JP2024007315A - 積層型電子部品及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】信頼性に優れた積層型電子部品及びその製造方法を提供する。【解決手段】本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒は、誘電体結晶粒内の欠陥(defect)の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒を一つ以上含むことができる。【選択図】図10

Description

本発明は、積層型電子部品及びその製造方法に関するものである。
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用できる。コンピュータ、モバイル機器など、各種の電子機器の小型化、高出力化に伴い、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化に対する要求が増大している。
また、最近、IT用MLCCだけでなく、自動車電装用MLCCの市場が拡大するにつれて、同一容量帯で定格電圧が高く、信頼性に優れた製品への需要が増大している。そこで、誘電体粉末に様々な添加剤を添加して信頼性を向上させようとする試みがなされているが、同じ誘電体組成であっても微細構造、添加剤元素の分布及び固溶程度、並びに工程条件によって信頼性に大きな差が生じることがある。
韓国公開特許公報第10-2016-0073243号
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、信頼性に優れた積層型電子部品及びその製造方法を提供することである。
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、常温誘電率、DC-bias特性及び高温耐電圧特性に優れた積層型電子部品及びその製造方法を提供することである。
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、X7RあるいはX7S容量温度特性を満たすことができる積層型電子部品及びその製造方法を提供することである。
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、結晶粒内に欠陥(defect)を生成させて信頼性に優れた積層型電子部品及びその製造方法を提供することである。
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、誘電体の結晶格子からなる結晶粒界(grain boundary)領域においてSi元素が固溶状態で存在する積層型電子部品及びその製造方法を提供することである。
ただし、本発明が解決しようとするいくつかの課題は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒は、誘電体結晶粒内の欠陥(defect)の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒を一つ以上含むことができる。
本発明の他の一実施形態による積層型電子部品の製造方法は、誘電体粉末を主成分として含み、溶媒及び分散剤を含む誘電体組成物をミリングする段階と、上記誘電体組成物にバインダーを追加し、追加ミリングしてスラリーを設ける段階と、上記スラリーを用いてセラミックグリーンシートを形成する段階と、上記セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを印刷した後、積層して積層体を形成する段階と、上記積層体を焼成して誘電体層及び内部電極を含む本体を形成する段階と、上記本体上に外部電極を形成する段階と、を含み、上記ミリングする段階は、上記誘電体層に含まれた誘電体結晶粒内の欠陥(defect)の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒を一つ以上含むように行うことができる。
本発明の様々な効果の一つは、積層型電子部品の信頼性を向上させたことである。
本発明の様々な効果の一つは、積層型電子部品の常温誘電率、DC-bias特性及び高温耐電圧特性を向上させたことである。
本発明の様々な効果の一つは、積層型電子部品のX7RあるいはX7S容量温度特性を満たすことができることである。
本発明の様々な効果の一つは、誘電体結晶粒内に欠陥を生成させて積層型電子部品の信頼性を向上させたことである。
本発明の様々な効果の一つは、誘電体の結晶格子からなる結晶粒界(grain boundary)領域においてSi元素が固溶した状態で存在できることである。
ただし、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものである。 本発明の一実施形態による積層型電子部品の本体を分解して概略的に示す分解斜視図である。 図1のI-I’線に沿った断面図を概略的に示すものである。 図1のII-II’線に沿った断面図を概略的に示すものである。 図3のP領域を拡大した拡大図を概略的に示すものである。 転位(dislocation)を含む誘電体結晶粒を概略的に示すものである。 (a)は、誘電体結晶粒の内部に転位(dislocation)を含まない比較例に対するTEMイメージであり、(b)は、誘電体結晶格子の結晶粒界(grain boundary)の近傍領域に非晶質層(amorphous)を含むTEMイメージである。 誘電体結晶粒の内部にドメインバウンダリー(domain boundary)が形成されたTEMイメージである。 誘電体結晶粒の内部に形成された転位(dislocation)を観察したTEMイメージである。 (a)は、誘電体結晶粒の内部に転位(dislocation)を含む実施形態のTEMイメージであり、(b)は、誘電体結晶格子の粒界(grain boundary)を撮影したHRTEMイメージであり、(c)は、(b)の点線におけるSi元素の百分率(at%)に対するSTEM-EDS分析グラフである。 (a)は、誘電体結晶粒の内部に転位(dislocation)を含む他の一実施形態のTEMイメージであり、(b)は、誘電体結晶格子の粒界(grain boundary)を撮影したHRTEMイメージであり、(c)は、図11bの点線におけるSi元素の百分率(at%)に対するSTEM-EDS分析グラフである。 本発明の他の一実施形態である積層型電子部品の製造方法を示す製造工程図である。
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張されてもよく、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示ししているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
図面において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものであり、図2は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の本体を分解して概略的に示す分解斜視図であり、図3は、図1のI-I’線に沿った断面図を概略的に示すものであり、図4は、図1のII-II’線に沿った断面図を概略的に示すものであり、図5は、図3のP領域を拡大した拡大図を概略的に示すものであり、図6は、転位(dislocation)を含む誘電体結晶粒を概略的に示すものである。
以下、図1~図6を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。ただし、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は誘電体組成物を用いる様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体110上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層111は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒は、誘電体結晶粒内の欠陥(defect)の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒10、11を一つ以上含むことができる。
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1~第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する活性部Acと、活性部Acの第1方向の両端面上にそれぞれ配置された上部及び下部カバー部112、113とを含むことができ、活性部Acの第3方向の両端面上に配置されたマージン部114、115を含むことができる。
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り限定されない。一般的に、ペロブスカイト(ABO)系材料を使用することができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例示として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCa)TiO(0<x<1)、Ba(Ti1-yCa)O(0<y<1)、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZr)O(0<y<1)などが挙げられる。
また、誘電体層111を形成する原料としては、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
一方、誘電体層111は後述する誘電体組成物を含むことができ、より具体的に、上記誘電体層111は誘電体組成物を焼結して形成されたものであってもよい。
誘電体組成物に含まれた副成分は、酸化物又は炭酸塩形態の添加剤として添加されることができるが、誘電体組成物を焼結した後には、酸化物又は炭酸塩形態ではなく、BaTiOに固溶した形態で存在することができる。ただし、副成分の主要元素の含量比率は、焼結前後でほぼ同様に維持されることができ、焼結前の誘電体組成物に含まれた主成分及び副成分の含量に基づいて焼結後の誘電体層111の各元素含量を計算することができる。
また、誘電体層111に含まれた各元素の定量的含量は、破壊工法を用いて測定することができる。
具体的に破壊工法を用いた測定方法は、積層型電子部品を粉砕し、内部電極を除去してから誘電体部分を選別した後、選別された誘電体を誘導結合プラズマ分光分析器(ICP-OES:Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectroscopy)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS:Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)などの装置を用いて誘電体の成分を定量的に分析することができる。
一方、IT用MLCCだけでなく、自動車電装用MLCCの市場が拡大するにつれて、同一容量帯で定格電圧が高く、信頼性に優れた製品への需要が増加している。一般的に、結晶粒のサイズが小さく粒界が多いほど、誘電体の信頼性が向上することが知られている。MLCC誘電体組成物の添加剤元素のうち、原子価固定アクセプタ(fixed valence acceptor)、原子価可変アクセプタ(variable valence acceptor)である遷移金属元素、及び希土類元素(rare earth elements)が信頼性に与える影響は既に広く知られており、一般的にそれらを含む誘電体添加元素組成比の最適化によって信頼性が良好な条件を選定することになる。BME(Base Metal Electrode)MLCCが産業化する間、信頼性を向上させるための組成最適化作業が継続的に進められてきた。しかし、同じ誘電体組成であっても、微細構造、添加剤元素の分布及び固溶程度、並びに工程条件に応じて信頼性に大きな差があり、組成的因子以外に誘電体の微細構造において特定の形態を実現すれば、信頼性が画期的に向上できる。
