JP2023524150A - 呼吸器疾患治療のための幹細胞 - Google Patents

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Abstract

本発明は、気道に悪影響を与える気道の障害、疾患および外傷の治療におけるインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞の用途に関する。【選択図】図6

Description

本発明は、インテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞、および呼吸器疾患の治療におけるその用途に関するものである。
急性窮迫症候群(ARDS)(肺における広範囲の炎症の急激な発生によって特徴付けられる重症呼吸器不全)などの気道障害を治療することに関して、未だ満たされていない大きな臨床上の必要性が存在する。ARDSは救命救急診療患者に重大な悪影響を及ぼし、今もって高死亡率(約40%と推定される)の深刻な臨床的障害であり、生存している患者の有病率が長期にわたって顕著に高い水準となり得るのである。
症状としては、息切れ、呼吸促迫、および青みがかった皮膚の着色が挙げられる。ARDSの原因としては、肺が最初から悪影響を受けるか否かによって、直接的原因と間接的原因が存在する。直接的原因としては、肺炎(細菌感染またはウイルス感染(例えば、COVID-19によるウイルス感染)を含む)、吸引、吸入性肺傷害、肺挫傷、胸部外傷、および溺水が挙げられる。間接的原因としては、敗血症、ショック、膵炎、外傷、心肺バイパス法および火傷が挙げられる(Matthay、2019)。ARDSの症例としては少ないのであるが、外傷後蘇生経過中に用いた大容量の液体に関連するものもある(Casay、2019)。
ARDSは、典型的には急性傷害によって惹起される;この急性傷害によって、強力な免疫応答および多数の免疫メディエーターの放出が起こるのであるが、この現象はサイトカインストームとよばれ、複数の臓器(例えば、肺)に悪影響を与え得る(Gonzales、2015)。ARDSは免疫系の過大な活性化によって特徴付けられ、それにより肺組織に重度の損傷が引き起こされるため、特定分子または特定経路を標的とする特異的薬剤には限定的効果しかない。ARDS管理における最近の進歩はほとんど対症療法において成されたものであり、呼吸ガス交換を保持することを目的とし、それによって生命を維持し、医師は原因となる疾患が解消するのを待つことになる(Prescott、2016)。これらの方略としては、保護的人工呼吸、神経筋遮断薬、腹臥位、および体液バランス管理方略の利用が挙げられる。しかし、後者はARDSの実際的な治療ではない;その理由は、それが単に呼吸ガス交換の保持を目的とするものだからである。死亡率をさらに低下させるためには、ARDSの治療は肺損傷の原因となる炎症性機構を標的とすべきである。しかし、疾患特異的経路に効果的に作用し得る、あるいは死亡率を減少させ得る薬物療法は、今のところ存在しない。このように、ARDSおよび関連障害の新規治療法が必要となっているのである。
ARDS動物モデルにおいて、インテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)が、血行動態安定性および酸素供給能を改善し、血液凝固形成および肺組織損傷を軽減することを、本発明者らは見いだした。さらに、MSCは特異的免疫調節性および抗炎症性の特性を示す。このため、インテグリンアルファ10選択MSCは、呼吸器疾患(ARDSおよび関連する肺合併症など)を悪影響の緩和するために特に好適なものである。
主たる一局面においては、本発明は、哺乳動物の呼吸器系/気道の1種類以上の疾患または外傷の治療において;および/または哺乳動物の気道の1種類以上の臓器または組織の移植に関連して用いられるインテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物に関する。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物における呼吸器系の疾患、障害または外傷を治療する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の気道の臓器または組織を移植治療または移植促進する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、哺乳動物の血液凝固を予防する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、血行動態安定性を促進する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、強心療法の必要性を低減させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、酸素供給能を改善する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、組織の損傷を予防する方法、例えば、組織の構造的損傷を予防する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、組織の損傷を元に戻す方法、例えば、組織の構造的損傷を元に戻す方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、好中球数を減少させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、リンパ球数を増加させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、炎症性サイトカインを減少させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、インターフェロンαを増加させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、インテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物であって、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、以下の方法のうちのいずれかに用いられる組成物を対象とする:
哺乳動物において:
・血液凝固を予防する方法;
・血行動態安定性を促進する方法;
・強心療法の必要性を低減する方法;
・酸素供給能を改善する方法;
・組織の損傷を予防する方法、例えば、組織の構造的損傷を予防する方法;
・組織の損傷を元に戻す方法、例えば、組織の構造的損傷を元に戻す方法;
・好中球数を減少させる方法;
・リンパ球数を増加させる方法;
・炎症性サイトカインを減少させる方法;
および/または
・インターフェロンαを増加させる方法。
MSC処置動物における強心療法の必要性の低下。12頭のブタにおいてARDSを誘導し、それらのブタをインテグリンアルファ10選択MSC(6頭のブタ)またはDMSOを含む凍結保存溶液(6頭のブタ)のいずれかの静脈注射で処置した。ノルエピネフリン投与などの強心療法は、ARDSモデルにおいて実験の経過中に血行動態安定性および酸素供給レベルを確保する目的で行われる。したがって、投与されるノルエピネフリンの量が、動物における血行動態安定性および肺への酸素供給能を判定する手段となる。対照群(非処置)と比較してMSC処置動物(処置)では、ノルエピネフリンの投与総量が格段に少ないことが明らかになった。このことは、インテグリンアルファ10選択MSCで処置した動物が、より安定な血行動態を有し、より良好な酸素分布を確保できることを示している。****は、p≦0.001であることを示す。 MSC処置による酸素供給能の改善。処置開始から12時間後に、MSC処置ブタのうちの3頭および対照ブタのうちの3頭において酸素供給能の分析が可能であった。酸素供給能の測定は、動脈酸素分圧(PaO)と吸入気酸素(FIO)との間の比を分析することによって実施した。この結果は、対照ブタ(非処置)(PaO/FIO比:X-X)と比較して、MSC処置ブタ(処置)では酸素供給能が改善された(PaO/FIO比:21~28)ことを示している。これは、対照動物と比較して、MSC処置動物ではガス交換について肺構造がより良好に保存されていることを示唆している。 MSC処置動物における凝固時間の延長。凝固(血液凝固)はARDSの主たる特性であり、極端な炎症応答を惹起するものであるため、ARDSモデルにおいて凝固時間を調べた。MSC処置群(丸)および非処置群(四角形)の両方で、凝固時間を観察した。このグラフは、実験の異なる段階における凝固時間(秒、s)を示し、MSC処置群(丸)では凝固時間が延長することを示すものである。処置群における効果は、インテグリンアルファ10選択MSCの点滴2時間後ですでに認めることができ、少なくとも12時間持続する。凝固時間の延長はARDSの軽減に関連し、ARDS療法としてのインテグリンアルファ10選択MSCの治療効果ならびに安全性を示すものである。 MSC処置後の肺組織における損傷の軽減。肺組織の損傷度およびMSCの肺組織構造に対する効果を調べる目的で、ARDS試験の終わりに肺の上部(上葉)、中部(中葉)および下部(下葉)から肺生検を行った。この結果は、対照(非処置)動物と比較して、MSC処置動物において肺組織損傷が軽度であることを示し、これによってARDSモデルにおけるMSCの治療効果が実証された。上の列に示す代表的な像は非処置群のものであり、下の列に示す代表的な像はMSC処置群のものである。いずれの像も20倍の倍率で撮像された(黒色のスケールバーは、0.1mmを示す;白色スケールバーは0.2mmを表す)。 MSC処置動物の血中における好中球の減少。(A)ARDSブタにおいてインテグリンα10選択MSCの炎症に対する効果を判定するために、血液中の好中球の数を分析した。その結果、MSC点滴(処置)後に好中球数が減少し、このことは、治療群の肺組織において炎症反応の一部として動員される好中球が減ったことを示している。これは、好中球数減少がMSCの重要な一作用機序であり、それによって炎症の程度を軽減し肺組織損傷を減らすことを示唆している。平均値±標準誤差。p≦0.05。(B)グラフは、動物の末梢血中のリンパ球を計数したものを示している(ml当たり100万細胞)。簡単に説明すると、処置群では、実験の最終時点において全血中のリンパ球数が上昇しており、点滴から9時間後および10時間後にピークに達した。リンパ球は、ARDSに対する応答に関与する重要な免疫細胞であり、リンパ球が多いことは重症度の低いARDS症例の指標となり得るのである。 血漿および気管支肺胞洗浄液(BALF)のサイトカインは、MSCが免疫調節効果を有することを支持する。