JP2024008812A - 車両用ヒータ装置 - Google Patents

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Abstract

Figure 2024008812000001
【課題】湿雪に対し、光学機能またはセンサ機能を確保するためにヒータに消費される電力を低減する。
【解決手段】車両用ヒータ装置は、光源4またはセンサ21、レンズ5、ヒータ6および親水性コーティング7を備える。光源4またはセンサ21は、車両1の外部へ向けて光を照射または電磁波を送受信する。レンズ5は、光源4から照射される光の照射方向またはセンサ21により送受信される電磁波の送受信方向に設けられ、光または電磁波を透過する。ヒータ6は、レンズ5に設けられ、通電により発熱する。親水性コーティング7は、レンズ5またはヒータ6のうち最も外気側の表面に施されたものである。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両用ヒータ装置に関するものである。
近年、車載エレクトロニクスの進化により、自動車の先進運転支援システム(ADAS: Advanced driver-assistance systems)の開発が著しく、自動運転が現実になりつつある。日本の国土交通省では、自動運転のレベルを現在のレベル2(即ち、特定条件下での自動運転機能)から段階的に引き上げ、2025年~2030年を目途に完全自動運転となるレベル5を目指している。しかしながら、センサ製品は悪環境(例えば、積雪・凍結・豪雨・濃霧)では、センサの感度が低下する課題がある。そこで、車両に搭載されるヘッドライトまたはセンサ装置が備えるレンズをヒータにより温めることで、レンズへの着氷、着雪を防ぎ、光学機能またはセンサ機能を確保する車両用ヒータ装置が知られている。
特許文献1には、ヘッドライトのレンズに電熱線を設けたヒータ装置が記載されている。この特許文献1の段落0044等には、レンズの内側に設けたコーティングにより、レンズの内面側の曇り等を防ぐ技術が記載されている。また、レンズに設けた電熱線をコーティングにより接着、保持する技術が記載されている。さらに、電熱線の熱伝導性をコーティングにより増加させることで、レンズの霧、液滴、氷を低減、排除する技術も記載されている。なお、特許文献1では、電熱線は、conductive trace(即ち、導電線)と呼ばれている。
米国特許出願2021/0388966A1明細書
しかしながら、特許文献1のようにヘッドライトのレンズの内側に電熱線等のヒータとコーティングを設けた場合、降雪時にレンズの外気側の表面(以下、単に「レンズの表面」という)に雪が付くと、ヒータの熱で融雪された水が摩擦力によりレンズの表面に留まる。そのため、レンズの表面の水の上に積もる雪に対してヒータからの熱が伝わりにくくなるので、ヒータの熱で融雪しきれなくなり、最終的にレンズ上の水が雪に吸熱されて凍結し、氷になってしまう。そして、その氷を起点にしてレンズに雪が積もると、ヘッドライトの光源からの光がレンズの外へ照射される光量が減少し、ヘッドライトの光学機能が確保できなくなる。
それに対し、ヒータの発熱量を上げてレンズに積もった雪を全て溶かすことも考えられる。しかし、そのようにすれば、ヒータの発熱量はレンズに積もった雪の潜熱に相当するものとなり、ヒータに消費される電力が増大してしまう。
ところで、着雪の対策としてレンズの表面に撥水性コーティングまたは疎水性コーティングを施し、レンズに雪が付かないようにすることも考えられる。なお、撥水性コーティングおよび疎水性コーティングはいずれも、水をはじく性質を有するコーティングである。具体的には、疎水性コーティングはコーティング表面と水との接触角が40°~90°ものをいい、撥水性コーティングはコーティング表面と水との接触角が90°以上のものをいう。
しかし、発明者らが行った実験によれば、撥水性コーティングおよび疎水性コーティングはいずれも、乾雪の場合はレンズの表面への着雪を防止できるが、湿雪の場合は雪の衝突によって一旦着雪すると、そこを起点に雪が積もってしまうことが分かった。
本発明は上記点に鑑みて、湿雪に対し、光学機能またはセンサ機能を確保するためにヒータに消費される電力を低減することの可能な車両用ヒータ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明によると、車両用ヒータ装置は、光源(4)またはセンサ(21)、レンズ(5)、ヒータ(6)および親水性コーティング(7)を備える。光源またはセンサは、車両の外部へ向けて光を照射または電磁波を送受信する。レンズは、光源から照射される光の照射方向またはセンサにより送受信される電磁波の送受信方向に設けられ、光または電磁波を透過する。ヒータは、レンズに設けられ、通電により発熱する。親水性コーティングは、レンズまたはヒータのうち最も外気側の表面に施されたものである。
これによれば、レンズに雪が付いた場合、その雪のうちレンズ側の部位をヒータの熱により溶かすと、その溶けた水は親水性コーティングの作用によりレンズの表面(即ち、親水性コーティングが施された部位の表面)に沿って広がり、水の膜となる。その水の膜により、レンズの表面と積雪との摩擦力が小さくなり、水はレンズの表面にとどまることが出来ず、その水の膜と共に積雪が自らの重みによってレンズから滑り落ちる。これにより、光源からの光をレンズの外へ照射可能になり、または、センサからの電磁波をレンズの外に送受信可能になる。このように、この車両用ヒータ装置は、ヒータの発熱によって積雪を全て溶かすのでなく、積雪のうちレンズ側の部位のみを溶かすことで積雪を排除し、ヒータに消費される電力を低減できる。
請求項8に係る発明によると、車両用ヒータ装置は、センサ(21)、カバー部材(5)、ヒータ(6)および親水性コーティング(7)を備える。センサは、車両の外部へ電磁波を送受信する。カバー部材は、センサにより送受信される電磁波の送受信方向に設けられ、電磁波を透過する。ヒータは、カバー部材に設けられ、通電により発熱する。親水性コーティングは、カバー部材またはヒータのうち最も外気側の表面に施されたものである。
これによれば、請求項8に係る発明も、請求項1に係る発明と同時作用効果を奏する。
