JP2023518815A - Il6アンタゴニストによるcovid-19肺炎を含む肺炎の治療方法 - Google Patents

Il6アンタゴニストによるcovid-19肺炎を含む肺炎の治療方法 Download PDF

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Abstract

本願は、患者の肺炎(例えばCOVID-19肺炎)を治療する方法を記載するものであり、当該方法は、体重基準で静脈内用量のトシリズマブを患者に投与することを含み、ここで体重基準の用量は、8mg/kgのトシリズマブである。また、臨床状態の序数尺度で測定した場合に、標準治療(SOC)よりも大きな臨床転帰の改善を達成するのに有効な量のIL6アンタゴニスト(例えば、トシリズマブなどのIL6受容体抗体)を患者に投与することを含む、患者の肺炎を治療する方法が記載されている。加えて本願は、(a)体重基準で8mg/kgという第1のトシリズマブ静脈内用量を、患者に投与すること、及びさらに、(b)第1の用量の8~12時間後に、体重基準で8mg/kgという第2のトシリズマブ静脈内用量を、第1の用量後に臨床状態の序数尺度で、改善しない患者、又は1カテゴリー以上悪化している患者に投与することを含む、患者の肺炎を治療する方法を記載する。加えて本願は、IL6アンタゴニスト(例えば、トシリズマブなどのIL6受容体抗体)を患者に投与することを含む、IL6レベルが上昇していない患者の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療する方法を開示している。【選択図】図1

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月23日に出願された米国仮特許出願第62/993589号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
配列表
本出願には、efs-webを介して提出される配列表が含まれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年3月9日に作成されたこのASCIIコピーは、P36004WOSEQLIST.txtという名称であり、そのサイズは7,342バイトである。
本発明は、患者の肺炎をIL6アンタゴニストにより治療する方法に関する。本発明には、COVID-19肺炎に代表されるコロナウイルス肺炎などのウイルス性肺炎を治療する方法も含まれる。1つの実施態様において本発明は、トシリズマブの静脈内用量を体重基準で患者に静脈内投与することに関し、ここで体重基準の用量は、トシリズマブ8mg/kgである。1つの実施態様においてIL-6レベルは、患者において上昇することが確認されていない。任意選択的に、本方法はさらに、最初の用量の8~12時間後(例えば、最初の用量の8~11時間後)、体重基準で8mg/kgという第2のトシリズマブ静脈内用量を患者に投与することを含み、ここで患者は、第1の用量後に、臨床状態の序数尺度において改善が見られないか、又は1カテゴリー以上悪化している。別の実施態様では、本方法は、 IL6アンタゴニスト(例えば、トシリズマブなどのIL6受容体抗体)を、例えば臨床状態の序数尺度で測定されるように、標準治療(SOC)よりも大きな臨床転帰の改善を達成するのに有効な量で患者に投与することに関し、当該改善は任意選択的に、本明細書においてより詳細に開示される他の有効性及び安全性の結果と組み合わせて、達成される。別の実施態様において本発明は、IL6レベルが上昇していない患者の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療する方法に関し、当該方法は、IL6アンタゴニスト(例えば、トシリズマブなどのIL6受容体抗体)を、患者に投与することを含む。
インターロイキン6(IL-6)は、様々な種類の細胞によって産生される炎症性多機能サイトカインである。IL-6は、T細胞活性化、B細胞分化、急性期タンパク質誘導、造血前駆細胞の増殖・分化促進、前駆細胞からの破骨細胞分化促進、肝・皮膚・神経細胞の増殖、骨代謝、脂質代謝などの多様なプロセスに関与している(Hirano T. Chem Immunol.51:153-180 (1992); Keller et al.Frontiers Biosci.1::340-357 (1996); Metzger et al. Am J Physiol Endocrinol Metab.281::E597-E965 (2001); Tamura et al.Proc Natl Acad Sci USA.90:11924-11928 (1993); Taub R. J Clin Invest 112: 978-980(2003))。IL-6は、自己免疫疾患、骨粗鬆症、新生物、老化など様々な疾患の発症に関与しているとされる (Hirano, T. (1992), supra; and Keller et al., supra)。IL-6は、可溶性であるとともに膜に発現しているリガンド特異的な受容体(IL-6R)を介して、その作用を発揮する。
関節リウマチ(RA)患者の血清及び滑液において、滑膜によるIL-6の産生を示すIL-6レベルの上昇が報告されている(Irano et al.Eur J Immunol.18:1797-1801 (1988); and Houssiau et al.Arthritis Rheum.1988; 31:784-788 (1988)).IL-6レベルは、RAの疾患活性と相関しており(Hirano et al.(1988), supra)、臨床効果は、血清IL-6レベルの減少を伴う (Madhok et al. Arthritis Rheum.33:S154.Abstract (1990))。
トシリズマブ(TCZ)は、ヒトIL-6受容体に結合する免疫グロブリンIgG1サブクラスの組換えヒト化モノクローナル抗体である。ロッシュ社及び中外製薬は、成人型RA、全身型若年性特発性関節炎(sJIA)、多関節型若年性特発性関節炎(pJIA)などの様々な疾患領域において、TCZ静脈投与(iv)の臨床効果及び安全性に関する研究を完了させているか、又は実施している。
トシリズマブは、米国で以下の用途で承認されている:
1.関節リウマチ(RA): 1又は複数の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)で十分な奏功が得られていない中等度から重度の活性関節リウマチの成人患者。
2.巨細胞性動脈炎(GCA): 巨細胞性動脈炎 を有する成人患者。
3.多関節型若年性特発性関節炎(pJIA):多関節型若年性特発性関節炎(pJIA)を有する、2歳以上の患者。
4.全身型若年性特発性関節炎(sJIA):全身型若年性特発性関節炎(sJIA)を有する、2歳以上の患者。
5.サイトカイン放出症候群(CRS):キメラ抗原受容体(CAR)T細胞による重症又は生命を脅かすサイトカイン放出症候群を有する成人及び2歳以上の小児患者。
6.コロナウイルス(CoV)は、正鎖RNAウイルスであり、エンベロープにとげ状の糖タンパク質が存在するため、電子顕微鏡では王冠のように見える。コロナウイルスは、一般的な風邪から、より深刻な症状、例えば中東呼吸器症候群(MERS-CoV)及び重症急性呼吸器症候群(SARS-CoV)を引き起こすウイルスの大きな科である。
COVID-19は、「コロナウイルス感染症2019」の頭文字をとったもので、これまでヒトで確認されていない新型コロナウイルス株によって引き起こされ、2020年2月11日に世界保健機関(WHO)によって新たに命名された。原因不明の下気道感染症感染者の流行が、中国湖北省最大の都市圏である武漢で初めて検出され、2019年12月31日にWHO中国国事務所に報告された。その後、2020年3月11日にWHOによってパンデミックが宣言された。
WHOによると、2020年3月17日現在、世界100カ国以上で179,000人以上のCOVID-19の患者が報告され、7400人以上が死亡している。感染した患者のうち最大で約20%が重症の間質性肺炎に関連する合併症を起こし、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び/又は多臓器不全(MOF)へと進行することもあり、死に至る場合もある。
現在までに、COVID-19の予防又は治療に有効だと判明しているワクチン及び特定の抗ウイルス薬はない。軽症の患者の多くは、対症療法と支持療法で回復する。しかしながら、より重症の患者には入院が必要である(WHO 2020)。
CRSは、悪性腫瘍の治療に用いられるCAR T細胞療法において、臨床的に重要なオンターゲット、オフターゲットの副作用として確認されている。CRSの特徴としては、発熱、疲労、頭痛、脳症、低血圧、頻脈、凝固障害、吐き気、毛細血管漏出、多臓器不全などが挙げられる。CAR T細胞療法後のCRS発生率は50%~100%であること、またそのうち13%~48%の患者が重症又は生命を脅かすような症状を経験することが、報告されている。血清中の炎症性サイトカイン、特にインターロイキン-6(IL-6)レベルが上昇する。症状の重さは、血清中のサイトカイン濃度及び炎症性サイトカインにさらされた期間と相関があり得る。
2017年8月30日に米国食品医薬品局は、成人及び2歳以上の小児患者における重症又は生命を脅かすCAR T細胞によるCRSの治療薬として、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))を承認した。承認された用量は、体重30kgで≧8mg/kgと、体重30kgで<12mg/kgである。徴候/症状が改善されない場合は、3回まで追加要領を与えることができ、次の用量との間隔は少なくとも8時間にすべきである。
TCZの承認は、前向き臨床試験においてチサゲンレクロイセル(KYMRIAH(登録商標))又はアキシカブタジン・シロロイセル(YESCARTA(登録商標))による治療後にCRSを発症したTCZ治療患者のデータのレトロスペクティブ分析に基づいて行われた(Le et al.The Oncologist..23:943-947 (2018))。CTL019シリーズの患者45名中31名(69%)が、TCZの初回用量から14日以内に奏効(無熱で、TCZの初回投与から14日以内に24時間以上血管圧を下げ(最大2回の用量)、コルチコステロイド以外の追加治療を行わないと定義)し、初回用量から奏効までの時間の中央値は4日であった。アキシカブタジン・シロロイセルのシリーズでは、患者15名中8名(53%)が奏功し、奏功までの期間中央値は4.5日であった。奏効率は、年齢、性別、人種、民族、TCZ初回用量時のCRSのグレード、TCZによる治療前のCRSの期間などのサブグループ間でほぼ一貫していた。TCZに起因する副反応の報告はなかった。
薬物動態(PK)データは、TCZ初回用量後の27名の患者について、またTCZ2回目用量後の8名の患者について入手可能であった。131のPK観察結果に基づき、CAR T細胞により重症又は生命を脅かすCRS患者におけるTCZの幾何平均(% CV)最大濃度は、初回注入後99.5μg/mL(36.8%) 、及び2回目注入後160.7μg/mL(113.8%) であった。PKモデリング解析によって、CRS患者は健康なボランティアや他の患者集団に比べてTCZのクリアランスが速かったことが示され、シミュレーションではCRS患者において少なくとも8時間間隔で4回までのTCZ用量で曝露が許容されることが示された。
またTCZは、欧州連合及びその他の一部の国において、CAR-Tによる重症又は生命を脅かすCRA適応症のために承認されている。
中国の医師は、コロナウイルス(COVID-19)肺炎の治療薬としてTCZの適応外使用を開始した。TCZで治療したCOVID-19患者21名を対象とした観察研究の結果に基づき、2020年2月13日に研究者主導による無作為化非盲検試験(n=188)も開始された。
2020年3月3日にTCZは、中国国家衛生委員会による「COVID-19肺炎の診断と治療プロトコル」(第7版)に、COVID-19肺炎の重症又は重篤型に対する治療選択肢の1つとして掲載された。中国CDCは、以下の基準で疾患の重症度を定義した:
1.重症肺炎:呼吸困難、呼吸回数≧30/分、血中酸素飽和度(SpO2)≦93%、PaO2/FiO2比[酸素の血圧(酸素分圧、PaO2)と酸素供給割合(吸入酸素割合、FiO2)の比]<300mmHg、及び/又は肺浸潤が24~48時間以内に>50%、これは14%の症例で発生した。
2.重篤肺炎:呼吸不全、敗血症性ショック、及び/又は多臓器不全(MOD)若しくは障害(MOF);5%の症例に発生(Wu et al.JAMA. doi:10.1001/jama.2020.2648 (2020))。
3.本ガイドラインの10.3.7 項によると以下のとおりである:「肺の病変が広範囲に及ぶ重症患者で、実験室の検査でIL-6レベルが上昇している場合、トシリズマブ治療を試みることができる。初回用量は4~8mg/kg、推奨用量は400mg、0.9%食塩水を100mLに希釈し、点滴時間は1時間以上、初回用量で臨床症状の改善が見られない場合、12時間以降も前と同じ用量で適用することができる。累積投与回数は最大2回であり、1回の最大用量は800mgを超えない。過敏症に注意し、結核等の感染症が活発なものは禁忌とする。
TCZで治療されたコロナウイルス(COVID-19)肺炎の重症又は重篤患者を対象とした21名のレトロスペクティブ観察研究の結果に基づき、同じ集団を対象にTCZの同じ用量レジメンを用いたランダム化比較試験(n = 188)が開始され、現在、約70名が登録されて進行中である。Xu et al.Effective treatment of severe COVID-19 patients with tocilizumab.提出原稿:[インターネット上のリソース]2020 [2020年3月5日更新; 2020年3月17日付].下記から利用可能:http://www.chinaxiv.org/abs/202003.00026.
