JP2024034473A - 細胞培養装置及びその製造方法 - Google Patents

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Shinji Sugiura
敏幸 金森
Toshiyuki Kanamori
和美 進
Kazumi SHIN
孝広 吉岡
Takahiro Yoshioka
隆史 藤本
Takashi Fujimoto
恭 藤井
Yasushi Fujii
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Abstract

【課題】気体の流入を防止するための構造体を寸法精度良く作製することができ、産業化に好適な構造を実現する。【解決手段】実施形態の細胞培養装置は、液体培地を貯留可能な第1空間及び第2空間を有する貯留部と、前記第1空間及び前記第2空間を互いに連通する第1流路及び第2流路を有する流路形成部と、前記第1空間、前記第2空間、前記第1流路及び前記第2流路の少なくとも一部に設けられる細胞培養部と、前記第1空間又は前記第2空間から前記第1流路又は前記第2流路を経て前記第1空間又は前記第2空間に戻る培養液の循環流れを制御するための循環流れ制御部と、少なくとも1つの貫通孔を有し且つ面状の構造体であって前記循環流れにおける気体の流入を防止するための気体流入防止部と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、細胞培養装置及びその製造方法に関する。
例えば、特許文献1-4及び非特許文献1には、空圧駆動による培養液の循環を実現するために、界面張力によって空気の流入を防止可能なラプラスバルブを備えた細胞培養装置が開示されている。例えば、ラプラスバルブは、深さ0.1mm以下の浅い流路で形成される。例えば、ラプラスバルブは、フォトリソグラフィーやレプリカモールディングによって作製される。一方、産業化に向けて、ラプラスバルブを射出成型や熱融着等の接合技術によって作製する事例がある。
国際公開第2016/158233号 国際公開第2017/154880号 国際公開第2017/154899号 国際公開第2019/054288号
Satoh, T, et al.: A multi-throughput multi-organ-on-a-chip system on a plate formatted pneumatic pressure-driven medium circulation platform. Lab Chip, 18, 115-125 (2018). Kurihara, K, et al.: Low-deformation precision thermal bonding of nanostructured microfluidic chips. Japanese Journal of Applied Physics, 59, SIIJ08 (2020).
しかし、ラプラスバルブを射出成型で作製する場合は、細い流路の作成が困難である。ラプラスバルブを熱融着で作製する場合は、平板との接合時に流路が潰れてしまう可能性が高い。そのため、ラプラスバルブを射出成型や熱融着等の接合技術によって寸法精度良く作製することは困難であり、大量生産が難しい。
そこで本発明は、気体の流入を防止するための構造体を寸法精度良く作製することができ、産業化に好適な構造を実現することを目的とする。
(1)本発明の一態様に係る細胞培養装置は、液体培地を貯留可能な第1空間及び第2空間を有する貯留部と、前記第1空間及び前記第2空間を互いに連通する第1流路及び第2流路を有する流路形成部と、前記第1空間、前記第2空間、前記第1流路及び前記第2流路の少なくとも一部に設けられる細胞培養部と、前記第1空間又は前記第2空間から前記第1流路又は前記第2流路を経て前記第1空間又は前記第2空間に戻る培養液の循環流れを制御するための循環流れ制御部と、を備え、前記流路形成部は、前記第1流路及び前記第2流路が形成された少なくとも1つの流路形成体と、少なくとも1つの貫通孔が形成され前記循環流れにおける気体の流入を防止する領域である気体流入防止部が1以上設けられたフィルタ部と、を有する。
(2)上記(1)に記載の細胞培養装置では、前記気体流入防止部は、前記第1流路の端部又は前記第2流路の端部に設けられてもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載の細胞培養装置では、前記貯留部、前記少なくとも1つの流路形成体及び前記気体流入防止部は、それぞれ層状に形成されており、前記少なくとも1つの流路形成体、前記フィルタ部、前記貯留部の順に積層されていてもよい。
(4)上記(1)から(3)の何れか一つに記載の細胞培養装置では、前記貫通孔の直径は、0.005mm以上0.2mm以下であってもよい。
(5)上記(1)から(4)の何れか一つに記載の細胞培養装置では、前記貯留部は、空気を供給可能な空圧ポンプに接続されていてもよい。
(6)上記(1)から(5)の何れか一つに記載の細胞培養装置では、前記フィルタ部の少なくとも一部は、感光性のフォトレジストによって構成されており、前記少なくとも1つの貫通孔は、前記フォトレジストに形成されていてもよい。
(7)上記(1)から(6)の何れか一つに記載の細胞培養装置では、前記気体流入防止部の少なくとも一部は、ポリイミド、ポリカーボネート又はポリエステル製のトラックエッチ膜で構成されていてもよい。
(8)上記(1)から(7)の何れか一つに記載の細胞培養装置では、前記気体流入防止部の少なくとも一部は、ハニカムフィルムで構成されていてもよい。
(9)上記(1)から(8)の何れか一つに記載の細胞培養装置では、前記細胞培養部は、前記第2流路及び/又は前記第2流路に設けられていても良い。
(10)上記(1)から(9)の何れか一つに記載の細胞培養装置では、前記流路形成部は、細胞を培養するための第1面と前記第1面とは反対の第2面とを有する多孔質膜層を更に有しており、前記少なくとも1つの流路形成体は、前記多孔質膜層の前記第1面の側に配置される第1流路層及び第2流路層と、前記多孔質膜層の前記第2面の側に配置される第3流路層及び第4流路層と、を含み、前記第1流路層及び前記第2流路層は、前記多孔質膜層の前記第1面の側において、前記第1空間又は前記第2空間から前記第1流路又は前記第2流路を経て前記第1空間又は前記第2空間に戻る前記培養液の循環流れを形成する流路を含み、前記第3流路層及び前記第4流路層は、前記多孔質膜層の前記第2面の側において、前記第1空間又は前記第2空間から前記第1流路又は前記第2流路を経て前記第1空間又は前記第2空間に戻る前記培養液の循環流れを形成する流路を含んでいてもよい。
(11)本発明の一態様に係る細胞培養装置の製造方法は、液体培地を貯留可能な第1空間及び第2空間を有する貯留部と、前記第1空間及び前記第2空間を互いに連通する第1流路及び第2流路を有する流路形成部と、前記第1空間、前記第2空間、前記第1流路及び前記第2流路の少なくとも一部に設けられる細胞培養部と、前記第1空間又は前記第2空間から前記第1流路又は前記第2流路を経て前記第1空間又は前記第2空間に戻る培養液の循環流れを制御するための循環流れ制御部と、を備える細胞培養装置の製造方法であって、前記貯留部を層状に形成し、前記第1流路及び前記第2流路が形成された少なくとも1つの流路形成体と、少なくとも1つの貫通孔が形成され前記循環流れにおける気体の流入を防止する領域である気体流入防止部が1以上設けられたフィルタ部とを有する前記流路形成部を、前記少なくとも1つの流路形成体と前記フィルタ部とがそれぞれ層状となるように形成し、前記少なくとも1つの流路形成体、前記フィルタ部、前記貯留部をこの順に積層して接合する。
本態様の細胞培養装置及びその製造方法によれば、気体の流入を防止するための構造体である気体流入防止部を寸法精度良く作製することができ、産業化に好適な構造を実現することができる。
実施形態の細胞培養装置の分解斜視図。 実施形態の細胞培養部の模式図。 実施形態のチャンバ層の平面図。 図3のIV-IV断面を含む斜視図。 図4の一部をY方向から見た図。 実施形態の流路プレートの平面図。 実施形態の流路プレートの構成の説明図。図7(A)はフィルタ層の平面図、図7(B)は第1流路層の平面図、図7(C)は第2流路層の平面図、図7(D)は多孔質膜層の平面図、図7(E)は第3流路層の平面図、図7(F)は第4流路層の平面図。 実施形態のフィルタ層の構成の説明図。図8(A)はフィルタ層の一部を拡大した第1の図、図8(B)はフィルタ層の一部を拡大した第2の図。 実施形態の気体流入防止部の一例を示す第1の図。 実施形態の気体流入防止部の一例を示す第2の図。 トラックエッチ膜の一例を示す平面図。 ハニカムフィルムの一例を示す斜視図。 フィルタ層の一例を示す第1の図。 フィルタ層の一例を示す第2の図。 フィルタ層の一例を示す第3の図。 比較例の細胞培養装置の流量測定結果を示すグラフ。 実施例の細胞培養装置の流量測定結果を示すグラフ。 PD-MPSの細胞の蛍光画像。 6ウェルプレートの細胞の蛍光画像。 PD-MPSの細胞の配向の分析結果を示すグラフ。 6ウェルプレートの細胞の配向の分析結果を示すグラフ。 遺伝子発現解析の結果を示すグラフ。
以下に、本発明の実施形態について各図を基に説明を行う。各図には、必要に応じてXYZ座標系を示している。本明細書においては、必要に応じてXYZ座標系に沿って各方向を定めて説明する。本実施形態において、X方向は第1方向の一例であり、水平面に沿う方向である。Y方向は、水平面において第1方向と直交する第2方向の一例である。Z方向は、第1方向及び第2方向のそれぞれと直交する第3方向の一例であり、鉛直方向に沿う方向である。+Z方向は、鉛直方向の上側に相当する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、特徴となる部分を拡大して示している場合がある。以下の説明で用いる図面では、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
<細胞培養装置>
図1は、実施形態の細胞培養装置1の分解斜視図である。図2は、実施形態の細胞培養部4の模式図である。
細胞培養装置1は、チャンバ層2(貯留部の一例)、流路プレート3(流路形成部の一例)、加圧調整装置5(循環流れ制御部の一例)、ラバーシート7、ホルダ8及び蓋9を備える。流路プレート3は、細胞培養部4を有する流路層40,50,70,80(少なくとも1つの流路形成体の一例)及びフィルタ層30(フィルタ部の一例)を有している。細胞培養装置1は、ホルダ8上に、流路プレート3、チャンバ層2、ラバーシート7及び蓋9がこの順に積み重ねられることで構成されている。
<ホルダ>
ホルダ8は、流路プレート3、チャンバ層2、ラバーシート7及び蓋9を固定する。図の例では、ホルダ8は、流路プレート3等を収納可能な箱状の収納部材10と、収納部材10に向けて蓋9等を押さえつけるための第1留め具11(押圧部材の一例)と、収納部材10に向けてチャンバ層2等を押さえつけるための第2留め具12(押圧部材の一例)と、を備える。第1留め具11及び第2留め具12は、収納部材10に対してX方向に沿う軸回りに回動自在に取付けられている。図の例では、一対の第1留め具11および一対の第2留め具12が設けられている。なお、ホルダ8の構成態様及び留め具の設置数等は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
