JP2024002820A - レーザ溶接装置 - Google Patents

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淳也 下玉利
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大輔 中村
Daisuke Nakamura
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Abstract

【課題】安定した品質でレーザ溶接を行うことができるレーザ溶接装置を提供すること。【解決手段】レーザ光70を構成するものであって第1強度を有する主ビーム71を生成する第1レンズ22、第2レンズ23、主ビーム移動手段21と、レーザ光70を構成するものであって第2強度を有する副ビーム72を生成するアキシコンレンズ25、第3レンズ27と、レーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズ、副ビーム72のビームサイズ、主ビーム71の第1強度及び副ビーム72の第2強度を、ワーク2の状態に基づいて時間的に変化し得るように制御する制御手段53と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、レーザ溶接装置に関するものである。
従来、レーザ光を溶接対象物に向けて照射し、そのレーザ光の溶接対象物に対する照射位置を走査しながら溶接対象物を溶融して溶接を行うレーザ溶接装置がある。この種のレーザ溶接装置において、強度の強い主ビームと、主ビームより強度の弱い副ビームとによってレーザ光を形成し、溶接対象物に当該レーザ光を照射するものが知られている。
例えば、特許文献1に記載のレーザ溶接装置では、主ビームと、走査方向前方に少なくともその一部がある副ビームとによってレーザ光が構成されている。その主ビームのパワー密度は、少なくともキーホールを発生させる強度であり、副ビームのパワー密度は、主ビームのパワー密度よりも低く、少なくとも金属蒸気の圧力により発生するキーホールを発生させずに加工対象を溶融する強度に設定される。
特許文献1に記載のレーザ溶接装置は、そのようなレーザ光を加工対象に照射しながら走査することで、副ビームが照射される領域に、主ビームが照射される領域に形成される溶融池より浅いとともに、溶融し液体化した加工対象によって満たされた溶融池である浅瀬領域を形成する。そして、副ビームが照射される領域に形成された浅瀬領域が固化する前に、当該浅瀬領域に主ビームの溶融強度領域が到達し、キーホールを発生させる。これにより、溶融池から飛散するスパッタの発生を抑制し、加工欠陥が生じることを防いでいる。
特許第6935484号公報
しかしながら、特許文献1に記載されるようなレーザ溶接装置は、常にビーム形状が一定のレーザ光が形成されるため、材料の微妙な変化に対して安定的な溶接を行うことができないという問題点があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、安定した品質でレーザ溶接を行うことができるレーザ溶接装置を提供することを目的とする。
この目的を達成するために本発明の第1の態様に係るレーザ溶接装置は、レーザ光を溶接対象物に向けて照射し、前記レーザ光の前記溶接対象物に対する照射位置を走査しながら前記溶接対象物を溶融して溶接を行うものであって、前記レーザ光を構成するものであって第1強度を有する主ビームを生成する主ビーム生成手段と、前記レーザ光を構成するものであって第2強度を有する副ビームを生成する副ビーム生成手段と、前記レーザ光の走査パターン、前記主ビームの形状、前記副ビームの形状、前記主ビームのビームサイズ、前記副ビームのビームサイズ、前記主ビームの前記第1強度及び前記副ビームの前記第2強度の少なくともいずれかを、前記溶接対象物の状態に基づいて時間的に変化し得るように制御する制御手段と、を備える。
本発明の第2の態様に係るレーザ溶接装置は、第1の態様に係るレーザ溶接装置において、前記主ビーム生成手段は、前記レーザ光の中心部に前記主ビームを生成し、前記副ビーム生成手段は、前記主ビームの周囲部に前記副ビームを生成する。
本発明の第3の態様に係るレーザ溶接装置は、第1又は第2の態様に係るレーザ溶接装置において、前記主ビーム生成手段及び前記副ビーム生成手段は、前記主ビーム及び前記副ビームの少なくともいずれかによって前記溶接対象物にキーホールを形成し得る前記第1強度の主ビーム及び前記第2強度の副ビームを生成する。
本発明の第4の態様に係るレーザ溶接装置は、第3の態様に係るレーザ溶接装置において、前記主ビーム生成手段及び前記副ビーム生成手段は、前記主ビーム及び前記副ビームのいずれによっても前記溶接対象物にキーホールを形成可能な前記第1強度の主ビーム及び前記第2強度の副ビームを生成し得る。
本発明の第5の態様に係るレーザ溶接装置は、第1から第4のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置において、前記制御手段は、前記レーザ光の走査パターンとして、前記主ビームの走査パターンと、前記副ビームの走査パターンとの少なくともいずれかを、前記溶接対象物の状態に基づいて時間的に変化し得るように制御するものである。
本発明の第6の態様に係るレーザ溶接装置は、第1から第5のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置において、レーザ光を発振する複数のレーザ光発振器を備え、前記主ビーム生成手段は、少なくとも一部のレーザ光発振器から出力されるレーザ光を用いて前記主ビームを生成し、前記副ビーム生成手段は、少なくとも前記主ビーム生成手段にて用いられたレーザ光発振器とは別のレーザ光発振器から出力されるレーザ光を用いて前記副ビームを生成する。
本発明の第7の態様に係るレーザ溶接装置は、第6の態様に係るレーザ溶接装置において、前記主ビームと前記副ビームとは異なる波長を用いる。
本発明の第8の態様に係るレーザ溶接装置は、第1から第5のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置において、レーザ光を発振する1つのレーザ光発振器と、そのレーザ光発振器により発振された前記レーザ光を分割して、前記主ビーム生成手段及び前記副ビーム生成手段のそれぞれに入力する分割手段と、を備える。
本発明の第9の態様に係るレーザ溶接装置は、第1から第8のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置において、前記主ビーム生成手段は、前記レーザ光内において、前記主ビームの前記溶接対象物への照射位置を環状に移動させる主ビーム移動手段を備える。
本発明の第10の態様に係るレーザ溶接装置は、第1から第9のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置において、前記溶接対象物に対する前記レーザ光の照射位置を、円弧状に動かしながら前記溶接対象物の溶接を行う線上に沿って走査する走査手段を備える。
本発明の第11の態様に係るレーザ溶接装置は、第1から第10のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置において、前記制御手段は、前記主ビームのビームサイズ及び前記副ビームのビームサイズの少なくとも一方を、前記レーザ光の照射中に前記溶接対象物の温度及び/又は溶融状態に基づいて変化させる制御を行うビームサイズ制御手段を備える。
本発明の第12の態様に係るレーザ溶接装置は、第11の態様に係るレーザ溶接装置において、前記ビームサイズ制御手段は、前記溶接対象物の材料に基づいて、前記主ビームのビームサイズを縮小又は拡大するタイミングと、前記副ビームのビームサイズを縮小又は拡大するタイミングとを異ならせるものである。
本発明の第13の態様に係るレーザ溶接装置は、第1から第12のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置において、前記制御手段は、レーザ溶接前の前記溶接対象物の状態に基づいて、前記レーザ光の走査パターン、前記主ビームの形状、前記副ビームの形状、前記主ビームのビームサイズ、前記副ビームのビームサイズ、前記主ビームの前記第1強度及び前記副ビームの前記第2強度の少なくともいずれかを変化し得るように制御する。
本発明の第14の態様に係るレーザ溶接装置は、第1から第13のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置において、前記制御手段は、レーザ溶接中の前記溶接対象物の状態に基づいて、前記レーザ光の走査パターン、前記主ビームの形状、前記副ビームの形状、前記主ビームのビームサイズ、前記副ビームのビームサイズ、前記主ビームの前記第1強度及び前記副ビームの前記第2強度の少なくともいずれかを変化し得るように制御する。
第1の態様に係るレーザ溶接装置によれば、レーザ光を溶接対象物に向けて照射し、その照射位置を走査しながら溶接対象物を溶融して溶接を行う。ここで、主ビーム生成手段によって、レーザ光を構成するものであって第1強度を有する主ビームが生成される。また、副ビーム生成手段によって、レーザ光を構成するものであって第2強度を有する副ビームが生成される。そして、制御手段の制御によって、レーザ光の走査パターン、主ビームの形状、副ビームの形状、主ビームのビームサイズ、副ビームのビームサイズ、主ビームの第1強度及び副ビームの第2強度の少なくともいずれかが、前記溶接対象物の状態に基づいて時間的に変化され得る。これにより、レーザ光の走査パターン、主ビームの形状、副ビームの形状、主ビームのビームサイズ、副ビームのビームサイズ、主ビームの第1強度及び副ビームの第2強度の少なくともいずれかが、溶接対象物の状態に適した条件に設定できる。よって、安定した品質でレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
第2の態様に係るレーザ溶接装置によれば、第1の態様に係るレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、主ビームがレーザ光の中心部に主ビーム生成手段によって生成され、副ビームが主ビームの周辺部に副ビーム生成手段によって生成される。これにより、溶接対象物に対して照射されるレーザ光の中心部に形成された主ビームによって溶接対象物を溶融しつつ、周辺部に形成された副ビームによって主ビームによる溶接対象物の溶融の状態を安定させることができる。そして、これら主ビーム及び副ビームの条件を溶接対象物の状態に応じて時間的に変化させることで、より安定した品質でレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
第3の態様に係るレーザ溶接装置によれば、第1又は第2の態様に係るレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、主ビーム生成手段によって生成された第1強度の主ビームと、副ビーム生成手段によって生成された第2強度の副ビームとの少なくともいずれかによって、レーザ光が照射された溶接対象物にキーホールが形成され得る。これにより、溶接対象物の溶融が早く行われて溶接が完了できるので、溶接の高速化を図りつつ、主ビーム及び副ビームの条件を溶接対象物の状態に応じて時間的に変化させることで、より安定した品質でレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
第4の態様に係るレーザ溶接装置によれば、第3の態様に係るレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、主ビーム生成手段によって生成された第1強度の主ビームと、副ビーム生成手段によって生成された第2強度の副ビームとのいずれによっても、レーザ光が照射された溶接対象物にキーホールが形成され得る。これにより、溶接対象物の溶融が即座に行われて溶接が完了できるので、溶接の高速化を更に図りつつ、主ビーム及び副ビームの条件を溶接対象物の状態に応じて時間的に変化させることで、より安定した品質でレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