現在のX5R、X7R、X8R、Y5Vなどの高容量BME MLCCの誘電体は、BaTiO母材あるいはCa、Zrなどが一部固溶した(Ba、Ca)(Ti、Ca)O、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O及びBa(Ti、Zr)Oなどの母材に、Mg、Alなどのような原子価固定アクセプタと、Y、Dy、Ho、Erなどのようなドナー(donor)の役割を果たす希土類元素を共にドーピング(co-doping)し、Mn、V、Crのような原子価可変アクセプタ、及び余分なBa、並びにSiOあるいはそれを含む焼結助剤などの添加剤をさらに添加して焼結された材料に基づいている。還元雰囲気で焼成する場合に、高容量MLCCの正常な容量及び絶縁特性を実現するためには、粒成長の抑制及び耐還元性を実現する必要があり、Mgのような原子価固定アクセプタを適正量添加することにより、この2つの効果を実現することができると知られている。しかし、Mgのような原子価固定アクセプタのみを添加する場合には、誘電体の耐電圧特性及び信頼性が良好でなく、Mn及びVのような原子価可変アクセプタである遷移金属元素と希土類元素とを共に添加することにより耐電圧及び信頼性の向上効果が得られるようになる。これらの元素は、ほとんどが共にドーピング(co-doping)されており、BaTiO母材結晶粒のシェル(shell)領域に固溶してコア-シェル(core-shell)構造を形成し、MLCCの温度による安定した容量特性と信頼性を実現することができる。したがって、これらの添加剤元素が二次相に含まれたまま偏析(segregation)せず、シェル(shell)領域のBaTiO結晶格子に充分に固溶した場合にのみ信頼性が良好であると予想できる。
特に、添加剤元素のうち、焼結助剤の役割を果たすSiの場合、イオン半径が0.4Åであって、BaTiOのTiイオン半径である0.61Åに比べて非常に小さく、BT格子に固溶できないことが知られており、一般的にSiはBaTiOと反応して焼結した後、二次相を生成するようになる。
しかし、本発明の一実施形態によると、誘電体結晶粒の内部に欠陥(defect)が配置されることにより、添加剤元素の結晶粒の内部への拡散を促進して積層型電子部品の信頼性を増加させることができる。
また、BaTiOにおいて、添加剤元素の結晶格子内の固溶は、粒成長(grain growth)又は格子拡散(diffusion)によって発生する。過度な粒成長の発生時に添加剤の固溶が円滑になされ、有効ドーピング濃度は増加するが、温度-容量特性、DC-bias特性、及び信頼性が低下するという様々な問題が発生する可能性があるため、粒成長が抑制された状態で添加剤の固溶が円滑になされるようにする必要がある。
そこで、本発明の一実施形態によると、誘電体結晶粒の内部に欠陥(defect)が配置されることにより、添加剤元素の拡散を促進させるか、又は結晶粒界領域のBT結晶格子へのSi固溶が容易になることができる。
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111に複数の誘電体結晶粒を含むことができ、上記複数の誘電体結晶粒は誘電体結晶粒内の欠陥(defect)の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒10、10’を一つ以上含むことができる。
誘電体結晶粒内の欠陥(defect)の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒10、10’が含まれない場合、本発明による添加剤元素の結晶粒の内部への拡散を促進する効果及び結晶粒界領域のBT結晶格子へのSi固溶を促進する効果が不十分になる可能性がある。
欠陥(defect)の長さの測定は、積層型電子部品を分解した後、TEM(Transmission Electron Microscope Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて誘電体層をなしている誘電体結晶粒(grain)を観察し、誘電体結晶粒の内部に含まれた欠陥(defect)の長さをTEM装置で測定して求めることができる。
より具体的に、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)で作製されたTEMサンプルに対して明視野像(Bright Field)又は暗視野像(Dark Field)イメージモードでスキャンした画像イメージにおいて、誘電体結晶粒内に配置された欠陥の長さを測定することにより求めることができ、複数個の欠陥がある場合、上記方法で測定された全ての欠陥の長さを合わせて求めることができる。
一方、本発明において欠陥(defect)は、線欠陥(line defect、1次元)及び面欠陥(planar defect、2次元)のうち一つ以上を含むことができる。
ここで、線欠陥(line defect)とは、同じ結晶構造を有する結晶粒(grain)の内部で応力によって原子配列がずれて生成された線(line)状の結晶欠陥(defect)を意味し、転位(dislocation)ともいう。
面欠陥(planar defect)とは、双晶(twin planeもしくはtwin boundary)、ドメインバウンダリー(domain boundary)又は結晶粒界(grain boundary)などを意味することができる。双晶は、その面を境界にして180°方向に回転したときに同じ構造となる境界面を意味し、TEMイメージから観察される双晶は、より広い領域で実質的に直線状に現れる。また、図8を参照すると、ドメインバウンダリー(domain boundary)は誘電体結晶粒の内部で観察することができ、誘電体結晶粒内に、図8(a)及び図8(b)における矢印が示しているドメインバウンダリーが形成される場合、一定の厚さを有する帯形状が階段(step)のように繰り返される形で現れることができる。
本発明の一実施形態によると、欠陥(defect)は転位(dislocation)であることができる。すなわち、本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111に複数の誘電体結晶粒を含むことができ、上記複数の誘電体結晶粒は誘電体結晶粒内の転位(dislocation)の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒10、10’を一つ以上含むことができる。
欠陥(defect)が転位(dislocation)である場合に、本発明による添加剤元素の結晶粒の内部への拡散を促進する効果、及び結晶粒界領域のBT結晶格子へのSi固溶を促進する効果が著しく向上することができる。すなわち、本明細書で説明する信頼性増大の効果を実現するためには、欠陥(defect)が転位(dislocation)であることがより好ましいと言える。
転位(dislocation)を形成するハードミリング(hard milling)の配置条件はBT(BaTiO系)粒子の表面を活性化してBTと添加剤の固溶反応を促進し、Siが二次相として存在するものではなく、結晶粒界(grain boundary)領域のBT結晶格子に固溶した状態で存在できるようにすることで、信頼性をさらに向上させることができる。
結晶粒(grain)内に転位(dislocation)が一定レベル以上存在するとき、信頼性が大幅に向上することができ、転位(dislocation)を生成させる環境において、BaTiO母材粉末の表面が活性化して、BaTiO結晶格子からなる結晶粒界(grain boundary)領域でSi元素の固溶が可能であるという効果を実現することができ、このとき、上述した積層型電子部品の信頼性がさらに向上することができる。
上述したように、線欠陥である転位(dislocation)は、面欠陥である双晶、ドメインバウンダリー、結晶粒界などの面欠陥とは区別され、転位(dislocation)と面欠陥の具体的な区別方法は、下記の通りである。
線欠陥(line defect)である転位(dislocation)の場合、結晶粒(grain)の内部とははっきりと区分される明暗、例えば、図9(a)の矢印が指す結晶粒の内部の暗い明暗の黒色の線形状が転位に該当し、矢印が指す転位を含む結晶粒は、比較的明るい明暗の白色又は灰色を示している。このとき、転位を基準に対称的な地点、又は領域における結晶粒の明暗色が実質的に同一であることを観察することができる。一方、転位が黒色の線形状に観察されたのは観察環境によるものであるだけで、常に黒色で観察されるわけではない。転位の場合、結晶粒内で一つの結晶粒界から他の結晶粒界まで連続した形状を示すよりは、一つの結晶粒界とのみ接触しながら結晶粒を完全に横断しない範囲で形成されるか、又は誘電体結晶粒内で結晶粒界と接触しない形状に形成されることができる。また、完全な直線形状よりは、概して屈曲又は折れ点のある線の形で観察されることがあるが、特にこれに限定されるものではない。
面欠陥(planar defect)である結晶粒界(grain boundary)の場合、図9aのように、結晶粒を囲んでいる暗い明暗の黒色を示している点で転位と類似しているが、結晶粒界を基準に対称的な地点又は領域における互いに異なる結晶粒は明暗色が実質的に異なることがある。例えば、図9(a)の矢印が指す転位を含んでいる結晶粒の色が比較的明るい明暗の白色又は灰色であるのに対して、結晶粒を囲んでいる結晶粒界を基準に隣接した他の結晶粒の色は、比較的暗い明暗の灰色又は黒色に近い色を示している。一方、転位と同様に、結晶粒界が常に暗い明暗の黒色で観察されるわけではない。
さらに他の面欠陥であるドメインバウンダリー(domain boundary)の場合、図8(a)及び図8(b)のように、ドメインバウンダリーを基準に対称的な地点又は領域において、明暗色が実質的に異なることを観察することができる。例えば、矢印が指しているドメインバウンダリーを基準に比較的明るい明暗である白色の一定の面積を有する領域と、比較的暗い明暗の黒色又は灰色の一定の面積を有する領域とが階段(step)のように交互に繰り返される形状を有することを観察することができる。
このように、欠陥を基準に対称的な領域における明暗色の差異の有無に応じて、又は欠陥の厚さや形状に応じて、転位及び面欠陥との差異を区分することができる。これは、実質的に同じ明暗を示している領域は、原子の結晶格子方向が同一であることによる結果に該当し、異なる明暗を示している領域は、原子の結晶格子方向が異なることによる結果に該当することができる。
要するに、転位(dislocation)は、一定の結晶構造を有する結晶粒内で原子の配列がずれた線形の欠陥であり、転位を除く一つの結晶粒内の原子は同じ結晶方向を有することによって微細構造の観察時に実質的に同一の明暗を示すことができるが、面欠陥(planar defect)の場合、面欠陥を基準に隣接した領域、例えば、結晶粒界又はドメインバウンダリーを基準に隣接した領域は、原子配列が互いに異なる結晶格子方向を有することにより、微細構造の観察時に実質的に異なる明暗を示すことができる。
線欠陥である転位(dislocation)と面欠陥を区別するためのより具体的な方法は、4万倍以上の倍率でABF-STEM(Annular Bright Field-STEM)で撮影して得られたイメージから判定することができる。ドメインバウンダリー(domain boundary)は、ある程度の厚さを有する帯形状が階段のように繰り返される形で観察されるのに対し、転位(dislocation)は面欠陥より薄いか、又は厚さを有していないと見なすことができる一つの線の形態で現れる。例えば、図9のイメージは、JEOL社のARM200Fモデルで加速電圧200kV、OL aperture 40μm、倍率4万倍、bright fieldの測定条件にて微細構造イメージを得たものであり、矢印が指している結晶粒内の一つの線の形態で現れるものが線欠陥に該当する。すなわち、転位欠陥は微細構造から観察できる双晶(twin plane)、ドメインバウンダリー(domain boundary)及び結晶粒界(grain boundary)などの異なる種類の欠陥とその形状がはっきりと区分できる。
このような方法によっても区別が明確でない場合、原子の結晶格子配列を観察できる高倍率装置、例えば、HRTEM(High Resolution TEM)で原子の結晶格子配列を観察した後、一般的に定義されるか又は上述した各欠陥の特徴を判断の根拠として線欠陥又は面欠陥等の有無を判定することができる。
