JP2023531854A - ウイルス感染を予防または処置する方法 - Google Patents

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Abstract

患者におけるウイルス感染(少なくとも一部が)により引き起こされるか関連する疾患または状態を処置または予防する方法であって、ある特定の実施形態では、64Zn濃縮亜鉛を含む医薬組成物を、ウイルス感染により引き起こされる疾患または状態を治療または予防するための治療有効用量または予防有効用量で前述の患者に投与する工程を含む、方法。1つの態様では、本開示は、患者におけるウイルス感染(少なくとも一部が)により引き起こされるか関連する疾患または状態を処置または予防する方法であって、亜鉛を含む医薬組成物を、ウイルス感染により引き起こされる疾患または状態を治療または予防するための治療有効用量または予防有効用量で前述の患者に投与する工程を含む、方法を提供する。

Description

技術分野
本開示は、患者におけるウイルス感染(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染が挙げられる)の予防または治療に関する。
背景
ウイルス感染(コロナウイルスによる感染など)は、治療(またはその欠如)ならびに感染の拡大および患者が感染したことにより引き起こされる疾患の重症化の両方の観点から問題となりつつある。
概要
1つの態様では、本開示は、患者におけるウイルス感染(少なくとも一部が)により引き起こされるか関連する疾患または状態を処置または予防する方法であって、亜鉛を含む医薬組成物を、ウイルス感染により引き起こされる疾患または状態を治療または予防するための治療有効用量または予防有効用量で前述の患者に投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、さらなる実施形態では、培養培地(例えば、RPMI-1640など)または重水素枯渇水のいずれかに溶解された亜鉛および/またはその同位体のアミノ酸との複合物を含むか、前述の複合物である。いくつかの実施形態では、組成物は、64Zn濃縮亜鉛(用語「64Zn」は、本明細書中で、64Zn濃縮亜鉛を指すために使用される)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、天然のZnおよび/またはZn-64を含むか、これらを含む溶液である。
いくつかの実施形態では、64Zn濃縮亜鉛は、64Zne化合物または64Zn塩の形態である。ある特定の実施形態では、開示の組成物は、少なくとも80%の64Zn、少なくとも90%の64Zn、少なくとも95%の64Zn、または少なくとも99%の64Znの亜鉛(例えば、80%の64Zn、85%の64Zn、90%の64Zn、95%の64Zn、99%の64Zn、または99.9%の64Znが存在する亜鉛)を含む。
被験体/患者は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(非ヒト霊長類または飼い犬もしくは飼い猫など)であり得る。
本発明のこれらの態様および他の態様にしたがって多数の他の態様が提供される。本発明の他の特徴および態様は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかとなるであろう。
図1Aおよび1Bは、細胞単層の細胞破壊で明らかにされたMDCK細胞に対するインフルエンザウイルスの細胞変性効果を示す。倍率:10×40
図2は、ヘルペスウイルス感染させたVNK細胞(シンプラスト)の培養物を示す。倍率:10×40
図3Aおよび3Bは、MDBK細胞の単層の小さな細胞変性で明らかにされたBVDVの細胞変性効果を示す。倍率:10×40
図4は、亜鉛フィンガータンパク質のコンピュータモデルを示す。
詳細な説明
本明細書中で使用される場合、名詞の前の「a」または「複数」という用語は、1またはそれを超える特定の名詞を表す。
用語「例えば」、「など」、およびその文法的な等価物について、特に明記しない限り、句「制限されない」がその後に続くと理解される。本明細書中で使用される場合、用語「約」は、実験誤差に起因する変動を説明することを意味する。本明細書中に報告したすべての測定値は、特に明記しない限り、この用語が明確に使用されているか否かにかかわらず、用語「約」で修飾されていると理解される。文脈上別段の明確な指示がない限り、本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」には、複数形が含まれる。
用語「例えば」、「など」、およびその文法的な等価物について、特に明記しない限り、句「制限されない」がその後に続くと理解される。本明細書中で使用される場合、用語「約」は、実験誤差に起因する変動を説明することを意味する。本明細書中に報告したすべての測定値は、特に明記しない限り、この用語が明確に使用されているか否かにかかわらず、用語「約」で修飾されていると理解される。文脈上別段の明確な指示がない限り、本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」には、複数形が含まれる。
本明細書中に開示の全ての範囲は、その範囲に包括されるありとあらゆる部分範囲を包含すると理解されるものとする。例えば、記載の範囲「1.0~10.0」は、1.0またはそれを超える最小値から始まり10.0またはそれ未満の最大値で終わるありとあらゆる部分範囲(例えば、1.0~5.3、または4.7~10.0、または3.6~7.9)が含まれると見なされるものとする。
また、本明細書中に開示の全ての範囲は、明示的に別段の定めをした場合を除き、範囲の終点が含まれると見なされるものとする。例えば、「5と10との間」または「5から10」または「5~10」の範囲はは、終点5および10が含まれると見なされるものとする。
本開示または関連する実施形態の性質によって明確に禁止されない限り、1つの実施形態の特徴を、他の実施形態で具体的に記載も例示もされていないにもかかわらず、一般にかかる他の実施形態に適用することができるとさらに理解すべきである。同様に、本明細書中に記載の組成物および方法は、本開示の目的と矛盾しない本明細書中に記載の特徴および/または工程の任意の組み合わせを含むことができる。本発明の対象を逸脱することなく、本明細書中に記載の組成物および方法の多数の修正および/または適合が当業者に明らかであろう。
「有効量」、「予防有効量」、または「治療有効量」は、被験体に有利な効果または好ましい結果をもたらす薬剤または組成物の量、あるいは、望ましいin vivo活性またはin vitro活性を示す薬剤または組成物の量を指す。「有効量」、「予防有効量」、または「治療有効量」は、望ましい生物学的結果、治療的結果、および/または予防的結果をもたらす薬剤または組成物の量を指す。この結果は、患者/被験体の疾患、障害、もしくは状態の1またはそれを超える兆候、徴候、もしくは原因の低減、回復、寛解、軽減、遅延、および/もしくは緩和、または生物システムの任意の他の望ましい変化であり得る。有効量を、1またはそれを超える回数で投与することができる。
「有効量」、「予防有効量」、または「治療有効量」は、細胞培養アッセイに従うか、動物モデル、典型的にはマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、またはブタを使用して最初に推定され得る。動物モデルを使用して、適切な濃度範囲および投与経路が決定され得る。次いで、かかる情報を使用して、ヒトに適切な用量および投与経路を決定することができる。ヒト等価用量を計算する場合、換算表(Guidance for Industry:Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers(米国保健社会福祉省、食品医薬品局、医薬品評価・研究センター(CDER)、2005年7月)で提供した換算表など)が使用され得る。当業者は、非ヒトデータに基づいてヒト治療投薬量を開発するためにも使用され得るさらなるガイダンスを承知している。有効用量は、一般に、0.01mg/kg~2000mg/kgの活性薬剤、好ましくは0.05mg/kg~500mg/kgの活性薬剤である。正確な有効用量は、疾患の重症度、患者の全体的な健康状態、年齢、体重および性別、栄養、投与の時間および頻度、医薬品の組み合わせ(複数可)、応答感度および投与に対する耐性/応答、ならびに当業者の知識に基づいて特定の患者についての投薬量および投与経路を決定するときに当業者によって考慮されるであろう他の要因に依存するであろう。かかる用量は、日常的な実験の実施および医師の裁量によって決定され得る。また、有効用量は、他の治療手順(他の薬剤の使用など)との併用の可能性に応じて変動するであろう。
本明細書中で使用される場合、「患者」および「被験体」は、交換可能な用語であり、ヒト患者/被験体、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類などを指し得る。
別段の定義がない限り、本明細書中で使用した全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。本発明で用いる方法および材料を本明細書に記載している;当該分野で公知の他の適切な方法および材料も使用することができる。材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図しない。本明細書中で言及した全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、および他の参考文献は、その全体が参考として援用される。矛盾する場合、定義を含む本明細書を優先するものとする。
ウイルス感染
ウイルス感染は、動物の身体に病原性ウイルスが侵入し、感染性ウイルス粒子(ビリオン)が付着し、感受性細胞に入り込んだときに生じる。これらの感染は、種々の疾患/状態を引き起こす。いくつかの感染は、感染性が非常に高い(インフルエンザウイルス感染など)。他の感染は、致死性が非常に高い(エボラウイルス感染など)。新規のウイルス性疾患は、通常、動物ウイルス病原体がヒトに感染したときにある頻度で生じる。例としては、HIV、エボラウイルスなどが挙げられる。細菌性疾患と異なり、ウイルス感染に起因する疾患の処置は、あまり容易に利用できない。
2019~2021年に、ウイルスにより引き起こされるパンデミックが人類に猛威を振るった。その疾患はCOVID-19と呼ばれ、以前は2019新型コロナウイルス(2019-nCoV)と称されていた重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を原因とする。このウイルスは動物起源と考えられ、2019年11月または12月に中国の武漢においてヒトに最初に伝染したらしい。主な感染源は、まもなくヒトからヒトに伝染するようになった。主に咳およびくしゃみに由来する呼吸器からの液滴を介して、ヒトの間で拡大したらしい。
ウイルスが肺のII型肺胞細胞中に最も豊富な酵素ACE2を介して宿主細胞に接近するので、肺はCOVID-19によってもっとも影響を受ける臓器である。Zhang et al.,Intensive Care Med(3 March 2020)https://doi.org/10.1007/s00134-020-05985-9。ACEのホモログとして発見されたアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)は、生理学的な均衡を保つ物質として作用し、循環アンギオテンシンII(AngII)レベルを恒常性に制御する。ACE2は、内皮細胞および他の細胞の表面上に細胞外酵素として配置された亜鉛金属酵素かつカルボキシペプチダーゼである。各組織中のACE2の密度は、その組織における疾患の重症度と相関する。肺胞疾患が進行した場合、呼吸不全を発症し得、死に至り得る。また、ACE2は、心臓を攻撃して急性心外傷を引き起こすウイルスの通路であり得る。心血管病態を罹患している患者は、罹患していない患者より予後が悪い。