第5の態様に係るレーザ溶接装置によれば、第1から第4のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、制御手段の制御によって、レーザ光の走査パターンとして、主ビームの走査パターンと、副ビームの走査パターンとの少なくともいずれかが前記溶接対象物の状態に基づいて時間的に変化され得る。これにより、溶接対象物の状態に適した形で、主ビームの走査パターンと、副ビームの走査パターンとの少なくともいずれかが設定される。よって、安定した品質でレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
第6の態様に係るレーザ溶接装置によれば、第1から第5のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、複数のレーザ光発振器のうち、少なくとも一部のレーザ光発振器から出力されるレーザ光を用いて主ビームが主ビーム生成手段により生成され、少なくとも主ビーム生成手段にて用いられたレーザ光発振器とは別のレーザ光発振器から出力されるレーザ光を用いて副ビームが副ビーム生成手段により生成される。これにより、主ビームの第1強度及び副ビームの第2強度として、いずれも高い強度まで容易に生成でき、高速化と安定した品質とを両立した溶接を行うことができるという効果がある。
第7の態様に係るレーザ溶接装置によれば、第6の態様に係るレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、複数のレーザ光発振器を用いて、主ビームの波長及び副ビームの波長を異ならせることで、波長に対する溶接対象物の熱吸収率の違いを利用して、溶接対象物にキーホールを安定して形成し易くできる。よって、より安定した品質でレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
第8の態様に係るレーザ溶接装置によれば、第1から第5のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、1つのレーザ光発振器から発振されたレーザ光が分割手段により分割され、主ビーム生成手段及び副ビーム生成手段のそれぞれに入力されて、主ビーム及び副ビームが生成される。これにより、レーザ光発振器が1つ用意するだけで主ビーム及び副ビームを生成できるので、コストを抑制しつつ、安定した品質のレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
第9の態様に係るレーザ溶接装置によれば、第1から第8のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、主ビーム生成手段の主ビーム移動手段によって、レーザ光内において、主ビームの溶接対象物への照射位置が環状に移動する。これにより、主ビームの照射範囲を広げることができる一方、同じ範囲を一度に照射する場合と比して主ビームの入熱時間を短くできる。よって、より安定した品質でレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
第10の態様に係るレーザ溶接装置によれば、第1から第9のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、走査手段によって、溶接対象物に対するレーザ光の照射位置を、円弧状に動かしながら溶接対象物の溶接を行う線上に沿って走査が行われる。これにより、同じ範囲に対してレーザ光を直線状に照射する場合よりも、強度の強いレーザ光を短時間で照射できる。よって、レーザ光の入熱時間を短くできるので、より安定した品質でレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
第11の態様に係るレーザ溶接装置によれば、第1から第10のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、制御手段のビームサイズ制御手段の制御によって、主ビームのビームサイズ及び副ビームのビームサイズの少なくとも一方が、レーザ光の照射中に溶接対象物の温度及び/又は溶融状態に基づいて変化する。これにより、所望のレーザ溶接品質となるように、溶接対象物の状態に応じてレーザ光を形成し、溶接対象物に照射できるので、レーザ溶接の品質を高めることができるという効果がある。
第12の態様に係るレーザ溶接装置によれば、第11の態様に係るレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、ビームサイズ制御手段によって、溶接対象物の材料に基づいて、主ビームのビームサイズを縮小又は拡大するタイミングと、副ビームのビームサイズを縮小又は拡大するタイミングとが異なるように制御される。これにより、溶接対象物の材料に応じて、最適なタイミングで、主ビームのビームサイズの縮小又は拡大と、副ビームのビームサイズの縮小又は拡大が行われるので、より品質の高いレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
第13の態様に係るレーザ溶接装置によれば、第1から第12のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、制御手段によって、レーザ溶接前の溶接対象物の状態に基づいて、レーザ光の走査パターン、主ビームの形状、副ビームの形状、主ビームのビームサイズ、副ビームのビームサイズ、主ビームの第1強度及び副ビームの第2強度の少なくともいずれかが変化され得る。これにより、レーザ溶接前の溶接対象物の状態から、その溶接対象物に適した形で、レーザ光の走査パターン、主ビームの形状、副ビームの形状、主ビームのビームサイズ、副ビームのビームサイズ、主ビームの第1強度及び副ビームの第2強度の少なくともいずれかが設定されるので、安定した品質でレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
第14の態様に係るレーザ溶接装置によれば、第1から第13のいずれかの態様に係るレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、制御手段によって、レーザ溶接中の溶接対象物の状態に基づいて、レーザ光の走査パターン、主ビームの形状、副ビームの形状、主ビームのビームサイズ、副ビームのビームサイズ、主ビームの第1強度及び副ビームの第2強度の少なくともいずれかが変化され得る。これにより、レーザ溶接中における溶接対象物の状態の変化にあわせて、レーザ光の走査パターン、主ビームの形状、副ビームの形状、主ビームのビームサイズ、副ビームのビームサイズ、主ビームの第1強度及び副ビームの第2強度の少なくともいずれかが設定されるので、安定した品質でレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
本発明の一実施形態に係るレーザ溶接装置の概略構成図である。 (a)は、同レーザ溶接装置からワークに照射されるレーザ光の強度分布の一例を示した図であり、(b)同レーザ溶接装置からワークに照射されるレーザ光の強度分布の別例を示した図である。 (a)は、図1で示した面IIIaにおいて図2(a)に示すレーザ光を切断した切断部端面図であり、(b)は、(a)で示したレーザ光の切断部端面図の拡大図であり、(c)は、図1で示した面IIIcにおいて図2(a)に示すレーザ光を切断した切断部端面図であり、(d)は、(c)で示したレーザ光の切断部端面図の拡大図である。 同レーザ溶接装置の主ビーム移動手段の概略構成図である。 黒体輻射強度の波長及び温度依存性を示した図である。 同レーザ溶接装置を制御するレーザ溶接制御システムのコンピュータの処理装置により実行されるレーザ溶接制御処理を示すフローチャートである。 同レーザ溶接装置におけるレーザ溶接前に観察したワークの形状の判断内容の一例を示した図である。 同レーザ溶接装置のレーザ光内において、主ビームのワークへの照射位置を環状(円状)に移動(回転)させつつ、ワークに対するレーザ光の照射位置を円弧状に動かしながら溶接線上に沿って移動させる走査パターンを模式的に示した模式図である。 (a)は、同レーザ溶接装置において、溶接中のワークの状態に基づいて主ビーム及び副ビームのビームサイズを変更する方法の一例を示した図であり、(b)は、(a)の変更をするために溶接中に観察したワークの温度分布画像に基づくワークの状態の判断の一例を示した図である。 (a)は、同レーザ溶接装置において、溶接中のワークの状態に基づいて主ビーム及び副ビームのビームサイズを変更する方法の別例を示した図であり、(b)は、(a)の変更をするために溶接中に観察したワークの温度分布画像に基づくワークの状態の判断の一例を示した図である。
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。よって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。従って、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
まず、図1~図4を参照して、本発明の一実施形態であるレーザ溶接装置1の概略構成について説明する。図1は、そのレーザ溶接装置1の概略構成図である。図2(a)は、レーザ溶接装置1から溶接対象物であるワーク2に照射されるレーザ光70の強度分布の一例を示した図である。図2(b)は、レーザ溶接装置1からワーク2に照射されるレーザ光70の強度分布の別例を示した図である。
図3(a)は、図1で示した面IIIaにおいてレーザ光70を切断した切断部端面図であり、図3(b)は、図3(a)で示したレーザ光70の切断部端面図の拡大図である。また、図3(c)は、図1で示した面IIIcにおいてレーザ光70を切断した切断部端面図であり、図3(d)は、図3(c)で示したレーザ光70の切断部端面図の拡大図である。図4は、レーザ溶接装置1の主ビーム移動手段21の概略構成図である。
レーザ溶接装置1は、例えば突き合わせ又は重ね合わせた状態で台座3に固定された2枚の板材であるワーク2に対して、生成したレーザ光70を走査しながら照射することで、ワーク2の突き合わせ又は重ね合わせ部分を溶接するものである。
レーザ溶接装置1で生成されるレーザ光70は、主ビーム71と副ビーム72とにより構成されたマルチビームである。例えば、図2(a)に示すように、主ビーム71を、レーザ光70の中心部においてガウシアンビーム状に形成する。そして、レーザ溶接装置1は、図2(b)に示す、主ビーム71の強度A(以下「第1強度A」と称す)と、ビームサイズである径Bとを変更可能に構成される。
また、レーザ溶接装置1は、図2(a)に示すように、主ビーム71の周囲部において副ビーム72を、例えばガウシアン分布状の強度で主ビーム71を囲むようにリングビーム状に形成する。そして、レーザ溶接装置1は、図2(a)に示す、副ビーム72の強度D(以下「第2強度D」と称す)と、ビームサイズである径C及び幅Eとを変更可能に構成される。
なお、レーザ溶接装置1は、図2(b)に示す通り、副ビーム72をリングビーム状ではなく、主ビーム71よりもビームの径を大きくしたガウシアンビーム状に形成するようにしてもよい。この場合、レーザ溶接装置1は、副ビーム72の第2強度Dと、ビームサイズである径Cとを変更可能に構成される。
図1に示す通り、レーザ溶接装置1は、ワーク2が固定される台座3の他、少なくとも2つのレーザ光発振器(第1レーザ光発振器11、第2レーザ光発振器12)、レーザ加工ヘッド20、レーザ溶接制御システム40を有している。
第1レーザ光発振器11は、主ビーム71の生成に用いるレーザ光を発振させて出力し、第2レーザ光発振器12は、副ビーム72の生成に用いるレーザ光を発振させて出力する。第1レーザ光発振器11及び第2レーザ光発振器12は、溶接に使用するレーザの種類(波長)に応じて、CO2レーザ光発振器、YAGレーザ光発振器、半導体レーザ光発振器、ディスクレーザ光発振器、ファイバーレーザ光発振器等が用いられる。
なお、本実施形態に係る第1レーザ光発振器11及び第2レーザ光発振器12は、異なる種類のレーザ光発振器が用いられ、異なる波長のレーザ光を出力する。即ち、本実施形態では、レーザ光70として波長の異なる主ビーム71と副ビーム72とによって構成される。これにより、主ビーム71の波長に対するワーク2の熱吸収率と、副ビーム72の波長に対するワーク2の熱吸収率との違いを利用して、主ビーム71によるワーク2の溶融と副ビーム72によるワーク2の溶融とを制御することで、安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。
