JP2024008395A - 作業車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】モジュレート動作中の燃料消費を抑制しつつ、モジュレート動作終了後の加速性能を向上させる。【解決手段】作業車両は、エンジンに接続された発電電動機と、発電電動機で発生する電力により車輪を駆動可能であって、かつ、車輪の回生制動が可能な走行駆動装置と、エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度センサと、エンジン回転速度センサにより検出されたエンジンの回転速度が第1目標回転速度に一致するように燃料噴射量を制御する制御装置とを備える。制御装置は、回生制動によって車体の進行方向を切り替えるモジュレート動作が行われ、エンジンの回転速度が第1目標回転速度よりも増加した場合には、エンジンの燃料噴射量を減少させ、エンジンの回転速度が、第1目標回転速度よりも大きい所定の第2目標回転速度未満になった場合には、エンジンの燃料噴射量を増加させる。【選択図】図9
Description
本発明は、作業車両に関する。
エンジンと、エンジンと機械的に接続された発電電動機と、発電電動機で発生する電力により車輪を駆動可能であって、かつ、車輪の回生制動が可能な走行駆動装置と、を備えたホイールローダ等の作業車両が知られている。エンジンには燃料噴射装置が備えられている。この燃料噴射装置により燃料噴射量が調整されることにより、エンジン回転速度と出力トルクが制御され、動力が発生する。
エンジンは、その回転速度が高いほど発生できる動力の上限値が大きくなる。一方、エンジンの回転速度が高いほど燃費は悪化する。そのため、必要なエンジン動力が大きい作業時には、オペレータによる操作に応じて、エンジンの回転速度が高くなるように制御されるとともに、必要なエンジン動力が小さい待機時には、エンジンの回転速度が低くなるように制御される。
ホイールローダ等の作業車両の基本的な運搬作業では、土砂等の掘削対象を掘削してバケットに掬い込み、ある程度後進して掘削対象から離れた後、ダンプトラック等の積込対象に向かって前進し、土砂等を積込対象に積み込む作業を行う。この運搬作業を速やかに行うため、オペレータはアクセルペダルを踏み続けながら前後進切替装置を後進から前進に切り替える。これにより、作業車両は、後進から前進に速やかに進行方向を切り替えるモジュレート動作をする。
車輪の回生制動が可能な走行駆動装置を備えた作業車両の場合、モジュレート動作によって回生制動が行われると、回生エネルギーが発生してエンジンに回生される。この作用により、実エンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも大きくなると、燃料噴射装置が燃料噴射量を低減する。回生制動が終了して作業車両が前進し始めると、実エンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも小さくなる。実エンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも小さくなると、燃料噴射装置は、燃料噴射量を増加させる。
このとき、実エンジン回転速度が目標エンジン回転速度よりも小さくなるまでは燃料噴射量が増加しない上、燃料噴射装置やエンジンの応答遅れの影響により、実エンジン回転速度が目標エンジン回転速度より大きく下がってしまう。このため、モジュレート動作の終了後の加速性能が悪いという問題があった。
特許文献1には、モジュレート動作の終了後の加速性能を向上するために、回生制動時に発生する回生エネルギーをチョッパ回路を経由してブレーキ抵抗器で消費することで、モジュレート動作中も燃料噴射を継続するようにした作業車両が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、モジュレート動作中も燃料噴射を継続するため、燃費の観点で改善の余地がある。
本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、モジュレート動作中の燃料消費を抑制しつつ、モジュレート動作の終了後の加速性能を向上させることが可能な作業車両を提供することを目的とする。
本発明の一態様による作業車両は、車体と、前記車体に設けられた車輪と、前記車体に搭載されたエンジンと、前記エンジンに機械的に接続された発電電動機と、前記発電電動機で発生する電力により前記車輪を駆動可能であって、かつ、前記車輪の回生制動が可能な走行駆動装置と、前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度センサと、前記エンジン回転速度センサにより検出された前記エンジンの回転速度が第1目標回転速度に一致するように、前記エンジンの燃料噴射量を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、回生制動によって前記車体の進行方向を切り替えるモジュレート動作が行われ、前記エンジンの回転速度が前記第1目標回転速度よりも増加した場合には、前記エンジンの燃料噴射量を減少させ、前記エンジンの回転速度が、前記第1目標回転速度よりも大きい所定の第2目標回転速度未満になった場合には、前記エンジンの燃料噴射量を増加させる。
本発明によれば、モジュレート動作中の燃料消費を抑制しつつ、モジュレート動作の終了後の加速性能を向上させることが可能な作業車両を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態では、作業車両が電動駆動式のホイールローダである例について説明する。なお、本実施形態では、エンジン及び発電電動機を駆動源とするハイブリッドシステムを備えたホイールローダを例に挙げて説明するが、エンジン及び回生制動が可能な走行駆動装置を備えた種々の作業車両に本発明を適用することができる。以下の説明では、上下、左右、前後の方向及び位置は、作業車両の通常の使用状態、すなわち各車輪が接地している状態を基準とする。
<第1実施形態>
-ホイールローダの構成-
図1~図9を参照して、本発明の第1実施形態に係るホイールローダ1について説明する。図1は、ホイールローダ1の側面図である。図1に示すように、ホイールローダ1は、電動式の走行駆動装置45が搭載された車体8と、車体8の前部に取り付けられた多関節型の作業装置6とを備えている。車体8は、アーティキュレート操舵式(車体屈折式)のものであり、前部車体8Aと、後部車体8Bと、前部車体8Aと後部車体8Bを連結するセンタージョイント10とを有する。
-ホイールローダの構成-
図1~図9を参照して、本発明の第1実施形態に係るホイールローダ1について説明する。図1は、ホイールローダ1の側面図である。図1に示すように、ホイールローダ1は、電動式の走行駆動装置45が搭載された車体8と、車体8の前部に取り付けられた多関節型の作業装置6とを備えている。車体8は、アーティキュレート操舵式(車体屈折式)のものであり、前部車体8Aと、後部車体8Bと、前部車体8Aと後部車体8Bを連結するセンタージョイント10とを有する。
前部車体8Aには作業装置6が取り付けられている。後部車体8Bには、運転室12及びエンジン室16が配置されている。運転室12内には、オペレータが着座する座席と、オペレータによって操作される操作装置が設けられている。エンジン室16には、エンジン20(図2参照)、エンジン20により駆動される油圧ポンプ30A,30B,30C(図2参照)、及びバルブ等の油圧機器が搭載されている。
作業装置6は、前部車体8Aに上下方向に回動自在に取り付けられるリフトアーム(以下、単にアームと記す)2と、アーム2を駆動する油圧シリンダ(以下、アームシリンダとも記す)4と、アーム2の先端部分に上下方向に回動自在に取り付けられるバケット3と、バケット3を駆動する油圧シリンダ(以下、バケットシリンダとも記す)5とを有する。駆動対象部材であるアーム2は、アームシリンダ4の伸縮動作に応じて動かされる。駆動対象部材であるバケット3は、バケットシリンダ5の伸縮動作に応じて動かされる。なお、アーム2及びアームシリンダ4は、前部車体8Aの左右に1つずつ設けられる。また、本実施形態では、バケット3を作動させるためのリンク機構として、Zリンク式(ベルクランク式)のリンク機構が採用されている。
ホイールローダ1は、車体8に設けられた車輪7を駆動する走行駆動装置45を備えている。走行駆動装置45は、走行電動機43と、走行電動機43からの動力を車輪7に伝達する動力伝達装置とを有する。動力伝達装置は、アクスル、デファレンシャル装置、プロペラシャフト等を含んで構成される。なお、車輪7には、前部車体8Aに取り付けられる前輪7Aと、後部車体8Bに取り付けられる後輪7Bとがある。走行電動機43からの動力は、前輪7A及び後輪7Bの少なくとも一方に伝達される。
走行電動機43は、車輪7を動作させる電動モータである。走行電動機43は、エンジン20の動力によって回転する発電電動機によって発電された電力により回転駆動される。
ホイールローダ1は、前部車体8Aと後部車体8Bとを連結するように設けられる左右一対の油圧シリンダ(以下、ステアリングシリンダとも記す)15を有するステアリング装置によって転舵される。
図2は、ホイールローダ1のシステム構成図である。図2に示すように、ホイールローダ1は、エンジン20と、エンジン20に燃料を供給する燃料噴射装置23と、エンジン20に機械的に接続された発電電動機40と、エンジン20及び発電電動機40に機械的に接続される油圧ポンプ30A,30B,30Cと、油圧ポンプ30Aから吐出される作動油によって駆動される作業装置6と、作業装置6の動作を制御するフロント制御部31と、油圧ポンプ30Bから吐出される作動油によって駆動されるブレーキ装置21と、ブレーキ装置21の動作を制御するブレーキ制御部32と、油圧ポンプ30Cから吐出される作動油によって駆動されるステアリング装置22と、ステアリング装置22を制御するステアリング制御部33と、発電電動機40で発生する電力により車輪7を駆動可能であって、かつ、車輪7の回生制動が可能な走行駆動装置45とを備える。
作業装置6及び走行駆動装置45は、エンジン20の動力によって、互いに独立して駆動される。原動機であるエンジン20は、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関により構成される。発電電動機40は、エンジン20から出力されるトルクによって回転し、発電する発電機として機能する。
油圧ポンプ30A,30B,30Cは、エンジン20が出力するトルクによって駆動されて作動油を吐出する。なお、発電電動機40が電動機として機能する場合には、エンジン20及び発電電動機40が出力するトルクによって、油圧ポンプ30A,30B,30Cが駆動される。
油圧シリンダ4,5,15,17,18は、エンジン20が出力するトルクによって回転する油圧ポンプ30A,30B,30Cから吐出される作動油(圧油)によって伸縮動作される。
フロント制御部31は、油圧ポンプ30Aからアームシリンダ4及びバケットシリンダ5へ供給される作動油の圧力、流量及び方向を制御する。これにより、アームシリンダ4及びバケットシリンダ5の伸縮動作が制御される。ブレーキ制御部32は、油圧ポンプ30Bからブレーキシリンダ17及び駐車ブレーキシリンダ18へ供給される作動油の圧力、流量及び方向を制御する。これにより、ブレーキシリンダ17及び駐車ブレーキシリンダ18の伸縮動作が制御される。ステアリング制御部33は、油圧ポンプ30Cからステアリングシリンダ15へ供給される作動油の圧力、流量及び方向を制御する。これにより、ステアリングシリンダ15の伸縮動作が制御される。
ホイールローダ1は、車両全体の制御を行うメインコントローラ100と、メインコントローラ100からのエンジン回転速度指令に基づいて燃料噴射装置23を制御するエンジンコントローラ120と、を備える。また、ホイールローダ1は、エンジンコントローラ120からの燃料噴射量指令に基づいて燃料噴射量を制御する燃料噴射装置23と、メインコントローラ100から入力される発電電圧指令に基づいて発電電動機40を制御する発電電動機用のインバータ(以下、発電インバータと記す)41と、メインコントローラ100から入力される走行駆動トルク指令に基づいて走行電動機43のトルクを制御する走行電動機用のインバータ(以下、走行インバータと記す)42と、運転室12内に設けられオペレータによって操作される各種操作装置(51~57)とを備える。
運転室12内には、車体8の進行方向を切り替える前後進切替装置である前後進スイッチ51と、作業装置6のアームシリンダ4(アーム2)を操作するアーム操作装置52と、作業装置6のバケットシリンダ5(バケット3)を操作するバケット操作装置53と、走行駆動装置45を操作するアクセル操作装置56と、ブレーキシリンダ17を操作するブレーキ操作装置57と、駐車ブレーキシリンダ18を操作する駐車ブレーキ操作装置54と、左右一対のステアリングシリンダ15を操作するステアリング操作装置55とが設けられている。前後進スイッチ51は、操作位置として、前進位置(F)、待機位置(N)、及び後進位置(R)を有している。
アーム操作装置52は、アーム操作レバーと、アーム操作レバーの操作量(以下、アーム操作量とも記す)を検出するアーム操作量センサ52aとを備える。バケット操作装置53は、バケット操作レバーと、バケット操作レバーの操作量(以下、バケット操作量とも記す)を検出するバケット操作量センサ53aとを備える。アクセル操作装置56は、アクセルペダルと、アクセルペダルの操作量(以下、アクセル操作量とも記す)を検出するアクセル操作量センサ56aとを備える。ブレーキ操作装置57は、ブレーキペダルと、ブレーキペダルの操作量(以下、ブレーキ操作量とも記す)を検出するブレーキ操作量センサ57aとを備える。ステアリング操作装置55は、ステアリングホイールと、ステアリングホイールの操作量(以下、ステアリング操作量とも記す)を検出するステアリング操作量センサ55aとを備える。アーム操作量センサ52a、バケット操作量センサ53a、アクセル操作量センサ56a、ブレーキ操作量センサ57a、ステアリング操作量センサ55aは、例えば、操作部材(操作レバーまたはペダル)の操作位置に応じた電圧をメインコントローラ100に出力するポテンショメータである。
-ホイールローダの制御装置-
