JP2023539727A - 転移バイオマーカー - Google Patents

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Abstract

本発明は、がんと診断された対象が転移を発症する可能性があるか、または発症している可能性があるかどうかを決定する方法であって、対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを検出することを含む方法に関する。本発明はまた、がん、特に転移性がんを診断、予後診断、モニタリングおよび/または病期分類するための方法およびマーカーにも関する。

Description

本発明は、バイオマーカーおよびその使用に関する。特に、本発明は、がん転移の可能性の予測、またはがん転移の診断および/もしくはモニタリングにおけるその使用に関する。
導入
癌腫としても知られる上皮細胞がんは、全てのがん症例の80~90パーセントを占める。1つのそのような癌腫、乳がんは、世界で2番目に最もよく見られるがんタイプであり、全てのがんの10%以上を占める。乳がんは女性に最もよく見られるがんであり、年間200万人を超える女性が乳がんと診断され、年間50万人以上の患者が該疾患で死亡している。
原発腫瘍の転移性播種はがん関連死の主な原因であり、固形腫瘍がん死亡の最大90%を占める。さらに、腫瘍が転移していると診断された患者は5年生存率が22%しかない。転移は、原発腫瘍から広がった細胞の集団化から始まる遊走性上皮間葉転換(EMT)表現型をがん細胞が獲得すると生じる。そのような細胞の浸潤性表現型は、転移の初期段階でのそのような細胞の血管内皮層(endothelial vascular layer)への浸潤と相関する基本的特性である。
がんのステージの評価は何らかの予後診断を行い、適切な治療レジメンを決定するのに極めて重要である。現在の予後はリンパ節状態の評価に基づく場合が多く、リンパ浮腫などの重度の副作用をもたらす可能性があるリンパ節生検などの浸潤的手技を必要とする。
したがって、当技術分野にはがんを診断、予後診断、モニタリングおよび/または病期分類するための新たな改善された方法およびマーカーを開発する必要性がある。本発明はこれらの必要性を満たし、他の関連する利点をさらに提供するものである。
発明の概要
第1の態様では、本発明は、がんと診断された対象が転移を発症する可能性があるか、または発症している可能性があるかどうかを決定する方法であって、対象から得られた試料中の膜結合アクチンを検出することを含み、膜結合アクチンが試料中に検出される場合に、対象は転移を発症する可能性があるかまたは発症している可能性があると決定される、方法を提供する。検出されたアクチンは、アルファ、ベータ、および/またはガンマアクチンのうちの1つまたは複数であってもよい。一実施形態では、膜結合アクチンはベータアクチンである。
第2の態様では、対象を転移性がんと診断する方法であって、対象から得られた試料中の膜結合アクチンを検出することを含み、膜結合アクチンが試料中に検出される場合に、対象は転移性がんを有すると決定される方法が提供される。一実施形態では、膜結合アクチンはベータアクチンである。
第1または第2の態様のいずれかにおいて、対象から得られた試料中の膜結合アクチンのいずれのレベルの検出も方法の実施を可能にすることができる。
第3の態様では、がんと診断された対象が転移を発症する可能性があるか、または発症している可能性があるかどうかを決定する方法であって:
a.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを測定すること、
b.対象から得られた試料で測定された膜結合アクチンのレベルを標準試料中の膜結合アクチンのレベルと比較すること、および
c.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルが、標準試料中の膜結合アクチンのレベルとほぼ同等かまたはより高ければ、対象は転移を発症する可能性があるかまたは発症している可能性があると決定すること
を含む方法が提供される。
一実施形態では、膜結合アクチンはベータアクチンである。
第4の態様では、対象を転移性がんと診断する方法であって:
a.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを測定すること、
b.対象から得られた試料で測定された膜結合アクチンのレベルを標準試料中の膜結合アクチンのレベルと比較すること、および
c.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルが、標準試料中の膜結合アクチンのレベルとほぼ同等かまたはより高い場合に、対象を転移性がんと診断すること
を含む方法が提供される。
一実施形態では、膜結合アクチンはベータアクチンである。
第5の態様では、がんと診断された対象を予後診断する方法であって、
a.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを測定すること、
b.試料で測定された膜結合アクチンのレベルを標準試料中の膜結合アクチンのレベルと比較すること、
c.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルが、標準試料中の膜結合アクチンのレベルとほぼ同等かまたはより高い場合に、患者は予後不良であると決定すること
を含む方法が提供される。
一実施形態では、膜結合アクチンはベータアクチンである。
予後不良とは、転移を発症する可能性の増加および/または対象の生存の可能性の低下を指し得る。
第6の態様では、転移性がんの既知の治療による治療から恩恵を受ける可能性がある、がんと診断された患者を同定する方法であって:
a.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを測定すること、
b.試料で測定された膜結合アクチンのレベルを標準試料中の膜結合アクチンのレベルと比較すること、
c.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルが、標準試料中の膜結合アクチンのレベルとほぼ同等かまたはより高ければ、患者は転移性がんの既知の治療による治療から恩恵を受ける可能性があると決定すること
を含む方法が提供される。
一実施形態では、膜結合アクチンはベータアクチンである。
当業者は、転移性がんの適切な既知の治療を同定することができ、転移性疾患がどれほど広範で進行している可能性があるか、およびがんの分子プロファイルに応じて転移性がんの既知の治療が異なることを理解するであろう。例えば、適切な治療は補助化学療法であってもよく、特定の治療および/またはレジメンは対象の特定の腫瘍の特徴に依存する。
一例として、転移性がんの既知の治療は、ハーセプチン(商標)または別のHer2遮断モノクローナル抗体治療などの、転移性乳がんの治療における使用で知られている治療であってもよい。
任意の態様では、膜結合アクチンは上皮がん細胞などの細胞の膜で検出または測定され得る。膜結合アクチンは、細胞外小胞(EV)の膜で検出または測定され得る。膜結合アクチンは、細胞の膜および細胞外小胞の膜のいずれにおいても検出され得る。
任意の態様では、EVには限定されるものではないが、エキソソーム、エキソマー(exomer)、微小胞、およびアポトーシス小体が含まれ得る。
任意の態様において対象から得られた、または標準として使用される試料は、血液試料、唾液試料、尿試料などの生体液試料であってもよく、または試料は、乳房組織生検試料などの組織生検試料であってもよい。
任意の態様では、膜結合アクチンは、対象から得られた固形乳房組織生検からの乳がん上皮細胞の形質膜から検出または測定され得る。
任意の態様では、膜結合アクチンは、対象から得られた血液試料から単離された細胞外小胞の膜から検出または測定され得る。
第3から第6の態様のいずれかにおいて、標準試料は陽性標準試料であってもよい。
第3から第6の態様のいずれかにおいて、標準試料は陰性標準試料であってもよい。
任意の態様では、膜結合アクチンはベータアクチンであってもよい。任意の態様では、膜結合アクチンはアルファアクチンであってもよい。任意の態様では、膜結合アクチンはガンマアクチンであってもよい。任意の態様では、膜結合アクチンは、アルファアクチン、ベータアクチンおよびガンマアクチンのうちの1つもしくは複数、または全てであってもよい。
標準試料が陽性標準試料である場合、本発明の第3から第6の態様のいずれかのうちの工程cにおける決定は、その試料で検出または測定された膜結合アクチンのレベルが、標準試料で検出または測定された膜結合アクチンのレベルと同等かまたはより高い場合になされる。
標準試料が陰性標準試料である場合、本発明の第3から第6の態様のいずれかのうちの工程cにおける決定は、その試料で検出または測定された膜結合アクチンのレベルが、標準試料で検出または測定された膜結合アクチンのレベルより高い場合になされる。差異の大きさは、対象から得られた試料と標準試料の間の関係、および各試料の特徴に依存し得る。例えば、対象から得られた試料で検出または測定された膜結合アクチンのレベルが、標準試料で検出または測定された膜結合アクチンのレベルより少なくとも約5%多い、少なくとも約10%多い、少なくとも約20%多い、少なくとも約50%多い、少なくとも約100%多い、少なくとも約200%多い、少なくとも約300%多い、少なくとも約400%多い、少なくとも約500%多い、少なくとも約1000%多い、少なくとも約2000%多い、少なくとも約5000%多い、約少なくとも10,000%多い、少なくとも20,000%以上、少なくとも50,000%多い、少なくとも100,000%多い、少なくとも500,000%多い、少なくとも1,000,000%多い場合に、決定はなされ得る。あるいはまたはさらに、対象から得られた試料で検出または測定された膜結合アクチンのレベルが、標準試料で検出または測定された膜結合アクチンのレベルより少なくとも約1倍以上、少なくとも約2倍以上、少なくとも約3倍以上、少なくとも約4倍以上、少なくとも約5倍以上、少なくとも約10倍以上、少なくとも約20倍以上、少なくとも約50倍以上、少なくとも約100倍以上、少なくとも約250倍以上、少なくとも約500倍以上、少なくとも約1000倍以上、少なくとも約5000倍以上、少なくとも約10,000倍以上、少なくとも約20,000倍以上、少なくとも約50,000倍以上、少なくとも約100,000倍以上、少なくとも約500,000倍以上高い場合に、決定はなされ得る。