第1レーザ光発振器11から出力されるレーザ光の強度は、ワーク2におけるレーザ光70の照射位置において、主ビーム71の強度がワーク2の状態に応じて設定された第1強度Aとなるように、レーザ溶接制御システム40の制御手段53によって制御される。第2レーザ光発振器12から出力されるレーザ光の強度は、ワーク2におけるレーザ光70の照射位置において、副ビーム72の強度がワーク2の状態に応じて設定された第2強度Dとなるように、制御手段53によって制御される。
第1レーザ光発振器11から出力されたレーザ光は、第1伝送路13を介してレーザ加工ヘッド20へ伝送される。第2レーザ光発振器12から出力されたレーザ光は、第2伝送路14を介してレーザ加工ヘッド20へ伝送される。第1伝送路13及び第2伝送路14は、第1レーザ光発振器11又は第2レーザ光発振器12から出力されたレーザ光をレーザ加工ヘッド20へ伝送するものである。
第1伝送路13及び第2伝送路14は、出力されるレーザ光がCO2レーザの場合、ミラーやレンズによって構成される。出力されるレーザ光がYAGレーザ、半導体レーザ、ディスクレーザ又はファイバーレーザである場合は、第1伝送路13及び第2伝送路14として、ミラーやレンズが用いられるほか、ミラーやレンズに加えて、又は、ミラーやレンズに代えて、光ファイバが用いられる。
レーザ加工ヘッド20は、台座3に固定されたワーク2に向けて照射するレーザ光70を、第1レーザ光発振器11及び第2レーザ光発振器12から伝送されたレーザ光を用いて生成し、生成したレーザ光70を走査しながらワーク2へ照射する部材である。
具体的には、レーザ加工ヘッド20では、第1レーザ光発振器11から伝送されたレーザ光より主ビーム71を生成し、第2レーザ光発振器12から伝送されたレーザ光より副ビーム72を生成して、レーザ光70を形成する。また、レーザ加工ヘッド20と、ワーク2が固定される台座3とは、相対的に移動可能に構成される。即ち、レーザ加工ヘッド20及び台座3の少なくともいずれか一方が他方に対して移動可能に構成されており、その移動を制御することで、ワーク2に対するレーザ光70の照射位置の走査が行われる。
レーザ加工ヘッド20の内部には、主ビーム71を生成する主ビーム生成手段として、第1レンズ22、第2レンズ23、主ビーム移動手段21が配設され、副ビーム72を生成する副ビーム生成手段として、アキシコンレンズ25、第3レンズ27が配設される。その他、レーザ加工ヘッド20の内部には、第1ダイクロイックミラー28、第2ダイクロイックミラー29、ガルバノスキャナ30、集光レンズ31、反射ミラー32が設けられている。なお、図面上では各々のレンズを1個のレンズとして図示しているが、それぞれ複数のレンズの組み合わせによって構成されてもよい。
まず、主ビーム生成手段を構成する各部材について説明する。第1伝送路13から出力される第1レーザ光発振器11から伝送されたレーザ光は、第1レンズ22に入射される。第1レンズ22と、その第1レンズ22の後段に設けられた第2レンズ23とは、これらの協働により、入射されたレーザ光をズームしてビーム径を拡大すると共に、平行光とするための光学部品である。
ここで、第1レンズ22と第2レンズ23との距離によって、レーザ光のビーム径の拡大率が決定される。即ち、この第1レンズ22と第2レンズ23との距離を変更することで、ワーク2の照射位置でのレーザ光70の主ビーム71の径Bを制御できる。
第2レンズ23には、第1レンズ22と第2レンズ23との距離を変更するためのステッピングモータやサーボモータ等で構成される駆動モータ(図示せず)が設けられている。その駆動モータを駆動することによって第2レンズ23が移動し、第1レンズ22と第2レンズ23との距離が変更される。この駆動モータの駆動制御は、主ビーム71の径Bが制御手段53により設定された値となるように、制御手段53によって行われる。なお、主ビーム71の拡大は、エキスパンダ等の光学部品を用いて行われてもよい。
主ビーム移動手段21は、レーザ光70内において、主ビーム71のワーク2への照射位置を、レーザ光70の中央部を中心として環状に移動(回転)させるものであり、第1レンズ22及び第2レンズ23により拡大され、平行光とされたレーザ光が入射される。主ビーム移動手段21から出力されたレーザ光が、集光レンズ31によって集光される前の主ビーム71となる。
主ビーム移動手段21は、例えば図4に示すように、対向する1対のプリズム21a、21bによって構成される。これらのプリズム21a、21bは、ウェッジ基板が用いられてもよい。プリズム21a、21bはそれぞれ、第1伝送路13から出力されるレーザ光の光軸と垂直な面(垂直面)と、第1伝送路13から出力されるレーザ光の光軸と垂直な面から所定の角度傾いた面(傾斜面)とを持つ同一の形状をしており、入力されたレーザ光を同じ角度で偏向する。これらのプリズム21a、21bは、各々の傾斜面が互いに向き合って(対向して)配置される。そして、プリズム21a、21bにはそれぞれ、第1伝送路13から出力されるレーザ光の光軸を回転軸として独立して回転できるように、モータ(図示せず)が設けられている。
主ビーム移動手段21は、プリズム21a、21bが反対向きの状態(互いの傾斜面が平行となる状態)で静止している場合、それぞれのプリズム21a、21bでの偏向角が相殺され、プリズム21a、21bを介さない場合と同様に、第1伝送路13から出力されるレーザ光と同じ光軸上をレーザ光が進んで出力される。
一方、主ビーム移動手段21は、プリズム21a、21bを互いに反対方向に回転させると、主ビーム移動手段21に入力されたレーザ光が、プリズム21a及び21bにて偏向されて出力される。この偏向角を保持するようにプリズム21a、21bを回転させることで、第1伝送路13から出力されるレーザ光の光軸を中心とした円の軌跡に沿って、レーザ光が出力される。これにより、主ビーム71は、レーザ光70の中央部を中心として環状に移動(円運動)することになる。
なお、図4に示した主ビーム移動手段21の構成は一例であり、主ビーム71のワーク2への照射位置を、レーザ光70の中央部を中心として環状に移動(円運動)させるものであれば、任意の構成であってよい。例えば、主ビーム移動手段21として、電場を電気的に変更することで偏向角が変化する偏向変換素子を用い、その偏向変換素子における偏向角を電気的に高速で変化させることで、第1伝送路13から出力されるレーザ光の光軸を中心とした円の軌跡に沿って、レーザ光を出力するようにしてもよい。
図1に戻り、副ビーム生成手段を構成する各部材について説明する。第2伝送路14から出力される第2レーザ光発振器12から伝送されたレーザ光は、アキシコンレンズ25に入射される。アキシコンレンズ25と、そのアキシコンレンズ25の後段に設けられた第3レンズ27とは、これらの協働により、入射されたレーザ光をリング状に且つズームしてビーム径を拡大すると共に、平行光とするための光学部品である。
アキシコンレンズ25は、コーンレンズとも称される円錐形のレンズであり、円錐形上の頂点が、第2伝送路14から出力されるレーザ光の光軸上に位置し、円錐形上の底面がその光軸と垂直な方向となるように配置される。
また、アキシコンレンズ25は、図1に示すように、第2伝送路14から出力されるレーザ光が入射される側にアキシコンレンズ25の頂点が位置するように設置される。なお、アキシコンレンズ25は、第2伝送路14から出力されるレーザ光が入射される側にアキシコンレンズ25の底面が位置するように設置されてもよい。
アキシコンレンズ25は、リング状の副ビームを生成するために用いられる。即ち、第2伝送路14から出力されたレーザ光は、アキシコンレンズ25を通過するとリング状に広がる。このリング状に広がったレーザ光は、第3レンズ27に入射される。
第3レンズ27は、アキシコンレンズ25によってリング状に広がったレーザ光を、平行光とするためのレンズである。第3レンズ27によって平行光とされたリング状のレーザ光が、集光レンズ31によって集光される前の副ビーム72となる。
ここで、アキシコンレンズ25と第3レンズ27との距離によって、リング状のレーザ光のビーム径及びビーム幅の拡大率が決定される。即ち、アキシコンレンズ25と第3レンズ27との距離を変更することで、ワーク2の照射位置でのレーザ光70の副ビーム72の径C及び幅Eを制御できる。
アキシコンレンズ25には、アキシコンレンズ25と第3レンズ27との距離を変更するためのステッピングモータやサーボモータ等で構成される駆動モータ(図示せず)が設けられている。その駆動モータを駆動することによってアキシコンレンズ25が移動し、アキシコンレンズ25と第3レンズ27との距離が変更される。アキシコンレンズ25に設けられた駆動モータの駆動制御は、副ビーム72の径C及び幅Eが制御手段53により設定された値となるように、制御手段53によって行われる。
なお、本実施形態では、1つのアキシコンレンズ25によってレーザ光をリング状に広げる場合について説明したが、アキシコンレンズを2枚用いてレーザ光をリング状に広げてもよい。この場合、アキシコンレンズの少なくともいずれか一方を移動可能にし、アキシコンレンズ間の距離を変更することで副ビーム72を拡大し、ワーク2の照射位置でのレーザ光70の副ビーム72の径C及び幅Eを制御できる。また、副ビーム72の拡大は、エキスパンダ等の光学部品を用いることで行われてもよい。
また、リング状の副ビーム72の生成は、アキシコンレンズ25に代えて、レンズの収差を利用して収差リングを形成することで行われてもよいし、回折格子や偏向変換素子を使用してレーザ光をリング状にしてもよい。また、第2伝送路14としてデュアルコア光ファイバ又は単独リングコア光ファイバを用い、その光ファイバにてリング状にされたレーザ光が、レーザ加工ヘッド20の副ビーム生成手段に入力されてもよい。この場合、副ビーム生成手段は、ワーク2の照射位置での副ビーム72の径C及び幅Eが所望の大きさとなるように、第2伝送路14によってリング状に形成されて出力されたレーザ光を拡大するよう光学系が構成され、その光学系が制御手段53によって制御される。
また、副ビーム72を図2(b)に示したガウシアンビーム状に形成する場合は、副ビーム生成手段は、アキシコンレンズ25と第3レンズ27との組み合わせに代えて、主ビーム生成手段と同様の2つのレンズの組み合わせ(例えば、第2伝送路14から出力されたレーザ光が入射される第4レンズ(図示せず)と、第4レンズの後段に設けられた第5レンズ(図示せず))によって構成され、これら2つのレンズの協働により、入射されたレーザ光をズームしてビーム径Cを拡大し且つ平行光としてもよい。
より具体的には、第5レンズに、第4レンズと第5レンズとの距離を変更するためのステッピングモータやサーボモータ等で構成される駆動モータ(図示せず)が設けられ、その駆動モータを制御手段53が駆動制御することによって第5レンズが移動し、第4レンズと第5レンズとの距離が変更されることで、副ビーム72のビーム径Cが、主ビーム71のビーム径Bよりも大きい所望の大きさに制御されてもよい。これにより、ガウシアンビーム状の主ビーム71を囲うようにしてガウシアンビーム状の副ビーム72が形成される。なお、この場合も、副ビーム72の拡大は、エキスパンダ等の光学部品を用いることで行われてもよい。
次いで、レーザ加工ヘッド20内のその他の部材について説明する。第1ダイクロイックミラー28は、主ビーム71を構成する波長の光を反射し、それ以外の光を透過するミラーである。第1ダイクロイックミラー28は、主ビーム移動手段21から出力された主ビーム71の光軸と45度の角度で交わる方向に設置される。これにより、主ビーム移動手段21から出力された主ビーム71は、第1ダイクロイックミラー28によって反射され、ガルバノスキャナ30及び集光レンズ31の方向に向けられる。
第2ダイクロイックミラー29は、副ビーム72を構成する波長の光を反射し、それ以外の光を透過するミラーである。第2ダイクロイックミラー29は、第3レンズ27によりリング状の平行光として出力された副ビーム72の光軸と45度の角度で交わる方向に設置される。これにより、第3レンズ27より出力された副ビーム72は、第2ダイクロイックミラー29によって反射され、ガルバノスキャナ30及び集光レンズ31の方向に向けられる。
また、第1ダイクロイックミラー28により反射された主ビーム71は、第2ダイクロイックミラー29を透過する。これにより、第2ダイクロイックミラー29の下流側において主ビーム71と副ビーム72とが合成され、図1に示す面IIbにおいて、図2(b)に示すようなレーザ光70が形成される。即ち、図2(c)に示す面IIbでのレーザ光70の切断部端面図の拡大図にも示した通り、レーザ光70は、その中心部に主ビーム71が形成され、主ビーム71の周囲部に副ビーム72が形成される。
