JP2024013999A - チタン焼結材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造コストを低減できるチタン焼結材の製造方法を提供する。【解決手段】チタン焼結材の製造方法は、粉末全体に対する水素含有量が0.2~2.0質量%となるように調製したチタン系出発原料粉末を用意する工程と、チタン系出発原料粉末を非密封タイプのモールドに充填する工程と、モールド内のチタン系出発原料粉末に圧力を加えないで加熱焼結してチタン焼結材を得る工程とを備える。【選択図】なし

Description

この発明は、粉末冶金法でチタン焼結材を得るチタン焼結材の製造方法に関するものである。
チタンは、鋼の約1/2の低比重を有する軽量素材であり、耐腐食性や強度に優れた特性を有することから、軽量化ニーズが強い航空機、鉄道車両、二輪車、自動車などの部品や、家電製品や建築用部材等に利用されている。また、優れた耐腐食性の観点から、医療用素材としても利用されている。
チタン素材は、例えば特開2017-88908号公報(特許文献1)に記載されているように、チタン粉末を出発原料とする粉末冶金法で製造されている。この特許文献1に開示されたチタン焼結材の製造方法は、下記の工程を備える。
a)チタン成分粉末と、チタン以外の金属の窒化物粒子とを混合する工程。
b)混合粉末に圧縮力を加えて成形し圧縮固化体を作製する工程。
c)圧縮成形によって得られた圧縮成形体を酸素を含まない真空雰囲気で加熱焼結する工程。
出発原料としてのチタン粉末(純チタン粉末またはチタン合金粉末)は、鉄系材料やアルミニウム系材料と比較して高価である。
特許第3459342号公報(特許文献2)には、チタンまたはチタン合金の水素脆性を利用して、チタンまたはチタン合金を水素化させたのち任意の粒度に粉砕して水素化チタン粉末とする方法、これを真空加熱により脱水素してチタン粉末に転化させる水素化脱水素化法が記載されている。
水素化処理したままの水素化チタン(TiH)化合物を含む高濃度水素含有チタン粉末(以後、これを「高水素チタン粉末」または「水素化チタン粉末」と記す)は、脱水素化処理されたチタン粉末に比べて市場価格は低い。粒度10μm以下の水素化微細チタン粉末は、比表面積が大きく、粉砕時の加工熱で空気中の酸素を多く取り込んでいるため、通常、粒度10μm以下の水素化チタン粉末は合金原料として利用されていない。
特開2020-63509号公報(特許文献3)は、通常廃棄されている粒度10μm以下の水素化チタン粉末を積極的に活用することにより、生産コストを削減しつつ、高強度で高靭性のチタン焼結素材を提供する方法を提案している。具体的には、特許文献3に開示されたチタン焼結材の製造方法は、以下の工程を備える。
d)微細な水素化チタン粉末と、より大きな粒度のチタン粉末とを混合する工程。
e)混合粉末を圧縮成形して圧縮固化体を得る工程。
f)圧縮固化体に脱水素化処理を施した後に真空下で焼結する工程。
特許文献1や特許文献3等に記載されたチタン焼結材の製造方法は、出発原料の混合粉末をプレス機で加圧成形して圧縮固化体を作製し、その後、圧縮固化体を真空下で焼結している。上記の方法とは異なるチタン焼結材の製造方法として、チタン粉末又は混合粉末を熱間等方圧加圧法(HIP)や、冷間等方圧加圧法(CIP)で固め、その固化体を真空下で焼結する方法もある。
Zhigang Zak Fangらの論文「Powder metallurgy of titanium-past, present and future」(INTERNATIONAL MATERIALS REVIEW, 2017)(非特許文献1)には、水素化チタン粉末を使用することの利点が記載されている。具体的には、プレス成形過程で脆い水素化チタン粉末が粉砕されて細かい粒子となり、それらがチタン粉末間の隙間を埋めることで成形体の密度を向上させることが記載されている。また、チタン粉末中の水素が高速拡散し、焼結性を高めることも記載されている。
非特許文献1に記載されたチタン焼結材の製造方法においても、水素化チタン粉末を含む混合粉末を熱間等方圧加圧法(HIP)や冷間等方圧加圧法(CIP)で圧縮固化体とし、この圧縮固化体を真空下で焼結するようにしている。
特開2017-88908号公報 特許第3459342号公報 特開2020-63509号公報
Zhigang Zak Fangらの論文「Powder metallurgy of titanium-past, present and future」(INTERNATIONAL MATERIALS REVIEW, 2017)
従来のチタン焼結材の製造方法で共通しているのは、原料粉末を圧縮して圧縮固化体を作製し、その圧縮固化体を真空雰囲気中で加熱焼結することである。原料粉末を圧縮するのは、粉末間に存在する空孔を減少させて粉末間の接触面積を高めて焼結性を向上させるためである。また、真空雰囲気中で焼結するのは焼結体中に酸素を取り込まないようにするためである。
従来製法の課題は、チタン粉末又は原料粉末の圧縮固化体を作製するために、プレス機やHIP設備やCIP設備等が必要であり、設備費が増大することである。また、酸素の混入を抑制するためのバッチ式真空焼結設備が必要となり、生産性を低下させ、ひいては製造コストを上昇させる。
本発明の目的は、製造コストを低減できるチタン焼結材の製造方法を提供することである。
本発明に従ったチタン焼結材の製造方法は、下記の工程を備える。
a)粉末全体に対する水素含有量が0.2~2.0質量%となるように調製したチタン系出発原料粉末を用意する工程。
b)上記チタン系出発原料粉末を非密封タイプのモールドに充填する工程。
c)モールド内のチタン系出発原料粉末に圧力を加えないで加熱焼結してチタン焼結材を得る工程。
チタン系出発原料粉末は、1種類の粉末でも良いし、複数種類の粉末の混合粉末でも良い。また本明細書で使用する用語としての「チタン系」および「チタン」は、実質的に金属元素としてチタンのみからなる純チタン、およびチタンを金属元素の主成分として含むチタン合金の両者を包含する用語である。
好ましい一つの実施形態では、チタン系出発原料粉末は、水素を意図的に含有させた高水素チタン粉末と、水素を不可避的に含有する低水素チタン粉末との混合粉末である。