亜鉛
亜鉛は、人体の適切な代謝状態を確保するために不可欠な微量元素に起因する。体内の200を超える酵素が亜鉛に依存している。この元素は、以下の全ての酵素クラスを対象とする酵素の構成要素またはその活性の制御因子のいずれかである:トランスフェラーゼ(RNAおよびDNAポリメラーゼ、逆転写酵素、チミジンキナーゼ、ヌクレオチジルトランスフェラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、および他のペプチダーゼ)、ヒドロラーゼ(アルカリホスファターゼ、5-ヌクレオチダーゼ、アミノペプチダーゼなど)、リアーゼ(アルドラーゼ、炭酸脱水酵素など)、オキシドレダクターゼ(アルコールデヒドロゲナーゼ、スーパーオキシドジムスターゼなど)、リガーゼ、およびイソメラーゼ。亜鉛が存在しないと、タンパク質、脂肪、または炭水化物は代謝できない。
また、亜鉛は、抗酸化剤の効果を媒介することが証明されている。亜鉛は、NADPHオキシダーゼ(高攻撃性スーパーオキシドアニオンラジカルの産生を触媒する酵素複合体)の阻害剤である。さらに、亜鉛は、連鎖反応の開始段階でフリーラジカルの酸化に直接影響を及ぼすことができる;亜鉛は、抗酸化防御系のいくつかの酵素の構成成分である(Cu/Zn含有スーパーオキシドジムスターゼが挙げられる)。タンパク質のチオール基の連結により、亜鉛は、タンパク質を活性酸素種による酸化から防御する。この微量元素は、メタロチオネイン(フリーラジカル消去剤として作用するシステイン-リッチタンパク質)の合成を誘導する。亜鉛は、反応性混合原子価金属酸化物の形成を抑制し、膜構造の安定化に関与する。
代謝および構造における亜鉛の重要性は、その生物学的活性が広範囲に及ぶことから明確である。したがって、亜鉛は、細胞の分裂および分化(成長、組織再生、精子形成など)に関連する過程の正常な稼働に必要であり、核酸の代謝およびタンパク質合成に能動的に関与する。この微量元素は、多価不飽和脂肪酸の代謝およびプロスタグランジン変換反応に重要である。亜鉛は、顕著な脂肪親和性活性を示し、肝臓保護性を有する。Haase H.,Rink L.Zinc Signaling.Zinc in Human Health//Amsterdam,Netherlands:IOS Press.2011.243。
さらに、亜鉛は、食細胞およびリンパ球の活性の制御因子であり、好中球の走化性に影響を及ぼすので、免疫学的反応において極めて需要な役割を果たす。5-ヌクレオチダーゼ、亜鉛含有酵素は、Tリンパ球およびBリンパ球の機能状態において非常に重要である。単離亜鉛の欠乏は、T細胞機能の種々のパラメーターを重篤に妨害する(胸腺の退化、細胞媒介性細胞傷害の阻害、および総リンパ球数の減少が挙げられる)。亜鉛は、下垂体ホルモン、副腎、膵臓、前立腺、および精巣の代謝および活性の刺激に関与する。亜鉛は、インスリンの合成、貯蔵、および分泌で役割を果たすことが明らかである。Haase H.,Rink L.Zinc Signaling.Zinc in Human Health//Amsterdam,Netherlands:IOS Press.2011.243。
また、亜鉛は、多くの微量元素およびビタミン(鉄、銅、マグネシウム、ビタミンA、E、葉酸など)の吸収に対する共働薬/アンタゴニストとして作用し、その代謝に影響を及ぼす。
要するに、亜鉛は、人体における種々の生命の過程および機能に関与する。これらの機能のうちのいくつかについての詳細な研究は依然として完了しておらず、この微量元素の機序の多くは依然として完全に理解も認識もされていない。しかしながら、文献に示された実験研究および臨床研究では、亜鉛は重要元素の1つであり、体内での亜鉛レベルの低下がいくつかの最も流行した非流行性疾患の発症および新興に関連することを示している。体内での主な代謝過程が亜鉛含有酵素および亜鉛依存性酵素の積極的関与によって生じるので、その欠乏は多数の生命過程を妨害する。
亜鉛-亜鉛塩およびそのキレートの古典的な薬理学的形態を使用しても、この元素の生物学的利用能が低いので、亜鉛の欠乏を適切に埋め合わせる効果を発揮することが常に可能となるわけではない。
処置方法および組成物
1つの態様では、本開示は、患者におけるウイルス感染(少なくとも一部が)により引き起こされるか関連する疾患または状態を処置または予防する方法であって、亜鉛を含む医薬組成物を、ウイルス感染により引き起こされる疾患または状態を治療または予防するための治療有効用量または予防有効用量で前述の患者に投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、培養培地(例えば、RPMI-1640など)または重水素枯渇水のいずれかに溶解された亜鉛および/またはその同位体のアミノ酸との複合物を含むか、前述の複合物である。いくつかの実施形態では、組成物は、64Zn濃縮亜鉛(用語「64Zn」は、本明細書中で、64Zn濃縮亜鉛を指すために使用される)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、天然のZnおよび/またはZn-64を含むか、これらを含む溶液である。いくつかの実施形態では、組成物は、元素の形態またはその薬学的に許容され得る塩、化合物、もしくは複合体の形態で64Znを含む。
被験体は、例えば、制限されないが、被験体がウイルスに感染した疑いがあるか、ウイルス感染の高リスク群にあるか、ウイルス感染率の高い地域にいる場合、予防する必要があり得る。
いくつかの実施形態では、天然のZnまたはZn-64を含む溶液は、シトラート溶液、グルタミン酸溶液、グリシン-メチオニン溶液、EDDA溶液、スルファート溶液、アスパラギン酸溶液、またはTBPDA溶液である。
いくつかの実施形態では、64Zn濃縮亜鉛は、64Zne化合物または64Zn塩の形態である。ある特定の実施形態では、開示の組成物は、少なくとも80%の64Zn、少なくとも90%の64Zn、少なくとも95%の64Zn、または少なくとも99%の64Znの亜鉛(例えば、80%の64Zn、85%の64Zn、90%の64Zn、95%の64Zn、99%の64Zn、または99.9%の64Znが存在する亜鉛)を含む。
いくつかの実施形態では、64Znは、アスパラギナート、スルファート、およびシトラートからなる群から選択される塩の形態である。さらなる実施形態では、64Znアスパラギナートの化学式はC64Znであり、2個のアスパラギン酸分子を有する。
SARS-CoV-2ウイルスは、亜鉛の重同位体を有する酵素ACE2を介して宿主細胞に接近する。したがって、ACE2活性を恒常性に修正することでCOVID-19患者を処置すべきである。
いくつかの実施形態では、ウイルス感染はSARS-CoV-2による感染であり、患者は、ヒトのSARS-CoV-2感染患者であるか、SARS-CoV-2感染のおそれがある(例えば、感染率の高い地域に滞在していた)。
いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、インフルエンザウイルス(A型インフルエンザウイルスが挙げられる)、単純ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス2型が挙げられる)、肝炎ウイルス(C型肝炎ウイルスが挙げられる)、エプスタイン・バーウイルス、コロナウイルス(SARS-CoV-2が挙げられる)、エボラウイルス、またはHIVの感染である。
用語「64Zn」は、64Zn濃縮亜鉛を指すために本明細書中で使用される。すなわち、自然界における亜鉛の通常の百分率よりも64Znが濃縮されるように64Znが濃縮された亜鉛である。
軽同位体64Znの形態の亜鉛は、天然に存在する亜鉛よりもはるかに体内に吸収される。ある特定の実施形態では、開示の組成物は、少なくとも80%の64Zn、少なくとも90%の64Zn、少なくとも95%の64Zn、または少なくとも99%の64Znの亜鉛(例えば、80%の64Zn、85%の64Zn、90%の64Zn、95%の64Zn、99%の64Zn、または99.9%の64Znが存在する亜鉛)を含む。
いくつかの実施形態では、組成物または溶液は、希釈剤または賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、希釈剤は水である。さらなる実施形態では、水希釈剤は重水素枯渇水である。
いくつかの実施形態では、64Zn化合物またはその塩は、20~100%の間の64Znが存在する。さらなる実施形態では、64Zn化合物またはその塩は、少なくとも80%の64Znが存在する。さらなる実施形態では、64Zn化合物またはその塩は、少なくとも95%の64Znが存在する。いくつかの実施形態では、組成物は、0.05mgと110mgとの間の64Znを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1mgと10mgとの間の64Znを含む。いくつかの実施形態では、64Zn化合物またはその塩は、少なくとも90%の64Znが存在し、組成物は、64Znが0.1mg/mlと10mg/mlとの間の濃度で存在する水溶液である。いくつかの実施形態では、64Znは、2個のアスパラギン酸分子を有するアスパラギナート(化学式-C64Zn)、スルファート、およびシトラートからなる群から選択される塩の形態である。
いくつかの実施形態では、組成物または溶液を、注射によって投与する。他の実施形態では、組成物または溶液を経口投与する。
組成物の製剤化および投与
開示の方法で用いる組成物は、任意の適切な投与様式、任意の適切な頻度、および任意の適切な有効投薬量で必要とする被験体に投与され得る。
いくつかの実施形態では、亜鉛の総投与量は、米国における1日あたりの亜鉛の推奨許容量または摂取量と同一である。いくつかの実施形態では、Znの総投与量は、米国における1日あたりの亜鉛の推奨許容量または摂取量の1/2、2倍、3倍、5倍、または10倍である。いくつかの実施形態では、Znの総量は、米国における1日あたりの亜鉛の推奨許容量または摂取量の1/2と10倍との間である。開示の方法で用いる組成物は、1日1回投与するように処方された1日量または1日あたり対応する回数で投与するように処方されたそのいくつかの分割量を含み得る。また、開示の方法で用いる組成物は、2日毎に1回、3日毎に1回、週1回、または任意の他の適切な頻度でのZnの投与量を含み得る。
開示の方法で用いる組成物は、任意の適切な形態であり得、任意の適切な送達手段のために製剤化され得る。いくつかの実施形態では、開示の方法で用いる組成物は、経口投与に適切な形態(錠剤、丸薬、ロゼンジ、カプセル、液体懸濁液、溶液、または任意の他の従来の経口投薬形態など)で提供される。経口投薬形態は、即放、遅延放出、徐放、または腸管放出され得、適切な場合、1またはそれを超えるコーティングを含む。いくつかの実施形態では、開示の組成物は、注射に適切な形態(皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、または任意の他の注射経路など)で提供される。いくつかの実施形態では、注射用組成物は、無菌および/または非発熱形態で提供され、防腐剤および/または他の適切な賦形剤(スクロース、リン酸水素二ナトリウム七水和物または他の適切な緩衝液など)、pH調整剤(塩酸または水酸化ナトリウムなど)、ならびにポリソルベート80または他の適切な界面活性剤を含み得る。
