JP2024018265A - 建物の健全性評価方法及びシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】建物の傾斜角度の変動を監視し、外部要因との相関を基に建物の健全性を評価する方法を提供する。【解決手段】建物の健全性評価方法は、建物に設置した傾斜計測装置から単位時間ごとに前記建物の垂直に対する傾斜角度を取得し、前記傾斜角度を単位期間で追跡した角度変動データを入力とし、中間層を介して、前記単位期間の外部要因で分類した値を出力とする学習モデルを生成するニューラルネットワークが構成されたものであり、前記中間層は、前記角度変動データが前記外部要因で分類されるように、重み付けの変更を繰り返すことで機械学習され、定期的に入力された前記角度変動データを前記外部要因で分類したときに、その正答率が変化したかどうかで前記建物の健全性を評価する、ことを特徴とする。【選択図】図1

Description

特許法第30条第2項適用申請有り Trans stellar Journal Publications and Research Consultancy Private Limited,International Journal of Civil,Structural,Environmental and Infrastructure Engineering Research and Development,Vol.11,Issue 2,Dec 2021,55-64. 公益財団法人日立地区産業支援センター、産学官連携研究開発補助事業(令和3年度県北地域牽引産業・中核企業創出事業)、研究開発事例(令和4年5月21日掲載)
本発明は、中層・高層の建物の傾斜角度の変動を監視し、天気などの外部要因との相関から建物の健全性を評価する方法に関する。
マンションなどの中層・高層の建物が増加しているが、高経年化や地震の増加により、建物の健全性評価に貢献する手法が必要とされている。特許文献1に記載されているように、建物の日常の傾きデータを取得して、建物特有の継時的な温度変化が建物の傾きに与える影響を考慮した上で、建物の健全性を診断する発明も開示されている。
特許第6028119号公報
特許文献1に記載の発明は、温度変化の影響を除去した後の傾斜が閾値内にあれば健全と推測している。しかし、建物は、晴天時には日照によって午前中は東側が膨張し、午後は西側が膨張するので、1日において規則的に角度が変動する。また、曇天・雨天時には、太陽光が雲によって散乱されるので、規則的な周期運動ではなくなる。人の活動による振動なども影響するが、天気と建物の角度変動には強い相関があると考えられ、建物の健全性評価のために、天気などの気象条件が建物に及ぼす影響を解析し、実用的な監視手法を見出すことが課題となっている。
そこで、本発明は、建物の傾斜角度の変動を監視し、外部要因との相関を基に建物の健全性を評価する方法を提供することを目的とする。本発明では、温度変化の影響を除去すべき雑音と捉えるのではなく、積極的に建物の特性を示す指標として利用する。
上記の課題を解決するために、本発明である建物の健全性評価方法は、建物に設置した傾斜計測装置から単位時間ごとに前記建物の垂直に対する傾斜角度を取得し、前記傾斜角度を単位期間で追跡した角度変動データを入力とし、中間層を介して、前記単位期間の外部要因で分類した値を出力とする学習モデルを生成するニューラルネットワークが構成されたものであり、前記中間層は、前記角度変動データが前記外部要因で分類されるように、重み付けの変更を繰り返すことで機械学習され、定期的に入力された前記角度変動データを前記外部要因で分類したときに、その正答率が変化したかどうかで前記建物の健全性を評価する、ことを特徴とする。
前記建物の健全性評価方法において、前記傾斜計測装置は、傾斜計もしくは加速度センサ又はそれらの組み合わせである、ことを特徴とする。
前記建物の健全性評価方法において、前記傾斜角度は、縦方向と横方向の2次元データである、ことを特徴とする。
前記建物の健全性評価方法において、前記角度変動データは、1日ごとに前記傾斜角度の変動を追跡したものである、ことを特徴とする。
前記建物の健全性評価方法において、前記外部要因は、晴またはそれ以外の日照に基づく天気情報である、ことを特徴とする。
前記建物の健全性評価方法において、前記外部要因は、加速度センサの3軸成分を合成したベクトル値から得られる振動情報であり、前記建物が受けた振動の負荷履歴で分類する、ことを特徴とする。