インテグリンアルファ10選択MSCの免疫調節効果について、作用機序をARDSモデルでさらに調べるために、実験経過中の複数時点で血液試料および気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取し、関与する複数種類の炎症性サイトカインについて分析した。本明細書では、インターフェロンα(IFN-α)ならびにインターロイキンIL-12、IL-1βおよびIL-6に対するMSCの効果を実証しているが、これは、MSC処置動物における免疫調節効果を支持するものである。(A)非処置動物と比較して、処置動物では、インテグリンアルファ10選択MSCの点滴から1時間後の血漿において炎症性サイトカイン・インターフェロンα(IFN-α)が高レベルで検出され、これはさらに3時間持続する。このような高レベルは、IFN-αの点滴がARDS患者の死亡率低下をもたらすことを示す最近の後ろ向き試験からも分かるように、ARDSの予後がより良好であることを示唆し得るものである。(B)対照(非処置)動物と比較して、インテグリンアルファ10選択MSC処置動物では、MSC点滴から1時間後に、血漿中の炎症性サイトカイン・インターロイキン(IL)-12が低レベルであることが検出された;このことは、8時間持続するMSCの効果が即時効果であることを示唆している。これは、さらにMSCの免疫調節効果を有することを支持する;理由は、これが、血液中の活性化抗原提示細胞数が少ないことの指標となり得るからである。(C)および(D)試験完了後(終了時)の非処置群と比較して、MSC処置動物では、BALF中で炎症性インターロイキンIL-1βおよびIL-6(ARDS発症における重要因子と見なされている)の濃度が低かった。さらに、ベースラインと比較して、非処置動物においてのみ、IL-1βおよびIL-6の両方が有意に増加した。これは炎症状態(M1)の方向に偏極したマクロファージの存在を示唆する得るものであり、処置動物においては肺の炎症が全体的に軽減されていた。
定義
本明細書中の「抗インテグリンα10抗体」または「抗インテグリンα10サブユニット抗体」は、ヘテロ二量体型蛋白質インテグリンα10β1の少なくともインテグリンα10サブユニットを認識し、これに結合することのできる抗体の同義語として用いられる。これらの抗体は、ヘテロ二量体型蛋白質インテグリンα10β1のエピトープを認識する抗体であってもよく、ここでこのエピトープはインテグリンα10およびインテグリンβ1サブユニットの両方のアミノ酸残基を含む。
本明細書中の「インテグリンアルファ10」または「インテグリンα10」は、ヘテロ二量体型蛋白質インテグリンα10β1のα10サブユニットを指す。この用語は、インテグリンα10サブユニットに結合してインテグリンα10β1ヘテロ二量体の四次構造を形成するインテグリンβ1サブユニットの存在を排除するものではない。ヒトのインテグリンα10鎖の配列は公知であり、GenBank(商標)/EBIデータバンクにおいてアクセッション番号:AF074015として公開されており、またCamper(1998)の文献にも記載がある。「アルファ」および「α」、ならびに「アルファ10」および「α10」は同義語である。
本明細書中の単数形「a」、「an」および「the」は、文脈によってそうではないことが明白でない限り複数形をも含むものとする。
用語「いくつかの実施態様」は、1つ以上の実施態様を含み得る。
本明細書全体を通じて用いられる「a」または「an」という単語、あるいは「特許請求の範囲」および/または本明細書において、用語「を含む(comprising)」に関連して、「a」または「an」という単語が用いられる場合には、その使用は「1つ(1種類)(one)」を意味し得るが、「1つ以上(1種類以上)one or more」、「少なくとも1つの(少なくとも1種類の)(at least one)」、および「1つ以上の(1種類以上の)(one or more than one)」の意味とも整合するものである。
本明細書中の用語「単離する(isolating)」、「ソーティングする(選別する)(sorting)」および「選択する(selecting)」は、特定のタイプの細胞として細胞を同定するという行為および同一細胞種に属しない細胞または他の分化状態の細胞からその細胞を分離するという行為を指す。さらにまた、これらの用語は特定のマーカーの存在によって細胞を同定する行為を指すこともある。例えば、本発明において、インテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を対象とする場合。通常、単離は分離の第1段階を指し、例えば、機械的な分離であってもよい;他方、「選択」はより特異的であり、例えば、抗体を用いることによって実施するものを指す。細胞を「単離する」、「ソーティングする(選別する)」または「選択する」処理によって、該細胞が濃縮されることは、当業者であれば理解するであろう。
本明細書中の用語「インテグリンアルファ10濃縮MSC」は、用語「インテグリンアルファ10MSC」、「インテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞」および「間葉系幹細胞のインテグリンアルファ10が濃縮された集団」と同義語である。実施例1に記載されるように、本発明に用いるMSCは、インテグリンアルファ10を発現するMSCを濃縮する処理によって選択する;例えば、インテグリンアルファ10に特異的に結合する抗体を用いて、インテグリンアルファ10を発現するMSCを選択する。特異的性質に関して選択される細胞、例えば、インテグリンアルファ10を発現するMSCまたはインテグリンアルファ10MSCが特異的な均一細胞集団を形成し得ることは、当業者であれば理解するであろう。
本明細書中の「間葉系幹細胞」または「MSC」は、国際細胞療法学会の間葉系幹細胞および組織幹細胞に関する委員会が定義するような多能性間質細胞を指す(Dominici、Mらの細胞療法(8(4):315-7(2006))を参照のこと)。標準的培養条件下で維持する場合には、MSCはプラスチックに接着するものでなければならない;また、CD105、CD73およびCD90を発現し、かつCD45、CD34、CD14またはCD11b、CD79アルファまたはCD19およびHLA-DR表面分子を発現しないものでなければならない。MSCは、インビトロで骨芽細胞、脂肪細胞または軟骨芽細胞へ分化する能力を有するものでなければならない。
本明細書中の用語「呼吸器系の疾患、障害または外傷」は、呼吸に関与するシステムにおいて、呼吸器系の1種類以上の部分が何らかの機能不全であることを指す。呼吸器系(気道、呼吸器、換気システムともよばれる)は、例えば、肺、気管支、細気管支、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢および肺胞(下気道とよばれることもある)、ならびに気管、喉頭、咽頭、鼻腔および副鼻腔(上気道とよばれることもある)を含む。
本明細書中の用語「ARDS(急性呼吸促迫症候群)」は、生命を脅かす炎症を指し、これは重度の呼吸器不全に至る肺浮腫を伴うことも多い。ARDSは、重度の生理的損傷後に発生する肺の強度の炎症(多くの場合に広範な炎症である)によって起こる低酸素性呼吸不全に起因する肺損傷の臨床症候群である。
本明細書中の用語「敗血症」は、「感染に続発する全身性炎症反応症候群(SIRS)」と定義される病態を指す。そのような病態は、微生物、好ましくは細菌または真菌、寄生生物に、あるいはウイルスまたはプリオン類によって引き起こされる感染症状により特徴付けられる。本明細書中の用語「敗血症」は、敗血症の最後の段階に関連する敗血症、および「重症敗血症」、「敗血症ショック」、および「敗血症の合併症」の発症(例えば、多臓器不全症候群(MODS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、および急性腎不全(AKI))を含み、また敗血症のすべての段階を含む。
本明細書中の「予防する」または「予防」は、疾患、障害、または病態の発症を遅延または止めることを含む。
本明細書中の用語「疾患」、「障害」、「外傷」および「症候群」、ならびに他の類似の用語(「病態」など)は、本開示中においては同義語と理解され得るものであり、無機能状態、病理学的状態、非生理的状態および/または障害状態を指す。
疾患適応
一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害または外傷の治療、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して用いられるインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を対象とする。
本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患は下気道疾患である。
本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患は、主に肺間質に悪影響を与える呼吸器系疾患である。
本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患は、気道に悪影響を与える呼吸器系疾患である。
本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患は、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、肺浮腫、肺好酸球増多症、特発性間質性肺炎、幼年期または小児期に特異的な原発性間質性肺疾患、全身性疾患に関連する間質性肺疾患、肺胞微石症、リンパ脈管筋腫症、およびリポイド肺炎から成る群から選択される、主に肺間質に悪影響を与える疾病である。
実施例に示すように、本明細書に開示のインテグリンアルファ10選択MSCは、抗炎症性および免疫調節の特性を示し、ARDS関連症状の改善、予防および/または治療に用いることができる。ARDSに関連する疾患または障害もまた、本明細書に開示のインテグリンアルファ10選択MSCによって治療可能であることは、当業者であれば理解するであろう。例えば、ARDSに関連する疾患または障害(COVID-19を伴うサイトカイン放出症候群(CRS)、サイトカインストーム症候群(CSS)、および多系統炎症性症候群など);もしくは新生児(例えば、早産児が挙げられるが、これのみに限定されるものではない)に悪影響を与える合併症は、呼吸器系(例えば、肺)に悪影響を与えることがあるので、本明細書に開示のインテグリンアルファ10選択MSCで治療するのであってもよい。サイトカインストームおよびサイトカイン放出症候群は、循環サイトカインレベルの上昇および免疫細胞過剰活性化を伴う生命を脅かす全身性炎症症候群であり、そのようなサイトカインレベルの上昇および免疫細胞過剰活性化は、例えば、各種の治療、病原体、癌、自己免疫病態、および単一遺伝子病によって惹起することがある。
