JP2023514045A - 活性特異的な細胞濃縮 - Google Patents

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Abstract

発現ベクターを含むことができる宿主細胞の遺伝的に多様なプールから、高性能宿主細胞および/または発現ベクターを選択することができる、活性特異的な細胞濃縮方法が提供される。一部の実施形態では、複数の遺伝的バリアントを含む遺伝的多様性を有する宿主細胞集団から、発現された宿主細胞を選択する方法であって、宿主細胞の少なくとも一部は、対象となる遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列を含むものである、当該方法を提供する。【選択図】図1

Description

関連出願への相互参照
本出願は、2020年1月15日に出願された米国仮特許出願第62/961,392号の利益を主張するものであり、当該仮特許出願は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
分野
本開示は、分子生物学およびバイオテクノロジー製造の全般的な技術分野におけるものである。より具体的には、本開示は、遺伝子産物発現のための宿主細胞工学の技術分野にある。
背景
バイオテクノロジー物質の産生は複雑なプロセスであり、宿主細胞によって発現されるタンパク質などの遺伝子産物の質と量に影響を及ぼす複数の因子次第である。宿主細胞ゲノムおよび/または発現構築物間で変動(多様性)があるものである発現構築物を含む宿主細胞の集団を考慮すると、細胞当たり所望の量の活性遺伝子産物を産生することができる宿主細胞および/または発現構築物は、その多様な集団から選択することが有利であろう。これを達成するための技術的課題は、遺伝子産物が宿主細胞の細胞質内で完全に発現される、すなわち遺伝子産物に特異的な検出試薬が容易に接触することができない場合に克服がより困難であり。
概要
高性能宿主細胞および/または発現構築物を選択するための改善された方法が明らかに要望されている。本開示は、発現構築物を含むことができる宿主細胞の遺伝的に多様な集団からの高性能細胞の活性特異的な濃縮(enrichment)のための方法を提供する。
したがって、一部の実施形態では、複数の遺伝的バリアントを含む遺伝的多様性を有する宿主細胞集団から、発現された宿主細胞を選択する方法であって、宿主細胞の少なくとも一部は、対象となる遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列を含むものである、当該方法を提供する。いくつかの実施例では、この方法は、宿主細胞の集団を培養することであって、それにより対象となる遺伝子産物は、当該集団のうち宿主細胞の亜集団によって発現され、それによって亜集団が、発現された宿主細胞を含むものであり、当該発現宿主細胞からの対象となる遺伝子産物の発現のレベルが、遺伝的バリアントに基づいて変動するものである、培養することと、亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部を標識化することであって、標識化することが、対象となる遺伝子産物を検出可能部分と結合させることを含み、当該標識の量が、発現宿主細胞中の対象となる遺伝子産物の発現レベルに比例し、それによって標識された発現宿主細胞を産生するものである、標識化することと、標識された発現宿主細胞のサブセットを選択することであって、当該選択することは、細胞選別装置により、検出可能部分および標識の量を検出することを含むものである、選択することとを含む。一部の実施例では、発現宿主細胞は、遺伝的バリアントごとに対象となる遺伝子産物の相対的な発現レベルを測定することにより決定される。
他の実施形態では、複数の遺伝的バリアントを含む遺伝的多様性を有する宿主細胞集団から、発現宿主細胞を選択する方法であって、宿主細胞の少なくとも一部は、対象となる遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列を含むものである、当該方法を提供する。一部の実施例では、この方法は、宿主細胞の集団を培養することであって、それにより対象となる遺伝子産物は、当該集団のうちの宿主細胞の亜集団によって発現され、それによって亜集団が、発現された宿主細胞を含むものであり、当該発現宿主細胞の所定の特性が、遺伝的バリアントに基づいて変動するものである、培養することと、亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部を標識化することであって、当該標識化することが、対象となる遺伝子産物を検出可能部分と結合させることを含み、当該標識の量が、発現宿主細胞中の対象となる遺伝子産物の所定の特性に比例し、それによって標識された発現宿主細胞を産生するものである、標識化することと、標識された発現宿主細胞のサブセットを選択することであって、当該選択することは、細胞選別装置により、検出可能部分および当該所定のものを検出することを含むものである、選択することとを含む。特定の実施例では、発現宿主細胞の所定の特性は、対象となる活性遺伝子産物の発現レベル、対象となる遺伝子産物の発現レベル、対象となる遺伝子産物の適切なタンパク質フォールディング、対象となる遺伝子産物の適切に折り畳まれたタンパク質の発現レベル、細胞生存率、および/またはバイオマスの量を含む。追加の実施例では、発現宿主細胞は、遺伝的バリアントごとに対象となる遺伝子産物の相対発現レベルを測定することにより決定される。
また、少なくとも1000の遺伝的多様性を有する宿主細胞の集団から宿主細胞を選択するための方法であって、宿主細胞の少なくとも一部が、対象となる遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施例では、この方法は、宿主細胞の集団を培養することであって、それにより対象となる遺伝子産物が、当該集団のうちの宿主細胞の亜集団によって発現され、それによって亜集団が発現された宿主細胞を含むものである、培養することと、亜集団の当該発現宿主細胞の少なくとも一部を標識化することであって、当該標識化することが、対象となる遺伝子産物が検出可能部分と結合し、それによって、標識された発現宿主細胞を産生するものである、標識化することと、標識された発現宿主細胞のサブセットを選択することであって、当該選択することは、細胞選別装置により検出可能部分を検出することを含むものである、選択することとを含む。一部の実施例では、発現宿主細胞は、遺伝的バリアントごとに対象となる遺伝子産物の相対的な発現レベルを測定することにより決定される。
本開示の方法の実施形態では、宿主細胞集団の遺伝的多様性は、宿主細胞集団のうちの宿主細胞の少なくとも一部で構成される、宿主細胞ゲノム変異、一つもしくは複数の発現構築物のポリヌクレオチド配列変異、またはそれらの組み合わせである。特定の実施例では、宿主細胞の集団の遺伝的多様性が、200,000~1,000,000である。
本方法の実施形態では、選択することが、蛍光により活性化される細胞の選別である。一部の実施例では、検出可能部分は蛍光部分であり、選択することは、最も高い蛍光放射である細胞の0.01%~5%を選択することを含む。特定の非限定的な実施例では、選択することが、最も高い蛍光放射である細胞の0.5%を選択することを含む。
本方法の追加の実施形態では、対象となる遺伝子産物が、シグナルペプチドを欠くポリペプチドを含む。他の実施形態では、対象となる遺伝子産物は、蛍光ポリペプチドおよび生物発光ポリペプチドからなる群から選択される第二のポリペプチドにインフレームで融合した第一のポリペプチドを含む。一部の実施例では、対象となる遺伝子産物に結合する検出可能部分は、蛍光ポリペプチドおよび生物発光ポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドを含む。他の実施形態では、対象となる遺伝子産物は、酵素活性を有する第二のポリペプチドにインフレームで融合した第一のポリペプチドを含む。一部の実施例では、対象となる遺伝子産物と結合する検出可能部分は、酵素活性を有するポリペプチドの活性部位に結合する。
本方法の一部の実施形態では、対象となる遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列は、発現ベクターである。一部の実施例では、発現ベクターは、染色体外発現ベクターである。
追加の実施形態では、亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部を標識化することは、発現宿主細胞の亜集団を固定することを含む。発現宿主細胞の亜集団を固定することは、亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部を、アルデヒドと、例えばパラホルムアルデヒドと接触させることを含み得る。
他の実施形態では、亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部を標識化することは、亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部を透過化処理すること、例えば亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部をリゾチームと接触させること、を含む。
さらなる実施形態では、亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部を標識化することは、亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部を、例えばヨウ化プロピジウムである、DNAを標識する化合物と接触させることをさらに含む。
一部の実施形態では、宿主細胞の集団が、原核細胞である。一実施例では、宿主細胞が、大腸菌(E.coli)521細胞などの大腸菌(Escherichia coli)細胞である。
一部の実施形態では、本方法はまた、標識された発現宿主細胞のサブセットからポリヌクレオチドを回収することを含み、それによって回収されたポリヌクレオチドを産生する。いくつかの実施例では、方法はまた、回収されたポリヌクレオチドからDNA配列情報を取得することも含む。方法はまた、DNA配列情報に基づいて宿主細胞のゲノムを改変すること、例えばDNA配列情報に基づいて発現ベクターのライブラリーを構築すること、を含んでもよい。一部の実施例では、親宿主細胞株は、発現ベクターのライブラリーを用いてさらに形質転換される。他の実施例では、回収されたポリヌクレオチドが発現ベクターであり、本方法は、一つまたは複数の回収された発現ベクターを用いて親宿主細胞株を形質転換することをさらに含み得る。方法は、形質転換された宿主細胞を培養することをさらに含み、形質転換された宿主細胞の少なくとも一部が、対象となる遺伝子産物を発現する。一部の実施例では、例えばゲル電気泳動、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、高速液体クロマトグラフィー(HP-LC)を含む液体クロマトグラフィー(LC)、固相抽出・質量分析法(SPE-MS)、または増幅発光近接均質アッセイにより、対象となる遺伝子産物の発現レベルが決定される。
本開示の前述のおよび他の特徴は、以下の詳細な説明からより明らかになり、これは添付図面を参照しながら進められる。
図1A~1Fは、活性特異的な細胞濃縮プロセスの実施形態の概略図である。下向き矢印が、宿主細胞の遺伝的に多様な大型の集団(図1A)から始まり、水平の破線で表した選択プロセスの適用を経る、高性能宿主細胞の選択を表している。図1Bは、例えば活性特異的細胞選別による、細胞選別装置を使用した高性能宿主細胞の選択を示す。図1Cは、宿主細胞の選択された集団を示し、一部の実施形態では、選択された高性能宿主細胞から回収された染色体外発現ベクターを用いて、または選択された高性能宿主細胞からの配列情報を使用して作成した「高性能」発現ベクターライブラリーを用いて行った、親宿主細胞株の形質転換についての結果であり得る。図1Dおよび1Eは、例えばSPE-MSなどの高処理アッセイ(図1D)および/または例えば抗原結合アッセイなどの活性に基づくアッセイ(図1E)を利用する、高性能宿主細胞のさらなる選択を示している。図1Fで示すように、最も高性能の宿主細胞は、発酵プロセスにおいて力価および産物品質の両方に対して最適化されて、スケーラビリティを確保することができる。図1B、1D、1E、および1Fに示す各選択プロセスは、必要に応じて、高性能宿主細胞をさらに選択するために反復することができる。 図2A~2Cは、三つのFACSプロットを示し、これらは「低DNA」ゲーティングパラメータ内に該当する検出イベントを示している。各パネルで、標識した宿主細胞のDNA蛍光(675nm/20フィルターでのFSC-A)を、蛍光標識されたHER2タンパク質を使用してTRAST-Fab発現に関して標識した宿主細胞の蛍光(530nm/30フィルターでのFSC-A)に対してプロットしている。図2Aは、陰性対照サンプルA1であり、これは空ベクターを含む宿主細胞集団である。図2Bは、陽性対照サンプルA3であり、これはcDsbC共発現によりバイシストロニック配置でTRAST-Fab重鎖およびTRAST-Fab軽鎖を発現する宿主細胞集団である(表1を参照)。図2Cは実験サンプルB1であり、これは宿主細胞集団中に存在するDnaB-TRAST-Fabに関する発現ベクターの170万の異なる形態をもつ、バイシストロニック配置でのDnaB-TRAST-Fab重鎖およびDnaB-TRAST-Fab軽鎖を発現する宿主細胞集団である。 図3は、高レベルのDnaB-TRAST-Fab発現のためFACSにより選択された宿主細胞から回収した発現ベクターのNGS(次世代シーケンシング)分析の結果を示すヒストグラムである。結果は、宿主細胞のB1集団について示されており(表1を参照)、このB1集団は、プロピオン酸誘導性(prp)プロモーターからDnaB-TRAST-Fabと共発現した137種類の異なる遺伝子産物をコードする発現ベクターを含んだ。FACS選別前のB1宿主細胞のサンプルは、NGS分析のために保存され、これら選別前の細胞およびFACSで選別した(「選別後」)細胞からのプラスミドDNAは、回収されてNGSにより配列決定した。prpプロモーターから共発現されたコード配列の同一性は、配列データから決定され、137種類の異なる遺伝子産物の各々が、選別前および選別後のB1宿主細胞集団中に存在した頻度がヒストグラムに示される。 図4A~4Bは、二つのFACSプロットを示し、これは「低DNA」ゲーティングパラメータ内に該当する検出イベントを示している。各パネルで、標識した宿主細胞のDNA蛍光(675nm/20フィルターでのFSC-A)を、蛍光標識されたHER2タンパク質を使用してTRAST-Fab発現に関して標識した宿主細胞の蛍光(530nm/30フィルターでのFSC-A)に対してプロットしている。図4AはFACSによる選別前の宿主細胞集団B1であり、これは宿主細胞集団中に存在するDnaB-TRAST-Fabに関する発現ベクターの170万の異なる形態をもつ、バイシストロニック配置でのDnaB-TRAST-Fab重鎖およびDnaB-TRAST-Fab軽鎖を発現する宿主細胞集団である。図4Bは、B1宿主細胞集団から回収した発現ベクターを使用して再構築した宿主細胞集団B1*であり、これは高レベルのDnaB-TRAST-Fabを発現する宿主細胞を選択するためにFACSにより選別された。 図5は、固相抽出・質量分析法(SPE-MS)により測定された、600nmでの宿主細胞培養光学密度(「OD」)当たりのDnaB-TRAST-Fab重鎖(「HC」)の産生を、OD当たりのDnaB-TRAST-Fab軽鎖(「LC」)の産生に対してプロットしたグラフである。高レベルのDnaB-TRAST-Fabを発現した宿主細胞を特定するために、多様な宿主細胞集団B1をFACSにより選別して、それら高性能宿主細胞からの発現ベクターを使用して、選択された宿主細胞集団B1*を再構築した。次いで、個々のB1*宿主細胞をDnaB-TRAST-Fab発現について試験し、DnaB-TRAST-FabのHCペプチドおよびDnaB-TRAST-FabのLCペプチドの産生をSPE-MSにより測定した。 図6は、三つの未感作ライブラリーの、選別前(ACE前)と、選別、プラスミドベクターの単離、および再形質転換後(ACE後)とである、トラスツズマブFab’の高発現ベクターの濃縮を実証するFACSプロットを示す。ACE前およびACE後の両方で同一の選別ゲート(<0.5%)を適用した。 図7A~7Bは、陰性対照および陽性対照によりゲーティングを確立した場合(図7A)、および選別後のトラスツズマブFab’の発現が増加した場合(図7B)のFACSプロットを示す。
