JP2024020048A - 車両搭載型の排ガス分析装置、排ガス分析方法、及び、排ガス分析装置用プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】大気圧による濃度の遅れ時間への影響を従来よりも精度よく補正し、測定結果の誤差を低減できる車両搭載型の排ガス分析装置を提供する。【解決手段】対象ガス成分の濃度と、その濃度が測定された時刻が対となった濃度データを取得する濃度取得部2と、サンプリングされている排ガスの流量、又は、サンプリングされている排ガスの流量、又は、対象ガス成分の流量と、その流量が測定された時刻が対となった流量データを取得する流量取得部3と、前記車両が存在する場所の大気圧又は当該大気圧に相関する圧力である大気圧関連値を取得する大気圧関連値取得部4と、流量に対する濃度の遅れ時間と、大気圧関連値との間の関係を示す遅れデータを記憶する遅れデータ記憶部5と、前記遅れデータと、取得された大気圧関連値とに基づいて、流量に対する濃度の遅れ時間を決定し、決定された遅れ時間に基づいて前記濃度データにおける時刻を補正する応答補正部6と、を備えた。【選択図】図2
Description
本発明は、車両の排気管から排ガスを採取し、当該排ガスに含まれる対象ガス成分の濃度を測定する車両搭載型の排ガス分析装置に関するものである。
内燃機関から排出される排ガスを分析する排ガス分析装置は、排ガスの流量を測定する流量センサと、排ガスの対象ガス成分の濃度を測定する1又は複数の分析計を備えている。流量センサで測定される流量に対して、分析計で測定される濃度は遅れることは知られており、それぞれが同期するように例えば濃度の遅れを補正して、正確な質量を算出できるようにしている(特許文献1参照)。
近年、特許文献1で記載されているようなシャーシダイナモ上における試験だけでなく、実路走行試験(RDE: Real Driving Emission)等を行うために、車両搭載型の排ガス分析装置が用いられている。このような車両搭載型の排ガス分析装置においては、従来のような遅れの補正を行っても流量と濃度を精度よく同期させられないことがある。
このような問題について本願発明者らが鋭意検討を行ったところ、濃度の遅れ時間は大気圧の影響を受けて変化しており、従来の遅れの補正方法では十分な精度で補正を行うことができないことを初めて見出した。図5に一般的な平地(気圧約100kPa)から標高約3000m(気圧約65kPA)に変化した場合におけるN2O、NH3のそれぞれに関するシステム応答時間t90―t0の測定結果に示す。なお、図5では平地でのシステム応答時間をt1、高地でのシステム応答時間txとしている。大気圧が変化すると測定対象となるガス種ごとに異なる変化傾向で遅れ時間の長さが変化していることが分かる。すなわち、シャーシダイナモ上であれば、車両は移動せず、当然大気圧の変動はほぼ生じないために、図5に示されるような大気圧と遅れ時間との間の関係は従来知られていなかった。路上走行試験では例えば山岳地を走行して、大きく大気圧が変化することもあり、このことが濃度の遅れ時間に対して影響することを本願発明者らは突き止めたのである。
本発明は上述したような課題に鑑みてなされたものであり、大気圧による濃度の遅れ時間への影響を従来よりも精度よく補正し、測定結果の誤差を低減できる車両搭載型の排ガス分析装置を提供することを目的とする。
すなわち、本発明に係る車両搭載型の排ガス分析装置は、車両の排気管から排ガスを採取し、当該排ガスに含まれる対象ガス成分の濃度を測定する車両搭載型の排ガス分析装置であって、対象ガス成分の濃度と、その濃度が測定された時刻が対となった時系列データである濃度データを取得する濃度取得部と、前記車両から排気されている排ガスの流量と、その流量が測定された時刻が対となった時系列データである流量データを取得する流量取得部と、前記車両が存在する場所の大気圧又は当該大気圧に相関する圧力である大気圧関連値を取得する大気圧関連値取得部と、前記車両から排気されている排ガスの流量に対する濃度の遅れ時間と、大気圧関連値との間の関係を示す遅れデータを記憶する遅れデータ記憶部と、前記遅れデータと、取得された大気圧関連値とに基づいて、前記車両から排気されている排ガスの流量に対する濃度の遅れ時間を決定し、決定された遅れ時間に基づいて前記濃度データにおける時刻を補正する応答補正部と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明に係る排ガス分析方法は、車両の排気管から排ガスを採取し、当該排ガスに含まれる対象ガス成分の濃度を測定する車両搭載型の排ガス分析装置に用いられる排ガス分析方法であって、対象ガス成分の濃度と、その濃度が測定された時刻が対となった時系列データである濃度データを取得し、前記車両から排気されている排ガスの流量と、その流量が測定された時刻が対となった時系列データである流量データを取得し、前記車両が存在する場所の大気圧又は当該大気圧に相関する圧力である大気圧関連値を取得し、前記車両から排気されている排ガスの流量に対する濃度の遅れ時間と大気圧関連値との間の関係を示す遅れデータと、取得された大気圧関連値と基づいて、流量に対する濃度の遅れ時間を決定し、決定された遅れ時間に基づいて前記濃度データにおける時刻を補正することを特徴とする。
