JP2024009589A - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】製造時の塗布斑等の塗膜の欠点が少なく、塗膜の透明性や接着性に優れた積層ポリエステルフィルムを安定して提供すること。更には、各種塗料、樹脂、UV硬化性樹脂またはインキ等に対して良好な接着性を有し、特にUV硬化性樹脂との接着性に優れ、かつ長期間にわたる高いレベルの接着性の維持や接着性に関する耐湿熱性に優れた積層ポリエステルフィルムを提供すること。【解決手段】ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を備える積層フィルムであって、前記塗布層は、ポリエステル樹脂と、沸点が150℃未満と沸点が150℃以上の2種のアミン化合物のカルボキシル基塩を有するイソシアネート系架橋剤を含有する組成物を含んで形成された積層ポリエステルフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、積層ポリエステルフィルムに関する。更に詳しくは、光学用、包装用、ラベル用などあらゆる分野に最適な易接着性の塗布層を有する積層ポリエステルフィルムに関する。
熱可塑性樹脂フィルム、中でもポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料、太陽電池用途、フラットディスプレイ等に用いられる反射防止フィルム、拡散シート、プリズムシート等の光学フィルム及び、ラベル印刷用フィルムなどに幅広く使用されている。しかし、ポリエステルフィルムは表面が高度に結晶配向しているため、これらの用途での加工において、各種塗料、樹脂、UV硬化性樹脂またはインキ等との接着性に乏しいという欠点を有している。
このため、従来から、ポリエステルフィルム表面に種々の方法で接着性を与えるための検討がなされてきた。その方法として、主に、ポリエステルフィルムの表面にスルホン酸基等の親水性基を有する樹脂の水分散体等を塗布し、易接着性能を持つ塗布層を設ける方法がよく知られている(特許文献1参照)。また、市場要望として、高温高湿環境下でも接着性の維持(耐湿熱性)が求められており、親水性基を有する樹脂と架橋剤の併用が検討されている(特許文献2参照)。特にイソシアネート系架橋剤にはジブチルスズジラウラート等の有機錫化合物が触媒として有効であり、使用することにより、架橋効果が向上することが知られている。しかしながら、ジブチルスズジラウラート等の有機錫化合物は、環境ホルモン問題により使用困難となっている(特許文献3参照)。
特開昭58-1727号公報 特開2011-133890号公報 国際公開第2015/052821号
積層ポリエステルフィルムとしては、各種用途に使用されて使用環境が多様になっていることから、近年、先述の耐湿熱性がますます要望されており、重ねて高品位であることも求められている。しかしながら、従来の積層ポリエステルフィルムでは耐湿熱性及び品位については市場では満足されていない。
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、製造時の塗布斑等の塗膜の欠点が少なく、塗膜の透明性や接着性に優れた積層ポリエステルフィルムを安定して提供することにあり、各種塗料、樹脂、UV硬化性樹脂またはインキ等に対して良好な接着性を有し、特にUV硬化性樹脂との接着性に優れ、かつ長期間にわたる高いレベルの接着性の維持や接着性に関する耐湿熱性に優れた積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者は、上記課題について検討する過程において、塗布液中の架橋剤の親水性基に使用されているカルボキシル基塩におけるカルボキシル基と対なる塩基成分の種類により、塗布液の加熱乾燥時に親水性の挙動が変化するため、架橋剤が塗布層中で偏在または凝集等を発生し、塗布斑等の欠点発生及び塗膜の透明性または接着性等の性能低下の原因であることを見出した。この対策として、架橋剤のカルボキシル基の対塩基として、特定の2種のアミン化合物を主に使用することで本発明における課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
1. ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を備える積層フィルムであって、前記塗布層は、ポリエステル樹脂と、沸点が150℃未満と沸点が150℃以上の2種のアミン化合物のカルボキシル基塩を有するイソシアネート系架橋剤を含有する組成物を含んで形成された積層ポリエステルフィルム。
2. 前記の沸点が150℃以上のアミン化合物が1個以上の水酸基を有する上記第1に記載の積層ポリエステルフィルム。
3. 前記の2種のアミン化合物の沸点差が70℃以上である上記第1または第2記載の積層ポリエステルフィルム。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、塗膜欠点が少なく、塗膜の透明性、接着性及び接着性の耐湿熱性に優れるため、光学用または建材用ハードコートフィルム等のUV硬化性樹脂や印刷フィルム等のUV硬化インキに良好な接着性を有する易接着性フィルムとして好適に用いられる。
(ポリエステルフィルム基材)
本発明においてポリエステルフィルム基材を構成するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのほか、前記のようなポリエステル樹脂のジオール成分又はジカルボン酸成分の一部を以下のような共重合成分に置き換えた共重合ポリエステル樹脂であり、例えば、共重合成分として、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを挙げることができる。
本発明においてポリエステルフィルム基材のために好適に用いられるポリエステル樹脂は、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリエチレンフラノレートから選ばれるものである。これらのポリエステル樹脂の中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。また、これらのポリエステル樹脂から構成されたポリエステルフィルム基材は少なくとも一軸以上の方向に延伸された延伸ポリエステルフィルムであることが特に好ましく、延伸により耐薬品性、耐熱性、機械的強度などを向上させることができる。
ポリエステル樹脂の製造の際に用いられる重縮合のための触媒としては特に限定されないが、三酸化アンチモンが安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるため好適である。また、ゲルマニウム化合物、又はチタン化合物を用いることも好ましい。さらに好ましい重縮合触媒としては、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する触媒、アルミニウム及び/又はその化合物とリン化合物を含有する触媒、リン化合物のアルミニウム塩を含有する触媒が挙げられる。
また、本発明におけるポリエステルフィルム基材は、その層構成について特に限定されるものではなく、単層のポリエステルフィルムであってもよいし、相互に成分が異なる2層構成でもよく、外層と内層を有する、少なくとも3層からなるポリエステルフィルム基材であってもよい。
(塗布層)
本発明の積層ポリエステルフィルムは、塗膜欠点が少なく、塗膜の透明性、接着性を向上させるために、その少なくとも片面に、ポリエステル樹脂と、沸点が150℃未満と沸点が150℃以上の2種のアミン化合物よるカルボキシル基塩を有するイソシアネート系架橋剤を含有する組成物を含んで形成された塗布層が積層されていることが好ましい。塗布層は、ポリエステルフィルムの両面に設けてもよく、用途により、ポリエステルフィルムの片面のみに設け、他方の面には異種の樹脂被覆層を設けてもよい。
塗布層に使用される架橋剤のカルボキシル基はアミン化合物と塩を形成することにより、親水性が向上し、結果として水系溶剤中で架橋剤はエマルジョンとして安定に存在することが可能となる。また、塗布液乾燥時等の加熱により、比較的低沸点のアミン化合物はカルボキシル基塩から脱離、揮発して親水性が低いカルボキシル基を再生するため、塗膜形成後の耐湿熱性が向上する。しかしながら、比較的低沸点のアミン化合物を用いる場合は、アミン化合物自体の揮発が水系溶剤の揮発による塗布液の乾燥工程より早く、乾燥途中の塗布液中で架橋剤の親水性が低下し、架橋剤のエマルジョン自体の水系溶剤中での不安定化による凝集の発生または塗膜中での偏在化が発生しやすくなる。これらの凝集化または偏在化により塗膜欠点または塗膜斑となり塗膜品位が低下する。
前述の問題点の改善を検討した結果、ポリエステル樹脂と、沸点が150℃未満と沸点が150℃以上の2種のアミン化合物よるカルボキシル基塩を有するイソシアネート系架橋剤を含む組成物から主に形成された塗布層により、解決されることを見出した。
すなわち、沸点が150℃未満のアミン化合物が乾燥工程で揮発することによる親水性の低下により耐湿熱性が向上し、沸点が150℃以上のアミン化合物が乾燥工程の親水性の変動速度を抑えることにより凝集または偏在化による塗膜の欠点または斑の発生を低下させることが可能となった。また、これらの2種のアミン化合物により、架橋剤の親水性が適度に調整され、ポリエステル樹脂との相溶性が向上することにより、密着性等の塗膜性能が向上した。よって、これらにより高い塗膜品位と性能の両立が可能となった。
(イソシアネート系架橋剤)
本発明においては、塗布層には沸点が150℃未満と沸点が150℃以上の2種のアミン化合物によるカルボキシル基塩を有するイソシアネート系架橋剤が使用することが好ましい。これらの架橋剤を使用することにより、塗布層の品位及び密着性、耐湿熱性等の性能をより向上させることが可能となる。
イソシアネート系架橋剤中に、カルボキシル基塩を導入する方法としては、特に制限はないが、カルボキシル基を有するモノオールまたはポリオールをポリイソシアネートと反応させた後に、アミンによりカルボキシル基を中和するか、予めカルボキシル基塩にしてから同様に反応させることで得ることが可能である。
この様なモノオールまたはポリオールとして、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、オキシ酪酸、オキシ吉草酸、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、カルボキシル基を有するポリカプロラクトンまたはこれらの塩が挙げられる。
本発明におけるイソシアネート系架橋剤の反応性基として、水性溶剤中での保存安定性の点からはブロックイソシアネートであることが好ましい。これらのブロックイソシアネートはイソシアネート基とブッロク剤を反応させることで得られる。ブロックイソシアネートの解離温度は180℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、130℃以下がよりさらに好ましい。ブロック剤は塗布液の塗布後の乾燥工程やインラインコート法の場合はフィルム製膜工程における熱付加により官能基と解離し、再生イソシアネート基が生成される。そのため、ポリエステル樹脂との架橋反応が進行し、常温、高温高湿下での接着性が向上する。ブロックイソシアネートの解離温度が上記温度以下である場合は、ブロック剤の解離が十分進行するため、接着性、特に耐湿熱性が良好となる。解離温度の下限は、塗布液の安定化のため室温以上であれば特に限定しないが、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。
