JP2024033209A - 水硬性材料用硬化促進材、セメント組成物、及び硬化体 - Google Patents

水硬性材料用硬化促進材、セメント組成物、及び硬化体 Download PDF

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Abstract

【課題】水硬性材料の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることが可能な水硬性用硬化促進材を提供することを目的とする。【解決手段】カルシウムサルフォアルミネートを1~65質量%、有機酸カルシウム塩を0.5~75質量%、無機カルシウム化合物を1~55質量%、及び硫酸カルシウムを除く無機硫酸塩を0.5~45質量%含有する、水硬性材料用硬化促進材。【選択図】なし

Description

本発明は、水硬性材料用硬化促進材及び該材料を含むセメント組成物、硬化体に関する。
土木、建築分野で用いられるセメント等の水硬性材料は、通常、水と混合し、所定時間静置することにより硬化する。水硬性材料の硬化速度は、材料と水との比率や周囲の環境温度、養生方法にも影響され得るが、硬化を促進する混和材、すなわち硬化促進材を用いることによって、水硬性材料が硬化するまでの時間を短縮することができる。
水硬性材料が硬化するまでの時間を短縮することは、作業現場の生産性の向上につながる。例えば、鉄筋コンクリート建築物等に用いるプレキャスト工法で用いるコンクリート硬化体は、一般的に、セメント組成物を型枠に打設後、所定時間静置した後、さらに蒸気養生等により養生することにより硬化体を得ることができるが、硬化促進材を用いることで、脱型可能な初期強度となるまでの時間を短縮できるため、効率的に硬化体を生産することができる。
また、通常、セメント組成物を打設後、セメント組成物を型枠内に均一に行き渡らせるため、振動機(バイブレータ)等を用いて「締固め」を行うが、打設直後のセメント組成物の流動性が低下していると、締固めを行う労力及び時間がかかり、生産性が低下する。
硬化促進材に関して、例えば、特許文献1には、無機硫酸塩、カルシウムサルフォアルミネート、及び無機水酸化物を所定量含む水硬性材料用硬化促進材が示されている。特許文献2には、ブレーン比表面積値が4000cm/g以上のカルシウムサルホアルミネートと蟻酸塩及び乳酸塩からなる群より選ばれた一種又は二種以上とを含有してなるセメント混和材が示されている。
特開2014-19618号公報 特開2010-235399号公報
しかしながら、上記のような硬化促進材を用いた水硬性材料は、水と混練直後からすぐに流動性が失われてしまい、打設後に行う締固めに労力と時間を要するため、生産性が低下してしまう懸念がある。
以上より、本発明は、水硬性材料の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることができる水硬性材料用硬化促進材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のような課題を解決するために鋭意研究を行った結果、カルシウムサルフォアルミネート、有機酸カルシウム塩、無機カルシウム化合物、及び硫酸カルシウムを除く無機硫酸塩を所定の割合で含有する水硬性材料用硬化促進材により、当該課題を解決できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] カルシウムサルフォアルミネートを1~65質量%、有機酸カルシウム塩を0.5~75質量%、無機カルシウム化合物を1~55質量%、及び硫酸カルシウムを除く無機硫酸塩を0.5~45質量%含有する、水硬性材料用硬化促進材。
[2] 前記無機カルシウム化合物は、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、及び酸化カルシウムからなる群から選択される1種以上である、上記[1]に記載の水硬性材料用硬化促進材。
[3] 前記無機硫酸塩は、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ピロ硫酸塩、及びピロ重亜硫酸塩からなる群から選択される1種以上である、上記[1]または[2]に記載の水硬性材料用硬化促進材。
[4] 上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の水硬性材料用硬化促進材と、セメントとを含有する、セメント組成物。
[5] 前記水硬性材料用硬化促進材の含有量が、0.5~10質量%である、上記[4]に記載のセメント組成物。
[6] 上記[4]または[5]に記載のセメント組成物を硬化してなる、硬化体。
[7] 上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の水硬性材料用硬化促進材と、セメントと、水とを含有するセメント組成物を、最高温度40~80℃、2~8時間の蒸気養生により硬化させる、硬化体の製造方法。