配列表
本明細書または添付の配列表に列挙されるあらゆる核酸配列およびアミノ酸配列は、米国特許規則連邦規則法典第37巻(37 C.F.R.)セクション1.822で規定されるヌクレオチド塩基およびアミノ酸に関する標準の略語を用いて示す。少なくとも一部の事例では、各核酸配列のうちの一つの鎖のみを示しているが、相補鎖は、表示された鎖への任意の参照により含まれているとして理解される。
配列番号1は、例示的な二重プロモーター発現ベクターの核酸配列である。
配列番号2は、トラスツズマブ-Fab重鎖A2のアミノ酸配列である。
配列番号3は、トラスツズマブ-Fab軽鎖A2のアミノ酸配列である。
配列番号4は、細胞質に局在する、ジスルフィド結合イソメラーゼタンパク質DsbCのアミノ酸配列(cDsbC)である。
配列番号5は、バイシストロニックなトラスツズマブ-Fab重鎖A3のアミノ酸配列である。
配列番号6は、バイシストロニックなトラスツズマブ-Fab軽鎖A3のアミノ酸配列である。
配列番号7は、シネコシスティス属(Synechochystis sp)に由来するN末端アミノ酸配列DnaBを伴うトラスツズマブ-Fab重鎖のアミノ酸配列である。
配列番号8は、シネコシスティス属(Synechochystis sp)に由来するN末端アミノ酸配列DnaBを伴うトラスツズマブ-Fab軽鎖のアミノ酸配列である。
配列番号9は、6xHis配列を含む、シネコシスティス属(Synechochystis sp)に由来するN末端アミノ酸配列DnaBのアミノ酸配列である。
詳細な説明
遺伝的に多様な宿主細胞集団から発現構築物を含み得る高性能宿主細胞を選択することについての課題は、本明細書に提供される細胞濃縮方法により対処される。これら方法は、高性能宿主細胞の迅速な同定および単離のために、例えば遺伝的に多様な宿主細胞集団に存在する他の宿主細胞よりも多く、対象となる遺伝子産物を発現する方法を提供する。「高性能」とは、例えばプロテアーゼ、毒素、またはアレルゲン遺伝子産物の発現が少ない宿主細胞を特定することが望ましい場合のように、対象となる遺伝子産物の発現が少ないことも意味し得る。
提供される活性特異的な細胞濃縮方法では、不活性物質ではなく、対象となる活性遺伝子産物を発現する宿主細胞を特定する。活性遺伝子産物は、例として、結合パートナー分子に特異的に結合する活性遺伝子産物の能力により、または化学反応もしくは酵素反応に関与する遺伝子産物の能力により、不活性物質と区別することができる。ポリペプチド遺伝子産物中に適切に形成されたジスルフィド結合の存在は、それが正確に折り畳まれており推定的に活性であるということの兆候である。ポリペプチド遺伝子産物中のジスルフィド結合の位置を決定する方法については、実施例1を参照されたい。この細胞濃縮方法では、例として、例えば対象となる遺伝子産物が抗体もしくはFabである場合には、例えば標識された抗原などの対象となる活性遺伝子産物に特異的に結合する適切な標識複合体を利用することにより、または対象となる遺伝子産物が受容体もしくは受容体断片である場合には、標識されたリガンドであって当該受容体の活性なコンホメーションに特異的に結合するものである当該リガンドを利用することにより、または例えば対象となる遺伝子産物が酵素である場合には、標識された基質もしくは標識された基質類似体を利用することにより、対象となる活性遺伝子産物を検出する。任意の対象となる遺伝子産物について、活性遺伝子産物に特異的に結合するが不活性遺伝子産物には特異的に結合しない、利用可能な抗体または抗体断片が存在する場合、その抗体または抗体断片は、以下に記載されるように、検出可能部分に結合したときに対象となる活性遺伝子産物を標識するために使用することができる。
宿主細胞の集団における遺伝的多様性は、例えば宿主細胞間のゲノム変異から、および/または宿主細胞により構成される発現構築物のポリヌクレオチド配列における相違から生じ得る。宿主細胞間でゲノム多様性が存在する場合、高性能宿主細胞を選択し、それらから回収したゲノムDNAを配列決定することを用いて、選択した宿主細胞の優れた性能に関連する、変異などのゲノム的な相違を特定することができる。宿主細胞集団内において発現構築物間に多様性が存在する場合、選択された宿主細胞から例えば発現ベクターなどの発現構築物を回収し、発現構築物を配列決定することにより、高性能宿主細胞と関連するそれらの発現構築物成分を含む発現構築物のライブラリー(「高性能ライブラリー」)を作成することが可能になり得る。高性能ライブラリーを用いて、または回収された高性能発現構築物自体を用いて親宿主細胞株を形質転換することにより、高性能宿主生細胞の集団を再構築することができる。親宿主細胞株は、高性能宿主細胞についてスクリーニングした宿主細胞集団、または発現構築物を用いて遺伝子改変または形質転換され得る別の株を作製して、対象となる遺伝子産物を発現することができる宿主細胞株を作製するために使用される株であり得る。
提供される活性特異的な細胞濃縮方法は、フローサイトメーターのサンプル分析速度を最大限に活用して、例えば対象となる遺伝子産物をより多く発現する宿主細胞などの高性能宿主細胞を単離する。一部の実施形態では、多様性が100万を超える宿主細胞の集団を数分以内に分析して、より高性能のサブセット集団が存在するかどうかを判断することができる。その場合、およびフローサイトメーターがFACS機器である場合、希少な(100万に一つ)亜集団由来の数百個のより高性能な宿主細胞を1時間以内に単離して、その後の分析を可能にすることができる。宿主細胞の亜集団を規定する基準は、規定された亜集団内の集団のうちの宿主細胞を何も含まない、一部の宿主細胞を含む、またはすべての宿主細胞を含むことが可能であり、一部の例では、亜集団は、集団と共存し得る。例えば宿主細胞の亜集団は、フローサイトメトリーにより検出可能なレベルで標識した対象となる遺伝子産物の発現により規定されるが、当該集団の宿主細胞のすべて、または実質的に大部分を含み得る。
一部の実施形態では、活性特異的な細胞濃縮方法は、以下の態様を含む:(1)発現構築物を含むことができる宿主細胞の遺伝的に多様な集団を提供すること、(2)対象となる遺伝子産物を検出可能融合タンパク質として発現することにより、または対象となる遺伝子産物を、対象となる活性遺伝子産物に特異的に結合する標識複合体と接触させることにより、宿主細胞内で対象となる遺伝子産物を標識すること、(3)フローサイトメトリーまたは同等の方法を用いる選別装置を使用して、高性能宿主細胞を選択すること、(4)選択した宿主細胞および/または発現ベクターを分析すること、(5)宿主細胞株を再構築すること、(6)任意で、再構築した宿主細胞株を、特に対象となる遺伝子産物の活性と比較してさらに分析すること、および(7)任意で、上記(1)~(6)のいずれかまたはすべてを反復すること。この方法のこれらの態様は、図1A~1Fに概略的に示し、以下にさらに詳細に記載される。
I.宿主細胞および/または発現構築物の遺伝的に多様な集団
A.宿主細胞
本明細書に開示される細胞濃縮方法は、所望のレベルの活性遺伝子産物を発現する宿主細胞を選択するように設計される。本明細書に記載される細胞濃縮方法での使用するために、宿主細胞は、遺伝子産物を発現してフローサイトメトリーまたは同等の方法により選別することができる、例えば単一細胞生物体、培養で増殖した単離細胞、もしくは多細胞生物体に由来する単離細胞などの任意の細胞であり得る。ジスルフィド結合を含む、例えばポリペプチド遺伝子産物などである遺伝子産物の効率的な誘導性発現を可能にする宿主細胞の例が提供される。
特に適切な宿主細胞は、発酵培養で高細胞密度で増殖することができ、そして高度に制御された誘導性遺伝子発現を介して宿主細胞の細胞質を酸化する中で遺伝子産物を産生することができる。これら品質を有する宿主細胞は、以下の特徴の一部またはすべてを組み合わせることによって産生される。(1)宿主細胞は、細胞質中の酸化ポリペプチドの発現または機能を増加させることによって、および/または細胞質中の還元ポリペプチドの発現または機能を減少させることによって、酸化細胞質を有するように遺伝子改変される。システインオキシダーゼDsbA、ジスルフィドイソメラーゼDsbC、またはDsbタンパク質の組み合わせの発現を増加させることは、これらすべてが通常ペリプラズム中に輸送されるものであるが、ジスルフィド結合を必要とする異種タンパク質の発現に利用されてきた(Makino et al.,“Strain engineering for improved expression of recombinant proteins in bacteria”,Microb Cell Fact 2011 May 14;10:32)。例えば20個のアミノ酸のN末端切断を有する、細胞質型DsbC(「cDsbC」)などであるこれらDsbタンパク質の細胞質型を発現することも可能であり、これらはシグナルペプチドを欠いているために細胞質内には輸送されない。cDsbCなどの細胞質Dsbタンパク質は、宿主細胞の細胞質をより酸化させるのに有用であり、したがって細胞質で産生される異種タンパク質におけるジスルフィド結合の形成にさらに役立つ。宿主細胞の細胞質はまた、チオレドキシン酵素系およびグルタレドキシン/グルタチオン酵素系を直接改変することによって、より酸化させることができ、すなわち、グルタチオンレダクターゼ(gor)またはグルタチオンシンテターゼ(gshB)において欠損がある変異株が、チオレドキシンレダクターゼ(trxB)と一緒になって、細胞質酸化を与える。これらの株はリボヌクレオチドを減少させることができないため、ジチオスレイトール(DTT)などの外因性還元剤の不在下では増殖することができない。ペルオキシレドキシンAhpCをコードする遺伝子ahpCの抑制遺伝子変異(ahpC*またはahpCΔ)は、それを還元型グルタチオンを生成するジスルフィド還元酵素に変換し、それにより酵素リボヌクレオチドレダクターゼへの電子のチャネリングを可能にし、gorおよびtrxBにおいて欠損がある細胞またはgshBおよびtrxBにおいて欠損がある細胞が、DTT不在下で増殖することができるようにさせる。異なる種類の変異型AhpCが、ガンマ-グルタミルシステインシンテターゼ(gshA)の活性において欠損してtrxBにおいて欠損している株が、DTTの不在下で増殖することを可能にさせ得、これらには、AhpC V164G、AhpC S71F、AhpC E173/S71F、AhpC E171Ter、およびAhpC dup162~169が含まれる(Faulkner et al.,“Functional plasticity of a peroxidase allows evolution of diverse disulfide-reducing pathways”,Proc Natl Acad Sci U S A 2008 May 6;105(18):6735-6740,Epub 2008 May 2)。(2)任意で、宿主細胞はまた、所望の遺伝子産物の産生を補助するシャペロンおよび/もしくは補因子を発現するように、ならびに/またはポリペプチド遺伝子産物をグリコシル化するように、遺伝子改変されてもよい。(3)宿主細胞は、発現構築物からの遺伝子産物発現の特定の態様を改善するように設計された追加の遺伝子改変を含有する。特定の実施形態では、宿主細胞は、(A)少なくとも一つの誘導性プロモーターの誘導物質のためのトランスポータータンパク質をコードする少なくとも一つの遺伝子の遺伝子機能の改変を有し、別の例として、トランスポータータンパク質をコードする遺伝子が、araE、araF、araG、araH、rhaT、xylF、xylG、およびxylHからなる群から選択され、もしくは特にaraEであり、またはより具体的には、遺伝子機能の改変が、構成的プロモーターからのaraEの発現であり、および/または(B)少なくとも一つの誘導性プロモーターの誘導物質を代謝するタンパク質をコードする少なくとも一つの遺伝子の遺伝子機能のレベルが低下しており、またさらなる例として、少なくとも一つの誘導性プロモーターの誘導物質を代謝するタンパク質をコードする遺伝子が、araA、araB、araD、prpB、prpD、rhaA、rhaB、rhaD、xylA、およびxylBからなる群から選択され、および/または(C)少なくとも一つの誘導性プロモーターの誘導物質の生合成に関与するタンパク質をコードする少なくとも一つの遺伝子の遺伝子機能のレベルが低下しており、さらなる実施形態では、当該遺伝子は、scpA/sbm、argK/ygfD、scpB/ygfG、scpC/ygfH、rmlA、rmlB、rmlC、およびrmlDからなる群から選択される。
特定の実施形態では、宿主細胞は、例えば酵母(サッカロマイセス(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)など)などの微生物細胞もしくは細菌細胞であるか、またはグラム陽性細菌もしくはグラム陰性細菌であるか、または大腸菌であるか、または大腸菌B株であるか、または大腸菌B株521細胞であるか、または大腸菌B株522細胞である。大腸菌521細胞および大腸菌522細胞は、以下の遺伝子型を有する:
大腸菌521:ΔaraBAD fhuA2 [lon] ompT ahpCΔ gal λatt::pNEB3-r1-cDsbC(Spec,lacI)ΔtrxB sulA11 R(mcr-73::miniTn10--Tet)2 [dcm] R(zgb-210::Tn10--Tet)ΔaraEp::J23104 ΔscpA-argK-scpBC endA1 rpsL-Arg43 Δgor Δ(mcrC-mrr)114::IS10
大腸菌522:ΔaraBAD fhuA2 prpD [lon] ompT ahpCΔ gal λatt::pNEB3-r1-cDsbC(Spec,lacI)ΔtrxB sulA11 R(mcr-73::miniTn10--Tet)2 [dcm] R(zgb-210::Tn10--Tet)ΔaraEp::J23104 ΔscpA-argK-scpBC endA1 rpsL-Arg43 Δgor Δ(mcrC-mrr)114::IS10。