解離温度が130℃以下のブロック剤としては、重亜硫酸塩系化合物:重亜硫酸ソーダなど、イミダゾール系化合物:イミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾールなど、イミダゾリン系化合物:2-メチルイミダゾリンなど、グアニジン系化合物:1,1,3,3-テトラメチルグアニジンなど、ピラゾール系化合物:3,5-ジメチルピラゾールなど、活性メチレン系:マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル)など、オキシム系化合物:アセトオキシム、メチルエチルケトオキシムなどが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族系ポリイソシアネート、芳香脂肪族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネートなどのポリイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族系ポリイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等を挙げることができる。
芳香脂肪族系ポリイソシアネートとしては、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン等を挙げることができる。
脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環族系ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
これらポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体)、アダクト変性体(例えば、ポリイソシアネート単量体と後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、アロファネート変性体、ビウレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
本発明で用いるポリイソシアネートとしては、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネート、芳香脂肪族系ポリイソシアネートが好ましく、特にこれらのポリイソシアネート誘導体として、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体、ビウレット変性体が特に好ましい。本発明では架橋剤として1分子中に2個以上のイソシアネート基を有することが好ましく、3個以上がより好ましい。
本発明におけるイソシアネート系架橋剤の分子中にカルボキシル基が有することが好ましく、その存在量はイソシアネート系架橋剤の酸価として15mgKOH/g以上が好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましく、25mgKOH/g以上がさらに好ましい。カルボキシル基が酸価として15mgKOH/g以上あることにより、ある程度以上の親水性が維持することが可能となり、その結果として水系溶剤中での安定性が向上する。
本発明におけるカルボキシル基塩を形成するための沸点が150℃未満と沸点が150℃以上の2種のアミン化合物の詳細については後述する。
本発明におけるイゾシアネート系架橋剤は、カルボキシル基またはカルボキシル基塩以外の他の親水性基を有していてもよい。他の親水性基としては、4級アミン等のカチオン性基、スルホン酸、ホスフィン酸等のアニオン性基、ポリオキシアルキレン基等のノニオン性基が挙げられるが、ポリオキシアルキレン基等のノニオン性基が好ましい。
ノニオン性基はノニオン系親水基含有化合物とイソシアネート基との反応により容易に分子中に含有させることが可能である。ノニオン系親水基含有化合物としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル:ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。また、これらの数平均分子量としては、400~4000が好ましく、400~1000が最も好ましい。
沸点が150℃未満と沸点が150℃以上の2種のアミン化合物によるカルボキシル基塩を有するイソシアネート系架橋剤橋剤の含有量は、組成物を構成するポリエステル樹脂、架橋剤やその他樹脂との固形分の合計量に対して、5質量%以上60質量%未満が好ましい。架橋剤が5質量%以上であると耐湿熱性の観点から好ましく、60質量%未満であると、相対的にポリエステル樹脂の含有量が多くなるため、密着性等の観点で好ましい。10質量%以上55質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。
(アミン化合物)
本発明においては、沸点が150℃未満と沸点が150℃以上の2種のアミン化合物を使用する。沸点とは本発明では、常圧(760mmHg(101.325kPa))時の沸点を意味し、文献値等の既知のデータを使用しても問題はない。もし、沸点に幅がある場合はその幅の中央値をもって判断しても問題はない。また、既知のデータが減圧時の沸点のみで常圧時の沸点が不明な場合には沸点換算図表(Science of Petroleum,Vol.II.P.1281(1938))からの換算値で代用しても特に問題はない。また、同様にアミン化合物の沸点が十分に高くかつ分解温度が沸点より低い場合には、この分解温度を本発明での沸点の代わりの指標として代用しても問題はない。
本発明において使用できるアミン化合物は、分子中に窒素原子を1個以上含有する化合物が使用可能である。分子中に窒素原子を2個以上含有するアミン化合物も使用可能であるが、イオン架橋等の副反応の影響が発生するため、全アミン化合物の10モル%以下であることが好ましい。但し、アジ化物は熱等に不安定なため、本発明では使用しないことが好ましい。また、アミン化合物としては、窒素原子に直接結合した水素原子が少ない方が、酸化等の変質の懸念または架橋剤のイソシアネート基との反応抑制の点から好ましい。そのため、1級アミンより2級アミンの方がより好ましく、3級アミンまたは複素環であることがさらに好ましい。
沸点が150℃未満のアミン化合物では、沸点の下限は、特に制限はないが、塗膜の品位の点からは沸点80℃以上が好ましく、110℃以上が特に好ましい。また、アミン化合物は水溶性であることが好ましい。
沸点が150℃未満のアミン化合物としては、脂肪族モノアミン化合物では、アンモニア(沸点-33℃)、メチルアミン(沸点-6℃)、トリメチルアミン(沸点3℃)、エチルアミン(沸点17℃)、プロピルアミン(沸点48℃)、ブチルアミン(沸点78℃)、イソブチルアミン(沸点68~69℃)、ペンチルアミン(沸点104℃)、ヘキシルアミン(沸点131~132℃)、アリルアミン(沸点96~98℃)、シクロヘキシルアミン(沸点135℃)等の1級アミン、
ジメチルアミン(沸点7℃)、ジエチルアミン(沸点56℃)、ジプロピルアミン(沸点111℃)、ジイソプロピルアミン(沸点84℃)、ジブチルアミン(沸点159℃)、ジイソブチルアミン(沸点137~139℃)、ジシクロヘキシルアミン(沸点135℃)、ジアリルアミン(沸点111~112℃)、エチルプロピルアミン(沸点79℃)、メチルブチルアミン(沸点91℃)等の2級アミン、
N,N-ジメチルエチルアミン(沸点37℃)、N,N-ジエチルメチルアミン(沸点62℃)、N,N-ジメチルイソプロピルアミン(沸点68℃)、N-ブチルジメチルアミン(沸点93℃)、トリエチルアミン(沸点89℃)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(沸点127℃)、N,N-メチルジイソプロピルアミン(沸点114℃)、N,N-ジプロピルエチルアミン(沸点132℃)、トリシクロヘキシルアミン(沸点135℃)、N-ブチルジメチルアミン(沸点93℃)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(沸点127℃)、N-メチル-N-エチルプロピルアミン(沸点92℃)、N-メチルジアリルアミン(沸点111℃)等の3級アミンが挙げられる。
脂環族モノアミン化合物では、ピロリジン(沸点87℃)、ピペリジン(沸点106℃)、2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(沸点135℃)、N-メチルピロリジン(沸点76℃)、N-メチルピペリジン(沸点107℃)、等が挙げられる。
複素環系アミン化合物では、ピロール(沸点129~131℃)、ピリジン(沸点115℃)等が挙げられる。
本発明において、沸点が150℃未満のアミン化合物では窒素、炭素または水素原子以外の他の原子を含有しても問題はない。他の原子としては、酸素、硫黄、ハロゲン等が挙げられるが、安定性等からは酸素を含有した水酸基、アルコキシ基等が好ましい。例えば、ジメチルエタノールアミン(沸点134℃)、メトキシアミン(沸点50℃)、 3-エトキシプロピルアミン(沸点132℃)、メトキシ(メチル)アミン(沸点97℃)等が挙げられる。
沸点が150℃以上のアミン化合物では、塗膜の品位の点から沸点が190℃以上であることがより好ましく、240℃以上が特に好ましい。沸点の上限については前述の分解温度以外に特に制限はない。言い換えれば、沸点が150℃以上のアミン化合物の沸点の上限は当該アミン化合物の分解温度と同じである。
本発明における沸点150℃以上のアミン化合物としては、例えば、以下の化合物等を挙げることができる。
1級の脂肪族モノアミン化合物では、へプチルアミン(沸点154~156℃)、オクチルアミン(沸点175~177℃)、ドデシルアミン(沸点259℃)等が挙げられる。
2級の脂肪族モノアミン化合物では、ジペンチルアミン(沸点203℃)、ジヘキシルアミン(沸点236℃)、ジオクチルアミン(沸点297~298℃)、ジドデシルアミン(沸点265℃/27mmHg)等が挙げられる。
3級の脂肪族モノアミン化合物では、トリプロピルアミン(沸点156℃)、トリブチルアミン(沸点217℃)、トリイソブチルアミン(沸点183℃)、トリペンチルアミン(沸点240℃)、トリヘキシルアミン(沸点265℃)、トリへプチルアミン(沸点155℃/5mmHg)、トリオクチルアミン(沸点367℃)、トリアリルアミン(沸点156℃)、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(沸点160℃)等が挙げられる。
3級の脂環族モノアミン化合物では、キヌクリジン(沸点198℃)、2-メチル-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(沸点198℃)等が挙げられる。