本発明によれば、水硬性材料の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることができる水硬性材料用硬化促進材を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)を詳細に説明するが、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本発明において、「水硬性材料」とは、水と混練して硬化する材料を指し、「硬化体」とは、セメントペースト、モルタル、及びコンクリート等が硬化したものを指す。なお、本明細書における「%」及び「部」は特に規定しない限り質量基準とする。
[水硬性材料用硬化促進材]
本発明の水硬性材料用硬化促進材は、カルシウムサルフォアルミネートを1~65質量%、有機酸カルシウム塩を0.5~75質量%、無機カルシウム化合物を1~55質量%、及び硫酸カルシウムを除く無機硫酸塩を0.5~45質量%含有する。当該水硬性材料用硬化促進材は、水硬性材料が水と混練されて硬化する際の水硬性材料の硬化を促進するだけでなく、当該硬化の促進をしながら水硬性材料用硬化促進材自体も硬化する場合もある。
(カルシウムサルフォアルミネート)
本発明におけるカルシウムサルフォアルミネートは、化学式xCaO・yAl・zCaSO・mHO(x、y、zは0でない正の実数、mは0または正の実数)で表される水硬性物質及び含水塩の総称であり、例えば、アウイン(3CaO・3Al・CaSO)のほか、エトリンガイト(3CaO・Al・3CaSO・32HO)を代表とするAFt相、モノサルフェート(3CaO・Al・CaSO・12HO)を代表とするAFm相、及びAFt相とAFm相とが共存するもの等が挙げられる。カルシウムサルフォアルミネートは非晶質であってもよい。また、Alの一部が微量のFeまたはSiO等に置換してもよく、CaSOの一部がCa(OH)またはCaCO等に置換してもよい。なお、本発明では、上記化学式xCaO・yAl・zCaSO・mHOにおいて、水硬性材料の流動性を保持することができなくなり、また、相転移により硬化時の強度が低下するおそれがあるため、zを0とすることはできない。
カルシウムサルフォアルミネートは、石灰等のカルシア原料、石膏等の硫酸塩原料、及びボーキサイト(水酸化アルミニウム)等のアルミナ原料等を原料として、例えば、CaO:CaSO:Alのモル比で3:3:1の割合等の所定の割合で原料配合し、キルンなどを用いて、1,500℃程度で焼成し、粉砕して製造することができる。また、一度焼成したものに二酸化珪素等を加えて熱処理し、粉砕してもよい。
本発明の水硬性材料用硬化促進材は、カルシウムサルフォアルミネートを1~65質量%含有し、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~55質量%、さらに好ましくは20~45質量%含有する。カルシウムサルフォアルミネートの含有割合が、1~65質量%の範囲外であると、水硬性材料の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることができないおそれがある。
カルシウムサルフォアルミネートのブレーン比表面積値は、1,000~6,000cm/gであることが好ましく、2,000~4,000cm/gであることがより好ましく、2,200~3,800cm/gであることがさらに好ましい。
なお、本発明においてブレーン比表面積値は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に記載された比表面積試験に準拠して測定される。
(有機酸カルシウム塩)
本発明の水硬性材料用硬化促進材は、有機酸カルシウム塩を0.5~75質量%含有し、好ましくは1~70質量%、より好ましくは5~55質量%、さらに好ましくは15~45質量%含有する。有機酸カルシウム塩の含有割合が、0.5質量%未満であると、水硬性材料の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることができないおそれがあり、75質量%を超えると、初期強度発現性を良好にすることができないおそれがある。
本実施形態において、有機酸カルシウム塩としては、例えば、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、及び乳酸カルシウム等を用いることができ、1種のみ、または2種以上を用いることができる。有機酸カルシウム塩を2種以上用いる場合、それぞれの含有割合の合計を有機酸カルシウム塩の含有割合とする。本実施形態においては、初期強度発現性の観点から、ギ酸カルシウム及び/または酢酸カルシウムを用いることが好ましく、ギ酸カルシウムを用いることがより好ましい。
(無機カルシウム化合物)
本発明の水硬性材料用硬化促進材は、無機カルシウム化合物を1~55質量含有し、好ましくは5~50質量%、より好ましくは15~40質量%、さらに好ましくは18~30質量%含有する。無機カルシウム化合物の含有割合が、1質量%未満であると、水硬性材料の流動性保持を良好にすることができないおそれがあり、55質量%を超えると、水硬性材料の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることができないおそれがある。
