JP2024018113A - 光センサ、及び光センサアレイ - Google Patents

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Abstract

【課題】プラズモン共鳴による光吸収効率の向上とゼーベック効果とを両立させたグラフェンの光センサを提供する。【解決手段】光センサは、基板上の絶縁膜と、前記絶縁膜の上に設けられて少なくとも一部に周期構造を有するグラフェンの受光層と、前記受光層に接続される一対の電極と、前記絶縁膜を介して前記受光層にゲート電圧を印加するゲート電極と、を有し、前記ゲート電圧は、前記受光層のゼーベック係数が50μV/K以上、かつ、光吸収効率が5%以上となる範囲に設定されている。【選択図】図5

Description

本開示は、光センサ、及び光センサアレイに関する。
近年、グラフェンを用いた新しい赤外線検出の方式が提案されている。グラフェンは炭素原子が2次元ハニカム状に配列された2次元材料である。グラフェンは特徴的なエネルギーバンド構造を有し、紫外域からテラヘルツ帯におよぶ広い波長範囲の光を吸収可能であることから、光センサの材料として研究開発が進められている(たとえば、特許文献1参照)。
グラフェンを用いた光センサの検出方式のひとつに、グラフェンの光熱電効果を用いた検出方式がある。光熱電効果は、光吸収にともなう加熱で生じる熱電効果である。グラフェンの光熱電効果を利用する場合、十分なセンサ感度を得るためにはグラフェンの光吸収効率が高いことが好ましい。しかし、グラフェンの光吸収効率は典型的には数パーセント程度であり、一般的な光センサ材料と比較して小さい。プラズモン共鳴を利用して、光熱電効果を用いたグラフェン赤外線センサの光吸収効率を向上する構造が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
特開2020-216169号公報
A. Safaei et al., Nature Communication 10, 3498 (2019)
光熱電効果を利用したグラフェンセンサで高感度を実現する場合、光吸収効率の向上とともに、ゼーベック係数を高く維持することが求められる。しかし、プラズモン共鳴による光吸収効率の向上に適したフェルミエネルギーと、高いゼーベック効果を実現するフェルミエネルギーとが一致しない。プラズモン共鳴を用いて光吸収効率を高めるには、一定以上のキャリア密度が得られるフェルミエネルギーが必要である。一方、ゼーベック効果はフェルミエネルギーの絶対値がゼロに近い領域で最大となり、そこからフェルミエネルギーの絶対値が大きくなるにつれて減少する。この理由で、プラズモン共鳴による光吸収効率とゼーベック効果とを両立させることが難しい。
一つの側面で、本開示はプラズモン共鳴による光吸収効率の向上とゼーベック効果とを両立させたグラフェンの光センサを提供する。
光センサは、基板上の絶縁膜と、前記絶縁膜の上に設けられて少なくとも一部に周期構造を有するグラフェンの受光層と、前記受光層に接続される一対の電極と、前記絶縁膜を介して前記受光層にゲート電圧を印加するゲート電極と、を有し、
前記ゲート電圧は、前記受光層のゼーベック係数が50μV/K以上、かつ、光吸収効率が5%以上となる範囲に設定されている。
プラズモン共鳴による光吸収効率の向上とゼーベック効果とを両立させたグラフェンの光センサが実現される。
実施形態の光センサの光吸収効率のシミュレーションモデルの図である。 図1のモデルで波長の関数としての光吸収効率の計算結果を示す図である。 図1のモデルでキャリア密度の関数としての光吸収効率を示す図である。 グラフェンのフェルミ準位の関数としてのゼーベック係数を示す図である。 実施形態の光センサの模式図である。 実施形態の別の光センサの模式図である。 実施形態のさらに別の光センサの模式図である。 実施形態のさらに別の光センサの模式図である。 初期ドーピングがないときのゲート電圧の関数としての光吸収効率とゼーベック係数を示す図である。 初期ドーピングがあるときのゲート電圧の関数としての光吸収効率とゼーベック係数を示す図である。 異なる初期ドーピング濃度でのゲート電圧の関数としての光吸収効率とゼーベック係数を示す図である。 異なる初期ドーピング濃度でのゲート電圧の関数としての光吸収効率とゼーベック係数を示す図である。 実施形態の光センサを用いた光センサアレイの模式図である。