本発明である建物の健全性評価システムは、前記健全性評価方法を使用して建物の健全性を評価するシステムであって、前記建物の傾斜角度を監視するために提供された傾斜計測装置と、前記傾斜計測装置から定期的にネットワークを介して送信された前記建物の角度変動データを取得して健全性を評価する学習モデルが実装されたサーバと、前記サーバとアクセス可能なユーザ端末と、を有し、前記サーバは、前記ユーザ端末が指定した外部要因で前記角度変動データを分類し、正答率が変化した場合に前記建物の異常として検知し前記ユーザ端末に送信する、ことを特徴とする。
前記健全性評価システムにおいて、前記角度変動データは、前記建物の日周運動の軌跡として継続的に蓄積されており、前記サーバは、分類の正答率の変化が続いた場合に、従前の軌跡からずれた位置の差分から異常の度合いを求める、ことを特徴とする。
前記健全性評価システムにおいて、前記角度変動データは、前記建物の日周運動の軌跡の形状とその重心を算出したものであり、前記サーバは、分類の正答率が変化したときに前記軌跡の形状及び重心の従前からのずれを可視化する、ことを特徴とする。
本発明によれば、中層・高層の建物の傾斜角度の変動を監視し、天気などの外部要因との相関を健全性評価のバロメータとして利用することで、建物の状態が何らかの要因で変化したことを検出することができる。
本発明である建物の健全性評価方法における装置の構成を示す図である。 本発明である建物の健全性評価方法の測定対象である建物を示す図である。 本発明である建物の健全性評価方法で使用する傾斜測定装置を示す図である。 本発明である建物の健全性評価方法で測定対象の建物について傾斜角度の推移を示すグラフである。 本発明である建物の健全性評価方法で測定対象の建物について1日の角度変動を示す図である。 本発明である建物の健全性評価方法で利用する機械学習を説明するための図である。 本発明である建物の健全性評価方法の流れを示すフローチャートである。 本発明である建物の健全性評価方法で異常時の原因となる例を説明する図である。 本発明である建物の健全性評価方法で異常時の原因となる例を説明する図である。 本発明である建物の健全性評価方法で異常時の原因となる例を説明する図である。 本発明である建物の健全性評価方法で異常を検出する際の解析方法を説明する図である。 本発明である建物の健全性評価方法を利用したコンピュータシステムを説明するための図である。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
まず、本発明である建物の健全性評価方法の構成について説明する。図1は、建物の健全性評価方法における装置の構成を示す図である。図2は、建物の健全性評価方法の測定対象である建物を示す図である。図3は、建物の健全性評価方法で使用する傾斜測定装置を示す図である。なお、建物に対して左右方向を横方向(X軸)、建物に対して前後方向を縦方向(Y軸)、建物に対して上下方向を高さ方向(Z軸)とする。
図1に示すように、健全性評価方法100は、構造物の損傷・劣化を診断する構造ヘルスモニタリングを行うための方法である。まず、建物200に設置した傾斜計測装置300で建物200の傾斜角度210を単位時間ごと(例えば、1時間毎や30分毎など)に測定し、単位期間(例えば、1日など)において傾斜角度210がどのように変化したか振動状況を示す角度変動データ410を作成する。
そして、通信手段400により毎日の角度変動データ410を継続的に監視しながら、AI(機械学習)を利用した学習モデル500によって、角度変動データ410を天気などの外部要因で分類したときの正答率610が大きく変わったときに評価手段600で建物200が健全か否か判断する。建物200の異常として検知した場合は、その原因を推測しても良い。
図2に示すように、建物200は、中層・高層のビル等であり、様々な外部要因により振動している。例えば、晴天時には日照によって午前中(a)は東側が膨張220し、午後(b)は西側が膨張220するので、1日において規則的に傾斜角度210が変動する。また、曇天・雨天時には、太陽光が雲によって散乱されるので、規則的な周期運動ではなくなる。その他にも、強風などの天候(気象)、地震などの災害、人の活動(人為要因)などの影響を受けて建物200は振動する。