本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患は、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および/または関連障害である。
本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患はARDSである。
本明細書に開示の組成物を用いて治療するのであってもよい呼吸器系の疾患、障害または症候群は、例えば、ARDSに関連する障害であり得る。
したがって、本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患は、サイトカイン放出症候群(CRS)である。
本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患は、サイトカインストーム症候群(CSS)である。
本開示のいくつかの実施態様においては、ARDS関連疾患はCOVID-19に関連する多系統炎症性症候群である。
本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患は、サイトカイン仲介性ARDSである。
本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患は、新生児のARDS/呼吸窮迫症候群である。
本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患は、新生児の呼吸困難(新生児の呼吸窮迫症候群など)である。
前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であり、該呼吸器系疾患が外傷によるARDSである、組成物。
本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患はウイルス感染または細菌感染に起因するARDSである。例えば、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によるウイルス感染はARDSを引き起こすことがある。
ARDSを引き起こす原因としては複数のものがあり得ることが理解される。しかし、ARDSは、原因とは無関係に、臨床パラメーターによって定義される臨床症候群であるとみなされており、そのようなパラメーターとしては、例えば、酸素補給にもかかわらず起こる重症低酸素血症、両側性肺浸潤物および肺コンプライアンスの低下が挙げられる。複数の可測因子(例えば、サイトカイン)が、ARDSの発症に関与すると考えられる、あるいは関与が知られている。異なる種類の原因によって惹起するARDSの治療にインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)が利用可能であることは、当業者であれば理解するであろう。本明細書に記載の実施例では、一般に認められているARDS動物モデルについて説明するが、当該技術分野で公知の他のモデルを利用して、本明細書に開示のMSCの効力を評価することも可能であることは、当業者であれば理解するであろう。
ARDSの原因になることが多いのは敗血症であり、多くの場合ARDSは、敗血症患者が最終的には死に至る病態である。したがって、本明細書に開示のインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)がARDS治療に有効であることから、該細胞を用いてARDSの原因(例えば、敗血症)に対する治療を行うのであってもよい。
ARDSの別の原因としては重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)/COVID-19が挙げられ、ARDSは、COVID-19に罹患している患者を最終的には死に至らしめる病態であり得る。したがって、本明細書に開示のインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)がARDS治療に有効であることから、該細胞を用いてARDSの原因(例えば、COVID-19)に対する治療を行うのであってもよい。
すなわち、本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)/COVID-19に起因するARDSである。
本開示のいくつかの実施態様においては、該呼吸器系疾患はその他の原因によるARDSである。
ARDSに関与する疾病機序(炎症性サイトカインの増加および細胞変化、特に免疫細胞についての細胞変化など)はまた、移植臓器または移植組織の拒絶に関与する機序(例えば、肺移植の場合)に関与するものであってもよい。すなわち、本明細書に開示のインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を用いて、臓器移植(例えば、肺移植)に関連する障害を予防または治療するのであってもよい。
すなわち、本開示の実施態様のいくつかにおいては、哺乳動物の気道の臓器または組織の移植(例えば、肺移植)に関連する疾患、障害または外傷の治療における、インテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物の用途に関する。
MSCの特性および製造
本開示のいくつかの実施態様においては、MSCの少なくとも60%が、インテグリンα10サブユニットを発現する。
実施例1では、本開示において提示するインテグリンアルファ10選択MSCの製造方法について説明する。インテグリンアルファ10選択MSCの主たる利点は、MSCがインテグリンアルファ10蛋白質の発現を基準として選択されるので、この選択MSCが均一培養物および/または均一集団だということである。これらの細胞は、幹細胞マーカーを安定に発現することが分かっている(例えば、WO2018/138322を参照のこと)。細胞を濃縮するために、複数の細胞選択法が利用できることは、当業者であれば理解するであろう。本発明においては、インテグリンアルファ10MSCが単離処置/選択処置によって濃縮される。これに関しては、抗インテグリンアルファ10抗体を用いるのであってもよい。MSCの単離および選択は、WO2018/138322に記載の方法で行うのであってもよい。
実施例1において開示されるように、選択段階においては、抗インテグリンアルファ10抗体を用い、細胞のインテグリンアルファ10発現に基づいて選択の成される「選択MSC」は、インテグリンアルファ10を発現するものである(インテグリンアルファ10を発現するMSCを、インテグリンアルファ10MSCとよぶこともある)。より具体的には、インテグリンアルファ10サブユニットは、インテグリンベータ1サブユニットとともに発現するので、選択細胞はヘテロ二量体インテグリンアルファ10ベータ1(α10β1)を発現するMSCである。この選択段階の後に増殖段階が続くのであるが、増殖段階では、選択MSCのそれぞれのインテグリンアルファ10発現が異なっていてもよく;すなわち、増殖経過中に常にすべてのMSCがインテグリンアルファ10を発現するのでなくてもよく、これは投与時点であっても同様である。ただし、MSCを患者に投与する時点では、投与細胞のうちの少なくとも50%がインテグリンアルファ10サブユニットを発現する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCの少なくとも50%、少なくとも55%など、少なくとも60%など、少なくとも65%など、少なくとも70%など、少なくとも75%など、少なくとも80%など、少なくとも85%など、少なくとも90%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、少なくとも100%などが、インテグリンアルファ10サブユニットを発現する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは、MHCクラスII、CD45、CD34、CD11bおよび/またはCD19について陰性である。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは、CD73、CD90および/またはCD105を発現する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは、間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞から成る群から選択される、あるいはその混合物である。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCはインテグリンα10サブユニットを発現するように誘導される。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは哺乳動物の血清およびFGF-2を含む培地で培養される。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは血小板溶解物および/または血小板溶解物の成分を含む培地で培養される。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは、FGF-2ならびに血小板溶解物および/または血小板溶解物の成分を含む培地で培養される。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは哺乳動物の血清ならびに血小板溶解物および/または血小板溶解物の成分を含む培地で培養される。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCはTGFβを含む培地で培養される。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCはFGF2を含む培地で培養される。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは血小板溶解物および/または血小板溶解物の成分を含む血清不含培地で培養される。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは増殖因子を含む血清不含培地で培養される。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは成長因子FGF2および/またはTGFを含む血清不含培地で培養される。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは同種異系細胞または自家細胞である。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCおよび哺乳動物は同一生物種に由来する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCおよび哺乳動物は異なる生物種に由来する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは、脂肪組織、骨髄、滑膜、末梢血、臍帯血(cord blood)、臍帯血(umbilical cord blood)、ワルトン膠様質、および/または羊水に由来する。
