JP2024017020A - 2重シールドtig溶接装置 - Google Patents
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Abstract
Description
本開示は、非消耗電極の周囲にシールドガスを供給するガスノズルを有する2重シールドTIG溶接装置に関する。
非消耗電極を備えた溶接トーチを用いて行なう溶接では、通常、タングステンで形成された電極と被溶接物との間にアークを発生させ、そのアークの熱で被溶接物を溶融させる。TIG(Tungsten Inert Gas)溶接法では、ガスノズルと電極との間にシールドガスを流す。
このようなTIG溶接の従来技術として、高電流と低電流をトーチスイッチ操作によって切り替える溶接方法が、特開2003-62667号公報(特許文献1)に開示されている。このような溶接の手法は、クレータ反復動作と呼ばれる。クレータ反復動作は、たとえば、厚板の開先にギャップがある継ぎ手などにおいて開先内のギャップを埋める溶接に用いられる。クレータ反復動作では、溶接ワークを溶かしつつ溶加棒を挿入し肉を盛るときに高電流を流し、金属溶融部を冷却するときに低電流に切り替えるという操作を繰り返す。
また、特開2020-15048号公報(特許文献2)には、タングステン電極とワークとの間に発生したアークの周囲にシールドガスを放出するシールドノズルと、シールドノズルの内側に設けられ、シールドガスよりも高速でガスを噴射させる狭窄ノズルとを備えるTIG溶接用トーチが開示されている。このような2重ノズルを搭載するトーチを用いる溶接もTIG溶接法の一種である。2重ノズルのうちの内側のノズルに流れるガス(以下、インナーガスと呼称)は、ノズルの断面積が小さいため、通常のTIG溶接と比較して少ないガス流量でありながら速いガスの流速が得られる。速いガスの流速によって、ガスの冷却作用によりアークが緊縮され、集中したアークが得られる。
さて、特開2020-15048号公報(特許文献2)に開示された2重のシールドガスノズルを用いるTIG溶接では、インナーガスによりアークの集中性を向上させることができるが、アークの集中により直下方向へのアーク力が高くなる。すなわち、アークのエネルギー密度が高くなった分トーチ進行方向下向きに溶融池に働く力が強くなる。ここで、高電流と低電流を繰り返し加えるクレータ反復動作を行った場合に開先部の溶融金属を凝固させるのは低電流時である。しかし、低電流時には、一重のシールドガスノズルを用いるTIG溶接と比較した場合、同一電流であってもインナーガスによって溶融池に働く力が大きくなるので溶融金属の凝固が遅くなるとともに溶け落ちが発生しやすくなる。
また、アークの硬直性は電流が大きい方が高くなるため、低電流時にはアークの硬直性が弱まり、同じインナーガス流量では大電流時よりもアークに乱れが生じる場合がある。
本開示は、このような課題を解決するものであって、溶け落ちのリスクが低減されるとともに、アークの乱れが抑制された2重シールドTIG溶接が可能な2重シールドTIG溶接装置を提供することを目的とする。
本開示は、2重シールドTIG溶接装置に関する。2重シールドTIG溶接装置は、非消耗電極と、ガスノズルとを有する溶接トーチと、非消耗電極に溶接電流を供給する電源回路と、ガスノズルに供給するガスの流量を調整する流量調整装置と、電源回路と流量調整装置とを制御する制御装置とを備える。ガスノズルは、非消耗電極の径方向外側に配置された筒状の第1ノズルと、第1ノズルの径方向外側に配置された筒状の第2ノズルとを含む。流量調整装置は、第1不活性ガスを第1ノズルと非消耗電極との間の第1ガス流路に供給し、第2不活性ガスを第1ノズルと第2ノズルとの間の第2ガス流路に供給するように構成される。制御装置は、溶接開始指示に応じて、第1不活性ガスおよび第2不活性ガスのガスノズルへの供給を開始するとともに、溶接電流の非消耗電極への供給を開始するように電源回路および流量調整装置を制御する。制御装置は、溶接停止指示に応じて、溶接電流の非消耗電極への供給を停止するとともに、第1不活性ガスおよび第2不活性ガスのガスノズルへの供給を停止するように電源回路および流量調整装置を制御する。制御装置は、溶接電流の供給開始から供給停止までの間に、予め定めた本溶接電流を本溶接電流よりも小さいクレータ電流に切り替える場合には、第1不活性ガスの流量を第1流量から、第1流量よりも少ない第2流量に切り替えるように、電源回路および流量調整装置を制御する。