図3に示すように、傾斜計測装置300は、建物200の傾斜角度210を測定する装置であり、加速度センサ310(図1参照)や気泡管をカメラで撮影し画像処理により角度計測を行う傾斜計320などがある。加速度センサ310としては、MEMS技術を用いてX、Y、Z軸の3方向の加速度を測定する装置などがある。加速度センサ310における計測値の平均値は、重力加速度の軸成分であり、これが傾斜角度210となる。なお、計測値の二乗平均を取れば振動データが得られる。
図3(a)に示すように、傾斜計320は、細長の密閉容器に液体と気泡330を封入することで、水平又は垂直に対する傾斜角度210を測定する水準器(水平器)である。傾斜計320の中央(基準位置)からの気泡330のズレをカメラ340等で検出すれば良い。カメラ340は、例えば、曲率半径20000mm程度の高感度の傾斜計320の画像から、0.001度程度の分解能で撮影可能なものを用いる。
建物200が縦方向に長い場合、揺れが大きく出やすい横方向に傾斜計320を設置して、横方向(X軸)の1次元データとして取得しても良い。さらに、縦方向(Y軸)のデータも取得すれば、建物200の角度変動の軌跡が得られる。
図3(b)に示すように、横方向に配置した傾斜計320aと、これと直交する縦方向に配置した傾斜計320bを組み合わせて、例えば、これらで形成される平面上(XY軸)の2次元データとして取得しても良い。なお、加速度センサ310と傾斜計320とで、応答特性、感度、誤差の影響などが異なるので、短期振動用の加速度センサ310と、長期振動用の傾斜計320のように併用しても良い。
さらに、縦方向と横方向では水平方向に変動する軌跡しか得られないが、加速度センサ310を用いることで、上下に振動する高さ方向も加えたXYZ軸の3次元データとして取得可能となる。
建物200が経年劣化や地震などで構造的な不具合が生じた場合、建物200の応答特性が変化し、学習モデル500を用いた分類の正答率610が変化する。例えば、建物200の振動自体が小さくても、外部要因との相関に基づく振動が過去の前例と比べて異なった傾向が見られれば、正答率610の低下として現れやすくなる。
本実施例では、外部要因を日照に基づく天気情報とし、1日において建物200の傾斜角度210がどのように変化していたかを示す角度変動データ410を毎日蓄積し、それを「晴」の日と、曇りや雨などの「晴以外」の日で分類する。なお、晴天、曇天、雨天など3つ以上に分類しても良い。
図4は、建物の健全性評価方法で測定対象の建物について傾斜角度の推移を示すグラフである。図5は、建物の健全性評価方法で測定対象の建物について1日の角度変動を示す図である。
図4に示すように、傾斜計320aを建物200の東から西に横方向(a)に配置し、傾斜計320bを建物200の北から南に縦方向(b)に配置して、それぞれ1週間の傾斜角度210を追跡すると、いずれも晴天時は傾斜角度210の変化が大きく、雨天時は傾斜角度210の変化が小さい。
なお、晴天時は、傾斜角度210が規則的に変動していることも分かる。建物200の傾きには、太陽の日射が影響しており、午前中は、太陽によって建物200の東側が暖められ、側壁面が膨張することで西に傾いていき、正午頃にピークを迎え、午後は、逆に建物200の西側が暖められ、徐々に傾きが東に戻っていく。
また、図5に示すように、加速度センサ310で1日における建物200の傾斜角度210を追跡したとき、晴(a)の日はX-Y座標(縦横方向)において変動が大きく、曇り(b)の日はX-Y座標(縦横方向)において変動が小さい。建物200の状態が変わらなければ、この日周運動は、建物200の構造・形状・高さ・設置場所などにより固有の軌跡を描く。
そこで、傾斜計測装置300で例えば10~30分程度の時間間隔で建物200の傾斜角度210を計測し、1日分の傾斜角度210をまとめた角度変動データ410を生成する。それを毎日収集して複数日数分となった角度変動データ410を、機械学習で晴とそれ以外に分類して学習モデル500を作成する。
図6は、建物の健全性評価方法で利用する機械学習を説明するための図である。図7は、建物の健全性評価方法の流れを示すフローチャートである。図8~図10は、建物の健全性評価方法で異常時の原因となる例を説明する図である。図11は、建物の健全性評価方法で異常を検出する際の解析方法を説明する図である。
図6に示すように、学習モデル500は、多層パーセプトロンモデルを構築して分類学習させることにより作成する。なお、分類学習モデルであれば、多層パーセプトロンモデル以外の学習モデルでも利用可能である。