酸化細胞質を有する大腸菌宿主細胞を用いた増殖実験において、酸化細胞質を有する大腸菌B株は、対応する大腸菌K株よりもはるかに高い細胞密度まで増殖することができることが確認された。他の適切な株としては、大腸菌B株SHuffle(登録商標)Express(NEBカタログ番号C3028H)およびSHuffle(登録商標)T7 Express(NEBカタログ番号C3029H)、ならびに大腸菌K株SHuffle(登録商標)T7(NEBカタログ番号C3026H)が挙げられる。
一部の実施形態では、宿主細胞は、原核宿主細胞である。原核宿主細胞としては、古細菌(例えば、ハロフェラックス・ボルカニ(Haloferax volcanii)、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus))、グラム陽性細菌(例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)、リケニホルミス菌(Bacillus licheniformis)、ブレビバチルス菌(Brevibacillus choshinensis)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ブーフナー菌(Lactobacillus buchneri)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、およびストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans))、またはグラム陰性細菌、例えばアルファプロテオバクテリア(アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tume-faciens)、カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、およびアルファルファ根粒菌(Sinorhizo-bium meliloti))、ベータプロテオバクテリア(アルカリゲネス・ユートロフス(Alcaligenes eutrophus))など、およびガンマプロテオバクテリア(アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アゾトバクター・ビネランジー(Azotobacter vinelandii)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudo-monas aeruginosa)、およびプチダ菌(Pseudomonas putida))が挙げられ得る。好ましい宿主細胞としては、腸内細菌科ファミリーのガンマプロテオバクテリアが挙げられ、例えばエンテロバクター(Enterobacter)、エルウィニア(Erwinia)、大腸菌類(大腸菌(E.coli)を含む)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ(Salmonella)(ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)を含む)、セラチア(Serratia)(セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescans)を含む)、および赤痢菌(Shigella)などが挙げられる。
多くのさらなるタイプの宿主細胞が、本明細書に提供される方法において使用することができ、例えば酵母(Candida shehatae、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、Kluyveromyces fragilis、他のクリベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ビール酵母(Saccharo-myces carlsbergensis)としても知られるSaccharomyces pastorianus、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、Dekkera/Brettanomyces属、およびYarrowia lipolytica)などの真核細胞、他の真菌類(アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、アオカビ(Penicillium)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、トリコデルマ・レシア(Trichoderma reesia))、昆虫細胞株(キイロショウジョウバエSchneider2細胞およびヨトウガSf9細胞)、および例えば不死化細胞株(チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、仔ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト胚腎臓(HEK,293、またはHEK-293)細胞、およびヒト肝細胞がん細胞(Hep G2))などの哺乳動物細胞が挙げられる。上記の宿主細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)から入手可能である。
B.発現構築物
発現構築物は、一または複数の対象となる遺伝子産物の発現のために設計されたポリヌクレオチドである。対象となる特定の遺伝子産物は、それらが発現される宿主細胞のものとは異なる種に由来するという点で異種遺伝子産物であり、および/または発現構築物内で利用されるプロモーターから自然に発現されない異種遺伝子産物である。対象となる遺伝子産物には、かかる遺伝子産物の天然型との相違を含むよう設計された改変遺伝子産物が含まれる。異種および/または改変された遺伝子産物の例としては、シグナルペプチドを欠くポリペプチド遺伝子産物が挙げられるが、このポリペプチド遺伝子産物は、すなわち宿主細胞の細胞質内で発現および保持される。異種および/もしくは改変された遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを含む、または異なる種の生物に由来するポリヌクレオチドの組み合わせを含む、または天然のポリヌクレオチドとは異なるように改変されているポリヌクレオチドを含む発現構築物は、天然分子ではない。発現構築物は、宿主細胞染色体内に組み込むことができ、または例えばプラスミドもしくは人工染色体などの宿主細胞染色体から独立して複製するポリヌクレオチド分子として宿主細胞内に維持することができる。発現構築物の例としては、宿主細胞染色体に一つまたは複数のポリヌクレオチド配列を挿入することにより得られるポリヌクレオチドがあり、当該挿入されたポリヌクレオチド配列は、染色体コード配列の発現を変化させる。発現ベクターは、一つまたは複数の遺伝子産物の発現に特に使用されるプラスミド発現構築物である。一つまたは複数の発現構築物は、宿主細胞染色体に組み込むことができるか、または例えばプラスミドもしくは人工染色体などの染色体外ポリヌクレオチド上に維持することができる。適切な発現構築物としては、参照により本明細書で援用される米国特許出願公開第20160376602A1号に記載される二重プロモーター発現ベクターが挙げられる。
例えば染色体外発現ベクターなどの発現構築物は、例えばcolE1、pMB1(pBR3220)、改変pMB1(pUC9)、R1(ts)(pMOB45)、p15A(pPRO33)、pSC101、RK2、CloDF13(pCDFDuet(商標)-1)、ColA(pCOLADuet(商標)-1)、およびRSF1030/NTP1(pRSFDuet(商標)-1)などの複製起点を含み得る。発現構築物はまた、例えばアンピシリン(Amp)、クロラムフェニコール(CmlまたはCm)、カナマイシン(Kan)、スペクチノマイシン(Spc)、ストレプトマイシン(Str)、およびテトラサイクリン(Tet)などの、抗生物質抵抗性を付与する少なくとも一つの選択マーカも含み得る。さらに、発現構築物は、ポリリンカーとも呼ばれる複数のクローニング部位(MCS)を含むことができるが、これは互いに近接または重複して複数の制限部位を含有するポリヌクレオチドである。MCSの制限部位は、通常、MCS配列内で一回発生し、好ましくは、プラスミドまたは他のポリヌクレオチド構築物の残りの部分内では発生せず、それにより制限酵素に対して、MCS内でのみプラスミドまたは他のポリヌクレオチド構築物を切断できるようにさせる。MCS配列の例としては、例えばpBAD24およびpBAD33などの一連のpBAD発現ベクターの中のもの(Guzman et al.,“Tight regulation,modulation,and high-level expression by vectors containing the arabinose PBAD promoter”,J Bacteriol 1995 Jul;177(14):4121-4130)、および例えばpPRO33などのpBADベクター由来の一連のpPRO発現ベクターの中のもの(米国特許第8178338号)が挙げられる。
少なくとも一つのポリペプチド遺伝子産物をコードする発現構築物については、発現しようとするポリペプチド遺伝子産物のコード配列の転写開始部位と開始コドンとの間のポリヌクレオチド領域が、そのポリペプチド遺伝子産物のmRNAの5’非翻訳領域(「UTR」)に相当する。好ましくは、5’UTRに対応する発現構築物の領域は、宿主細胞の種に見られるコンセンサスのリボソーム結合部位(RBS、シャイン-ダルガーノ配列とも呼ばれる)と類似したヌクレオチド配列を含む。原核生物(古細菌および細菌)では、RBSコンセンサス配列はヌクレオチド配列GGAGGまたはGGAGGUを含み、また例えば大腸菌などの細菌では、RBSコンセンサス配列はAGGAGGまたはAGGAGGUである。RBSは、典型的には、5~10個の介在ヌクレオチドだけ開始コドンから分離しており、また発現構築物内のMCSの非常に近接した5’(または「その上流」)に位置することが多い。
一つまたは複数の遺伝子産物の効率的な発現のために、発現構築物は、好ましくは、例えば恒常性プロモーターまたは誘導性プロモーターなどの少なくとも一つのプロモーターを含み、好ましくは誘導性プロモーターを含む。発現構築物内で、プロモーターは、任意のRBS配列の上流、および発現しようとする遺伝子産物のコード配列の上流に配置され、その結果、プロモーターの存在が、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドのコード鎖に対して5’から3’方向に遺伝子産物コード配列の転写を方向付けることとなる。発現構築物に使用され得る誘導性プロモーターの例としては、例えばL-アラビノース誘導性プロモーターParaBADなどである周知の大腸菌糖誘導性プロモーター、ラクトース誘導性プロモーターPlacZYA、ラムノース誘導性プロモーターPrhaBAD、およびキシロース誘導性プロモーターPxylABおよびPxylFGHR;大腸菌プロピオン酸誘導性プロモーターPprpBCDE、およびリン酸欠乏により誘導されるプロモーターPphoAが挙げられ、それらすべては、PCT出願公開である国際公開第2016205570A1号に詳述されており、これは参照により本明細書に援用される。例えばJ23104プロモーターなどの構成的プロモーターは、iGEM(マサチューセッツ州ボストン)が維持する標準生物学的部分のレジストリ(Registry of Standard Biological Parts)から得ることができ、parts.igem.org/Promoters/Catalogを参照されたい。
C.宿主細胞集団の遺伝的多様性
提供される方法は、宿主細胞の遺伝的に多様な集団から高性能の宿主細胞を選択するために有利に使用され、当該方法において、宿主細胞集団内の多様性または変動は、例えば宿主細胞ゲノム間の相違から、または宿主細胞により構成される発現構築物間の相違から生じ得る。宿主細胞集団の遺伝的多様性は、例えば突然変異などのプロセスによって無作為に生じてもよく、または宿主細胞ゲノム中または発現構築物中で変化させる標的化方法によって特異的に導入されてもよく、これはその後宿主細胞株内に導入される。
宿主細胞集団は、複数の遺伝的バリアントを含む。多くの実施形態において、本発明の一態様は、宿主細胞の所定の特性に基づいて宿主細胞集団を選別することを含むものであり、その所定の特性は、宿主細胞集団内の遺伝的バリアントに基づいて変動する。多くの実施形態では、所定の特性は、対象となる遺伝子産物の発現レベルであり、当該方法は、複数の遺伝的バリアントの各々において対象となる活性遺伝子産物の発現レベルを検出することを含む。宿主細胞のさらなる所定の特性としては、対象となる活性遺伝子産物の発現レベル、対象となる遺伝子産物の適切なフォールディング、適切に折り畳まれたタンパク質の発現レベル、細胞生存率、および/またはバイオマスが挙げられる。したがって、宿主細胞集団の遺伝的多様性は、複数の遺伝的バリアントを含むべきであり、その遺伝的バリアントは、遺伝的に多様な集団内での発現レベルまたは他の所定の特性の変動を提供するのに十分多数である。一部の実施形態では、対象となる遺伝子産物を実質的に発現することができる遺伝的バリアントの数は、非常に小さくてもよく、これは遺伝的多様性が増加することを必要とし得る。多くの実施形態では、宿主細胞集団の遺伝的多様性は、適切な遺伝的多様性が達成されるまで、本明細書に記載されるように増加させることができる。
本開示の方法の実施形態では、宿主細胞集団の遺伝的多様性は、宿主細胞集団中に存在する異なる遺伝的バリアントの数、陰性対照と比較した異なる遺伝的バリアントの数、および/または参照細胞株と比較した異なる遺伝的バリアントの数として規定される。遺伝的バリアントの数は、宿主細胞集団中の実際のバリアント数または遺伝的バリアントの計算された(「目標の」)数であってもよい。これらバリアントは、細胞間での宿主細胞ゲノム内の一つまたは複数の遺伝的(例えば、核酸配列)相違、宿主細胞間での発現構築物内の一つまたは複数の遺伝的(例えば、核酸配列)相違、またはそれらの組み合わせの結果であってもよい。一部の実施例では、遺伝的相違には、ある配列のうちの一つもしくは複数のヌクレオチドの改変、欠失、もしくは挿入、または一つもしくは複数の成分(一つまたは複数のタグ、ドメイン、発現制御配列、および/または関連タンパク質など)の挿入もしくは欠失が含まれる。
一部の実施形態では、宿主細胞集団の遺伝的多様性は、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも2000、少なくとも5000、少なくとも10,000、および少なくとも50,000、少なくとも100,000、少なくとも200,000、少なくとも500,000、少なくとも1,000,000、少なくとも2,000,000、少なくとも5,000,000、少なくとも10,000,000、少なくとも100,000,000、少なくとも500,000,000、または少なくとも1,000,000,000である。他の例では、遺伝的多様性は、約1000~1,000,000,000であり、例えば約1000~10,000、約5000~50,000、約50,000~200,000、約100,000~500,000、約200,000~1,000,000、約500,000~2,000,000、約1,000,000~5,000,000、約5,000,000~50,000,000、約20,000,000~100,000,000、約50,000,000~500,000,000、または約500,000,000~1,000,000,000などである。
