JP2024000810A - 中性子及びガンマ線コリメータ、ラジオグラフィ装置 - Google Patents

中性子及びガンマ線コリメータ、ラジオグラフィ装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ラジオグラフィ用の熱中性子並びにγ線を同時あるいはどちらかを選択的に照射視野に導くことのできる中性子及びガンマ線コリメータを提供する。【解決手段】中性子用ダイヤフラムと、ガンマ線用ダイヤフラムと、前記中性子用ダイヤフラム及び前記ガンマ線用ダイヤフラムを固定するダイヤフラム固定板と、前記ダイヤフラム固定板と一体化され、中性子遮蔽体と当該中性子遮蔽体の内側に内張されたガンマ線遮蔽体とを有する飛行管と有し、前記中性子用ダイヤフラム、及び、前記飛行管の前記中性子遮蔽体にガドリニウム化合物を用い、前記飛行管の前記ガンマ線遮蔽体にビスマス化合物を用いることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、中性子及びガンマ線コリメータ、ラジオグラフィ装置に関する。
従来から、原子炉あるいは加速器、ラジオアイソトープ線源から発生する放射線で、特に中性子やγ線、X線、あるいはこれらの放射線が物質と反応して反射や散乱する二次的な放射線を遮蔽して線束をコリメートするコリメータが使用されている。
放射線は、X線、γ線、中性子線などビーム状に取り出して工業分野や医療分野で利用されている。この放射線源は、自発的に発生する線源や原子炉のように核反応によって発生する中性子やγ線、X線(以下、発生のメカニズムによるX線とγ線の違いはあるが、線質として共通するため代表してγ線として記す)は等方に360度球体として放出される。
照射場所にビーム状として用いるためには、発生した放射線を切り出して減速材や反射材、ダイヤフラム、導管(飛行管)などを経て導く必要がある。RI(ラジオアイソトープ)線源や原子炉で、特に線源ボリュウームの大きい場合には、ダイヤフラムが、光に対するカメラの絞りと同様に放射線を切り出す絞りとして用いられる。
線源周りからの散乱線の回り込みや、ダイヤフラムで切り出した放射線が反射して照射場所に到達するのを防ぐために飛行管(主に線源からの散乱や反射の放射線成分を照射場所で防ぐことを目的としたもの)を設置する場合がある。これらダイヤフラムも飛行管も基本的な材料として放射線を遮蔽する性能が重要となる。これらダイヤフラムと飛行管をまとめてコリメータと称する。
ダイヤフラムの開口径:Dとダイヤフラムからビームが照射される場所までの飛行管の距離:Lの関係からL/Dの値が、線束のコリメータの性能指標として用いられている。このL/Dの値が大きいほどコリメータの性能が高く、ラジオグラフィとしてイメージング用に用いる場合には画質の解像度に大きく影響する。L/Dの値が大きいほど解像度が良くなるが、同じ距離Lの場合にはDの値が小さくなる(絞られる)ため、ダイヤフラムを透過する放射線の量が少なくなり、同じ感度の撮像システムでは照射時間や撮影時間が長くなる。
ダイヤフラムと飛行管の材質は、放射線を遮蔽するものでなければならないが、放射線の種類やエネルギーによって材質や形状を最適化する必要がある。例えば可視光のカメラの場合、ダイヤフラムに相当する絞りは、薄く遮光できる材質となっている。当然、材質が透明であると絞りとしての役目をなさない。半透明や多少でも光を通す材質でも同様に絞りとしての機能を満たさない。また、光に対して遮光できていても絞り部分の厚さが厚い場合には、絞りの内壁部分で光が反射・散乱するため、絞りの性能が悪くなってしまう。従って、絞りとしては、薄くて遮光性能の高い材質が適している。ダイヤフラムの場合も同様である。これら中性子イメージング用ビームの生成については、非特許文献1に詳しく記載されている。
γ線の場合、光と同じような性質を示すが、絞りの材質は、原子番号Zの4乗に比例して透過量が変わり、密度が低いと透過しやすくなる。従って、鉛(Pb、Z=82、密度=11.34g/cm)やタングステン(W、Z=74、密度=19.25g/cm)のように原子番号Zが大きく密度(比重)の大きい材質が適している。但し、これら鉛やタングステンは、中性子に対して遮蔽材とならないため、光に対する透明な材質と同様になってしまう。
中性子の場合には、エネルギーに依存するが、熱中性子領域の0.025eVでは、ガドリニウム(Gd、Z=64、密度=7.90g/cm)が天然元素の中で一番遮蔽効果が高い(反応断面積が大きい)。Gdは、原子番号Zが鉛よりも小さいが、他の中性子遮蔽効果の高いホウ素(B、Z=5、密度=2.08g/cm)やリチウム(Li、Z=3、密度=0.534g/cm)と比べて原子番号Zが大きく、密度も高いため、ホウ素やリチウムよりもγ線の遮蔽効果は高くなる。従って、熱中性子とγ線を同時に遮蔽する材料としては、ホウ素やリチウム、鉛やタングステンと比べてガドリニウムは優れている。