2020年2月に、重症又は重篤のCOVID-19肺炎患者21名に対し、TCZ静注(400mg)と標準治療を併用した。患者の平均年齢は、56.8±16.5歳だった(25歳から88歳までにわたる)。17名(81.0%)が重症、4名(19.0%)が重篤と評価された。ほとんどの患者(85%)が、リンパ球減少症を呈した。C反応性蛋白(CRP)レベルは、20名全員において上昇した(平均75.06±66.80 mg/L)。プロカルシトニン(PCT)値の中央値は0.33±0.78 ng/mLであり、異常値を示したのは20名中2名(10.0%)のみであった。TCZ前の平均IL-6レベルは、132.38±278.54 pg/mL(正常値<7 pg/mL)であった。
標準治療として、「新型コロナウイルス肺炎の診断と治療プロトコル(第6版)」で推奨されているロピナビル、メチルプレドニゾロン、その他の症状緩和薬、酸素療法を実施した。21名全員が1週間の標準的な治療を受けた後、持続的な発熱、低酸素血症、胸部CT画像の悪化がみられた。
18名(85.7%)にTCZを1回投与し,12時間以内に発熱した3名(14.3%)に第2の用量を与えた。著者らによると、TCZ治療後、発熱は平熱に戻り、その他の症状もすべて顕著に改善した。20名中15名(75.0%)は酸素摂取量が低下し、1名は酸素療法を必要としなかった。CTスキャンでは、TCZによる治療後、19/20人(90.5%)の患者で両肺の混濁の有意な寛解が示された。投与前に85.0%(17/20)の患者で減少していた末梢血中のリンパ球の割合(平均15.52±8.89%)は,投与後5日目に52.6%(10/19)の患者で正常に戻った。異常に上昇していたCRPは、患者の84.2%(16/19名)で有意に減少した。薬による副作用及びその後の肺感染症は報告されていない。
報告時点で19名(90.5%)が退院しており、うち2名が重篤患者であった。治療した21名の患者のうち、死亡例はなかった。本研究の著者らは、TCZが重症のCOVID-19患者に対して有効な治療法であると結論付けている(Xu et al.(2020), supra)。
COVID-19の入院患者に対するサリルマブの有効性及び安全性を評価した適応的な2/3相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験は、以下のサイトに掲載されている:https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04315298。サリルマブは、インターロイキン-6受容体に対するヒトモノクローナル抗体である。
第1の態様において本発明は、トシリズマブの静脈内用量を体重基準で患者に投与することを含む、患者の肺炎の治療方法に関し、ここで、体重基準の用量は、トシリズマブ8mg/kgである。
別の態様において本発明は、患者の肺炎を治療する方法に関し、当該方法は、以下のことを含むものである:
a.体重基準で8mg/kgという第1の静脈内用量を患者に投与すること、及び
b.さらに、第1の用量の8~12時間後に、体重基準で8mg/kgという第2のトシリズマブ静脈内用量を患者に投与することであって、ここで患者は、第1の用量後に、臨床状態の序数尺度において改善が見られないか、又は1カテゴリー以上の悪化を経験する。
さらに別の実施態様において本発明は、臨床状態の序数尺度で測定した場合に標準治療(SOC)よりも大きな臨床結果の改善を達成するのに有効な量のIL6アンタゴニストを患者に投与することを含む、患者の肺炎を治療する方法に関する。
別の実施態様において本発明は、IL6レベルが上昇していない患者の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療する方法に関し、当該方法は、IL6アンタゴニストを、患者に投与することを含む。
1つの実施態様では、肺炎がウイルス性肺炎である。
1つの実施態様では、肺炎がコロナウイルス性肺炎である。
1つの実施態様では、肺炎がCOVID-19肺炎である。
1つの実施態様では、肺炎が重症肺炎である。
1つの実施態様では、肺炎が重症COVID-19性肺炎である。
1つの実施態様では、患者のIL-6レベルが上昇していない。
1つの実施態様では、患者のIL-6レベル上昇が、実験室検査により確認されていない。
1つの実施態様では、患者が、アラニントランスアミナーゼ(ALT)又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)>5、及び<10正常上限値(ULN)を有する。
1つの実施態様では、本方法が、患者の急性呼吸困難(ARDS)を治療する。
実施例1の臨床試験のプロトコルを示す。
I.定義
本明細書で使用することがある略語を以下に示す:
Figure 2023518815000002
Figure 2023518815000003
本明細書の目的のために、「炎症」とは、感染に対する免疫防御をいい、局所の血流増加、白血球の遊走、及び化学毒素の放出によって識別される。炎症は、身体が感染症から身を守るために使用する一つの方法である。炎症の臨床的特徴としては、身体の一部の発赤、熱感、腫脹、疼痛、機能低下などが挙げられる。全身に及ぶ炎症は、発熱、関節痛、筋肉痛、臓器障害、倦怠感などを生じさせることがある。
「肺炎」とは、片肺又は両肺に炎症が生じ、肺の炎症部位が密集している状態をいう。本発明は、ウイルス感染による肺炎に関する。肺炎の症状には、発熱、悪寒、痰を伴う咳、胸痛、息切れなどがある。1つの実施態様において肺炎は、胸部X線又はコンピュータ断層撮影(CTスキャン)により確認されている。
「重症肺炎」とは、心臓、腎臓若しくは循環器系が機能しなくなる危険性がある肺炎、又は肺が十分な酸素を取り込めなくなり急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症した場合をいう。重症肺炎の患者は通常、入院し、集中治療室(ICU)に入ることもある。患者は通常、重度の呼吸困難、呼吸困難、頻呼吸(30回以上/分)、低酸素症を呈し、発熱を伴うこともある。小児ではチアノーゼが起こることがある。この定義では、診断は臨床的なものであり、合併症を除外するために放射線画像診断が使用される。1つの実施態様において重症肺炎の患者は、末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)によって決定されるように、肺機能が低下している。1つの実施態様では、重症肺炎の患者は、動脈酸素分圧と分数吸入酸素との比(PaO2/FiO2)によって決定される肺機能が損なわれている。1つの実施態様において、重症肺炎の患者はSpO2が93%である。1つの実施態様において、重度の肺炎の患者は、300mmHg未満のPaO2/FiO2を有している(PaO2/FiO2×[大気圧(mmHg)/760]に基づいて高高度地域用に調整してもよい)。1つの実施態様では患者が、呼吸困難(RR≧30呼吸/分)を有する。1つの実施態様では、患者が肺の画像診断で50%超の病変を有する。
「重篤肺炎」とは、呼吸不全、ショック及び/又は臓器不全を起こした患者の重症肺炎をいう。1つの実施態様では、重篤肺炎の患者が、機械的換気を必要としている。
「軽度の肺炎」では、軽度の発熱、咳(乾性)、咽頭痛、鼻づまり、倦怠感、頭痛、筋肉痛、倦怠感などの上気道ウイルス感染症の症状が見られる。呼吸困難など、より重篤な疾患の徴候及び症状は、認められない。
「中等度肺炎」では、咳や息切れ(小児では頻呼吸)などの呼吸器症状があり、重症の肺炎の兆候はない。中等度の肺炎の患者は、病院に入院していても、ICUに入っていないか、又は人工呼吸器をつけていない。
「急性呼吸器疾患症候群」又は「ARDS」とは、肺に、また血液中に十分な酸素が行き渡らない、生命が脅かされる肺の状態をいう。1つの実施態様において、ARDSの診断は、以下の基準に基づいて行われる:急性発症、非心臓由来の胸部X線検査における両側の肺浸潤、及びPaO/FiO比< 300 mmHg。1つの実施態様ではARDSが、PaO2/FiO2 200~300mmHgによって特徴付けられる「軽症ARDS」である。1つの実施態様ではARDSが、PaO2/FiO2 100~200mmHgによって特徴付けられる「中等度ARDS」である。1つの実施態様ではARDSが、PaO2/FiO2<100mmHgによって特徴付けられる「重症ARDS」である。
「ウイルス性肺炎」とは、1種類以上のウイルスが患者に侵入することによって起こる肺炎をいう。1つの実施態様では、ウイルスがDNAウイルスである。1つの実施態様では、ウイルスがRNAウイルスである。本明細書で考慮されるウイルス性肺炎を引き起こすウイルスの例には、特に、以下によるものが含まれる:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス(H1N1又は「豚インフルエンザ」及びH5N1又は「鳥インフルエンザ」を含む)、ジカウイルス、ロタウイルス、狂犬病ウイルス、ウエストナイルウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ノロウイルス、ロタウイルス、アストロウイルス、ライノウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ポリオウイルス、デング熱、エボラウイルス、及びコロナウイルス。1つの実施態様では、ウイルス性肺炎が、コロナウイルスによって引き起こされる。
「コロナウイルス」"は、ヒトに感染して呼吸器感染症を引き起こすウイルスである。患者に肺炎を引き起こす可能性のあるコロナウイルスとしては、中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こすβコロナウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こすβコロナウイルス、COVID-19ウイルスなどがあるが、これらに限られない。
「COVID-19」は典型的には、発熱、咳、息切れを主症状とし、肺炎や呼吸不全に移行することもある病気を引き起こすウイルスである。COVID-19は、2019年12月に中国の武漢で初めて確認された。1つの実施態様において、COVID-19の患者は、患者からの検体(例えば、呼吸器、血液、尿、便、他の体液検体)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査(例えばリアルタイムPCT(RT-PCT)検査)により陽性であることが確認される。1つの実施態様においてCOVID-19核酸配列は、COVID-19と高度に相同であると決定されている。1つの実施態様において患者は、例えば免疫組織化学(IHC)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などによって決定されるCOVID-19特異的抗体(例えばIgG及び/又はIgM抗体)を有する。COVID-19の同義語には、「新型コロナウイルス」、「2019年新型コロナウイルス」及び「2019-nCoV」が含まれるが、これらに限られない。
本明細書において「患者」とは、ヒトの患者をいう。
薬物の「静脈内」すなわち「iv」用量、投与又は製剤は、静脈を介して、例えば点滴によって投与される。
薬物の「皮下」すなわち「sc」用量、投与又は製剤は、例えば、プレフィルドシリンジ、自動注射器、または他の装置を介して、皮膚の下に投与される。
薬剤について「体重基準の用量」とは、患者の体重を基準とした用量をいう。薬物がトシリズマブである好ましい実施態様では、体重基準の用量は8mg/kg(任意選択的に≦800mgの用量)である。
固定用量とは、患者の体重に関係なく投与される用量をいう。
本明細書の目的のために、「臨床状態」とは、患者の健康状態をいう。それは例えば、患者の状態が良くなっている、又は悪くなっていることである。1つの実施態様において臨床状態は、臨床状態の序数尺度に基づく。1つの実施態様において臨床状態は、患者が熱を有するか否かに基づいていない。
「臨床状態の序数尺度」とは、無次元的な結果を定量化するために用いられる尺度をいう。これらには、ある時点の結果を含めることができ、又はこれらにより、2つの時点の間に起こった変化を調べることができる。1つの実施態様において2つの時点は、「1日目」(トシリズマブなどのIL6アンタゴニストの最初の用量、例えば8mg/kgが投与されたとき)と、「28日目」(患者が評価されるとき)とで比較され、任意で、「60日目」(患者がさらに評価されるとき)にも比較される。序数尺度は、特許の状態又は結果を評価する様々な「カテゴリー」を含む。1つの実施態様において序数尺度は、「7カテゴリーの序数尺度」である。
