても塗布方法を変えることで見た目の心証を変えられる場合がある。しかしながら、化粧料の塗布方法に精通していない人が、希望する印象や場面に適した塗布方法を見出すことは難しい。そこで、例えば、化粧料の塗布方法に精通した化粧料開発者の知見などに基づいて、印象又は場面に応じた化粧料の塗布方法に関する情報を予め化粧料データベース24cに記憶させておく。これにより、印象又は場面に応じた化粧シミュレーションを誰でも簡便に行うことができる。
3.第2実施形態
上記第1実施形態では、第1画像がRGB画像である例について説明した。第1画像がマルチバンド画像である場合は、第1実施形態と同様な処理により化粧シミュレーションが実行される。次に、第2実施形態として、第1画像がマルチスペクトル画像である例について以下に説明する。以下で特段の説明がない構成又は要素は、第1実施形態と同一である。
第2実施形態において、ユーザ端末10の撮影部14は、一例として、マルチスペクトルカメラである。ここで、第1実施形態において説明した撮影部14は、R、G、Bの3波長帯を持つRGBカメラであるが、第1実施形態のRGBカメラは、可視波長帯を4~20バンド程度に分割したマルチバンドカメラであってもよい。一方、第2実施形態においては、主に可視波長域を細かく分割して詳細な分光波形が得られるマルチスペクトルカメラ(ハイパースペクトルカメラとも呼ばれる)を撮影部14として用いる。マルチバンドカメラはマルチバンド画像を出力する。一方、マルチスペクトルカメラはスペクトルを記録したマルチスペクトル画像データを出力する。マルチスペクトルカメラは、例えば、ユーザ端末10に内蔵されたカメラであってよく、又は、ユーザ端末10に取り付けられた若しくは接続されたカメラであってもよい。撮影部14は、マルチスペクトル画像である、未化粧状態でのユーザ2の顔画像(未化粧状態の顔の肌及び唇を含む第1画像)を取得する。
第2実施形態では、図7に示されるステップS4において、照明環境推定部23cは、第1画像又は照明環境推定用画像から取得された照明光の分光分布に基づいて、第1画像又は照明環境推定用画像における照明環境を推定する。
照明光源の推定処理には、照明光源の分光分布E(λ)を獲得する部分を含む。E(λ)は第1画像から求めたカメラ出力から分光分布に変換する処理が必要となる。例えば、RGB画像からでは、LEDや蛍光灯照明が持つ複雑な分光分布を数学的に直接求めることができないので、カメラ出力(RGB画像)から分光分布を求める処理が必要となる。そこで、事前に多数の光源の分光分布の特性を計測し、その計測データを統計的に分析した情報を拘束条件として、第1画像や照明環境推定用画像から光源の分光分布を推定する。この場合、以下の式(A)のように、RGB値から照明光源用のシステム変換マトリックスMを使用することで光源の分光分布E(λ)を求める。照明光源用のシステム変換マトリックスMを求める手法としては、例えば既知の技術(田中、望月 「RGBカメラによる全方位分光画像計測とIBLへの応用」、画像電子学会誌、2013年)を用いることができる。なお、システム変換マトリックスMは、第1実施形態において説明した、変換マトリックス記憶部14dに記憶された照明光の分光分布を求めるためにシステム変換マトリックスの具体例である。
しかし、第2実施形態において用いられるマルチスペクトルカメラでは対象の分光分布を直接撮影できるので、上記で説明したカメラ出力から分光分布を推定する処理を省略することができる。すなわち、照明環境の推定において用いられる第1画像又は照明環境推定用画像がマルチスペクトル画像である場合、照明環境推定部23cは、照明環境データベース24b及び変換マトリックス記憶部24dに記憶された照明光の分光分布を求めるためのシステム変換マトリックスを用いずに、照明環境を推定できる。
図7に示されるステップS5において、第1分光反射率算出部23dは、第1画像のスペクトル情報からRGB値を計算し、得られたRGB値を第1画像の第1RGB値とする。第1分光反射率算出部23dは、この第1RGB値に基づいて、上記式(1),(2)を用いて化粧領域31における第1分光反射率S(λ)を算出する処理を実行する。
なお、マルチバンドカメラでは対象の分光分布を直接撮影できないため、第1画像又は照明環境推定用画像がマルチバンド画像の場合、基本的に第1実施形態において説明したRGB画像と同じ処理を実行する。つまり、R,G,Bの3つのバンドに対してではなく、マルチバンド画像のバンド数に合わせて処理を行う。
上記第2実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(2-1)第1画像がマルチスペクトル画像であることで、照明環境の分光情報を第1画像から直接取得することができる。したがって、RGB画像である第1画像から照明環境の分光情報を間接的に取得する場合に比べて、照明環境を精度良く推定することができる。
4.第3実施形態
上記第1実施形態では、分光反射率ベースの計算処理で算出された第1色信号C(λ)及び第2色信号C(λ)に基づいて第3色信号C(λ)を算出し、さらに、第3色信号C(λ)に基づいて第2RGB値を算出する処理を実行する例について説明した。上述の処理に代えて、RGB値ベースの計算処理を実行することで第2RGB値を求めることもできる。第3実施形態として、RGB値ベースの計算処理を実行する場合の作用について以下に説明する。