パーセプトロンは、入力を線形変換する処理単位(ユニット)がネットワーク状に結合したニューラルネットワークの一種である。学習モデル500は、入力層510、中間層520、出力層530からなり、各層に複数のユニット540を備える。なお、中間層520は、複数(例えば、3つなど)の隠れ層からなっていても良い。各ユニット540は、線形変換の重み(入力の重み付け)が変化すると、ニューラルネットワークの出力も変化することから、重みを学習させることが可能である。
入力層510には、角度変動データ410を入力する。角度変動データ410を、測定時間間隔を30分ごとにX方向及びY方向の傾斜角度210を1日分集めたものとした場合、[X1,X2,・・・,X48,Y1,Y2,・・・,Y48]の96次元の配列として、数日分(例えば、1年分など)を用意する。なお、測定時間間隔を10分ごとにした場合は、288次元の配列となる。出力層530からは、[1,0]と[0,1]のワンホットベクトルの形式で出力し、晴かそれ以外(曇りや雨など)を表現すれば良い。
中間層520として複数の隠れ層(a,b,・・・)を用意し、各層のユニット540(例えば、a1~a500,b1~b500,・・・)にそれぞれ活性化関数を設定する。活性化関数は、線形な重み付け総和から出力を決定するための関数で、ReLU(ランプ関数)などを用いる。なお、ReLUは、正規化線形関数であり、入力が0以下のときは0を出力し、1以上のときはそのまま出力する。他に、活性化関数として、非線形関数であるシグモイド関数などを使用しても良い。
各ユニット540を繋ぐ矢印には重みがあり、入力層510の各入力値と各矢印の重みからa層の各ユニット540で活性化関数による計算が行われる。a層の各計算値と各矢印の重みからb層の各ユニット540で活性化関数による計算が行われ、それが繰り返されて最終的に、出力層530の各出力値が算出される。
中間層520において処理を行うごとに重みを更新していくので、繰り返し回数(例えば、最大100000回)を大きくして、誤差を小さくしていけば、機械学習の精度が向上する(例えば、許容誤差0.00001を最適化の終了条件とするなど)。その最適化手法としては、準ニュートン法を用いたlbfgs(省メモリで実現したBFGS法)や、指数移動平均を用いたadam(確率的勾配降下法)などがある。
図7に示すように、健全性評価方法100では、サンプルデータ準備S1、学習モデル作成S2、角度変動データ取得S3、学習モデルによる分類S4、異常時の報告S5などのステップを実行する。なお、途中に他のステップを設けたり、一部のステップを省略したりしても良い。学習モデル500を準備する学習段階では、S1~S4のステップ、学習モデル500を利用する運用段階では、S3~S5のステップとなる。
サンプルデータ準備S1では、建物200に設置した傾斜計測装置300から30分ごとに傾斜角度210を取得し、1日分をまとめて角度変動データ410とする。数日分の角度変動データ410を学習モデル500に送信する。
学習モデル作成S2では、入力層510、中間層520、出力層530からなる多層パーセプトロンを構築する。受信した角度変動データ410を、学習用データ(例えば、8割など)と学習結果の評価用データ(例えば、2割など)に分け、学習用データを使って多層パーセプトロンで分類学習を繰り返し、学習モデル500を作成する。
角度変動データ取得S3では、学習結果の評価時には評価用データ、運用時には定期的に傾斜計測装置300から受信した角度変動データ410を、学習モデル500に送れば良い。
学習モデルによる分類S4では、評価用データ又は角度変動データ410を学習モデル500で分類し、分類結果の正答率610を算出する。そして、学習時においては、学習用データで作成した学習モデル500を、評価用データを使用して正答率610を評価する。
なお、学習用データ8割で作成した学習モデル500を評価用データ2割で評価した場合の正答率610は91.4%であった。学習用データ7割、評価用データ3割の場合で、正答率610は94.3%、学習用データ9割、評価用データ1割の場合で、正答率610は91.4%であった。
運用時においては、定期的に傾斜計測装置300から受信している角度変動データ410を学習モデル500で分類したときの正答率610が、従前より低下したとき、天気(外部要因)と角度変動との相関が変わったとして、建物200に何らかの異常(変化)が生じたことを検出する。