任意の態様の一実施形態では、対象から得られた試料は、上皮細胞、および/またはEV、および/または循環腫瘍細胞を含み得る。循環腫瘍細胞は上皮細胞であってもよい。
試料が上皮細胞を含む場合、膜結合アクチンの検出はこれらの細胞で実施することができ、これらの細胞は必要に応じて残りの試料から最初に単離、同定、または分離され得る。
試料がEVを含む場合、膜結合アクチンの検出または測定はこれらのEVで実施することができ、これらのEVは必要に応じて残りの試料から単離、同定、または分離され得る。
試料が循環腫瘍細胞を含む場合、膜結合アクチンの検出または測定はこれらの細胞で実施することができ、これらの細胞は必要に応じて残りの試料から単離、同定、または分離され得る。
細胞および/またはEVが残りの試料から単離、同定、または分離される場合、1つまたは複数の適切なバイオマーカーが使用され得る。
例えば、上皮細胞を試料から単離、同定、または分離するために、上皮抗EpCAM抗体が、当業者が適切と思う任意の方法、例えばFACSで使用されてもよい。
試料からEVを単離または分離するために、抗体CD9、抗CD63および/または抗CD81抗体のうちの1つまたは複数が、当業者が適切と思う任意の方法、例えばFACSで使用されてもよい。同様に、残りの試料から上皮細胞に由来するEVを単離、同定、または分離するために、抗EpCAM抗体が1つまたは複数のEV特異的バイオマーカーと組み合わせて使用されてもよい。
循環腫瘍細胞を試料から単離、同定、または分離するために、抗EpCAM抗体またはEpCAMに結合するDNAもしくはRNAが使用されてもよい。これは、上皮細胞が通常は循環中に見出されず、その存在が循環腫瘍細胞を示すことになるためである。循環腫瘍細胞を試料から単離、同定、または分離するために、ER、PR、EGFR、HER2、TOP2Aのうちの1つまたは複数を検出する手段が使用されてもよい(Nadal et al. Breast Cancer Research 2012, 14:R71)。該手段は、ER、PR、EGFR、HER2またはTOP2Aに特異的に結合する抗体、DNAまたはRNA分子であってもよい。
別の態様では、対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを測定することを含む、転移性がんの治療に対する対象の反応をモニタリングする方法であって、試料中の測定された膜結合アクチンのレベルが、対象から得られた以前の対応する試料中の膜結合アクチンのレベルより低い場合に、対象は転移性がんの治療に反応していると決定される方法が提供される。あるいは、試料中の測定された膜結合アクチンのレベルが、対象から得られた以前の対応する試料中の膜結合アクチンのレベルと同等以上である場合に、対象は転移性がんの治療に反応していないと決定され得る。以前の対応する試料は、対象に治療が施される前にまたは同時に得られてもよい。好ましくは、以前の対応する試料中の膜結合アクチンのレベルは、治療の施行後に得られた1つまたは複数の試料中のレベルと比較され、これらの試料は、治療の施行後に1つまたは複数の時点で得られてもよい。治療経過中および/または治療後に膜結合アクチンのレベルをモニタリングすることによって、治療に対する対象の反応が決定され得る。熟練した医師は、治療中に試料で観察された膜結合アクチンのレベルを使用して、必要に応じて治療を調整できることが理解されよう。
別の態様では、対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを測定することを含む、転移性がんと診断された対象における疾患進行をモニタリングする方法であって、試料中の測定された膜結合アクチンのレベルが、対象から得られた以前の対応する試料中の膜結合アクチンのレベルより低い場合に、転移性がんは進行していないと決定される方法が提供される。あるいは、試料中の測定された膜結合アクチンのレベルが、対象から得られた以前の対応する試料中の膜結合アクチンのレベルと同等以上である場合に、転移性がんは進行していると決定され得る。
別の態様では、対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを測定することを含む、転移性がんの治療が成功した対象における転移性がんの再発をモニタリングする方法であって、試料中の測定された膜結合アクチンのレベルが、対象から得られた以前の対応する試料で測定された膜結合アクチンのレベルより低い場合に、転移性がんは再発していないと決定される方法が提供される。あるいは、試料中の測定された膜結合アクチンのレベルが、対象から得られた以前の対応する試料で測定された膜結合アクチンのレベルと同等以上である場合に、転移性がんは再発していると決定され得る。対応する試料は、治療成功の決定の時点で、または治療成功の決定の1週間、2週間もしくは4週間以内に採取されていてもよい。
本明細書における「対応する試料」への言及は、同じ対象から採取された同じタイプ、例えば同じ組織タイプの試料を指し得る。試料は、より早期の時点で好ましくは採取される。
本発明の任意の態様の方法は、インビボ(in vivo)、エクスビボ(ex vivo)またはインビトロ(in vitro)で行うことができる。好ましくは、方法はインビトロ方法である。
さらなる態様では、(a)がんと診断された対象が転移を発症する可能性があるか、もしくは転移を発症している可能性があるかどうかを決定する、(b)がんと診断された対象を予後診断する、(c)対象を転移性がんと診断する、(d)転移性がんの治療に対する対象の反応をモニタリングする、または(e)転移性がんと診断された対象における疾患進行をモニタリングするためのキットであって、
膜結合アクチンを検出する手段を含み、
i.目的の細胞タイプを同定する手段、および/または
ii.EVを単離する試薬
のうちの1つまたは複数をさらに含んでもよいキットが提供される。
一実施形態では、膜結合アクチンはベータアクチンである。
膜結合アクチンを検出する手段は、抗体などのアクチン結合ポリペプチドであってもよい。例えば、膜結合アクチンを検出する手段は、抗ベータアクチン抗体などの抗アクチン抗体であってもよい。膜結合アクチンを検出する手段は、アクチンに結合することができるアプタマーなどのDNAまたはRNA分子であってもよい。
目的の細胞タイプは、上皮細胞または循環腫瘍細胞であってもよい。循環腫瘍細胞は、上皮腫瘍細胞であってもよい。
目的の細胞タイプを同定する手段は、抗体などのEpCAM結合ポリペプチドであってもよい。目的の細胞タイプを同定する手段は、EpCAMに結合することができるアプタマーなどのRNAまたはDNA分子であってもよい。
一実施形態では、キットは、試料からEVを単離する試薬をさらに含んでもよい。当業者は、試料からEVを単離するのに当技術分野で利用可能な任意の試薬セットを選択することができるであろう。選択される的確な試薬は試料の性質に依存し得、例えば、血液試料と特に適合する特定の試薬が選択され得る。
一実施形態では、キットは説明書のセットをさらに含んでもよい。
ある特定の非限定的な実施形態では、膜結合アクチンを検出する手段および/または目的の細胞タイプを同定する手段は、カラムマトリックス、アレイ、またはマイクロタイタープレートのウェルなどの固体支持体に結合されて提供されてもよい。あるいは、支持体はキットの別個の要素として提供することができる。
本明細書で使用される場合、用語「アクチン結合ポリペプチド」および「EpCAM結合ポリペプチド」とは、アクチンまたはEpCAMにそれぞれ結合する任意のポリペプチドを指し得る。そのようなポリペプチドは、T細胞受容体、または限定されるものではないがFv、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片、ならびにラクダ科動物単一ドメイン抗体などの単一ドメイン抗体を含む、抗体もしくはその抗原結合断片であってもよい。ベータアクチンなどのアクチンに特異的な、および/またはEpCAMに特異的な、ポリクローナルでもモノクローナルでも抗体または抗原結合断片は、一般的に当業者には分かるように従来の免疫手法を使用して調製することができる。
目的の細胞タイプを同定する手段は、アプタマーなどのEpCAMに結合することができるDNAまたはRNA分子も含み得る。
本明細書で言及される抗体、ポリペプチド、またはDNAもしくはRNA分子は、所与の抗体、ポリペプチドまたはDNAもしくはRNA分子と結合されるかまたはこれらに連結される検出可能な標識を含んでもよい。そのような検出可能な標識には、例えば、化学発光分子もしくは蛍光分子(例えば、ローダミン、フルオレセイン、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、Cy3、Cy5またはROX)、放射標識(例えば、3H、35S、32P、14C、131I)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、またはペプチド/アミノ酸配列(例えば、His-Tag、FLAG、Myc)が含まれる。
任意の態様または実施形態では、がんは、乳がん、結腸直腸がん、肺がんまたは膵臓がんなどの上皮細胞がんであってもよく、またはこれらに由来してもよい。
転移性がんは、転移性乳がん、転移性結腸直腸がん、転移性肺がんまたは転移性膵臓がんであってもよい。
HPAまたはリンゴマイマイ(Helix pomatia)凝集素は、末端N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を有するグリカンを検出するのに使用され得るリンゴマイマイに由来するレクチンである。本明細書で使用される場合、「HPA陽性(positive)」および「HPA陽性(positivity)」とは、有意なレベルのGalNAcをその表面に示し、それ故に高レベルのHPAによって認識され、高レベルのHPAに結合する細胞またはEVを指す。HPA陰性細胞またはEVは、その表面にGalNAcを示さないかまたは低レベルのGalNAcを示し、それ故にHPAによって認識されず、HPAに結合しないかまたは低レベルのHPAにのみ結合する細胞として定義される。
試料中に細胞および/またはEVを含む試料は、試料中の細胞および/またはEVの約50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、98%超、99%超がHPA陽性であるならば、HPA陽性として同定され得る。
