JP2013252543A - シリーズスポット溶接法 - Google Patents

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Tomomasa Ikeda
倫正 池田
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Ryosuke Date
亮介 伊達
Atsunori Mori
敦紀 毛利
Takashi Shinmyo
高史 新明
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Abstract

【課題】TSが 980 MPa級までの高張力鋼板に適用した場合であっても、高温割れ、溶落ち等の不良がなく、健全な溶接部を得ることができるシリーズスポット溶接方法を提供する。
【解決手段】重ね合わせた少なくとも2枚の鋼板に対し、同一面側から離隔した位置に一対の電極を押し当てて溶接を行うシリーズスポット溶接法であって、特定の先端形状を有する電極を用い、特定の加圧力F(N)により加圧し、且つ通電時間を2つの時間帯t,tに区分し、各時間帯t,tにおいてそれぞれ電流値C,Cで通電するものであり、t,t,C,Cについての適正化を図ることを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、鋼板のシリーズスポット溶接法に関するものである。
自動車部品の溶接に際しては、従来からスポット溶接、主にダイレクトスポット溶接が使用されてきたが、最近では、特に自動車のボディーやドアのヘミングプレス部等の溶接に際しては、シリーズスポット溶接法やインダイレクトスポット溶接法等が使用されるようになっている。
上記した3種類のスポット溶接の特徴を、図1を用いて説明する。
いずれのスポット溶接も、重ね合わせた2枚の鋼板を溶接により接合する点では変わりはない。
図1(a)は、ダイレクトスポット溶接法を示したものであるが、この溶接は、同図に示すとおり、重ね合わせた2枚の鋼板1,2を挟んでその上下から一対の電極3,4を加圧しつつ電流を流し、鋼板の抵抗発熱を利用して、点状の溶接部5を得る方法である。なお、電極3,4はいずれも、加圧制御装置6,7および電流制御装置8をそなえており、これらによって加圧力と通電する電流値が制御できる仕組みになっている。
図1(b)に示すシリーズスポット溶接法は、重ね合わせた2枚の鋼板11,12に対し、離隔した位置で、同一面側(同一方向)から一対の電極13,14を加圧しつつ電流を流し、点状の溶接部15−1,15−2を得る方法である。
図1(c)に示すインダイレクトスポット溶接法も、重ね合わせた2枚の鋼板21,22に対し、離隔した位置で同一面側から電流を流す点ではシリーズスポット溶接法と同様であるが、一対の電極23,24のうち片方の電極23は鋼板の重ね合わせた重合部に配置するのに対し、もう片方の電極24は単板部(この例で鋼板22)に配置させ、これらの間で通電することにより、上記重合部に点状の溶接部25を形成する方法である。
上記した3種類の溶接法のうち、スペース的に余裕があり、鋼板を上下から挟む開口部が得られる場合には、ダイレクトスポット溶接法が用いられる。
しかしながら、実際の溶接に際しては、十分なスペースがない、閉断面構造で鋼板を上下から挟むことができない場合も多く、かような場合には、シリーズスポット溶接法やインダイレクトスポット溶接法が用いられる。
特にシリーズスポット溶接法は、2点を同時に溶接することができることから、溶接の高速化が図れるという利点がある。
しかしながら、シリーズスポット溶接法は、電極を一方向から加圧する形式であるため、ダイレクトスポット溶接法のように十分な加圧力が得られず、また離隔した位置間での通電であるため、重ね合わせた鋼板の内部で電流の流れが不均一になり易く、十分な溶接強度が得られない場合があった。
上記の問題を解決するものとして、特許文献1には、「シリーズスポット溶接又はインダイレクトスポット溶接の通電時に、電流値を高く維持する時間帯と電流値を低く維持する時間帯を交互に繰り返す」ことからなる溶接法、及び、「電流値を高く維持する時間帯と電流値を低く維持する時間帯を交互に繰り返すにつれて、電流値を高く維持する時間帯の電流値を徐々に高くする」ことからなる溶接法が開示されている。