実施形態の細胞培養装置1のホルダ8はアルミニウムの切削加工によって作製することができる。
<チャンバ層>
図3は、実施形態のチャンバ層2の平面図である。図4は、図3のIV-IV断面を含む斜視図である。図5は、図4の一部をY方向から見た図である。
チャンバ層2は、液体培地を貯留可能な第1空間及び第2空間を有する貯留部として機能する。チャンバ層2は、培養液(液体)を貯留可能な貯留空間20を有する。貯留空間20は、平面視で(+Z方向側から見て)、長円形状の外形を有する。図の例では、チャンバ層2は、複数の培養液チャンバ20A1-20A4,20B1-20B4,20C1-20C4,20D1-20D4を有する。培養液チャンバは、平面視で第1方向(X方向)に長手を有し且つ第2方向(Y方向)に短手を有する。
実施形態のチャンバ層2はポリカーボネートの切削加工によって作製することができる。
複数の培養液チャンバは、4行4列の16個設けられている。ここで、4行4列において行方向(第1方向の一例)は、平面視で培養液チャンバの長手に沿う方向である。一方、列方向(第2方向の一例)は、平面視で培養液チャンバの短手(平面視で培養液チャンバの長手と直交する方向)に沿う方向である。なお、培養液チャンバの平面視形状および設置数等は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
各列において4つの培養液チャンバが流路プレート3内のマイクロ流路で接続されることで、1つの培養ユニットを構成している。実施形態の細胞培養装置1は、X方向に並ぶ4つの培養ユニット101,102,103,104により構成されている。以下、X方向に並ぶ4つの培養ユニット101,102,103,104を-X側から順に「第1培養ユニット101」、「第2培養ユニット102」、「第3培養ユニット103」、「第4培養ユニット104」ともいう。以下、1つの培養ユニットを構成しY方向に並ぶ4つの培養液チャンバ20A1(20A2-20A4),20B1(20B2-20B4),20C1(20C2-20C4),20D1(20D2-20D4)を+Y側から順に「第1チャンバ2A」、「第2チャンバ2B」、「第3チャンバ2C」、「第4チャンバ2D」ともいう。なお、培養ユニットの構成態様及び設置数等は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
培養液チャンバは、液体培地(液体)を貯留可能な貯留空間20と、貯留空間20に連通する第1連絡路21及び第2連絡路22と、第1連絡路21と第2連絡路22との間に位置する窓孔23(以下「チャンバ窓孔23」ともいう。)と、を有する。培養液チャンバは、貯留空間20の-Z側に位置する底部25と、底部25から+Z方向に向かって隆起する隆起部26と、を備える。隆起部26は、貯留空間20の+X側に設けられている。
隆起部26の上面は、底部25の上面よりも高い位置にある。隆起部26の上面は、-X側に向かうに従って-Z側に位置するように徐々に傾斜している。第1連絡路21は、培養液チャンバの底部25をZ方向に貫通している。第2連絡路22は、隆起部26をZ方向に貫通している。第2連絡路22の上端は、第1連絡路21の上端よりも高い位置にある。チャンバ窓孔23は、底部25のX方向中央側をZ方向に貫通している。チャンバ窓孔23は、平面視で第1連絡路21よりも大きい円形である。
図の例では、第1チャンバ2A、第2チャンバ2B、第3チャンバ2C及び第4チャンバ2Dのそれぞれは、チャンバ窓孔23の-X側の部位に培養液入口(図中in)を有し、チャンバ窓孔23の+X側の部位に培養液出口(図中out)を有する。図の例では、第1連絡路21の上端が培養液入口(図中in)に相当し、第2連絡路22の上端が培養液出口(図中out)に相当する。
<流路プレート>
図6は、実施形態の流路プレート3の平面図である。図7は、実施形態の流路プレート3の構成の説明図である。図7(A)はフィルタ層30の平面図、図7(B)は第1流路層40の平面図、図7(C)は第2流路層50の平面図、図7(D)は多孔質膜層60の平面図、図7(E)は第3流路層70の平面図、図7(F)は第4流路層80の平面図をそれぞれ示す。
流路プレート3は、第1空間及び第2空間を互いに連通する第1流路及び第2流路を有する流路形成部として機能する。流路プレート3は、フィルタ層30と、多孔質膜層60と、複数の流路層40,50,70,80と、によって構成されている。
実施形態の流路プレート3は、フィルタ層30と、多孔質膜層60と、複数の流路層40,50,70,80とを積層して接着剤等で接合することで作製することができる。
<フィルタ層>
図8は、実施形態のフィルタ層30の構成の説明図である。図8(A)はフィルタ層30の一部を拡大した第1の図、図8(B)はフィルタ層30の一部を拡大した第2の図をそれぞれ示す。図8(A)はフィルタ層30において第1チャンバ2A又は第2チャンバ2Bと平面視で重なる部分、図8(B)はフィルタ層30において第3チャンバ2C又は第4チャンバ2Dと平面視で重なる部分に相当する。図9は、実施形態の気体流入防止部6の一例を示す第1の図である。図10は、実施形態の気体流入防止部6の一例を示す第2の図である。
以下、フィルタ層30において第1チャンバ2Aと平面視で重なる部分を「第1フィルタ30A」、第2チャンバ2Bと平面視で重なる部分を「第2フィルタ30B」、第3チャンバ2Cと平面視で重なる部分を「第3フィルタ30C」、第4チャンバ2Dと平面視で重なる部分を「第4フィルタ30D」ともいう。1つの培養ユニットにおいては、平面視で+Y側から第1フィルタ30A、第2フィルタ30B、第3フィルタ30C、第4フィルタ30Dの順にY方向に連なって並んでいる。
フィルタ層30は、面状の構造体6a(以下、面状構造体、とも言う)によって構成され、面状構造体6aにおいて少なくとも1つの貫通孔6hが形成された領域であり気体の流入を防止する気体流入防止部6を備える。本明細書においては気体流入防止部6自体及びフィルタ部(フィルタ層等)も「構造体」として扱う。気体流入防止部6は面状構造体6aの面方向の1箇所あるいは複数箇所に設けられる。フィルタ層30は、フィルタ層30の面方向の1又は複数箇所に気体流入防止部6が設けられた構成を採用できる。
図9、図10は、面状構造体6aの面方向の1部に複数の貫通孔6hが集合形成された領域である気体流入防止部6を有するフィルタ層30の例を示す。また、図9、図10は、面状構造体6aの面方向の1部に3以上の貫通孔6hが集合形成された領域である気体流入防止部6の例を示す。3以上の貫通孔6hが集合形成された領域である気体流入防止部6は気体流入防止部6の最外周を構成する3以上の貫通孔6hを含む。
図9、図10の例では、フィルタ層30は、複数の貫通孔31h(貫通孔6h)を有する第1気体流入防止部31(気体流入防止部6、図9参照)と、複数の貫通孔32h(貫通孔6h)を有する第2気体流入防止部32(気体流入防止部6。図10参照)と、を備える。第1気体流入防止部31が有する貫通孔31hの数は、第2気体流入防止部32が有する貫通孔32hの数よりも多い。各気体流入防止部31,32が有する貫通孔31h,32hは、平面視で円形である。なお、フィルタ層30の構成態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
例えば、気体流入防止部6の貫通孔6h(各気体流入防止部31,32が有する貫通孔31h,32h)の直径は、0.005mm以上0.2mm以下である。図の例では、第1気体流入防止部31は、図8(A)、(B)に示すように第1チャンバ2A及び第2チャンバ2Bのinと平面視で重なる第1フィルタ30A及び第2フィルタ30Bのinに対応する位置、並びに、第3チャンバ2C及び第4チャンバ2Dのoutと平面視で重なる第3フィルタ30C及び第4フィルタ30Dのoutに対応する位置に形成されている。
図示例の実施形態の第1気体流入防止部31は、図9に示すように、直径40μmかつ長さ50μm(フィルタ膜厚に相当)の91個の貫通孔31hを有している。図9に例示した第1気体流入防止部31の3以上(図9では91個)の貫通孔31hのうち第1気体流入防止部31の最外周に位置する30個は平面視で正六角形状を成す線分上に位置する。第1気体流入防止部31は面状構造体6aの面方向において最外周を構成する貫通孔31hの配列の外側を最外周を構成する貫通孔31hの配列に沿って取り囲む平面視で正六角形状の外周形状を有する領域である。
Figure 2024034473000002
気体流入防止部6の貫通孔の直径は、気体流入防止部の耐圧、液体培地の表面張力を考慮して設計することができる。式(1)において、Pは予想される気体流入防止部6の耐圧[Pa]、 γは液体培地培地と空気との間の表面張力[N/m]、Dは気体流入防止部6の貫通孔6hの直径[m]である。例えば、液体培地の表面張力が50mN/mの場合において、耐圧を1kPaとなるようにするためには気体流入防止部の直径を0.2mmと設計することができる。
気体流入防止部6は単一の貫通孔6hにおいて気体の流入を防止する機能を発揮しうるが、液体培地が透過する際のほこりなどの目詰まりを回避するためには複数の貫通孔6hを有する形態が好ましい。また、気体流入防止部6が複数の貫通孔6hを有する場合において、気体流入防止部6の複数の貫通孔6hの直径や長さが均一であれば、耐圧や液体培地の流量の推算が容易になる。一方、「液体培地を透過せしめつつ、気体の流入を防止する」という気体流入防止部6の機能を発現するためには、複数の貫通孔6hの直径や長さは必ずしも均一である必要はない。なお、気体流入防止部6が直径の異なる複数の貫通孔6hで構成されている場合は、気体流入防止部6耐圧性は複数の貫通孔のうち、最も大きな直径を有する貫通孔6hによって決定される。
図示例の実施形態の第2気体流入防止部32は、図8(A)、(B)に示すように第1チャンバ2A及び第2チャンバ2Bのoutと平面視で重なる第1フィルタ30A及び第2フィルタ30Bのoutに対応する位置に形成されている。図10に例示した第2気体流入防止部32は、直径40μmかつ長さ50μm(フィルタ膜厚に相当)の16個の貫通孔32hを有している。また、図10に例示した第2気体流入防止部32は、最外周に位置する12個の貫通孔32hによって平面視概ね矩形状に配置されている。第2気体流入防止部32は面状構造体6aの面方向において最外周を構成する貫通孔32hの配列の外側を最外周を構成する貫通孔32hの配列に沿って取り囲む平面視矩形状の外周形状を有する領域である。
各気体流入防止部31,32が有する複数の貫通孔31h,32hにおいて、互いに隣り合う2つの貫通孔の間隔は、それぞれ同じ大きさに設定されている。なお、貫通孔のサイズ及び設置数、並びに、複数の貫通孔の外形の平面視形状等は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。例えば、フィルタ層30を培養液が透過する際の抵抗を小さくしたい場合には、貫通孔31hや貫通孔32hの孔径を大きくしたり数を増やしたり、長さを減らしたりすることで、抵抗を小さくすることが可能である。
