JP2024000009A - 抵抗溶接システム、及び抵抗溶接継手の製造方法 - Google Patents

抵抗溶接システム、及び抵抗溶接継手の製造方法 Download PDF

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誠司 古迫
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賢治 佐橋
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健治 福島
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【課題】適応制御された抵抗溶接における散りの発生を抑制し、最適なナゲット径を有する抵抗溶接継手を製造可能な抵抗溶接システム、及び抵抗溶接継手の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、一対の電極と、電源装置と、予備通電部及び主溶接通電部を有する抵抗溶接制御装置と、を備え、主溶接通電部は、主溶接を、板組において良好な溶接ができる予め求められた単位体積当たりの累積発熱量から、主溶接の通電時間を基に単位体積及び単位時間当たりの累積発熱量を計算し、計算された単位体積及び単位時間当たりの累積発熱量を発生させる電極間抵抗 もしくは電極間電圧、又は溶接電流に調整することによって適応制御し、予備通電部は、予備通電をI1>I2、750×t≦(I1)2×T1≦1550×t、及び10≦T1≦50を満たすように行う。【選択図】図1

Description

本発明は、抵抗溶接システム、及び抵抗溶接継手の製造方法に関する。
抵抗溶接は、鋼板の重ね溶接のために広く用いられている。抵抗溶接とは、被溶接材を通電し、その通電により発生する抵抗発熱を利用して被溶接材を溶接する技術である。重ね合わせた被溶接材を、適正に研磨された電極の先端で挟み、電極先端箇所に加圧力を集中させ電流を流すことにより局部的に加熱し溶接し、その後電極で加圧保持して行う溶接は、抵抗スポット溶接と称される。
この種の溶接を実施するための溶接システムは、被溶接材を挟む一対の電極と、その一対の電極間に溶接電流を流す電源装置と、その電源装置を制御する抵抗溶接制御装置とを備えている。良好な溶接を実現するためにはジュール発熱量が適正値に調整されなければならない。ジュール発熱量が高すぎれば被溶接材から散りが発生して、被溶接材において良好な溶接ができず、低すぎれば十分に加熱されないために溶接不良となる。溶接電流と通電時間を調整することで最適なジュール発熱量が維持されることになる。
ジュール発熱量が過大か過小かを評価するための指標が各種提案されており、一般的には、溶接電流を指標とする。検出された電流が低すぎれば溶接電流を増加させ、高すぎれば溶接電流を減少させる。近年は、被溶接材において良好な溶接ができる単位体積当りの予め求められた累積発熱量を、ジュール発熱量の制御指標として用いられる。単位体積当たりの累積発熱量を基準としてジュール発熱量を適応制御することで、被溶接材の種類や電極先端の磨耗状況によらないで常にバラツキの少ない安定した良好な溶接性が確保できるようになる。
例えば特許文献1には、本溶接工程と、該本溶接工程に先立つテスト溶接工程とを備える抵抗スポット溶接方法が開示されている。テスト溶接工程では、単位体積当たりの瞬時発熱量の変化および単位体積当たりの累積発熱量を、目標値として記憶させる。本溶接工程の第1通電ステップでは、散りが発生しない電流値を選定して定電流制御により溶接を行う。本溶接工程の第2通電ステップ以降において、テスト溶接工程で目標値として記憶させた単位体積当たりの瞬時発熱量の変化曲線を基準として溶接を行う。いずれかの通電ステップにおいて、瞬時発熱量の変化量が基準である変化曲線から外れた場合に、当該通電ステップでの累積発熱量がテスト溶接工程で予め求めた当該通電ステップでの累積発熱量と一致するように溶接電流を制御する適応制御を行う。
特許文献2には、本溶接とテスト溶接とを行う抵抗スポット溶接方法が開示されている。テスト溶接では、金属板同士の重ね合わせ面において0.2~2.0mmの隙間がある状態とし、そのうえで、予備通電および主溶接を定電流制御により行い、また、該予備通電および該主溶接においてそれぞれ最適なナゲットを形成する場合の電極間電圧 もしくは電極間抵抗から算出される、単位体積当たりの瞬時発熱量の変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量を記憶させる。そして本溶接では、予備通電および主溶接をそれぞれ、テスト溶接の予備通電および主溶接で記憶させた単位体積当たりの瞬時発熱量の変化曲線および累積発熱量を基準として溶接を行う。該予備通電または該主溶接において、単位体積当たりの瞬時発熱量の変化量が基準である変化曲線から外れた場合には、該予備通電または該主溶接での単位体積当たりの累積発熱量がそれぞれ、テスト溶接の予備通電または主溶接で予め求めた単位体積当たりの累積発熱量と一致するように溶接電流を制御する。テスト溶接の予備通電の溶接電流をI、テスト溶接の主溶接の溶接電流をIとしたとき、I<Iの関係を満足する。
特許文献3には、本溶接と、該本溶接に先立つテスト溶接とを行う抵抗スポット溶接方法が開示されている。該テスト溶接は2通り以上の溶接条件で行うものとされる。テスト溶接では、溶接条件ごとに、同じ通電パターンで定電流制御による予備通電を行うとともに、該予備通電時における電極間電圧 もしくは電極間抵抗を記憶させる。主溶接では、定電流制御により通電し、最適なナゲットが形成される場合の電極間電圧 もしくは電極間抵抗から算出される、単位体積当たりの瞬時発熱量の変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量を記憶させる。さらに、本溶接では、テスト溶接と同じ通電パターンで定電流制御による予備通電を行い、該予備通電における電極間電圧 もしくは電極間抵抗と、テスト溶接の予備通電にて記憶させた電極間電圧 もしくは電極間抵抗とを溶接条件ごとに比較し、その差が最も小さい溶接条件において記憶させたテスト溶接の主溶接における単位体積当たりの瞬時発熱量の変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量を、本溶接における主溶接の目標値に設定する。ついで、主溶接として、該目標値に従って、溶接電流を制御する適応制御を行う。
特許第5999293号公報 特許第6913062号公報 特許第6471841号公報
単位体積当たりの累積発熱量を基準としてジュール発熱量を適応制御する場合、散りの発生が問題となる。散りとは、重ね抵抗溶接において、被溶接材が局部的に過熱されて溶融飛散する現象又はその金属のことである。散りが発生すると、溶接部の溶込み深さが減少し、溶接部の抵抗が急激に低下する。これにより、溶接部の単位体積当たりの瞬時発熱量が急激に減少する。
散りによって溶接部の抵抗が急減した場合において、単位体積当たりの累積発熱量を基準としたジュール発熱量の適応制御を継続すると、抵抗溶接制御装置は、瞬時発熱量の減少を補うためにジュール発熱量を急激に増加させる。しかし、このような過大な入熱は、板表面の圧痕過多やバリの発生、ブローホール、溶着などの溶接不良が発生する恐れがある。
また、散りは後通電にも悪影響を与える。後通電では、硬化した溶接部に電流を流して、焼戻しなどの熱処理を行う。これにより、溶接部の種々の機械強度特性を改善することができる。しかし、溶接中に散りが発生した場合、散り発生による急激な温度低下により後通電が正常に機能せず、後通電による接合強度の向上が期待できない場合がある。
これらの現象に関して、特許文献1~3においては検討されていない。
この現象を回避するための方法の一つとして、散り発生が検出された時点で適正な単位体積当たりの瞬時発熱量や累積発熱量を利用した適応制御を一旦中止し、良好な溶接が出来る一定な溶接電流を流す定電流制御に切り替えることがある。このような制御ロジックにすれば、散りが発生した場合においても、溶接不良を回避し、且つ良好なナゲットを得ることができる。しかしながら、ジュール発熱量による適応制御の効果を最大限に享受するためには、ジュール発熱量による適応制御を定電流制御に切り替える機会を可能な限り減少させることが好ましい。
以上の事情に鑑みて、本発明は、適応制御された抵抗溶接における散りの発生を抑制し、最適なナゲット径を有し、且つ継手強度が改善された抵抗溶接継手を製造可能な抵抗溶接システム、及び抵抗溶接継手の製造方法を提供する。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明の第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を抵抗スポット溶接する抵抗溶接システムであって、前記板組を挟む一対の電極と、一対の前記電極の間に電流を流す電源装置と、一対の前記電極に予備通電する予備通電部、及び前記予備通電に次いで一対の前記電極において主溶接する主溶接通電部を有し、前記電源装置を溶接電流と通電時間で制御する抵抗溶接制御装置とを備え、前記主溶接通電部は、前記主溶接を、前記板組において良好な溶接ができる予め求められた単位体積当たりの累積発熱量から、前記主溶接の通電時間を基に単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量を計算し、前記計算された単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量を発生させる電極間抵抗 もしくは電極間電圧、又は溶接電流で調整することによって適応制御し、前記予備通電部は、前記予備通電を、式1、式2、及び式3を満たすように行う。
>I…(式1)
750×t≦(I×T≦1550×t…(式2)
10≦T≦50…(式3)
ここで、前記式1、前記式2、及び前記式3において、Iは、前記予備通電において前記板組に流れる予熱電流(kA)であり、Iは、前記主溶接と同一の通電時間で、定電流制御された溶接電流を前記板組に流すことによって前記単位体積当たりの累積発熱量を得る場合における、前記定電流制御された溶接電流(kA)であり、Tは、前記予熱電流が流れる時間である予熱通電時間(msec)であり、tは、前記板組に含まれる前記鋼板の総板厚(mm)である。