このようなものであれば、例えば路上走行試験中において高度が変化し、大気圧が変動している場合でも、前記車両から排気されている排ガスの流量に対する濃度の遅れ時間に基づいて前記濃度データの時刻を適宜補正して、前記車両から排気されている排ガスの流量と濃度を精度よく同期させることが可能となる。この結果、前記流量データと補正された前記濃度データに基づいて対象ガス成分の排出量等も正確に算出することができる。
例えば路上走行試験において高度が逐次変化するような状況であっても、前記濃度データの各時刻について正確に補正を行えるようにするには、前記大気圧関連値は、時系列データであり、前記応答補正部が、前記濃度データの各時刻における遅れ時間をそれぞれ個別に決定し、決定された各遅れ時間に基づいて前記濃度データにおける各時刻を個別に補正するように構成されていればよい。
前記濃度データ及び前記大気関連値に基づいて、濃度が測定された時刻における遅れ時間を算出できるようにするには、前記遅れデータが、大気圧関連値をパラメータとする遅れ時間の算出式を示す式データであればよい。
測定されている前記濃度データや前記大気関連値に基づくテーブル参照で、前記遅れ時間を決定できるようにするには、前記遅れデータが、遅れ時間と、大気圧関連値が対となったテーブル形式のデータであればよい。
前記遅れ時間は排ガスの前記対象ガス成分の種類によって大気圧による影響が異なっているが、これらの異なる変化特性に対してそれぞれ対応して、複数種類の対象ガス成分の濃度データについても十分に同期させることができるようにするには、前記濃度取得部が、それぞれ異なる種類の対象ガス成分の前記濃度データを複数取得するものであり、前記応答補正部が、前記車両から排気されている排ガスの流量、及び、各対象ガス成分の濃度が同期するように各対象ガス成分の濃度データの時刻をそれぞれ補正するように構成されたものであればよい。
前記遅れ時間を補正するために必要となる前記大気圧関連値を正確に取得するための具体的な態様としては、大気圧を測定する大気圧センサをさらに備え、前記大気圧関連値取得部が、前記大気圧センサの出力する圧力値を前記大気圧関連値として取得するものが挙げられる。
前記大気圧関連値を取得するための別の態様としては、前記車両が存在する位置の高度を取得する高度取得部と、前記高度取得部で取得される高度に基づいて、前記車両が存在する位置の大気圧を推定する大気圧推定部と、をさらに備え、前記大気圧関連値取得部が、前記大気圧推定部の推定する大気圧を前記大気圧関連値として取得するものが挙げられる。
既存の車両搭載型の排ガス分析装置において標準的に備えられているセンサを用いて、前記大気圧関連値を取得できるようにし、新たなセンサを付加せずに前記遅れ時間の補正を行えるようにするには、対象ガス成分の濃度を測定する1又は複数の分析計を具備する本体と、前記本体と、前記車両の排気管との間を接続するサンプリング管と、前記サンプリング管内を流れる排ガスの圧力を測定する圧力センサと、を備え、前記大気圧関連値取得部が、前記圧力センサの測定する圧力を前記大気圧関連値として取得するものであればよい。
例えば路上走行試験中においてもリアルタイムで各対象ガス成分の排出量等をモニタリングできるようにするには、前記車両から排気されている排ガスの流量を示す前記流量データと、前記応答補正部により時刻が補正された濃度データと、に基づいて対象ガス成分の質量を算出する排出量算出部をさらに備えたものであればよい。
簡単な補正演算で演算負荷を軽減しつつ、所定の精度で前記流量データと前記濃度データを同期させられるようにするには、前記大気圧関連値は一定値であり、前記応答補正部が、前記濃度データの所定の時刻における遅れ時間を決定し、決定された遅れ時間で前記濃度データにおける各時刻を補正するように構成されていればよい。例えば前記大気圧関連値としては代表値を1つだけ用いて、前記濃度データの各時刻における遅れ時間は一定であると仮定して補正を行うことで、演算負荷を低減することができる。