本実施形態において、無機カルシウム化合物は、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、及び酸化カルシウムからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。無機カルシウム化合物を2種以上用いる場合、それぞれの含有割合の合計を無機カルシウム化合物の含有割合とする。本実施形態においては、初期強度発現性の観点から、硫酸カルシウム及び/または水酸化カルシウムを用いることが好ましく、硫酸カルシウムがより好ましく、無水硫酸カルシウムがよりさらに好ましい。
(無機硫酸塩)
本発明の水硬性材料用硬化促進材は、硫酸カルシウムを除く無機硫酸塩を0.5~45質量%含有し、好ましくは1~40質量%、より好ましくは2.5~30質量%、さらに好ましくは3~25質量%含有する。硫酸カルシウムを除く無機硫酸塩の含有割合が、0.5~45質量%の範囲外であると、水硬性材料の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることができないおそれがある。
本実施形態において、無機硫酸塩は、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ピロ硫酸塩、及びピロ重亜硫酸塩からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。無機硫酸塩を2種以上用いる場合、それぞれの含有割合の合計を、無機硫酸塩の含有割合とする。塩を形成する無機物としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましい。本実施形態においては、初期強度発現性の観点から、硫酸塩及び/またはチオ硫酸塩を用いることが好ましく、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、チオ硫酸ナトリウム、及びカリウムミョウバンがより好ましく、初期強度発現性の観点から硫酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムがさらに好ましく、中でも、流動性保持性を良好にする観点から、硫酸ナトリウムがよりさらに好ましい。硫酸ナトリウムを用いる場合、無水物であることがより好ましい。
[セメント組成物]
本実施形態に係るセメント組成物は、水硬性材料用硬化促進材と、セメントとを含有する。
セメントとしては、特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらのポルトランドセメントに、高炉スラグやフライアッシュ、シリカフュームなどを混合した各種混合セメント、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)、市販されている微粒子セメント、白色セメントなどが挙げられ、各種セメントを微粉末化して使用することも可能である。また、通常セメントに使用されている成分(例えば石膏等)量を増減して調整されたものも使用可能である。さらに、これらを2種以上組み合わせたものも使用可能である。初期強度発現性を高める観点から、普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメントを選定することが好ましいが、初期強度発現性の低い高炉セメントやフライアッシュセメントを用いても早期脱型が可能となる。
本発明で使用するセメントは、製造コストや強度発現性の観点から、セメントのブレーン比表面積値(以下、単に「ブレーン値」ともいう)が、2,500cm/g~7,000cm/gであることが好ましく、2,750cm/g~6,000cm/gであることがより好ましく、3,000cm/g~4,500cm/gであることがさらに好ましい。
セメント組成物における、水硬性材料用硬化促進材の含有量は、0.5~10質量%が好ましく、1.0~9.0質量%がより好ましく、2.5~8.0質量%がさらに好ましい。セメント組成物中の水硬性材料用硬化促進材の含有量が、上記範囲内であると、水硬性材料の流動性保持性及び初期強度発現性をより良好にすることができる。
セメント組成物打設前のフロー値は、160~230であることが好ましく、170~220であることがより好ましく、190~200であることがさらに好ましい。セメント組成物のフロー値が、上記範囲内であると、打設及び締固めが行いやすく作業性が向上する。また、セメント組成物混練1時間後のフロー値の変化率(フロー変化率)は、20%未満であることが好ましく、15%未満であることがより好ましく、10%未満であることがさらに好ましい。セメント組成物のフロー変化率が、上記範囲内であると、セメント組成物混練後1時間後に打設を行っても、打設及び締固めが行いやすく作業性が向上する。
なお、本発明において、フロー値は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に規定の方法に準拠し測定することができる。フロー変化率は、(混練1時間後のフロー値)/(混練直後のフロー値)×100(%)で計算した値を、100%から減じて求めることができる。