(2)上記(1)に記載の抵抗溶接システムでは、好ましくは、前記板組に含まれる前記鋼板が3枚重ねであり、前記鋼板のうち1枚が、板厚0.8mm以下の薄板であり、前記鋼板のうち2枚が、板厚1.0mm以上の厚板であり、前記薄板が、前記板組の表面に配され、前記板組に含まれる前記鋼板の前記総板厚(mm)を、前記板組の前記表面に配された前記鋼板の板厚の最小値で割ることによって算出される総板厚比が3.5以上である。
(3)上記(1)又は(2)に記載の抵抗溶接システムは、好ましくは、式4をさらに満たす。
+0.3×t<Imax<I+0.8×t…(式4)
ここで、前記式4において、Imaxは前記主溶接における前記溶接電流の最大値(kA)である。
(4)上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の抵抗溶接システムは、好ましくは、板隙や分流状況などの外乱を考慮し、式5をさらに満たす。
30/h<K<100/h…(式5)
ここで、前記式5において、Kは、前記主溶接における前記溶接電流の変化率の最大値(kA/sec)であり、hは、前記板組に含まれる前記鋼板の前記総板厚(mm)を、前記板組の表面に配された前記鋼板の板厚の最小値で割ることによって算出される総板厚比である。
(5)上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の抵抗溶接システムでは、好ましくは、前記板組に含まれる前記鋼板のうち1枚以上が、引張強さ980MPa以上の高強度鋼板であり、前記抵抗溶接制御装置が、前記主溶接に次いで一対の前記電極に後通電する後通電部をさらに有し、前記後通電部は、前記後通電を、式6及び式7を満たすように行う。
×0.5≦I≦I×1.2…(式6)
200≦T≦2000…(式7)
ここで、前記式6、及び前記式7において、Iは、前記後通電において前記板組に流れる後熱電流(kA)であり、Tは、前記後熱電流が流れる時間である後熱通電時間(msec)である。
(6)本発明の第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法は、2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を挟む一対の電極に予備通電する工程と、前記予備通電に次いで、一対の前記電極において主溶接する工程と、を備え、前記主溶接を、前記板組において良好な溶接ができる予め求められた単位体積当たりの累積発熱量から、前記主溶接の通電時間を基に単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量を計算し、前記計算された単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量を発生させる電極間抵抗 もしくは電極間電圧、又は溶接電流で調整することによって適応制御し、前記予備通電を、式1、式2、及び式3を満たすように行う。
>I…(式1)
750×t≦(I×T≦1550×t…(式2)
10≦T≦50…(式3)
ここで、前記式1、前記式2、及び前記式3において、Iは、前記予備通電において前記板組に流れる予熱電流(kA)であり、Iは、前記主溶接と同一の通電時間で、定電流制御された溶接を前記板組に行うことによって前記単位体積当たりの累積発熱量を得る場合における、前記定電流制御された溶接電流(kA)であり、Tは、前記予熱電流が流れる時間である予熱通電時間(msec)であり、tは、前記板組に含まれる前記鋼板の総板厚(mm)である。
(7)上記(6)に記載の抵抗溶接継手の製造方法では、好ましくは、前記板組に含まれる前記鋼板が3枚重ねであり、前記鋼板のうち1枚が、板厚0.8mm以下の薄板であり、前記鋼板のうち2枚が、板厚1.0mm以上の厚板であり、前記薄板が、前記板組の表面に配され、前記板組に含まれる前記鋼板の前記総板厚(mm)を、前記板組の前記表面に配された前記鋼板の板厚の最小値で割ることによって算出される総板厚比が3.5以上である。
(8)上記(6)又は(7)に記載の抵抗溶接継手の製造方法は、好ましくは、式4をさらに満たす。
+0.3×t<Imax<I+0.8×t…(式4)
ここで、前記式4において、Imaxは前記主溶接における前記溶接電流の最大値(kA)である。
(9)上記(6)~(8)のいずれか一項に記載の抵抗溶接継手の製造方法は、好ましくは、板隙や分流状況などの外乱を考慮し、式5をさらに満たす。
30/h<K<100/h…(式5)
ここで、前記式5において、Kは、前記主溶接における前記溶接電流の変化率の最大値(kA/sec)であり、hは、前記板組に含まれる前記鋼板の前記総板厚(mm)を、前記板組の表面に配された前記鋼板の板厚の最小値で割ることによって算出される総板厚比である。
(10)上記(6)~(9)のいずれか一項に記載の抵抗溶接継手の製造方法では、好ましくは、前記板組に含まれる前記鋼板のうち1枚以上が、引張強さ980MPa以上の高強度鋼板であり、前記主溶接に次いで一対の前記電極に後通電する工程をさらに有し、前記後通電を、式6、及び式7を満たすように行う。
×0.5≦I≦I×1.2…(式6)
200≦T≦2000…(式7)
ここで、前記式6、及び前記式7において、Iは、前記後通電において前記板組に流れる後熱電流(kA)であり、Tは、前記後熱電流が流れる時間である後熱通電時間(msec)である。
本発明によれば、適応制御された抵抗溶接における散りの発生を抑制し、最適なナゲット径を有する抵抗溶接継手を製造可能な抵抗溶接システム、及び抵抗溶接継手の製造方法を提供することができる。
第一実施形態に係る抵抗溶接システムの一例の概略図である。 電流とナゲット径との関係を示すグラフ(ウェルドローブ)の一例である。 散り発生のメカニズムを説明するための概念図である。 板隙を有する板組における抵抗溶接の概略図である。 予備通電によるコンタミ除去の概念図である。
(1.抵抗溶接システム)
本発明の第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、図1に例示されるように、2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組60を抵抗スポット溶接する抵抗溶接システムであって、板組60を挟む一対の電極51、52と、一対の電極51、52の間に電流を流す電源装置10と、一対の電極51、52に予備通電S1をする予備通電部、及び予備通電S1に次いで一対の電極51、52において主溶接S2をする主溶接通電部を有し、電源装置10を溶接電流と通電時間で制御する抵抗溶接制御装置20と、を備え、主溶接通電部は、主溶接S2を、板組60において良好な溶接ができる予め求められた単位体積当たりの累積発熱量Qから、主溶接S2の通電時間を基に単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qを計算し、計算された単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qを発生させる電極間抵抗 もしくは電極間電圧、又は溶接電流で調整することによって適応制御し、予備通電部は、予備通電S1を、式1、式2、及び式3を満たすように行う。
>I…(式1)
750×t≦(I×T≦1550×t…(式2)
10≦T≦50…(式3)
ここで、式1、式2、及び式3において、Iは、予備通電S1において板組60に流れる予熱電流(kA)であり、Iは、主溶接S2と同一の通電時間で、定電流制御された溶接電流を板組60に流すことによって単位体積当たりの累積発熱量Qを得る場合における、定電流制御された溶接電流(kA)であり、Tは、予熱電流が流れる時間である予熱通電時間(msec)であり、tは、板組60に含まれる鋼板の総板厚(mm)である。
(板組60)
第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組60を抵抗スポット溶接するものである。板組60に含まれる鋼板が3枚重ね以上であってもよい。また、板組60に含まれる鋼板の間に若干の隙間があってもよい。鋼板間の隙間は、板隙と称される。
(電極51、52、電源装置10、及び抵抗溶接制御装置20)
第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、板組60を挟む一対の電極51、52と、一対の電極51、52の間に電流を流す電源装置10と、電源装置10から供給される電力を溶接電流と通電時間で制御する抵抗溶接制御装置20とを有する。電極51、52は、いわゆる抵抗スポット溶接用電極、即ち抵抗スポット溶接において、板組60に直接接触して溶接電流を通じるとともに加圧力を伝える棒状電極である。電源装置10は、抵抗溶接システムに組み込まれていてもよいし、抵抗溶接装置と接続して用いられる商用電源であってもよい。
(予備通電部、及び主溶接通電部)
抵抗溶接制御装置20は、一対の電極51、52に予備通電S1をする予備通電部と、予備通電S1に次いで一対の電極51、52に適応制御で主溶接S2をする主溶接通電部と、を有する。説明の便宜上、まず主溶接通電部によって行われる主溶接S2について説明し、次に予備通電部によって行われる予備通電S1について説明する。
(主溶接S2)
主溶接S2においては、板組60に圧力を加えながら高電流を流し、抵抗熱によって板組60を溶接する。主溶接S2、及びその後の冷却によって、板組60にはナゲットが形成される。ナゲットは、板組60に含まれる複数の鋼板を接合する。主溶接S2において、ナゲット形成のために板組60に流す電流は溶接電流と称され、溶接電流が流れる時間は通電時間と称される。
主溶接S2は、適応制御される。適応制御とは、制御対象の特性・環境などの外乱に応じて、制御系の特性を所要の条件を満たすように変化させる制御のことである。第一実施形態に係る抵抗溶接システムの主溶接S2においては、単位体積当たりの累積発熱量Qを適応制御の指標とする。単位体積当たりの累積発熱量Qを所定値とするように、主溶接S2におけるジュール発熱量(例えば電極間抵抗、及び電極間電圧又は溶接電流、通電時間)を調整する。