一方、転位(dislocation)の長さの測定は、上述した欠陥(defect)の長さの測定方法を用いることができる。
具体的に、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)で作製されたTEMサンプルに対して明視野像(Bright Field)又は暗視野像(Dark Field)イメージモードでスキャンした画像イメージにおいて、誘電体結晶粒内に配置された欠陥を上述した面欠陥と線欠陥に区別する方法を用いて転位(dislocation)を選別した後、転位(dislocation)の長さを測定することにより求めることができ、複数個の転位(dislocation)が存在する場合、上記方法で測定された全ての転位(dislocation)の長さを合わせて求めることができる。
以下、欠陥(defect)に関して、線欠陥である転位(dislocation)を一例示として説明するが、特にこれに限定されるものではなく、転位(dislocation)以外の欠陥が誘電体結晶粒内に形成されることにより、本発明による添加剤元素の結晶粒の内部への拡散を促進する効果、及び結晶粒界領域のBT結晶格子へのSi固溶を促進する効果が確保できる場合を含むことができる。
本発明の一実施形態において、図5及び図6を参照すると分かるように、上記転位11の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒10、10’は、1つの転位11の長さが150nm以上である第1誘電体結晶粒10’を意味することができ、又は2つ以上の転位11の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒10を意味することもできる。上述したように、転位11の形態や個数に限定されるものではなく、1つの転位11の長さ又は2つ以上の転位11の長さの和が150nm以上であれば、本発明が目的とする信頼性増大の効果を実現することができる。
すなわち、複数の誘電体結晶粒のうち、誘電体結晶粒内の転位11の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒10、10’を少なくとも一つ以上含む場合、積層型電子部品の信頼性が増大することができ、特に、添加剤であるSiのBT格子固溶が容易となり、信頼性がさらに増大することができる。
このとき、誘電体結晶粒内の転位11の長さの和が増加するほど、信頼性は増大する傾向を示すことがある。
誘電体結晶粒内の転位11の長さの和が150nm未満である場合、目標とする信頼性を十分に実現しにくくなる可能性があり、特にSiの粒界領域の固溶が円滑でなく、目標とする信頼性をさらに実現しにくくなる可能性がある。
本発明の一実施形態は、結晶粒界に垂直な方向の中心から結晶粒界に垂直な方向に2nm以内にSi含量が3.0at%以上である第1結晶粒界12を一つ以上含むことができる。
上記Siが結晶粒界から垂直な方向に2nm以内に3.0at%未満存在する場合、Siを添加することにより達成しようとする信頼性増大の効果を実現しにくくなる可能性がある。
ここで、結晶粒界とは、互いに接する2つの結晶粒の境界を意味することができ、互いに接する2つの結晶粒の境界を一つの結晶粒界と見なすことができる。すなわち、一つの結晶粒は、接する結晶粒の個数だけ結晶粒界を有することができる。図5を参照すると、中央に配置された結晶粒は6つの結晶粒と接するため、6つの結晶粒界を有する。このとき、上記6つの結晶粒界のうち一つが結晶粒界に垂直な方向に2nm以内にSi含量が3.0at%以上である場合、第1結晶粒界12を一つ含むものと見なすことができる。
本発明の一実施形態において、上記第1結晶粒界12はペロブスカイト(ABO)構造を有することができる。
ペロブスカイト構造を有する物質は、例えば、BT(BaTiO)系誘電体物質を含むことができ、Ba又はTi位置が他の元素で置換された物質を含むことができるが、特にこれに限定されるものではない。
一方、本発明の一実施形態では、Siの少なくとも一部がペロブスカイト構造に固溶していてもよい。
上述のように、Siはイオン半径がTiより小さく、一般的にペロブスカイト構造を有するBT格子に固溶しにくいが、本発明の一実施形態のように、誘電体結晶粒内に転位11の長さの和が150nm以上である誘電体結晶粒10、10’が一つ以上含まれる場合、Siが二次相として析出するのではなく、ペロブスカイト構造を有する結晶粒界に固溶することができる。添加剤であるSiがペロブスカイト構造を有する結晶粒界に固溶することにより、目標とする信頼性増大の効果をより容易に実現することができる。
一方、本発明の一実施形態において、上記第1結晶粒界12は、上記第1誘電体結晶粒10、10’の結晶粒界であることができる。
すなわち、誘電体結晶粒内の転位11の長さの和が150nm以上を含む第1誘電体結晶粒10、10’と接する結晶粒の結晶粒界に垂直な方向の中心から結晶粒界に垂直な方向に2nm以内にSi含量が3.0at%以上であってもよい。
ただし、特にこれに限定されるものではなく、誘電体結晶粒内の転位11の長さの和が150nm未満である誘電体結晶粒を第2誘電体結晶粒とするとき、互いに接する2つの第2誘電体結晶粒間の結晶粒界も垂直な方向に2nm以内にSi含量が3.0at%以上である第1結晶粒界12を含むことができる。
すなわち、複数の誘電体結晶粒を含む誘電体層111において、複数の誘電体結晶粒のうち任意の誘電体結晶粒の内部に転位11の長さの和が150nm以上である任意の第1誘電体結晶粒10、10’を一つ以上含む場合、上記第1誘電体結晶粒10、10’の結晶粒界にSiが固溶していることができ、又は誘電体結晶粒の内部に転位11の長さの和が150nm未満である任意の第2誘電体結晶粒の結晶粒界においてもSiが固溶することができるため、目標とする信頼性増大の効果を実現することができる。
一方、第1誘電体結晶粒10、10’内の転位11の長さの和の上限は特に限定する必要はないが、好ましい例として、843nm未満であってもよい。すなわち、本発明の一実施形態において、第1誘電体結晶粒10、10’内の転位11の長さの和は、150nm以上843nm未満であることができる。
転位11の長さの和が150nm未満である場合、上述したように、目標とする信頼性増大の効果を十分に実現しにくくなる可能性があり、転位11の長さの和が843nm以上である場合、過度な転位の生成によりBT格子内のSiが3.0at%以上固溶して信頼性増大の目標は達成できるものの、誘電率は低下するという問題点が発生するおそれがある。
すなわち、目標とする誘電率以下にならない範囲内での転位11の長さの和を満たすために、転位11の長さの和は843nm未満になるように制御することが好ましいと言えるが、これに限定されるものではなく、信頼性増大の目標を実現するためには、転位11の長さの和が843nm以上であってもよい。
一方、誘電体層111は、2μm×2μmの領域内に転位11の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒10、10’を一つ以上含むことができる。
これは、測定装備を用いて誘電体層111の内部を観察する場合に、任意の2μm×2μmの領域内に転位11の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒10、10’が存在し得ることを意味することができる。
より具体的に、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面において、活性部Acに配置された誘電体層111で2μm×2μmのサイズを有する10個の領域を任意に指定して透過電子顕微鏡(TEM)で観察したとき、上記10個の領域において全て第1誘電体結晶粒10、10’が一つ以上観察される場合、2μm×2μmの領域内に転位11の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒10、10’を一つ以上含むと見なすことができる。
このとき、上記任意の2μm×2μmの領域内に結晶粒界の中心から結晶粒界に垂直な方向に2nm以内にSi含量が3.0at%以上である第1結晶粒界12を一つ以上含むことができる。
より具体的に、本発明の一実施形態である図9~図11を参照して説明すると、次の通りである。
まず、図9(a)及び図9(b)は、誘電体結晶粒の内部に形成された転位の長さの和が150nm以上を満たすTEM(Transmission Electron Microscope)イメージである。
図9(a)及び図9(b)において矢印が指す部分が転位に該当し、誘電体結晶粒の内部に転位が形成されてその長さの和が増大するほど、信頼性が増大する傾向を示し、転位の長さの和が150nm以上である場合、目標とする信頼性増大の効果を達成することができる。転位の長さの和を異ならせて信頼性を評価した具体的な実施例及び効果は後述する。
一方、本発明の一実施形態である図10を参照すると、図10aは第1誘電体結晶粒10、10’の内部に転位が形成されたTEMイメージであり、図10bは第1誘電体結晶粒10、10’に隣接しており、転位を含まない第2誘電体結晶粒の第1結晶粒界12に垂直な方向へのSi元素の百分率(at%)を測定するためにline-profileを施した領域を直線で表したHRTEM(High Resolution TEM)イメージであり、図10(c)は、図10(b)の点線においてSTEM-EDS(Scanning Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)で分析したSi元素の百分率(at%)に対するline-profileを示すグラフである。x軸は、第1結晶粒界12を基準点にして左gb1を-、右gb1’を+距離で表し、y軸は、第1結晶粒界12を基準に距離別(Ba+Ti+Si+RE)元素の総和に対するSi元素の百分率(at%)、すなわち、Ba、Ti、Si及びREの総原子個数に対するSi原子個数の百分率(at%)を意味する。ここで、REは、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd、及びYbのうち一つ以上を含む希土類元素(rare earth elements)を意味する。図10(c)を参照すると、第1結晶粒界12(0nm地点)を基準に±2nm以内にSi元素の百分率が3.0at%以上であるピーク(peak)が存在することが確認できる。また、図10(b)を参照したとき、第1結晶粒界12の周辺に図7(b)のような非晶質層(amorphous)や二次相が形成されていないことからみて、主成分の母材(BaTiO)がペロブスカイト結晶格子を維持していることが確認でき、これにより、第1結晶粒界12で検出されるSiが固溶状態で存在していることが分かる。
本発明の他の一実施形態である図11において、図11(a)は、結晶粒の内部に転位の長さの和が150nm以上形成されたTEMイメージであり、図11(b)は、転位の長さの和が150nm以上形成された第1誘電体結晶粒10、10’の第1結晶粒界12に垂直な方向へのSi元素の百分率(at%)を測定するためにline-profileを施した領域を直線で表したHRTEMイメージであり、図11(c)は、図11(b)の点線においてSTEM-EDSで分析したSi元素の百分率(at%)に対するline-profileを示すグラフである。x軸は、第1結晶粒界12を基準点にして左gb2を-、右gb2’を+距離で表し、y軸は、第1結晶粒界12を基準に距離別(Ba+Ti+Si+RE)元素の総和に対するSi元素の百分率(at%)を意味する。すなわち、Ba、Ti、Si及びREの総原子個数に対するSi原子個数の百分率(at%)を意味する。図11(c)を参照すると、第1結晶粒界12(0nm地点)を基準に±2nm以内にSi元素の百分率が3.0at%以上であるピーク(peak)が存在することが確認できる。また、図11(b)を参照したとき、図10(b)と同様に、第1結晶粒界12の周辺に図7(b)のような非晶質層(amorphous)や二次相が形成されていないことからみて、主成分の母材(BaTiO)がペロブスカイト結晶格子を維持していることが確認でき、これにより、第1結晶粒界12で検出されるSiが固溶状態で存在していることが分かる。
以下では、上述した誘電体組成物に含まれ得る副成分について具体的に説明する。