任意のタイプの遺伝的多様性を、本明細書に提供される方法を使用して探索することができる。一部の実施形態では、遺伝的多様性は、対象となる遺伝子産物(コード配列バリアントおよびコドン最適化を含むがこれらに限定されない)、プロモーター(恒常性プロモーターおよび/または誘導性プロモーターを含む)、シャペロン、リボソーム結合配列、タグ、核局在化シグナル、シグナルペプチド、一つまたは複数の遺伝子のノックアウトまたはノックイン、一つまたは複数(例えば1、2、3、またはそれ以上)のプラスミドの存在、またはそれらの任意の組み合わせの間の一つまたは複数の相違(改変または存在または不在を含む)を含む。一部の実施例では、遺伝的多様性は、遺伝子改変に向けた標準的な技術により生成される。他の実施例では、遺伝的多様性は、ランダム変異誘発、誤りがちのPCR変異誘発、またはトランスポゾン変異誘発(例えば、Tn5)により生じる。技術の組み合わせを使用して、さらなるレベルの遺伝的多様性を生じることもできる。
ヌクレオチド配列を変化させるため、および/または遺伝子機能を削除、低減、または変化させるために、宿主細胞ゲノムまたは発現構築物に対して改変を行うための当技術分野で公知の多くの方法がある。大腸菌および他の原核生物などの宿主細胞中の遺伝子の標的破壊を行う方法が記述され(Muyrers et al.,“Rapid modification of bacterial artificial chromosomes by ET-recombination”,Nucleic Acids Res 1999 Mar 15;27(6):1555-1557;Datsenko and Wanner,“One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products”,Proc Natl Acad Sci U S A 2000 Jun 6;97(12):6640-6645)、また類似のRed/ET組み換え法を使用するキットが市販されている(例えば、独国ハイデルベルクのGene Bridges GmbH社よりのQuick & Easy E.coli Gene Deletion Kit)。Red/ET組み換え法は、プロモーター配列を、構成的プロモーターなどの異なるプロモーターの配列と、または一定のレベルの転写を促進すると予測される人工プロモーターの配列と置換するためにも使用することができる(De Mey et al.,“Promoter knock-in:a novel rational method for the fine tuning of genes”,BMC Biotechnol 2010 Mar 24;10:26)。宿主細胞のゲノムまたは発現構築物の機能はまた、RNAサイレンシング法により削除または低減することもできる(Man et al.,“Artificial trans-encoded small non-coding RNAs specifically silence the selected gene expression in bacteria”,Nucleic Acids Res 2011 Apr;39(8):e50,Epub 2011 Feb 3)。Gibsonアセンブリ法(Gibson,“Enzymatic assembly of over-lapping DNA fragments”,Methods Enzymol 2011;498:349-361;doi:10.1016/B978-0-12-385120-8.00015-2)を使用して、宿主細胞のゲノムまたは発現構築物において目標とする変化、例えば挿入、欠失、および点変異、を行うこともできる。宿主細胞のゲノムまたは発現構築物に目的の改変を行うための別の方法では、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats(クラスター化された規則的な配置の短い回文配列リピート))ヌクレオチド配列、およびCRISPR配列に相補的なヌクレオチド配列を認識して開裂するCas9(CRISPR関連タンパク質9)を利用する。さらに、宿主細胞ゲノムに対する変化は、従来の遺伝的方法により導入され得る。
II.宿主細胞内の遺伝子産物の標識化
対象となる遺伝子産物の標識化は、対象となる遺伝子産物と検出可能部分とを結合させることを伴う。対象となる遺伝子産物を検出可能部分と結合させることは、異なる方法で発生させることができるが、例えば、対象となる遺伝子産物が、検出可能な蛍光ポリペプチドまたは発光ポリペプチドを有する融合ポリペプチドとして発現されるポリペプチドである場合であるように、対象となる遺伝子産物と検出可能部分との間の共有結合、対象である抗体遺伝子産物と抗原との間であるように、非共有結合性相互作用、または対象となる遺伝子産物の発現と宿主細胞中の検出可能な変化との間の結合であって、例えば当該変化は対象となる遺伝子産物の発現により引き起こされる細胞内カルシウム濃度の変化などであるがこれに限定されない。
細胞選別により宿主生細胞を選択するために、宿主細胞が細胞質内で対象となる遺伝子産物を発現している場合に、検出可能なシグナルがその特定の宿主細胞と関連するように細胞質内の遺伝子産物を標識する必要がある。一部の実施例では、対象となる遺伝子産物が酵素活性を有する場合、その酵素のための細胞透過性発色基質を細胞に導入することが可能である。他の実施例では、例えばエクオリンのような蛍光レポータータンパク質を使用して細胞内カルシウム濃度を測定することなどのように、対象となる活性遺伝子産物の存在が、宿主細胞を死滅させることなく検出され得る宿主細胞の別の属性と相関する場合、宿主細胞は、レポータータンパク質または他の分子を含むように遺伝子改変され得る。
別の実施例として、宿主細胞は、融合タンパク質として対象となるポリペプチドをコードする発現構築物を含み、その少なくとも一つは、そのN末端またはC末端に、好ましくはそのC末端に、フレーム内で発現される緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光タンパク質を有する。こうした融合タンパク質はまた、対象となる各ポリペプチドのアミノ酸配列と蛍光タンパク質との間にリンカーポリペプチドも含み得る。好ましくは、対象となるポリペプチドの蛍光部分をコードするポリヌクレオチド配列は、一つまたは複数の制限酵素で消化することにより、発現ベクターから容易に除去することができる。対象となる遺伝子産物が、例えば重鎖および軽鎖を含む抗体などである複数のポリペプチド鎖を含む場合、二つ以上の構成ポリペプチドが、各々、BRET(生体発光共鳴エネルギー転移)またはFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)のドナー/アクセプターペアのうちの一つの成分に融合することができ、それにより、構成ポリペプチドの発現およびアセンブリ、ならびにBRETまたはFRETのドナーおよびアクセプターの会合により蛍光シグナルが生成され、構成ポリペプチドの発現量と、構成ポリペプチドがもつ対象となる遺伝子産物を形成する能力との両方の測定がもたらされる。
一部の実例では、蛍光タンパク質または発光タンパク質との融合としての一つまたは複数の対象となるポリペプチドの発現は、対象となるポリペプチドのフォールディング、立体配置、および/または活性に影響を与える可能性があるが、この場合でさえ、蛍光または発光の量に基づいたFACS選択により、対象となるポリペプチドの所望の量を発現する宿主生細胞を特定することができる。例えばBRETドナーおよびアクセプターが、対象となる遺伝子産物のポリペプチド成分を有する融合ポリペプチドとして発現されているが、BRETドナーおよびアクセプターにより、BRETアクセプターがシグナルを生じるために必要な近接が達成できない場合、FACS選択は、BRETドナーの生物発光を検出することにより実施することができる。
一部の実施形態では、活性特異的な細胞濃縮方法はまた、対象となる活性遺伝子産物と特異的に相互作用する標識複合体による宿主細胞の標識化を伴うこともできる。標識複合体はまた、標識複合体の成分を互いに連結するか、または標識複合体を細胞構造に連結するか、またはビーズへのもしくは検出もしくは精製に有用な他の媒体への付着のために細胞表面へもしくは該細胞表面を越えて延在するための、ポリペプチドリンカーまたは他の化学リンカーも含み得る。宿主細胞の細胞質中に発現および保持される対象となる遺伝子産物については、標識化手順には、宿主細胞により産生される対象となる遺伝子産物が、それを産生した特定の宿主細胞と結合したままになるように、固定化と、標識複合体が対象となる遺伝子産物に接近できることとなるように、宿主細胞の透過化処理とを含んでもよい。
標識複合体。活性特異的な細胞濃縮方法で使用するために、標識複合体は、対象となる活性遺伝子産物に対する特異性と、検出可能部分の存在とを提供する成分を含み得る。検出可能部分は、選別装置により検出可能な光、電磁放射、および/または粒子を発生し、高性能宿主細胞の選択を可能にする。
活性遺伝子産物に対する標識複合体の特異性は、その遺伝子産物を標識するために、例えば抗体もしくは抗体断片を標識するための抗原、受容体もしくは受容体断片を標識するためのリガンド(活性受容体に対して特異的)、酵素を標識するための基質もしくは基質類似体分子、または活性遺伝子産物に対して特異的な抗体もしくは抗体断片などの活性遺伝子産物にのみ結合する結合パートナー(または「特異性成分」)を使用することにより確立され得る。一例として、対象となる遺伝子産物が抗体である場合、三つの別個の標識複合体を、独立にまたは任意の組み合わせで使用して、活性抗体遺伝子産物を検出することができる。すなわち、抗原結合ドメインに特異的に結合する標識された抗原、適切に折り畳まれたおよび/または組み立てられたFc領域に特異的に結合する標識された抗Fc抗体、ならびに適切に折り畳まれたおよび/または組み立てられた軽鎖に特異的に結合する標識された抗軽鎖抗体である。追加の例として、遺伝子産物がポリリボヌクレオチドを含む場合、標識複合体の特異性は、標識化反応の条件下でポリリボヌクレオチドに特異的に結合するポリヌクレオチドにより提供され得る。
標識複合体の検出可能部分は、発色団、蛍光団、および/またはルミノフォアを含んでもよく、それぞれの場合において、一定の条件下で光の吸光度、または光放射において検出可能な変化が生じる。適切な蛍光検出可能部分の例としては、ストレプトアビジン-Alexa Fluor(登録商標)488(ThermoFisher Scientific Inc.社、マサチューセッツ州ウォルサム)がある。標識複合体の検出可能部分はまた、標識された宿主細胞を選別するために使用する装置が放射性放出を検出および利用する能力を有する場合には、シンチレーションまたは直接のベータ線もしくはガンマ線の検出によって検出可能な放出を生成する放射性同位体を含むこともできる。検出可能部分のさらなるタイプは、重金属(例えば、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ルテニウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、ハフニウム、白金、金、水銀、タリウム、または鉛)の一つまたは複数の原子を含むことができ、これにより検出可能部分の存在または不在が質量分析計により検出できる。検出可能部分の別の例は、選別装置により検出され得る磁場と関連するものである。対象となる遺伝子産物が酵素である場合、検出可能部分は、酵素の活性部位に特異的に結合することとなる基質類似体に結合する蛍光分子を含み得る。別の例として、対象となる遺伝子産物が酵素であり、検出可能部分が酵素の基質と結合する場合、標識化宿主細胞を選別するために使用される装置は、検出可能部分により生じる、吸光度、蛍光または発光の以下の変化を検出するよう設定されてもよく、すなわち基質が酵素に置換されるときに検出可能部分からのシグナルが減少する場合における減少、または基質の酵素置換の結果として検出可能部分からのシグナルが検出可能になる場合における増加のいずれかである。特定の例として、発色酵素基質は、酵素の活性部位と特異的に相互作用するという点で、標識複合体として特異性を提供することができ、また対象となる酵素遺伝子産物との相互作用の結果として光の吸光度の検出可能な変化を生じるという点で、標識複合体の検出可能部分でもある。そのような発色酵素基質の一つは、Chromogenix S-2222(商標)(Diapharma社、オハイオ州ウェストチェスター)であり、これはセリンエンドペプチダーゼ因子Xaに結合してそれにより切断され、発色団パラ-ニトロアニリン(pNA)を活性化させる。
一部の場合では、標識複合体の特異性成分-抗原、リガンド、基質、基質類似体、抗体など-は、発色団または他のタイプの検出可能部分との複合体として市販されている。他の場合では、特異性成分は、ビオチンなどの共有結合した結合部分との複合体として市販されており、この複合体は、ストレプトアビジンなどの結合部分の結合パートナーに共有結合した検出可能部分に結合することができる。結合部分および検出可能部分を含む適切な複合体の例としては、ストレプトアビジン-Alexa Fluor(登録商標)488(ThermoFisher Scientific Inc.社、マサチューセッツ州ウォルサム)がある。そのような複合体が市販されていない場合、ビオチンなどの結合部分を、標識複合体の特異性成分にコンジュゲートさせることができる。使用され得る他の結合部分-結合パートナーのペアとしては、標識複合体のポリペプチド特異性成分への、ポリヒスチジンアミノ酸配列、一続きの6個以上のヒスチジン、好ましくは6~10個のヒスチジン残基、の取込みと、それをニッケルまたはコバルトをコンジュゲートした検出可能部分に結合することとが挙げられる。結合部分-結合パートナーのペアの別の例としては、SpyTag-SpyCatcherペアがある。SpyTagは、12.3kDaのSpyCatcherタンパク質によって結合される13個のアミノ酸のペプチドであり、これは共有結合性の分子間イソペプチド結合を形成する。
追加の例として、特異性成分(例えば、HER2抗原)は、検出部分にコンジュゲートされる結合部分として抗体(例えば、抗-HER2二次抗体)により結合され得、当該抗体は、特異性成分と対象となる遺伝子産物との間の結合を干渉しない様式で特異性成分を特異的に認識する。この構成のさらなる変形体では、検出部分は、例えば鎖内の各抗体がその結合標的に特異的である限り、特異性成分などを特異的に認識する抗体を特異的に認識する抗体にコンジュゲートされ得る。
また、いくつかの「分割タンパク質」または「タンパク質断片相補」結合ペアも存在し、タンパク質の別個の発現ドメインが互いに対して親和性を有し、そしてドメイン同士が結合すると、分割タンパク質の活性が回復する。例えば、結合部分としてベータラクタマーゼ、ベータガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはルシフェラーゼの一つのドメインと、結合パートナーと同一のタンパク質の相補ドメインとを使用することで、その基質が存在する場合に検出可能なシグナルを生成することができる酵素を再構築することとなり、いくつかの特定の例では、当該基質は、一つまたは複数の結合ドメインを有する融合タンパク質の一部として提供され得る。別の例では、二分子蛍光相補(BiFC)と称される、「分割」タンパク質が、緑色蛍光タンパク質または黄色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質であり、これは、抗-平行ロイシンジッパーモチーフなどの相補的結合対のメンバーにリンカーによってそれぞれ結合されるタンパク質断片に分割され得るものである。ロイシンジッパーモチーフの相互作用を介して再結合する場合、蛍光タンパク質活性が回復し、これにより検出可能部分を生成する。