主溶接S2における単位体積当たりの累積発熱量Qとは、以下の式Aによって算出される値qを、主溶接S2の開始から終了までの期間で累積した値である。
q=(V×I)/(S×t)…式A
式Aにおいて、Vは電極間電圧であり、Iは溶接電流であり、Sは電極51、52と板組60との接触面積であり、tは板組60に含まれる鋼板の総板厚(mm)である。式Aによって求められる値qは、単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qである。溶接電流は、接触面積Sで総板厚tの柱状部分を通過して抵抗発熱を発生させるからである。
なお、式Bを用いて式Aを書き換えると、式Cとなる。
R=(r×t)/S…式B
q=(V×I×R)/(r×t
=(V)/(r×t)…式C
式Bにおいて、rは被溶接材の抵抗率である。式Bによって求められるRは、接触面積Sで総板厚tの柱状部分の抵抗である。
式Cから明らかなように、単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qは、電極間電圧Vと被溶接材の総板厚tと被溶接材の抵抗率rから計算でき、電極51、52と板組60との接触面積Sによって影響を受けない。抵抗スポット溶接を繰り返し行うと、電極51、52の電極先端が摩耗してSが変化する場合があるが、単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qは、電極51、52の電極先端摩耗に影響されない。なお、式Cは電極間電圧Vから瞬時発熱量qを計算するが、溶接電流Iから瞬時発熱量qを計算する事もできる。このときにも、電極51、52と板組60との接触面積Sを用いる必要がない。一方、被溶接材である鋼板の抵抗率は、鋼板の温度に応じて変化するので、たとえ主溶接S2の通電時間を通じてI及びVが一定値であったとしても、qは一定とはならない。また、散りEが発生すると、電極51、52によって挟持された部位における鋼板の総板厚tは大きく減少する。
単位体積・単位時間当たりの瞬時発熱量qを、主溶接S2の通電時間中で累積すれば、溶接に加えられる単位体積当たりの累積発熱量Qとなる。この単位体積当たりの累積発熱量Qもまた、電極51、52と板組60との接触面積Sを用いないで算出できる。
第一実施形態に係る抵抗溶接システムでは、単位体積当たりの累積発熱量Qを、適応制御の指標とする。具体的には、まず板組60において良好な溶接が可能な累積発熱量Qを予め求める。次いで、当該累積発熱量Q、及び主溶接S2の通電時間に基づいて、当該累積発熱量Qを再現可能な単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qを求める。そして、当該単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qが得られるように、主溶接S2においてジュール発熱量を調節する。溶接電流を調整することによって所定の単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qを達成してもよい。また、電極間抵抗 もしくは電極間電圧を調整することによって所定の単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qを達成してもよい。
板組60において良好な溶接ができる累積発熱量Qの特定方法は限定されない。シミュレーションによって累積発熱量Qを決定することができる。また、テスト溶接によって累積発熱量Qを決定することもできる。テスト溶接とは、製造すべき抵抗溶接継手を得る溶接(本溶接)に先立って行われる、溶接条件を探索するための溶接である。以下に、テスト溶接の一例を説明する。
テスト溶接では、まず溶接対象となる板組60と同一の板組を準備する。テスト溶接用の板組においては、板隙、及び分流等の外乱を可能な限り抑制する。次に、テスト溶接用の板組に対して、予備通電、及び溶接を行う。予備通電及び溶接は、例えば定電流制御される。テスト溶接の予備通電における予熱通電時間は、例えば約15~33msecの範囲内の値とする。テスト溶接の予備通電における予熱電流は、散りが発生しない範囲内で可能な限り大きくする。テスト溶接における通電時間は、板組に含まれる鋼板の総板厚t(mm)に応じて定める。例えば、テスト溶接における通電時間を、約(t÷2)×10×20msecと定めることができる。しかしながら、これらの事項は予熱通電時間、予熱電流、及び通電時間を定めるための目安に過ぎない。テスト溶接における予熱通電時間、予熱電流、及び通電時間は、板組、及び所望の抵抗溶接継手の性質等に応じて適宜設定することができる。
予熱通電時間、予熱電流、及び主溶接電流、通電時間を一定にして、且つ溶接における溶接電流を種々変更させながら、複数回のテスト溶接を行う。そして、当該抵抗スポット溶接によって得られたナゲット径を測定する。これにより、溶接電流とナゲット径との関係を示すグラフ(ウェルドローブ)を作成する。ウェルドローブの例を図2に示す。図2は、1枚の薄板と2枚の厚板とを重ね合わせた板組のウェルドローブである。なお、薄板は、板組の外板に配置された。薄板及び厚板の詳細板組、及び詳細な溶接条件は以下の表1の通りである。
Figure 2024000009000002
図2の破線のグラフは、薄板及び厚板の重ね合わせ面で測定されたナゲット径と溶接電流との関係を示し、図2の実線のグラフは、2枚の厚板の重ね合わせ面で測定されたナゲット径と溶接電流との関係を示す。図2の「4√t(1.6mm)」と記載された破線は、2枚の厚板の重ね合わせ面におけるナゲット径の合格基準値を示し、図2の「4√t(0.6mm)」と記載された破線は、薄板及び厚板の重ね合わせ面におけるナゲット径の合格基準値を示す。4√tとは、一般的なナゲット径の合格基準値の指標であり、ここでtとは、ナゲット径を測定する重ね合わせ面を構成する2枚の鋼板のうち薄い方の板厚である。「4√t(1.6mm)」は約5.1mmであり、「4√t(0.6mm)」は約3.1mmである。図2の白抜きのデータポイントに対応するナゲットでは、溶接中に散りが発生した。
図2のウェルドローブから溶接電流を6.5kA以上にすることによって、2枚の厚板の重ね合わせ面におけるナゲット径、及び薄板と厚板との重ね合わせ面におけるナゲット径の両方を、合格範囲内にすることができると予想される。また、図2のウェルドローブによれば、溶接中の溶接電流を7.3kA以下にすることによって、散り発生を抑制することができると予想される。従って、図2のウェルドローブに対応する板組に関して、適切な溶接中の溶接電流は6.5~7.3kAの範囲内であり、特に最適な溶接電流は7.0kAであると判断できる。
そして、適正溶接電流域(即ち、6.5~7.3kA。最適な溶接電流は7.0kA)で制御した溶接電流によって達成される単位体積当たりの累積電流Qを求める。例えば、テスト溶接の溶接電流において電極間電圧 もしくは電極間抵抗を測定して、上述の式Cに代入することにより、単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量q、及び単位体積当たりの累積発熱量Qを求めることができる。これにより得られた単位体積当たりの累積電流Qを、本溶接において「板組60において良好な溶接ができる予め求められた単位体積当たりの累積発熱量Q」として用いることができる。
(予備通電S1)
主溶接S2の前に行われる予備通電S1においては、板組60を挟む一対の電極51、52に電流を流し、抵抗熱によって板組60を予熱する。予備通電S1の目的は板組60の予熱であり、板組60を溶融させる必要はない。しかし、板組60が若干溶融することは許容される。予備通電S1において板組60に流れる電流は予熱電流と称され、予熱電流が流れる時間は予熱通電時間と称される。
適応制御される主溶接S2とは異なり、予備通電S1は適応制御されていなくてもよい。例えば予備通電S1は定電流制御されていてもよい。ここで「定電流制御」とは、
(1)電源を直流電源とし、且つ電流を一定に制御すること、及び
(2)電源を交流電源とし、且つ実効電流を一定に制御すること
の両方を含む概念である。
一方、直流式の場合、定電流制御以外にも予備通電S1としては、電流を常に一定電流制御と実効電流が一定になるような電流波形制御にすることの両方の概念を含む。例えば、予備通電S1の電流波形を正弦波や方形波、もしくは、非正弦波(三角波、ランプ波、Sinc波)としても良い。
さらに予備通電S1は、式1、式2、及び式3を満たすように行われる。
>I…(式1)
750×t≦(I×T≦1550×t…(式2)
10≦T≦50…(式3)
ここで、式1、式2、及び式3に含まれる符号の定義は、以下の通りである。
・I:予備通電S1において板組60に流れる予熱電流(kA)
・I:主溶接S2と同一の通電時間で、定電流制御された主溶接S2を板組60に行うことによって単位体積当たりの累積発熱量Qを得る場合における、定電流制御された主溶接S2の溶接電流(kA)
・T:予熱電流が流れる時間である予熱通電時間(msec)
・t:板組60に含まれる鋼板の総板厚(mm)
なお、予備通電S1において用いられる電源が交流電流である場合、式1におけるI1は、実効電流を一定にしている期間におけるピーク電流値のことであり、式2におけるI1は、実行電流のことである。また、I2を求めるための溶接(テスト溶接、又は溶接シミュレーション)において用いられる電源が交流電源である場合、式1におけるI2は、実効電流を一定にしている期間におけるピーク電流値のことであり、式2におけるI2は、実効電流のことである。
予備通電S1において用いられる溶接電源が交流式の場合、溶接電源が直流式のような1msec毎の電流制御をすることは困難であり、0.5cyc毎の電流制御をする。そのため、式2におけるI1はピーク電流値でなく、実効電流値とする。
I2を求めるための溶接(テスト溶接、又は溶接シミュレーション)において用いられる溶接電源が交流式の場合、I2は、ピーク電流値を含む実効電流値とする。
