JP2023539104A - 止血性エラスチン様ポリペプチド - Google Patents

止血性エラスチン様ポリペプチド Download PDF

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Abstract

本発明は、Qブロック配列に組み込まれたグルタミンと、任意にKブロック配列に組み込まれたリジンとを含む止血エラスチン様ポリペプチドに関するものである。生理的条件下では、Qブロック配列とKブロック配列とがヒトトランスグルタミナーゼファクターXIIIaにより認識され、フィブリンネットワークと架橋される。本発明はまた、ポリペプチドの医療的な使用、ポリペプチドをコードする核酸配列、前記核酸配列を含む発現ベクター、及び前記核酸配列又は前記発現ベクターを含む細胞に関する。【選択図】なし

Description

本願は、2020年8月18日出願の欧州特許出願第20191629号の優先権を主張するものであり、これは参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、Qブロック配列に組み込まれたグルタミンと、任意でKブロック配列に組み込まれたリジンとを含む止血性エラスチン様ポリペプチド(hemostatic elastin-like polypeptide)に関するものである。生理的条件下では、Qブロック配列とKブロック配列とがヒトトランスグルタミナーゼファクターXIIIaにより認識され、フィブリンネットワークと架橋される。本発明はまた、ポリペプチドの医療的な使用、ポリペプチドをコードする核酸配列、前記核酸配列を含む発現ベクター、及び前記核酸配列又は前記発現ベクターを有する細胞にも関する。
重症外傷は、45歳以下の人の主な死因であり、2020年には年間840万人もの死因を占めると予測されている。これらの死因の多くは、止血ができなかったことに起因している。大量出血の場合、傷害部位で凝固因子が急速に枯渇し、25%にも及ぶ外傷患者で外傷性凝固障害(TIC:trauma-induced coagulopathy)と呼ばれる状態になり、これは死亡率の上昇に関連している。
止血は2段階で行われ、その第1段階は傷害部位で循環血小板が活性化及び凝集し、血小板栓の形成を引き起こす。第2段階では、フィブリン(Fb:fibrin)が重合し、不溶性タンパク質のハイドロゲルを形成し(=クロット(clot:凝塊))、これが構造的な支持と血流の妨げになる。この第2段階では、活性化トロンビンが前駆体タンパク質フィブリノゲン(Fg:fibrinogen)からフィブリノペプチドを切断し、ノブA及びBと呼ばれる配列が現れるとFbネットワークが形成される。このノブは隣接するFb/Fgの遠位端のホールA及びBと呼ばれる部位と共有結合的に結合することで、Fbがハーフスタッガード(half-staggered)構造で自己会合して、プロトフィブリルを形成することを可能にする。次いで、このプロトフィブリルが束になって繊維を形成し、最終的には不溶性のFbネットワークが形成される。その後、Fbネットワークは、活性化した凝塊会合したトランスグルタミナーゼFXIIIaによって触媒されるリジン残基とグルタミン残基との反応によって形成される共有結合的な架橋によって安定化し、さらにネットワーク全体に分布する血小板によって発揮される収縮力によって剛化する。したがって、FbとFXIIIaとはともに止血の重要な担い手であり、止血制御システムの有効な分子標的であるといえる。
ゲル化したFbと循環しているFgとを識別する特異的な高親和性結合剤を得ることが困難であるため、合成システムによるFbの標的は困難である。Fbクロットと可溶性Fgとは配列及び構造の相同性を共有しているため、分子識別の基礎となる立体構造エピトープはごく少数しか存在しない。それにもかかわらず、ファージディスプレイ法を用いてFb特異的結合剤の単離に成功した。これにより、Fbを結合するペプチド又はナノボディを合成ポリマー又は粒子にグラフト化してin vivoでのクロット形成をサポートすることによるFb標的止血剤が開発されてきた。あるいは、Fbはまた、ノブA及びB模倣体によって内在性ホールa及びb結合ポケットに係合することによっても標的化されてきた。これらのペプチド模倣体をポリエチレングリコール(PEG)のポリマー又はタンパク質などの大きな分子に付加することで、Fbの機械的特性の変化、Fbネットワーク構造の調整、又はFbゲルへの治療薬の送達の標的化を可能にする様々な構造体が実現されてきた。
上述の最新技術に基づいて、本発明の目的は、止血を達成するための手段及び方法を提供することである。
この目的は、本明細書の独立請求項の主題によって達成される。
図1は、hELPの設計及びFbクロットへの統合を模式的に示す。(a)hELPを、Qブロック、相分離ブロック、及びKブロックを含有するトリブロックコポリマーとして設計した。(b)下限臨界溶液温度(LCST)超過では、hELPは相分離してコアセルベートを形成し、FXIIIaによって共有結合的に架橋され得る。(c)フィブリノゲン、トロンビン、及びFXIIIと混合すると、hELPのコアセルベートは共有結合でFbネットワークに統合され、相依存的に機械的強度が向上し、ゲル化動態(gelation kinetics)もまた向上し、プラスミン分解速度が低下し、Fbネットワークの細孔径が減少する。 図2は、hELP及び対照ELP(conELP)の曇点及びFXIIIaを介した架橋を示す。(a)20/150mM HEPES/NaCl+20mM CaClにおけるhELP又はconELPの30μM溶液について曇点を測定した。曇点は正規化透過率が0.5未満の温度と定義した。データは平均値±SD(斜線部)(n=2)である。(b)50μMのhELP又はconELPと10μgmL-1のヒトFXIIIaを37℃で1時間インキュベートした後のSDS-PAGEゲルを示す。矢印はhELP二量体に相当する位置を示す。 図3は、hELP-Fbクロットの構造的形態を示す。(a)f-conELP、f-hELP又はHEPESバッファーを添加剤とした22℃又は37℃で形成したFbクロットの2色共焦点蛍光顕微鏡観察を示す。スケールバーは30μmである。(b)共焦点蛍光画像におけるFb(緑)又はELP(赤)チャンネルからの信号の空間的な共局在を定量化したピアソンの相関係数の比較を示す。(c)hELP、conELP、又はHEPESバッファーを含有するFbクロットの孔径測定を示す。統計的有意性は、一元配置分散分析(ANOVA)とテューキーの事後検定を用いて判定した。P<0.05、***P<0.001。パネルb及びcのすべてのデータは、平均値±SDで示されている(n=3)。 図4は、hELP又はconELPの存在下でのFbクロットのゲル化動態を示す。a)30μMのhELP、conELP、又はHEPESバッファーを含有する2.2mg mL-1 Fbクロットの37℃でのゲル化の500~800nmの波長範囲にわたる吸光度を示す。測定は、1時間にわたり1分間隔で行った。b)37℃でトロンボエラストグラフィによって測定された凝固開始時間(R)、c)アルファ角、及びd)30μMのhELP、conELP、又はHEPESバッファーを含有するFbクロットの最大振幅(MA:maximum amplitude)を示す。パネルb、c、及びdのデータは、平均±SD(n=3)で示される。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001:一元配置分散分析とテューキーの事後検定。 図5は、hELP-Fbクロットの機械的特性及びトロンボエラストグラフィのin-vitro特性を示す。a)30μMのhELP、conELP、又は同量のHEPESバッファーのいずれかを含有するFbゲルの平均せん断貯蔵弾性率を示す。22℃又は37℃のいずれかでレオメーターのコーンとプレートの間にゲルを形成させた後、1%のひずみで0.1~3Hzの周波数掃引を実行した。点線は、2.2mg mL-1のFb HEPES対照ゲルの平均せん断貯蔵弾性率に対応する臨界生理学的閾値の剛性を示す。b)37℃での30μMのhELP、conELP、HEPESバッファーを含有する2.2mg mL-1Fbゲルの0.1~100%(f=1Hz)のひずみ掃引を示す。すべてのパネルのデータは、平均値±SD(n=3)で示される。**P<0.01、***P<0.001;一元配置分散分析とテューキーの事後検定。 図6は、プラスミンによるFbクロットの分解を示す。a)30μMのhELP、conELP、又はHEPESバッファーを含有する1.5mg mL-1のFbクロットを、37℃で10μg mL-1プラスミンに曝露した後のタイムラプス共焦点画像である。b)30μMのhELP、conELP、又はHEPESバッファーを含有する1.5mg mL-1のFbクロットについて、複数のクロット(n=3)の共焦点画像から測定した、経時的な溶解したクロットの割合の定量化を示す。 図7は、37℃で形成された1.5mg mL-1のFbクロット中のhELPのコアセルベートのサイズ分布を示す。粒子径は、3つの異なるhELP含有Fbクロットの画像から決定した。 図8は、22℃又は37℃での、HEPESバッファー、30μM conELP、又は30μM hELPを含有するFbクロットを通過する等張HEPESバッファーの体積流量の違いを示す。統計的有意性は、一元配置分散分析(ANOVA)とテューキーの事後検定によって決定した。***P<0.001。 図9は、(a)HEPES、b)30μM conELP、c)30μM hELP、d)20μM hELP、e)10μM hELP、及びf)5μM hELPを含有する2.2mg mL-1 Fbクロットの37℃で1時間かけて測定した貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)を示す。クロットは一定の振動せん断応力(γ=0.1%;f=1Hz)にかけられた。斜線部は平均値からの1標準偏差を示す(n=3)。 図10は、生理的条件下で様々な濃度の精製hELP及びconELPを24時間曝露した後のヒト皮膚線維芽細胞(新生児;HDFn)の細胞生存率を、培地のみを含有する対照と比較して示す。データは平均値±SDで示す(n=4)。**P<0.01;一元配置分散分析とテューキーの事後検定。 図11は、大腿動脈損傷出血モデルにおいて、hELP(4Tg-4Tg)又は不活性conELP(実施例10参照)を約140mg kg-1静脈内投与した後のラットの生存曲線を示す。実験の最初の15分間(大腿動脈損傷を囲むクランプの解除後)は自由出血期間とし、その後は可能な限りMAPを60mm Hg超過に維持するため、体液蘇生を行った。MAPが20mm Hg未満になった時点で動物を安楽死させた。hELPポリマーはconELPと比較して、有意水準p=0.0554(ログランク コックス・マンテル検定)で有効であった。
発明の概要
本発明の第1の態様は、
a.