試料中に細胞および/またはEVを含む試料は、試料中の細胞および/またはEVの約50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、98%超、99%超がHPA陰性であるならば、HPA陰性として同定され得る。
任意の態様では、本発明は、細胞および/またはEVのHPA陽性のレベルを検出または測定することをさらに含んでもよい。
任意の態様では、本発明は、アクチンの検出もしくは測定に加えて、またはアクチンの検出もしくは測定に代わるものとして、HPA陽性のレベルを検出または測定することをさらにまたはあるいは含んでもよい。HPA陽性はEVで決定されてもよい。例えば、がんと診断された対象が転移を発症する可能性があるか、または発症している可能性があるかどうかを決定する方法では、方法は:
a.対象から得られた試料中の膜結合アクチンおよび/またはHPA陽性のレベルを測定すること、
b.対象から得られた試料で測定された膜結合アクチンおよび/またはHPA陽性のレベルを、標準試料中の膜結合アクチンおよび/またはHPA陽性のレベルと比較すること、ならびに
c.対象から得られた試料中の膜結合アクチンおよび/またはHPA陽性のレベルが、標準試料中の膜結合アクチンおよび/またはHPA陽性のレベルとほぼ同等かまたはより高ければ、対象は転移を発症する可能性があるかまたは発症している可能性があると決定すること
を含んでもよい。そのような方法では、EVは必要に応じて残りの試料から単離、同定、または分離され得る。
図1は、1Dウェスタンブロットを使用して、GalNAcが内皮細胞の複数のタンパク質に結合することを示す。A.全内皮細胞タンパク質が抽出され、SDS-PAGEにかけられ、次いでウェスタンブロットが行われた。左側の膜はGalNAc-BSA-ビオチンでプローブされ、いくつかのバンドを示した。陰性対照として右側の膜がBSA-ビオチンで標識され、バンドは観察されなかった。 図2は、質量分析による分析用に切除されたバンドを示す。どこでゲル断片が質量分析用に切除され、5つの断片が分析されたかを示す1D SDS-PAGEおよびブロット。 図3は、2D PAGEを使用して、GalNAcが内皮細胞の複数のタンパク質に結合することを示す。ゲル断片が質量分析用に切除された箇所を示す2D SDS-PAGEおよびブロット(合計13断片)。 図4は、EVが細胞接着を増加させ得ることを示す。EVは静的接着アッセイの前に乳がん細胞から単離され、乳がん細胞か内皮細胞のどちらか、または両方とインキュベートされた。内皮細胞への乳がん細胞接着は、EVの存在下で有意に増加される。乳がん細胞も内皮細胞も、EVを用いて前処理される場合に最大の増加が見られる。3回の反復からのデータ、エラーバーは平均値の標準誤差(SEM)であり、行われた統計検定はTukey検定による一元配置ANOVAである。星印は、未処理対照と比べた有意性を示す。 図5は、プレクチンのノックダウンが、内皮細胞への乳がん細胞の接着を低減することを示す。MCF7および/またはHUVEC細胞は、プレクチンを標的にする陰性スクランブルsiRNAまたはsiRNAで処理された。細胞接着は、プレクチンがどちらか一方の細胞株または両方の細胞株でノックダウンされる場合に有意に減少される。3回の反復からのデータ、エラーバーは平均値の標準誤差であり、行われた統計検定はTukey検定による一元配置ANOVAである。星印は、未処理対照と比べた統計的有意性を示す。 図6は、組換えプレクチンを用いた乳がん細胞の処理が、内皮細胞への細胞接着を低減することを示す。MCF7細胞は未処理であるか、または静的接着アッセイを行う前に0.1ug/ml組換えプレクチンで処理された。組換えプレクチンによるMCF7細胞の処理は、内皮細胞への細胞接着を有意に減少させる。3回の反復からのデータ、エラーバーは平均値の標準誤差であり、行われた統計検定はTukey検定による一元配置ANOVAである。 図7は、プレクチンがノックダウンされたがん細胞では、「野生型」がん細胞由来のEVにより細胞接着が部分的に回復され得ることを示す。プレクチンは、MCF7細胞でsiRNAを使用してノックダウンされ(2番目の列)、内皮細胞への接着の低下を示す。野生型MCF7細胞由来のEVで処理されたプレクチンノックダウンMCF7細胞は、内皮細胞への接着の部分的回復を示す。3回の反復からのデータ、エラーバーは平均値の標準誤差であり、行われた統計検定はTukey検定による一元配置ANOVAである。 図8は、MCF7細胞が、BT474細胞より多くのHPA結合タンパク質を有することを示す。プローブとしてのビオチン化HPAおよびローディング対照として使用される抗GAPDH抗体を使用してウェスタンブロットする前に、2種類の乳がん細胞株からの溶解物がSDS-PAGEにかけられた。MCF7溶解物は、72kDaの1つのHPA結合バンドしかなかったBT474細胞からの溶解物より多くのHPA結合バンドを含有した。 図9は、細胞のHPA結合能とそれらの細胞によって産生されたEVのHPA結合能の間の正の相関を示す。MCF7およびBT474細胞ならびにこれらの細胞によって産生されたEVのNanoview分析。HPA陰性BC細胞株(BT474、左)およびHPA陽性BC細胞株(MCF7、右)EVは、蛍光コンジュゲート抗体で標識された(第1のカラム=CD81、第2のカラム=CD9、第3のカラム=HPA)。BT474 EVはHPA陰性であることが見出されたが、MCF7 EVはHPA陽性であった。MigGは非特異的結合のレベルを示す陰性対照を指す。 図10は、細胞表面ベータアクチンの遮断が、内皮細胞への乳がん細胞接着を低減したことを示す。MCF7細胞は未処理か、またはベータアクチンもしくはGAPDHに対する抗体で処理された。GAPDHは対照として使用される。無処理MCF7 BC細胞と比べて、抗ベータアクチン抗体とインキュベートされた細胞は内皮細胞への接着が有意に少ない。3回の反復からのデータ、エラーバーはSEMである。 図11は、細胞表面ベータアクチンレベルがHPA結合能/転移能と相関することを示す。表面アクチンを検出するのにフローサイトメトリーが使用された。(A):高転移性およびHPA陽性MCF7 BC細胞の表面のベータアクチンの発現は、非転移性および弱HPA陽性BT474細胞、ならびに中程度浸潤性および中程度HPA陽性ZR751 BC細胞での発現より多いことを示す。高転移性およびHPA陽性MCF7 BC細胞の表面のベータアクチンの発現は、浸潤性および高度HPA陽性T47D BC細胞に匹敵する。(B)MCF7およびBT474細胞における表面ベータアクチンの発現が、HPA陰性、正常な乳房細胞HMEよりはるかにより高いことを示す。 図12は、転移性乳がん細胞(MCF7)が、その表面に非転移性乳がん細胞(BT474)より多くのアクチンを有することを示す。データはフローサイトメトリーによって回収された。Paはパンアクチンを標的にするアクチン抗体を指す。IgGは非特異的結合のレベルを示す陰性対照を指す。抗体なし(no anti)は、バックグラウンド自己蛍光発光を示すために添加されている抗体がないことを指す。 同上 図13は、転移性がん細胞が、その表面に非転移性がん細胞より多くのHPAを有することを示す。データは、乳がん(MCF7は転移性であり、BT-474は非転移性である)、結腸直腸がん(SW480は転移性であり、HT-29は非転移性である)および肺がん(A539は転移性であり、NCI-H322は非転移性である)の転移性および非転移性細胞タイプのペアに関してフローサイトメトリーによって回収された。 同上 図14は、転移性細胞形質膜が、非転移性細胞より多くのアクチンを有することを示す。データは細胞株のプローブされた膜抽出物からドットブロットによって得られた。ACTBはアクチンベータを認識する抗体であり、ACTGはアクチンガンマを認識する抗体である。結果は、バックグラウンドに対して調整され、全膜からのシグナルに対して正規化されたシグナルの強度として表されている。 図15は、肺転移性がん微小胞が、非転移性細胞由来のものより多くのアクチンを有することを示す。データはドットブロットによって得られた。データは、転移性肺がん(A549)または非転移性肺がん(NCI-H322)のどちらか由来の微小胞への様々な異なる抗体の結合レベルを示す。がんタイプごとにバー1、5および6は、それぞれ対照(IgG)、Gm130および抗体なしであり、バー2、3、および4はベータアクチン抗体の3つの異なるクローンを表す。示された結果は、転移性肺がん細胞から得られた微小胞により多くの膜結合アクチンがあることを明白に示している。結果は、バックグラウンドに対して調整され、一次抗体なしに対して正規化されたシグナルの強度として表されている。 図16は、膵臓転移性がん微小胞が、非転移性細胞より多くのアクチンを有することを示す。データはドットブロットによって得られた。図16A-データは、転移性膵臓がん(MIAPaCa2)または非転移性膵臓がん(BXPC-3)のどちらか由来の微小胞への様々な異なる抗体の結合レベルを示す。がんタイプごとにバー1、5および6は、それぞれ対照-IgG、Gm130および抗体なしであり、バー2、3、および4は3つの異なるベータアクチン抗体を表す。示された結果は、転移性膵臓がん細胞から得られた微小胞により多くの膜結合アクチンがあることを明白に示している。図16B-データは、転移性膵臓がん(MIAPaCa2)または非転移性膵臓がん(BXPC-3)のどちらか由来の微小胞への様々な異なる抗体の結合レベルを示す。がんタイプごとにバー1、3および4は、それぞれ対照-IgG、Gm130および抗体なしであり、バー2はガンマアクチン抗体である。示された結果は、転移性膵臓がん細胞から得られた微小胞により多くの膜結合ガンマアクチンがあることを明白に示している。結果は、バックグラウンドに対して調整され、一次抗体なしに対して正規化されたシグナルの強度として表されている。 同上 図17は、転移性乳がん微小胞が、非転移性細胞より多くのアクチンを有することを示す。データはドットブロットによって得られた。図17A-データは、転移性乳がん(MCF7)または非転移性乳がん(BT474)のどちらか由来の微小胞への様々な異なる抗体の結合レベルを示す。がんタイプごとに、バー1、5および6は、それぞれ対照-IgG、Gm130および抗体なしであり、バー2、3、および4は3つの異なるベータアクチン抗体を表す。示された結果は、転移性肺がん細胞(metastatic lung cancer cells)から得られた微小胞により多くの膜結合アクチンがあることを明白に示している。