ガドリニウムは、天然にGd-152,154,155,156,157,158,160の同位体が存在し、熱中性子とは天然存在割合24.84%のGd-158が反応し、γ線を放出する(n,γ)反応を起こす。この反応により内部転換電子と生成されるGd-159(半減期18.479時間)からのβ線(主に970.6keV:放出割合62%、912.6keV:26%、607.09keV:12%、622.42keV:0.31%)とγ線(主に363.55keV:11.4%、58keV:2.15%、348.16keV:0.234%、226.01keV:0.215%)が放出される。
ガドリニウムを中性子ラジオグラフィで撮像系として用いる場合には、ガドリニウムをコンバータとしてフィルムなどと密着させて、中性子照射中に発生する内部転換電子で撮像している。撮像時間がリアルタイムや短時間撮影では、撮像時間に比べて半減期の長いGd-159からのβ線やγ線の生成量は少なく影響は少ない。しかし、ダイヤフラムや飛行管のコリメータとして使用する場合には、長時間の照射で生成核種Gd-159の影響を受ける。
中性子及びガンマ線コリメータの利用としては、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)が医療分野で用いられている。近年、BNCTの中性子源は、原子炉から加速器を用いる方法が開発され、発生する高速中性子を熱外領域まで減速して用いられている。
BNCTは、ホウ素化合物を患者に投与して、がん細胞に集積したところに中性子を照射し、ホウ素の同位体B-10が中性子と反応してα線を放出する(n,α)反応によるα線でがん細胞を死滅させる方法である。組織の深部に到達できる程度の高いエネルギーが必要で治療に用いられる中性子線は、熱外中性子領域のエネルギー強度が高く、高速中性子領域、熱中性子領域のエネルギー強度が低いことが要求されている。照射の治療を短時間で効率良く効果的に行う観点と正常細胞の損傷を避ける観点や被曝の低減の観点から患者の患部に適切に照射できるよう遮蔽材やコリメータの工夫がなされている(特許文献1参照。)。
このコリメータの特徴は、ラジオグラフィ用のコリメータの考え方と異なる。コリメータの基本となる放射線を遮蔽する隔壁に貫通孔を設けている点は同じであるが、ラジオグラフィのように散乱線をできるだけ除去するのと異なり、貫通孔を通過する中性子を集束させて照射視野を整形する構造になっている。特に熱外中性子をできるだけ取り出して照射することを目的としている。従って、コリメータの設計は利用する中性子のエネルギーによって最適化が必要となる。
BNCT用の中性子減速照射装置及び延長コリメータの材料には、減速材にフッ化マグネシウム、反射材に鉛、黒鉛、鉄、ベリリウム、ビスマス、ニッケル等、吸収材にホウ素-ポリエチレン、フッ化リチウム-ポリエチレン、炭化ホウ素等、コリメータに反射材と同じ材料が用いられている。但し、このコリメータも熱外中性子のエネルギーはできるだけ取り出すように考えられているが、熱中性子領域のエネルギーやγ線についてはできるだけ遮蔽されることが望まれている。
特開2018-161449号公報
連載講座「中性子イメージング技術の基礎と応用(基礎編第6回)小林久夫著RADIOISOTOPES,56,573‐583(2007)」
中性子及びガンマ線コリメータの基本は、照射したい視野以外の場所は放射線を遮蔽する構造であること、照射する中性子やγ線のエネルギーに応じてそれ以外のエネルギー成分をできるだけ少なくするように遮蔽できていることである。
コリメータの使用目的によってはその構造は大きく変わる。ラジオグラフィのようにイメージング用ではカメラの絞りと散乱線が入らないようなフードや筒の構造となり、BNCT用では、レンズにより集光させるように散乱線も含めて中性子を集束させる構造となる。
共に照射視野で使用したい中性子エネルギーやγ線エネルギー以外(BNCT用では照射視野でのγ線も極力遮蔽する)を遮蔽するコリメータ構造になっていることである。また、できるだけ材料を複雑に組み合わせずに薄くあるいは小さくコンパクトに遮蔽できる構造であることが求められる。
しかしながら、中性子源を扱う場合、中性子のエネルギーによってコリメータ材質と反応してγ線やβ線など種々のエネルギーの放射線が発生する。特に熱中性子との反応割合(反応断面積)が一番大きい天然に存在する元素がガドリニウム(Gd)であるが、中性子と反応してγ線を放出する(n,γ)反応を起こし、γ線と内部転換電子が放出される。照射視野にこれらのγ線や電子線、β線が影響する機器を用いる場合にはこれらを排除しなければならない課題がある。
本発明の目的は、ラジオグラフィ用の熱中性子並びにγ線を同時あるいはどちらかを選択的に照射視野に導くことのできる中性子及びガンマ線コリメータ、ラジオグラフィ装置を提供することにある。
本発明の一態様は、中性子用ダイヤフラムと、ガンマ線用ダイヤフラムと、前記中性子用ダイヤフラム及び前記ガンマ線用ダイヤフラムを固定するダイヤフラム固定板と、前記ダイヤフラム固定板と一体化され、中性子遮蔽体と当該中性子遮蔽体の内側に内張されたガンマ線遮蔽体とを有する飛行管とを有し、前記中性子用ダイヤフラム、及び、前記飛行管の前記中性子遮蔽体にガドリニウム化合物を用い、前記飛行管の前記ガンマ線遮蔽体にビスマス化合物を用いることを特徴とする。