当該技術分野において公知の他の供給源に由来するMSCを選択する場合にも、本明細書に開示のインテグリンアルファ10選択MSC選択法が利用可能であることは、当業者であれば理解するであろう。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは脂肪組織に由来する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは骨髄に由来する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは、胎児、新生児、若年者または成人のMSCおよび/または前駆細胞に由来する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは、胚細胞にも胚にも由来しない。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCは、インビトロ細胞培養物である。
本開示のいくつかの実施態様においては、該MSCの選択が抗インテグリンα10抗体を用いて実施されたものである。
投与
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCを含む組成物を肺または気道に投与する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCを含む組成物を注射によって投与する。
当業者であれば、該インテグリンアルファ10選択MSCを投与するための他の方法であって、当該技術分野において公知の方法についても理解するであろう。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCを含む組成物を、非経口的に投与する。
したがって、本開示の記載のように用いられる該インテグリンアルファ10選択MSCを含む組成物を、該インテグリンアルファ10選択MSCが投与される動物のいずれかの粘膜を透過させる目的で、局所投与するのであってもよい。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCを含む組成物を、静脈内注射、筋肉内注射および/または気管内注入、あるいはそれらの任意の組み合わせによって投与する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCを、投与前に細胞凝集体として処方する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCを含む組成物を、薬学的に許容可能な賦形剤とともに細胞懸濁液の形態で投与する。
本開示のいくつかの実施態様においては、損傷肺を修復する目的で、該インテグリンアルファ10選択MSCを含む組成物を外科手術中に投与する。
本開示のいくつかの実施態様においては、肺移植に関連して、該インテグリンアルファ10選択MSCを含む組成物を投与する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該哺乳動物がヒトである。
本開示のいくつかの実施態様においては、該哺乳動物が、ヒト、ウマ、ポニー、雄ウシ、ロバ、ラバ、ラクダ科の動物、ネコ、イヌ、ブタ、または雌のウシである。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCと該哺乳動物が同一生物種に由来する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCと該哺乳動物が異なる生物種に由来する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCが、脂肪組織、骨髄、滑膜、末梢血、臍帯血(cord blood)、臍帯血(umbilical cord blood)、ワルトン膠様質、および/または羊水に由来する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCが脂肪組織に由来する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCが骨髄に由来する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCは、胎児、新生児、若年者または成人のMSCおよび/または前駆細胞に由来する。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCは、胚細胞にも胚にも由来しない。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCはインビトロ細胞培養物である。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択MSCの選択が、抗インテグリンα10抗体を用いて実施されたものである。
本開示のいくつかの実施態様においては、該インテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物が、抗炎症剤および/または免疫調節剤をさらに含む。
別の一局面においては、本開示は、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物の用途であって、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害または外傷の治療、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連する、治療薬剤の製造のための用途を対象とする。
方法
さらなる一局面では、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害または外傷を治療する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面では、本開示は、哺乳動物の気道の臓器または組織を移植治療または移植促進する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、哺乳動物の血液凝固を予防する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、血行動態安定性を促進する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、強心療法の必要性を低減させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、酸素供給能を改善する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、組織の損傷を予防する方法、例えば、組織の構造的損傷を予防する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、組織の損傷を元に戻す方法、例えば、組織の構造的損傷を元に戻す方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
本開示のいくつかの実施態様においては、本開示の方法で予防する、あるいは元に戻す組織損傷は、肺組織損傷である。
本開示のいくつかの実施態様においては、本開示の方法で予防する、あるいは元に戻す組織損傷は、間質組織の損傷、肺胞中隔の損傷、気道の損傷、脈管構造の損傷、および/または神経系の損傷である。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、好中球数を減少させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、リンパ球数を増加させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、炎症性サイトカインを減少させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
本開示のいくつかの実施態様においては、本開示の方法で減少させる炎症性サイトカインは、インターロイキン12(IL-12)、IL-1β、IL-6およびIL-4、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
本開示のいくつかの実施態様においては、本開示の方法で減少させる炎症性サイトカインは、血液および/または気管支肺胞洗浄液において減少する。
さらなる一局面においては、本開示は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、インターフェロンαを増加させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法を対象とする。
さらなる一局面においては、本開示は、インテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物であって、以下のいずれかの方法に用いる組成物を対象とする:
哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、
哺乳動物において:
・血液凝固を予防する方法;
・血行動態安定性を促進する方法;
・強心療法の必要性を低減する方法;
・酸素供給能を改善する方法;
・組織の損傷を予防する方法、例えば、組織の構造的損傷を予防する方法;
・組織の損傷を元に戻す方法、例えば、組織の構造的損傷を元に戻す方法;
・好中球数を減少させる方法;
・リンパ球数を増加させる方法;
・炎症性サイトカインを減少させる方法;
および/または
・インターフェロンαを増加させる方法。
本開示のいくつかの実施態様は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、哺乳動物の血液凝固を予防する方法に用いるインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を対象とする。
本開示のいくつかの実施態様は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、哺乳動物の血行動態安定性を促進する方法に用いるインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を対象とする。
本開示のいくつかの実施態様は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、哺乳動物において強心療法の必要性を低減する方法に用いるインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を対象とする。