予備通電S1は、約1cycの短時間高電流制御となることが多い。溶接電源が直流式の場合、1msecごとの電流制御が可能となるため、ピーク電流値を規定することができる。しかし、溶接電源が交流式である場合は、0.5cyc毎の電流制御しかできない場合がある。そのため、ピーク電流値でなく実効値電流値を規定することが好ましい。
予備通電S1における電流値又は実行電流が一定ではない場合、式1におけるI1は予備通電中に最大となる電流値(ピーク電流)であり、式2におけるI1は予備通電中の平均の電流値(実効電流)である。
に関して詳細に説明する。Iは、上述された主溶接S2において用いられる適応制御の基準値「板組60において良好な溶接ができる予め求められた単位体積当たりの累積発熱量Q」に対応する値である。溶接電流をIとし、且つ主溶接の通電時間を適応制御による主溶接S2と同一とした条件下で、定電流制御による主溶接S2を板組60に実施した場合に得られる単位体積当たりの累積発熱量Qは、板組60において良好な溶接ができる予め求められた単位体積当たりの累積発熱量Qと略一致する。
板組60において良好な溶接ができる予め求められた単位体積当たりの累積発熱量Qを、テスト溶接を介して特定した場合は、テスト溶接によって求められた適切な溶接電流をIとして用いることができる。例えば、表1及び図2を挙げながら説明されたテスト溶接の、定電流制御された、通電時間約367msecの本溶接においては、適切な溶接電流は6.5~7.3kAの範囲内であり、特に7kAが好ましいと判定された。そして、テスト溶接において求められた適切な溶接電流に基づいて、板組60において良好な溶接ができる予め求められた単位体積当たりの累積発熱量Qが決定された。この、テスト溶接において求められた適切な溶接電流を、Iとして用いることができる。
第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、主溶接S2を、単位体積当たりの累積発熱量Qを基準とした適応制御によって実施するものである。従って、主溶接S2における溶接電流は一定にならないことが通常である。一方でIは、この主溶接S2と同等の発熱量が得られる本溶接を定電流制御で行ったと仮定した場合の溶接電流である。即ち、Iは、主溶接S2における溶接電流の指標となる値である。
式1によれば、予備通電S1における予熱電流Iは、Iよりも大きい。第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、予備通電S1を、主溶接S2よりも概ね大きい電流によって行うのである。式2によれば、予備通電S1における発熱量の指標となる値(I2×Tが、板組60の厚さに応じた範囲内に限定される。加えて、式3によれば、予備通電S1における予熱通電時間Tがきわめて短い値とされる。式1~式3を総合的に考慮すると、第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、予備通電S1を高電流且つ短時間で実施するものであるといえる。
上記で説明された抵抗溶接システムの具体的な一例を図1に示す。図1は抵抗溶接システムの全体構成を示し、ここで抵抗溶接システムは電源装置10に接続されて使用される。図1中の符号20は、抵抗溶接制御装置を示す。図1に例示される抵抗溶接制御装置20は、パワー素子26、インターフェイス25、CPU23、A/D変換器24、ROM21、及びRAM22を有する。
パワー素子26は、点弧角 もしくは1次電圧のデューティ比を調整することで溶接電流を調整する。パワー素子26で電流が調整された溶接電流は、溶接トランス30(整流器付きも含む)で低電圧高電流に降圧されて一対の電極51、52間に通電される。一対の電極51、52間には被溶接材である板組60が挟持されている。板組60は、2枚以上の鋼板を重ね合わせたものである。
一対の電極51、52間の挟持する加圧力は、図示しない挟持する加圧力制御手段を用いて調節される。挟持する加圧力制御手段とは、例えばエアーシリンダ もしくはサーボモータ等である。一対の電極51、52間に挟持される板組60には高電流が通電されて被溶接材自体が抵抗発熱する。この抵抗発熱によって板組60は溶接される。
一対の電極51、52間の電極間電圧は電極間電圧検出回路40で測定され、測定値はA/D変換器24で変換された後CPU23に入力される。CPU23はROM21に記憶されている制御プログラムに従って作動し、パワー素子26の点弧角 もしくは1次電圧のデューティ比を制御して単位時間(この場合サイクル毎 もしくはmsec毎)、及び単位体積当たりの発熱量を調整する。図1に示す符号25は、CPU23から出力されるゲート信号によってパワー素子26をON(導通状態)にさせるインターフェイス25を示す。またRAM22は各種データの一時的記憶に用いられる。ROM21には、予備通電S1及び主溶接S2を実行する制御プログラムが記憶されている。
(作用効果)
第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、主溶接S2において、単位体積当たりの累積発熱量Q(溶接電流の通電中の累積発熱量)を指標にしてジュール発熱量を調整する。これにより被溶接材である板組60の外乱状態や電極51、52の電極先端の磨耗状況に係わらず、常時安定な溶接を行うことができる。換言すれば、溶接バラツキが少ない良好な溶接ができる単位体積当たりの累積発熱量Qは、被溶接材の外乱状態や電極51、52の先端磨耗状況によって影響を受けない。一般に、電極51、52の磨耗状況によって、電極51、52と被溶接材が接触する面積が変化する。従って、単位体積当たりの瞬時発熱量を計算するのが困難であると予想される。実際に計算すると、電極51、52と被溶接材が接触する面積が変化することにより通電路も変化する現象と、それに伴ってジュール発熱量も変化する現象が打ち消しあって、電極51、52と被溶接材が接触する面積を考慮しなくとも、単位体積当たりの瞬時発熱量が計算できる。第一実施形態に係る抵抗溶接システムによると、被溶接材の外乱状態や電極51、52の先端磨耗状況に係わらず、常に良好な溶接ができる単位体積当たりの累積発熱量Qを指標とし、それに基づいてジュール発熱量が調節されることから、良好な溶接ができる。
ただし、主溶接S2の間に散りEが発生すると、主溶接S2の適応制御の継続が難しくなる。散りEが発生すると、溶接部の溶込み深さが減少し、溶接部の抵抗値が急激に低下する。これにより、溶接部の単位体積当たりの瞬時発熱量が急激に減少する。散りEによって溶接部の抵抗値が急減した場合において、単位体積当たりの累積発熱量Qを基準としたジュール発熱量の適応制御を継続すると、抵抗溶接システムの抵抗溶接制御装置20は瞬時発熱量の減少を補うためにジュール発熱量を急激に増加させる。しかし、このような過大な入熱は、板表面の圧痕量過多やバリの発生、ブローホール、溶着などの過大な入熱は、溶接不良が発生する恐れがある。
そこで、第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、主溶接S2の前に予備通電S1を行うための予備通電部を有している。予備通電S1によって、酸化被膜層などのコンタミ層が排除され圧接部Pが拡大されて、主溶接S2における散りEの発生が抑制される。
図3に、散りEの発生のメカニズムを説明するための概念図を示す。図3は、主溶接S2の際の溶融部Mの成長を示している。図3に示される、2枚の鋼板の重ね合わせ面に設けられた実線で囲まれた楕円領域が、溶融部Mである。また、破線で囲まれた楕円領域は、圧接部Pである。圧接部Pとは、一対の電極51、52によって押さえつけられている領域である。
主溶接S2が進展するほど、溶接部の温度が上昇する。従って溶融部Mは、主溶接S2が進展するほど成長する。また、圧接部Pも主溶接S2が進展するほど成長する。溶接部及びその周辺部の温度が上昇することによって鋼板が軟化し変形するからである。溶融部Mが圧接部Pの内部にある限り、溶融金属が鋼板に閉じ込められており、散りEは発生しない。しかしながら、溶融部Mが圧接部Pの外部まで成長すると、溶融金属が飛散して散りEが発生する。なお、板組60が板隙を有する場合、散りEが一層発生しやすい。なぜなら図4に示されるように、板隙があると、圧接部Pが小さくなるからである。
そこで第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、主溶接S2の前に予備通電S1を行う。予備通電S1によって、鋼板が軟化し変形する。その結果、圧接部Pが拡大され、圧接部Pの外部まで溶融部Mが成長することが妨げられるのである。
さらに、短時間高電流の予備通電S1は、鋼板の表面の酸化被膜層などのコンタミ層を排除する効果も有する。コンタミ層は、厚さ数nm程度の酸化膜である。コンタミ層が排除されると、鋼板の新生面が露出する。新生面同士が接触することで、溶融温度が1/3まで低下し、外乱の影響が小さくなり、溶接しやすい環境にすることができる。
図5に、予備通電S1によるコンタミ除去の概念図を示す。短時間高電流の予備通電S1によって、鋼板601の表面のコンタミ層602が破壊され、新生面603が形成される。これにより、通電路が形成される。通電路の形成により、HAZ領域が広くなり、散りが抑制される。
ただし、通常の予備通電S1によって板隙を取り除いた場合、ナゲット径が確保できないおそれがある。予備通電S1を行うと、鋼板同士の接触抵抗、及び電極51、52と鋼板との間の接触抵抗が減少する。接触抵抗が減少すると、発熱量が低下しナゲットの成長が抑制されるのである。
この問題は、総板厚比(板組60に含まれる鋼板の総板厚(mm)を、板組60の表面に配された鋼板の板厚の最小値で割ることによって算出される値)が大きい場合に特に顕著となる。総板厚比が大きい板組60においては、薄い鋼板が板組60の表面に配されている。このような板組60に対して予熱を行うと、板組60の表面に配された薄い鋼板と、これに接する鋼板との間の接触抵抗が低下する。これにより、薄板とこれに接する鋼板との重ね合わせ面における発熱量が低下し、薄板の接合不良が生じる恐れがある。
そこで、第一実施形態に係る抵抗溶接システムでは、式1を満たすように予備通電S1が行われる。
>I…(式1)