実施形態の光センサの構成を説明する前に、プラズモン共鳴による光吸収効率とゼーベック係数とのトレードオフの関係を説明する。上述のように、プラズモン共鳴を用いて光吸収効率を高めるには、キャリア密度を高くできるフェルミエネルギーが必要であるが、ゼーベック効果はフェルミエネルギーの絶対値がゼロに近い領域で最大となる。そこで、プラズモン共鳴を利用した光センサでの光吸収効率と、グラフェンのゼーベック係数を計算により確認する。
図1は、実施形態の光センサの光吸収効率のシミュレーションモデルの図である。実施形態の光センサは、受光層にグラフェンを用い、かつ、プラズモン共鳴を利用する。プラズモンは、物質中のキャリアの集団的振動である。微細な周期構造をもつグラフェンに光が入射することでプラズモン共鳴が生じ、グラフェン中の自由電子が集団的に振動する。発生したプラズモンはグラフェンの周期構造に局在し、閉じ込められることで、光吸収が促進される。共鳴周波数や光吸収効率は、グラフェンのキャリア密度または電気伝導率に依存し、所望の共鳴波長や光吸収効率を得るために、キャリア密度が高いことが望まれる場合がある。通常は、グラフェンのキャリア密度はポテンシャルによって制御され、フェルミエネルギーが高いほど、キャリア密度は高くなる。
図1のモデルは、基板11上に絶縁膜12を介してグラフェンの受光層15を有する。受光層15の周期構造として、所定幅wのグラフェン層150を用いて、一定ピッチのストライプ構造を採用する。図1の座標系で、グラフェン層150の幅方向がX方向、グラフェン層150の長軸方向がY方向、積層方向がZ方向である。グラフェン層150の幅wは100nm、周期構造のピッチPを250nmとする。基板11としてシリコン(Si)基板を用いる。絶縁膜12として、厚さ20nmの酸化アルミニウム(Al)層を用いる。このシミュレーションモデルで、グラフェン層150のキャリア密度を変えて、光吸収率を計算する。
図2は、波長の関数として光吸収効率を示す。グラフェン中のキャリア密度を6.7×10E12cm-2(データa)、1.9×10E13cm-2(データb)、3.7×10E13cm-2(データc)と変える。この中で、データaのキャリア密度が最も低く、データcのキャリア密度が最も高い。データaでは、波長9.5μmに光吸収効率のピークを有するが、その吸収効率は2%程度である。後述するように、グラフェンにゲート電圧を印加することでグラフェン中のキャリア密度を増やすことができる(ゲート電圧印加によるドーピング効果)。
データbでは、データaよりもキャリア密度が高く、8μm近傍に光吸収効率のピークを有する。光吸収効率は10%近くに向上する。キャリア密度の増加によりプラズモン共鳴による光電場の振動エネルギーが大きくなるためと考えられる。データcでは、データbよりもさらにキャリア密度を高くしたことで、7.2μm近傍に光吸収効率のピークを有し、15%以上の光吸収効率が得られる。
図3は、図2のデータa、b、cに基づくキャリア密度の関数としての光吸収効率を示す。縦軸の光吸収効率は、各データのピークの値を用いている。図2と図3から、特定の波長に対する所望の光吸収効率を実現するのに適したキャリア密度があり、そのキャリア密度を実現するのに適したゲート電圧があることがわかる。
図4は、グラフェンのフェルミ準位の関数としてのゼーベック係数を示す。グラフェンのゼーベック係数Sは、下記のMottの式で近似される。