本開示の2重シールドTIG溶接装置によれば、溶接時の溶け落ちが抑制され、アークの乱れも低減されるので、溶接の作業性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、本実施の形態の2重シールドTIG溶接装置の構成図である。図1に示す2重シールドTIG溶接装置1000は、溶接トーチ1と、電源回路21と、制御装置(CPU22)とを備える。
溶接トーチ1は、非消耗電極11とガスノズル12とを有する。電源回路21は、非消耗電極11に溶接電流を供給する。流量調整装置3は、ガスノズル12に供給するガスの流量を調整する。制御装置(CPU22)は、電源回路21と流量調整装置3とを制御する。
2重シールドTIG溶接装置1000は、溶接開始指示および溶接停止指示を制御装置(CPU22)に与えるためのトーチスイッチ24をさらに備える。トーチスイッチ24は、溶接トーチ1に設けられ手で操作するものであっても、溶接トーチ1と別に設けられる足踏み式のものであっても良い。
電源回路21と、制御装置(CPU22)と、操作パネル23は、直流溶接電源2に搭載されている。制御装置(CPU22)は、作業者が操作するトーチスイッチ24からのON/OFF信号と操作パネル23の設定とに基づいて、電源回路21と流量調整装置3とを制御する。
電源回路21は、インバータ回路101と、整流回路102と、平滑コンデンサ104と、カップリング105と、高周波回路103とを含む。直流溶接電源2のマイナス端子106は、ケーブルによって非消耗電極11に接続される。直流溶接電源2のプラス端子107は、ケーブルによって母材6に接続される。
図1に示す2重シールドTIG溶接装置1000は、2重ガスシールドのTIG溶接装置である。非消耗電極11は、タングステン電極である。
ガスノズル12は、筒状の第1ノズル13と、筒状の第2ノズル14とを含む。第1ノズル13は、非消耗電極11の径方向外側に配置される。第2ノズル14は、第1ノズル13の径方向外側に配置される。
ガスノズル12は、タングステン電極を中心として同心円上に2つノズルが配置された2重ガスシールドノズルである。溶接期間中は、内側に流れるシールドガス(以下、インナーガスと呼称)は、流速(=流量/配管内断面積)が速くなるようインナーガス流量が3~6(L/min)程度に設定される。通常のTIG溶接と比較して、配管内断面積が小さいので少ないガス流量でありながら、速いガスの流速が得られる。ガス流速を速くする効果は、ガスの冷却作用によりアークが緊縮することであり、集中したアークが得られる。また、外側のシールドガス(以下、アウターガスと呼称)は、通常のTIG溶接で用いられるようにアークがシールドガス雰囲気下に入るように5~10(L/min)程度に設定される。
ガスノズル12には、それぞれ独立したガスボンベ4,5およびガス配管からアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などの不活性なアウターガスおよびインナーガスが供給される。流量調整装置3は、第1不活性ガス(インナーガス)を第1ノズル13と非消耗電極11との間の第1ガス流路G1に供給し、第2不活性ガス(アウターガス)を第1ノズル13と第2ノズル14との間の第2ガス流路G2に供給するように構成される。