なお、貫通孔31hや貫通孔32hの孔径を大きくする際には式(1)によって推算される気体流入防止部の耐圧性に留意する必要があり、長さ(フィルタ膜厚)を小さくする際にはフィルタ層の物理的な強度に留意する必要がある。
図の例では、フィルタ層30は、チャンバ窓孔23に対応する位置に平面視で円形の貫通孔33(以下「フィルタ窓孔33」ともいう。)を有する。チャンバ窓孔23およびフィルタ窓孔をとおして、培養液の流れ具合や細胞の状態を目視および顕微鏡観察にて確認することができる。図の例では、フィルタ層30は、第3チャンバ2C及び第4チャンバ2Dのinと平面視で重なる第3フィルタ30C及び第4フィルタ30Dのinに対応する位置に、平面視でフィルタ窓孔33よりも小さい円形の貫通孔34(以下「フィルタin側孔34」ともいう。)を有する。フィルタin側孔34は、流路層への培養液の接続孔として流路層40の通路や貫通孔に連通している。なお、フィルタ窓孔33及びフィルタin側孔34の配置態様、平面視形状等は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
図の例では、第1フィルタ30A及び第2フィルタ30Bにおいては、平面視で-X側から第1気体流入防止部31、フィルタ窓孔33、第2気体流入防止部32の順にX方向に間隔をあけて並んでいる。第3フィルタ30C及び第4フィルタ30Dにおいては、平面視で-X側からフィルタin側孔34、フィルタ窓孔33、第1気体流入防止部31の順にX方向に間隔をあけて並んでいる。
例えば、フィルタ層30の少なくとも一部は、感光性のフォトレジストによって構成されていてもよい。例えば、気体流入防止部6の少なくとも一部は、感光性のフォトレジストによって構成されていてもよい。この際に、フィルタ層30はアクリル、PET、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、シクロオレフィン等によって形成される支持材料層と気体流入防止部6を有するフォトレジスト層によって構成されていてもよい。例えば、各流入防止部31,32が有する少なくとも1つの貫通孔は、前記フォトレジスト層の面内に形成されていてもよい。例えば、細胞培養装置1が複数の気体流入防止部6を有する場合は、複数の気体流入防止部6の少なくとも一部は、感光性のフォトレジスト層に設けられた貫通孔によって構成されていてもよい。なお、気体流入防止部6の構成態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
フィルタ層30は感光性フォトレジストを用いてフォトリソグラフィープロセスにより製造することができる。フォトレジストをPETフィルム上にに塗布して、ベーキング、露光、現像といった一般的なフォトリソグラフィープロセスにて加工した後に使用することができる。ベーキングや露光、現像は市販のフォトレジストの推奨加工条件に従って行うことができる。当該レジストフィルムを流路層に接合し、PETフィルムを剥離して使用することができる。
例えば、フィルタ層30を構成する面状の構造体6aは、多孔性膜や貫通孔を有する膜によって構成されていてもよい。貫通孔を有する膜として、ポリカーボネートおよびポリエステルの薄膜を重イオンで照射後、エッチング工程経て製造されるトラックエッチ膜130は孔径が均一な貫通孔を有している膜であるため好ましい。図11は、トラックエッチ膜130の一例を示す平面図である。トラックエッチ膜の素材について、例えば、ポリイミド、ポリカーボネート又はポリエステル製のトラックエッチ膜を使用してもよい。例えば、フィルタ層はトラックエッチ膜130によって構成されていてもよい。例えば、気体流入防止部6の少なくとも一部は、トラックエッチ膜130によって構成され、気体流入防止部6の貫通孔6hはトラックエッチ膜130の有する貫通孔によって構成されていてもよい。フィルタ層30はトラックエッチ膜130を適切な外寸に切り出して製造することができる。
例えば、フィルタ層30はアクリル、PET、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、シクロオレフィン等によって形成される支持材料層と気体流入防止部6を有するトラックエッチ膜130によって構成されていてもよい。フィルタ層30は支持材料層とトラックエッチ膜130を熱融着や接着剤を用いて接着することで製造することができる。例えば、細胞培養装置1が複数のフィルタ層30を有する場合は、複数のフィルタ層30の気体流入防止部6の貫通孔6hの少なくとも一部は、トラックエッチ膜130の貫通孔によって構成されていてもよい。
トラックエッチ膜130は、10nm以上の最小孔径(絶対孔径)を有する膜である。トラックエッチ膜130は、一般的なメンブレン素材であるデプスフィルタと比較して、孔径分布が狭く、かつ、膜厚が薄い。なお、トラックエッチ膜130の構成態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
例えば、フィルタ層30を構成する面状の構造体6aとして、貫通孔を有する膜としてハニカムフィルムを使用することができる。ハニカムフィルムもトラックエッチ膜と同様に孔径が均一な貫通孔を有しているため、好ましい。図12は、ハニカムフィルム230の一例を示す斜視図である。ハニカムフィルムの素材について、例えば、特開2011-202100号公報に記載のようにポリ乳酸やポリーε―カプロラクトン製のハニカムフィルムを使用してもよい。例えば、フィルタ層はハニカムフィルム230によって構成されていてもよい。例えば、気体流入防止部6の少なくとも一部は、ハニカムフィルム230によって構成され、気体流入防止部6の貫通孔6hはハニカムフィルム230の有する貫通孔によって構成されていてもよい。フィルタ層30はハニカムフィルム230を適切な外寸に切り出して製造することができる。
例えば、フィルタ層30はアクリル、PET、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、シクロオレフィン等によって形成される支持材料層と気体流入防止部6を有するハニカムフィルム230によって構成されていてもよい。フィルタ層30は支持材料層とハニカムフィルム230を熱融着や接着剤を用いて接着することで製造することができる。例えば、細胞培養装置1が複数のフィルタ層30を有する場合は、複数のフィルタ層30の気体流入防止部6の貫通孔6hの少なくとも一部は、ハニカムフィルム230の貫通孔によって構成されていてもよい。
ハニカムフィルム230は、ハチの巣状に配列した微細な孔を表面に持つ構造体である。例えば、ハニカムフィルム230は、細孔径が5μm以上20μm以下、膜厚が5μm以上10μm以下の範囲に設定されている。なお、ハニカムフィルム230の構成態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
図13は、フィルタ層330(フィルタ部)の一例を示す第1の図である。
例えば、フィルタ層330は、チャンバ層302と流路層340(少なくとも1つの流路形成体の一例)との間に配置されていてもよい。図の例では、チャンバ層302は、液体培地を貯留可能な第1空間320A及び第2空間320Bを有する。図の例では、流路層340は、第1空間320A及び第2空間320Bを互いに連通する流路341(図の例では第1流路及び第2流路のうち一方の流路のみ図示)を有する。図の例では、第1空間320A又は第2空間320Bから第1流路又は第2流路を経て第1空間320A又は第2空間320Bに戻る培養液の循環流れが制御される。図の例では、フィルタ層330は、面状の構造体330a(面状構造体)によって構成され、面状構造体330aにおいて少なくとも1つの貫通孔330hを有する領域であり循環流れにおける気体の流入を防止する気体流入防止部331を備える。
図13の例では、気体流入防止部331は、流路341の端部(第1流路の端部又は第2流路の端部)に設けられる。図の例では、気体流入防止部331は、フィルタ層330において流路341の一方の端部(第1流路の一方の端部又は第2流路の一方の端部)に面する部位に設けられる。図の例では、気体流入防止部331は、フィルタ層330において流路341の他方の端部(第1流路の他方の端部又は第2流路の他方の端部)に面する部位には設けられない。図の例では、フィルタ層330において流路341の他方の端部(第1流路の他方の端部又は第2流路の他方の端部)に面する部位には、貫通孔330hが設けられる。
気体流入防止部331を流路341の一方の端部に面する部位に設け、他方の端部に面する部位には設けないことで、当該流路に細胞を導入することができる。ただし、気体流入防止部331を流路341の一方にのみに設ける場合において、後述する循環流れを発生させる際に、気体流入防止部331が設けられていない端部から液体培地を当該流路に向けて送液する場合には、流路341に気泡が侵入しないよう、加圧時間を十分に短くするよう留意する必要がある。
例えば、図3~図7において、第3チャンバ2Cの培養液入口inより、第1連絡路21、第3フィルタ30Cのフィルタin側孔34、第1流路層40の第1in側通路43、第2流路層50の第2上下連通路54、第1流路層40の第1out側通路44、第1フィルタ30Aの第2気体流入防止部32、第1チャンバ2Aの第2連絡路22及び培養液出口outと連通する送液流路W1Aにおいて、当該流路の一方の端部である第3フィルタ30Cのフィルタin側孔34の部位には気体流入防止部は設けられておらず、当該流路の他方の端部には第1フィルタ30Aの第2気体流入防止部32が設けられている。
同様に例えば、図3~図7において、第4チャンバ2Dの培養液入口inより、第1連絡路21、第4フィルタ30Dのフィルタin側孔34、第1流路層40の第1in側孔41、第2流路層50の第2in側孔51、多孔質膜層60のin側孔61、第3流路層70の第3in側孔71、第4流路層80の第4in側通路83、第3流路層70の第3上下連通路74、第4流路層80の第4out側通路84、第3流路層70の第3out側孔72、多孔質膜層60のout側孔62、第2流路層50の第2out側孔52、第1流路層40の第1out側孔42、第2フィルタ30Bの第2気体流入防止部32、第2チャンバ2Bの第2連絡路22及び培養液出口outへと連通する送液流路W2A、当該流路の一方の端部である第4フィルタ40Dのフィルタin側孔34の部位には気体流入防止部は設けられておらず、当該流路の他方の端部には第2フィルタ30Bの第2気体流入防止部32が設けられている。
図14は、フィルタ層330の一例を示す第2の図である。図14において図13と同一の構成要素には同一の符号を付し、詳細説明は省略する。図の例でも、気体流入防止部331は、流路341の端部(第1流路の端部又は第2流路の端部)に設けられる。図の例では、気体流入防止部331は、フィルタ層330において流路341の両方の端部(第1流路の両方の端部又は第2流路の両方の端部)に面する部位に設けられる。