溶液の形態で提供される場合、いくつかの実施形態では、開示の方法で用いる組成物は、ガラス製またはプラスチック製のボトル、バイアル、またはアンプルで提供され、そのうちのいずれかは、単回または複数回の使用に適切であり得る。開示の組成物を含むボトル、バイアル、またはアンプルは、1またはそれを超える適切なゲージの針および/または1またはそれを超えるシリンジと共にキットの形態で提供され得、その全てが無菌であることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、適切なガラス製またはプラスチック製のボトル、バイアル、またはアンプル中にパッケージングされた上記の溶液を含むキットが提供され、キットは、1またはそれを超える針および/または1またはそれを超えるシリンジをさらに含み得る。キットは、使用説明書をさらに含み得る。
ある特定の実施形態では、Znの投薬量は、対応する元素の種々の信頼のおける1日摂取量のガイダンス(例えば、推奨栄養所要量(USRDA)、適正摂取量(AI)、推奨栄養摂取量(RDI))に比例する。
いくつかの実施形態では、開示の方法で用いる組成物は、培養培地(RPMI-1640)または重水素枯渇水のいずれかに溶解された亜鉛および/またはその同位体のアミノ酸との複合物を含むか、前述の複合物である。
いくつかの実施形態では、Zn投薬量は、ガイダンスが示す量の約1/2倍と約20倍との間、より好ましくは、ガイダンスが示す量の約1倍と約10倍との間、さらにより好ましくは、ガイダンスが示す量の約1倍と約3倍との間である。したがって、ある特定の実施形態では、連日投与のための開示の方法で用いる組成物の単回用量は、これらの範囲内の量(ガイダンスが示す量の約1/2倍、約1倍、約3倍、約5倍、約10倍、および約20倍など)を含むように製剤化されるであろう。これらの量は、一般に、経口摂取または局所適用のための量である。いくつかの実施形態では、静脈内投薬量は、より少ない(ガイダンスが示す量の約1/10~約1/2など)である。特定の元素または元素クラスに感受性の高い者(例えば、腎臓に問題のある者)については、これらの範囲の最低の用量が適切である。亜鉛について、ガイダンスが示す1日量は、乳児のための2mgから9歳またはそれを超える年齢のための8~11mg(性別に依存する)までの範囲である。本出願を通して考察された1日投薬量は、分割投薬量にさらに分割し、分割投薬量は、総1日投薬量が投与されるように、1日あたり適切な回数で投与され得る(例えば、1日用量の1/2を1日2回投与する、1日用量の1/3を1日3回投与するなど)。表1を参照のこと。
Figure 2023531854000002
開示の方法で用いる組成物を、医薬品産業における一般的慣行にしたがって使用される方法(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Pharmaceutical Press;21st revised ed.(2011)(以後、「Remington」)に示された方法など)によって産生することができる。
いくつかの実施形態では、開示の方法で用いる組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容され得るビヒクルまたは賦形剤を含む。これらには、例えば、必要に応じて、希釈剤、担体、賦形剤、充填剤、崩壊剤、溶解補助剤、分散剤、防腐剤、湿潤剤、防腐剤、安定剤、緩衝剤(例えば、ホスファート、シトラート、アセタート、タルトラート)、懸濁剤、乳化剤、および浸透促進剤(DMSOなど)が挙げられる。また、組成物は、適切な補助剤、例えば、溶解補助剤、分散剤、懸濁剤、および乳化剤を含むことができる。
ある特定の実施形態では、組成物は、適切な希釈剤、流動促進剤、潤滑剤、酸味料、安定剤、充填剤、結合剤、可塑剤、または放出助剤、および他の薬学的に許容され得る賦形剤をさらに含む。
薬学的に許容され得る賦形剤の完全な記述を、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.,Co.,N.J.1991)または他の標準的な薬科学テキスト(Handbook of Pharmaceutical Excipients(Shesky et al.eds.,8th ed.2017)など)に見出すことができる。
いくつかの実施形態では、開示の方法で用いる組成物を、胃内、経口、静脈内、腹腔内、または筋肉内に投与することができるが、他の投与経路も可能である。
組成物中の担体および希釈剤として水が使用され得る。水に加えて、または水の代わりに他の薬学的に許容され得る溶媒および希釈剤を使用することも許容され得る。ある特定の実施形態では、重水素枯渇水を、希釈剤として使用する。
また、代謝が遅い高分子(タンパク質、ポリサッカリド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸のコポリマーなど)を、組成物の担体化合物として使用することができる。治療組成物中の薬学的に許容され得る担体は、液体(水、生理食塩液、グリセロール、またはエタノールなど)をさらに含み得る。さらに、前述の組成物は、賦形剤(湿潤剤または乳化剤、緩衝物質など)をさらに含み得る。かかる賦形剤としては、とりわけ、当該分野で慣習として認められた希釈剤および担体、ならびに/または細胞内への活性化合物の浸透を促進する物質(例えば、DMSO)、ならびに防腐剤および安定剤が挙げられる。
開示の方法で用いる組成物は、適用対象に応じて種々の投薬形態で提供され得る;特に、前述の組成物は、注射液として製剤化され得る。
開示の方法で用いる組成物は、全身投与され得る。適切な投与経路としては、例えば、経口または非経口投与(静脈内、腹腔内、胃内など)および飲料水を介した投与が挙げられる。しかしながら、投薬形態に応じて、開示の組成物は、他の経路によって投与され得る。
ある特定の実施形態では、Znを含む開示の方法で用いる組成物は、2.25mg/mlの濃度で以内投与される。
いくつかの実施形態では、開示の方法で用いる組成物は約2mlである。
いくつかの実施形態では、64Znの濃縮レベルは、約99%またはそれを超える。他のさらなる実施形態では、2mlの組成物の64Znは、2個のアスパラギン酸分子を有する亜鉛アスパラギナートを含むか、それからなる(化学式-C64Zn)。開示の方法で用いる組成物の用量は、処置される被験体、疾患の重症度、患者の状態、ならびに当該分野における当業者の知識に基づいて特定の患者のための投薬量および投与経路を決定する場合に当業者が考慮すると考えられる他の要因に応じて変動し得る。
軽同位体を購入してよい。必要な濃縮度の酸化Zn-64を、例えば、Oak Ridge National laboratory,Oak Ridge,TN,USAから購入してよい。
いくつかの実施形態では、亜鉛アスパラギナートの化学式は-C64Znであり、2個のアスパラギン酸分子を有する。この亜鉛アスパラギナートの構造は、以下である。
Figure 2023531854000003
ある特定の実施形態では、開示の方法で用いる組成物は、組成物の約20%~約100%が64Znを含む。
開示の方法で使用する組成物を、別の適切な薬剤または治療薬と同時投与することができる。
ウイルス感染は、任意のウイルス感染であり得る。
実施例
本発明をより深く理解するために、以下の実施例を記載する。これらの実施例は、例証のみを目的とし、いかなる方法においても本発明の範囲を制限すると解釈されないものとする。
実施例1 亜鉛-64同位体ベースの物質を使用した抗ウイルス治療
亜鉛は、代謝で重要な役割を果たす最も重要な微量栄養素のうちの1つであり、多数の金属酵素および転写因子の構成要素である。Barbosa,M.S.,et al.1989 J.Virol.63:1404-1407。亜鉛は、250~300種の酵素の一部であり、これらは全て6つの酵素クラスに属することが周知である。Barthel,A.,E.A.Et al.,2007.Arch.Biochem.Biophys.463:175-182。10%のヒトタンパク質が亜鉛を含む。Beerheide,W.et al.1999.J.Natl.Cancer Inst.91:1211-1220.Bess,J.W.et al.,1992.J.Virol.66:840-847。亜鉛は、胸腺細胞および末梢T細胞数を増加させるので、免疫系を正常に機能させるために不可欠である。Boyle,W.J.et al.,Cell 64:573-584。
亜鉛は、骨組織の成長および発育に必要である。Briggs,M.W.et al.2001.Virology 280:169-175。炭水化物、脂質、タンパク質、および核酸の合成および/または分解に関与する亜鉛含有酵素は、全ての公知の酵素クラスを対象とする。Brottier,P.et al.1992.J.Gen.Virol.73:1931-1938。亜鉛は、スーパーオキシドジムスターゼ(SOD)(抗酸化防御系の重要部分である酵素)の構造成分である。Culp,J.S.et al.,1988.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6450-6454;De Oliveira,W.R.et al.,2003.J.Eur.Acad.Dermatol.Venereol.17:394-398。
DNAに結合する亜鉛フィンガー-タンパク質の構造にZn+2イオンが関与するので、この金属は細胞生物学において特別な位置にある。亜鉛は、最も重要な過程(細胞中の多数のタンパク質の合成および機能、シグナル伝達、タンパク質、および転写因子が挙げられる)に関与する微量元素として長く知られてきた。
細胞内の亜鉛ホメオスタシスにおけるこれらの分子の詳細を解明することで、予想外にウイルス学分野に新規の道が開かれ、宿主-ウイルス相互作用に新たな光が当てられた。Zn+2が細胞タンパク質だけでなく多数のウイルスタンパク質においても重要な補因子であることは長く認識されてきた。最近の研究では、遊離亜鉛のプールが極小かつかつ厳重に制御されている細胞環境自体が制限因子であり得ることを実証している。ウイルスは、細胞内に貯蔵した亜鉛イオンに依存しており、新規のタンパク質合成のために細胞Zn+2を使用する。したがって、亜鉛のバランスを制御する細胞系は、亜鉛の接近を制限し、それによりウイルスの複製を干渉する天然の防護壁を構成し得る。
これに関して、本研究の目的は、RNAウイルスおよびDNAウイルスの再生に及ぼす天然の亜鉛およびその同位体(軽Zn-64)の組成物の影響について研究することであった。
本研究の目的は、in vitroおよびin vivoでの単純ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、インフルエンザウイルスのモデルおよび肝炎ウイルスの代用モデル(ウシウイルス性下痢症ウイルス)に対する亜鉛同位体(Zn-64)の細胞傷害性および抗ウイルス活性を研究することである。
材料と方法
検討物質
シトラート(クエン酸)、スルファート、アスパラギン酸およびグルタミン酸、グリシン-メチオニン、TBPDA(n-n-トルエンスルホニル-n-ベンゾイル-o-フェニレンジアミン)およびEDDA(エチレンジアミンジコハク酸)などの種々の溶媒中の亜鉛およびその軽同位体を、本研究で使用した。
4 シトラート溶液中のZn-64(0.9mg/ml)
4k シトラート溶液中の天然のZn(0.9mg/ml)
5 EDDA中のZn-64(3mg/ml)
5k EDDA中の天然のZn(3mg/ml)
6 スルファート溶液中のZn-64(3mg/ml)
6k スルファート溶液中の天然のZn(3mg/ml)
7 アスパラギン酸溶液中のZn-64(1.5mg/ml)
7k アスパラギン酸溶液中の天然のZn(1.5mg/ml)
8 グルタミン酸溶液中のZn-64(1.5mg/ml)