a)第1副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、原子価可変アクセプタ元素の酸化物又は炭酸塩のうち一つ以上を含む第1副成分をさらに含み、上記原子価可変アクセプタ元素は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cn及びZnのうち一つ以上を含み、上記第1副成分に含まれた原子価可変アクセプタ元素の含量は、主成分100molに対して0.2mol以上1.4mol以下であることができる。
第1副成分に含まれた原子価可変アクセプタ元素は、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度の低下及び高温耐電圧特性を向上させる役割を果たすことができる。
第1副成分に含まれた原子価可変アクセプタ元素の含量が0.2mol未満である場合には、高温耐電圧特性が劣化するおそれがあり、1.4mol超過である場合にはRC値が劣化するおそれがある。
上記第1副成分の含量は、酸化物又は炭酸塩のような添加形態を区分せずに、第1副成分に含まれたMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち一つ以上の元素の含量を基準とすることができる。原子価可変アクセプタ元素が2以上含まれた場合には、その総和の含量を基準とすることができる。
b)第2副成分
本発明の一実施形態によると、誘電体組成物は、Mgの酸化物又は炭酸塩のうち一つ以上を含む第2副成分をさらに含み、上記第2副成分に含まれるMg元素の含量は主成分100molに対して2.0mol以下であることができる。
第2副成分のMgは、RC値を高める役割を果たすことができる。ただし、Mg元素の含量が2.0molを超える場合には、高温耐電圧特性が劣化する可能性がある。
c)第3副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、希土類元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第3副成分をさらに含み、上記希土類元素はY、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd及びYbのうち一つ以上を含み、上記第3副成分に含まれた希土類元素の含量は、主成分100molに対して0.6mol以上3.0mol以下であることができる。
第3副成分に含まれた希土類元素は、高温耐電圧特性を向上させる役割を果たすことができる。希土類元素の含量が0.6mol未満、又は3.0mol超過である場合には、高温耐電圧特性が劣化するおそれがある。
第3副成分の含量は、酸化物又は炭酸塩のような添加形態を区別せずに、第3副成分に含まれたY、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd及びYbのうち少なくとも一つ以上の元素の含量を基準とすることができる。希土類元素が2以上含まれた場合には、その総和の含量を基準とすることができる。
d)第4副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、Ba及びCaのうち一つ以上の元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第4副成分をさらに含み、上記第4副成分に含まれたBa及びCaのうち一つ以上の元素の含量の総和は、主成分100molに対して4.8mol以下であることができる。上記第4副成分に含まれたBa及びCaのうち一つ以上の元素の含量の総和の下限は特に限定する必要はなく、主成分100molに対して0mol超過であることが好ましく、RC値をより向上させるために0.24mol以上であることがより好ましいと言える。
ここで、Ba及びCaは誘電率とRC値を高める役割を果たすことができる。一方、Ba及びCaのうち一つ以上の元素の含量の総和が主成分100molに対して4.8molを超える場合には、常温誘電率と高温耐電圧が低下するおそれがある。
e)第5副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、Siの酸化物、Siの炭酸塩、及びSiを含むガラスのうち一つ以上を含む第5副成分をさらに含み、上記第5副成分に含まれたSi元素の含量は、主成分100molに対して0.8mol以上3.0mol以下であることができる。
第5副成分に含まれたSi元素の含量が0.8mol未満、又は3.0mol超過である場合には、焼成緻密度が低く、常温誘電率と高温耐電圧が劣化するおそれがある。
一方、本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、第4副成分及び第5副成分を同時にさらに含むことができる。
第4副成分に含まれるBa及びCaのうち一つ以上の元素の含量の総和を4s、第5副成分に含まれるSi元素の含量を5sと定義するとき、4s/5sは1.60以下であることができる。上記4s/5sが1.60を超える場合には、常温誘電率と高温耐電圧が低下するおそれがある。
誘電体層111の厚さtdは特に限定する必要はない。ただし、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために誘電体層111の厚さは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。一般的に、誘電体層111を0.6μm以下の厚さで薄く形成する場合、特に誘電体層111の厚さが0.4μm以下である場合には信頼性が低下するおそれがあった。
上述したように、本発明の一実施形態によると、常温誘電率、DC-bias特性、高温耐電圧特性などを良好に確保することができるため、誘電体層111の厚さが0.4μm以下の場合であっても優れた信頼性を確保することができる。
したがって、誘電体層111の厚さが0.4μm以下である場合に、本発明による効果がより顕著になることができ、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
ここで、誘電体層111の厚さtdは、第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の厚さtdを意味することができる。
一方、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の平均厚さtdを意味することができる。
誘電体層111の平均厚さtdは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの誘電体層111を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定した平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は活性部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さtdをさらに一般化することができる。ここで、誘電体層111の平均厚さtdは、誘電体層111の第1方向の平均サイズを意味することができる。
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層されることができる。内部電極121、122は第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1及び第2内部電極121、122は本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
より具体的に、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体110の第3面3には、第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には、第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結されることができる。このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成されることができる。
内部電極121、122を形成する材料は特に限定されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
一方、内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はない。本発明の一実施形態は、3216(3.2mm×1.6mm)サイズの積層セラミックキャパシタを一例として説明したが、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さteは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
一般的に、内部電極121、122を0.6μm以下の厚さで薄く形成する場合、特に、内部電極121、122の厚さが0.4μm以下である場合には信頼性が低下するおそれがあった。
上述したように、本発明の一実施形態によると、常温誘電率、DC-bias特性、高温耐電圧特性などを良好に確保することができるため、内部電極121、122の厚さが0.4μm以下の場合であっても優れた信頼性を確保することができる。
したがって、内部電極121、122の厚さが0.4μm以下である場合に、本発明による効果がより顕著になることができ、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
ここで、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さteを意味することができる。
内部電極121、122の平均厚さteは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの内部電極121、122を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は活性部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の平均厚さteをさらに一般化することができる。ここで、内部電極121、122の平均厚さteは、内部電極121、122の第1方向の平均サイズを意味することができる。
カバー部112、113は、活性部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112、及び活性部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を活性部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
カバー部112、113の厚さtcは特に限定する必要はない。ただし、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましく20μm以下であってもよい。
ここで、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の平均厚さtcを意味することができる。
カバー部112、113の平均厚さtcは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T方向)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つのカバー部112、113を第2方向に等間隔である30個の地点で厚さを測定した平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、上部カバー部112で指定することができる。また、このような平均値の測定を下部カバー部113に拡張して平均値を測定すると、カバー部112、113の平均厚さtdをさらに一般化することができる。ここで、カバー部112、113の平均厚さtcは、カバー部112、113の第1方向の平均サイズを意味することができる。
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1マージン部114、及び第6面6に配置された第2マージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、本体110の幅方向の両端面に配置されることができる。