1つの実施態様において「7カテゴリーの序数尺度」は、患者の状態を評価するための以下のカテゴリーを含む:
1.退院(又は「退院準備完了」、例えば、体温及び呼吸数が正常で、大気中又は2L以下の補助酸素で酸素飽和度が安定していることが証明された場合)
2.ICU以外の病棟(又は「入院準備病棟」)で、酸素補給を必要としない
3.ICU以外の病棟(又は「入院準備病棟」)で、酸素補給を必要とする
4.ICU又は非ICU病棟で、非侵襲的換気又は高流量酸素を必要とする
5.ICUで、挿管と人工呼吸が必要
6.ICUで、ECMO又は機械的換気と追加の臓器サポート(例えば、血管拡張剤、腎代替療法)を必要とする
7.死亡。
本明細書の目的のために、「標準治療」又は「SOC」とは、肺炎(例えばCOVID-19肺炎などのウイルス性肺炎)の患者の治療に一般的に用いられる治療又は薬剤をいい、特に、支持療法、一若しくは複数の抗ウイルス剤の投与、及び/又は一若しくは複数のコルチコステロイドの投与が挙げられる。
「支持療法」には、以下のものが含まれるが、これらに限られない:呼吸補助(フェイスマスク又は鼻カニューレによる酸素療法、高流量経鼻酸素療法、又は非侵襲的人工呼吸、侵襲的人工呼吸、体外式膜酸素療法(ECMO)など);循環補助(例えば輸液蘇生、微小循環促進、血管作動薬)、輸液蘇生、微小循環促進、血管作動薬)、腎代替療法;血漿療法;血液浄化療法;血必浄(Xuebijing)注射(例:100mL/日×2回);微量生態製剤(例えばプロバイオティクス、プレバイオティクス、及びシンバイオティクス);非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs);生薬;血漿(例:回復期血漿)等。
「抗ウイルス」剤には以下のものが含まれるが、これらに限られない:α-インターフェロン、ロピナビル、リトナビル、ロピナビル/リトナビル、レムデシビル、リバビリン、ヒドロキシクロロキン又はクロロキン、ウミフェノビル等。
「コルチコステロイド」とは、自然発生のコルチコステロイドの作用を模倣若しくは増補するステロイドの一般的化学構造を備える、いくつかの合成又は自然発生の物質のうちのいずれか1つをいう。合成コルチコステロイドホルモンの例としては、プレドニゾン、プレドニゾロン(メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウムなどのメチルプレドニゾロンを含む)、デキサメタゾン又はデキサメタゾントリアムシノロン、ヒドロコルチゾン及びベータメタゾンが挙げられる。1つの実施態様ではコルチコステロイドが、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、及びデキサメタゾンから選択される。1つの実施態様ではコルチコステロイドが、メチルプレドニゾロンである。1つの実施態様ではコルチコステロイドが、「低用量」グルココルチコイド(例えばメチルプレドニゾロン≦1~2mg/kg/日、例えば3~5日間)である。
ここで「ヒトインターロイキン6」(略称:IL-6)は、B細胞刺激因子2(BSF-2)、又はインターフェロンβ2(IFNB2)、ハイブリドーマ増殖因子、及びCTL分化因子としても知られるサイトカインである。IL-6は、B細胞の活性化に寄与する分化因子として発見されたものであり(Hirano et al, Nature 324: 73-76 (1986))、その後、さまざまな種類の細胞の働きに影響を与える多機能サイトカインであることが判明している (Akira et al., Adv. in Immunology 54: 1-78 (1993))。天然に存在するヒトIL-6のバリアントは知られており、この定義に含まれる。ヒトIL-6のアミノ酸配列情報は開示されており、例えば下記を参照のこと:
www.uniprot.org/uniprot/P05231。
IL6アンタゴニスト」とは、ヒトIL6又はヒトIL6受容体に結合することにより、IL6の生物学的活性を阻害又は遮断する薬剤である。1つの実施態様では、IL6アンタゴニストが抗体である。1つの実施態様では、IL6アンタゴニストが、IL6受容体に結合する抗体である。Il-6受容体に結合する抗体としては、トシリズマブ(tocilizumab:その静注用、iv用、皮下sc製剤を含む)(中外製薬、ロッシュ、ジェネンテック)、サトリズマブ(satralizumab:中外製薬、ロッシュ、ジェネンテック)、サリルマブ(sarilumab:Sanofi、Regenon)、NI-1201(Novimmune及びTiziana)、ボバリリズマブ(vobarilizumab:Abrynx)等が挙げられる。1つの実施態様ではIL6アンタゴニストが、IL6に結合するモノクローナル抗体である。IL-6と結合する抗体としては、シルクマブ(sirukumab:Centecor、Janssen)、オロキズマブ(olokizumab:UCB)、クラザキズマブ(clazakizumab:BMS及びAlder)、シルツキシマブ(siltuximab:Janssen)、EBI-031( Eleven Biotherapeutics及びRoche)などがある。1つの実施態様ではIL6アンタゴニストが、オラムキセプト(olamkicept)である。
本明細書の目的のために、「ヒトインターロイキン6受容体」(略称「IL-6R」)とは、IL-6と結合する受容体をいい、これには膜結合型IL-6R(mIL-6R)及び可溶性IL-6R(sIL-6R)の双方が含まれる。IL-6Rは、インターロイキン6シグナルトランスデューサー糖タンパク質130と組み合わせて、活性型受容体複合体を形成することができる。IL-6について異なるアイソフォームをコードする、代替スプライシングされた転写バリアントが報告されており、これもこの定義に含まれる。ヒトIL-6Rのアミノ酸配列構造及びその細胞外ドメインは、例えば以下に記載されている:Yamasaki et al., Science, 241: 825 (1988)。
本明細書において「中和」抗IL-6R抗体とは、IL-6Rに結合し、IL-6がIL-6Rに結合する能力及び/又は活性化する能力を測定可能な程度に阻害することができるものである。トシリズマブは、中和型抗IL-6R抗体の一例である。
「トシリズマブ」又は「TCZ」は、ヒトインターロイキン-6受容体(IL-6R)に結合する組み換えヒト化モノクローナル抗体である。これは、2本の重鎖と2本の軽鎖が2つの抗原結合部位を形成するIgG1κ(ガンマ1、カッパ)抗体である。好ましい実施態様において、トシリズマブの軽鎖及び重鎖アミノ酸配列は、配列番号1及び2をそれぞれ含む。
本明細書において「天然配列」タンパク質とは、天然に存在するタンパク質のバリアントを含む、天然に見られるタンパク質のアミノ酸配列を含むタンパク質をいう。本明細書で使用される用語は、その天然源から単離されるタンパク質、又は組換え作製されるタンパク質を含む。
「抗体」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、具体的には、モノクローナル抗体と、ポリクローナル抗体と、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)と、所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗体断片とが含まれる。
本明細書において「抗体断片」とは、抗原との結合能力を保持するインタクトな抗体の一部を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、モノクローナル抗体の製造中に生じ得るバリアント(一般に、そのようなバリアントは微量存在する)を除いて、同一であり、かつ/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法により作製しなければならないと解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohlerら、Nature 256:495(1975)によって記載されたハイブリドーマ法によって作製されても、又は組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)によって作製してもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば以下に記載されている手法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい:Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991)、及びMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)。本明細書におけるモノクローナル抗体の具体例には、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体 (それらの抗原結合断片を含む) が含まれる。
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残りの部分が、他の種に由来するか、又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一又は相同である抗体、並びに所望の生物学的活性を呈する限り、このような抗体の断片が含まれる(米国特許第4,816,567号;Morrison et al., Proc. Natl.Acad.Sci.USA 81:6851~6855(1984))。本明細書における目的のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル、又はカニクイザルなどの旧世界ザル)に由来する可変ドメイン抗原結合配列と、ヒト定常領域配列とを含む、「霊長類化」抗体が含まれる(米国特許第5,693,780号)。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小の配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)の超可変領域の残基を、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域の残基で置き換えたものである。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、抗体性能を更に洗練させるためになされる。一般的に、ヒト化抗体は、上述のFR置換(複数可)を除いて、超可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、かつFRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体はまた、任意選択的に、免疫グロブリン定常領域、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。更なる詳細については、下記参照のこと:Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol.2:593)。本明細書におけるヒト化抗体は、具体的には、米国特許第5,795,965号に記載されるような「再形成」IL-6R抗体を含み、その内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