本開示のいくつかの実施態様は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、哺乳動物の酸素供給能を改善する方法に用いるインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を対象とする。
本開示のいくつかの実施態様は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、哺乳動物の組織の損傷を予防する方法、例えば、組織の構造的損傷を予防する方法に用いるインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を対象とする。
本開示のいくつかの実施態様は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、哺乳動物の組織の損傷を元に戻す方法、例えば、組織の構造的損傷を元に戻す方法に用いるインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を対象とする。
本開示のいくつかの実施態様は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、哺乳動物において好中球数を減少させる方法に用いるインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を対象とする。
本開示のいくつかの実施態様は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、哺乳動物においてリンパ球数を増加させる方法に用いるインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を対象とする。
本開示のいくつかの実施態様は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、哺乳動物において炎症性サイトカインを減少させる方法に用いるインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を対象とする。
本開示のいくつかの実施態様は、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、哺乳動物においてインターフェロンαを増加させる方法に用いるインテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を対象とする。
本開示のいくつかの実施態様においては、該組織損傷は肺組織損傷である。
本開示のいくつかの実施態様においては、該組織損傷は、間質組織の損傷、肺胞中隔の損傷、気道の損傷、脈管構造の損傷、筋肉の損傷および/または神経系の損傷である。
請求項69の方法であって、ここで該炎症性サイトカインが、インターロイキン12(IL-12)、IL-1β、IL-6およびIL-4、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、方法。
本開示のいくつかの実施態様においては、該炎症性サイトカインは、血液および/または気管支肺胞洗浄液において減少する。
実施例
実施例1:インテグリンアルファ10濃縮MSCの調製
目的
本実施例では、インテグリンアルファ10選択MSCの単離法、選択法、増殖法および治療モデルに使用するまでの保存方法について説明する。
材料と方法
インテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を、ヒトまたは動物の脂肪ドナー組織、あるいはMSCを含むその他の供給源から単離した。脂肪組織をほぐして/消化し、脂肪由来間質血管画分(SVF)をMSC増殖培地に再懸濁してから、細胞培養フラスコに播種して、MSCがプラスチックに接着し増殖できるようにした。
このプラスチック接着細胞を、フローサイトメトリーによる測定で、細胞表面マーカーCD73、CD90およびCD105の発現(95%以上)、およびCD45、CD34、CD11b、CD19およびHLA-DRの非発現(2%以下)について、分析を行った。この特異的抗原発現基準は、国際細胞療法学会が提唱するMSC定義の一部でもある(Dominici、2006)。MSC調製物をMSC増殖培地中で単層培養により増殖させて、インテグリンアルファ10に特異的に結合する抗体(これは、完全型受容体インテグリンアルファ10ベータ1、すなわち、インテグリンα10β1を認識する)を用いて、インテグリンα10発現MSCを選択した;選択は、磁気ビーズ分離またはFACS細胞選別で行った。このインテグリンアルファ10選択MSCをさらに拡大増殖させて、規定のMSC抗原の細胞表面発現について確認し、さらに3血球系分化能についても確認を行った。凍結保存媒体でアルファ10選択MSCを生きたまま凍結し、使用まで凍結保存した。
結果
上記の処理によって、インテグリンアルファ10選択MSCが得られ、拡大増殖およびバイアル凍結を行った;このバイアルは投与、例えば、静脈内投与に用いることができる。
結論
上記の製造プロセスにより、ヒトMSCを規定する最小基準を満たすアルファ10選択MSCを作成するが、このプロセスは細胞療法に利用可能であると思われる。
実施例2:ブタARDSモデルによる、インテグリンアルファ10選択MSC治療の有効性と安全性の証明
目的
これらの実験の目的は、検証済みブタモデルにおいて、インテグリンアルファ10選択MSCのARDSに対する治療効果ならびにインテグリンアルファ10選択MSCの動脈内点滴の安全性を実証および評価することであった。
材料と方法
12頭のブタ(平均体重が35.83±4.79kg)を用いた。全身麻酔を実施してから、耳垂に末梢静脈内カテーテルを設置し、同時に気管内挿管および非加湿空気の人工呼吸器の設置も行った。換気を調整して、二酸化炭素レベル(PaCO)を33~41mmHgに維持した。
ARDSを誘導するために、グラム陰性細菌である大腸菌(Escherichia coli)由来のリポ多糖(LPS)を希釈し、気管内(ET)導入および肺動脈経由で投与した。
血行動態、ガス交換、強心療法の必要性、補液の必要性、尿排出量、サイトカイン応答性および血漿における凝固カスケード応答性を、試験期間を通じて継続的にモニターした。RNA配列決定および免疫組織化学的分析を目的として、肺組織を採取した。
ブタARDSモデルを確認および観察する目的、ならびに点滴インテグリンアルファ10選択MSCの臨床効果を評価する目的で、血行動態パラメーター、血液ガスおよび血液凝固時間(ROTEM装置を用いた)を測定した。ARDSの異なる段階は、酸素(PaO)分圧対吸入酸素濃度FIO比を用いるベルリン定義にしたがって決めた。ARDS確立後に、インテグリンアルファ10選択MSCによる治療(500万MSC/kg、静脈内に投与)または5~10%DMSOを含む模擬処置凍結媒体のいずれかに、ブタを無作為化した。実験の最終時点で、胸骨切開により右葉の全葉から肺生検試料の採取を行った。本発明者らのモデルにおいて、ヘマトキシリンおよびエオシンによる染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)を施した肺生検試料を用いて、重度の肺損傷の発生および肺の完全性を保全する点滴MSCの効果を確認した。
結果
血行動態安定性/強心療法の必要性に関する分析
ARDSモデルにおいて実験の経過中に血行動態安定性および酸素供給レベルを確保する目的で、ノルエピネフリン投与などの強心療法を行う。対照群と比較してインテグリンアルファ10選択MSC処置動物では、投与ノルエピネフリン総量が大きく減少することが明らかになったが、このことは、インテグリンアルファ10選択MSC処置動物の血行動態パラメーターがより安定であり、より良好な酸素分布が可能であることを示している(図1)。
酸素供給能の分析
ノルエピネフリン投与量の減少に関しては、血液ガス値でも、インテグリンアルファ10選択MSC処置ARDS動物において酸素供給能が上昇したことが確認できる。12時間後にインテグリンアルファ10選択MSCで処置した3頭、および3頭の対照動物の酸素供給を分析することが可能であった。対照動物と比較して、インテグリンアルファ10選択MSC処置動物では酸素供給能が改善されることが明らかとなり、このことは、インテグリンアルファ10選択MSCの治療効果を支持するものである(図2)。
凝固時間の分析
血液凝固と凝血形成は、ARDSにおいて共通する大きな医療問題である。そこで、ARDS試験の経過中に点滴したインテグリンアルファ10選択MSCが凝固(血液凝固)時間に及ぼす効果について調べた。対照動物と比較して、インテグリンアルファ10選択MSC処置動物では凝固時間が有意に短縮することが明らかとなった。2時間後でもすでに効果が現れ、3時間およびそれ以降ではその効果が顕著であった(図3)。この凝血形成時間の顕著な短縮は、重要な有効性パラメーターであり、またインテグリンアルファ10選択MSCを静脈内に投与することの安全性を実証するものである。これらの結果は、インテグリンアルファ10選択MSCの点滴が、ARDSにおける凝固形成(この病態の主たる顕著な特徴の1つである(Frantzeskaki、2017))を予防するために有効な処置であることを支持する。
組織学
肺の上葉、中葉、および下葉から採取した肺組織切片のヘマトキシリンおよびエオシンによる染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)を分析し、インテグリンアルファ10選択MSCで処置したブタと非処置ブタとの間で、肺組織構造を比較した。対照動物には重度の肺組織損傷が認められるのに対して、インテグリンアルファ10選択MSC処置群では、そのような肺組織損傷が顕著に少なく肺構造がかなり良好に保持されていることが分かった(図4)。この結果は、血行動態および酸素供給能に関する上記の臨床的結果とよく整合しており、ARDSモデルにおけるインテグリンアルファ10選択MSCの治療効果を明確に示すものである。
結論
インテグリンアルファ10選択CS処置ブタをプラセボ処置ブタと比較することによって、動物モデルにおけるインテグリンアルファ10選択MSCの安全性および効力が確立された。臨床的に意義のあるブタARDSモデルにおいて、インテグリンアルファ10選択MSCがARDSを治療する効果を有していることが明らかになった。静脈内に投与したインテグリンアルファ10選択MSCは、血行動態、肺の酸素供給を改善し、血液凝固形成を軽減し、また肺組織構造の完全性を保存することが可能であった。
実施例3:ブタARDSモデルにおける、インテグリンアルファ10選択MSCの抗炎症性効果および免疫調節効果の実証
目的
ブタARDSモデルにおけるインテグリンアルファ10選択MSCの治療効果について、その作用機序を調べること。例えば、抗炎症性効果および/または免疫調節効果を調べた。
材料と方法