前記車両から排気されている排ガスの流量を精度よく測定することができる具体的な態様としては、前記車両の排気菅に取り付けられたサンプリング管に設けられたピトー管と、前記ピトー管で測定される差圧に基づいて前記サンプリング管を流れる排ガスの流量を算出する排ガス総流量算出器と、を具備するピトー管流量計をさらに備え、前記流量取得部が、前記ピトー管流量計で測定される流量を前記車両から排気されている排ガスの流量として取得するように構成されたものが挙げられる。
例えば既存の車両搭載型の排ガス分析装置についてプログラムをアップデートすることにより本発明に係る車両搭載型の排ガス分析装置と同等の効果を奏し得るようにするには、車両の排気管から排ガスを採取し、当該排ガスに含まれる対象ガス成分の濃度を測定する車両搭載型の排ガス分析装置に用いられるプログラムであって、対象ガス成分の濃度と、その濃度が測定された時刻が対となった時系列データである濃度データを取得する濃度取得部と、前記車両から排気されている排ガスの流量と、その流量が測定された時刻が対となった時系列データである流量データを取得する流量取得部と、前記車両が存在する場所の大気圧又は当該大気圧に相関する圧力である大気圧関連値を取得する大気圧関連値取得部と、前記車両から排気されている排ガスの流量に対する濃度の遅れ時間と、大気圧関連値との間の関係を示す遅れデータを記憶する遅れデータ記憶部と、前記遅れデータと、取得された大気圧関連値とに基づいて、前記車両から排気されている排ガスの流量に対する濃度の遅れ時間を決定し、決定された遅れ時間に基づいて前記濃度データにおける時刻を補正する応答補正部と、としての機能をコンピュータに発揮させる排ガス分析装置用プログラムを用いればよい。
なお、排ガス分析装置用プログラムは、電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、SSD、HDD、フラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されているものであってもよい。
このように本発明に係る車両搭載型の排ガス分析装置によれば、大気圧の変化による前記車両から排気されている排ガスの流量に対する濃度の遅れ時間の変化を正確に反映して、濃度データの時刻を正確に補正することが可能となる。したがって、路上試験中に例えば高度が大きく変化し、それに伴って大気圧も大きく変化するようなルートを車両が走行している場合でも、流量データと濃度データを精度よく同期させて、正確な測定結果を提供することが可能となる。
以下、本発明の第1実施形態に係る車両搭載型の排ガス分析装置100について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の車両搭載型の排ガス分析装置100は、例えば自動車等の車両に搭載されて、当該車両から排出される排ガスの成分濃度を測定するものである。なお、車両搭載型の排ガス分析装置100は、実路走行試験(RDE ;Real Driving Emission)を実施するために用いられる。
この車両搭載型の排ガス分析装置100は、図1に示すように車両VHのエンジンENに連結された排気管から排出される排ガスの全部又は一部を採取するサンプリング管SPなどの排ガス採取機構で採取された排ガスの成分濃度を測定するものであり、サンプリング管SPにより採取された排ガスは加熱管HHにより所定の温度に加熱又は維持されて車両搭載型の排ガス分析装置100に導入される。例えば所定の温度は排ガス内の水分が結露しないように100℃以上に設定される。また、サンプリング管SPには車両VHのエンジンENから排気されている排ガスの流量(以下、排ガス総流量ともいう。)を測定するためにピトー管流量計PTを排ガス分析装置100は備えている。ピトー管流量系PTは、サンプリング管SPに取り付けられて、当該サンプリング管SP内を流れる排ガスの動圧と静圧の差圧を測定するためのピトー管P1と、ピトー管P1で測定された差圧に基づいて排ガス総流量を算出する排ガス総流量算出器P2とを備えていえる。ここで、排ガス総流量算出器P2は例えば差圧から排ガス総流量を算出するための演算を行うように構成された例えば電気回路である。