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
第1実施形態に係る車両用ヒータ装置が搭載される車両の斜視図である。 第1実施形態に係る車両用ヒータ装置の断面図である。 図2のIII矢視、即ち車両用ヒータ装置の正面視において、親水性コーティングが施された領域を示す図である。 レンズに付いた雪が水の膜と共にレンズから滑り落ちる様子を説明するための説明図である。 レンズに付いた雪がヒータの熱で溶かされて水となり、その水が親水性コーティングによりレンズの表面に広がった様子を示す図である。 レンズに付いた雪がヒータの熱で溶かされて水となり、その水が撥水性または疎水性コーティングによりレンズの表面で玉状の水滴となった様子を示す図である。 図6に続き、玉状の水滴の上に雪が乗った状態を示す図である。 図7に続き、玉状の水滴が、その水滴の上に乗った雪に吸熱されて凍結し、氷となった様子を示す図である。 第2実施形態に係る車両用ヒータ装置の断面図である。 第3実施形態に係る車両用ヒータ装置の断面図である。 第4実施形態に係る車両用ヒータ装置の断面図である。 参考例の車両用ヒータ装置が搭載された車両の前方部分の側面図である。 第5実施形態に係る車両用ヒータ装置の断面図である。 落雪性評価試験の試験条件を示す表である。 落雪性評価試験における着雪の様子を表したグラフである。 各種コーティングを施した試験片に対する落雪性評価試験の結果と、各種コーティングの接触角および滑落角を示す表である。 落雪性評価試験結果のうちマイティラックGII(登録商標)と親水材Aを抜粋した表である。 着雪と滑落のメカニズムを説明した説明図である。 各種コーティング材において対水滑落角と雪付着力との関係を示すグラフである。 FT-NIR分析方法を説明するための説明図である。 FT-NIR分析条件を示す表である。 FT-NIR分析による水と氷の判別方法を示すグラフである。 マイティラックGII(登録商標)と親水材Aとで凍結遅延測定結果を示すグラフである。 各サンプルにおける融雪評価試験の結果を示す表である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、車両用ヒータ装置は、車両1のヘッドライト2または各種センサ等として構成され、車両1に搭載されるものである。第1実施形態では、車両用ヒータ装置は、車両1のヘッドライト2として構成されたものについて説明する。なお、各図面では、車両1における上下方向、前後方向、左右方向を矢印で示している。
図2に示すように、第1実施形態の車両用ヒータ装置としてのヘッドライト2は、筐体3、光源4、レンズ5、ヒータ6、親水性コーティング7などを備えている。なお、図面では、説明の便宜上、各構成の形状、大きさ、厚み等を模式的に示している。
筐体3は、樹脂などにより形成され、ヘッドライト2の外郭をレンズ5と共に構成している。筐体3の内側には、反射鏡8などが設けられる。
光源4は、筐体3の内側に設けられ、車両1の外部に向けて光を照射するものである。図2では、光源4から照射される光を、符号9を付した2点鎖線で模式的に示している。光源4は、例えばLEDランプ、HIDランプまたはハロゲンランプなどにより構成される。LEDは、light-emitting diodeの略であり、HIDは、High Intensity Dischargeの略である。光源4は、特許請求の範囲に記載の「光源またはセンサ」の一例である。
なお、図示は省略するが、筐体3内には、例えば、車両前方の物体を検知するための各種センサ(例えば、ソナーセンサ、ミリ波レーダセンサ、LIDARセンサまたは画像センサ等)を設置してもよい。LIDARはLight Detection and Ranging、または、Laser Imaging Detection and Rangingの略である。
レンズ5は、光源4の光照射方向に設けられるアウターレンズである。レンズ5の外縁は、筐体3に固定されている。レンズ5は、光源4から照射される光を透過する材料(例えば、ガラスまたは樹脂など)により形成される。また、筐体3内に各種センサが設けられる場合、レンズ5は、センサにより送受信される電磁波を透過する材料(例えば、ガラスまたは樹脂など)により形成される。
なお、レンズ5の内側には、筐体3とレンズ5により内部空間10が形成されている。内部空間10は、密閉閉状態または半密閉状態に形成された空間である。なお、密閉状態とは、内部空間10の空気と外気とが遮断された状態をいい、半密閉状態とは、内部空間10の空気と外気との流通が制限されつつ、僅かな流通が許容された状態をいう。
ヒータ6は、レンズ5に設けられ、通電により発熱する電気ヒータである。なお、第1実施形態では、ヒータ6は、レンズ5のうち光源4側の面(以下、「レンズ5の内面」という)に設けられている。そのため、ヒータ6は、レンズ5により、外部からの異物の衝突などによる破損が防がれている。
本実施形態のヒータ6は、レンズ5の内面のうち略全面に設けられている。ただし、それに限らず、ヒータ6は、光源4から照射される光の主方向に向けて光源4をレンズ5に投影した領域した領域を含み、且つ、レンズ5の表面積全体の50%以上の範囲に設けられていてもよい。
ヒータ6は、例えば、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」という)、電熱線、または酸化インジウムスズ(以下、「ITO」という)の少なくともいずれか1つを用いて構成されている。CNTは、carbon nanotubeの略であり、ITOは、Indium Tin Oxideの略である。CNTを用いてヒータ6を構成する場合、ヒータ6は透明の薄膜にCNTを配置した透明導電フィルムとされ、レンズ5の内面に貼り付けられる。
図2および図3に示すように、親水性コーティング7は、レンズ5のうち外気側の表面に施されている。なお、本明細書では、レンズ5のうち外気側の表面を、「レンズ5の表面」または「レンズ5の外面」ということがある。親水性コーティング7は、レンズ5の表面(即ち、親水性コーティング7が施された部位の表面)に付着した水がその表面に沿って広がり、流れ落ちるように構成されたものである。具体的には、親水性コーティング7は、コーティング表面と水との接触角が40°以下のものをいう。図面では説明の便宜上、親水性コーティング7の厚みを大きく記載しているが、実際の親水性コーティング7の厚みは、例えば数nm~数十μm程度の薄膜とされる。そのため、本明細書では、「レンズ5の表面」を、レンズ5自体の表面に加えて、レンズ5のうち親水性コーティング7が施された部位の表面という意味で用いることもある。