血漿中の好中球の数、および複数種類の炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの濃度を分析する目的で、ARDS試験の複数時点において、インテグリンアルファ10選択MSC処置ブタおよび対照ブタから血液試料を採取した。9種類のサイトカインを測定する多重免疫アッセイキットを用いて、複数時点で血漿中および気管支肺胞洗浄(BAL)におけるサイトカインレベルの分析を行った。複数の時点で末梢血単核細胞(PBMC)に認められる免疫表現型を分析することは、サイトカインプロファイルを反映するので、試験経過中の「臨床」転帰に相関する可能性がある。病態生理学およびその区画浸潤細胞についての見通しを得るために、肺生検試料を用いることも可能であった。試験の開始時および最終時に、気管支肺胞洗浄液(BALF)試料の採取も行った。Sysmexで好中球およびリンパ球の数を分析し、複数種類のサイトカインの濃度を、サイトカイン特異抗体を用いたLuminex多重アッセイで測定した。
結果
好中球およびリンパ球の数の分析
ARDS試験中の複数時点で、血液試料中の好中球およびリンパ球の数を分析した。対照動物と比較して、MSC処置動物では好中球数が少ないことが分かったが、このことは、インテグリンアルファ10選択MSCの免疫調節性効果および抗炎症性効果を示唆するものである。インテグリンアルファ10選択MSCで処置した動物と非処置動物との間の差は、1時間後であってもすでに認められ、その後、時間経過と共にその差は増大した(図5A)。リンパ球数の分析では、インテグリンアルファ10選択MSC処置動物において、処置8時間後にリンパ球の増加が見られたが、非処置動物ではそのような増加は観察されなかった(図5B)。この知見は、リンパ球数が多いことが高生存率に相関することを示すARDS患者の後ろ向き分析(Song、2020)によっても支持される。
血液試料およびBALF試料の炎症性サイトカイン分析
対照動物と比較して、インテグリンアルファ10選択MSC処置動物では、血漿において、インターロイキン12(IL-12)、IL-1βおよびIL-6を含む複数の炎症性サイトカインが低濃度であることが検出された。その差は、インテグリンアルファ10選択MSCの点滴から1時間後にすでに認められ、このことは、インテグリンアルファ10選択MSCの即時免疫調節効果を示唆するものである。対照動物と比較して、インテグリンアルファ10選択MSC-処置動物では、MSC点滴後1時間であっても、すでに血漿において炎症性サイトカイン・インターロイキン(IL)-12がより低レベルであることが検出され、このことは、少なくとも6時間持続するMSCの効果が即時に現れる効果であることを示唆する(図6B)。これは、血液中に存在する活性化抗原提示細胞が少ないことの指標となり得るので(Dorman、2000)、さらにMSCの免疫調節効果を支持するものである。
さらに、非処置動物に比較して、インテグリンアルファ10選択MSC処置動物では、1時間後にインターフェロンα(IFN-α)のレベルが上昇し、インテグリンアルファ10選択MSCの点滴から数時間後まで持続した(図6A)。興味深いことには、IFN-αレベルの上昇がARDS患者において疾患のより良好な予後に関連することが示されている(Wang、2020)。
試験の終了時に、BALF中のサイトカインのレベルを分析した。この結果から、BALFの炎症性サイトカインIL-1β(IL-1b)およびIL-6は、処置動物と比べて、非処置動物では有意に増加することが示された(図6C、D)。これは、炎症状態に偏極するマクロファージの存在が少なく、全体的に肺の炎症が軽減されていることを示唆し得るものである(McGonagle、2020)。
処置動物および非処置動物における炎症性マーカーおよび免疫応答プロファイルを調べることによって、インテグリンアルファ10選択MSCの抗炎症性機構または免疫調節効果について重要な理解が得られた。実施例2および3に記載されるこの試験の結果は、より大型のブタ(例えば、60~70kgのブタ)でも確認することができ、またARDSおよび関連障害について確立された他のモデルでも確認することができることは、理解されるであろう。
結論
重症ARDSのブタモデルにおいて、インテグリンアルファ10選択MSCの点滴は、血液中の好中球数の減少をもたらし、血漿およびBALFにおける炎症性サイトカインのレベルを低下させることを明らかにした。このことは、血行動態改善および肺の完全性保持、ならびにインテグリンアルファ10選択MSC処置動物に認められる機能に関与する作用機序を反映し得るARDSモデルにおいて、インテグリンアルファ10選択MSCが抗炎症性効果および免疫調節効果を有することを示唆する。インテグリンアルファ10選択MSC処置動物において、血漿中の循環サイトカインが低いレベルであることは、ARDSの特徴であるサイトカインストーム(Hojyo、2000)を発症するリスクが低いことを示唆し、またARDS進行の重症度がより低いことを示している。
参考文献
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項目
項目1:濃縮されたインテグリンα10間葉系幹細胞(MSC)集団を含む組成物であって、哺乳動物の呼吸器系の1種類以上の疾患または外傷の治療および/または哺乳動物の気道の1種類以上の臓器または組織の移植に関連して用いられる組成物。
項目2:項目1の組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が主に肺間質に悪影響を与える呼吸器系疾患である、組成物。
項目3:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が急性呼吸促迫症候群(ARDS)および関連障害である、組成物。
項目4:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患がARDSである、組成物。
項目5:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患がサイトカイン放出症候群(CRS)である、組成物。
項目6:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患がサイトカインストーム症候群(CSS)である、組成物。
項目7:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患がサイトカイン仲介性ARDSである、組成物。
項目8:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が新生児のARDS/呼吸窮迫症候群である、組成物。
項目9:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が外傷によるARDSである、組成物。
項目10:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患がウイルス感染または細菌感染に起因するARDSである、組成物。
項目11:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)/COVID-19に起因するARDSである、組成物。
項目12:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患がその他の原因によるARDSである、組成物。
項目13:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここでMSC集団の細胞の少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現する、組成物。
項目14:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで濃縮間葉系幹細胞(MSC)集団に含まれる全細胞のうちの少なくとも50%、少なくとも55%など、少なくとも60%など、少なくとも65%など、少なくとも70%など、少なくとも75%など、少なくとも80%など、少なくとも85%など、少なくとも90%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、少なくとも100%などが、インテグリンα10サブユニットを発現する、組成物。
項目15:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCがMHCII陰性および/またはCD45陰性である、組成物。
項目16:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCがCD44、CD90およびCD105を発現する、組成物。
項目17:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが、間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞から成る群から選択される;あるいはその混合物である、組成物。
項目18:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該細胞がインテグリンα10サブユニットを発現するように誘導される、組成物。
項目19:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該細胞が哺乳動物の血清およびFGF-2を含む培地で培養される、組成物。
項目20:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該細胞が血小板溶解物および/または血小板溶解物の成分を含む培地で培養される、組成物。
項目21:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該細胞がFGF-2および血小板溶解物および/または血小板溶解物の成分を含む培地で培養される、組成物。
項目22:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該細胞が哺乳動物の血清および血小板溶解物および/または血小板溶解物の成分を含む培地で培養される、組成物。
項目23:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該細胞がTGFβを含む培地で培養される、組成物。
項目24:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該細胞が血小板溶解物および/または血小板溶解物の成分を含む血清不含培地で培養される、組成物。
項目25:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該細胞が増殖因子を含む血清不含培地で培養される、組成物。
項目26:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該細胞が成長因子FGF2および/またはTGFβを含む血清不含培地で培養される、組成物。