上記の好ましい実施形態において、高水素チタン粉末は、水素化処理したままの水素化チタン(TiH)化合物を含む高濃度水素含有チタン粉末(水素化チタン粉末)であり、低水素チタン粉末は、水素化処理していないか、水素化処理後に脱水素化処理したチタン粉末である。水素化処理していない低水素チタン粉末の一例は、アトマイズ粉末である。
水素化チタン粉末中の水素含有量は、一般的には2.0~4.0質量%であり、水素を不可避的に含有する低水素チタン粉末中の水素含有量は、一般的には0.01~0.08質量%である。この場合、好ましくは、混合粉末全体に対する高水素チタン粉末の量は、10~55質量%である。
他の実施形態では、水素化チタン粉末中の水素含有量を0.8~1.5質量%になるように調製している。低水素チタン粉末中の水素含有量は0.01~0.08質量%である。この場合、好ましくは、混合粉末全体に対する高水素チタン粉末の量は、20質量%以上100質量%未満である。
さらに他の実施形態では、チタン系出発原料粉末は、水素含有量を意図的に0.8~1.5質量%となるように調製した高水素チタン粉末のみからなる。
本明細書中に記載したいくつかの実施形態では、チタン系出発原料粉末は、実質的に金属元素としてチタンのみを含む純チタンからなる。この場合、チタン系出発原料粉末が高水素チタン粉末と低水素チタン粉末との混合粉末であれば、高水素チタン粉末および低水素チタン粉末の両者が純チタンからなる。
本明細書中に記載した他の実施形態では、高水素チタン粉末および低水素チタン粉末の少なくともいずれか一方が、チタンを主成分として含むチタン合金からなる。高水素チタン粉末および低水素チタン粉末の両者がチタン合金からなるものであってもよい。
モールド内のチタン系出発原料粉末に圧力を加えないで行う加熱焼結は、出発原料粉末中に多く含まれるTiHから分解した水素の高速拡散を利用して行うものであるので、焼結前に圧縮固化体を作製しなくても、隣接する粉末粒子の界面での固相焼結が良好に進行し、焼結性が向上する。
モールド内のチタン系出発原料粉末の加熱焼結を真空雰囲気中で行なってもよいし、非真空雰囲気中で行なってもよい。出発原料粉末の内部から発生する水素ガスのシールド効果によりチタン材中への酸素の混入を抑制するので、非真空雰囲気中であっても良好な焼結を行うことができる。
前記モールド内のチタン系出発原料粉末の加熱焼結は、例えば以下のことを含む。
d)常温から出発原料粉末中の水素をチタンから解離させる中間温度帯まで昇温すること。
e)チタン系出発原料粉末を上記中間温度帯で保持して水素をチタンから解離させ、解離した水素の高速拡散性を利用して粉末間の焼結を促進させること。
f)チタン系出発原料粉末を、中間温度帯から、チタン系出発原料粉末の焼結を行う高温温度帯まで昇温すること。
g)チタン系出発原料粉末を高温温度帯で保持して焼結を完了させること。
h)高温温度帯から、焼結完了後の焼結体を常温まで冷却すること。
上記の中間温度帯は、好ましくは550℃~850℃の範囲内にある。また、高温温度帯は、850~1400℃の範囲内にある。一つの実施形態では、中間温度帯は、低温側中間温度帯および高温側中間温度帯を有し、チタン系出発原料粉末は、低温側中間温度帯で保持された後に高温側中間温度帯にまで昇温され、高温側中間温度帯で保持された後に上記の高温温度帯にまで昇温される。
チタン系出発原料粉末が高水素チタン粉末と低水素チタン粉末との混合粉末である場合、低水素チタン粉末は、典型的には、脱水素化チタン粉末またはアトマイズ粉末である。
1つの実施形態では、高水素チタン粉末および低水素チタン粉末は、実質的に金属元素としてチタンのみを含む純チタンからなる。この実施形態の場合、上記の混合粉末にさらに微量の鉄(Fe)粉を添加してもよい。
他の実施形態では、高水素チタン粉末および低水素チタン粉末の少なくともいずれか一方は、チタンを主成分として含むチタン合金からなる。チタン合金として、例えば64チタン合金(Ti-6Al-4V)が適用される。
本発明によれば、粉末全体に対する水素含有量が0.2~2.0質量%となるように調製したチタン系出発原料粉末を非密封タイプのモールドに入れ、加圧することなく、モールド内で加熱焼結すれば、分解した水素の高速拡散を利用して粉末粒子間の固相焼結性を高めるので、従来のようなプレス機や、CIP設備や、HIP設備は不要となり、設備費を大幅に削減できる。
モールドに充填された焼結前の原料粉末と、焼結後の焼結材とを示す写真である。 焼結後の焼結材の縦断面の上面部と、中央部と、底面部とを示す写真である。 異なった昇温速度で焼結した2つの焼結材を示す写真である。 検証4に記載の条件で焼結した焼結材の写真である。 非密封タイプのモールドの構造の例を示す図である。 焼結後の焼結材の組織を示す写真である。 表3における試料No.105の混合粉末の走査型電子顕微鏡写真である。 試料No.101(比較例)および試料No.104(実施例)の焼結体の光学顕微鏡による組織写真である。 試料No.111の混合粉末の走査型電子顕微鏡写真である。 試料No.16の焼結後の焼結体を示す写真である。 TiHの分解によって発生した水素ガスのシールド効果を説明するための図である。
本願発明者らは、チタン粉末中に水素が過剰に含まれている場合、水素の高速拡散性を利用して緻密な固相焼結体が得られるのではないかと考え、種々の実験を行った。データを示して後に詳細に説明するが、結論として、出発原料としてのチタン粉末中の水素含有量を適正な範囲に調整し、非密封タイプのモールドに粉末を入れて適正な条件で加熱焼結すれば、TiHの分解によって発生した水素がチタン粉末粒子間で高速に拡散し、それに伴ってチタン成分も粉末粒子間で拡散して固相焼結を促進することを見出した。その際に、モールド内のチタン系出発原料粉末に圧力を加えなくても緻密な焼結材が得られることも見出した。加熱処理中にチタン粉末の内部から発生する水素ガスのシールド効果によりチタン材中への酸素の混入も抑制するので、非真空雰囲気中での焼結が可能であることも見出した。その結果、従来のバッチ式真空焼結設備ではなく、連続式非真空焼結設備が利用できることから、焼結工程に係る費用を低減できるといった経済的利点がある。