図17B-データは、転移性乳がんまたは非転移性乳がんのどちらか由来の微小胞への様々な異なる抗体の結合レベルを示す。がんタイプごとに、バー1、3および4は、それぞれ対照-IgG、Gm130および抗体なしであり、バー2はガンマアクチン抗体である。示された結果は、より多くの膜結合があることを明白に示している。結果は、バックグラウンドに対して調整され、一次抗体なしに対して正規化されたシグナルの強度として表されている。 同上 図18は、転移性乳がん細胞に由来するエキソソームが、非転移性乳がん細胞に由来するエキソソームより多くのアクチンを有することを示す。データはドットブロットによって得られた。結果は、IgG対照に対して正規化されたシグナルの強度として表されている。 図19は、非転移性乳がん細胞に由来するエキソソームよりはるかに大きな割合の転移性乳がん細胞に由来するエキソソームが、アクチン陽性であることを示す。データはNanoFCMによって得られた。これは、集団の割合の直接比較(direct percentage of population comparison)を可能にする単一粒子検出法であり、全シグナルのドットブロット平均を支持するものである。試料はパンアクチン抗体を用いてプローブされた。 図20は、非転移性結腸直腸がん細胞に由来するエキソソームより大きな割合の転移性結腸直腸がん細胞に由来するエキソソームが、アクチン陽性であることを示す。データはNanoFCMによって得られた。これは、集団の割合の直接比較を可能にする単一粒子検出法であり、全シグナルのドットブロット平均を支持するものである。試料はパンアクチン抗体を用いてプローブされた。陽性EVの転移性割合は、非転移性割合と比べた倍率変化として表されている。 図21は、非転移性結腸直腸がん細胞に由来するエキソソームより大きな割合の転移性結腸直腸がん細胞に由来するエキソソームが、HPA陽性であることを示す。データは、Nanoviewのものとは独立した単一粒子分析法としてのNanoFCMによって得られ、異なる組織タイプにおける図9の知見を支持するものである。 図22は、同等の非転移性がん細胞に由来するエキソソームより大きな割合の(A)転移性乳がん細胞(metastatic breast cells)に由来するエキソソーム、および(B)転移性結腸直腸がん細胞に由来するエキソソームが、ガンマアクチン陽性であることを示す。データはNanoFCMによって得られた。
本発明は、上皮がん細胞および/またはそれに由来する細胞外小胞の表面の膜結合アクチンの存在および/またはレベルと、これらのがん細胞の転移能の間の正の相関の発見に一部基づく。
したがって、細胞表面、または細胞外小胞の膜におけるアクチンの存在、またはアクチンのレベルの増加の決定は、臨床医ががん細胞の転移能を正確に同定すること、ならびにがんの病期を分類および/または予後を診断することを可能にし得る。これにより、より後期の乳がん患者、または転移を発症する可能性があるかもしくは既に発症している可能性がある者の同定が可能になるため、該患者はより早い、より適切な治療を受けることができる。方法はまた、治療に対する患者の反応をモニタリングおよび/または疾患進行をモニタリングするのにも使用され得る。
さらに、本発明は、不必要なリンパ節生検を患者が回避できるようにする可能性がある。例えば、本発明は、原発腫瘍または原発腫瘍周囲から得られた組織、例えば、乳がんの診断を下すのに使用される初回生検からの乳房組織、または治療中、乳房組織の除去後の乳房組織に由来する細胞で行うことができる。さらにまたはあるいは、細胞外小胞の膜にあるアクチンのレベルを検出または決定する場合、本発明は、生検を必要とすることなく容易に利用できる生体液で行うことができる。本発明は、がんの転移能、病期分類の決定、特定の治療を速く、低侵襲もしくは非侵襲的に、および/または外科的介入の前に行う必要がある患者の診断、予後診断および/または同定を可能にし得る。
当業者は、膜結合アクチンのレベルを検出または測定するのに当技術分野のいくつかの方法または手法が使用され得ることを理解するであろう。適切な手法には、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー、ELISA、ラテラルフローアッセイ、膜の生化学的または機械的分離/単離後のウェスタンブロット、ドットブロット、スロットブロット、および質量分析が含まれる。任意の態様では、アクチンの検出は、例えば、アクチンを検出する一次検出試薬、および一次検出試薬を特異的に検出する二次検出試薬を使用した、直接的または間接的検出であってもよい。二次検出試薬は標識されてもよい。本発明はそれ故に、高度に特殊な装置または訓練を必要とすることなく、世界中の多くの病院または検査室で広く採用され得る。
一実施形態ではアクチンのレベルは、アクチンと検出剤との複合体を形成し、次いでアクチン/検出剤複合体を検出することによって検出されてもよい。
当業者は、試料からEVを単離するのに当技術分野のいくつかの方法または手法が使用され得ることを理解するであろう(Konoshenko et al., 2018, BioMed. Res. Intl.で概説されている)。
本明細書で言及されるアクチンは、宿主種に内因性であるタンパク質である。ヒトでは、例えば、アクチンは、ACTB遺伝子によってコードされるタンパク質であるベータアクチンを指し得る。アクチンは、ACTA1またはACTA2遺伝子によってコードされるタンパク質であるアルファアクチンを指し得る。アクチンは、ACTG1またはACTG2遺伝子によってコードされるタンパク質であるガンマアクチンを指し得る。
「膜結合アクチン」とは、本明細書で使用される場合、細胞の表面、好ましくは細胞の形質膜中/上に存在するかもしくは検出可能な、または細胞外小胞の表面に存在するかもしくは検出可能な、ベータアクチンなどのアクチンを指す。アクチンは、グリコシル化目印などの翻訳後修飾を有してもよい。アクチンは、細胞および/またはEVを化学的または機械的に破壊する必要なしに検出可能であり得る。アクチンは、機械的および/または化学的に破壊された細胞および/またはEVの膜画分で検出可能であり得、前記画分は細胞またはEVの形質膜の膜のみを含む。検出または測定されるアクチンは、内在性膜タンパク質または内在性膜タンパク質と相互作用し得る表在性膜タンパク質であってもよい。
「転移を発症する可能性があるか、または発症している可能性がある」とは、本明細書で使用される場合、本発明の態様および/または実施形態に記載された必要な特徴を持たない対象と比較した、転移を発症するかまたは既に発症している可能性の増加を指す。
本明細書で使用される場合、用語「より高い(higher)」とは、標準試料中の膜結合アクチンのレベルより少なくとも約5%以上、少なくとも約10%以上、少なくとも約20%以上、少なくとも約50%以上、少なくとも約100%以上、少なくとも約200%以上、少なくとも約300%以上、少なくとも約400%以上、少なくとも約500%以上、少なくとも約1000%以上、少なくとも約2000%以上、少なくとも約5000%以上、少なくとも約10000%以上、少なくとも約20000%以上、少なくとも約50000%以上、少なくとも約100000%以上、少なくとも約500000%以上、少なくとも約1000000%以上高い数を指し得る。あるいは、用語「より高い」とは、標準試料中の膜結合アクチンのレベルより少なくとも約1倍以上、少なくとも約2倍以上、少なくとも約3倍以上、少なくとも約4倍以上、少なくとも約5倍以上、少なくとも約10倍以上、少なくとも約20倍以上、少なくとも約50倍以上、少なくとも約100倍以上、少なくとも約250倍以上、少なくとも約500倍以上、少なくとも約1000倍以上、少なくとも約5000倍以上、少なくとも約10000倍以上、少なくとも約20,000倍以上、少なくとも約50,000倍以上、少なくとも約100000倍以上、少なくとも約500000倍以上高い数を指し得る。
本明細書で使用される場合、用語「アクチン結合ポリペプチド」および「EpCAM結合ポリペプチド」とは、アクチンまたはEpCAMにそれぞれ結合する任意のポリペプチドを指し得る。そのようなポリペプチドは、T細胞受容体、または限定されるものではないがFv、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片を含む、抗体もしくはその抗原結合断片であってもよい。
本明細書で使用される場合、用語「対象から得られた試料」とは、組織、組織試料、生検、細胞試料、腫瘍試料、糞便試料、および生体液、例えば血漿、血清、血液、尿、リンパ液、腹水、唾液の試料を含む、対象、例えばヒト対象から得られた生体物質の試料を指す。一実施形態では、試料は例えば、対象由来の乳房組織の生検からの組織試料である。一実施形態では、試料は対象から得られた血液試料である。
用語「患者」または「対象」とは、本明細書で互換的に使用される場合、任意の哺乳動物、例えばヒトを指す。非ヒト哺乳動物の非限定的な例には、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、家禽、ブタ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等が含まれる。
本開示では、「生検」と記載される試料は、関連する医学技術の当業者に周知の方法を使用して、従来の方法によって得ることができる。生検試料を得る方法には、大きな塊への腫瘍の分割、またはマイクロダイセクション、または当技術分野で公知の他の細胞分離方法が含まれる。腫瘍細胞は、小ゲージ針を用いた吸引による細胞診によってさらに得ることができる。試料の保存および取り扱いを簡単にするために、試料は、ホルマリンで固定され、パラフィンに浸されてもよく、または最初に凍結され、次いで、迅速凍結を可能にする極低温媒体への浸漬によるOCT化合物などの組織凍結媒体に浸されてもよい。試料を保存および/または処理する他の方法は当業者に公知である。
試料は、目的の細胞タイプを単離する、またはEVを単離するために操作されてもよい。例えば、組織試料または生検中の目的の細胞タイプに対するマーカーが、そのような細胞を単離または分離するのに使用され得る。一例は、ベータアクチンなどの膜結合アクチンが検出されるかまたはレベルが決定される前に、生検で採取された組織から上皮細胞を同定および/または分離するためのEpCAM結合ポリペプチドの使用である。別の例は、試料中の他のEVおよび/または生体物質から、上皮細胞に由来するEVを同定および/または分離するためのEpCAM結合ポリペプチドの使用である。