特定の標識化および検出にも使用できる方法の一つには、Alpha(増幅発光近接均質アッセイ(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay))技術(PerkinElmer社、マサチューセッツ州ウォルサム)があり、これは二つの結合パートナーの結合-例えば対象となる遺伝子産物と特異性成分-が、ドナービーズ(一方の結合パートナーに結合)およびアクセプタービーズ(もう一方の結合パートナーに結合)を近接させ、それにより一波長(680nm)でのドナービーズの励起が、アクセプタービーズへの化学エネルギー遷移および異なる波長(520~620nm)での放射をもたらすこととなる。この技術では、ドナービーズおよびアクセプタービーズが、近接させたときに検出可能部分を生成する。
固定。対象となる遺伝子産物は、溶液中に加えられる一つまたは複数のアルデヒド(パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド)などの架橋試薬で宿主細胞を固定することによって、宿主細胞内に保持することができる。一つまたは複数のアルデヒドを使用して宿主細胞内に対象となる遺伝子産物を固定することは、求電子試薬/求核試薬の化学の一例であり、ここでアルデヒドは求電子試薬であり、また対象となる遺伝子産物が、例えばポリペプチド内のアミン基およびポリヌクレオチドのグアニン残基のN7位などの求核中心を供給する。架橋試薬は、典型的には二官能性であり、一方の末端において対象となる遺伝子産物と、他方の末端において宿主細胞の成分(DNA、RNA、細胞骨格、細胞膜、細胞壁、またはこれらの成分のうちの一つに複合体化されたタンパク質)と反応することができる。多数の様々な種類の架橋試薬が市販されている(ThermoFisher Scientific Inc.社、マサチューセッツ州ウォルサム)。宿主細胞内に対象となる遺伝子産物を保持する別の方法は、対象となる遺伝子産物のコード配列内に、例えば細胞骨格成分または他の細胞質構造などの宿主細胞の構造と結合するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むことを伴う。例えば、特に原核宿主細胞において、細胞骨格MreBタンパク質またはその類似体のすべてまたは一部を、対象となる遺伝子産物に付着させることで、MreBとMreCまたは類似体タンパク質との相互作用を介して、対象となる遺伝子産物を、内側細胞膜と結合するようにさせることができる。
透過化処理。宿主細胞は、リゾチームおよびEDTAを用いた処理、またはリゾチームおよび例えばオクチルグルコシドなどの界面活性剤を用いた処理により透過化処理され、リゾチームの浸透が促進される。
宿主細胞の核酸の標識化。宿主生細胞のDNAおよび他の核酸を、非荷電色素(例えばHoechst 33342など)で、または任意の電荷が分布する共役系を含有する色素で標識化することができ、これによりそれらが細胞に浸透することができるようになる。しかしながら、宿主生細胞は、細胞の外に色素を輸送し返すことができる。宿主細胞は、DNA標識化合物が宿主細胞内に入り、かつ残ることを可能にするように固定および/または透過化処理され得る。固定された細胞においてDNAを標識する化合物としては、ヨウ化プロピジウム(PI)、7-アミノアクチノマイシン-D(7-AAD)、および4’6’-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)が挙げられる。したがって、一部の例では、DNA染色を利用して、集団内の生細胞を特定する。
III.高性能宿主細胞の選択
標識された宿主細胞集団は、各標識された宿主細胞によって生成される放射(光、電磁放射など)を検出し、その細胞に対して検出された発光の量などの因子に基づいて各宿主細胞を選別することができる装置を使用して選別する。選別装置は、フローサイトメトリーまたはマイクロ流体細胞選別などの任意のタイプの細胞選別技術を利用することができ、これは、レーザー検出器の使用によって一度に一つずつ細胞を選別することができる。MACS(磁気活性化細胞選別)では、宿主細胞は、磁気粒子で標識され、親和性に基づく細胞選別では、宿主細胞は、例えば樹脂などの固体媒体との親和性による相互作用のために、細胞表面までまたは細胞表面を越えて延在する標識複合体で標識される。MACSおよび親和性による細胞選別の技術は、単一細胞を単離しないが、宿主細胞内の対象となる遺伝子産物への標識複合体の特異的結合のレベルに基づいて宿主細胞をグループ化することができる。
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも200個の細胞を含む宿主細胞集団を選別することを含む。例えば、宿主細胞の集団は、少なくとも200個の細胞、少なくとも500個の細胞、少なくとも1000個の細胞、少なくとも2000個の細胞、少なくとも5000個の細胞、少なくとも10,000個の細胞、少なくとも20,000個の細胞、少なくとも40,000個の細胞、少なくとも50,000個の細胞、少なくとも75,000個の細胞、少なくとも100,000個の細胞、少なくとも200,000個の細胞、少なくとも500,000個の細胞、またはそれ以上を含み得る。一実施例では、選別される宿主細胞の集団は、200~40,000個の細胞を含む。しかしながら、当業者であれば、十分な時間と装置性能があれば、任意の数の細胞を選別することができ、選択された当該任意の数の細胞は、その後のステップに十分なDNAを提供するということを理解するであろう。
一実施形態では、選別装置は、フローサイトメトリーを利用する。フローサイトメトリーは、細胞集団の分析のための強力な技術であり、単一細胞レベルで高速(毎秒100,000以上のイベント(細胞))で同時に複数のパラメータを測定する能力を有する。フローサイトメーターは、典型的には、(1)集団内の各個々の細胞を分離すること、(2)各細胞に一以上のレーザーを順次照射(または「インタロゲートする」)すること、および(3)その照射された細胞と関連する放射光を記録することによって動作する。所与の細胞と関連付けられた放射光に基づいて、細胞を、一度に一細胞ずつ、二つ以上の容器に選別する能力を備えたフローサイトメーターを、蛍光活性化セルソーター(FACS)と呼ぶ。FACS機器により、その後の分析のために、一または複数の特定の細胞型を複合体集団から単離することができる。適切なFACS機器の例としては、BD FACSAria(商標)-IIu(Becton,Dickinson and Co.社、ニュージャージー州フランクリンレイクス)がある。
FACS機器では、例えば標識された宿主細胞などの細胞集団が、単一細胞ストリームを生成するノズルを通過するが、当該ストリームはその後、一度に一細胞ずつ、レーザー光源のセットを通過して流れる。蛍光団などの適切な検出可能部分で標識された宿主細胞は、励起または発光またはその両方により生じる別個の蛍光シグナルにより検出される。レーザーがインタロゲートされると、細胞は、二つの光学検出器により測定される光を散乱する。一方の検出器では、レーザーの経路に沿った散乱を測定する。このパラメータは、前方散乱(FSC)と呼ばれる。前方散乱の測定により、サイズでの細胞の区別が可能になるが、これはFSC強度が細胞の直径に比例し、主に細胞の周辺の光回折に起因するためである。もう一方の検出器は、レーザーに対して90度の角度で散乱を測定する。このパラメータは、側方散乱(SSC)と呼ばれる。側方散乱測定は、細胞の内部の複雑性(「粒度」)に関する情報を提供する。レーザーと細胞内構造との間の相互作用により、光の屈折または反射が引き起こされる。各細胞について、FACS機器は、FSCおよびSSCのそれぞれを、幅(W)、高さ(H)、および曲線下の面積(A)を有する曲線として視覚化できる「パルス」として測定する。合わせて測定する場合、各細胞ごとにFSCおよびSSCを測定することにより、不均一な集団内の細胞間のある程度の区別を可能にする。共通して測定される細胞のパラメータには、上述の細胞のサイズおよび粒度、ならびに標的タンパク質および/またはDNAが検出可能に標識された場合の標的タンパク質存在量および/またはDNA含量が含まれる場合がある。
蛍光測定の比較のためのベンチマークを提供するために、対象となる遺伝子産物の発現レベル、好ましくは対象となる活性遺伝子産物のレベルについて特徴決定された対照宿主細胞株由来の標識宿主細胞を、FACSによってスキャンすることができる。対照宿主細胞株のFSCおよび/またはSSCは、FACS装置の特定の設定で、例えば光電子増倍管(PMT)用の特定の電圧で、測定することができる。対象となる遺伝子産物を発現する高度に遺伝的に多様な宿主細胞集団などである実験サンプルが、対照宿主細胞株に使用されたのと同じFACS装置設定を使用してFACSによってスキャンされる場合、得られたFSCおよび/またはSSCの読取値を、対照宿主細胞株について得られた読取値と比較して、実験サンプルが、「ベンチマーク」である対照宿主細胞株よりも高性能の宿主細胞を産生する可能性が高いかどうかを調べることができる。一部の実施形態では、対照宿主細胞株は、例えば実験サンプル中の対象となる遺伝子産物を発現しない宿主細胞株などである陰性対照である。
ゲーティング。ゲーティングは、測定のために選択されたパラメータの範囲内に選択範囲を設定するプロセスであり、該選択範囲内において特徴を呈する細胞が選択され、選択されない細胞とは離して選別される。ゲーティングパラメータは、多くの場合、一つ、二つ、三つ、またはそれ以上の次元を有するFACSプロット上の規定された領域として視覚化することができる。例えば、ゲーティングパラメータは、FSC-Hとして測定された蛍光に対してSSC-Wとして測定された蛍光の二次元プロット上の規定された領域として視覚化されて、単一細胞からの蛍光と一致するSSC-W値の範囲において、その規定された領域内に該当する検出イベントを選択することができる。特定の実施例では、ゲーティングパラメータはまた、実質的に単一細胞のみからのシグナルを測定するために、凝集細胞または非細胞性破片を特定し、除去する。これにより、細胞の特定の遺伝的多様性に起因する実際の増加ではない、細胞「凝集」に起因する対象となる産物の発現の増加についての人為的結果が減少する。
IV.選択された宿主細胞および/または発現ベクターの分析
高性能宿主細胞として細胞選別することにより選択された宿主細胞、またはこれら宿主細胞により構成される発現構築物の特徴を決定するために、DNAを、選別された細胞から取得し、DNAシーケンシングによる分析または高性能宿主細胞の遺伝的特徴を有する宿主生細胞(以下を参照)の再構築に使用することができる。例えば、宿主細胞がプラスミド発現ベクターを含む場合、これらは選択した高性能宿主細胞から回収され、NGSにより配列決定され得る。ゲノムDNAもまた、選択した宿主細胞から回収され、配列決定することができるが、プラスミド発現ベクターの回収から得られた結果と同等の結果を達成するためには、より大量のゲノムDNAが必要となる場合がある。RNAもまた、選択された宿主細胞から回収され、DNAに逆転写され、その後、NGSにより分析され、および/または他の方法によって利用することができる。
NGSによる回収されたDNAの分析は、遺伝的に多様な宿主細胞集団のどの遺伝的属性が、高性能宿主細胞の選択により濃縮されたかを示唆し得る。例えば、対象となる遺伝子産物と共発現し、対象となる活性遺伝子産物の発現レベルを増強する遺伝子産物は、共発現遺伝子産物の大規模なプールから特定することができる。別の例として、高性能宿主細胞から回収された核酸の分析により、標識複合体に結合し、かつ/または標識複合体に作用する能力の増加と関連する、対象となる遺伝子産物自体における任意の遺伝的変異を検出することができる。
FACSによって遺伝的に多様な宿主細胞集団に関して生成された蛍光プロットは、個々の宿主細胞がもつ、対象となる遺伝子産物を、好ましくは対象となる活性遺伝子産物を発現する能力を表すものであるが、複数の異なるセクターに分割することができる。一部の実施形態では、カットオフを使用して単一のセクターを選択し、最も高い蛍光放射である細胞が特定される。一部の実施例では、カットオフは、最も高い蛍光放射である細胞の0.05%~5%、例えば、当該細胞の上位0.05%~0.2%、0.1~0.5%、0.25~0.75%、0.5~1%、0.75~1.5%、1%~2.5%、2%~4%、または3%~5%である。一実施例では、カットオフは、最も高い蛍光放射である細胞の0.5%である。しかしながら、当業者であれば、使用する細胞選別装置の性能およびタイプに応じて、より高いカットオフ値またはより低いカットオフ値を使用してもよいということを認識するであろう。カットオフは、スクリーニングのラウンド間および/もしくはプロジェクト間に均一性を提供するように、ならびに/または濃縮された宿主細胞集団における多様性の量を低減するように選択される。さらに、カットオフは選別する細胞の数に依存し得るので、例えばその後のステップのための十分なDNAの単離を可能にするのに十分な数の細胞など、選択される細胞集団には十分な数の細胞が含まれる。したがって、非限定的な一実施例では、カットオフは、最も高い蛍光放射である細胞の0.5%であり、また選別する細胞の最小数は200である。
宿主細胞をFACSにより選別し、各セクターに対応する宿主細胞を収集する。次いで、NGSを使用して、様々なセクターの宿主細胞において、および宿主細胞の選別されていない遺伝的に多様な集団において発現構築物のヌクレオチド配列を決定してもよく、これが好ましくは、選別されていない集団および選別された各セクターにおける固有の配列の少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも50倍の反復のカバレッジを提供する。
収集されたセクターからの各固有の配列の相対存在量は、選別されていない宿主細胞集団の相対存在量と比較される。選別された宿主細胞中の固有の配列の相対存在量を、選別されていない宿主細胞集団中のその配列の相対存在量で除算することにより計算される、相対存在量の倍率変化は、対象となる遺伝子産物の発現に対するその寄与の尺度として、各配列を順位付けするために使用される。高性能を呈するセクターにおいて濃縮し、また低性能を呈するセクターからは枯渇するヌクレオチド配列は、対象となる遺伝子産物の発現を改善する配列の最良の候補である。
特定のヌクレオチド配列(「対照ヌクレオチド配列」)を含む、特徴決定された対照株由来の宿主細胞を用いて宿主細胞集団を「固定(spike)」することも可能である。これら遺伝的に均質な対照宿主細胞は、FACSプロットの一つまたはいくつかのセクターに選別される可能性が高く、また対照宿主細胞により構成される対照ヌクレオチド配列のNGS解析は、これらの配列が、FACSプロットのいくつかのセクターから得た選別された宿主細胞における相対的存在量の最も高い倍率変化を有することを示すはずであり、これにより対照宿主細胞により実証される蛍光レベルが特定される。この任意の「固定」処置は、対照宿主細胞株の蛍光プロファイルに関する内部ベンチマークを提供し、これは対象となる遺伝子産物の発現について特徴決定されたものであり、これが遺伝的に多様な宿主細胞集団の蛍光レベルと対照宿主細胞の蛍光レベルとの比較を可能にする。