本発明の実施形態によれば、ラジオグラフィ用の熱中性子並びにγ線を同時あるいはどちらかを選択的に照射視野に導くことのできる中性子及びガンマ線コリメータ、ラジオグラフィ装置を提供することができる。
実施形態に係る中性子及びガンマ線コリメータの構成を模式的に示す図であり、(a)は側面図、(b)は背面図、(c)は正面図。 図1の中性子及びガンマ線コリメータの要部構成を拡大して示す図であり、(a)は中性子用ダイヤフラム、(b)はガンマ線用ダイヤフラムの構成を模式的に示す図。 図1の中性子及びガンマ線コリメータの要部断面構成を拡大して示す図。 図1の中性子及びガンマ線コリメータの中性子源設置構成を模式的に示す図。 遮蔽材1cm厚さでのγ線透過割合の計算結果を示すグラフ。 実効エネルギー100keVのγ線に対する遮蔽体の厚さと透過割合の計算結果を示すグラフ。 ステップウェッジの厚さに対する熱中性子透過割合の試験結果を示すグラフ。
以下、実施形態に係る中性子及びガンマ線コリメータ、ラジオグラフィ装置について、図面を参照して説明する。
本実施形態は、原子炉あるいは加速器、ラジオアイソトープ線源から発生する放射線で特に中性子やγ線、X線、あるいはこれらの放射線が物質と反応して反射や散乱する二次的な放射線を遮蔽して線束を揃えて取り出す中性子及びガンマ線コリメータ、及びこれを用いたラジオグラフィ装置に関する。
本実施形態の中性子及びガンマ線コリメータが適用される施設としては、例えば、中性子の発生を伴う施設として原子炉や加速器施設、RI中性子源施設があり、医療分野でもBNCT(中性子補足療法)施設などがある。これらの施設では、非破壊検査や医療照射による治療のために放射線を取出して利用している。特に取出して照射する場所(視野)以外、周りは十分に遮蔽されている必要がある。
この照射したい場所に放射線を導き取出して使用するのに中性子及びガンマ線コリメータが使用される。コリメータは使用目的に応じて設計が異なる。医療照射のように患者の患部に中性子を集中させて照射する場合には、発生源の中性子をできるだけ反射させながら集めてコリメータ出口の開口部に集めるようにしている。
一方、非破壊検査のイメージング用には、光のカメラと同様に絞りと遮蔽筒(遮蔽箱)に相当するダイヤフラムと飛行管が、放射線を切り出すように絞り、外部からの放射線を遮蔽し、絞られた放射線が飛行管内面で散乱しないように工夫したコリメータとなっている。本実施形態は、特に後者の非破壊検査のイメージングに向けた中性子及びガンマ線コリメータについて説明する。
コリメータのダイヤフラムにしても飛行管にしても基本は、コリメートしたい放射線の種類に応じて遮蔽できる素材で構成されていること(光の場合には遮光できることに相当)と、内面はこれら放射線で反射や散乱しないことが重要である。
X線やγ線は、照射対象の物質の原子番号Zに依存してZが大きいほど、また、照射対象の物質の密度が高いほど透過しにくいという特性を有する。X線やγ線の場合、密度が同程度であれば、原子番号Zの近い元素では透過率(遮蔽効果)がほぼ同じとなる。またX線は、原子のK殻やL殻などの電子殻の軌道に応じて吸収端の異なるエネルギーで透過量が異なるが、同位体での区別はない。更にX線やγ線のエネルギーが高いほど透過率が高くなる(遮蔽効率が悪くなる)。
一方、中性子と物質の相互作用の態様は、一般に原子番号に直接的に依存せず、原子の同位体に応じて変化する。そのため、同じ元素であっても、同位体の違いによって、中性子のエネルギーによって、反応や吸収の割合が変化し、中性子線の透過率(遮蔽効果)の割合が異なる。この反応割合は、中性子と物質の相互作用を表す指標として中性子断面積(単位バーン(b):1b=10-24cm)が用いられる。中性子断面積に原子数密度ρを乗算したものは、巨視的断面積Σ(cm-1)と呼ばれ、X線の線減弱係数に対応する。
中性子の散乱には、干渉性散乱と非干渉性散乱の大きく二つの特性がある。多くの元素では、干渉性散乱が支配的とされている。干渉性断面積の大きな元素は回折による散乱が主となり、中性子エネルギーの違いでブラッグ(Bragg)エッジが現れる。非干渉性散乱は、原子運動との散乱であり、中性子のエネルギーに等価な中性子速度Vに反比例して断面積が増えていく。これは「1/V法則」といわれ、例えば、ホウ素の同位体B-10やリチウムの同位体Li-6などの元素では1/V法則に対応し、エネルギーが高く(速度Vが早く)なると反応しにくくなり遮蔽の効率は悪くなる。これらの散乱断面積に加えて、元素同位体によって異なる中性子エネルギー領域で現れる共鳴捕獲による吸収断面積がある。