特許文献1に開示の溶接法により、シリーズスポット溶接において金属板の重合部に良好なナゲットを形成することが可能となり、金属板の溶接に十分な溶接強度を確保することができるようになった。
ところで、最近では、地球環境の保全という観点から、自動車の燃費改善が要求され、また車両衝突時に乗員を保護する観点から、自動車車体の安全性向上も要求されている。このため、自動車車体の軽量化および強化の双方を図るための検討が積極的に進められている。
自動車車体の軽量化と強化を同時に達成するには、部品素材を高強度化することが効果的であると言われており、最近では引張強さ(TS)が440 MPa以上の高張力鋼板が自動車部品に使用されるようになった。すなわち、高張力鋼板を適用して、使用する鋼板の薄肉化を図り、これにより自動車車体の軽量化と強化を同時に達成しようとするものである。
ただし、上述したような高張力薄鋼板を、シリーズスポット溶接やインダイレクトスポット溶接で接合しようとする場合、高張力鋼板はCやSiなどの電気抵抗率を上げる元素を比較的多量に含有しているため発熱しやすく、電流経路の不均一性と相乗して局部的な発熱を助長させることから、高温割れ、溶落ちが顕著になる。このため、上掲した特許文献1に開示の溶接法を用いたとしても、必ずしも健全な溶接部が得られないという問題があった。
上記の問題を解決するものとして、特許文献2には、「重ね合わせた少なくとも2枚の鋼板に対し、同一面側から離隔した位置に一対の電極を押し当てて溶接を行うシリーズスポット溶接またはインダイレクトスポット溶接により、高張力鋼板を溶接するに際し、通電時間を4つの時間帯t1-1,t1-2,t1-3,t1-4に分割し、まず最初の時間帯t1-1において電流C1-1を通電したのち、時間帯t1-2では電流C1-1よりも高い電流C1-2を通電し、ついで時間帯t1-3では通電電流をC1-2から段階的または連続的に増大し、その後時間帯t1-4では時間帯t1-3で到達した最高電流C1-3以上の電流C1-4を通電する」ことからなる高張力鋼板の溶接法が開示されている。
特開2006−198676号公報 特開2009−241136号公報
しかしながら、特許文献2の技術では、シリーズスポット溶接またはインダイレクトスポット溶接によって、TSが 440 MPa級以上の高張力鋼板を健全に溶接することはできるものの、例えばTSが980MPa級の高張力鋼板の溶接を考慮に入れると、必ずしも健全な溶接部が得られるとは限らず、さらなる技術の改善が望まれていた。
TSが 440 MPa級以上の高張力鋼板は勿論のこと、TSが 980 MPa級までの高張力鋼板などに適用した場合であっても、高温割れ、溶落ち等の不良がなく、健全な溶接部を得ることができるシリーズスポット溶接法を提案することを本発明の目的とする。
発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、次に述べる知見を得た。
a)高張力鋼板は普通鋼よりも電気抵抗が高く発熱し易いため、普通鋼の場合と同じように電流を通電すると、鋼板が局部的な発熱と過度の変形を受け、甚だしい場合には高温割れや溶け落ちが生じる。
b)上記弊害を解決するためには、重ね合わせた鋼板間の界面において満足な強度が得られる接合径及び接合状態を形成するための十分な発熱を確保しつつ、接合部周辺において高温割れや溶け落ちが生じるような過度の発熱とならないよう制御する必要がある。
c)また、高温割れ発生に関しては、接合時の温度と歪みが影響すると考えられる。すなわち、高温かつ高歪となる位置において高温割れが発生しやすい。
特許文献1及び特許文献2に開示のシリーズスポット溶接では、接合中に通電による抵抗発熱で鋼板を軟化させ電極を徐々に沈み込ませながら接合を行うことから、ダイレクトスポット溶接と比較すると、接合部に大きな変形が導入されることとなる。また、重ね合わせた鋼板の電極を押し当てる面とは反対側において、電極先端の平坦部の外縁付近で高温割れが発生しやすいことがわかり、数値解析を行った結果、この部位(電極先端の平坦部の外縁付近)における接合時の歪みが顕著に大きくなっていることが明らかとなった。
