JP2023523453A - M受容体拮抗剤の結晶体、調製方法及びその応用 - Google Patents

M受容体拮抗剤の結晶体、調製方法及びその応用 Download PDF

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Abstract

発明の主な目的は、四級アンモニウム塩構造を有する化合物である臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩(以下、化合物Iとする)の新規結晶体を提供することである。化合物IのA型結晶体は、粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θ:5.7±0.2度、12.9±0.2度、16.7±0.2度、18.0±0.2度、19.5±0.2度、21.1±0.2度、22.3±0.2度、及び23.3±0.2度で回折ピークを示す。化合物IのB型結晶体は、粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θ:5.2±0.2度、15.8±0.2度、16.9±0.2度、17.7±0.2度、19.5±0.2度、20.2±0.2度および22.1±0.2度で回折ピークを示す。本発明はまた、化合物Iの新規調製方法および、医薬分野における上記二種類の新規結晶体の応用に関する。

Description

本発明は、医薬技術分野に属し、具体的には、四級アンモニウム塩構造を有する化合物である臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩(以下、化合物Iとする)の新規結晶体およびその調製方法に関するものである。本発明はまた、化合物Iの新規結晶体の医薬分野における応用に関する。
喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD、慢性閉塞性肺疾患とする)は、最もよく見られる流行病である。気管支拡張剤は、喘息及びCOPDの治療のための第一選択薬である。常用される気管支拡張剤は、臭化イプラトロピウム、臭化チオトロピウムなどのM受容体拮抗剤を含む。
WO2015007073では、長時間有効であり、かつM受容体サブタイプに対して選択的拮抗作用を有するといった化合物が公開された。喘息、COPD、アレルギー性鼻炎、風邪による鼻炎、胃及び十二指腸潰瘍の治療時に、従来技術に比べて、M受容体サブタイプに対して選択的な作用を有し、毒性も副作用も低く、かつ効き目が早く、薬効が長いという特徴を有する。臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩(化合物I)は、そのうちの好ましい化合物であり、その構造式は以下の通りである。
Figure 2023523453000002
具体的には、化合物Iは、鼻炎、風邪による鼻炎、慢性気管炎、気道過敏、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、咳嗽、尿失禁、頻尿、過活動膀胱症候群、膀胱痙攣、膀胱炎、及び過敏性大腸症候群、痙攣性結腸炎、十二指腸潰瘍、胃潰瘍等の胃腸疾患の治療のために使用することが可能である。特に従来技術に比べて、薬効が長く、効き目が早く、毒性も副作用も低いという特徴を有する。
また、化合物Iは、β受容体アゴニスト、ステロイドホルモン、抗アレルギー剤、抗炎症剤、抗感染剤、ホスホリパーゼ4阻害剤等と組み合わせて、アレルギー性鼻炎、風邪による鼻炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患の治療に用いてもよい。
上記したように、化合物Iは、多くの疾患に対する治療薬として使用可能であることが知られているが、その結晶体が存在するかどうか等についての情報は記載も示唆もされていない。
本願の発明者らは研究を経て、化合物Iの合成工程について、WO2015007073において、水素化ナトリウム(NaH)の存在下で、シクロペンチルベンゾフェノンを硫酸ジメチルと反応させて1-フェニル-1-シクロペンチルオキシラン(中間体)を調製し、NaHの存在下で、中間体を(R)-3-キニクリジノール(quinuclidinol)と反応させてジアステレオマーとしての(2S,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-アザビシクロ[2,2,2]オクタン遊離塩基と(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-アザビシクロ[2,2,2]オクタン遊離塩基とを生成し、カラムクロマトグラフィーにより(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-アザビシクロ[2,2,2]オクタン遊離塩基を取得し、さらに3-ブロモプロポキシベンゼンと反応させ、溶媒を真空下で除去して黄色油状物を得、ジエチルエーテルを添加して沈殿させて白色様固体(化合物I)を得ていることを発見した。上記工程は、合成ルートが短いが、(1)中間体である1-フェニル-1-シクロペンチルオキシランを調製する際に硫酸ジメチル、ジメチルスルフィドなどの猛毒ないしは遺伝子毒性試薬を使用する必要があり、且つこの反応でNaHを大量に使用すると爆発を起こしやすい、(2)(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-アザビシクロ[2,2,2]オクタン遊離塩基を調製する際にカラムクロマトグラフィー分離を行う必要があり、(R)-3-キニクリジノールというような高価な原料の利用率が50%に過ぎず、生産コストが増加し、且つ生産規模が制限される、(3)最終段階でジエチルエーテルを使用して固体原料薬を得るが、ジエチルエーテルは危険性高い溶媒であるため、現代工業生産には適さない、という多くの短所がある。
本願の発明者らは、多くの創造的な研究を経て、化合物Iの結晶形の問題の解決に成功するとともに、化合物Iの新規調製工程を研究し確定した。
本発明の目的の一つは、化合物Iの新規調製方法を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、化合物Iの新規結晶体、新規結晶体の調製方法および該結晶体を有効成分として含有する医薬組成物、具体的には下項(1)~(4)を提供することである。
(1)化合物Iの新規調製方法。
(2)結晶体の粉末X線回折パターンにおいて、少なくとも回折角2θ:5.7±0.2度、12.9±0.2度、16.7±0.2度、18.0±0.2度、19.5±0.2度、21.1±0.2度、22.3±0.2度、23.3±0.2度で回折ピークを示し、前記粉末X線回折パターンはCuKα線で得られたスペクトルである、化合物IのA型結晶体(以下、本発明A型結晶体または結晶体Aとする)。
(3)化合物Iと1.5分子のHOの水和物であって、粉末X線回折パターンにおいて、少なくとも回折角2θ:5.2±0.2度、15.8±0.2度、16.9±0.2度、17.7±0.2度、19.5±0.2度、20.2±0.2度および22.1±0.2度で回折ピークを示し、前記粉末X線回折パターンはCuKα線で得られたスペクトルである、化合物IのB型結晶体(以下、本発明B型結晶体または結晶体Bとする)。
Figure 2023523453000003
(4)(2)~(3)のいずれかに記載の結晶体を有効成分として含有する医薬組成物(以下、本発明の医薬組成物とする)。
本発明の実施例および特許請求の範囲における回折ピークの回折角2θを特定した時に得られた値は、その値の±0.2度の範囲内、好ましくはその値の±0.1度の範囲内にあると理解されるべきである。