ホイールローダ1の各部を制御する制御装置11は、メインコントローラ100とエンジンコントローラ120を含む。メインコントローラ100及びエンジンコントローラ120は、互いにデータの授受を行う。メインコントローラ100は、処理装置(動作回路)としてのCPU(Central Processing Unit)101、記憶装置としてのROM(Read Only Memory)102及びRAM(Random Access Memory)103、入力インタフェース104、出力インタフェース105、並びに、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。なお、エンジンコントローラ120も、メインコントローラ100と同様、処理装置、記憶装置及び入出力インタフェース等を備えたマイクロコンピュータで構成される。メインコントローラ100及びエンジンコントローラ120は、それぞれ1つのマイクロコンピュータで構成してもよいし、複数のマイクロコンピュータで構成してもよい。また、メインコントローラ100の機能とエンジンコントローラ120の機能を一つのコンピュータで実現してもよい。
ホイールローダ1の各部を制御する制御装置11は、メインコントローラ100とエンジンコントローラ120を含む。メインコントローラ100及びエンジンコントローラ120は、互いにデータの授受を行う。メインコントローラ100は、処理装置(動作回路)としてのCPU(Central Processing Unit)101、記憶装置としてのROM(Read Only Memory)102及びRAM(Random Access Memory)103、入力インタフェース104、出力インタフェース105、並びに、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。なお、エンジンコントローラ120も、メインコントローラ100と同様、処理装置、記憶装置及び入出力インタフェース等を備えたマイクロコンピュータで構成される。メインコントローラ100及びエンジンコントローラ120は、それぞれ1つのマイクロコンピュータで構成してもよいし、複数のマイクロコンピュータで構成してもよい。また、メインコントローラ100の機能とエンジンコントローラ120の機能を一つのコンピュータで実現してもよい。
メインコントローラ100のROM102は、EEPROM等の不揮発性メモリであり、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、メインコントローラ100のROM102は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。RAM103は揮発性メモリであり、CPU101との間で直接的にデータの入出力を行うワークメモリである。RAM103は、CPU101がプログラムを演算実行している間、必要なデータを一時的に記憶する。なお、メインコントローラ100は、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の記憶装置をさらに備えていてもよい。
CPU101は、ROM102に記憶されたプログラムをRAM103に展開して演算実行する演算装置であって、プログラムに従って入力インタフェース104及びROM102,RAM103から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。
入力インタフェース104には、各種操作装置(51~57)からの操作信号及び各種センサからのセンサ信号が入力される。入力インタフェース104は、入力された信号をCPU101で演算可能なデータに変換する。出力インタフェース105は、CPU101での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号をフロント制御部31、ブレーキ制御部32、ステアリング制御部33、発電インバータ41、走行インバータ42、及びエンジンコントローラ120等に出力する。
メインコントローラ100は、各種操作装置から入力される操作信号及びその他の各種センサから入力されるセンサ信号に基づいて、フロント制御部31、ブレーキ制御部32、ステアリング制御部33、発電インバータ41及び走行インバータ42、及びエンジンコントローラ120を統括的に制御する。
メインコントローラ100に入力される操作信号としては、アクセル操作量センサ56aによって検出されるアクセル操作量、ブレーキ操作量センサ57aによって検出されるブレーキ操作量、アーム操作量センサ52aによって検出されるアーム操作量、バケット操作量センサ53aによって検出されるバケット操作量、ステアリング操作量センサ55aによって検出されるステアリング操作量、及び、前後進スイッチ51から出力される前後進スイッチ51の操作位置を表す信号がある。
メインコントローラ100に入力されるセンサ信号としては、車体8とアーム2とを連結する連結軸に設けられるアーム相対角センサ62で検出された角度を表す信号、及び、アーム2とバケット3とを連結する連結軸に設けられるバケット相対角センサ63で検出された角度を表す信号がある。アーム相対角センサ62は、車体8に対するアーム2の相対角(傾斜角)を検出し、検出した角度を表す信号をメインコントローラ100に出力するポテンショメータである。バケット相対角センサ63は、アーム2に対するバケット3の相対角(傾斜角)を検出し、検出した角度を表す信号をメインコントローラ100に出力するポテンショメータである。地面(走行面)に対する車体8の角度は一定であるため、アーム相対角センサ62で検出される角度は、地面に対するアーム2の相対角(傾斜角)に相当するといえる。
また、メインコントローラ100に入力されるセンサ信号としては、車速センサ61によって検出される車速(車両の走行速度)を表す信号がある。車速センサ61は、ホイールローダ1の車速を検出し、検出した車速を表す信号をメインコントローラ100に出力する。さらに、メインコントローラ100に入力されるセンサ信号としては、複数の回転速度センサによって検出されたエンジン20、発電電動機40、油圧ポンプ30A,30B,30C、及び走行電動機43の回転速度を表す信号、第1、第2、第3吐出圧センサ71,72,73によって検出された油圧ポンプ30A,30B,30Cの吐出圧、シリンダ圧センサ(不図示)によって検出された油圧シリンダの圧力(負荷圧)等を表す信号がある。
複数の回転速度センサには、エンジン20の実回転速度(以下、実エンジン回転速度NEG_ACTとも記す)を検出するエンジン回転速度センサ64と、走行電動機43の回転速度(以下、モータ速度とも記す)を検出するレゾルバ等のモータ速度センサ58とが含まれる。エンジン回転速度センサ64は、例えば、エンジン20の出力軸に設けられるロータリーエンコーダであり、検出した実エンジン回転速度NEG_ACTを表す信号をメインコントローラ100に出力する。なお、エンジン回転速度センサ64は、エンジン20の出力軸に限らず、動力伝達装置を構成するいずれかの軸の回転速度を検出するものであってもよい。この場合、メインコントローラ100が、エンジン回転速度センサ64の検出結果に基づいて、実エンジン回転速度NEG_ACTを演算する。
なお、図示する例では、エンジン回転速度センサ64は、メインコントローラ100に接続されているが、エンジンコントローラ120に接続してもよい。この場合、メインコントローラ100は、エンジン回転速度センサ64により検出された実エンジン回転速度NEG_ACTを、エンジンコントローラ120を介して取得する。
メインコントローラ100は、アーム操作装置52及びバケット操作装置53の操作方向及び操作量に基づいて、フロント制御指令を出力する。フロント制御部31は、メインコントローラ100からのフロント制御指令に基づき、油圧ポンプ30Aから吐出される作動油の圧力、流量及び方向を調整し、アームシリンダ4及びバケットシリンダ5を動作させる。フロント制御部31は、油圧ポンプ30Aから吐出される作動油の流れを制御する方向制御弁、及び、この方向制御弁のパイロット室に入力されるパイロット圧を生成する電磁弁等を有する。
メインコントローラ100は、ブレーキ操作装置57の操作量、及び駐車ブレーキ操作装置54の操作スイッチの操作位置に基づいて、ブレーキ制御指令を出力する。ブレーキ制御部32は、メインコントローラ100からのブレーキ制御指令に基づき、油圧ポンプ30Bから吐出される作動油の圧力、流量及び方向を調整し、ブレーキシリンダ17及び駐車ブレーキシリンダ18を動作させる。ブレーキ制御部32は、油圧ポンプ30Bから吐出される作動油の流れを制御する方向制御弁、及び、この方向制御弁のパイロット室に入力されるパイロット圧を生成する電磁弁等を有する。
メインコントローラ100は、ステアリング操作装置55のステアリングホイールの操作方向及び操作量に基づいて、ステアリング制御指令を出力する。ステアリング制御部33は、メインコントローラ100からのステアリング制御指令に基づき、油圧ポンプ30Cから吐出される作動油の圧力、流量及び方向を調整し、ステアリングシリンダ15を動作させる。ステアリング制御部33は、油圧ポンプ30Cから吐出される作動油の流れを制御する方向制御弁、及び、この方向制御弁のパイロット室に入力されるパイロット圧を生成する電磁弁等を有する。
発電インバータ41及び走行インバータ42は、直流部(直流母線)44によって接続されている。なお、本実施形態に係るホイールローダ1は、直流部44に接続される蓄電装置を備えていない。発電インバータ41は、メインコントローラ100からの発電電圧指令に基づき、発電電動機40から供給される電力を利用して直流部44のバス電圧を制御する。走行インバータ42は、メインコントローラ100の走行駆動トルク指令に基づき、直流部44の電力を利用して走行電動機43を駆動させる。
本実施形態では、エンジン20が出力するトルクによって油圧ポンプ30A,30B,30Cが駆動され、油圧ポンプ30A,30B,30Cから吐出される作動油によって、作業装置6、ブレーキ装置21及びステアリング装置22が駆動される。また、本実施形態では、エンジン20が出力するトルクによって発電電動機40が駆動され、発電電動機40で発生する電力によって走行電動機43が駆動される。
アーム操作装置52のアーム操作レバーが操作されると、アームシリンダ4の伸縮動作によりアーム2が上下方向に回動(俯仰動)する。バケット操作装置53のバケット操作レバーが操作されると、バケットシリンダ5の伸縮動作によりバケット3が上下方向に回動(クラウド動作またはダンプ動作)する。
ステアリング操作装置55のステアリングホイールが操作されると、ステアリングシリンダ15の伸縮動作に伴って後部車体8Bに対し前部車体8Aがセンタージョイント10を中心にして左右に屈折(転舵)する。アクセル操作装置56のアクセルペダルが操作されると、走行電動機43の駆動により車輪7が回転し、ホイールローダ1が走行する。
前後進スイッチ51が前進位置(F)に操作されている状態で、アクセル操作装置56のアクセルペダルが踏み込まれると、車輪7が前進方向に回転し、車体8が前進走行する。前後進スイッチ51が後進位置(R)に操作されている状態で、アクセル操作装置56のアクセルペダルが踏み込まれると、車輪7が後進方向に回転し、車体8が後進走行する。なお、前後進スイッチ51が待機位置(N)に操作されている状態では、アクセル操作装置56のアクセルペダルが踏み込まれても、車輪7は回転せず、車体8は走行しない。
-ホイールローダによる掘削作業-
次に、図3を参照して、ホイールローダ1の基本的な運搬作業について説明する。運搬作業では、ホイールローダ1は、土砂や鉱物等の掘削対象91を掘削する掘削作業をした後、掘削物を運搬し、ダンプトラック等の積込対象92へ積み込む積込作業を行う。図3は、この運搬作業を行う際の方法の1つであるVシェイプローディングを示す。
次に、図3を参照して、ホイールローダ1の基本的な運搬作業について説明する。運搬作業では、ホイールローダ1は、土砂や鉱物等の掘削対象91を掘削する掘削作業をした後、掘削物を運搬し、ダンプトラック等の積込対象92へ積み込む積込作業を行う。図3は、この運搬作業を行う際の方法の1つであるVシェイプローディングを示す。
図3の矢印X1に示すように、オペレータは、アクセル操作装置56を操作して、ホイールローダ1を地山等の掘削対象91に向かって前進させ、掘削対象91にバケット3を貫入させる。オペレータは、アーム操作装置52及びバケット操作装置53を操作してアーム2を上昇させつつバケット3に土砂や鉱物等を入れる。その後、オペレータは、バケット操作装置53を操作して、バケット3をクラウド動作させる。このとき、オペレータは、バケット3に入った土砂や鉱物等の運搬物をこぼさないように、バケット操作装置53を操作して、バケット3を手前に掬い上げる。これによって、掘削作業が完了する。
掘削作業完了後、オペレータは、図3の矢印X2で示すように、ホイールローダ1を後進させて元の位置に戻る。その後、オペレータは、図3の矢印Y1で示すように、ダンプトラック等の積込対象92に向かってホイールローダ1を前進させつつ、アーム2を上昇させる。オペレータは、積込対象92の手前でホイールローダ1を停止させる。なお、図3では、積込対象92の手前で停止している状態のホイールローダ1を破線で示している。その後、オペレータは、バケット操作装置53を操作して、バケット3をダンプ動作させることにより、バケット3内の運搬物を積込対象92の荷台に放土する。これにより、バケット3内の運搬物が積込対象92の荷台に積み込まれ、積込作業が完了する。積込作業完了後、オペレータは、図3の矢印Y2で示すように、ホイールローダ1を後進させて、元の位置に戻る。
このような掘削作業と積込作業を含む一連の作業は、V字軌跡を描きながら行われるため「Vシェイプローディング」と呼ばれ、繰り返し行われる。Vシェイプローディングは、ホイールローダ1の全作業時間の大多数を占める。このため、ホイールローダ1の作業効率を向上させるためには、Vシェイプローディングにおいて、後進から前進に切り替えた後の加速性能を高くすることが有効である。
後進中に前後進スイッチ51が後進位置(R)から前進位置(F)に切り替えられると、ホイールローダ1は、図2示す走行駆動装置45の回生動作によって車輪7を制動し、車体8の進行方向を後進から前進に切り替える「モジュレート動作」を行う。本稿では、ホイールローダ1の走行中に進行方向と逆側に前後進スイッチ51を切り替えることで、前後進スイッチ51の切り替え時の進行方向における車速を回生制動により低減させるホイールローダ1の動作を「モジュレート動作」と称する。例えば、後進中に前後進スイッチ51を後進位置(R)から前進位置(F)に切り替えると、ブレーキ操作装置57のブレーキペダルを操作せずとも後進方向における車速が回生制動により低減し、その減速中もアクセル操作装置56のアクセルペダルを踏み込んでおくと、モジュレート動作の終了後(後進方向における減速の終了後)に前進方向への加速が開始されることになる。本実施形態では、後述するように、モジュレート動作終了後の加速性能を向上させることにより、Vシェイプローディングの作業効率を向上させる。ここで、作業効率(t/h)とは、所定の時間(h)当たりに、積込対象92に積み込んだ運搬物の重量(t)を意味する。