i. DQMMLPWPAVAL(配列番号003)、
ii. WQHKIDLRYNGA(配列番号004)、
iii. SQHPLPWPVLML(配列番号005)、
iv. EQFPIAFPRYSI(配列番号006)、
v. SEQHLLKWPPWH(配列番号007)、
vi. WQIPVDWPPLPP(配列番号008)、
vii. DQWMMAWPSLTL(配列番号009)、及び/又は
viii. SQIPMAWPLLSL(配列番号010)、
から選択されるQブロックアミノ酸配列、
b. 複数のスペーサーアミノ酸配列VPGXG(配列番号012);
c. 任意に、少なくとも1個のリジン残基を含むKブロック配列、
を含むポリペプチドに関する。
任意の1個のスペーサーアミノ酸配列内の各Xは、独立して、Proを除く任意のタンパク新生アミノ酸から選択することができる。
本発明の第2の態様は、止血障害、過剰出血、又は凝固障害の治療又は予防における使用のための第1の態様によるポリペプチドに関する。
本発明の第3の態様は、第1の態様によるポリペプチドをコードする核酸配列に関する。
本発明の別の態様は、第3の態様による核酸配列を含む発現ベクターに関する。
本発明のさらに別の態様は、本発明の第3の態様による核酸配列、又は第4の態様による発現ベクターを含む単離細胞に関する。
発明の詳細な説明
用語と定義
本明細書の解釈のために、以下の定義が適用され、適切な場合には、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆もまた然りである。以下に定める定義が、参照により本書に組み込まれた文書と矛盾する場合、定められた定義が優先されるものとする。
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」、及び他の同様の形態、並びにそれらの文法的に同等な用語は、意味において同等であること、及びこれらの単語のいずれか1つに続く1つ又は複数の項目が、係る1つ又は複数の項目を網羅的にリストするものではない、又はリストした1つ又は複数の項目のみに限定するものではないことにおいてオープンエンドとすることを意図している。例えば、成分A、B及びCを「含む(comprising)」品目は、成分A、B及びCからなる(すなわち、成分A、B及びCのみを含有する)こともできるし、又は成分A、B及びCのみならず、1つ又は複数の他の成分を含むこともできる。そのため、「含む(comprise)」及びその類似の形態、並びにその文法的に同等な用語には、「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」の実施形態の開示が含まれることが意図及び理解されている。
値の範囲が提供されている場合、文脈上明確に別段の指示がない限り、その範囲の上限と下限の間の下限の単位の10分の1までの各介在値、及びその記載の範囲内の他の記載値又は介在値のそれぞれは、記載の範囲内で具体的に除外される限界に従って、本開示内に包含されると理解される。記載された範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方又は両方を除いた範囲もまた開示に含まれる。
本明細書において、ある値又はパラメータに関する「約」の言及は、その値又はパラメータそれ自体を対象とする変化形を含む(及び記述する)。例えば、「約X」に言及する記述は、「X」の記述を含む。
添付の特許請求の範囲を含み、本明細書で使用されるとおり、単数形の「a」、「又は(or)」及び「the」は、文脈によって明らかに指示されない限り、複数の参照語を含む。
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術及び生化学)により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。分子、遺伝、生化学的手法(一般に、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第4編.(2012)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.及びAusubelら,Short Protocols in Molecular Biology(2002)第5編,John Wiley & Sons,Inc.)及び化学的手法には、標準的な技術を使用する。
本明細書の文脈における「ELP」という用語は、エラスチン様ポリペプチドに関する。
本明細書の文脈における「Fb」という用語は、フィブリンに関する。
本明細書の文脈における「hELP」という用語は、止血性(hemostatic)ELPに関する。
本明細書の文脈における「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸がペプチド結合により接続された直鎖を形成する30個以上のアミノ酸からなる分子に関する。ポリペプチドのアミノ酸配列は、(生理学的に見出される)タンパク質全体又はその断片のアミノ酸配列を表すこともある。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、タンパク質及びその断片を含む。ポリペプチドは、アミノ酸残基配列として本明細書に開示される。
本明細書の文脈における「ペプチド」という用語は、アミノ酸がペプチド結合によって接続されている直鎖を形成する、最大50個のアミノ酸、特に8~30個のアミノ酸、より特に8~15個のアミノ酸からなる分子に関する。
アミノ酸残基の配列はアミノ末端からカルボキシル末端へ記載される。配列位置の大文字は、1文字コードのL-アミノ酸を指す(Stryer,Biochemistry,第3編。p.21)。アミノ酸配列の位置を示す小文字は、対応するD-又は(2R)-アミノ酸を意味する。配列はアミノ末端からカルボキシ末端に向かって左から右に記載される。標準的な命名法に従い、アミノ酸残基の配列は、以下のように3文字又は1文字のコードのいずれかで表記される。アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)及びバリン(Val、V)。
本発明の文脈における「特異的結合」という用語は、リガンドの特性を指し、リガンドは、ある親和性及び標的特異性でその標的に結合するものである。このようなリガンドの親和性は、リガンドの解離定数によって示される。特異的に反応するリガンドは、その標的に結合した際の解離定数が10-7mol/L以下であるが、標的と化学組成が全体的に同じであるが立体構造が異なる分子との相互作用では、少なくとも3桁高い解離定数を持つ。注目すべきは、本発明によるポリマーは共有結合しているので、Fb/Fgに対する「可逆的」結合を持たず、したがって解離定数によって特徴づけられることはない。酵素のKm値(ミケリス・メンテン定数)によって特徴づけられる、ポリマーに対する酵素(FXIIIa)に関連する親和性を定式化することができる。
モノマーの所定の群の「ポリマー」は、ホモポリマー(複数の同じモノマーから構成される;このモノマーはQブロック配列又はKブロック配列である)であり、モノマーのうちの所定の選択のコポリマーは、少なくとも2つの群のモノマーによって構成されるヘテロポリマーである。
本明細書で使用されるとおり、「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を伴う、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を指す。特定の実施形態では、本発明による医薬組成物は、局所、非経口又は注入投与に適した形態で提供される。
本明細書で使用されるとおり、「薬学的に許容される担体」という用語には、当業者に知られているとおり、任意の溶媒、分散媒質、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、染料など、及びそれらの組み合わせを含む(例えば、Remington:the Science and Practice of Pharmacy、ISBN 0857110624を参照)。
本明細書で使用されるとおり、任意の症状、疾患、又は障害(例えば、止血障害)の「治療」又は「治療する」という用語は、一実施形態では、疾患又は障害を改善すること(例えば、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発症を遅らせること、阻止すること、又は低減すること)を指す。別の実施形態では、「治療」又は「治療する」は、患者によって識別できない可能性があるものを含む少なくとも1つの身体的パラメータを緩和又は改善することを指す。さらに別の実施形態では、「治療」又は「治療する」は、身体的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、身体的パラメータの安定化)、又はその両方のいずれかで、疾患又は障害を調節することを指す。疾患の治療及び/又は予防を評価する方法は、以下に特に記載しない限り、当該技術分野で一般的に知られている。
本発明は、フィブリンと特異的に結合し、その力学的特性を調節するエラスチン様ポリペプチド(ELP)配列に基づく、天然変性タンパク質(intrinsically disordered protein)に関する。本発明者らは、ELPのN末端とC末端とにグルタミン残基とリジン残基とを導入することにより、N末端とC末端とのペプチドタグを含有する止血性ELP(hELP)を設計した。ペプチドタグ(Qブロック配列、Kブロック配列)は、ヒトのトランスグルタミナーゼXIIIa因子によって選択的に認識され、自然の凝固作用カスケードを介してフィブリンネットワークに共有結合的に連結される。下限臨界溶液温度(LCST)を超えるhELPの相分離により、希釈性凝固障害をシミュレートする条件下で剛化し、クロットの生物物理学的特性の救済につながった。相依存的な硬化に加え、得られたhELP-Fbネットワークは、プラスミン分解に対する耐性、細孔径の縮小、凝固開始後のゲル化速度の加速を示した。
本発明の第1の態様は、以下の各成分の1つ又は複数を含むか、又はそれらからなるポリペプチドに関する:
a.
i. DQMMLPWPAVAL(配列番号003)、
ii. WQHKIDLRYNGA(配列番号004)、
iii. SQHPLPWPVLML(配列番号005)、
iv. EQFPIAFPRYSI(配列番号006)、
v. SEQHLLKWPPWH(配列番号007)、
vi. WQIPVDWPPLPP(配列番号008)、
vii. DQWMMAWPSLTL(配列番号009)、及び/又は
viii. SQIPMAWPLLSL(配列番号010)、
から選択されるQブロック配列、
b. VPGXG配列(配列番号012)の複数のスペーサー配列;
c. 任意に、少なくとも1個のリジン残基を含むKブロック配列。
スペーサー配列の「ゲスト残基X」
原則として、各Xは、独立して、Proを除く任意のタンパク新生アミノ酸から選択することができる。
特定の実施形態では、各Xは、独立して、Ala、Val、及びGluから選択される。
特定の実施形態では、Xに使用されるAla:Val:Gluの比率は、1~3 Ala:7~10 Val:1 Gluである。
特定の実施形態では、Xに使用されるAla:Val:Gluの比率は、約2:8:1~2:9:1である。
X残基のAla:Val:Gluの比率及び正確なアミノ酸は、非常に柔軟で一般的である。ポリマーの温度/pH応答性がどのように調整されるかによって、分子内のX残基の比率及び順序が異なることが可能である。X残基の相対比率は、分子のpH及び温度による相転移を決定する上で重要であると考えられている。特定の実施形態では、Glu、Ala、又はValの古典的な置換のいずれかが、少数のケースでなされ得る。Gluの古典的な置換基はAspである。Alaの古典的な置換は、Gly、Val、Ser、Thrである。Valの古典的な置換は、Ala、Leu、Thr、又はIleである。特定の実施形態では、少数のケースとは、30%未満である。特定の実施形態では、少数のケースとは、20%未満である。特定の実施形態では、少数のケースとは、10%未満である。特定の実施形態では、少数のケースとは、5%未満である。
ELPの転移温度は、ゲスト残基のその長さ及び組成の両方で決まるため、ペンタペプチドの数が多すぎると、ELPの長さが長すぎて実質的に発現できない可能性がある。ELPが室温超過だが、生理的温度未満、同等、あるいはさほど超過しない温度で発現可能かつ転移可能である、実現可能な組成及び長さの領域が存在する。
本発明によるポリペプチドの典型的な長さの値としては、90~1,340アミノ酸長が挙げられるが、これに限定されるものではなく、これは10,000~150,000グラム/モルの分子量値に相当する。
Xパラメータ(ゲスト残基の組成)は、可能な長さの範囲に影響を与えない。あるX残基の組成に対して、長いELPと短いELPとの両方を作ることができる。しかしながら、溶解性は、重要な側面であり、これはゲスト残基の組成、長さ、及びバッファーの組成を含む要因の組み合わせによって制御される。例えば、疎水性のゲスト残基を使用する場合、長すぎると水に溶けなくなり、E.Coliで発現しなくなるため、あまり長くすることはできない(これが転移温度にどのように影響するかについては、下記/次頁を参照)。
特定の実施形態では、本発明の化合物は、27℃~47℃の間の転移温度によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、32℃~42℃の間の転移温度によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、34℃~40℃の間の転移温度によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、35℃~39℃の間の転移温度によって特徴づけられる。