芳香族骨格を有する3級のモノアミン化合物では、ジメチルベンジルアミン(沸点180℃)、N-メチルジフェニルアミン(沸点295℃)、N,N-ジメチルナフチルアミン(沸点274℃)等が挙げられる。
芳香族アミン化合物では、アニリン(沸点184℃)、N-メチルアニリン(沸点196℃)、
N,N-ジメチルアニリン(沸点193℃)、N,N-ジエチル-1-ナフチルアミン(沸点285℃)等が挙げられる。
複素環系アミン化合物では、キノリン(沸点238℃)、イソキノリン(沸点242℃)、
アクリジン(沸点346℃)等が挙げられる
窒素原子を分子中に複数個有する化合物としては、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン(沸点189~192℃)、イミダゾール(沸点256℃)、2-メチルイミダゾール(沸点267~268℃)、1-(2-アミノエチル)-2-メチルイミダゾール(沸点274℃±23℃)等が、また、シュウ酸ジヒドラジド(沸点221℃)、マロン酸ジヒドラジド(沸点554℃±33℃)、コハク酸ジヒドラジド(沸点540℃±33℃)、アジピン酸ジヒドラジド(沸点305℃)等のヒドラジドが挙げられる。
本発明における沸点が150℃以上のアミン化合物においては、沸点が150℃未満のアミン化合物と同様に窒素、炭素または水素原子以外の他の原子を含有しても問題はなく、酸素原子はアルコキシ基または水酸基としてアミン化合物自体の親水性を高めるため好ましい。特に沸点が150℃以上のアミン化合物では水酸基とし分子中に1個以上存在することがより好ましい。分子中に水酸基が存在することにより、架橋剤のイソシアネート基と反応して、塗膜中の架橋性を高めて、密着性及び耐湿熱性を向上させることが可能となる。また、架橋性の観点からアミン化合物中の水酸基が2個以上含有することがさらに好ましい。アミン化合物中の水酸基の個数に特に上限はないが、4個以下でも好ましく、3個以下でも好ましい。また、水酸基はイソシアネート基との反応性の点から3級よりも、2級がより好ましく、1級であることが最も好ましい。
水酸基を1個以上有する沸点150℃以上のアミン化合物としては、例えば、以下の化合物等を挙げることができる。
1級水酸基を1個有する1級アミン化合物では、モノエタノールアミン(沸点170℃)、プロパノールアミン(沸点188℃)、4-アミノ-1-ブタノール(沸点206℃)、2-アミノ-1-ブタノール(沸点176~178℃)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(沸点165℃)、5-アミノ-1-ペンタノール(沸点222℃)、6-アミノ-1-ヘキサノール(沸点225℃)等が、挙げられる
1級水酸基を1個有する2級アミン化合物では、N-メチルエタノールアミン(沸点156℃)、N-エチルエタノールアミン(沸点169℃)、N-プロピルエタノールアミン(沸点182℃)、N-イソプロピルエタノールアミン(沸点171℃)、N-ブチルエタノールアミン(沸点199℃)、N-ペンチルエタノールアミン(沸点219℃)、N-デシルエタノールアミン(沸点309℃)、2-m-トリルアミノエタノール(沸点303℃)、2-p-トリルアミノエタノール(沸点287℃)、t-ブチルアミノエタノール(沸点90~92℃/25mmHg)、2-(p-メチルベンジル)アミノエタノール(沸点303℃)、フェニルプロパノールアミン(沸点273℃)、2-ピペリジンメタノール(沸点100℃/2mmHg)等が、挙げられる。
1級水酸基を1個有する3級アミン化合物では、ジエチルアミノエタノール(沸点162℃)、2-ジ(2-エチルヘキシル)アミノエタノール(沸点374℃)、N,N-ジアリールアミノエタノール(沸点206℃)、5-ジエチルアミノ-1-ペンタノール(沸点217℃)、1-メチル-4-ピペリジンメタノール(沸点108℃/10mmHg)、2-ジ(2-エチルヘキシル)アミノエタノール(沸点374℃)、N,N―ジイソプロピルエタノールアミン(沸点191℃)、N,N-ジブチルエタノールアミン(沸点226℃)、N,N-ジシクロヘキシルアミノエタノール(沸点352℃)、N,N―ジメチルプロパノールアミン(沸点164℃)等が挙げられる。
2級水酸基を1個有する1級アミン化合物では、1-アミノ-2-オクタノール(沸点251±13℃)、3-(アミノメチル)-4-ヘプタノール(沸点238±13℃)、フェニルプロパノールアミン(沸点273℃)等が、2級水酸基を1個有する2級アミン化合物では、1-(ペンチルアミノ)-2-プロパノール(沸点231±13℃)等が挙げられる。
2級水酸基を1個有する3級アミン化合物では、6-(ジメチルアミノ)-2-ヘキサノール(沸点198±23℃)、1-[ブチル(メチル)アミノ]-2-プロパノール(沸点202±13℃)、1-ジプロピルアミノ-2-ブタノール(沸点223±13℃)、4-(ジエチルアミノ)-3-メチル-2-ブタノール(沸点227±13℃)、1-(ジメチルアミノ)-2-ペンタノール(沸点181±13℃)等が挙げられる。
3級水酸基を1個有する1級アミン化合物では、4-(アミノメチル)-4-ヘプタノール(沸点244±13℃)、1-アミノ-2,2,3-トリメチル-3-ペンタノール(沸点225±13℃)、2-アミノ-3-エチル-2-メチル-3-ペンタノール(沸点231±13℃)、1-アミノ-2-メチル-2-オクタノール(沸点262±13℃)、1-アミノ-2,2,3,4-テトラメチル-3-ペンタノール(沸点238±13℃)、1-アミノ-3-エチル-2,2-ジメチル-3-ペンタノール(沸点244±13℃)等が挙げられる。
3級水酸基を1個有する2級アミン化合物では、2-メチル-1-(2-ペンタニルアミノ)-2-プロパノール(沸点238±13℃)等が挙げられる。
3級水酸基を1個有する3級アミン化合物では、2-(ジメチルアミノ)-2-ヘキサノール(沸点180±23℃)等が挙げられる。
1級水酸基を2個有する2級アミン化合物では、ジエタノールアミン(沸点217℃)、ジイソプロパノールアミン(沸点249℃)、ジイソブタノールアミン(沸点245℃)、ジブタノールアミン(沸点245℃)等が挙げられる。
1級水酸基を2個有する3級アミン化合物では、N-メチルジエタノールアミン(沸点245℃)、N-エチルジエタノールアミン(沸点251℃)、N-プロピルジエタノールアミン(沸点263℃)、N-イソプロピルジエタノールアミン(沸点255℃)、N-ブチルジエタノールアミン(沸点275℃)、N-t-ブチルジエタノールアミン(沸点161℃/22mmHg)、N-ヘプチルジエタノールアミン(沸点327℃)、N-オクチルジエタノールアミン(沸点481℃)、N-フェニルジエタノールアミン(沸点270℃)、N-mートリルジエタノールアミン(沸点332℃)、N-p-トリルジエタノールアミン(沸点339℃)、N-ベンジルジエタノールアミン(沸点226℃)、N-シクロヘキシルジエタノールアミン(沸点343℃)、ステアリルジエタノールアミン(沸点260~285℃/5mmHg)、N-ラウリルジエタノールアミン(沸点195℃/3mmHg)、テトラデシルジエタノールアミン(沸点429℃)、N-ヘキサデシルジエタノールアミン(沸点455℃)、メトキシプロピルジエタノールアミン(沸点295℃)、3-(ジメチルアミノ)―1,2-プロパンジオール(沸点217℃)等が挙げられる。
1級水酸基を3個有する1級アミン化合物では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(沸点220℃/10mmHg)等が挙げられる。
1級水酸基を3個有する3級アミン化合物では、トリエタノールアミン(沸点335℃)、トリイソプロパノールアミン(沸点305℃)、トリブタノールアミン(沸点377℃)、1-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]―2-プロパノール(沸点145℃/0.6mmHg)等が、挙げられる。
1級水酸基を4個以上有する3級アミン化合物では、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(沸点466±40℃)等が挙げられる。
2級水酸基を4個以上有する複数の3級アミン化合物では、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(沸点175~181℃)が挙げられる。
本発明においては2種のアミン化合物を使用するが、沸点が150℃未満のアミン化合物と沸点が150℃以上のアミン化合物をそれぞれアミン化合物(A)、アミン化合物(B)と呼称すると、アミン化合物(A)の使用量は、アミン化合物(A)と(B)の和に対して、モル%として(A/(A+B))が、10~90%が好ましく、15~85%がより好ましい。前記モル比が10%以上であると、塗膜の耐湿熱性が良好となり好ましく、90%以下であると塗膜欠点または塗膜斑の発生が抑制される観点から好ましい。
また、アミン化合物(A)とアミン化合物(B)の沸点差は70℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。沸点差が70℃以上であれば、塗膜の品位と性能の両立の観点から好ましい。アミン化合物(A)とアミン化合物(B)の沸点差の上限は特に定めないが、アミン化合物(B)の分解温度によって自ずと定まるものと言える。
本発明におけるアミン化合物(A)及び(B)は水分散化前の架橋剤溶液のカルボキシル基塩の形成に使用することが好ましいが、架橋剤のアミン化合物(A)のカルボキシル基塩からなる水分散体に後でアミン化合物(B)を添加して使用することも可能である。アミン化合物(A)により形成されたカルボキシル基塩は、塗膜作製時の加熱により、解離、揮発して、順次沸点が沸点の高いアミン化合物(B)に置換されるため、予めアミン化合物(A)及び(B)により形成されたカルボキシル基塩と同様の効果が得られる。
前述ではモル比であるが、アミン化合物の明確な分子量が不明な場合、例えば、天然油脂成分由来のアミン化合物等ではモルの代わりにアミン価に換算して指標に用いることも可能である。
また、他の無機性塩基性化合物として不揮発性のナトリウム等のアルカリ金属元素、マグネシウム等のアルカリ土類金属元素等が挙げられる。これらの使用量の上限は、種類及び塗材の濃度等によって一概に断定できないが、本発明における架橋剤の全カルボキシル基の10モル%以下程度であれば、特に問題なく使用可能である。
架橋剤の水分散体に添加するアミン化合物(A)及び(B)の量は架橋剤の全カルボキシル基(C)に対して、モル%(((A)+(B))/(C))は50~600%の範囲が好ましく、60~550%がより好ましく、70~500%がさらに好ましい。モル%(((A)+(B))/(C))が50~600%の範囲であれば、接着性やその耐湿熱性の効果が得られ、過剰なアミン化合物による品位または性能への悪影響が見られない。
(架橋剤)
本発明においては前述の架橋剤以外の架橋剤を併用することも可能である。併用する架橋剤の種類としては特に制限はなく、カルボキシル基を有しないイソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、エポキシ系、メラミン系等が使用可能である。これらの中では、イソシアネート系架橋剤のカルボキシル基との反応性が低い架橋性基を有するものが好ましく、例えば、カルボキシル基を有しないイソシアネート系、エポキシ系、メラミン系が好ましい。