エンジン動力の大きさは、基本的に実エンジン回転速度NEG_ACTが高いほど及び燃料噴射量が多いほど大きくなる。ただし、実エンジン回転速度NEG_ACTが高いほどエンジン負荷が高くなる。このため、メインコントローラ100は、非作業時はエンジン20の第1目標回転速度(以下、目標エンジン回転速度とも記す)NEG_TGTを低くして燃費を向上させる。一方、メインコントローラ100は、作業時は、オペレータによるアクセル操作装置56、アーム操作装置52、及びバケット操作装置53の操作量等に基づいて、作業に必要なエンジン動力(すなわち、所望のエンジン動力)が得られる目標エンジン回転速度NEG_TGTを設定する。
ここで、モジュレート動作中であるか否かに関わらず、エンジンコントローラ120が、目標エンジン回転速度NEG_TGTに実エンジン回転速度NEG_ACTが一致するように燃料噴射装置23による燃料噴射量を調節し、所望のエンジン動力を発生させる場合を比較例として、その問題点について説明する。
モジュレート動作をしている間は、回生制動によって発生した回生エネルギーが走行駆動装置45からエンジン20に回生される。具体的には、走行電動機43によって発生した回生電力により、発電電動機40が電動機として機能し、発電電動機40の動力がエンジン20に伝達される。これにより、実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度NEG_TGTよりも大きくなると、エンジン動力を発生させる必要がなくなるため、エンジンコントローラ120は、燃料噴射装置23による燃料噴射量をゼロになるまで減少させる。このように、モジュレート動作中に回生制動を行い、燃料噴射量を減少させることにより、ブレーキ装置21により制動を行う場合に比べて燃費が良くなる。
後進が終わって前進に切り替わった後、すなわちモジュレート動作終了後は、回生エネルギーが発生しないので実エンジン回転速度NEG_ACTは徐々に低下する。そして、実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度NEG_TGT未満になると、実エンジン回転速度NEG_ACTと目標エンジン回転速度NEG_TGTの差に基づいて、エンジンコントローラ120が燃料噴射装置23による燃料噴射量を決定し、燃料噴射を再開する。
燃料噴射が再開されると、発生したエンジン動力によって、実エンジン回転速度NEG_ACTが増加しつつ、ホイールローダ1が前進方向に加速する。なお、モジュレート動作終了後、実エンジン回転速度NEG_ACTが、目標エンジン回転速度NEG_TGT未満になったときの回転速度偏差の負の最大値の絶対値を「負のオーバーシュート量」と呼ぶ。
モジュレート動作終了後、実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度NEG_TGT未満になった時点から、エンジン動力が発生するまでの間に、実エンジン回転速度の検出と、制御装置による演算処理と、燃料噴射装置23の動作と、エンジン20の応答とに遅れが発生する。このため、燃料噴射装置23の再開のタイミングが遅いと、実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度NEG_TGTを大きく下回ってから増加し始めることになる。この場合、発生したエンジン動力の多くが実エンジン回転速度NEG_ACTを増加する分に使われ、ホイールローダ1を前進方向に加速させる分が減少する。その結果、モジュレート動作終了後の車両加速性能が低下するため、改善の余地がある。
なお、モジュレート動作終了後における車両加速性能を低下させないために、エンジン20に配分する動力よりも走行駆動装置45に配分する動力を多くする方法が考えられる。しかしながら、この方法では、実エンジン回転速度NEG_ACTの増加のタイミングがさらに遅くなり、所望のエンジン動力を出せるまでの所要時間が増加する。このため、車両加速性能の伸びは小さい。
他にも、エンジンコントローラ120による燃料噴射量の比例制御のゲインを増加させ、目標エンジン回転速度NEG_TGTに対する実エンジン回転速度NEG_ACTの応答速度を高める方法も考えられる。しかしながら、この方法では回転速度偏差に対する燃料噴射量の増減が激しくなるため、エンジン制御が不安定になってしまうおそれがある。さらに、制御装置の演算処理などに起因した応答遅れは残るため、負のオーバーシュート量を大きく改善することはできない。
そこで、本願発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、モジュレート動作終了後におけるエンジンの実回転速度の負のオーバーシュート量を抑制するために、目標エンジン回転速度NEG_TGTに回転速度補正値NCを加算することにより目標エンジン回転速度NEG_TGTを補正した値を指令回転速度NEG_CMDとして演算し、指令回転速度NEG_CMDと実エンジン回転速度NEG_ACTとの差分により燃料噴射量を制御することを見出した。これにより、エンジンコントローラ120の制御特性や各装置の応答遅れに起因した負のオーバーシュート量を抑制し、燃費を悪化させずに車両加速性能を向上することができる。
メインコントローラ100は、後述するように、アクセル操作量、アーム操作量及びバケット操作量等に基づいて、目標エンジン回転速度NEG_TGTを演算する。メインコントローラ100は、目標エンジン回転速度NEG_TGTに基づいて、指令回転速度NEG_CMDを演算し、エンジンコントローラ120に出力する。また、メインコントローラ100は、エンジン回転速度センサ64によって検出された実エンジン回転速度NEG_ACTをエンジンコントローラ120に出力する。
エンジンコントローラ120は、メインコントローラ100から取得した指令回転速度NEG_CMDと、エンジン回転速度センサ64によって検出された実エンジン回転速度NEG_ACTとを比較して、実エンジン回転速度NEG_ACTが指令回転速度NEG_CMDと一致するように燃料噴射装置23を制御する。なお、指令回転速度NEG_CMDは、目標エンジン回転速度NEG_TGTに回転速度補正値NCが加算されることにより求められる。
つまり、補正がされない場合(NC=0)には、エンジンコントローラ120は、エンジン回転速度センサ64により検出された実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度(第1目標回転速度)NEG_TGTに一致するように、エンジン20の燃料噴射量を制御する。一方、補正がされた場合(NC≠0)には、エンジンコントローラ120は、エンジン回転速度センサ64により検出された実エンジン回転速度NEG_ACTが、補正された目標エンジン回転速度である指令回転速度(第2目標回転速度)NEG_CMDに一致するように、エンジン20の燃料噴射量を制御する。なお、補正がされた場合(NC≠0)、実エンジン回転速度NEG_ACTが指令回転速度(第2目標回転速度)NEG_CMDよりも高い状態から低い状態になると、エンジン20の燃料噴射量が増加するように制御される。このため、指令回転速度(第2目標回転速度)NEG_CMDは、エンジン20の燃料噴射量の増加の開始を決定する閾値として機能する。
燃料噴射装置23は、エンジンコントローラ120から出力される燃料噴射指令に基づいて、燃料噴射量を制御し、エンジン20を動作させる。例えば、本実施形態では、エンジンコントローラ120は、実エンジン回転速度NEG_ACTに比べて指令回転速度NEG_CMDが大きい場合、実エンジン回転速度NEG_ACTと指令回転速度NEG_CMDとの差が0(ゼロ)になるまで燃料噴射量を徐々に増加させる積分制御を実行する。
このように、メインコントローラ100及びエンジンコントローラ120は、協働してエンジン20の動作を制御する制御装置11を構成している。
以下、本実施形態に係るメインコントローラ100の機能、及び、メインコントローラ100により実行される演算処理の内容について、詳しく説明する。
-メインコントローラの機能-
図4は、メインコントローラ100の機能ブロック図である。図4に示すように、メインコントローラ100は、ROM102に記憶されているプログラムを実行することにより、目標速度演算部110、モジュレート判定部111、補正値演算部112、及び指令値演算部113として機能する。
図4は、メインコントローラ100の機能ブロック図である。図4に示すように、メインコントローラ100は、ROM102に記憶されているプログラムを実行することにより、目標速度演算部110、モジュレート判定部111、補正値演算部112、及び指令値演算部113として機能する。
目標速度演算部110は、少なくとも操作量検出装置150の検出結果に基づいて、目標エンジン回転速度NEG_TGTを演算する。本実施形態において、目標速度演算部110は、操作量検出装置150の検出結果、モータ速度センサ58の検出結果、及び、吐出圧検出装置151の検出結果に基づいて、目標エンジン回転速度NEG_TGTを演算する。操作量検出装置150は、上述したアーム操作量センサ52a、バケット操作量センサ53a、アクセル操作量センサ56a、ブレーキ操作量センサ57a、及びステアリング操作量センサ55aを含む。吐出圧検出装置151は、上述した第1吐出圧センサ71、第2吐出圧センサ72及び第3吐出圧センサ73を含む。
図5を参照して、目標エンジン回転速度NEG_TGTの演算方法の一例について説明する。図5は、目標速度演算部110による目標エンジン回転速度NEG_TGTの演算方法について説明するブロック図である。図5に示すように、目標速度演算部110は、走行要求動力演算部121と、第1ポンプ要求動力演算部122と、第2ポンプ要求動力演算部123と、第3ポンプ要求動力演算部124と、最大値選択部125と、加算部126と、目標速度算出部127とを有する。
走行要求動力演算部121は、走行電動機トルク演算部121aと乗算部121bとを有する。走行電動機トルク演算部121aは、モータ速度センサ58により検出された走行電動機43の回転速度(モータ速度)、及び、アクセル操作量センサ56aにより検出されたアクセル操作量に基づいて、走行電動機トルクを算出する。
メインコントローラ100のROM102には、走行電動機トルクの演算に用いられる走行電動機トルクテーブルが記憶されている。走行電動機トルクテーブルは、アクセル操作量の増減に応じて走行電動機43のトルクが増減するように、アクセル操作量に応じたトルクカーブが複数記憶されている。走行電動機トルクテーブルは、アクセル操作量が大きくなるほど走行電動機トルクが大きくなり、走行電動機43の回転速度が速くなるほど走行電動機トルクが小さくなるように設定されている。
走行電動機トルク演算部121aは、アクセル操作量の大きさに対応するトルクカーブを選択し、走行電動機43の回転速度に基づいて走行電動機トルクを算出する。例えば、走行電動機トルク演算部121aは、アクセル操作装置56がフル操作されたときには、実線のトルクカーブを選択し、選択したトルクカーブを参照し、走行電動機43の回転速度に基づいて走行電動機トルクを算出する。
乗算部121bは、走行電動機トルク演算部121aによって演算された走行電動機トルクと、モータ速度センサ58により検出された走行電動機43の回転速度と、単位換算用の係数とを乗算して、走行要求動力を算出する。
第1ポンプ要求動力演算部122は、ポンプ要求流量演算部122aと乗算部122bとを有する。ポンプ要求流量演算部122aは、操作量検出装置150のアーム操作量センサ52a及びバケット操作量センサ53aによって検出されるアーム操作量及びバケット操作量、並びに、吐出圧検出装置151の第1吐出圧センサ71によって検出される油圧ポンプ30Aの吐出圧に基づいて、油圧ポンプ30Aのポンプ要求流量を算出する。アーム操作量及びバケット操作量は、総称してレバー操作量とも記す。
メインコントローラ100のROM102には、油圧ポンプ30Aのポンプ要求流量の演算に用いられる要求流量テーブルが記憶されている。要求流量テーブルは、ポンプ要求流量が最小吐出流量からレバー操作量の増加に応じて増加するように設定されている。
ポンプ要求流量演算部122aは、要求流量テーブルを参照し、レバー操作量に基づいて、ポンプ要求流量を演算する。なお、ポンプ要求流量テーブルは、アーム操作量に基づくテーブルと、バケット操作量に基づくテーブルとがあり、それぞれのテーブルで決定された流量のうち、大きい方がポンプ要求流量として決定される。
乗算部122bは、ポンプ要求流量演算部122aによって演算された油圧ポンプ30Aのポンプ要求流量と、吐出圧検出装置151の第1吐出圧センサ71によって検出された油圧ポンプ30Aの吐出圧と、単位換算用の係数とを乗算して、油圧ポンプ30Aの要求動力を算出する。
第2ポンプ要求動力演算部123は、図示しないが、第1ポンプ要求動力演算部122と同様の機能を有し、操作量検出装置150のブレーキ操作量センサ57aによって検出されたブレーキ操作量と、吐出圧検出装置151の第2吐出圧センサ72によって検出された油圧ポンプ30Bの吐出圧とに基づいて、油圧ポンプ30Bの要求動力を演算する。
第3ポンプ要求動力演算部124は、図示しないが、第1ポンプ要求動力演算部122と同様の機能を有し、操作量検出装置150のステアリング操作量センサ55aによって検出されたステアリング操作量と、吐出圧検出装置151の第3吐出圧センサ73によって検出された油圧ポンプ30Cの吐出圧とに基づいて、油圧ポンプ30Cの要求動力を演算する。
最大値選択部125は、第1ポンプ要求動力演算部122によって演算された油圧ポンプ30Aの要求動力、第2ポンプ要求動力演算部123によって演算された油圧ポンプ30Bの要求動力、及び、第3ポンプ要求動力演算部124によって演算された油圧ポンプ30Cの要求動力のうちで最大のものを選択し、選択した要求動力を作業要求動力として決定する。
加算部126は、走行要求動力演算部121によって演算された走行要求動力と、最大値選択部125で選択された作業要求動力とを加算することにより、エンジン要求動力を算出する。
目標速度算出部127は、加算部126によって算出されたエンジン要求動力に基づいて、目標エンジン回転速度NEG_TGTを算出する。メインコントローラ100のROM102には、目標エンジン回転速度NEG_TGTの算出に用いられる速度テーブルが記憶されている。速度テーブルは、目標エンジン回転速度NEG_TGTが最小回転速度NEG_TGT_minからエンジン要求動力の増加に応じて増加するように設定されている。目標速度算出部127は、速度テーブルを参照し、エンジン要求動力に基づいて、目標エンジン回転速度NEG_TGTを算出する。