水素の高速拡散を利用してチタン焼結材を得るための重要な要素として、以下の点を挙げることができる。
a)非密封タイプのモールドの使用
b)高水素チタン粉末の利用
c)高水素チタン粉末と低水素チタン粉末との配合比
d)チタン粉末中からの急激な水素の放出を抑制するための緩やかな昇温速度
e)TiHを十分に分解させるための中間温度での保持
f)十分な焼結を行うための高温温度での保持
[小型モールドを用いた粉末充填焼結法の検証基礎実験]
[検証1:上部開放アルミナ製モールドの使用]
縦横寸法が120mm×120mmの上部開放アルミナ製モールドに水素化処理したままの高水素チタン粉末のみからなるチタン系出発原料粉末を充填し、加圧することなく真空雰囲気中で常温から1000℃まで昇温し、1000℃で24時間保持して焼結した後、炉内で冷却した。
市場で入手できる水素化処理したままの高水素チタン粉末中の水素含有量は、一般的には2.0~4.0質量%である。
比較のために、チタン系出発原料粉末を、水素化処理後に脱水素化処理した低水素チタン粉末のみからなるものも準備し、上記の高水素チタン粉末のみからなる出発原料粉末の加熱焼結条件と同じ条件で、低水素チタン粉末のみからなる出発原料粉末を焼結した。市場で入手できる低水素チタン粉末中の水素含有量は、一般的には0.01~0.08質量%である。
その結果、高水素チタン粉末のみからなる出発原料粉末を充填したアルミナ製モールドは、破損していた。他方、低水素チタン粉末のみからなる出発原料粉末を充填したアルミナ製モールドは、破損していなかった。この理由は、高水素チタン粉末のみからなる出発原料粉末を使用した場合には、昇温過程および焼結過程で、焼結進行体が、TiHの分解および水素の放出により膨張してアルミナ製モールドを破壊したからと思われる。
上記の検証から、焼結進行体の急激な体積膨張を避けるためにはチタン系出発原料粉末中の水素含有量を適正な範囲になるように調製することが望ましいこと、高水素チタン粉末中の水素含有量が2.0%以上である場合には、高水素チタン粉末の比率を100%とするのではなく、高水素チタン粉末と低水素チタン粉末とを混合した出発原料粉末とすることが望ましいこと、TiHの急激な分解および水素の急激な放出を抑制するために急激な温度上昇や加熱を避けることが望ましいこと、焼結進行体の体積膨張に耐え得る高強度なモールド(例えば、ステンレス製)の使用が望ましいことを見出した。
[検証2:水素の高速拡散による焼結促進]
出発原料として、純チタン粉末と水素化処理した水素化純チタン粉末とを準備し、混合粉末全体に対する水素化純チタン粉末の量が30質量%となるように調製した。純チタン粉末は水素化処理後に脱水素化処理した純チタン粉末であり、粉末中の水素含有量は0.01~0.08質量%の範囲内であった。水素化処理した水素化純チタン粉末中の水素含有量は、2.0~4.0質量%の範囲内であった。
小型モールドとして、上部開放の金属製モールド(50mm×70mm×10mmH)を用意した。
混合粉末を小型モールドに充填し、加圧することなく真空雰囲気中で常温から600℃の中間温度にまで昇温し、600℃で約1.5時間保持し、その後1000℃の高温温度まで昇温し、1000℃で約2時間保持した後に炉内で冷却した。中間温度の600℃で約1.5時間保持したのは、この温度域でTiHを十分に分解し、解離した水素の高速拡散性を有効に利用するためである。
原料粉末(混合粉末)中の水素含有量は1.105質量%、酸素含有量は0.457質量%、窒素含有量は0.109質量%であり、焼結後の焼結材の水素含有量は0.009質量%、酸素含有量は0.409質量%、窒素含有量は0.028質量%であった。
図1は、モールドに充填された焼結前の原料粉末と、焼結後の焼結材とを示す写真である。焼結前の原料粉末全体に対する水素化純チタン粉末の量は30質量%であり、原料粉末全体における水素含有量は1.105質量%であった。
焼結後の焼結材とモールドの内側面との間には隙間が存在しており、原料粉末が焼結処理中に収縮して焼結材になったことが認められる。収縮率は14.3%であった。また、焼結材の1cm当たりの重量は3.85gであり、相対密度は86.5%であった。
図2は、焼結後の焼結材の縦断面の上面部と、中央部と、底面部とを示す写真である。中央部では空孔が見られず、密度が高いことが認められる。これは、TiHの分解によって発生した水素が粉末粒子間で高速に拡散し、チタン粒子間の固相焼結を促進したからであると認めることができる。
上面部および底面部では、空孔が多く見られるが、これは水素ガスが外部に抜けるときに形成されたものと認められる。焼結処理時の昇温速度が高すぎると、水素が原料粉末外に抜け出す量が多くなり、水素の高速拡散を利用した焼結に支障をきたすと思われる。
[検証3:昇温速度]
図3は、異なった昇温速度で焼結した2つの焼結材を示す写真である。出発原料は、共に、低水素純チタン粉末と水素化処理したままの高水素純チタン粉末とを混合したものであり、混合粉末全体に対する高水素純チタン粉末の量を30質量%となるように調製した。混合粉末全体に対する水素含有量は0.8質量%であった。写真(a)は、加熱焼結処理時の昇温速度を50℃/minで作製したチタン焼結材であり、写真(b)は昇温速度を20℃/minで作製したチタン焼結材である。2つの写真を比較すれば明らかなように、昇温速度が高いほど亀裂が発生し易くなることが認められる。
[検証4:モールドを用いた粉末充填焼結法で得た焼結材の強度特性]
低水素純チタン粉末と高水素純チタン粉末とを混合し、混合粉末全体に対する高水素純チタン粉末の量を40質量%に調製して出発原料とした。出発原料粉末をモールドに充填し、加圧することなく真空雰囲気中で常温から昇温速度10~20℃/minで600℃まで昇温し、600℃で1.5時間保持し、その後、昇温速度10~20℃/minで1000℃まで昇温し、1000℃で2時間保持して焼結させた後に、炉内冷却して焼結材を得た。出発原料粉末全体の水素含有量は1.13質量%であった。