(ポリエステル樹脂)
本発明において塗布層を形成する組成物中に含ませるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールの反応から得ることができる。ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ベンジルマロン酸、ジフェン酸、4,4’-オキシジ安息香酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖脂肪族ジオール、
プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の分岐脂肪族ジオール、
1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族ジオール;
4,4’-メチレンジフェノール、ビスフェノールS,ビスフェノールA、ビスフェノールフルオレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール等の芳香族ジオールまたはこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体等が挙げられる。
前述の様な2価のジカルボン酸とジオール以外に、ゲル化等の重合上の異常を起こさない範囲であれば、3価以上のポリカルボン酸またはポリオールを使用することが可能である。3価以上のポリカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、アダマンタントリカルボン酸、トリメシン酸等が、3価以上のポリオールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等が挙げられる。
本発明において塗布層を形成する組成物に含ませるポリエステル樹脂は水分散性を付与するために、分子中に親水性基を導入することが好ましい。親水性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基のナトリウムまたはカリウム塩に代表されるアニオン性基と水酸基、ポリオキシアルキレン基等に代表されるノニオン性基が挙げられるが、本発明ではスルホン酸基、ホスホン酸基のナトリウムまたはカリウム塩等のアニオン性基が好ましい。これらの親水性基は原料である全ポリカルボン酸とポリオールに対して0.5~6.0モル%の範囲が好ましく、1.0~5.0モル%がより好ましく、1.2~4.0モル%がさらに好ましい。親水性基が0.5~6.0モル%の範囲であれば、塗膜品位及び性能の点から好ましい。ポリエステル樹脂中へのこれらの導入方法に特に制約はなく、これらの親水性基を有するジカルボン酸またはジオールを併用することにより容易に得ることが可能である。また、ポリエステル樹脂を水分散体にする方法についても特に制約はないが、親水性溶剤に溶解して樹脂溶液にした後、この樹脂溶液を攪拌しつつ水で分散する方法が好ましい。また、使用した親水性溶剤は水分散体から減圧蒸留等により除去する場合には、ノニオン性界面活性剤をポリエステル樹脂の5質量%以下であれば特に併用しても問題はない。分子量は、還元粘度として、0.20~0.80dl/gの範囲が好ましく、0.30~0.75dl/gがより好ましく、0.40~0.65dl/gがさらに好ましい。
本発明における塗布層にはポリエステル樹脂の変性体も使用可能である。変性体としてはアクリルグラフト体、酸無水物付加体、グリコール付加体、カプロラクトン付加体等が挙げられる。前述のポリエステル樹脂以外に他の樹脂を併用してもよい。他の樹脂としては、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース等が挙げられるが、好ましい樹脂としては、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂である。
(ポリウレタン樹脂)
本発明において塗布層を形成する組成物に含ませることができるポリウレタン樹脂とは、少なくともポリオール成分とポリイソシアネート成分、さらに必要に応じて鎖延長剤に由来するウレタン樹脂である。
水分散性の観点からは分子中または側鎖に親水性基を有することが好ましい。また、親水性基としては、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基等のアニオン性基またはポリエチレングリコールに代表されるノニオン性基が好ましい。
これらの親水性基を有するポリウレタン樹脂は、主にウレタンの成分として親水性基含有ポリオール成分を使用することで好ましく得ることができる。
本発明において塗布層を形成する組成物に含ませることができるポリウレタン樹脂を合成、重合するために用いる他のポリオール成分には、耐熱、耐加水分解性に優れる脂肪族系または脂環族系ポリカーボネートポリオールを含有することが好ましい。これらのポリカーボネートポリオールとしては、ポリカーボネートジオール、ポリカーボネートトリオールなどが挙げられるが、好適にはポリカーボネートジオールを用いることができる。本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を合成、重合するために用いる脂肪族系ポリカーボネートジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジオール類の1種または2種以上と、例えば、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲンなどのカーボネート類を反応させることにより得られ、脂環族系ポリカーボネートジオールでは1,3-シクロペンタンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどのジオール類から同様に合成、重合することにより得られる。
前記のポリカーボネートポリオールの数平均分子量としては、好ましくは300~5000である。より好ましくは400~4000、最も好ましくは500~3000である。300以上であると、インキ密着性を向上でき好ましい。3000以下であると、ブロッキング耐性を向上でき好ましい。
本発明において塗布層を形成する組成物に含ませることができるウレタン樹脂の合成、重合に用いるポリイソシアネートとしては、芳香族脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類、脂肪族ジイソシアネート類、あるいは、ジイソシアネート類から製造されたイソシアヌレート結合、ビユレット結合またはアロファネート結合含有変性ポリイソシアネート類、ジイソシアネート類を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。前記の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類、または、脂肪族ジイソシアネート類等を使用した場合、黄変の問題がなく好ましい。
本発明において塗布層を形成する組成物に含ませることができるポリウレタン樹脂は、強硬性向上のため末端または側鎖にブロックイソシアネート等の反応性基を有していてもよい。
(アクリル樹脂)
本発明において塗布層を形成する組成物に含ませることができるアクリル樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステルから主に形成された共重合体である。アクリル酸またはメタクリル酸エステルとしては種々の化合物を使用することができる。例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリル酸エステル類が、メタクリル酸エステルとして前述のアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものが挙げられる。
本発明において塗布層を形成する組成物に含ませることができるアクリル樹脂は、水分散であることが好ましい。水分散体とする方法については特に制約がなく、界面活性剤を併用した強制分散体または自己分散体を使用することが可能である。水分散性の安定性の点からは自己分散体であることが好ましく、そのために分子中または側鎖に親水性基を有することが好ましい。また、親水性基としては、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基等のアニオン性基または水酸基、ポリエチレングリコールに代表されるノニオン性基が好ましい。
これらの親水性基を有するアクリル樹脂は、主にモノマーまたはマクローの成分として親水性基含有アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル成分等を使用することで好ましく得ることができる。
アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸またはメタクリル酸エステル以外の成分を使用しても問題なく、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸アミド、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリル等のニトリル類、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル類、酢酸アリル、プロピオン酸アリル等のアリル類、マレイン酸、イタコン酸またはこれらのエステル類の不飽和カルボン酸等が挙げられる。
(添加剤)
本発明における塗布層中には、本発明における効果を阻害しない範囲において公知の添加剤、例えば界面活性剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機または無機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の粒子、帯電防止剤等を添加しても良い。
本発明においては、塗布層のブロッキング耐性をより向上させるために、塗布層に粒子を添加することも好ましい態様である。本発明において塗布層中に含有させる粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレーなど或いはこれらの混合物であり、更に、他の一般的無機粒子、例えばリン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウムその他と併用、等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。
本発明においては、沸点が150℃以上のアミン化合物を使用することから、塗布液中のPHが高く、塗布液乾燥工程においても沸点の比較的高いアミン化合物の存在によりPHの変動が抑えられるため、PH変動によって塗布液中の分散粒子の凝集を抑制することが可能である。このことから、特にPHが塩基性領域で水分散体が安定な粒子を使用することが好ましい。但し、分散剤または表面処理剤等により塗布液中の粒子の凝集を抑制可能であれば、塩基性領域で水分散体が不安定な粒子の使用を制限するものではない。