特定の実施形態では、本発明の化合物は、27℃~37℃の間の転移温度によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、32℃~37℃の間の転移温度によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、35℃~37℃の間の転移温度によって特徴づけられる。
特定の実施形態では、本発明の化合物は、37℃~47℃の間の転移温度によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、37℃~42℃の間の転移温度によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、37℃~39℃の間の転移温度によって特徴づけられる。
当業者は、転移温度を調整するために従うことができる明確な規則が存在することを認識している。例えば、ゲスト残基Xの位置に疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、W、Y、又はV)を多く添加すると、転移温度が低下するであろう。荷電性又は親水性のアミノ酸(R、H、K、D、E、S、T、N、Q)を添加すると、転移温度が上昇する傾向がある。転移温度を決定するために、各組成物をE.Coliで産生し、かつ本質的に約15℃~100℃の温度の関数として吸光度を測定する曇点アッセイで試験する(以下の実施例の方法2を参照)。
科学的仮説に縛られることなく、本発明者らは、実際のスペーサー配列はあまり重要ではなく、Xに使用されるAla:Val:Gluの定義される比率が、本発明の根底にある問題を解決する1つの方法であることを提案する。ポリペプチドの長さに加え、Ala:Val:Gluの比率が生理的温度に対する相分離を決定する。
本発明者らは、生理的温度で凝集体/ナノ粒子形成を駆動する37℃未満の転移温度を持つhELPを設計した。
これまでに得られたデータは、すべての反復が同じ配列を持つことが特に重要であることは示していない。どれもX残基の比率/組成が異なる可能性がある。
Qブロック配列
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号003によって同定されるQブロック配列を含む。特に特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号003によって同定される複数のQブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号004によって同定されるQブロック配列を含む。特に特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号004によって同定される複数のQブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号005によって同定されるQブロック配列を含む。特に特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号005によって同定される複数のQブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号006によって同定されるQブロック配列を含む。特に特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号006によって同定される複数のQブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号007によって同定されるQブロック配列を含む。特に特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号007によって同定される複数のQブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号008によって同定されるQブロック配列を含む。特に特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号008によって同定される複数のQブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号009によって同定されるQブロック配列を含む。特に特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号009によって同定される複数のQブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号010によって同定されるQブロック配列を含む。特に特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号010によって同定される複数のQブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本ポリペプチドは、2個以上のQブロック配列を含む。
特定の実施形態では、本ポリペプチドは、2個以上の同じQブロック配列を含む。
特定の実施形態では、本ポリペプチドは、2個以上の異なるQブロック配列を含む。
特定の実施形態では、本ポリペプチドは、2個以上のQブロック配列、スペーサー配列を含むが、Kブロック配列は含まない。
本明細書に開示される態様及び一般的な実施形態のいずれかの特に特定の実施形態では、Qブロック配列は、DQMMLPWPAVAL(配列番号003)である。
特定の実施形態では、本ポリペプチドは、2~50個のQブロック配列を含む。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、2~8個のQブロック配列を含む。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、3~6個のQブロック配列を含む。特定の実施形態では、本ポリペプチドは4個のQブロック配列を含む。
ある特定の実施形態では、本ポリペプチドは、本質的にQブロック配列及びスペーサー配列のみからなる。Qブロック配列は、短い(1~3、特に2アミノ酸)フレーミング配列によって挟まれてもよい。特定の実施形態では、これらのフレーミング配列はGSである。フレーミング配列、特にGSスペーサーは、通常、タンパク質工学において不活性かつ可溶性の「フレキシブルスペーサー」として使用される。
より特定の実施形態では、本ポリペプチドは、本質的に、Qブロック配列及びスペーサー配列のみからなり、本ポリペプチドは以下からなる:
-(VPGXG)n-[(Qブロック)-(VPGXG)n]mで表されるN末端Qトラクト
- -[(Qブロック)-(VPGXG)n]m-(VPGXG)oで表されるC末端Qトラクト
- 前記N末端Qトラクトと前記C末端Qトラクトとを分離するスペーサー配列多量体[(VPGXG)n]p、式中、
- 各nは、いずれの他のnから独立して、8~14、特に10~12の整数であり;
- 各mは、いずれの他のmから独立して、2~8、特に3~6の整数であり、より特にmは4であり;
- oは、0~10の整数であり;
- pは、3~6の整数であり、特にpは4又は5である。
さらに特定の実施形態では、本ポリペプチドは、配列番号16、又はそれに対して少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ本明細書の他の箇所で定義される生物活性を少なくとも80%有する配列である。
Qブロック配列及びKブロック配列
特定の実施形態では、本ポリペプチドは、2個以上のQブロック配列、スペーサー配列、及びKブロック配列を含む。
Qブロック配列とKブロック配列とは、ヒトトランスグルタミナーゼ第XIIIa因子によって選択的に認識かつ架橋される。架橋は、本発明の2個のポリペプチド(hELPともいう)間、又は本発明の1個のポリペプチドとフィブリン分子との間で行われる。それにより、本発明のポリペプチドはフィブリンネットワークに組み込まれる。Qブロック配列とKブロック配列との両方が、フィブリンで架橋されていてもよい。
特定の実施形態では、本ポリペプチドは、上記のようなQブロック配列、Kブロック配列、及び複数のスペーサー配列から本質的になる。特定の実施形態では、Qブロック配列は、ポリペプチドのN末端にあり、Kブロック配列はポリペプチドのC末端にある。特定の実施形態では、Kブロック配列は、ポリペプチドのN末端にあり、Kブロック配列はポリペプチドのC末端にある。
特定の実施形態では、本ポリペプチドは、Kブロック配列を含む。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、Kブロック配列GSKGS(配列番号011)を含む。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、2個以上のKブロック配列GSKGS(配列番号011)を含む。
特定の実施形態では、本ポリペプチドは、2~50個のKブロック配列を含む。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、2~8個のKブロック配列を含む。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、3~6個のKブロック配列を含む。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、4個のKブロック配列を含む。
特定の実施形態では、本ポリペプチドは、互いに独立して、2~8個のQブロック配列及び2~8個のKブロック配列を含む。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、互いに独立して、3~6個のQブロック配列及び3~6個のKブロック配列を含む。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、互いに独立して4個のQブロック配列及び4個のKブロック配列を含む。
特定の実施形態では、本ポリペプチドは、Qブロック配列とスペーサー配列から本質的になる。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、Qブロック配列、スペーサー配列、及びKブロック配列から本質的になる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号003によって同定される複数のQブロック配列、本明細書において同定されるKブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号004によって同定される複数のQブロック配列、本明細書において同定されるKブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号005によって同定される複数のQブロック配列、本明細書において同定されるKブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号006によって同定される複数のQブロック配列、本明細書において同定されるKブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号007によって同定される複数のQブロック配列、本明細書において同定されるKブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号008によって同定される複数のQブロック配列、本明細書において同定されるKブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号009によって同定される複数のQブロック配列、本明細書において同定されるKブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、配列番号010によって同定される複数のQブロック配列、本明細書において同定されるKブロック配列、及び付加的に配列番号012によって同定されるスペーサー配列からなる。
特定の実施形態では、スペーサー配列は、Qブロック配列又はKブロック配列でない配列を介在させずに、連続したアミノ酸鎖を形成する。換言すれば、スペーサー配列の後にさらなるスペーサー配列が続き、Qブロック配列又はKブロック配列で中断されるだけである。ポリペプチドの他の構成要素は、Qブロック配列、スペーサー配列、及びKブロック配列以外には、本質的に存在しない。
Kブロック及びQブロックの数は同じである必要はない。ある実施形態では、KブロックとQブロックとは、数が異なる。
ある実施形態では、Kブロック配列とQブロック配列の数は同じである。
特定の実施形態では、各Qブロック配列及び各Kブロック配列は、他の任意のQブロック配列及びKブロック配列と少なくとも2個のスペーサー配列によって分離されている。特定の実施形態では、各Qブロック配列及び各Kブロック配列は、他の任意のQブロック配列及びKブロック配列と少なくとも3又は4個のスペーサー配列によって分離されている。特定の実施形態では、各Qブロック配列及び各Kブロック配列は、他の任意のQブロック配列及びKブロック配列と10~14個のスペーサー配列によって分離されている。特定の実施形態では、各Qブロック配列及び各Kブロック配列は、他の任意のQブロック配列及びKブロック配列と12個のスペーサー配列によって分離されている。
ある実施形態では、Qブロック配列とKブロック配列とはその順序で混合され、つまり、一方の種類のすべての配列がN末端にあり、他方の種類の配列がC末端にあるわけではないことを意味する。例えば、あるQブロック配列の後にKブロック配列が続き、さらに別のQブロック配列が続くことがある。換言すれば、Qブロック配列とKブロック配列とが配列内で互いに隣接しているのは有効な設計といえる。