例えば、図3~図7において、第1チャンバ2Aの培養液入口inより第1連絡路21、第1フィルタ30Aの第1気体流入防止部31、第1流路層40の第1in側孔41、第2流路層50の第2in-out連通路53、第1流路層40の第1out側孔42、第3フィルタ30Cの第1気体流入防止部31、第3チャンバ2Cの第2連絡路22及び培養液出口outと連通する返送流路W1Bにおいて、当該流路の両端の部位に第1フィルタ30Aの第1気体流入防止部31および第3フィルタ30Cの第1気体流入防止部31が設けられている。
同様に例えば、図3~図7において、第2チャンバ2Bの培養液入口inより、第1連絡路21、第2フィルタ30Bの第1気体流入防止部31、第1流路層40の第1in側孔41、第2流路層50の第2in側孔51、多孔質膜層60のin側孔61、第3流路層70の第3in-out連通路73、多孔質膜層60のout側孔62、第2流路層50の第2out側孔52、第1流路層40の第1out側孔42、第4フィルタ30Dの第1気体流入防止部31、第4チャンバ2Dの第2連絡路22及び培養液出口outと連通する返送流路W2Bにおいて、当該流路の両端の部位に第2フィルタ30Bの第1気体流入防止部31および第4フィルタ30Dの第1気体流入防止部31が設けられている。
後述する循環流れを発生させる際に、気体流入防止部331を流路341の両方の端部に面する部位に設けることで、当該流路のいずれの端部の方向から当該流路へ液体培地を当該流に向けて送液する場合においても、流路341への気体の流入を防止することができる。一方、気体流入防止部331を流路341の両方の端部に面する部位に設ける場合は、当該流路に細胞を導入することは難しい。
図15は、フィルタ層530(フィルタ部)の一例を示す第3の図である。図15において図14と同一の構成要素には同一の符号を付し、詳細説明は省略する。図の例でも、気体流入防止部531は、フィルタ層530において流路341の両方の端部(第1流路の両方の端部又は第2流路の両方の端部)に面する部位に設けられる。
図の例では、流路層340は、フィルタ層530を取り付け可能に窪む凹部342を有する。図の例では、フィルタ層530は、流路層340の凹部342に対して着脱可能に取り付けられる。例えば、フィルタ層530は、平面視で円盤状(ディスク状)の形状を有していてもよい。例えば、気体流入防止部531は、フィルタ層530には設けられず、気体流入防止部531自体が、流路層340の凹部342に対して着脱可能に取り付けられてもよい。なお、フィルタ層530の構成態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
<流路層>
図6に示す実施形態の流路プレート3の平面図において、一点鎖線の流路は多孔質膜層60の上に形成された流路、二点鎖線の流路は多孔質膜層60の下に形成された流路、実線の流路は多孔質膜層60の上下に形成された流路、をそれぞれ示す。図7に示す実施形態の流路プレート3の構成の説明図において、図7(B)から図7(F)は流路プレート3を構成する多孔質膜層60および、第1流路層40から第4流路層80の平面図である。
図の例では、複数の流路層40,50,70,80は、第1流路層40、第2流路層50、第3流路層70及び第4流路層80を含む。例えば、各流路層は、PETフィルム等の基材にレーザー加工などで孔や溝等を形成することで作製されている。例えばPETフィルムの厚みは0.1mm以上1mm以下である。第1流路層40、第2流路層50、第3流路層70及び第4流路層80の厚みは異なってもよいが、同じ厚みであれば、各流路の液体培地の流量の推算が容易となる。なお、流路層の材質、設置態様及び形成態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。例えば、流路層はポリスチレンやシクロオレフィン樹脂の射出成型によって作製してもよい。
図の例では、第1流路層40は、各チャンバの培養液入口(図中in)の一部(平面視で第3チャンバ2Cの培養液入口と重なる第3フィルタ30Cのinに対応する部位を除く3つ)に通じる3つの貫通孔41(以下「第1in側孔41」ともいう。)と、各チャンバの培養液出口(図中out)の一部(平面視で第1チャンバ2Aの培養液出口と重なる第1フィルタ30Aのoutに対応する部位を除く3つ)に通じる3つの貫通孔42(以下「第1out側孔42」ともいう。)と、平面視で第3チャンバ2Cの培養液入口(図中in)と重なる第3フィルタ30Cのフィルタin側孔34に連なる第1in側通路43と、平面視で第1チャンバ2Aの培養液出口(図中out)と重なる第1フィルタ30Aの第2気体流入防止部32に連なる第1out側通路44と、を有する。
第1in側通路43は、平面視で第3フィルタ30Cのフィルタin側孔34と重なる部位から平面視でフィルタ窓孔33のX方向中央と重なる部位に向かって+X側かつ-Y側に湾曲しつつ延びた後、+Y側に延びている。
第1out側通路44は、平面視で第1フィルタ30Aの第2気体流入防止部32と重なる部位から-X側に向かって延びた後、平面視でフィルタ窓孔33のX方向中央と重なる部位に向かって-Y側に湾曲しつつ延びている。
なお、第1流路層40が有する貫通孔及び通路(流路)の設置態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
図の例では、第2流路層50は、各チャンバの培養液入口(図中in)の一部(4つのうち平面視で第2チャンバ2B及び第4チャンバ2Dの培養液入口と重なる第2フィルタ30B及び第4フィルタ30Dのinに対応する部分の2つ)に通じる2つの貫通孔51(以下「第2in側孔51」ともいう。)と、各チャンバの培養液出口(図中out)の一部(4つのうち平面視で第2チャンバ2B及び第4チャンバ2Dの培養液出口と重なる第2フィルタ30B及び第4フィルタ30Dのoutに対応する部分の2つ)に通じる2つの貫通孔52(以下「第2out側孔52」ともいう。)と、平面視で第1チャンバ2Aの培養液入口(図中in)と重なる第1フィルタ30Aのinに対応する第1流路層40の第1in側孔41に連なり且つ平面視で第3チャンバ2Cの培養液出口(図中out)と重なる第3フィルタ30Cのoutに対応する第1流路層40の第1out側孔42に連なるとともに多孔質膜層60の上に位置する第2in-out連通路53と、多孔質膜層60の上下に通じる第2上下連通路54と、を有する。
第2in-out連通路53は、平面視で第1フィルタ30Aのinに対応する第1流路層40の第1in側孔41と重なる部位から+X側に向かって延びた後、平面視で第3フィルタ30Cのoutに対応する第1流路層40の第1out側孔42と重なる部位に向かって-Y側に延びている。
第2上下連通路54は、平面視で第1流路層40の第1in側通路43の+X端と第1out側通路44の-Y端とを繋ぐように第2流路層50のX方向中央をY方向に沿って延びている。
なお、第2流路層50が有する貫通孔及び通路(流路)の設置態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
多孔質膜層60の詳細については後述するが、図の例では、多孔質膜層60は、各チャンバの培養液入口(図中in)の一部(4つのうち平面視で第2チャンバ2B及び第4チャンバ2Dの培養液入口と重なる第2フィルタ30B及び第4フィルタ30Dのinに対応する部分の2つ)に通じる2つの貫通孔61(以下「in側孔61」ともいう。)と、各チャンバの培養液出口(図中out)の一部(4つのうち平面視で第2チャンバ2B及び第4チャンバ2Dの培養液出口と重なる第2フィルタ30B及び第4フィルタ30Dのoutに対応する部分の2つ)に通じる2つの貫通孔62(以下「out側孔62」ともいう。)と、を有する。
なお、多孔質膜層60が有する貫通孔(流路)の設置態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
図の例では、第3流路層70は、各チャンバの培養液入口(図中in)の一部(4つのうち平面視で第4チャンバ2Dの培養液入口と重なる第4フィルタ30Dのinに対応する部分の1つ)に通じる貫通孔71(以下「第3in側孔71」ともいう。)と、各チャンバの培養液出口(図中out)の一部(4つのうち平面視で第2チャンバ2Bの培養液出口と重なる第2フィルタ30Bのoutに対応する部分の1つ)に通じる貫通孔72(以下「第3out側孔72」ともいう。)と、平面視で第2チャンバ2Bの培養液入口(図中in)と重なる第2フィルタ30Bのinに対応する多孔質膜層60のin側孔61に連なり且つ平面視で第4チャンバ2Dの培養液出口(図中out)と重なる第4フィルタ30Dのoutに対応する多孔質膜層60のout側孔62に連なる第3in-out連通路73と、多孔質膜層60の上下に通じる第3上下連通路74と、を有する。
第3in-out連通路73は、平面視で第2フィルタ30Bのinに対応する多孔質膜層60のin側孔61と重なる部位から-Y側に向かって延びた後、平面視で第4フィルタ30Dのoutに対応する多孔質膜層60のout側孔62と重なる部位に向かって+X側に延びている。
第3上下連通路74は、平面視で第2流路層50の第2上下連通路54と重なる部位であって第3流路層70のX方向中央をY方向に沿って延びている。
なお、第3流路層70が有する貫通孔及び通路(流路)の設置態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
図の例では、第4流路層80は、平面視で第4チャンバ2Dの培養液入口と重なる第4フィルタ30Dのinに対応する第3流路層70の第3in側孔71に連なる第4in側通路83と、平面視で第2チャンバ2Bの培養液出口と重なる第2フィルタ30Bのoutに対応する第3流路層70の第3out側孔72に連なる第4out側通路84と、を有する。
第4in側通路83は、平面視で第4フィルタ30Dのinに対応する第3流路層70の第3in側孔71と重なる部位から-X側に向かって延びた後、平面視で第3流路層70の第3上下連通路74の-Y端と重なる部位に向かって+Y側に湾曲しつつ延びている。
第4out側通路84は、平面視で第2フィルタ30Bのoutに対応する第3流路層70の第3out側孔72と重なる部位から平面視で第3流路層70の第3上下連通路74の+Y端と重なる部位に向かって-X側かつ+Y側に湾曲しつつ延びた後、-Y側に延びている。
なお、第4流路層80が有する貫通孔及び通路(流路)の設置態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
<多孔質膜層>
例えば、多孔質膜層60は、第2流路層50と第3流路層70との間に設けられている。例えば、細胞培養部4は、第2流路層50の第2上下連通路54と第3流路層70の第3上下連通路74との間の多孔質膜層60上に設けられている。この細胞培養部4にて細胞が培養される。細胞培養部4は、第1空間、第2空間、第1流路及び第2流路の少なくとも一部に設けられる細胞培養部の一例である。多孔質膜層60は、流路プレート3内において上側空間と下側空間とを隔てている。多孔質膜層60は、上側空間と下側空間との圧力差により流体が透過可能である。多孔質膜層60は、細胞は透過できない。