異常時の報告S5では、正答率610に異常を検出した場合に、その旨を報告する。その際に、正答率610が変化した原因を推測しても良い。分類を誤ったデータについて、従前の正答データとどの程度外れているかで判断しても良い。また、風向や風速など天気以外の外部要因を、入力層510のパラメータに加えたり、出力層530の分類先に設定したりしても良いし、分類モデルを多段式にしても良い。
図8(a)に示すように、例えば、建物200の周りに何も無い状態であれば、定期的に健全性評価方法100を実施しても、正答率610の変化は生じない。しかし、建物200が老朽化すれば、曇りの日でも角度変動が大きくなり、晴に分類されることが多くなれば、正答率610も下がる。
図8(b)に示すように、例えば、建物200の周囲の土が掘削230されて地盤が弱くなると、従前よりも建物200の角度変動が大きくなることもある。建物200が劣化していなければ、角度変動が大きくても正答率610は変わらない可能性もある。地盤の弱さが建物200の健全性に影響を与えていれば、正答率610が下がることも考えられる。
図9(a)に示すように、例えば、建物200の近くで建設工事をしていれば、工事に伴う振動240を受けることもある。建物200が劣化していなければ、振動240を受けても正答率610は変わらないと考えられるが、振動240により建物200の健全性に影響が出れば、正答率610が下がることも考えられる。
図9(b)に示すように、例えば、建物200の周囲に高い建物200aが増えて遮光250されると、晴の日でも建物200への日照が少なくなることもある。晴の日でも晴以外に分類されることが多くなれば、正答率610も下がる。また、人の活動によって建物200が損傷したり、空調により気温が上昇したり、日照以外の影響で正答率610が下がる可能性がある。
図10(a)に示すように、例えば、台風などの強風260で建物200の角度変動が大きい日もある。建物200が劣化していなければ、角度変動が大きくても正答率610は変わらないこともあるが、強風260により建物200が損傷すれば、正答率610が下がることも考えられる。
図10(b)に示すように、例えば、地震270で地盤が弱くなったり、建物200が損傷したり、建物200の周囲や建物200自体の状態が変化すれば、正答率610が変わる可能性がある。
建物200の角度変動に影響する外部要因のうち天気については、1日の角度変動と相関があると考えられるので、角度変動データ410を天気で分類することで、建物200の健全性を評価し、誤答または従前の正答データから外れたデータを基に、異常が発生したと推測可能である。
壁の熱膨張や強風により建物200にたわみが生じて、一時的に大きな傾斜角度210が生じても、逆に収縮して傾斜角度210が小さくなり、始点に回帰していれば、建物200は健全性を失っていないと考えられる。一方、傾斜角度210が小さくならず、傾斜した状態が継続し、始点に回帰していなければ、建物200に異常が発生していると考えられる。
図11に示すように、傾斜計測装置300を使用して建物200のX軸方向とY軸方向の傾斜角度210を取得し、日周運動の軌跡を追跡した。なお、気象庁の気象データ取得間隔に合わせて10分間隔で取得した角度変動データ410とし、P1(X1,Y1)は、0時0分におけるX軸方向とY軸方向の傾斜角度210、P144(X144,Y144)は、23時50分におけるX軸方向とY軸方向の傾斜角度210である。
P1からP144のデータを座標平面に配置し、それらを順に繋いだ144角形について重心Gの位置を算出する。それを毎日蓄積される角度変動データ410について行う。なお、1日毎に行っても良いし、例えば1ヶ月毎にまとめて行っても良い。角度変動データ410は、座標による多次元のデータとして持っても良いし、日周運動の軌跡の形状とその重心位置のデータとして持っても良い。
同じ天気であれば、同様の日周運動となることから、軌跡の形状もほとんど変わらない状況が継続する。図10に示す強風260や地震270のときは、一時的に軌跡の形状が変わり、重心G’に位置が移動することもある。ただ、それが治まり軌跡の形状が元の状態に戻れば、正答率610にあまり影響しない。
しかし、強風260や地震270により建物200が物理的に破損等すると、軌跡の形状は元の状態に戻らない状況が継続していく。そうすると正答率610の低下として現れてくるようになる。それにより建物200に異常が発生したと推測する。