FACSなどの細胞選別方法によって選択された高性能宿主細胞、例えば発現の最高レベルを示す宿主細胞集団のうちの0.1%、1%、または10%が、選択された宿主細胞集団により生成された蛍光または他の検出可能な特徴のさらなるFACSスクリーニングによって特徴決定され、それにより細胞選別および選択手順が、所望の特性を有する宿主細胞に対して濃縮された宿主細胞の集団をもたらしたか否かを判断することができる。上述の生細胞または固定細胞を用いて、FACS選別のさらなるラウンドを実施して、高性能宿主細胞の宿主細胞集団をさらに濃縮することができる。
宿主生細胞を使用してFACS選別を実施する場合、特に生細胞FACS選別の複数のラウンドを用いる場合、選択された宿主生細胞集団は、典型的には、FACS手順に従って培養される。選択された宿主細胞集団の組成物の培養中の変化を試験するために、比較的少量の宿主細胞(例えば、当該集団の5~10%)を培養前に取り出し、NGS分析のために保存する。宿主細胞の別のサンプル(例えば20~50%)を、上述のように、対照宿主細胞株と比較して選択された宿主細胞集団の性能を決定するなどの目的で、培養(例えば、一回の細胞分裂と一致する時間の間)後に取り出すことができる。
複数の細胞の塊を形成する可能性が低い生細胞を用いて高度に遺伝的に多様な宿主細胞集団をスクリーニングする方がより効果的であるため、生細胞を用いてFACSスクリーニングの一回以上の初期ラウンドを実施することが有利であり得る。生細胞を用いたFACS選択の十分なラウンドが実施されると、対照宿主細胞の「固定された」量と比較してより高性能な特徴を有する選択細胞の割合が示すとおり、その後FACSは、固定および標識された宿主細胞を用いて実施され、対象となる活性遺伝子産物の産生のための所望の特性を有する宿主細胞をさらに濃縮することができる。
V.宿主細胞株の再構築
特定の実施例では、細胞選別により選択した固定宿主細胞内の発現構築物を採取し、NGSにより配列決定した。発現構築物内の各変異点における配列を定量化し、また選別していない集団と比較して、相対的存在量の最大の倍率変化で存在する配列が、選択した宿主細胞の高性能な特徴と相関しているとみなされる。しかしながら、NGSによる配列決定は、発現ベクター上の変異点間の連鎖を不明瞭にするため、例えば、2位で最も優勢な配列が、通常、1位および3位の特定の配列と結合するか否かを特定することは不可能である。発現ベクターの「高性能」ライブラリーは、各変異点において最も優勢な配列を含み、かつ発現ベクターのライブラリーを作成するように生成されて、特定の配列の組み合わせによって生成された相加特性または相乗特性を呈し得るものを含めて、優勢な配列の全ての組み合わせを含むことができる。次に、この「高性能」ライブラリーを、上述の大腸菌株521などの宿主細胞の親株に形質転換して、選択された高性能宿主細胞を反映する遺伝的特徴を有する宿主生細胞集団を「再構築」する。
遺伝的に多様な宿主細胞集団のFACSスキャンを、上述のような「ベンチマーク」である対照宿主細胞株のFACSスキャンと比較するが、遺伝的に多様な集団の性能(FACSによって測定される)が、対照宿主細胞株の性能よりも著しく高くない場合、上述のようにNGS配列データを使用して「高性能」ライブラリーを作成して、FACSスクリーニングのさらなるラウンドにおいて、ライブラリー内で最も高性能の遺伝子配列間の相加性または相乗性を試験することが有利であり得る。高性能宿主細胞の濃縮が実証された後、その性能がさらに改善できるかを判定するために、「高性能」ライブラリーの作成も行うことができる。
高性能として標識および選別された宿主細胞からプラスミド発現ベクターを回収することも可能である。次いで、回収されたプラスミドを使用して、親宿主細胞株を形質転換し、高性能宿主細胞集団を再構築することができる。
選択された高性能宿主細胞からのゲノムDNAの分析はまた、所望の高性能に関連する遺伝的特徴についての情報を提供することができ、これら遺伝的特徴はその後、セクションIの「宿主細胞集団の遺伝的多様性」に記載した方法を使用して、親宿主細胞株に再導入することができる。
VI.再構築した宿主細胞株のさらなる分析
選択された高性能宿主細胞を反映する遺伝的特徴を有する再構築された宿主細胞株は、対象となる遺伝子産物を発現する細胞集団に適用可能な任意の方法によって分析することができる。個々の宿主細胞に由来する遺伝的に均質なクローン性集団の性能を評価するために、FACS選別によって、または宿主細胞をプレートアウトして個々のコロニーを選び取って培養することによって、再構築された宿主細胞集団から単一宿主細胞を最初に単離することは有用であり得る。
どの宿主細胞集団または培養物が、対象となる遺伝子産物の産生に関連する最高レベルの性能を呈するかを決定する方法には、ゲル電気泳動、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、高速液体クロマトグラフィー(HP-LC)を含む液体クロマトグラフィー(LC)、固相抽出・質量分析法(SPE-MS)、およびLC-MS(実施例1)による、対象となる単離された遺伝子産物を定量することが含まれ得る。
対象となる遺伝子産物を宿主細胞から単離する方法であって、その量および活性のさらなる評価のために対象となる遺伝子産物を得る目的のための当該方法は、例えば抗体の捕捉のためにプロテインAによるまたはKappaSelect(GE Healthcare Life Sciences社、マサチューセッツ州マールボロ)の固体培地を用いるものなどである、高処理のプレートベースの捕捉方法を含む。
ジスルフィド結合を含む対象となる遺伝子産物については、以下の実施例1に記載されるように、遺伝子産物内のこれらの結合の位置を質量分析により決定することができる。対象となる活性遺伝子産物の量を決定するアッセイには、抗原結合アッセイ、リガンド結合アッセイ、発色基質または発色基質類似体の切断などの酵素活性アッセイ、およびその活性形態に特異的な抗体による対象となる遺伝子産物の結合が含まれ得る。これらのタイプのアッセイはまた、フローサイトメトリーで使用される標識複合体に結合および/または作用するバリアントの能力の増加の結果として、宿主細胞濃縮プロセスで特定された対象となる遺伝子産物のバリアントを特徴決定するためにも使用され得る。
対象となる遺伝子産物の産生に関連する所望の高性能な特徴を呈する宿主細胞は、実施例2に記載されるように、より大きな発酵培養物中で増殖させ、対象となる遺伝子産物を大規模に産生する能力を実証することができる。
以下の実施例は、ある特定の特徴および/または実施形態を説明するために提供する。これら実施例は、本開示を、記載される特定の特徴または実施形態に限定すると解釈されるべきではない。
実施例1
ジスルフィド結合の特徴決定
ポリペプチド遺伝子産物中のジスルフィド結合の数および位置は、ポリペプチド遺伝子産物を非還元条件下で、例えばトリプシンなどのプロテアーゼで消化することと、得られたペプチド断片を、連続的な電子移動解離(ETD)および衝突誘起解離(CID)のMSステップ(MS2、MS3)を組み合わせた質量分析法(MS)に供することとにより特定することができる(Nili et al.,“Defining the disulfide bonds of insulin-like growth factor-binding protein-5 by tandem mass spectrometry with electron transfer dissociation and collision-induced dissociation”,J Biol Chem 2012 Jan 6;287(2):1510-1519;Epub 2011 Nov 22)。
共発現したタンパク質の消化。ジスルフィド結合の再配列を防止するために、遊離システイン残基がアルキル化により遮断される。すなわち、ポリペプチド遺伝子産物は、遮光状態で、アルキル化剤ヨードアセトアミド(5mM)と共に4Mの尿素を含む緩衝液中で振とうしながら20℃で30分間インキュベートし、次いでプレキャストゲルを使用して非還元SDS-PAGEにより分離する。あるいは、ポリペプチド遺伝子産物を、ヨードアセトアミドを含む電気泳動後、または対照なしで、当該ゲル中でインキュベートする。タンパク質のバンドを染色し、二重脱イオン水で脱染色し、切り取り、0.5mLの50mMの重炭酸アンモニウム、50%(v/v)アセトニトリル中で、20℃で30分間振とうしながら、2回インキュベートする。タンパク質サンプルを、100%アセトニトリル中で2分間脱水し、真空遠心分離により乾燥し、そして50mMの重炭酸アンモニウムおよび5mMの塩化カルシウムを含有する緩衝液中で、氷上で15分間、10mg/mlのトリプシンまたはキモトリプシンで再水和する。過剰な緩衝液を除去し、酵素を含まない同一の緩衝液0.05mLで置換し、その後、振とうしながら、トリプシンおよびキモトリプシンそれぞれに関して、37℃または20℃で16時間インキュベーションする。消化は、3マイクロリットルの88%のギ酸を加えることにより停止し、短時間ボルテックスにかけた後、上清を除去し、分析まで-20℃で保存する。
質量分析によるジスルフィド結合の位置決定。ペプチドを、0.1%のギ酸を含有する移動相で20マイクロリットル/分で、1mm×8mmのトラップカラム(Michrom Bio Resources,Inc.社、カリフォルニア州オーバーン)上に注入する。次いでトラップカートリッジを、5mmのZorbax SB-C18固定相(Agilent Technologies社、カリフォルニア州サンタクララ)を含有する0.5mm×250mmのカラムとインラインで配置し、そしてペプチドを、1100シリーズキャピラリーHPLC(Agilent Technologies社)を用いて、10マイクロリットル/分で90分間かけて2~30%のアセトニトリル勾配で分離した。ペプチドは、ETD源(Thermo Scientific社、カリフォルニア州サンノゼ)を用いたLTQ Velos線形イオントラップを使用して分析する。エレクトロスプレーイオン化は、キャプティブスプレー源(Michrom Bioresources,Inc.社)を使用して実施する。サーベイMSスキャンに続いて、7回のデータ依存的なスキャンが続くが、これはサーベイスキャンで最も強い強度のイオンに対するCIDおよびETD MS2スキャンと、その後のETD MS2スキャン中の1番目から5番目に強い強度のイオンに対する5回のMS3のCIDスキャンとからなる。CIDスキャンでは、正規化された衝突エネルギーを35とし、またETDスキャンでは、100ミリ秒のアクティベーション時間を使用し、補足的なアクティベーションが有効化されている。MS2のCIDおよびETDスキャンを開始するための最小信号は10,000であり、MS3のCIDスキャンを開始するための最小信号は1000であり、またすべてのMS2およびMS3スキャンの選択幅(isolation width)は3.0m/zである。ソフトウェアのダイナミック排除機能は、繰り返し数1、排除リストサイズ100、および排除持続時間30秒で有効化される。ETD MS2スキャンの収集に関して、特異的に架橋する種を標的とするインクルージョンリスト(inclusion list)を使用する。MS2およびMS3スキャン用の別個のデータファイルは、ZSA電荷状態分析を使用してBioworks 3.3(Thermo Scientific社)によって作成される。ペプチド配列に対するMS2およびMS3スキャンの照合は、Sequest(V27、Rev 12、Thermo Scientific社)により実施する。分析は、酵素特異性はなしで、親イオンの質量誤差範囲を2.5、フラグメントの質量誤差範囲を1.0、および酸化メチオニン残基に対する可変質量を+16で実施する。次いで、最小ペプチドおよびタンパク質の確率として95%および99%を用いて、プログラムScaffold(V3_00_08、Proteome Software社、オレゴン州ポートランド)を使用して、結果を解析する。MS3の結果からのペプチドはスキャン数で選別され、またペプチドを含むシステインは、ETDのMS2スキャンで観察された五つの最も強度の高いイオンから生じたMS3スキャンの群から特定される。ジスルフィド結合種に関与するシステインペプチドの同一性は、サーベイスキャンとETDのMS2スキャンとで観察された親イオン質量の手動による実験でさらに確認される。
実施例2
発酵
対象となる遺伝子産物の産生に関与する発酵プロセスは、(1)不連続(バッチ処理)の操作、(2)連続の操作、および(3)半連続(供給-バッチ)の操作のカテゴリのうちの一つに該当する操作モードを使用することができる。バッチ処理は、特定の反応期間にわたって培養される、処理の開始時点で滅菌培養培地(バッチ培地)に微生物を播種することにより特徴付けられる。培養中、細胞濃度、基質濃度(炭素源、栄養塩類、ビタミンなど)、および産物濃度が変化する。良好に混合することで、反応混合物の組成または温度に有意な局所的差がないことが確実になる。反応は非定常であり、増殖制限基質(概して炭素源)が消費されるまで細胞は増殖する。
連続の操作は、新鮮な培養培地(供給培地)が発酵槽に連続的に添加され、また使用済み培地および細胞が発酵槽から同じ速度で連続的に引き出されることを特徴とする。連続の操作では、増殖速度は培地添加の速度によって決定され、そして増殖収率は増殖制限基質(すなわち、炭素源)の濃度によって決定される。すべての反応変数および制御パラメータは、時間的に一定であり続け、従って、発酵槽内で時間が一定の状態が確立され、次いで一定の生産性および出力が続く。
半連続の操作は、バッチ操作および連続の操作の組み合わせとみなすことができる。発酵がバッチ処理として開始され、そして増殖制限基質が消費されると、グルコースおよびミネラルを含む連続供給培地が特定の様式で添加される(供給-バッチ)。言い換えれば、この操作は、バッチ培地および供給培地の両方を使用して、細胞の増殖および所望の遺伝子産物の効率的な産生を達成する。培養期間中、細胞が添加または取り出されることはなく、したがって、発酵槽は微生物が関与する限りバッチで動作する。本方法は、上述のものを含む様々な処理で利用することができるが、特定の利用は、供給-バッチの処理と併せて行われる。
上記の各処理において、代謝産物形成と、例えば培地pH、光学密度、色、および滴定酸度などのいくつかの他の変数との間の相関を利用することによって、細胞増殖および産物の蓄積を間接的にモニターすることができる。例えば、光学密度は、不溶性細胞粒子の蓄積の指標を提供し、また表示装置もしくはレコーダーに接続されたマイクロODユニットを使用して稼働中に、またはサンプリングによってオフラインで、モニターすることができる。乾燥細胞重量を決定する手段として、600ナノメートルでの光学密度の読取値(OD600)を使用する。
高細胞密度の発酵は、概して、少なくとも>30gの細胞乾燥重量/リットル(OD600>60)の収量で得られ、また特定の実施形態では>40gの細胞乾燥重量/リットル(OD600>80)の収量で得られるそれら処理として記述される。すべての高細胞密度発酵プロセスは、濃縮された栄養培地を使用し、当該培地は「供給-バッチ」処理において段階的に計量されて発酵槽内に入る。濃縮された栄養供給培地は、供給中の発酵槽内容物の希釈を最小化するために、高細胞密度処理に必要とされる。供給-バッチ処理が必要とされるが、操作者が炭素源の供給を制御することができるためであり、これは細胞が高細胞密度を生成するのに十分高い炭素源の濃度に曝露されると、細胞が阻害性二生成物、酢酸イオンを非常に多く産生することとなり、その増殖が停止することとなるという理由で重要である(Majewski and Domach,“Simple constrained-optimization view of acetate overflow in E.coli”,Biotechnol Bioeng 1990 Mar 25;35(7):732-738)。