例えば、多孔質膜層60の平均細孔径は、0.1μm以上30μm以下である。多孔質膜層60の細孔の大きさは、液体は透過するが、細胞は透過できない大きさである。例えば、多孔質膜層60の厚みは、0.1μm以上100μm以下である。例えば、多孔質膜層60の材質は、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、シリコーン樹脂等である。
例えば、多孔質膜層60の上面(細胞が載置される面)は、細胞接着性材料でコーティングされていることが好ましい。例えば、細胞接着性材料としては、細胞接着性を有するタンパク質が挙げられる。例えば、細胞接着性材料としては、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ビドロネクチン、マトリゲル、ポリリジン等が挙げられる。
本実施形態の流路プレート3は、多孔質膜層60の上下に培養液を流すことで、多孔質膜層60上の細胞を培養する構成となっている。図中において、一点鎖線の流路は多孔質膜層60の上に形成された流路、二点鎖線の流路は多孔質膜層60の下に形成された流路、実線の流路は多孔質膜層60の上下に形成された流路、をそれぞれ示す。例えば、多孔質膜層60上の細胞は、多孔質膜層60の上下に形成された流路(本実施形態では上下連通路54,74)に沿う部分において培養される。
<ラバーシート>
ラバーシート7は、平面視で長方形の外形を有する。ラバーシート7は、蓋9とチャンバ層2との間に設けられる封止部材として機能する。ラバーシート7は、蓋9及びチャンバ層2よりも柔軟な材料で形成されている。なお、ラバーシート7の構成態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
実施形態のラバーシート7は、ラバーシートの平板をウォータージェット加工で作製することができる。
ラバーシート7は、複数の開口孔7hを有する。開口孔7hは、平面視で培養液チャンバの貯留空間20に沿う長円形状を有する。複数の開口孔7hは、複数の培養液チャンバに対応して、4行4列の16個設けられている。なお、開口孔7hの平面視形状および設置数等は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
なお、ラバーシート7に替えて、又は、ラバーシート7とともに、シリコーン樹脂シートやOリング等の柔軟性を持つ部品(封止部材の一例)が設けられていてもよい。これにより、蓋9とチャンバ層2との隙間からの圧力漏れ及び液漏れを防止することができる。なお、封止部材の設置態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
<蓋>
蓋9は、チャンバ層2の開口(貯留空間20の上部開口)を開閉自在かつ気密に封止する機能を有する。蓋9は、外部から培養液チャンバ内を観察可能な複数の観察窓9hを有する。観察窓9hは、平面視で培養液チャンバの貯留空間20に沿う長円形状を有する。複数の観察窓9hは、複数の培養液チャンバに対応して、4行4列の16個設けられている。なお、観察窓9hの平面視形状および設置数等は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
実施形態の蓋9は、ポリカーボネートの切削加工で作製することができる。
蓋9には、エアフィルタ90が取り付けられている。エアフィルタ90を介して、培養液チャンバに空圧を負荷することが可能に構成されている。図の例では、Y方向に並んで4つのエアフィルタ90が設けられている。なお、エアフィルタ90の設置数等は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
例えば、蓋9には、エアフィルタ90が接続される空圧配管(不図示、加圧ラインの一例)が設けられている。空圧配管は、エアフィルタ90を介して空圧ポンプ91(加圧調整装置5の構成の一例)に連通している。例えば、空圧配管は、エアフィルタ90に対応して4本設けられている。例えば、4つのエアフィルタ90のうち最も+Y側に対応する第1空圧配管は、チャンバ層2において最も+Y側にある4つの培養液チャンバ(本実施形態では第1チャンバ2A)に連通している。他の3本の空圧配管も、第1空圧配管と同様の構成になっている。なお、空圧配管の構成態様等は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
加圧調整装置5は空圧ポンプ91と圧力を調整するレギュレーター、圧力を経時的なシークエンスにより、負荷したり開放したりするために電磁弁等によって構成されていてもよい。
例えば、空圧配管は、培養液チャンバに対して空気(気体の一例)を供給可能であり、かつ、培養液チャンバから空気を排出可能に構成されていている。本実施形態では、空圧配管にはエアフィルタ90が接続されている。このため、エアフィルタ90によって、培養液チャンバ内に異物が混入することを防ぐことができる。
例えば、4つの培養液チャンバを同時に加圧することが可能に構成されていてもよい。または、4つの培養液チャンバを順次加圧することが可能に構成されていてもよい。例えば、4つの培養液チャンバを同時に大気圧開放することが可能に構成されていてもよい。または、4つの培養液チャンバを順次大気圧開放することが可能に構成されていてもよい。なお、各培養液チャンバの加圧態様は、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
<培養液の循環流れの一例>
図6に示す実施形態の流路プレート3の平面図において、一点鎖線の流路は多孔質膜層60の上に形成された流路、二点鎖線の流路は多孔質膜層60の下に形成された流路、実線の流路は多孔質膜層60の上下に形成された流路、をそれぞれ示す。本実施形態では、流路プレート3を構成する第1流路層40及び第2流路層50が有する流路に沿って培養液が多孔質膜層60の上側を通り、第3流路層70及び第4流路層80が有する流路に沿って培養液が多孔質膜層60の下側を通るように構成されている。
例えば、第1チャンバ2A及び第3チャンバ2Cを交互に加圧することで、多孔質膜層60の上側において培養液の送液と返送とを交互に行うことができる。
例えば、第3チャンバ2Cを加圧すると、第3チャンバ2Cの貯留空間20Cに貯留されている培養液は、第3チャンバ2Cの培養液入口in及び第1連絡路21、第3フィルタ30Cのフィルタin側孔34、第1流路層40の第1in側通路43、第2流路層50の第2上下連通路54、第1流路層40の第1out側通路44、第1フィルタ30Aの第2気体流入防止部32、第1チャンバ2Aの第2連絡路22及び培養液出口outを通じて、送液される(図中矢印V1A方向に沿う送液流路W1A)。
本実施形態では、各チャンバにおいてin側の第1連絡路21の上端はout側の第2連絡路22の上端よりも低い場所にある。そのため、第3チャンバ2Cを加圧すると、第3チャンバ2Cの低い場所から培養液が入り、第1チャンバ2Aの高い場所から培養液が出てくる。培養液の送液の過程で、第3チャンバ2Cの貯留空間20Cに存在する空気は、第3フィルタ30Cの第1気体流入防止部31によって第1out側孔42への流入が防止される。一方、第3フィルタ30Cのフィルタin側孔34の部位には気体流入防止部が設けられていないため、第3チャンバ2Cの貯留空間20Cに存在する空気が、第1流路層40の第1in側通路43へ流入する前に第3チャンバ2Cの加圧を停止することが好ましい。
一方、第1チャンバ2Aを加圧すると、第1チャンバ2Aの貯留空間20Aに貯留されている培養液は、第1チャンバ2Aの培養液入口in及び第1連絡路21、第1フィルタ30Aの第1気体流入防止部31、第1流路層40の第1in側孔41、第2流路層50の第2in-out連通路53、第1流路層40の第1out側孔42、第3フィルタ30Cの第1気体流入防止部31、第3チャンバ2Cの第2連絡路22及び培養液出口outを通じて返送される(図中矢印V1B方向に沿う返送流路W1B)。
本実施形態では、各チャンバにおいてin側の第1連絡路21の上端はout側の第2連絡路22の上端よりも低い場所にある。そのため、第1チャンバ2Aを加圧すると、第1チャンバ2Aの低い場所から培養液が入り、第3チャンバ2Cの高い場所から培養液が出てくる。培養液の返送の過程で、第1チャンバ2Aの貯留空間20Aに存在する空気は、第1フィルタ30Aの第1気体流入防止部31によって第1in側孔41への流入が防止される。また、培養液の返送の過程で、第1チャンバ2Aの貯留空間20Aに存在する空気は、第1フィルタ30Aの第2気体流入防止部32によって第1out側通路44への流入が防止される。
図中矢印V1A,V1B方向で示すように、多孔質膜層60の上側の流路を通過する培養液は、第1チャンバ2Aと第3チャンバ2Cとの間を循環して流れる。この循環流れにおいて、第1チャンバ2A及び第3チャンバ2Cが有する貯留空間20A,20Cの一方は液体培地を貯留可能な第1空間及び第2空間の一方に相当し、第1チャンバ2A及び第3チャンバ2Cが有する貯留空間20A,20Cの他方は液体培地を貯留可能な第1空間及び第2空間の他方に相当し、送液流路W1A及び返送流路W1Bの一方は第1空間及び第2空間を互いに連通する第1流路及び第2流路の一方に相当し、送液流路W1A及び返送流路W1Bの他方は第1空間及び第2空間を互いに連通する第1流路及び第2流路の他方に相当する。なお、多孔質膜層60の上側の流路を通過する培養液の循環流れは、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
例えば、第2チャンバ2B及び第4チャンバ2Dを交互に加圧することで、多孔質膜層60の下側において培養液の送液と返送とを交互に行うことができる。
例えば、第4チャンバ2Dを加圧すると、第4チャンバ2Dの貯留空間20Dに貯留されている培養液は、第4チャンバ2Dの培養液入口in及び第1連絡路21、第4フィルタ30Dのフィルタin側孔34、第1流路層40の第1in側孔41、第2流路層50の第2in側孔51、多孔質膜層60のin側孔61、第3流路層70の第3in側孔71、第4流路層80の第4in側通路83、第3流路層70の第3上下連通路74、第4流路層80の第4out側通路84、第3流路層70の第3out側孔72、多孔質膜層60のout側孔62、第2流路層50の第2out側孔52、第1流路層40の第1out側孔42、第2フィルタ30Bの第2気体流入防止部32、第2チャンバ2Bの第2連絡路22及び培養液出口outを通じて、送液される(図中矢印V2A方向に沿う送液流路W2A)。