図4は、上記の条件で焼結した焼結材の写真である。写真からも明らかなように、焼結材は内部亀裂の発生の無いものであり、その相対密度は89.5%であった。
上記のようにして得られた焼結材に熱間塑性加工を施し、強度試験のための試作材を作製した。試作材とJIS4種の純チタンとの特性の比較を表1に示す。
表1からわかるように、引張耐力、引張強さ、破断伸びの各特性において、試作材はJIS4種の純チタンよりも優れていることが認められる。
[検証5:モールドの構造]
出発原料粉末を充填するためのモールドとしては、非密封タイプのものであればよく、図5に模式的に示す構造のものを使用できることを確認した。
図5において、(a)で示すものは上部開放型のモールドであり、(b)は上部開放のモールドに充填した原料粉末上に蓋を載せたものである。蓋と、モールドの内側壁面との間には隙間がある。(c)は上部開放のモールドの側壁上端面上に蓋を置いたものであり、蓋とモールドの側壁上端面との間には微小隙間が存在している。蓋を使用することのメリットは、モールド内の粉末が舞わないようすることである。
図5の(a)、(b)、(c)に示すモールドの構造は例示的なものであり、非密封タイプのモールドであれば、図5に示した構造以外のものも使用可能である。
[検証6:水素化チタン粉末の粒度の影響]
出発原料として、純チタン粉末と水素化純チタン粉末とを準備し、混合粉末全体に対する水素化純チタン粉末の量が50質量%となるように調製した。使用する水素化チタン粉末として、平均粒度が10μm未満のものと、平均粒度が10~45μm未満のものと、平均粒度が45~150μm未満のものとを準備した。
出発原料混合粉末を上部開放のモールド(91mm×91mm)内に充填し、真空雰囲気中で加圧することなく、常温から600℃まで昇温し(昇温速度10~20℃/min),600℃で2時間保持し、その後、昇温速度10~20℃/minで1000℃まで昇温し、1000℃で24時間保持して焼結した後に、炉内で冷却した。
図6は、焼結後の焼結材の組織写真を示すものであり、(a)は平均粒度が10μm未満の水素化チタン粉末を使用したもの、(b)は平均粒度が10~45μm未満の水素化チタン粉末を使用したもの、(c)は平均粒度が45~150μm未満の水素化チタン粉末を使用したものを示している。(a)の焼結材の密度は99.8%であり、空孔の存在はわずかである。(b)の焼結材の密度は96.2%であり、空孔が分散して現れているのが観察された。(c)の焼結材の密度は82.9%であり、分散する空孔の面積(体積)が大きくなっていることが観察された。
図6に示した結果から、水素化チタン粉末として微細粒度のものを使用すれば、焼結密度が向上することが認められた。
[好ましい加熱・焼結条件]
非密封タイプのモールドを用いたチタン粉末充填焼結法の好ましい特徴は以下の通りである。
a)常温から中間温度帯まで昇温し、中間温度で一定時間保持すること。
中間温度帯で一定時間保持するのは、TiHを十分に分解させ、解離した水素の高速拡散を利用して焼結を促進するためである。TiHを分解させる中間温度帯は550℃~850℃であり、保持時間に制限は無いが例えば1時間~3時間程度である。
b)中間温度帯から高温温度帯まで昇温し、高温温度帯で一定時間保持すること。
高温温度帯で一定時間保持するのは、完全焼結を行うためである。適正な焼結温度は、合金組成によって異なる。チタンを主成分とするチタン焼結材であれば、完全焼結を行うための高温温度帯は、850℃~1400℃であり、保持時間に制限は無いが例えば2時間~24時間程度である。
c)常温から中間温度まで、および中間温度から高温温度までの昇温速度
TiHの急激な分解や、解離した水素の外部への放出を抑制するために、昇温速度を10℃/min~30℃/minの範囲にするのが望ましい。
d)加熱・焼結雰囲気
チタン材中への酸素の取り込みを抑制する観点からすると、チタン焼結材を得るための加熱・焼結雰囲気を真空雰囲気にするのが望ましいが、非密封タイプのモールドを利用した粉末充填焼結法であれば、アルゴン雰囲気のような非真空雰囲気であっても、チタン材中への酸素の取り込みを抑制して焼結を行うことができる。その理由は、チタン材の内部から発生する水素ガスのシールド効果によりチタン材中への酸素の混入を抑制することができるからである。
[高水素チタン粉末]
高水素チタン粉末は、水素化処理したままの水素化チタン(TiH)化合物を含む高濃度水素含有チタン粉末(水素化チタン粉末)であり、水素を多く含む。市場で入手可能な水素化チタン粉末中の水素含有量は、一般的には2.0~4.0質量%の範囲内にあるが、意図的に水素含有量を調製することも可能である。本発明のモールド粉末充填焼結法では、より微細な水素化チタン粉末を使用すれば焼結材の密度の向上が見込まれるが、特に粒度の限定は必要ではない。
「チタン粉末」という用語は、本明細書においては、純チタン粉末だけではなく、64チタン合金(Ti-6Al-4V)のようなチタンを主成分とするチタン合金粉末も含むものである。
[低水素チタン粉末]
低水素チタン粉末は、水素化処理後に脱水素化処理したチタン粉末や、アトマイズ法で得られたチタン粉末を含む。「チタン粉末」という用語は、本明細書においては、純チタン粉末だけでなく、チタンを主成分とするチタン合金粉末も含むものである。低水素チタン粉末中の水素含有量は不可避的に含まれる量であり、一般的には0.01~0.08質量%である。
[高水素チタン粉末と低水素チタン粉末との配合比を変えた試験]
[試験1]
下記の条件で、高水素チタン粉末(水素含有量:2.0~4.0質量%)と低水素チタン粉末(水素含有量:0.01~0.08質量%)との配合比を変えて、得られた焼結体の密度および圧延後の特性(引張強さ及び破断伸び)を測定した。
出発原料粉末の重量:500g
使用した非密封タイプのモールドの内寸:101mm×101mm
焼結雰囲気:真空
昇温・焼結パターン:
常温→600℃に昇温(1.5h保持)→800℃に昇温(1.5h保持)→1000℃に昇温(10h保持)→炉内冷却→50℃付近で炉からモールドを取り出す。
使用した高水素チタン粉末:平均粒度10μm以下の水素化処理したままの水素化純チタン粉末
使用した低水素チタン粉末:平均粒度10μmを超え45μm以下の脱水素化処理した純チタン粉末