8k グルタミン酸溶液中の天然のZn(1.5mg/ml)
9-1 グリシン-メチオニン溶液中のZn-64(2mg/ml)
9-2 グリシン-メチオニン溶液中の天然のZn(1.5mg/ml)
9-3 グリシン-メチオニン溶液
10-1 TBPDA溶液中のZn64(3mg/ml)
10-2 TBPDA溶液中の天然のZn(0.9mg/ml)
10-3 TBPDA溶液(0.9mg/ml)
11 TBPDA溶液中のZn64-14日間
9a 複合物7の溶液-アスパラギン酸-3.41mg/ml
10a 複合物8の溶液-グルタミン酸-4mg/ml
8a 複合物4の溶液-クエン酸-2.3mg/ml
参照薬物
The Welcome Foundation Limitedによる活性物質からKRKA,Sloveniaによって製造されたAcyclovir(有効成分として250mgのナトリウム塩を含む凍結調製物);F.Hoffmann-La Roche Ltd,Switzerland製造のTamiflu。
細胞培養物
細胞培養物を、Museum of Tissue Cultures of D.I.Ivanovsky Institute of Virology(RAMS,Moscow)から入手した:
-MDCK、移植可能なイヌ腎臓細胞培養物
-VNK、移植可能なハムスター胚腎臓上皮細胞
-MDBK、移植可能なウシ腎臓細胞培養物
-B 95-8(マーモセット白血球)(エプスタイン・バーウイルス(EBV)によって形質転換され、このウイルスを慢性的に産生し、EBVの供給源としての役割を果たす)
-Raji、バーキットリンパ腫由来の未分化ヒトBリンパ芽球様細胞
細胞培養物を、90%RPMI1640培地(Sigma,USA)、10%ウシ胎児血清(Sigma,USA)およびペニシリン抗生物質(100μg/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)およびL-グルタミン(2mM)からなる増殖培地中で生育させた。0.25%Versene溶液(Sigma,USA)を使用して、上皮細胞の単層を脱凝集させた。
細胞を、37℃で5%COのサーモスタット内のプラスチック製の組織培養フラスコ中、24ウェルプレート中、および96ウェルプレート中で生育させた。細胞の増殖活性を、光学倒立顕微鏡を使用して2日毎にチェックした。
ウイルス
インフルエンザウイルス:尿膜培養物中の感染価5.0~9.0lg EID50/0.2mlおよび血球凝集素力価1:512 GAO/0.2mlのインフルエンザウイルスA/FM/1/47(H1N1)株を、本研究で使用するために、Museum of Viruses of D.I.Ivanovsky Institute of Virology(RAMS,Moscow)から入手した。
単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2):BH株を、Museum of Viruses of D.I.Ivanovsky Institute of Virology(RAMS,Moscow)から入手した。ウイルスを、BNK細胞培養物中での連続継代によって維持した。細胞培養物中のCPEについての感染価は、6.0~9.0lg TCD50/0.1mlであった。
ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV):第4継代のウイルス材料は、A.Deryabin氏(Institute of Veterinary Medicine,UAASの研究者)から提供を受けた。MDBK細胞培養における継代数10後の感染性ウイルス力価は、5~9lg ID50であった。
エプスタイン・バーウイルス(EBV)を、Walt,Crawford.Finkel A.,Czajke D.The effect of deuterium oxide on ascites tumor growth in mice//Ed.F.N.Furness,New York:New York Acad.Sci,1960.P.755-762の方法を使用して、EBVの供給源として一般的に使用されるB95-8細胞(マーモセット内のBリンパ球)のリンパ芽球様培養物から回収した。
薬物の細胞傷害濃度(CC50)の決定
異なる細胞培養物を使用して、各薬物のCC50を決定した。細胞培養プレート中の少なくとも10列のウェルを、栄養培地中の薬物の各々の希釈のために使用した。細胞培養物を含むプレートを、大気中37℃および5%COで5日間インキュベートした。試験培養物および対照培養物を毎日観察して、細胞変性効果(CPE)の有無を決定した。
CPE度を、+から++++までの4プラスシステムを使用した細胞形態の変化(丸まり、細胞の縮み、変性変化を受けた細胞のウェル表面からの排除)によって決定した:
「-」-細胞変性が全く存在しない
「+」-25%以下の細胞単層が影響を受けている(抗ウイルス薬からの細胞単層の75%防御)
「++」-50%以下の細胞単層が影響を受けている
「+++」-75%以下の細胞単層が影響を受けている
「++++」-細胞単層の完全な変性
薬物のCC50は、細胞変性を引き起こさなかったその最高濃度であった。
MTT3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(Sigma,USA)を使用した比色アッセイは、通常の条件下で、人工基質MTTを、分光光度的に計算することができるホルマザンに再処理する生細胞のミトコンドリアのデヒドロゲナーゼ系の機能の特徴に基づく。MTTのホルマザンへの変換は、細胞に有毒なウイルスまたは物質の作用下で細胞が死滅した場合に、用量依存性の様式で有意に減少する。
MTT基質(Sigma,USA)を、室温の滅菌リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で濃度5mg/mlに溶解した。体積20μlの濾過したMTT溶液を96ウェルプレートのウェルに添加し、細胞と共に37℃で2~4時間インキュベートした。インキュベーション後、培地を除去し、150μlの96度のエタノールを細胞に添加してホルマザン結晶を溶解した。溶液の光学密度を、Multican FCリーダー(「Thermo Scientific」(USA))を波長540nmで使用して分光光度的に決定した。対照と比較して細胞生存度を50%(CC50)阻害する薬物濃度を、Pentium(登録商標)Proのために作成したMicrosoft Excelにおいて線形回帰プログラムを使用して計算した。
有効濃度(EC50)の決定
EC50は、ウイルス特異的CPEの発生を50%阻害する薬物の最小薬物濃度である。EC50を決定するために、細胞培養物に、試験ウイルスを100TCD50/0.1mlの用量で感染させ、次いで、37℃で60分間(min)インキュベートした。吸着後、非結合ウイルスを除去し、細胞を栄養培地で洗浄し、濃度の異なる薬物を、細胞を含む培地(RPMI-1640+2%胎児血清)に添加した。実験群(処置された培養物)におけるCPEの欠如(対照群では存在していた)、ならびにウイルス対照と比較した処置された培養物での感染価の低下(対照群では感染価は存在)および実験群の感染価の相違によって、薬物のEC50を決定することが可能になる。
薬物の選択指数(IS)の決定
薬物の選択指数(IS)を、CC50のEC50に対する比として決定した。
細胞学的解析
細胞学的解析を、カバーガラス上のShabadash液(エチルアルコール中9部の硝酸銅+1部のホルマリン)中で30分間生育させた細胞の固定後に行った。細胞学的解析用の試料を、一般に受け入れられている手順にしたがってヘマトキシリンおよびエオシン染色を使用して染色した。
有糸分裂指数を、3000~10000個の観察した細胞を分析することによって計算し、ppm(‰)(1000個の細胞あたりの有糸分裂数)で表した。同時に、有糸分裂の病理学的形態の百分率を決定した。V.N.Blyumkinによって開発された病理学的有糸分裂の分析のための分類法を使用した。
細胞学的調製物の実験を、ZeissのStandard20顕微鏡において40倍および100倍のレンズ、10倍の接眼レンズを用いて行った。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いたin vitro増幅
PCR用の試薬セット(AmpliSens,Russia)およびテンプレートとしてヒト白血病抑制因子(LIF)遺伝子のコード配列を含むpUCベクター28に基づいたDNA組換えプラスミドを使用した標準的な手順にしたがって、PCRを行った。DNA濃度は、1~25μg/100μl反応混合物であった。PCR分析用のサーモスタット(「Terzik」、DNA Technology,Moscow)においてDNAを増幅させた。検討物質を、5~40μg/mlの濃度で試験した。
DNAウイルスを、製造者の説明書にしたがってinnuPREP Virus DNAキット(Analityk Jena AC,Germany)またはDNA-sorb-B DNAキット(AmpliSens,Russia)を使用して、試料から単離した。DNA濃度を、Eppendorf BioPhotometer(Germany)を使用して測定した。エプスタイン・バーウイルスDNAを、リアルタイム検出(qTOWER 2.2増幅器、Germany)を用いて、製造者の説明書にしたがってAmpliSens(登録商標)EBV-FLキット(FSIS CSRI,Russia)を使用して分析した。
結果
研究薬物の細胞傷害濃度(CC50)の決定
MDCK細胞、VNK細胞、およびMDBK細胞を使用して、各薬物のCC50を決定した。細胞培養プレート中の少なくとも10列のウェルを、栄養培地中の薬物の各々の希釈のために使用した。細胞培養物を含むプレートを、大気中37℃および5%COで5日間インキュベートした。試験培養物および対照培養物を毎日観察して、細胞変性効果(CPE)の有無を決定した。CPE度を、+から++++までの4プラスシステムを使用した細胞形態の変化(丸まり、細胞の縮み、変性変化を受けた細胞のウェル表面からの排除)によって決定した。
薬物のCC50は、細胞変性を引き起こさなかったその最高濃度であった。結果を表2に示す。
Figure 2023531854000004
Rajiリンパ芽球様細胞の培養物における物質の毒性分析において、毒性が最小の物質はグルタマートおよびグリシン-メチオニンベースの薬物であり、CC50値は470μg/mlおよび200μg/ml超であることを示す。
試験物質の細胞傷害効果の結果の分析において、天然のZnおよびZnの軽同位体の溶媒が検討されたZn複合物より有毒であることを示す。したがって、クエン酸のCC50は、1/160または0.014mg/mlであり、クエン酸溶液中の複合物のCC50は、Zn64については0.45mg/ml、天然のZnについては0.18mg/mlであり、すなわち、その毒性は1/3~1/10である。グルタミン酸溶液のCC50は1:160または0.025mg/mlであり、一方で、Zn64複合物では1/5-0.4mg/mlであり、天然のZnでは0.0046mg/mlであり、すなわち、溶媒の毒性を、軽Zn-64同位体は低下させ、天然のZnは増加させる;アスパラギン酸のCC50は1/80または0.042mg/mlであり、軽Zn64複合物については1/10または0.75mg/mlであり、天然のZnについては1/320-0.0046mg/mlであり、すなわち、同一のパターンが認められる。グリシンおよびメチオニン溶液のCC50は1/160または0.018mg/mlであり、軽Zn64同位体および天然の亜鉛の複合物ではそれぞれ1/10または0.2および0.15mg/mlであり、すなわち軽Zn-64同位体および天然の亜鉛の両方は、溶媒の毒性を1/10に低下させる。