第2ダイクロイックミラー29の後段には、ガルバノスキャナ30が設けられている。ガルバノスキャナ30は、ワーク2に向けて主ビーム71と副ビーム72とが合成されたレーザ光70を照射する場合に、その照射位置を調整するものであり、図示しない少なくとも2つの反射ミラー(ガルバノミラー)によって構成される。
2つの反射ミラーのうち、一方の反射ミラーはX軸変位モータ(図示せず)に接続されている。このX軸変位モータを駆動することにより、接続する反射ミラーの反射角が変更され、ワーク2に対するレーザ光70の照射位置が、ワーク2平面上に設定されるX軸方向に変位可能とされる。
また、2つの反射ミラーのうち、他方の反射ミラーはY軸変位モータ(図示せず)に接続されている。このY軸変位モータを駆動することにより、接続する反射ミラーの反射角が変更され、ワーク2に対するレーザ光70の照射位置が、ワーク2平面上に設定されるX軸と直行するY軸方向に変位可能とされる。
第2ダイクロイックミラー29において主ビーム71と副ビーム72とが合成されたレーザ光70は、ガルバノスキャナ30へ入射されると、そのガルバノスキャナ30のX軸変位モータ及びY軸変位モータが駆動されることによってX軸方向及びY軸方向に変位される。これにより、レーザ光70は、主ビーム71と副ビーム72とが合成された状態で、ワーク2の平面上の所望の位置に照射される。例えば、ガルバノスキャナ30を用いることで、ある点を中心にしてその周辺を円弧状に動かしながら(回転・公転させながら)、レーザ光70を照射することが可能である。
よって、台座3とレーザ加工ヘッド20との位置を相対的に直線状に移動させつつ、ガルバノスキャナ30にてある点を中心にレーザ光70を円弧状に動かすことで、レーザ光70の照射位置を回転させながら直進させる走査を行うことができる(詳細には、図8を参照して後述する)。つまり、台座3とレーザ加工ヘッド20とを相対的に移動させる機構と、ガルバノスキャナ30とによって、本発明の走査手段が構成される。なお、ガルバノスキャナ30の駆動(即ち、X軸変位モータ及びY軸変位モータの駆動)や、台座3とレーザ加工ヘッド20とを相対的に移動させる機構は、いずれも制御手段53によって制御される。
ガルバノスキャナ30を通過したレーザ光70は、集光レンズ31に入射される。集光レンズ31は、平行光を集光させるためのレンズであり、ガルバノスキャナ30を通過したレーザ光70は、この集光レンズ31によってワーク2の照射位置に集光される。そして、図1に示すワーク2の上面である面IIdにおいて、図2(d)に示すようなレーザ光70が形成される。即ち、図2(e)に示す面IIdでのレーザ光70の切断部端面図の拡大図にも示した通り、中心部に主ビーム71が形成され、主ビーム71の周囲部に副ビーム72が形成されたレーザ光70が、集光された状態でワーク2に照射される。
なお、本実施形態では、集光レンズ31がガルバノスキャナ30と別体に設けられる場合について説明したが、ガルバノスキャナ30と集光レンズ31とが一体に構成されたもの、即ち、集光レンズ31がガルバノスキャナ30内に設けられたものが用いられてもよい。
なお、上述した通り、本実施形態では、第1レンズ22と第2レンズ23との距離を変更することで、ワーク2の照射位置でのレーザ光70の主ビーム71の径Bを制御し、アキシコンレンズ25と第3レンズ27との距離を変更することで、ワーク2の照射位置でのレーザ光70の副ビーム72の径C及び幅Eを制御するが、それに代えて、又は、それに加えて、集光レンズ31と台座3(ワーク2の上面(レーザ光の照射面))との距離を変更することで、ワーク2の照射位置でのレーザ光70の主ビーム71の径Bと副ビーム72の径C及び幅Eを制御するように構成してもよい。ただし、集光レンズ31と台座3との距離を変更する場合は、主ビーム71の径Bと副ビーム72の径C及び幅Eとが一緒に拡大・縮小されることになる。
集光レンズ31と台座3との距離の変更は、集光レンズ31にステッピングモータやサーボモータ等で構成される駆動モータを設けて、集光レンズ31の位置を移動可能な構成としてもよいし、レーザ加工ヘッド20全体を台座3に対して上下方向に移動可能に構成されてもよい。また、台座3がレーザ加工ヘッド20に対して上下方向に移動可能に構成されてもよい。集光レンズ31と台座3との距離を変更する場合のその制御は、制御手段53によって行われる。
反射ミラー32は、ワーク2から輻射熱に伴って発光された光のうちワーク2の温度を計測するために用いられる第1の波長λ1の光と第2の波長λ2の光を、レーザ溶接制御システム40に向けて反射させるためのミラーである。
ワーク2は、レーザ光70が照射されると、そのレーザ光70の照射位置を中心に高温となり、輻射熱に伴った発光が生じる。そのワーク2にて発光された光のうちワーク2の温度を計測するために用いられる第1の波長λ1の光と第2の波長λ2の光は、集光レンズ31、ガルバノスキャナ30、第2ダイクロイックミラー29、第1ダイクロイックミラー28を通過又は透過した後、反射ミラー32にて反射される。反射ミラー32にて反射された光は、レーザ加工ヘッド20の内部から外部へ出力され、レーザ溶接制御システム40へ入射される。
レーザ溶接制御システム40は、溶接開始前のワーク2の形状や、溶接中におけるワーク2の温度を観察しながら、レーザ溶接装置1によるワーク2のレーザ溶接を制御するためのシステムである。このレーザ溶接制御システム40は、少なくともビームスプリッタ41、反射ミラー42、第1バンドパスフィルタ43、第2バンドパスフィルタ44、第1カメラ用レンズ47、第2カメラ用レンズ48、第1カメラ45、第2カメラ46、第3カメラ61、第4カメラ62、コンピュータ50により構成される。
なお、本実施形態において、レーザ溶接制御システム40は、レーザ溶接装置1の構成要素の1つとして説明するが、レーザ溶接制御システム40は、レーザ溶接装置1と別に設けられたものであってもよい。また、レーザ溶接制御システム40は、1つの装置として構成されてもよいし、別個に設けられた複数の部品及び/又は装置の組み合わせで構成されてもよい。
また、本実施形態において、レーザ溶接制御システム40は、レーザ溶接装置1に隣接して設けられ、配線等を介して信号を送受信することで、レーザ溶接制御システム40がレーザ溶接装置1を制御するものとして説明するが、必ずしもそれに限定されるものではない。例えば、レーザ溶接制御システム40は、ネットワークを介してレーザ溶接装置1と信号を送受信することにより、遠隔でレーザ溶接装置1を制御するものであってもよい。
また、レーザ溶接制御システム40は、構成する部品/装置の一部が、レーザ溶接装置1に設けられ、残りの部品/装置がレーザ溶接装置1とは別に設けられた形で構成されてもよい。例えば、ビームスプリッタ41、反射ミラー42、第1バンドパスフィルタ43、第2バンドパスフィルタ44、第1カメラ用レンズ47、第2カメラ用レンズ48、第1カメラ45、第2カメラ46、第3カメラ61、第4カメラ62がレーザ溶接装置1に設けられ、コンピュータ50がレーザ溶接装置1とは別に設けられてもよい。この場合、コンピュータ50とレーザ溶接装置1との信号の送受信は、ネットワークを介して行われてもよい。
ビームスプリッタ41は、反射ミラー32によってレーザ加工ヘッド20から外部へ出力された光、即ち、ワーク2から輻射熱に伴って発光された光のうちワーク2の温度を計測するために用いられる第1の波長λ1の光と第2の波長λ2の光を、2つに分割するものである。なお、ビームスプリッタ41に代えて、ダイクロイックミラーを用いて、第1の波長λ1の光と第2の波長λ2の光とに分割してもよい。
ビームスプリッタ41にて分割された一方の光は、第1バンドパスフィルタ43に入射される。第1バンドパスフィルタ43は、第1の波長λ1の光のみを通過させるフィルタである。この第1バンドパスフィルタ43は、ビームスプリッタ41と第1カメラ45との間に設けられている。この第1バンドパスフィルタ43によって、ワーク2から輻射熱に伴って発光され、ビームスプリッタ41を反射した光のうち、第1の波長λ1の光のみが通過する。第1バンドパスフィルタ43を通過した第1の波長λ1の光は、第1カメラ用レンズ47を介して第1カメラ45に入射される。第1カメラ用レンズ47は、第1バンドパスフィルタ43を通過した光(像)を、第1カメラ45の撮像素子(図示せず)に結像させるためのレンズである。
第1カメラ45は、第1バンドパスフィルタ43を通過し、第1カメラ用レンズ47により結像された第1の波長λ1の光(像)を撮像する。第1カメラ45を構成するCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等の撮像素子(図示せず)の中心は、レーザ光70と同軸に配置されている。これにより、第1カメラ45にて撮像される画角の中心に、ワーク2におけるレーザ光70の照射位置から輻射熱に伴って発光された光が常に入射される。そして、第1カメラ45は、ワーク2におけるレーザ光70の照射位置を中心として常に同じ領域を撮像するように構成される。
第1カメラ45による撮像により得られた画像は、第1カメラ45を構成する撮像素子の各画素に入射された第1の波長λ1の光の強度が、画素毎に光電変換により電気信号に変換されたものである。第1カメラ45は、レーザ溶接装置1によるレーザ溶接が行われている間、その撮像を所定時間(例えば1秒)間隔毎に行い、撮像された画像データをコンピュータ50へ出力する。つまり、第1カメラ45は、レーザ溶接中のワーク2の状態をリアルタイムに撮像し、ワーク2において輻射熱に伴って発光された光のうち第1の波長λ1の光の強度を、コンピュータ50に設けられた後述の温度分布画像取得手段51へ出力する。
一方、ビームスプリッタ41にて分割された他方の光は、反射ミラー42にて反射され、第2バンドパスフィルタ44を介して、第2カメラ46へ入射される。第2バンドパスフィルタ44、第2カメラ用レンズ48及び第2カメラ46の構成は、第1バンドパスフィルタ43、第1カメラ用レンズ47及び第1カメラ45と同様のものである。
ただし、第2バンドパスフィルタ44は、通過する光の波長が第1バンドパスフィルタ43と異なっており、第2の波長λ2の光を通過させる。この第2バンドパスフィルタ44を通過した第2の波長λ2の光(像)が、第2カメラ用レンズ48によって、第2カメラ46の撮像素子(図示せず)に結像される。そして、第2カメラ46は、第1カメラ45の撮像タイミングと同期しながら、第1カメラ45で撮像される領域と同じ領域のレーザ溶接中のワーク2の状態をリアルタイムに撮像する。
この第2カメラ46にて撮像された画像は、ワーク2において輻射熱に伴って発光された光のうち第2の波長λ2の光の強度が、画素毎に光電変換により電気信号に変換されたものである。第2カメラ46にて撮像された画像データも、第1カメラ45と同様に温度分布画像取得手段51へ出力される。
なお、第1カメラ45及び第2カメラ46により撮像される領域の中心に、ワーク2におけるレーザ光70の照射位置から輻射熱に伴って発光された光が常に入射される必要は必ずしもなく、レーザ光70の照射位置が第1カメラ45及び第2カメラ46により撮像される領域の任意の位置に固定されていればよい。
ただし、レーザ光70の照射位置が、第1カメラ45及び第2カメラ46により撮像される領域の中心とすることで、レーザ光70の照射位置を第1カメラ45及び第2カメラ46による撮像される領域内の位置に固定しやすくなる。特に、ガルバノスキャナ30を駆動してワーク2に対するレーザ光70の照射位置を変更する場合は、撮像素子の中心をレーザ光70と同軸に配置することで、レーザ光70の照射位置を第1カメラ45及び第2カメラ46による撮像される領域内の位置に固定することが、極めて容易となる。
第3カメラ61及び第4カメラ62は、それぞれ異なる位置に設置され、各々の位置でワーク2の形状を撮像するカメラである。第3カメラ61及び第4カメラ62は、ワーク2の溶接前に同時にワーク2を撮像し、その撮像によって得られた画像データを、後述するコンピュータ50の形状画像取得手段52へと出力する。
なお、第3カメラ61及び第4カメラ62に代えて、又は、これらに加えて、レーザ測定器を設け、そのレーザ測定器によってワーク2の形状を取得して、取得した形状情報を、後述するコンピュータ50の形状画像取得手段52へと出力するようにしてもよい。レーザ測定装置は、ワーク2にレーザ光を照射し、ワーク2からのレーザ光の反射光を受光して、反射位置との距離を測定することによってワーク2の形状を測定するものである。
コンピュータ50は、主に処理装置と、記憶装置とにより構成され、記憶装置に記憶されたプログラムに基づいて処理装置が処理を実行することにより、各種機能を実現する。レーザ溶接制御システム40において、コンピュータ50は、各種機能として、少なくとも温度分布画像取得手段51、形状画像取得手段52、制御手段53としての機能を実現している。