このように、目標速度演算部110は、走行要求動力及び作業要求動力を合計した値を可能な限り満たすエンジン動力が発生するように、目標エンジン回転速度NEG_TGTを決定する。
モジュレート判定部111は、指令値演算部113により演算された指令回転速度NEG_CMDと、エンジン回転速度センサ64により検出された実エンジン回転速度NEG_ACTとに基づいて、ホイールローダ1がモジュレート動作している状態(すなわち、モジュレート動作中)であるか、モジュレート動作していない状態(すなわち、非モジュレート動作中)であるかを判定する。モジュレート判定部111は、ホイールローダ1がモジュレート動作中である場合には、モジュレート判定フラグFLをオンに設定する(FL=1)。モジュレート判定部111は、ホイールローダ1が非モジュレート動作中である場合には、モジュレート判定フラグFLをオフに設定する(FL=0)。
モジュレート判定部111は、以下の式(1)により、回転速度偏差ΔNEGを演算する。
ΔNEG=NEG_ACT-NEG_CMD ・・・(1)
式(1)において、NEG_ACTはエンジン回転速度センサ64により検出された実エンジン回転速度、NEG_CMDは指令値演算部113により演算される指令回転速度である。
ΔNEG=NEG_ACT-NEG_CMD ・・・(1)
式(1)において、NEG_ACTはエンジン回転速度センサ64により検出された実エンジン回転速度、NEG_CMDは指令値演算部113により演算される指令回転速度である。
モジュレート判定部111は、モジュレート判定フラグFLがオフに設定されている場合であって、演算された回転速度偏差(第1回転速度偏差)ΔNEGが第1回転速度閾値(所定の第1閾値)NTH1より大きくなったときには、ホイールローダ1がモジュレート動作中であると判定し、モジュレート判定フラグFLをオフからオンに切り替える(F=1)。第1回転速度閾値NTH1は、モジュレート動作を開始したときの回転速度偏差ΔNEGに相当し、予めROM102に記憶されている。第1回転速度閾値NTH1は、例えば、最高エンジン回転速度を100%としたときの5~10%程度の回転速度に相当する。
なお、後述するように、モジュレート判定フラグFLがオフに設定されている場合には、回転速度補正値NCが0(ゼロ)であり、指令回転速度NEG_CMDは目標エンジン回転速度NEG_TGTと等しい(NEG_CMD=NEG_TGT)。このため、モジュレート判定フラグFLがオフに設定されている場合の回転速度偏差(第1回転速度偏差)ΔNEGは、実エンジン回転速度NEG_ACTと目標エンジン回転速度NEG_TGTとの差分に相当する(ΔNEG=NEG_ACT-NEG_TGT)。
モジュレート判定部111は、モジュレート判定フラグFLがオンに設定されている場合であって、演算された回転速度偏差(第2回転速度偏差)ΔNEGが第2回転速度閾値(所定の第2閾値)NTH2未満になったときには、ホイールローダ1が非モジュレート動作中であると判定し、モジュレート判定フラグFLをオンからオフに切り替える(F=0)。第2回転速度閾値NTH2は、モジュレート動作を終了したときの回転速度偏差ΔNEGに相当し、予めROM102に記憶されている。第2回転速度閾値NTH2は、第1回転速度閾値NTH1以下であり、例えば、最高エンジン回転速度を100%としたときの0~5%程度の操作量に相当する。
なお、後述するように、モジュレート判定フラグFLがオンに設定されている場合の回転速度偏差(第2回転速度偏差)ΔNEGは、実エンジン回転速度NEG_ACTと補正された目標エンジン回転速度である指令回転速度(第2目標回転速度)NEG_CMDとの差分に相当するため、補正後回転速度偏差ともいえる(ΔNEG=NEG_ACT-NEG_CMD,NEG_CMD>NEG_TGT)。
補正値演算部112は、モジュレート判定フラグFLがオンに設定されている場合には、回転速度補正値NCを目標補正値(所定の補正値)NC_TGTに設定する。目標補正値NC_TGTは、0よりも大きい固定値であり、予めROM102に記憶されている。目標補正値NC_TGTは、目標エンジン回転速度NEG_TGTの補正を行わない場合(比較例)におけるモジュレート動作終了後の実エンジン回転速度NEG_ACTの負のオーバーシュート量NMOD_ERRに相当する。
図6及び図7を参照して、目標補正値NC_TGTの決定方法について説明する。図6は、エンジン20の回転速度偏差ΔNEGと燃料噴射量FEGの関係を示す相関マップMfの一例を示す図である。図6に示すように、この相関マップMfで示されるエンジンコントローラ120の特性は、予め計算もしくは実験によって決定される。相関マップMfに示されるように、エンジンコントローラ120は、回転速度偏差ΔNEGが0(ゼロ)未満では、回転速度偏差ΔNEGが負の方向に増加するほど燃料噴射量FEGを増加させる。また、エンジンコントローラ120は、回転速度偏差ΔNEGが0(ゼロ)以上では、燃料噴射量FEGを0(ゼロ)にする。
従って、モジュレート動作中、走行駆動装置45の回生制動によって回生エネルギーがエンジン20に回生されることで回転速度偏差ΔNEGが0を超えると、燃料噴射量FEGが0(ゼロ)にカットされる。その後、回生制動が終わり、エンジン20の回転速度偏差ΔNEGが減少し始めて0(ゼロ)未満になると、燃料噴射が再開される。そして、燃料噴射によって発生するエンジン動力とホイールローダ1が必要とするエンジン動力とが釣り合ったときに回転速度偏差ΔNEGの減少が止まる。その後、回転速度偏差ΔNEGは増加し、回転速度偏差ΔNEGが0(ゼロ)付近になるように燃料噴射量FEGが調整される。
このとき、回転速度偏差ΔNEGの減少が止まったときの回転速度偏差ΔNEGの絶対値が、実エンジン回転速度NEG_ACTの負のオーバーシュート量NMOD_ERRに相当する。負のオーバーシュート量NMOD_ERRが大きいほど走行駆動装置45に配分されるエンジン動力が低減するため、モジュレート動作終了後の車両加速性能が低下する。
そこで、本実施形態では、比較例に係るホイールローダ1の計算、実験等の結果から得られた負のオーバーシュート量NMOD_ERRに相当する目標補正値NC_TGTを目標エンジン回転速度NEG_TGTに加算することにより、目標エンジン回転速度NEG_TGTを補正し、指令回転速度NEG_CMDを得る。
図7は、実エンジン回転速度NEG_ACTの負のオーバーシュート量NMOD_ERRと目標補正値NC_TGTの関係を示す相関マップMcの一例を示す図である。図7に示すように、負のオーバーシュート量NMOD_ERRが大きいほど、設定される目標補正値NC_TGTが大きくなる。なお、負のオーバーシュート量NMOD_ERRと、目標補正値NC_TGTは、完全に一致させる必要はない。図7に示す相関マップMcは、予め計算もしくは実験に基づいて決定される。
図4に示す補正値演算部112は、モジュレート判定フラグFLがオフに設定されている場合には、回転速度補正値NCを初期補正値NC_INIに設定する。本実施形態では、初期補正値NC_INIは0(ゼロ)であり、予めROM102に記憶されている。
補正値演算部112は、モジュレート判定フラグFLがオンに設定されている場合には、回転速度補正値NCを目標補正値NC_TGTに設定する。本実施形態では、目標補正値NC_TGTは、上述したように計算、実験等により定められた固定値であり、予めROM102に記憶されている。
補正値演算部112は、モジュレート判定フラグFLがオンからオフに切り替わる際、回転速度補正値NCを所定時間だけ目標補正値NC_TGTに保持させる遅延処理を行う。補正値演算部112は、モジュレート判定フラグFLがオンからオフに切り替わる際、遅延処理の後、回転速度補正値NCにレート制限処理を実行する。また、補正値演算部112は、モジュレート判定フラグFLがオフからオンに切り替わる際、遅延処理は実行しないが、回転速度補正値NCにレート制限処理を実行する。
このため、モジュレート判定フラグFLがオフからオンに切り替わる際には、回転速度補正値NCが初期補正値NC_INIから目標補正値NC_TGTまで時間の経過にしたがって徐々に増加する。また、モジュレート判定フラグFLがオンからオフに切り替わる際には、回転速度補正値NCが目標補正値NC_TGTに所定時間保持された後、目標補正値NC_TGTから初期補正値NC_INIまで時間の経過にしたがって徐々に減少する。
これにより、モジュレート判定フラグFLの切り替わりの際に、回転速度補正値NCが急峻に変わることを防止できる。また、モジュレート判定フラグFLがオンからオフに切り替わる際に、意図しないタイミングで燃料噴射が再開されるのを防ぐことができる。
図4に示すように、指令値演算部113は、目標エンジン回転速度NEG_TGTと回転速度補正値NCを用いて、以下の式(2)により、指令回転速度NEG_CMDを演算する。
NEG_CMD=NEG_TGT+NC ・・・(2)
なお、上述したように、目標エンジン回転速度NEG_TGTは目標速度演算部110により演算され、回転速度補正値NCは補正値演算部112により演算される。
NEG_CMD=NEG_TGT+NC ・・・(2)
なお、上述したように、目標エンジン回転速度NEG_TGTは目標速度演算部110により演算され、回転速度補正値NCは補正値演算部112により演算される。
このように、指令値演算部113は、補正値演算部112により演算された回転速度補正値NCにより目標エンジン回転速度NEG_TGTを補正する。補正後の目標エンジン回転速度である指令回転速度NEG_CMDは、エンジン速度指令としてエンジンコントローラ120に出力される。なお、ホイールローダ1がモジュレート動作中であると判定されていない状態では、回転速度補正値NCは0(ゼロ)である。このため、指令値演算部113は、実質的には、回転速度補正値NCによる目標エンジン回転速度NEG_TGTの補正を行わない。一方、ホイールローダ1がモジュレート動作中であると判定された場合、指令値演算部113は、所定の補正値(目標補正値NC_TGT>0)を目標エンジン回転速度(第1目標回転速度)NEG_TGTに加算して指令回転速度(第2目標回転速度)NEG_CMDを演算する。
エンジンコントローラ120は、ホイールローダ1が非モジュレート動作中であると判定された場合、所定時間が経過するまで、実エンジン回転速度NEG_ACTが指令回転速度(第2目標回転速度)NEG_CMDに一致するように、エンジン20の燃料噴射量を制御する。モジュレート判定フラグFLがオフに設定されてから所定時間を経過すると回転速度補正値NCが減少し、0(ゼロ)になる。このため、エンジンコントローラ120は、所定時間が経過し、回転速度補正値NCが0(ゼロ)になった後は、実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度(第1目標回転速度)NEG_TGTに一致するように燃料噴射量を制御する。
-エンジン制御のフロー-
以下、図8を参照してメインコントローラ100により実行されるエンジン制御の一例について説明する。図8は、メインコントローラ100により実行されるエンジン制御のフローチャートである。図8のフローチャートに示す処理は、例えばイグニッションスイッチ(エンジンキースイッチ)がオンされることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、初期設定において、モジュレート判定フラグFLはオフに設定される。
以下、図8を参照してメインコントローラ100により実行されるエンジン制御の一例について説明する。図8は、メインコントローラ100により実行されるエンジン制御のフローチャートである。図8のフローチャートに示す処理は、例えばイグニッションスイッチ(エンジンキースイッチ)がオンされることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、初期設定において、モジュレート判定フラグFLはオフに設定される。
図8に示すように、ステップS110において、目標速度演算部110は、操作量検出装置150、吐出圧検出装置151及びモータ速度センサ58の検出結果に基づいて、目標エンジン回転速度NEG_TGTを演算し、処理をステップS120に進める。
ステップS120において、モジュレート判定部111は、指令回転速度NEG_CMDの前回値(例えば、一つ前の制御周期のステップS210で演算された値)とエンジン回転速度センサ64によって検出された実エンジン回転速度NEG_ACTとに基づいて、回転速度偏差ΔNEGを演算し(式(1)参照)、処理をステップS130へ進める。
ステップS130において、モジュレート判定部111は、現在設定されているモジュレート判定フラグFLがオンであるか否かを判定する。現在設定されているモジュレート判定フラグFLがオフである場合には処理がステップS140へ進み、現在設定されているモジュレート判定フラグFLがオンである場合には処理がステップS160へ進む。
ステップS140において、モジュレート判定部111は、ステップS120で演算された回転速度偏差ΔNEGが第1回転速度閾値NTH1よりも大きくなったか否かを判定する。ステップS140において、回転速度偏差ΔNEGが第1回転速度閾値NTH1よりも大きくなった場合には、モジュレート判定部111は、ホイールローダ1がモジュレート動作中であると判定し、処理をステップS150へ進める。ステップS140において、回転速度偏差ΔNEGが第1回転速度閾値NTH1以下の場合には、モジュレート判定部111は、ホイールローダ1が非モジュレート動作中であると判定し、処理をステップS180へ進める。
ステップS150において、モジュレート判定部111は、モジュレート判定フラグFLをオンに設定し、処理をステップS180へ進める。
ステップS160において、モジュレート判定部111は、ステップS120で演算された回転速度偏差ΔNEGが第2回転速度閾値NTH2未満になったか否かを判定する。ステップS160において、回転速度偏差ΔNEGが第2回転速度閾値NTH2未満になった場合には、モジュレート判定部111は、ホイールローダ1が非モジュレート動作中であると判定し、処理をステップS170へ進める。ステップS160において、回転速度偏差ΔNEGが第2回転速度閾値NTH2以上の場合には、モジュレート判定部111は、ホイールローダ1がモジュレート動作中であると判定し、処理をステップS180へ進める。
ステップS170において、モジュレート判定部111は、モジュレート判定フラグFLをオフに設定し、処理をステップS180へ進める。