ある実施形態では、ポリペプチドに含まれるすべてのQブロック配列がQ配列トラクト内に含まれ、かつすべてのKブロック配列がK配列トラクト内に含まれる。
特定の実施形態では、Q配列トラクトはK配列トラクトのN末端である。
なお、本発明では、Qブロック配列トラクトがN末端であり、Kブロック配列トラクトがC末端である必要はない。
特定の実施形態では、本ポリペプチドは、50~1200個のスペーサー配列を含む。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、90~250個のスペーサー配列を含む。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、120~180個のスペーサー配列を含む。
特定の実施形態では、Q配列トラクトとK配列トラクトとは、少なくとも30個のスペーサー配列によって分離されている。特定の実施形態では、Q配列トラクトとK配列トラクトとは、少なくとも40個のスペーサー配列によって分離されている。特定の実施形態では、Q配列トラクトとK配列トラクトとは、少なくとも50個のスペーサー配列によって分離されている。
ある実施形態では、スペーサー配列は、連続した配列として、6~15個のスペーサー配列を含むスペーサー配列多量体に含まれる。ある実施形態では、スペーサー配列は、連続した配列として、10~14個のスペーサー配列を含むスペーサー配列多量体に含まれる。
特定の実施形態では、各Qブロック配列は、1個のスペーサー配列多量体によって他の任意のQブロック配列から分離されている。
特定の実施形態では、各Kブロック配列は、1個のスペーサー配列多量体によって他の任意のKブロック配列から分離されている。
特定の実施形態では、Q配列トラクトは、3~5個のスペーサー配列多量体によってK配列トラクトから分離されている。
特定の実施形態では、すべてのスペーサー配列多量体は同じ配列を有する。特定の実施形態では、スペーサー配列多量体の配列は、配列VPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGEGVPGAG(配列番号013)であるか、又はそれを含む。特定の実施形態では、スペーサー配列多量体配列は、配列VPGVGVPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGEGVPGAG(配列番号014)であるか、又はそれを含む。
特定の実施形態では、本ポリペプチドは、配列番号001のポリペプチド配列に対して(≧)85%以上の同一性によって特徴づけられるアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になり、かつ配列番号001のポリペプチド配列の少なくとも85%の生物活性によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、配列番号001のポリペプチド配列に対して(≧)90%以上の同一性によって特徴づけられるアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になり、かつ配列番号001のポリペプチド配列の少なくとも85%の生物活性によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、配列番号001のポリペプチド配列に対して(≧)92%以上の同一性によって特徴づけられるアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になり、かつ配列番号001のポリペプチド配列の少なくとも85%の生物活性によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、配列番号001のポリペプチド配列に対して(≧)94%以上の同一性によって特徴づけられるアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になり、かつ配列番号001のポリペプチド配列の少なくとも85%の生物活性によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、配列番号001のポリペプチド配列に対して(≧)95%以上の同一性によって特徴づけられるアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になり、かつ配列番号001のポリペプチド配列の少なくとも85%の生物活性によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、配列番号001のポリペプチド配列に対して(≧)96%以上の同一性によって特徴づけられるアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になり、かつ配列番号001のポリペプチド配列の少なくとも85%の生物活性によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、配列番号001のポリペプチド配列に対して(≧)97%以上の同一性によって特徴づけられるアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になり、かつ配列番号001のポリペプチド配列の少なくとも85%の生物活性によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、配列番号001のポリペプチド配列に対して(≧)98%以上の同一性によって特徴づけられるアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になり、かつ配列番号001のポリペプチド配列の少なくとも85%の生物活性によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、配列番号001のポリペプチド配列に対して(≧)99%以上の同一性によって特徴づけられるアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になり、かつ配列番号001のポリペプチド配列の少なくとも85%の生物活性によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本ポリペプチドは、配列番号001のポリペプチド配列に対して100%の同一性によって特徴づけられるアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になり、かつ配列番号001のポリペプチド配列の少なくとも85%の生物活性によって特徴づけられる。
生物活性アッセイ
目的のタンパク質を含有するFbクロットのレオロジー測定:30、20、10、又は5μM(μmol/L)の目的のタンパク質、30μM conELP、又は等量のHEPESバッファーを含有するin vitroでのFbクロットの機械的特性は、コーンプレート形状(d=25mm;1°角度)を用いるAnton Paar MCR 302レオメーターを用いて評価した。振動せん断弾性率を測定するために、周波数掃引測定を、1.5、2.2、3.0mg mL-1のフィブリノゲン(Fg)、目的のタンパク質、conELP、又はHEPESバッファー、20mM CaCl、及び0.2U mL-1トロンビンを含有するクロット溶液を調製することにより実施した。トロンビンを添加した直後に、90μLのクロット溶液を22又は37℃にて予熱したレオメーターのペルチェプレートに移し、測定コーンを試料上に下ろし、適切な混合と試料分布を確実にするためにコーンを60rpmで5秒間回転させる。蒸発を防ぐためにシリコーンオイル(η=100cSt)を試料の端部に塗布し、このクロットを1時間平衡化させた後、0.1~3Hzの周波数掃引(γ=1%;この材料の線形粘弾性領域(LVE:Linear Viscoelastic Region)に入るように事前に決定した)を行い、目的のタンパク質の生物活性を判定する。測定結果により、材料の貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)の値を得ることができ、このパラメータは、材料科学でよく知られているものであり、材料の剛性(G’)及び粘性(G’’)に関連する。これらのパラメータをhELPs/FbゲルとFb単独との間で比較すると、特に低ひずみ値(すなわち低い力)で剛性(G’)の増加が観察された。他のパラメータがない場合、生物活性の閾値はG’>200パスカルの増加である。
本発明の第2の態様は、外傷、止血障害、過剰出血又は凝固障害から選択される症状の治療又は予防に使用するための第1の態様によるポリペプチドに関する。
特定の実施形態では、凝固障害は、希釈性(dilutive(dilutional))凝固障害又は外傷性凝固障害(trauma-induced coagulopathy)である。
外傷性凝固障害に加えて、本発明による治療は、患者が十分な内在性凝固因子を有しているにもかかわらず、傷の大きさに起因して患者の凝固反応が不十分である内出血の場合にも有用であろう。
希釈性凝固障害とは、大きな外傷及び/又は出血に対する大量輸血の際に見られる凝固障害を指す。大きな外傷及び出血では、凝固因子及び血小板が消費されるため凝固異常が引き起こされる。希釈性凝固障害は、大量輸血の際に血小板が消費されるとともに希釈されることに起因する。これらの症例で蘇生に使用される大量の晶質液もまた血小板減少症の一因となることがある。濃厚赤血球は24時間以上保存すると血小板がほとんど含まれず、濃厚赤血球に含有される血小板は通常、輸血時に損傷し、循環から除去される。大量輸血時の血小板レベルが50,000~75,000/mmの間の血小板減少症は、血小板濃縮液で治療する必要がある。輸血された濃厚赤血球単位の数は、血小板減少症の程度又は血小板輸血の必要性を正確に予測するものではない。
凝固障害(出血性疾患ともいう)とは、血液を凝固させる(クロットを形成する)能力が低下している症状のことである。凝固障害により、制御できない内出血又は外出血を起こすことがある。治療せずに制御できない出血を放置すると、関節、筋肉、又は内臓に損傷を与える可能性があり、生命を脅かす可能性がある。凝固障害は、凝塊因子又は凝固因子として知られる血液凝固タンパク質レベルの低下又は欠如によって引き起こされる可能性がある。血友病及びフォン・ヴィレブランド病などの遺伝性疾患は、凝固因子の減少を引き起こす可能性がある。
特定の実施形態では、止血障害、過剰出血又は凝固障害は、以下に関連するか、又は以下によって引き起こされる:
a. 血小板障害、凝固障害、血管の欠陥、及び/又は血小板減少症、
b. 過度の抗凝固、特にワルファリン、ヘパリン、又は直接経口抗凝固薬(例:アピキサバン、エドキサバン、リバーロキサバン)の投与により引き起こされる抗凝固;
c. 肝疾患(凝固因子の産生不全)、
d. フォン・ヴィレブランド病、
e. 血友病、
f. 外傷。
過剰出血のさらなる詳細は、以下で得ることができる:
https://www.msdmanuals.com/professional/hematology-and-oncology/hemostasis/excessive-bleeding.
本発明の第3の態様は、本明細書に記載の態様及び実施形態のいずれかに記載された、本発明によるポリペプチドをコードする核酸配列に関する。
本発明の別の態様は、第3の態様による核酸配列を含む発現ベクターに関する。発現ベクター又は発現コンストラクトであり得る。
本発明の第5の態様は、第3の態様による核酸配列又は第4の態様による発現ベクターを含む細胞に関する。
医療、剤形、及び塩
同様に、本発明の範囲内には、上記の説明によるポリペプチドを患者に投与することを含む、それを必要とする患者において、止血障害、過剰出血又は凝固障害を治療すること、又はその方法である。
同様に、本発明の上記態様又は実施形態のいずれかによる非アゴニストリガンドを含む、止血障害、過剰出血又は凝固障害の予防又は治療のための剤形が提供される。
当業者は、具体的に言及された任意の薬剤が、当該薬剤の薬学的に許容される塩として存在し得ることを認識している。薬学的に許容される塩は、イオン化された薬物及び逆帯電した対イオンを含む。薬学的に許容されるアニオン性塩形態の非限定的な例としては、酢酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、酒石酸水素塩(bitatrate)、臭化物、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エンボン酸塩、エストール酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硫酸メチル、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、サリチル酸塩、ジサリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド、及び吉草酸塩が挙げられる。薬学的に許容されるカチオン塩形態の非限定的な例としては、アルミニウム、ベンザチン、カルシウム、エチレンジアミン、リジン、マグネシウム、メグルミン、カリウム、プロカイン、ナトリウム、トロメタミン、及び亜鉛が挙げられる。
投与形態は、鼻腔、口腔、直腸、経皮、若しくは経口投与などの経腸投与用、又は吸入剤若しくは坐剤とすることができる。あるいは、皮下、静脈内、肝内、若しくは筋肉内の注入形態などの非経口投与が用いられてもよい。任意に、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤が存在してもよい。