マージン部114、115は、図示のように、本体110の厚さ及び幅方向(W-T方向)の断面(cross-section)を基準に、第1及び第2内部電極121、122の幅方向の両端面と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部114、115が形成される箇所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成することにより形成されたものであってもよい。上述したように、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を活性部Acの両端面に幅方向に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
第1及び第2マージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。ただし、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、第1及び第2マージン部114、115の幅は100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましく20μm以下であってもよい。
ここで、マージン部114、115の幅は、マージン部114、115の平均幅を意味することができる。
マージン部114、115の平均幅は、本体110の幅及び厚さ方向(W-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つのマージン部114、115を厚さ方向に等間隔である10個の地点でその幅を測定した平均値を測定することができる。上記等間隔である10個の地点は、第1マージン部114で指定することができる。また、このような平均値の測定を第2マージン部114、115に拡張して平均値を測定すると、マージン部114、115の平均幅をさらに一般化することができる。ここで、マージン部114、115の平均幅は、マージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができる。
本発明の一実施形態では、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
外部電極131、132は本体110上に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。
より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結される第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は本体の第3面3に配置されて第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は本体の第4面4に配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
一方、外部電極131、132は、金属などのように、電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を用いて形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに、多層構造を有してもよい。
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a、131b、132b及び電極層131a、132a、131b、132b上に配置されるめっき層131c、132を含むことができる。
電極層131a、132a、131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132a、131b、132bは、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であってもよく、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であってもよい。
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
電極層131a、132a、131b、132bに含まれる導電性金属としては、電気伝導性に優れた材料を使用することができ、例えば、導電性金属としては、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、特にこれらに限定されない。
本発明の一実施形態において、電極層131a、132a、131b、132bは、第1電極層131a、132a及び第2電極層131b、132bを含む2層の構造を有することができ、これにより、外部電極131、132は、導電性金属及びガラスを含む第1電極層131a、132a及び上記第1電極層131a、132a上に配置され、導電性金属及び樹脂を含む第2電極層131b、132bを含むことができる。
第1電極層131a、132aは、ガラスを含むことにより本体110との接合性を向上させる役割を果たし、第2電極層131b、132bは樹脂を含むことにより曲げ強度を向上させる役割を果たすことができる。
第1電極層131a、132aに使用される導電性金属は、静電容量の形成のために上記内部電極121、122と電気的に連結できる材質であれば、特に限定されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。第1電極層131a、132aは、上記導電性金属粉末にガラスフリットを添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成することができる。
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、第1電極層131a、132aと電気的に連結されるようにする役割を果たすことができる。
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、電極層131a、132aと電気的に連結できる材質であれば、特に限定されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、球状粒子及びフレーク状粒子のうち1以上を含むことができる。すなわち、導電性金属はフレーク状粒子のみからなってもよく、球状粒子のみからなってもよく、フレーク状粒子と球状粒子とが混合された形態であってもよい。ここで、球状粒子は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粒子とは、平たい且つ細長い形態を有する粒子を意味し、特に限定されるものではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。上記球状粒子及びフレーク状粒子の長軸と短軸の長さは、セラミック電子部品の第3方向の中央部で切断した第1及び第2方向の断面(L-T断面)を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)でスキャンして得られたイメージから測定することができる。
第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性の確保及び衝撃吸収の役割を果たす。第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性及び衝撃吸収性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作ることができるものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ系樹脂を含むことができる。
また、第2電極層131b、132bは、複数の金属粒子、金属間化合物及び樹脂を含むことができる。上記金属間化合物を含むことにより、第1電極層131a、132aとの電気的連結性をより向上させることができる。上記金属間化合物は、複数の金属粒子を連結して電気的連結性を向上させる役割を果たし、複数の金属粒子を囲んで互いに連結する役割を果たすことができる。
このとき、上記金属間化合物は、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むことができる。すなわち、上記金属間化合物が樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むため、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属が乾燥及び硬化工程を経る過程で溶融し、金属粒子の一部と金属間化合物を形成して金属粒子を囲むようになる。このとき、金属間化合物は、好ましくは300℃以下の低融点金属を含むことができる。
例えば、213℃~220℃の融点を有するSnを含むことができる。乾燥及び硬化工程を経る過程でSnが溶融し、溶融したSnがAg、Ni又はCuのような高融点の金属粒子を毛細管現象により湿らし、Ag、Ni又はCu金属粒子の一部と反応してAgSn、NiSn、CuSn、CuSnなどの金属間化合物を形成するようになる。反応に関与しなかったAg、Ni又はCuは金属粒子の形態で残る。
したがって、上記複数の金属粒子は、Ag、Ni及びCuのうち一つ以上を含み、上記金属間化合物は、AgSn、NiSn、CuSn及びCuSnのうち一つ以上を含むことができる。
めっき層131c、132cは実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131c、132cの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む単一層のめっき層131c、132cであってもよく、複数の層で形成されてもよい。
めっき層131c、132cに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131c、132cはNiめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a、131b、132b上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、めっき層131c、132cは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
一方、積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。本発明の一実施形態では、3216(長さ×幅、3.2mm×1.6mm)サイズを有する積層型電子部品について説明したが、本発明によるDC-bias特性、高温耐電圧特性などの向上効果は多様なサイズ、例えば、1005(長さ×幅、1.0mm×0.5mm)サイズ、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)サイズなどの積層型電子部品においても信頼性増大の効果を実現することができる。
積層型電子部品の製造方法
図12は、本発明の他の一実施形態による積層型電子部品の製造方法を示す製造工程図である。
以下では、本発明の他の一実施形態による積層型電子部品の製造方法について説明し、積層セラミックキャパシタを一例として説明するが、特にこれに限定されるものではない。なお、本発明の一実施形態である積層型電子部品の製造方法に関する説明のうち、上述した積層型電子部品と重複する説明は省略する。
本発明の他の一実施形態による積層型電子部品の製造方法は、誘電体粉末を主成分として含み、溶媒及び分散剤を含む誘電体組成物をミリングする段階(S1)と、上記誘電体組成物にバインダーを追加し、追加ミリングしてスラリーを設ける段階(S2)と、上記スラリーを用いてセラミックグリーンシートを形成する段階(S3)と、上記セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを印刷した後、積層して積層体を形成する段階(S4)と、上記積層体を焼成して誘電体層及び内部電極を含む本体を形成する段階と(S5)、上記本体上に外部電極を形成する段階(S6)と、を含み、上記ミリングする段階(S1)は、上記誘電体層に含まれた誘電体結晶粒内の欠陥(defect)の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒を一つ以上含むように行うことができる。