本実施形態の親水性コーティング7は、レンズ5の表面の略全面に施されている。ただし、それに限らず、親水性コーティング7は、光源4から照射される光の主方向に向けて光源4をレンズ5に投影した領域した領域を含み、且つ、レンズ5の表面積全体の50%以上の範囲に施されていてもよい。その場合、親水性コーティング7とヒータ6とは、レンズ5の表面積全体の50%以上の範囲においてレンズ5の厚み方向に重なるように設けられていることが好ましい。
次に、レンズ5の表面に親水性コーティング7を施した意義について説明する。
図4は、レンズ5に付いた湿雪12の挙動を示したものである。図4に示すように、レンズ5に湿雪12が付いた場合、その湿雪12のうちレンズ5側の部位をヒータ6の熱により溶かすと、その溶けた水は親水性コーティング7の作用によりレンズ5の表面(即ち、親水性コーティング7が施された部位の表面)に沿って広がり、水の膜13となる。すると、その水の膜13により、レンズ5の表面と湿雪12との摩擦力が小さくなり、水はレンズ5の表面にとどまることが出来ず、矢印Aに示すように、その水の膜13と共に湿雪12が自らの重みによってレンズ5から滑り落ちる。このようにして、車両用ヒータ装置は、ヒータ6の発熱によって湿雪12を全て溶かすのでなく、湿雪12のうちレンズ5側の部位のみを溶かすことで湿雪12を排除できる。
続いて、レンズ5の表面に親水性コーティング7を施した場合と、撥水性コーティングまたは疎水性コーティング(以下、「撥水性または疎水性コーティング14」という)を施した場合の違いについて説明する。なお、図5~図8では、各コーティングの厚みが例えば数nm~数十μm程度であることから、各コーティングの厚みを図示していない。
図5は、レンズ5の表面に親水性コーティング7を施した場合において、レンズ5の表面に付いた雪がヒータ6の熱で溶かされて水となった様子を示す図である。図5に示すように、親水性コーティング7の場合、ヒータ6の熱で雪が溶けた水は、親水性コーティング7の作用によりレンズ5の表面に沿って広がる。図5では、レンズ5の表面と、水の膜13のうちレンズ5とは反対側の表面との距離D1(以下、「水の膜13の高さD1」という)を矢印で示している。
それに対し、図6~図8は、レンズ5の表面に撥水性または疎水性コーティング14を施した場合において、レンズ5の表面に雪が堆積する様子を示したものである。なお、図6~図8は、雪が堆積する様子を時間経過を追って示したものである。
まず、図6は、撥水性または疎水性コーティング14を施したレンズ5の表面に付いた雪がヒータ6の熱で溶かされて水となった様子を示す図である。図6に示すように、撥水性または疎水性コーティング14の場合、親水性コーティング7と比べてコーティング表面と水との接触角が大きいため、ヒータ6の熱で溶かされた水は表面張力により互いに結合して玉状の水滴15となる。図6では、レンズ5の表面と、水滴15のうちレンズ5とは反対側の表面との距離D2(以下、「水滴15の高さD2」という)を矢印で示している。ここで、図5で示した水の膜13の高さD1に比べて、図6で示した水滴15の高さD2の方が高い。
そのため、図6に続く図7に示すように、水滴15の上にさらに雪12が乗った場合、その雪12に対してヒータ6の熱が伝わりにくくなるので、ヒータ6の熱で雪12を溶かしきれなくなる。
図7に続く図8に示すように、さらに雪12が乗ると、その堆積した雪12の吸熱量がヒータ6の発熱量よりも大きくなり、最終的にレンズ5上の水滴が凍結して氷16になってしまう。そして、その氷16を起点として雪が積もることになる。
このように、レンズ5の表面に撥水性または疎水性コーティング14を施した場合、レンズ5の表面に雪12が衝突して一旦着雪すると、そこを起点にして雪12が積もってしまう。そして、レンズ5の表面に雪12が堆積すると、ヘッドライト2の光源4からの光がレンズ5の外へ照射される光量が減少し、ヘッドライト2の光学機能が確保できなくなる。また、ヘッドライト2にセンサを設置した場合、センサからの電磁波がレンズ5の外に送受信できなくなると、センサ機能を確保できなくなる。
それに対し、第1実施形態の車両用ヒータ装置は、次の構成および作用効果を奏することが可能である。
(1)第1実施形態の車両用ヒータ装置は、ヒータ6が設けられたレンズ5の外気側の表面に親水性コーティング7を施している。
これによれば、レンズ5に湿雪12が付いた場合、その湿雪12のうちレンズ5側の部位をヒータ6の熱により溶かし、レンズ5の表面に沿って広がる水の膜13として、その水の膜13と共に湿雪12を自重によりレンズ5から滑り落とすことが可能である。これにより、光源4からの光をレンズ5の外へ照射可能になり、または、センサからの電磁波をレンズ5の外に送受信可能になる。このように、この車両用ヒータ装置は、ヒータ6の発熱によって積雪を全て溶かすのでなく、積雪のうちレンズ5側の部位のみを溶かすことで、ヒータ6に消費される電力を低減できる。
(2)第1実施形態では、ヒータ6は、レンズ5の内面に設けられている。これにより、ヒータ6は、レンズ5により、外部からの異物の衝突などにより破損することが防がれる。
(3)第1実施形態では、ヒータ6は、CNT、電熱線またはITOの少なくともいずれか1つを用いて構成されている。これによれば、ヒータ6として、CNT、電熱線またはITOのいずれを採用してもよい。
(4)第1実施形態では、親水性コーティング7は、光源4から照射される光の主方向に向けて光源4をレンズ5に投影した領域した領域を含み、且つ、レンズ5の表面積全体の50%以上の範囲に設けられていてもよい。
そのような範囲に親水性コーティング7が設けられていれば、ヒータ6を作動させた際に、光源4の前方領域から雪を排除でき、ヘッドライト2の光学機能を確保できる。