一般に、中性子源から出力される中性子線には、様々なエネルギーの中性子が含まれ、1MeVよりも小さいエネルギーでは1/V法則や共鳴吸収などレゾナンス領域での反応(主に中性子と反応してγ線が放出される反応以下この反応を(n,γ)反応と記す)となるが、1MeV以上ではこれらの反応とは異なる閾値反応(1個の中性子と反応して2個の中性子を放出する(n,2n)反応や中性子と反応してプロトンが放出する(n,p)反応、中性子と反応してα線が放出される(n,α)反応など)が起こる。特にγ線との反応と異なり、中性子との反応ではホウ素がリチウムになったり、硫黄がリンになったり元素が変わってしまうことや、元々は放射性物質でなかった元素が放射性物質になってしまうことがある。放射性物質になり放射線を出す割合が壊変に伴い半分になるまでの時間指標を半減期で表示する。半減期がミリ秒単位やナノ秒単位であれば、ほぼ瞬間に放射性物質ではなくなるために特に問題とならないが、高線量で照射されて半減期の長い物質となると、遮蔽体自体が長期にわたり放射線放出源となってしまい、遮蔽体としての役割を満足しない。
中性子遮蔽材料として用いられているホウ酸(B)や炭化ホウ素(BC)の中性子反応体はホウ素である。天然のホウ素にはB-10(天然存在比19.9%:10B記載と同じ)とB-11(天然存在比80.1%:11B記載と同じ)の同位体が存在する。中性子エネルギーとの反応割合(断面積:Cross Section単位barns)を示す核データJENDL-4.0は日本原子力研究開発機構の各データ研究グループ(https://wwwndc.jaea.go.jp/jendl/j40/J40_J.html♯Reports)から確認できる。[引用文献:K.Shibata,O.Iwamoto,T.Nakagawa,N.Iwamoto,A.Ichihara,S.Kunieda,S.Chiba,K.Furutaka,N.Otuka,T.Ohsawa,T.Murata,H.Matsunobu,A.Zukeran,S.Kamada,and J.Katakura:゛JENDL-4.0:A New Library for Nuclear Science and Engineering,″J.Nucl.Sci.Technol.48(1),1-30 (2011)]
熱中性子領域でB-10とB-11では、約6桁B-10の断面積が大きい。但し、1MeVを超えるエネルギーの高い領域では、B-10もB-11もほぼ同じ反応断面積となる。B-10の反応は、中性子と反応してα線を放出してLi-7となる。より正確には10B(n,α)7*Li反応と記載され、7*Liは(n,α)反応による初期反跳エネルギー840keVを付与され、そして0.105psという短寿命で運動しながら478keVの即発γ線を放出して基底状態のLi-7になる。従って、放射線の遮蔽という観点から天然の鉱物等を用いる場合、その中に存在するホウ素の原子数、そして中性子と反応割合の高いB-10の同位体割合と中性子エネルギーに依存した断面積、これらの積で決まる。また、中性子のエネルギーが高いと断面積が小さくなることから高エネルギーの中性子を水素や炭素といった減速材で中性子との衝突回数でエネルギーを下げて効率よく反応させることが重要となる。更に478keVの即発γ線を出すことから、このγ線に対しても遮蔽を考えなければならない。ホウ素を含む化合物の密度は約2.5g/cmと鉄と比べても約1/3程度であり、原子番号ZもZ=5と小さい。X線やγ線との相互作用で重要な質量減弱係数μ/ρ(μ:線吸収係数、ρ:物質の密度)は一般的にZの3~4乗に比例すると言われる。従って、ホウ素を含む化合物のγ線に対する遮蔽効果は低い。
本実施形態では、熱中性子に対する反応断面積が元素の中で一番大きいガドリニウム(Gd)に着目し、原子番号Z=64であることからγ線に対する遮蔽効果も高くなる点に着目している。ガドリニウムは希土類元素のレアアースで希少金属である。天然に存在する同位体は、Gd-154(2.18%)、Gd-155(14.80%)、Gd-156(20.47%)、Gd-157(15.65%)、Gd-158(24.84%)、Gd-160(21.86%)の6種類(括弧内の%は天然存在割合)である。特にGd-157とGd-155は中性子のエネルギー0.0253eVの熱中性子領域でB-10と比べてGd-157で66倍、Gd-155で15.8倍断面積が大きい。100eVから1keV付近のエネルギーでは他のGd同位体含めて複数の共鳴吸収ピークを持ち、B-10よりも断面積が大きくなる。
ガドリニウムの主な反応はホウ素と異なり中性子と反応してγ線を放出する(n,γ)反応である。ホウ素の場合は(n,α)反応で7*Liが生成され、Li-7になる過程で478keVの即発γ線を出していたが、Gdの場合、154Gd(n,γ)155Gd、155Gd(n,γ)156Gd、156Gd(n,γ)157Gd、157Gd(n,γ)158Gdで生成されるそれぞれGd-155、Gd-156、Gd-157、Gd-158は安定同位体となり、壊変に伴ってβ線やγ線は放出されない。158Gd(n,γ)159Gd反応により生成されるGd-159は、β壊変を伴って安定同位体のTb-159になる。この壊変でβ線のエネルギー970.6keV(62%)、912.6keV(26%)、607.09keV(12%)、622.42keV(0.31%)が放出され、γ線のエネルギー363.55keV(11.4%)、58keV(2.15%)、348.16keV(0.234%)、226.01keV(0.215%)が放出される。特に熱中性子領域で反応断面積が大きいGd-157とGd-155は(n,γ)反応で8MeVの中性子捕獲γ線を放出する。