医薬品原料薬には、治療効果を有する高純度で性質の安定した製品であり、工業生産プロセスにおいて環境に優しく、安全で安価であることが望まれるという特徴がある。そこで、本願の発明者らは鋭意研究を繰り返して、化合物Iの新規合成方法及び化合物Iの2種類の新規結晶体を発見し、それぞれ結晶体A及び結晶体Bと命名した。試験を経て、(1)化合物Iに比べて、結晶体A及び結晶体Bの残存溶媒が大幅に減少し、ひいては完全に除去できること、(2)結晶体A及び結晶体Bの結晶化工程により、化合物Iの不純物の大部分を除去できること、(3)結晶体Aは、様々な湿度条件下で強い吸湿性を有し、結晶体Bは、高湿条件下でも吸湿性が弱く、結晶体Aより安定し、工業的な操作や保存に有利であることを偶然発見した。
発明を実現するための最良の方法
1.化合物Iの調製:
ステップ1:シクロペンチルマンデル酸又はシクロペンチルマンデル酸エステルを出発物質として、水素化ホウ素ナトリウムにより還元し、ラセミ体の2-ヒドロキシ-2-シクロペンチル-2-フェニルエタノール(Z02)を得、反応溶媒は、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノールなど、好ましくはエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどから選択され、水素化ホウ素ナトリウムと出発物質のモル比は2~5:1であり、好ましくは2~3.5:1であり、シクロペンチルマンデル酸(エステル)還元時には、ルイス酸を添加して触媒作用を行う必要があり、ルイス酸は三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、四塩化スズと四塩化チタンなどから選択され、ルイス酸とシクロペンチルマンデル酸のモル比は2~5:1であり、好ましくは2.5~3:1である。
ステップ2:Z02をキラルのアシルクロリドとエステル化反応させた後、結晶化によりキラルのカルボン酸2-ヒドロキシ-2-シクロペンチル-2-フェニルエタノールエステル(Z03)を得る。キラルのアシルクロリドは、L-カンファースルホニルクロリド、D-カンファースルホニルクロリド、マンデル酸誘導体アシルクロリドなどを含むが、これらに限定されず、Z02とキラルのアシルクロリドのモル比は、1:1~3であり、好ましくは1:1.5~2であり、反応溶媒は、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、好ましくはジクロロメタン、テトラヒドロフランから選択され、塩基はトリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリンなどの有機塩基から選択され、塩基とキラルのアシルクロリドのモル比は1~4:1であり、好ましくは1~2:1である。
ステップ3:Z03を塩基で処理すればR-1-フェニル-1-シクロペンチルオキシラン(Z04)が得られる。塩基はNaH、カリウム-tert-ブトキシド、リチウムブチル、ナトリウムアミドなどを含むが、これらに限定されず、好ましくはNaH、カリウム-tert-ブトキシドである。塩基とZ03のモル比は1~3:1であり、好ましくは1~1.5:1である。反応溶媒は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシドなど、好ましくはジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランから選択される。
ステップ4:Z04をR-(-)3-キニクリジノールと反応させて(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-アザビシクロ[2,2,2]オクタン遊離塩基(Z05)を得る。塩基はNaH、カリウム-tert-ブトキシド、リチウムブチル、ナトリウムアミドなどを含むが、これらに限定されず、好ましくはNaH、カリウム-tert-ブトキシドである。R-(-)3-キニクリジノールと塩基とのモル比は1~3:1であり、好ましくは1~1.5:1である。反応溶媒はジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシドなど、好ましくはジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランから選択される。
ステップ5:Z05を3-フェノキシ-1-ブロモプロパン(Z06)と四級アンモニウム化反応させた後、臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩(化合物I)を得る。
Figure 2023523453000004
上記化合物Iの調製過程において、原料として使用する各化合物は、市販または公開の方法により調製され得る。
2.本発明A型結晶体、B型結晶体(以下、本発明結晶体と総称する)の調製
(1)本発明A型結晶体の調製:
ステップ1:溶解工程
当該工程は、加熱により化合物Iを溶媒に溶解させる工程である。当該工程で使用可能な溶媒として、良溶媒には、例えば、アルコール類溶媒、アセトニトリル、ジクロロメタン、トリクロロメタンがある。当該工程で使用可能なアルコール類溶媒は、C1~C5の小分子アルコール類であり、比較的好ましくは例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール又は3-メチル-1-ブタノールであり、好ましくはエタノールである。
当該工程において化合物Iを溶解可能な良溶媒として、その使用量は、化合物Iに対して、好ましくは1倍(mL/g)~10倍(mL/g)の範囲内で、好ましくは1倍(mL/g)~5倍(mL/g)の範囲内で、更に好ましくは2倍(mL/g)~3倍(mL/g)の範囲内である。溶解温度は、溶媒の種類およびその用量によって異なるが、通常、溶媒の沸点以下で撹拌されるか又は溶媒の沸点で還流させ、好ましくは20℃~100℃の範囲内で、より好ましくは60℃~90℃の範囲内である。
当該工程において必要に応じて化合物Iの溶液に対し活性炭吸着、ろ過等を行って不溶物を除去することができる。ろ過過程における結晶体の析出を防止するために、加圧下で加熱装置付きのロートで加熱を行うことが好ましい。ろ過した後の溶液は一定の温度に維持し、好ましくは20℃~100℃の範囲内で、より好ましくは60℃~90℃の範囲内である。
ステップ2:貧溶媒添加の晶析工程
溶解度測定試験を経て、化合物Iの飽和炭化水素系貧溶媒、例えば、直鎖状又は分岐状のC6~C8のアルカン、C5~C8のシクロアルカンは、具体的には、シクロペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンであるが、これらに限定されない。化合物Iのケトン系貧溶媒、例えば、直鎖又は分岐鎖のC3~C8のケトン類は、具体的には、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトンであるが、これらに限定されない。化合物Iのエステル貧溶媒は、具体的には、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどであるが、これらに限定されない。化合物Iのエーテル系貧溶媒は、具体的には、イソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフランであるが、これらに限定されない。化合物Iの他の貧溶媒は、具体的にはトルエンであるが、これに限定されない。本工程に使用可能な貧溶媒としては、望ましくはギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトン、ブタノン等であり、好ましくは酢酸エチルである。