本発明において、欠陥(defect)の種類は特に限定する必要はなく、欠陥は、線欠陥(line defect、1次元)及び面欠陥(planar defect、2次元)のうち一つ以上であってもよい。
ただし、上述したように欠陥(defect)が転位(dislocation)である場合に、本発明による添加剤元素の結晶粒の内部への拡散を促進する効果、及び結晶粒界領域のBT結晶格子へのSi固溶を促進する効果が著しく向上することができる。すなわち、本明細書で説明する信頼性増大の効果を実現するためには、欠陥(defect)が転位(dislocation)であることがより好ましいと言える。
以下、欠陥(defect)に関して、線欠陥である転位(dislocation)を一例示として説明するが、特にこれに限定されるものではなく、転位(dislocation)以外の欠陥が誘電体結晶粒内に形成されることにより、本発明による添加剤元素の結晶粒の内部への拡散を促進する効果、及び結晶粒界領域のBT結晶格子へのSi固溶を促進する効果が確保できる場合を含むことができる。
本発明の一実施形態による積層型電子部品の製造方法は、誘電体粉末を主成分として含み、溶媒及び分散剤を含む誘電体組成物をミリングする段階(S1)を含むことができる。
本発明の一実施形態は、BaTiO系誘電体粉末を主成分として含み、溶媒、分散剤を含む誘電体組成物を設ける段階を含むことができる。
BaTiO系主成分の母材を製造する方法は特に限定する必要はない。例えば、水熱合成法、固相法、オキサレート法などを用いて製造することができる。
誘電体粉末の平均直径サイズは、50nm以上300nm以下であってもよく、好ましくは100nm以上200nm以下、より好ましくは140nm以上160nm以下であってもよい。
前記誘電体粉末に、溶媒及び分散剤を添加して誘電体組成物を製造することができる。このとき、添加される溶媒は、積層型電子部品を製造するのに用いられる一般的な溶媒、例えば、エタノール/トルエン溶媒を使用することができ、添加される分散剤は一般的な分散剤を使用することができる。
一方、誘電体組成物をミリングする方法は、ジルコニアビーズ(beads)を混合/分散メディア(media)として用いるバッチミリング(batch milling)を行うことができるが、特にこれに限定されるものではなく、湿式/乾式粉砕など、必要に応じて様々な粉砕方法を使用することができる。
ミリング(milling)は、誘電体層に含まれた誘電体結晶粒内の転位(dislocation)の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒10、10’を一つ以上含むように行うことができる。ミリングを行うことで、誘電体組成物内に転位が形成されることができ、形成された転位は、焼成過程を経た後にも最終製品であるチップ(chip)形態の積層型電子部品100の誘電体層111内に残留することができる。
ここで、誘電体層111に含まれた誘電体結晶粒内の転位(dislocation)の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒10、10’を一つ以上含むようにミリングを行えば十分であり、その具体的な条件は、ミリング時間、誘電体粉末、ビーズなどの条件を考慮して適宜決定することができる。
好ましい一例として、バッチ内で誘電体組成物を4時間以上ミリングすることができる。
ミリングを4時間以上行う場合、誘電体結晶粒内に形成される転位の長さの和が150nm以上となるように製造することが容易であり得る。
一方、ミリングを4時間未満にして行う場合、十分な転位の長さの和が形成されにくく、目標とする信頼性増大の効果を実現しにくくなる可能性があり、Siの結晶格子固溶が円滑でなく、信頼性増大の効果が僅かである可能性がある。
本発明の一実施形態では、バッチ内で誘電体組成物を4時間以上30時間未満の間ミリングすることができる。
誘電体組成物のミリング時間が増加するほど、誘電体組成物内に形成される転位の長さの和が増加する傾向を示すことがある。
一方、ミリングを4時間未満にして行う場合、上述と同様の問題点が発生する可能性があり、ミリングを30時間以上行う場合、転位の長さの和が843nm以上に形成されることができ、信頼性増大の効果及びSi固溶が円滑になることによる信頼性増大効果の実現は容易になるが、誘電率が低下するという問題点が発生するおそれがある。
なお、上記誘電体組成物は、誘電体粉末に添加剤をさらに含んで形成されてもよい。
上述のように、誘電体粉末に添加される添加剤は、誘電体組成物における副成分を意味することができ、焼結後の誘電体結晶粒内における副成分を意味することができる。副成分に対する説明は、上述と同様であるため省略する。
その後、上記誘電体組成物にバインダーを追加し、追加ミリングしてスラリーを設ける段階(S2)を含むことができる。
バインダーは、一般的に使用されるバインダーを使用することができ、追加ミリングは4~6時間、好ましくは5時間の間ミリングを行うことがスラリーに含まれた物質を均一に混合することができる。
その後、上記設けられたスラリーを用いてセラミックグリーンシートを形成する段階(S3)を含むことができる。
セラミックグリーンシートは、セラミック粉末、バインダー、溶剤などを混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレード法などにより数μmの厚さを有するシート(sheet)状に作製することができる。
その後、上記セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを印刷した後、積層して積層体を形成する段階(S4)を含むことができる。
セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを塗布して内部電極パターンを形成することができ、内部電極パターンを形成する方法は特に限定されないが、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法によって形成されることができる。上記内部電極パターンが印刷されたグリーンシートを積層し、積層方向から加圧して圧着させることができる。これにより、内部電極パターンが形成された積層体を形成することができる。
その後、上記積層体を焼成して誘電体層及び内部電極を含む本体を形成する段階(S5)を含むことができる。
このとき、上記積層体を1つの積層型電子部品に対応する領域ごとに切断することができ、内部電極パターンの一端が側面を介して交互に露出するように切断することができる。その後、切断によりチップ(chip)化した積層体として形成した後、焼成を行うことができる。上記焼成工程は還元性雰囲気で行うことができ、焼成工程は昇温速度を調節しながら行うことができる。
本発明の一実施形態は、上記本体を形成する段階(S5)で焼成工程を行うとき、0.1%~3.0%H/97.0%~99.9%N(HO/H/N雰囲気)条件、より好ましくは0.1%~0.5%H/99.5%~99.9%N(HO/H/N雰囲気)条件の還元性雰囲気で行うことができる。
より具体的に、ここで、0.1%の水素濃度は酸素分圧測定器で起電力680mV、そして0.5%の水素濃度は起電力760mVの条件に該当することができる。水素濃度が高いほど、酸素分圧測定器における起電力は高くなることができる。
水素濃度雰囲気が0.1%未満である場合、結晶格子内のSiの固溶含量が低く、信頼性向上が劣化する可能性があるため、水素濃度は0.1%以上、好ましくは水素濃度0.5%以上の雰囲気で焼成を行うとき、本発明の信頼性向上効果に優れることができる。水素濃度が高いほど、Si固溶含量が増大し、信頼性向上効果を改善することができる。
このとき、還元雰囲気における好ましい焼成温度は1000℃~1300℃であってもよく、より好ましくは1150℃~1200℃であってもよい。
上記焼成を行う時間は1時間~3時間の間行うことができ、より好ましくは、2時間の間、焼成を行うことができる。
その後、上記焼成温度より低い温度で再酸化熱処理を行う再酸化段階をさらに含むことができる。
これにより、誘電体層及び内部電極の更なる焼成現象を抑制し、構造的に脆弱な誘電体層が形成される現象を防止することで、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
より具体的に、再酸化段階は、N還元雰囲気で上記焼成温度より低い温度である900℃~1100℃、より好ましくは1000℃で行うことができ、再酸化の進行時間は2時間~4時間の間行うことができ、より好ましくは3時間の間行うことができる。
次に、上記本体上に外部電極を形成する段階(S6)を含むことができる。このとき、上記外部電極131、132は、本体110の外部に外部電極用ペーストを塗布して形成されることができ、例えば、本体110の一面に露出する内部電極121、122と電気的に連結されるように外部電極131、132を形成することができる。より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第2方向の両端面である第3及び第4面3、4に配置されることができる。外部電極131、132は、単一層又は複数の層からなることができ、形成方法と成分及び構造は上述と同様であるため省略する。
以下、実験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これは、本発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例に限定されるものではない。
(実験例)
主成分の母材としては、平均粒子サイズが150nmであるBaTiO粉末を使用した。ジルコニアビーズ(beads)を混合/分散メディア(media)として用い、表1、3及び5に記載の組成に該当する副成分が含まれた原料粉末と主成分BaTiO粉末をエタノール/トルエン溶媒、及び分散剤と共に混合して2時間~30時間の間バッチ(batch)内でミリング(milling)し、バインダーを混合した後、5時間追加ミリング(milling)を行った。製造されたスラリーは、シート(sheet)製造用成形機を用いて3.0μm及び10.0μmの厚さで成形シートを製造した。上記製造された成形シートにNi内部電極を印刷した。上下カバーは、カバー用シート(10~13μmの厚さ)を25層に積層して作製し、21層の印刷された活性シートを加圧して積層した後、バー(bar)を作製した。上記圧着されたバー(bar)は、切断機を用いて3216(3.2mm×1.6mm)サイズのチップ(chip)に切断された。
作製が完了した3216サイズのMLCCチップに対して仮焼を加えた後、還元雰囲気0.1%~0.5%H/99.5%~99.9%N(HO/H/N雰囲気)で1150℃~1200℃の温度を維持したまま、2時間の間焼成を行い、1000℃のN雰囲気で再酸化を3時間の間、熱処理した。
ここで、0.1%の水素濃度は酸素分圧測定器で起電力680mV、そして0.5%の水素濃度は起電力760mVの条件に該当する。焼成されたチップ(chip)に対してCuペースト(paste)でターミネーション(termination)工程及び電極焼成を経て外部電極を完成した。
これにより、焼成後に誘電体の厚さは約2.0μmであり、誘電体の層数が20層である3.2mm×1.6mmサイズのMLCCチップを作製した。
このように完成したプロトタイプの積層セラミックキャパシタチップ(proto-type MLCC chip)に対して、常温誘電率、DF(Dissipation factor)、RC値、TCC(Temperature Coefficient of Capacitance)、HALT MTTFなどを評価した。
MLCCチップ(chip)の常温静電容量及び誘電損失は、LCR meterを用いて1kHz、AC0.5V/μmの条件で容量を測定した。静電容量とMLCCチップの誘電体の厚さ、内部電極の面積、積層数からMLCCチップ誘電体の誘電率を計算した。常温絶縁抵抗(IR)は10個ずつのサンプルチップを取り、DC10V/μmを印加した状態で60秒経過してから測定した。温度による静電容量の変化は、-55℃から125℃の温度範囲で測定された。加速寿命評価(HALT:Highly Accelerated Life Time Test)は、各種類当たり40個の試験片に対して温度条件150℃で電界条件42V/μmに該当する電圧を印加し、故障が発生する時間を測定して平均時間(MTTF:Mean Time to Failure)を算出した。表2、4及び6は、表1、3及び5に明示された実施例に該当するプロトタイプのMLCCチップ(proto-type MLCC chip)の特性を示す。