標準試料とは、同等の試料、例えば対象もしくは他の対象から得られた試料と同じ組織および/もしくは細胞タイプか、または対象から得られた試料タイプに非常によく似た細胞株からの同等の試料を指し得る。
「陰性標準試料」とは、非がん性であるか、またはがん性である/不死化されているが転移を発症していないかもしくは発症しないことが分かっている標準試料を指し得る。例えば、陰性標準試料は、対象の腫瘍を取り囲む領域由来の対応する試料、例えば生検試料、または1つもしくは複数の健康な対象由来の対応する組織であってもよい。陰性標準試料はまた、性質が非転移性であることが分かっており、対象について得られた試料と同じまたは類似した性質である細胞株、例えば、対象から得られた乳房組織試料の陰性標準試料として浸潤性が低いことが分かっている乳房上皮細胞株、例えばBT474細胞[Lasfargues et al., 1978, J. Nat. Cancer Institute, 61(4): 967-978]、または良性線維嚢胞性乳房組織から単離されたHMT3522ヒト乳房上皮細胞[Briand et al, 1987, In Vitro Cell and Dev. Biol., 23 (3): 181-188]であってもよい。
膜結合アクチンの存在またはレベルがEVで検出または測定される場合、陰性標準試料とは、がんを有さない1つもしくは複数の対象、もしくはがんを有する/有した、および転移を発症していないかもしくは発症しなかった1つもしくは複数の対象から、または上記のような浸潤性が低いことが分かっている比較細胞株から単離されたEVを指し得る。
故に、そのような陰性標準試料で検出または測定された膜結合アクチンのレベルは、陰性対照としての役割を果たす。
「陽性標準試料」とは、浸潤性であることが分かっているがん性の、および/または転移を発症しているかもしくは発症する可能性があることが分かっている標準試料を指し得る。例えば、陽性標準試料は、転移を発症していることが分かっている1つまたは複数の対象由来の対応する試料、例えば生検試料であってもよい。陽性標準試料はまた、性質が浸潤性および/または転移性であることが分かっており、対象について得られた試料と同じまたは類似した性質である細胞株、例えば、対象から得られた乳房組織試料の陽性標準試料として浸潤性が高いことが分かっている乳房上皮細胞株、例えばMCF7細胞[Soule et al., 1973, J. Nat. Cancer Institute, 51(5): 1409-14-16]であってもよい。
膜結合アクチンの存在またはレベルがEVで検出または測定される場合、陽性標準試料とは、がんを有する/有した、および転移を発症した1つまたは複数の対象から、または上記のような浸潤性が高いことが分かっている比較細胞株から単離されたEVを指し得る。
故に、そのような陽性標準試料で検出可能なまたは測定された膜結合アクチンのレベルは、陽性対照としての役割を果たす。
がんと診断された対象由来であり、上記の標準試料の膜結合ベータアクチンのレベルより高いレベルが測定された試料は、転移を発症するかもしくは発症している可能性がより高い、または転移性がんと診断される可能性がより高いとして同定され得る。患者にとって適切な治療レジメンが、次いで特定および提供され得る。
当業者は、転移が確認されているかもしくは記録された転移がない対象から、または性質が転移性であるかもしくは非転移性であることが分かっている細胞株から、所与の試料タイプ中の膜結合アクチンのレベルが記録されているデータベースを調べることができ得る。当業者は、必要に応じてそのような転移性または非転移性細胞株を容易に同定することができる。
当業者は、本発明の任意の1つの実施形態および/または態様の好ましい特徴が、本発明の全ての他の実施形態および/または態様に適用され得ることを理解するであろう。
材料および方法
Figure 2023539727000002

Figure 2023539727000003

内皮細胞からのタンパク質抽出および定量化
HUVEC細胞をコンフルエンスまでT175フラスコで増殖させ、次いで完全増殖培地で加湿雰囲気中、37℃、2時間、10ug/ml TNFαで処理した。細胞を氷冷PBSで洗浄した。細胞を短時間遠心分離してペレット化し、上清を捨て、プロテアーゼ阻害剤カクテル10ul/mlを添加した1×RIPA緩衝液にペレットを再懸濁し、4℃で30分間エンドオーバーエンドミキサーに入れた。この時間後、チューブを13,000RPMで4℃、20分間遠心分離した。上清を新しい1.5mlチューブに移し、ペレットを捨てた。抽出したタンパク質をBCAアッセイを使用して定量化した。
SDS-PAGEおよびウェスタンブロット
タンパク質試料10ugを、Laemmli試料緩衝液3ulおよび1M DTT 1ulを用いたSDS-PAGEに使用した。これを混合し、100℃に10分間加熱し、次いで氷上に置いた。試料をPrecision Plus Protein Dual Colour Standardと共に、1×TGS緩衝液中ミニPROTEAN TGXステインフリープレキャストゲル(12%)に流した。ゲルを100ボルトで2時間実行した。Trans-Blot Turbo Midi PVDF転写パックを使用してタンパク質を転写した。ゲルを膜の上に置き、層の間に挟み、次いでTransblot Turbo機に高MW設定で入れた。膜を振盪台で5分間、TBST(0.05% Tween)で3回洗浄した。膜を次いで振盪台RTで2時間、5% BSA/TBSTとインキュベートして遮断した。遮断した膜は、5% BSA/TBST中1ug/ml GalNAc-BSA-ビオチン10ml、または5% BSA/TBST中1ug/ml BSA-ビオチン10mlで一晩、4℃でインキュベートした。膜を5% BSA/TBSTで5分間、3回洗浄した後、膜を5% BSA-TBST中5ug/mlストレプトアビジン-HRP 10mlで1時間、室温でインキュベートした。膜を5% BSA-TBSTで5分間、2回、次いで1回、15分間洗浄した。HRP基質を1:1比で調製し(Clarity+Clarity Max Western ECL Substrate、BioRad、170-5060)、混合した。これを膜に添加し、Chemidoc(登録商標)トランスイルミネーターで画像化した。
2D PAGE
プロテアーゼ阻害剤を添加した1×RIPA緩衝液中1ug/ulの濃度で活性化した全HUVECタンパク質を、2D PAGEで使用するためにGE Healthcare製の2D Clean-upキットを用いて、製造者の説明書(80-6484-51)に従って精製した。試料を、BioRad製のReadyPrep 2-Dスターターキットを用いて製造者の説明書(163-2105)に従って2D PAGE用に調製した。これにより、試料を11cm IPGストリップに吸収させ、次いでその後Ettan IPGphor 3で等電点電気泳動によって16時間分離できるようになった。IPGストリップを洗浄し、再水和し、次いでCriterion(商標)XT Bis-Trisプレキャストゲルに入れ、12%ゲルをタンクに充填し、標準物質を添加し、ゲルをアガロースで封入した。アガロースは、タンクに充填する前に1×MOPS緩衝液で固定した。NuPage Antioxidant(Thermo、NP0005)250ulをゲルごとに添加した。ゲルを200ボルトで70分間実行した。ブロッティングするゲルをそのカセットから除去し、dHOで2回洗浄した。残りの手順を室温で実施した。ゲルをInvitrogen(商標)Novex(商標)SimplyBlue(商標)SafeStain(Thermo、LC6065)に入れ、振盪台に1時間置いた。次いで、ゲルを振盪台で一晩、dHOで脱染した。ゲルをiBlot(商標)2 Dry Blotting Systemを使用してブロッティングした。膜をdHOで簡単に洗浄し、次いでロッキングプラットフォームで5% Marvel/TBSTを用いて1時間遮断した。膜をロッキングプラットフォームで5% BSA/TBST中1ug/ml GalNAc-BSA-ビオチンと2時間インキュベートし、次いでロッキングプラットフォームで3回、それぞれ10分間、TBSTで洗浄した。膜をロッキングプラットフォームで1時間、5% BSA/TBST中5ug/mlストレプトアビジン-ペルオキシダーゼとインキュベートし、次いでロッキングプラットフォームで3回、それぞれ10分間、TBSTで洗浄した。ECL HRP基質を調製し、膜に添加し、次いでChemidoc(登録商標)トランスイルミネーターを使用して画像化した。
質量分析用のゲルの調製
1Dゲルをクマシーブルーで染色し、2Dゲルを銀染色で染色し、次いで参照としてブロットを使用して、目的のバンドおよびドットを1Dおよび2D ゲルから切除した。ゲルを次いでPorton Biopharma Ltd.での質量分析に送った。
がん細胞からのEV抽出
がん細胞を70%コンフルエンシーまでT175フラスコで増殖させ、25ml/フラスコのEV除去培地(FBSを前もって120,000gで16時間回転させて存在するEVを除去した、10% FBS含有DMEM培地)を供給し、48時間馴化させた。培地を除去し、300×gで5分間、次いで16,000×gで20分間、4℃で回転させた。培地をフラスコから「ノーマル」50mlチューブ(Greiner Bio-One、227285)に除去し、300×gで5分間回転させた。微小胞については、上清を高速(トップが緑色またはオレンジ色の)50mlチューブ(Alpha Laboratories、CT1120)に移し、ペレットを捨て、16000gで20分間遠心分離する。上清をノーマル50mlチューブに移す-これがEV部分である。ペレットは微小胞を含有する。微小胞をプールし、PBS 20mlに再懸濁する。これを次いで再び16000gで20分間回転させる。上清をチューブから注ぎ出し、約300ulを残す容量のPBSにペレットを再懸濁する。PBS中0.1% BSA(Sigma、A7906-100G)溶液(40ml PBS中10% BSA 40μl)を使用して0.22ミクロン(Fisher、fdr-050-071n)フィルターを遮断し、このフィルターにより培地を濾過する。培地をVivaspin 20 100kDa濃縮装置(Fisher、10774797に添加する。培地を3000g(スイングバケット-25分)または5000g(固定角ローター-20分工程)で回転させて濃縮する。