なお、軌跡の形状やその重心G’の位置の変化が現れた日を特定すれば、その日の状況から原因も推測可能となる。図11に示すように、従前の軌跡からのずれを可視化して比較しても良い。また、地震270など明らかな原因の発生時には、すぐに軌跡の形状を見て建物200の破損等のチェックに利用しても良い。
建物200の管理者は、正答率610の変化に基づき、建物200の欠損発見など詳細な診断などを行うことができる。そこで、建物200の管理者や所有者を含むユーザに対して、健全性評価方法100を利用したコンピュータシステムを提供する。
図12は、建物の健全性評価方法を利用したコンピュータシステムを説明するための図である。図12に示すように、健全性評価システム110は、ネットワーク700を介してユーザに健全性評価方法による情報提供を行う。なお、ネットワーク700は、インターネット上のサーバ710やデータベース720をクラウド化しても良い。
健全性評価方法100の提供者は、作業用端末730を使用してサーバ710に健全性評価方法100のアプリケーションソフトウェアを実装させるとともに、データベース720に学習モデル500を実装させる。ユーザは、提供者から提供された傾斜計測装置300を建物200に設置する。なお、提供者が建物200に設置しても良く、電源供給手段を備えた小型可搬式が好ましい。
傾斜計測装置300は、単位時間ごとに建物200の傾斜角度210を計測し、単位期間ごとに角度変動データ410をサーバ710に無線通信手段などを利用して送信する。サーバ710は、角度変動データ410をデータベース720に蓄積するとともに、学習モデル500に継続的に機械学習させる。
サーバ710は、定期的に角度変動データ410を受信すると、健全性評価方法100を処理するプログラムを実行して建物200の健全性を評価し、正答率610の変化により異常を検出したらその旨をユーザ端末740に送信する。
ユーザは、任意のタイミングでユーザ端末740からサーバ710にアクセスすることで、サーバ710から建物200の健全性の評価結果を受信可能である。また、ユーザ端末740からサーバ710に建物200の周囲の状況など外部要因となる可能性のある情報を送信しても良い。
健全性評価方法100は、建物200の角度変動の外部要因として日照に基づく天気情報で分類を行うが、ユーザ端末740からそれ以外の外部要因を入力して機械学習させても良い。ユーザ端末740で様々な外部要因の情報を与えておくことで、異常時の原因を推測する際の参考となる。
なお、天気情報は、気象庁などのデータをダウンロードする等して取得しても良い。風速や地震などの情報も同様である。例えば、外部要因として風速を指定することで、予め指定した閾値で角度変動データ410を分類する。風速による建物200の角度変動の傾向を見ることで、異常の原因と関係があるか評価する。
また、振動情報についても、角度変動データ410を得る以外に、1又は複数の加速度センサの3軸成分量(合成ベクトル値)から得られる振動を外部要因とし、建物が実際に受けた負荷履歴(地震など)で分類すれば、気象庁発表の震度が同じでも直下型や遠方震源の区別も可能になる。温度情報についても、日照に基づくもの以外に、季節、輻射、空調などに基づくものもあり、様々な外部要因が考えられる。
角度変動データ410は、建物200の天気ごとの日周運動の軌跡としてデータベース720に継続的に蓄積されており、例えば月単位で分類を行い正答率610の変化を確認する。正答率610の高さは問題ではなく、100%に近くなくても、ある程度の高さがあれば良い。また、一時的な正答率610の変化もあまり問題ではなく、長期的に監視する。例えば、数年間、ほぼ同じであった正答率610が急に落ちて、その状態が数ヶ月続いた場合に、建物200に異常が発生したことが疑われる。
一度、建物200に異常が生じると、その日時を境に以後の正答率610が下がった状態が継続し、連続して異常が検出される。建物200に傾斜が発生したことは、XY平面内で日周運動の軌跡で描かれる位置(大きさや形状などを含む)がずれてくることでも確認される。異常発生前(従前)の平均的な位置と、異常発生後の位置とのズレ幅(差分)から、建物200の移動方向や傾斜量が算出されて、水平方向への移動量も算出される。傾斜量や移動量から異常の度合いを判断しても良い。
本発明によれば、中層・高層の建物の傾斜角度の変動を監視し、天気などの外部要因との相関を健全性評価のバロメータとして利用することで、建物の状態が何らかの要因で変化したことを検出することができる。