このγ線の放出モードは(1)連続スペクトル(93.8%)と(2)離散スペクトル(6.2%)の2つに大別される。ほとんどが(1)の連続スペクトルで、不安定な複合核から安定な基底レベルまで8MeVの単一エネルギーではなく高いエネルギーから低いエネルギーにわたって放出割合が多くなるスペクトルとなっている。(2)離散スペクトルは、5.62MeV+2.25MeV(1.3%)、5.88MeV+1.99MeV(1.6%)、6.74MeV+1.11MeV(3.2%)、7.87MeV(0.02%)である。離散スペクトルのエネルギーは高エネルギーとなるがその割合は少ない。
ここで、コリメータにとって放射線の遮蔽技術で重要なことは、放射線の種類に応じてコリメートできる能力が異なる点である。また、使用する検出器の放射線に対する感度である。原子番号Zの大きい物質を透過してしまう高いエネルギーのγ線は、軽元素で構成される薄膜の検出器素子を、遮蔽材同様に透過する。すなわち、保護対象とする物質中での放射線による線エネルギー付与(LET:Linear Energy Transfer放射線が物質中を通過する途中で物質にエネルギーをどれだけ与えるかを表す)が少なければ、透過する物質にエネルギーが与えられることが少なく、検出されない。逆にLETが大きくなるほど、物質に与えられるエネルギーが大きくなり、検出効果が高くなる。
程度にもよるが、このようなコリメータ材質の遮蔽による目的から考えると、高いエネルギーのγ線の場合にはγ線遮蔽材を透過してしまっても、遮蔽の目的が達成できることになる。例えば、1MeVと50keVのγ線は発生時点で単色のエネルギー(厳密にはエネルギーの幅を持つ)であっても、γ線と物質との相互作用から光電効果やコンプトン散乱等によりエネルギーが減衰し、低いエネルギー領域まで広がってしまう。特に低いエネルギー領域では、γ線の遮蔽材料としては、50keVのγ線の方が1MeVのγ線よりもより多く反応して減衰する。そして、数十keV以下のγ線はエネルギーが低いほどセンサーなど機器に対するLETが大きくなり、イメージングのカブリとなり画像の先鋭度が悪くなる。
コリメータの遮蔽材料について1cm厚さでのγ線透過割合を計算で求めた。特に熱中性子の遮蔽材として用いられているフッ化リチウム(LiF)と炭化ホウ素(BC)、γ線の吸収が大きい鉛(Pb)と鉄(Fe)、そして本実施形態で使用している酸硫化ガドリニウム(GdS)(以下、GOSと記す)を比較した。図5のグラフにこの結果を示す。図5のグラフに示されるように、0.5MeV(500keV)以下では、中性子用の遮蔽体であるフッ化リチウムや炭化ホウ素に比べてGOSはおおよそ2倍以上の遮蔽効果になっており、鉛には及ばないものの鉄と比べても遮蔽効果が高いことが示される。
実際にイメージングで用いられるフィルムやイメージングプレートの感度特性を考慮して実効エネルギー100keVの場合について遮蔽体の厚さとγ線透過割合を比較した。その結果を図6のグラフに示す。図6のグラフに示されるように、GOSは鉄と比べても遮蔽効果が高いことがわかる。
次に、熱中性子の透過割合について具体的にGOSを遮蔽体用に樹脂成型したサンプルと、コンクリートサンプルにした厚さの異なるステップウェッジを作成し、同じ形状の鉛(Pb)と鉄を骨材とした重コンクリートのステップウェッジと比較試験を行った。試験は、北海道大学の加速器駆動パルス中性子源「HUNS」の熱中性子照射ポートを利用した。ジスプロシウム箔をコンバータとしてステップウェッジの透過割合で放射化して、その放射化したジスプロシウム箔をイメージングプレート(IP)に転写して得られた画像の輝度データ(PSL値)から透過割合をデジタルで求めた。この転写法はγ線による影響がないため、純粋に熱中性子による透過の状況を求めることができる。
図7のグラフには、ガンマ線の透過と同様にステップウェッジの厚さに対する熱中性子の透過割合を相対的に求めた結果を示す。本来Pbや鉄を骨材とした重コンクリート同様に厚さに対して透過割合は指数関数で図7のように直線的に減衰する。しかし、GOSの場合樹脂でもコンクリートでも5mmの厚さで2/100~3/100に急激に減衰しあとは測定上飽和した傾向になっている。計算上では鉛や重コンクリートと同様に直線的に減衰するが、ガドリニウムの熱中性子吸収断面積が大きいため、測定上IPもベース輝度の影響が出ていると判断される。この結果から重コンクリートと比べて1/50以下の厚さで同じ遮蔽能力となっていることがわかる。γ線の吸収が大きい鉛と比べると約30倍遮蔽能力が高い。この結果から熱中性子を含むコリメータとしての遮蔽材料としてはGOSを用いることがγ線との複合での遮蔽において有効であることがわかる。