d)以上のことを踏まえ、接合部形成のために接合界面での十分な発熱を確保しつつ、さらに、接合部周辺において高温割れや溶け落ちの生じるおそれがある過度の発熱及び変形を抑制できる通電パターンについて検討を行った結果、低電流で長時間通電した後、高電流で短時間通電を行って接合を終了することが有効であると判明した。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.重ね合わせた少なくとも2枚の鋼板に対し、同一面側から離隔した位置に一対の電極を押し当てて溶接を行うシリーズスポット溶接法であって、
円錐角が120〜165°である円錐状の先端形状を有し、該円錐の先端中心部に直径が1.5〜3mmの平坦部が形成された電極を用い、
下記式(1)で表される加圧力F(N)により加圧し、且つ通電時間を2つの時間帯t,tに区分し、各時間帯t,tにおいてそれぞれ電流値C,Cで通電するものであり、最初の時間帯t(s)は下記式(2)で表され、該時間帯tにおいて通電される電流値C(kA)は下記式(3)で表され、その後の時間帯tは0.02〜0.06sであり、該時間帯tにおいて通電される電流値C(kA)は下記式(4)で表されることを特徴とするシリーズスポット溶接方法。

93T≦F≦ 220T ・・・(1)
0.125T≦t≦0.375T ・・・(2)
1.25T≦C≦2.5T ・・・(3)
3.5T≦C≦7.5T ・・・(4)
ただし、Tは、重ね合わせた金属板の総板厚(mm)である。
2.前記時間帯tに先立って、時間帯tprを設け、該時間帯tprにおいて電流値Cprで通電を行い、該時間帯tpr(s)は下記式(5)で表され、電流値Cpr(kA)は下記式(6)で表されることを特徴とする上記1に記載のシリーズスポット溶接方法。

0.025T≦tpr≦0.075T ・・・(5)
0.7C≦Cpr≦1.5C ・・・(6)
ただし、Tは、重ね合わせた金属板の総板厚(mm)である。
3.前記時間帯tの後に続いて、時間帯tpoを設け、該時間帯tpoにおいて電流値Cpoで通電を行い、該時間帯tpo(s)は下記式(7)で表され、電流値Cpo(kA)は下記式(8)で表されることを特徴とする上記1に記載のシリーズスポット溶接方法。

0.125T≦tpo≦0.375T ・・・(7)
0.8C≦Cpo≦1.2C ・・・(8)
ただし、Tは、重ね合わせた金属板の総板厚(mm)である。
4.前記鋼板は、引張強さ(TS)が980MPa以下の高張力鋼板であり、重ね合わせた金属板の総板厚Tが、1.0〜4.0mmであることを特徴とする上記(1)に記載のシリーズスポット溶接方法。
本発明によれば、シリーズスポット溶接を、TSが 980 MPa級までの高張力鋼板に適用した場合であっても、高温割れ、溶落ち等の不良がなく、健全な溶接部を得ることが可能となる。
ダイレクトスポット溶接法(a)、シリーズスポット溶接法(b)及びインダイレクトスポット溶接法(c)の溶接要領の説明図である。 通電時間と通電電流との関係を示した図である。 板厚0.8mmのSPC440を2枚重ねた板組みに対し、加圧力245N、第1通電の時間帯tの長さが0.3s、電流Cが3kA、第2通電の時間帯tの長さが0.06s、電流C2が6kAの条件で溶接した際の、(a)は接合部断面を示した図であり、(b)は(a)と同様の断面において相当歪分布を数値解析により算出した図であり、(c)は(a)と同様の断面において温度分布を数値解析により算出した図である。 実施例1における鋼板間のスペーサの配置条件を示した図である。 本発明に用いられる電極の先端の上面及び側面を示した図である。
以下、本発明を図面に従い具体的に説明する。
本発明は、重ね合わせた少なくとも2枚の鋼板に対し、同一面側から離隔した位置に一対の電極を押し当てて溶接を行うシリーズスポット溶接法である。