Figure 2024018113000002
ここで、Kはボルツマン定数、Tは絶対温度、eは素電荷、Eはフェルミ準位、σは電気伝導度である。図4のプロットのためにTを300Kに固定する。電気伝導度σは、下記の現象論的式で表現される。
Figure 2024018113000003
ここで、σminとΔは現象論的パラメータである。
図4と上記の2つの式によると、グラフェンのゼーベック係数の絶対値は、フェルミ準位の変化率(傾き)が1のとき、すなわちE=±Δで最大値をとり、それを超える領域で、フェルミ準位の二乗値に対して単調減少となる。典型値として、現象論的パラメータΔの値を100meVとすると、一般的にプラズモン共鳴に必要とされる0.5eV乃至1.0eVのフェルミ準位において、グラフェンのゼーベック係数は最大値の1/4乃至1/2程度の値となる。
グラフェンにおけるプラズモン共鳴を利用するために適切なフェルミ準位を設定する場合、高い光吸収効率が実現される一方で、グラフェンのゼーベック係数は最適値よりも小さくなり、効率的な熱電変換を阻害する原因となる。実施形態では、プラズモン共鳴による光吸収率と、ゼーベック効果を両立させる適切なポテンシャル条件、すなわち適切なゲート電圧を設定して、効率的な熱電変換を実現する。具体的には、フェルミ準位が0.05eV以上、0.25eV以下の範囲、換言すると、ゼーベック係数が50μV/K以上75μV/K以下の範囲で、好適なキャリア密度を実現するゲート電圧を設定する。
<光センサの構成例1>
図5は、実施形態の光センサ10Aの模式図である。図5の(A)は上面図、(B)は(A)のI-Iラインに沿った断面模式図である。光センサ10Aは、基板11上に設けられた絶縁膜12と、絶縁膜12の上に設けられたグラフェンの受光層15Aと、受光層15Aに接続される一対の電極13、及び14と、絶縁膜12を介して受光層15Aにゲート電圧を印加するゲート電極17とを有する。グラフェンの受光層15Aは、少なくとも一部に周期構造を有する。ゲート電圧は、後述するように、グラフェンの受光層15Aのゼーベック係数が50μV/K以上75μV/K以下、かつ、波長7μm以上12μm以下の光に対して5%以上の光吸収効率となる範囲に設定されている。
基板11は、ゲート構成に応じて、Si、Geなどの半導体基板、不純物がドープされて導電性を有する基板、アンドープの半絶縁性基板上に酸化膜が形成された基板などを用いることができる。絶縁膜12として、SiO、Si、SiON、Al、BN、HfO、La、ZrO、Ta等を用いてもよい。実施例では、Si基板上に、厚さ10nm以上、30nm以下のAlの絶縁膜12を形成する。これをSiO2の等価換算膜厚にすると4nm以上、12nm以下の膜厚である。
図5の構成例では、受光層15Aの周期構造は、ストライプ状のグラフェン層150Aによって形成される。ストライプ状のグラフェン層150Aとして、電極13と14の間に延設される複数のグラフェンリボンを用いてもよい。グラフェンリボンの幅は数十nmから数百nmであり、グラフェンリボンの周期(ピッチ)はグラフェンリボンの幅の1.5倍から2.5倍程度である。グラフェン層150の幅とピッチは、赤外光の入射によってプラズモン共鳴を誘起する寸法に設定され、たとえば、幅150nmのグラフェンリボンを、150nm間隔(300nmピッチ)で配置する。
図1の(B)の断面図で、図示の便宜上、グラフェン層150Aは一層のように描かれているが、実際は2層以上のグラフェンリボンが積層されている。複数のグラフェン層150Aを重ねることで、単層のグラフェンよりも光吸収率が向上する。具体的には、受光層15が同じポテンシャルの場合、複数層のグラフェン層を重ねることで、単層のグラフェンと比較して、キャリアの面密度、すなわち二次元電気伝導度が増加する。