ステップS180において、補正値演算部112は、現在設定されているモジュレート判定フラグFLがオンであるか否かを判定する。現在設定されているモジュレート判定フラグFLがオンである場合には処理がステップS190へ進み、現在設定されているモジュレート判定フラグFLがオフである場合には処理がステップS200へ進む。
ステップS190において、補正値演算部112は、回転速度補正値NCを目標補正値NC_TGTに設定して、処理をステップS210へ進める。なお、補正値演算部112は、モジュレート判定フラグFLがオフからオンに切り替わる際には、回転速度補正値NCにレート制限処理を施す。ステップS200において、補正値演算部112は、回転速度補正値NCを初期補正値NC_INIに設定して、処理をステップS210へ進める。なお、補正値演算部112は、モジュレート判定フラグFLがオンからオフに切り替わる際には、回転速度補正値NCに遅延処理及びレート制限処理を施す。
ステップS210において、指令値演算部113は、ステップS110で演算された目標エンジン回転速度NEG_TGTと、ステップS190またはステップS200で演算された回転速度補正値NCとに基づいて、指令回転速度NEG_CMDを演算する(式(2)参照)。ステップS210の処理が完了すると、本制御周期における図8に示すフローチャートの処理を終了し、次の制御周期において、ステップS110の処理からステップS210までの処理を再び実行する。
-動作-
以下、図9を参照して、本実施形態に係るホイールローダ1の主な動作と作用効果について説明する。図9は、本実施形態に係るホイールローダ1の各パラメータ(アクセル操作量RA、前後進スイッチ51の操作位置、指令回転速度NEG_CMD、実エンジン回転速度NEG_ACT、燃料噴射量FEG、エンジン加速分動力PEG_ACC、及び車速VVHCL)の時系列変化を示す図である。
以下、図9を参照して、本実施形態に係るホイールローダ1の主な動作と作用効果について説明する。図9は、本実施形態に係るホイールローダ1の各パラメータ(アクセル操作量RA、前後進スイッチ51の操作位置、指令回転速度NEG_CMD、実エンジン回転速度NEG_ACT、燃料噴射量FEG、エンジン加速分動力PEG_ACC、及び車速VVHCL)の時系列変化を示す図である。
以下では、モジュレート動作を行う場合のホイールローダ1の動作の一例について説明する。本実施形態の作用効果を明確にするため、回転速度補正値NCによって目標エンジン回転速度NEG_TGTを補正しない比較例と比べながら説明する。なお、本実施形態に係るホイールローダ1と本実施形態の比較例に係るホイールローダとでは、各種操作装置に対するオペレータの操作手順及び操作量は同じであるものとする。
図9において、本実施形態の各パラメータの時系列変化は実線で示し、比較例の各パラメータの時系列変化は破線で示す。図9(a)~(g)の横軸は、時刻(経過時間)を示す。図9(a)の縦軸はアクセル操作量センサ56aによって検出されたアクセル操作量RAを示している。図9(b)の縦軸は前後進スイッチ51の操作位置を示している。図9(c)の縦軸は、指令値演算部113により演算された指令回転速度NEG_CMDを示している。なお、比較例では、目標エンジン回転速度が補正されない。このため、比較例に係る指令回転速度は、補正されていない目標エンジン回転速度NEG_TGT(破線)に相当する。図9(d)の縦軸はエンジン回転速度センサ64により検出された実エンジン回転速度NEG_ACTを示している。図9(e)の縦軸は燃料噴射装置23が射出する燃料噴射量FEGを示している。図9(f)の縦軸は、実エンジン回転速度NEG_ACTを指令回転速度NEG_CMDに一致させるためにメインコントローラ100が配分するエンジン加速分動力PEG_ACC(実線)、及び、実エンジン回転速度NEG_ACTを補正されていない目標エンジン回転速度NEG_TGTに一致させるためにメインコントローラ100が配分するエンジン加速分動力PEG_ACC(破線)を示している。図9(g)の縦軸はホイールローダ1の車速VVHCLを示している。なお、車速VVHCLは、ホイールローダ1が前進している場合には正の値となり、ホイールローダ1が後進している場合には負の値となる。
図9において、時刻t0は、オペレータがアクセル操作装置56の操作を開始した時刻である。つまり、時刻t0は、車体8が後進し始めた時刻である。時刻t1は、オペレータが前後進スイッチ51を後進位置(R)から前進位置(F)に切り替え操作し、走行電動機43の駆動トルクの向きを反転させ始めた時刻である。
時刻t2は、回転速度偏差ΔNEGが第1回転速度閾値NTH1よりも大きくなったときの時刻である。すなわち、時刻t2はモジュレート判定フラグFLがオフからオンに切り替えられた時刻である。時刻t3は、回転速度偏差ΔNEGが第2回転速度閾値NTH2未満になったときの時刻である。すなわち、時刻t3はモジュレート判定フラグFLがオンからオフに切り替えられた時刻である。
時刻t4は、本実施形態において燃料噴射装置23が燃料噴射を再開し始めたときの時刻である。時刻t5は、比較例において燃料噴射装置23が燃料噴射を再開し始めたときの時刻である。
図9(a)に示すように、アクセル操作量RAは時刻t0までは小さい。これは、時刻t0までは、オペレータがアクセル操作装置56を操作しておらず、ホイールローダ1が停止しているためである。時刻t0で車体8の後進走行が開始され、アクセル操作量RAが急増する。
図9(b)に示すように、前後進スイッチ51は時刻t1までは後進位置(R)である。このため、走行電動機43は、時刻t1までは、ホイールローダ1を後進させる方向に駆動トルクを発生させている。時刻t1において、ホイールローダ1の進行方向を後進から前進に切り替えるための前後進スイッチ51の操作が行われ、前後進スイッチ51の操作位置が後進位置(R)から前進位置(F)に切り替わる。
図9(c)に示すように、本実施形態及び比較例では、時刻t0からのアクセル操作量RAの急増に応じて、指令回転速度NEG_CMDが低回転速度NLから中回転速度NMまで増加している。その後、時刻t1で前後進スイッチ51が前進位置(F)に切り替わると、図9(d)に示すように、実エンジン回転速度NEG_ACTが増加する。
比較例では、図9(d)に示すように、時刻t1から実エンジン回転速度NEG_ACTが増加し、その後減少しても、図9(c)に示すように、指令回転速度NEG_CMDは中回転速度NMに維持される。
これに対して、本実施形態では、時刻t2から、指令回転速度NEG_CMDが中回転速度NMから増加し始めている。時刻t2は、図9(d)に示すように、時刻t1から実エンジン回転速度NEG_ACTが中回転速度NMから高回転速度NHまで増加する途中の時刻である。図9(c)に示すように、時刻t2から指令回転速度NEG_CMDが増加するのは、時刻t2においてモジュレート判定フラグFLがオフからオンに切り替わり、回転速度補正値NCが0(ゼロ)から速やかに増加するためである。
本実施形態では、時刻t3から所定時間だけ経過した後(例えば、時刻t4と時刻t5の間)に指令回転速度NEG_CMDが中回転速度NMに向かって低下し始める。これは、時刻t3でモジュレート判定フラグFLがオンからオフに切り替わった後に少しの遅延があってから、回転速度補正値NCが目標補正値NC_TGTから0(ゼロ)に速やかに低下するためである。
本実施形態及び比較例において、図9(d)に示すように、実エンジン回転速度NEG_ACTは、時刻t0からの指令回転速度NEG_CMDの増加に追随して増加する。実エンジン回転速度NEG_ACTは、低回転速度NLから中回転速度NMより少し低い値まで速やかに増加し、その後、中回転速度NMより少し低い値を維持する。これは、実エンジン回転速度NEG_ACTが中回転速度NMより少し低い値において、エンジン負荷とエンジン動力が釣り合ったためである。
そして、時刻t1で前後進スイッチ51が後進位置(R)から前進位置(F)に切り替わると、実エンジン回転速度NEG_ACTが高回転速度NHまで増加し、その後、低下する。具体的には、図9(g)に示すように、時刻t1で前後進スイッチ51が切り替わってから車速VVHCLが0(ゼロ)よりも大きくなるまで回生制動が行われ、走行電動機43からエンジン20に回生エネルギーが回生されることにより、実エンジン回転速度NEG_ACTが増加する。回生エネルギーがエンジン20の負荷より大きい間は、実エンジン回転速度NEG_ACTが増加する。回生エネルギーがエンジン20の負荷より小さい間は、実エンジン回転速度NEG_ACTが減少する。つまり、回生エネルギーにより電動機として動作する発電電動機40の動力が油圧ポンプ30A~30Cの負荷よりも大きいときには、実エンジン回転速度NEG_ACTが増加する。その後、回生エネルギーが減少し、発電電動機40の動力が油圧ポンプ30A~30Cの負荷よりも小さくなると、実エンジン回転速度NEG_ACTが減少し始める。
本実施形態及び比較例において、図9(c)及び図9(d)に示すように、時刻t1を少し過ぎると、エンジンコントローラ120は、回転速度偏差ΔNEGが0(ゼロ)よりも大きくなったことを検知し、図9(e)に示すように、燃料噴射量FEGを0(ゼロ)まで減少させる。したがって、モジュレート動作中の燃費を向上できる。
比較例では、図9(c)及び図9(d)に示すように、時刻t5において、エンジンコントローラ120は、回転速度偏差ΔNEGが0(ゼロ)未満になったことを検知し、図9(e)に示すように燃料噴射量FEGを増加し始める。このため、比較例では、図9(d)に示すように、時刻t5から、実エンジン回転速度NEG_ACTの低下速度が緩やかになる。実エンジン回転速度NEG_ACTは、低回転速度NLと中回転速度NMの間で低下が止まり、その後、中回転速度NMより少し低い値まで増加する。
ここで、回転速度偏差ΔNEGが0(ゼロ)未満になったことをエンジンコントローラ120が検知してから、燃料噴射装置23の燃料噴射量FEGを増加させる指令を出力し、燃料噴射装置23が燃料噴射量FEGを実際に増加させ、エンジン20が実際に動力を増加するまでの間には、時間の遅れが生じる。このため、比較例では、図9(d)に示すように、実エンジン回転速度NEG_ACTが低回転速度NLと中回転速度NMの中間程度まで低下してしまっている。このように、比較例では、大きな負のオーバーシュート量NMOD_ERRが生じている。
これに対して、本実施形態では、図9(c)に示すように、時刻t4を少し過ぎるまで、指令回転速度NEG_CMDが目標エンジン回転速度NEG_TGTよりも所定の補正値(目標補正値NC_TGT)だけ大きい値に保持されている。したがって、本実施形態では、比較例よりも早いタイミングで回転速度偏差ΔNEGが0(ゼロ)未満になる。その結果、エンジンコントローラ120が燃料噴射量FEGを増加させる指令を出すタイミング、燃料噴射装置23が燃料を実際に増加させるタイミング、及びエンジン20が実際に動力を増加するタイミングが早まる。このため、本実施形態では、図9(e)に示すように時刻t4から燃料噴射が再開され、図9(d)に示すように実エンジン回転速度NEG_ACTの低下速度が緩やかになる。その後、実エンジン回転速度NEG_ACTは、中回転速度NMより少し低い値で低下が止まり、そのまま中回転速度NMより少し低い値に維持される。
このように、本実施形態に係る制御装置11は、図9(c)~図9(e)に示すように、回生制動によって車体8の進行方向を切り替えるモジュレート動作が行われ、エンジン回転速度センサ64により検出された実エンジン回転速度NEG_ACTが指令回転速度NEG_CMD(=目標エンジン回転速度NEG_TGT)よりも増加した場合には、エンジン20の燃料噴射量FEGを減少させる(時刻t1~時刻t2)。
さらに、本実施形態に係る制御装置11は、エンジン回転速度センサ64により検出された実エンジン回転速度NEG_ACTが、目標エンジン回転速度NEG_TGTよりも所定の補正値(目標補正値NC_TGT)だけ大きい値である指令回転速度(第2目標回転速度)NEG_CMD未満になった場合には、エンジン20の燃料噴射量FEGを増加させる(時刻t2~時刻t4)。
その結果、本実施形態では、比較例に比べて燃料噴射装置23の燃料噴射の再開のタイミングを早めることで、モジュレート動作終了後の実エンジン回転速度NEG_ACTの低下量を抑えることができる。
次に、図9(e)~図9(g)を参照して、燃料噴射量FEG、エンジン加速分動力PEG_ACC、車速VVHCLのそれぞれの挙動について説明する。図9(e)に示すように、本実施形態及び比較例において、燃料噴射量FEGは、時刻t0から指令回転速度NEG_CMDの増加に応じて、少量FELから増加している。その後、図示していないがエンジン20のブースト圧の増加に伴って、燃料噴射量FEGが多量FEHまで増加している。そして、時刻t1で回生制動が開始されると、エンジン20に要求される動力が低下するのに応じて、燃料噴射量FEGが0(ゼロ)まで低下している。
比較例では、時刻t5で回転速度偏差ΔNEGが0(ゼロ)未満となり、燃料噴射量FEGが増加し始めている。これに対して、本実施形態では、時刻t5よりも前の時刻t4で回転速度偏差ΔNEGが0(ゼロ)未満となる。このため、実エンジン回転速度NEG_ACTが中回転速度NM未満となる前に、燃料噴射量FEGが増加し始める。
図9(f)に示すように、本実施形態及び比較例において、エンジン加速分動力PEG_ACCは、時刻t0から指令回転速度NEG_CMDの増加に応じて、低動力PLより少し低い値から高動力PHまで増加している。その後、実エンジン回転速度NEG_ACTの増加に応じて回転速度偏差ΔNEGの絶対値が低下するのに伴って、エンジン加速分動力PEG_ACCは高動力PHから低動力PLまで低下している。そして、時刻t1からモジュレート動作が開始され、回転速度偏差ΔNEGが0(ゼロ)よりも大きくなると、エンジン加速分動力PEG_ACCは0(ゼロ)まで低下する。
比較例では、時刻t5で回転速度偏差ΔNEGが0(ゼロ)未満になると、エンジン加速分動力PEG_ACCが増加し始め、その後、中動力PMと高動力PHの間の値に到達する。そして、実エンジン回転速度NEG_ACTが中回転速度NMより少し低い値まで増加するのに合わせて、エンジン加速分動力PEG_ACCは低動力PLまで低下する。
これに対して、本実施形態では、時刻t5よりも前の時刻t4でエンジン加速分動力PEG_ACCが増加し始め、その後、低動力PLに到達する。実エンジン回転速度NEG_ACTは中回転速度NMより少し低い値で維持されているため、エンジン加速分動力PEG_ACCは低動力PLで安定する。