TBPDA溶媒に関しては、異なる規則性が認められた:MDCK細胞について、軽同位体は溶媒の毒性を30倍に増加させ、一方で、天然のZnはその毒性に影響を及ぼさなかった。
BNK細胞およびMDCK細胞の培養物において、MDCK細胞とほとんど同一のパターンが認められた。
天然の亜鉛および亜鉛同位体の抗ウイルス活性
抗インフルエンザ活性の査定
in vitroでの薬物溶液の抗ウイルス活性を査定するために、毎日移植可能なMDCK細胞培養物を使用した。37℃およびCOを含む大気のサーモスタットにおいて、10%胎児血清(Nunclon,Surface,Denmark)を補足したRPMI-1640培地を含むプレート中で細胞を培養した。細胞を、ウシ膵臓XIII型由来のトリプシン(Sigmaカタログ番号8642,USA)で処理して、インフルエンザウイルス感染に対するその感度を増大させた。トリプシンの母液を、2mgのトリプシンを1mlのDMEM培養培地に添加することによって調製した。
細胞を各ウェル中に50μl添加することによって溶液で3回洗浄した;トリプシン濃度は、2μg/mlであった。次いで、細胞増殖培地を除去し、100TCD50の用量(50%組織細胞変性用量)のインフルエンザウイルスと置換し、その後に試験薬物を異なる濃度で添加した。
培養物を、顕微鏡を使用して毎日モニタリングしながらCOインキュベーター中で3日間インキュベートした。
48~72時間のインキュベーション後、培養液を回収し、インフルエンザウイルスの感染価を、細胞培養の滴定によって決定した。
インフルエンザウイルスA/FM/1/47(H1N1)株を、実験で使用した。MDCKにおける感染価は3.0~9.0lg ID50であった。
物質の阻害効果を、対照と比較した試験物質の作用下でのウイルスの感染価の低下によって評価した。1.5~2.0lg TCD50の減少は、特に化学療法指数が8またはそれを超える場合に、研究化合物の顕著な抗ウイルス活性を示す。
MDCK細胞培養物における天然のZnおよびそのZn64同位体の溶液の高インフルエンザ活性(EC50)の査定結果を、表3に示す。図1Aおよび図1Bも参照のこと。
Figure 2023531854000005
シトラート溶液中のZn-64調製物および天然のZn、グルタミン酸溶液およびグリシン-メチオニン溶液中のZn-64が抗インフルエンザ活性を示すと判断された。
抗ヘルペス活性の査定
亜鉛溶液、その同位体および溶媒の抗ヘルペス活性を研究するために、移植可能なVNK細胞培養物を使用した。37℃およびCOを含む大気のサーモスタットにおいて、10%胎児血清(Nunclon,Surface,Denmark)を補足したRPMI-1640培地を含むプレート中で細胞を培養した。
単純ヘルペスウイルス2型BH株を使用した。その感染価は、6.0~0.9lg ID50である。
VNK細胞の1日培養物を、薬物の抗ウイルス活性を研究するために選択した。細胞増殖培地を除去し、試験調製物を異なる濃度で細胞単層に添加した。1時間の接触後、細胞にヘルペスウイルスを100TCD50の用量で感染させた。顕微鏡を使用して毎日モニタリングし、細胞単層がいかなるウイルスにも暴露されなかった対照培養物と比較したVNK細胞に対するHSVの細胞病理学的効果によってウイルス再生を記録しながら、培養物をCOインキュベーター中で5日間インキュベートした。
細胞に対するHSVの細胞変性効果は、多核巨細胞の増殖および出現と組み合わせて、細胞自体がシンプラストの形成または丸まった細胞を形態学的に示す(図2)。
3日後、培養培地をプレートウェルから回収し、各薬物を各試料に添加した場合の各試料における感染力価を決定した。
VNK細胞の培養物における天然のZnおよびそのZn64同位体の溶液の抗ヘルペス活性(EC50)の査定結果を、表4に示す。
Figure 2023531854000006
EDDA中の天然のZnならびにグルタミン酸溶液中およびグリシン-メチオニン溶液中のZn-64は、抗ヘルペス活性を示した。
抗HCV活性の査定
代用HCVであるウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)は、C型肝炎ウイルスの試験モデルであるので、この研究で使用した。
薬物の抗ウイルス活性を、異なる希釈度の薬物で処置し、次いで、BVDVを100TCD50の用量で感染させたMDBK細胞の培養物において研究した。培養物を、ウイルス対照において特異的な細胞変性(図3Aおよび図3B)までサーモスタット中でインキュベートし、その後に感染性ウイルス力価を培養培地中で決定した。
代用HCVウイルスとしてのウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)モデルに対するMDBK細胞培養物における天然のZnおよびそのZn64同位体の溶液の抗ウイルス活性(EC50)の査定結果を、表5に示す。
Figure 2023531854000007
代用C型肝炎ウイルス(BVDV)に対する抗ウイルス活性は、シトラート溶液、EDDA、およびスルファート溶液中の天然のZnならびにグルタミン酸溶液中およびグリシン-メチオニン溶液中のZn-64によって示された。
異なる溶媒中の天然の亜鉛および軽亜鉛同位体の溶液の抗ウイルス活性の分析において、グルタミン酸溶液中およびグリシン-メチオニン溶液中の亜鉛の軽同位体が最も活性が高く、3つのウイルス感染の選択指数の値が高いことを示した。クエン酸溶液では、その抗ウイルス活性は、インフルエンザウイルスおよび代用C型肝炎ウイルス(BVDV)に対して顕著であり、天然のZnおよびその軽同位体の両方の活性はここでは等しかった。
EDDA、スルファート、およびアスパラギン酸の、軽亜鉛同位体および天然の亜鉛の塩は、インフルエンザウイルスおよびBVDVに対して抗ウイルス活性を有していた。TBFDA溶媒中の軽Zn64同位体は、いかなる抗ウイルス活性も示さず、天然のZnは、インフルエンザ感染に対してのみ活性を示した。
抗EBV活性の査定
エプスタイン・バーウイルス感染モデルに対するRaji細胞の培養物中における天然のZnおよびそのZn64同位体の溶液の抗ウイルス活性の査定結果を、表6に示す。
Figure 2023531854000008
グルタミン酸溶液中およびグリシン-メチオニン溶液中の薬物が腫瘍学的エプスタイン・バーウイルスに対して最も活性が高く、選択指数は470および200であった。
したがって、種々の溶媒中の天然の亜鉛およびその軽同位体の抗ウイルススクリーニングにおいて、グルタミン酸中およびグリシン-メチオニン中、ならびにクエン酸中の亜鉛化合物がBVDVに対して最も活性が高いことを示した。
細胞の有糸分裂の状況に対する研究化合物の有効性の研究
溶媒が細胞培養物に対して高い毒性を示すことを考慮して、細胞の有糸分裂の状況に対する異なる溶液中の亜鉛ベースの薬物の効果を調査した。種々の選択薬物で処置したMDBK細胞の培養物に対して実験を行った。接触24時間後に、細胞を固定し、標準的な技術を使用して細胞学的調製物を作製した。この実験から得られた結果を、表7および8に示す。
Figure 2023531854000009
表7は、3つの薬物のみ-番号5(Zn64のEDDA溶液)、番号6(Zn64のスルファート溶液)、および番号7(Zn64のアスパラギン酸溶液)-が細胞の有糸分裂活性を有意に阻害し、有糸分裂の異常数が増加したことを示す。
Figure 2023531854000010
表8は、3つの薬物-番号9-3のグリシン-メチオニン溶液および番号10-2のTBFDA溶液中の天然のZn-が細胞の有糸分裂活性を阻害し、有糸分裂の異常数が増加したことを示す。
無毒性濃度の天然のZnおよびその軽同位体に基づいた薬物の影響下でのMDBK細胞の有糸分裂の状況についてのこの研究結果をさらに分析すると、EDDA溶液中のZn64、スルファート溶液中のZn64、ならびにアスパラギン酸溶液中のZn64、TBFDA溶液およびリシン-メチオニン溶媒中の天然のZnが細胞の有糸分裂の状況を有意に変化させた(すなわち、有糸分裂の異常数が増加した一方で、細胞の有糸分裂活性が有意に減少した)ことに留意すべきである。したがって、グルタミン酸中、グリシン-メチオニン中、およびクエン酸中の亜鉛の軽同位体および天然の亜鉛は、さらなる研究に有望であると見なすことができる。
したがって、薬物の細胞傷害性および抗ウイルス活性についてのこれらの研究は、Zn64シトラート、EDDA中のZn64、Zn64アスパルタート、Zn64グルタマート、Zn64グリシン-メチオニンがEBVに対する抗ウイルス剤として最も有望であることを示す。かかる選択は、溶媒が抗ウイルス活性を持たず、亜鉛複合物の一部として溶媒が細胞の有糸分裂の状況に影響を及ぼさず、グルタミン酸中およびグリシン-メチオニン中のZn64複合物がインフルエンザウイルスおよびBVDVウイルスの再生を有効に阻害するという事実によって説明される。
「軽水」中の亜鉛グルタマートおよびその同位体の複合物の抗ウイルス活性の査定
水素同位体は、主に飲料水および食物と共に体内に入ることが公知である。水は体内に入ると種々の生化学過程に関与するようになり、その結果として、その原子は身体によって合成された種々の化合物の構造単位になることができる。どのようにして水の同位体組成物が身体によって合成されたタンパク質の同位体組成物で反映されるかについての明確な例は、Ehleringer J.et al.Proc.Nat.Acad.Sci USA,2008,105.P.2788-2793に記載されている。著者は、ヒト毛髪(主にα-ケラチンタンパク質からなる)と飲料水との間の同位体組成物(H、O)が直接関係することを示している。
細胞では、水は、液体の水と氷との間の中間の特別な状態の構造をしている。有向水分子の層は、原形質中の全ての親水性高分子(タンパク質および核酸分子が挙げられる)を取り囲んでいる。
O(重水)の強い抗有糸分裂作用が最初の実験で検出された。したがって、1938年に、H.Barbour and E.Allen Barbour H.,Allen E.Am.J.Cancer.1938,32.P.440-446には、飲料水として40%DOを与えられたマウスにおける移植されたリンパ肉腫および乳がんの成長遅滞および発達の逆行が記載されている。しかしながら、DO影響下の腫瘍罹患マウスの全寿命は、対照群より短かった。Barbour H.,Allen E.Am.J.Cancer.1938,32.P.440-446。いくつかの他の研究において同一の問題が認められている。Finkel A.,Czajke D.The effect of deuterium oxide on ascites tumor growth in mice//Ed.F.N.Furness,New York:New York Acad.Sci,1960.P.755-762。Hughes A.et al.,Birch.Bimorph.Acta.1958,28.P.58-61.Katz J.et al.J.Nat.Cancer Inst.1957,18.P.641-659。最近の研究において、AsPC-1細胞、BxPC-3細胞 PANC-1細胞の培養物における膵臓癌発生の活性が10~30%のDOおよびゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン(difluorodeoxycytigine))の連続使用によって有意に減少することを示した研究は、特に注目に値する。同時に、著者は、10~30%DOを含む水の消費が末梢血中の単核球レベルに有意に影響を及ぼさず、骨髄細胞に及ぼすDOの有害作用が限定的であることを示している。Hartmann J.,et al.Anticancer Res.,2005,25.P.3407-3411。他の研究では、対照的に、腫瘍学的疾患の処置における軽水(重水素枯渇水)の正の(伝統的な処置形態に追加された)効果が記述されている。