光センサ10Aは、グラフェンの光熱電効果を用いて入射光量を検知する。光熱電効果は、光吸収に伴う加熱により生じる熱電効果である。グラフェン層150Aに光が入射すると、グラフェン中の電子が光を吸収してエネルギーを得る。光吸収により電子が得たエネルギーは、電子間の散乱によって他の電子と共有されて熱化する。電子間でエネルギーが熱化する時間と、格子原子とのエネルギー共有にかかる時間とは異なる。電子間での熱化の方が格子原子間の熱化よりも速いため、光吸収の直後に電子温度が格子温度よりも高い状況になる。一方、金属の電極13、及び14において、電極の電子温度は格子温度と同程度であり、熱拡散によってグラフェン層150Aの内部に温度分布が形成される。
光センサ10Aは、グラフェン層150Aの面内方向にポテンシャル分布を生じさせるために、電極13と電極14の間で非対称の構成を有する。図5では、電極13と14を異なる材料で形成することで、非対称性を実現する。たとえば、電極13と14の一方を金(Au)で形成し、他方をクロム(Cr)で形成する。AuとCrの仕事関数の違いによって、Auとグラフェン層150Aの界面と、Crとグラフェン層150Aの界面で、エネルギーバンドの勾配が非対称になり、ポテンシャル分布が生じる。ゼーベック係数はグラフェンのポテンシャルに応じて変化するため、グラフェン層150A内のポテンシャル分布によって、ゼーベック係数の面内分布が形成される。電子温度分布と、ゼーベック係数分布が同時に存在することで、ゼーベック効果により起電力が形成される。
光センサ10Aの動作時は、ゲート電極17に適切なゲート電圧を印加して、グラフェン層150Aの電位を制御する。ゲート電極17は、絶縁膜12の一部に開口を形成し、露出したシリコンの基板11上に金属膜を形成することで得られる。ゲート電圧は、ゲート電極17からシリコン基板11と絶縁膜12を介して、グラフェン層150Aに印加される。電極13と14の間に所定の読み出し電圧を印加して、入射赤外光の吸収によりグラフェン層150Aに生じる電気信号の変化を読み出す。
<光センサの構成例2>
図6は、実施形態の別の光センサ10Bの模式図である。図6の(A)は上面図、(B)は(A)のII-IIラインに沿った断面模式図である。光センサ10Bは、基板11上に設けられた絶縁膜12と、絶縁膜12の上に設けられたグラフェンの受光層15Bと、受光層15Bに接続される一対の電極13、及び14と、絶縁膜12を介して受光層15Bにゲート電圧を印加するゲート電極17とを有する。基板11はシリコン基板を用い、絶縁膜12として、厚さが10nm以上、30nm以下のAl層を形成する。図5と同様に、電極13と電極14を異なる種類の金属材料で形成して、非対称の構成とする。
グラフェンの受光層15Bは、その少なくとも一部に周期構造を有する。受光層15Bの周期構造として、グラフェン層150Bに所定の間隔で孔155が形成されている。孔155の径と間隔は、入射赤外光によってプラズモン共鳴を誘起できる寸法に設定されている。一例として、孔155の径を400nm、孔155の中心間距離が600nmとなるように、六方格子状に配列する。孔155はプラズマエッチング、フォトリソグラフィ法等で形成され得る。
孔155の周期的な配列により、光の入射によりグラフェン層150Bにプラズモン共鳴が誘発されて、光吸収効率が向上する。ゲート電極17に、プラズモン共鳴による光吸収効率と、ゼーベック効果とを両立させるゲート電圧を印加することで、光センサ10Bの光吸収効率が最適化される。
<光センサの構成例3>
図7は、実施形態のさらに別の光センサ10Cの模式図である。光センサ10Cは、基板11上に設けられた絶縁膜12と、絶縁膜12の上に設けられたグラフェンの受光層15Cと、受光層15Cに接続される一対の電極13-1、及び13-2と、絶縁膜12を介して受光層15Cにゲート電圧を印加するゲート電極17と、を有する。基板11はシリコン基板を用い、絶縁膜12として、厚さが10nm以上、30nm以下のAl層を形成する。