また、本発明においては使用する粒子の凝集防止の点から、使用する粒子を前もってシランカップリング剤等の反応性化合物またはカルボキシル基等の極性基を有する樹脂で処理しておくことも可能である。使用する樹脂は特に制限はなく、処理としては有機溶剤下で粒子と樹脂を予め混合したのち水分散する方法、水分散粒子に樹脂を混合する方法、粒子とモノマーを予め混合したのち、重合する方法等が挙げられる。
塗布層中の粒子の平均粒径(走査型電子顕微鏡(SEM)による個数基準の平均粒径。以下同じ)は、0.04~2.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.1~1.0μmである。不活性粒子の平均粒径が0.04μm以上であると、フィルム表面への凹凸の形成が容易となるため、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が向上し、貼り合せの際の加工性が良好であって好ましい。一方、不活性粒子の平均粒径が2.0μm以下であると、粒子の脱落が生じ難く好ましい。塗布層中の粒子濃度は、固形成分中1~20質量%であることが好ましい。
粒子の平均粒径の測定方法は、積層ポリエステルフィルムの断面の粒子を走査型電子顕微鏡で観察を行い、粒子30個を観察し、その平均値をもって平均粒径とする方法で行った。
本発明における目的を満たすものであれば、粒子の形状は特に限定されるものでなく、球状粒子、不定形の球状でない粒子を使用できる。不定形の粒子の粒径は円相当径として計算することができる。円相当径は、観察された粒子の面積をπで除し、平方根を算出し2倍した値である。
(積層ポリエステルフィルムの製造)
本発明における積層ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する場合がある)フィルム基材を用いた例を挙げて説明するが、当然これに限定されるものではない。
PET樹脂を十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、Tダイから約280℃の溶融PET樹脂を回転冷却ロールにシート状に溶融押出しし、静電印加法により冷却固化して未延伸PETシートを得る。前記未延伸PETシートは、単層構成でもよいし、共押出し法による複層構成であってもよい。
得られた未延伸PETシートを一軸延伸、もしくは二軸延伸を施すことで結晶配向化させる。例えば二軸延伸の場合は、80~120℃に加熱したロールで長手方向に2.5~5.0倍に延伸して、一軸延伸PETフィルムを得たのち、フィルムの端部をクリップで把持して、80~180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、幅方向に2.5~5.0倍に延伸する。また、一軸延伸の場合は、テンター内で2.5~5.0倍に延伸する。延伸後引き続き、熱処理ゾーンに導き、熱処理を行ない、結晶配向を完了させる。
熱処理ゾーンの温度の下限は好ましくは170℃であり、より好ましくは180℃である。熱処理ゾーンの温度が170℃以上であると硬化が十分となり、高湿度環境下でのブロッキング性が良好となり好ましく、保管環境等の調整が容易となり好ましい。一方、熱処理ゾーンの温度の上限は好ましくは260℃であり、より好ましくは250℃である。熱処理ゾーンの温度が260℃以下であると、フィルムの物性が低下するおそれがなく好ましい。
塗布層はフィルムの製造後、もしくは製造工程において設けることができる。特に、生産性の点からフィルム製造工程の任意の段階、すなわち未延伸あるいは一軸延伸後のPETフィルムの少なくとも片面に、塗布液を塗布し、塗布層を形成することが好ましい。
この塗布液をPETフィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工することができる。
本発明において塗布層の厚みは、0.001~2.00μmの範囲で適宜設定することができるが、加工性と接着性とを両立させるには0.01~1.00μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.02~0.80μm、さらに好ましくは0.05~0.50μmである。塗布層の厚みが0.001μm以上であると、接着性が良好であり好ましい。塗布層の厚みが2.00μm以下であると、ブロッキングを生じ難く好ましい。
本発明の積層ポリエステルフィルムのヘイズの上限は好ましくは2.5%であり、より好ましくは2.0%であり、さらに好ましくは1.5%であり、特に好ましくは1.2%である。ヘイズが2.5%以下であると、透明性の点で好ましく、透明性が求められる光学フィルムへも好適に用いることができる。ヘイズは小さいほど良いが、0.1%以上であっても好ましく、0.3%以上であっても好ましい。
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。まず、以下に本発明で用いた評価方法について説明する。
(1)ヘイズ
得られた積層ポリエステルフィルムのヘイズはJIS K 7136:2000に準拠し、濁度計(日本電色製、NDH5000)を用いて測定した。
(2)酸価
樹脂及び架橋剤の酸価はJIS K-1557-5:2007記載の滴定滴定法により測定した。但し、アミン等で中和処理されたカルボキシル基塩の場合は、高温処理によりアミン等を除去するか、予め塩酸等で処理してアミン等を遊離、除去させてから測定した。また、架橋剤の場合は予めイソシアネート等の反応性基をアミン等で反応させた後に測定を実施した。測定する樹脂が溶剤であるイソプロパノールへの溶解性が悪い場合には、代わりにN-メチルピロリドンを使用した。上記等のいずれの処理でも、対比用の測定は十分に実施した。
(3)塗布液の安定性
調製した塗布液を容量220mlのマヨネーズ瓶に200gに入れて、直径7mm、長さ20mmの棒状テフロン(登録商標)攪拌子により200±20rpmで攪拌しつつ、室温で24時間放置した。放置後の液を400メッシュのSUS316の金網で全量濾過した。濾過状態及び濾過後の金網上の残渣を目視で確認し、下記に従って評価した。

◎:塗布液の滞留なく、残渣もまったく確認できない。
○:塗布液の滞留はないが、残渣が極わずかに確認できる。
△:塗布液の滞留が少し見られ、残渣が明確に確認できる。
×:塗布液の滞留が見られ、残渣が濾過面全面に確認できる。

1人で1回確認し、その結果が◎の場合は、そのまま本評価結果とした。その結果が〇以下の場合は、3人で再度評価実施した。それらの評価結果を多数決により本評価結果とした。但し、3人の評価が割れた場合は、それらの評価結果の中間値を本評価結果とした。上記評価基準により〇以上を合格とした。
(4)塗布面品位(塗布斑及び塗布欠点)
暗室で黒フェルトを背景としてフィルムを吊り下げ、400~800ルーメンのLED懐中電灯により、フィルムの塗布面側より観察し、塗布面品位を評価した。塗布面品位は下記の基準で判定した。評価面積は塗布面2m相当とした。
塗布斑
◎:塗布面に微かな斑もなく、均一である。
○:塗布面に小さな斑が5.0個/m以下または全面に微かな斑がある。
△:塗布面に小さな斑が6.0~10.0個/mまたは全面に薄い斑がある。
×:塗布面に小さな斑が11.0個/m以上または全面に斑がある。
また斑は下記基準で区分した。
斑の面積が100mm未満の場合は小さい斑とした。
斑の濃さは、前述の観察により把握した該当箇所をフィルムから切取り、下記の順序で確認して区分した。
フィルム片をLED光源下で透過により観察し、斑が確認できる場合は斑とした。透過で斑が観察されなければ、次いで、フィルム片を塗布面が上面となる様に黒フェルト上に置き、LED光源下でフィルム面から斜め45°の上部位置から目視し、斑が確認できる場合は薄い斑と判断した。これらで斑が観察されなければ、さらに、フィルム面から斜め上部位置から角度を変えて目視し、斑が確認できる場合は微かな斑と判断した。

塗布欠点
◎:塗布層に欠点なし。
○:塗布層に小さな欠点が5.0個/m以下である。
△:塗布に欠点が2.0個/m以下。
または小さな欠点が6.0~20.0個/mである。
×:塗布に欠点が3.0個/m以上または小さな欠点が21.0個/m以上である。
欠点の大きさは下記基準で判定した。
前述の観察により把握した該当箇所をフィルムから切取り、光学顕微鏡で100倍に拡大して観察し、欠点の一辺の最大が1mm未満の場合を小さな欠点とした。
上記の評価基準により塗布斑および塗布欠点が〇以上の評価を合格とした。
(5)ブロッキング耐性
2枚のフィルム試料を塗布層面同士が対向するように重ね合わせ、98kPaの荷重を掛け、これを50℃の雰囲気下で24時間密着させ、放置した。その後、フィルムを剥離し、その剥離状態を下記の基準で判定した。
◎:塗布層の転移がなく軽く剥離できる。
○:塗布層の転移がないが、剥離時に少し抵抗がある。
△:塗布層は維持されているが、部分的に塗布層の表層が相手面に転移している。
×:2枚のフィルムが固着し剥離できないもの、あるいは剥離できてもフィルム基材が劈開している。
上記の評価基準により、〇以上の評価を合格とした。
(6)UVインキとの密着性
積層ポリエステルフィルムの塗布層上に、UVインキ[T&K TOKA(株)製、商品名「BEST CURE UV161藍S」または「BEST CURE UV161白S」]を用いて、印刷機[(株)明製作所製、商品名「RIテスター」]でインクピペット4目盛、2分割ロールにて印刷を施し、次いで、インキ層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて100または40mJ/cmの紫外線を照射し、紫外線硬化型インキを硬化させた。次いで、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、インキ層を貫通してフィルム基材に達する100個のマス目状の切り傷をインキ層面につける。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面にしっかり貼り付ける。その後、垂直にセロハン粘着テープをインキ積層フィルムのインキ層面から引き剥がして、インキ積層フィルムのインキ層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式からインキ層とフィルム基材との密着性を求める。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数えて、下記式の様にインキ密着性を求めた。
インキ密着性(%)=100-(剥がれたマス目の数)
インキ密着性を下記の基準で判定した。
◎:100%、○:96~99%、△:80~95%、×:80%未満
上記の評価基準により、〇以上の評価を合格とした。
(7)ハードコート層との密着性
積層ポリエステルフィルムの塗布層上に、UV硬化型ハードコート剤であるオプスターZ7503(荒川化学工業(株)製)を#5ワイヤーバーを用いて塗布し、80℃で1分間乾燥した。次いで、塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて100mJ/cmの紫外線を照射し、ハードコートフィルムを得た。