本実施形態では、各チャンバにおいてin側の第1連絡路21の上端はout側の第2連絡路22の上端よりも低い場所にある。そのため、第4チャンバ2Dを加圧すると、第4チャンバ2Dの低い場所から培養液が入り、第2チャンバ2Bの高い場所から培養液が出てくる。培養液の送液の過程で、第4チャンバ2Dの貯留空間20Dに存在する空気は、第4フィルタ30Dの第1気体流入防止部31によって第1out側孔42への流入が防止される。一方、第4フィルタ30Dのフィルタin側孔34の部位には気体流入防止部が設けられていないため、第4チャンバ2Dを加圧する際には、第4チャンバ2Dの貯留空間20Dに存在する空気が、第1流路層40の第1in側孔41へ流入する前に第4チャンバ2Dの加圧を停止することが好ましい。
一方、第2チャンバ2Bを加圧すると、第2チャンバ2Bの貯留空間20Bに貯留されている培養液は、第2チャンバ2Bの培養液入口in及び第1連絡路21、第2フィルタ30Bの第1気体流入防止部31、第1流路層40の第1in側孔41、第2流路層50の第2in側孔51、多孔質膜層60のin側孔61、第3流路層70の第3in-out連通路73、多孔質膜層60のout側孔62、第2流路層50の第2out側孔52、第1流路層40の第1out側孔42、第4フィルタ30Dの第1気体流入防止部31、第4チャンバ2Dの第2連絡路22及び培養液出口outを通じて返送される(図中矢印V2B方向に沿う返送流路W2B)。
本実施形態では、各チャンバにおいてin側の第1連絡路21の上端はout側の第2連絡路22の上端よりも低い場所にある。そのため、第2チャンバ2Bを加圧すると、第2チャンバ2Bの低い場所から培養液が入り、第4チャンバ2Dの高い場所から培養液が出てくる。培養液の返送の過程で、第2チャンバ2Bの貯留空間20Bに存在する空気は、第2フィルタ30Bの第1気体流入防止部31によって第1in側孔41への流入が防止される。また、培養液の返送の過程で、第2チャンバ2Bの貯留空間20Bに存在する空気は、第2フィルタ30Bの第2気体流入防止部32によって第1out側孔42への流入が防止される。
図中矢印V2A,V2B方向で示すように、多孔質膜層60の下側の流路を通過する培養液は、第2チャンバ2Bと第4チャンバ2Dとの間を循環して流れる。この循環流れにおいて、第2チャンバ2B及び第4チャンバ2Dが有する貯留空間20B,20Dの一方は液体培地を貯留可能な第1空間及び第2空間の一方に相当し、第2チャンバ2B及び第4チャンバ2Dが有する貯留空間20B,20Dの他方は液体培地を貯留可能な第1空間及び第2空間の他方に相当し、送液流路W2A及び返送流路W2Bの一方は第1空間及び第2空間を互いに連通する第1流路及び第2流路の一方に相当し、送液流路W2A及び返送流路W2Bの他方は第1空間及び第2空間を互いに連通する第1流路及び第2流路の他方に相当する。なお、多孔質膜層60の下側の流路を通過する培養液の循環流れは、上記に限らず、要求仕様に応じて変更可能である。
本実施形態では、1つの培養ユニット(図の例では第1培養ユニット101)を構成する4つの培養液チャンバ2A1,2B1,2C1,2D1のうち2つ(図の例では第1チャンバ2A1及び第3チャンバ2C1)を組み合わせた第1のセットが流路プレート3内のマイクロ流路(図の例では第1フィルタ30A、第3フィルタ30C、第1流路層40及び第2流路層50等が有する流路)で接続されている。これにより、培養液の第1の循環流れ(図の例では、矢印V1A方向の送液流路W1A及び矢印V1B方向の返送流路W1Bに沿う流れ)を実現することができる。
さらに、1つの培養ユニット(図の例では第1培養ユニット101)を構成する4つの培養液チャンバ2A1,2B1,2C1,2D1のうち別の2つ(図の例では第2チャンバ2B1及び第4チャンバ2D1)を組み合わせた第2のセットが流路プレート3内のマイクロ流路(図の例では第2フィルタ30B、第4フィルタ30D、第1流路層40、第2流路層50、多孔質膜層60、第3流路層70及び第4流路層80等が有する流路)で接続されている。これにより、培養液の第2の循環流れ(図の例では、矢印V2A方向の送液流路W2A及び矢印V2B方向の返送流路W2B)を実現することができる。
本実施形態の細胞培養装置1は、X方向に並ぶ4つの培養ユニット101,102,103,104により構成されている。他の培養ユニット(図の例では第2培養ユニット102から第4培養ユニット104)は、第1培養ユニット101と同様の構成を有する。そのため、他の培養ユニットにおいても第1培養ユニット101と同様の循環流れを実現することができる。
なお、循環流れを形成するための流路には、循環流れに沿う順方向の流れは許容し、かつ、順方向とは逆の方向の流れは阻止するための逆止弁が設けられていてもよい。逆止弁は、培養液の流れを制限する逆流防止機構の一例である。例えば、逆止弁としては、弁孔を有する弁座と、弁体とを備えた構造が挙げられる。この構造を持つ逆止弁は、培養液が順方向に流れる際は弁体が弁座から離れることにより弁孔が開かれるため、培養液は弁孔を通過して順方向に流れる。一方、培養液が逆方向に流れる際は弁体が弁座に当接することにより弁孔が閉じられるため、逆方向への培養液の流れは阻止される。
また、各チャンバにおいてin側の第1連絡路21(in側貫通孔の一例)の上端はout側の第2連絡路22(out側貫通孔の一例)の上端よりも低い場所にあることに限らない。例えば、各チャンバにおいてin側貫通孔の上端はout側貫通孔の上端と同じ高さの場所にあってもよいし、out側貫通孔の上端よりも高い場所にあってもよい。例えば、培養液の流れの制御は、各チャンバにおけるin側貫通孔の上端又はout側貫通孔の上端の高さを変えることで行ってもよい。例えば、培養液の流れの制御態様は、要求仕様に応じて変更可能である。
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態に係る細胞培養装置1は、液体培地を貯留可能な第1空間及び第2空間を有する貯留部(実施形態のチャンバ層2)と、第1空間及び第2空間を互いに連通する第1流路及び第2流路を有する流路形成部(実施形態の流路プレート3)と、第1空間、第2空間、第1流路及び第2流路の少なくとも一部に設けられる細胞培養部(実施形態の細胞培養部4)と、第1空間又は第2空間から第1流路又は第2流路を経て第1空間又は第2空間に戻る培養液の循環流れを制御するための循環流れ制御部(実施形態の加圧調整装置5)と、少なくとも1つの貫通孔を有し且つ面状の構造体であって循環流れにおける気体の流入を防止するための気体流入防止部6(実施形態の第1気体流入防止部31及び第2気体流入防止部32)と、を備える。
この構成によれば、高い寸法精度が求められるラプラスバルブ部分(実施形態の気体流入防止部6)を事前に高精度で大量生産することができる。したがって、気体の流入を防止するための構造体を寸法精度良く作製することができ、産業化に好適な構造を実現することができる。
本実施形態に係る気体流入防止部6は、第1流路の端部又は第2流路の端部に設けられる。
この構成によれば、気体流入防止部6が第1流路の中間部又は第2流路の中間部に設けられる場合と比較して、気体流入防止部6を設置しやすい。そのため、気体流入防止部6の精度を維持するとともに、細胞培養装置1の大量生産を実現する上で好適である。
本実施形態に係る貯留部(実施形態のチャンバ層2)、流路形成部(実施形態の流路プレート3)及び気体流入防止部6は、それぞれ層状に形成されており、流路形成部、気体流入防止部6、貯留部の順に積層されている。
この構成によれば、流路形成部、気体流入防止部6、貯留部の3層を熱圧着等で組み立てることができる。そのため、気体流入防止部6の精度を維持するとともに、細胞培養装置1の大量生産を実現する上で好適である。
本実施形態に係る気体流入防止部6の貫通孔(実施形態の貫通孔31h,32h)の直径は、0.005mm以上0.2mm以下である。
この構成によれば、気体流入防止部6の機能を維持しつつ耐久性も確保することができる。そのため、気体流入防止部6を実用的に大量生産する上で好適である。
本実施形態に係る貯留部は、空気を供給可能な空圧ポンプ91に接続されている。
この構成によれば、空圧ポンプ91により貯留部を加圧することができる。
本実施形態に係る気体流入防止部6の一例は、感光性のフォトレジストによって構成されており、気体流入防止部6が有する少なくとも1つの貫通孔は、フォトレジストに形成されている。
この構成によれば、フォトレジストにより気体流入防止部6が有する貫通孔の配置間隔を所望の間隔に確保することができる。そのため、気体流入防止部6の精度を維持するとともに、細胞培養装置1の大量生産を実現する上で好適である。
本実施形態に係る気体流入防止部6の一例は、ポリイミド、ポリカーボネート又はポリエステル製のトラックエッチ膜130で構成されている。
トラックエッチ膜130は、一般的なメンブレン素材であるデプスフィルタと比較して、孔径分布が狭く、かつ、膜厚が薄い。そのため、気体流入防止部6の精度を維持するとともに、細胞培養装置1の大量生産を実現する上で好適である。
本実施形態に係る気体流入防止部6の一例は、ハニカムフィルム230で構成されている。
ハニカムフィルム230は、ハチの巣状に配列した微細な孔を表面に持つ構造体である。そのため、気体流入防止部6の精度を維持するとともに、細胞培養装置1の大量生産を実現する上で好適である。
本実施形態に係る細胞培養部4は、細胞を培養するための第1面60aと第1面60aとは反対の第2面60bとを有する多孔質膜層60によって構成される。流路形成部は、多孔質膜層60の第1面60aの側に配置される第1流路層40及び第2流路層50と、多孔質膜層60の第2面60bの側に配置される第3流路層70及び第4流路層80と、を含む。第1流路層40及び第2流路層50は、多孔質膜層60の第1面60aの側において、第1空間又は第2空間から第1流路又は第2流路を経て第1空間又は第2空間に戻る培養液の循環流れを形成する流路を含む。第3流路層70及び第4流路層80は、多孔質膜層60の第2面60bの側において、第1空間又は第2空間から第1流路又は第2流路を経て第1空間又は第2空間に戻る培養液の循環流れを形成する流路を含む。
この構成によれば、多孔質膜層60の第1面60a及び第2面60bの両面側において、培養液の循環流れを形成することができる。そのため、多孔質膜層60の第1面60aの側の培養液の循環流れと、多孔質膜層60の第2面60bの側の培養液の循環流れとを利用することで、多種多様な細胞培養を実現することができる。
本実施形態に係る細胞培養装置1の製造方法は、液体培地を貯留可能な第1空間及び第2空間を有する貯留部と、第1空間及び第2空間を互いに連通する第1流路及び第2流路を有する流路形成部と、第1空間、第2空間、第1流路及び第2流路の少なくとも一部に設けられる細胞培養部と、第1空間又は第2空間から第1流路又は第2流路を経て第1空間又は第2空間に戻る培養液の循環流れを制御するための循環流れ制御部と、少なくとも1つの貫通孔を有し且つ面状の構造体であって循環流れにおける気体の流入を防止するための気体流入防止部6と、を備える細胞培養装置1において、貯留部、流路形成部及び気体流入防止部6は、それぞれ層状に形成されており、流路形成部、気体流入防止部6、貯留部の順に積層して接合する。
この方法によれば、流路形成部、気体流入防止部6、貯留部の3層を熱圧着等で組み立てることができる。そのため、気体流入防止部6の精度を維持するとともに、細胞培養装置1の大量生産を実現する上で好適である。