光センサ10Cでは、一対の電極13-1と13-2を同じ金属材料で形成し、光センサ10Cの非対称性を、グラフェン層150Cのパターニングで実現する。グラフェンの受光層15Cは、電極13-1側の第1領域151Cと、電極13-2側の第2領域1512Cを有する。第1領域151Cは周期構造を有し、第2領域152Cは周期構造を有しない。第1領域151Cの周期構造は、たとえばストライプパターンであり、グラフェン層150Cの各ストライプが電極13-1から電極13-2に向かう方向に延設されている。ストライプの幅とピッチは、入射赤外光によってプラズモン共鳴が誘起される寸法に設定されている。たとえば、ストライプの幅は100nm~200nm、ピッチはストライプの幅の1.5倍から2.5倍である。
グラフェン層150Cの非対称性により、受光層15Cにポテンシャル分布が生じる。また、第1領域151Cと電極13-1との界面と、第2領域152Cと電極13-2の界面で温度分布が生じる。光入射による起電力の変化が電気信号として電極13-1と13-2から読み出される。
<光センサの構成例4>
図8は、実施形態のさらに別の光センサ10Dの模式図である。光センサ10Dは、基板11上に設けられた絶縁膜12と、絶縁膜12の上に設けられたグラフェンの受光層15Dと、受光層15Dに接続される一対の電極13-1、及び13-2と、絶縁膜12を介して受光層15Cにゲート電圧を印加するゲート電極17と、を有する。基板11はシリコン基板を用い、絶縁膜12として、厚さが10nm以上、30nm以下のAl層を形成する。
光センサ10Dでは、一対の電極13-1と13-2を同じ金属材料で形成し、光センサ10Cの非対称性を、グラフェン層150Dのパターニングで実現する。グラフェンの受光層15Dは、電極13-1側の第1領域151Dと、電極13-2側の第2領域1512Dを有する。第1領域151Dは周期構造を有し、第2領域152Dは周期構造を有しない。第1領域151Dの周期構造は、所定の間隔で配置される孔155によって実現される。孔155の径と中心間距離は、入射赤外光によってプラズモン共鳴が誘起される寸法に設定されている。たとえば、孔155の径は300nm~500nm、中心間距離は、孔155の径の1.5倍から2.5倍の範囲で設定されている。
グラフェン層150Dの非対称性により、受光層15Dにポテンシャル分布が生じる。また、第1領域151Dと電極13-1との界面と、第2領域152Dと電極13-2の界面で温度分布が生じる。光入射による起電力の変化が電気信号として電極13-1と13-2から読み出される。
<ゲート電圧の検討>
プラズモン共鳴による光吸収率の向上とゼーベック効果とを両立できるゲート電圧の範囲を検討する。プラズモン共鳴を誘起できるキャリア密度を実現しつつ、より大きなゼーベック係数を持たせることができれば、高い光吸収効率と熱電変換効率を達成できる。ゼーベック係数が高いと、グラフェンに生じた温度差が効率的に電圧に変換されるからである。
図9から図12は、ゲート電圧の関数としての光吸収効率とゼーベック係数を、それぞれ初期ドーピング量を変えて示す。シミュレーションモデルとして、図1と同じモデルを使用する。Si基板上に、厚さ20nmのAlの絶縁膜を介して、ストライプ状のグラフェンを配置する。グラフェンの各ストライプの幅wを100nm、ピッチPを250nmとする。グラフェン層の数を単層から12層まで変える。各グラフェン層でキャリアは均等に分布しているものとする。グラフェンには、ゲート電圧の印加によるドーピングの他に、大気への曝露や絶縁膜との接触などにより、一定程度の不純物がドープされているものとする。このゲート電圧印加以外による不純物のドープを、「初期ドーピング」と呼ぶ。
図9は、初期ドーピングがないときのゲート電圧の関数としての光吸収効率とゼーベック係数を示す。初期ドーピングがないときとは、不純物量が完全にゼロを意味するのではなく、フェルミ準位がほぼ0eVとみなせる程度に少ない場合をいう。