なお、第2RGB値を求めるためのRGB値ベースの計算処理は、化粧領域31のうち高い再現精度が必要とされない領域において実行される。すなわち、高い再現精度が必要とされる領域では、上記第1実施形態に記載される分光反射率ベースの計算処理によって第2RGB値が算出される。また、第3実施形態において、第2RGB値を求めるためのRGB値ベースの計算処理は、図7に示すステップS4以降の処理として第2RGB値算出部23jによって実行される。
まず、第2RGB値算出部23jは、第1RGB値、第1拡散反射関数D、第1鏡面反射関数G、及び、照明光のRGB値に基づいて、第3RGB値を算出する処理を実行する。第3RGB値は、塗布対象物に対して照明光が照射されることで陰影、光沢などの照明効果が反映された状態における塗布対象物のRGB値である。第3RGB値R,G,Bは、以下の式(17)で表すことができる。また、照明光のRGB値R,G,Bは、照明分光分布E(λ)及びRGB等色関数を用いて、以下の式(18)で表すことができる。なお、照明光のRGB値は、照明環境ごとに照明環境データベース24bに記憶される。
次いで、第2RGB値算出部23jは、第1RGB値及び化粧料変換係数に基づいて、第4RGB値を算出する処理を実行する。第4RGB値は、化粧料が塗布対象物に塗布されて塗布対象物になじんだ状態での化粧料のRGB値である。すなわち、第4RGB値には、ステップS4において推定された照明環境における照明光による陰影、光沢などの照明効果は反映されていない。また、化粧料変換係数は、第2変換関数T(λ)に基づいて算出される係数であって、第1RGB値を第4RGB値に変換するための係数である。化粧料変換係数は、化粧料ごとに予め化粧料データベース24cに記憶される。第4RGB値R,G,Bは、以下の式(19)で表すことができる。また、化粧料変換係数R,G,Bは、第2変換関数T(λ)及びRGB等色関数を用いて、以下の式(20)で表すことができる。
次いで、第2RGB値算出部23jは、第4RGB値、第2拡散反射関数D、第2鏡面反射関数G、及び、照明光のRGB値に基づいて、第5RGB値を算出する処理を実行する。第5RGB値は、化粧料に対して照明光が照射されることで陰影、光沢などの照明効果が反映された化粧料のRGB値である。第5RGB値R,G,Bは、以下の式(21)で表すことができる。
そして、第2RGB値算出部23jは、第3RGB値、第5RGB値、及び、重み係数wに基づいて、第2RGB値を算出する処理を実行する。具体例として、化粧領域31のうち、ファンデーションとチークとが重畳される領域において、第2RGB値算出部23jは、以下の式(22)に基づいて第2RGB値を算出する処理を実行する。R5f,G5f,B5fは、ファンデーションの第5RGB値である。R5c,G5c,B5cは、チークの第5RGB値である。
なお、化粧料に含まれる光輝剤は、RGB値ベースでの計算処理が困難である。そのため、光輝剤における干渉色が再現された第6RGB値は、上記の式(12)を用いて分光反射率ベースで光輝剤の色信号C(λ)を算出した後、光輝剤の色信号C(λ)及びRGB等色関数から算出される。また、第6RGB値を算出する処理は、第2RGB値算出部23jによって実行される。第6RGB値R,G,Bは、以下の式(23)で表すことができる。
そして、第2RGB値算出部23jは、第3RGB値、第5RGB値、第6RGB値、及び、重み係数wに基づいて、光輝剤を含む化粧料が塗布された状態の第2RGB値を算出する処理を実行することもできる。具体例として、第2RGB値算出部23jは、化粧領域31のうち、ファンデーションと光輝剤としてパール及びラメを含むアイカラーとが重畳される領域において、以下の式(24)に基づいて第2RGB値R,G,Bを算出する処理を実行する。R5e,G5e,B5eは、アイカラーのうち光輝剤を除いた部分の第5RGB値である。R6p,G6p,B6pは、アイカラーに含まれる光輝剤の一例であるパールの第6RGB値である。R6l,G6l,B6lは、アイカラーに含まれる光輝剤の一例であるラメの第6RGB値である。
以上のようにしてRGB値ベースの計算処理によって算出された第2RGB値は、図7に示すステップS12において、第2画像生成部23kが第2画像を生成する処理を実行するために用いられる。
RGB値ベースの計算処理によって第2RGB値を算出する場合、赤、緑、青の三色についての3次元の計算処理が行われる。これに対して、第1実施形態のように分光反射率から算出した色信号に基づいて第2RGB値を算出する場合、400nm~700nmの可視光領域を5nmごとに区分した61次元の計算処理が行われる。
すなわち、RGB値ベースの計算処理によって第2RGB値を算出することで、分光反射率から算出した色信号に基づいて第2RGB値を算出する処理よりも化粧シミュレーションにおける計算処理を簡略化できる。したがって、化粧領域31のうち高い再現精度が必要とされない領域においてRGB値ベースの計算処理を行うことで、化粧シミュレーションの再現精度を大きく低下させずに計算処理を簡略化できる。