セメント組成物は、骨材を含むことが好ましい。使用する骨材としては、通常のセメントモルタルやコンクリートに使用するものと同様の細骨材や粗骨材が使用可能である。即ち、川砂、川砂利、山砂、山砂利、砕石、砕砂、石灰石骨材、石灰砂、けい砂、色砂、人口骨材、高炉スラグ骨材、海砂、海砂利、人工軽量骨材、及び重量骨材等が使用可能であり、これらを組み合わせることも可能である。
骨材の含有割合は、セメント組成物中のセメント100質量部に対して、40質量部以上250質量部以下であることが好ましく、50質量部以上230質量部以下であることがより好ましく、60質量部以上200質量部以下であることがさらに好ましい。骨材の含有割合が上記範囲内であることで、水硬性材料の流動性保持性及び初期強度発現性をより良好にすることができる。
セメント組成物は、アルカリ金属炭酸塩を含有することができる。セメント組成物がアルカリ金属炭酸塩を含有することで、流動性保持性及び初期強度発現性を良好にしやすい。アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等が挙げられ、これらを組み合わせることも可能である。
アルカリ金属炭酸塩の含有割合は、セメント組成物中のセメント100質量部に対して、固形分量で1~6質量部であることが好ましく、2~5質量部であることがより好ましい。アルカリ金属炭酸塩の含有割合が上記範囲内であることで、流動性保持性及び初期強度発現性を良好にしやすい。
セメント組成物は、シリカ質微粉末を含有することができる。セメント組成物がシリカ質微粉末を含有することで流動性保持性及び初期強度発現性を良好にしやすい。シリカ質微粉末としては、高炉水砕スラグ微粉末等の潜在水硬性物質、フライアッシュや、シリカフュームなどのポゾラン物質を挙げることができ、中でも、シリカフュームが好ましい。シリカフュームの種類は限定されるものではないが、流動性の観点から、不純物としてZrOを10%以下含有するシリカフュームや、酸性シリカフュームの使用がより好ましい。酸性シリカフュームとは、シリカフューム1gを純水100ccに入れて攪拌した時の上澄み液のpHが5.0以下の酸性を示すものをいう。
シリカ質微粉末の粉末度は特に限定されるものではないが、通常、高炉水砕スラグ微粉末とフライアッシュは、ブレーン値で3,000cm/g以上9,000cm/g以下の範囲にあり、シリカフュームは、BET比表面積で20,000cm/g以上300,000cm/g以下の範囲にある。
シリカ質微粉末の含有割合は、セメント組成物中のセメント100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましく、3~12質量部がさらに好ましい。シリカ質微粉末の含有割合が上記下限値以上であることで、流動性保持性及び初期強度発現性を良好にしやすい。さらに、シリカ質微粉末の含有割合が上記上限値以下であることで、流動性保持性をより良好にしやすい。
セメント組成物は、性能に悪影響を与えない範囲で消泡剤を含有することも可能である。消泡剤は、練り混ぜで巻き込む空気量を抑制する目的で使用するものである。消泡剤の種類としては、硬化モルタルの強度特性に著しく悪影響を与えるものでない限り特に限定されるものではなく、液体状及び粉末状いずれも使用できる。例えば、ポリエーテル系消泡剤、多価アルコールのエステル化物やアルキルエーテル等の多価アルコール系消泡剤、アルキルホスフェート系消泡剤、シリコーン系消泡剤等が挙げられる。
消泡剤の含有割合は、セメント組成物中のセメント100質量部に対して、0.002~0.5質量部であることが好ましく、0.005~0.45質量部であることがより好ましく、0.01~0.4質量部であることがさらに好ましい。消泡剤の含有割合が上記下限値以上であることで、消泡効果を十分に発現することができ、消泡剤の含有割合が上記上限値以下であることで、流動性保持性を良好にしやすい。
また、セメント組成物は、性能に悪影響を与えない範囲で、ガス発泡物質、減水剤、AE剤、防錆剤、撥水剤、抗菌剤、着色剤、防凍剤、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、及びパルプスラッジ焼却灰等の混和材料、増粘剤、及び収縮低減剤、ポリマー、ベントナイト、セピオライトなどの粘土鉱物、並びに、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体等のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
[硬化体]
本実施形態に係る硬化体は、セメント組成物を硬化してなる。硬化体は、通常、セメント組成物と水とが混練されることにより、水硬性材料であるセメントが水和反応を起こし硬化する。練り混ぜ水量は、特に限定されないが、セメント組成物100質量部に対して、10~70質量部であることが好ましく、14~65質量部であることがより好ましく、16質量部~60質量部であることがさらに好ましい。練り混ぜ水量が上記範囲内であると、水硬性材料の初期強度発現性を良好にしやすい。