図9の(A)は、ゲート電圧の関数としての光吸収効率を示す。ゲート電圧を、2.5V、7.0V、13.5Vと変化させる。グラフェンの各層のキャリア分布は同じと仮定しており、ゲート電圧の印加により、グラフェンの各層に同程度の電子が誘起される。光が入射したときに、グラフェン層の自由電子の集団的な振動(プラズモン共鳴)が誘起され、グラフェンの周期構造に閉じ込められるが、キャリア数が不十分なときは十分な光吸収効率が得られない。図9の(A)を参照すると、初期ドーピングがない場合、ゲート電圧を5.0V以上にすることで、5%以上の光吸収効率が得られる。10.0Vのゲート電圧の印加で光吸収効率は12%に増加し、13.5Vの印加で、光吸収効率は15%を超える。
図9の(B)は、ゲート電圧の関数としてのゼーベック係数(μV/K)を示す。グラフェンの層数にかかわらず、ゼーベック係数の変化の傾向は同じであり、ゲート電圧の増加につれて、ゼーベック係数は減少する。ただし、グラフェンの層数を増やすことで、単層と比較して、ゼーベック係数を高く維持することができる。
図9の(A)で5%以上の光吸収効率が得られるゲート電圧5.0Vで、グラフェンの総数が2層または3層のときにゼーベック係数は若干低減するが、ゼーベック係数は50μV/K以上に維持される。グラフェンの層数が8層以上では、ゼーベック係数が70μV/Kの近傍に維持される。
ゲート電圧を10.0Vにすると、グラフェン層を4層以上とすることで、ゼーベック係数は50μV/K以上に維持され、グラフェン層を8層以上にすることで、ゼーベック係数を60μV/K以上に維持できる。ゲート電圧が13.5Vのときは、グラフェン層が7層以上のときにゼーベック係数は50μV/K以上に維持され、グラフェンの層数を10層以上でゼーベック係数は60μV/K前後に維持される。
図10は、初期ドーピングが7.4×10E11cm-2の条件で、ゲート電圧の関数としての光吸収効率とゼーベック係数を示す。この初期ドーピングは、単層グラフェンのフェルミ準位0.1eVに相当する。図10の(A)を参照すると、初期ドーピングを行っているため、ゲート電圧が4.0Vで光吸収効率5%が実現され、10.0Vの印加で光吸収効率が12%以上になり、13.0Vの印加で15%以上の光吸収効率が達成される。
図10の(B)を参照すると、ゲート電圧を7.0Vまで上げても3層以上のグラフェン層で50μV/K以上のゼーベック係数が維持され、10.0Vで6層以上のグラフェン層で50μV/K以上のゼーベック係数が維持される。ゲート電圧が13.5Vのときは、10層以上のグラフェン層でゼーベック係数が60μV/K前後に維持される。
図11は、初期ドーピングが3.0×10E12cm-2の条件で、ゲート電圧の関数としての光吸収効率とゼーベック係数を示す。この初期ドーピングは、単層グラフェンのフェルミ準位0.2eVに相当する。図11の(A)を参照すると、初期ドーピングを行っているため、ゲート電圧が3.0Vで光吸収効率5%が実現され、10Vの印加で光吸収効率が14%になり、13.5Vの印加で16%を超える。
図11の(B)を参照すると、ゲート電圧を6.0Vまで上げても3層以上のグラフェン層で50μV/K以上のゼーベック係数が維持され、10.0Vで6層以上のグラフェン層で50μV/K以上のゼーベック係数が維持される。ゲート電圧が13.5Vのときは、10層以上のグラフェン層でゼーベック係数が60μV/K前後に維持される。
図12は、初期ドーピングが6.7×10E12cm-2の条件で、ゲート電圧の関数としての光吸収効率とゼーベック係数を示す。この初期ドーピングは、単層グラフェンのフェルミ準位0.3eVに相当する。図12の(A)を参照すると、初期ドーピングを行っているため、ゲート電圧が2.5Vで光吸収効率5%が実現され、11.5Vの印加で光吸収効率が15%を超える。