本明細書において「ヒト抗体」とは、ヒトB細胞から取得可能な抗体のアミノ酸配列構造に対応するアミノ酸配列構造を含むものをいい、これにはヒト抗体の抗原結合性断片も含まれる。このような抗体は、以下のものを含む様々な技術によって同定又は製造することができるが、これらに限定されない:免疫化により、内因性免疫グロブリン産生がない場合にヒト抗体を産生できるトランスジェニック動物(例えば、マウス)による産生(例えば、 Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993); Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993); Bruggermann et al., Year in Immuno., 7:33 (1993); 並びに米国特許第5,591,669号、同5,589,369号、及び同5,545,807)); ヒト抗体又はヒト抗体断片を発現するファージディスプレイライブラリーからの選択(例えば、McCafferty et al., Nature348:552-553 (1990); Johnson et al., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571 (1993); Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991); Marks et al., J. Mol.Biol.222:581-597 (1991); Griffith et al., EMBO J. 12:725-734 (1993);米国特許第5,565,332号、及び同5,573,905号); in vitro活性化B細胞を介した生成 (例えば、米国特許第5,567,610号、及び同5,229,275号); 並びにヒト抗体産生ハイブリドーマからの単離。
本明細書における「多重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。例示的な多重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに結合してもよい。あるいは、抗IL-6R結合アームは、受容体に対する細胞防御機序に集中するために、白血球上のトリガリング分子、例えばT細胞受容体分子(例えば、CD2若しくはCD3)、又はIgG(FcγR)に対するFc受容体、例えばFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD16)に結合するアームと組合せることができる。多重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製することができる。3つ以上(好ましくは4つ)の機能的な抗原結合部位を有する遺伝子操作された抗体もまた、考慮される(例えば、米国特許出願第2002/0004587号、Umana et al.参照)。
本明細書における抗体には、変化した抗原結合又は生物学的活性を有する、「アミノ酸配列バリアント」が含まれる。そのようなアミノ酸変化の例には、抗原に対する増強された親和性を有する抗体(例えば「親和性成熟」抗体)、及び存在する場合には変化したFcを含む、例えば変化した (増加又は減少した) 抗体依存性細胞傷害性 (ADCC) 及び/又は補体依存性細胞傷害性 (CDC) を有する抗体(例えば、国際公開第00/42072号、Presta, L.、及び国際公開第99/51642号、Iduosogieら参照);及び/又は血清半減期の増加もしくは減少(例えば、国際公開第00/42072号、Presta, L.参照)が含まれる。
本明細書の抗体は、半減期若しくは安定性を高めるため、又はその他の目的で、例えば「異種分子」とコンジュゲートされていてもよい。抗体は例えば、多様な非タンパク質性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、又はポリエチレングリコールとポリエチレングリコールとのコポリマーのうちの1つに連結し得る。1つ以上のPEG分子に連結されたFab'などの抗体断片は、本発明の例示的な実施態様である。
本明細書における抗体は、Fc領域に結合している糖鎖が存在する場合、当該糖鎖が変化しているような「グリコシル化バリアント」であってもよい。例えば、抗体のFc領域に結合しているフコースを欠く成熟糖鎖構造を有する抗体が、米国特許出願第2003/0157108号(Presta,L.)に記載されている。米国特許出願公開第2004/0093621号明細書(Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd)も参照されたい。抗体のFc領域に結合した糖鎖のうち、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)が2分している抗体については、下記を参照:国際公開第 2003/011878号、Jean-Mairet et al.、及び米国特許第6,602,684号、Umana et al.。オリゴ糖中の少なくとも1つのガラクトース残基が抗体のFc領域に結合している抗体も報告されている(国際公開第1997/30087号、Patel et al.)。Fc領域に結合する糖鎖を変化させた抗体については、国際公開第1998/58964号 (Raju, S.) 及び国際公開第1999/22764 号(Raju, S.) も参照されたい。改変グリコシル化を有する抗体を記載している米国特許出願公開第2005/0123546号明細書(Umana et al.)も参照されたい。
「超可変領域」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24~34(L1)、50~56(L2)及び89~97(L3)と重鎖可変ドメインの残基31~35(H1)、50~65(H2)及び95~102(H3)からのアミノ酸残基:Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))、及び/又は「超可変ループ」 からの残基(例えば、軽鎖可変ドメインにおける26~32 (L1), 50~52 (L2) 、及び91~96 (L3)の残基、並びに重鎖可変ドメインにおける26-32 (H1), 53-55 (H2) 及び96-101 (H3)の残基を含む ; Chothia and Lesk J. Mol.Biol.196:901-917 (1987))。「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書に定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。トシリズマブの超可変領域は、以下のものを含む:
L1 - Arg Ala Ser Gln Asp Ile Ser Tyr Leu Asn (配列番号: 3);
L2 - Tyr Thr Ser Arg Leu His Ser (配列番号: 4);
L3 - Gln Gly Asn Thr Leu Pro Tyr Thr (配列番号:5);
H1 - Ser Asp His Ala Trp Ser (配列番号:6);
H2 - Tyr Ile Ser Tyr Ser Gly Ile Thr Tyr Asn Pro Ser Leu Lys Ser (配列番号:7); 及び
H3 - Ser Leu Ala Arg Thr Ala Met Asp Tyr (配列番号:8)。
本明細書における1つの実施態様では、IL-6R抗体が、トシリズマブの超可変領域を含む。
「完全長抗体」は、抗原結合可変領域、並びに軽鎖定常ドメイン (CL) 及び重鎖定常ドメインCH1、CH2及びCH3を含むものである。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列バリアントであり得る。完全長抗体は好ましくは、1つ又は複数のエフェクタ機能を有する。トシリズマブは、完全長抗体の一例である。
「ネイキッド抗体」は、(本明細書における定義では)細胞傷害性部分、ポリマー又は放射性標識等の異種分子にコンジュゲートされていない抗体である。
抗体「エフェクタ機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異形Fc領域)に起因する生物学的活性をいう。抗体のエフェクタ機能の例としては、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞傷害(ADCC)等がある。
完全長抗体は、重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なる「クラス」に割り当てることができる。完全長抗体には5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、これらのうちのいくつかは、さらに「サブクラス」(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分けることができる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構造はよく知られている。
本明細書で使用される「組換え抗体」という用語は、抗体をコードする核酸を含む組換え宿主細胞によって発現される抗体(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくはヒト抗体、又はその抗原結合断片)をいう。組換え抗体を産生するための「宿主細胞」の例には、以下のものが含まれる:(1) 哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO)、COS、骨髄腫細胞 (Y0及びNS0細胞を含む)、ベビーハムスター腎臓 (BHK)、HelaおよびVero細胞;(2) 昆虫細胞、例えばsf9、sf21及びTn5;(3) 植物細胞、例えばタバコ属(Nicotiana)に属する植物(例えば、タバコ(Nicotiana tabacum);(4) 酵母細胞、例えばサッカロミセス属(Saccharomyces)に属するもの(例えば、サッカロミセス・セレビシエ (Saccharomyces cerevisiae))又はアスペルギルス属(Aspergillus)に属するもの(例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger));(5) 細菌細胞、例えば大腸菌 (Escherichia coli) 細胞又は枯草菌(Bacillus subtilis) 細胞など。
本明細書で使用する「特異的に結合する」又は「~に特異的に結合する」とは、抗体がIL-6R抗原に選択的又は優先的に結合することを意味する。好ましくは、抗原に対する結合親和性は、10-9mol/l以下(例えば、10-10mol/l)のKd値であり、好ましくは10-10mol/l以下(例えば、10-12mol/l)のKd値で、抗原に対する結合親和性を有する。結合親和性は、表面プラズモン共鳴技術(BIACORE(登録商標)などの標準的な結合アッセイを用いて測定される。
「非ステロイド性抗炎症薬」又は「NSAIDs」の例としては、アスピリン、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、スリンダック、トルメチン、フェニルブタゾン、ジクロフェナク、ケトプロフェン、ベノリレート、メフェナム酸、メトトレキサート、フェンブフェン、アザプロパゾン;セレコキシブ(CELEBREX(登録商標);4-(5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)ベンゼンスルホンアミド、バルデコキシブ(BEXTRA(登録商標))、メロキシカム(MOBIC(登録商標))、GR 253035(Glaxo Wellcome);並びにMK966(Merck Sharp & Dohme)等のCOX-2阻害剤、これらの塩及び誘導体等を含む。具体的な実施態様には、アスピリン、ナプロキセン、イブプロフェン、インドメタシン、トルメチンが含まれる。
「有効量」という表現は、肺炎(例えば、COVID-19肺炎を含むウイルス性肺炎)の治療及び/又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療に有効なIL6アンタゴニスト(例えば、トシリズマブなどのIL6受容体抗体)の量を意味する。
「薬学的製剤」という用語は、一又は複数の活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象に許容できないほどに有毒なさらなる成分を含有しない調製物をいう。かかる製剤は、滅菌である。1つの実施態様では、製剤が静脈(iv)投与用である。1つの実施態様では、製剤が皮下(sc)投与用である。
「滅菌」製剤は、無菌であるか、又はすべての生きた微生物及びそれらの胞子を含まない。
本発明による「液体製剤」又は「水性製剤」は、少なくとも約2~約8℃の温度で液体である製剤を指す。