本実施例では、Ni内部電極を適用できる還元雰囲気の焼成条件で高容量とX7RあるいはX7S容量-温度特性、そして高い高温信頼性など、これらの全ての特性を実現できる誘電体、及びこれを適用したMLCCチップを実現することを目標とする。
そのための特性判定基準として、誘電率≧2000、温度条件150℃で電界条件42V/μmを印加する加速寿命評価(HALT)において、MTTF≧100時間、RC値≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%である特性を目標とし、上記特性を実施可能な実施例については、以下で説明する。
RC値は、AC0.2V/μm、1kHzで測定した常温容量値とDC10V/μmで測定した絶縁抵抗値の積である。
表1の実施例1-1~1-6は、主成分150nmサイズのBaTiO母材100molに対して、第1副成分の原子価可変元素(Mn、V)の和が0.3mol、第2副成分Mgの含量が1.0mol、第3副成分Dyの含量が0.5mol(Dy元素基準に1.0mol)、第4副成分Ba又はCaの含量が0.8mol、第5副成分SiOの含量が1.65molであるとき、バッチ工程の混合ミリング(milling)時間による実施例を示す。
表2の1-1~1-6は、これらの実施例に該当するプロトタイプのMLCCチップ(proto-type MLCC chip)の特性を示す。
バッチミリング時間が最も短い2時間では(実施例1-1)、一つの結晶粒内の転位(dislocation)の長さの和が150nm以上である結晶粒とBT格子内のSiが3.0at%以上固溶した粒界が観察されず、温度条件150℃、電界条件42V/μmを印加するHALT評価ではMTTF値が52時間であり、100時間未満の低い特性を示した。バッチミリング時間が4時間に増加すると(実施例1-2)、Siが3.0at%以上固溶した粒界は観察されないが、一つの結晶粒内の転位(dislocation)の長さの和が150nm以上である結晶粒が現れ始める。このとき、MTTFが105時間以上に大幅に向上し、本発明の全ての目標特性が実現されることを確認することができる。バッチミリング時間が6時間に増加すると(実施例1-3)、一つの結晶粒内の転位(dislocation)の長さの和が150nm以上である結晶粒が存在し、且つ、BT格子内のSiが3.0at%以上固溶した粒界が観察され、このとき、MTTFは156時間であり、実施例1-1、1-2に比べてさらに高くなる。バッチミリング時間が8時間、10時間にさらに増加すると(実施例1-4、1-5)、一つの結晶粒内の転位(dislocation)の長さの和が150nm以上である結晶粒、及びBT格子内のSiが3.0at%以上固溶した粒界がより容易に同時に観察され、MTTFはそれぞれ185時間、205時間とさらに高くなる。バッチミリング時間が30時間と極端に長くなると(実施例1-6)、一つの結晶粒内の転位(dislocation)の長さの和が150nm以上である結晶粒、及びBT格子内のSiが3.0at%以上固溶した粒界がさらに容易に同時に観察され、MTTFは224時間とさらに増加するが、誘電率が2000未満に低くなるという問題が発生した。したがって、誘電率が2000以上実施される範囲内で、結晶粒内の転位(dislocation)の長さの和が150nm以上、及びBT格子内のSiが3.0at%以上固溶した粒界が同時に存在する微細構造を実現すれば、誘電率≧2000、温度条件150℃及び電界条件DC42V/μmでのHALT MTTF≧100時間、RC値≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%である全ての特性を満たすことができる。
実施例2-1は、実施例1-4と同じバッチミリング時間及び副成分が適用されるが、焼成雰囲気EMF760mV(水素濃度0.5%)より低いEMF680mV(水素濃度0.1%)の焼成雰囲気で焼成し、表2の実施例2-1は、上記条件に該当するプロトタイプのMLCCチップの特性を示す。すなわち、実施例2-1は、実施例1-4と同じ組成及びバッチミリング時間が適用されても、焼成雰囲気の水素濃度が低い条件では、結晶粒内の転位(dislocation)の長さの和が150nm以上であり、MTTFが103時間であって、特性が良好であっても、BT格子内のSiが3.0at%以上固溶した粒界が存在せず、実施例1-4のMTTF185時間より低いレベルを示す。実施例2-2は実施例1-4の条件と同一であるが、SiO含量のみ0.8molに減少した例を示している。この場合にも、実施例1-4と同じバッチミリング時間及び焼成雰囲気が適用されたが、SiO含量が少ない場合、結晶粒内の転位(dislocation)の長さの和が150nm以上であるものが存在し、MTTFが112時間であり、特性が良好であっても、BT格子内のSiが3.0at%以上固溶した粒界が存在せず、実施例1-4のMTTF185時間より低いレベルを示す。実施例2-3は、実施例1-1のSiO含量が3.0molに増加した例を示しているが、バッチミリング時間が2時間と短く、SiO含量が多い場合、BT格子内のSiが3.0at%以上固溶した粒界は存在するものの、結晶粒内の転位(dislocation)の長さの和が150nm以上になるように含有する結晶粒は存在しない。この場合、MTTFは46時間であり、本発明の目標特性であるMTTF≧100時間を満たしていないことが分かる。
したがって、本発明の目標特性であるMTTF≧100時間を実現するためには、転位(dislocation)の長さの和が150nm以上になるように含有する結晶粒が存在しなければならず、さらにBT格子内のSiが3.0at%以上固溶した粒界が存在すると、MTTFはさらに向上できることが分かる。
表3の実施例3-1~5-6は、主成分150nmサイズのBaTiO母材100molに対して、第3、第2、第1副成分の含量変化による実施例を示し、表4は、これらの実施例に該当するプロトタイプのMLCCチップの特性を示す。
実施例3-1~3-5は、第3副成分であるDyの含量変化による実施例に該当する。
第3副成分Dyの含量が0.2molあるいは元素比で0.4at%と少ない場合には(実施例3-1)、MTTFが55時間という劣化した特性を示し、本発明が目標とする100時間未満に該当して特性が実現されない。 Dyの含量が2.0molあるいは元素比で4.0at%と過度に多い場合でも(実施例3-5)、MTTFが83時間という劣化した特性を示し、本発明が目標とする100時間未満に該当し、TCC特性も±22%以上に外れて、本発明の目標特性が実現されない。Dyの含量が0.3~1.5molあるいはDy元素比で0.6~3.0at%の範囲を満たす場合(実施例3-2~3-4)、誘電率≧2000、温度条件150℃、電界条件DC42V/μmでのHALT評価MTTF≧100時間、RC≧1000ΩF、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%である全ての特性を満たすことができる。
実施例4-1~4-4は、第2副成分であるMgCOの含量変化による実施例に該当する。第2副成分Mgが添加されると、RC値が増大する効果が実現できる。
第2副成分MgCOの含量が2.5molあるいは2.5at%と過度に過量である場合には(実施例4-4)MTTFが55時間であり、本発明が目標とする100時間未満に該当して特性が実現されない。したがって、MgCOの含量が0~2.0molあるいはMg元素比で0~2.0at%の範囲を満たす場合(実施例4-1~4-3)、本発明が目標とする全ての特性の実現が可能である。
実施例5-1~5-6は、第1副成分であるMnO又はVの含量変化による実施例に該当する。第1副成分の含量は、MnO及びV含量の和を意味することができ、単独で添加される場合には、MnO又はVの含量を意味することができる。
第1副成分である遷移金属Mn及びVの含量の和が元素比0.1at%未満と過度に少ない場合には(実施例5-1)、MTTFが45時間であり、本発明が目標とする100時間未満に該当して特性が実現されない。MnO又はVがMn単独又はV単独で元素比率0.5at%が添加された場合には(実施例5-5~5-6)、いずれの場合も本発明の目標特性の実現が可能である。したがって、第1副成分の含量が元素比で0.2~1.4at%の範囲を満たす場合(実施例5-2~5-6)、本発明が目標とする全ての特性の実現が可能である。
表5の実施例6-1~10-2は、主成分150nmサイズのBaTiO母材100molに対して、第4、第5副成分の含量変化による実施例を示し、表6は、これらの実施例に該当するプロトタイプのMLCCチップの特性を示す。
第5副成分SiOの含量が0.5mlと少ない場合には(実施例6-1~6-3)、第4副成分の含量にかかわらず焼成緻密度が低く、常温誘電率とMTTFが本発明の目標値未満となり、本発明の目標特性の実現が難しい。それぞれのSiO含量でBaが適正量添加され(Ba+Ca)/Siの比率が0.48となる条件では(実施例7-2、8-3、9-2)、その比率が0又は0に近い条件に比べて(実施例7-1、8-1、9-1)、本発明の全ての特性を満たしながら常温誘電率が向上する効果が確認できる。しかし、SiOが過剰に添加されて(Ba+Ca)/Siの比率が1.88になる条件では(実施例7-4、8-5、9-4)、常温誘電率が2000未満、又はMTTFが100時間未満であり、本発明の目標特性を満たすことができない。
したがって、実施例6-1~9-4から、第4及び第5副成分の比率(Ba+Ca)/Siが1.60以下の範囲を満たすときに、本発明の目標特性が実現されることが確認できる。
実施例10-1~10-2は、第5副成分SiOの含量が4.0molあるいは元素比で4.0at%と過量である場合にBaCOの含量変化による実施例を示しているが、この場合には、第4及び第5副成分の比率(Ba+Ca)/Siが1.60以下の範囲を満たしても、常温誘電率とMTTFが本発明の目標値より低いため、目標特性の実現が難しくなり得ることが確認できる。
したがって、第4及び第5副成分の変化の実施例を要約すると、第4副成分の含量が4.8mol以下あるいは元素比で4.8at%以下、第5副成分であるSiOの含量が0.8~3.0molあるいは元素比で0.8~3.0at%の範囲を満たしながら、第4副成分と第5副成分の比率(Ba+Ca)/Si比率が1.60以下の範囲を満たすときに、本発明の全ての特性の実現が可能である。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
また、本発明で使用される「一実施形態」という表現は、互いに同じ実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態で説明した事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に係る説明と理解することができる。
本発明で使用される用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
10、10’:第1誘電体結晶粒
11:転位(dislocation)
12:第1結晶粒界
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:マージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
131a、132a:第1電極層
131b、132b:第2電極層
131c、132c:めっき層

Claims (40)

  1. 誘電体層及び内部電極を含む本体と、
    前記本体上に配置される外部電極と、
    を含み、
    前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、
    前記複数の誘電体結晶粒は、誘電体結晶粒内の欠陥(defect)の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒を一つ以上含む、積層型電子部品。