密度の測定:JIS Z8807に記載の「液中ひょう量法」に相当するアルキメデス法による
相対密度(%)の算出:純Tiの比重を4.51g/cmとして算出
結果を下記の表2に示す。
混合粉末全体に対する水素化チタン粉末(高水素チタン粉末)の比率が20~50質量%の試料No.2~4を見ると、混合粉末中の水素含有量が0.666質量%~1.707質量%であり、焼結体の相対密度は94.3~96.2%であった。また、試料No.2~3の圧延後の引張強さは702~798MPaであり、破断伸びは30.0~30.3%であった。この相対密度および圧延後の特性は、実用上、有効なチタン焼結材として利用できる値である。実用上有効なチタン焼結材の相対密度としては、85%以上が望ましい。
水素化チタン粉末を含まない試料No.1の出発原料粉末中の水素含有量は0.012質量%であり、焼結体の相対密度は88.1%であった。
試料No.1~4から、出発原料粉末として水素化チタン粉末を含み、混合粉末中の水素含有量を0.6質量%以上にすれば、焼結体の密度が向上することが認められる。
試料No.5~6は、混合粉末中の水素化チタン粉末の量が60質量%以上であり、混合粉末中の水素含有量が2.0%を超えるものである。この試料No.5~6の焼結体は焼結処理時に割れたため、相対密度を測定しなかった。この結果から、焼結体の割れを防ぐためには、混合粉末中の水素含有量を2.0質量%以下にすることが望ましいと思われる。
また、高水素チタン粉末中の水素含有量が2.0~4.0質量%であり、低水素チタン粉末中の水素含有量が不可避的に含まれる量(0.01~0.08質量%)である場合には、混合粉末全体に対する高水素チタン粉末の量を55質量%以下にすることが望ましいことが認められる。試験1では、混合粉末全体に対する高水素チタン粉末の量の下限値を20質量%とした(試料No.2)。試料No.2の焼結体の相対密度は94.3%であり、高水素チタン粉末を含まない試料No.1に比べてかなり高い。目標とする相対密度85%以上を満たすという観点から見ると、混合粉末全体に対する高水素チタン粉末の量は、10質量%以上が好ましいと思われる。
[試験2]
水素化純チタン粉末(平均粒子径:48μm、水素含有量:2.0~4.0質量%))と、水素化・脱水素化純Ti粉末(平均粒子径:28μm)とを出発原料とし、両粉末を下記の表3に示す配合比率で混合した。
各混合粉末100gを内寸幅50mm×長さ70mmの矩形状金型(非密封タイプのモールド)に充填した後、モールドを真空加熱炉に投入して次に示す昇温・加熱パターンのもとで加熱焼結を行った。
昇温・焼結パターン:
常温→650℃に昇温(1.5h保持)→800℃に昇温(1.5h保持)→1000℃に昇温(10h保持)→炉内冷却→50℃付近で炉からモールドを取り出す。
表3における試料No.105の混合粉末について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図7に示す。各出発原料粉末(水素化チタン粉末および水素化・脱水素化純チタン粉末)は、機械粉砕法で作製するため、粉末粒子は角ばった形状を有している。図7において矢印で指し示す相対的に粗大な粉末が水素化チタン粉末である。粒子径の違いはあるものの、両粉末は比較的均一に混合されている。
昇温・焼結パターンを経て得られた矩形状チタン(Ti)焼結体の密度、相対密度、酸素量、窒素量、水素量の分析および外観観察を行った。密度はアルキメデス法を用いて測定し、また相対密度(%)は純Tiの比重を4.51g/cmとして算出した。その結果を表3中に記載した。
混合粉末全体に対する水素化チタン粉末の比率が10~50質量%である試料No.102~105(本発明の実施例)では、相対密度が85%以上であり、焼結体の外観も良好であった。
比較例となる試料No.101では、出発原料として水素化チタン粉末を含まないため、焼結現象の進行が不十分であり、相対密度の目標値(85%以上)を満足せず、また不均一な焼結現象によって試料の中央部付近に凹部の発生が確認された。
比較例となる試料No.106では、混合粉末全体に対する水素化チタン粉末の比率が60質量%であり、昇温・焼結過程で多量の水素が発生するために、微細ながらも亀裂が焼結体の表面に発生した。
なお、混合粉末中の水素化チタン粉末の配合比率の増加に伴い、つまり水素含有量の増加に伴い、焼結後のチタン材中に含まれる酸素量が低下する傾向がある。これは以下の作用による。すなわち、水素化チタン粉末が焼結過程で熱分解する際に解離・発生する水素原子が、試料に含まれる酸素と反応(水素の還元作用)する結果、焼結後の酸素含有量が低下する。
水素化チタン粉末の量が10~60%となるように調製した試料No.102~106の焼結後の残存水素量に注目すると、その値は0.01質量%以下であり、JIS規格(H≦0.013質量%)を満足している。
試料No.101(比較例)および試料No.104(実施例)の焼結体を対象に、光学顕微鏡を用いて各試料の中央部付近の組織を観察した。その結果を図8に示す。図8(a)は試料No.101の結果であり、図8(b)は試料No.104の結果である。図8から、試料No.104(実施例)における空孔量は、試料No.101(比較例)に比べて小さく、密度が増大していることがわかる。
[試験3]
低水素チタン粉末としては、水素化脱水素化チタン粉末に限らず、例えばアトマイズ法で製造したチタン粉末でもよい。ガスアトマイズ製純チタン粉末を出発原料として用いた実験を行った。具体的には次の通りである。
水素化チタン粉末(平均粒子径:48μm、水素含有量:2.0~4.0質量%)およびガスアトマイズ製純チタン粉末(平均粒子径:27μm、水素含有量:0.01~0.08質量%)を出発原料とし、両粉末を表4に示す配合比率で混合した。
各混合粉末100gを内寸の幅50mm×長さ70mmの非密封タイプの矩形状金型(モールド)に充填した後、モールドを真空加熱炉に投入して、以下に示す昇温・焼結パターン条件のもとで加熱焼結を行った。
昇温・焼結パターン:
常温→650℃に昇温(1.5h保持)→800℃に昇温(1.5h保持)→1000℃に昇温(10h保持)→炉内冷却→50℃付近で炉からモールドを取り出す。