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対してヒータ6と親水性コーティング7の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図9に示すように、第2実施形態では、ヒータ6は、レンズ5のうち外気側の表面に設けられている。そのため、ヒータ6は、雪に対して熱を効率よく伝えることが可能である。
また、第2実施形態では、親水性コーティング7は、ヒータ6のうち外気側の表面に施されている。即ち、ヒータ6が透明導電フィルムで形成されている場合、親水性コーティング7は、その透明導電フィルムのうち外気側の表面に施される。一方、ヒータ6が電熱線で形成されている場合、親水性コーティング7は、電熱線のうち外気側の表面に施され、さらに、電熱線同士の間に露出するレンズ5の表面にも施される。
以上説明した第2実施形態の車両用ヒータ装置も、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、第2実施形態では、ヒータ6は、レンズ5のうち外気側の面に設けられている。これによれば、ヒータ6は、雪に対して熱を効率よく伝えることが可能である。
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。上記第1、第2実施形態では、車両用ヒータ装置をヘッドライト2として説明した。それに対し、第3実施形態では、車両用ヒータ装置が、車両1に搭載されるセンサ装置20として構成されたものについて説明する。
図10に示すように、第3実施形態の車両用ヒータ装置としてのセンサ装置20は、筐体3、センサ21、レンズ5、ヒータ6、親水性コーティング7などを備えている。センサ装置20は、例えば、先進運転支援システム(ADAS;Advanced Driver-Assistance Systems)に用いられるものである。なお、センサ装置20が車両1に搭載される向きは、前後、上下、左右、斜めにおいてどのような向きであってもよく、その搭載位置についても限定はない。
筐体3は、樹脂または金属などにより形成され、センサ装置20の外郭をレンズ5と共に構成している。
センサ21は、筐体3の内側に設けられ、車両1の外部に向けて電磁波を送信し、また、車両1の外部から電磁波を受信するものである。図10では、センサ21から送信される電磁波の領域を、符号22を付した2点鎖線で模式的に示している。センサ21は、例えばソナーセンサ、ミリ波レーダセンサ、LIDARセンサ、または画像センサなどにより構成される。センサ21は、特許請求の範囲に記載の「光源またはセンサ」の一例である。
レンズ5は、センサ21の電磁波の送受信方向に設けられる。レンズ5の外縁は、筐体3に固定されている。レンズ5は、センサ21により送受信される電磁波を透過する材料(例えば、樹脂またはガラスなど)により形成される。なお、レンズ5は、可視光線を遮断するように、例えば黒色としてもよい。レンズ5は、筐体窓またはカバー部材と呼ばれることもある。
なお、図10では、筐体3とレンズ5により内部空間10が形成されている。但し、センサ装置20は、そのような構成に限らず、例えば、筐体3とレンズ5とを離れた位置に配置し、内部空間10を形成しない構成としてもよい。例えば、レンズ5を車両前方に設けられるエンブレムとして、そのエンブレムに対して車両後方側に筐体3とセンサ21を配置してもよい。
ヒータ6は、レンズ5に設けられ、通電により発熱する電気ヒータである。なお、第3実施形態では、ヒータ6は、レンズ5の内面に設けられている。そのため、ヒータ6は、レンズ5により、外部からの異物の衝突などによる破損が防がれている。ヒータ6の構成は、透明である必要がないことを除き、第1、第2実施形態で説明したものと実質的に同一である。
第3実施形態のヒータ6は、レンズ5の内面のうち略全面に設けられている。ただし、それに限らず、ヒータ6は、センサ21から送信される電磁波の主方向に向けてセンサ21をレンズ5に投影した領域を含み、且つ、レンズ5の表面積全体の50%以上の範囲に設けられていてもよい。
第3実施形態の親水性コーティング7は、レンズ5の表面の略全面に施されている。ただし、それに限らず、親水性コーティング7は、センサ21から送信される電磁波の主方向に向けてセンサ21をレンズ5に投影した領域を含み、且つ、レンズ5の表面積全体の50%以上の範囲に施されていてもよい。その場合、親水性コーティング7とヒータ6とは、レンズ5の表面積全体の50%以上の範囲においてレンズ5の厚み方向に重なるように設けられていることが好ましい。
以上説明した第3実施形態の車両用ヒータ装置も、上記第1、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態の車両用ヒータ装置も、第3実施形態と同じく、車両1に搭載されるセンサ装置20として構成されたものである。
図11に示すように、第4実施形態では、車両用ヒータ装置が備えるヒータ6は、レンズ5のうち外気側の表面に設けられている。
また、親水性コーティング7は、ヒータ6のうち外気側の表面に施されている。即ち、ヒータ6が透明導電フィルムで形成されている場合、親水性コーティング7は、その透明導電フィルムのうち外気側の表面に施される。一方、ヒータ6が電熱線で形成されている場合、親水性コーティング7は、電熱線のうち外気側の表面に施され、さらに、電熱線同士の間に露出するレンズ5の表面にも施される。
それ以外、第4実施形態の車両用ヒータ装置の構成は、第3実施形態で説明したものと同一である。
以上説明した第4実施形態の車両用ヒータ装置も、上記第1~第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(参考例)
次に、参考例の車両用ヒータ装置について説明する。参考例の車両用ヒータ装置は、上記第1、第2実施形態で説明したものと同じく、ヘッドライト2として構成されたものである。
ただし、図12に示すように、この参考例の車両用ヒータ装置が搭載される車両1は、ヘッドライト2に対して車両下方に配置されたフロントバンパー22が、ヘッドライト2よりも車両前方へ大きく突き出している。さらに、フロントバンパー22のうち車両上方を向く面(以下、「バンパーの上面23」という)が、水平に近い平坦面となっている。そのようなフロントバンパー22の形状によっては、ヘッドライト2のレンズ5から滑り落ちた雪12aがバンパーの上面23に溜まり、ヘッドライト2の光学機能またはセンサ機能が阻害される恐れがある。この参考例の課題に対し、次に説明する第5実施形態の構成が有効である。