したがって、本研究の次の段階は、「軽水」(重水素枯渇水)に溶解した天然のZnおよびそのZn-64同位体の複合物の抗ウイルス活性の研究であった。
物質
・ 組成物:12-1-Zn-64グルタマート、重水素枯渇水中の濃度2.0mg/ml Zn
・ 組成物:12-2-Zn-64グルタマート、重水素枯渇水中の濃度1.5mg/ml Zn
・ 組成物:12-3 Znグルタマート、重水素枯渇水中の濃度2.0mg/ml Zn
・ 4-蒸留重水素枯渇水(「軽水」)
細胞傷害性および抗ウイルス活性を、通常の蒸留水中の天然の亜鉛および亜鉛同位体の研究において上記と類似の手順にしたがって分析した。
結果を表9に示す。
Figure 2023531854000011
「軽水」にZn-64グルタマート複合物を溶解すると、天然の亜鉛と比較して細胞培養物の同位体毒性が有意に増加すると判断した。
表9は、インフルエンザ、ヘルペス、および代用C型肝炎ウイルスの実験モデルに対する「軽水」に溶解したZn-64グルタマート複合物およびZnグルタマート複合物の抗ウイルス活性の研究結果を示す。結果は、「軽水」中の亜鉛調製物が全てのウイルスの再生を有意に阻害することを示す。しかしながら、「軽水」中の亜鉛調製物、特に亜鉛の軽同位体が有毒であるので、これらの調製物の選択指数は天然の亜鉛よりはるかに低かった。
細胞培養物に対する亜鉛複合物の毒性が高いことを考慮して、細胞の有糸分裂の状況に対する「軽水」中の亜鉛調製物の効果についての研究を行った。MDBK細胞培養物を、研究のために選択した。前述の細胞を、細胞に無毒の濃度の種々の選択薬物で処置した。接触24時間後に、細胞を固定し、従来技術にしたがって細胞学的調製物を調製した。この実験から得られた結果を、表10に示す。
Figure 2023531854000012
表10から認められるように、調製物12-1および12-3の有糸分裂活性は、対照群と僅かに異なっていた。これらの群内の異常な有糸分裂の数も、インタクトな細胞と僅かにことなっていた。
in vivoでの亜鉛調製物の抗ウイルス活性
亜鉛調製物の抗ヘルペス活性を、0.03mlの用量での脳内投与を用いたBALB/cマウス(体重18~20g)のヘルペスウイルス髄膜脳炎モデルにおいて研究した。全ての実験群において、薬物を0.1mlの用量で腹腔内投与した。以下の亜鉛調製物を、実験で使用した。
1.4B-重水素枯渇水中のZn-64シトラート-3mg/ml
2.4B-2-重水素枯渇水中のZnシトラート-3mg/ml
3.8B-重水素枯渇水中のZn-64グルタマート-3mg/ml
4.8B-2-重水素枯渇水中のZnグルタマート-3mg/ml
5.9B-重水素枯渇水中のZn-64グリシン-メチオニン-1mg/ml
6.9B-2-重水素枯渇水中のZnグリシン-メチオニン-1mg/ml
薬物を、ヘルペスウイルスでの感染24時間後に注射し、処置レジメンを観察した。
薬物活性を、実験群および対照群の致死性を比較することによって評価した。以下の要因を考慮した:
-動物の死亡率
-防御の多重度(MP)-対照群と比較した実験群におけるマウス死亡数の減少の多重度
-薬物の有効係数(EI)を、以下の式を使用して決定した。
Figure 2023531854000013
処置レジメンの観察において、以下の動物群を実験で使用した。
1-以下を注射したマウス:ヘルペスウイルス+薬物4B
2-ヘルペスウイルス+薬物4B-2
3-ヘルペスウイルス+薬物8B
4-ヘルペスウイルス+薬物8B-2
5-ヘルペスウイルス+薬物9B
6-ヘルペスウイルス+薬物9B-2
7-Virolex+ヘルペスウイルス
8-通常の生理食塩液+ヘルペスウイルス
結果を表11に示す。
Figure 2023531854000014
表11に示したデータに基づいて、亜鉛の軽同位体および天然の亜鉛9B、特に9B-2に基づいた調製物が顕著な治療効果を有すると結論づけることができる。しかしながら、生存時間に関して、重水素枯渇水に溶解した天然の亜鉛およびグリシンメチオニンの複合物は、ここでの寿命が30日間を超えるので、より有効であった。
亜鉛調製物の抗インフルエンザ活性についてのin vivo研究
以下の亜鉛調製物を、実験で使用した:
1.4B-重水素枯渇水中のZn-64シトラート-3mg/ml
2.4B-2-重水素枯渇水中のZnシトラート-3mg/ml
3.7B-重水素枯渇水中のZn-64アスパラギナート-3mg/ml
4.7B-2-重水素枯渇水中のZnアスパラギナート-3mg/ml
5.8B-重水素枯渇水中のZn-64グルタマート-3mg/ml
6.8B-2-重水素枯渇水中のZnグルタマート-3mg/ml
7.9B-重水素枯渇水中のZn-64グリシン-メチオニン-1mg/ml
8.9B-2-重水素枯渇水中のZnグリシン-メチオニン-1mg/ml
in vivoでの亜鉛調製物の抗インフルエンザ活性を決定するために、インフルエンザ肺炎のマウスモデルを使用した。
この目的のために、感染価5.0lg LD50の継代数15で誘導されたインフルエンザウイルスのBALB/cマウス肺適応A/FM/1/47(H1N1)株を使用し、5日間のマウスの致死率は100%であった。薬物の抗インフルエンザ活性についてのin vivo研究を、処置レジメンにしたがって行った。インフルエンザウイルスを用いたマウスの鼻腔内感染24時間後、マウスに、0.1mlの亜鉛調製物溶液を腹腔内注射した。インフルエンザウイルスの対照および参照薬物Tamifluを準備した。薬物の有効性を、動物致死性阻害の有効性指数およびマウスの肺組織におけるインフルエンザウイルスの感染価によって決定した。研究の結果を、表12に示す。
Figure 2023531854000015
表12に示したデータを分析すると、IEおよび感染価の結果にしたがって、天然の亜鉛ならびに亜鉛の軽同位体4B、4B-2、および8B-2の調整物がマウスを致死性インフルエンザ感染から完全に防御することに留意すべきである。調製物8Bおよび7B-2は、マウスを致死性インフルエンザ感染から有効係数80.0および60.0で防御する。4B、4B-2、8B、および8B-2で処置したマウス群におけるインフルエンザウイルスを感染させた動物の生存期間も対照と比較して有意に増加したことに留意すべきである。
単純ヘルペスウイルスモデルに対する重水素枯渇水の抗ウイスル効果に言及したので、種々の用量で投与した薬物の効果を研究した。したがって、マウスあたり50、100、および200μlを感染した動物に投与した。
各々8匹のマウスからなる群を、実験に含めた。マウスに、10LD50の用量で脳内に注射した(30μl/マウス)。24時間後に最初の薬物投与を行った。感染後、1日おきに合計で4回注射した。30μlの通常の生理食塩液を脳内に注射した非感染マウスおよびHSVを感染させたマウスは、対照としての役割を果たした。
Figure 2023531854000016
したがって、単純ヘルペスウイルスモデルに対する重水素枯渇水の防御効果が示され、これは、医薬の成分としてのその性質を調査する見込みがあることを示す。
考察
この研究は、亜鉛およびその同位体の異なるアミノ酸との組成物および細胞培養培地または重水素枯渇水にさらに溶解した溶液の影響に充てられている。
亜鉛が細胞へのウイルスの感染過程に重要であるという十分な証拠がある。それにもかかわらず、ウイルスと細胞亜鉛との間のこの相互作用の分子基盤は依然としてあまり知られていない。この現象には2つの機序が存在する可能性がある。第1に、亜鉛イオンは、ウイルスの一部および細胞タンパク質の一部のウイルスの再生における公知の補因子であり、亜鉛イオンは、種々の転写補因子の活性を変化させることができ、したがって、細胞およびウイルスの遺伝子発現に影響を及ぼす。タンパク質補因子としての亜鉛の役割は、ウイルス間で非常に共通している。RNAウイルスおよびDNAウイルス(レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポリオーマウイルス、およびパピローマウイルスなど)の亜鉛結合タンパク質が記載されている。Goswami R.et al.J.Virol.,1992,66,p.1746-1751。Turk B.et al.J.virol.,1993,67.p-3671-3673。Erk I.et al.J.Virol.,2003,77.P3595-3601。Fraefel et al.J.Virol.,1994,68.p.31-54-3162。Grossman S.,Laimins L.Oncogene,1989,4.p.1089-1093。亜鉛を含むこれらのウイルスタンパク質は、細胞タンパク質の亜鉛フィンガーに類似している。亜鉛フィンガーは、DNAに結合する主なタンパク質群の1つである。これらは転写の制御因子であり、特徴的なドメインを含み、このドメインは、2個のシステイン残基および2個のヒスチジン残基を含む。これらのアミノ酸は亜鉛イオンと相互作用し、これらの間に配置されたポリペプチド鎖は指の形状のループを形成する。亜鉛フィンガーCは、真核生物Cの転写因子で生じるDNA結合タンパク質ドメインの重要なファミリーを形成する。
タンパク質-タンパク質およびタンパク質-核相互作用に関与し得るウイルスおよび細胞の亜鉛フィンガーの両方は、非常に保存されており、タンパク質機能に極めて重要である。図4。HIV感染およびパピローマウイルスの構造タンパク質における亜鉛フィンガーの役割について最も研究されている。亜鉛フィンガータンパク質の変異、すなわち、これらの化合物からの亜鉛の抽出により、細胞からのウイルスの放出機能が破壊され、これが、ウイルス感染処置におけるアプローチのうちの1つとして役立ち得る。他方では、細胞内でのウイルスの複製中に、細胞内で亜鉛の不均衡が認められ、細胞ホメオスタシスを正常化するために、細胞系への亜鉛の外因性導入ストラテジーを使用して、この不均衡を防止することができる。
基本的に、第2の概念、すなわち、亜鉛およびその同位体のアミノ酸との複合物の使用およびその後の培養培地(RPMI-1640)または重水素枯渇水での溶解を、本研究で使用した。
インフルエンザ、ヘルペス、およびHCV(BVDV)ウイルスの代用モデルの再生に対する亜鉛およびその軽同位体の異なるアミノ酸との複合物および溶液の効果についての一連のin vitro研究で得られた結果は、亜鉛およびその軽同位体の溶液がインフルエンザ、ヘルペス、およびHCV(BVDV)ウイルスの代用モデルの再生を有効に阻害することを示す。
クエン酸中のZn-64およびZn溶液、グルタミン酸中のZn-64およびZn、ならびにグリシン-メチオニン溶液中のZn-64およびZnが最も有望であった。以下によって確認する:
-インフルエンザおよびヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルスおよび代用C型肝炎ウイルス(BVDV-ウシウイルス性下痢症ウイルス)の再生の阻害;
-細胞の有糸分裂の状況に対して影響がないこと;
-亜鉛の軽同位体およびZnグリシン-メチオニンのシトラートおよびグルタマートによるRNAおよびDNAの合成阻害
重水素枯渇水中の亜鉛グルタマートおよび亜鉛軽同位体グルタマート複合物は、インフルエンザ、ヘルペス、および代用C型肝炎ウイルスの再生を有効に阻害したが、重水素枯渇水中のZnの軽同位体のCC50が遥かに高いので、全てのウイルス再生系における軽同位体の有効係数は、天然の亜鉛の数分の1であった。
無毒の濃度では、重水素枯渇水に溶解された天然のZn複合物、亜鉛の軽同位体を含む複合物のいずれも細胞の有糸分裂の状況にいかなる影響も及ぼさなかった。
重水素枯渇水中のZn-64グルタマート複合物は、調製物12-1(Zn-64濃度は1.5mg/mlである)および12-2(Zn-64濃度は1.5mg/mlである)についてそれぞれ50μg/ml、40μg/mlおよび10μg/mlおよび1.1μg/mlの濃度でRNAおよびDNAの合成を有効に阻害した。