一般的には、予熱電流は溶接電流よりも小さい。例えば、JISZ3001-6:2013「溶接用語-第6部:抵抗溶接」の図2に例示された抵抗スポット溶接シーケンスの例においては、予熱電流は溶接電流よりも小さい値とされている。一方、式1を満たす予備通電S1における予熱電流Iは、主溶接S2における溶接電流よりも概ね大きい値となる。予熱電流をこのような大きな値とすることにより、予熱通電時間を短くすることができる。短時間及び高電流の条件下で予熱電流を流すことにより、散りの発生を抑制しながら、接触抵抗の低下を抑制して、ナゲット径を確保することができる。これにより、接合強度(特にCTS)の向上効果も得られる。
ただし、高電流による予備通電S1を長時間にわたって行うと、予備通電S1において散りEが発生する恐れがある。予備通電S1において散りEが発生すると、電極51、52によって挟持された箇所の板厚が著しく減少し、当該箇所に関して適切な単位体積当たりの累積発熱量Qが変動する。従って、主溶接S2の適切な実施が難しくなる。
そこで、第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、式2及び式3を満たすように予備通電S1を行う。
750×t≦(I×T≦1550×t…(式2)
10≦T≦50…(式3)
式2及び式3を満たすように予備通電S1が行われることにより、予備通電S1における散りEの発生が抑制される。また、式3に従ってTを50msec以下にすることにより、上述のように接触抵抗の低下を抑制することができる。ただし、予熱通電時間が短すぎたり、予備通電S1における入熱量が小さすぎたりすると、主溶接S2における散りE抑制効果が得られない。そのため、式2及び式3では、(I×Tが750×t以上とされ、且つ、Tが10msec以上とされる。
以上、第一実施形態に係る抵抗溶接システムの最も基本的な態様について説明した。以下に、好ましい態様について説明する。
(板組60及び総板厚比)
抵抗溶接システムが溶接する板組60は特に限定されないが、例えば2枚の厚板及び1枚の薄板から構成される、総板厚比3.5以上の3枚重ね板組であることが好ましい。即ち、板組60に含まれる鋼板が3枚重ねであり、鋼板のうち1枚が、板厚0.8mm以下の薄板であり、鋼板のうち2枚が、板厚1.0mm以上の厚板であり、薄板が、板組60の表面に配され、板組60に含まれる鋼板の総板厚(mm)を、板組60の表面に配された鋼板の板厚の最小値で割ることによって算出される総板厚比hが3.5以上7.0以下であることが好ましい。
総板厚比hとは、板組60に含まれる鋼板の総板厚を、板組60の表面に配された2枚の鋼板のうち薄い方の板厚で割って得られる値である。板組60の表面に配された2枚の鋼板の板厚が同一である場合は、いずれの鋼板の板厚を総板厚比の算出のために用いてもよい。
このような構成を有する板組60の典型例は、自動車部品である。自動車部品は、部品の強度を担保する骨格部材と、部品の美観を担保する外装部材を溶接した構造を有する場合がある。骨格部材の材料は高強度の厚板であり、外装部材の材料は低強度の薄板である。また、外装部材は自動車部品の表面に配される。そのため、上述の構成を有する自動車部品の接合部は、2枚の厚板及び1枚の薄板の溶接継手とされ、薄板は溶接継手の表面に配置される。
総板厚比は、板組60の抵抗溶接の難しさを示す指標である。板組60の表面に配された薄板の厚さが小さいほど、ナゲットを薄板まで成長させて、薄板を他の板と接合することが難しくなる。従って、板組60の総板厚を板組60の表面の薄板の板厚で割った値である総板厚比が大きいほど、抵抗溶接によって板組60を接合することが難しくなる。一方、部品の設計及び用途を考慮すると、総板厚比が大きい方が好ましい場合がある。例えば自動車部品においては、総板厚比が大きいほど、外装部材を薄肉化して部品重量を削減し、自動車の燃費を向上させることができる。
第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、高板厚比の3枚重ねの板組を、最適な接合を行うことができる。第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、予備通電S1によって2枚の厚板の重ね合わせ面をなじませる。これにより、適応制御される主溶接S2における散りEの発生を抑制して、2枚の厚板の重ね合わせ面におけるナゲット径を拡大することができる。
なお、通常の予備通電S1は、薄板の接合を困難にする場合がある。予備通電S1をすると、薄板及び厚板の重ね合わせ面における接触抵抗が低下し、主溶接S2の際に当該合わせ面における発熱量が低下する。その結果、ナゲットが薄板及び厚板の重ね合わせ面まで成長することが妨げられる。しかしながら、第一実施形態に係る抵抗溶接システムでは、予備通電S1時間が式2及び式3によって短時間に制限されている。第一実施形態に係る抵抗溶接システムによる予備通電S1は、薄板及び厚板の重ね合わせ面における接触抵抗を損なうことなく、2枚の厚板の重ね合わせ面のみを馴染ませることができる。従って、第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、薄板及び厚板の重ね合わせ面におけるナゲット径も拡大することができる。
(溶接電流の最大値Imax
第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、好ましくは、式4を満たすように主溶接S2を行うように構成される。なお、式4において、Imaxは主溶接S2における溶接電流の最大値(kA)である。tは、板組60に含まれる前記鋼板の総板厚(mm)である。Iは、主溶接S2と同一の通電時間で、定電流制御された主溶接S2を板組60に行うことによって単位体積当たりの累積発熱量Qを得る場合における、定電流制御された主溶接S2の溶接電流(kA)である。
+0.3×t<Imax<I+0.8×t…(式4)
主溶接S2の際には、溶接電流は適応制御によって変動する。式4は、この溶接電流の下限値及び上限値を、上述したI及び板組60の厚さに基づいて定めるものである。式4に従い、Imax<I+0.8×tの関係を満たすように主溶接S2を行うことにより、主溶接S2における散りEの発生が一層抑制される。また、I+0.3×t<Imaxの関係を満たすように主溶接S2を行うことにより、ナゲット径を拡大して接合強度を一層高めることができる。
(溶接電流の変化率の最大値K)
第一実施形態に係る抵抗溶接システムは、好ましくは、板隙や分流状況などの外乱を考慮し、式5を満たすように主溶接S2を行うように構成される。式5において、Kは、主溶接S2における溶接電流の変化率の最大値(kA/sec)であり、hは、板組60に含まれる鋼板の総板厚(mm)を、板組60の表面に配された鋼板の板厚の最小値で割ることによって算出される総板厚比である。
30/h<K<100/h…(式5)
溶接電流の変化率の最大値Kとは、主溶接S2の開始から終了までの期間における、溶接電流の単位時間あたりの変化量の最大値(kA/sec)のことである。単位時間は、1/120秒(約8.3msec)又は1/100秒(約10msec)である。
溶接電流の変化率が大きいほど、主溶接S2の際に散りEが発生しやすくなる。式5に従って、K<100/hを満たすように溶接電流が適応制御されることにより、主溶接S2における散りEの発生が一層抑制される。一方、適応制御の応答速度を高める観点からは、溶接電流の変化率が大きい方が好ましい。式5に従って、30/h<Kを満たすように溶接電流が適応制御されることにより、適応制御の応答速度が一層高められる。
(後通電S3)
第一実施形態に係る抵抗溶接システムによって抵抗スポット溶接される板組60においては、好ましくは、板組60に含まれる前記鋼板のうち1枚以上が、引張強さ980MPa以上の高強度鋼板とされる。この場合において、第一実施形態に係る抵抗溶接システムの抵抗溶接制御装置20は好ましくは、主溶接S2に次いで一対の電極51、52に後通電S3する後通電部をさらに有する。
後通電S3とは、後熱電流を溶接部に流す通電のことである。後熱電流とは、溶接によって硬化する鋼材の抵抗溶接において、溶接を行った後、硬化した溶接部に対して焼戻し又は焼なましを行う目的で流す電流のことである。後熱電流はテンパ電流と称される場合がある。後熱電流を流している期間は、後熱通電時間と称される。
後通電S3における通電条件は、式6及び式7を満たす。
×0.5≦I≦I×1.2…(式6)
200≦T≦2000…(式7)
ここで、式6、及び式7において、Iは、後通電において板組に流れる後熱電流(kA)であり、Tは、後熱電流が流れる時間である後熱通電時間(msec)である。Iは、上述の通り、主溶接と同一の通電時間で、定電流制御された溶接を板組に行うことによって単位体積当たりの累積発熱量を得る場合における、定電流制御された溶接電流(kA)である。なお、後通電は例えば定電流制御で行われるが、予備通電と同様に様々な波形を適用可能である。
一般に、鋼板の引張強さTSが大きいほど、これを抵抗溶接することによって形成された溶接部の十字引張強さCTSも大きくなる。しかしながら、鋼板のTSが約980MPa以上である場合、鋼板のTSが大きいほど、溶接部のCTSは小さくなる。CTSの低下の原因は、溶接部の脆化であると考えられている。
上述の通電条件に従う後通電S3によれば、脆化した溶接部組織を最適な改質を行うことができる。従って、板組60が1枚以上の高強度鋼板を有する場合であっても、高いCTSを有する溶接部を製造することができる。本発明者らの検討結果によれば、第一実施形態に係る抵抗溶接システムによって予備通電及び主溶接をした後で、上述の条件下で後通電を施すと、外乱がない条件で通常の抵抗スポット溶接によって得られた抵抗溶接継手のCTSよりも1.5倍程度の強度が得られる。
なお、板組に含まれる全ての鋼板の引張強さが1500MPa以下である場合、式6及び式7に代えて、例えば式6A及び式7Aを用いて後通電条件を規定してもよい。
×0.8≦I≦I×1.2…(式6A)
200≦T≦400…(式7A)
また、板組に含まれる鋼板のうち1枚以上の引張強さが2000MPa以上である場合、式6及び式7に代えて、例えば式6B及び式7Bを用いて後通電条件を規定してもよい
×0.5≦I≦I×0.7…(式6B)
1000≦T≦2000…(式7B)