酢酸およびその脱プロトン化イオンである酢酸イオンは共に、バイオリアクターでの大規模なタンパク質産生における細菌増殖の主な阻害性副生成物の一つを意味する。pH7では、酢酸イオンが酢酸の最もよく見られる形態である。炭素エネルギー源の量が細菌の処理能力を大幅に上回る場合、任意の過剰な炭素エネルギー源が酢酸に変換され得る。トリカルボン酸回路および/または電子伝達系の飽和が、酢酸蓄積の最も可能性の高い原因である。増殖培地の選択は、酢酸阻害のレベルに影響を与える可能性があり、規定された培地中で増殖した細胞は、複合培地中で増殖したものよりも酢酸の影響を受け得る。グルコースをグリセリンで置換することもまた、生じる酢酸の量を大幅に減少させ得る。グリセリンは、細胞へのその輸送速度がグルコースの速度よりもはるかに遅いため、グルコースよりも酢酸の生成が少ないと考えられる。しかしながら、グリセリンはグルコースよりも高価であり、また細菌の増殖をより遅くさせる可能性がある。増殖温度を低下させることで、炭素源取り込みの速度および増殖速度が低下し、それにより酢酸の生成を減少させることもできる。細菌は、過剰な炭素エネルギー源の存在下または急速な増殖の間だけでなく、嫌気性条件下でも酢酸を生じる。大腸菌などの細菌があまりにも速く増殖できる場合、バイオリアクターシステムの酸素送達能力を超えて、それが嫌気性増殖の条件を招く可能性がある。これを防ぐために、栄養制限を通して、より遅い一定の増殖速度を維持してもよい。酢酸の蓄積を低減するための他の方法には、酢酸の生成を防止するための遺伝子改変、酢酸利用遺伝子の添加、および酢酸が軽減される株の選択が含まれる。大腸菌BL21(DE3)は、酢酸の生成がより低レベルであることがわかっている株の一つであるが、これは大腸菌BL21(DE3)がそのグリオキシル酸シャント経路内で酢酸を使用できるためである。
対象となる遺伝子産物の産生には、より大規模な供給-バッチ発酵槽が利用可能である。より大きな発酵槽は、少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1000~100,000リットルの容量(すなわち、作業容量)を有し、ヘッドスペースに十分なスペースを残している。これらの発酵槽は、酸素および栄養素、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分配するために、攪拌器インペラまたは他の適切な手段を使用する。小規模発酵とは、概して、容積が約100リットル以下、一部の特定の実施形態では約10リットル以下である、発酵槽での発酵を指す。
対象となる遺伝子産物を産生するために使用される発酵処理の標準的な反応条件には、概して、例えば大腸菌などの微生物宿主細胞では、約5.0~8.0のpHおよび20~50℃の範囲の培養温度を維持することを伴う。一実施形態では、宿主系として大腸菌を利用するが、発酵は約7.0である最適pHおよび約30℃である最適培養温度で実施する。
これら発酵プロセスにおける標準的な栄養素培地成分は、概して、エネルギー、炭素、窒素、リン、マグネシウム、および微量の鉄およびカルシウムの源を含む。さらに培地は、増殖因子(ビタミンおよびアミノ酸など)、無機塩、および産物形成に必要不可欠な任意の他の前駆体を含有してもよい。培地は、例えばアルファ-グリセロリン酸および/またはベータ-グリセロリン酸などのグリセロリン酸などである輸送可能な有機リン酸を、より具体的な例として、グリセロール-2-リン酸および/またはグリセロール-3-リン酸を、含有してもよい。培養される宿主細胞の成分組成を使用して、細胞増殖をサポートするために必要な各成分の割合を計算することができる。成分濃度は、処理が低細胞密度の処理か高細胞密度の処理かのいずれかによって変動することとなる。例えば、低細胞密度バッチ発酵処理におけるグルコース濃度は、1~5g/Lの範囲であり、一方で高細胞密度バッチ処理では、45g/L~75g/Lの範囲のグルコース濃度が使用される。さらに増殖培地は、例えばベタイン、ジメチルスルホニオプロピオン酸および/またはコリンなどの保護的なオスモライトを、中程度の濃度(例えば0.1~5mM、または0.25mM、0.5mM、1mM、1.5mM、または2mMの範囲で)で含有してもよい。
一つまたは複数の誘導物質を増殖培地に導入して、対象となる遺伝子産物の発現を誘導することができる。誘導は、例えば指数関数的な増殖期の終わりに向かっているが培養が最大細胞密度に到達する前などの指数関数的な増殖期の間に、または発酵中の早期の時点もしくは後期時点に開始され得る。リン酸などの栄養素の枯渇によって誘導可能な一つまたは複数のプロモーターから対象となる遺伝子産物を発現する場合は、誘導は、その栄養素が増殖培地から十分に枯渇したときに、外因性誘導物質を添加することなく、生じることとなる。
宿主細胞の指数関数的な増殖の間、代謝速度は、酸素および炭素/エネルギー源の有効性に正比例し、したがって、有効な酸素または炭素/エネルギー源のレベルまたはその両方を減少させることで、代謝速度が低下することとなる。例えば攪拌速度または背圧、またはO圧力の低減などの発酵槽の動作パラメータの操作により、有効な酸素レベルを調節し、また宿主細胞の代謝速度を低下させることができる。炭素/エネルギー源の濃度または送達速度またはその両方を低減することで、同様の効果がある。さらに、発現系の性質に応じて、発現の誘導が、宿主細胞代謝速度の低下を招く可能性がある。最後に、最大細胞密度に達すると、増殖速度は劇的に停止または低下する。宿主細胞の代謝速度の低下が、タンパク質のフォールディングおよびアセンブリのプロセスをはじめとする対象となる遺伝子産物のより制御された発現をもたらし得る。宿主細胞代謝速度は、細胞増殖速度であって、特異的増殖速度または瞬時増殖速度のいずれかを測定することによって(例えばOD600などの光学密度(OD)を測定することによって、および/または任意でODをバイオマスに変換することによって)評価することができる。各アッセイ点における概算のバイオマス(細胞乾燥重量)は以下のとおり計算する。すなわち、概算のバイオマス(g)=(OD600÷2)×体積(L)。望ましい増殖速度は、特定の実施形態では、0.01~0.7の範囲内に、または0.05~0.3の範囲内にあり、または0.1~0.2の範囲内にあり、またはおよそ0.15(0.15プラスまたはマイナス10%)であり、または0.15である。
発酵装置。以下は、宿主細胞を増殖させるために使用できる装置の例であり、発酵システムの多数の他の構成が市販されている。宿主細胞は、2X RushtonインペラおよびBioFlo/CelliGen 115発酵槽/バイオリアクタコントローラを備えた1L容器サイズの、New Brunswick BioFlo/CelliGen 115水ジャケット式発酵槽(Eppendorf North America社、ニューヨーク州ホーポージ)で増殖させることができ、温度、pH、および溶存酸素(DO)がモニターされる。また、四つの60~250mlのDASbox発酵容器を含む4倍で構成可能なDASGIPシステム(Eppendorf North America社、ニューヨーク州ホーポージ)で宿主細胞を増殖させることも可能であり、各容器には2X Rushtonインペラ、DASbox排気コンデンサ、およびDASbox供給・モニターモジュール(温度センサ、pH/酸化還元センサ、および溶存酸素センサを含む)が含まれる。適切な発酵装置には、NLF 22 30L実験室発酵槽(Bioengineering,Inc.社、マサチューセッツ州サマービル)であって、ステンレス鋼容器中に30-L容量および20-L最大作業容量、二つのRushtonインペラ、空気のみでのスパージ、およびpH、DO、排気O2、排気CO、温度、および圧力を含むすべての関連パラメータの追跡および制御を可能にするBioSCADAソフトウェアを実行する制御システムを有する、当該発酵槽も含まれる。
実施例3
TRAST-Fabを発現する宿主細胞の活性特異的濃縮
TRAST-Fabは、HER2-結合モノクローナル抗体トラスツズマブの抗原結合断片である。TRAST-Fab重鎖(「HC」)およびTRAST-Fab軽鎖(「LC」)のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2および配列番号3で表す。この実施例では、TRAST-Fabの重鎖および軽鎖は、発現構築物であって、アラビノース誘導性araBAD(「ara」)プロモーターおよびプロピオン酸誘導性prpBCDE(「prp」)プロモーターを含む二重プロモーター発現ベクターから、共発現された。二重プロモーター発現ベクターのヌクレオチド配列は、配列番号1で表す。以下の活性特異的細胞濃縮手順では、宿主細胞は、上記したセクションIで示す遺伝子型を有する大腸菌521細胞であった。
選択および活性特異的濃縮のために宿主細胞集団を作製するため、大腸菌521細胞を、以下の表1に記載するように、任意の追加のポリヌクレオチド配列を挿入しないか(「empty(空)」、表1のサンプルA1)またはTRAST-Fabをコードするものをはじめとする様々なポリヌクレオチド配列を含むかいずれかである二重プロモーター発現ベクター(配列番号1)で形質転換した。追加的な遺伝子産物をprpプロモーターから発現させるために、特定のサンプルでは、TRAST-FabのHCおよびLCを、HC-LC配置またはLC-HC配置のいずれかで、araプロモーターからバイシストロニックな配置で発現させた。これらのサンプルの一部において、prpプロモーターは、ジスルフィド結合イソメラーゼタンパク質DsbCの形態をコードするポリヌクレオチドを発現したが、これは見かけ上シグナルペプチドを欠いており、したがって細胞質に局在しているものであり、これを「cDsbC」(配列番号4)と称することとする。配列番号7および配列番号8であるTRAST-FabのHCポリペプチドおよびLCポリペプチドは、シネコシスティス属(Synechochystis sp.)由来のN末端アミノ酸配列DnaBを有する(UniProtKB Q55418)。このDnaBに関連するアミノ酸配列は、6xHis配列を含むと配列番号9として表す。
Figure 2023514045000002
サンプルA1~A4は、本手順のための対照サンプルであり、A1は、TRAST-Fab遺伝子産物を発現しない陰性対照宿主細胞集団であり、またA2~A4は、発現ベクターの単一形態から各々、TRAST-Fabを発現する対照宿主細胞集団である。サンプルB1~B4およびC1~C4では、宿主細胞集団は、prpプロモーターから発現された137種類の異なる遺伝子産物を有する発現ベクターの多様な形態を含んだ。サンプルB1~B6およびC1~C4では、宿主細胞によって構成される発現ベクターはさらに、集団内の発現ベクターの様々な形態の合計数を12,769、19,728、または1,749,353に増加させる変異源を有していた。
発現ベクターを用いた形質転換後、宿主細胞サンプルを、カナマイシン(50マイクログラム/mL)を含有する固体培地上に播種し、カナマイシン抵抗性の遺伝子を担持する発現ベクターを備えた良好な形質転換体を選択した。37℃で一晩増殖させた後、宿主細胞コロニーを、固体培地から掻き取りLB培地(10g/Lトリプトン、5g/L酵母抽出物、および10g/L NaCl)に入れ、また600nmでの光学密度(OD600)を、LB培地で希釈することにより3に調整した。宿主細胞集団を、誘導培地(8mMのMgSO4、1×Korz微量金属、50マイクログラム/mLのカナマイシン、および以下に説明される誘導物質を有する発酵産生培地)中で、発現ベクター上に存在するTRAST-FabのHCおよびLC、ならびに任意の他の遺伝子産物の発現のために誘導した。
発酵産生培地は、KH2PO4、(NH4)2SO4、酵母抽出物、グリセリン、クエン酸、および1×Korz微量金属を含み、NH4OHでpH6.8に導いた。
サンプルA1、A3、A4、およびB1~B6は、1mMのプロピオン酸および250マイクロモルのアラビノースを含有する培地中で誘導し、サンプルA2およびC1~C4は、20mMのプロピオン酸および250マイクロモルのアラビノースを含有する培地中で誘導した。
各宿主細胞集団(上記したOD600を3とした)のうち二つの複製を、Aeraseal(商標)プレートカバー(Excel Scientific社、カリフォルニア州ヴィクタービル)で覆われた24ウェルのディープウェルプレート中の誘導培地に入れ、インキュベートし、次いで各サンプルのOD600を決定した。各サンプル中の残りの宿主細胞培養物は、さらなる分析のために、遠心分離し、続いて上清を吸引して回収し、ペレットとして保存した。
その後、サンプルを固定して標識化した。宿主細胞は、各サンプルに0.5mLの冷却した固定溶液(脱イオン水中の0.65%パラホルムアルデヒド、0.02%グルタルアルデヒド、および32.25mMのリン酸三ナトリウム)を添加することにより固定し、そしてペレットを再懸濁し、インキュベートし、遠心分離して、吸引により上清を除去した。0.2mLの体積の透過化緩衝液(50mMのグルコース、20mMのトリス、10mMのEDTA pH8.2、および脱イオン水中の緩衝液10mL当たり1単位のリゾチーム)を洗浄したペレットそれぞれに添加し、そしてサンプルを氷上でインキュベートした。透過化緩衝液中でのインキュベーション後、サンプルを冷却しながら遠心分離し、そして上清を吸引により除去した。透過化処理した宿主細胞ペレットを、0.5mLの1Xイムノアッセイ緩衝液(PerkinElmer社、マサチューセッツ州ウォルサム、25mMのHEPES pH7.4、0.1%カゼイン、1mg/mLのDextran-500、0.5%トリトンX-100および0.05%のProclin-300、および1mMのEDTA)を混合することなくペレットに添加することにより固定し、サンプルを遠心分離し、そして吸引により上清を除去した。
透過化および固定した宿主細胞内のTRAST-Fabを標識するために、TRAST-Fab抗体断片に特異的に結合されるものであるHER2抗原が、蛍光標識ストレプトアビジンの存在下でビオチンに最初にコンジュゲートし、HER2-ビオチン-ストレプトアビジン-蛍光団の複合体を調製した。10マイクロモルのAlexa Fluor(登録商標)488ストレプトアビジン(ThermoFisher Scientific Inc社、マサチューセッツ州ウォルサム)および1.75マイクロモルのHER2(約1:20v/v)の混合物を、1mMのEDTAを含むイムノアッセイ緩衝液(上記を参照)を添加することにより、10mLまで調製した。この溶液を含有するチューブを、回転ミキサー上で4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、ビオチンをHER2 Alexa Fluor(登録商標)488ストレプトアビジン溶液(0.1mg/mLのビオチン最終濃度)に添加し、インキュベートした。
宿主細胞サンプルを、各サンプルにHER2-ビオチン-ストレプトアビジン-Alexa Fluor(登録商標)488溶液を添加することにより標識し、4℃で一晩インキュベートした。次いで、サンプルを遠心分離して、吸引により上清を除去した。宿主細胞ペレットを、FACS選択手順のために0.5mLの1×PBS pH8中に再懸濁した。