<変形例>
上述した実施形態では、気体流入防止部は、第1流路の端部又は第2流路の端部に設けられる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、気体流入防止部は、第1流路の中間部又は第2流路の中間部に設けられてもよい。例えば、第1流路及び第2流路が立体的に交差する場合は、その交差部分に気体流入防止部が設けられてもよい。例えば、気体流入防止部の設置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
上述した実施形態では、貯留部、流路形成部及び気体流入防止部は、それぞれ層状に形成されており、流路形成部、気体流入防止部、貯留部の順に積層されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、貯留部、流路形成部及び気体流入防止部は、それぞれブロック状に形成されていてもよい。例えば、細胞培養装置は、貯留部、流路形成部及び気体流入防止部を別々に有する構成に限らず、貯留部、流路形成部及び気体流入防止部が一体となった構造体を有してもよい。
上述した実施形態では、気体流入防止部の貫通孔の直径は、0.005mm以上0.2mm以下である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、気体流入防止部の貫通孔の直径は、0.005mm未満又は0.2mm超過であってもよい。例えば、気体流入防止部の貫通孔の直径は、要求仕様に応じて変更可能である。
上述した実施形態では、貯留部は、空気を供給可能な空圧ポンプに接続されている例を挙げて説明したが、これに限らない。細胞培養装置において貯留空間(第1空間又は第2空間)の圧力を調整する構造は特に限定されない。例えば、培養液の供給によって貯留空間の圧力を高める構造でもよいし、培養液の排出によって貯留空間の圧力を低下させる構造でもよい。例えば、貯留空間の容積の変化によって貯留空間の圧力を変化させる構造でもよい。例えば、貯留空間の圧力を調整する構造の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
上述した実施形態では、細胞培養部は、細胞を培養するための第1面と第1面とは反対の第2面とを有する多孔質膜層である例を挙げて説明したが、これに限らない。細胞培養部は、細胞を培養するための第1面と第1面とは反対の第2面とを有する多孔質層であってもよい。例えば、細胞培養部は、単一の膜構造でもよいし、複数の膜を積み重ねた層構造でもよい。例えば、細胞培養部の構成態様は、要求仕様に応じて変更することができる。細胞培養部は、第1空間、第2空間、第1流路及び第2流路におけるこれらの少なくとも一部に設けられていれば良い。
上述した実施形態では、流路形成部は、多孔質膜層の第1面の側に配置される第1流路層及び第2流路層と、多孔質膜層の第2面の側に配置される第3流路層及び第4流路層と、を含む例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、流路形成部は、単層構造でもよいし、5層以上の流路層を含んでいてもよい。例えば、流路形成部は、多孔質膜層の第1面の側のみに配置されてもよいし、多孔質膜層の第2面の側のみに配置されてもよい。例えば、流路形成部の構成態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
本実施形態において培養する細胞は、特に限定されず、例えば、ヒトを含む動物由来の細胞、植物由来の細胞、微生物由来の細胞等を目的に応じて使用可能である。
本実施形態は、細胞工学分野、再生医療分野、バイオ関連工業分野、組織工学分野などにおいて有用である。特に、医薬品の開発、細胞生物学の基礎研究に有用である。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは可能である。また、上述した各変形例を組み合わせても構わない。
次に、本発明の上記実施形態に係る細胞培養装置について、実施例を示して詳細に説明する。なお、下記の実施例は、本発明が適用された具体的な一例であり、本発明を限定するものではない。
<細胞培養装置の流量測定結果>
実施例の細胞培養装置の流量測定結果を比較例と対比して説明する。
図16は、比較例の細胞培養装置の流量測定結果を示すグラフである。図16は、比較例の細胞培養装置の流量のバラツキを示す。図16の比較例の縦軸は、3.9kPaで加圧した際の流量を示す。図17は、実施例の細胞培養装置の流量測定結果を示すグラフである。図17は、実施例の細胞培養装置の流量のバラツキを示す。図17の実施例の縦軸は、5kPaで加圧した際の流量を示す。
比較例の細胞培養装置は、非特許文献1(Satoh, T, et al.: A multi-throughput multi-organ-on-a-chip system on a plate formatted pneumatic pressure-driven medium circulation platform. Lab Chip, 18, 115-125 (2018).)に記載の構造の細胞培養装置をポリスチレンの射出成型及び熱圧着によって作製したものである。比較例の細胞培養装置の作製方法は、特許文献5(特開2020-124884号公報)及び非特許文献2(Kurihara, K, et al.: Low-deformation precision thermal bonding of nanostructured microfluidic chips. Japanese Journal of Applied Physics, 59, SIIJ08 (2020).)に開示されている。
実施例の細胞培養装置は、本実施形態の細胞培養装置1である。
各細胞培養装置の流量測定は、チャンバに培地を添加した後に、チャンバを加圧し、加圧開始から所定時間後に出口側(out側)に貯留された培地の重量を測定し、これを1分あたりの培地流量に換算した。培地密度は、1g=1mLとした。流量の測定は、室温(25℃)で行った。
流量の標準偏差を平均値で除すことで変動係数を推算し、比較例と実施例の流量のバラツキの指標とした。比較例の方法により作製された細胞培養装置の流量の変動係数は、送液流路において0.335、返送流路において0.331であった。
実施例の方法により作製された細胞培養装置の流量の変動係数は、送液流路において0.045、返送流路において0.087であった。
比較例に対して実施例の細胞培養装置のほうが、流量のバラツキが小さく、精度良く流量を制御できることが確認された。
<細胞培養の例>
次に、実施例の細胞培養装置を用いて培養液を流しながら細胞培養を行った例を説明する。
細胞培養装置の滅菌・前処理は、次の手順で行った。
流路プレートは70%エタノールを用いて外側、流路内を満たし、クリーンベンチ内でエタノールを除去後、滅菌済みのバッグに移し、常温で減圧乾燥した。ホルダ、ラバーシート、チャンバ層及び蓋は、オートクレーブ(120℃の温度で20分)にて滅菌後、乾燥器(60℃)で完全に乾燥させた。すべてのパーツは、クリーンベンチ内で無菌的に組み立てた。
流路内の送液流路(多孔質膜層の上:第1チャンバから第3チャンバ、多孔質膜層の下:第2チャンバから第4チャンバ)にはコラーゲンコートを行った。セルマトリックスタイプI-C(新田ゼラチン)をpH3.0の滅菌水で10倍希釈したのち、送液流路上下面のout側(第1チャンバ及び第2チャンバ)から導入し、1時間室温にて静置した。送液流路のin側(第3チャンバ内及び第4チャンバ内)に培地を添加し、out側からアスピレーターにて1mL以上の培地を吸引し、流路内のコート液を培地に置換し、pHを十分に中和した。
次に、ラプラスバルブの破壊圧の測定について説明する。
ラプラスバルブの破壊圧の測定は、2日間の灌流後に行った。測定には同一ロットの4枚の流路を用いた。送液流路または返送流路のin側を4kPaで加圧し、チャンバ内の培地をすべて送液した。その後20秒ごとに0.2kPaずつ圧力を上昇させ、気泡がラプラスバルブを通過した時点の差圧(第1チャンバ内と第3チャンバ内との間の圧力差、第2チャンバ内と第4チャンバ内との圧力差)を記録した。測定は1枚のプレートを流路毎に3回ずつ行い、最も低い破壊圧を記録し4枚の平均値を算出した。
ラプラスバルブの破壊圧はすでに述べた式(1)によって見積もることができる。
式(1)において、Pは予想されるラプラスバルブの破壊圧[Pa]、 γは培地と空気との間の表面張力[N/m]、Dはラプラスバルブとなる流路プレートに形成された貫通孔の直径[m]である。非特許文献3(Jiang, L, et al.: Rhamnolipids elicit the same cytotoxic sensitivity between cancer cell and normal cell by reducing surface tension of culture medium. Appl. Microbiol. Biotechnol., 98, 10187-10196 (2014).)の表面張力を55mN/mと想定すると、ラプラスバルブの破壊圧は5.5kPaと推定される。
実施例では、測定されたラプラスバルブ(実施形態の気体流入防止部)の破壊圧は、送液流路において7.18±0.08kPa 、返送流路において6.78±0.61kPa (平均標準偏差, n=3)となった。これは推定されていた破壊圧5.5kPaと同程度であり、実施例にて作製されたマイクロ流路が培養液の灌流を行うにあたって十分に利用可能であることが確認された。
細胞培養のために、ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells:HUVEC)として、10ドナー由来混合細胞(倉敷紡績)を準備した。HUVECの培養にはMicrovascular Endothelial Cell Growth Medium-2 BulletKit (EGM-2MV,Lonza,Basel,Switzerlands)をメーカー推奨組成で混合した。
HUVECの維持培養にはセルマトリックスタイプI-Cでコラーゲンコートを行ったディッシュを用いて5%CO2、37℃の条件下で培養を行った。細胞がサブコンフルエントに達したのち0.05%トリプシン-5.3mmol/L EDTA液を用いて回収し、遠心分離(100g×3min)を行った。
細胞培養装置を用いた細胞培養は、次の手順で行った。
HUVECは培地で2.0×10cells/mLに調製し、送液流路の上面(第3チャンバのin側)から150μL導入した。細胞培養部分は600cells/mmの密度とした。返送流路への細胞の流出を防ぐため、第1チャンバのout側に空のチップを差し込み、押し出された培地は除去した。HUVECを接着させるため、3時間5%CO2で37℃のインキュベーターの条件で静置培養を行った。非接着細胞を除去するため、第1チャンバのout側に空のチップを差し込み、第3チャンバのin側から培地を150μL導入した。押し出された培地は除去した。チャンバ内の培地貯蔵部分に培地を満たし、さらに培地を2ml添加した。加圧操作は、約5.0kPaで5sec大気圧開放(ステップ1)、その後60sec第1チャンバ及び第2チャンバを加圧(ステップ2)、その後5sec大気圧開放(ステップ3)、その後60sec第3チャンバ及び第4チャンバを加圧(ステップ4)、の加圧シークエンスを繰り返した。加圧にはASTF0401 (エンジニアリングシステム)を用いた。