これは、上述したように、本実施形態では、時刻t4において、指令回転速度NEG_CMDが中回転速度NMより少し高い値に保持されており(図9(c)参照)、エンジンコントローラ120が燃料噴射量FEGを増加させる指令を出すタイミング、燃料噴射装置23が燃料を実際に出すタイミング、及びエンジン20が実際に動力を増加するタイミングが比較例に比べて早まったためである。燃料噴射のタイミングが早まったことにより、モジュレート動作終了後、実エンジン回転速度NEG_ACTは低回転速度NLと中回転速度NMの中間近くまで低下することなく中回転速度NMより少し低い値で下げ止まる(図9(d)参照)。これにより、本実施形態では、回転速度偏差ΔNEGが0(ゼロ)を大きく下回ることが防止されるので、エンジン加速分動力PEG_ACCが低動力PLより大きくなっていない。
図9(g)に示すように、本実施形態及び比較例において、車速VVHCLは、時刻t0からのアクセル操作量RAの急増(図9(a)参照)に応じて、0(ゼロ)から負の方向に増加、すなわち後進加速している。そして、エンジン加速分動力PEG_ACCが高動力PHから低動力PLまで低下すると(図9(f)参照)、車速VVHCLの絶対値の増加率が低くなる。そして、時刻t1で前後進スイッチ51が後進位置(R)から前進位置(F)に切り替わり(図9(b)参照)、モジュレート動作が開始されると、車速VVHCLの絶対値は0(ゼロ)に向かって減少する。車速VVHCLは時刻t3より少し前で0(ゼロ)よりも大きくなって正の方向に増加する。すなわちホイールローダ1が前進加速を開始する。
比較例では、その後、時刻t5から車速VVHCLの増加率が一旦低くなり、少し経過してから車速VVHCLの増加率が高くなる。これは、時刻t5から実エンジン回転速度NEG_ACTが中回転速度NMより少し低い値に増加するまでの間(図9(d)参照)、エンジン加速分動力PEG_ACCが中動力PMと高動力PHの間の値まで増加することによって(図9(f)参照)、走行駆動装置45に配分するエンジン動力が減少したためである。
これに対して、本実施形態では、時刻t3より少し前でホイールローダ1が前進加速を開始した後、比較例のように車速VVHCLの増加率が一旦低くなることなく、車速VVHCLが増加している。これは、上述したように、本実施形態では、実エンジン回転速度NEG_ACTが中回転速度NM未満になる前の早いタイミングで燃料噴射装置23から燃料が噴射されるためである(図9(d)、図9(e)参照)。早いタイミングで燃料噴射が再開することにより、実エンジン回転速度NEG_ACTが中回転速度NMより少し低い値で下げ止まるため(図9(d)参照)、エンジン加速分動力PEG_ACCが低動力PLより増加しない(図9(f)参照)。つまり、燃料噴射のタイミングが早まったことにより、走行駆動装置45に配分するエンジン動力が減少しないで済む。その結果、図示するように、モジュレート動作終了後、ホイールローダ1の車速VVHCLの増加率が一旦低くなることなく増加し、加速性能が向上している。
以上のように、運搬作業において、ホイールローダ1がモジュレート動作を行う場合、比較例では、モジュレート動作終了後の実エンジン回転速度NEG_ACTの負のオーバーシュート量が大きくなる。このため、走行駆動装置45に配分するエンジン動力が減少して車両加速性能が低い状態が長く続く。その結果、運搬作業の効率が低下してしまう。
これに対して、本実施形態では、メインコントローラ100が、実エンジン回転速度NEG_ACTの負のオーバーシュート量を相殺するように回転速度補正値NC(目標補正値NC_TGT)を設定する。そして、メインコントローラ100が、回転速度補正値NCを目標エンジン回転速度NEG_TGTに加算して指令回転速度NEG_CMDを求める。メインコントローラ100は、演算した指令回転速度NEG_CMDをエンジンコントローラ120に出力する。これにより、モジュレート動作終了後、走行駆動装置45に配分するエンジン動力の減少を抑えることができるので、車両加速性能が向上する。その結果、本実施形態では、比較例よりもホイールローダ1による運搬作業の効率を向上させることができる。
また、本実施形態では、モジュレート動作中に燃料噴射装置23が燃料を噴射し続ける必要がないため、無駄な燃料を消費せずに、所望の車両加速性能を得ることができる。モジュレート動作を開始してから燃料噴射を再開するタイミングは比較例よりも僅かに早まっているが、車両加速性能の向上による作業効率の増加と相殺されることで、比較例よりも燃費が悪化することも抑制できる。
以上のように構成された本発明の第1実施形態の構成、作用、及び効果をまとめると、以下のようになる。
(1)ホイールローダ(作業車両)1は、車体8と、車体8に設けられた車輪7と、車体8に搭載されたエンジン20と、エンジン20に機械的に接続された発電電動機40と、発電電動機40で発生する電力により車輪7を駆動可能であって、かつ、車輪7の回生制動が可能な走行駆動装置45と、オペレータによって操作されるアクセル操作装置56と、エンジン20の回転速度(実エンジン回転速度NEG_ACT)を検出するエンジン回転速度センサ64と、を備える(図2参照)。また、ホイールローダ1は、エンジン回転速度センサ64により検出された実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度(第1目標回転速度)NEG_TGTに一致するように、エンジン20の燃料噴射量を制御する制御装置11(メインコントローラ100及びエンジンコントローラ120)を備える(図2参照)。制御装置11は、アクセル操作装置56の操作量が大きいほど、目標エンジン回転速度NEG_TGTを大きくする(図5参照)。
制御装置11は、回生制動によって車体8の進行方向を切り替えるモジュレート動作が行われ、実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度(第1目標回転速度)NEG_TGTよりも増加した場合には、エンジン20の燃料噴射量を減少させる。制御装置11は、実エンジン回転速度NEG_ACTが、目標エンジン回転速度(第1目標回転速度)NEG_TGTよりも大きい指令回転速度(所定の第2目標回転速度)NEG_CMD未満になった場合には、エンジン20の燃料噴射量を増加させる。
この構成では、モジュレート動作において、走行駆動装置45による回生制動が行われ、回生エネルギーにより発電電動機40が電動機として動作する。これにより、実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度NEG_TGTよりも増加し、燃料噴射量が減少する。このため、本実施形態によれば、モジュレート動作中も燃料噴射を継続する場合に比べて、燃費を向上することができる。
また、本実施形態では、制御装置11が、モジュレート動作において燃料噴射量を減少させた後、モジュレート動作の終了直後において、実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度NEG_TGTよりも大きい指令回転速度NEG_CMD未満になった場合に燃料噴射量を増加させる。これにより、本実施形態によれば、モジュレート動作終了後、実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度NEG_TGT未満になる前に燃料噴射量FEGを増加させることができる。つまり、本実施形態によれば、実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度NEG_TGTを大きく下回ることが防止され、良好な加速性能が得られる。
以上のとおり、本実施形態によれば、モジュレート動作中の燃料消費を抑制しつつ、モジュレート動作の終了後の加速性能を向上させることが可能なホイールローダ(作業車両)1を提供することができる。
(2)ホイールローダ1は、エンジン20により駆動される油圧ポンプ30Aと、油圧ポンプ30Aから吐出される作動油によって伸縮動作される油圧シリンダ4,5と、油圧シリンダ4,5の伸縮動作に応じて動かされる駆動対象部材(アーム2、バケット3)とを有する作業装置6と、を備える(図2参照)。
本実施形態では、モジュレート動作の終了後に、実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度NEG_TGTを大きく下回ることが防止される。このため、モジュレート動作の終了後において、実エンジン回転速度NEG_ACTと比例関係にある油圧ポンプ30Aの流量も十分に確保することができる。つまり、本実施形態によれば、比較例に比べて、作業装置6の動作速度を向上させることができる。従って、本実施形態によれば、モジュレート動作終了後にダンプトラック等の積込対象92に向かってホイールローダ1を前進させつつアーム2を上昇させる際、アーム2の上昇速度が速くなるため、作業効率を向上させることができる。
<第2実施形態>
図10を参照して、本発明の第2実施形態に係るホイールローダ1について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。第2実施形態では、モジュレート判定部111Aによる判定方法が第1実施形態と異なっている。
図10を参照して、本発明の第2実施形態に係るホイールローダ1について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。第2実施形態では、モジュレート判定部111Aによる判定方法が第1実施形態と異なっている。
図10は、第2実施形態に係るメインコントローラ100Aの機能ブロック図である。図10に示すように、モジュレート判定部111Aは、指令値演算部113により演算された指令回転速度NEG_CMDと、エンジン回転速度センサ64により検出された実エンジン回転速度NEG_ACTと、操作量検出装置150のアクセル操作量センサ56aにより検出されたアクセル操作量RAとに基づいて、ホイールローダ1がモジュレート動作中であるか否かを判定する。
モジュレート判定部111Aは、モジュレート判定フラグFLがオフに設定されている場合であって、アクセル操作量RAが所定の操作量閾値RTHよりも大きく、かつ、演算された回転速度偏差(第1回転速度偏差)ΔNEGが第1回転速度閾値(第1閾値)NTH1よりも大きくなったときには、ホイールローダ1がモジュレート動作中であると判定し、モジュレート判定フラグFLをオフからオンに切り替える(F=1)。操作量閾値RTHは、アクセル操作装置56が操作されているか否かを判定するための閾値であり、予めROM102に記憶されている。操作量閾値RTHは、例えば、アクセル操作量RAの最大値を100%としたときの5~30%に相当する。
モジュレート判定部111Aは、モジュレート判定フラグFLがオンに設定されている場合であって、演算された回転速度偏差(第2回転速度偏差)ΔNEGが第2回転速度閾値(第2閾値)NTH2未満になったときには、ホイールローダ1が非モジュレート動作中であると判定し、モジュレート判定フラグFLをオンからオフに切り替える(F=0)。
このように、本第2実施形態に係る制御装置11は、アクセル操作装置56の操作量を加味して、ホイールローダ1がモジュレート動作中であるか否かを判定する。この構成によれば、回生制動していないときには、回転速度偏差(第1回転速度偏差)ΔNEGが第1回転速度閾値(第1閾値)NTH1より大きくなったとしても、モジュレート動作中であると判定されない。これにより、走行中に、回生制動に依らずに車体8を自然に減速させる場合に、ホイールローダ1がモジュレート動作中であると誤判定されることが防止される。また、ホイールローダ1の状態によってエンジン20にかかる負荷が変動した場合に、ホイールローダ1がモジュレート動作中であると誤判定されることが防止される。
<第3実施形態>
図11を参照して、本発明の第3実施形態に係るホイールローダ1について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。第3実施形態では、モジュレート判定部111Bによる判定方法が第1実施形態と異なっている。
図11を参照して、本発明の第3実施形態に係るホイールローダ1について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。第3実施形態では、モジュレート判定部111Bによる判定方法が第1実施形態と異なっている。
モジュレート動作は、ホイールローダ1の走行中に実際の車体8の進行方向とは逆の方向が前後進スイッチ51により選択されることで、前後進スイッチ51の切り替え前の進行方向(実際の車体8の進行方向)における車速を低減させる動作である。
そこで、本第3実施形態に係るメインコントローラ100Bは、走行駆動装置45が車輪7の回転方向と逆向きの駆動トルクを発生させているか否かを判定し、その判定結果を加味して、ホイールローダ1がモジュレート動作中であるか否かを判定する。
図11は、第3実施形態に係るメインコントローラ100Bの機能ブロック図である。図11に示すように、モジュレート判定部111Bは、指令値演算部113により演算された指令回転速度NEG_CMDと、エンジン回転速度センサ64により検出された実エンジン回転速度NEG_ACTと、前後進スイッチ51からの操作位置を表す信号と、モータ速度センサ58により検出された走行電動機43の回転速度(モータ速度)NMOTとに基づいて、ホイールローダ1がモジュレート動作中であるか否かを判定する。ここで、走行電動機43が車体8を前進させる方向に回転している場合にはモータ速度NMOTは正(+)の値となり(N>0)、走行電動機43が車体8を後進させる方向に回転している場合にはモータ速度NMOTは負(-)の値となる(N<0)。
モジュレート判定部111Bは、モータ速度センサ58の検出結果に基づき車輪7の回転方向を判定する。モジュレート判定部111Bは、モータ速度センサ58により検出されたモータ速度NMOTが正の値である場合には、車輪7の回転方向は前進方向であると判定する。モジュレート判定部111Bは、モータ速度センサ58により検出されたモータ速度NMOTが負の値である場合には、車輪7の回転方向は後進方向であると判定する。このように、モータ速度センサ58は、車輪7の回転方向を検出する車輪回転方向検出装置として機能する。
モジュレート判定部111Bは、前後進スイッチ51の操作位置に基づき走行駆動装置45が発生する駆動トルクの方向を判定する。モジュレート判定部111Bは、前後進スイッチ51の操作位置が前進位置である場合、走行駆動装置45が発生する駆動トルクの方向は前進方向であると判定する。モジュレート判定部111Bは、前後進スイッチ51の操作位置が後進位置である場合、走行駆動装置45が発生する駆動トルクの方向は後進方向であると判定する。このように、前後進スイッチ51は、走行駆動装置45が発生する駆動トルクの方向を検出するトルク方向検出装置として機能する。