そして、本発明は、特定の先端形状を有する電極を用い、電極の加圧に関しては、溶接中に一定の加圧力Fで加圧し、通電する電流値に関しては、通電時間を2つの時間帯に区分し、それぞれの時間帯において通電する電流を制御することを特徴とする。
使用する電極は、図5に示すように、円錐角が120〜165°である円錐状の先端形状を有し、該円錐の先端中心部に直径が1.5〜3mmの平坦部が形成されたものを用いる。
初期に電極を重ね合わせた鋼板の一方の面側に押し当て、徐々に電極先端が沈み込み、重ね合わせた鋼板を変形させながら密着させることで、鋼板間に不純物のない清浄面を接触させることができるようにするためである。
前記円錐角を120〜165°としたのは、円錐角が120°未満の場合、通電中に電極が鋼板に急激に沈み込み、過度に鋼板が変形する結果、高温割れが発生しやすくなるからであり、一方、円錐角が165°を超えると、接合部を形成するために必要な鋼板間の清浄面が得られないからであり、好ましくは130〜155°、より好ましくは135〜150°である。
前記円錐の先端中心部に直径が1.5〜3mmの平坦部を形成したのは、通電初期に適度な発熱により鋼板を軟化させて徐々に電極を沈み込ませるためである。なお、前記平坦部の直径が1.5mm未満の場合、通電初期における電極と鋼板の接触面積が小さくなって電流密度が過度になるため、鋼板の溶融、飛散が起こり、溶接部の外観や性能を損なうおそれがあるからであり、一方、前記平坦部の直径が3mmを超えると、電極と鋼板の接触面積が大きすぎ電流密度が低下し、鋼板を軟化させるために十分な発熱が得られないためであり、好ましくは1.7〜2.7mm、より好ましくは1.8〜2.5mmである。
前記電極の加圧力Fは、重ね合わせた鋼板の厚みと相関関係にあることが判明した。そこで、発明者らは、鋼板の厚みを加味した加圧力F(N)の適正値について検討したところ、この加圧力F(N)は、鋼板の総厚みとの関係で、次式(1)の条件を満足するように制御することで、健全な溶接部を得ることが可能となることを見出した。
93T≦F≦ 220T ・・・(1)
ただし、Tは、重ね合わせた鋼板の総板厚(mm)である。
前記加圧力Fが93T未満の場合、加圧力が小さすぎるため電極の沈み込みが不十分となり、健全な接合を得ることができない。一方、前記加圧力Fが220Tを超えると、加圧力が大きくなりすぎるため、電極先端の平坦部の外縁付近での歪みが大きくなり、高温割れや溶け落ちが発生するおそれがある。
本発明のシリーズスポット溶接方法は、通電する電流値に関し、通電時間を2つの時間帯t,tに区分し、各時間帯t,tにおいて、通電するそれぞれの電流値C,Cを制御する。
図2に、本発明の基本的な通電時間と通電電流との関係を示す。
本発明において、最初の時間帯tでは、電流Cを通電する。この時間帯tは、重ね合わせた鋼板間の界面において満足な強度が得られる接合径を確保するため、低電流で長時間通電し、電極と接触する鋼板を軟化させて鋼板間に適正な大きさの接触部を得る時間帯である。すなわち、通電により鋼板を軟化して、電極先端を沈み込ませ、2枚の鋼板を密着させる。溶接前に、鋼板間に隙間がある場合でも、この時間帯tで解消することができる。
前記時間帯tの長さ(s)は、短すぎると満足な強度が得られる接合径を確保するための接触面積が得られず、長すぎると接触面積が過大となりその後の過程で満足な接合強度を確保する接合状態が得られないため、適宜選択する必要がある。そして、この時間帯tの長さ(s)は、重ね合わせた鋼板の厚みと相関関係にあり、鋼板の総厚みとの関係で次式(2)の範囲に制御すべきことが究明された。

0.125T≦t≦0.375T ・・・(2)
ただし、Tは、重ね合わせた鋼板の総板厚(mm)である。
前記t(s)が0.125Tよりも小さい場合、通電時間が短すぎるため、満足な強度が得られる接合径を確保するための接触面積が得られない。一方、前記t(s)が0.375Tを超えると、通電時間が長すぎるため、鋼板同士の接触面積が過大となり、満足な接合強度を確保する接合状態が得られない。