エキソソームについては、0.1% BSAで遮断した0.22umフィルターにより上清を濾過した。Vivaspin 20、100kDa濃縮装置を使用して上清を500ulに濃縮した。SECカラム(BioRad、7321010)を、セファロース14mlおよびPBS 10mlを添加して調製し、これを2時間沈殿させ、次いでカラム支持体を添加し、PBSを通過させた。カラムを次いでPBS 10mlで3回洗浄した。試料500ulをカラム支持体に添加し、吸着させ、次いでPBS 10mlを添加した。フロースルー2.5mlを回収し、捨て、次いでフロースルー2mlを回収した(EVを含有)。Particlematrix(商標)粒子分析器を使用してEVを定量化した。EVは、次いで短期使用のために冷蔵庫で保管してもよい。
EVありまたはなしの内皮静的接着アッセイ
活性化内皮細胞を含むカバースリップを上記のように調製した。MCF7乳がん細胞をT75フラスコで70%コンフルエンシーまで増殖させ、完全培地中10mg/ml 8-ヒドロキシピレントリスルホン酸(HTPS)で37℃、5% COで2時間処理した。この時間後、HTPSを除去し、洗浄液が透明に流れるまで細胞をPBS 10mlで5回洗浄した。細胞を擦り取り、カウントした。20,000細胞/mlを調製した。MCF7細胞をEV 500ulまたはPBS 500ulのどちらかで処理し、RTで10分間混合した。HUVEC細胞をEV 500ulまたはPBS 500ulのどちらかで37℃、5% COで30分間処理した。EVまたはPBSを細胞から除去し、20,000細胞/mlのMCF7細胞をウェルごとに添加し、10分間をインキュベートし、細胞を除去し、加温したPBSでウェルを穏やかに洗浄して全ての結合していない細胞を除去した。ウェルを次いで4% PFAで10分間、RTで固定した。固定液を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄し、次いでフルオロマウント(商標)を使用してカバースリップを乗せた。カバースリップごとの全接着細胞をカウントした。
活性化内皮細胞を含むカバースリップを上記のように調製した。MCF7乳がん細胞をT75フラスコで70%コンフルエンシーまで増殖させ、完全培地中10mg/ml HTPSで37℃、5% COで2時間処理した。HTPSを除去し、洗浄液が透明に流れるまで細胞をPBS 10mlで5回洗浄した。細胞を擦り取り、カウントした。20,000細胞/mlを調製した。MCF7細胞を、PBS中0.1ug/ml組換えプレクチン(2b Scientific SKU RPC754Hu01(ヒトプレクチンUniprot ID Q15149の残基Asp 175~Pro 400、アクチン結合ドメインに対応)、またはPBSのどちらかで10分間、RTで処理した。組換えプレクチンまたはPBSを細胞から除去し、20,000細胞/mlのMCF7細胞をウェルごとに添加し、10分間インキュベートし、細胞を除去し、加温したPBSでウェルを穏やかに洗浄して全ての結合していない細胞を除去した。ウェルを次いで4% PFAで10分間、RTで固定した。固定液を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄し、次いでフルオロマウントを使用してカバースリップを乗せた。カバースリップごとの全接着細胞をカウントした。
プレクチンサイレンシングおよびEVレスキューありまたはなしの内皮静的接着アッセイ
MCF7およびHUVEC細胞を70%コンフルエンシーまで24ウェル細胞培養プレートで増殖させ、細胞をDharmafect(商標)トランスフェクション試薬および5uMのプレクチンsiRNAまたはスクランブル陰性対照で24時間処理した。一部のHUVECおよびMCF7細胞は無処理であった。HUVEC細胞を完全培地中10ug/ml TNFaで37℃、5% COで2時間処理して活性化した。MCF7乳がん細胞をT75フラスコで70%コンフルエンシーまで増殖させ、完全培地中10mg/ml HTPSで37℃、5% COで2時間処理した。HTPSを除去し、洗浄液が透明に流れるまで細胞をPBS 10mlで5回洗浄した。細胞を擦り取り、カウントした。20,000細胞/mlを調製した。MCF7細胞を、上に概説した抽出方法を使用して単離したEV 500ul、またはPBS 500ulのどちらかで10分間、RTで処理した。EVまたはPBSを除去し、MCF7細胞1mlをHUVEC細胞に添加し、37℃、5% COで10分間インキュベートした後、細胞を除去し、加温したPBSでウェルを穏やかに洗浄して全ての結合していない細胞を除去した。ウェルを次いで4% PFAで10分間、RTで固定した。固定液を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄し、次いでフルオロマウントを使用してカバースリップを乗せた。カバースリップごとの全接着細胞をカウントした。
ドットブロットアッセイ
形質膜タンパク質抽出キット(Abcam、ab56400)、エキソソーム/MVを結合プロトコールでのように使用して膜単離を行った。細口ピペットチップを使用して、2μlの試料または緩衝液をニトロセルロース膜にスポットした。溶液をゆっくり適用して、溶液が浸透する面積を最小化する(通常は3~4mm)。膜を約30分間乾燥させる。各膜を6ウェルプレートの内側に入れる。膜をTBS-T中5% marvel、またはHPAについては0.1% Tween 20を用いてdHOで希釈したCarbo-freeブロッキング溶液(2BScientific、SP-5040-125)に浸漬して遮断する(1時間、RT)。Carbo-Block-T中10ug/mlビオチン化HPA、または全ての抗体については1:1,000と、TBS-T中5% marvelで37℃、2時間または4℃、一晩インキュベートする。膜をTBS-Tで3回洗浄する(3×5分)。ビオチン化抗Ms(Vector Labs、BA-2000-1.5)またはビオチン化抗Rb(Vector Labs、BA-1000-1.5)と5% marvel TBSTで37℃、1時間インキュベートする。膜をTBS-Tで3回洗浄する(3×5分)。5% marvel TBS-T、またはHPAについてはCarbo-Block-Tで1ug/mlストレプトアビジン-ペルオキシダーゼとインキュベートする。TBSで3回洗浄する(3×10分)。ECL基質AおよびB(BioRad Clarityキット)を混合する。各膜をECL試薬と1分間インキュベートし、過剰な溶液を表面から除去し、ケミ高感度ブロット(chemi-high sensitivity blot)として画像化する。
MCF7およびBT474乳がん細胞のウェスタンブロット後のHPAプロービング
MCF7およびBT474細胞株は、以前に記載したようにT75フラスコで70%コンフルエンスまで増殖させ、それらのタンパク質を抽出し、定量化し、SDS-PAGEにかけ、次いでブロッティングした。ビオチン化HPAまたは抗GAPDH抗体を使用して膜をプローブした。
Nanoview
NanoviewerによるR100および分析のための標準的なプロトコールに従って、EVをMCF7およびBT474乳がん細胞からSEC(以前に記載)を使用して抽出し、蛍光コンジュゲート抗体(CD81およびCD9)およびHPAレクチンで標識した。
カバースリップ上での活性化内皮細胞の調製
滅菌13mm Dガラスカバースリップを24ウェルプレートのウェルに置き、100,000HUVEC細胞を播種した。細胞が単層になるまで細胞を37℃、5% CO雰囲気でインキュベートした。HUVEC細胞を完全培地中10ug/ml TNFαで37℃、5% COで2時間処理して活性化した。
アクチン抗体阻害ありまたはなしの内皮接着アッセイ
活性化内皮細胞を含むカバースリップを上記のように調製した。MCF7乳がん細胞をT75フラスコで70%コンフルエンシーまで増殖させ、完全培地中10mg/ml HTPSで37℃、5% COで2時間処理した。この時間後、HTPSを除去し、洗浄液が透明に流れるまで細胞をPBS 10mlで5回洗浄した。細胞を擦り取り、カウントした。20,000細胞/mlを調製した。MCF7細胞を1:1,000アクチンIgG(Abcam ab8227)、1:1,000 GAPDH IgGまたはPBSのどちらかで30分間、RTで処理した。抗体またはPBSを細胞から除去し、20,000細胞/mlのMCF7細胞をウェルごとに添加し、10分間インキュベートし、細胞を除去し、加温したPBSでウェルを穏やかに洗浄して全ての結合していない細胞を除去した。ウェルを次いで4% PFAで10分間、RTで固定した。固定液を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄し、次いでフルオロマウントを使用してカバースリップを乗せた。カバースリップごとの全接着細胞をカウントした。
フローサイトメトリー
生細胞試験のために、培養細胞を70%コンフルエンス前後で収集し、アキュターゼを使用してフラスコの底から剥離した。細胞を遠心分離(1400rpm、5分間)によって回収した。分析のために、0.5×10/mlの濃度を有する細胞を使用した。細胞をPBSで洗浄し、3% BSA/TBS中、暗所、RTで10分間、HPA抗体とインキュベートして(7.5μg/ml)、細胞の表面のHPA GalNAcエピトープまたは1/50アクチン(クローンSP124)を検出した。細胞をヨウ化プロピジウム(10ug/ml)で処理して生集団をゲートした。375nm、405nm、488nmおよび638nmレーザーを備え、CytExpertソフトウェアを使用して操作する13カラー、4レーザーCytoFLEX S N-V-B-Rフローサイトメーターを使用して、647コンジュゲートの波長をAPC-Aチャネルで定量的に記録した。
各試料を三重に分析し、分析した細胞の表面のGalNAcエピトープレベルの決定は、APC検出器からの蛍光シグナルの平均値に基づいた。ゲーティング:1)FSC-H vs FSC-A - ダブレット除去、凝集している細胞は2倍の面積および高さを有することになる。2)Pi生存ゲート - 死細胞から生細胞を識別。死細胞は透過性になり、それ故にPIは核に結合し、それ故により多くの蛍光を有することになる(本発明者は、違いを示すために本発明者の非染色Pi対照も結合させた)3)異なる条件間でピークのシフトを決定するための目的の抗体/レクチンチャネル。
固定細胞については、細胞を収集し、冷PBSに再懸濁した。細胞を抗アクチンAbと4℃で1時間インキュベートした(Proteintechカタログ:60008-1-Ig)。細胞を次いで洗浄し、フローサイトメトリー前にPBSに再懸濁した。