モジュレート判定部111Bは、前後進の切り替え操作がなされた場合であって、その切り替え操作によって選択された車体8の進行方向とは逆の方向(すなわち、切り替え操作前の回転方向)に走行電動機43が回転しているときには、以下の補助条件が成立していると判定する。
補助条件:走行駆動装置45が発生する駆動トルクの方向が、車輪7の回転方向と逆向きである。
補助条件:走行駆動装置45が発生する駆動トルクの方向が、車輪7の回転方向と逆向きである。
具体的には、モジュレート判定部111Bは、前後進スイッチ51が後進位置から前進位置へ切り替え操作された場合であって、走行電動機43が後進方向に回転しているときには、補助条件が成立していると判定する。また、モジュレート判定部111Bは、前後進スイッチ51が前進位置から後進位置へ切り替え操作された場合であって、走行電動機43が前進方向に回転しているときには、補助条件が成立していると判定する。
モジュレート判定部111Bは、前後進の切り替え操作がなされた場合であっても、その切り替え操作によって選択された車体8の進行方向とは逆の方向に走行電動機43が回転していないときには、補助条件が成立していないと判定する。
モジュレート判定部111Bは、モジュレート判定フラグFLがオフに設定されている場合であって、補助条件が成立し、かつ、演算された回転速度偏差(第1回転速度偏差)ΔNEGが第1回転速度閾値(第1閾値)NTH1よりも大きくなったときには、ホイールローダ1がモジュレート動作中であると判定し、モジュレート判定フラグFLをオフからオンに切り替える(F=1)。
モジュレート判定部111Aは、モジュレート判定フラグFLがオンに設定されている場合であって、演算された回転速度偏差(第2回転速度偏差)ΔNEGが第2回転速度閾値NTH2未満になったときには、ホイールローダ1が非モジュレート動作中であると判定し、モジュレート判定フラグFLをオンからオフに切り替える(F=0)。
このように、本第3実施形態に係る制御装置11は、トルク方向検出装置としての前後進スイッチ51により検出された走行駆動装置45が発生する駆動トルクの方向が、車輪回転方向検出装置としてのモータ速度センサ58により検出された車輪7の回転方向と逆向きであり、かつ、回転速度偏差(第1回転速度偏差)ΔNEGが第1回転速度閾値(第1閾値)NTH1より大きくなった場合に、ホイールローダ1がモジュレート動作中であると判定する。この構成によれば、第2実施形態と同様、回生制動していないときには、回転速度偏差(第1回転速度偏差)ΔNEGが第1回転速度閾値(第1閾値)NTH1より大きくなったとしても、モジュレート動作中であると判定されない。これにより、回生制動していないときに、ホイールローダ1がモジュレート動作中であると誤判定されることが防止される。
なお、本第3実施形態において、第2実施形態と同様、アクセル操作装置56の操作量を加味して、ホイールローダ1がモジュレート動作中であるか否かを判定してもよい。また、車輪7の回転方向を検出する車輪回転方向検出装置として、モータ速度センサ58を採用する例について説明したが、車輪回転方向検出装置はこれに限定されない。例えば、車輪回転方向検出装置には、車速センサ61を採用してもよい。走行駆動装置45が発生する駆動トルクの方向を検出するトルク方向検出装置として、前後進スイッチ51を採用する例について説明したが、トルク方向検出装置はこれに限定されない。トルク方向検出装置には、走行電動機43の電流を検出する電流センサ、走行電動機43のトルクを検出するトルクセンサ等を採用してもよい。
<第4実施形態>
図12~図14を参照して、本発明の第4実施形態に係るホイールローダ1について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。第1実施形態では、目標補正値NC_TGTが固定値である例について説明した。
図12~図14を参照して、本発明の第4実施形態に係るホイールローダ1について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。第1実施形態では、目標補正値NC_TGTが固定値である例について説明した。
これに対して、第4実施形態に係る制御装置11はホイールローダ1の状態に応じて、目標補正値NC_TGTをリアルタイムに変化させる。以下、本発明の第4実施形態に係るメインコントローラ100Cの機能、及び、メインコントローラ100Cにより実行される演算処理の内容について、詳しく説明する。
図12は、第4実施形態に係るメインコントローラ100Cの機能ブロック図である。図12に示すように、メインコントローラ100Cは、第1実施形態で説明した機能に加え、負のオーバーシュート推定部310及び目標補正値演算部311としての機能を有する。
負のオーバーシュート推定部310は、操作量検出装置150のアクセル操作量センサ56aにより検出されたアクセル操作量RAに基づいて、負のオーバーシュート推定値NMOD_ERR_ESTを演算する。
メインコントローラ100CのROM102には、図13に示すような、アクセル操作量RAと負のオーバーシュート推定値NMOD_ERR_ESTの相関マップMoが記憶されている。図13は、アクセル操作量RAと負のオーバーシュート推定値NMOD_ERR_ESTの関係を示す相関マップの一例を示す図である。
負のオーバーシュート推定部310は、相関マップMoを参照し、アクセル操作量RAに基づいて、負のオーバーシュート推定値NMOD_ERR_ESTを演算する。この相関マップMoは、アクセル操作量RAの増加に伴って走行電動機43が発生するトルクが大きくなり、走行要求動力が増えることで負のオーバーシュート量NMOD_ERRが増加する関係を示している。この相関マップMoで示される特性は、予め計算もしくは実験によって決定される。具体的には、アクセル操作量RAと負のオーバーシュート量NMOD_ERRの関係を求めて、この負のオーバーシュート量NMOD_ERRを負のオーバーシュート推定値NMOD_ERR_ESTに置き換えることで、相関マップMoが作成される。
負のオーバーシュート量NMOD_ERRは、走行要求動力、エンジン軸のイナーシャ、油圧負荷、エンジン回転速度センサ64のサンプリングレート、エンジンコントローラ120の演算周期、燃料噴射装置23及びエンジン20の応答時定数、並びに、エンジン20のブースト圧に応じて決まる。なお、走行要求動力は、上述したように、アクセル操作量RA及びモータ速度NMOTに基づいて決まる。
モジュレート動作においては、アクセル操作量RA以外は、固定値あるいは略決まった値となる。このため、図13に示すように、アクセル操作量RAと負のオーバーシュート量の相関マップを作成することができる。なお、クリープトルクがあるため、相関マップMoにおいて、アクセル操作量RAが0(ゼロ)のときの負のオーバーシュート推定値NMOD_ERR_ESTは0(ゼロ)よりも大きい。
図12に示すように、目標補正値演算部311は、負のオーバーシュート推定部310により演算された負のオーバーシュート推定値NMOD_ERR_ESTに基づいて、目標補正値NC_TGTを演算する。メインコントローラ100CのROM102には、負のオーバーシュート量NMOD_ERRと目標補正値NC_TGTの相関マップMc(図7参照)が記憶されている。
目標補正値演算部311は、相関マップMcを参照し、オーバーシュート推定値NMOD_ERR_ESTに基づいて、目標補正値NC_TGTを演算する。なお、目標補正値演算部311は、オーバーシュート推定値NMOD_ERR_ESTを相関マップMcにおけるオーバーシュート量NMOD_ERRとして、目標補正値NC_TGTを演算する。この相関マップMcで示される特性は、予め計算もしくは実験によって決定される。
補正値演算部112Cは、モジュレート判定フラグFLがオンに設定されている場合には、回転速度補正値NCを目標補正値演算部311により演算された目標補正値NC_TGTに設定する。補正値演算部112Cは、モジュレート判定フラグFLがオフに設定されている場合には、回転速度補正値NCを初期補正値NC_INI(=0)に設定する。
次に、図14を参照して本第4実施形態に係るメインコントローラ100Cにより実行されるエンジン制御の一例について説明する。図14は、図8と同様の図であり、メインコントローラ100Cにより実行されるエンジン制御のフローチャートである。本第4実施形態に係るメインコントローラ100Cは、図8のフローチャートのステップS110とステップS120の間に、ステップS310とS311の処理を実行する。
ステップS310において、負のオーバーシュート推定部310は、相関マップMo(図13)を参照し、操作量検出装置150のアクセル操作量センサ56aにより検出されたアクセル操作量RAに基づいて、負のオーバーシュート推定値NMOD_ERR_ESTを演算し、処理をステップS311へ進める。
ステップS311において、目標補正値演算部311は、相関マップMc(図7)を参照し、ステップS310で演算された負のオーバーシュート推定値NMOD_ERR_ESTに基づいて、目標補正値NC_TGTを演算し、処理をステップS120へ進める。
そして、ステップS190において、補正値演算部112Cは、回転速度補正値NCをステップS311で演算された目標補正値NC_TGTに設定し、処理をステップS210へ進める。
他のステップでの処理は、図8のフローチャートと同様であるので説明を省略する。
このように、本第4実施形態に係る制御装置11は、アクセル操作装置56の操作量(アクセル操作量RA)が大きいほど、回転速度補正値NCを大きくする(図7、図13参照)。すなわち、制御装置11は、アクセル操作装置56の操作量が大きいほど、第2目標回転速度としての指令回転速度NEG_CMDを大きくする。これにより、アクセル操作量RAの大きさに依らず回転速度補正値NCと負のオーバーシュート量NMOD_ERRとの釣り合いがとれるようになる。すなわち、オペレータによるアクセルペダルの踏込具合に依らず、モジュレート動作終了後の実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度NEG_TGTを大きく下回ったり上回ったりしなくなる。従って、より広い範囲のアクセル操作装置56の操作範囲において、モジュレート動作終了後の加速性能を向上させることができる。
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
<変形例1>
第1実施形態では、回転速度偏差(第1回転速度偏差)ΔNEGが第1回転速度閾値(第1閾値)NTH1よりも大きくなった場合にホイールローダ1がモジュレート動作中であると判定し、回転速度偏差(第2回転速度偏差)ΔNEGが第2回転速度閾値(第2閾値)NTH2未満になった場合にホイールローダ1が非モジュレート動作中であると判定する例について説明した。しかしながら、モジュレート動作中であるか、非モジュレート動作中であるかの判定には、遅延を持たせてもよい。
第1実施形態では、回転速度偏差(第1回転速度偏差)ΔNEGが第1回転速度閾値(第1閾値)NTH1よりも大きくなった場合にホイールローダ1がモジュレート動作中であると判定し、回転速度偏差(第2回転速度偏差)ΔNEGが第2回転速度閾値(第2閾値)NTH2未満になった場合にホイールローダ1が非モジュレート動作中であると判定する例について説明した。しかしながら、モジュレート動作中であるか、非モジュレート動作中であるかの判定には、遅延を持たせてもよい。
モジュレート判定部111は、図8のステップS140において、回転速度偏差(第1回転速度偏差)ΔNEGが第1回転速度閾値(第1閾値)NTH1よりも大きい状態が第1時間(所定時間)Tt1継続した場合に、ホイールローダ1がモジュレート動作中であると判定し、処理をステップS150へ進める。
モジュレート判定部111は、図8のステップS160において、回転速度偏差(第2回転速度偏差)ΔNEGが第2回転速度閾値(第2閾値)NTH2未満である状態が第2時間(所定時間)Tt2継続した場合に、ホイールローダ1が非モジュレート動作中であると判定し、処理をステップS170へ進める。
なお、第1時間Tt1及び第2時間Tt2は、ホイールローダ1の不安定な動作を防止するための閾値であり、予めROM102に記憶されている。なお、第1時間Tt1及び第2時間Tt2は、同じ値であってもよいし異なる値であってもよい。
本変形例によれば、実エンジン回転速度NEG_ACTの脈動によりモジュレート判定フラグFLが切り替わることに起因した不安定な動作を防止できる。同様に、実エンジン回転速度NEG_ACTの検出値に含まれるノイズによりモジュレート判定フラグFLが切り替わることに起因した不安定な動作を防止できる。また、モジュレート判定フラグFLが切り替わる前後でアクセル操作装置56や作業装置6のレバー操作量を変更した場合に、モジュレート判定フラグFLが一瞬切り替わることに起因した不安定な動作を防止できる。
なお、第1実施形態において、モジュレート動作中であるか、非モジュレート動作中であるかの判定に遅延を持たせる例について説明したが、第2~第4実施形態において、モジュレート動作中であるか、非モジュレート動作中であるかの判定に遅延を持たせてもよい。
<変形例2>
上記実施形態では、目標エンジン回転速度NEG_TGTを補正して指令回転速度NEG_CMDを算出し、実エンジン回転速度NEG_ACTが指令回転速度NEG_CMDに一致するようにエンジン20の燃料噴射量を制御することにより、負のオーバーシュート量を抑制する例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
上記実施形態では、目標エンジン回転速度NEG_TGTを補正して指令回転速度NEG_CMDを算出し、実エンジン回転速度NEG_ACTが指令回転速度NEG_CMDに一致するようにエンジン20の燃料噴射量を制御することにより、負のオーバーシュート量を抑制する例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
例えば、以下のように、燃料噴射量を制御してもよい。本変形例に係るエンジンコントローラ120は、実エンジン回転速度NEG_ACTが目標エンジン回転速度NEG_TGTに一致するように燃料噴射装置23の燃料噴射量を制御する。また、本変形例に係るメインコントローラ100は、ホイールローダ1がモジュレート動作中であると判定された場合、目標エンジン回転速度NEG_TGTよりも所定値(目標補正値NC_TGTに相当する値)だけ大きい値を判定用閾値(第2目標回転速度)NEG_THとして演算する。メインコントローラ100は、モジュレート判定フラグFLがオンに設定されている場合であって、実エンジン回転速度NEG_ACTが判定用閾値NEG_TH未満になった場合に、強制燃料噴射信号をエンジンコントローラ120に送信する。