第1不活性ガスと第2不活性ガスは同じガスであっても良いし、異なるガスであっても良い。たとえば、図1に示されるように第1不活性ガスと第2不活性ガスをいずれもArガスとしても良い。またたとえば、第1不活性ガス(インナーガス)としてHeガスを用い、第2不活性ガス(アウターガス)としてArガスを用いるように、二種類のガスを組み合わせて用いても良い。
流量調整装置3は、ガス流量調整器31と、電磁弁32と、ガス圧力調整器33と、マスフローコントローラ34とを含む。
ガス流量調整器31は、ガスボンベ4から供給される第2不活性ガス(アウターガス)の流量Foを設定する。たとえば、作業者が操作する流量バルブによって、ガス流量調整器31はガス流量Foを増減することができる。電磁弁32は、制御装置(CPU22)からの制御信号に応じてガス流量調整器31から第2ガス流路G2への第2不活性ガス(アウターガス)の供給と遮断とを切り替える。
ガス圧力調整器33は、第1不活性ガス(インナーガス)の圧力を設定する。
マスフローコントローラ34は、制御装置(CPU22)からの制御信号に応じてガス圧力調整器33から第1ガス流路G1への第1不活性ガス(インナーガス)の流量Fiを増減させる。マスフローコントローラ34は、流体の質量流量を計測し流量制御を行なう機器であり、高精度な流量計測および制御を要求されるプロセスに用いられる。
図1に示すようにアウターガスの流量Foは、ガス流量調整器31(残量メータ、フローメータを内蔵)で一定となるよう設定されている。電磁弁32を介してアウターガスの供給のON/OFFのみをCPU22が制御する。一方、インナーガスについては、ガス圧力調整器33の後にマスフローコントローラ34が設けられており、CPU22からの信号により、ガス供給のON/OFF制御とガス流量Fiの調整が可能である。
通常のTIG溶接では、流量を手動で変えるので、溶接電流が変化するタイミングに合わせて流量を変えることは難しい。本実施の形態では、インナーガスに対してマスフローコントローラ34を導入してガス流量を溶接電流が変化するタイミングに同期させて制御する。これによって、2重シールドTIG溶接におけるガス流量を細かく調整することができ、低電流時における溶融池の溶け落ちおよびアークの乱れを抑制することができる。
以下に、波形図を参照して高電流と低電流を繰り返すクレータ反復動作時のガス流量の制御について説明する。図2は、反復動作時の溶接電流とシールドガスの制御を説明するための波形図である。図2の横軸は経過時間を示し、上から順にトーチスイッチの開閉信号、溶接電流、アウターガス流量、インナーガス流量の各時間変化を示す。
まず、作業者が溶接装置のトーチスイッチ24をONにすると、まず溶接開始前に予め不活性ガスを流すプリフロー期間Tpが設定される(たとえば1秒)。
図2に示すように、制御装置(CPU22)は、溶接開始指示に応じて、第1時刻t1において第1不活性ガス(インナーガス)および第2不活性ガス(アウターガス)のガスノズル12への供給を開始する。このときのインナーガス流量Fiは、予め定められた流量Fisである。
制御装置(CPU22)はまた、溶接開始指示に応じて、溶接電流の非消耗電極11への供給を開始するように電源回路21および流量調整装置3を制御する。すなわち、その後制御装置(CPU22)は、第1時刻t1から予め定められたプリフロー期間Tp経過後の第2時刻t2において、予め定めた初期電流Isが非消耗電極11に対して供給開始されるように電源回路21および流量調整装置3を制御する。
さらに、制御装置(CPU22)は、溶接停止指示に応じて、溶接電流の非消耗電極11への供給を停止するとともに、第1不活性ガス(インナーガス)および第2不活性ガス(アウターガス)のガスノズル12への供給を停止するように電源回路21および流量調整装置3を制御する。溶接停止指示は、作業者がトーチスイッチ24をONにした後に、予め定めた操作判定時間Ttよりも長い時間Teが経過してからOFFにすることによって与えられる。図2では、時刻t7において制御装置(CPU22)は、溶接終了指示を受けたと認識する。