NanoFCM
NanoFCMは、https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/jev2.12044およびhttps://doi.org/10.1002/jev2.12079で独立してレビューされている、エキソソーム分析に重点を置く40nm~1ミクロンフローサイトメーターである。これらの結果は全て、ノッティンガム、UKに拠点を置く企業によって行われた。エキソソームは以前に説明したように抽出した。機器は以下の設定でセットした:SN-N30E、V1.11ソフトウェア、試料圧力-1Kpa、レーザー-10/50mW 488@ 20/100mW 640、SS減衰-10%および最小幅-0.3ms。シリカナノ粒子を用いて検量し、EV濃度を定量化した。PBS、抗体対照およびEV非染色および染色最適化を行った。アクチン抗体については、約2e8~2e10粒子を、抗体/染色と1/50~1/500で30分間、室温でインキュベートし、PBSで1/5~1/50に希釈した。HPAについては、約2e8 粒子を抗体/染色と1/500で30分間、室温でインキュベートし、次いでPBSで1/20~1/50に希釈した。高いバックグラウンドの場合、110k×gで1時間超遠心分離し、50μlに再懸濁した。上清を除去し、試料を50ul PBSに再懸濁した。約40~199nmの間でゲートした事象を1分間記録し、そのサイズでゲートした全エキソソームの割合としての陽性シグナルを有するエキソソームの数として記録した。
Figure 2023539727000004

実施例1-転移能のバイオマーカーとしての膜結合アクチンの同定
エスカルゴ由来のレクチンであるリンゴマイマイ凝集素(HPA)の、乳がん(BC)および他の上皮がんへの結合は、転移能および患者の予後不良と関連している[Brooks S., 2000, Histology and Histopathology, 15(1): 143-158]。HPAが何に特異的に結合するかは不明であるが、HPAは末端α-GalNAc(HPAが最も高い親和性を有する単糖)を有する一連の糖タンパク質に結合することが示されている。これらの糖タンパク質の1つががん関連Tn抗原(Ser/Thr-GalNAc)である。がん関連Tn抗原は、O結合型グリコシル化で作られる初期構造であり、通常は常にさらに精密に作られるが、がんで頻発している(Brooks S.A. & Leathem A.J.C., 1995, British J. Cancer, 71: 1033-1038)。
高HPA陽性BC細胞は、静的接着アッセイにおいて弱HPA陽性またはHPA陰性BC細胞より有意に多く内皮細胞に接着する。このアッセイは、狭い毛細血管における転移性がん細胞停止を模倣している。がん細胞が転移に成功するには、がん細胞は血管に結合し、血管外遊出しなければならない。細胞をHPAまたはBSA-GalNAcとインキュベートすると細胞結合を阻害することから、結合はこのグリコシル化目印を通じて媒介されることが示されている。
HPA陽性細胞接着を媒介する内皮細胞上の受容体の同定
BC細胞のHPA結合グリカンを認識している内皮細胞上の推定受容体を同定するために、TNFα(内皮受容体を上方制御することが知られている炎症性サイトカイン)を使用して活性化してある内皮細胞から全タンパク質を抽出した。タンパク質をSDS-PAGEにかけ、次いでブロッティングした。GalNAc-BSA-ビオチン(GalNAcは、HPAが名目上最大の特異性を有する糖である)をプローブとして使用して、目的の内皮タンパク質を同定した。陰性対照としてBSA-ビオチンも使用して膜をプローブした。図1に例示するように、膜をGalNAc-BSA-ビオチンでプローブするといくつかのバンドが観察されたが、膜をBSA-ビオチンでプローブした場合、バンドは観察されなかった。
GalNAc-BSA-ビオチンをプローブとして使用して、いくつかのバンドが一貫して同定された。これらから、5つのゲル断片を選択し、質量分析用に切除した(図2)。分離はサイズ上に過ぎないことから、1Dゲルからのブロットで観察されたバンドは多数のタンパク質に相当し得る。バンドをよりうまく解明するために、2D-PAGEを使用してタンパク質をサイズおよびpHの両方について分離した。2Dゲルをブロッティングし、GalNAc-BSA-ビオチンでプローブした。13個のスポットを目的のスポットとして同定し、2D PAGEゲルから切除した(図3)。
質量分析データは、1Dおよび2D-PAGEの両方からのゲル断片中のいくつかのタンパク質を明らかにし、これらの一部は両方で重複していた。同定されたそれらのタンパク質の一つが、通常は細胞内スカフォールドタンパク質であるプレクチンであった。しかし、Shin et al (2013)は、プレクチンがエキソソーム分泌により細胞の膜に局在化できることを示した。これを調べるために、EVをBC細胞から単離し、静的接着アッセイの前にBC細胞か内皮細胞のどちらか、または両方とインキュベートした。BC細胞および内皮細胞の両方をEVとインキュベートすると、無処理、BC細胞のみまたは内皮細胞のみの処理と比べて、内皮細胞へのBC細胞の結合を有意に増加させることが見出された(図4)。この知見は、内皮細胞へのBC細胞接着を助ける上でEVが積極的な役割を果たし得ることを示唆するものである。
これをさらに調べるために、siRNAを使用してプレクチンをBC細胞か内皮細胞のどちらか、または両方でノックダウンした。無処理およびスクランブルsiRNA処理細胞(グラフでは陰性と呼ばれる)陰性対照細胞と比べて、全ての場合において内皮細胞へのBC細胞の結合は有意に低下し、それ故に、プレクチンはBC細胞が内皮細胞に結合するのに必要であることを示唆している(図5)。
内皮細胞上の受容体が、BC細胞におけるグリコシル化目印に特異的であり、細胞結合を媒介することの確認
内皮細胞上の受容体が、BC細胞におけるグリコシル化目印に特異的であることを確認するために、組換えプレクチン断片[プレクチンのアクチン結合ドメインを含有、該ドメインは全てのアクチンアイソフォームに結合することができる(Fontao et al., 2001, J. Cell. Sci., 114: 2065-2076)]を使用して、内皮細胞の添加前に10分間インキュベートしてBC細胞を遮断した。内皮細胞への細胞接着は、無処理対照細胞と比べて有意に低下した(図6)。BC細胞を組換えプレクチンとインキュベートした場合に観察される結合の低下は、HPA陽性グリコシル化目印へのプレクチン結合の結果であり、それによってBC細胞に「キャップし」、内皮細胞への結合を防ぐという仮説を立てた。
BC細胞由来のEVが内皮細胞への接着をどのように増加させるかの調査
BC細胞におけるプレクチンのノックダウンの知見は、BC細胞由来のEVは内皮細胞へのBC細胞の接着を増加させ得るという観察と合わせて、EVはプレクチンをBC細胞から内皮細胞の表面に運び、次いでBC細胞が結合する有効な「上陸プラットフォーム(landing platform)」を増加させ得るという仮説をもたらした。この仮説のテストに取りかかるために、「レスキュー」実験を行った。BC細胞においてプレクチンをノックダウンすると、内皮細胞へのBC細胞の結合は低下した(図7)。興味深いことに、内皮細胞を対照BC細胞由来のEVで処理すると、この結合の低下は部分的にレスキューされた。これは、正常な細胞(プレクチンを有する)由来のEVが、結合の発生を可能にする「上陸プラットフォーム」を提供しているという仮説と一致する。
モデル系では、高HPA陽性(MCF7)および弱HPA陽性(BT474)であることが以前に報告されている2つのBC細胞株を使用して、上記の仮説を検証した。2つの細胞株からタンパク質を抽出し、SDS-PAGEにかけ、次いでブロッティングし、HPAでプローブした。HPA陽性BC細胞株(MCF7)は、75kDaに1つのバンドしか持たない弱HPA陽性BC細胞株(BT474)より広範なHPA陽性糖タンパク質を有し、それによってこのモデル系の使用を確認した(図8)。
NanoViewを使用すると、HPA結合陽性細胞はHPA結合陽性EVを産生し、同様にHPA結合陰性細胞はHPA結合陰性EVを産生することが示された。これを行うために、2つの一般的に使用されるEVマーカーおよびHPAに特異的な蛍光コンジュゲート抗体で2つのEV集団を標識して、2つのBC細胞株(一方はHPA結合陰性、他方はHPA結合陽性)からEVを単離し、EVが「HPA結合陽性」を有する量を定量化することができた。HPA結合陰性BC細胞由来のEV(BT474左、図9)はHPA結合陰性であることが見出されたが、HPA結合陽性BC細胞由来のEV(MCF7右、図9)はHPA結合陽性であった。特に、HPAは小胞においてCD9と優勢的に共局在化された - CD81陽性小胞の13%、およびCD63陽性小胞の9%と比べて、CD9陽性小胞の最大45%がHPA陽性である。APC発光スペクトルとの重複のため、蛍光コンジュゲート抗体CD63はこの実験に含めなかった。
内皮細胞上の受容体への結合を媒介するBC細胞での糖タンパク質の同定
細胞骨格プレクチンは、ベータアクチンを含む、そのアクチン結合ドメイン(ABD)と相互作用するいくつかの結合パートナーを有する。グリコシル化ベータアクチンが細胞表面プレクチンの潜在的結合パートナーであるかどうかを調べるために遮断実験を行い、抗ベータアクチンIgG(Abcam ab8227)を使用して、内皮細胞とのインキュベーションの前にベータアクチンを30分間マスキングした)。未処理対照細胞と比べて、ベータアクチンを遮断すると細胞接着は有意に低下し、それ故に、ベータアクチンがプレクチンの結合パートナーであること、およびこの相互作用が内皮細胞へのBC細胞の結合に寄与することを示唆している(図10)。
異なる細胞株における表面アクチンのレベル