温度分布画像取得手段51は、本発明の状態観察部の一例であり、ワーク2の状態を観察することを目的として、第1カメラ45及び第2カメラ46による撮像が行われる毎に、その撮像により得られた画像に基づいて、ワーク2の温度分布を示す温度分布画像を取得する。
温度分布画像取得手段51は、黒体が放出する熱輻射、即ち、黒体輻射の温度特性を利用する。ここで、図5を参照しながら、温度分布画像取得手段51による温度分布画像の取得方法について説明する。図5は、黒体輻射強度の波長及び温度依存性を示した図である。図5は、縦軸を黒体輻射の強度、横軸を黒体から輻射される光の波長とし、黒体の温度1000K、2000K、2500K、3000K毎に、黒体から放出される波長の光に対して、その波長の光の黒体輻射強度が示してある。
図5に示す通り、異なる波長である第1の波長λ1と、第2の波長λ2それぞれの光の強度の比は、黒体の温度によって異なる。即ち、第1の波長λ1と第2の波長λ2それぞれの光の強度の比によって温度が一意に決まり、第1の波長λ1と第2の波長λ2それぞれの光の強度の比と温度との関係は、次の数1によって表すことができる。ここで、Tは温度、hはプランク定数、cは光速、kはボルツマン定数、I1は第1の波長λ1の光の強度、I2は第2の波長λ2の光の強度である。
Figure 2024002820000002
温度分布画像取得手段51は、ワーク2からの輻射熱に伴って発光された光のうち、第1カメラ45による撮像により得られた波長λ1の光の強度I1を示した画像データと、第2カメラ46による撮像により得られた波長λ2の光の強度I2を示した画像データとを用いて、数1に基づき各々の画素における温度Tを求めることで、ワーク2の温度分布を示した温度分布画像を取得する。温度分布画像取得手段51にて取得された温度分布画像は、制御手段53に入力される。
このように、ワーク2からの輻射熱に伴って発光された光のうち、2つの波長λ1、λ2の光を使用してワーク2の温度分布画像が取得されるので、温度分布画像により示されるワーク2上の温度の信頼性を高めることができる。
図1に戻り説明を続ける。形状画像取得手段52は、本発明の状態観察部の別例であり、ワーク2の状態を観察することを目的として、ワーク2の三次元的な形状を示す画像を取得する。形状画像取得手段52には、溶接前にワーク2の形状を各々設置された位置にて撮像した第3カメラ61及び第4カメラ62の画像データが入力される。そして、形状画像取得手段52は、入力されたそれぞれの画像データから、その画像データを撮像したカメラ位置に基づいてワーク2の三次元的な形状を算出し、溶接前のワーク2の形状画像として取得する。取得した溶接前のワーク2の形状画像は、制御手段53に入力される。
なお、第3カメラ61及び第4カメラ62に代えて、レーザ測定装置が設けられている場合は、形状画像取得手段52は、そのレーザ測定装置から出力される形状情報に基づいて、ワーク2の三次元的な形状を特定し、制御手段53へと出力してもよい。また、第3カメラ61及び第4カメラ62に加えて、レーザ測定装置が設けられている場合は、形状画像取得手段52は、第3カメラ61及び第4カメラ62から出力される画像データのそれぞれと、レーザ測定装置から出力される形状情報とに基づいて、ワーク2の三次元的な形状を特定し、制御手段53へと出力してもよい。
制御手段53は、ワーク2の溶接を制御する。特に、制御手段53は、図6に示すレーザ溶接制御処理を示すフローチャートに従って処理装置が動作することにより、状態観察部による観察に基づいて、レーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dが時間的に変化し得るように制御する。
状態観察部による観察は、温度分布画像取得手段51により取得された溶接中におけるワーク2の温度分布画像や、形状画像取得手段52により取得された溶接前のワーク2の形状画像に基づいて、ワーク2の状態を判断することである。
また、制御手段53は、設定したレーザ光70の走査パターンに基づいて、主ビーム移動手段21の駆動、ガルバノスキャナ30の駆動、レーザ加工ヘッド20の位置及び/又は台座3の位置を制御する。制御手段53は、設定した主ビーム71の径Bに基づいて、第2レンズ23の位置を制御する。制御手段53は、設定した副ビーム72の径C及び幅Eに基づいて、アキシコンレンズ25の位置を制御する。制御手段53は、設定した主ビーム71の第1強度Aに基づいて、第1レーザ光発振器11の出力強度を制御し、決定した副ビーム72の第2強度Dに基づいて、第2レーザ光発振器12の出力強度を制御する。
制御手段53は、これらの制御を状態観察部による観察に基づいて複合的に行うことで、ワーク2の状態に応じたレーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dとなるように、制御を行うことができる。
ここで、図6は、コンピュータの処理装置により実行されるレーザ溶接制御処理を示すフローチャートである。このレーザ溶接制御処理では、図6に示す通り、まず、予め使用者によるティーチング等によって設定されたデータに基づいて、ワーク2を溶接するための条件として、レーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dの初期値を設定する(S10)。
この初期値は、後述するレーザ溶接前又はレーザ溶接中のワーク2の状態に基づく調整を除いて、原則、溶接中は固定される条件として設定されるものであってもよいし、溶接の時間経過とともに変化する条件として設定されるものであってもよい。
ここで、本実施形態では、S10の処理及びこの後のS12及びS15の処理において、ワーク2の溶接が所望の速度及び所望の品質で行われるように、レーザ光70を構成する主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dが設定される。
例えば、レーザ溶接の高速化や深いワーク2の溶融が求められる場合は、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dともにワーク2にキーホールを発生させる程度の強度に設定される。また、レーザ溶接におけるスパッタの発生の抑制が強く求められる場合は、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dともに熱伝導によるワーク2の溶融が可能な強度に設定される。
そのほか、レーザ溶接に求められる速度や品質に応じて、主ビーム71の第1強度Aがキーホールを発生させる強度に設定され、副ビーム72の第2強度Dが熱伝導による溶融が可能な強度に設定されたり、逆に、主ビーム71の第1強度Aが熱伝導による溶融が可能な強度に設定され、副ビーム72の第2強度Dがキーホールを発生させる強度に設定されたりすることも可能である。また、主ビーム71の第1強度Aがキーホールの発生又は熱伝導による溶融が可能な強度に設定され、副ビーム72の第2強度Dは、主ビーム71による溶融を補助するためにワーク2を加熱する程度の強度に設定されてもよい。
次いで、レーザ溶接制御処理では、ワーク2の状態として溶接前のワーク2の形状を観察する(S11)。具体的には、溶接開始前に第3カメラ61及び第4カメラ62にてそれぞれの位置から撮像されたワーク2の画像データに基づき形状画像取得手段52によって取得されたワーク2の三次元的な形状画像から、レーザ溶接前のワーク2の形状を具体的に判断する。
図7は、レーザ溶接前に観察したワーク2の形状の判断内容の一例を示した図である。図7では、ワーク2として突き合わされた2枚の板材を上面及び側面から観察したところを示している。
S11の処理では、例えば、溶接前のワーク2の形状として、「GAP(隙間)」、「水平ずれ」、「位置ずれ」、「大きさ相違」、「段差」を判断する。「GAP(隙間)」は、図7(a)に示す通り、突き合わせたはずの2枚の板材が許容範囲を超えて離れてGAP(隙間)が存在した状態である。「水平ずれ」は、図7(b)に示す通り、突き合わされた2枚の板材の位置関係が許容範囲を超えて水平方向にずれた状態である。
「位置ずれ」は、図7(c)に示す通り、突き合わされた2枚の板材が本来あるべき位置から許容範囲を超えてずれた位置に存在する状態である。「大きさ相違」は、図7(d)に示す通り、突き合わされた2枚の板材のうち少なくとも一方の大きさが、本来の大きさよりも許容範囲を超えて異なっている状態である。「段差」は、突き合わせた2枚の板材の高さが許容範囲を超えてずれて段差ができている状態である。
図6に戻り説明を続ける。S11の処理にて、レーザ溶接前のワーク2の状態を判断すると、次いで、その判断に基づいて、S10にて設定した初期値に対し、現実のワーク2の状態に適したレーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dとなるように変更する(S12)。
このように、レーザ溶接前のワーク2の現実の状態に応じて、レーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dを変更することで、ワーク2の状態に適した条件で、安定した品質のレーザ溶接を行うことができる。
ここで、本実施形態のレーザ溶接装置1では、レーザ光70の走査パターンとして次のパターン(1)~(5)が用意されている。
(1)ワーク2に対するレーザ光70の照射位置を、ワーク2における溶接を行う線(例えば、ワーク2として突き合わされた2枚の板材の突き合わせ線。以下「溶接線」と称する。)上に沿って直線状に移動させるパターン。
(2)ワーク2に対するレーザ光70の照射位置を、ジグザグ状(鋸歯状及び/又は二等辺三角形状)に動かしながら溶接線上に沿って移動させるパターン。
(3)ワーク2に対するレーザ光70の照射位置を、円弧状に動かしながら溶接線上に沿って移動させるパターン。
(4)レーザ光70内において、主ビーム71のワーク2への照射位置を環状(円状)に移動(回転)させながら、ワーク2に対するレーザ光70の照射位置を溶接線上に沿って移動させるパターン。
(5)レーザ光70内において、主ビーム71のワーク2への照射位置を環状(円状)に移動(回転)させつつ、ワーク2に対するレーザ光70の照射位置を円弧状に動かしながら溶接線上に沿って移動させるパターン(パターン(3)とパターン(4)とを組み合わせたパターン)。
本実施形態において特徴的なのは、走査パターンとして、パターン(4)及び(5)を含む点である。ここで、図8を参照して、パターン(4)及び(5)の詳細について説明する。
図8は、レーザ光70内において、主ビーム71のワーク2への照射位置を環状(円状)に移動(回転)させつつ、ワーク2に対するレーザ光70の照射位置を円弧状に動かしながら溶接線上に沿って移動させる走査パターンを模式的に示した模式図である。なお、図8では、ワーク2として2つの板材2a,2bを突き合わせ線2cにて突き合わせているが、突き合わせ線2cにおいてGAP(隙間)が生じている状態(図7(a)参照)を示している。
主ビーム71は、主ビーム移動手段21が制御手段53によって駆動制御されることにより、図8に示すように、レーザ光70の中央部を中心としてリング状に形成された副ビーム72の中で環状(円状)に移動(回転)している。主ビーム71を環状に移動させつつ、台座3及び/又はレーザ加工ヘッド20を制御手段53が駆動制御することにより、ワーク2に対するレーザ光70の照射位置を突き合わせ線2c上、即ち、溶接線上に沿って移動させると、パターン(4)の走査が行われる。パターン(4)の走査を行うことによって、主ビーム71の照射範囲が広がる。これにより、同じ照射範囲に対して主ビーム71を一度に照射する場合と比して、強度の強い主ビーム71の入熱時間を短くできる。よって、例えば、深いキーホールを保ちつつスパッタの発生を抑制できるなど、安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。
また、図8に示すように、主ビーム71をレーザ光70の中央部を中心としてリング状に形成された副ビーム72の中で環状(円状)に移動(回転)させつつ、副ビーム72を含むレーザ光70全体を円弧状に動かしながら、突き合わせ線2c上、即ち、溶接線上に沿って移動させると、パターン(5)の走査が行われる。ここで、レーザ光70の円弧状の移動は、制御手段53がガルバノスキャナ30を駆動制御することで実現され、レーザ光70の溶接線上の移動は、制御手段が台座3及び/又はレーザ加工ヘッド20を駆動制御することで実現される。