表4における試料No.111の混合粉末について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図9に示す。矢印で指し示す球形状の粉末は、ガスアトマイズ法で作製した純チタン粉末である。粒子径の違いはあるものの、両粉末は比較的均一に混合されている。
上記の昇温・焼結パターンを経て得られた矩形状チタン焼結体の密度、相対密度、酸素量、窒素量、水素量の分析および外観観察を行った。密度はアルキメデス法を用いて測定し、また相対密度(%)は、純Tiの比重を4.51g/cmとして算出した。その結果を表4に記載した。
本発明の実施例となる試料No.108~111では、相対密度が85%以上であり、焼結体の外観も良好であった。一方、比較例となる試料No.107では、出発原料中に水素化チタン粉末を含まないために焼結現象の進行が不十分であり、相対密度の目標値(85%以上)を満足しなかった。出発原料中に水素化チタン粉末を60%含む試料No.112では、多量の水素が発生するために微細な亀裂が焼結体の表面に発生した。
なお、水素化チタン粉末の量を10%~60%の質量比となるように調製した試料No.108~112では、焼結体中に残存する水素量が0.009質量%以下であり、JIS規格(H≦0.013質量%)を満足している。
[試験4]
水素化チタン粉末中の水素含有量を0.8~1.5質量%の範囲内になるように調製した高水素チタン粉末と、粉末中の水素含有量が不可避的に含まれる量(0.01~0.08質量%)である低水素チタン粉末(純チタン粉末)とを出発原料として準備した。
準備した水素化チタン粉末中および純チタン粉末中の水素、酸素および窒素含有量を下記の表5に示す。
水素化チタン粉末と純チタン粉末との配合比率を変えた出発原料粉末を非密封タイプのモールドに充填し、出発原料粉末を加圧することなく真空雰囲気下で下記の昇温・焼結パターンで焼結した。
昇温・焼結パターン:
常温→(20℃/min)→650℃×2h→(20℃/min)→1000℃×10h→炉冷
焼結後の焼結体の密度、相対密度、酸素量、窒素量および水素量を測定し、さらに焼結体の外観観察を行った。その結果を下記の表6に示す。
準備した水素化チタン粉末中の水素含有量は、0.8~1.5質量%の範囲内の0.922質量%である。相対密度に注目すると、出発原料粉末中の水素含有量が0.20~1.0質量%の範囲内にある試料No.202~206の焼結体の相対密度は目標値である85%以上を満足する。試料No.206の出発原料粉末は、水素化チタン粉末のみであるが、出発原料粉末中の水素含有量が0.92質量%であるので、非密封タイプのモールドを用いた粉末充填焼結法を適用して相対密度85%以上の焼結体を得ることができた。
出発原料粉末中の水素化チタン粉末の量に注目すると、相対密度85%以上を満足するのは20~100質量%の試料No.202~206である。
[試験5]
水素化チタン粉末中の水素含有量を0.8~1.5質量%の範囲内になるように調製した高水素チタン粉末と、粉末中の水素含有量が不可避的に含まれる量(0.01~0.08質量%)である低水素チタン粉末(純チタン粉末)とを出発原料として準備した。
準備した水素化チタン粉末中および純チタン粉末中の水素、酸素および窒素含有量を下記の表7に示す。
水素化チタン粉末と純チタン粉末との配合比率を変えた出発原料粉末を非密封タイプのモールドに充填し、出発原料粉末を加圧することなく真空雰囲気下で下記の昇温・焼結パターンで焼結した。
昇温・焼結パターン:
常温→(20℃/min)→650℃×2h→(20℃/min)→1000℃×10h→炉冷
焼結後の焼結体の密度、相対密度、酸素量、窒素量および水素量を測定し、さらに焼結体の外観観察を行った。その結果を下記の表8に示す。
準備した水素化チタン粉末中の水素含有量は、0.8~1.5質量%の範囲内の1.211質量%である。相対密度に注目すると、出発原料粉末中の水素含有量が0.25~1.21質量%の範囲内にある試料No.302~306の焼結体の相対密度は目標値である85%以上を満足する。試料No.306の出発原料粉末は、水素化チタン粉末のみであるが、出発原料粉末中の水素含有量が1.21質量%であるので、非密封タイプのモールドを用いた粉末充填焼結法を適用して相対密度85%以上の焼結体を得ることができた。
出発原料粉末中の水素化チタン粉末の量に注目すると、相対密度85%以上を満足するのは20~100質量%の試料No.302~306である。
[高水素チタン粉末の粒度を変えた実験]
試験1と同じ加熱・焼結条件で、使用する高水素チタン粉末の粒度を変えて実験した。
下記の3種類の水素化純チタン粉末を使用して比較した。
a)平均粒度が10μm以下の水素化純チタン粉末(水素含有量:2.0~4.0質量%)
b)平均粒度が10μmを超え、45μm以下の水素化純チタン粉末(水素含有量:2.0~4.0質量%)
c)平均粒度が45μmを超え、150μm以下の水素化純チタン粉末(水素含有量:2.0~4.0質量%)
混合粉末中の水素化純チタン粉末の量:40質量%
結果を下記の表9に示す。
水素化チタン粉末の平均粒度が45μm以下の試料No.3および試料No.7の焼結体の相対密度は92.5~94.6%であった。試料No.3の圧延後の引張強度は798MPaであり、破断伸びは30.0%であった。試料No.3および試料No.7は、実用上、有効なチタン焼結材として利用できる。
水素化チタン粉末の平均粒度が45μmを超える試料No.8の焼結体の相対密度は90.4%であり、この値は、低水素チタン粉末のみからなる試料No.1の焼結体に比べて高い値である。ただ、微細な水素化チタン粉末を使用した試料No.3および試料No.7に比べて、圧延後の引張強さ及び破断伸びの特性が劣る。
上記の結果から、圧延後の引張強さ及び破断伸びの特性をより重視するならば、使用する水素化チタン粉末としては、平均粒度が45μm以下のものを使用するのが望ましいと思われる。
[従来製法との比較]