図12の(B)を参照すると、本来のフェルミ準位が高いため、4.5Vのゲート電圧を印加で、3層以上のグラフェン層で50μV/K以上のゼーベック係数が維持され、10.0Vで6層以上のグラフェン層で50μV/K以上のゼーベック係数が維持される。ゲート電圧が11.5Vのときは、10層以上のグラフェン層でゼーベック係数が60μV/K前後に維持される。
図9から図12の計算結果から、どのゲート電圧においても、単層グラフェンより複数層のグラフェンを用いることで、ゼーベック係数が向上することがわかる。ただし、グラフェンの層数を無制限に増やせばよいわけではなく、層数が多すぎると、かえってゼーベック係数が低下する場合がある。計算結果では、5.0V以下の定電圧条件で、層数が9層のときにゼーベック係数のピークが得られる。ゼーベック係数向上の観点から、好ましいグラフェンの層数として、2層以上、12層以下に設定してもよい。5V以上のゲート電圧で50μV/Kのゼーベック係数を維持する観点から、グラフェンの層数を5層以上12層以下に設定してもよい。現実の系では、印加されるゲート電圧は絶縁破壊電圧の制限を受ける。厚さ20nmのAl絶縁膜(等価換算膜厚で8nm)の条件では、ゲート電圧は10.0V以下であることが望ましい。
光吸収効率とゼーベック係数を合わせたパラメータとして、光吸収効率とゼーベック係数の積(光吸収効率×ゼーベック係数)を導入すると、図9から図12の計算条件で、このパラメータはゲート電圧の大きいほど、大きくなる。好ましいゲート電圧の設定は絶縁破壊が生じない範囲で大きな電圧である。ゲート絶縁膜として、10nm以上、30nm以下の厚さのAl膜(等価換算膜厚で4nm以上12nm以下)を用いるときに、絶縁破壊が起きない範囲として、ゲート電圧を10V以下にするのが望ましい。
光吸収効率とゼーベック係数を個別にみると、5%以上の光吸収効率を実現でき、かつ、5層以下のグラフェン受光層でゼーベック係数の絶対値を50μV/K以上に維持できるゲート電圧の絶対値の範囲として、2.5以上、10V以下が望ましい。ゲート電圧の下限は、グラフェン層への初期ドーピングの量に応じて調整可能である、グラフェン層への初期ドーピングがないときは、ゲート電圧を5.0V以上、10.0V以下に設定するのが望ましい。
以上から、等価換算膜厚が4nm以上12nm以下の絶縁膜12上に設けられた周期構造のグラフェン層で、ゼーベック係数が50μV/K以上、かつ、5%以上の光吸収効率が得られる範囲のゲート電圧として、2.5V以上、10V以下が好ましい。
光センサ10の構成として、図5から図8のいずれの構成を採用してもよい。上記のゲート電圧を設定することで、プラズモン共鳴による光吸収率の向上と、ゼーベック効果とを両立させることができる。
図13は、複数の光センサ10をアレイ状に配置した光センサアレイ100の模式図である。光センサアレイ100は二次元状に配置される複数の光センサ10を含み、個々の光センサ10で画素を構成してもよい。たとえば、シリコンウェーハの全面に絶縁膜を形成し、絶縁膜上の所定の位置に所定の周期構造を有するグラフェン層を形成する。図13の例では、図5と同様のストライプパターンのグラフェン層を用いている。グラフェン層は、機械的剥離法、転写法などで、絶縁膜の上に配置してもよい。あるいは、絶縁膜上に触媒金属をスパッタリングで堆積し、CVD法により絶縁膜上に直接、グラフェンを成長してもよい。このとき、触媒金属を周期構造の形状にパターニングしておくことで、所定のパターン形状のグラフェン層が得られる。
2層以上のグラフェンを積層した後に、絶縁膜とグラフェンの密着性を高めるために、150~200℃の温度でアニールしてもよい。グラフェン層に接続される一対の電極を形成する。ゲート電極は、基板の裏面に設けられるバックゲートであってもよい。バックゲートは、基板の裏面で、各光センサ10のグラフェン層と対応する位置に設けられる。各光センサ10のゲート電圧が適切に設定されているので、光センサアレイ100でも、プラズモン共鳴による光吸収効率と、ゼーベック効果による熱電変換効率(感度)とを両立させることができる。