パターン(5)の走査を行うことによって、ワーク2の溶接線上に対して、強度の強いレーザ光70を広い範囲に照射できる。これにより、同じ範囲に対してレーザ光70を直線状に照射する場合よりも、強度の強いレーザ光を短時間で照射できる。よって、レーザ光の入熱時間を短くできるので、例えば、深いキーホールを保ちつつスパッタの発生を抑制できるなど、安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。特に、GAP(隙間)を生じている場合など、現実のワーク2の状態に応じて走査パターンをパターン(5)に切り替えることによって、ワーク2の状態が理想と異なっていたとしても安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。
図6に戻り説明を続ける。S12の処理の後、ワーク2にレーザ光70をレーザ加工ヘッド20より照射し、その照射位置の走査を開始することで、ワーク2の溶接を開始する(S13)。そして、レーザ溶接中は、ワーク2の温度状況をリアルタイムに観察する(S14)。
具体的には、第1カメラ45及び第2カメラ46を駆動して、ワーク2上において輻射熱に伴って発光された光のうち第1の波長λ1の光の強度を示した画像と、第2の波長λ2の光の強度を示した画像とを撮像し、これらの画像に基づいて温度分布画像取得手段51より、レーザ溶接中のワーク2の温度分布画像を取得する。そして、S14の処理では、その温度分布画像から、レーザ溶接中である現在のワーク2の状態を判断する。
S14の処理によって、現在のワーク2の状態を判断すると、現在のワーク2の状態に適したレーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dとなるように、リアルタイムに変更する(S15)。
ここで、図9及び図10を参照して、S14の処理による、溶接中に観察したワーク2の温度分布画像に基づくワーク2の状態の判断と、S15の処理による、その判断に基づく制御の内容の例について説明する。まず、図9(a)は、溶接中のワーク2の状態に基づいて主ビーム及び副ビームのビームサイズを変更する方法の一例を示した図であり、図9(b)は、図9(a)の変更をするために溶接中に観察したワーク2の温度分布画像に基づくワーク2の状態の判断の一例を示した図である。なお、図9(b)において、グラフ中の実線が図9(a)に基づく制御を行った場合のワーク2の温度の時間変化を示しており、破線がレーザ光70(主ビーム71及び副ビーム72)のビームサイズを図9(a)に示す「中」に固定した場合のワーク2の温度の時間変化を示してある。
図9(a)及び(b)に示す例では、速度重視にてレーザ溶接が行われるように、主ビーム及び副ビームのビームサイズが変更される。即ち、S14の処理において、ワーク2の温度分布画像のうち最も温度の高い地点(以下「最高地点」と称する。)を判断し、その最高地点における温度(以下「最高温度」と称する。)を判断する。
具体的には、最高温度が所定温度よりも低い場合は、ワーク2が固体状態(1)にあると判断する。最高温度がワーク2の融点より低いものの前記所定温度以上の場合は、ワーク2が溶融状態の一歩手前の固体状態(2)にあると判断する。また、最高温度がワーク2の融点以上の場合は、ワーク2がレーザ光70の照射位置付近において溶融状態(3)にあると判断する。
そして、S15の制御として、S14の処理により、ワーク2の状態が固体状態(1)にあると判断される間は、主ビーム71のビームサイズである径Bと、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅Eとを縮小状態で維持する制御を行う。また、S14の処理により、ワーク2の状態が溶融状態の一歩手前の固体状態(2)にあると判断される間は、主ビーム71のビームサイズである径Bと、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅Eとを徐々に拡大する制御を行う。そして、S14の処理により、ワーク2の状態が溶融状態(3)にあると判断される間は、主ビーム71のビームサイズである径Bと、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅Eとを中程度に維持する制御を行う。
このように、ワーク2へレーザ光70を照射開始し始めた段階であって、ワーク2の状態が固体状態(1)にある場合は、主ビーム71のビームサイズ及び副ビーム72のビームサイズを小さくすることで、これらのビームサイズを照射開始から中程度に固定する場合と比してレーザ光70のエネルギー密度を高めることができ、ワーク2を素早く溶融できる。
一方、ワーク2の状態が溶融状態の一歩手前の固体状態(2)に移行すると、主ビーム71のビームサイズ及び副ビーム72のビームサイズを徐々に拡大し、レーザ光70の照射位置付近におけるワーク2の状態が溶融状態(3)となった段階で主ビーム71のビームサイズ及び副ビーム72のビームサイズを中程度に維持することで、レーザ光70からのエネルギー密度が減り、スパッタの発生を抑制できるので、品質のよいレーザ溶接を実現できる。
図10(a)は、溶接中のワーク2の状態に基づいて主ビーム及び副ビームのビームサイズを変更する方法の別例を示した図であり、図10(b)は、図10(a)の変更をするために溶接中に観察したワーク2の温度分布画像に基づくワーク2の状態の判断の一例を示した図である。なお、図10(b)においても、図9(b)と同様に、グラフ中の実線が図10(a)に基づく制御を行った場合のワーク2の温度の時間変化を示しており、破線がレーザ光70(主ビーム71及び副ビーム72)のビームサイズを図9(a)に示す「中」に固定した場合のワーク2の温度の時間変化を示してある。
図10(a)及び(b)に示す例では、品質重視にてレーザ溶接が行われるように、主ビーム及び副ビームのビームサイズが変更される。S14の処理において、ワーク2の温度分布画像のうち最も温度の高い地点(以下「最高地点」と称する。)を判断し、その最高地点における温度(以下「最高温度」と称する。)を判断する点においては、図9の例と同じである。また、最高温度が所定温度よりも低い場合は、ワーク2が固体状態(1)にあると判断し、最高温度がワーク2の融点より低いものの前記所定温度以上の場合は、ワーク2が溶融状態の一歩手前の固体状態(2)にあると判断し、最高温度がワーク2の融点以上の場合は、ワーク2がレーザ光70の照射位置付近において溶融状態(3)にあると判断する点においても、図9の例と同じである。なお、図9の例と図10の例とにおいて、閾値としての所定温度は任意の値であってよく、異なる値であっても同じ値であってもよい。
そして、図10(a)及び(b)に示す例では、S15の制御として、S14の処理により、ワーク2の状態が固体状態(1)にあると判断される間は、主ビーム71のビームサイズである径Bと、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅Eとを拡大状態で維持する制御を行う。また、S14の処理により、ワーク2の状態が溶融状態の一歩手前の固体状態(2)にあると判断される間は、主ビーム71のビームサイズである径Bと、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅Eとを徐々に縮小する制御を行う。そして、S14の処理により、ワーク2の状態が溶融状態(3)にあると判断される間は、主ビーム71のビームサイズである径Bと、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅Eとを中程度に維持する制御を行う。
このように、ワーク2へレーザ光70を照射開始し始めた段階であって、ワーク2の状態が固体状態(1)にある場合は、主ビーム71のビームサイズ及び副ビーム72のビームサイズを大きくすることで、レーザ光70のエネルギー密度を抑えつつ、レーザ光70の溶融をゆっくり安定して行うことができるので、スパッタの発生を抑制できる。
一方、レーザ光70の照射位置におけるワーク2の状態が溶融状態の一歩手前の固体状態(2)に移行すると、主ビーム71のビームサイズ及び副ビーム72のビームサイズを徐々に縮小し、レーザ光70の照射位置付近におけるワーク2の状態が溶融状態(3)となった段階で主ビーム71のビームサイズ及び副ビーム72のビームサイズを中程度に維持することで、ワーク2の溶融を安定して行えることができるので、品質の高いレーザ溶接を実現できる。
なお、上記の主ビーム71及び副ビーム72のビームサイズの制御は例であり、それ以外の制御方法も当然に考えられる。例えば、レーザ溶接開始後、ワーク2が固体状態にあるときは、熱伝導による溶融に寄せて、ワーク2の溶融に至るまでスパッタの発生を抑制しながら熱を加えることを目的にビームサイズを大きくし、ワーク2の溶融直前及び/又は直後は、キーホールによる溶融に寄せて、ワーク2の深くまで熱を加えることを目的にビームサイズを絞り、ワーク2が深くまで溶融してからは、スパッタの発生を押させることを目的として、再びビームサイズを大きくしてエネルギー密度を下げるように制御することも可能である。
また、本実施形態では、レーザ溶接中のワーク2の状態をワーク2の温度分布に基づいて行ったが、これに代えて、又は、これに加えて、ワーク2から輻射熱に伴って発光される光のエネルギー(強度)を観察することによって、ワーク2の状態を判断してもよい。即ち、ワーク2が固体状態にある場合は、輻射熱に伴いワーク2から発光される光のエネルギーは、弱いながらも温度の上昇とともに上昇する。そして、ワーク2の溶融が始まり、固体と液体の混在状態に遷移すると、輻射熱に伴いワーク2から発光される光のエネルギーがあまり変化せずほぼ一定に推移する。その後、ワーク2が溶融して液体状態に遷移すると、輻射熱に伴いワーク2から発光される光のエネルギーが再び上昇する。このように、輻射熱に伴ってワーク2から発光される光のエネルギーの変化から、レーザ溶接中のワーク2の状態を判断することができる。
また、ワーク2から放出される光のエネルギーが所定閾値以上である範囲を特定し、その範囲の広さに基づいてレーザ溶接中のワーク2の状態を判断してもよい。即ち、ワーク2から放出される光のエネルギーが所定閾値以上である範囲がゼロである場合は、ワーク2が固体状態にあると判断し、ワーク2から放出される光のエネルギーが所定閾値以上である範囲が所定の広さ以下である場合は、ワーク2が固体と液体の混在状態にあると判断し、ワーク2から放出される光のエネルギーが所定閾値以上である範囲が所定の広さより大きい場合は、ワーク2が液体状態にあると判断することもできる。
このように、S14及びS15の処理では、溶接中のワーク2の状態をリアルタイムで判断し、その時々のワーク2に適した形で、レーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビームの第2強度Dの少なくともいずれかが設定されるので、安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。なお、図9(a)及び図10(a)を参照して説明した、ワーク2の状態に応じて主ビーム71及び副ビーム72のビームサイズを制御するS15の処理が、本発明のビームサイズ制御手段に相当する。
図6に戻り、S15の処理の後、レーザ溶接制御処理を終了する。
以上説明した本実施形態に係るレーザ溶接装置1によれば、次の作用効果を奏する。
(a)ワーク2の状態が温度分布画像取得手段51や形状画像取得手段52といった状態観察部によって観察される。そして、制御手段53の制御によって、レーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dが、状態観察部による観察に基づいて時間的に変化され得る。これにより、レーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dが、その時々のワーク2の状態に適した条件に設定できる。また、レーザ光70が照射された位置でのワーク2の温度上昇を、ワーク2の表面及び深さ方向で3次元的に制御することができるので、ワーク2の溶融を安定して行うことができ、また、スパッタの発生を抑制できる。よって、安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。