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。第5実施形態は、上記参考例で説明した課題に対して、それを解決するものである。
図13に示すように、第5実施形態の車両用ヒータ装置は、上記第1、第2実施形態で説明した構成に加えて、フロントバンパー22に対してもバンパー用ヒータ61およびバンパー用親水性コーティング71を備えている。
バンパー用ヒータ61は、車幅方向において、フロントバンパー22のうち少なくともヘッドライト2のレンズ5に対し車両下方の部位に設けられている。また、図13に示したバンパー用ヒータ61は、フロントバンパー22のうち車両上下方向の全体に設けられている。但し、それに限らず、バンパー用ヒータ61は、フロントバンパー22のうち車両上下方向において中央よりも上方(即ち、ヘッドライト2側)の領域のみに設けてもよい。或いは、バンパー用ヒータ61は、バンパーの上面23のみ、または、バンパーの上面23とその周囲のみに設けてもよい。
また、図13に示したバンパー用ヒータ61は、フロントバンパー22のうち車両前方を向く面および車両上方を向く面に設けられている。それに限らず、バンパー用ヒータ61は、フロントバンパー22のうち車両後方を向く面および車両下方向く面(即ち、バンパーの裏面)に設けられていてもよい。バンパー用ヒータ61は、例えば、CNT、電熱線またはITOの少なくともいずれか1つを用いて構成される。
バンパー用親水性コーティング71は、フロントバンパー22に設けられたバンパー用ヒータ61の上に施されている。即ち、バンパー用親水性コーティング71は、車幅方向において、フロントバンパー22のうち少なくともヘッドライト2のレンズ5に対し車両下方の部位に設けられている。また、図13に示したバンパー用親水性コーティング71は、フロントバンパー22のうち車両上下方向の全体に設けられている。但し、それに限らず、バンパー用親水性コーティング71は、フロントバンパー22のうち車両上下方向において中央よりも上方(即ち、ヘッドライト2側)の領域のみに設けてもよい。或いは、バンパー用親水性コーティング71は、バンパーの上面23のみ、または、バンパーの上面23とその周囲のみに設けてもよい。
バンパー用親水性コーティング71の構成は、第1実施形態等で説明したものと同じく、バンパーの表面(即ち、バンパー用親水性コーティング71が施された部位の表面)に付着した水がその表面に沿って広がり、流れ落ちるように構成されたものである。
以上説明した第5実施形態の車両用ヒータ装置は、次の構成およびそれによる作用効果を奏する。
第5実施形態の車両用ヒータ装置は、フロントバンパー22のうちレンズ5に対し車両下方の部位に施されたバンパー用ヒータ61とバンパー用親水性コーティング71を備えている。
これによれば、フロントバンパー22の上に雪が溜まる場合でも、その雪のうちバンパー側の部位をバンパー用ヒータ61により溶かして水の膜とし、その水の膜と共に積雪を自重や風によりバンパーから滑り落とすことが可能である。したがって、この車両用ヒータ装置は、ヘッドライト2の光学機能またはセンサ21のセンサ機能を維持すると共に、バンパー用ヒータ61に消費される電力を低減できる。
(第5実施形態の変形例1)
上記第5実施形態の変形例1として、車両用ヒータ装置は、フロントバンパー22のうちレンズ5に対し車両下方の部位に設けられたバンパー用ヒータ61を備え、バンパー用親水性コーティング71を備えない構成としてもよい。これによれば、ヘッドライトのレンズ5から滑り落とされた雪がフロントバンパー22の上に溜まる可能性が有る場合でも、バンパー用ヒータ61によってその雪を溶かし、ヘッドライト2の光学機能またはセンサ21のセンサ機能を確保できる。
(第5実施形態の変形例2)
上記第5実施形態の変形例2として、車両用ヒータ装置は、フロントバンパー22のうちレンズ5に対し車両下方の部位に施されたバンパー用親水性コーティング71を備え、バンパー用ヒータ61を備えない構成としてもよい。これによれば、ヘッドライトのレンズ5から滑り落とされた雪がフロントバンパー22の上に溜まる可能性が有る場合でも、バンパー用親水性コーティング71によってその雪を水の膜と共にフロントバンパー22から滑り落とし、ヘッドライト2の光学機能またはセンサ21のセンサ機能を確保できる。なお、水の膜は、ヘッドライト2のレンズ5に設けたヒータ6の熱で雪を溶かした水を利用すればよい。
(評価試験)
以下、本発明の発明者らが行った複数の評価試験について説明する。
(落雪性評価試験)
まず、落雪性評価試験について説明する。落雪性評価試験は、複数の試験片に対してそれぞれ各種コーティングを施したテストピースを用意し、各種コーティングにおける落雪のしやすさを評価した試験である。
図14に示すように、試験片として、材質はアルミニウムA1050、サイズは100×100×1mm、表面粗さはRz0.002μm(即ち、鏡面)のものを使用した。
落雪性評価試験は、室温+1~2℃の環境下において、人工的に作った湿雪を、試験片のコーティング面に対し90°の角度から風速10m/sで30分間吹き付けた。試験片に吹き付けられた雪は、試験片のコーティング面に付着、落雪を繰り返した。
図15は、落雪性評価試験における着雪の様子をグラフに表したものである。縦軸は、着雪の厚さまたは質量を示し、横軸は時間を示している。
図15に示すように、時刻T1で試験が開始されると、時刻T1から時刻T2の間(即ち、着雪成長時間)に着雪が成長した後、時刻T2で着雪が自重によって落下する。時刻T2から時刻T3は試験片に雪が着かない無着雪時間である。その後再び、時刻T3から時刻T4の間(即ち、着雪成長時間)に着雪が成長した後、時刻T4で着雪が自重によって落下する。複数回の着雪成長と落雪を繰り返した後、時刻T5で試験が終了する。落雪性評価試験では、落雪した雪の重量、落雪回数、雪の堆積高さ、付着時間などを評価した。なお、試験片によっては、落雪しないものや、無着雪時間が無いものも存在した。