制御装置(CPU22)は、時刻t2における溶接電流の供給開始から時刻t7における供給停止までの間に、予め定めた本溶接電流Iwを本溶接電流Iwよりも小さいクレータ電流Icに切り替える場合には、第1不活性ガス(インナーガス)の流量を第1流量Fiwから、第1流量Fiwよりも少ない第2流量Ficに切り替えるように、電源回路21および流量調整装置3を制御する。
時刻t4,t6に示されているように、制御装置(CPU22)は、溶接電流として本溶接電流Iwが供給されており、かつ、トーチスイッチ24のON時間が判定時間Ttよりも短い特定のスイッチ操作(以下、トグル操作と称する)を検出した場合には、溶接電流を本溶接電流Iwからクレータ電流Icに切り替えるように電源回路21を制御するとともに、第1不活性ガス(インナーガス)の流量を第1流量Fiwから第2流量Ficに切り替えるように流量調整装置3を制御する。
時刻t5に示されているように、制御装置(CPU22)は、溶接電流としてクレータ電流Icが供給されており、かつ、トグル操作を検出した場合には、溶接電流をクレータ電流Icから本溶接電流Iwに切り替えるように電源回路21を制御するとともに、第1不活性ガス(インナーガス)の流量を第2流量Ficから第1流量Fiwに切り替えるように流量調整装置3を制御する。
以下に時刻t3以降の制御について順を追って説明する。時刻t3において、作業者がトーチスイッチ24をOFFにすると、制御装置(CPU22)は、アークを発生させ溶接電流Iwが流れるように電源回路21を制御するとともに、インナーガス流量を流量Fisから流量Fiwに増加させるように流量調整装置3を制御する。
続いて、作業者がトーチスイッチ24をONにしてから予め定めた操作判定時間Ttが経過する以前にOFFにする(トグル操作)。これに応じて時刻t4において、制御装置(CPU22)は、溶接電流Iwからクレータ電流Icに電流を減少させるとともに、インナーガス流量を流量Fiwから流量Ficに減少させるように、電源回路21および流量調整装置3を制御する。インナーガス流量を減少させることによって、低電流時において溶融池の凝固が促進され溶け落ちが防止される。
その後、作業者がトーチスイッチ24をONにした後に、予め定めた操作判定時間Ttが経過する以前にOFFにする(トグル操作)。すると、時刻t5において、制御装置(CPU22)は、クレータ電流Icから溶接電流Iwに電流を増加させるとともに、インナーガス流量を流量FicからFiwに増加させるように、電源回路21および流量調整装置3を制御する。
同様にして、作業者がトーチスイッチ24をONにした後に、予め定めた操作判定時間Ttが経過する以前にOFFにする(トグル操作)。これに応じて時刻t6において、制御装置(CPU22)は、溶接電流Iwからクレータ電流Icに電流を減少させるとともに、インナーガス流量を流量FiwからFicに減少させるように、電源回路21および流量調整装置3を制御する。インナーガス流量を減少させることによって、低電流時において溶融池の凝固が促進され溶け落ちが防止される。
最後に、作業者がトーチスイッチ24をONにした後に、予め定めた操作判定時間Ttよりも長い時間Teが経過してからOFFにする。これに応じて時刻t7において制御装置(CPU22)は、溶接終了指示を受けたと認識する。そして、制御装置(CPU22)は、クレータ電流Icの供給を停止するように電源回路21を制御する。このとき、溶接電流がゼロとなった時刻t7からその後予め設定されたアフターフロー期間Ta(たとえば7秒)中は、アウターガスおよびインナーガスを流し続けるように、制御装置(CPU22)は、流量調整装置3を制御する。
制御装置(CPU22)は、時刻t7から予め定められたアフターフロー期間Ta経過後の時刻t8において、第1不活性ガス(インナーガス)および第2不活性ガス(アウターガス)のガスノズル12への供給を停止するように流量調整装置3を制御する。