  2. 前記欠陥(defect)は、線欠陥及び面欠陥のうち選択されたいずれか一つ以上を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
  3. 前記欠陥(defect)は転位(dislocation)であることを特徴とする、請求項1に記載の積層型電子部品。
  4. 前記誘電体層は、結晶粒界に垂直な方向の中心から結晶粒界に垂直な方向に2nm以内にSi含量が3.0at%以上である第1結晶粒界を一つ以上含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
  5. 前記第1結晶粒界はペロブスカイト構造を有する、請求項4に記載の積層型電子部品。
  6. 前記Siのうち少なくとも一部はペロブスカイト構造に固溶している、請求項5に記載の積層型電子部品。
  7. 前記第1結晶粒界は前記第1誘電体結晶粒の結晶粒界である、請求項4に記載の積層型電子部品。
  8. 前記第1誘電体結晶粒は、誘電体結晶粒内の欠陥(defect)の長さの和が150nm以上843nm未満である、請求項1に記載の積層型電子部品。
  9. 前記誘電体層は、2μm×2μmの領域内に前記第1誘電体結晶粒を一つ以上含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
  10. 前記2μm×2μmの領域内に結晶粒界の中心から結晶粒界に垂直な方向に2nm以内にSi含量が3.0at%以上である第1結晶粒界を一つ以上含む、請求項9に記載の積層型電子部品。
  11. 前記誘電体層は誘電体組成物を用いて形成され、
    前記誘電体組成物はBaTiO系を主成分として含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
  12. 前記BaTiO系は、BaTiO、(Ba、Ca)(Ti、Ca)O、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O及びBa(Ti、Zr)Oからなる群から選択された一つ以上を含む、請求項11に記載の積層型電子部品。
  13. 前記誘電体組成物は、原子価可変アクセプタ元素の酸化物又は炭酸塩のうち一つ以上を含む第1副成分をさらに含み、
    前記原子価可変アクセプタ元素は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cn及びZnのうち一つ以上を含み、
    前記第1副成分に含まれた原子価可変アクセプタ元素の含量は、主成分100molに対して0.2mol以上1.4mol以下である、請求項11に記載の積層型電子部品。
  14. 前記誘電体組成物は、Mgの酸化物又は炭酸塩のうち一つ以上を含む第2副成分をさらに含み、
    前記第2副成分に含まれるMg元素の含量は、主成分100molに対して2.0mol以下である、請求項11に記載の積層型電子部品。
  15. 前記誘電体組成物は、希土類元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第3副成分をさらに含み、
    前記希土類元素は、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd及びYbのうち一つ以上を含み、
    前記第3副成分に含まれた希土類元素の含量は、主成分100molに対して0.6mol以上3.0mol以下である、請求項11に記載の積層型電子部品。
  16. 前記誘電体組成物は、Ba及びCaのうち一つ以上の元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第4副成分をさらに含み、
    前記第4副成分に含まれたBa及びCaのうち一つ以上の元素の含量の総和は、主成分100molに対して4.8mol以下である、請求項11に記載の積層型電子部品。
  17. 前記誘電体組成物は、Siの酸化物、Siの炭酸塩、及びSiを含むガラスのうち一つ以上を含む第5副成分をさらに含み、
    前記第5副成分に含まれたSi元素の含量は、主成分100molに対して0.8mol以上3.0mol以下である、請求項11に記載の積層型電子部品。
  18. 前記誘電体組成物は、第4副成分及び第5副成分をさらに含み、
    前記第4副成分は、Ba及びCaのうち一つ以上の元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含み、
    前記第5副成分は、Siの酸化物、Siの炭酸塩、及びSiを含むガラスのうち一つ以上を含み、
    前記第5副成分に含まれたSi元素の含量は、主成分100molに対して0.8mol以上3.0mol以下であり、
    前記第4副成分に含まれたBa及びCaのうち一つ以上の元素の含量の総和を4s、前記第5副成分に含まれたSi元素の含量を5sと定義するとき、4s/5sは1.60以下である、請求項11に記載の積層型電子部品。
  19. 前記積層型電子部品は、
    誘電率≧2000、温度条件150℃及び電界条件DC42V/μmでのHALT評価MTTF≧100時間、RC≧1000ΩF及び-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%のうち選択された少なくとも一つ以上の特性を満たす、請求項11に記載の積層型電子部品。
  20. 前記積層型電子部品は、
    誘電率≧2000、温度条件150℃及び電界条件42V/μmでのHALT評価MTTF≧100時間、RC≧1000ΩF及び-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%である特性を全て満たす、請求項11に記載の積層型電子部品。
  21. 誘電体粉末を主成分として含み、溶媒及び分散剤を含む誘電体組成物をミリングする段階と、
    前記誘電体組成物にバインダーを追加し、追加ミリングしてスラリーを設ける段階と、
    前記スラリーを用いてセラミックグリーンシートを形成する段階と、
    前記セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを印刷した後、積層して積層体を形成する段階と、
    前記積層体を焼成して誘電体層及び内部電極を含む本体を形成する段階と、
    前記本体上に外部電極を形成する段階と、
    を含み、
    前記ミリングする段階は、前記誘電体層に含まれた誘電体結晶粒内の欠陥(defect)の長さの和が150nm以上である第1誘電体結晶粒を一つ以上含むように行う、積層型電子部品の製造方法。
  22. 前記欠陥(defect)は、線欠陥及び面欠陥のうち選択されたいずれか一つ以上を含む、請求項21に記載の積層型電子部品の製造方法。
  23. 前記欠陥(defect)は転位(dislocation)であることを特徴とする、請求項21に記載の積層型電子部品の製造方法。
  24. 前記誘電体組成物をミリングする段階は、前記誘電体組成物を4時間以上ミリングする、請求項21に記載の積層型電子部品の製造方法。
  25. 前記誘電体組成物をミリングする段階は、前記誘電体組成物を4時間以上30時間未満の間ミリングする、請求項21に記載の積層型電子部品の製造方法。
  26. 前記本体を形成する段階において、
    前記焼成はEMF760mV以上の雰囲気で行われる、請求項21に記載の積層型電子部品の製造方法。
  27. 前記本体を形成する段階において、
    前記焼成は水素濃度0.5%以上の雰囲気で行われる、請求項21に記載の積層型電子部品の製造方法。
  28. 前記本体を形成する段階において、
    前記積層体を焼成する段階の後、再酸化熱処理を行う再酸化段階をさらに含み、
    前記再酸化段階は、還元雰囲気で焼成温度より低い温度で行われる、請求項21に記載の積層型電子部品の製造方法。
  29. 前記誘電体粉末はBaTiO系である、請求項21に記載の積層型電子部品の製造方法。
  30. 前記BaTiO系は、BaTiO、(Ba、Ca)(Ti、Ca)O、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O及びBa(Ti、Zr)Oからなる群から選択された一つ以上を含む、請求項29に記載の積層型電子部品の製造方法。
  31. 前記誘電体組成物は、原子価可変アクセプタ元素の酸化物又は炭酸塩のうち一つ以上を含む第1副成分をさらに含み、
    前記原子価可変アクセプタ元素は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cn及びZnのうち一つ以上を含み、
    前記第1副成分に含まれた原子価可変アクセプタ元素の含量は、主成分100molに対して0.2mol以上1.4mol以下である、請求項29に記載の積層型電子部品の製造方法。
  32. 前記誘電体組成物は、Mgの酸化物又は炭酸塩のうち一つ以上を含む第2副成分をさらに含み、
    前記第2副成分に含まれるMg元素の含量は、主成分100molに対して2.0mol以下である、請求項29に記載の積層型電子部品の製造方法。
  33. 前記誘電体組成物は、希土類元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第3副成分をさらに含み、
    前記希土類元素は、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd及びYbのうち一つ以上を含み、
    前記第3副成分に含まれた希土類元素の含量は、主成分100molに対して0.6mol以上3.0mol以下である、請求項29に記載の積層型電子部品の製造方法。
  34. 前記誘電体組成物は、Ba及びCaのうち一つ以上の元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第4副成分をさらに含み、
    前記第4副成分に含まれたBa及びCaのうち一つ以上の元素の含量の総和は、主成分100molに対して4.8mol以下である、請求項29に記載の積層型電子部品の製造方法。
  35. 前記誘電体組成物は、Siの酸化物、Siの炭酸塩、及びSiを含むガラスのうち一つ以上を含む第5副成分をさらに含み、
    前記第5副成分に含まれたSi元素の含量は、主成分100molに対して0.8mol以上3.0mol以下である、請求項29に記載の積層型電子部品の製造方法。
  36. 前記誘電体組成物は、第4副成分及び第5副成分をさらに含み、
    前記第4副成分は、Ba及びCaのうち一つ以上の元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含み、
    前記第5副成分は、Siの酸化物、Siの炭酸塩、及びSiを含むガラスのうち一つ以上を含み、
    前記第5副成分に含まれたSi元素の含量は、主成分100molに対して0.8mol以上3.0mol以下であり、
    前記第4副成分に含まれたBa及びCaのうち一つ以上の元素の含量の総和を4s、前記第5副成分に含まれたSi元素の含量を5sと定義するとき、4s/5sは1.60以下である、請求項29に記載の積層型電子部品の製造方法。
  37. 前記積層型電子部品は、
    誘電率≧2000、温度条件150℃及び電界条件42V/μmでのHALT評価MTTF≧100時間、RC≧1000ΩF及び-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%のうち選択された少なくとも一つ以上の特性を満たす、請求項21に記載の積層型電子部品の製造方法。
  38. 前記積層型電子部品は、
    誘電率≧2000、温度条件150℃及び電界条件42V/μmでのHALT評価MTTF≧100時間、RC≧1000ΩF及び-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%である特性を全て満たす、請求項21に記載の積層型電子部品の製造方法。
  39. 前記誘電体粉末の平均直径サイズは50nm以上300nm以下である、請求項21に記載の積層型電子部品の製造方法。
  40. 前記欠陥は、結晶粒界から前記第1誘電体結晶粒の中心に向けて延びる、請求項1に記載の積層型電子部品。
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