次いで、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ハードコート層を貫通してフィルム基材に達する100個のマス目状の切り傷をハードコート層面につける。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、しっかり付着させる。その後、垂直にセロハン粘着テープをハードコート積層フィルムのハードコート層面から引き剥がした。粘着テープ付着剥離操作を同一ヵ所で計5回行った後、ハードコート積層フィルムのハードコート層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式からハードコート層とフィルム基材との密着性を求める。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数えて、下記式の様にハードコート密着性を求めた。
ハードコート密着性(%)=100-(剥がれたマス目の数)
ハードコート密着性を下記の基準で判定した。
◎:100%、○:96~99%、△:80~95%、×:80%未満。
上記の評価基準により、〇以上の評価を合格とした。
(8)耐湿熱性
上記(5)及び(6)と同様に作製したUVインキ塗布フィルム(BEST CURE UV161白S塗布後、UV照射、100mJ/cm硬化品)、またはハードコート塗布フィルムを80℃、80%RHの環境下で塗布面を垂直にし、かつ塗布面に他のフィルム等の接触がない状態で500時間放置した。処理後、23℃、65%RHの環境下に、塗布面に他のフィルム等の接触がない状態で10分間放置した。時間経過直後に塗布面の密着性を先述と同様に評価した。
(ブロックイソシアネート系架橋剤(C-1)の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたビユレット構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネート24A-100)171.5質量部、ジプロピレングリコールジメチルエーテル 50.0質量部とエチルメチルケトキシム52.5質量部を加えて、窒素雰囲気下、70℃で攪拌しつつ2時間保持した。その後、ジメチロールプロピオン酸26.0質量部を添加した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認することにより、固形分80.0質量%のブロックイソシアネート系架橋剤(C-1)溶液を得た。このブロックイソシアネート系架橋剤(C-1)の固形分酸価は43.2mgKOH/gであった。
(ブロックイソシアネート系架橋剤(C-2)の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにm-キシリレンジイソシアナート118.6質量部、ジプロピレングリコールジメチルエーテル50.0質量部とエチルメチルケトキシム39.0質量部を加えて、窒素雰囲気下、70℃で攪拌しつつ2時間保持した。その後、トリメチロールプロパン28.4質量部を添加し、1時間後にジメチロールプロピオン酸14.0質量部を添加した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認することにより、固形分80.0質量%のブロックイソシアネート系架橋剤(C-2)溶液を得た。このブロックイソシアネート系架橋剤(C-2)の固形分酸価は29.2mgKOH/gであった。
(ブロックイソシアネート系架橋剤(C-3)の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA-100)133.6質量部、ジプロピレングリコールジメチルエーテル50.0質量部と3,5-ジメチルピラゾール47.2質量部を加えて、窒素雰囲気下、70℃で攪拌しつつ2時間保持した。その後、ジメチロールブタン酸19.2質量部を添加した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認することにより、固形分80.0質量%のブロックイソシアネート系架橋剤(C-3)溶液を得た。このブロックイソシアネート系架橋剤(C-3)の固形分酸価は36.1mgKOH/gであった。
(ブロックイソシアネート系架橋剤(C-4)の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにジシクロヘキシルメタン-4,4’―ジイソシアネート116.2質量部、3,5-ジメチルピラゾール21.2質量部、分子量550のポリエチレングリコールモノメチルエーテル32.2質量部とジプロピレングリコールジメチルエーテル50.0質量部を加えて、窒素雰囲気下、70℃で攪拌しつつ2時間保持した。その後、1時間間隔で、順に、トリメチロールプロパン19.8質量部、ジメチロールプロピオン酸7.4質量部、1,6-ヘキサンジオール2.2質量部を添加した。さらに1時間後、反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認することにより、固形分80.0質量%のブロックイソシアネート系架橋剤(C-4)溶液を得た。このブロックイソシアネート系架橋剤(C-4)の固形分酸価は15.3mgKOH/gであった。
(ブロックイソシアネート系架橋剤(C-5)の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA-100)108.8質量部、ジプロピレングリコールジメチルエーテル50.0質量部と3,5-ジメチルピラゾール38.0質量部を加えて、窒素雰囲気下、70℃で攪拌しつつ2時間保持した。その後、分子量500のポリエチレングリコール53.2質量部を添加した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認することにより、固形分80.0質量%のブロックイソシアネート系架橋剤(C-5)溶液を得た。このブロックイソシアネート系架橋剤(C-5)の固形分酸価は0.0mgKOH/gであった。
(ブロックイソシアネート系架橋剤(C-6)の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA-100)127.4質量部、ジプロピレングリコールジメチルエーテル50.0質量部と3,5-ジメチルピラゾール72.6質量部を加えて、窒素雰囲気下、70℃で攪拌しつつ2時間保持した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認することにより、固形分80.0質量%のブロックイソシアネート系架橋剤(C-6)溶液を得た。このブロックイソシアネート系架橋剤(C-6)の固形分酸価は0.0mgKOH/gであった。
(オキサゾリン系架橋剤(C-7)の合成と水分散体(C-7WD)の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコに、水100.0質量部とメトキシプロピルアルコール100.0質量部を仕込み、窒素雰囲気下、80℃に加熱した。その後、メタクリル酸メチル31.4質量部、メタクリル酸アミド53.2質量部、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン48.6質量部およびn=9のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとメタクリル酸のエステル化合物66.8質量部からなる単量体混合物と2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩10.0質量部および水100.0質量部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから窒素雰囲気下、フラスコ内を80℃に保持しつつ2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃、5時間攪拌した後、室温まで冷却した。水を適量添加して、固形分40.0質量%のオキサゾリン系架橋剤(C-7)の水分散体(C-7WD)を調製した。このオキサゾリン系架橋剤(C-7)の固形分酸価は0.0mgKOH/gであった。
(ブロックイソシアネート系架橋剤(C-1)の水分散体(C-1-AWD)の調製)
前述のブロックイソシアネート系架橋剤(C-1)溶液に、室温で固形分質量と酸価から求められるカルボキシル基と等モル量のメチルジエタノールアミン(沸点245℃)を添加し、そのまま30分間攪拌することにより、表1に記載の様にブロックイソシアネート系架橋剤(C-1)のカルボキシル基の100%をメチルジエタノールアミンのアミン塩とするブロックイソシアネート系架橋剤中和物(C-1-A)とした。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、所定量の水を添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ブロックイソシアネート系架橋剤中和物(C-1-A)溶液を添加して水分散した。その後、水で濃度調整することにより、固形分40質量%のブロックイソシアネート系架橋剤中和物(C-1-A)の水分散体(C-1-AWD)を調製した。
(ブロックイソシアネート系架橋剤の水分散体(C-1-BWD)~(C-1-GWD)、(C-2-AWD)~(C-2-JWD)、(C-3WD)、(C-4WD)の調整)
前述のブロックイソシアネート系架橋剤中和物の水分散体(C-1-AWD)の調整と同様にして各架橋剤の中和物の水分散体(C-1-BWD)~(C-1-GWD)、(C-2-AWD)~(C-2-JWD)、(C-3WD)、(C-4WD)を調整した。但し、添加するアミンの種類及び比率は対応するブロックイソシアネート系架橋剤に応じて表1に記載した様に変えて調整した。
(ブロックイソシアネート系架橋剤(C-5)の水分散体(C-5WD)の調製)
酸価が0.0mgKOH/gであったブロックイソシアネート系架橋剤(C-5)はアミン等による中和処理を実施しない以外は水分散体(C-1-AWD)と同様に水分散処理により、ブロックイソシアネート系架橋剤の水分散体(C-5WD)を調製した。
(ブロックイソシアネート系架橋剤(C-6)の水分散体(C-6WD)の調製)
高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、所定量の水を加え、25℃で、2000min-1で攪拌混合しながら、前述のブロックイソシアネート系架橋剤(C-6)溶液と乳化剤としてポリオキシエチレン(13)オレイルエーテルを架橋剤固形分に対して5質量%を徐々に添加して水分散した。水で濃度調整することにより、固形分40質量%のブロックイソシアネート系架橋剤(C-6)の水分散体(C-6WD)を調製した。