局所投与もまた、本発明の有利な使用の範囲内である。当業者は、以下の内容によって例示されるように、局所製剤を提供するための可能な広い範囲の処方について理解している:Benson及びWatkinson(編),Topical and Transdermal Drug Delivery:Principles and Practice(第1編,Wiley 2011,ISBN-13:978-0470450291);及びGuy及びHandcraft:Transdermal Drug Delivery Systems:Revised and Expanded(第2編,CRC Press 2002,ISBN-13:978-0824708610);Osborne及びAmann(編):Topical Drug Delivery Formulations(第1編,CRC Press 1989;ISBN-13:978-0824781835)。
局所投与は、局所創傷上に押し出すことができるか、又は包帯などの創傷被覆材への添加剤とすることができる2成分の前駆体溶液として二筒式注射器において実現可能である。
医薬組成物及び投与
本発明の別の態様は、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。さらなる実施形態では、該組成物は、本明細書に記載されるものなどの少なくとも2つの薬学的に許容される担体を含む。
本発明の特定の実施形態では、本発明の化合物は、典型的には、薬物の容易に制御可能な投与量を提供し、かつ患者に簡潔かつ容易に取り扱い可能な製品を付与するような薬学的剤形に製剤化される。
本発明の化合物の局所的使用に関する本発明の実施形態では、医薬組成物は、水溶液、懸濁液、軟膏、クリーム、ゲル又は噴霧可能な製剤、例えばエアゾール等による送達用のものなど、局所投与に適した方法で製剤化され、活性成分を当業者に知られている1つ又は複数の可溶化剤、安定剤、等張化増強剤、緩衝液及び防腐剤とともに含んでいる。
医薬組成物は、経口投与、非経口投与、又は直腸投与用に製剤化することができる。さらに、本発明の医薬組成物は、固体形態(限定されないが、カプセル、錠剤、丸薬、顆粒、粉末又は坐剤を含む)、又は液体形態(限定されないが、溶液、懸濁液又は乳濁液を含む)において構成することができる。
本発明の化合物の投与レジメンは、特定の薬剤の薬力学的特性及びその投与の様式及び経路などの既知の要因:レシピエントの種、年齢、性別、健康状態、病状、及び体重;症状の性質と程度;同時治療の種類;治療の頻度;投与経路、患者の腎機能及び肝機能、並びに所望の効果、に応じて変化するであろう。特定の実施形態では、本発明の化合物は、1日1回の用量で投与されてもよいし、又は1日の総用量が、1日2回、3回、又は4回に分割した用量で投与されてもよい。
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物又は組み合せは、約50~70kgの対象に対して約1~1000mgの活性成分(複数可)の単位用量であり得る。化合物、医薬組成物、又はそれらの組み合わせの治療上有効な投与量は、対象の種、体重、年齢及び個々の状態、治療される障害又は疾患又はその重篤度に依存する。通常の技術を有する医師、臨床医又は獣医師であれば、障害又は疾患の予防、治療又は進行抑制に必要な各有効成分の有効量を容易に決定することができる。
本発明の医薬組成物は、滅菌などの従来の医薬操作にかけることができ、及び/又は従来の不活性希釈剤、潤滑剤、又は緩衝剤、並びに保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤及び緩衝剤などのアジュバントを含有することができる。これらは、標準的なプロセス、例えば、従来の混合、造粒、溶解又は凍結乾燥プロセスによって製造することができる。医薬組成物を調製するための多くのそのような手順及び方法は、当技術分野で知られており、例えば、L.Lachmanら、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy,第4編,2013(ISBN 8123922892)を参照されたい。
本明細書において、例えばアイソタイプタンパク質又は医療適応などの単一の分離可能な特徴の代替形態が「実施形態」として記載されている場合、そのような代替形態は自由に組み合わせて、本明細書に開示した発明の別個の実施形態を形成してもよいと理解されたい。したがって、アイソタイプタンパク質に関する代替実施形態のいずれもが、本明細書で言及される医療適応の代替実施形態のいずれかと組み合わされ得る。
本発明は、以下の実施例及び図によってさらに説明され、そこからさらなる実施形態及び利点を引き出すことができる。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、その範囲を限定するものではない。
実施例1:止血性ELP(hELP)の設計及び特性評価
本発明者らは、ABCトリブロック構造を持つhELPを設計した(図1a)。すべての3個のブロックに存在する反復ELP成分は、ゲスト位置にアラニン、バリン、及びグルタミン酸残基を2:8:1(A)の比率で持つ11個のVPGXG(配列番号012)ペンタペプチドを含んだ。Qブロックと呼ばれるN末端hELPブロックは、4個のトランスグルタミナーゼタグ(図1a)をさらに含有し、コンテクスト配列
(DMMLPWPAVAL(配列番号003))
内に埋め込まれた1個のグルタミン残基をそれぞれ含む。これらのトランスグルタミナーゼタグは、ヒトFXIIIaにより高特異的に認識されることが以前に報告されている。本発明者らは、これらのFXIIIa感受性配列をより広範なhELP配列に埋め込むことで、hELPは可溶性フィブリノゲンとの標的外相互作用を避けつつ、FXIIIが活性化する創傷部位のFbネットワークに選択的に統合されるという仮説を立てた。中間hELPブロックは、相分離能を付与するもので、4個の連続したAユニットからなり、ペンタペプチドの繰り返しが合計48個である。この刺激応答性中間ブロックは、生理的温度(37℃)に反応してhELPの相分離を引き起こした。最後に、hELPのC末端には4個のリジンブロック
を含有し、これはFXIIIaにより触媒される反応においてグルタミンに対して相補的なパートナーとして機能した。対照ELP(conELP)はまた、グルタミン及びリジン残基を、グリシンに変異させてconELPがFXIIIaにより架橋されないようにした以外は、hELPと同じ配列で調整した。
本発明者らは、逆転移サイクリング(ITC:inverse transition cycling)によりhELP及びconELPをクローニング、発現及び精製し、曇点アッセイを用いてLCSTを測定した(C.Boutrisら,Polymer(Guildf).1997,38,2567)。30μMの作動濃度では、hELP及びconELPの両方が37℃未満の曇点を示し(それぞれ32.7及び34.1℃)、このことは、両ELPが生理的温度で凝集したことを示す(図2a)。次に、本発明者らは、SDS-PAGEを用いてFgの非存在下でFXIIIaがhELPを架橋する能力を試験することにより、Qブロック及びKブロックの機能性を確認した(図2b)。単一のhELPポリマーに相当するバンド(約69.5kDa)の強度の低下、及びhELPの二量体及び多量体に相当する高分子量のバンドの出現により、FXIIIaがhELPを架橋できたことが確認された。一方、FXIIIaとインキュベートしたconELPの試料は、架橋されなかった。hELP及びconELPの分子量は、質量分析により確認した。
実施例2:FbネットワークへのhELPの統合
本発明者らは、hELP及びconELPをAtto647-N-ヒドロキシスクシンイミド(赤色チャンネル)でN末端標識し、それらがまだFXIIIaによって架橋されていたことを確認した。次に、蛍光-hELP(f-hELP)又は蛍光-conELP(f-conELP)を、1% AlexaFluor 488標識フィブリノゲン(Fg-488、緑色チャンネル)を添加したFbクロットに組み込んだ。本発明者らは、2色共焦点蛍光顕微鏡を用いて、hELPとFbとのネットワーク形態、hELP及びFbの共局在化の程度、及びhELPの相転移がクロットの構造に与える影響について特性評価を行った。22℃では、3つのクロット(HEPES-Fb、conELP-Fb、hELP-Fb)すべてが、緑色のFbチャンネルで撮像すると、はっきりとしたFbネットワークが得られた(図3a、左)。赤色のhELPチャンネルで撮像すると、f-hELP蛍光も同様に、hELPシグナルとFbシグナルの間に高度な空間的な共局在を伴う秩序あるネットワークが示された(図3a、左、hELP)。本発明者らは、Fbネットワーク形成時にHEPESバッファー又はf-conELPのみを添加した場合、赤チャンネルの蛍光強度がほとんどないことを確認した(図3a、左、HEPES及びconELP)。
hELPとFbとの空間的な共局在を定量化するために、本発明者らは、ImageJのColoc2を用いて、ピアソンの相関係数(PCC)を算出した(J.Adler,I.Parmryd,Cytom.Part A 2010,77,733.)。22℃でのf-hELP-Fbクロットでは、f-hELPチャンネルとFbチャンネルの間のPCCが0.69±0.1となり、高い空間的相関を示した。f-conELP-Fbクロットでは、PCC値が0.05±0.09であり、空間的相関がないことを示した(図3b)。これらの結果は、hELPがFb及びFXIIIaとLCST未満で混合される場合、特異的にFb繊維に架橋され、かつ局在することを示す。
hELPのLCSTを超える37℃では(図3a、右)、conELP-Fb及びhELP-Fbのクロットで観察された構造は、予想された相分離と一致した。高いELP密度の点状スポットは、T>LCSTにてELPに富むコアセルベートが形成されることを示した。ELPに富むコアセルベートの密度は、f-hELP-Fbクロットの方がf-conELP-Fbクロットよりも高く、これはconELPが共有結合性の組み込みに必要なQ残基及びK残基を欠いているためであった。F-hELPのコアセルベートはFbネットワークに対してランダムに分布しておらず、Fbフィブリルとのいくらかの共局在も見られた。37℃でのhELP-Fbクロットの画像解析の結果、PCC値は0.163±0.04となった。本発明者らは、37℃で形成されたf-conELP-Fbクロットについて、PCC値が-0.04±0.06を測定し、これは空間相関がないことを示した。hELPのコアセルベートの平均半径を3つの別々のクロットの閾値(処理)画像から求めたところ、0.57±0.17μmであることがわかった(図7)。中央に明確なピークを有するhELPのコアセルベートのサイズの単峰性分布は、Fbゲル内でのhELPのコアセルベートの成長を制限するエネルギーバランスを示唆している。酵素的に架橋されたELPヒドロゲル、又はコラーゲンネットワークへのELPの酵素的組み込みに関する以前の研究では、酵素媒介架橋がLCST超過で阻害されなかったことが報告されている。本発明者らの結果もまた、これらの知見と一致し、コアセルベーションがFbネットワークとのhELP会合を阻害しなかったことを示している。実際、局所的に濃度を高めたQブロック及びKブロックを有する多価のhELPに富むコアセルベートは、FXIIIa介在型架橋を促進し得る。
実施例3:孔径の定量化
孔径は、Fbクロットの剛性及び酵素分解に対する抵抗性に寄与する重要な構造的特徴である。FXIIIaによるFbフィブリルの共有結合型の架橋は孔径を小さくし、in vitroでのFXIIIa補充は、剛性及び線維素溶解に対する抵抗性を増加させる。本発明者らは、hELPの効果を、本発明者らがhELP-Fbクロットを通る液体流量を測定した重量灌流アッセイを用いて調べ、次いでダルシーの法則及びCarrとHardinにより開発されたモデル(L.W.Chanら,Sci.Transl.Med.2015,7,277ra29;M.E.Carr et al.,Am.J.Physiol.1987,253,H1069)により、孔径を推定した。
22℃では、HEPES-Fb及びconELP-Fbの対照クロットを通る流量は、hELP-Fbクロットを通る流量の100倍程度高かった(図8参照)。これらの流量は、HEPES-Fbクロット、conELP-Fbクロット、hELP-Fbクロットの平均孔径がそれぞれ686.6±39.3、761.2±41.8、73.6±5.4nmに相当した(図3C)。hELP-Fbクロットで観察された約10倍小さい細孔径は、FXIII添加(2.1倍減少)、又は合成フィブリン結合ポリマー(1.5倍減少)のいずれかで処理したクロットで以前に報告されたものより著しく大きな細孔径の減少を示した。HEPES-Fb及びhELP-Fbの真空下でのSEM分析でも、細孔径の縮小と定性的に一致した。
37℃では、HEPES-Fb及びconELP-Fbの対照クロットの孔径は22℃でのものよりも小さく(それぞれ390.3±28.9nm及び504.3±51.3nm)、これはFXIIIa活性の温度依存性に起因すると発明者らは考えている。しかし、hELP-Fbクロットでは、37℃での細孔径は124.8±11.5nmで、22℃での半径よりわずかに大きかったが有意差はなかった(図3c)。したがって、22℃から37℃への温度上昇は、これらの対照で観察されたとおり、hELP-Fbクロットの重量灌流により測定される見かけの孔径に大きな変化をもたらしはしなかった。これは、hELP-Fbクロットが22℃にてすでに最大限の架橋がなされていることを示すと考えられる。
実施例4:ゲル化動態