撹拌条件下では、選択された上記貧溶媒をステップ1でろ過した溶液に徐々に加え、貧溶媒は化合物I溶液に対して好ましくは1倍(mL/mL)~20倍(mL/mL)の範囲内で、より好ましくは5倍(mL/mL)~15倍(mL/mL)の範囲内で、さらに好ましくは8倍(mL/mL)~10倍(mL/mL)の範囲内である。
A型結晶体の調製過程において、すべてのステップは水分との接触を完全に防ぐ必要がある。使用される溶媒は、水を含まない溶媒を使用しなくてならず、容器を乾燥させなくてはならない。
ステップ3:冷却晶析工程
当該工程は、上記ステップ2で調製された溶液を冷却し、本発明A型結晶体を析出させる工程である。当該工程は、加温機能と撹拌機能を有する晶析装置を用いることが好ましい。
冷却温度(析出の結晶体収集時での温度)は望ましくは-10℃~50℃の範囲内で、好ましくは-5℃~20℃の範囲内で、より好ましくは0℃~10℃の範囲内である。当該工程において、好ましくは0.5時間~10時間にわたってこの冷却温度まで徐冷する。上記ステップ1で調製した溶液を加熱撹拌下で溶媒の一部を留去してもよく、これにより結晶体Aの析出を促進させることができる。
また、この工程において本発明A型結晶体の種晶を添加しても良い。本発明A型結晶体の種晶を添加する場合は、好ましくは溶液が40℃~80℃の範囲内に冷却された時に添加する。本発明A型結晶体の種晶の添加量は特に制限がないが、化合物Iに対して好ましくは1%(g/g)~5%(g/g)の範囲内である。
ステップ4:結晶体収集、乾燥工程
当該工程は、上記ステップ3で得た析出結晶体をろ過、遠心分離等の方法で収集し、これを乾燥させる工程である。
乾燥工程は、減圧乾燥、乾燥剤による乾燥等の常規方法により行うことができ、好ましくは減圧で行い、より好ましくは20℃~70℃、10mmHg以下の条件下で1~48時間行い、A型結晶体を得る。
(2)本発明B型結晶体の調製:
方法1:溶解工程において良溶媒に一定の精製水を加える
ステップ1:溶解工程
当該工程は、加熱により化合物Iを溶媒に溶解させる工程である。当該工程で使用可能な良溶媒として、具体的にはC1~C5の小分子アルコール類またはアセトニトリルであるが、これに限定されず、望ましくは例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールであり、好ましくはエタノールである。これら溶媒は、一定量の水と混合して化合物Iの溶媒とし、水と上記溶媒との割合は、望ましくは2%(mL/mL)~10%(mL/mL)で、最も好ましくは4%(mL/mL)~6%(mL/mL)である。
当該工程において化合物Iを溶解可能な良溶媒として、その使用量は、化合物Iに対して、好ましくは1倍(mL/g)~10倍(mL/g)の範囲内で、より好ましくは2倍(mL/g)~5倍(mL/g)の範囲内である。溶解温度は、溶媒の種類およびその用量によって異なるが、通常、溶媒の沸点以下で撹拌されるか又は溶媒の沸点で還流させ、好ましくは20℃~100℃の範囲内で、より好ましくは60℃~90℃の範囲内である。
当該工程において必要に応じて化合物Iの溶液に対し活性炭吸着、ろ過等を行って、不溶物を除去しても良い。ろ過過程における結晶体の析出を防止するために、加圧下で加熱装置付きのロートで加熱を行うことが好ましい。ろ過した後の溶液は一定の温度に維持し、好ましくは20℃~100℃の範囲内で、より好ましくは60℃~90℃の範囲内である。
ステップ2:貧溶媒添加の晶析工程
本工程に使用可能な望ましい貧溶媒は、エステル、水、エーテル、ケトン、液体シクロアルカンまたは芳香族炭化水素を含み、好ましくはギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、水、イソプロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、最も好ましくは酢酸エチルである。
貧溶媒として水を用いる際、ステップ1の良溶媒に水を加えなくてもよく、良溶媒は、ステップ1のアルコールとアセトニトリル以外に、水と共溶しないジクロロメタンまたはトリクロロメタンなどの溶媒を選択してもよい。
撹拌条件下で、選択された上記貧溶媒を、ステップ1でろ過した溶液に徐々に加え、貧溶媒は化合物I溶液に対して好ましくは3倍(mL/mL)~20倍(mL/mL)の範囲内で、より好ましくは5倍(mL/mL)~15倍(mL/mL)の範囲内で、さらに好ましくは8倍(mL/mL)~10倍(mL/mL)の範囲内である。
ステップ3:冷却晶析工程
当該工程は、上記ステップ2で調製された溶液を冷却し、本発明B型結晶体を析出させる工程である。当該工程は、加温機能と撹拌機能を有する晶析装置を用いることが好ましい。
冷却温度(析出の結晶体収集時での温度)は望ましくは-10℃~50℃の範囲内で、好ましくは-5℃~20℃の範囲内で、より好ましくは0℃~10℃の範囲内である。当該工程において、望ましくは0.5時間~10時間にわたってこの冷却温度まで徐冷する。
また、この工程において本発明B型結晶体の種晶を添加しても良い。本発明B型結晶体の種晶を添加する場合は、好ましくは溶液が40℃~80℃の範囲内に冷却された時に添加する。本発明B型結晶体の種晶の添加量は特に制限がないが、化合物Iに対して好ましくは1%(g/g)~5%(g/g)の範囲内である。
ステップ4:結晶体収集、乾燥工程
当該工程は、上記ステップ3で得た析出結晶体をろ過、遠心分離等の方法で収集し、これを乾燥させる工程である。
乾燥工程は、減圧乾燥、乾燥剤による乾燥等の常規方法により行うことができ、好ましくは減圧で行い、より好ましくは20℃~70℃、送風良好な条件下で1~48時間乾燥させ、B型結晶体を得る。
方法2:本発明B型結晶体は、A型結晶体を結晶変態(crystal transformation)する方法でも得られる
本発明A型結晶体を反応容器に加え、精製水を加え、水とA型結晶体の重量比は3倍~30倍(g/g)で、好ましくは5倍~20倍(g/g)で、最も好ましくは8倍~12倍(g/g)である。撹拌パルプ化し、温度制御は、好ましくは10℃~50℃,最も好ましくは20℃~30℃である。パルプ化時間は、好ましくは0.3時間~10時間、最も好ましくは0.5時間~5時間であり、吸引ろ過し、固体を40℃~80℃で恒量になるまで送風乾燥させて、B型結晶体を得る。乾燥時間は2~24時間である。
3.医薬用途、本発明の医薬組成物
化合物Iの結晶体Aまたは結晶体Bを含有する医薬組成物はいずれも本発明の特許請求の範囲内であり、本発明の化合物Iは優れたM受容体拮抗作用を有し、M受容体サブタイプに対して選択的に機能し、M3受容体に強く機能し、M2受容体に弱く機能することから、腺分泌抑制作用、気管拡張作用、気管支拡張作用等を示し、このため、本発明の結晶体及びその医薬組成物はアレルギー性鼻炎、風邪による鼻炎、喘息、COPD、胃及び十二指腸潰瘍等の各種疾患の治療に使用可能である(特許文献:WO2015007073を参照)。従って、本発明のもう一つの目的は、許容できる薬学担体を含み、化合物Iの結晶体A、結晶体B(化合物Iの水和物)を含有する薬物組成物を提供することである。上記結晶体A、結晶体Bを含有する医薬組成物は他の治療成分を選択的に含んでも良く、例えば、ステロイド系抗炎剤、ホスホジエステラーゼ4阻害剤(PDE-4)、β2受容体アゴニスト、ヒスタミン受容体拮抗剤などを含むが、これらに限定されない。
本発明結晶体を薬品として投与する場合は、本発明結晶体をそのまま与えるか、あるいは医薬学で許容される無毒の不活性担体中に、例えば0.001~99.9%の範囲で含有させて投与する。