具体的に車両搭載型の排ガス分析装置100の本体MBは、図2に示すように、加熱管HHを経由した排ガスが導入されて、排ガスの各種成分が分析される分析計Xを備えている。また、本体MBは、分析計Xを通過した排ガスが導入されて、その水分が分離されるドレンセパレータ(図示しない)と、ドレンセパレータの下流側に設けられた排気ポンプPと、を備えている。すなわち、車両搭載型の排ガス分析装置100における加熱管HHの接続口から、排気ポンプPの下流側の排出口まで一連の流路が形成されており、この流路上には上流側から分析計X、ドレンセパレータ、排気ポンプPが設けられている。加えて、例えば車両VHの外側天面には少なくとも大気圧を測定するための大気圧センサBPSを備えたウェザーステーションWSが取り付けられている。ウェザーステーションWSは、車両VHのボディに対してマグネット等により固定されるものであり、大気圧だけでなく、外気の温度、湿度を測定できるものである。ウェザーステーションWSは本体MBとケーブルで接続されており、測定された各時刻での大気圧は本体MBを介して後述する情報処理部COMへと送信される。以下に各部について詳述する。
分析計Xは、例えば水素(H)一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOX)、メタン(CH4)、全炭化水素(THC)、アンモニア、ホルムアルデヒド(HCHO)、二窒化酸素(N2O)、 粒子状物質(PM)、または粒子数(PN)等の測定対象成分を分析するものである。分析計Xとしては、非分散赤外線吸収(NDIR)法を用いたNDIR検出器、非分散紫外線吸収(NDUV)法を用いたNDUV検出器、化学発光(CLD)法(ケミルミネッセンス法)を用いたCLD検出器と、水素炎イオン化(FID)法を用いたFID検出器等が挙げられる。以下ではこれらの検出器を分析計Xとしても代表させる。各分析計Xはそれぞれの測定対象成分の量に応じたデータを成分量データとして出力する。本実施形態では、NDIR検出器、CLD検出器及びFID検出器を有しているが、排ガス検出器としてFID検出器のみを有するものであってもよい。また、分析計Xは、非分散型紫外吸収(NDUV)法、電気化学セルを用いたO2計測、ジルコニアセンサを用いたNOx、O2、NH3計測、DCSによるPM計測、CPCによるPN計測を行うものであってもよい。
NDIR検出器は、排ガスに含まれる一酸化炭素(CO)又は二酸化炭素(CO2)の濃度を連続測定するものである。CLD検出器は、排ガスに含まれるNOX又は一酸化窒素(NO)の濃度を連続測定するものである。FID検出器は、排ガスに含まれるメタン(CH4)又は全炭化水素(THC)の濃度を連続測定するものである。その他、車両搭載型の排ガス分析装置100には、測定対象成分に応じて種々の分析器を備えさせることができる。例えば、磁気圧(PMD)法を用いたPMD計、フーリエ変換赤外分光(FTIR)法を用いたFTIR計、中赤外レーザ分光(QCL-IR)法を用いたQCL-IR計等である。
排気ポンプPが引いている排ガスの流量(吐出流量)は各分析計Xが出力する成分量とほぼ同期しており、これらのデータから例えば対象ガス成分の濃度が算出される。
なお、これらの分析計Xにより得られた各対象ガス成分の濃度と、流量計Fにより得られた流量は、図1における情報処理部COMに出力されて、当該情報処理部COMにより、分析データの処理、記録又は表示がされる。また、上記の複数の分析計Xはそれぞれ別体で設けられたものであってもよい。情報処理部COMは、CPU、内部メモリ、A/D変換器、D/A変換器、各種入出力機器等を有する専用乃至汎用のコンピュータであり、分析計Xの分析データだけでなく、その他のセンサ群からのデータを取得して処理、記録又は表示する。
この情報処理部COMは、メモリに格納されている排ガス分析装置用プログラムが実行されて、各機器が協業することにより、図2に示すように少なくともデータ受付部1、濃度取得部2、流量取得部3、大気圧関連値取得部4、遅れデータ記憶部5、応答補正部6、排出量算出部7としての機能を発揮する。
データ受付部1は、各分析計Xから逐次送信されてくる成分量データ、排気ポンプPから逐次送信されてくる流量データ(サンプル管SPから一部サンプリングされている排ガスの流量データ)ピトー管流量計PTから逐次送信されてくる排ガス総流量のデータをそれぞれ受け付けるものである。また、データ受付部1は例えば各分析計Xで測定された成分量と排気ポンプPから送られている排ガスのサンプリング流量から対象ガス成分の濃度を算出する。加えて、データ受付部1は、成分量やサンプリング流量の受付時刻、又は、ピトー管流量計PTで測定された排ガス総流量の受付時刻として共通して用いられるタイマーを備えており、タイマーの示す受付時刻と、そのときに受け付けられた成分量、サンプリング流量、排ガス総流量に基づいて、濃度と時刻とが対になった時系列データである各対象ガス成分の濃度データ、又は、車両VHから排気されている排ガスの流量である排ガス総流量と時刻が対なった時系列データである流量データを生成する。