図2に示した溶接電流およびガス流量は、たとえば、以下のように設定することができる。
初期電流Is=40~80A
本電流Iw=50~150A
クレータ電流Ic=5~30A
初期条件インナーガス流量Fis=0.5~4L/min
本条件インナーガス流量Fiw=3~6L/min
クレータ条件インナーガス流量Fic=0.5~4L/min
図3は、制御装置が実行するガス流量の制御について説明するためのフローチャートである。
初期電流Is=40~80A
本電流Iw=50~150A
クレータ電流Ic=5~30A
初期条件インナーガス流量Fis=0.5~4L/min
本条件インナーガス流量Fiw=3~6L/min
クレータ条件インナーガス流量Fic=0.5~4L/min
図3は、制御装置が実行するガス流量の制御について説明するためのフローチャートである。
最初に、ステップS1において、制御装置(CPU22)は、トーチスイッチ24がOFF状態からON状態に変化するか否かを監視する。トーチスイッチ24がOFF状態からON状態に変化した場合(S1でYES)、ステップS2において、制御装置(CPU22)は、溶接開始処理を実行する。溶接開始処理は、図2の時刻t1~t2に示すようにプリフロー期間において、アウターガスFoおよびインナーガスFisを流し、プリフロー期間Tp経過後に溶接電流Isを流すように、電源回路21と流量調整装置3とを制御することである。
その後、ステップS3において、制御装置(CPU22)は、トーチスイッチ24がON状態からOFF状態に変化するか否かを監視する。トーチスイッチ24の状態変化が検出されない場合、ステップS2の溶接開始処理が継続される。
ステップS3において、トーチスイッチ24のONからOFFへの状態変化が検出された場合(S3でYES)、ステップS4において、制御装置(CPU22)は、溶接電流とインナーガス流量を溶接条件1に設定する。溶接条件1は溶接電流I=Iw、かつインナーガス流量Fi=Fiwである。
その後、ステップS5において、制御装置(CPU22)は、トーチスイッチ24がトグル操作されたか否かを判断する。トグル操作は、作業者がトーチスイッチ24をON状態としてから、予め定めた操作判定時間Ttが経過する以前にOFF状態に戻す操作であり、これにより、溶接電流がIwであったときはIcに変化し、溶接電流がIcであったときはIwに変化するように電源回路21が制御される。また、溶接電流が変更された場合には、これに対応するようにインナーガス流量も変更される。
トーチスイッチ24の操作がトグル操作ではない場合(S5でNO)、ステップS6において、制御装置(CPU22)は、トーチスイッチ24がエンド操作されたか否かを判断する。エンド操作は、作業者がトーチスイッチ24をON状態としてから、予め定めた操作判定時間Ttよりも長い時間Teが経過してからOFF状態に戻す操作であり、これにより、溶接電流の供給を停止するように電源回路21が制御される。
ステップS6において、トーチスイッチ24の操作がエンド操作でない場合(S6でNO)、ステップS4に処理が戻り、制御装置(CPU22)は、溶接条件1の溶接電流およびシールドガスの供給を継続するように、電源回路21および流量調整装置3を制御する。
ステップS5において、トーチスイッチ24のトグル操作が検出された場合(S5でYES)、ステップS7において、制御装置(CPU22)は、溶接電流とインナーガス流量を溶接条件2に設定する。溶接条件2は溶接電流I=Ic、かつインナーガス流量Fi=Ficである。
その後、ステップS8において、制御装置(CPU22)は、トーチスイッチ24がトグル操作されたか否かを判断する。トーチスイッチ24の操作がトグル操作であった場合(S8でYES)、ステップS4に処理が戻り、制御装置(CPU22)は、再び溶接電流およびインナーガス流量が溶接条件1になるように、電源回路21および流量調整装置3を制御する。一方で、トーチスイッチ24の操作がトグル操作ではない場合(S8でNO)、ステップS9において、制御装置(CPU22)は、トーチスイッチ24がエンド操作されたか否かを判断する。