硬化体は、セメント組成物と水とを混練後、静置することにより硬化して得られるものであるが、混練後、型枠に充填(打設)し養生したり、また、施工箇所に直接流し込む、あるいは吹付けるまたは塗り付けたりすることによって、より効率的に得ることができる。
硬化体の圧縮強さは、使用するセメントの種類によるが、打設後6時間で、10.5~15.0N/mmであることが好ましく、11.0~14.0N/mmであることがより好ましく、12.0~13.0N/mmであることがさらに好ましい。また、材齢7日で、40.0~50.0N/mmであることが好ましく、41.0~48.0N/mmであることがより好ましく、42.0~46.0N/mmであることがさらに好ましい。
なお、本発明において、圧縮強さは、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に規定の方法に準拠し測定することができる。
[硬化体の製造方法]
本実施形態に係る硬化体の製造方法は、水硬性材料用硬化促進材と、セメントと、水とを含有するセメント組成物を、型枠に充填(打設)し、硬化させる方法である。硬化体の製造方法は、水硬性材料用硬化促進材、セメント、及び水を混練する混練工程、混練されたセメント組成物を型枠に充填する打設工程、及び型枠に充填されたセメント組成物を養生する養生工程を、この順で含むことが好ましい。
混練工程における混練方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部を、あるいは全部を混合しておいても差し支えない。混合装置としては、既存のいかなる装置、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、プロシェアミキサ及びナウタミキサなどの使用が可能である。
打設工程における打設方法は、公知の手法で行うことができる。打設時におけるセメント組成物の温度は、0~50℃であることが好ましく、10~40℃であることがより好ましい。打設時におけるセメント組成物の温度が上記範囲内であると、硬化体の早期脱型を可能にしやすくなる。
硬化体の製造方法は、打設工程の後にさらに締固め工程を含むことが好ましい。締固め方法は、公知の手法を用いることができるが、作業性の観点から、振動機(バイブレータ)を用いることが好ましい。本発明の水硬性材料用硬化促進材を含有するセメント組成物は、打設直前の流動性が良好に保持されているため、締固めを容易に行うことができ、型枠内に均一にセメント組成物を行き渡らせることができ、また、打設時等に混入した気泡を取り除くことができる。
養生工程に用いる養生方法としては、生産性向上の観点から、養生室や加熱シート等を用いた蒸気養生を用いることが好ましい。蒸気養生は、通常、対象周辺の雰囲気を昇温し、適度な湿度を保ちながら一定の温度を保持して養生を行う。蒸気養生の条件としては、最高温度40~80℃、養生時間2~8時間であることが好ましく、最高温度40~75℃、養生時間2.5~7.5時間であることがより好ましく、最高温度45~60℃、養生時間3~7時間であることがさらに好ましい。蒸気養生中のセメント組成物周辺の雰囲気の最高温度を上記範囲内とし、養生時間を上記範囲内として蒸気養生を行うと、硬化体の早期脱型を可能にしやすくなる。
蒸気養生中のセメント組成物周辺の相対湿度は、50%RH以上であることが好ましく、75%RH以上であることがより好ましく、90%RH以上であることがさらに好ましい。上限は限定されないが、100%RHであってもよい。蒸気養生中のセメント組成物周辺の相対湿度が、上記範囲内であると、硬化体の早期脱型を可能にしやすくなる。
養生工程は、前養生工程を含むことが好ましい。前養生の条件としては、温度10~50℃で、1~3時間程度温度を一定に保持することが好ましい。養生工程が前養生工程を含むことにより、打設されたセメント組成物内部の温度を均一にすることができ、内部と外部の温度差による温度ひび割れを防止しやすい。
養生工程は、加熱工程を含むことが好ましい。加熱方法としては、公知の方法を用いることができ、10~30℃/時間の昇温速度で加熱することが好ましく、12~28℃/時間の昇温速度で加熱することがより好ましく、15~25℃の昇温速度で加熱することがさらに好ましい。加熱工程における昇温速度が上記範囲内であると、セメント組成物の急激な温度上昇による温度ひび割れを防止しつつ硬化をより促進させることができる。
養生工程は、温度保持工程を含むことが好ましい。温度保持方法としては、公知の方法を用いることができ、好ましくは温度40~80℃の範囲で、1~8時間、より好ましくは、40~75℃の範囲で1~6時間、さらに好ましくは、45~65℃の範囲で2.5~5時間、一定の温度を保持する。温度保持工程において、上記数値範囲内で一定の温度を保持することにより、打設されたセメント組成物を均一に硬化させることができ、早期脱型を可能にしやすい。