「凍結乾燥製剤」という用語は、製剤を凍結乾燥させ、その後、本技術分野で知られている任意の凍結乾燥方法、例えば市販の凍結乾燥装置によって凍結した内容物から氷を昇華させることによって乾燥させた製剤を示す。このような製剤は、水、注射用滅菌水、生理食塩水などの適切な希釈剤に再構成して、対象への投与に適した再構成液体製剤を形成することができる。
「添付文書」は、かかる治療薬の適応症、使用法、投薬量、投与、禁忌症についての情報、パッケージ製品と組み合わされる他の治療薬、及び/又はその使用に関する警告等を含有する、治療薬の商用のパッケージに通例含まれる指示書などを指すように使用される。
バイオマーカーの「高レベル」とは、患者におけるそのバイオマーカーの量が、正常上限値(ULN)を超えていることを意味する。
「IL6レベルの上昇」は、例えば、患者からの血液サンプルの酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定して、≧15pg/mL、又は≧10pg/mL、又は>7pg/mLである。1つの実施態様では、「正常な」IL6レベルが7pg/mLとされる。
「実験室検査でIL-6レベルの上昇が認められない」患者は、IL-6レベルに関係なく、本明細書の方法に従って治療されている。1つの実施態様では、このような患者のIL6レベルが上昇していない。
II.IL6アンタゴニストの産生
本明細書で考慮されるIL6アンタゴニストには、IL6又はIL6受容体に結合するアンタゴニストが含まれる。
1つの実施態様では、IL6アンタゴニストが抗体である。
1つの実施態様では、IL6アンタゴニストが、IL6受容体に結合する抗体である。
1つの実施態様では、IL6アンタゴニストが、膜結合型IL6受容体及び可溶性IL6受容体の双方に結合する抗体である。
1つの実施態様では、IL6アンタゴニストが、血中のIL-6の循環レベルを枯渇させるとともに、IL-6/IL-6受容体複合体をブロックする。
Il-6受容体に結合する抗体としては、トシリズマブ(tocilizumab:その静注用(iv)製剤、及び皮下(sc)製剤を含む)(中外製薬、ロッシュ、ジェネンテック)、サトリズマブ(satralizumab:中外製薬、ロッシュ、ジェネンテック)、サリルマブ(sarilumab:Sanofi、Regenon)、NI-1201又はTZLS-501(Novimmune及びTiziana)、ボバリリズマブ(vobarilizumab:Abrynx)等が挙げられる。
1つの実施態様ではIL6アンタゴニストが、トシリズマブである。
「トシリズマブ」は、骨髄腫受容体抗体(MRA)とも呼ばれ、ヒトインターロイキン-6受容体(IL-6R)に選択的に結合する組み換えモノクローナル抗体である。これは、典型的なH2L2構造を有するIgG1κ(ガンマ1、カッパ)抗体である。トシリズマブ分子は、2つのヘテロダイマーから構成される。各ヘテロダイマーは、重いポリペプチド鎖(H)及び軽いポリペプチド鎖(L)から構成されている。4本のポリペプチド鎖は、ジスルフィド結合によって分子内及び分子間で連結されている。トシリズマブ抗体の分子式及び理論分子量は、以下のとおりである:
分子式:C6428H9976N1720O2018S42(ポリペプチド部分のみ)
分子量:144,985 Da (ポリペプチド部分のみ)。
相補的なデオキシリボ核酸(cDNA)配列から推定され、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)ペプチドマッピングで確認された軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号1にある。各ヘテロダイマーの5つの軽鎖システイン残基は、2つの鎖内ジスルフィド結合と1つの鎖間ジスルフィド結合に関与している:
分子内結合:CysL23-CysL88及びCysL134-CysL194
重鎖と軽鎖との結合:CysL214 及びCysH222
ジスルフィド結合は、他のIgG1抗体との配列相同性に基づき、第4世代(G4)プロセスの材料を用いて行った液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)ペプチドマッピングにより確認されたものである。CysLx及びCysHxはそれぞれ、軽鎖と重鎖のx位のシステイン残基を示す。
配列番号1 トシリズマブ分子のL鎖のアミノ酸配列
Figure 2023518815000004
注:全配列は、LC-MSによるペプチドマッピングにより決定されている。
相補的なデオキシリボ核酸(cDNA)配列から推定され、アミノ酸配列の決定により確認された重鎖のアミノ酸配列は、配列番号2にある。2. 各ヘテロダイマーの11個の重鎖システイン残基は、4個の鎖内ジスルフィド結合、2個の重鎖間の2つの鎖間ジスルフィド結合、及び各ヘテロダイマーの重鎖と軽鎖間の3番目の鎖間ジスルフィド結合に関与している:
分子内結合:CysH22-CysH96, CysH146-CysH202, CysH263-CysH323 及びCysH369-CysH427
2つの重鎖間の結合:CysH228-CysH228及びCysH231-CysH231
重鎖と軽鎖との結合:CysL214-CysH222
ジスルフィド結合は、他のIgG1抗体との配列相同性に基づき、G4プロセスの材料を用いて行ったLC-MSペプチドマッピングにより確認されたものである。
配列番号2 トシリズマブ分子のH鎖のアミノ酸配列
Figure 2023518815000005
注:全配列は、LC-MSによるペプチドマッピングにより決定されている。重鎖のN末端は、主にピログルタミン酸残基(pE)であることが決定されている。
1つの実施態様では、IL6アンタゴニストがサトラリズマブ(satralizumab)である。サトラリズマブ(Satralizumab:SA237とも呼ばれる)は、IL6受容体に結合するヒト化モノクローナル抗体である。米国特許第 8,562,991号を参照。
1つの実施態様では、IL6アンタゴニストが、TZLS-501(Tiziana)又はNI-1201(Novimmune)と呼ばれるIL6受容体に結合するヒト抗体である。
1つの実施態様ではIL6アンタゴニストが、IL6に結合するモノクローナル抗体である。
IL-6と結合する抗体としては、シルクマブ(sirukumab:Centecor、Janssen)、オロキズマブ(olokizumab:UCB)、クラザキズマブ(clazakizumab:BMS及びAlder)、シルツキシマブ(siltuximab:Janssen)、EBI-031( Eleven Biotherapeutics及びRoche)などがある。
1つの実施態様ではIL6アンタゴニストが、オラムキセプト(olamkicept)である。オラムキセプトは、IL-6受容体のシグナル伝達サブユニットであるIL-6Rβ(糖タンパク質130、gp130)の細胞外ドメインをヒトIgG Fcフラグメントに融合させた、組み換えタンパク質である。完全な構築物は、同一のペプチド鎖が共有結合した二量体である。オラムキセプトはメカニズム的には、IL-6シグナル伝達経路の阻害剤として作用する。オラムキセプトは、可溶性IL-6受容体(sIL-6R)によるトランスシグナルを阻害する。
好ましい実施態様では、本発明の方法及び製造物品が、ヒトIL-6Rに結合する抗体を使用するか、又は組み込む。抗体の作製又はスクリーニングに用いるIL-6R抗原は例えば、所望のエピトープを含むIL-6Rの可溶型又はその一部(例えば細胞外ドメイン)であってよい。代替的に、又は追加的に、細胞表面にIL-6Rを発現している細胞を用いて、抗体を作製したり、スクリーニングしたりすることができる。抗体を産生するために有用なIL-6R受容体の他の形態は、当業者に明らかであろう。
1つの実施態様では、抗体が抗体断片であり、そのような様々な断片が上記に開示されている。
別の実施態様では、抗体がインタクトな又は完全長のIgG1抗体である。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、インタクトな抗体には、異なる「クラス」が割り当てられ得る。インタクトな抗体には5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、これらのいくつかをさらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2に分けてもよい。抗体のこれらの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構造はよく知られている。好ましい実施態様では抗IL-6R抗体が、IgG1抗体又はIgM抗体である。
抗体を作製する技術は知られており、その例は本文書の定義の項で先に述べたとおりである。好ましい実施態様では抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくはヒト抗体、又はこれらの抗原結合断片である。好ましくは、抗体がヒト化完全長抗体である。
抗体への結合を決定するための様々な技術が、利用可能である。1つのそのようなアッセイは、ヒトIL-6Rに結合する能力を確認するための酵素結合免疫吸着測定法(ELISA) である。例えば、米国特許第5,795,965号を参照されたい。このアッセイによれば、IL-6R(例えば、組換えsIL-6R)をコートしたプレートを、抗IL-6R抗体を含む試料とインキュベートし、抗体のsIL-6Rへの結合を測定する。
好ましくは、抗IL-6R抗体が、例えばIL-6のIL-6Rへの結合を阻害することにより、IL-6活性を中和する。このような阻害を評価する例示的な方法は、例えば米国特許第5,670,373号及び同第5,795,965号に開示されている。この方法によると、IL-6とIL-6Rとを競合させる抗体の能力が評価される。例えば、プレートにIL-6R(例えば、組み換えsIL-6R)をコートし、標識IL-6を有する抗IL-6R抗体を含む試料を加え、標識IL-6がIL-6Rに結合することをブロックする抗体の能力が測定される。米国特許第 5,795,965号を参照。代替的に、又は追加的に、膜結合型IL-6RへのIL-6の結合の同定は、Taga et al.の方法に従って実施される J. Exp.Med., 166: 967 (1987)。IL-6依存性ヒトT細胞白血病株KT3を用いた中和活性を確認するためのアッセイも利用できる。下記参照:米国特許第5,670,373号、及びShimizu et al.Blood 72: 1826 (1988)。
本明細書における抗IL-6R抗体の非限定的な例としては、PM-1抗体(Hirata et al., J. Immunol.143:2900-2906 (1989), AUK12-20, AUK64-7, 及びAUK146-15抗体(米国特許第5,795,965号)、並びにそのヒト化変異体(例えば、トシリズマブなど)が含まれる。米国特許第 5,795,965号を参照。本発明で用いられる再形成ヒト抗体の好ましい例としては、ヒト化又は再形成抗インターロイキン(IL-6)受容体抗体(hPM-1若しくはMRA)(米国特許第5,795,965号参照)などが挙げられる。
本明細書の抗体は、好ましくは、その重鎖及び軽鎖をコードする核酸配列で形質転換された宿主細胞で組換え生産される(例えば、宿主細胞がその核酸を有する1又は複数のベクターによって形質転換されている場合)。好ましい宿主細胞は哺乳類細胞であり、最も好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
III.医薬製剤