ステップS9において、トーチスイッチ24の操作がエンド操作でない場合(S9でNO)、ステップS7に処理が戻り、制御装置(CPU22)は、溶接条件2の溶接電流およびシールドガスの供給を継続するように、電源回路21および流量調整装置3を制御する。
ステップS6または、ステップS9においてトーチスイッチ24のエンド操作が検出された場合には、制御装置(CPU22)は、ステップS10において溶接終了処理を実行する。
溶接終了処理は、図2の時刻t7~t8に示すように、溶接電流の供給を停止し、その後アフターフロー期間Taが経過してからアウターガスとインナーガスの供給を停止するように、電源回路21および流量調整装置3を制御する処理である。
以上説明したように、本実施の形態の2重シールドTIG溶接装置によれば、2重シールドTIG溶接のクレータ反復動作において、トーチ操作による電流切り替えに応じてインナーガス流量を自動的に変化させることができる。これにより、溶接の溶け落ちが防止されかつ溶接時の作業性を向上させることができる。
[変形例]
図2に示した例では、トーチスイッチ操作を伴うクレータ反復機能を説明した。しかし、トーチスイッチ操作を伴わない低周期(0.1~2Hz程度)のTIGパルス溶接においてもシールドガスの流量制御を適用することができる。
図2に示した例では、トーチスイッチ操作を伴うクレータ反復機能を説明した。しかし、トーチスイッチ操作を伴わない低周期(0.1~2Hz程度)のTIGパルス溶接においてもシールドガスの流量制御を適用することができる。
図4は、変形例の溶接電流とシールドガスの制御を説明するための波形図である。図2の横軸は経過時間を示し、上から順にトーチスイッチの開閉信号、溶接電流、アウターガス流量、インナーガス流量の各時間変化を示す。
図4に示した波形図では、トーチスイッチ24は、時刻t1でOFF状態からON状態に変化し、時刻t1~t7ではON状態に維持され、時刻t7においてON状態からOFF状態に変化している。溶接電流、アウターガス流量、インナーガス流量の変化については、図2に示した例と同じである。
制御装置(CPU22)は、溶接電流の供給開始(時刻t2)から供給停止(時刻t7)までの間に、予め定められた周期(Tw+Tc)で溶接電流を本溶接電流Iwとクレータ電流Icを交互に流すように電源回路21を制御するとともに、溶接電流の切り替えタイミングに同期させて第1流量Fiwと第2流量Ficとの間で第1不活性ガス(インナーガス)の流量を交互に切り替えるように流量調整装置3を制御する。
図2のように、作業者がトーチスイッチ24のトグル操作によって、溶接電流の切り替えの指示を与えなくても、本溶接期間Tw、クレータ溶接期間Tcを制御装置(CPU22)に記憶させておくことによって、溶接電流とインナーガス流量の制御を同様に行なうことが可能である。
このようにすれば、パルス溶接においても、通常のTIG溶接よりもリップルの明瞭なうろこビードが形成でき、溶接品質が向上する。
以上説明したように、本実施の形態では、2重ノズルでシールドガスを供給するTIG溶接のクレータ反復動作において、電流の増加減と連動してマスフローメータがインナーガス流量を増加減する。これにより、電流切り替えに同期させてインナーガス流量を変化させることができ、溶接時の作業性を向上させることができる。
上述した実施の形態では、手動溶接の場合について説明したが、溶接ロボットを使用する場合にも適用することができる。溶接ロボットを使用する場合には、初期電流、本電流、クレータ電流等の溶接電流の設定・制御並びに第1不活性ガスおよび第2不活性ガスの流量の設定をロボット制御装置によって行なう。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 溶接トーチ、2 直流溶接電源、3 流量調整装置、11 非消耗電極、12 ガスノズル、13 第1ノズル、14 第2ノズル、21 電源回路、24 トーチスイッチ、31 ガス流量調整器、32 電磁弁、33 ガス圧力調整器、34 マスフローコントローラ、1000 2重シールドTIG溶接装置、G1,G2 流路。