(2.抵抗溶接継手の製造方法)
次に、本発明の第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法について説明する。第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法は、2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組60を挟む一対の電極51、52に予備通電S1をする工程と、予備通電S1に次いで、一対の電極51、52において主溶接S2をする工程と、を備え、主溶接S2を、板組60において良好な溶接ができる予め求められた単位体積当たりの累積発熱量Qから、主溶接S2の通電時間を基に単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qを計算し、計算された単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qを発生させる電極間電圧、又は溶接電流に調整することによって適応制御し、予備通電S1を、式1、式2、及び式3を満たすように行う。
>I…(式1)
750×t≦(I×T≦1550×t…(式2)
10≦T≦50…(式3)
ここで、式1、式2、及び式3において、
は、予備通電S1において板組60に流れる予熱電流(kA)であり、Iは、主溶接S2と同一の通電時間で、定電流制御された主溶接S2を板組60に行うことによって単位体積当たりの累積発熱量Qを得る場合における、定電流制御された主溶接S2の溶接電流(kA)であり、Tは、予熱電流が流れる時間である予熱通電時間(msec)であり、tは、板組60に含まれる鋼板の総板厚(mm)である。
第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法は、第一実施形態に係る抵抗溶接システムと同じく、2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組60を抵抗溶接するものである。板組60に含まれる鋼板が3枚重ね以上であってもよい。また、板組60に含まれる鋼板の間に若干の隙間があってもよい。
第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法は、板組60を挟む一対の電極51、52に予備通電S1をする工程、及び、予備通電S1に次いで一対の電極51、52に主溶接S2をする工程を備える。以下、まず主溶接S2について説明し、次に予備通電S1について説明する。
(主溶接S2)
主溶接S2においては、板組60に圧力を加えながら高電流を流し、抵抗発熱によって板組60を溶接する。主溶接S2において板組60に生じる現象は、第一実施形態に係る抵抗溶接システムに関して説明された通りである。
主溶接S2は、適応制御される。第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法の主溶接S2においては、第一実施形態に係る抵抗溶接システムと同じく、単位体積当たりの累積発熱量Qを適応制御の指標とする。単位体積当たりの累積発熱量Qを所定値とするように、主溶接S2におけるジュール発熱量(例えば、電極間抵抗 もしくは電極間電圧又は溶接電流)を調整する。
第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法の主溶接S2では、第一実施形態に係る抵抗溶接システムと同じく、単位体積当たりの累積発熱量Qを適応制御の指標とする。具体的には、まず板組60において良好な溶接ができることが可能な累積発熱量Qを予め求める。次いで、当該累積発熱量Q、及び主溶接S2の通電時間に基づいて、当該累積発熱量Qを再現可能な単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qを求める。そして、当該単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qが得られるように、主溶接S2においてジュール発熱量を調節する。溶接電流を調整することによって所定の単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qを達成してもよい。また、電極間抵抗 もしくは電極間電圧を調整することによって所定の単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量qを達成してもよい。板組60において良好な溶接ができることが可能な累積発熱量Qの特定方法は限定されない。例えば、第一実施形態に係る抵抗溶接システムに関して例示された方法によって、第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法において用いる累積発熱量Qを特定してもよい。
(予備通電S1)
主溶接S2の前に行われる予備通電S1においては、第一実施形態に係る抵抗溶接システムと同じく、板組60を挟む一対の電極51、52に電流を流し、抵抗熱によって板組60を予熱する。予備通電S1の目的は板組60の予熱であり、板組60を溶融させる必要はない。しかし、板組60が若干溶融することは許容される。
第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法の主溶接S2では、第一実施形態に係る抵抗溶接システムと同じく、予備通電S1は式1、式2、及び式3を満たすように行われる。
>I…(式1)
750×t≦(I×T≦1550×t…(式2)
10≦T≦50…(式3)
(作用効果)
第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法では、主溶接S2において、単位体積当たりの瞬時発熱量(溶接電流通電中の累積発熱量)を指標にしてジュール発熱量を調整する。これにより、被溶接材である板組60の外乱状態や電極51、52の先端磨耗状況にかかわらず、常時安定的に溶接できる。換言すれば、安定的に良好な溶接ができる単位体積当たりの累積発熱量Qは、被溶接材の外乱状態や電極51、52の先端磨耗状況によって影響を受けない。
ただし、主溶接S2の間に散りEが発生すると、主溶接S2の適応制御の継続が難しくなる。そこで、第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法では、主溶接S2の前に予備通電S1を行う。予備通電S1によって、酸化被膜層などのコンタミ層が排除され圧接部Pが拡大されて、主溶接S2における散りEの発生が抑制される。
もっとも、通常の予備通電S1によって板隙を取り除いた場合、ナゲット径が確保できないおそれがある。予備通電S1を行うと、鋼板同士の接触抵抗、及び電極51、52と鋼板との間の接触抵抗が減少する。接触抵抗が減少すると、発熱量が低下し、ナゲットの成長が抑制されるのである。そこで、第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法では、式1を満たすように予備通電S1が行われる。
>I…(式1)
一般的には、予熱電流は溶接電流よりも小さい。一方、式1を満たす予備通電S1における予熱電流Iは、主溶接S2における溶接電流よりも概ね大きい値となる。予熱電流をこのような大きな値とすることにより、予熱通電時間を短くすることができる。予熱通電時間を短くすることにより、接触抵抗の低下を抑制して、ナゲット径を確保することができる。
ただし、高電流による予備通電S1を長時間にわたって行うと、予備通電S1において散りEが発生するおそれがある。そこで、第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法では、式2及び式3を満たすように予備通電S1を行う。
750×t≦(I×T≦1550×t…(式2)
10≦T≦50…(式3)
式2及び式3を満たすように予備通電S1が行われることにより、予備通電S1における散りEの発生が抑制される。また、式3に従ってTを50msec以下にすることにより、上述のように接触抵抗の低下を抑制することができる。ただし、予熱通電時間が短すぎたり、予備通電S1における入熱量が小さすぎたりすると、主溶接S2における散りEの抑制効果が得られない。そのため、式2及び式3では、(I×Tが750×t以上とされ、且つ、Tが10msec以上とされる。
以上、第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法の最も基本的な態様について説明した。以下に、好ましい態様について説明する。
(板組60及び総板厚比)
抵抗溶接継手の製造方法における被溶接材、即ち板組60は特に限定されないが、例えば第一実施形態に係る抵抗溶接システムと同じく、2枚の厚板及び1枚の薄板から構成される、総板厚比3.5以上の3枚重ねの板組であることが好ましい。即ち、板組60に含まれる鋼板が3枚重ねであり、鋼板のうち1枚が、板厚0.8mm以下の薄板であり、鋼板のうち2枚が、板厚1.0mm以上の厚板であり、薄板が、板組60の表面に配され、板組60に含まれる鋼板の総板厚(mm)を、板組60の表面に配された鋼板の板厚の最小値で割ることによって算出される総板厚比hが3.5以上7.0以下であることが好ましい。
第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法は、第一実施形態に係る抵抗溶接システムと同じく、高板厚比の3枚重ねの板組において最適な溶接を行うことができる。第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法は、予備通電S1によって2枚の厚板の重ね合わせ面をなじませる。これにより、適応制御される主溶接S2における散りEの発生を抑制して、2枚の厚板の重ね合わせ面におけるナゲット径を拡大することができる。