硬化体の製造方法は、養生工程の後に、自然冷却工程を含むことが好ましい。自然冷却工程では、養生工程により得られた硬化体を、常温雰囲気下で自然冷却する。冷却時間は、特に限定されないが、硬化体を容易に脱型することのできる温度まで冷却できればよく、0.5~2時間程度あればよい。養生工程の後に、自然冷却工程を含むことにより、硬化体の温度ひび割れを防ぐことができる。
以下、本発明を実験例に基づいてさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実験例1>
下記材料を用い、水/セメント比が45%、セメントと骨材の比率が1:2.5(質量比)のモルタルを調製した。得られたモルタルに対して、表1に記載の割合で減水剤を添加し、表1に示す組成の水硬性材料用硬化促進材の混合量を、表1に示す割合となるように混練し、セメント組成物を調製した。得られたセメント組成物のフロー値を測定し、フロー変化率を算出した。表1に併記する。
また、調製したセメント組成物を、寸法4×4×16cmの型枠に充填した後、蒸気養生を行い、硬化体を得た。蒸気養生条件は、20℃で1時間の前養生、20℃/時間の速度で1.5時間の昇温、50℃で3時間の温度保持、自然冷却0.5時間とした。得られた硬化体の圧縮強さを測定した。結果を表1に併記する。
なお、使用したカルシウムサルフォアルミネートは、試薬1級の炭酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、及び水酸化アルミニウムを用いて、CaO:CaSO:Alのモル比で、4:3:1の割合で混合し、1,400℃で2時間焼成し、室温まで放置して、ブレーン比表面積が3,500cm/gとなるまで粉砕した。
(使用材料)
セメント:普通ポルトランドセメント(市販品)、ブレーン比表面積3,200cm/g、比重3.15g/cm
水:水道水
骨材:新潟県姫川水系産川砂
減水剤:ポリカルボン酸系高性能減水剤(市販品)
カルシウムサルフォアルミネート:試製品、ブレーン比表面積3,500cm/g
ギ酸カルシウム(有機酸カルシウム塩):試薬
硫酸カルシウム(無機カルシウム化合物):試薬
硫酸ナトリウム(無機硫酸塩):無水物、試薬
(測定項目)
フロー変化率:JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に規定の方法に準拠し、混練直後及び混練から1時間後のセメント組成物のフロー値をそれぞれ測定した。混練直後のフロー値は、すべて200程度であった。測定した各フロー値を用いて、(フロー変化率)=1-(混練から1時間後のフロー値)/(混練直後)×100として、フロー変化率を算出した。
圧縮強さ:JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に規定の方法に準拠し、蒸気養生終了後の材齢6時間(脱型直後)と、材齢7日の硬化体の圧縮強さをそれぞれ測定した。
表1に示す結果より、カルシウムサルフォアルミネート、有機酸カルシウム塩、無機カルシウム化合物、及び硫酸カルシウムを除く無機硫酸塩を所定の割合で含有する水硬性材料用硬化促進材を用いることにより、セメント組成物の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることができることを確認した。
<実験例2>
水硬性材料用硬化促進材が含有する有機酸カルシウム塩として、ギ酸カルシウムのほかに、表2に示す割合で酢酸カルシウム及び乳酸カルシウムを用いたこと以外は、実験例1と同様にして、モルタル、セメント組成物及び硬化体を調製し、フロー変化率及び圧縮強さを測定した。結果を表2に併記する。
(有機酸カルシウム塩)
酢酸カルシウム:試薬
乳酸カルシウム:試薬
表2に示す結果より、水硬性材料用硬化促進材が含有する有機酸カルシウム塩として、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、及び乳酸カルシウムを用いることで、セメント組成物の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることができることを確認した。中でも、ギ酸カルシウムを含有する場合、特に硬化体の初期強度発現性を良好にすることができることを確認した。
<実験例3>
水硬性材料用硬化促進材が含有する無機カルシウム化合物として、硫酸カルシウムのほかに、表3に示す割合で水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、及び酸化カルシウムを用いたこと以外は、実験例1と同様にして、モルタル、セメント組成物、及び硬化体を調製し、フロー変化率及び圧縮強さを測定した。結果を表3に併記する。
表3に示す結果より、水硬性材料用硬化促進材が含有する無機カルシウム化合物として、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、及び酸化カルシウムを用いることで、セメント組成物の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることができることを確認した。中でも、硫酸カルシウムを含有する場合、特にセメント組成物の流動性保持性を良好にすることができることを確認した。
(無機カルシウム化合物)