また、前記時間帯tにおける電流値C(kA)は、適切な範囲に制御することで、鋼板の表面が発熱により軟化し、鋼板の表面に電極の先端が徐々に沈み込み、鋼板と電極との接触面積が広くなる。電流値Cが低過ぎると満足な強度が得られる接合径を確保するための接触面積が得られず、高すぎると接触面積が過大となりその後の過程で満足な接合強度を確保する接合状態が得られないばかりか、スパッタが発生する不具合を生じやすくなるため適宜選択する必要がある。そして、この電流Cは、重ね合わせた鋼板の厚みと相関関係にあり、鋼板の総厚みとの関係で次式(3)の範囲に制御すべきことが究明された。
1.25T≦C≦2.5T ・・・(3)
ただし、Tは、重ね合わせた鋼板の総板厚(mm)である。
前記C(kA)が1.25Tよりも小さい場合、電流が弱すぎるため、満足な強度が得られる接合径を確保するための接触面積が得られない。一方、前記C(kA)が2.5Tを超えると、電流が強すぎるため、鋼板同士の接触面積が過大となり、満足な接合強度を確保する接合状態が得られない。
本発明のシリーズスポット溶接方法は、次いで、時間帯t2において、電流C2を通電する。
この時間帯t2は、高電流・短時間通電し、時間帯tで形成した鋼板間の接触部に、満足な強度が得られる接合状態を形成するための時間帯である。すなわち、時間帯tから急激に電流を上昇させ鋼板間の接触部を抵抗発熱により高温にし、溶融接合状態もしくは溶融接合と同等の強度を有する固相接合状態を形成する。
特に、高張力鋼板については、普通鋼に比べて電気抵抗が高く発熱しやすいため、高温割れや溶け落ちが生じるという問題がある。このような課題を解決するには、重ね合わせた鋼板間の界面において満足な強度が得られる接合径と接合状態を形成する上で十分な発熱を確保しつつ、接合部周辺において高温割れや溶け落ちが生じるような過度の発熱を抑制する必要がある。
上記高温割れ発生に関しては、接合時の温度と歪みが影響すると考えられ、本発明では接合中に通電による抵抗発熱で鋼板を軟化させ電極を徐々に沈み込ませながら接合を行うため、接合部にはダイレクトスポット溶接と比較すると大きな変形が導入される。特に、図3(a)に示すように重ね合わせた鋼板の電極を押し当てる面側とは反対側で、極先端平坦部の外縁付近で高温割れが発生しやすいが、図3(b)に示すように数値解析を行った結果、この部位で接合時の相当塑性歪が顕著に大きくなることが明らかとなった。そのため、図3(c)に示すように、接合部形成のために接合界面において十分な発熱を確保しつつ、上述したような接合部周辺において高温割れや溶け落ちが生じるような過度の発熱と変形を抑制することが重要である。接合部の温度分布は、通電による抵抗発熱と水冷電極による伐熱により熱的にバランスをとっている。
ここで、時間帯t(s)が長すぎると、電極近傍の鋼板間の接合部を形成すべき部位が水冷電極による伐熱で十分に高温に達することができないばかりか、接合部周辺が過度に高温となり、電極が鋼板に沈み込み鋼板の変形が大きくなるため、高温割れが発生しやすくなる。また、t(s)が短すぎると満足な強度が得られる接合状態を確保するための発熱が得られない。
そのため、時間帯tの長さ(s)を適宜選択することによって、電極近傍の鋼板間の接合部を形成すべき部位を満足な接合状態を形成する上で十分な高温状態とすることができ、かつ接合部周辺が過度に高温となることを抑制し、さらに上記の相当塑性歪が顕著に大きくなる部位の相当塑性歪を低く抑えることができるため、高温割れを回避することが可能となる。
そして、この時間帯tの長さは、重ね合わせた鋼板の厚みにかかわらず、0.02〜0.06sとすべきであることが究明された。t(s)が0.02s未満の場合、満足な強度が得られる接合状態を確保するための発熱が得られず、一方、t(s)が0.06sを超えると、接合部周辺が過度に高温となり、電極が鋼板に沈み込み鋼板の変形が大きくなるため、高温割れが発生することとなる。
また、前記鋼板の厚みTによる発熱量の過不足をなくすべく、前記時間帯tにおいて通電される電流値C2について、鋼板の総厚みとの関係で次式(4)の範囲に制御すべきことが究明された。
3.5T≦C≦7.5T ・・・(4)
ただし、Tは、重ね合わせた鋼板の総板厚(mm)である。