落雪性評価試験における各試験片の結果を図16に示す。図16において、平均積雪重量は、着雪成長時間ごとの積雪重量の平均値である。平均積雪高さは、着雪成長時間ごとの積雪高さの平均値である。落雪回数は、試験時間内(即ち、30分間)に落雪した回数である。平均着雪時間は、着雪成長時間の平均値である。総着雪重量は、試験時間内に着雪した雪の総重量である。平均雪付着力は、平均落雪重量を試験片のコーティング面の面積で除算したものである。なお、平均雪付着力は、エクセル表記されており、例えば、5.0E-03は5.0×10-3を表している。
対水接触角(以下、「接触角」とする)は、試験片のコーティング表面と水との接触部のなす角である。上述したように、本明細書では、接触角が40°以下のものを親水性コーティングといい、接触角が40°~90°ものを疎水性コーティングといい、接触角が90°以上のものを撥水性コーティングという。
対水滑落角(以下、「滑落角」とする)は、試験片のコーティング表面に10マイクロリットルの純水を着滴し、試験片を傾斜させた際に、その純水が滑落するときの水平に対する試験片の角度である。本明細書では、滑落角が10°以下であれば、コーティング表面の滑落性が高いと考える。
図16の表のNO.11に示したように、親水材Aは他の試験片に対して落雪回数10回で非常に多く、平均着雪時間は2.72分と短く、総着雪重量も119.8gと少ない。
図17は、図16の表に示した試験片のうち、NO.2のマイティラックGII(登録商標)と、NO.11の親水材Aを抜粋したものである。マイティラックGII(登録商標)は、日本ペイント株式会社の商品名である。親水材Aは、株式会社レゾナック(旧社名は昭和電工マテリアルズ株式会社)の商品名である。図17では、落雪性評価試験を30分間行った後の外観を撮影した画像を示している。この画像では、雪が白く見えており、落雪した箇所は黒っぽく見えている。なお、画像の中で、試験片は一点鎖線で示した部分である。マイティラックGII(登録商標)の画像では、試験片に付着した雪が連なって重力方向下側に伸びていることが見て取れる。一方、親水材Aの画像では、着雪がバラバラに分割されて落雪していることが見て取れる。
なお、図16および図17で示した滑落角は、試験片のコーティング表面に10マイクロリットルの純水を着滴したときの滑落角である。それに対し、図示は省略するが、試験片のコーティングを親水材Aとしたとき、その表面に30マイクロリットルの純水を着滴したときの滑落角は10°未満であった。また、試験片のコーティングを親水材Aとしたとき、その表面に1マイクロリットルの純水を着滴したときの接触角は10°であった。
ここで、着雪と滑落のメカニズムを図18に示す。図18に示すように、氷点下の雪12が試験片30のコーティング31の表面に付着すると、温度が室温と同じ+1~2℃の試験片上で雪12は試験片との界面で融解した水32(即ち、界面融解水)となり、その融解水32に雪12が付着すると自重によって落雪する。図示は省略するが、さらに雪12が付着し続けると雪12によって冷却された試験片により融解水が凍結し雪との結合力が高まり着雪が発生するものと考えた。従って、落雪し易くするためには、コーティングの性質を、融解水が滑落し易いものにすることと、融解水を凍結させ難くいものにすることが考えられる。融解水の滑落し易さは対水滑落角で評価し、落雪性は平均雪付着力で評価した。その結果、対水滑落角が小さい程雪付着力が小さく落雪性に優れることが判明した。従って、落雪性には滑水性が必要であると考えられる。
図19は、各種コーティング材において対水滑落角と雪付着力との関係を示したグラフである。図19の破線Rに示したように、対水滑落角と雪付着力とは相関関係がある。図19に示したように、親水材Aは、親水性コーティングの中でも、対水滑落角が非常に小さく、雪付着力が非常に小さいことが見てとれる。
なお、上記で説明した落雪性評価試験では、親水性コーティングだけでなく、撥水性または疎水性コーティングについても試験を行っている。しかし、撥水性または疎水性コーティングは、表面を凹凸形状にすることで、その凸と凸との間に空気の層が出来て撥水または疎水となるものである。そのため、撥水性または疎水性コーティングをセンサやライトに使用することは、電磁波または光が分散してしまうといった理由からも好ましくない。その点からも、親水性コーティングは、電磁波または光が分散しないので、センサやライトに使用するコーティングに適している。
(凍結遅延評価試験)
次に、凍結遅延評価試験について説明する。凍結遅延評価試験は、各種コーティング材において融解水を凍結させ難くい性質について評価した試験である。凍結遅延評価試験では、コーティング材表面の界面融解水が凍結したか否かを近赤外線分光法により判別し、凍結遅延効果を着霜現象によって検証した。
具体的に、図20に示すように、凍結遅延評価試験では、コーティング31を施した試験片30をペルチェ素子34の低温側に置いたものを近赤外線分光装置に組み込み、ペルチェ素子34を使って試験片30を冷却した。そして、ペルチェ素子34で試験片30を冷却することで、空気中の水分子35が凝縮してコーティング31の表面に凝縮水36が生じ、その凝縮水36が凍結する時間を測定した。図21に、凍結遅延評価試験における近赤外線分光法の分析条件を示す。
図22に、近赤外線分光法による水と氷の判別方法を示す。凝縮水と氷(具体的には、霜)を分析した結果、コーティング表面に水がある時の吸光度のピーク波長が1460nm、コーティング表面に氷がある時の吸光度のピーク波長は1492nmとなり、ピーク波長に差があることが確認できた。
次に、図23に示すように、凍結遅延評価試験の開始から水のピーク波長が氷のピーク波長にシフトする凍結時間を計測した。その結果、コーティング材がマイティラックGII(登録商標)の場合、試験開始から約490秒で吸光度のピーク波長がシフトした。したがって、コーティング材がマイティラックGII(登録商標)の場合、試験開始からコーティング材表面の界面融解水が氷になるまでの時間は約490秒であった。それに対し、コーティング材が親水材Aの場合、試験開始から約760秒で吸光度のピーク波長がシフトした。したがって、コーティング材が親水材Aの場合、試験開始からコーティング材表面の界面融解水が氷になるまでの時間は約760秒であった。これにより、親水材Aは、マイティラックGII(登録商標)に対し、凍結遅延時間が長いことが確認できた。したがって、親水材Aは、コーティング表面の界面融解水を凍結させ難くいので、落雪性に優れるといえる。なお、親水性コーティングは、試験開始からコーティング材表面の界面融解水が氷になるまでの時間が約500秒以上であれば、マイティラックGII(登録商標)に対し、凍結遅延時間が長いといえる。