エンジンコントローラ120は、強制燃料噴射信号を受信すると、実エンジン回転速度NEG_ACT及び目標エンジン回転速度NEG_TGTに関係なく、燃料噴射量を増加させ、一定時間だけ燃料を噴射させる。エンジンコントローラ120は、一定時間経過すると、目標エンジン回転速度NEG_TGTに実エンジン回転速度NEG_ACTを一致させるように燃料噴射装置23を制御する。
このような変形例によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
<変形例3>
ホイールローダ1は、発電インバータ41及び走行インバータ42(図2参照)と電気的に接続されたチョッパ回路と、チョッパ回路のスイッチング動作により発電インバータ41及び走行インバータ42と電気的に接続される放電抵抗器と、を備えていてもよい。この構成では、チョッパ回路の入力電圧が設定電圧を超えた場合に、チョッパ回路を動作させて、不要な電力を放電抵抗器で消費することができる。チョッパ回路及び放電抵抗器を備えるホイールローダ1に本発明を適用することにより、チョッパ回路及び放電抵抗器の動作頻度を低減することができ、これらの装置の機械的寿命を向上することができる。
ホイールローダ1は、発電インバータ41及び走行インバータ42(図2参照)と電気的に接続されたチョッパ回路と、チョッパ回路のスイッチング動作により発電インバータ41及び走行インバータ42と電気的に接続される放電抵抗器と、を備えていてもよい。この構成では、チョッパ回路の入力電圧が設定電圧を超えた場合に、チョッパ回路を動作させて、不要な電力を放電抵抗器で消費することができる。チョッパ回路及び放電抵抗器を備えるホイールローダ1に本発明を適用することにより、チョッパ回路及び放電抵抗器の動作頻度を低減することができ、これらの装置の機械的寿命を向上することができる。
<変形例4>
また、上記実施形態に係る走行駆動装置45は、単一の走行電動機43を設ける例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。走行駆動装置45は、複数の走行電動機43を備えていてもよい。例えば、走行駆動装置45は、前輪7Aに1対1で直結する走行電動機43を2つ用いた構成としたり、4つの車輪7に1対1で直結する走行電動機43を4つ用いた構成としたりしてもよい。また、走行電動機43と車輪7は、一体化させてもよい。
また、上記実施形態に係る走行駆動装置45は、単一の走行電動機43を設ける例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。走行駆動装置45は、複数の走行電動機43を備えていてもよい。例えば、走行駆動装置45は、前輪7Aに1対1で直結する走行電動機43を2つ用いた構成としたり、4つの車輪7に1対1で直結する走行電動機43を4つ用いた構成としたりしてもよい。また、走行電動機43と車輪7は、一体化させてもよい。
<変形例5>
また、上記実施形態では、作業装置6を駆動させるシステムが、エンジン20の動力を作業装置6に伝達する油圧駆動システムである場合について説明した(図2参照)。上記実施形態の油圧駆動システムでは、油圧ポンプ30Aから吐出される作動油がアームシリンダ4及びバケットシリンダ5によって機械的なエネルギーに変換される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。作業装置6を駆動する駆動システムは、電動駆動システムであってもよい。電動駆動システムでは、アームシリンダ4及びバケットシリンダ5が、油圧シリンダではなく、発電電動機40で発生する電力により駆動される電動シリンダである。
また、上記実施形態では、作業装置6を駆動させるシステムが、エンジン20の動力を作業装置6に伝達する油圧駆動システムである場合について説明した(図2参照)。上記実施形態の油圧駆動システムでは、油圧ポンプ30Aから吐出される作動油がアームシリンダ4及びバケットシリンダ5によって機械的なエネルギーに変換される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。作業装置6を駆動する駆動システムは、電動駆動システムであってもよい。電動駆動システムでは、アームシリンダ4及びバケットシリンダ5が、油圧シリンダではなく、発電電動機40で発生する電力により駆動される電動シリンダである。
<変形例6>
上記実施形態において、各種判定及び計算に用いる値は、外乱及びノイズの影響を避けるため、移動平均処理やローパスフィルタ処理をしてもよい。また、回転速度補正値NCに移動平均処理やローパスフィルタ処理をすることで、実エンジン回転速度NEG_ACTの増加直後において、回転速度補正値NCの急激な変動を抑制することができるので、エンジン制御の安定性と操作性の向上を図ることができる。
上記実施形態において、各種判定及び計算に用いる値は、外乱及びノイズの影響を避けるため、移動平均処理やローパスフィルタ処理をしてもよい。また、回転速度補正値NCに移動平均処理やローパスフィルタ処理をすることで、実エンジン回転速度NEG_ACTの増加直後において、回転速度補正値NCの急激な変動を抑制することができるので、エンジン制御の安定性と操作性の向上を図ることができる。
<変形例7>
上記実施形態で説明した制御装置(メインコントローラ及びエンジンコントローラ)11の機能は、それらの一部または全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現してもよい。
上記実施形態で説明した制御装置(メインコントローラ及びエンジンコントローラ)11の機能は、それらの一部または全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。上述した実施形態及び変形例は本発明を理解し易く説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ある実施形態、変形例の構成の一部を他の実施形態、変形例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態、変形例の構成に他の実施形態、変形例の構成を加えることも可能である。なお、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
また、上記実施形態では、作業車両がホイールローダ1である例について説明したが、本発明は、ホイール式ショベルやフォークリフトなど、エンジン動力を用いて回生制動が可能な走行駆動装置を備える種々の作業車両に適用することができる。
1…ホイールローダ(作業車両)、2…アーム(駆動対象部材)、3…バケット(駆動対象部材)、4…アームシリンダ(油圧シリンダ)、5…バケットシリンダ(油圧シリンダ)、6…作業装置、7…車輪、7A…前輪、7B…後輪、8…車体、8A…前部車体、8B…後部車体、10…センタージョイント、11…制御装置、12…運転室、20…エンジン、23…燃料噴射装置、30A,30B,30C…油圧ポンプ、31…フロント制御部、32…ブレーキ制御部、33…ステアリング制御部、40…発電電動機、41…発電インバータ、42…走行インバータ、43…走行電動機、45…走行駆動装置、51…前後進スイッチ(トルク方向検出装置)、56…アクセル操作装置、56a…アクセル操作量センサ、58…モータ速度センサ(車輪回転方向検出装置)、61…車速センサ(車輪回転方向検出装置)、64…エンジン回転速度センサ、91…掘削対象、92…積込対象、100,100A,100B,100C…メインコントローラ、110…目標速度演算部、111,111A,111B…モジュレート判定部、112,112C…補正値演算部、113…指令値演算部、120…エンジンコントローラ、150…操作量検出装置、151…吐出圧検出装置、310…オーバーシュート推定部、311…目標補正値演算部、FL…モジュレート判定フラグ、NC…回転速度補正値、NC_INI…初期補正値、NC_TGT…目標補正値(所定の補正値)、NEG_ACT…実エンジン回転速度、NEG_CMD…指令回転速度(第2目標回転速度)、NEG_TGT…目標エンジン回転速度(第1目標回転速度)、NEG_TH…判定用閾値(第2目標回転速度)、NMOD_ERR…オーバーシュート量、NMOD_ERR_EST…オーバーシュート推定値、NMOT…モータ速度(走行電動機の回転速度)、NTH1…第1回転速度閾値(所定の第1閾値)、NTH2…第2回転速度閾値(所定の第2閾値)、PEG_ACC…エンジン加速分動力、RA…アクセル操作量(アクセル操作装置の操作量)、RTH…操作量閾値、Tt1…第1時間(所定時間)、Tt2…第2時間(所定時間)、ΔNEG…回転速度偏差(モジュレート判定フラグがオフに設定されている場合の第1回転速度偏差、モジュレート判定フラグがオンに設定されている場合の第2回転速度偏差)
Claims (8)
- 車体と、
前記車体に設けられた車輪と、
前記車体に搭載されたエンジンと、
前記エンジンに機械的に接続された発電電動機と、
前記発電電動機で発生する電力により前記車輪を駆動可能であって、かつ、前記車輪の回生制動が可能な走行駆動装置と、
前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度センサと、
前記エンジン回転速度センサにより検出された前記エンジンの回転速度が第1目標回転速度に一致するように、前記エンジンの燃料噴射量を制御する制御装置と、を備えた作業車両において、
前記制御装置は、
回生制動によって前記車体の進行方向を切り替えるモジュレート動作が行われ、前記エンジンの回転速度が前記第1目標回転速度よりも増加した場合には、前記エンジンの燃料噴射量を減少させ、
前記エンジンの回転速度が、前記第1目標回転速度よりも大きい所定の第2目標回転速度未満になった場合には、前記エンジンの燃料噴射量を増加させる
ことを特徴とする作業車両。 - 請求項1に記載の作業車両において、
前記制御装置は、
前記エンジンの回転速度と前記第1目標回転速度との差分である第1回転速度偏差を演算し、
演算された前記第1回転速度偏差が所定の第1閾値より大きくなった場合、前記作業車両がモジュレート動作中であると判定し、
前記作業車両がモジュレート動作中であると判定された場合、所定の補正値を前記第1目標回転速度に加算して、前記第2目標回転速度を演算し、
前記エンジンの回転速度と演算された前記第2目標回転速度との差分である第2回転速度偏差を演算し、
演算された前記第2回転速度偏差が所定の第2閾値未満になった場合、前記作業車両が非モジュレート動作中であると判定し、
前記作業車両が非モジュレート動作中であると判定された場合、所定時間が経過するまで、前記エンジンの回転速度が前記第2目標回転速度に一致するように、前記エンジンの燃料噴射量を制御し、前記所定時間が経過した後、前記エンジンの回転速度が前記第1目標回転速度に一致するように燃料噴射量を制御する
ことを特徴とする作業車両。 - 請求項2に記載の作業車両において、
オペレータによって操作されるアクセル操作装置を備え、
前記制御装置は、
前記アクセル操作装置の操作量が大きいほど、前記第1目標回転速度を大きくし、
前記アクセル操作装置の操作量が所定の操作量閾値よりも大きく、かつ、前記第1回転速度偏差が前記第1閾値より大きくなった場合、前記作業車両がモジュレート動作中であると判定する
ことを特徴とする作業車両。 - 請求項2に記載の作業車両において、
前記制御装置は、
前記第1回転速度偏差が前記第1閾値よりも大きい状態が所定時間継続した場合、前記作業車両がモジュレート動作中であると判定し、
前記第2回転速度偏差が前記第2閾値未満である状態が所定時間継続したときに、前記作業車両が非モジュレート動作中であると判定する
ことを特徴とする作業車両。 - 請求項2に記載の作業車両において、
前記走行駆動装置が発生する駆動トルクの方向を検出するトルク方向検出装置と、
前記車輪の回転方向を検出する車輪回転方向検出装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記トルク方向検出装置により検出された前記走行駆動装置が発生する駆動トルクの方向が、前記車輪回転方向検出装置により検出された前記車輪の回転方向と逆向きであり、かつ、前記第1回転速度偏差が前記第1閾値より大きくなった場合に、前記作業車両がモジュレート動作中であると判定する
ことを特徴とする作業車両。 - 請求項1に記載の作業車両において、
前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出される作動油によって伸縮動作される油圧シリンダと、前記油圧シリンダの伸縮動作に応じて動かされる駆動対象部材とを有する作業装置と、を備える
ことを特徴とする作業車両。 - 請求項1に記載の作業車両において、
前記走行駆動装置は、前記発電電動機で発生する電力によって駆動される走行電動機を有している
ことを特徴とする作業車両。 - 請求項1に記載の作業車両において、
オペレータによって操作されるアクセル操作装置を備え、
前記制御装置は、
前記アクセル操作装置の操作量が大きいほど、前記第1目標回転速度を大きくし、
前記アクセル操作装置の操作量が大きいほど、前記第2目標回転速度を大きくする
ことを特徴とする作業車両。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022110234A JP2024008395A (ja) | 2022-07-08 | 2022-07-08 | 作業車両 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022110234A JP2024008395A (ja) | 2022-07-08 | 2022-07-08 | 作業車両 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2024008395A true JP2024008395A (ja) | 2024-01-19 |
Family
ID=89544709
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022110234A Pending JP2024008395A (ja) | 2022-07-08 | 2022-07-08 | 作業車両 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2024008395A (ja) |
-
2022
- 2022-07-08 JP JP2022110234A patent/JP2024008395A/ja active Pending
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