以下のヘルペス髄膜脳炎およびインフルエンザ肺炎の実験モデルの例から、調製物の有効性が天然のZnおよびその同位体の複合物中の溶媒の相互作用に依存することが示された:
-天然のZnおよびその軽同位体のグリシン-メチオニン複合物は、感染価の阻害のその選択指数、寿命が参照薬物Virolexより顕著であることによって証明されるように、ヘルペス髄膜脳炎モデルに治癒効果をもたらした;
-クエン酸およびグルタミン酸を含む天然のZnおよびその軽同位体の複合物は、高い有効係数、感染価の阻害、および寿命が示すように、インフルエンザ肺炎モデルに対して顕著に治療効果があった。
単純ヘルペスウイルスモデルに対する重水素枯渇水の抗ウイスル効果を示す。
実施例2 エプスタイン・バーウイルス(EBV)に対するZn64ベースの調製物の抗ウイルス活性の査定
この研究を、EBVを感染させたリンパ芽球様Raji細胞を使用して行った。Raji細胞は、細胞DNA中に細胞あたり63コピーのウイルスゲノムを含むが、ビリオンを全く産生しないEBV形質転換ヒトB-リンパ球である。細胞培養物を、24ウェル懸濁培養プレート中の、90%RPMI1640、10%ウシ胎児血清、および抗生物質からなる増殖培地中にて37℃および5%COでインキュベートして生育させた。この細胞株は、エプスタイン・バーウイルスに対する物質の高ウイルス活性研究の良好なモデルである。
新規物質のin vitro抗ウイルス活性を研究する場合、細胞培養物に対して高い毒性を示す薬物はその後の研究に望ましくないので、その細胞傷害性レベルを決定することが最初に必要である。決定すべき値は、細胞集団の生存度を50%低下させる物質の細胞傷害性濃度(CC50)と定義する。
研究調製物の細胞傷害性を、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2-5-ジフェニルテトラゾリウム(tetrozolium)ブロミド)アッセイ(一般に使用されている比色アッセイの1つ)(Sigma USA)を使用して査定した。このアッセイは、コハク酸デヒドロゲナーゼなどのミトコンドリア酵素の活性の測定によって細胞のミトコンドリア機能を決定することによって細胞生存度を決定した。このアッセイでは、MTTは、NADHによって紫色ホルマザンに還元され、これを分光光度法で定量することができる。MTTのホルマザンへの変換は、細胞に有毒なウイルスまたは物質の作用下で細胞が死滅した場合に用量依存性様式で顕著に減少する。紫色を、Thermo Scientific(USA)リーダーを使用して540nmの励起波長で測定した。
以下の表は、異なる用量の研究調製物で処置した細胞の生存度の検出結果を示す。
Figure 2023531854000017
Figure 2023531854000018
表14から認められるように、グルタマートベースの調製物およびグリシン-メチオニンベースの調整物の毒性が最小である。試験物質のCC50値は、470および200超である。
Figure 2023531854000019
したがって、研究調製物の細胞傷害性および抗ウイルス活性の査定結果の分析により、Zn64シトラート、Zn64EDDA、Zn64アスパルタート、Zn64グルタマート、およびグリシン-メチオニン中のZn64が抗EBV感染に最も有望な物質であることを示す。
実施例3 COVID-19の処置におけるKLS-1の使用
KLS-1(64Znアスパルタート)の作用機構は、新規の細胞に対する受容体-亜鉛金属酵素ACE2によるウイルス侵入の予防および既に罹患している細胞のコロナウイルス再生の阻害に基づく。ホメオスタシス修復効果は、リボソームにおける細胞タンパク質産生の修正によって得られる。
KLSの合成およびCovid-19患者に対する第I~II相研究は、開始する用意がある。非常に多数の患者の処置に十分な量のKLS-1を、短期間で産生することができる。
KLS-1は、Covid-19コロナウイルスだけでなく、可能性のある任意の将来の変異誘導体にも打ち勝つのに重要な新規のプラットフォームを表す。
インフルエンザ、ヘルペス、およびHCV(BVDV)ウイルスの代用モデルの再生に対する亜鉛およびその軽同位体の異なるアミノ酸との複合物および溶液の効果についての一連のin vitro研究で得られた結果は、亜鉛およびその軽同位体の溶液がインフルエンザ、ヘルペス、およびHCV(BVDV)ウイルスの代用モデルの再生を有効に阻害することを示す。
クエン酸中のZn-64および天然のZnの溶液、グルタミン酸中のZn-64およびZn、ならびにグリシン-メチオニン溶液中のZn-64およびZnが最も有望であった。以下によって確認する:
インフルエンザおよびヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ならびに代用C型肝炎ウイルス(BVDV-ウシウイルス性下痢症ウイルス)の再生阻害。
細胞の有糸分裂の状況への影響なし。
亜鉛-64の安定な軽同位体およびZn-64グリシン-メチオニンのシトラートおよびグルタマートによるRNAおよびDNAの合成の阻害。
重水素枯渇水中のZincグルタマート複合物および亜鉛-64軽同位体グルタマート複合物は、インフルエンザ、ヘルペス、および代用C型肝炎ウイルスの再生を有効に阻害したが、重水素枯渇水中のZnの軽同位体のCC50が遥かに高いので、全てのウイルス再生系における軽同位体の有効係数は、天然の亜鉛の数分の1であった。
研究調製物の細胞傷害性および抗ウイルス活性の査定の結果は、Zn64シトラート、Zn64 EDDA、Zn64アスパルタート、Zn64グルタマート、およびグリシン-メチオニン中のZn64が抗EBV感染に最も有望な物質であることを示す。
抗炎症効果およびホメオスタシス効果
Zn-64ベースのKLS-1の別の重要な特徴は、強力な全身性の抗炎症効果およびホメオスタシス効果である。データを、肥満(Covid-19の重要な悪化因子でもある)、1型および2型糖尿病、パーキンソン病、およびアルツハイマー病の処置におけるKLS-1有効性の前臨床研究中に得た。
KLS-1の抗炎症作用およびホメオスタシス作用の両方は、サイトカインストームを予防するかその強度を低下させるため、および免疫系の効率を犠牲にすることのない恒常的様式で炎症を軽減するためのCovid-19患者の処置に極めて重要である。
脂肪組織は、身体のエネルギー貯蔵所であるだけでなく、多数の組織および臓器(視床下部、下垂体、膵臓、肝臓、骨格筋、腎臓、内皮、免疫系などが挙げられる)の応答を調整する内分泌、パラクリン、およびオートクリンのシグナルの複合体を介した代謝の制御に能動的に関与する臓器でもある。したがって、脂肪組織は、50を超えるタンパク質因子、ホルモン、および成長因子(サイトカインが挙げられる)を分泌する。炎症促進性サイトカイン(IL-1、IL-6、IL-8、IL-12、TNF-α、IFN-γなど)および抗炎症性サイトカイン(IL-4、IL-10、IL-13、TGFなど)が存在する。
脂肪細胞中での活性酸素種の過剰産生による結果の1つは、シグナル伝達カスケードの阻害であり、それにより、マクロファージによる炎症促進性サイトカインの産生が増加し、マクロファージが脂肪組織に浸潤することでその質量が増加する。かかる障害の結果は、肥満症を発症している患者の体内での全身性慢性炎症の形成である。活発に考察されている現代の概念によれば、これは脂肪組織の準臨床的慢性炎症であり、肥満および肥満関連疾患の病理発生における重要な関連事項の1つと考えるべきである。脂肪組織の慢性炎症は、細胞浸潤、線維症、微小循環の変化、アジポカイン分泌障害、および脂肪組織代謝障害、ならびにかかる非特異的炎症マーカー(C反応性タンパク質、フィブリノゲン、および白血球など)の血液レベルの増加を特徴とする。
脂肪組織中だけでなく、血清中の炎症促進性サイトカインレベルの増加は、脂肪組織に炎症過程を生じる結果となる。
内因性の生物学的に活性なメディエーターとしての、細胞間および系間の相互作用を制御するサイトカインは、細胞の生育、分化、機能的活動、およびアポトーシスを制御することによって細胞の生存に影響を及ぼす。サイトカインは、生理学的条件下で病理学的作用に応答して免疫、内分泌、および神経系の作用の協調を確実にする。サイトカインはリンパ球、単球、および組織マクロファージによって産生されると以前は考えられていた。しかしながら、最近の研究結果では、任意の炎症過程におおいて見られるような肥満では、好中球、Tリンパ球、およびその後の常在マクロファージの脂肪組織への浸潤が早期に生じ、最初の炎症機序が決定づけられることを示している。マクロファージが脂肪細胞の肥大に寄与し、この肥大には機能的活動の増加およびサイトカイン合成の増加を伴い、炎症応答がさらに強化されることが示されている。肥大した脂肪細胞は、ケモカインおよびその受容体を強力に分泌し、それにより新規の好中球、マクロファージ、およびリンパ球の流入を刺激し、したがって、肥大脂肪細胞のさらなる増加、炎症応答の保存および強化に寄与する。脂肪細胞は、マクロファージによるサイトカインの分泌を増加させ、マクロファージが脂肪細胞に作用して、脂肪組織細胞を肥大および活性化させる。肥大した脂肪細胞は、リンパ球およびマクロファージのように、サイトカインを産生し、補体を活性化させ、一連の炎症過程の連鎖を引き起こすことが見出されている。結果として、炎症が固定化し、全身に広がるようになる。さらに、脂質過酸化生成物(trans-4-オキシ-2-ノネナールおよびマロニックジアルデヒドなど)は、単球およびマクロファージの化学誘引物質である。蓄積した脂肪組織中での脂質過酸化過程の強化は、肥満における脂肪組織へのマクロファージの誘引および浸潤に寄与し、したがって、炎症反応の開始に能動的に寄与する。
結果的に、脂肪組織質量が増加すると、脂肪細胞および脂肪組織に組み込まれたマクロファージの両方によって合成された炎症促進性サイトカインが常に供給され、それにより、炎症過程が慢性化し、体内の炎症が維持される。炎症過程の強度が低いと直接的な臨床症状は生じないが、それと同時に、この過程は事実上全身性となり、これは、広範な臓器および組織に影響を及ぼしてその代謝を変化させ、その機能および免疫系反応を害することを意味する。
上記を考慮して、次の段階は、アスパルタート形態中のZn-64安定同位体の投与が肥満動物におけるサイトカインプロフィールに影響を及ぼすかどうかを解明することである。この目的のために、実験動物における脂肪組織および血清中の主な炎症促進性サイトカイン(IL-1、IL-6、IL-12、IFN-γ)および抗炎症性サイトカイン(IL-4、IL-10、TGF)の濃度を決定し、それにより、本発明者らは、脂肪組織における炎症過程の強度についての結論を導き、かかる炎症過程が全身性であるかどうを査定することが可能である。
得られた結果によれば、肥満の発症は、高脂肪食を与えた動物の脂肪組織中の全ての分析した炎症促進性サイトカインレベルの増加を伴い(表16)、これは炎症過程の活性化を示す。
さらに、炎症過程が延長すると、種々の合併症を発症し得る。炎症過程の強化および炎症性中間体の蓄積の増加は、組織の損傷および臓器機能不全を生じ得る。
Figure 2023531854000020
*-差は、動物の対照群に対して有意である;#-差は、肥満の動物モデル群に対して有意である
注:C-対照;C+亜鉛-アスパルタート形態のZn-64安定同位体が投与された対照;DIO-食事誘導性肥満;DIO+亜鉛64-アスパルタート形態のZn-64安定同位体が投与された食事誘導性肥満。