データ受付部1は、各分析計Xから逐次送信されてくる成分量データ、排気ポンプPから逐次送信されてくる流量データ(サンプル管SPから一部サンプリングされている排ガスの流量データ)ピトー管流量計PTから逐次送信されてくる排ガス総流量のデータをそれぞれ受け付けるものである。また、データ受付部1は例えば各分析計Xで測定された成分量と排気ポンプPから送られている排ガスのサンプリング流量から対象ガス成分の濃度を算出する。加えて、データ受付部1は、成分量やサンプリング流量の受付時刻、又は、ピトー管流量計PTで測定された排ガス総流量の受付時刻として共通して用いられるタイマーを備えており、タイマーの示す受付時刻と、そのときに受け付けられた成分量、サンプリング流量、排ガス総流量に基づいて、濃度と時刻とが対になった時系列データである各対象ガス成分の濃度データ、又は、車両VHから排気されている排ガスの流量である排ガス総流量と時刻が対なった時系列データである流量データを生成する。
濃度取得部2は、データ受付部1で生成される各対象ガス成分の濃度データを逐次取得する。例えば濃度取得部2は、データ受付部1において生成される各受付時刻の濃度データを蓄積して、所定のデータ長の時系列データとして一時的に記憶する。
流量取得部3は、データ受付部1で生成される流量データを逐次取得する。例えば流量取得部3は、データ受付部1において生成される各受付時刻の流量データを蓄積して、所定のデータ長の時系列データとして一時的に記憶する。
ここで、濃度取得部2及び流量取得部3で記憶されている時系列データである各対象ガス成分の濃度データ、及び、流量データは、その変化傾向等は完全には同期しておらず、時間軸方向に対してずれが生じている。すなわち、流量に対して各対象ガス成分の濃度はそれぞれ個別の遅れ時間が発生している。
大気圧関連値取得部4は、車両が存在する場所の大気圧又は当該大気圧に相関する圧力である大気圧関連値を取得するものである。例えば大気圧関連値取得部4は、ウェザーステーションWSの大気圧センサBPSで測定される大気圧をデータ受付部1で各濃度データ及び流量データ受け付けられるタイミングと同期させて逐次取得する。すなわち、大気圧関連値取得部4は、大気圧と、その取得時刻とが対となった大気圧データを生成し、大気圧データを蓄積して時系列データとして一時的に記憶する。ここで、大気圧関連知取得部4は、大気圧センサBPSから取得した圧力を大気圧として採用するもの以外に、例えばピトー管P1で測定される絶対圧を大気圧として採用するものであってもよい。
遅れデータ記憶部5は、車両VHから排気されている排ガスの流量(排ガス総流量)に対する濃度の遅れ時間と、大気圧関連値との間の関係を示す遅れデータを記憶する。本実施形態では、遅れデータは、大気圧関連値をパラメータとする遅れ時間の算出式を示す式データである。例えば流量に対する濃度の遅れ時間をDT[s]とするとDT=K*(Px―Pstd)として表す事ができる。ここで、Psd[kPa]:基準となる大気圧(例えば1気圧101.25kPa)Px[kPa];大気圧関連値として取得された値(車両の存在する位置で大気圧)、K[s/kPa]:大気圧と遅れ時間との間の関係を表す係数である。ここで、係数Kについては対象ガス成分ごとに固有の値となり、遅れデータ記憶部5には対象ガス成分の種類と紐付けてそれぞれ個別の値が記憶される。
なお、遅れ時間を算出する式についてはこの式に限られるものではなく、例えばPsdとPxの比に所定係数を乗じて遅れ時間DTを算出するものであってもよい。また、対象ガス成分の種類によっては大気圧と遅れ時間との間に線形関係ではなく、非線形関係が成り立つものものある。したがって、算出式については大気圧をパラメータとする一次式に限られるものではなく、大気圧をパラメータとする二次式や三次式等であってもよいし、任意のべき乗式であってもよい。また、大気圧をパラメータとする微分式や積分式を含んでいても構わない。また、遅れ時間は、排気ポンプPの流量設定や圧損に対する吸引能力によって変化するほか、加熱管HHの長さや排ガスの通過する流路の内径によっても変化する。したがって、遅れ時間DTの算出式に流量設定、圧損に対する吸引能力、流路の内径といったパラメータを含んでも良いし、これらのパラメータに応じて係数Kが個別に設定されるようにしてもよい。