しかし、ガドリニウムと熱中性子で懸念される事項がある。158Gd(n,γ)159Gd反応により生成されるGd-159はβ壊変を伴って安定同位体のTb-159になる。この壊変でβ線のエネルギー970.6keV(62%)、912.6keV(26%)、607.09keV(12%)、622.42keV(0.31%)が放出され、γ線のエネルギー363.55keV(11.4%)、58keV(2.15%)、348.16keV(0.234%)、226.01keV(0.215%)が放出される。熱中性子の透過については5mm厚さでも十分遮蔽ができているが、コリメータ内の反射を考えた場合には、β線や検出器の効率が高い低エネルギーのγ線を遮蔽する必要がある。
そこで、中性子との反応で特にγ線を放出しないビスマスに着目してGOS遮蔽材(GOSコンクリートまたはGOS樹脂)の内側(後述する飛行管4の内側)に数mmから数cmの厚さビスマス化合物[例えば酸化ビスマス(Bi)、次没食子酸ビスマス(CBiO)、塩化酸化ビスマス(BiOCl)、次硝酸ビスマス(BiO(OH)(NO)]を内張する。ビスマス(Bi)は天然存在比100%のBi-209同位体で、中性子とは主に(n,γ)反応でBi-210が生成される。半減期は5.013日でγ線は出さず、1.162MeVのβ線を出す。ビスマスの熱中性子断面積は比較的小さいため、内側からの熱中性子は、ビスマス内張材を透過してGOS遮蔽材の表層と反応する。反応して放出されるβ線と低エネルギーのγ線はビスマス材で吸収されコリメータ内側面までは到達することが少なくなり、検出器に対してカブリやノイズといった影響を少なく先鋭度の良い画像を提供できるようになる。
ガドリニウム化合物としては、密度が6.5g/cm以上で水に溶けないセラミック、あるいは焼結体を用いることが好ましい。このようなガドリニウム化合物としては、例えば、密度7.4g/cmの酸化ガドリニウム(Gd)、密度7.09g/cmのガドリニウムガリウムガーネット(GdGa12)、密度7.3g/cmの酸硫化ガドリニウム(GdS)、密度6.7g/cmのケイ酸ガドリニウム(GdSiO)等が挙げられる。更に、これらを母材としてプラセオジム(Pr)やテルビウム(Tb)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)等を賦活剤として混ぜた蛍光体材料を用いることができる。これらのガドリニウム化合物を骨材としてセメントを混ぜてコンクリート遮蔽材、あるいはセメントの代わりに樹脂で成型したもので遮蔽壁として形成される。
前述したように、ガドリニウムは、中性子との(n,γ)反応により内部転換電子と生成されるGd-159からのβ線とγ線が放出される。しかし、熱中性子に対しては数mmで約2桁以上遮蔽され、この数mm内で発生した内部転換電子やβ線も数mmで遮蔽される。更に、ガドリニウム化合物が数cmあれば、γ線もガドリニウム自体で自己遮蔽される。特にコリメータのダイヤフラムの部品構成に適用できる。
コリメータのダイヤフラムについては、熱中性子用のGOS遮蔽材と、γ線用の遮蔽材として、例えば、タングステン、タングステン化合物、タングステン化合物であるヘビアロイ又はビスマス化合物等を使用することができ、これらを組み合わせて用いることができる。特にγ線用は光の絞りと同様にダイヤフラムの厚さが薄い方が良い。厚さが厚くなると穴の内面でγ線が反射して散乱線が多くなる。そのため原子番号Zが大きく密度(比重)の大きい材料の方が良い。また、中性子と反応して発生するγ線も遮蔽できるようにするため、線源側にGOS遮蔽材のダイヤフラムを設置し、出口側にタングステン化合物等のダイヤフラムを設置する構成とすることが好ましい。
以上のように、本実施形態の中性子及びガンマ線コリメータは、中性子用のダイヤフラムに、ガドリニウム化合物、例えばGOS遮蔽材を用い、ガンマ線用のダイヤフラムに例えば、タングステンまたはタングステン化合物、ビスマス化合物等の遮蔽材を用い、飛行管にはGOS遮蔽材の内面にビスマス化合物を内張する構造として熱中性子によるガドリニウムとの反応で生成されるGd-159からのβ線や低エネルギーのγ線を遮蔽してS/Nの良い熱中性子並びにγ線のイメージ画像を提供できる。
以下、図1乃至4を参照して、実施形態に係る中性子及びガンマ線コリメータ、ラジオグラフィ装置の構成について説明する。なお、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下の説明において参照する図面において、各構成部材の大きさや厚みは説明の便宜上のものであり、必ずしも実際の寸法や比率を示すものではない。
図1は、実施形態に係る中性子及びガンマ線コリメータ1の構成を模式的に示す図であり、(a)は側面図、(b)は背面図(図1中側面図を左側から見た図)、(c)は正面図(図1中側面図を右側から見た図)である。中性子及びガンマ線コリメータ1は、ダイヤフラム2と、ダイヤフラム2を固定するためのダイヤフラム固定板3と、ダイヤフラム固定板3と一体的に構成された飛行管4とを具備している。