(融雪電力量評価試験)
続いて、融雪電力量評価試験について説明する。融雪電力量評価試験では、ヘッドランプヒータ等で一般に用いられる基材であるポリカーボネート(以下、「PC」という)に各種コーティング材を塗布した試験片について、着雪試験をしたときに雪が滑落するヒータの電力量を測定した。
この試験は、環境温度-5℃、風速20km/h、着雪量30mm/h、試験片面に対する雪の衝突角度90°の条件で行った。
図24に示すように、試験片として、5つのサンプルを用意した。サンプル1は、PCであり、具体的には、アールエスコンポーネンツ株式会社のPS PRO プラスチックシートである。サンプル2は、PCにハードコートを施したものであり、ハードコートとして三菱ケミカル株式会社のアクリキング(登録商標)を使用した。サンプル3は、PCに表面処理を施したものであり、表面処理は、三菱ケミカル株式会社のダイヤビーム(登録商標)を使用した。サンプル4は、PCに表面処理を施したものであり、表面処理は、株式会社レジナックの親水材Aを使用した。サンプル5は、PCに表面処理を施したものであり、表面処理は、ダイキン工業株式会社のオプツール(登録商標)を使用した。
試験1~4、6は、コールドスタート試験を行い、試験5、7~9は、ホットスタート試験を行った。なお、試験4と5は連続して行い、試験6~8も連続して行った。
コールドスタート試験では、サンプルが冷却された状態で所定の電力を通電させ雪を吹き付けた時、雪が滑落する電力量を測定した。図24の表の×印は雪が滑落しなかったことを示し、〇印は雪が滑落したことを示す。その結果、試験2においてサンプル4の親水材Aが1347W/mで最も低い電力で雪が滑落した。
ホットスタート試験では、サンプルが温まった状態で所定の電力を通電させ雪を吹き付けた時、雪が滑落する電力量を測定した。その結果、試験5においてサンプル4の親水材Aが1257W/mで最も低い電力で雪が滑落した。
この試験結果から、ヒータの消費電力を低減できるコーティング材として、親水性Aが最も好ましいと言える。親水材Aは、上記の落雪性評価試験と凍結遅延評価試験からも明らかなように、親水性を有し、さらに、滑水性、凍結遅延特性といった特性を有するものである。
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、車両用ヒータ装置は、車両1のヘッドライト2またはセンサ装置20として構成したものについて説明したが、それに限らず、例えば、テールランプ、ウィンカーランプなどの灯火装置として構成してもよい。
(2)上記第5実施形態およびその変形例では、車両用ヒータ装置は、フロントバンパー22がヘッドライト2よりも車両前方へ大きく突き出し、バンパーの上面23が水平に近い平坦面となっているものについて説明したが、それに限らない。車両用ヒータ装置は、搭載される車両1のバンパーの形状に関わらず、バンパー用ヒータ61およびバンパー用親水性コーティング71の少なくとも一方を備えても差し支えない。
(3)上記第5実施形態およびその変形例では、車両用ヒータ装置は、フロントバンパー22に対し、バンパー用ヒータ61またはバンパー用親水性コーティング71を備えるものとしたが、それに限らない。車両用ヒータ装置は、テールランプとして適用される場合、そのテールランプに対して車両下側に配置されるリヤバンパーに対しバンパー用ヒータ61およびバンパー用親水性コーティング71の少なくとも一方を備えてもよい。
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態およびその一部は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
本発明の特徴は次のとおりである。
[請求項1]
車両用ヒータ装置において、
車両(1)の外部へ向けて光を照射または電磁波を送受信する光源(4)またはセンサ(21)と、
前記光源から照射される光の照射方向または前記センサにより送受信される電磁波の送受信方向に設けられ、光または電磁波を透過するレンズ(5)と、
前記レンズに設けられ、通電により発熱するヒータ(6)と、
前記レンズまたは前記ヒータのうち最も外気側の表面に施される親水性コーティング(7)と、を備える車両用ヒータ装置。
[請求項2]
前記ヒータは、前記レンズのうち前記光源側または前記センサ側の面、または、前記レンズのうち外気側の面に設けられている、請求項1に記載の車両用ヒータ装置。
[請求項3]
前記ヒータは、カーボンナノチューブ、電熱線、または酸化インジウムスズの少なくともいずれか1つを用いて構成されている、請求項1または2に記載の車両用ヒータ装置。
[請求項4]
前記親水性コーティングは、前記光源から照射される光の主方向に向けて前記光源を前記レンズに投影した領域、又は、前記センサから送信される電磁波の主方向に向けて前記センサを前記レンズに投影した領域を含み、且つ、前記レンズの表面積全体の50%以上の範囲に設けられる、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用ヒータ装置。
[請求項5]
前記車両のフロントバンパー(22)またはリヤバンパーのうち少なくとも前記レンズに対し車両下方の部位に設けられ、通電により発熱するバンパー用ヒータ(61)をさらに備える、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用ヒータ装置。
[請求項6]
前記車両のフロントバンパーまたはリヤバンパーのうち少なくとも前記レンズに対し車両下方の部位に施されたバンパー用親水性コーティング(71)をさらに備える、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用ヒータ装置。
[請求項7]
前記車両のフロントバンパーまたはリヤバンパーのうち少なくとも前記レンズに対し車両下方の部位に設けられ、通電により発熱するバンパー用ヒータと、