上記組成物の担体としては、固体、半固体又は液状の希釈剤、充填剤やその他の処方用の補助剤であってもよい。これら担体は1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の医薬組成物は、固体、半固体または液体剤形を採用してよく、例えば、粉末エアロゾル(DPI)、吸入溶液、定量的吸入スプレー(または軟スプレー:SMIという)、定量的吸入エアロゾル(MDI)で喘息やCOPDを治療し、点鼻剤や鼻スプレーで、風邪による鼻炎、季節性アレルギー性鼻炎および通年性アレルギー性鼻炎を治療し、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、懸濁剤、溶液剤、シロップ、エリキシルなどの経口製剤で胃及び十二指潰瘍を治療し、手術中の抗筋弛緩薬または過気管分泌などのために注射剤を使用する。そのうち、特に重要なものは、喘息、COPD、風邪による鼻炎、アレルギー性鼻炎、胃及び十二指潰瘍などの疾患治療用の製剤である。
本発明の結晶体は、固形製剤調製時に、粉砕装置により適当な粒径にすることができる。
散剤は、本発明の結晶体を、適当な粉砕程度に粉砕し、同様に粉砕した、例えば澱粉、マンニトールというような可食性炭水化物等の医薬用担体と混合して顆粒化する。甘味剤、防腐剤、分散剤、着色剤、香料等を任意で添加しても良い。
錠剤は、粉末化した本発明の結晶体に賦形剤を添加して粉末混合物とし、粒状化または粉砕し、また、大きな断片に圧縮してから粉砕してもよく、さらに、崩壊剤または滑沢剤を添加して打錠する方法により調製することができる。
粉末混合物は、本発明の結晶体を適切に粉砕し、希釈剤またはマトリックスと混合することによって調製され得る。必要に応じて、結合剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール)、溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、吸着剤(例えば、ベントナイト、カオリン)等を添加しても良い。
粉体混合物は、まず、例えばシロップ、デンプンペースト、アラビアゴム、セルロース溶液又は高分子物質溶液等の結合剤で湿潤し、撹拌混合し、これを乾燥、粉砕して顆粒とする方法で調製可能である。このように調製した顆粒に、潤滑剤としてステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、鉱油等を添加することにより、相互付着を防止することができる。
また、錠剤は、上記の顆粒化や粉砕工程を経ることなく、本発明の結晶体を流動性のよい不活性担体と混合した後、直接打錠することにより調製しても良い。
調製された錠剤に対し、フィルムコーティングまたはシュガーコーティングを施してよい。
カプセル剤は、結晶体又は上記のように形成された粉砕後の結晶体粉末を、散剤あるいは錠剤の項で述べたように顆粒化した材料を、ゼラチンカプセル等のカプセルに充填して調製することができる。また、本発明の結晶体の微粉末を植物油、ポリエチレングリコール、グリセリン、界面活性剤に懸濁分散し、これをゼラチンシートで包みソフトカプセル剤として調製することもできる。
例えば、液剤、シロップ剤、トローチ剤、エリキシル剤等の他の経口製剤も、本発明結晶体を一定量含有するように製剤形態に調製することができる。
シロップ剤は、本発明の結晶体を適当な香味水溶液に溶解することにより調製することができる。エリキシル剤は、非毒性のアルコール性担体を用いて調製することができる。
懸濁剤は、本発明の結晶体を非毒性担体中に分散させることによって調製することができる。必要に応じて、溶解補助剤または乳化剤(例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトールエステル類)、防腐剤、調味剤(例えばミント油、サッカリン)などを加えてもよい。
また、必要に応じて、経口投与用の用量単位の処方をマイクロカプセル化してもよい。
本発明の医薬組成物は、直腸投与用の坐剤の形態であってもよい。これら坐剤は、室温では固体であるが、直腸温度では液体となって直腸内に薬物を放出する好適な非刺激性賦形剤と薬物を混合させることによって調製され得る。かかる材料は、ココアバター、蜜蝋、ポリエチレングリコール、硬化脂肪、及び/又は水素化ココグリセリドを含む。
非経口製剤としては、皮下、筋肉内または静脈内注射用の液剤、例えば溶液剤または懸濁剤の形態を採用ことができる。この非経口製剤は、所定量の本発明結晶体を、注射に適した非毒性の液体担体、例えば水性又は油性の媒体に懸濁又は溶解し、次いで、その懸濁液又は溶液を滅菌することにより調製することができる。また、安定化剤、防腐剤、乳化剤等を添加してもよい。注射液は好ましくはpH4.5~7.5で調製される。
また、本発明化合物Iの結晶体は、全身投与ではなく、局所投与により投与することができる。本発明結晶体の組成物は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与するための医薬品として調製することができる。本発明の化合物の結晶体と好適な賦形剤とからなる組成物を繰り返して投与するか、または組成物を連続的に投与することができる。投与する好適な部位としては、鼻腔、肺、気管支を含むが、これらに限定されない。
本発明の医薬用結晶体の組成物は、点鼻薬、鼻スプレー、吸入溶液、DPI、溶液型定量吸入エアロゾル、懸濁型定量吸入エアロゾル、SMIなどの形態であってよい。
本発明の結晶体を含む組成物は、噴霧吸入器によって噴霧投与される。噴霧装置は、通常、患者が気道に吸入するために活性成分を含有する医薬組成物を噴霧化する高速気流を生成することができる。したがって、活性成分は、通常、適切な溶媒に溶解されて溶液として調製されて噴霧吸入器に入れられる。あるいは、活性成分が微粉化して適切な担体と組み合わせて、吸入に適した微粉化粒子の懸濁液が形成される。微粉化は、通常、90%以上の固体粒子が直径10μm未満とするものと定義される。適切な噴霧装置は市販されている。組成物の代表的な溶媒は生理食塩水またはエタノール溶液である。
本発明の結晶体を含む組成物は、定量吸入器によって吸入方式により投与される。定量吸入装置が薬物溶液を機械的な力で霧化するものは、等張水溶液を溶媒として使用する定量的吸入スプレー(SMI)と呼ばれ、また治療薬物を噴射剤の推進力で定量的に釈放することはMDIと呼ばれる。定量吸入器で投与する組成物は、溶液または懸濁液に含まれる。上記2種類の定量吸入装置が市販されている。化合物I結晶体を含むMDIについて、そのコソルベントは、無水エタノール、グリセリン、グリコールにおける一つ又は一つ以上の混合物を含むが、これらに限定されず、そのうちグリコールはエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール800などを含むが、これらに限定されない。その噴射剤は、テトラフルオロエタン(HFA-134A)、ヘプタフルオロプロパン(HFA-227ea)における一つ又はこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。その界面活性剤は、オレイン酸、オリゴマー乳酸(OLA)、span20、span65、span80、span85といったソルビトール類、ポリソルベート20、ポリソルベート80といったポリオキシエチレン脱水ソルビトール類、Brij30、Brij35、Cremophorといったポリオキシエチレン脂肪アルコール類、Pluronic F-68といったポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、Solutol HS15といったポリエチレングリコール硬脂酸エステル類、大豆リン脂質、レシチンといったリン脂質のうちの一つ以上を含むが、これらに限定されない。