本発明者らは、UV-Vis分光光度計において、濁度アッセイ(L.W.Chan et al.,Sci.Transl.Med.2015,7,277ra29;A.S.Wolberg,Blood Rev.2007,21,131;E.Mihalko,A.C.Brown,Semin.Thromb.Hemost.2019)を用いてゲル化動態に対するhELPの効果を調査した(図4a)。ゲル化するFbクロットの吸光度を37℃で1時間かけて500~800nmの範囲で測定した。異なる群の間で、複数の別個のゲル化プロファイルが現れた。HEPES-Fbバッファー対照クロットは、実験の時間経過とともに、すべての波長で吸光度が着実に増加した。ConELP-Fbクロットはゲル化後5分に吸光度が最大になり、その後吸光度は一定になった。HELP-Fbクロットは2段階のゲル化プロファイルを示し、吸光度は最初の3分以内に急速に上昇し、その後、8分における最終的な最大値までゆっくりと上昇した。波長の関数としてのFbクロットの濁度の分析は、以前は繊維の質量/長さの比率を推定するために使用されていたが、未知である屈折率の違い、及びhELP-Fb複合ヒドロゲル内のhELPのコアセルベートの濁度のために、そのような分析はこの系では簡単ではなかった。
本発明者らはさらに、生理学的条件下で低ひずみ振動せん断レオロジーを使用して、特にせん断貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)に焦点を当て、hELP-Fbクロットのゲル化動態を測定した。HEPES-Fb及びconELP-Fbクロットの場合、初期の遅滞期の後に急速なゲル化の期間、及びG’の緩やかな漸近成長の第2段階が続いた(図9)。conELP-Fbクロット及びHEPES-Fbクロットのゲル化時間(G’=G’’の点として定義)は、両方の試料で約270秒で発生したが、hELP-Fbクロットのゲル化点は約510秒で有意に遅く発生した。ゲル化の開始後、hELP-FbクロットのG’は、HEPES-Fbクロット又はconELP-Fbクロットよりも急速に増加した。一次導関数の最大値は、HEPES-Fb、conELP-Fbクロット、及びhELP-Fbについて、それぞれ0.15、0.14、及び0.39Pa s-1であった。したがって、hELPのコアセルベートの存在は、凝固開始までの時間に抑制性効果があったが、開始後の凝固成長速度及び最大剛性に正の効果があった。
実施例5:トロンボエラストグラフィにおけるhELPの影響
トロンボエラストグラフィ(TEG:thromboelastography)は、血液の凝固能を測定する臨床技術である(D.Whiting,J.A.DiNardo,Am.J.Hematol.2014,89,228)。ここで、本発明者らは、クロット形成開始までの時間を示すR、クロット形成速度を示すアルファ角、クロットの剛性を示す最大振幅(MA)という3つのTEGパラメータを評価した。ここでも、前述の濁度実験及びレオロジー実験で観察されたのと同様に、hELP-Fbのクロット形成の2段階の図式が得られた。Fb濃度が低い場合も高い場合も、hELP-FbクロットはconELP-Fbクロット又はHEPES-Fbクロットよりも凝固開始までにより長い時間を要した(図4b)。しかし、凝固開始後、1.5mg mL-1 Fbを含有するhELP-Fbクロットは、HEPES-Fb又はconELP-Fbの対照(それぞれ27.83±1.95°、25.93±3.26°)よりも、アルファ角が著しく高かった(図4C)。Fb濃度を3.0mg mL-1に上げると、対照に対するhELP-Fbクロットのアルファ角の増加はより緩やかであった。この場合、hELP-Fbクロットのアルファ角は58.2±1.6°であったが、HEPES-Fbクロット及びconELP-Fbクロットのアルファ角はそれぞれ47.9±2.31°及び47.07±4.04°であった。以前の研究で、FXIIIはゲル化時のクロット剛化の第2段階に重要であることがわかっている。hELPはFXIIIによってFbクロットに組み込まれるため、これは、その存在によりこの第2段階の速度が高められるケースであり得る。
MA値に対するhELPの効果は、R及びアルファ角で観察されたものと同様であった。30μMのhELPと1.5mg mL-1のFbを含有するhELP-Fbクロットでは,HEPES含有クロット及びconELP含有クロットに対し、それぞれ62%及び59%のMAの上昇があった。3.0mg mL-1のFbで形成されたhELP-Fbクロットでは、MAはHEPES-Fbクロットより16%高く、かつconELP-Fbクロットより24.5%高い(図4d)。まとめると、これらのTEGの結果はせん断レオロジーと一致しており、Fgの臨界未満の閾値濃度が低いクロットのクロット特性に対して、hELPがより顕著な正の効果を持っていることを示唆した。
実施例6:Fbクロットメカニクスに及ぼすhELPのコアセルベートの効果
約2.3mg mL-1未満のFb濃度は、臨床的止血において、死亡率の増加に関連する。本発明者らは、振動せん断レオロジーを使用して、この閾値を上回る及び下回るFb濃度のクロット剛性(G’)に対するhELPの効果を測定した。22℃では、HEPES-Fbクロット、conELP-Fbクロット、又はhELP-FbクロットのいずれのFb濃度でもG’に有意差は観察されなかった(図5a)。しかしながら、37℃では、hELP-FbクロットのすべてのFb濃度でG’が有意に増加することを本発明者らは発見した。最も低いFb濃度(1.5mg mL-1)のHELP-Fbクロットは201.3±16.4PaのG’を示し、conELP-Fb(71.0±11.6Pa)クロット及びHEPES-Fb(45.0±12.8Pa)クロットより有意に高かった。1.5mg mL-1のFbで形成されたhELP-FbクロットのG’は、2.2mg mL-1の生理的Fb濃度にて形成された対照クロットのG’と同等であった。このことから、T>LCSTにおいて、hELPのコアセルベートは、TIC及びFg枯渇の模擬条件下で、クロットの剛性を生理的な値まで回復させたことが示された。
実施例7:Fbクロットのひずみ剛化に対するhELPの効果
Fbクロットのひずみ剛化(Strain-stiffening)は、単一モノマーからプロトフィブリル、プロトフィブリル束、線維に至るFbネットワークのマルチスケール構造組織に起因するとされている。この理論によると、Fbネットワークが歪むと、まず柔軟なフィブリル間架橋の熱揺らぎを最小化することでエントロピー的に力が散逸し、その後、フィブリル自体の伸縮によって力が散逸するとされている。最終的に、より高い張力では、Fbドメイン内の折り畳み領域の2次、3次、4次構造要素が変性し、合成架橋ポリマーネットワークではまれにひずみ剛化挙動を生じる(I.K.Piechockaら,Biophys.J.2010,98,2281;I.K.Piechockaら,Soft Matter 2016,12,2145)。
hELPがFbのひずみ剛化にどのような効果を有するかを調べるため、本発明者らは0.1~100%のひずみ傾斜を用いた振動レオロジーを実施した(図5b)。低ひずみ(0.1~1%)では、30μMのhELP及び2.2mg mL-1Fbを含有するhELP-Fbクロットは、conELP-Fbクロット又はHEPES-Fbクロットと比較してG’が増加し、低振幅周波数掃引実験での観察と一致した(図5a)。中ひずみ(1~10%)及び高ひずみ(10~100%)では、すべてのクロットがひずみ剛化挙動を示したが、しかしながら、剛化の開始ひずみは、conELP-Fbクロット又はHEPES-Fbクロット(約2~3%)と比較してhELP-Fb(約10%)ではより大きかった。HEPES-Fbクロット及びconELP-Fbクロットでは、各曲線の一次微分の最大値(それぞれ38.1Pa、38.8、23.1Pa)が示すとおり、hELP-Fbクロットよりもひずみ剛化の速度が速かった。100%のひずみでは、すべてのクロットのG’はほぼ等しかった(約1400~1500Pa)。0.1~100%の間のひずみのG’を比較すると、hELP-Fbクロットは4.6倍硬く、一方でconELP-FbとHEPES-Fbとはそれぞれ8.8倍、8.4倍硬くなった。これらの結果をFb階層構造において考えると、プロトフィブリルを架橋することにより、hELPは低ひずみ範囲でネットワークの非構造化領域の熱変動を最小限に抑える可能性が高いと考えられる。クロットが十分に伸張されると、弾性応答は個々のプロトフィブリルの伸張によって支配されるため、hELPnoコアセルベートの形態でのさらなる架橋の追加はもはや役割を果たさない。以前の研究は、FXIII添加がフィブリンの線形粘弾性領域内の低ひずみでFbクロットの弾性率を増加させるが、応力-ひずみ曲線の非線形部分では増加しないことが示されており、これは本発明者らがhELPを添加したものを用いて本明細書で観察したものと同様である。
FbクロットにおけるhELPの剛化効果の相転移依存性は、複数の方法で説明することができる。第1に、コアセルベート中のhELP分子の高い局所濃度により、より多くの分子間hELP-hELP架橋の形成が促進され、低ひずみ範囲でFbより硬い二次ネットワークが確立され得る。in vivoで同様の効果が、生体分子凝縮体の相分離駆動型形成において観察され、基質及び酵素の局所濃度増強が化学反応を加速することができる。これは、例えば、アクチン重合及びRNA触媒における反応速度を増加させることがわかっている。第2に、LCSTを超えるhELPの凝集は、hELP間架橋の形成とは無関係に、Fb分子間の架橋の二次ネットワークの形成を駆動し得る。ELPの熱集合によるヒドロゲル内の二次ネットワークの形成は、Wangらによっても報告されており、Wangらはヒアルロン酸ヒドロゲルに架橋されたヒドラジド修飾ELPの凝集が、これらの材料の機械的剛化をもたらすことを示した。最後に、Fbに結合したhELPの相分離は、Fb繊維に機械的な力を及ぼすことができ、外部張力がなくてもひずみ剛化効果を生み出し、線維芽細胞及び血小板が埋め込まれたフィブリンネットワークで発生する能動的な細胞駆動型収縮性のひずみ剛化を概要する。ひずみ剛化は、Fbネットワークのよく知られた特性であり、ELPのコアセルベーションはELPヒドロゲルを硬くさせ、機械的な力を及ぼすことが知られている。分子凝集の機械的な力が、in vivoの他の状況において適用されることを示すエビデンスがある:Shinらは、近年、クロマチンに関連するIDPの相分離が、DNA転写を制御するメカニズムにおいて、遠位のゲノム要素を物理的に引き合わせるように機能するが、他のものは機械的に排除するように機能することを明らかにした(Y.Shinら,Cell 2018,175,1481.)。ただし、Fb重合の前に事前に加熱/凝集されたhELPで剛化効果が観察されることを考えると、hELPのコアセルベートによるネットワークの能動的な収縮/剛化は考えにくいと思われる。
実施例8:プラスミノリシス(plasminolysis)におけるhELPのコアセルベートの効果
体内では、クロットは、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPa:tissue-plasminogen activator)の活性化時にプラスミノーゲンから生成されるプロテアーゼプラスミンによって酵素的に分解される。プラスミンのタンパク質分解活性は、露出したFbクロット上の隠された(Cryptic)結合部位にtPaとプラスミノーゲンとが結合することによって時空間的に制御されている。FXIIIaによる架橋はin vivoでの線維素溶解(fibrinolysis)に対して抑制性の効果があることが以前に示されていた。hELPのコアセルベートはFXIIIaによってFbクロットに共有結合的に組み込まれるため、本発明者らは、hELPがプラスミンの存在下でFbクロットの寿命を延ばすことができると仮定した。これを評価するために、本発明者らは、タイムラプス共焦点顕微鏡を実施した。
30μMのhELP、conELP、又は等量のHEPESを含有する蛍光Fbクロットをチャンバー型カバースリップ中で形成し、生理的濃度のプラスミン溶液をクロットの前面に塗布した。一定時間ごとに画像を撮影し、時間の経過とともに溶解したクロットの割合を評価するために分析した。その結果、hELPクロットと対照クロットの間でプラスミノリシスの速度に大きな差があることを示した。一般に、HEPES対照クロットはプラスミン適用後4分に顕微鏡視野から完全に分解されたが、conELP-Fbは約20%、hELP-Fbは約85%残存していた(図6)。hELP-Fbクロットの溶解速度は、conELP-Fbクロットに見られる溶解速度よりも約3倍遅く、HEPES-Fbクロットに見られる溶解速度よりも約5倍遅かった。HELPはプラスミンによって認識される配列を含まないため、ゲル中のさらなる非分解性成分が線維素溶解を阻害した。
実施例9:hELPの細胞傷害性
ELPは一般に生体適合性があり無毒であるとして認められているが、E.Coliから組換え生産された多くのタンパク質と同様に、精製されたタンパク質産物に細菌性エンドトキシン(すなわち、リポ多糖類、LPS)が保持される可能性があり、これにより体内の炎症反応及び免疫反応を引き起こし得る。ここで、本発明者らは、hELPの細胞毒性を測定するために、新生児ヒト皮膚線維芽細胞(HDFn:neonatal human dermal fibroblast)に対するin vitroでのレサズリンベースの細胞毒性アッセイを適用した。この実験では、低分子量及び非凝集LPSを除去するために、ITC精製に続いてELPをさらなる透析工程及び凍結乾燥工程にかけた。未治療の対照細胞と比較して、HDFn細胞を30μMの標準作動濃度のhELP及びconELPに24時間曝露した後に、細胞生存率の有意な低下は観察されなかった(図6)。50μMのconELPに暴露した場合、HDFnの生存率の有意な低下が観察され、一方、80μMのELPに暴露した場合、hELP及びconELP治療の両方で細胞の生存率の有意な低下が観察された。しかし、80μMという最高の試験濃度でも、細胞生存率は対照の80%を下回らなかった。したがって、hELP及びconELPは、これらの条件下で最小限の細胞毒性作用しか持たない。
実施例10:凝固促進hELPのin vivo試験