前記フロントバンパーまたは前記リヤバンパーまたは前記バンパー用ヒータのうち少なくとも前記レンズに対し車両下方の部位に施されるバンパー用親水性コーティングをさらに備える、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用ヒータ装置。
[請求項8]
車両用ヒータ装置において、
車両(1)の外部へ電磁波を送受信するセンサ(21)と、
前記センサにより送受信される電磁波の送受信方向に設けられ、電磁波を透過するカバー部材(5)と、
前記カバー部材に設けられ、通電により発熱するヒータ(6)と、
前記カバー部材または前記ヒータのうち最も外気側の表面に施される親水性コーティング(7)と、を備える車両用ヒータ装置。
[請求項9]
前記親水性コーティングは、前記親水性コーティングの表面に10マイクロリットルの純水を着滴し、水平に対する前記表面の傾斜角を10°以下としたときに前記純水が滑落する滑水性を有する、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用ヒータ装置。
[請求項10]
前記親水性コーティングは、当該親水性コーティングを施した試験片をペルチェ素子の低温側に置いたものを近赤外線分光装置に組み込み、下記の試験条件下において、ペルチェ素子の電源を入れて、近赤外線分光法による吸光度のピーク波長を測定したとき、1460nmの水のピーク波長が現れてから、ピーク波長が1492nmの氷のピーク波長に遷移するまでの時間が500秒以上の凍結遅延特性を有する、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の車両用ヒータ装置。
但し、試験条件として、ペルチェ素子電圧は12V、気温は25℃、相対湿度は50%RH、近赤外線分光法の測定条件として、測定機種はFT/IR-6700、試験片に対する近赤外線の入射角は20°、光源はハロゲン、吸光度のピーク波長の測定範囲は900~1700nm、分解能は4cm-1、積算は7回、測定間隔は10秒、測定時間は氷のピーク波長1492nmの高さ変化が小さくなるまでである。
1 車両
2 ヘッドライト(車両用ヒータ装置)
4 光源
5 レンズ
6 ヒータ
7 親水性コーティング
20 センサ装置(車両用ヒータ装置)
21 センサ

Claims (10)

  1. 車両用ヒータ装置において、
    車両(1)の外部へ向けて光を照射または電磁波を送受信する光源(4)またはセンサ(21)と、
    前記光源から照射される光の照射方向または前記センサにより送受信される電磁波の送受信方向に設けられ、光または電磁波を透過するレンズ(5)と、
    前記レンズに設けられ、通電により発熱するヒータ(6)と、
    前記レンズまたは前記ヒータのうち最も外気側の表面に施される親水性コーティング(7)と、を備える車両用ヒータ装置。
  2. 前記ヒータは、前記レンズのうち前記光源側または前記センサ側の面、または、前記レンズのうち外気側の面に設けられている、請求項1に記載の車両用ヒータ装置。
  3. 前記ヒータは、カーボンナノチューブ、電熱線、または酸化インジウムスズの少なくともいずれか1つを用いて構成されている、請求項1または2に記載の車両用ヒータ装置。
  4. 前記親水性コーティングは、前記光源から照射される光の主方向に向けて前記光源を前記レンズに投影した領域、又は、前記センサから送信される電磁波の主方向に向けて前記センサを前記レンズに投影した領域を含み、且つ、前記レンズの表面積全体の50%以上の範囲に設けられる、請求項1または2に記載の車両用ヒータ装置。
  5. 前記車両のフロントバンパー(22)またはリヤバンパーのうち少なくとも前記レンズに対し車両下方の部位に設けられ、通電により発熱するバンパー用ヒータ(61)をさらに備える、請求項1または2に記載の車両用ヒータ装置。
  6. 前記車両のフロントバンパーまたはリヤバンパーのうち少なくとも前記レンズに対し車両下方の部位に施されたバンパー用親水性コーティング(71)をさらに備える、請求項1または2に記載の車両用ヒータ装置。
  7. 前記車両のフロントバンパーまたはリヤバンパーのうち少なくとも前記レンズに対し車両下方の部位に設けられ、通電により発熱するバンパー用ヒータと、
    前記フロントバンパーまたは前記リヤバンパーまたは前記バンパー用ヒータのうち少なくとも前記レンズに対し車両下方の部位に施されたバンパー用親水性コーティングをさらに備える、請求項1または2に記載の車両用ヒータ装置。
  8. 車両用ヒータ装置において、
    車両(1)の外部へ電磁波を送受信するセンサ(21)と、
    前記センサにより送受信される電磁波の送受信方向に設けられ、電磁波を透過するカバー部材(5)と、
    前記カバー部材に設けられ、通電により発熱するヒータ(6)と、
    前記カバー部材または前記ヒータのうち最も外気側の表面に施される親水性コーティング(7)と、を備える車両用ヒータ装置。
  9. 前記親水性コーティングは、前記親水性コーティングの表面に10マイクロリットルの純水を着滴し、水平に対する前記表面の傾斜角を10°以下としたときに前記純水が滑落する滑水性を有する、請求項1、2または8に記載の車両用ヒータ装置。
  10. 前記親水性コーティングは、当該親水性コーティングを施した試験片をペルチェ素子の低温側に置いたものを近赤外線分光装置に組み込み、下記の試験条件において、ペルチェ素子の電源を入れて、近赤外線分光法による吸光度のピーク波長を測定したとき、1460nmの水のピーク波長が現れてから、ピーク波長が1492nmの氷のピーク波長に遷移するまでの時間が500秒以上の凍結遅延特性を有する、請求項1、2または8に記載の車両用ヒータ装置。
    但し、試験条件として、ペルチェ素子電圧は12V、気温は25℃、相対湿度は50%RH、近赤外線分光法の測定条件として、測定機種はFT/IR-6700、試験片に対する近赤外線の入射角は20°、光源はハロゲン、吸光度のピーク波長の測定範囲は900~1700nm、分解能は4cm-1、積算は7回、測定間隔は10秒、測定時間は氷のピーク波長1492nmの高さ変化が小さくなるまでである。
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