なお、通常の予備通電S1は、薄板の接合を困難にする場合があるしかしながら、第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法では、予備通電時間が式2及び式3によって短時間に制限されている。第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法による予備通電S1は、薄板及び厚板の重ね合わせ面における接触抵抗を損なうことなく、2枚の厚板の重ね合わせ面のみを馴染ませることができる。従って、第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法は、薄板及び厚板の重ね合わせ面におけるナゲット径も拡大することができる。
(溶接電流の最大値Imax
第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法は、第一実施形態に係る抵抗溶接システムと同じく、好ましくは、式4を満たすように主溶接S2を行う。
+0.3×t<Imax<I+0.8×t…(式4)
式4に従い、Imax<I+0.8×tの関係を満たすように主溶接S2を行うことにより、主溶接S2における散りEの発生が一層抑制される。また、I+0.3×t<Imaxの関係を満たすように主溶接S2を行うことにより、ナゲット径を拡大して接合強度を一層高めることができる。
(溶接電流の変化率の最大値K)
第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法は、第一実施形態に係る抵抗溶接システムと同じく、好ましくは、板隙や分流状況などの外乱を考慮し、式5を満たすように主溶接S2を行うように構成される。
30/h<K<100/h…(式5)
溶接電流の変化率が大きいほど、主溶接S2の際に散りEが発生しやすくなる。式5に従って、K<100/hを満たすように溶接電流が適応制御されることにより、主溶接S2における散りEの発生が一層抑制される。一方、適応制御の応答速度を高める観点からは、溶接電流の変化率が大きい方が好ましい。式5に従って、30/h<Kを満たすように溶接電流が適応制御されることにより、適応制御の応答速度が一層高められる。
(後通電S3)
第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法によって接合される板組60においては、好ましくは、第一実施形態に係る抵抗溶接システムと同じく、板組60に含まれる前記鋼板のうち1枚以上が、引張強さ980MPa以上の高強度鋼板とされる。この場合において、第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法は、好ましくは、主溶接S2に次いで一対の電極51、52に後通電S3をする工程をさらに有する。後通電S3における通電条件は、式6及び式7を満たす。
×0.5≦I≦I×1.2…(式6)
200≦T≦2000…(式7)
ここで、式6、及び式7において、Iは、後通電において板組に流れる後熱電流(kA)であり、Tは、後熱電流が流れる時間である後熱通電時間(msec)である。Iは、上述の通り、溶接と同一の通電時間で、定電流制御された溶接電流の通電を板組に行うことによって単位体積当たりの累積発熱量を得る場合における、定電流制御された溶接電流(kA)である。なお、後通電は例えば定電流制御で行われるが、予備通電と同様に様々な電流波形を後通電に採用することができる。
上述の通電条件に従う後通電S3によれば、溶接部が良好に焼戻される。従って、板組60が1枚以上の高強度鋼板を有する場合であっても、高いCTSを有する溶接部を製造することができる。
鋼板の強度に応じて、さらに最適な後通電条件を選択してもよい。例えば、板組に含まれる全ての鋼板の引張強さが1500MPa以下である場合、式6及び式7に代えて、式6A及び式7Aを用いて後通電条件を規定することが望ましい。
×0.8≦I≦I×1.2…(式6A)
200≦T≦400…(式7A)
一方、板組に含まれる鋼板のうち1枚以上の引張強さが2000MPa以上である場合、式6及び式7に代えて、式6B及び式7Bを用いて後通電条件を規定することが望ましい。
×0.5≦I≦I×0.7…(式6B)
1000≦T≦2000…(式7B)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下に、本発明の第一実施形態に係る抵抗溶接システム、及び第二実施形態に係る抵抗溶接継手の製造方法の最適な例について説明する。なお、特に断りが無い限り、以下に例示される構成は、第一実施形態及び第二実施形態のいずれにも適用することができる。
(鋼板の引張強さ)
板組60に含まれる鋼板のうち1枚以上は、好ましくは高強度鋼板である。高強度鋼板の引張強さTSは、例えば980MPa以上、1000MPa以上、1100MPa以上、1100MPa以上、又は1200MPa以上であってもよい。板組60が薄板及び厚板の両方を含む場合、一般に、厚板を高強度鋼板とすることが多い。高強度鋼板は、抵抗溶接継手の強度を高める手段として極めて効果的である。高強度鋼板のTSの下限値は特に限定されないが、例えば高強度鋼板のTSが2000MPa以下、1800MPa以下、又は1600MPa以下であってもよい。
板組60が、高強度鋼板より低強度である軟鋼板を含んでもよい。軟鋼板の引張強さは、例えば600MPa以下、500MPa以下、又は400MPa以下である。板組60が薄板及び厚板の両方を含む場合、一般に、薄板を軟鋼板とすることが多い。軟鋼板は加工性が高いので、例えば、意匠性が求められる自動車部品の外装部材の材料に適する。軟鋼板のTSの下限値は特に限定されないが、例えば軟鋼板のTSを200MPa以上、250MPa以上、又は300MPa以上としてもよい。
(鋼板の表面処理)
板組60に含まれる鋼板のうち1枚以上が、表面にめっき層を有するめっき鋼板であってもよい。めっき層の種類は限定されないが、例えば溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、電気亜鉛めっき、亜鉛ニッケルめっき、又はAlめっきとすることが好ましい。
実施例により本発明の一態様の効果を更に具体的に説明する。ただし、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例に過ぎない。本発明は、この一条件例に限定されない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限り、種々の条件を採用し得る。
表2に記載の鋼板1、鋼板2、及び鋼板3を順に重ね合わせた種々の板組を作成した。一部の板組においては、図4に示されるようなスペーサー70を用いて、鋼板2と鋼板3との間に隙間(板隙)を設けた。スペーサーの間隔は40mmとした。板隙の大きさを表2に記載した。また、一部の板組においては、溶接打点の両側に予めナゲットを設けてから本溶接を実施した。このナゲットが、本溶接において分流を生じさせる。ナゲットの中心と、溶接打点の中心との間隔は10mmとした。
これら板組に対して、予備通電及び溶接を実施した。ただし、一部の板組に対しては、予備通電を省略した。また、一部の板組に対しては、溶接後で後通電を実施した。通電の間の加圧力は一定値とした。予備通電、主溶接、及び後通電の条件を表3及び表4に記載した。省略された通電の条件は、表3及び表4において「-」と記載した。また、表3において、不適切な値には下線を付した
表3及び表4に記載の条件に従った抵抗溶接の際に散りが発生したか否かを目視で確認した。散りの有無を表5に記載した。
ナゲット径は、ナゲットの中心を通り且つ板組の表面に垂直な切断面において鋼板の重ね合わせ面に沿って測定した。鋼板1及び鋼板2の重ね合わせ面に沿って測定されたナゲット径は、表5の「鋼板1/鋼板2」列に記載し、鋼板2及び鋼板3の重ね合わせ面に沿って測定されたナゲット径は、表5の「鋼板2/鋼板3」列に記載した。鋼板の重ね合わせ面までナゲットが成長していない場合は、ナゲット径を0mmと判定した。
CTSが測定可能な場合においては、接合強度を評価した。接合強度の評価指標は、鋼板1及び鋼板2の十字引張強さCTSとした。CTSは、JIS Z 3137:1999「抵抗スポット及びプロジェクション溶接継手の十字引張試験に対する試験片寸法及び試験方法」に従って測定した。なお、CTSの測定対象とされたのは、鋼板1及び鋼板2である。CTSが測定された場合、その値を表5に記載した。
なお、外乱として分流が設けられたサンプルに関しては、CTSの測定を省略した。分流は、溶接打点の両側に別のナゲットを設けることによって形成されるのであるが、この溶接打点によるナゲットが、CTSの測定の妨げとなるからである。CTSの測定が省略された継手に関しては、CTSを「-」と記載した。
鋼板1と鋼板2との重ね合わせ面におけるナゲット径が3.1mm以上であり、鋼板2と鋼板3との重ね合わせ面におけるナゲット径が6.3mm以上である継手は、最適なナゲット径を有する継手であると判断された。表5において、適正ではないナゲット径には下線を付した。鋼板2及び鋼板3のCTSが7.15MPa以上である継手は、著しく優れた接合強度を有する継手であると判断された。
Figure 2024000009000003
Figure 2024000009000004
Figure 2024000009000005
Figure 2024000009000006
No.0は、外乱がなく、溶接が定電流制御で行われ、且つ予備通電が省かれていた例である。No.0の溶接は、いわゆる通常の抵抗スポット溶接に該当する。なお、No.0では後通電も行われていない。外乱が無かったので、No.0の溶接にあたって散りは発生しなかった。このNo.0のCTSを、実施例のCTSの評価基準として用いた。No.0の1.5倍のCTSを有する継手は、優れた接合強度を有する継手であると判断した。
No.1、No.19、及びNo.23の溶接では、予備通電が省かれており、また、主溶接が定電流制御で行われた。No.1、No.19、及びNo.23の溶接は、いわゆる通常の抵抗スポット溶接に該当する。No.1、No.19、及びNo.23の継手においては、鋼板2と鋼板3との重ね合わせ面にナゲットが形成されておらず、したがって、接合不良が生じていた。加えて、No.1及びNo.19の継手においては、鋼板1及び鋼板2の重ね合わせ面におけるナゲット径も不足していた。