項目27:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここでMSCが同種異系細胞または自家細胞である、組成物。
項目28:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが肺または気道に投与される、組成物。
項目29:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCの集団が注射によって投与される、組成物。
項目30:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCの集団が薬学的に許容可能な賦形剤とともに細胞懸濁液の形態で投与される、組成物。
項目31:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCの集団が投与前に細胞凝集体として処方される、組成物。
項目32:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCの集団が損傷肺を修復する目的で外科手術中に投与される、組成物。
項目33:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCの集団が肺移植に関連して投与される、組成物。
項目34:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該哺乳動物が、ヒト、ウマ、ポニー、雄ウシ、ロバ、ラバ、ラクダ科の動物、ネコ、イヌ、ブタ、または雌のウシである、組成物。
項目35:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該哺乳動物がヒトである、組成物。
項目36:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCと該哺乳動物が同一生物種に由来する、組成物。
項目37:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCと該哺乳動物が異なる生物種に由来する、組成物。
項目38:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが、脂肪組織、骨髄、滑膜、末梢血、臍帯血(cord blood)、臍帯血(umbilical cord blood)、ワルトン膠様質、および/または羊水に由来する、組成物。
項目39:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが脂肪組織に由来する、組成物。
項目40:項目76~85のいずれか1項にしたがう用途または方法であって、ここで該MSCが骨髄に由来する、用途または方法。
項目41:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該細胞が、胎児、新生児、若年者または成人のMSCおよび/または前駆細胞に由来する、組成物。
項目42:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該細胞が胚細胞にも胚にも由来しない、組成物。
項目43:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該細胞集団がインビトロ細胞培養物である、組成物。
項目44:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該濃縮が抗インテグリンα10抗体を用いて実施されたものである、組成物。
項目45:前記項目のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、抗炎症性剤をさらに含む組成物。

Claims (73)

  1. 哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害または外傷の治療、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して用いられる、インテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物。
  2. 請求項1にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が下気道疾患である、組成物。
  3. 請求項1にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が主に肺間質に悪影響を与える呼吸器系疾患である、組成物。
  4. 請求項1にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が気道に悪影響を与える呼吸器系疾患である、組成物。
  5. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、肺浮腫、肺好酸球増多症、特発性間質性肺炎、幼年期または小児期に特異的な原発性間質性肺疾患、全身性疾患に関連する間質性肺疾患、肺胞微石症、リンパ脈管筋腫症、およびリポイド肺炎から成る群から選択される主に肺間質に悪影響を与える疾病である、組成物。
  6. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が急性呼吸促迫症候群(ARDS)および/または関連障害である、組成物。
  7. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患がARDSである、組成物。
  8. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患がサイトカイン放出症候群(CRS)である、組成物。
  9. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患がサイトカインストーム症候群(CSS)である、組成物。
  10. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該ARDS関連疾患がCOVID-19に関連する多系統炎症性症候群である、組成物。
  11. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患がサイトカイン仲介性ARDSである、組成物。
  12. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が新生児のARDS/呼吸窮迫症候群である、組成物。
  13. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が新生児の呼吸窮迫症候群などの新生児の呼吸困難である、組成物。
  14. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が外傷によるARDSである、組成物。
  15. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患がウイルス感染または細菌感染に起因するARDSである、組成物。
  16. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)/COVID-19に起因する、組成物。
  17. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該呼吸器系疾患が他の原因によるARDSである、組成物。
  18. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCの少なくとも60%がインテグリンα10サブユニットを発現する、組成物。
  19. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCの少なくとも50%、少なくとも55%など、少なくとも60%など、少なくとも65%など、少なくとも70%など、少なくとも75%など、少なくとも80%など、少なくとも85%など、少なくとも90%など、少なくとも95%など、少なくとも96%など、少なくとも97%など、少なくとも98%など、少なくとも99%など、少なくとも100%などが、インテグリンα10サブユニットを発現する、組成物。
  20. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCがMHCクラスII、CD45、CD34、CD11bおよび/またはCD19について陰性である、組成物。
  21. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCがCD73、CD90および/またはCD105を発現する、組成物。
  22. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが、間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、および間葉系間質細胞から成る群から選択されるか;あるいはその混合物である、組成物。
  23. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCにおいて、インテグリンα10サブユニットの発現が誘導される、組成物。
  24. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが、哺乳動物の血清およびFGF-2を含む培地で培養される、組成物。
  25. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが、血小板溶解物および/または血小板溶解物の成分を含む培地で培養される、組成物。
  26. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが、FGF-2および血小板溶解物および/または血小板溶解物の成分を含む培地で培養される、組成物。
  27. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが、哺乳動物の血清および血小板溶解物および/または血小板溶解物の成分を含む培地で培養される、組成物。
  28. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCがTGFβを含む培地で培養される、組成物。
  29. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCがFGF2を含む培地で培養される、組成物。
  30. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが、血小板溶解物および/または血小板溶解物の成分を含む血清不含培地で培養される、組成物。