本発明のモールド粉末充填焼結法は、出発原料粉末に対して圧縮加工を施していないことが特徴である。比較のために、従来の製法の一つである冷間等方圧加圧法(CIP)で加圧して圧縮固化体を作成し、この圧縮固化体を焼結したものを作製した。焼結体のサイズおよび熱処理パターンは、試験1の本発明のモールド粉末充填焼結法と同じにした。
使用した粉末は、以下の通りである。
a)平均粒度が10μm以下の水素化純チタン粉末
b)平均粒度が10μmを超え45μm以下の脱水素化処理した純チタン粉末
結果を、下記の表10に示す。
CIP成形後に焼結した試料No.9に注目すると、混合粉末全体中の水素化チタン粉末の量が40質量%であり、本発明法で作製した試料No.3に対応するものである。試料No.3と試料No.9とを比較すると、試料No.3の充填粉末の密度に比べて試料No.9のCIP成形体の密度がかなり高い。しかし、焼結体の相対密度を見ると、両者の間に有意差はない。本発明法において、充填粉末を加圧しなくとも焼結体の密度が高くなっているのは、TiHの分解によって解離した水素の高速拡散性を利用して焼結を促進しているからであることがわかる。
試料No.10及び11は、混合粉末の配合比から見ると、本発明法で作製した試料No.5及び6に対応するものである。試料No.10及び11の焼結体は、試料No.5及び6と同様に、焼結時に割れが発生した。
表10の結果から、圧縮固化体を作成しないモールド粉末充填焼結法は、CIP成形によって圧縮固化体を作製して焼結する従来製法と特性において同等の焼結材を作製できることが認められる。本発明によれば、プレス機やCIP設備やHIP設備を必要としないので、従来製法と比較して大幅な設備費の縮小を実現できる。
[焼結処理時の雰囲気]
試料No.3(40%水素化純チタン粉末+脱水素化純チタン粉末)は、真空雰囲気中で加熱・焼結を行ったものである。加熱・焼結の雰囲気をArガス雰囲気(非真空雰囲気)にして、試料No.3と同一配合比の混合粉末を加熱・焼結した。その結果を下記の表11に示す。
真空雰囲気中で処理した試料No.3の焼結体では、焼結体組成中の水素量が0.005質量%であり、相対密度が94.6%である。圧延後の引張強さは798MPaであり、破断伸びは30.0%であった。
Arガス雰囲気中で処理した試料No.12の焼結体の場合、Arガス雰囲気での焼結後に、50時間の脱水素処理を行った。最終的に得られた焼結体組成中の水素量が0.007質量%であり、相対密度が92.5%であった。圧延後の引張強さは724MPaであり、破断伸びは31.8%であった。この特性を見ると、Arガス雰囲気で加熱・焼結した試料No.12のチタン焼結材も実用上有効に利用できることが認められる。
Arガスのような非真空雰囲気中で加熱・焼結しても良好な焼結体密度が得られるのは、図11に示すように、TiH2の分解によって発生した水素ガスのシールド効果により、チタン材中への酸素の混入が抑制されるからと思われる。
[モールドの蓋の有無]
本発明のモールド粉末充填焼結法で使用する非密封タイプのモールドは、上部開放のまま(蓋なし)でもよいし、上部に蓋を有するものでもよい。蓋の有無によって、加熱・焼結後の焼結材の特性に大きな相違がみられるかどうかを確認した。
出発原料として水素化純チタン粉末と脱水素化純チタン粉末の2種類の粉末を用意した。一方の混合粉末においては、混合粉末全体に対する水素化純チタン粉末の量を20質量%となるように調製し、他方の混合粉末においては、混合粉末全体に対する水素化純チタン粉末の量を50質量%となるように調製した。
2種類の混合粉末に対して、それぞれ、蓋なしモールドおよび蓋ありモールドで加熱焼結した。加熱・焼結条件は、試料No.1~6と同じである。
その結果を下記の表12に示す。
水素化純チタン粉末の比率が20質量%である試料No.13および試料No.14に注目すると、蓋ありモールドで焼結した試料No.13の焼結体相対密度が91.7%であり、蓋なしモールドで焼結した試料No.14の焼結体相対密度が90.7である。この密度の差はわずか1%であり、両者の間に有意差は認められない。
同様に、水素化純チタン粉末の比率が50質量%である試料No.15および試料No.16に注目すると、蓋ありモールドで焼結した試料No.15の焼結体相対密度が95.6%であり、蓋なしモールドで焼結した試料No.16の焼結体相対密度が92.0%である。この差は3.6%でありやや大きいが、92.0%の相対密度であれば実用上十分に高いものである。
図10は、試料No.16の焼結後の焼結体を示す写真である。この写真から明らかなように、焼結体と蓋なしモールドの内側面との間には隙間ができており、出発原料としての混合粉末は、水素の高速拡散性を利用した固相焼結により体積が収縮したことが認められる。
[出発原料としてチタン合金粉末を含む試料]
本発明の非密封タイプモールドを利用したモールド粉末充填焼結法は、チタン合金粉末を出発原料として含む試料に対しても、良好な焼結体が得られることを確認する試験(試験6および試験7)を行った。
[試験6]
用意した出発原料は、水素化純チタン粉末および64チタン(Ti-6Al-4V)合金粉末の2種類である。この2種類の混合粉末に対して、配合比率を変えて非密封タイプのモールドを使用して加熱焼結した。加熱・焼結条件は、試料No.1~6と同じである。その結果を、下記の表13に示す。
表13において、充填粉末および焼結体の相対密度は、純チタンの比重を4.51g/cm、チタン合金の比重を4.43g/cmとして、混合比率による計算値を基準として算出した。表13および後述する表14中に、基準とした比重を記載した。
混合粉末全体に対する水素化純チタン粉末の量が20質量%である試料No.17の焼結体の相対密度は、90.0%である。既述した試料No.2は、水素化純チタン粉末と純チタン粉末とを混合し、混合粉末全体に対する水素化純チタン粉末の量が20質量%であり、焼結体の相対密度は94.3%であった。
水素化純チタン粉末と64チタン合金粉末との混合粉末全体に対する水素化純チタン粉末の量が40質量%である試料No.18の焼結体の相対密度は、91.3%である。既述した試料No.3は、水素化純チタン粉末と純チタン粉末との混合粉末全体に対する水素化純ch9異端粉末の量が40質量%であり、焼結体の相対密度は94.6%であった。