培地交換は流量測定時に行った。対照には細胞培養用ディッシュ(FalconTM 6-well Clear Flat Bottom TC-treated Multiwell Cell Culture Plate)を用いた。メーカー推奨の方法でコラーゲンコートを行い、同様に600cells/mmの密度で播種した。
観察および配向性試験は次の手順で行った。
灌流開始後2日目のMPSまたはCell cultureディッシュ上の細胞のLiveDead染色を行った。流路内の培地を1ml程度のHBSS(+)で置換した。LIVE/DEADTM Viability/Cytotoxicity Kit fwor mammalian cells(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA,USA)を無血清培地(Lonza#CC-3202にFBSのみ添加しないもの)でCalcein-AM: Final conc. 2μM 、EthD-1: Final conc. 4μMに希釈し、第3チャンバのin側、第4チャンバのin側からそれぞれ150μL押し出し、遮光して20分間室温でインキュベートした。染色終了後に染色液をHBSS(+)に置換し共焦点顕微鏡にて観察を行った。
撮像した画像は、Fiji(Image J 1.53c)を用いて明るさとコントラストを同一条件で補正し、同一条件の閾値以上の輝度を持つ図形を1細胞とし、選択範囲を楕円に近似し、楕円長軸のY軸方向に対する角度を算出した。この時、閾値の範囲に関しては、明らかに2細胞以上が接触しているもの、画像から細胞が見切れているもの、閾値の面積が1つの細胞としては小さすぎるまたは大きすぎるものを除外した。
図18から図21に共焦点レーザー顕微鏡(励起波長488nm)で観察した細胞像および細胞の配向性を解析した結果を示す。図18はPD-MPSの細胞の蛍光画像、図19は6ウェルプレートの細胞の蛍光画像、図20はPD-MPSの細胞の配向の分析結果を示すグラフ、図21は6ウェルプレートの細胞の配向の分析結果を示すグラフ、をそれぞれ示す。図18及び図19では、200μmのスケールバーを示している。
実施例の細胞培養装置を用いて培養した細胞は培養液の流れの方向に配向している様子が観察された(図18、図20)。一方、比較例の6ウェルプレートで培養した細胞はランダムに配向している様子が観察された(図19、図21)。このことにより、実施例のフィルタ層のラプラスバルブを用いた流路構成により、細胞に培養液の流れ刺激を負荷して培養可能であることが確認された。
遺伝子発現解析は次の手順で行った。
流路またはディッシュ上で培養した細胞からRNAを抽出し、遺伝子発現解析を行った。2日間灌流培養を行った細胞の表面をPBS(-)で置換し、0.05%トリプシン-5.3mmol/L EDTA液で剥離し、遠心分離して細胞を回収した。
抽出・精製にはRNeasy Midi Kit(QIAGEN, Hilden, Germany)を用い、逆転写反応には QuantiTect Reverse Transcription Kit(QIAGEN)を用いた。定量的PCRには QuantiTect Primer Assays (QIAGEN) and a Thermal Cycler Dice PCR system(TP850,タカラバイオ)を用いた。プライマーにはQuantiTect Primer Assays(QIAGEN)のnitric oxide synthase 3(NOS3), thrombomodulin(THBD), glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH) を用いた(表1)。
Figure 2024034473000003
図22に遺伝子発現解析の結果を示す。図22は、2日間の培養後のHUVECにおけるTHBD及びNOS3の相対的なmRNA発現レベルを示すグラフである。図22において、白抜きのグラフは比較例、ハッチングしたグラフは実施例をそれぞれ示す。
実施例の細胞培養装置で培養したHUVECは比較例の6ウェルプレートで培養した場合と比較して、THBDの発現が3.3倍向上し、NOS3の発現が5倍向上したことが確認された。このことにより、実施例のフィルタ層のラプラスバルブを用いた流路構成により、細胞に培養液の流れ刺激を負荷して培養可能であることが確認された。
本発明の細胞培養装置及びその製造方法を利用すれば、創薬における医薬品候補化合物の薬効試験、安全性試験、薬物動態評価試験といった試験を、培養細胞を用いて行うことが可能となる。また、本発明は、食品、化成品、化粧品等の機能や安全性を評価するための動物実験代替法としても利用することができる。さらに、本発明において開示する構造を有する細胞培養装置として販売されることや、細胞培養装置を利用した検査装置としても利用することができる。
1…細胞培養装置、2…チャンバ層(貯留部)、3…流路プレート(流路形成部)、4…細胞培養部、5…加圧調整装置(循環流れ制御部)、6…気体流入防止部、6a…面状構造体(面状の構造体)、6h…貫通孔、20A-20D…第1空間(第2空間)、30…フィルタ層(フィルタ部)31…第1気体流入防止部(気体流入防止部)、31h…貫通孔、32…第2気体流入防止部(気体流入防止部)、32h…貫通孔、33…フィルタ窓孔、34…貫通孔、40…第1流路層(流路形成体)、41,42…第1流路層における貫通孔、43,44…第1流路層において培養液の循環流れを形成する流路、50…第2流路層(流路形成体)、51,52…第2流路層における貫通孔、53,54…第2流路層において培養液の循環流れを形成する流路、60…多孔質膜層、60a…第1面、60b…第2面、61,62…多孔質膜層における貫通孔、70…第3流路層(流路形成体)、71,72…第3流路層における貫通孔、73,74…第3流路層において培養液の循環流れを形成する流路、80…第4流路層(流路形成体)、83,84…第4流路層において培養液の循環流れを形成する流路、91…空圧ポンプ、130…トラックエッチ膜、230…ハニカムフィルム、330…フィルタ層(フィルタ部)、330a…面状構造体(面状の構造体)、330h…貫通孔、331…気体流入防止部、340…流路層(流路形成体)、530…フィルタ層(フィルタ部)W1A,W2A…送液流路(培養液の循環流れを形成する流路)、W1B,W2B…返送流路(培養液の循環流れを形成する流路)

Claims (11)

  1. 液体培地を貯留可能な第1空間及び第2空間を有する貯留部と、
    前記第1空間及び前記第2空間を互いに連通する第1流路及び第2流路を有する流路形成部と、
    前記第1空間、前記第2空間、前記第1流路及び前記第2流路の少なくとも一部に設けられる細胞培養部と、
    前記第1空間又は前記第2空間から前記第1流路又は前記第2流路を経て前記第1空間又は前記第2空間に戻る培養液の循環流れを制御するための循環流れ制御部と、
    を備え、
    前記流路形成部は、
    前記第1流路及び前記第2流路が形成された少なくとも1つの流路形成体と、
    少なくとも1つの貫通孔が形成され前記循環流れにおける気体の流入を防止する領域である気体流入防止部が1以上設けられたフィルタ部と、を有する、細胞培養装置。
  2. 前記気体流入防止部は、前記第1流路の端部又は前記第2流路の端部に設けられる、
    請求項1に記載の細胞培養装置。
  3. 前記貯留部、前記少なくとも1つの流路形成体及び前記気体流入防止部は、それぞれ層状に形成されており、
    前記少なくとも1つの流路形成体、前記フィルタ部、前記貯留部の順に積層されている、
    請求項1又は2に記載の細胞培養装置。
  4. 前記貫通孔の直径は、0.005mm以上0.2mm以下である、
    請求項1又は2に記載の細胞培養装置。
  5. 前記貯留部は、空気を供給可能な空圧ポンプに接続されている、
    請求項1又は2に記載の細胞培養装置。
  6. 前記フィルタ部の少なくとも一部は、感光性のフォトレジストによって構成されており、
    前記少なくとも1つの貫通孔は、前記フォトレジストに形成されている、
    請求項1又は2に記載の細胞培養装置。
  7. 前記気体流入防止部の少なくとも一部は、ポリイミド、ポリカーボネート又はポリエステル製のトラックエッチ膜で構成されている、
    請求項1又は2に記載の細胞培養装置。
  8. 前記気体流入防止部の少なくとも一部は、ハニカムフィルムで構成されている、
    請求項1又は2に記載の細胞培養装置。
  9. 前記細胞培養部は、前記第2流路及び/又は前記第2流路に設けられている、
    請求項1又は2に記載の細胞培養装置。
  10. 前記流路形成部は、細胞を培養するための第1面と前記第1面とは反対の第2面とを有する多孔質膜層を更に有しており、
    前記少なくとも1つの流路形成体は、前記多孔質膜層の前記第1面の側に配置される第1流路層及び第2流路層と、前記多孔質膜層の前記第2面の側に配置される第3流路層及び第4流路層と、を含み、
    前記第1流路層及び前記第2流路層は、前記多孔質膜層の前記第1面の側において、前記第1空間又は前記第2空間から前記第1流路又は前記第2流路を経て前記第1空間又は前記第2空間に戻る前記培養液の循環流れを形成する流路を含み、
    前記第3流路層及び前記第4流路層は、前記多孔質膜層の前記第2面の側において、前記第1空間又は前記第2空間から前記第1流路又は前記第2流路を経て前記第1空間又は前記第2空間に戻る前記培養液の循環流れを形成する流路を含む、
    請求項9に記載の細胞培養装置。
  11. 液体培地を貯留可能な第1空間及び第2空間を有する貯留部と、前記第1空間及び前記第2空間を互いに連通する第1流路及び第2流路を有する流路形成部と、前記第1空間、前記第2空間、前記第1流路及び前記第2流路の少なくとも一部に設けられる細胞培養部と、前記第1空間又は前記第2空間から前記第1流路又は前記第2流路を経て前記第1空間又は前記第2空間に戻る培養液の循環流れを制御するための循環流れ制御部と、
    を備える細胞培養装置の製造方法であって、
    前記貯留部を層状に形成し、
    前記第1流路及び前記第2流路が形成された少なくとも1つの流路形成体と、少なくとも1つの貫通孔が形成され前記循環流れにおける気体の流入を防止する領域である気体流入防止部が1以上設けられたフィルタ部とを有する前記流路形成部を、前記少なくとも1つの流路形成体と前記フィルタ部とがそれぞれ層状となるように形成し、
    前記少なくとも1つの流路形成体、前記フィルタ部、前記貯留部をこの順に積層して接合する、
    細胞培養装置の製造方法。
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