〔第3実施形態の効果〕
上記第3実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(3-1)RGB値ベースの計算処理によって第2RGB値を算出することで、分光反射率から算出した色信号に基づいて第2RGB値を算出する処理よりも化粧シミュレーションにおける計算処理を簡略化できる。したがって、化粧領域31のうち高い再現精度が必要とされない領域においてRGB値ベースの計算処理を行うことで、化粧シミュレーションの再現精度を大きく低下させずに計算処理を簡略化できる。
なお、上記第3実施形態は、さらに、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・RGB値ベースの計算処理を用いて算出された第3RGB値及び第5RGB値に基づいて第2RGB値を算出する構成を例示した。しかし、これに限定されず、第3RGB値及び第5RGB値の何れかを分光ベースの計算によって求めてもよい。具体的に、第3RGB値に代えて、第1色信号C(λ)をRGB等色関数によってRGB値に変換した値を用いてもよい。また、第5RGB値に代えて、第2色信号C(λ)をRGB等色関数によってRGB値に変換した値を用いてもよい。このような構成によれば、精度を必要としない任意の計算処理のみをRGB値ベースで計算することができるため、より好適に化粧シミュレーションの計算処理を簡略化できる。
なお、上記第1~第3実施形態は、さらに、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・上記第1~第3実施形態では、化粧シミュレーションが行われる対象が顔であり、化粧料が塗布される塗布対象物が顔における肌または唇である構成を例示した。しかし、これに限定されず、本化粧シミュレーションシステム1は、顔以外であっても、化粧料が塗布される領域であれば適用可能である。化粧料が塗布される塗布対象物は、例えば、髪の毛であってもよい。その場合、塗布される化粧料は、例えば、ヘアマニキュアである。また、化粧料が塗布される塗布対象物は、例えば、爪であってもよい。その場合、塗布される化粧料は、例えば、マニキュアである。
・GPU23を用いて化粧シミュレーションシステム1におけるステップS2~S13の処理を実行する構成を例示したが、これに限定されず、例えば、サーバ20にGPU23を設けずに、CPU22によってステップS2~S13の処理を実行してもよい。この場合、サーバ20におけるステップS2~S13の処理速度が低下するものの、GPU23を設けないことも可能となる。また、例えば、CPU22の性能に応じて、ステップS2~S13の処理のうち、何れかの処理をCPU22が実行してもよい。
・第1色信号C(λ)及び第2色信号C(λ)を、照明環境推定部23cによって推定された照明環境の照明分光分布E(λ)及び照明光源の空間分布に基づいて算出する構成を例示した。しかし、これに限定されず、例えば、推定された照明環境をユーザ2が変更できる構成であってもよい。この場合、例えば、照明環境の違いよって化粧料を塗布した塗布対象物の外観がどのように変化するのかをシミュレーションすることができる。
・ステップS8において、第1分光反射率S(λ)と、塗布対象物の色に応じた第2変換関数T(λ)とに基づいて第2分光反射率S(λ)を算出する構成を例示した。しかし、これに限定されず、分光光度計などの計測機を用いて化粧料の分光反射率を実測し、化粧料における分光反射率の実測値を第2分光反射率S(λ)として用いてもよい。この場合、第1分光反射率S(λ)と第2変換関数T(λ)とに基づいて第2分光反射率S(λ)を算出する場合よりも第2色信号Cの再現精度が若干低下するものの、様々な化粧料についての化粧シミュレーションを容易に行うことができる。例えば、新たな化粧料が開発された際には、新たな化粧料の第2分光反射率及び第2反射特性パラメータを実測することで、本化粧シミュレーションシステム1における化粧シミュレーションを行うことができる。なお、この場合、ステップS8の処理は省略される。
・塗布対象物の色に応じた第1変換関数Mに基づいて第1分光反射率S(λ)を算出する構成を例示した。しかし、これに限定されず、例えば、塗布対象物の色によらず、肌や唇など塗布対象物ごとに設定される汎用的な第1変換関数Mに基づいて第1分光反射率S(λ)を算出してもよい。この場合、シミュレーション結果としての重畳画像30bと、実際の化粧後の外観との差異が若干大きくなるものの、第1画像30aを構成する第1RGB値に応じて第1変換関数Mを決定する処理、または、ユーザ2が色見本から塗布対象物に近い色を選択する手順が不要となる。したがって、第1RGB値から第1分光反射率S(λ)を算出する処理を簡略化できる。
・ユーザ端末10が備える撮像部14を用いてユーザ2の顔画像を取得する構成を例示したが、これに限定されず、例えば、デジタルカメラなどの外部装置で取得した顔画像を第1画像としてもよい。また、照明環境推定用画像も、例えば、ユーザ端末10の撮影部14を用いて取得された画像であってよく、又は、ユーザ端末以外の外部装置で取得された画像であってもよい。