既知の浸潤性およびHPA結合プロファイルが分かっている一連の細胞を使用して、異なる細胞タイプにおける表面アクチンのレベルをフローサイトメトリーによって決定した。これらは、正常/HPA陰性から、非転移性/弱HPA陽性~高転移性/高HPA陽性にわたった(図11)。HME細胞は正常な乳房細胞であり、HPA陰性である;BT474は、転移の証拠がない原発性浸潤性腺管がんに由来し[Lasfargues et al. 1978, J. Nat. Institute, 61(4): 967-978]、HPAで弱く標識される;ZR751は、浸潤性原発性乳管がんからの悪性腹水-すなわち既に転移していた細胞に由来し(Engel et al. 1978, Canc. Res., 38, 3352-3364)、HPAで中程度に標識される;T47Dは、浸潤性原発性乳管がんからの悪性胸水-すなわち既に転移していた細胞に由来し[Keydar et al 1979, Eur J Cancer, 15 (5):65 9-70]、HPAで高度に標識される;MCF7は、浸潤性原発性乳管がんからの悪性胸水-すなわち既に転移していた細胞に由来し[Soule et al. 1973, J. Nat. Cancer Institute, 5 1(5): 1409-14-16]、HPAで高度に標識される。アクチン標識は、表面アクチンの増加がより浸潤性/転移性細胞で測定される点でHPA標識と類似した傾向に沿っているようである。
図12は、アクチンのレベルが非転移性乳がん細胞(BT474)より転移性乳がん細胞(MCF7)の表面で高いことをフローサイトメトリーを使用してさらに示している。このデータは、ベータおよびガンマアクチンの両方を検出できる抗体を使用して作成された。図13は、乳がんMCF7、結腸直腸がんHT-29、および肺がんA539を含む転移性がんも、その表面でHPAのレベル上昇を示すことをさらに示している。これらの結果は、アクチンおよびHPAいずれの表面レベルも転移性がん細胞で増加することをさらに示しており、故にそれらの診断能を示すものである。
図14はさらに、転移性がん細胞におけるアクチンの表面レベルの増加を支持する。このデータは非転移性および転移性乳がんを比較し、ベータアクチンまたはガンマアクチンのどちらかに対する抗体を使用しており、どちらも転移性がん細胞におけるアクチンレベルの増加を示している。
異なる細胞株から得られた微小胞における表面アクチンのレベル
図15~17は、転移性および非転移性乳がん、肺がんおよび膵臓がん細胞から得られた微小胞の表面のアクチンレベルを比較する。結果は、転移性細胞から得られた微小胞におけるアクチンのレベル上昇を明白に示している。
異なる細胞株から得られたエキソソームにおける表面アクチンのレベル
図18~20は、転移性および非転移性乳がんおよび結腸直腸がん細胞から得られたエキソソームの表面のアクチンレベルを比較する。結果は、非転移性細胞と比べて転移性細胞から得られたエキソソームにおけるアクチンのレベル上昇を明白に示している。図21は、転移性がん、具体的には結腸直腸HT-29がん細胞から得られたエキソソームも、その表面でHPAのレベル上昇を示すことをさらに示している。図22は、転移性乳がんおよび結腸直腸がん細胞がそれらの表面でガンマアクチンのレベル上昇を示すことを示している。
考察
結論として、本明細書に提示されたデータは、上皮がん細胞、および/またはそれに由来する細胞外小胞の表面(膜結合)のアクチンが、がん細胞の転移能の診断マーカーまたは予後マーカーとして機能し得ることを示している。アクチンレベルは、特定のがん治療に対する反応のモニタリング、疾患進行のモニタリング、および/または疾患再発のモニタリングに使用することもでき、HPAレベルも、単独でまたはアクチンレベルとの併用のどちらかでバイオマーカーとして使用され得る。

Claims (23)

  1. がんと診断された対象が転移を発症する可能性があるか、または発症している可能性があるかどうかを決定する方法であって、対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを検出することを含み、
    膜結合アクチンが試料中に検出される場合に、その対象は転移を発症する可能性があるかまたは発症している可能性があると決定される、方法。
  2. 対象を転移性がんと診断する方法であって、対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを検出することを含み、膜結合アクチンが試料中に検出される場合に、その対象はがん転移を有すると決定される方法。
  3. がんと診断された対象が転移を発症する可能性があるか、または発症している可能性があるかどうかを決定する方法であって:
    a.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを測定すること、
    b.対象から得られた試料で測定された膜結合アクチンのレベルを標準試料中の膜結合アクチンのレベルと比較すること、および
    c.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルが、標準試料中の膜結合アクチンのレベルとほぼ同等かまたはより高ければ、対象は転移を発症する可能性があるかまたは発症している可能性があると決定すること
    を含む方法。
  4. 対象を転移性がんと診断する方法であって:
    a.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを測定すること、
    b.対象から得られた試料で測定された膜結合アクチンのレベルを標準試料中の膜結合アクチンのレベルと比較すること、および
    c.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルが、標準試料中の膜結合アクチンのレベルとほぼ同等かまたはより高い場合に、対象を転移性がんと診断すること
    を含む方法。
  5. がんと診断された対象を予後診断する方法であって:
    a.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを測定すること、
    b.試料で測定された膜結合アクチンのレベルを標準試料中の膜結合アクチンのレベルと比較すること、
    c.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルが、標準試料中の膜結合アクチンのレベルとほぼ同等かまたはより高い場合に、患者は予後不良であると決定すること
    を含む方法。
  6. 予後不良が、転移を発症する可能性の増加および/または生存の可能性の低下と関係している、請求項5に記載の方法。
  7. 転移性がんの既知の治療による治療から恩恵を受ける可能性がある、がんと診断された患者を同定する方法であって:
    a.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルを測定すること、
    b.試料で測定された膜結合アクチンのレベルを標準試料中の膜結合アクチンのレベルと比較すること、
    c.対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルが、標準試料中の膜結合アクチンのレベルとほぼ同等かまたはより高ければ、患者は転移性がんの既知の治療による治療から恩恵を受ける可能性があると決定すること
    を含む方法。
  8. 対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルが、標準試料中の膜結合アクチンのレベルより少なくとも約50%、75%、100%、150%、200%、300%、500%、1000%、5000%、または10000%多い場合に、対象から得られた試料中の膜結合アクチンのレベルは標準試料中の膜結合アクチンのレベルより高いと決定される、請求項3~7のいずれかに記載の方法。
  9. 標準試料が、がんと診断されていない健康な患者からの同等の試料であるか、または転移性であることが分かっている同等の試料である、請求項3~8のいずれかに記載の方法。
  10. 方法が、エクスビボ方法またはインビトロ方法である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
  11. 試料が、組織生検ならびに/または血液試料および/もしくは唾液試料である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
  12. 組織生検が乳房組織生検である、請求項11に記載の方法。
  13. 膜結合アクチンのレベルの検出または測定が、フローサイトメトリー、免疫組織化学、免疫細胞化学、ウェスタンブロット、および/またはELISAによって行われる、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
  14. a.対象が転移を発症する可能性があるかもしくは発症している可能性があると決定される、または
    b.対象が転移性がんと診断される、または
    c.対象が予後不良診断を受ける、または
    d.対象が転移性がんの治療から恩恵を受ける可能性があると決定される
    ならば、転移性がんの治療法が対象に施される、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
  15. (a)がんと診断された対象が転移を発症する可能性があるか、もしくは転移を発症している可能性があるかどうかを決定する、または(b)がんと診断された対象を予後診断する、または(c)対象を転移性がんと診断するためのキットであって、
    膜結合アクチンを検出する手段を含み、
    i.目的の細胞タイプを同定する手段、および/または
    ii.細胞外小胞を単離する試薬
    のうちの1つまたは複数をさらに含んでもよいキット。
  16. 膜結合アクチンを検出する手段がアクチン結合ポリペプチドである、請求項15に記載のキット。
  17. 目的の細胞タイプが上皮細胞であり、上皮細胞を同定する手段がEpCAM結合ポリペプチドである、請求項15または16に記載のキット。
  18. 膜結合アクチンが細胞の膜、および/または細胞外小胞の膜で検出される、請求項1~14のいずれかに記載の方法または請求項15~17のいずれかに記載のキット。
  19. 細胞が上皮細胞または循環腫瘍細胞である、請求項18に記載の方法またはキット。
  20. 上皮細胞が乳房組織由来である、請求項19に記載の方法またはキット。
  21. がんが上皮細胞がんである、請求項1~14もしくは17~20のいずれかに記載の方法、または請求項15~20のいずれかに記載のキット。
  22. 上皮細胞がんが乳がんである、請求項21に記載の方法またはキット。
  23. アクチンがベータアクチンである、請求項1~14もしくは17~22のいずれかに記載の方法、または請求項15~22のいずれかに記載のキット。
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