  31. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが、増殖因子を含む血清不含培地で培養される、組成物。
  32. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが、成長因子FGF2および/またはTGFβを含む血清不含培地で培養される、組成物。
  33. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが同種異系細胞または自家細胞である、組成物。
  34. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCを含む該組成物が肺または気道に投与される、組成物。
  35. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCを含む該組成物が注射によって投与される、組成物。
  36. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCを含む該組成物が非経口的に投与される、組成物。
  37. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCを含む該組成物が静脈内注射、筋肉内注射および/または気管内注入、またはそれらの任意の組み合わせによって投与される、組成物。
  38. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCを含む該組成物が薬学的に許容可能な賦形剤を含む細胞懸濁液に含まれる形態で投与される、組成物。
  39. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCを含む該組成物が、損傷肺の修復を目的として外科手術中に投与される、組成物。
  40. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCを含む該組成物が肺移植に関連して投与される、組成物。
  41. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該哺乳動物がヒトである、組成物。
  42. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCおよび哺乳動物が同一生物種に由来する、組成物。
  43. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCおよび哺乳動物が異なる生物種に由来する、組成物。
  44. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが脂肪組織、骨髄、滑膜、末梢血、臍帯血(cord blood)、臍帯血(umbilical cord blood)、ワルトン膠様質、および/または羊水に由来する、組成物。
  45. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが脂肪組織に由来する、組成物。
  46. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが骨髄に由来する、組成物。
  47. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが胎児、新生児、若年者または成人のMSCおよび/または前駆細胞に由来する、組成物。
  48. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCが胚細胞にも胚にも由来しない、組成物。
  49. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここで該MSCがインビトロ細胞培養物である、組成物。
  50. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、ここでMSCの選択が抗インテグリンα10抗体を用いて実施されたものである、組成物。
  51. 前記請求項のいずれか1項にしたがって用いられる組成物であって、抗炎症性剤および/または免疫調節剤をさらに含む、組成物。
  52. インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物の用途であって、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害または外傷の治療、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連する、治療薬剤の製造のための用途。
  53. 哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害または外傷を治療する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法。
  54. 哺乳動物の気道の臓器または組織を移植治療または移植促進する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法。
  55. 哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、哺乳動物の血液凝固を予防する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法。
  56. 哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、血行動態安定性を促進する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法。
  57. 哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、強心療法の必要性を低減させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法。
  58. 哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、酸素供給能を改善する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法。
  59. 哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、組織損傷を予防する、例えば、構造的組織損傷を予防する方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法。
  60. 哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、組織損傷を元に戻す、例えば、構造的組織損傷を元に戻す方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法。
  61. 請求項59~60のいずれか1項にしたがう方法であって、ここで該組織損傷が肺組織損傷である、方法。
  62. 請求項59~61のいずれか1項にしたがう方法であって、ここで該織損傷が、間質組織の損傷、肺胞中隔の損傷、気道の損傷、脈管構造の損傷、および/または神経系の損傷である、方法。
  63. 哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、好中球数を減少させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法。
  64. 哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、リンパ球数を増加させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法。
  65. 哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、炎症性サイトカインを減少させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法。
  66. 請求項65の方法であって、ここで該炎症性サイトカインが、インターロイキン12(IL-12)、IL-1β、IL-6およびIL-4、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、方法。
  67. 請求項65~66のいずれか1項に記載の方法であって、ここで該炎症性サイトカインが、血液および/または気管支肺胞洗浄液において減少する、方法。
  68. 哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、インターフェロンαを増加させる方法であって、インテグリンα10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物を治療有効量で投与することを含む方法。
  69. インテグリンアルファ10選択間葉系幹細胞(MSC)を含む組成物であって、哺乳動物の呼吸器系の疾患、障害、または外傷に関連して、および/または哺乳動物の気道の臓器または組織の移植に関連して、
    哺乳動物において:
    ・血液凝固を予防する方法;
    ・血行動態安定性を促進する方法;
    ・強心療法の必要性を低減する方法;
    ・酸素供給能を改善する方法;
    ・組織の損傷を予防する方法、例えば、組織の構造的損傷を予防する方法;
    ・組織の損傷を元に戻す方法、例えば、組織の構造的損傷を元に戻す方法;
    ・好中球数を減少させる方法;
    ・リンパ球数を増加させる方法;
    ・炎症性サイトカインを減少させる方法;
    および/または
    ・インターフェロンαを増加させる方法、
    のうちのいずれかの方法に用いる、
    組成物。
  70. 請求項69の方法であって、ここで該組織損傷が肺組織損傷である、方法。
  71. 請求項69~70のいずれか1項に記載の方法であって、ここで該組織損傷が、間質組織の損傷、肺胞中隔の損傷、気道の損傷、脈管構造の損傷、筋肉の損傷、および/または神経系の損傷である、方法。
  72. 請求項69の方法であって、ここで該炎症性サイトカインが、インターロイキン12(IL-12)、IL-1β、IL-6およびIL-4、またはそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、方法。
  73. 請求項69~72のいずれか1項に記載の方法であって、ここで該炎症性サイトカインが、血液および/または気管支肺胞洗浄液において減少する、方法。
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