応答補正部6は、遅れデータと、取得された大気圧関連値とに基づいて、流量に対する濃度の遅れ時間を決定する。具体的には応答補正部6は、DT=K*(Px―Pstd)により各対象ガス成分のガスデータにおける各時刻における遅れ時間を算出する。また、応答補正部6は、決定された遅れ時間に基づいて各対象濃度データにおける時刻を補正する。本実施形態では、応答補正部6はT=Tx-DTにより各対象ガス成分の濃度データごとにそれぞれの遅れ時間を補正する。ここで、T:補正後の時刻、Tx:データ受付部1で受け付けられた受付時刻(補正前の濃度データの時刻)である。このようにして応答補正部6は、各対象ガス成分の濃度データから時刻が補正された補正後の濃度データを生成する。この補正後の濃度データのグラフは、流量のグラフに対して時間軸が揃えられたものとなる。
排出量算出部7は、流量データと、応答補正部6により時刻が補正された補正後の濃度データと、に基づいて各対象ガス成分の質量を算出する。ここで、補正後の濃度データは、時刻が補正されているため、流量データの時刻と完全に一致する時刻のデータが存在しない場合がある。このような場合には、補正後の濃度データについて補間演算を行い、対応する時刻における濃度を算出するようにすればよい。排出量算出部7は、流量データの各時刻の流量と、各対象ガス成分の対応する時刻における濃度から各対象ガス成分の流量を算出し、各対象ガス成分の質量を算出する。
このように構成された車両搭載型の排ガス分析装置によれば、大気圧に応じて変化する排ガス総流量に対する対象ガス成分の濃度の遅れ時間を補正して、排ガス総流量と各対象ガス成分の濃度を精度よく同期させることができる。また、対象ガス成分ごとに大気圧の変化と遅れ時間の変化量が異なる点についても各対象ガス成分に固有の遅れ時間の算出式が遅れデータとして遅れデータ記憶部5に記憶されているので、各対象ガス成分の濃度データの時刻をそれぞれ適切な補正することができる。
また、路上走行試験中に車両の高度が変化したとしても、各時点での大気圧が取得されて、その時点で発生している遅れ時間が逐次算出されるので、濃度データの各要素について個別の時刻補正を行うことができる。したがって、時系列データのほぼ全体について流量と各対象ガス成分の濃度とを同期させることが可能となる。
車両VHから排気されている排ガスの流量データと各対象ガス成分の補正後の濃度データであれば、それぞれが同期しているので、各時刻において各対象ガス成分の排出量を正確に得ることができる。
次に第2実施形態における車両搭載型の排ガス分析装置100について図3及び図4を参照しながら説明する。第2実施形態は、大気圧関連値取得部4が、車両の存在する位置における大気圧そのものを取得するのではなく、大気圧に相関する圧力値を大気圧関連値として取得するように構成されている点が第1実施形態とは異なっている。具体的には図3に示すように排ガス分析装置100は、例えばサンプリング管SPにおける排ガスの圧力を測定する圧力計PGを備えており、大気圧関連値取得部4は、この圧力計PGで測定された圧力を大気圧関連値として採用するように構成されている。すなわち、圧力計PGで測定された圧力はデータ受付部1で受け付けられ受付時刻が付与されて圧力と時刻が対となった圧力データとして生成される。大気圧関連値取得部4は逐次データ受付部1からこの圧力データを取得するように構成されている。また、応答補正部6は、大気圧関連値である圧力計PGで測定された排ガスの圧力に基づいて各対象ガス成分の遅れ時間を算出し、各濃度データの時刻を補正する。
ここで、図4の実測データに示すように、路上走行試験を行った場合、圧力計PGで測定される排ガスの圧力(絶対圧)のアナログ成分と、実際の大気圧は大まかには一致しており、大気圧の代わりに圧力で測定される排ガスの圧力を用いたとしても、濃度データについて遅れ時間の補正を行う事が可能である事がわかる。
したがって、大気圧の代わりに排ガスの圧力を用いる第2実施形態であっても、第1実施形態と同様に流量データと各対象ガス成分の濃度データを時間に対して同期させることができ、ほぼ同等の精度で例えば各対象ガス成分の排出量等の評価を行うことが可能となる。
その他の実施形態について説明する。
各実施形態では、排ガス分析装置が複数種類の対象ガス成分の濃度を測定するために複数の分析計を備えていたが、例えば1種類の対象ガス成分のみを測定するのであれば、分析計は1つであっても構わない。
大気圧関連値取得部が、大気圧関連値を取得する構成は各実施形態において説明したものに限られない。例えば排ガス分析装置が、インターネット等を介して気象情報を取得し、車両、車両に搭載されている排ガス分析装置、あるいは通信機器等の具備するGPSの示す位置における大気圧をデータ受付部で各濃度データ及び流量データが受け付けられるタイミングと同期させて取得するように構成されていてもよい。また、排ガス分析装置が、例えばGPSや各種センサであり、車両が存在する位置の高度を取得する高度取得部と、高度取得部で取得される高度に基づいて、前記車両が存在する位置の大気圧を推定する大気圧推定部と、をさらに備え、大気圧関連値取得部が、大気圧推定部の推定する大気圧を大気圧関連値として取得するように構成してもよい。