本発明に従って使用される抗体の治療製剤は、所望の純度を有する抗体を任意の薬学的に許容され得る担体、賦形剤又は安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.[1980])と混合することによって、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で貯蔵のために調製される。許容され得る担体、賦形剤又は安定剤は、レシピエントに対し、用いられる投薬量および濃度で非毒性であり、これらには、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチルアルコール若しくはベンジルアルコール;メチルパラベン若しくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなど)、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなど)、単糖、二糖、及び他の炭水化物(グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む);EDTAなどのキレート剤;糖(スクロース、マンニトール、トレハロース、又はソルビトールなど);ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、並びに/又は非イオン性界面活性剤(例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)など)が挙げられる。
本明細書の製剤はまた、必要に応じて2つ以上の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。かかる医薬品の型及び有効量は例えば、製剤中に存在する抗体の量、及び対象の臨床的パラメータに依存する。このような医薬品の例は、以下に述べるとおりである。
活性成分はまた、例えばコアセルベーション技法又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタチレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、及びナノカプセル)中に、又はマクロエマルション中に取り込まれてもよい。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed.,(1980)に開示されている。
徐放性製剤が調製されてもよい。持続放出調製物の好適な例としては、本抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、これらのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸エチルとのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)などの分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)、並びにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌状態でなければならない。これは、滅菌濾過膜による濾過により容易に達成される。
1つの実施態様では製剤が、静脈内(iv)注入に適しており、例えば、米国特許第8,840,884号及び第9,051,384号に開示されているようなトシリズマブiv製剤を挙げることができる。1つの実施態様ではトシリズマブiv製剤が、静脈内注入の前にさらに希釈するための無菌、透明、無色~淡黄色の防腐剤を含まない溶液であり、そのpHは約6.5である。1つの実施態様ではトシリズマブiv製剤が、リン酸二ナトリウム十二水和物/リン酸二水素ナトリウム二水和物緩衝液で製剤化され、トシリズマブを80mg/4mL、200mg/10mL、又は400mg/20mL含む20mg/mLの濃度で利用できる単回用量バイアルで提供される。1つの実施態様では、トシリズマブiv液の各mLが、ポリソルベート80(0.5mg)、スクロース(50mg)、及び注射用水(USP)を含む。
1つの実施態様では製剤が、皮下(sc)投与に適しており、例えば、米国特許第9,051,384号に開示されているようなトシリズマブsc製剤がある。1つの実施態様ではトシリズマブsc製剤が、無菌、無色~やや黄色っぽい、防腐剤無添加、ヒスチジン緩衝液の皮下投与用製剤であり、そのpHは約6.0である。1つの実施態様では、トシリズマブsc製剤が、針安全装置付きのすぐに使える単回投与0.9mLプレフィルドシリンジ(PFS)、又はすぐに使える単回投与0.9mLオートインジェクターで供給される。1つの実施態様では、トシリズマブsc製剤が、トシリズマブ162mg、L-アルギニン塩酸塩(19mg)、L-ヒスチジン(1.52mg)、L-ヒスチジン塩酸塩水和物(1.74mg)、L-メチオニン(4.03mg)、ポリソルベート80(0.18mg)及び注射用水を送達する。
好ましくは、製剤が等張性である。
IV. 抗IL-6アンタゴニストの治療的使用
本発明により、トシリズマブの(第1の)静脈内用量を体重基準で患者に投与することを含む、患者の肺炎の治療方法が提供され、ここで、体重基準の用量は、トシリズマブ8mg/kgである(例えば、トシリズマブ800mg以下が患者に投与される)。
1つの実施態様では、肺炎が重症肺炎である。
1つの実施態様では、肺炎が重篤肺炎である。
1つの実施態様では、肺炎が中等度の肺炎である。
1つの実施態様では、肺炎が中等度~重症肺炎である。
1つの実施態様では、肺炎がウイルス性肺炎である。
1つの実施態様では、ウイルス性肺炎がコロナウイルス性肺炎である。
1つの実施態様では、肺炎が、COVID-19肺炎、中東呼吸器症候群(MERS-CoV)肺炎、又は重症急性呼吸器症候群(SARS-CoV)肺炎である。
1つの実施態様では、ウイルス性肺炎がCOVID-19 肺炎である。
1つの実施態様では、ウイルス性肺炎が重症COVID-19性肺炎である。
1つの実施態様では、ウイルス性肺炎が重篤COVID-19性肺炎である。
1つの実施態様では、ウイルス性肺炎が中等度のCOVID-19 肺炎である。
1つの実施態様では、ウイルス性肺炎が、中等度~重度のCOVID-19肺炎である。
1つの実施態様では本方法が、第1の用量の8~12時間後に、トシリズマブの単一の(第2の)静脈内用量を体重基準で患者に投与することをさらに含み、第2の用量は体重基準で8mg/kgである(例えば、第2の投与で、トシリズマブ800mg以下が患者に投与される)。
1つの実施態様では本方法が、第1の用量の8~11時間後に、トシリズマブの単一の(第2の)静脈内用量を体重基準で患者に投与することをさらに含み、第2の用量は体重基準で8mg/kgである(例えば、第2の投与で、トシリズマブ800mg以下が患者に投与される)。
1つの実施態様では、体重基準の単回用量である8mg/kg(≦800mg)のみが、患者に投与される。
1つの実施態様では、体重基準の2回用量、それぞれ8mg/kg(≦800mg)のみが、患者に投与される。
1つの実施態様において、2回目の用量は、患者が1回目の用量後に臨床状態が改善しない又は悪化した後に投与される。
1つの実施態様において、2回目の用量は、患者が1回目の用量後に臨床状態の序数尺度で改善しない又は1カテゴリー以上の悪化を経験した後に投与される。
1つの実施態様において、2回目の用量は、患者が1回目の用量後に臨床状態の序数尺度で1カテゴリー以上の悪化を経験した後に投与される。
1つの実施態様において序数尺度は、7カテゴリーの序数尺度である。
本発明により、標準治療(SOC)よりも大きな臨床転帰の改善を達成する、抗IL6アンタゴニスト(例えばトシリズマブ、サルリウマブ、サトラリズマブ及び/又はTZLS-501などの抗IL6受容体抗体)による肺炎(例えばウイルス肺炎、コロナウイルス肺炎又はCOVID-19肺炎)の治療方法が提供される。
SOCと比較して臨床転帰が改善されていることを確認する方法として以下のいずれか1つ以上の方法が挙げられるが、これらに限られない:
1.臨床状態を表す序数尺度で測定された臨床転帰(例えば28日目及び/又は60日目);
2.臨床状態を表す7カテゴリーの序数尺度で測定された臨床転帰(例えば28日目及び/又は60日目);
3.臨床転帰は、臨床状態の7つのカテゴリーの序数尺度において、ベースラインに対して少なくとも2カテゴリーの改善を示すまでの時間(例えば28日目及び/又は60日目)を含む);
4.臨床転帰は、National Early Warning Score 2(NEWS2)が24時間2を維持した場合と規定される臨床的改善までの時間(TTCI)を含む;
5.機械的換気の発生(例えば28 日目及び/又は60 日目);
6.人工呼吸器を使用しない日数(例えば28日目まで);
7.臓器不全のない日数(例えば28日目及び/又は60日目まで);
8.集中治療室(ICU)滞在の発生(例えば28日目及び/又は60日目まで);
9.ICU滞在期間(例えば28日目及び/又は60日目まで);
10.臨床的失敗までの時間、例えば死亡、人工呼吸、ICU 入室、離脱のうちいずれかが最初に起こるまでの時間として規定;
11.死亡率(例えば、初日の治療後、7、14、21、28、60日目)。
12.退院までの時間;
13.退院準備完了(例えば体温及び呼吸数が正常で、大気中又は2L以下の補助酸素で酸素飽和度が安定していることが証明された場合);
14.酸素補給の期間;
15.バソプレッサー使用の発生;
16.バソプレッサー使用の期間;
17.体外式膜酸素療法(ECMO)の発生;
18.ECMOの期間。
1つの実施態様では、IL6アンタゴニストによる治療方法が、標準治療(SOC)と比較して許容可能な安全性成果と関連している。例示的な安全性の成果は、以下のいずれか1つ以上を含む:
1.有害事象の発生及び重症度
2.National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(NCI CTCAE)v5.0に従い決定された、有害事象の重症度
3.COVID-19(SARS-CoV-2)の経時的なウイルス量;
4.逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)ウイルス陰性化までの時間;
5.治療後の感染症;及び
6.標的とした臨床実験室試験結果におけるベースラインからの変化。
ここで肺炎、特にウイルス性肺炎(COVID-19肺炎など)に対するSOCは、いずれか1つ以上(例えば、いずれか1つ、2つ又は3つ)を含む:
1.支持療法:
2.1又は複数の抗ウイルス剤;
3.1又は複数のコルチコステロイド(例えば、低用量コルチコステロイド)。
4.1つの実施態様では、SOCが支持療法を含む。支持療法の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限られない:
1.酸素療法(例えばフェイスマスク又は鼻カニューレによるもの;高流量鼻腔酸素療法又は非侵襲的機械換気;侵襲的機械換気;体外膜酸素療法(ECMO)による肺の拡張など);
2.循環支援(例えば輸液、微小循環の促進、血管作動薬);
3.腎代替療法;
4.プラズマ療法;
5.血液浄化療法;
6.血必浄(Xuebijing)注射(例えば100mL/日を1日2回);及び
7.マイクロエコロジー剤(例えばプロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクスなど。
1つの実施態様ではSOCが、1つ以上の抗ウイルス剤(好ましくは、1つ又は2つのみの)抗ウイルス剤による治療を含む。例示的な抗ウイルス処理には、以下のものが含まれるが、これらに限られない:
1.α-インターフェロン(例えばネブライザーによる;例えば、成人の場合1回約500万単位又は相当量を注射用滅菌水2mLに添加;例えばエアゾール吸入により1日2回);
2.ロピナビル/リトナビル(例えば1カプセル200mg/50mg、1回2カプセル、成人の場合1日2回、例えば10日以下);
3.リバビリン(例えばα-インターフェロン又はロピナビル・リトナビルとの併用、例えば成人1回500mg、1日2~3回点滴静注、例えば10日以下);
4.リン酸クロロキン又はヒドロキシクロロキン(例えば、18歳から65歳までの成人;例えば、体重が50kg超の場合、1回500mg、1日2回、7日間;体重が50kg未満の場合、1回500mg、1日2回、初日と2日目;1回500mg、1日1回、3日目から7日目);及び
5.ウミフェノビル(例えば、成人の場合200mg、例えば1日3回、例えば10日以下)。
1つの実施態様ではSOCが、コルチコステロイド(複数可)による治療を含み、例えば、
1.患者が、酸素化の進行性悪化、X線の急速な進行、及び/又は過剰な炎症反応を有する場合:
2.プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウム、デキサメタゾン、デキサメタゾントリアムシノロン、ヒドロコルチゾン、及び/又はベータメタゾンが挙げられる。
3.プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、又はデキサメタゾン。