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、多くの建物の学習データを蓄積して、異常時の原因推測に利用しても良い。また、傾斜計測装置を建物の複数階(各階に複数個でも良い)に設置して、階層間の歪みを検出しても良い。
例えば、1階、5階、10階に傾斜計測装置を設置して日周運動の軌跡の形状と重心の位置を追跡したときに、各階の移動ベクトルが同等であれば階層間に歪みが発生していないと考えられる。1階と5階の移動ベクトルが同等で、10階の移動ベクトルが異なっていれば、6階から10階の間に異常が発生していると推測することができる。
100:健全性評価方法
110:健全性評価システム
200:建物
210:傾斜角度
220:膨張
230:掘削
240:振動
250:遮光
260:強風
270:地震
300:傾斜計測装置
310:加速度センサ
320:傾斜計
330:気泡
340:カメラ
400:通信手段
410:角度変動データ
500:学習モデル
510:入力層
520:中間層
530:出力層
540:ユニット
600:評価手段
610:正答率
700:ネットワーク
710:サーバ
720:データベース
730:作業用端末
740:ユーザ端末

Claims (9)

  1. 建物に設置した傾斜計測装置から単位時間ごとに前記建物の垂直に対する傾斜角度を取得し、
    前記傾斜角度を単位期間で追跡した角度変動データを入力とし、中間層を介して、前記単位期間の外部要因で分類した値を出力とする学習モデルを生成するニューラルネットワークが構成されたものであり、
    前記中間層は、前記角度変動データが前記外部要因で分類されるように、重み付けの変更を繰り返すことで機械学習され、
    定期的に入力された前記角度変動データを前記外部要因で分類したときに、その正答率が変化したかどうかで前記建物の健全性を評価する、
    ことを特徴とする建物の健全性評価方法。
  2. 前記傾斜計測装置は、傾斜計もしくは加速度センサ又はそれらの組み合わせである、
    ことを特徴とする請求項1に記載の建物の健全性評価方法。
  3. 前記傾斜角度は、縦方向と横方向の2次元データである、
    ことを特徴とする請求項1に記載の建物の健全性評価方法。
  4. 前記角度変動データは、1日ごとに前記傾斜角度の変動を追跡したものである、
    ことを特徴とする請求項1に記載の建物の健全性評価方法。
  5. 前記外部要因は、晴またはそれ以外の日照に基づく天気情報である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の建物の健全性評価方法。
  6. 前記外部要因は、加速度センサの3軸成分を合成したベクトル値から得られる振動情報であり、前記建物が受けた振動の負荷履歴で分類する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の建物の健全性評価方法。
  7. 請求項1乃至6の何れか1項に記載の健全性評価方法を使用して建物の健全性を評価するシステムであって、
    前記建物の傾斜角度を監視するために提供された傾斜計測装置と、
    前記傾斜計測装置から定期的にネットワークを介して送信された前記建物の角度変動データを取得して健全性を評価する学習モデルが実装されたサーバと、
    前記サーバとアクセス可能なユーザ端末と、を有し、
    前記サーバは、前記ユーザ端末が指定した外部要因で前記角度変動データを分類し、正答率が変化した場合に前記建物の異常として検知し前記ユーザ端末に送信する、
    ことを特徴とする建物の健全性評価システム。
  8. 前記角度変動データは、前記建物の日周運動の軌跡として継続的に蓄積されており、
    前記サーバは、分類の正答率の変化が続いた場合に、従前の軌跡からずれた位置の差分から異常の度合いを求める、
    ことを特徴とする請求項7に記載の建物の健全性評価システム。
  9. 前記角度変動データは、前記建物の日周運動の軌跡の形状とその重心を算出したものであり、
    前記サーバは、分類の正答率が変化したときに前記軌跡の形状及び重心の従前からのずれを可視化する、
    ことを特徴とする請求項7に記載の建物の健全性評価システム。
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