濃度の遅れ時間については遅れデータである算出式と、大気圧関連値に基づいて算出されるものに限られない。例えば遅れデータが、大気圧関連値と遅れ時間との組からなるテーブル形式のデータであり、応答補正部が取得された大気圧関連値に基づいて遅れデータをテーブル参照して、濃度の遅れ時間を決定するようにしてもよい。なお、遅れデータに対応する大気圧関連値での遅れ時間が存在しない場合には、遅れデータにおいて例えば取得された大気圧関連値が間に入る隣接する2つの大気圧関連値と対応する2つの遅れ時間に基づいて補間演算等により対応する遅れ時間を算出してもよい。
濃度取得部、流量取得部についてはそれぞれ分析計、流量計から直接濃度又は流量を取得し、その取得時刻に基づいて濃度データ、流量データを生成するようにしてもよい。言い換えると各分析計が共通するタイマーを参照して、測定値とその測定値が測定された時刻を対にして濃度データ又は流量データを生成するものであってもよい。
濃度に関する遅れ時間の補正は、濃度データの各時刻について個別の遅れ時間を決定してそれぞれ補正するものに限られない。例えば路上走行試験において高度変化が見込まれない場合には、所定の高度における大気圧を代表大気圧として、その代表大気圧に対応する代表遅れ時間を算出し、各時刻について一律に代表遅れ時間で補正を行うようにしてもよい。
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の一部同士の組み合わせや変形を行っても構わない。
100 :排ガス分析装置
MB :本体
X :分析計
PT :ピトー管流量計
PG :圧力計
COM :情報処理部
1 :データ受付部
2 :濃度取得部
3 :流量取得部
4 :大気圧関連値取得部
5 :遅れデータ記憶部
6 :応答補正部
7 :排出量算出部
EN :エンジン
HH :加熱管
SP :サンプリング管
MB :本体
X :分析計
PT :ピトー管流量計
PG :圧力計
COM :情報処理部
1 :データ受付部
2 :濃度取得部
3 :流量取得部
4 :大気圧関連値取得部
5 :遅れデータ記憶部
6 :応答補正部
7 :排出量算出部
EN :エンジン
HH :加熱管
SP :サンプリング管
Claims (12)
- 車両の排気管から排ガスを採取し、当該排ガスに含まれる対象ガス成分の濃度を測定する車両搭載型の排ガス分析装置であって、
対象ガス成分の濃度と、その濃度が測定された時刻とが対となった時系列データである濃度データを取得する濃度取得部と、
前記車両から排気されている排ガスの流量と、その流量が測定された時刻が対となった時系列データである流量データを取得する流量取得部と、
前記車両が存在する場所の大気圧又は当該大気圧に相関する圧力である大気圧関連値を取得する大気圧関連値取得部と、
前記車両から排気されている排ガスの流量に対する濃度の遅れ時間と、大気圧関連値との間の関係を示す遅れデータを記憶する遅れデータ記憶部と、
前記遅れデータと、取得された大気圧関連値とに基づいて、前記車両から排気されている排ガスの流量に対する濃度の遅れ時間を決定し、決定された遅れ時間に基づいて前記濃度データにおける時刻又は流量データの時刻を補正する応答補正部と、を備えた車両搭載型の排ガス分析装置。 - 前記大気圧関連値は、時系列データであり、
前記応答補正部が、前記濃度データの各時刻における遅れ時間をそれぞれ個別に決定し、決定された各遅れ時間に基づいて前記濃度データにおける各時刻を個別に補正するように構成されている請求項1記載の車両搭載型の排ガス分析装置。 - 前記遅れデータが、大気圧関連値をパラメータとする遅れ時間の算出式を示す式データである請求項1又は2いずれか一項に記載の車両搭載型の排ガス分析装置。
- 前記遅れデータが、遅れ時間と、大気圧関連値が対となったテーブル形式のデータである請求項1乃至3いずれか一項に記載の車両搭載型の排ガス分析装置。
- 前記濃度取得部が、それぞれ異なる種類の対象ガス成分の前記濃度データを複数取得するものであり、
前記応答補正部が、前記車両から排気されている排ガスの流量、及び、各対象ガス成分の濃度が同期するように各対象ガス成分の濃度データの時刻をそれぞれ補正するように構成された請求項1乃至4いずれか一項に記載の車両搭載型の排ガス分析装置。 - 大気圧を測定する大気圧センサをさらに備え、