(共重合ポリエステル樹脂PES-1の重合)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート188.0質量部、ジメチルイソフタレート188.0質量部、ジメチル-5-ナトリウムスルホイソフタレート17.8質量部、エチレングリコール178.0質量部、ネオペンチルグリコール160.0質量部、およびテトラ-n-ブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃の温度で4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(PES-1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂(PES-1)は、淡黄色透明であった。共重合ポリエステル樹脂(PES-1)の還元粘度を測定したところ,0.55dl/gであった。
(共重合ポリエステル樹脂PES-1の水分散体(PES-1WD)の調製)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、前述の共重合ポリエステル樹脂(PES-1)と、エチレングリコール-n-ブチルエーテルを同質量部入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、所定量の水をこのポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加し、添加終了後、液を攪拌しつつ室温まで冷却した。水を適量添加して、固形分30質量%の共重合ポリエステル樹脂PES-1の水分散体(PES-1WD)を調製した。
共重合ポリエステル樹脂PES-1と同様にして、共重合ポリエステル樹脂PES-2からPES-3を重合した。重合した共重合ポリエステル樹脂の組成と物性を表2に示す。また、共重合ポリエステル樹脂PES-1の水分散体(PES-1WD)と同様に、共重合ポリエステル樹脂PES-2からPES-3を用いて、それぞれ固形分30質量%の水分散体であるPES-2WDからPES-3WDを調製した。
(ポリウレタン樹脂PU-1の合成)
攪拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、ジシクロヘキシルメタン-4,4’―ジイソシアネート70.0質量部、数平均分子量1000の1,6-ヘキサンジオールを主原料としたポリカーボネートジオール94.2質量部及び溶剤としてエチルメチルケトン200質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間攪拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に分子量550のポリエチレングリコールモノメチルエーテル17.2質量部を添加して、さらに2時間攪拌し、反応液の赤外スペクトルを測定し、反応液中のイソシアネート基の消失を確認した。この反応液を室温以下に降温することにより、固形分50.0質量%のポリウレタン樹脂(PU-1)溶液を得た。
(ポリウレタン樹脂PU-1の水分散体(PU-1WD)の調製)
高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、所定量の水を添加して、25℃に調製して、2000min-1で攪拌混合しながら、前述のポリウレタン樹脂(PU-1)溶液を徐々に添加して水分散した。その後、減圧下で、溶剤であるエチルメチルケトンを除去した。水で濃度調整することにより、固形分35質量%のポリウレタン樹脂(PU-1)の水分散体(PU-1WD)を調製した。
(ポリウレタン樹脂PU-2の合成)
攪拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、ジシクロヘキシルメタン-4,4’―ジイソシアネート82.6質量部、数平均分子量1000のポリエチレングリコール93.2質量部及び溶剤としてエチルメチルケトン200質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間攪拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次にネオペンチルグリコール24.2質量部を添加して、さらに2時間攪拌し、反応液の赤外スペクトルを測定し、反応液中のイソシアネート基の消失を確認した。この反応液を室温以下に降温することにより、固形分50.0質量%のポリウレタン樹脂(PU-2)溶液を得た。
(ポリウレタン樹脂PU-2の水分散体(PU-2WD)の調製)
前述のポリウレタン樹脂PU-1の水分散体(PU-1WD)の調製と同様にして、固形分35質量%のポリウレタン樹脂(PU-2)の水分散体(PU-2WD)を調製した。
(ポリウレタン樹脂PU-3の合成)
攪拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、ジシクロヘキシルメタン-4,4’―ジイソシアネート53.2質量部、ジメチロールプロピオン酸9.8質量部、数平均分子量1000の1,6-ヘキサンジオールを主原料としたポリカーボネートジオール130.4質量部、数平均分子量450のポリエチレングリコール6.6質量部及び溶剤としてエチルメチルケトン200質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間攪拌し、反応液の赤外スペクトルを測定し、反応液中のイソシアネート基の消失を確認した。この反応液を室温以下に降温することにより、固形分50.0質量%のポリウレタン樹脂(PU-3)溶液を得た。このポリウレタン樹脂(PU-3)溶液の固形分酸価は20.1mgKOH/gであった。
(ポリウレタン樹脂PU-3の水分散体(PU-3WD)の調製)
前述のポリウレタン樹脂(PU-3)溶液100質量部に、室温でトリエチルアミン1.9質量部を添加し、そのまま30分間攪拌することにより、ポリウレタン樹脂(PU-3)のカルボキシル基をトリエチルアミンで中和した。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、所定量の水を添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、前述の中和した溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、溶剤であるエチルメチルケトンを除去した。水で濃度調整することにより、固形分35質量%のポリウレタン樹脂(PU-3)の水分散体(PU-3WD)を調製した。
(アクリル樹脂(AC-1)の重合)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル85.7質量部を入れ、100℃に加熱保持して、メタクリル酸メチル108.8質量部、アクリル酸エチル69.2質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル10.2質量部、N-メチルメタクリルアミド11.8質量部及びアゾビスイソブチロニトリル10質量部の混合物を3時間かけて滴下した。滴下後、同温度で2時間熟成させた。この反応液を室温以下に降温することにより、固形分70.0質量%のアクリル樹脂(AC-1)溶液を得た。
(アクリル樹脂(AC-1)の水分散体(AC-1WD)の調製)
高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、所定量の水を加え、25℃で、2000min-1で攪拌混合しながら、前述のアクリル樹脂(AC-1)溶液と乳化剤としてポリオキシエチレン(13)オレイルエーテルをアクリル樹脂固形分に対して5質量%を徐々に添加して水分散した。水で濃度調整することにより、固形分30質量%のアクリル樹脂(AC-1)の水分散体(AC-1WD)を調製した。
(アクリル樹脂(AC-2)の重合)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル85.7質量部を入れ、100℃に加熱保持して、メタクリル酸メチル100.2質量部、アクリル酸エチル59.2質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリラート(n=9)41.4質量部、N-メチルメタクリルアミド8.2質量部及びアゾビスイソブチロニトリル10質量部の混合物を3時間かけて滴下した。滴下後、同温度で2時間熟成させた。この反応液を室温以下に降温することにより、固形分70.0質量%のアクリル樹脂(AC-2)溶液を得た。
(アクリル樹脂(AC-2)の水分散体(AC-2WD)の調製)
高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、所定量の水を加え、25℃で、2000min-1で攪拌混合しながら、前述のアクリル樹脂(AC-2)溶液を徐々に添加して水分散した。水で濃度調整することにより、固形分30質量%のアクリル樹脂(AC-2)の水分散体(AC-2WD)を調製した。
(粒子)
(粒子(P-1))
粒子(P-1)として固形分濃度20質量%である平均粒径10~15nmのコロイダルシリカ(スノーテックスO;日産化学(株)製)を粒子(P-1)溶液としてそのまま用いた。
(粒子(P-2))
粒子(P-2)として固形分濃度20質量%である平均粒径500nmのコロイダルシリカ(シーホスターKE-W50;(株)日本触媒)を粒子(P-2)溶液としてそのまま用いた。
(粒子(P-3))
粒子(P-3)として固形分濃度20質量%である平均粒径10~20nmの酸化ジルコニア粒子(ZSL00014;第一稀元素化学工業(株))を粒子(P-3)溶液としてそのまま用いた。
(添加剤)
(添加剤(AD-1)溶液の調製)
攪拌機と温度計を備えたフラスコに、ジメチルエタノールアミン(沸点134℃、分子量89.1)と所定量の水を添加して溶解することで、アミン濃度50質量%の添加剤(AD-1)溶液を調製した。
(添加剤(AD-2)溶液の調製)
攪拌機と温度計を備えたフラスコに、メチルジエタノールアミン(沸点245℃、分子量119.2)と所定量の水を添加して溶解することで、アミン濃度50質量%の添加剤(AD-2)溶液を調製した。
(添加剤(AD-3)溶液の調製)
攪拌機と温度計を備えたフラスコに、トリエタノールアミン(沸点335℃、分子量149.2)と所定量の水を添加して溶解することで、アミン濃度50質量%の添加剤(AD-3)溶液を調製した。
(基材用ポリエステル樹脂(E-1)の製造)
(三酸化アンチモン溶液の調製)
三酸化アンチモン(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製)をエチレングリコールとともにフラスコに仕込み、150℃で4時間攪拌して溶解後、室温まで冷却して、20g/Lの三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を調製した。
(基材用ポリエステル樹脂(E-1)の重合)
攪拌機付き2リッターステンレス製オートクレーブに高純度テレフタル酸とその2倍モル量のエチレングリコールを仕込み、トリエチルアミンを酸成分に対して0.3モル%加え、0.25MPaの加圧下250℃にて水を系外に留去しながらエステル化反応を行いエステル化率が約95%のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびオリゴマーの混合物(以下BHET混合物という)を得た。このBHET混合物に重縮合触媒として、上記三酸化アンチモン溶液を用い、ポリエステル中の酸成分に対してアンチモン原子として0.04モル%になるように加え、次いで、窒素雰囲気下、常圧にて250℃で10分間攪拌した。その後、60分間かけて280℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに280℃、13.3Paで68分間重縮合反応を実施して、固有粘度(IV)(溶媒:フェノール/テトラクロロエタン=60/40)が0.61dL/gであり、粒子を実質上含有していないポリエステル樹脂(E-1)を得た。