ラットのin vivo出血モデルを用いて、hELPの止血剤としての有効性を評価した。10匹の雄CDラットを2つの試験群に分けた:hELP(4Tg-4Tg;配列番号16)、conELP(対照ELP)。4Tgは、凝固体FXIIIa(配列番号003)によって認識される「Qブロック」トランスグルタミナーゼ基質配列を指す。対照ELPは、Qブロック配列のグルタミンがグリシンに変異しており、FXIIIによって認識されないようになっている。手術当日、ラットはイソフルランで麻酔され、保温ベッドに静置され、2本のカテーテルを挿入された:一方は頸動脈であり、他方は頸静脈である。CO、O、及び乳酸のベースラインレベルが定められた後、左大腿動脈の近位端と遠位端とにクランプを設置し、その後にその動脈に3mmの切開を入れた。カテーテル出血を制御して各動物の平均動脈圧(MAP:mean arterial pressure)を40~60mm Hgに下げた後、大腿動脈のクランプを外し、ラットに標記治療薬を5mL kg-1の容量でボーラス注入した(最大2mL min-1)。各ラットの血液量を64mL kg-1と仮定し、目標とする血中ELPの最終濃度は30μMであった。これは、体重1kgあたり約140mgのELPの投与量に相当する。クランプを外した後、動物を15分間自由に出血させ、あらかじめ重さを量ったガーゼを使用して出血量を測定した。15分間の自由出血の期間の後に、血液試料を採取し、血液ガスを測定し、並びにプロトロンビン時間を測定した。その後、MAPを60mm Hg超過にするため、必要に応じて生理食塩水を動物に投与した(3mL/kg/分の速度で、総量60mL kg-1まで)。出血量及びMAPは、MAPが20mm Hg未満になるまで、あるいは実験終了時点(t=75分)まで連続的にモニターし、その時点で動物を安楽死させた。この研究設計は、Charles River Laboratoriesの施設内動物管理使用委員会が承認した。
方法
特に断りのない限り、すべての化学物質はSigma-Aldrich(ブフス、スイス)から購入した。ELP(A)、ELP(A)-Tgf11、ELP(A)-GSKGS(GSKGSモジュールは配列番号11である)、ELP(A)-Tgf11(Q65G)、及びELP(A)-GSGGS(GSGGSモジュールは配列番号15である)をコードする遺伝子含有プラスミドは、GeneArt(Thermo Scientific)で合成した。ヒトフィブリノゲン(FIB 3、プラスミノーゲン、フィブロネクチン、及びフォンウィルブランド因子の枯渇)、トロンビン、及びFXIIIaは、Enzyme Research Laboratories(ラインフェルデン、スイス)から購入した。蛍光タグ付きフィブリノゲン(Fg-488)は、Thermo Scientific(バーゼル、スイス)から購入した。
方法1:ELPの発現及び精製
hELP及びconELPのタンパク質を、標準的な分子クローニング技術を使用して設計及び製造した。完全長ELPをコードする遺伝子は、5種の11-ペンタペプチド遺伝子モノマー:A2V8E1-Tgf11、A2V8E1、A2V8E1-GSKGS(配列番号11)、A2V8E1-Tgf11(Q65G)、又はA2V8E1-GSGGS、のうちの1つから出発して製造した。これらは、反復性遺伝子配列の伸長に関する既知の技術である再帰的方向性ライゲーション(Recursive Directional Ligation)に従って、繰り返し消化され、ともにライゲーションされた。所望の長さと組成のELPをコードする遺伝子を調整した後、それをpet28a発現ベクターに挿入し、得られたプラスミドをBL21(DE3)E.Coliに形質転換した。ELPは、1Lのテリフィックブロス(Terrific Broth)(TB)中で、誘導剤を加えず、代わりにT7プロモーターの漏出性に依存して、37℃、24時間発現させた。発現後、細胞ペレットを遠心分離し、40mLの20/150mM HEPES/NaClに再懸濁し、3サイクルの超音波破砕により溶解した。この溶解液を4℃で遠心分離して細胞デブリを除去し、その後、反復転移サイクル(ITC:Iterative Transition Cycling)によりELPを精製した。簡潔には、細胞溶解液を遠心分離した後に残った上澄み液に1MのNaClを加えた。試料を65℃で10分間加熱し、40℃で18000gにて15分間遠心分離を行った。上清を捨て、得られたペレットを6mLの冷HEPESバッファーに再懸濁した。再懸濁したペレットを再度18000g、4℃で15分間遠心分離し、冷バッファーで再可溶化できなかった混入物質を廃棄した。これらの工程を合わせて1回のITCとし、このプロセスをさらに2回繰り返して最終的なELP溶液を得て、これを使用前に分注してそのまま-20℃で保存した。1回の発現で得られる一般的な収量は、培養液が50~100mg/Lの範囲であった。
方法2:ELPの雲点の特性評価
hELP及びconELPの曇点を30μMの濃度で測定した。ELPを20/150mMのHEPES/NaClバッファー(w/20mM CaCl)に適切な濃度に溶解し、キュベットに移し、15℃の紫外線可視分光光度計(Evolution 260 Bio、Thermo Scientific)に配置した。試料を開始温度まで10分間平衡化させた後、15~60℃まで1℃ min-1の速度で温度傾斜を実行した。350nmの吸光度を0.25分ごとに測定し、この値からHEPESのみを含有するキュベットのブランク読み取り値を差し引いて補正した吸光度値を得、次いでこれを透過率に変換して最大及び最小の吸光度値に対して正規化した。各ELPの曇点は、正規化した透過率が95%未満になった点と定義した。
方法3:FXIIIaによるELPのin vitro架橋
FXIIIによりhELP又はconELPが架橋される能力を、SDS-PAGEで評価した。hELP又はconELPをHEPESバッファーで50μMの濃度に希釈し、0.2U mL-1のトロンビン及び20mMのCaClもまたこの研究を通して使用される標準凝固条件の再現するために各試料に加えた。FXIIIaを最終濃度10μg mL-1で実験試料に添加し、一方、対照試料には同量のHEPESバッファーを添加した。その後、すべての試料を37℃で1時間インキュベートし、その後、非還元性SDS-PAGEにかけた。試料はクマシーベースのインスタントブルー染色で染色し、ChemiDoc Mpイメージングシステム(BioRad)を用いて画像化した。
方法4:ELP含有Fbクロットのレオロジー測定
hELP、conELP、又は等量のHEPESバッファーを含有するin vitro Fbクロットの機械的特性は、コーンプレート形状(d=25mm;1°角度)のAnton Paar MCR 302レオメーターを使用して評価した。振動せん断弾性率を測定するために、周波数掃引測定を行い、ここでは1.5、2.2、又は3.0mg mL-1のフィブリノゲン(Fg)、30μM hELP若しくはconELP、若しくはHEPESバッファー、20mM CaCl、及び0.2U mL-1トロンビンを含有するクロット溶液を調整することで行った。トロンビンを添加した直後に、90μLのクロット溶液を37℃に予熱したレオメーターのペルチェプレートに移し、測定コーンを試料上に下ろし、コーンを60rpmで5秒間回転させて適切な混合と試料分布とを確保した。シリコーンオイル(η=100cSt)を、蒸発を防ぐために試料の端部に塗布し、このクロットを1時間平衡化させた後、0.1~3Hzの周波数掃引を行った(γ=1%;この材料については線形粘弾性領域(LVE)内にあると以前に測定された)。
Fbクロット中のELPの剛性調節特性に対する温度の効果を評価するために、1.5又は3.0mg mL-1のFg、hELP、conELP、又はHEPESバッファーを含有する試料を、22℃又は37℃のいずれかに予熱したレオメーターのペルチェプレート上に前述と同様に形成した。上記のようにクロットの平衡化後に周波数掃引を行った。
Fbクロットのひずみ剛化挙動に対するELPの効果を評価するため、2.2mg mL-1のFg、及び30μMのhELP、conELP、又はHEPESバッファーを含有する試料を、レオメーターのコーンとプレートとの間に37℃で前述のとおり形成した。1時間の平衡化後、0.1~100%ひずみの振動掃引を行った(f=1Hz)。
ELPの存在下で形成されたFbクロットのゲル化速度を追跡するために、上記のとおりクロット溶液を調製し、次いで37℃へ予熱したレオメーターのコーンとプレートとの間に配置した。形成したクロットに小振幅の振動せん断応力を適用し(γ=1%;f=1Hz)、G’とG’’との推移を測定した。各クロットのゲル点は、G’がG’’を超え、かつその後、実験の残りの間、G’’を下回らなかった時点と定義された。
方法5:ゲル化動態の濁度測定
ゲル化動態(gelation kinetics)を研究するために、Fbクロットのゲル化における濁度の推移を様々な波長で測定した。一般的実験では、2.2mg mL-1のFg、20mMのCaCl、0.1U mL-1のトロンビン、並びに30μMのhELP、30μMのconELP、又はHEPESの内の1つからなるクロット溶液をキュベットで調製し、すぐに37℃に予熱したEvolution 260 Bio UV-Vis分光光度計(Thermo Scientific)に移した。次に、吸光度を5nm間隔で500~800nmの範囲で測定し、このスキャンを実験の1時間の時間経過の間、1分ごとに繰り返した。
方法6:Fbクロットの細孔径を決定するための灌流アッセイ
ELPを有する又は有さないFbクロットの孔径を、Carr及びHardinによる以前の研究(Shinら,Cell 2018,175,1481)により適応された灌流アッセイにより評価した。ゲル化中にクロット溶液を支持するために、先端を切断してパラフィルムで密閉した直立重力ろ過カラムの底にクロットを形成した。各実験では、1.5mg mL-1、20mM CaCl、0.1U mL-1トロンビン、及び30μM hELP若しくはconELP、又は等量のHEPESバッファーからなるクロット溶液1mLを使用した。22℃又は37℃で1時間、クロットを形成させ、その後、13mLの等張及び等温HEPESバッファーを各クロットの上に分注し、クロットを10分間平衡化させた。その後、10分ごとにクロットを通過するバッファーの質量を50分間測定することにより流量を重量的測定で決定した。次に、ELPを含むクロットと、ELPを含まないクロットとの細孔半径(r)を、ダルシーの法則と、埋め込まれた赤血球を含有するFbクロットの孔径を決定するためのCarr及びHardinによって開発されたモデル(Shinら,Cell 2018,175,1481)とに従う体積流量から計算した:
式中、Vは体積流量であり、ηは水の粘度(22℃にて0.9544mPa s、37℃にて0.6913mPa s)、hはクロットの長さであり、Aは断面積であり、tは時間であり、Pは実験期間にクロット上のバッファーが及ぼした平均静水圧である。
方法7:共焦点像
共焦点顕微鏡を用いて、hELPのFbネットワークへの組み込み、及びプラスミン存在下でのFbネットワークの分解を調査した。これらのタンパク質のN末端アミンをAtto-647-NHS色素で優先的に官能化させることにより、蛍光性のhELP(f-hELP)又はconELP(f-conELP)を調製した。一般的な反応では、Atto-647-NHSをDMSOに溶解し、hELP又はconELPの溶液に、ELP1分子あたり1.2の色素分子の比率で添加した。反応は、N末端アミンを優先的に標的にするためpH8.0で行われ、これはリジンのε-アミノ基よりもpkaが低い(それぞれ約8及び10)。反応を室温で1時間進行させ、次いでこの反応を100倍過剰のTRIS-HClの添加によりクエンチした。その後、上記のとおり2回のITCを行うことで、反応混合物から官能基化ELPを精製した。
簡単な画像化実験には、1.5mg mL-1フィブリノゲン(1%蛍光Fg-488を添加)、0.2U mL-1トロンビン、20mM CaCl;及び30μM f-hELP、30μM f-conELP、若しくはHEPESバッファーのうちの1つからなる40μLクロット溶液からIbidi μ-slide VI 0.5(ガラス底)のチャンネルにクロットを形成した。クロットは22℃又は37℃のいずれかで1時間形成した後、適用温度に予熱したNikon Ti2-A1共焦点顕微鏡の画像化チャンバーに移した。実験の過程でクロットから水分が失われるのを避けるため、スライドの各ポートに40μLのバッファーを添加した。5.06μm、5スライスのZスタックを、最初に488nm(Fbチャンネル)、次に640nm(ELPチャンネル)のレーザーを用いて、各クロットの3つの異なる位置で撮影した。各治療群につき3つの異なるクロットが撮影された。
分解実験では、1.5mg mL-1フィブリノゲン(1%Fg-488を添加)、0.2U mL-1トロンビン、20mM CaCl;及び30μM hELP、30μM conELP、又はHEPESバッファーのうちの1つからなる100μLのクロット溶液から、μ-slide ibidi 8ウェルチャンバー付きカバースリップにおいてクロットを形成した。試料を37℃で1時間ゲル化させた後、形成された各クロットの半分を外科用メスを用いてカバースリップのウェルから切り取った。次に、カバースリップを37℃の顕微鏡のイメージングチャンバーに入れ、488nmレーザーを使用してFbネットワークの端部の位置を特定した。次に、予熱した10μg mL-1プラスミンの溶液をクロットの端部に塗布し、顕微鏡の視野からクロットが完全に除かれるまで10秒ごとに画像を撮影した。画像を各クロットの3つの異なる位置で撮影し、各治療群に対して3つの異なるクロットが形成された。
方法8:In vitro細胞生存率アッセイ