前記電流値C2が3.5T未満の場合、満足な強度が得られる接合状態を確保するための発熱が得られず、一方、前記電流値C2が7.5Tを超えると、接合部周辺が過度に高温となり、電極が鋼板に沈み込み鋼板の変形が大きくなるため、高温割れが発生する。
また、本発明のシリーズスポット溶接方法は、時間帯t及び時間帯t2から構成されるが、接合時のスパッタを抑制する接合部の隙間を解消するため、前記時間帯tに先立って、下式(5)で表される長さ(s)の時間帯tprを設け、該時間帯tprにおいて、下式(6)で表される大きさ(kA)の電流値Cprで通電を行うことが好ましい。
0.025T≦tpr≦0.075T ・・・(5)
0.7C≦Cpr≦1.5C ・・・(6)
ただし、Tは、重ね合わせた鋼板の総板厚(mm)である。
前記時間帯tprの長さが0.025T未満の場合、前記スパッタを抑制する効果及び前記接合部の隙間を解消する効果に乏しく、一方、前記時間帯tprの長さが0.075Tを超えると、時間帯tの効果を損なうおそれがある。前記電流値Cprの大きさが0.7C未満の場合、前記スパッタを抑制する効果及び前記接合部の隙間を解消する効果に乏しく0、一方、前記電流値Cprの大きさが1.5Cを超えると、時間帯tprの効果を損なうおそれがある。
さらに、本発明のシリーズスポット溶接方法は、鋼板の接合部において過度に硬質となる組織の発生を抑制するべく、前記時間帯tの後に続いて、下式(7)で表される長さ(s)の時間帯tpoを設け、該時間帯tpoにおいて、下式(8)で表される大きさ(kA)の電流値Cpoで通電を行うことが好ましい。
0.125T≦tpo≦0.375T ・・・(7)
0.8C≦Cpo≦1.2C ・・・(8)
ただし、Tは、重ね合わせた鋼板の総板厚(mm)である。
前記時間帯tpoの長さが0.125T未満の場合、時間が短すぎるため前記接合部の硬質部を解消することができないおそれがあり、一方、前記時間帯tpoの長さが0.375Tを超えると、時間が長すぎるため高温割れや溶け落ちを引き起こすおそれがある。前記電流値Cpoの大きさが0.8C未満の場合、電流が小さすぎるため前記接合部の硬質部を解消することができないおそれがあり、一方、前記電流値Cpoの大きさが1.2Cを超えると、高温割れや溶け落ちを引き起こすおそれがある。
なお、本発明のシリーズスポット溶接方法に用いられる鋼板については、特に限定はされないが、本発明の引張強さの大きい高張力鋼板に適用した場合であっても、高温割れ、溶落ち等の不良がなく、健全な溶接部を得ることが可能となるという効果を最も顕著に発揮できる観点からは、引張強さ(TS)が980MPa以下の高張力鋼板であり、重ね合わせた金属板の総板厚Tが、1.0〜4.0mmの範囲であることが好ましい。
また、本発明のシリーズスポット溶接方法における他の条件については、特に限定はされない。公知の技術を、適宜選択して用いることができる。
図1(b)に示すシリーズスポット溶接において、表1に示した条件で、鋼板11を上板、鋼板12を下板とした板組みをサンプルとして用意し、該板組みに対して、表2に示す加圧力、第1通電、第2通電の通電時間及び電流値の条件で溶接を行った。ここで、溶接については、50Hzの交流インバータ電源を用いて行っており、cycは通電時間を設定する単位であり、1cycは1/50秒である。
また、円錐角が140°である円錐状の先端形状を有し、該円錐の先端中心部に直径が2mmの平坦部が形成された電極を用い、さらに溶接割れ、溶け落ちの傾向を意図的に助長させることを目的とし、鋼板11と鋼板12の間に図4に示すように厚さ:0.5mmのスペーサを配置し、板隙のある状態で溶接を行った。
なお、表2において、発明例1〜8は請求項1を満たすものであるのに対し、比較例1〜8は加圧力、第1通電及び第2通電の通電時間、電流値のいずれかが請求項1を満たさないものである。
(評価)
各発明例及び比較例によって得られたサンプルについて、溶接継手の外観観察により割れ、溶け落ちを確認した。
また、JIS Z 3137(1990)「スポット溶接継手の引張試験方法」に準拠する方法でU字引張試験に供した。表3に、表2に示す通電パターンで溶接したときの各継手の下板割れ、溶け落ちの観察結果及びU字引張強度の測定を行った。なお、比較例1〜8において、下板割れ、溶け落ちの発生した継手については、U字引張試験を実施しなかった。