(b)主ビーム71がレーザ光70の中心部に生成され、副ビーム72が主ビーム71の周辺部に生成される。これにより、ワーク2に対して照射されるレーザ光70の中心部に形成された主ビーム71によってワーク2を溶融しつつ、周辺部に形成された副ビーム72によって主ビーム71によるワーク2の溶融の状態を安定させることができる。そして、これら主ビーム71及び副ビーム72の条件をワーク2の状態に応じて時間的に変化させることで、より安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。
(c)第1強度Aの主ビーム71と第2強度Dの副ビーム72との少なくともいずれかによって、レーザ光70が照射されたワーク2にキーホールが形成され得るように、第1強度A及び第2強度Dが設定されてもよい。これにより、ワーク2の溶融が早く行われて溶接が完了できるので、溶接の高速化を図りつつ、主ビーム71及び副ビーム72の条件をワーク2の状態に応じて時間的に変化させることで、より安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。
(d)第1強度Aの主ビーム71と第2強度Dの副ビーム72とのいずれによっても、レーザ光70が照射されたワーク2にキーホールが形成され得るように、第1強度A及び第2強度Dが設定されてもよい。これにより、ワーク2の溶融が即座に行われて溶接が完了できるので、溶接の高速化を図りつつ、主ビーム71及び副ビーム72の条件をワーク2の状態に応じて時間的に変化させることで、より安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。
(e)複数のレーザ光発振器のうち、第1レーザ光発振器11から出力されるレーザ光を用いて主ビーム71が生成され、第2レーザ光発振器12から出力されるレーザ光を用いて副ビーム72が生成される。これにより、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dとして、いずれも高い強度まで容易に生成でき、高速化と安定した品質とを両立した溶接を行うことができる。
(f)第1レーザ光発振器11と第2レーザ光発振器12とを用いて、主ビーム71の波長及び副ビーム72の波長を異ならせることで、波長に対するワーク2の熱吸収率の違いを利用して、ワーク2にキーホールを安定して形成し易くできる。よって、より安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。
(g)主ビーム移動手段21によって、レーザ光70内において、主ビーム71のワーク2への照射位置が環状に移動する。これにより、主ビーム71の照射範囲を広げることができる一方、同じ範囲を一度に照射する場合と比して主ビーム71の入熱時間を短くできる。よって、スパッタの発生を抑制でき、より安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。
(h)ワーク2に対するレーザ光70の照射位置を、ガルバノスキャナ30によって円弧状に動かしながら、レーザ加工ヘッド20及び台座3の相対的な移動を用いることによってワーク2の溶接線上に沿わせるように、走査が行われる。これにより、同じ範囲に対してレーザ光70を直線状に照射する場合よりも、強度の強いレーザ光70を短時間で照射できる。よって、レーザ光70の入熱時間を短くできるので、スパッタの発生を抑制できる。よって、より安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。
(i)制御手段53の制御によって、主ビーム71の径B及び副ビームの径C及び幅Eが、レーザ光70の照射開始後、ワーク2の状態に応じて縮小又は拡大される。これにより、例えば、主ビーム71の径B及び副ビームの径C及び幅Eを、レーザ光70の照射開始時に小さくしておき、ワーク2が溶融状態となる前に拡大することで、照射開始時はレーザ光70のエネルギー密度を高くできるので、照射開始時におけるワーク2の溶融が素早く行われることになる。よって、溶接の高速化を図ることができる。また、主ビーム71の径B及び副ビームの径C及び幅Eを、レーザ光の照射開始時に大きくしておき、ワーク2が溶融状態となる前に縮小することで、照射開始時におけるレーザ光70のエネルギー密度を低く抑えつつ、ワーク2の溶融をゆっくり安定して行うことができ、品質の向上を図ることができる。従って、レーザ溶接の性能を高めることができる。
(j)主ビーム71の径Bは、制御手段53が第2レンズ23に設けられた駆動モータを駆動制御してその位置を移動させ、第1レンズ22と第2レンズ23との距離を変更することで、高速に拡大又は縮小される。また、副ビームの径C及び幅Eは、制御手段53がアキシコンレンズ25に設けられた駆動モータを駆動制御してその位置を移動させ、アキシコンレンズ25と第3レンズ27との距離を変更することで、高速に拡大又は縮小される。よって、ワーク2の溶接途中であっても、主ビーム71及び副ビーム72のビームサイズを高速に変化させて、ワーク2に照射されるレーザ光70のエネルギー密度を調整できるので、ワーク2の溶融状態を細やか制御でき、よりスパッタの抑制が容易となる。
(k)制御手段53によって、レーザ溶接前のワーク2の状態に基づいて、レーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dが変化され得る。これにより、レーザ溶接前のワーク2の状態から、そのワーク2に適した形で、レーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dが設定されるので、安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。
(l)制御手段53によって、レーザ溶接中のワーク2の状態に基づいて、レーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dが変化され得る。これにより、レーザ溶接中におけるワーク2の状態の変化にあわせて、レーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dが設定されるので、安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。以下、その改良変形について説明するが、各々の改良変形は適宜組み合わせて行うことが可能である。
上記実施形態では、レーザ光70が、レーザ光70の中央部に形成されたガウシアンビーム状の主ビーム71、主ビーム71の周囲部に形成されたリングビーム状の副ビーム72によって構成される場合について説明したが、主ビーム71と副ビーム72とによって構成されるマルチビームであれば、レーザ光70の構成は任意のものであってよい。
例えば、主ビーム71は、必ずしもレーザ光70の中央部になくてもよく、また、その位置が時間的に移動するものであってもよい。また、主ビーム71は、その形状(プロファイル)がトップハットビーム状やその他任意の形状であってもよい。主ビーム71の形状がガウシアンビーム状でない場合であっても、主ビーム71のビームサイズや強度が、ワーク2の状態に基づいて変更可能に構成されてよい。
また、副ビーム72は、必ずしも主ビーム71の周囲部になくてもよく、例えば、レーザ光70の走査方向に対して、主ビーム71よりも前方及び/又は後方に副ビーム72が形成されてもよい。また、副ビーム72の位置が時間的に移動するものであってもよい。また、副ビーム72は、その形状(プロファイル)が必ずしもリングビーム状である必要はなく、直線状、ドット状と任意のものであってよい。また、副ビーム72の強度分布は、ガウシアン分布のほかトップハット分布など任意のものであってよい。そして、副ビーム72の形状が強度分布がどのようなものであっても、ビームサイズや強度がワーク2の状態に基づいて変更可能に構成されてよい。
また、主ビーム71の第1強度Aは副ビーム72の第2強度Dよりも強い強度であることが一般的であるが、必ずしもそれに限られるものではなく、ワーク2の状態に応じて、主ビーム71の第1強度Aと副ビーム72の第2強度Dとの関係が逆転、つまり、副ビーム72の方が強い強度を持つことが許容されてもよい。
また、レーザ光70は、常に主ビーム71と副ビーム72とによって構成される必要はなく、ワーク2の状態に応じて主ビーム71のみによって構成される場合があってもよいし、副ビーム72のみによって構成される場合があってよい。なお、レーザ光70を主ビーム71のみによって構成する場合は、副ビーム72の第2強度D、径C及び幅Eの少なくともいずれかをゼロに設定することで実現してもよい。また、レーザ光70を副ビーム72のみによって構成する場合は、主ビーム71の第1強度A及び径Bの少なくとも一方をゼロに設定することで実現してもよい。
上記実施形態では、状態観察部による観察として、レーザ溶接前はワーク2の形状を判断し、レーザ溶接中はワーク2の温度分布画像からワーク2の状態を判断する場合について説明したが、ワーク2の状態を観察するものであれば、その観察方法はどのようなものであってもよい。例えば、レーザ溶接中においても、ワーク2を第3カメラ61及び第4カメラ62を使用して撮像し、その三次元的な形状画像から、現在のワーク2の状態を判断するものであってもよい。また、複数の観察方法を組み合わせてワーク2の状態を観察してもよい。
上記実施形態では、制御手段53が、状態観察部によって観察の結果に基づいて、その結果に適したレーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dをフィードバック制御する場合について説明したが、これを人工知能(AI)を用いて行ってもよい。
例えば、機械学習部を設け、その機械学習部に対し、温度分布画像取得手段51により取得される温度分布画像及び/又は形状画像取得手段52により取得される形状画像に基づいて、その温度分布画像及び/又は形状画像に適したレーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dを判定する関係を更新させてもよい。そして、その機械学習部に対し、レーザ溶接前又はレーザ溶接中に温度分布画像取得手段51により取得された温度分布画像及び/又は形状画像取得手段52により取得された形状画像を入力することで、その時々に適したレーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dを、機械学習部にて判定させてもよい。これにより、その時々のワーク2の状態に適したレーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dを設定できるので、より品質のよいレーザ溶接を行うことができる。
また、機械学習部に対し、温度分布画像取得手段51により取得される温度分布画像及び/又は形状画像取得手段52により取得される形状画像に基づいて、その温度分布画像及び/又は形状画像から判断されるワーク2の状態を判定する関係を更新させてもよい。そして、その機械学習部に対し、レーザ溶接前又はレーザ溶接中に温度分布画像取得手段51により取得された温度分布画像及び/又は形状画像取得手段52により取得された形状画像を入力することで、その時々におけるワーク2の状態を判定させ、その判定されたワーク2の状態に基づいて、制御手段53にて、そのワーク2の状態に適したレーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dを設定するようにしてもよい。これにより、ワーク2の状態の判定をより精度よく行うことが可能となり、その時々のワーク2の状態により適したレーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dを設定できるので、より品質のよいレーザ溶接を行うことができる。
上記実施形態では、温度分布画像取得手段51において、ワーク2からの輻射熱に伴って発光された光のうち、第1カメラ45による撮像により得られた波長λ1の光の強度I1を示した画像データと、第2カメラ46による撮像により得られた波長λ2の光の強度I2を示した画像データとを用いて、ワーク2の温度分布画像を取得する場合について説明した。これに対し、温度分布画像取得手段51は、ワーク2からの輻射熱に伴って発光された光のうち、第1カメラ45による撮像により得られた波長λ1の光の強度I1を示した画像データのみを用いて、ワーク2の温度分布画像を取得してもよい。
図6に示す通り、例えば波長λ1の光は、黒体の温度に応じて黒体輻射強度が一意に決定される。黒体輻射における光の波長λと温度Tと強度Iとの関係として、プランクの放射式が知られているが、hc>>λkTの条件が成り立つ場合、次の数2に示すウィーンの近似式で表すことができる。ここで、εは放射率、hはプランク定数、cは光速、kはボルツマン定数である。