(基材用ポリエステル樹脂(E-2)の製造)
(アルミニウム化合物溶液の調製例)
塩基性酢酸アルミニウム(ヒドロキシアルミニウムジアセテート;シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製)の20g/L水溶液に対して等量(容量比)のエチレングリコールをともにフラスコに仕込み、室温で6時間攪拌した後、減圧(133Pa)下、70~90℃で数時間攪拌しながら系から水を留去し、20g/Lのアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を調製した。
(リン化合物溶液の調製例)
リン化合物として3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸 ジエチル(Irganox1222(BASF社製))をエチレングリコールとともにフラスコに仕込み、窒素置換下攪拌しながら液温160℃で25時間加熱し、50g/Lのリン化合物のエチレングリコール溶液を調製した。
(アルミニウム化合物の溶液とリン化合物の溶液の混合物の調製)
上記アルミニウム化合物の調製例および上記リン化合物の調製例で得られたそれぞれのエチレングリコール溶液をフラスコに仕込み、アルミニウム原子とリン原子がモル比で1:2となるように室温で混合し、1日間攪拌して触媒溶液を調製した。
(基材用ポリエステル樹脂(E-2)の重合)
重縮合触媒として三酸化アンチモン溶液の代わりに、前述のアルミニウム化合物の溶液とリン化合物の溶液の混合物を用いて、ポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子およびリン原子としてそれぞれ0.014モル%および0.028モル%になるように
加えた以外は、ポリエステル樹脂E-1と同様に重合した。但し、重合時間は68分間とすることで、固有粘度(IV)が0.61dL/gであり、粒子を実質上含有していないポリエステル樹脂(E-2)を得た。
(実施例1)
(1)塗布液(No.2)の調製
水とイソプロパノールの混合溶剤(80/20質量部比)に、下記の塗剤を混合して計100質量部に調整した。ブロックイソシアネート系架橋剤の水分散体(C-1-BWD)/ポリエステル樹脂の水分散体(PES-1WD)/ポリウレタン樹脂の水分散体(PU-1WD)の固形分質量比が30/35/35、総固形樹脂分濃度4質量%とした。次に、粒子(P-1)と粒子(P-2)が前述の樹脂等の総固形分100に対してそれぞれの固形分質量比が12.0及び0.4とした。さらに、この塗布液にシリコーン系界面活性剤の10%水溶液を1質量%添加して塗布液(No.2)を調製した。各塗布液の樹脂及び添加剤の配合比については表3に示す。塗布液(No.2)の調製例を下記に示す。
塗布液(No.2)の調製例
混合溶剤(水/イソプロパノール) 84.85質量部
ブロックイソシアネート系架橋剤の水分散体(C-1-BWD)
3.00質量部
ポリエステル樹脂の水分散体(PES-1WD)
4.67質量部
ポリウレタン樹脂の水分散体(PU-1WD)
4.00質量部
粒子(P-1)溶液 2.40質量部
粒子(P-2)溶液 0.08質量部
界面活性剤水溶液 1.00質量部
計100.00質量部
(2)積層ポリエステルフィルムの製造
フィルム原料樹脂として、ポリエステル樹脂(E-1)の樹脂ペレットを、133Paの減圧下、135℃で6時間乾燥した。その後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押出しして、表面温度20℃に保った回転冷却金属ロール上で急冷密着固化させ、未延伸PETシートを得た。
この未延伸PETシートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。
次いで、前記塗布液(No.2)をPETフィルムの片面に、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.08g/mになるように塗布した。塗布後、90℃で3秒、40℃で3秒熱処理して乾燥させた。ついで、フィルムを110℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向を固定した状態で、230℃で5秒間加熱した。さらに3%の幅方向の弛緩処理を行ない、厚み100μmの積層ポリエステルフィルムを得た。塗布層の厚みは70nmであった。このフィルムの評価結果を表4に示す。
(実施例2~4)
塗布液を、表4の各実施例記載の塗布液Noを使用した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。各塗布液Noに使用した架橋剤、樹脂、粒子等の種類と配合量比は表3に記載したものを使用した。
(実施例5)
塗布液を、表4に記載の塗布液(No.8)を使用した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。塗布液(No.8)は下記に詳細を示す。
(1)塗布液(No.8)の調製
塗布液(No.1)と同様にして、架橋剤、樹脂、粒子等の種類と配合量比は表3に記載したものを使用した。但し、塗布液(No.8)には表3記載の様に、アミン化合物(B)に該当する沸点245℃のメチルジエタノールアミンからなる添加剤(AD-2)溶液を添加した。添加量は架橋剤の酸価から求められるカルボキシル基量に対して同量のモル量とした。添加剤(AD-2)溶液の添加により、ブロックイソシアネート系架橋剤(C-1-FWD中の架橋剤)の見かけのアミンの沸点差は156℃、総アミンと架橋剤のカルボキシル基のモル%(((A)+(B))/(C))は200%、総アミンに対してアミン化合物(A)の使用量であるモル%((A)/((A)+(B)))は50%とした。表3には架橋剤と樹脂の総固形分100に対して、添加剤(AD-2)の前述のモル量を固形分質量部で表記した。また、添加剤(AD-2)溶液による質量部増加分は混合溶液の添加量により調整した。塗布液(No.8)の調製例を下記に示す。
塗布液(No.8)の調製例
混合溶剤(水/イソプロパノール) 84.63質量部
ブロックイソシアネート系架橋剤の水分散体(C-1-FWD)
3.00質量部
ポリエステル樹脂の水分散体(PES-1WD)
4.67質量部
ポリウレタン樹脂の水分散体(PU-1WD)
4.00質量部
粒子(P-1)溶液 2.40質量部
粒子(P-2)溶液 0.08質量部
界面活性剤水溶液 1.00質量部
添加剤(AD-2)溶液 0.22質量部
計100.00質量部
(実施例6~8)
表4に記載された様に、実施例6~8では対応する塗布液No.9、10、12を使用した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。各塗布液Noに使用した架橋剤、樹脂、粒子、添加剤の種類と配合量比は表3に記載したものを使用し、前述の塗布液(No.8)と同様に調製した。
塗布液No.9、10、12では、アミン化合物(B)に該当する各添加剤量は架橋剤の酸価から求められるカルボキシル基量に対して、それぞれ、6、3、3倍のモル量とした。各添加剤により、ブロックイソシアネート系架橋剤(C-1-FWD中の架橋剤)の見かけのアミンの沸点差はそれぞれ、156、246、201℃、総アミンと架橋剤のカルボキシル基のモル%(((A)+(B))/(C))はそれぞれ、700、400、400%、総アミンに対してアミン化合物(A)の使用量であるモル%((A)/((A)+(B)))はそれぞれ、14、25、25%とした。
(実施例9~23)
塗布液を、表4の各実施例記載の塗布液Noを使用した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。各塗布液Noに使用した架橋剤、樹脂、粒子等の種類と配合量比は表3に記載したものを使用した。
(実施例24)
フィルム原料樹脂としてE-1の代わりにE-2を使用した以外は、実施例19と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例1~2)
塗布液を、表4の各実施例記載の塗布液Noを使用した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。各塗布液Noに使用した架橋剤、樹脂、粒子等の種類と配合量比は表3に記載したものを使用した。
(比較例3)
塗布液を、表4に記載の塗布液(No.7)を使用した以外は、実施例8と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
塗布液(No.7)の調製では表3記載の様に、アミン化合物(A)に該当する沸点134℃のジメチルエタノールアミンからなる添加剤(AD-1)溶液を使用した。添加量は架橋剤の使用量及び酸価から求められるカルボキシル基量に対して3倍のモル量とした。添加剤(AD-1)溶液の添加により、総アミンと架橋剤のカルボキシル基のモル数の比率(((A)+(B))/(C))は400モル%、総アミンに対してアミン化合物(A)の使用量であるモル比((A)/((A)+(B)))は100モル%であった。
(比較例4~9)
塗布液を、表4の各実施例記載の塗布液Noを使用した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。各塗布液Noに使用した架橋剤、樹脂、粒子等の種類と配合量比は表3に記載したものを使用した。
表4に各実施例、比較例の評価結果を示す。
表4に示すように、各実施例1~24おいては、ヘイズ、コート品位、ブロッキング耐性、UVインキまたはハードコート層との密着性及び耐湿熱性において満足できる結果が得られた。一方、比較例1~9では、結果において満足できるものではなかった。
本発明によって、光学用途、建材用途、包装用途、ラベル用途などあらゆる分野に最適な耐湿熱性に優れた易接着性を有する積層ポリエステルフィルムの提供が可能となった。

Claims (3)

  1. ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を備える積層フィルムであって、前記塗布層は、ポリエステル樹脂と、沸点が150℃未満と沸点が150℃以上の2種のアミン化合物のカルボキシル基塩を有するイソシアネート系架橋剤を含有する組成物を含んで形成された積層ポリエステルフィルム。
  2. 前記の沸点が150℃以上のアミン化合物が1個以上の水酸基を有する請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
  3. 前記の2種のアミン化合物の沸点差が70℃以上である請求項1または2記載の積層ポリエステルフィルム。
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