水素化純チタン粉末と64チタン合金粉末との混合粉末全体に対する水素化純チタン粉末の量が60質量%である試料No.19については、既述の試料No.5(水素化純チタン粉末と純チタン粉末との混合粉末であり、水素化純チタン粉末の量が60質量%)と同様に、焼結処理時に試料の割れが生じたので相対密度を測定しなかった。
試料No.17~19の試験結果から、本発明の非密封タイプのモールドを使用したモールド粉末充填焼結法が水素化純チタン粉末とチタン合金粉末とを出発原料とするものにも等しく適用可能であり、水素化純チタン粉末の比率が60%未満程度あれば相対密度が高い焼結体が得られることを確認できた。
[試験7]
用意した出発原料は、水素化チタン合金(Ti-6Al-4V)粉末および脱水素化純チタン粉末の2種類である。この2種類の混合粉末に対して、配合比率を変えて非密封タイプのモールドを使用して加熱焼結した。加熱・焼結条件は、試料No.1~6と同じである。その結果を、下記の表14に示す。
水素化チタン合金粉末と純チタン粉末との混合粉末全体に対して水素化チタン合金粉末の量が20質量%である試料No.20の焼結体の相対密度は、92.7%である。既述した試料No.2は、水素化純チタン粉末と純チタン粉末との混合粉末全体に対する水素化純チタン粉末の量が20質量%であり、焼結体の相対密度は94.3%であった。
水素化チタン合金粉末と純チタン粉末との混合粉末全体に対する水素化チタン合金粉末の量が40質量%である試料No.21の焼結体の相対密度は、90.2%である。既述した試料No.3は、水素化純チタン粉末と純チタン粉末との混合粉末全体に対する水素化純チタン粉末の量が40質量%であり、焼結体の相対密度は94.6%であった。
試料No.20~21の試験結果から、本発明の非密封タイプのモールドを使用したモールド粉末充填焼結法が水素化チタン合金粉末と純チタン粉末とを出発原料とするものにも等しく適用可能であることを確認できた。
試験6および試験7から、本発明の非密封タイプモールドを利用したモールド粉末充填焼結法は、チタン合金粉末を出発原料として含む試料に対しても、良好な焼結体を得られることが確認できた。
以上、図面を参照して本発明の実施形態を記載したが、本発明はここに記載した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明と同一または均等な範囲内において種々の変更が可能である。
本発明は、チタン焼結材の製造法として有利に利用され得る。

Claims (12)

  1. 粉末全体に対する水素含有量が0.2~2.0質量%となるように調製したチタン系出発原料粉末を用意する工程と、
    前記チタン系出発原料粉末を非密封タイプのモールドに充填する工程と、
    前記モールド内のチタン系出発原料粉末に圧力を加えないで加熱焼結してチタン焼結材を得る工程とを備える、チタン焼結材の製造方法。
  2. 前記チタン系出発原料粉末は、水素を意図的に含有させた高水素チタン粉末と、水素を不可避的に含有する低水素チタン粉末との混合粉末である、請求項1に記載のチタン焼結材の製造方法。
  3. 前記高水素チタン粉末は、水素化処理したままの水素化チタン化合物を含む水素化チタン粉末であり、
    前記低水素チタン粉末は、水素化処理していないか、水素化処理後に脱水素化処理したチタン粉末である、請求項2に記載のチタン焼結材の製造方法。
  4. 前記高水素チタン粉末中の水素含有量は2.0~4.0質量%であり、
    前記低水素チタン粉末中の水素含有量は0.01~0.08質量%であり、
    前記混合粉末全体に対する前記高水素チタン粉末の量は、10~55質量%である、請求項3に記載のチタン焼結材の製造方法。
  5. 前記高水素チタン粉末中の水素含有量は0.8~1.5質量%であり、
    前記低水素チタン粉末中の水素含有量は0.01~0.08質量%であり、
    前記混合粉末全体に対する前記高水素チタン粉末の量は、20質量%以上100質量%未満%である、請求項3に記載のチタン焼結材の製造方法。
  6. 前記チタン系出発原料粉末は、水素を意図的に含有させた高水素チタン粉末のみから成り、
    前記高水素チタン粉末中の水素含有量は、0.8~1.5質量%である、請求項1に記載のチタン系焼結材の製造方法。
  7. 前記チタン系出発原料粉末は、実質的に金属元素としてチタンのみを含む純チタンからなる、請求項1に記載のチタン焼結材の製造方法。
  8. 前記高水素チタン粉末および前記低水素チタン粉末の少なくともいずれか一方は、チタンを主成分として含むチタン合金からなる、請求項2に記載のチタン焼結材の製造方法。
  9. 前記モールド内のチタン系出発原料粉末の加熱焼結は、
    常温から、前記出発原料粉末中の水素をチタンから解離させる中間温度帯まで昇温することと、
    前記チタン系出発原料粉末を前記中間温度帯で保持して水素をチタンから解離させ、解離した水素の高速拡散性を利用して粉末粒子間の焼結を促進させることと、
    前記チタン系出発原料粉末を、前記中間温度帯から、前記チタン系出発原料粉末の焼結を行う高温温度帯まで昇温することと、
    前記チタン系出発原料粉末を前記高温温度帯で保持して焼結を完了させることと、
    前記高温温度帯から、焼結完了後の焼結体を常温まで冷却することとを含む、請求項1に記載のチタン焼結材の製造方法。
  10. 前記中間温度帯は550℃~850℃の範囲内にあり、
    前記高温温度帯は850℃~1400℃の範囲内にある、請求項9に記載のチタン焼結材の製造方法。
  11. 前記中間温度帯は、低温側中間温度帯および高温側中間温度帯を有し、
    前記チタン系出発原料粉末は、前記低温側中間温度帯で保持された後に前記高温側中間温度帯にまで昇温され、前記高温側中間温度帯で保持された後に前記高温温度帯にまで昇温される、請求項9に記載のチタン焼結材の製造方法。
  12. 前記モールド内のチタン系出発原料粉末の加熱焼結を非真空雰囲気中で行う、請求項9に記載のチタン系焼結材の製造方法。
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