DPIは、活性成分を賦形剤と混合するかまたは賦形剤を添加せずに調製し、次いで、医薬品又は組成物を粉末ディスペンサに入れるか、又は、市販されているDPI投与装置と共に使用するための吸入カートリッジ若しくはカプセルに入れることができる。化合物Iの結晶体を含有するDPIについては、前記不活性担体は、グルカン、アラビノース、乳糖、マンニトール、マンニトール、キシリトール、スクロース、フルクトース、ソルビトール、マルトース、アミノ酸とグルコースにおける1つまたは幾つかを混合した希釈剤と、ステアリン酸マグネシウムまたはベンゾ酸ナトリウムといった潤滑剤と、を含む。
鼻スプレー及び点鼻薬は、化合物Iの結晶体を含有する組成物を、市販されている鼻スプレーと点鼻薬の装置に入れたものである。化合物Iの結晶を含有する点鼻薬または定量的鼻スプレーにおいて、不活性担体は、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、安息香酸、クロロブタノール、パラベン、ソルビン酸、フェノール、チモールおよび揮発性油から1種以上の混合物から選択される。
本発明は、上記医薬組成物の応用をも提供し、哺乳動物やヒトにおける様々な急性慢性気道閉塞性疾患、例えばCOPD、気管支喘息、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、急性慢性鼻炎及び風邪による鼻炎の予防及び治療用薬物の調製に使用してよい。
上記の代表的な剤形に加えて、当業者に一般に知られている他の薬学的に許容される賦形剤、担体、および剤形も本発明に含まれる。任意の具体的な患者の特定の用量および治療方法は、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事状態、投与時間、排泄速度、併用薬、治療医師の判断、および治療対象である具体的な疾患の重症度を含む、様々な要素に依存することが理解されるべきである。活性成分の量はまた、組成物中の他の治療薬の種類および量(ある場合)に依存する。
図1は、A型結晶体のXRPDパターンである。 図2は、B型結晶体のXRPDパターンである。 図3は、A型結晶体のTGAとDSCパターン(下の線は結晶体Aで、上の線は結晶体Bである)である。 図4は、B型結晶体のTGAパターンである。 図5は、A型結晶体とB型結晶体の比較用DSCパターン(下の実線が結晶体A,上の点線が結晶体Bである)。 図6は、A型結晶体のDVS吸着曲線である。 図7は、B型結晶体のDVS吸着曲線である。
以下に挙げた実施例及び試験例は本発明を更に詳細に説明するものであるが、本発明はこれらの実施例及び試験例に限定されるものではないことは当業者には明らかである。
[実施例1]本発明化合物I(原薬)の調製
ステップ1:2-ヒドロキシ-2-シクロペンチル-2-フェニルエタノールの調製
方法その一:シクロペンチルマンデル酸エチル124.0g(0.500mol)と無水エタノール1000mLを2Lの三口反応瓶に入れ、そして、内部温度を5℃以下になるように氷塩浴し、水素化ホウ素ナトリウム37.83g(1.00mol)を数回分けて加え、5℃を超えないように内部温度を維持し、さらに45℃程度に内部温度を昇温して2時間反応させた。反応終了後、減圧して溶媒を除去し、残留物を0.5M塩酸で中性に中和し、ジクロロメタンを三回抽出し(3×500mL)、有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤をろ過して除去し、ろ液を減圧して溶媒がなくなるまで除去し、黄色油状物(98.6g、収率95.60%)を得た。そのまま次の反応に応用した。
方法その二:シクロペンチルマンデル酸200.00g(0.908mol)とエチレングリコールジメチルエーテル3000mLを5Lの三口反応瓶に入れ、そして、内部温度を0℃以下になるように氷塩浴し、三塩化アルミニウム363.20g(2.724mol)を加え、なお、三塩化アルミニウムを加える際に、5℃を超えないように内部温度を維持し、添加を終了し、この温度で半時間撹拌反応させ、その後、水素化ホウ素ナトリウム137.40g(3.632mol)を数回分けて加え、5℃を超えないように内部温度を維持し、また内部温度を55℃程度に昇温して2時間反応させた。薄層クロマトグラフィーで検出し、反応が完了した。反応混合物を、1mol/L冷たい塩酸1600mLにゆっくり注ぎ入れ、同時に撹拌しながら、25℃を超えないように溶液の温度を制御し、添加を終了し、酢酸エチルを三回抽出し(3×1000mL)、有機相を合わせ、5%の炭酸ナトリウム水溶液で有機相を三回洗浄し(3×500mL)、有機相を分離し、さらに5%の塩化ナトリウム水溶液で三回洗浄し(3×500mL)、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤をろ過して除去し、50℃で減圧して溶媒を除去し、残留物をイソプロピルエーテル(1000mL)で溶解し、また、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(450mL)を加えて10分間機械的に撹拌洗浄し、分液ロートに入れ、有機相を分離して無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。乾燥剤をろ過して除去し、ポンプで減圧しながらロータリー蒸発器で溶媒を除去し、最後に、浅黄色油状物(145.80g。収率:77.84%)を得、そのまま次の反応に応用した。
ステップ2:(R)-2-ヒドロキシ-2-シクロペンチル-2-フェニルエタノール基L-(-)-カンファースルホニルの調製
2-ヒドロキシ-2-シクロペンチル-2-フェニルエタノール112.50g(545.38mmol)をジクロロメタン700mLで溶解した後、5Lの三口反応瓶に注ぎ入れ、反応液は清澄透明であり、室温でトリエチルアミン165.55g(1636.03mmol)を加え、そして内部温度を10℃以下になるように氷水浴し、L-(-)-カンファースルホニルクロリド164.10g(654.46mmol)を含むジクロロメタン溶液500mLを滴下し、添加を終えたら、内部温度を10℃程度に昇温して1時間反応させた。反応終了後、水1Lを加え、分液ロートに入れ、水相と有機相を分離し、有機相を水1Lで三回洗浄し(3×1000mL)、最後に、有機相を収集し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。乾燥剤をろ過して除去し、40℃で減圧しながらロータリー蒸発器で溶媒を除去し、残留物を酢酸エチル200mLで溶解し、冷凍結晶させ、固体をろ取し、乾燥させ、白色固体(70.03g、収率61.0%)を得た。
ステップ3:(R)-2-シクロペンチル-2-フェニルエチレンオキシドの調製
ジメチルスルホキシド(350mL)、2-ヒドロキシ-2-シクロペンチル-2-フェニルエタノール基L-(-)-カンファースルホニル(69.23g、164.6mmol)を1Lの三口反応瓶に注ぎ入れ、溶液が澄んだら、室温でカリウム-tert-ブトキシド(17.54g、156.31mmol)を加え、そして、オイルバスで内部温度50℃に加熱して1時間反応させた。TLC検出:(展開剤:石油エーテル:酢酸エチル=3mL:1mL)。内部温度10℃以下になるように氷水浴し、水450mLを滴下し、そして分液ロートに入れ、イソプロピルエーテルで三回抽出し(3×200mL)、有機相を合わせ、更に5%の塩化ナトリウム溶液で三回洗浄し(3×200mL)、有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、ろ過し、ろ液を水浴45℃で減圧しながらてロータリー蒸発器で溶媒を除去し、最後に、淡黄色液体(28.02g、収率:90.42%)を得た。