Figure 2024002820000003
温度分布画像取得手段51は、このウィーンの近似式に基づき、第1カメラ45による撮像により得られた波長λ1の光の強度I1を示した画像データのみを用いて、その画像データを構成する各画素の強度I(波長λ1の光の強度)から、各々の画素における温度Tを求めることで、ワーク2の温度分布を示した温度分布画像を取得することができる。
このように、ワーク2からの輻射熱に伴って発光された光のうち、第1カメラ45による撮像により得られた波長λ1の光の強度I1を示した画像データのみを用いて、ワーク2の温度分布画像を取得することで、第2バンドパスフィルタ44や第2カメラ46等が不要となるため、コストを抑えつつ、ワーク2の温度分布画像を取得できる。
上記実施形態では、レーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dを、ワーク2の状態に基づいて時間的に変化させる場合について説明したが、レーザ光70の走査パターン、主ビーム71のビームサイズである径B、副ビーム72のビームサイズである径C及び幅E、主ビーム71の第1強度A及び副ビーム72の第2強度Dのいずれかを、ワーク2の状態に基づいて時間的に変化させてもよい。また、レーザ光70を構成する主ビーム71及び/又は副ビーム72の形状(プロファイル)として、異なる複数の形状に対応したレーザ加工ヘッド20を用いる場合は、主ビームの形状及び副ビームの形状の少なくともいずれかを、ワーク2の状態に基づいて時間的に変化させてもよい。少なくともこれらのうちいずれか1つをワーク2の状態に基づいて時間的に変化させることで、ワーク2の状態に適した条件で、品質のよいレーザ溶接を実現することが可能となる。
上記実施形態では、レーザ光70の走査パターンを変化させる場合について説明したが、制御手段53は、レーザ光70そのものの走査パターンに代えて、又は、レーザ光70そのものの走査パターンに加えて、主ビーム71の走査パターンと副ビーム72の走査パターンとの少なくともいずれかを、ワーク2の状態に基づいて変化させてもよい。例えば、主ビーム71の走査パターンとして、レーザ光70の中心部を維持したままレーザ光70と共に移動するパターンと、レーザ光70内を環状に移動しながらレーザ光70と共に移動するパターンとを、ワーク2の状態に基づいて変化させるようにしてもよい。これにより、ワーク2の状態に適した形で、主ビームの走査パターンと、副ビームの走査パターンとの少なくともいずれかが設定されるので、安定した品質でレーザ溶接を行うことができる。
上記実施形態では、主ビーム71のビームサイズと、副ビーム72のビームサイズとを時間的に変化させ得る場合について説明したが、いずれか一方のビームサイズを時間的に変化させ得るものであってもよい。また、上記実施形態では、副ビーム72のビームサイズとして径C及び幅Eを時間的に変化させ得る場合について説明したが、径C及び幅Eのいずれか一方を時間的に変化させ得るものであってもよい。また、上記実施形態では、主ビーム71のビームサイズを変化させるタイミングと、副ビーム72のビームサイズを変化させるタイミングとを揃える場合について説明したが、これらのタイミングは必ずしも一致させる必要はなく、タイミングを異ならせてもよい。例えば、ワーク2の材料に基づいて、主ビームのビームサイズを縮小又は拡大するタイミングと、副ビームのビームサイズを縮小又は拡大するタイミングとが異なるように制御してもよい。これにより、ワーク2の材料に応じて、最適なタイミングで、主ビームのビームサイズの縮小又は拡大と、副ビームのビームサイズの縮小又は拡大が行われるので、より品質の高いレーザ溶接を行うことができる。
上記実施形態では、ワーク2の状態をリアルタイムに観察し、その状態に応じて主ビーム71のビームサイズと、副ビーム72のビームサイズとを時間的に変化させ得る場合について説明したが、主ビーム71のビームサイズ及び/又は副ビーム72のビームサイズの時間的な変化のパターンを予めコンピュータ50に複数記憶させておき、レーザ溶接開始前やレーザ溶接中のある時点でのワーク2の状態に応じて、複数のパターンの中から1のパターンを選択して、主ビーム71のビームサイズ及び/又は副ビーム72のビームサイズを時間的に変化させるものであってもよい。
上記実施形態では、レーザ光70として波長の異なる主ビーム71と副ビーム72とによって構成される場合について説明したが、同じ波長の主ビーム71と副ビーム72とによってレーザ光70が構成されてもよい。
上記実施形態では、2つのレーザ光発振器11,12を用い、それぞれのレーザ光から主ビーム71及び副ビーム72を生成する場合について説明した。これに対し、3つ以上のレーザ光発振器を用いて主ビーム71及び副ビーム72を生成してもよい。例えば、2以上のレーザ光発振器によって発振されたレーザ光を合成して、主ビーム71を生成してもよいし、別の2以上のレーザ光発振器によって発振されたレーザ光を合成して、副ビーム72を生成してもよい。複数のレーザ光発振器から発振されたレーザ光を合成して、主ビーム71及び/又は副ビーム72を生成することによって、その生成された主ビーム71の第1強度A及び/又は副ビーム72の第2強度Dの最大強度を高く設定できる。よって、ワーク2に適した主ビーム71の第1強度A及び/又は副ビーム72の第2強度Dの設定範囲を広範囲にできるので、高速化と高品質化との両立を図りやすくできる。
また、波長の異なるレーザ光が発振される3以上のレーザ光発振器を設け、主ビーム71を生成するために用いるレーザ光発振器及び/又は副ビーム72を生成するために用いるレーザ光発振器を、ワーク2の材料や状態に応じて切り替えるように構成してもよい。これにより、ワーク2の材料や状態に応じて、主ビーム71及び/又は副ビーム72の波長を切り替えることができるので、より品質のよいレーザ溶接を行うことができる。
一方、レーザ光発振器を1つだけ設け、その1つのレーザ光発振器から主ビーム71及び副ビーム72を生成してもよい。この場合、1つのレーザ光発振器にて発振され、伝送路によってレーザ加工ヘッド20へと伝送されたレーザ光は、レーザ加工ヘッド20の中で分割手段(例えば、ビームスプリッタ)により2つに分割され、一方のレーザ光を主ビーム生成手段へ入射して主ビーム71を生成し、他方のレーザ光を副ビーム生成手段へ入射して副ビーム72を生成してもよい。これにより、レーザ光発振器を1つ用意するだけで主ビーム及び副ビームを生成できるので、コストを抑制しつつ、安定した品質のレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
1 レーザ溶接装置
2 ワーク(溶接対象物)
11 第1レーザ光発振器
12 第2レーザ光発振器
21 主ビーム移動手段(主ビーム生成手段の一部)
22 第1レンズ(主ビーム生成手段の一部)
23 第2レンズ(主ビーム生成手段の一部)
25 アキシコンレンズ(副ビーム生成手段の一部)
27 第3レンズ(副ビーム生成手段の一部)
30 ガルバノスキャナ(走査手段の一部)
53 制御手段
70 レーザ光
71 主ビーム
72 副ビーム

Claims (14)

  1. レーザ光を溶接対象物に向けて照射し、前記レーザ光の前記溶接対象物に対する照射位置を走査しながら前記溶接対象物を溶融して溶接を行うレーザ溶接装置であって、
    前記レーザ光を構成するものであって第1強度を有する主ビームを生成する主ビーム生成手段と、
    前記レーザ光を構成するものであって第2強度を有する副ビームを生成する副ビーム生成手段と、
    前記レーザ光の走査パターン、前記主ビームの形状、前記副ビームの形状、前記主ビームのビームサイズ、前記副ビームのビームサイズ、前記主ビームの前記第1強度及び前記副ビームの前記第2強度の少なくともいずれかを、前記溶接対象物の状態に基づいて時間的に変化し得るように制御する制御手段と、を備えることを特徴とするレーザ溶接装置。
  2. 前記主ビーム生成手段は、前記レーザ光の中心部に前記主ビームを生成し、
    前記副ビーム生成手段は、前記主ビームの周囲部に前記副ビームを生成することを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
  3. 前記主ビーム生成手段及び前記副ビーム生成手段は、前記主ビーム及び前記副ビームの少なくともいずれかによって前記溶接対象物にキーホールを形成可能な前記第1強度の主ビーム及び前記第2強度の副ビームを生成し得ることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
  4. 前記主ビーム生成手段及び前記副ビーム生成手段は、前記主ビーム及び前記副ビームのいずれによっても前記溶接対象物にキーホールを形成可能な前記第1強度の主ビーム及び前記第2強度の副ビームを生成し得ることを特徴とする請求項3記載のレーザ溶接装置。
  5. 前記制御手段は、前記レーザ光の走査パターンとして、前記主ビームの走査パターンと、前記副ビームの走査パターンとの少なくともいずれかを、前記溶接対象物の状態に基づいて時間的に変化し得るように制御するものであることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
  6. レーザ光を発振する複数のレーザ光発振器を備え、
    前記主ビーム生成手段は、少なくとも一部のレーザ光発振器から出力されるレーザ光を用いて前記主ビームを生成し、
    前記副ビーム生成手段は、少なくとも前記主ビーム生成手段にて用いられたレーザ光発振器とは別のレーザ光発振器から出力されるレーザ光を用いて前記副ビームを生成することを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
  7. 前記主ビームと前記副ビームとは異なる波長を用いることを特徴とする請求項6記載のレーザ溶接装置。
  8. レーザ光を発振する1つのレーザ光発振器と、
    そのレーザ光発振器により発振された前記レーザ光を分割して、前記主ビーム生成手段及び前記副ビーム生成手段のそれぞれに入力する分割手段と、を備えることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
  9. 前記主ビーム生成手段は、前記レーザ光内において、前記主ビームの前記溶接対象物への照射位置を環状に移動させる主ビーム移動手段を備えることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
  10. 前記溶接対象物に対する前記レーザ光の照射位置を、円弧状に動かしながら前記溶接対象物の溶接を行う線上に沿って走査する走査手段を備えることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
  11. 前記制御手段は、前記主ビームのビームサイズ及び前記副ビームのビームサイズの少なくとも一方を、前記レーザ光の照射中に前記溶接対象物の温度及び/又は溶融状態に基づいて変化させる制御を行うビームサイズ制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
  12. 前記ビームサイズ制御手段は、前記溶接対象物の材料に基づいて、前記主ビームのビームサイズを縮小又は拡大するタイミングと、前記副ビームのビームサイズを縮小又は拡大するタイミングとを異ならせるものであることを特徴とする請求項11記載のレーザ溶接装置。
  13. 前記制御手段は、レーザ溶接前の前記溶接対象物の状態に基づいて、前記レーザ光の走査パターン、前記主ビームの形状、前記副ビームの形状、前記主ビームのビームサイズ、前記副ビームのビームサイズ、前記主ビームの前記第1強度及び前記副ビームの前記第2強度の少なくともいずれかを変化し得るように制御することを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
  14. 前記制御手段は、レーザ溶接中の前記溶接対象物の状態に基づいて、前記レーザ光の走査パターン、前記主ビームの形状、前記副ビームの形状、前記主ビームのビームサイズ、前記副ビームのビームサイズ、前記主ビームの前記第1強度及び前記副ビームの前記第2強度の少なくともいずれかを変化し得るように制御することを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載のレーザ溶接装置。
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