4.メチルプレドニゾロン;
5.「低用量」コルチコステロイド;
6.投与されたコルチコステロイドは、≦1~2mg/kg/日;
7.メチルプレドニゾロン ≦ 1~2mg/kg/日;
8.メチルプレドニゾロン ≦ 1~2mg/kg/日、3~5日間。
本発明はまた、患者の肺炎(ウイルス性肺炎、例えばCOVID-19肺炎などのコロナウイルス性肺炎を含む)を治療する方法に関し、当該方法は、
a.体重基準で8mg/kgという第1の静脈内用量を患者に投与すること、及び
b.最初の用量の8~12時間後(例えば、最初の用量の8~11時間後)、体重基準で8mg/kgという第2のトシリズマブ静脈内用量を患者に投与することを含み、ここで患者は、第1の用量後に、臨床状態の序数尺度において改善が見られないか、又は1カテゴリー以上悪化している。
別の実施態様において本発明は、臨床状態の序数尺度で測定した場合に標準治療(SOC)よりも大きな臨床結果の改善を達成するのに有効な量のIL6アンタゴニストを患者に投与することを含む、患者の肺炎(ウイルス性肺炎、例えばCOVID-19肺炎などのコロナウイルス肺炎など)を治療する方法をもたらす。
1つの実施態様では、IL6アンタゴニストが、IL6受容体に結合する。
1つの実施態様ではIL6アンタゴニストが、トシリズマブ、サルリウマブ、サトラリズマブ、及び/又はTZLS-501である。
本明細書のいずれかの方法の別の実施態様では、IL6アンタゴニストSOCと共にSOCで患者を治療することができる。SOCには、例えば、先に開示したような支持療法、1又は複数の抗ウイルス剤、及び/又は1又は複数の低用量コルチコステロイドが含まれる。
別の実施態様において本発明は、IL6アンタゴニスト(例えば、トシリズマブなどのIL6受容体抗体)を、IL6レベルが上昇していない患者に投与することを含む、患者の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療する方法をもたらす。ARDSの患者は、COVID-19肺炎などのウイルス性肺炎を有する可能性がある。
本明細書で規定する追加の薬物は、それまでに使用されたのと同じ投与量及び投与経路か、又は先に用いた投与量の約1~99%で使用される。そのような追加の薬物を全く使用しない場合、好ましくは、第1の薬品が存在しない場合よりも低い量で、特に第1の薬品による最初の投与を超えたその後の投与において使用し、それによって生じる副作用を排除又は減少させるようにする。
追加薬物の併用投与には、別個の製剤又は単一の薬学的製剤を使用する共投与(同時投与)と、いずれかの順序における連続投与とが含まれ、好ましくは、両方(又は全て)の活性剤(薬品)がそれらの生物活性を同時に発揮する期間が存在する。
V.製造物品
本発明の別の実施態様では、上記の肺炎(ウイルス性肺炎、例えばCOVID-19肺炎などのコロナウイルス性肺炎を含む)及び/又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療に有用な材料を含む製造物品がもたらされる。
製造品は、任意選択的に、対象における肺炎(ウイルス性肺炎、例えばCOVID-19肺炎のようなコロナウイルス性肺炎を含む)及び/又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療するための指示を有するパッケージ挿入物をさらに含み、ここで当該指示は、本明細書に開示される抗体による治療が肺炎(例えばウイルス性肺炎、例えばCOVID-19肺炎のようなコロナウイルス性肺炎を含む)及び/又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療することを示している。
本発明のさらなる詳細を、以下の非限定的な実施例により説明する。本明細書におけるすべての引用文献の開示内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
実施例1:重症COVID-19型肺炎患者におけるトリシズマブの安全性及び有効性を評価するための無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同試験
本試験は、重症COVID-19肺炎の入院中の成人患者を対象に、TCZとSOCとの併用療法についての有効性と安全性を、SOCと組み合わせたマッチングプラセボと比較して評価する、多施設、無作為二重盲検、プラセボ対照の第III相試験である。COVID-19肺炎と診断され、各施設の参加基準を満たした約330名の患者が治療される。本試験の具体的な目的及び対応する評価項目を以下に概説する。
有効性目標
主要有効性目標
本試験の主要評価項目は、重症COVID-19肺炎の治療についてTCZの有効性を、SOCと組み合わせたプラセボと比較して、以下の評価項目に基づいて評価することである:
1.28日目の臨床状態を7カテゴリーの序列で評価
副次的有効性の目的
本試験の二次評価項目は、重症COVID-19肺炎の治療についてTCZの有効性を、SOCと組み合わせたプラセボと比較して、以下の評価項目に基づいて評価することである:
1.National Early Warning Score 2(NEWS2)が24時間2を維持した場合と規定される臨床的改善までの時間(TTCI)
2.臨床状態の7つのカテゴリーの序数尺度において、ベースラインに対して少なくとも2カテゴリーの改善を示すまでの時間;
3.機械的換気の発生
4.28日目までの、人工呼吸器を使用しない日数
5.28日目までの、臓器不全のない日数
6.集中治療室(ICU)滞在の発生
7.ICU滞在期間
8.臨床的失敗までの時間、死亡、人工呼吸、ICU 入室、離脱のうちいずれかが最初に起こるまでの時間として規定
9.7、14、21、28、60日目における死亡率
10.退院までの時間、又は退院準備完了(体温及び呼吸数が正常で、大気中又は2L以下の補助酸素で酸素飽和度が安定していることが証明された場合);
11.酸素補給の期間。
有効性の追加目標
本試験のさらなる評価項目は、重症COVID-19肺炎の治療についてTCZの有効性を、SOCと組み合わせたプラセボと比較して、以下の評価項目に基づいて評価することである:
1.バソプレッサー使用の発生
2.バソプレッサー使用の期間
3.体外式膜酸素療法(ECMO)の発生
4,ECMOの期間;
5.安全目標
本試験の安全目標は、重症COVID-19肺炎の治療についてTCZの安全性を、SOCと組み合わせたプラセボと比較して、以下の評価項目に基づいて評価することである:
1.有害事象の発生及び重症度、重症度は、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(NCI CTCAE)v5.0に従い決定
2.鼻咽頭ぬぐい液及び気管支肺胞洗浄液(BAL)サンプルで採取したCOVID-19(SARS-CoV-2)ウイルス量の経時変化(該当する場合)
3.逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)ウイルス陰性化までの時間
4.治療後に何らかの感染症を発症した患者の割合
5.標的とした臨床実験室試験結果におけるベースラインからの変化。
薬理作用の目的
本試験の薬力学的目的は、COVID-19肺炎患者におけるTCZの薬力学的効果を、ベースラインに対する以下の分析物の経時的測定によって特性決定することである:
1.指定された時点におけるIL-6、sIL-6R、フェリチン、CRPの血清中濃度
薬物動態学的目的
本試験のPK目的は、COVID-19肺炎患者におけるTCZのPKプロファイルを、以下の評価項目に基づいて特性決定することである:
1.特定の時点におけるTCZの血清濃度
試験の説明
患者は、何らかの検体(例えば呼吸器、血液、尿、便、その他の体液)のPCRが陽性であるなど、WHO基準によりCOVID-19感染が確認された、年齢が18歳以上の者でなければならない。登録時には、抗ウイルス治療、低用量ステロイド、支持療法などのSOCを行っているにもかかわらず、患者のSpO2が≦93%であるか、又は患者のPaO2/FiO2が<300mmHgでなければならない。
治療の提供にかかわらず、24時間以内に死亡への進行が差し迫り、避けられないと担当医が判断した患者は、本試験から除外される。活動性の結核(TB)、又は活動性の細菌、真菌、ウイルス、その他の感染症(COVID-19以外)が疑われる患者は、本試験から除外される。
患者は、スクリーニング後できるだけ早く、2:1の割合で、TCZ又はマッチングプラセボをそれぞれ盲検下で投与されるよう無作為に割り当てられる。試験治療は、SOCとの併用でなければならない。無作為化は、地域別(北米、欧州、その他)及び人工呼吸(あり、なし)で層別化されることになる。
TCZ群に割り当てられた患者には、いずれもSOCに加えて、TCZ 8 mg/kg(最大用量800 mg)を1回点滴投与し、プラセボ群に割り当てられた患者には、プラセボが1回点滴投与される。
両群とも、臨床症状が悪化又は改善しない場合(例えば、発熱の持続や臨床状態の7カテゴリーの序列で少なくとも1カテゴリーの悪化によって反映される)、最初の点滴の8~12時間後にTCZまたはプラセボの盲検治療の点滴を追加投与できる。
28日目以降
患者は、試験薬の初回用量後、合計60日間フォローアップされる。
退院した患者については、28日目から試験終了までの間、電話による面談が行われる場合がある。
試験期間中は、臨床プラクティスに従って標準的な支持療法が行われる。
患者は、無作為化から60日間、フォローアップされる。
対照群
本試験では、SOCとの併用において、TCZ IVの有効性及び安全性をマッチングプラセボと比較する。COVID-19の標的治療薬が無いとはいえ、重症COVID-19肺炎患者に対するSOCは一般的に、支持療法を含み、地域の治療ガイドラインの指示に従い、利用可能な抗ウイルス剤及び低用量のコルチコステロイドを含む場合がある。
患者
本試験では、重症COVID-19肺炎の入院患者約330名の登録を目標とする。
選択基準
患者は次の試験登録基準を満たさなければならない:
1.年齢18歳以上
2.WHO基準(呼吸器、血液、尿、便、その他の体液など、あらゆる検体のPCR陽性を含む)で確認され、胸部X線又はCTスキャンで証明された、COVID-19肺炎で入院した患者。
3.SpO2 ≦93%又はPaO2/FiO2< 300 mmHg
除外基準
以下の基準のいずれかを満たす患者は、試験登録から除外される:
1.TCZ又は他のモノクローナル抗体に対する既知の重度アレルギー反応
2.活動性結核感染症
3.活動性の細菌、真菌、ウイルス、又はその他の感染症の疑い(COVID-19以外)。
4.治験者の見解において、治療の提供にかかわらず、24時間以内に死亡への進行が差し迫り、避けられない。
5.過去6ヶ月以内に抗拒絶反応薬又は免疫調節薬(TCZを含む)の内服を受けたことがある。
6.他の医薬品の臨床試験への参加(メディカルモニターが認めた場合、COVID-19抗ウイルス剤の臨床試験への参加も可)
7.スクリーニング時又はベースライン時に24時間以内に検出されたALT又はAST > 10 x ULN(地元の検査機関の基準範囲に基づく)
8.スクリーニング及びベースライン時のANC<1000/μL(現地の検査基準範囲による。)
9.スクリーニング及びベースラ5イン時の血小板数 < 50,000/μL (現地の検査基準範囲による)
10.妊娠中若しくは授乳中である、又は投与前の検査で妊娠反応が陽性である
11.無作為化後5半減期又は30日以内(いずれか長い方)の治験薬による治療(メディカルモニターが認めた場合、COVID-19抗ウイルス剤の治験を許可することがある)
12.重篤な病状又は臨床検査値の異常により、治験者が患者の試験への安全な参加及び完了を妨げると判断した場合。
7カテゴリーの序数尺度
初日のベースライン時に7カテゴリーの序数尺度で臨床状態を評価し、その後、入院中は毎朝8時から12時の間に1回、再度評価する。序数尺度のカテゴリーは以下のとおり:
1.退院、又は退院準備完了(体温及び呼吸数が正常で、大気中又は2L以下の補助酸素で酸素飽和度が安定していることが証明された場合);
2.ICU以外の病棟(又は「入院準備病棟」)で、酸素補給を必要としない
3.ICU以外の病棟(又は「入院準備病棟」)で、酸素補給を必要とする
4.ICU又は非ICU病棟で、非侵襲的換気又は高流量酸素を必要とする