ヒト皮膚線維芽細胞(新生児;HDFn)細胞の生存率に対するELPのコアセルベートの効果を、レサズリンベースのアッセイによって調べた。HDFn細胞を96ウェル組織培養処理プレートのウェルに20000細胞/ウェルの密度で播種し、37℃、5% COで24時間インキュベートした。次に、DMEMに溶解したconELP又はhELPのストック溶液で細胞を治療し、最終濃度を30、50、又は80μMのELPとした。対照ウェルの細胞は、同量のDMEMで治療した後、37℃、5% COでさらに24時間インキュベートした。次に、10mM PBS中のレサズリンのストック溶液を、最終濃度10μg mL-1まで各実験ウェル及び対照ウェルに適用し、プレートを37℃で4時間インキュベートした後、Safire IIプレートリーダーで各ウェルの蛍光を測定した(λexc=531nm、λemi=572nm)。各治療における最終的な細胞生存率は、(細胞を含まないブランクを除いた)治療ごとの平均の蛍光強度をとり、ELPを含まない対照の平均蛍光強度で割ることによって決定した。
方法9:hELPの蛍光標識
FbクロットへのhELPのFXIIIa媒介性組み込みを研究するために、本発明者らは、蛍光色素Atto647-N-ヒドロキシスクシンイミド(Atto647-NHS)を用いてタンパク質のN末端で優先的にhELP及びconELPを標識した。pH 8で反応を行うことにより、本発明者らは、より低いpKaを有するαアミノ基を選択的に標的して、標識後のFXIIIa媒介性架橋のためにKブロック内のリジンεアミノ基を保存した。hELP/conELPの消光係数(ε280=2.75×10-1cm-1)とAtto647の消光係数(ε647=1.5×10-1cm-1)を用いて、ELP分子あたりの蛍光色素分子の平均数は約0.95であると発明者らは決定した。本発明者らは、SDS-PAGEを用いて、蛍光性HELP(f-hELP)がFXIIIaによって架橋される能力を維持しているかどうかを試験した。FXIIIa含有試料では、約69.5kDaの単一のf-hELPのバンドが消失したことから、Atto647-NHSによる蛍光標識後、f-hELPがFXIIIaによって架橋されるのに十分な活性リジン残基が残存していると考えられた。
配列
エラスチン様ポリペプチド(ELP:Elastin-like polypeptide)は、ヒト細胞外マトリックスタンパク質トロポエラスチンの疎水性ドメインに由来し、反復性ペンタペプチドVPGXG配列(Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である)を含む、天然変成タンパク質ベースのポリマーである。VPGXGは、本発明で使用したヒトトロポエラスチンの内在性配列の必須部分を示している。
本発明者らは、止血性ELP(hELP:hemostatic ELP)を、ABCトリブロック構造を有するように設計した。反復ELP成分は、3ブロックすべてに存在し、ゲスト残基の位置にアラニン、バリン、グルタミン酸残基を2:8:1の割合(A)で持つ11個のVPGXG(配列番号012)ペンタペプチドを含んだ。ゲスト位置の残基は理論的にはこの組成から変更可能であるが、本設計は、生理的な温度範囲にある転移温度を持つhELPを製造するために選択した。N末端のhELPブロックは、4個のトランスグルタミナーゼタグ(Qブロックと呼ぶ)をさらに含有し、これらは、ヒトFXIIIaによって高い特異性で認識されることが以前に示されるコンテクストペプチド配列(DQMMLPWPAVAL(配列番号003))に埋め込まれたグルタミン残基を含んだ。これらの配列をより広範なhELP配列に含めることで、本発明者らは、FXIIIが活性化される体内の創傷部位でFbネットワークに選択的に組み込まれ、同時に、循環するフィブリノゲンとの標的外相互作用を回避するhELPを設計した。中間hELPブロックは、4個の連続したA2V8E1ユニット、合計48個のペンタペプチドリピートからなる相分離ブロックであった。この刺激応答性中間ブロックは、生理的温度(37℃)に反応してhELPの相分離を引き起こした。最後に、hELPのC末端には4個のリジンブロック(Kブロック。GSKGS(配列番号011))を含有し、これはFXIIIaが触媒する反応においてグルタミン残基に対して相補的なパートナーとして機能した。

Claims (26)

  1. a.
    i. DQMMLPWPAVAL(配列番号003)、
    ii. WQHKIDLRYNGA(配列番号004)、
    iii. SQHPLPWPVLML(配列番号005)、
    iv. EQFPIAFPRYSI(配列番号006)、
    v. SEQHLLKWPPWH(配列番号007)、
    vi. WQIPVDWPPLPP(配列番号008)、
    vii. DQWMMAWPSLTL(配列番号009)、及び/又は
    viii. SQIPMAWPLLSL(配列番号010)、
    から選択されるQブロック配列、
    b. 配列VPGXG(配列番号012)の複数のスペーサー配列であり、各Xが独立して、Proを除く任意のタンパク新生アミノ酸から選択される、前記複数のスペーサー配列、
    c. 任意に、少なくとも1個のリジン残基を含むKブロック配列、
    を含むか、又は本質的にそれからなる、ポリペプチド。
  2. 各Xは、独立して、Ala、Val、及びGluから選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. Xに使用されるAla:Val:Gluの比率は、
    - 1~3 Ala:7~10 Val:1 Glu
    であり、
    - 特に、Xに使用されるAla:Val:Gluの比率は、約2:8:1~2:9:1である、
    請求項2に記載のポリペプチド。
  4. 前記Qブロック配列は、DQMMLPWPAVAL(配列番号003)である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  5. 前記ポリペプチドは、2個以上のQブロック配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  6. 前記ポリペプチドは、2~50個のQブロック配列を含み、特に2~8個のQブロック配列、より特に3~6個のQブロック配列、さらにより特に4個のQブロック配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  7. 前記ポリペプチドは、Qブロック配列とスペーサー配列とから本質的になり、
    特に前記ポリペプチドは、
    -(VPGXG)-[(Qブロック)-(VPGXG)により記載されるN末端Qトラクト
    - -[(Qブロック)-(VPGXG)-(VPGXG)により記載されるC末端Qトラクト
    - 前記N末端Qトラクトと前記C末端Qトラクトとを分離するスペーサー配列多量体[(VPGXG)
    からなり、
    式中、
    - 各nは、いずれの他のnから独立して、8~14の整数であり、特に10~12の整数であり;
    - 各mは、いずれの他のmから独立して、2~8の整数であり、特に3~6の整数であり、より特にmは4であり;
    - oは、0~10の整数であり;
    - pは、3~6の整数であり、特にpは4又は5であり、
    より特に、前記ポリペプチドは、配列番号16である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  8. 前記ポリペプチドは、Kブロック配列を含み、特にKブロック配列GSKGS(配列番号011)を含み、より特に2個以上のKブロック配列GSKGS(配列番号011)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  9. 前記ポリペプチドは、2~50個のKブロック配列を含み、特に2~8個のKブロック配列を含み、特に3~6個のKブロック配列を含み、より特に4個のKブロック配列を含む、請求項1~6又は8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  10. 前記ポリペプチドは、互いに独立して:
    - 2~8個のQブロック配列及び2~8個のKブロック配列、
    を含み、
    - 特に3~6個のQブロック配列及び3~6個のKブロック配列、
    - より特に4個のQブロック配列及び4個のKブロック配列、
    を含む、請求項1~6又は8又は9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  11. 各Qブロック配列及び各Kブロック配列は、いずれの他のQブロック配列及びKブロック配列から、
    - 少なくとも2個のスペーサー配列、
    によって分離され、
    - 特に少なくとも3又は4個のスペーサー配列、
    - より特に10~14個のスペーサー配列、
    - さらにより特に12個のスペーサー配列、
    によって分離される、
    請求項8~10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  12. 前記ポリペプチドは、Qブロック配列、スペーサー配列、及び任意にKブロック配列から本質的になる、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  13. 前記スペーサー配列は、Qブロック配列又はKブロック配列でない配列を介在させずに連続したアミノ酸鎖を形成する、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  14. 前記ポリペプチドに含まれるすべてのQブロック配列は、Q配列トラクト内に含まれ、かつすべてのKブロック配列は、K配列トラクト内に含まれる、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  15. 前記ポリペプチドは、50~1200個のスペーサー配列を含み、特に90~250個のスペーサー配列を含み、より特に120~180個のスペーサー配列を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  16. 前記Q配列トラクト及び前記K配列トラクトは、少なくとも30個のスペーサー配列によって分離され、特に少なくとも40個のスペーサー配列によって分離され、より特に少なくとも50個のスペーサー配列によって分離されている、請求項14又は15に記載のポリペプチド。
  17. スペーサー配列は、連続した配列として、6~15個のスペーサー配列を含むスペーサー配列多量体に含まれ、特に10~14個のスペーサー配列を含むスペーサー配列多量体に含まれる、請求項1~16のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  18. a. 各Qブロック配列は、1個のスペーサー配列多量体によっていずれの他のQブロック配列から分離されており、及び/又は
    b. 各Kブロック配列は、1個のスペーサー配列多量体によっていずれの他のKブロック配列から分離されており、及び/又は
    c. 前記Q配列トラクトは、3~5個のスペーサー配列多量体によって前記K配列トラクトから分離されている、
    請求項17に記載のポリペプチド。
  19. すべてのスペーサー配列多量体は、同じ配列を有し、特に前記スペーサー配列多量体の配列は、VPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGEGVPGAG(配列番号013)、又はVPGVGVPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGEGVPGAG(配列番号014)の配列であるか、又はそれを含む、請求項16又は17に記載のポリペプチド。
  20. 前記ポリペプチドは、
    a. 配列番号001又は配列番号16のポリペプチド配列に対して、(≧)85%以上の同一性、特に(≧)90%以上の同一性、さらにより特に(≧)92%以上、(≧)94%以上、(≧)95%以上、(≧)96%以上、(≧)97%以上、(≧)98%以上、(≧)99%以上、又は100%の同一性により特徴づけられるアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になり、かつ
    b. 配列番号001又は配列番号16のポリペプチド配列の少なくとも85%の生物活性によって特徴づけられる、
    請求項1~19のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  21. 止血障害、過剰出血、又は凝固障害の治療又は予防における使用のための、請求項1~20のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  22. 前記凝固障害は、希釈性凝固障害又は外傷性凝固障害である、請求項21に記載の使用のためのポリペプチド。
  23. 止血障害、過剰出血、又は凝固障害は、
    a. 血小板障害、凝固障害、血管の欠陥、及び/又は血小板減少症、
    b. 過度の抗凝固、特にワルファリン、ヘパリン、又は直接経口抗凝固薬(例えば、アピキサバン、エドキサバン、リバーロキサバン)の投与により引き起こされる抗凝固;
    c. 肝疾患(凝固因子の産生不全)、
    d. フォン・ヴィレブランド病、
    e. 血友病、
    f. 外傷、
    に関連するか、又はそれによって引き起こされる、請求項22に記載の使用のためのポリペプチド。
  24. 請求項1~20のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸配列。
  25. 請求項24に記載の核酸配列を含む発現ベクター。
  26. 請求項24に記載の核酸配列又は請求項25に記載の発現ベクターを含む細胞。
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