水酸化カルシウム:試薬
炭酸カルシウム:試薬
酸化カルシウム:試薬
<実験例4>
水硬性材料用硬化促進材が含有する無機硫酸塩として、硫酸ナトリウムのほかに、表4に示す割合で硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、及びチオ硫酸ナトリウムを用いたこと以外は、実験例1と同様にして、モルタル、セメント組成物、及び硬化体を調製し、フロー変化率及び圧縮強さを測定した。結果を表4に併記する。
(無機硫酸塩)
硫酸アルミニウム:試薬
カリウムミョウバン:試薬
チオ硫酸ナトリウム:試薬
表4に示す結果より、水硬性材料用硬化促進材が含有する無機硫酸塩として、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、及びチオ硫酸ナトリウムを用いることで、セメント組成物の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることができることを確認した。中でも、硫酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムを含有する場合、初期強度発現性をより良好にすることができ、特に、硫酸ナトリウムを含有する場合、流動性保持性もさらに良好にすることができることを確認した。
<実験例5>
水硬性材料用硬化促進材の混合量を、表5に示す割合としたこと以外は、実験例1と同様にして、モルタル、セメント組成物、及び硬化体を調製し、フロー変化率及び圧縮強さを測定した。結果を表5に併記する。
表5に示す結果より、水硬性材料用硬化促進材の混合量を所定の範囲にすることにより、セメント組成物の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることができることを確認した。
<実験例6>
セメント組成物に用いるセメントとして、高炉セメント及びフライアッシュセメントを用いたこと以外は、実験例1と同様にして、モルタル、セメント組成物、及び硬化体を調製し、フロー変化率及び圧縮強さを測定した。結果を表6に併記する。
(セメント)
高炉B種セメント:市販品、ブレーン比表面積3,200cm/g、比重3.15g/cm
高炉C種セメント:市販品、ブレーン比表面積3,500cm/g、比重3.15g/cm
フライアッシュセメントB種:市販品、ブレーン比表面積3,200cm/g、比重3.15g/cm
表6に示す結果より、セメント組成物に用いるセメントとして、高炉セメントやフライアッシュセメントを用いた場合でも、セメント組成物の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることができることを確認した。
以上の結果より、本発明の水硬性材料用硬化促進材は、カルシウムサルフォアルミネート、有機酸カルシウム塩、無機カルシウム化合物、及び無機硫酸塩を所定の割合で含有することで、セメント組成物の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることができることを確認した。
本発明の水硬性材料用硬化促進材は、カルシウムサルフォアルミネート、有機酸カルシウム塩、無機カルシウム化合物、及び硫酸カルシウムを除く無機硫酸塩を所定の割合で含有することで、水硬性材料の流動性保持性及び初期強度発現性を良好にすることが可能となる。そのため、プレキャスト工法で用いられるコンクリート硬化体等、土木、建築分野に幅広く適用できる。

Claims (7)

  1. カルシウムサルフォアルミネートを1~65質量%、有機酸カルシウム塩を0.5~75質量%、無機カルシウム化合物を1~55質量%、及び硫酸カルシウムを除く無機硫酸塩を0.5~45質量%含有する、水硬性材料用硬化促進材。
  2. 前記無機カルシウム化合物は、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、及び酸化カルシウムからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の水硬性材料用硬化促進材。
  3. 前記無機硫酸塩は、硫酸塩、チオ硫酸、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ピロ硫酸塩、及びピロ重亜硫酸塩からなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載の水硬性材料用硬化促進材。
  4. 請求項1または2に記載の水硬性材料用硬化促進材と、セメントとを含有する、セメント組成物。
  5. 前記水硬性材料用硬化促進材の含有量が、0.5~10質量%である、請求項4に記載のセメント組成物。
  6. 請求項4に記載のセメント組成物を硬化してなる、硬化体。
  7. 請求項1に記載の水硬性材料用硬化促進材と、セメントと、水とを含有するセメント組成物を、最高温度40~80℃、2~8時間の蒸気養生により硬化させる、硬化体の製造方法。
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