外観観察及びU時引張試験の結果を表3に示す。
表3に示したとおり、発明例1〜8のサンプルについては、下板割れ及び溶け落ちのいずれもなく、かつ良好な継手引張強度が得られた。
一方、比較例2、3、6、7及び8については、下板割れ、溶け落ちが確認され、比較例1、4及び5のサンプルについては、下板割れ、溶け落ちは発生しなかったものの、良好な継手引張強度が得られなかった。
本発明によれば、TSが 980 MPa級までの高張力鋼板に適用した場合であっても、高温割れ、溶落ち等の不良がなく、健全な溶接部を得ることができるシリーズスポット溶接方法を提供できる。その結果、従来技術に比べてより健全な溶接部を有する高張力鋼板の板組みについても提供が可能となる。
1,2 金属板
3,4 電極
5 溶接部
6,7 加圧制御装置
8 電流制御装置
11,12 金属板
13,14 電極
15−1,15−2 溶接部
21,22 金属板
23 電極
24 給電端子
25 溶接部

Claims (4)

  1. 重ね合わせた少なくとも2枚の鋼板に対し、同一面側から離隔した位置に一対の電極を押し当てて溶接を行うシリーズスポット溶接法であって、
    円錐角が120〜165°である円錐状の先端形状を有し、該円錐の先端中心部に直径が1.5〜3mmの平坦部が形成された電極を用い、
    下記式(1)で表される加圧力F(N)により加圧し、且つ通電時間を2つの時間帯t,tに区分し、各時間帯t,tにおいてそれぞれ電流値C,Cで通電するものであり、最初の時間帯t(s)は下記式(2)で表され、該時間帯tにおいて通電される電流値C(kA)は下記式(3)で表され、その後の時間帯tは0.02〜0.06sであり、該時間帯tにおいて通電される電流値C(kA)は下記式(4)で表されることを特徴とするシリーズスポット溶接方法。

    93T≦F≦ 220T ・・・(1)
    0.125T≦t≦0.375T ・・・(2)
    1.25T≦C≦2.5T ・・・(3)
    3.5T≦C≦7.5T ・・・(4)
    ただし、Tは、重ね合わせた金属板の総板厚(mm)である。
  2. 前記時間帯tに先立って、時間帯tprを設け、該時間帯tprにおいて電流値Cprで通電を行い、該時間帯tpr(s)は下記式(5)で表され、電流値Cpr(kA)は下記式(6)で表されることを特徴とする請求項1に記載のシリーズスポット溶接方法。

    0.025T≦tpr≦0.075T ・・・(5)
    0.7C≦Cpr≦1.5C ・・・(6)
    ただし、Tは、重ね合わせた金属板の総板厚(mm)である。
  3. 前記時間帯tの後に続いて、時間帯tpoを設け、該時間帯tpoにおいて電流値Cpoで通電を行い、該時間帯tpo(s)は下記式(7)で表され、電流値Cpo(kA)は下記式(8)で表されることを特徴とする請求項1に記載のシリーズスポット溶接方法。

    0.125T≦tpo≦0.375T ・・・(7)
    0.8C≦Cpo≦1.2C ・・・(8)
    ただし、Tは、重ね合わせた金属板の総板厚(mm)である。
  4. 前記鋼板は、引張強さ(TS)が980MPa以下の高張力鋼板であり、重ね合わせた金属板の総板厚Tが、1.0〜4.0mmであることを特徴とする請求項1に記載のシリーズスポット溶接方法。
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JP2006198676A (ja) * 2004-12-24 2006-08-03 Daihatsu Motor Co Ltd 抵抗溶接用電極、及び、シリーズスポット溶接装置又はインダイレクトスポット溶接装置
JP2008055437A (ja) * 2006-08-29 2008-03-13 Daihatsu Motor Co Ltd シリーズスポット溶接方法、およびこの溶接で得られる接合体

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