Claims (5)
- 非消耗電極と、ガスノズルとを有する溶接トーチと、
前記非消耗電極に溶接電流を供給する電源回路と、
前記ガスノズルに供給するガスの流量を調整する流量調整装置と、
前記電源回路と前記流量調整装置とを制御する制御装置とを備え、
前記ガスノズルは、
前記非消耗電極の径方向外側に配置された筒状の第1ノズルと、
前記第1ノズルの径方向外側に配置された筒状の第2ノズルとを含み、
前記流量調整装置は、第1不活性ガスを前記第1ノズルと前記非消耗電極との間の第1ガス流路に供給し、第2不活性ガスを前記第1ノズルと前記第2ノズルとの間の第2ガス流路に供給するように構成され、
前記制御装置は、溶接開始指示に応じて、前記第1不活性ガスおよび前記第2不活性ガスの前記ガスノズルへの供給を開始するとともに、前記溶接電流の前記非消耗電極への供給を開始するように前記電源回路および前記流量調整装置を制御し、
前記制御装置は、溶接停止指示に応じて、前記溶接電流の前記非消耗電極への供給を停止するとともに、前記第1不活性ガスおよび前記第2不活性ガスの前記ガスノズルへの供給を停止するように前記電源回路および前記流量調整装置を制御し、
前記制御装置は、前記溶接電流の供給開始から供給停止までの間に、予め定めた本溶接電流を前記本溶接電流よりも小さいクレータ電流に切り替える場合には、前記第1不活性ガスの流量を第1流量から、前記第1流量よりも少ない第2流量に切り替えるように、前記電源回路および前記流量調整装置を制御する、2重シールドTIG溶接装置。 - ユーザが前記溶接開始指示、前記溶接停止指示を前記制御装置に与えるためのトーチスイッチをさらに備え、
前記制御装置は、前記溶接電流として前記本溶接電流が供給されており、かつ、前記トーチスイッチのON時間が判定時間よりも短い特定のスイッチ操作を検出した場合には、前記溶接電流を前記本溶接電流から前記クレータ電流に切り替えるように前記電源回路を制御するとともに、前記第1不活性ガスの流量を前記第1流量から前記第2流量に切り替えるように前記流量調整装置を制御する、請求項1に記載の2重シールドTIG溶接装置。 - 前記制御装置は、前記溶接電流として前記クレータ電流が供給されており、かつ、前記特定のスイッチ操作を検出した場合には、前記溶接電流を前記クレータ電流から前記本溶接電流に切り替えるように前記電源回路を制御するとともに、前記第1不活性ガスの流量を前記第2流量から前記第1流量に切り替えるように前記流量調整装置を制御する、請求項2に記載の2重シールドTIG溶接装置。
- 前記制御装置は、前記溶接電流の供給開始から供給停止までの間に、予め定められた周期で溶接電流を前記本溶接電流と前記クレータ電流を交互に流すように前記電源回路を制御するとともに、前記溶接電流の切り替えタイミングに同期させて前記第1流量と前記第2流量との間で前記第1不活性ガスの流量を交互に切り替えるように前記流量調整装置を制御する、請求項1に記載の2重シールドTIG溶接装置。
- 前記流量調整装置は、
前記第2不活性ガスの流量を設定するガス流量調整器と、
前記制御装置からの制御信号に応じて前記ガス流量調整器から前記第2ガス流路への前記第2不活性ガスの供給と遮断とを切り替える電磁弁と、
前記第1不活性ガスの圧力を設定するガス圧力調整器と、
前記制御装置からの制御信号に応じて前記ガス圧力調整器から前記第1ガス流路への前記第1不活性ガスの流量を増減させるマスフローコントローラとを含む、請求項1に記載の2重シールドTIG溶接装置。
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