以上、特定の例に基づいて本開示を説明してきたが、本開示は、上述した例に限定されない。電極13-1、13-2は、Au、Ti、Pd、Cr、Pt等の良導体で形成される。電極13と14に異なる材料を用いて非対称性を実現する場合は、これら良導体の中で適切な仕事関数の組み合わせを選択してもよい。電極13-1と13-2の間、あるいは電極13と電極14の間に印加される読出し用のバイアス電圧は、たとえば、0.1Vから1.0Vであってもよい。ゲート電極17を、基板11上の絶縁膜12と同じ面内に設ける替わりに、基板の裏面に設けてもよい。あるいは、絶縁性の基板を用いて、グラフェン層150の下方で、基板11と絶縁膜12の間にゲート電極を設けてもよい。グラフェン層150の周期構造は円形の孔155に限定されず、六角形、八角形等の多角形や楕円形の開口であってもよい。光センサ10で光センサアレイを作製するときに、図13のような二次元配列に替えて、一次元方向に光センサ10を配列したリニアアレイであってもよい。
実施形態の光センサは、物質の熱輻射光、すなわち赤外光を検出する赤外線センサや、夜間の暗視サーモグラフィなどに適用可能である。光センサアレイ100をCMOS構造の信号読出し回路と組み合わせて、赤外線検出装置を構成してもよい。そのような赤外線検出装置に、撮像レンズ、フィルタ、A/Dコンバータ、プロセッサ等を組み合わせて撮像装置を構成してもよい。光センサでは、所望の共鳴波長で所定の光吸収効率を得るためのキャリア密度を、より低いフェルミ準位(すなわち、0eVに近いポテンシャル条件)で実現する。これにより、プラズモン共鳴を誘起できるキャリア密度の条件を満たしつつ、より大きなゼーベック係数を達成することができ、光吸収効率と熱電変換効率を両立できる。
10、10A、10B、10C、10D 光センサ
11 基板
12 絶縁膜
13、13-1、13-2、14 電極
15A、15B、15C、15D 受光層
150A、150B、150C、150D グラフェン層
151C、151D 第1領域
152C、152D 第2領域
17 ゲート電極

Claims (8)

  1. 基板上の絶縁膜と、
    前記絶縁膜の上に設けられて少なくとも一部に周期構造を有するグラフェンの受光層と、
    前記受光層に接続される一対の電極と、
    前記絶縁膜を介して前記受光層にゲート電圧を印加するゲート電極と、
    を有し、
    前記ゲート電圧は、前記受光層のゼーベック係数が50μV/K以上、かつ、光吸収効率が5%以上となる範囲に設定されている、
    光センサ。
  2. 前記絶縁膜の等価換算膜厚は4nm以上、12nm以下であり、
    前記ゲート電圧は、2.5V以上、10V以下である、
    請求項1に記載の光センサ。
  3. 前記グラフェンに、0.1eV以上、0.3eV以下の初期ドーピングがされている、
    請求項2に記載の光センサ。
  4. 前記受光層は、2以上、12以下のグラフェン層の積層を有する、
    請求項1に記載の光センサ。
  5. 前記一対の電極の一方から他方に向かう方向に非対称な構造を有する、
    請求項1に記載の光センサ。
  6. 前記受光層は、前記一対の電極の一方の電極側の第1領域と、他方の電極側の第2領域とを有し、
    前記第1領域と前記第2領域のいずれか一方に周期的な孔構造またはストライプ構造が形成され、前記第1領域と前記第2領域の他方に、前記周期的な孔構造またはストライプ構造が形成されていない、
    請求項5に記載の光センサ。
  7. 前記受光層の全体に前記周期構造が設けられ、
    前記一対の電極は異なる導電材料で形成されている、
    請求項5に記載の光センサ。
  8. 請求項1に記載の光センサが複数アレイ状に配置された光センサアレイ。
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