ステップ4:(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-アザビシクロ[2,2,2]オクタンの調製
R-(-)-3-キニクリジノール(16.46g、129.45mmol)、乾燥テトラヒドロフラン250mLを1Lの三口反応瓶に入れ、固体を溶解した後、室温でZ04(24.38g,129.45mmol、テトラヒドロフラン50mLで溶解する)を加えてオイルバスに内部温度85℃まで加熱し、そして、NaH(60%,3.45g、86.3mmol)を加え、85℃で2時間反応した。TLC検出(展開剤:石油エーテル:酢酸エチル=5L:0.1)。反応終了後、減圧して溶媒を除去し、残留物に氷水500mLを滴下し、そして、酢酸エチルで三回抽出し(3×500mL)、有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤をろ過して除去し、減圧して溶媒を除去し、淡黄褐色固体を得、固体をイソプロピルエーテルで加熱還流溶解し、冷凍結晶させ、固体をろ取し、恒量になるまで乾燥させ、最後に、目標化合物である類白色固体(36.28g、収率:88.85%)を得た。
ステップ5:(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-ブロモ-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチニウム塩
(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-アザビシクロ[2,2,2]オクタン98.46g(0.312mol)と無水エタノール490mLを5Lの反応釜に入れ、室温で撹拌溶解し、完全に溶解した後、3-フェノキシブロモプロパン82.93g(0.386mol)を含む無水エタノール溶液約100mLを加え、2時間加熱還流反応させた。反応終了後、減圧して溶媒を除去し、化合物Iの類白色固体(149.28g、収率90.2%)を得た。
[実施例2]本発明A型結晶体の調製
化合物I(実施例1に従って調製した。以下同様、原薬ともいう)43.3gと無水エタノール86.7mLを秤量し、200mLのナスフラスコに入れ、還流撹拌して溶解した。活性炭0.87gを加えて、還流撹拌して0.5時間脱色させた。熱いうちに吸引ろ過して活性炭を除去して、淡黄色透明ろ液を得、ろ液を1.0Lのナスフラスコに移し、還流条件下で、酢酸エチル1.0Lを加え、25±5℃までに冷却して2時間撹拌晶析した。吸引ろ過し、固体を80℃で4時間送風乾燥させて、本発明A型結晶体(39.2g、収率90.5%)を得た。本発明A型結晶体の粉末X線回折パターンを図1に示す。
元素分析を行う結果として、C2940BrNOであり、計算値はC65.65,H7.60、Br15.06,N2.64で、実測値はC65.60,H7.58、Br15.0,N2.62であった。元素分析結果は、本品は結晶水またはその他の結晶溶媒を含まず、化合物I分子式と一致することを示した。
[実施例3]本発明A型結晶体の調製
原薬35.1gとジクロロメタン300mLを秤量し、500mLのナスフラスコに入れ、還流撹拌して溶解した。活性炭0.7gを加え、還流撹拌して2時間脱色させた。熱いうちに吸引ろ過し活性炭を除去して、淡黄色透明ろ液を得、ろ液を2.0Lのナスフラスコに移し、還流条件下で、結晶体A3gを加えた後、イソプロピルエーテル900Lを加え、5±5℃までに冷却して48時間撹拌晶析した。吸引ろ過し、固体を40℃で、10mmHg以下の条件で24時間乾燥させ、本発明A型結晶体(27.6g、収率72.3%)を得た。
元素分析を行う結果として、C2940BrNOであり、計算値はC65.65,H7.60,Br15.06,N2.64で、実測値は、C65.45,H7.42,Br15.11,N2.50であった。元素分析結果は、本品は結晶水またはその他の結晶溶媒を含まず、化合物I分子式と一致することを示した。
[実施例4]本発明B型結晶体の調製
化合物I(実施例1に従って調製した。以下同様、原薬ともいう)30.3gと95%エタノール100mLを秤量し、200mLのナスフラスコに入れ、還流撹拌して溶解した。活性炭0.6gを加え、還流撹拌して2時間脱色させた。熱いうちに吸引ろ過し活性炭を除去して,淡黄色透明ろ液を得、ろ液を2.0Lのナスフラスコに移し、還流条件下で、テトラヒドロフラン1000mLを加え、20±5℃までに冷却して2時間撹拌晶析した。吸引ろ過し、固体を60℃で恒量になるまで8時間送風乾燥させて、本発明B型結晶体(26.5g、収率83.3%)を得る。本発明B型結晶体の粉末X線回折パターンを図2に示す。
元素分析で、化合物IのB型結晶体は1.5個の結晶水を含み、分子式はC2940BrNO・1.5HOで、計算値はC62.47H7.77,Br14.33,N2.51で、実測値はC62.60,H7.82,Br14.25,N2.48であることが証明された。
[実施例5]本発明B型結晶体の調製
原薬32.8gと98%エタノール200mlを秤量し、500mLのナスフラスコに入れ、還流撹拌して溶解した。活性炭0.7gを加え、還流撹拌して4時間脱色させた。熱いうちに吸引ろ過し活性炭を除去して、淡黄色透明ろ液を得、ろ液を5.0Lの反応釜に移し、還流条件下で、アセトン1000mLを加え、10±5℃までに冷却して24時間撹拌晶析した。吸引ろ過し、固体を80℃で恒量になるまで4時間送風乾燥させて、本発明B型結晶体(25.5g、収率74.9%)を得た。
元素分析で、化合物IのB型結晶体は1.5個の結晶水を含み、分子式はC2940BrNO・1.5HOで、計算値はC62.47,H7.77,Br14.33,N2.51で、実測値はC62.36,H7.79,Br14.21,N2.68であることが証明された。
[実施例6]結晶変態法による調製B型結晶体
化合物Iの結晶体A4 0.3gを秤量し、1Lの反応釜に入れ、精製水400mLを加え、回転数250-270r/min、25±5℃で5時間撹拌パルプ化し、吸引ろ過し、固体を60℃で12時間送風乾燥させて、水分を検出し恒量になった後、本発明B型結晶体(35.7g、収率84.3%)を得た。本発明B型結晶体の粉末X線回折パターンを図2に示す。
元素分析で、化合物IのB型結晶体は1.5個の結晶水を含み、分子式はC2940BrNO・1.5HOで、計算値はC62.47,H7.77,Br14.33,N2.51で、実測値はC62.41,H7.84,Br14.16,N2.63であることが証明された。
[製剤例7]喘息及びCOPD治療用乾燥粉末吸入剤組成物の調製
組成物中の各成分及びその用量
結晶体A 100mg
乳糖 25000mg
本発明結晶体Aを平均粒径D50が5μm未満となるように微粉化し、粒径1~100μmの乳糖と十分に混合し、この混合物を1カプセル当りの薬物/乳糖混合物の量として25.1mgとなるようにカプセルに充填し、粉末吸入器で投与した。
試験例
本発明のA型結晶体は実施例2の方法または実施例2のメカニズムと同じ方法で調製し、本発明B型結晶体は、実施例4、6の方法、または実施例4、6のメカニズムと同じ方法で調製した。
[試験例1]本発明結晶体のX線粉末回折(XRPD)試験
試験で得られた固体サンプルはいずれも、LynxEye検出器を備えた粉末X線回折分析装置(BrukerD8AdvAnce)で分析した。サンプルの2θスキャン角を3°~40°とし、スキャンステップを0.02°とし、管電圧、管電流をそれぞれ40kV、40mAとした。サンプル測定用のサンプルディスクは、ゼロバックグラウンドのサンプルディスクとした。
結果:
(1)A型結晶体は図1を参照のこと。D値、低角度データ、強度の大きさの特徴線及びピーク形状の完全性などの要素を総合的に考慮し、その特徴ピークは5.7±0.2度、12.9±0.2度、16.7±0.2度、18.0±0.2度、19.5±0.2度、21.1±0.2度、22.3±0.2度および23.3±0.2度という2θ値から選択した。本発明結晶体AのX粉末回析データを表1に示す。
Figure 2023523453000005
約10mgの結晶体Aを8mLのサンプル瓶に秤量し、ろ紙で密閉した後、40℃/75%RH安定性試験箱に入れ、3日後にサンプリングしてXRPD検出を行ったところ、結晶体Aが既に部分的に結晶体Bに転化したことが示された。A型結晶体が高湿度条件下で不安定であることを説明している。
(2)B型結晶体は図2を参照のこと。D値、低角度データ、強度の大きさの特徴線及びピーク形状の完全性を総合的に考慮し、その特徴ピークは、5.2±0.2度、15.8±0.2度、16.9±0.2度、17.7±0.2度、19.5±0.2度、20.2±0.2度および22.1±0.2度という2θ値から選択した。本発明結晶体BのX粉末回析データを表2に示す。
Figure 2023523453000006
約10mgの結晶体Bを8mlのサンプル瓶に秤量し、ろ紙で密閉した後、40℃/75%RH安定性試験箱に入れ、3日後にサンプリングしてXRPD検出を行ったところ、結晶体Bに変化がないことが示された。
試験例1は、高湿環境下においてB型結晶体がA型結晶体よりも安定であることを示した。
[試験例2]熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量分析(DSC)試験
TGA:固体サンプルは、TATGAQ500で熱重量分析を行った。2~3mgのサンプルをバランスしたアルミニウム製サンプルディスクに入れ、TGA加熱炉内でサンプル質量を自動秤量した。サンプルは、10℃/minの速度で200~300℃まで加熱した。測定過程において、天秤室およびサンプル室に窒素ガスの流量はそれぞれ40mL/minと60mL/minであった。
DSC:固体サンプルは、TADSCQ200で示差走査熱量分析を行い、校正で使用された標準サンプルはインジウムであった。2~3mgのサンプルを精確に秤量した後、TADSCサンプルディスクに入れ、サンプルの正確な質量を記録した。サンプルを、50mL/minの窒素気流中で10℃/minの昇温速度で200~250℃まで加熱した。
結果:TGA結果を図3、4に示す。図3は、結晶体Aが分解前に明らかな重量減少がないことを示し、結晶体A分子に結晶水が含まれないことを証明している。図4は、結晶体Bのサンプル分解前に2つの質量損失があり、それぞれ3.163%と1.131%であり、結晶体Bが化合物Iの1.5分子水和物であるという特徴に適合することを示した。DSC結果を図3、図5に示す。図3は、結晶体Aの吸熱ピークが1つだけであり、初期温度とピーク温度はそれぞれ157.44℃と161.03℃であり、融点ピークであることを示している。図5は、結晶形Bが合せて3つの吸熱ピークを有し、ピーク値はそれぞれ90.52℃、113.26℃と160.65℃であることを示している。DSCにおいて105℃まで加熱した後、XRPD検出したところ、水和物は水和物とA型結晶体の混晶に変化し、これは、前の2つの吸熱ピークは結晶水の脱離によるものであり、3つ目の吸熱ピークは結晶水がなくなった後に形成した無水物の融解ピークであることを説明している。
[試験例3]動的水分吸着(DVS)
動的吸脱着分析はIGASORP(HIdenIsochemA)で行い、サンプルはグラジエントモードで測定し、測定の湿度範囲は0%~90%であり、グラジエントあたりの増分湿度は10%であり、グラジエントあたりの最短測定時間は30minであり、最長測定時間は120minであり、データを採集する時間間隔は3minであった。
結果:DVS結果を図6と図7に示す。結晶体Aは吸湿性が高く、RH80%の湿度で、吸湿重量増加は52.4%に達し、一方、結晶体Bは、結晶体Aよりも著しく吸湿性が低く、80%RHの湿度で、吸湿重量増加は2.58%にすぎないことが示された。
[試験例4]本発明結晶体に含まれた残留溶媒濃度の測定
以下の測定条件で本発明結晶体に含まれる残留溶媒濃度を測定した。その結果を表3に示す。
測定条件:
ガスクロマトグラフィーでFID検出器
カラム:OPTIMA-624(30m×0.32mm×1.8μm)
カラム温度:60℃(3min)20℃/min 200℃(5min)
サンプル注入口温度:200℃
検出器温度:250℃
キャリアガス:窒素ガス
カラム流量:2mL/min
ヘッドスペースパラメータ:ヘッドスペース平衡温度80℃、ヘッドスペース平衡時間30min
分流比:10:1
Figure 2023523453000007
本発明再結晶工程では残留溶媒が除去されており、本発明A型結晶体と本発明B型結晶体はいずれも残留溶媒が少なく、実施例6では、結晶体には残留溶媒が検出されていない。
[試験例5]再結晶の不純物除去効果
以下の高速液体クロマトグラフィー条件で本発明結晶体の再結晶工程による不純物の除去効果を測定する。
機器:紫外線検出器が装備された高速液体クロマトグラフ
カラム:AgelaPromosil C18 4.6×250mm、5μm
移動相:A相:0.01mol/Lりん酸二水素カリウム溶液(0.04mol/Lの塩化アンモニウを加え、リン酸でpHを3.0に調整する)-メタノール(38:62);B相:アセトニトリル
Figure 2023523453000008
検出波長:210nm
流速:1.0ml/min
注入量:20μl
カラム温度:30℃
溶媒:移動相A
まず、HPLCクロマトグラフィーに基づき、各結晶体における化合物Iの純度(%)=(各結晶体における化合物Iのピーク面積)/(すべてのピーク面積の総和)×100により、各結晶体における化合物Iの純度(%)を算出した。次いで、各結晶体における不純物除去率(%)=[{(各結晶体における化合物Iの純度)-(原料における化合物Iの純度)}/{100-(原料における化合物Iの純度)}]×100という式により、各結晶体における不純物除去率(%)を算出した。
その結果を表4に示す。
Figure 2023523453000009
結果は、本発明A型結晶体と本発明B型結晶体は、再結晶工程でいずれも原薬の不純物の大半を除去することができることが示された。
[試験例6]結晶化溶媒の検討
「発明を実現するための最良の方法」における「2、本発明A型結晶体、本発明B型結晶体(以下、本発明結晶体と総称する)の調製」によれば、本発明のA型結晶体、B型結晶体の再結晶法ではある条件下で結晶が析出しない場合があり、溶媒を除去しても、最終的には原薬が油状物となる。A型結晶体調製時にこの現象を発生させた良溶媒は、2℃~4℃のアルコールとアセトニトリルで、貧溶媒はテトラヒドロフラン、メチル-tert-ブチルエーテルである。B型結晶体調製時にこの現象を発生させた良溶媒は2℃-4℃のアルコール/水溶液とアセトニトリルで、貧溶媒はテトラヒドロフラン、メチル-tert-ブチルエーテルである。12種類の良溶媒(ある量の水を含有する良溶媒を含む)および8種類の貧溶媒が使用され、合せて192個の結晶の組み合わせを行ったところ、下表に示すように9種類の場合に結晶が得られず、かつ、溶媒を揮発させた後に原薬は油状物となった。
Figure 2023523453000010
研究したところ、貧溶剤/良溶剤比を≧8のレベルまで高めることで、再結晶できない状況を効果的に回避できることを発見した。

Claims (9)

  1. 臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩のA型結晶体であって、