・本実施形態では、サーバ20が備えるGPU23を用いて化粧シミュレーションシステム1におけるステップS2~S13の処理を実行する構成を例示した。しかし、これに限定されず、例えば、ユーザ端末10の制御部11にGPUを設け、ユーザ端末10に化粧シミュレーションプログラムをインストールして、ユーザ端末10が備えるGPUによってステップS2~S13の処理を実行してもよい。
・化粧シミュレーションシステム1は、例えば、画像表示プログラムを用いて、シミュレーション結果としての重畳画像に適用された化粧料を購入する処理を実行可能な構成であってもよい。この場合、サーバ20には、決済処理を実行する決済部が設けられる。これにより、例えば、化粧シミュレーションシステム1において自身の希望に合う化粧料を探した後、当該化粧料を購入できる。
なお、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態及び変形例は、適宜組み合わせられてよい。
1…化粧シミュレーションシステム
10…ユーザ端末
11…制御部
12…メモリ
13…タッチパネル
14…撮像部
20…サーバ
21…制御部
23…GPU
23a…形状推定部
23b…肌質特定部
23c…照明環境推定部
23d…第1分光反射率算出部
23e…第1色信号算出部
23f…特徴部分特定部
23g…第2分光反射率算出部
23h…第2色信号算出部
23i…第3色信号算出部
23j…第2RGB値算出部
23k…第2画像生成部
23l…重畳画像生成部
24…メモリ
24a…分光変換データベース
24b…照明環境データベース
24c…化粧料データベース
24d…変換マトリックス記憶部
30…画像
30a…第1画像
30b…重畳画像
31…化粧領域
32…光沢領域
40…アプリ画像

Claims (15)

  1. 化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における照明環境を推定する照明環境推定部と、
    前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する第1分光反射率算出部と、
    前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する第1色信号算出部と、
    前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する第2色信号算出部と、
    前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する第3色信号算出部と、
    前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する第2RGB値算出部と、
    前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する第2画像生成部と、
    前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成部と、
    を備える、化粧シミュレーションシステム。
  2. 前記第1画像又は前記照明環境推定用画像は、RGBカラー画像、マルチバンド画像、又はマルチスペクトル画像である、
    請求項1に記載の化粧シミュレーションシステム。
  3. 前記第1画像と前記照明環境推定用画像とは、同一の画像である、
    請求項1又は2に記載の化粧シミュレーションシステム。
  4. 前記塗布対象物に照射されうる照明光の分光分布である照明分光分布と前記照明光を発生させる照明光源の空間分布との組合せである光源情報を照明環境ごとに記憶する照明環境データベースをさらに備える、
    請求項1又は2に記載の化粧シミュレーションシステム。
  5. 前記照明環境の推定において用いられる前記第1画像又は前記照明環境推定用画像がRGB画像又はマルチバンド画像である場合において、
    RGB値から照明光の分光分布を求めるためのシステム変換マトリックスを記憶する変換マトリックス記憶部をさらに備え、
    前記照明環境推定部は、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像から推定された照明方向ベクトルと、前記照明光の分光分布を求めるためのシステム変換マトリックスを用いて前記第1画像又は前記照明環境推定用画像のRGB値から求められた前記照明光の分光分布と、に基づいて照明光源の空間分布を推定することにより、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における前記照明環境を推定する、
    請求項4に記載の化粧シミュレーションシステム。
  6. 前記照明環境の推定において用いられる前記第1画像又は前記照明環境推定用画像がマルチスペクトル画像である場合において、
    前記照明環境推定部は、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像から取得された照明光の分光分布に基づいて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における前記照明環境を推定する、