高レベルの炎症促進性サイトカイン(上記のサイトカインが挙げられる)がβ細胞のアポトーシスを引き起こすことができることが証明されている。高濃度のIL-12(その発現はIFN-γによって活性化される)は、CD8+リンパ球を膵臓に浸潤させ、急性膵炎を発症させる。IL-1βは、これらの細胞の表面上の特異的受容体への結合を介して、NF-κB媒介アポトーシスを活性化し、それにより、DNAが断片化して細胞の機能的活動が喪失される。さらに、IL-1βはまた、末梢組織のインスリン抵抗性の発症に寄与する因子のうちの1つと見なされ得る。IL-1βは、インスリン受容体基質(IRS)-1中のセリン残基のリン酸化によってインスリンシグナル伝達に影響を及ぼすIκBキナーゼ-βを活性化することが示されている。さらに、IL-1βは、肝臓内の脂肪生成を活性化し、脂肪細胞中のトリグリセリドおよび遊離脂肪酸のレベルの増加に寄与することによってインスリン作用への耐性を間接的に増加させることができる。
IL-6は、末梢血中の脂肪組織量の増加に正比例して蓄積されることが示されている。脂肪細胞は、免疫系に次ぐ二番目に大きなIL-6の供給源である:35%の循環IL-6は脂肪の細胞によって合成される。その血中濃度は、体型指数に正比例し、肥満で増加する。同時に、体重の減少に伴ってIL-6の血液レベルが減少する。IL-6が過剰になると、インスリン受容体サブユニットのうちの1つの合成が抑制されることによってインスリン抵抗性が増悪する。内蔵脂肪組織中で脂肪分解が活性化されることにより、IL-6は脂肪肝臓症および全身アテローム性動脈硬化症の進行性の発症に寄与する。さらに、IL-6はC反応性タンパク質(CRP)(肥満に関連する別の因子)の産生増加を誘導する。
炎症促進性サイトカインのレベル、したがって、生物学的効果の制御機序の1つは、抗炎症性サイトカイン群によって実行される。これらのサイトカインは、特定の遺伝子の転写に影響を及ぼすことによって炎症促進性サイトカインの合成を阻害し、インターロイキンの受容体アンタゴニストRAILの合成を誘導し、可溶性受容体の産生を増強し、細胞上の炎症促進性受容体の密度を低下させることができる。したがって、炎症促進性サイトカインのプロフィールに対するアスパルタート形態のZn-64安定同位体の効果の可能な機序を明確にするために、IL-4、IL-10、およびTGFのレベルを決定した。
肥満動物における抗炎症性サイトカインレベルの減少がわずかであるという状況にもかかわらず、炎症促進性サイトカインレベルの変化が検出された。同時に、アスパルタート形態のZn-64安定同位体で処置された動物では、抗炎症性サイトカインレベルは、肥満の無処置モデルで高かっただけでなく、対照群由来の動物においても高かった。
試験物質で処置された対照群由来の動物に変化がなかったことは、アスパルタート形態のZn-64安定同位体の長期使用が安全であり、病的状態の発症に対してのみ治療効果を示すことができることを示唆することが強調されるべきである。
前述のように、肥満の病理発生には全身性慢性炎症過程が伴い、その強度を、炎症促進性および抗炎症性のサイトカインの血清レベルによって査定することができる。
肥満動物の血清中のサイトカインプロフィールの分析(表17)により、炎症促進性サイトカインレベルが増加し、この増加は脂肪組織から入手したデータと比較するとさらに顕著であった。抗炎症性サイトカインIL-4レベルは、統計的に有意に変化しなかった。肥満動物におけるIL-10の血清レベルのわずかな増加は、代謝障害に対する身体のある特定の代償性反応と見なすことができる。
Zn-64ベースのKLS-1で処置した動物では、抗炎症性サイトカインレベルが増加し、対照群由来の動物よりはるかに高いという状況にもかかわらず、炎症促進性サイトカインレベルが減少した。
Figure 2023531854000021
*-差は、動物の対照群に対して有意である;#-差は、肥満の動物モデル群に対して有意である
注:C-対照;C+亜鉛-アスパルタート形態のZn-64安定同位体が投与された対照;DIO-食事誘導性肥満;DIO+亜鉛-アスパルタート形態のZn-64安定同位体が投与された食事誘導性肥満。
サイトカインプロフィールに対する亜鉛の効果の基本機序の1つは、酸化ストレスに感受性を示す転写因子の阻害であり得る。また、亜鉛-64は、炎症促進性サイトカイン(IL-6およびIL-8など)をコードする遺伝子を部分的にブロックし得る。
Zn-64アスパルタート(KLS-1)の抗炎症効果は、炎症の病理発生に依存しない。これは、健康なホメオスタシスへの修復の結果である。
本発明をその詳細な説明と併せて記載しているが、前述の説明は、例示を意図し、本発明の範囲を制限せず、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲によって定義されると理解すべきである。他の態様、利点、および修正形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。したがって、本発明のある特定の特徴のみを例示および記載しているが、当業者は多くの修正および変更を行えるであろう。したがって、添付のクレームが、本発明の真の意図の範囲にあるように全てのかかる修正および変更を対象とすることが意図されると理解すべきである。
本発明のこれらの態様および他の態様にしたがって多数の他の態様が提供される。本発明の他の特徴および態様は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかとなるであろう。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
ウイルス感染により引き起こされる疾患または状態を処置または予防する方法であって、治療有効量または予防有効量のZnを含む組成物をそれを必要とする被験体に投与する工程を含み、ここで、前記組成物が、 64 Zn 化合物またはその塩を含み、ここで、前記 64 Zn 化合物またはその塩が少なくとも80%の 64 Zn であるか、または前記組成物が、天然のZnまたはZn-64を含む溶液を含む、方法。
(項目2)
前記組成物が、培養培地または重水素枯渇水に溶解された亜鉛および/またはその同位体のアミノ酸との複合物である亜鉛を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記組成物が、シトラート溶液、グルタミン酸溶液、グリシン-メチオニン溶液、EDDA溶液、スルファート溶液、アスパラギン酸溶液、またはTBPDA溶液である天然のZnまたはZn-64を含む溶液を含む、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
前記ウイルス感染が、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス2型を含む単純ヘルペスウイルス、C型肝炎ウイルスを含む肝炎ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、SARS-CoV-2を含むコロナウイルス、エボラウイルス、またはHIVの感染である、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記ウイルス感染が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2))の感染である、項目4に記載の方法。
(項目6)
希釈剤または賦形剤をさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記希釈剤が重水素枯渇水である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記組成物が 64 Zn 化合物またはその塩を含み、前記 64 Zn 化合物が少なくとも95%の 64 Zn である、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記組成物が 64 Zn 化合物またはその塩を含み、前記 64 Zn 化合物が少なくとも99%の 64 Zn である、項目8に記載の方法。
(項目10)
64 Zn が、2個のアスパラギン酸分子を有するアスパラギナート(化学式-C 64 Zn )、スルファート、およびシトラートからなる群から選択される塩の形態である、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記組成物が注射によって投与される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記組成物が経口投与される、項目1~10のいずれかに記載の方法。

Claims (12)

  1. ウイルス感染により引き起こされる疾患または状態を処置または予防する方法であって、治療有効量または予防有効量のZnを含む組成物をそれを必要とする被験体に投与する工程を含み、ここで、前記組成物が、64Zn化合物またはその塩を含み、ここで、前記64Zn化合物またはその塩が少なくとも80%の64Znであるか、または前記組成物が、天然のZnまたはZn-64を含む溶液を含む、方法。
  2. 前記組成物が、培養培地または重水素枯渇水に溶解された亜鉛および/またはその同位体のアミノ酸との複合物である亜鉛を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記組成物が、シトラート溶液、グルタミン酸溶液、グリシン-メチオニン溶液、EDDA溶液、スルファート溶液、アスパラギン酸溶液、またはTBPDA溶液である天然のZnまたはZn-64を含む溶液を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. 前記ウイルス感染が、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス2型を含む単純ヘルペスウイルス、C型肝炎ウイルスを含む肝炎ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、SARS-CoV-2を含むコロナウイルス、エボラウイルス、またはHIVの感染である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
  5. 前記ウイルス感染が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2))の感染である、請求項4に記載の方法。
  6. 希釈剤または賦形剤をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
  7. 前記希釈剤が重水素枯渇水である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記組成物が64Zn化合物またはその塩を含み、前記64Zn化合物が少なくとも95%の64Znである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
  9. 前記組成物が64Zn化合物またはその塩を含み、前記64Zn化合物が少なくとも99%の64Znである、請求項8に記載の方法。
  10. 64Znが、2個のアスパラギン酸分子を有するアスパラギナート(化学式-C64Zn)、スルファート、およびシトラートからなる群から選択される塩の形態である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
  11. 前記組成物が注射によって投与される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
  12. 前記組成物が経口投与される、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
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