5.ICUで、挿管と人工呼吸が必要
6.ICUで、ECMO又は機械的換気と追加の臓器サポート(例えば、血管拡張剤、腎代替療法)を必要とする
7.7.死亡
一般に、酸素飽和度が常に≦90%の患者は、より高い臨床状態カテゴリーへの格上げを考慮すべきであり、酸素飽和度が常に≧96%の患者は、より低いカテゴリーへの格下げを考慮すべきである。酸素補給を行っている患者は、少なくとも毎日評価を行い、酸素補給の減量又は中止を検討する必要がある。実際の支持レベルの変更は、患者の全体的な状態に基づいて治療する臨床医の裁量に委ねられ、他の臨床的及び非臨床的な考慮事項によって決定される場合がある。
正常体温とは、口腔内、直腸内、鼓膜温のいずれかが36.1~38.0℃と定義される。正常な呼吸数は、1分間に12~20回と定義されている。
全米早期警戒スコア(NEWS)2
NEWS2スコアは、Royal College of Physiciansに開示されている。全米早期警戒スコア(NEWS)2は、NHS London: RCP (2017)で急性疾患の重症度評価を標準化している。
これには、以下のパラメータの評価が含まれる:
Figure 2023518815000006
酸素飽和度は、上表に示したSpO2スケール1又は2のいずれかに従ってスコア化すべきである。SpO2スケール2は、目標酸素飽和度要求値が88%~92%の患者(例えば、慢性閉塞性肺疾患[COPD]などの進行した肺疾患に関連した過呼吸性呼吸不全の患者)向けである。入院前又は入院中の血液ガス分析により、高呼吸性呼吸不全であることが確認された患者のみに使用される。
SpO2スケール2を使用するかどうかは、担当医が決定し、eCRFに記録しておくべきである。その他の状況では、SpO2スケール1を使用すべきである。
生理学的なパラメータ「空気又は酸素?」について:酸素飽和度を維持するため、また呼吸をサポートするために、酸素や他の換気装置の使用を必要とする患者には、スコア2を割り当てるべきである。
意識レベルは、評価中の患者の最良の臨床状態に従って記録すべきである。「注意」(A)と評価された患者には、スコア0を割り当てるべきである。「新たな錯乱」(C)、「音声に反応」(V)、「痛みに反応」(P)、又は「意識不明」と評価された患者には、スコア3を割り当てるべきである。
呼吸数、収縮期血圧、脈拍及び体温は、上の表に従ってスコアをつける。
NEWS2値は、治験者がバイタルサインパラメータを適切なeCRFに入力することにより、治験依頼者が試験期間中、電子的に算出する。
例示的な場合の計算
82歳の女性が入院し,COVID-19が陽性であったため,非侵襲的換気のために高位依存性病棟に入院した。彼女の観察データと対応するNEWS2スコアは以下のとおり:
Figure 2023518815000007
肝機能
初日のTCZ又はマッチングプラセボの各用量前に、患者の肝機能を評価する必要がある。臨床試験において、TCZの投与により軽度及び中等度の肝トランスアミナーゼの上昇が観察されている。本試験では、TCZ又はプラセボを単回用量治療(追加点滴の可能性あり)するため、これらの集団における肝酵素上昇に対するTCZの推奨用量変更は適用されない。胆汁うっ滞やその他の高ビリルビン血症の原因がないのに、ALT又はAST(>3×ULN)が上昇し、総ビリルビン(>×2ULN)の上昇又は臨床黄疸が認められる場合、重度の肝障害(Hy's Lawで定義)の指標とみなされる。以下のいずれかが発生した場合、有害事象を報告することができる:
1.治療上必要な ALT又は AST>3×ULN と総ビリルビン>2×ULN の組み合わせ
2.臨床的黄疸と併発した、治療下で発現したALT又はAST>3×ベースライン値。
結果及び結論
体重基準(8mg/kg≦800mg)のトシリズマブ用量を静脈内投与し、初回用量から8~12時間(8~11時間を含む)後に任意選択的に体重基準で第2の用量(8mg/kg≦800mg)のトシリズマブを投与する本明細書の治療(臨床状態の序列スケールで少なくとも1カテゴリーの悪化によって反映されるように患者の臨床兆候又は症状が改善又は悪化しない場合)は、本明細書で規定する安全性評価項目に従って許容される毒性を有しながら、一次、二次、又は追加の評価項目のいずれか1つ以上を達成することが予測される。

Claims (42)

  1. 体重基準でトシリズマブの静脈内用量を患者に投与することを含む、患者の重症肺炎を治療する方法であって、体重基準の用量が、8mg/kgのトシリズマブである、方法。
  2. 患者は、実験室試験によって決定されるIL-6レベルの上昇を有することが判明していない、請求項1に記載の方法。
  3. 肺炎がウイルス性肺炎である、請求項1に記載の方法。
  4. 肺炎が、中等症、重症又は重篤の肺炎である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 肺炎が重症肺炎である、請求項4に記載の方法。
  6. 肺炎がコロナウイルス肺炎である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 肺炎が、COVID-19肺炎、中東呼吸器症候群(MERS CoV)肺炎、又は重症急性呼吸器症候群(SARS-CoV)肺炎である、請求項6に記載の方法。
  8. 肺炎がCOVID-19肺炎である、請求項7に記載の方法。
  9. 用量が、800mg以下のトシリズマブである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 第1の用量から8~12時間後に、体重基準で8mg/kgという第2のトシリズマブ静脈内用量を患者に投与することをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 第2の用量が、800mg以下のトシリズマブである、請求項10に記載の方法。
  12. 第2の用量を、第1の用量後に臨床状態について改善していない又は悪化している患者に投与する、請求項10又は11に記載の方法。
  13. 患者は、第1の用量後、臨床状態の序数尺度で1つ以上カテゴリーが悪化している、請求項12に記載の方法。
  14. 序数尺度が、7カテゴリーの序数尺度である、請求項13に記載の方法。
  15. 臨床転帰において標準治療(SOC)よりも大きな改善が達成される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 臨床転帰が、臨床状態の序数尺度で測定される、請求項15に記載の方法。
  17. 序数尺度が、7カテゴリーの序数尺度である、請求項16に記載の方法。
  18. 臨床転帰が、臨床状態の序数尺度におけるベースラインに対して、少なくとも2カテゴリーを改善するまでの時間である、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 臨床転帰が、24時間維持される2以上のNational Early Warning Score 2(NEWS2)として規定される、臨床的改善までの時間(TTCI:time to clinical improvement)である、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 臨床転帰が人工呼吸の発生である、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 臨床転帰が、28日目までの人工呼吸器無しの日数である、請求項15から20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 臨床転帰が、臓器不全の無い日数である、請求項15から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 臨床転帰が、集中治療室(ICU)滞在の発生である、請求項15から22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 臨床転帰が、ICU滞在の継続である、請求項15から23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 臨床転帰が、死亡、人工呼吸、ICU入室又は退室のうちいずれかが最初に起こるまでの時間として規定される、臨床的失敗までの時間である、請求項15から24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 臨床転帰が、1日目の治療に続く7、14、21、28及び60日目の死亡率である、請求項15から25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 臨床転帰が、退院までの時間であるか;又は正常な体温及び呼吸数、並びに周辺空気又は2L以下の補助酸素で安定的な酸素飽和度により証明される、退院準備完了である、請求項15から26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 臨床転帰が、補助酸素の継続である、請求項15から27のいずれか一項に記載の方法。
  29. 臨床転帰が、昇圧剤使用の発生、昇圧剤使用の継続、体外膜酸素化(ECMO)の発生、及びECMOの継続からなる群から選択される、請求項15から28のいずれか一項に記載の方法。
  30. 標準治療(SOC)と比較して許容可能な安全転帰と関連付けられている、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
  31. 安全転帰が、有害事象の発生及び重症度;National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(NCICTCAE)v5.0に従って決定された重症度を伴う有害事象の発生及び重症度;COVID-19(SARS-CoV-2)の経時的なウイルス量;逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)ウイルス陰性までの時間;治療後の感染;及び対象臨床検査結果におけるベースラインからの変化からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
  32. SOCが、支持療法、一若しくは複数の抗ウイルス剤の投与、及び/又は一若しくは複数の低用量コルチコステロイドの投与を含む、請求項15又は30に記載の方法。
  33. 患者患者の肺炎を治療する方法であって、
    a.体重基準で8mg/kgという第1のトシリズマブ静脈内用量を、患者に投与すること、及びさらに、
    b.第1の用量の8~12時間後に、体重基準で8mg/kgという第2のトシリズマブ静脈内用量を、第1の投与後に臨床状態の序数尺度で、改善しない患者、又は1カテゴリー以上悪化している患者に投与すること
    を含む、方法。
  34. 患者の肺炎を治療する方法であって、臨床状態の序数尺度で測定して、標準治療(SOC)よりも大きな臨床転帰の改善を達成するのに有効な量のIL6アンタゴニストを、患者に投与することを含む、方法。
  35. IL6アンタゴニストがIL6受容体に結合する、請求項34に記載の方法。
  36. IL6アンタゴニストがトシリズマブである、請求項35に記載の方法。
  37. 肺炎がウイルス性肺炎である、請求項34から36のいずれか一項に記載の方法。
  38. ウイルス性肺炎がCOVID-19肺炎である、請求項37に記載の方法。
  39. IL6レベルが上昇していない患者の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療する方法であって、患者にIL6アンタゴニストを投与することを含む、方法。
  40. IL6アンタゴニストがIL6受容体に結合する、請求項39に記載の方法。
  41. IL6アンタゴニストがトシリズマブである、請求項40に記載の方法。
  42. 患者は、アラニントランスアミナーゼ(ALT)又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が>5であり、正常上限(ULN)が<10である、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
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