No.2、No.13、No.20、及びNo.24の溶接では、予備通電が省かれていた。その結果、No.2、No.13、No.20、及びNo.24の溶接では主溶接の段階で散りが発生した。また、No.13の継手においては、鋼板1及び鋼板2の重ね合わせ面におけるナゲット径、並びに鋼板2及び鋼板3の重ね合わせ面におけるナゲット径が不足した。No.20の継手においては、鋼板1及び鋼板2の重ね合わせ面におけるナゲット径が不足した。
No.3、及びNo.14の溶接では、IがIよりも小さく、式1が満たされていなかった。その結果、No.3、及びNo.14の継手においては、鋼板2及び鋼板3の重ね合わせ面におけるナゲット径が不足した。
No.6の溶接では、(I×Tが不足しており、式2が満たされていなかった。その結果、No.6の溶接では主溶接の段階で散りが発生した。また、No.6の継手においては、鋼板2及び鋼板3の重ね合わせ面におけるナゲット径が不足した。
No.7、No.10、及びNo.17の溶接では(I×Tが過剰であり、式2が満たされていなかった。その結果、No.7、No.10、及びNo.17の溶接では予備通電の段階で散りが発生した。また、No.7の継手においては、鋼板2及び鋼板3の重ね合わせ面におけるナゲット径が不足し、No.17の継手においては、鋼板1及び鋼板2の重ね合わせ面におけるナゲット径が不足した。
No.12及びNo.21の溶接では、主溶接が定電流制御で行われた。No.12の継手においては、鋼板2及び鋼板3の重ね合わせ面におけるナゲット径が不足した。No.21の継手においては、鋼板2及び鋼板3の重ね合わせ面にナゲットが形成されておらず、したがって、接合不良が生じていた。加えて、No.21の継手においては、鋼板1及び鋼板2の重ね合わせ面におけるナゲット径も不足した。
一方、式1~式3の全てが満たされる溶接条件によれば、散りの発生を抑制し、最適なナゲット径を有する継手を製造することができた。
10 電源装置
20 抵抗溶接制御装置
21 ROM
22 RAM
23 CPU
24 A/D変換器
25 インターフェイス
26 パワー素子
30 溶接トランス
40 電極間電圧検出回路
51 電極
52 電極
60 板組
601 鋼板
602 コンタミ層
603 新生面
70 スペーサー
P 圧接部
M 溶融部
E 散り
S1 予備通電
S2 主溶接
S3 後通電
Q 単位体積当たりの累積発熱量
q 単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量

Claims (10)

  1. 2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を抵抗スポット溶接する抵抗溶接システムであって、
    前記板組を挟む一対の電極と、
    一対の前記電極の間に電流を流す電源装置と、
    一対の前記電極に予備通電する予備通電部、及び前記予備通電に次いで一対の前記電極において主溶接する主溶接通電部を有し、前記電源装置を溶接電流と通電時間で制御する抵抗溶接制御装置と、
    を備え、
    前記主溶接通電部は、前記主溶接を、前記板組において良好な溶接ができる予め求められた単位体積当たりの累積発熱量から、前記主溶接の通電時間を基に単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量を計算し、前記計算された単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量を発生させる電極間抵抗 もしくは電極間電圧、又は溶接電流で調整することによって適応制御し、
    前記予備通電部は、前記予備通電を、式1、式2、及び式3を満たすように行う
    抵抗溶接システム。
    >I…(式1)
    750×t≦(I×T≦1550×t…(式2)
    10≦T≦50…(式3)
    ここで、前記式1、前記式2、及び前記式3において、
    は、前記予備通電において前記板組に流れる予熱電流(kA)であり、
    は、前記主溶接と同一の通電時間で、定電流制御された溶接電流を前記板組に流すことによって前記単位体積当たりの累積発熱量を得る場合における、前記定電流制御された溶接電流(kA)であり、
    は、前記予熱電流が流れる時間である予熱通電時間(msec)であり、
    tは、前記板組に含まれる前記鋼板の総板厚(mm)である。
  2. 前記板組に含まれる前記鋼板が3枚重ねであり、
    前記鋼板のうち1枚が、板厚0.8mm以下の薄板であり、
    前記鋼板のうち2枚が、板厚1.0mm以上の厚板であり、
    前記薄板が、前記板組の表面に配され、
    前記板組に含まれる前記鋼板の前記総板厚(mm)を、前記板組の前記表面に配された前記鋼板の板厚の最小値で割ることによって算出される総板厚比が3.5以上である
    ことを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接システム。
  3. 式4をさらに満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の抵抗溶接システム。
    +0.3×t<Imax<I+0.8×t…(式4)
    ここで、前記式4において、Imaxは前記主溶接における前記溶接電流の最大値(kA)である。
  4. 板隙や分流状況などの外乱を考慮し、式5をさらに満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の抵抗溶接システム。
    30/h<K<100/h…(式5)
    ここで、前記式5において、
    Kは、前記主溶接における前記溶接電流の変化率の最大値(kA/sec)であり、
    hは、前記板組に含まれる前記鋼板の前記総板厚(mm)を、前記板組の表面に配された前記鋼板の板厚の最小値で割ることによって算出される総板厚比である。
  5. 前記板組に含まれる前記鋼板のうち1枚以上が、引張強さ980MPa以上の高強度鋼板であり、
    前記抵抗溶接制御装置が、前記主溶接に次いで一対の前記電極に後通電する後通電部をさらに有し、
    前記後通電部は、前記後通電を、式6及び式7を満たすように行う
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の抵抗溶接システム。
    ×0.5≦I≦I×1.2…(式6)
    200≦T≦2000…(式7)
    ここで、前記式6、及び前記式7において、
    は、前記後通電において前記板組に流れる後熱電流(kA)であり、
    は、前記後熱電流が流れる時間である後熱通電時間(msec)である。
  6. 2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を挟む一対の電極に予備通電する工程と、
    前記予備通電に次いで、一対の前記電極において主溶接する工程と、
    を備え、
    前記主溶接を、前記板組において良好な溶接ができる予め求められた単位体積当たりの累積発熱量から、前記主溶接の通電時間を基に単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量を計算し、前記計算された単位体積及び単位時間当たりの瞬時発熱量を発生させる電極間抵抗 もしくは電極間電圧、又は溶接電流で調整することによって適応制御し、
    前記予備通電を、式1、式2、及び式3を満たすように行う
    抵抗溶接継手の製造方法。
    >I…(式1)
    750×t≦(I×T≦1550×t…(式2)
    10≦T≦50…(式3)
    ここで、前記式1、前記式2、及び前記式3において、
    は、前記予備通電において前記板組に流れる予熱電流(kA)であり、
    は、前記主溶接と同一の通電時間で、定電流制御された溶接を前記板組に行うことによって前記単位体積当たりの累積発熱量を得る場合における、前記定電流制御された溶接電流(kA)であり、
    は、前記予熱電流が流れる時間である予熱通電時間(msec)であり、
    tは、前記板組に含まれる前記鋼板の総板厚(mm)である。
  7. 前記板組に含まれる前記鋼板が3枚重ねであり、
    前記鋼板のうち1枚が、板厚0.8mm以下の薄板であり、
    前記鋼板のうち2枚が、板厚1.0mm以上の厚板であり、
    前記薄板が、前記板組の表面に配され、
    前記板組に含まれる前記鋼板の前記総板厚(mm)を、前記板組の前記表面に配された前記鋼板の板厚の最小値で割ることによって算出される総板厚比が3.5以上である
    ことを特徴とする請求項6に記載の抵抗溶接継手の製造方法。
  8. 式4をさらに満たすことを特徴とする請求項6又は7に記載の抵抗溶接継手の製造方法。
    +0.3×t<Imax<I+0.8×t…(式4)
    ここで、前記式4において、Imaxは前記主溶接における前記溶接電流の最大値(kA)である。
  9. 板隙や分流状況などの外乱を考慮し、式5をさらに満たすことを特徴とする請求項6又は7に記載の抵抗溶接継手の製造方法。
    30/h<K<100/h…(式5)
    ここで、前記式5において、
    Kは、前記主溶接における前記溶接電流の変化率の最大値(kA/sec)であり、
    hは、前記板組に含まれる前記鋼板の前記総板厚(mm)を、前記板組の表面に配された前記鋼板の板厚の最小値で割ることによって算出される総板厚比である。
  10. 前記板組に含まれる前記鋼板のうち1枚以上が、引張強さ980MPa以上の高強度鋼板であり、
    前記主溶接に次いで一対の前記電極に後通電する工程をさらに有し、
    前記後通電を、式6、及び式7を満たすように行う
    ことを特徴とする請求項6又は7に記載の抵抗溶接継手の製造方法。
    ×0.5≦I≦I×1.2…(式6)
    200≦T≦2000…(式7)
    ここで、前記式6、及び前記式7において、
    は、前記後通電において前記板組に流れる後熱電流(kA)であり、
    は、前記後熱電流が流れる時間である後熱通電時間(msec)である。
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