    当該結晶体の粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θ:5.7±0.2度、12.9±0.2度、16.7±0.2度、18.0±0.2度、19.5±0.2度、21.1±0.2度、22.3±0.2度、及び23.3±0.2度で回折ピークを示し、前記粉末X線回折パターンはCuKα線で得られたスペクトルである、臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩のA型結晶体。
  2. 臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩のB型結晶体であって、
    当該結晶体の粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θ:5.2±0.2度、15.8±0.2度、16.9±0.2度、17.7±0.2度、19.5±0.2度、20.2±0.2度および22.1±0.2度で回折ピークを示し、前記粉末X線回折パターンはCuKα線で得られたスペクトルである、臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩のB型結晶体。
  3. (1)シクロペンチルマンデル酸又はシクロペンチルマンデル酸エステルを出発物質として、水素化ホウ素ナトリウムによる還元で、ラセミの2-ヒドロキシ-2-シクロペンチル-2-フェニルエタノール(Z02)を取得し、反応溶媒は、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノールから選択され、水素化ホウ素ナトリウムと出発物質のモル比は2~5:1であり、シクロペンチルマンデル酸の還元時に、触媒としてルイス酸を添加し、ルイス酸は、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、四塩化スズと四塩化チタンから選択され、ルイス酸とシクロペンチルマンデル酸のモル比は2~5:1であり、好ましくは2.5~3:1であるステップと、
    (2)Z02をキラルのアシルクロリドとエステル化反応させた後、キラルのカルボン酸2-ヒドロキシ-2-シクロペンチル-2-フェニルエタノールエステル(Z03)を結晶体として取得し、キラルのアシルクロリドは、L-カンファースルホニルクロリド、D-カンファースルホニルクロリド、マンデル酸誘導体アシルクロリドから選択され、Z02とキラルのアシルクロリドのモル比は、1:1~3であり、好ましくは1:1.5~2であり、反応溶媒は、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、好ましくはジクロロメタン、テトラヒドロフランから選択され、塩基はトリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリンから選択され、塩基とキラルのアシルクロリドのモル比は1~4:1であり、好ましくは1~2:1であるステップと、
    (3)Z03を塩基で処理してR-1-フェニル-1-シクロペンチルオキシラン(Z04)が得られ、塩基は、水素化ナトリウム、カリウム-tert-ブトキシド、リチウムブチル、ナトリウムアミド、好ましくは水素化ナトリウム、カリウム-tert-ブトキシドから選択され、塩基とZ03のモル比は1~3:1であり、好ましくは1~1.5:1であり、反応溶媒はジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランから選択されるステップと、
    (4)Z04をR-(-)3-キニクリジノール(quinuclidinol)と反応させて(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-アザビシクロ[2,2,2]オクタン遊離塩基(Z05)を取得し、塩基は水素化ナトリウム、カリウム-tert-ブトキシド、リチウムブチル、ナトリウムアミドを含むが、これらに限定されず、好ましくは水素化ナトリウム、カリウム-tert-ブトキシドであり、R-(-)3-キニクリジノールと塩基のモル比は1~3:1であり、好ましくは1~1.5:1であり、反応溶媒はジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランから選択されるステップと、
    (5)Z05を3-フェノキシ-1-ブロモプロパンと四級アンモニウム化反応させた後、臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩を得るステップと、を含む、
    臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩の調製方法。
  4. 臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩を、アルコール類、アセトニトリル、ジクロロメタンまたはトリクロロメタンから選択される良溶媒に溶解するように加熱し、エステル、エーテル、ケトン、液体シクロアルカンまたは芳香族炭化水素から選択される貧溶媒を上記溶液に添加し、得られた溶液をゆっくりと冷却して結晶化させ、A型結晶体を取得し、過程全体で水との接触を避けなくてはならないことを特徴とする、
    臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩のA型結晶体の調製方法。
  5. 臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩をアルコール類またはアセトニトリルと水の混合溶媒に、好ましくはエタノールに溶解するように加熱し、エステル、水、エーテル、ケトン、液体シクロアルカンまたは芳香族炭化水素、好ましくは酢酸エチルから選択される貧溶媒を、上記溶液に添加し、得られた溶液をゆっくりと冷却して結晶化させ、
    または、
    臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩を加熱条件下で、アルコール、アセトニトリル、ジクロロメタンまたはトリクロロメタンなどの溶媒に溶解し、水を上記溶液に添加し、得られた溶液をゆっくりと冷却して結晶化させ、B型結晶体を取得する、ことを特徴とする、
    臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩のB型結晶体の調製方法。
  6. 臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩のA型結晶体を反応容器に入れて、精製水を加え、撹拌パルプ化して吸引ろ過し、固体を40℃~80℃で恒量になるまで送風乾燥させた後、B型結晶体を得る、ことを特徴とする、臭化(2R,3R)-3-[(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル)エトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アザビシクロ[2,2,2]オクチロニウム塩のB型結晶体の調製方法。
  7. 請求項1~2のいずれか1項に記載の結晶体を有効成分として含有する医薬組成物。
  8. M受容体サブタイプの選択的受容体拮抗剤の調製のための請求項1~2のいずれか1項に記載の結晶体の使用。
  9. 鼻炎、風邪による鼻炎、慢性気管炎、気道過敏、喘息、COPD、咳、尿失禁、頻尿、過活動膀胱症候群、膀胱痙攣、膀胱炎、および過敏性大腸症候群、痙攣性結腸炎、十二指腸潰瘍、胃潰瘍などの胃腸疾患に対する予防剤または治療剤の調製のための請求項1~2のいずれか1項に記載の結晶体の使用。
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