    請求項1又は2に記載の化粧シミュレーションシステム。
  7. 前記第2反射特性パラメータと化粧料の物理的特性に関する情報とを対応付けて記憶する化粧料データベースをさらに備え、
    前記第2色信号算出部は、前記化粧料データベースから前記化粧料の物理的特性に関する情報に対応する前記第2反射特性パラメータを読み出し、読み出された前記第2反射特性パラメータと、前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件と、で表現される第2三次元反射特性モデルを用いて前記化粧料の前記第2色信号を算出する、
    請求項1又は2に記載の化粧シミュレーションシステム。
  8. 前記第2RGB値算出部は、人間の視覚特性と前記重畳画像が出力されるカラー画像出力装置の特性とに基づいて前記第3色信号を補正し、補正された前記第3色信号から前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する、
    請求項1又は2に記載の化粧シミュレーションシステム。
  9. 化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像から前記塗布対象物の三次元形状を推定する形状推定部と、
    前記第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における照明環境を推定する照明環境推定部と、
    前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する第1分光反射率算出部と、
    前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する第1色信号算出部と、
    前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する第2色信号算出部と、
    前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する第3色信号算出部と、
    前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する第2RGB値算出部と、
    前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する第2画像生成部と、
    前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成部と、
    を備える、化粧シミュレーションシステム。
  10. 化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における照明環境を推定する照明環境推定部と、
    前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する第1分光反射率算出部と、
    前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する第1色信号算出部と、
    前記第1画像から前記塗布対象物の特徴部分を特定する特徴部分特定部と、
    前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する第2色信号算出部と、
    前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する第3色信号算出部と、
    前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する第2RGB値算出部と、
    前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する第2画像生成部と、
    前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成部と、
    を備える、化粧シミュレーションシステム。
  11. 化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像から前記塗布対象物の表面の凹凸を数学モデルとして特定する肌質特定部と、
    前記第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における照明環境を推定する照明環境推定部と、
    前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する第1分光反射率算出部と、
    前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する第1色信号算出部と、
    前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する第2色信号算出部と、
    前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する第3色信号算出部と、