前記大気圧関連値取得部が、前記大気圧センサの出力する圧力値を前記大気圧関連値として取得する請求項1乃至5いずれか一項に記載の車両搭載型の排ガス分析装置。 - 前記車両が存在する位置の高度を取得する高度取得部と、
前記高度取得部で取得される高度に基づいて、前記車両が存在する位置の大気圧を推定する大気圧推定部と、をさらに備え、
前記大気圧関連値取得部が、前記大気圧推定部の推定する大気圧を前記大気圧関連値として取得する請求項1乃至5いずれか一項に記載の車両搭載型の排ガス分析装置。 - 前記車両から排気されている排ガスの流量を示す前記流量データと、前記応答補正部により時刻が補正された濃度データと、に基づいて対象ガス成分の質量を算出する排出量算出部をさらに備えた請求項1乃至7いずれか一項に記載の車両搭載型の排ガス分析装置。
- 前記大気圧関連値は一定値であり、
前記応答補正部が、前記濃度データの所定の時刻における遅れ時間を決定し、決定された遅れ時間で前記濃度データにおける各時刻を補正するように構成されている請求項1記載の車両搭載型の排ガス分析装置。 - 前記車両の排気菅に取り付けられたサンプリング管に設けられたピトー管と、前記ピトー管で測定される差圧に基づいて前記サンプリング管を流れる排ガスの流量を算出する排ガス総流量算出器と、を具備するピトー管流量計をさらに備え、
前記流量取得部が、前記ピトー管流量計で測定される流量を前記車両から排気されている排ガスの流量として取得するように構成された請求項1乃至9いずれか一項に記載の車両搭載型の排ガス分析装置。 - 車両の排気管から排ガスを採取し、当該排ガスに含まれる対象ガス成分の濃度を測定する車両搭載型の排ガス分析装置に用いられる排ガス分析方法であって、
対象ガス成分の濃度と、その濃度が測定された時刻が対となった時系列データである濃度データを取得し、
前記車両から排気されている排ガスの流量と、その流量が測定された時刻が対となった時系列データである流量データを取得し、
前記車両が存在する場所の大気圧又は当該大気圧に相関する圧力である大気圧関連値を取得し、
前記車両から排気されている排ガスの流量に対する濃度の遅れ時間と大気圧関連値との間の関係を示す遅れデータと、取得された大気圧関連値と基づいて、前記車両から排気されている排ガスの流量に対する濃度の遅れ時間を決定し、決定された遅れ時間に基づいて前記濃度データにおける時刻を補正する排ガス分析方法。 - 車両の排気管から排ガスを採取し、当該排ガスに含まれる対象ガス成分の濃度を測定する車両搭載型の排ガス分析装置に用いられるプログラムであって、
対象ガス成分の濃度と、その濃度が測定された時刻が対となった時系列データである濃度データを取得する濃度取得部と、
前記車両から排気されている排ガスの流量と、その流量が測定された時刻が対となった時系列データである流量データを取得する流量取得部と、
前記車両が存在する場所の大気圧又は当該大気圧に相関する圧力である大気圧関連値を取得する大気圧関連値取得部と、
前記車両から排気されている排ガスの流量に対する濃度の遅れ時間と、大気圧関連値との間の関係を示す遅れデータを記憶する遅れデータ記憶部と、
前記遅れデータと、取得された大気圧関連値とに基づいて、前記車両から排気されている排ガスの流量に対する濃度の遅れ時間を決定し、決定された遅れ時間に基づいて前記濃度データにおける時刻を補正する応答補正部と、としての機能をコンピュータに発揮させる排ガス分析装置用プログラム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2022122922A JP2024020048A (ja) | 2022-08-01 | 2022-08-01 | 車両搭載型の排ガス分析装置、排ガス分析方法、及び、排ガス分析装置用プログラム |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2022122922A JP2024020048A (ja) | 2022-08-01 | 2022-08-01 | 車両搭載型の排ガス分析装置、排ガス分析方法、及び、排ガス分析装置用プログラム |
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JP2022122922A Pending JP2024020048A (ja) | 2022-08-01 | 2022-08-01 | 車両搭載型の排ガス分析装置、排ガス分析方法、及び、排ガス分析装置用プログラム |
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2022
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