図2に示すように、ダイヤフラム2は、中性子の絞りとなる中性子用ダイヤフラム21と、γ線の絞りとなるガンマ線用ダイヤフラム22とから構成されている。中性子用ダイヤフラム21の中央部には透孔21aが設けられ、ガンマ線用ダイヤフラム22の中央部には透孔22aが設けられている。透孔22aの口径D4は、透孔21aの口径D5より小径とされている。また、中性子用ダイヤフラム21とガンマ線用ダイヤフラム22は、図3に示すように、ダイヤフラム固定板3側にガンマ線用ダイヤフラム22が位置するように、ダイヤフラム固定板3に取り付けられる。
中性子用ダイヤフラム21及びガンマ線用ダイヤフラム22の大きさは、例えば、同じ大きさとして縦A1、横A2とする。A1とA2とは同じであってもよい。中性子及びガンマ線コリメータ1は設置する中性子源に応じて寸法が異なる。そのため、図では具体的な寸法ではなく縮尺を考慮して記号で寸法を示す。
これらの中性子用ダイヤフラム21及びガンマ線用ダイヤフラム22は、例えば、四隅においてねじ止め等により、ダイヤフラム固定板3に重ねて固定される。ガンマ線用ダイヤフラム22の材質には、γ線に対する遮蔽能力が高い原子番号Zが大きく密度の高い材料(例えば、タングステン、タングステン化合物、タングステン化合物であるヘビアロイ等又は、前述したビスマス化合物)を選択する。γ線のエネルギーにも依存するが、これら高Zで高密度な材料であれば比較的エネルギーの高い領域まで遮蔽ができるため、γ線用としてのダイヤフラムの性能は高くなる。また、厚さt3も薄くすることが可能になる。絞りの径である口径D4は、光の場合と同様に小さいほど解像度が良くなるが、同時にγ線量も少なくなるため、線源の強度や撮影時間を大きく(長く)する必要がある。
本実施形態において、中性子用ダイヤフラム21の材質には、GOS遮蔽材(GOSプレート、GOS樹脂またはGOSコンクリート)を用いている。GOSのガドリニウムは厚さが薄くても熱中性子に対しての遮蔽効果が高い。なお、図3に示すt4が中性子用ダイヤフラム21の厚さである。中熱中性子線の解像度を表す指標は、ダイヤフラムの口径(透孔21aの径)D(図2(b)に示すD5)とコリメータの長さL(図1に示すL1)のL/D=L1/D5で表され、この値が大きいほど解像度が高くなる。
前述したとおり、中性子用ダイヤフラム21の口径D5は、ガンマ線用ダイヤフラム22の口径D4よりも大きく設定する。このように口径D4、口径D5を設定することにより、中性子用ダイヤフラム21のガドリニウムと中性子が反応して発生したγ線を、ガンマ線用ダイヤフラム22で遮蔽することができ、特に検出器、撮像素子で感度の高い低エネルギーγ線の影響を少なくし、S/Nの良いγ線のイメージ画像が得られる。一方、中性子については、ガンマ線用ダイヤフラム22は薄く、断面積が小さいことからガンマ線用ダイヤフラム22での絞りの影響は受けない。
図3に示すように、ダイヤフラム固定板3は、中性子遮蔽板31と、ガンマ線遮蔽板32とを一体構造した構成となっている。ダイヤフラム固定板3は、中性子用ダイヤフラム21と、ガンマ線用ダイヤフラム22を固定するだけでなく、図4に示す中性子源51から出た中性子がモデレータ(減速材)52や中性子源の周りや背面のモデレータ及び遮蔽体53からの熱中性子を、中性子遮蔽板(本実施形態ではGOS遮蔽体製)31(図3に示す厚さt2)で遮蔽し、この中性子遮蔽板31のGOSと中性子が反応して放出されるγ線を、ガンマ線遮蔽板32(図3に示す厚さt1)で遮蔽する。
ガンマ線遮蔽板32を構成するγ線遮蔽体としては、中性子と反応しにくくγ線を放出しないビスマス化合物を好適に使用することができるが、他にもタングステン、タングステン化合物、タングステン化合物であるヘビアロイ(タングステンが主体でニッケル、銅含有の焼結体)等も用いることができる。更にダイヤフラム固定板3は、飛行管4とも一体構造となっておりコリメータを支える構造としている。従って、ダイヤフラム固定板3の寸法は、中性子源に設置するサイズを考慮して、図1(b)に示す高さA3、幅A4を設定する。また、設置する場所の形状によっては円形等の外形としても良い。なお、図1(b)に示すW1は、飛行管4の高さ、W2は、飛行管4の幅を示している。
また、図1に示した飛行管4は四角錐形であるが、飛行管4は円錐形でも構わない。この飛行管4は、図4に示すモデレータ及び遮蔽体53からの中性子とγ線を遮蔽する目的で、図3に示すように、外側には厚さ((D3-D2)/2)の中性子遮蔽体(本実施形態ではGOS遮蔽体)41を設け、内側には厚さ((D2-D1)/2)のガンマ線遮蔽体(本実施形態ではビスマス化合物)42を設けて一体として構成している。内側のガンマ線遮蔽体(ビスマス化合物)42は、外側の中性子遮蔽体(GOS遮蔽体)41が中性子と反応して放出されるγ線をコリメータ内に出さないようにするために設けている。
図4は、中性子及びガンマ線コリメータ1を中性子源に設置したラジオグラフィ装置の概略構成を示す図であり、その中性子源には加速器中性子を想定し模擬的に簡略化して表した図である。気送管54内を電子線あるいは陽子線が通り、中性子源51のターゲットと反応して中性子あるいはγ線、制動X線が放出される。中性子源が原子炉の場合には、気送管54は無く、中性子源は燃料棒となる。また、RI中性子源の場合も原子炉と同様に気送管54は無く、中性子源はRI中性子源となる。図4において中性子及びガンマ線コリメータ1の右側端部には、図示しない撮像対象物が配置される。