    前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する第2RGB値算出部と、
    前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する第2画像生成部と、
    前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成部と、
    を備える、化粧シミュレーションシステム。
  12. 前記第1色信号算出部又は前記第2色信号算出部は、
    前記塗布対象物の表面の凹凸による陰影又は光沢の変化を計算し、前記計算により得られた前記塗布対象物の表面の凹凸による陰影又は光沢に関する情報を含む質感情報をさらに用いて、前記第1色信号又は前記第2色信号を算出する、
    請求項11に記載の化粧シミュレーションシステム。
  13. 化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における照明環境を推定する工程と、
    前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する工程と、
    前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する工程と、
    前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する工程と、
    前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する工程と、
    前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する工程と、
    前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する工程と、
    前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する工程と、
    を含む、化粧シミュレーション方法。
  14. コンピュータに、
    化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は前記照明環境推定用画像における照明環境を推定する処理と、
    前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する処理と、
    前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する処理と、
    前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する処理と、
    前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する処理と、
    前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する処理と、
    前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する処理と、
    前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する処理と、
    を実行させる、化粧シミュレーションプログラム。
  15. 化粧料が塗布される塗布対象物の化粧前の画像である第1画像又は照明環境推定用画像を用いて、前記第1画像又は照明環境推定用画像における照明環境を推定する照明環境推定部と、
    前記第1画像の第1RGB値から前記化粧前の前記塗布対象物における第1分光反射率を算出する第1分光反射率算出部と、
    前記第1分光反射率と前記化粧前の前記塗布対象物における反射特性を規定する第1反射特性パラメータと照明光の分光分布及び幾何条件とで表現される第1三次元反射特性モデルを用いて前記化粧前の前記塗布対象物における第1色信号を算出する第1色信号算出部と、
    前記化粧料の第2分光反射率と前記化粧料の反射特性を規定する第2反射特性パラメータと前記照明光の前記分光分布及び前記幾何条件とで表現される第2三次元反射特性モデルを用いて、前記化粧料の第2色信号を算出する第2色信号算出部と、
    前記第1色信号及び前記第2色信号から、前記塗布対象物に前記化粧料を塗布した化粧状態の前記塗布対象物における第3色信号を算出する第3色信号算出部と、
    前記第3色信号から、前記化粧状態の前記塗布対象物における第2RGB値を算出する第2RGB値算出部と、
    前記第2RGB値に基づいて第2画像を生成する第2画像生成部と、
    前記第1画像と前記第2画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成部と、
    を備える、化粧シミュレーション装置。
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