図4の中性子及びガンマ線コリメータ1の設置は、コリメータ中心上に中性子源51がある構成である。すなわち、コリメータ出口からコリメータ先端を見た場合に、中性子源51が延長線上にある構成である。この場合、中性子源51からの高エネルギー中性子並びに高エネルギーγ線が中性子及びガンマ線コリメータ1から出る構成となっている。これを防ぎ、低エネルギーの中性子だけを取り出すためには、中性子及びガンマ線コリメータ1全体を図4における中心線よりも上下にずらす、あるいは斜めや垂直に傾けてコリメータ出口から中性子源51が見えないように設置して利用することもできる。すなわち、中性子及びガンマ線コリメータ1から取り出したい中性子やγ線のエネルギーに応じで設置の形態を変えて使用することが可能である。
以上のように、本実施形態の中性子及びガンマ線コリメータによれば、中性子源から放出される中性子線とγ線(制動X線を含む)を線束の揃った状態でかつ散乱線の少ない状態で照射できるようになる。特にγ線だけのコリメータでは問題となっていなかったイメージングに対して熱中性子成分が含まれることで熱中性子と反応して放出されるγ線の影響も極力少なくノイズの少ないγ線イメージングも可能になった。また、同時に熱中性子によるイメージングも散乱線によるノイズ成分が少なく、散乱線によるカブリの少ない鮮明な画像取得を実現でき、非破壊検査での中性子とγ線の同時ラジオグラフィが可能になる。また、熱中性子のみのコリメータまたはγ線のみのコリメータとして選択して使用することもできる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1……中性子及びガンマ線コリメータ、2……ダイヤフラム、3……ダイヤフラム固定板、4……飛行管、21……中性子用ダイヤフラム、21a……透孔、22……ガンマ線用ダイヤフラム、22a……透孔、31……中性子遮蔽板、32……ガンマ線遮蔽板、41……中性子遮蔽体、42……ガンマ線遮蔽体、51……中性子源、52……モデレータ、53……モデレータ及び遮蔽体、54……気送管。

Claims (7)

  1. 中性子用ダイヤフラムと、
    ガンマ線用ダイヤフラムと、
    前記中性子用ダイヤフラム及び前記ガンマ線用ダイヤフラムを固定するダイヤフラム固定板と、
    前記ダイヤフラム固定板と一体化され、中性子遮蔽体と当該中性子遮蔽体の内側に内張されたガンマ線遮蔽体とを有する飛行管と
    を有し、
    前記中性子用ダイヤフラム、及び、前記飛行管の前記中性子遮蔽体にガドリニウム化合物を用い、
    前記飛行管の前記ガンマ線遮蔽体にビスマス化合物を用いる
    ことを特徴とする中性子及びガンマ線コリメータ。
  2. 請求項1記載の中性子及びガンマ線コリメータであって、
    前記ガンマ線用ダイヤフラムに、タングステン又はタングステン化合物又はビスマス化合物を用いる
    ことを特徴とする中性子及びガンマ線コリメータ。
  3. 請求項1又は2に記載の中性子及びガンマ線コリメータであって、
    前記ガドリニウム化合物は、密度が6.5g/cm以上で水に溶けないセラミック、あるいは焼結体であり、
    当該ガドリニウム化合物は、密度7.4g/cmの酸化ガドリニウム(Gd)、密度7.09g/cmのガドリニウムガリウムガーネット(GdGa12)、密度7.3g/cmの酸硫化ガドリニウム(GdS)、密度6.7g/cmのケイ酸ガドリニウム(GdSiO)の何れかを母材として、
    プラセオジム(Pr)、テルビウム(Tb)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)の少なくとも1種を賦活剤として混ぜた蛍光体材料を用いる
    ことを特徴とする中性子及びガンマ線コリメータ。
  4. 請求項1又は2に記載の中性子及びガンマ線コリメータであって、
    前記ビスマス化合物に、酸化ビスマス(Bi)、次没食子酸ビスマス(CBiO)、塩化酸化ビスマス(BiOCl)、次硝酸ビスマス (BiO(OH)(NO)のいずれかを用いる
    ことを特徴とする中性子及びガンマ線コリメータ。
  5. 請求項1又は2に記載の中性子及びガンマ線コリメータであって、
    前記ダイヤフラム固定板が、中性子遮蔽板と、ガンマ線遮蔽板とを具備する
    ことを特徴とする中性子及びガンマ線コリメータ。
  6. 請求項5に記載の中性子及びガンマ線コリメータであって、
    前記中性子遮蔽板に、ガドリニウム化合物を用いる
    ことを特徴とする中性子及びガンマ線コリメータ。
  7. 線源からの中性子及びガンマ線を、撮像対象物に照射して像を得るラジオグラフィ装置であって、請求項1又は2に記載の中性子及びガンマ線コリメータで、前記線源からの中性子及びガンマ線をコリメートすることを特徴とするラジオグラフィ装置。
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