FACS機器、BD FACSAria(商標)-IIu(Becton,Dickinson and Co.社、ニュージャージー州フランクリンレイクス)を、サンプル中の標識した宿主細胞の選別に使用した。ヨウ化プロピジウム(1mg/mL)を各0.5mLサンプルに添加し、宿主細胞中に存在するDNAを染色した。サンプル中の宿主細胞を固定して、透過化処理したため、ヨウ化プロピジウムは宿主細胞に侵入し、細胞のDNAに接近することができた。表1に示す宿主細胞サンプルA1~A4、B1~B6およびC1~C4は、選別なしで、実験中に使用される光電子増倍管(PMT)用に電圧をセットアップするようにFACS機器にかけた。宿主細胞サンプルをFACS機器を通して実行し、各A1~A4対照サンプルに対して50,000イベント、およびB1~B6サンプルおよびC1~C4サンプルのそれぞれに対して100万イベントを記録し、A4を除いて各サンプルに対してデュプリケートで実行を行った。サンプルから生成された実験データに基づいて、標識された宿主細胞の選別を行うこととなるパラメータを決定したFlowJo(商標)ソフトウェア(Becton,Dickinson and Co.社、ニュージャージー州フランクリンレイク)を使用して、選別ゲートをセットアップした。
第一のゲーティング基準は、FSC-A(細胞サイズの指標としての総細胞蛍光)に対するSSC-A(総細胞粒度)としてプロットされた、675/20nm波長フィルターを使用するDNA蛍光検出を基準とした。この実験で使用される固定および標識された大腸菌宿主細胞については、サイズおよび粒度の増加は、複数の細胞の凝集から生じる可能性が高い。この初期ゲート(「P2」)は、インタロゲートされた検出イベントのうち99.9%以上を保持するように、また予想されるSSC-AからFSC-Aへの分布と比較した場合に極端な外れ値であったイベントのみを除外するように、設定された。第二のゲートもまた、FSC-Hに対するSSC-Wとしてプロットされた、675/20のDNA蛍光を基準としており、選択されたイベントは、複数の細胞の凝集を除去するためにSSC-W値38,000~63,000の間の値-単一細胞に期待される範囲-であり、かつ20以上のFSC-H値をもつイベントに設定された。第二のゲートは、サンプルに応じて、約30%~50%の検出イベントの保持をもたらした。
最終選別ゲートは、FSC-Aとして測定された、HER2-標識TRAST-Fabタンパク質またはDnaB-TRAST-Fabの530/30蛍光に対してプロットされ、FSC-Aとして測定された、675/20のDNA蛍光の比較を基準とした。図2に示すように、「低DNA」ゲートが複雑な境界を伴って生成された。このゲートは、より少量のDNA蛍光、およびより多量のHER2-標識Alexa Fluor(登録商標)488蛍光に関連する検出イベントを選択し、TRAST-FabまたはDnaB-TRAST-Fabのより多量の産生を伴う個々の細胞が選択される。この「低DNA」ゲートを、対照サンプルA1~A4に対して記録された50,000のイベントに適用した場合、A1の「空ベクター」対照サンプルに関してこのゲートで選択されたイベントはゼロであり、A4対照サンプルに関しては1イベント、およびサンプルA2およびA3に関してはそれぞれ2434イベントおよび1471イベント(二回のランの平均)であった。B1~B6サンプルおよびC1~C4サンプルについて記録された100万のイベントへの「低DNA」ゲートの適用により、結果として、各サンプルについて平均で82~662のイベントが選択された。
細胞選別操作を開始する前に、EDTAを含まない50マイクロリットルの1Xイムノアッセイ緩衝液(上記を参照)を採取チューブに入れた。細胞選別を、サンプルB1~B6およびサンプルC1~C4に対して実施し、270万~1090万イベントが記録され、サンプル当たり1000イベントが収集された。
高レベルのDnaB-TRAST-Fab発現を呈する宿主細胞を含むFACS選別サンプルは、製造業者の説明書に従ってQIAprep(登録商標)Spin Miniprepキット(Qiagen社、オランダ国フェンロー)を使用して、選択された細胞集団からプラスミドDNAを単離することによるさらなる分析のため、宿主細胞を再構築するため(下記)および高処理の次世代DNAシーケンシング(「NGS」)のために調製された。またNGS分析のために調製されたのは、対応する選別前のサンプルであった。NGS用のDNAサンプルを、Nextera Flexビーズ(Illumina社、カリフォルニア州サンディエゴ)との混合物により調製した。次に、「タグ付き(tagmented)」DNAサンプルをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅して、MiSeqシーケンサー(Illumina社、カリフォルニア州サンディエゴ)にかけた。
対応する選別後サンプルと比較すると、図3に示すように、FACS選別でより高いDnaB-TRAST-Fab発現として選択された宿主細胞集団が、特定の発現ベクターポリヌクレオチド成分の存在に関しておよびprpプロモーターからDnaB-TRAST-Fabと共発現された一定の遺伝子産物に関して濃縮されるとしてNGSにより確認された。
高発現宿主細胞から回収されたプラスミドDNAを使用して、親宿主細胞株である大腸菌521細胞を形質転換し、DnaB-TRAST-Fabの高レベルの発現を誘導する発現ベクターに関して濃縮された宿主細胞集団を再構築した。
上記の表1のサンプルB1~B6およびサンプルC1~C4から選択される宿主細胞に対応する、再構築された宿主細胞集団を、それらがFACSで選択された宿主細胞から再構築されたことを示すようにB1*~B6*およびC1*~C4*と呼んだ。これらのB1*~B6*およびC1*~C4*宿主細胞集団、ならびに表1に記載される以前に選別されていない宿主細胞集団B1~B6およびC1~C4は、22時間にわたる誘導培地でのインキュベーションによって増殖され、誘導され、回収され、標識され、また上述のようにゲーティングされたFACSスクリーンにより分析された。図4に示すように、FACS選別から生じたB1*~B6*およびC1*~C4*の宿主細胞集団は、より高いレベルでTRAST-Fabを発現する宿主細胞に関して有意に濃縮された。
FACSで選択された宿主細胞集団B1*~B4*を、上記の実施例1Eに記載されるように再構築した。すなわち、各サンプルから回収されたプラスミドを、大腸菌521親宿主細胞株に形質転換し、50マイクログラム/mLのカナマイシンを含有する固体培地上に播種した。宿主細胞の個々のコロニーを選び取り、各96ウェルプレートに、B1*を88ウェル、B2*を163ウェル、B3*を88ウェル、またB4*を189ウェルに入れ、個々の細胞に由来する宿主細胞培養物によるTRAST-Fabの発現を決定するようにした。対照宿主細胞A3およびA4(表1を参照)も、各96ウェルプレート上の複数のウェルに含まれた。これら宿主細胞サンプルを増殖させ、概して実施例1Aに記載される手順を使用して、誘導培地中でのインキュベーションによりTRAST-Fab発現を誘導した。アリコートされたこれらサンプルのTRAST-Fab発現レベルをSPE-MSにより決定する目的で、各誘導宿主細胞培養液から所定の体積(200マイクロリットル)を新しい96ウェルプレートに取り出した。
回収した宿主細胞サンプル(A3、A4、およびB1*~B4*)を溶解し、サンプルを遠心分離した。各サンプルを消化緩衝液(8Mの尿素、200mMのヒスチジン、pH6.00、1:1v/v)に移し、次いでタンパク質のアンフォールディングを助けるために加熱した。加熱後、トリプシン/lysCプロテアーゼ混合物(Promega社、ウィスコンシン州マディソン)を各ウェルに添加した。次いで、サンプルをインキュベートした。インキュベーション後、サンプルにギ酸を添加してクエンチした。
次いで、サンプルA3、A4、およびB1*~B4*由来の宿主細胞タンパク質の消化およびクエンチされたサンプルを、ペプチド多重反応モニタリング(MRM)検出のためにSPE-MSに供した。MRMは、サンプルのうちDnaB-TRAST-Fabポリペプチドからの三つのペプチド、すなわち重鎖(HC)からのペプチドGPSVFPLAPSSK(配列番号2のアミノ酸126~137)、軽鎖(LC)からのペプチドDSTYSLSSTLTLSK(配列番号3のアミノ酸171~184)、およびDnaB関連N末端アミノ酸配列からのペプチドEHIALPR(配列番号9のアミノ酸92~98)をモニターするようにセットアップされた。これらペプチドは、最適な脱クラスター電位および衝突エネルギーをもたらすように選択された。これら基準に基づき、以下の表2に示すように、ペプチド当たり二つのトランジションをモニタリングした。
Figure 2023514045000003
TRAST-Fab標準は、当該標準を「empty(空)」(発現ベクターなし)の宿主細胞から調製された細胞溶解産物で希釈することにより調製した連続希釈サンプルで消化した。本手順により生成した標準曲線を、インタロゲートしたすべてのサンプルの定量に使用した。
候補宿主細胞集団は、表1に示されるA3対照サンプルと比較して、HCおよびLCの両方を高量(mg/L/OD600)で発現すること、ならびに対照サンプルA3よりも高い総タンパク質産生量に相当する、少なくとも2.5倍高いレベルのDnaBインテインを呈することに基づいて選択された(図5を参照)。以下に詳述するように、プロテインAによる精製および機能的TRAST-Fabの抗原結合アッセイによるさらなる分析のために、サンプルB1*_G5、B1*_H11、B1*_H6、B2*_A10、およびB4*_H11を選択した。
サンプルB1*_G5、B1*_H11、B1*_H6、B2*_A10、およびB4*_H11からの宿主細胞、ならびに対照サンプルA3を、概して実施例1Aに記載されるように20mLの振とうフラスコ培養液中で増殖させ、各培養液のOD600を測定し、次いでそれらを遠心分離して、宿主細胞のペレットを形成した。宿主細胞を溶解し、そして氷上で30分間インキュベーションした。宿主細胞溶解産物を遠心分離して、上清を濾過した。濾過した細胞溶解産物は、プロテインAがFab重鎖に結合することによる、サンプルからの宿主細胞溶解産物中のTRAST-FabまたはDnaB-TRAST-Fab重鎖/軽鎖ヘテロ二量体(総称してTRAST-Fabヘテロ二量体)のプロテインAによる精製のために、AKTA(商標)HiTrap MabSelect(商標)1mLカラム(GE Healthcare Life Sciences社、マサチューセッツ州マールボロ)にロードした。AKTA(商標)デバイスで、280nmでの溶出画分の吸光度を測定し、各サンプルの結果を統合して、溶出ピーク中に存在するタンパク質の総量を求めた。さらに、HP-LCを使用して、ヘテロ二量体の予測される質量に対応する280nmにおける吸光度のピークに基づいて、溶出画分中に存在するTRAST-Fabヘテロ二量体の量を定量した。以下の表3に結果を示すが、タンパク質の量は、誘導宿主細胞培養の体積および細胞密度(OD600)の観点で表現する。この分析から、B4*_H11サンプルが、対照A3サンプルの約1.5倍の量の総タンパク質およびTRAST-Fabヘテロ二量体を一貫して産生したことが分かる。
Figure 2023514045000004
サンプルB1*_G5、B1*_H11、B1*_H6、B2*_A10、およびB4*_H11により産生される活性DnaB-TRAST-Fabの量ならびに対照サンプルA3による活性TRAST-Fabの量は、抗原結合活性を有するTRAST-Fabヘテロ二量体の存在を特異的に測定する抗原結合アッセイにより評価した。このアッセイにより、サンプルB2*_A10およびB4*_H11が、それぞれ対照A3サンプルの約1.5倍の量のTRAST-Fabヘテロ二量体を産生することが示された。
高発現ベクターの濃縮レベルを評価した。ACEアッセイを使用して、未感作ライブラリーを固定し、透過化処理し、そしてHER2でプローブして、トラスツズマブFab’の産生を検出した。標的産生細胞のうち、上位<0.5%をACEアッセイを介して選別した。その後、ベクタープラスミドを単離し、細胞に再形質転換して発現を評価した。同じ選別ゲートを適用すると、再変換後に、高発現ベクターに対して、>10倍の濃縮が実証される(図6)。ACEアッセイ後のトラスツズマブFab’の産生の完全な増加を評価するために、陰性対照サンプルおよび陽性対照サンプルによりゲーティングを確立した。未感作ライブラリーは、典型的には低レベルの発現であり、これはACEアッセイ後に大幅に増加した(図7A~7B)。
本開示を実践する際、分子生物学、微生物学、および組み換えDNA技術における多数の従来の技術が使用されてもよい。こうした従来の技術は、ベクター、宿主細胞、および組み換え法に関する。これら技術は周知であり、例えばBerger and Kimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology volume 152 Academic Press,Mc,San Diego,CA;Sambrook et al.,Molecular Cloning-A Laboratory Manual(3rd Ed.),Vol.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,2000;および、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,(supplemented through 2006)において説明される。例えば、細胞の単離および培養、ならびにその後の核酸またはタンパク質の単離のための他の有用な参考文献としては、Freshney(1994)Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique,third edition,Wiley-Liss,New Yorkおよびそこで引用される文献;Payne et al.(1992)Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems John Wiley & Sons,Inc.New York,NY;Gamborg and Phillips(Eds.)(1995)Plant Cell,Tissue and Organ Culture;Fundamental Methods Springer Lab Manual,Springer- Verlag(Berlin Heidelberg New York);および、Atlas and Parks(Eds.)The Handbook of Microbiological Media(1993)CRC Press,Boca Raton,FLが挙げられる。核酸の操作および作製に有用な、核酸を作製する方法(例えば、インビトロ増幅、細胞からの精製、または化学合成による)、核酸を操作する方法(例えば、部位特異的変異誘発、制限酵素での消化、ライゲーションなどによる)、ならびに様々なベクター、細胞株、などが、上記の参考文献に記載されている。さらに、本質的に任意のポリヌクレオチド(標識した、またはビオチン化したポリヌクレオチドを含む)は、様々な商業的な供給源のいずれかから注文されたカスタムまたは標準であってもよい。
本発明は、本発明の実施のための特定の様式を含むことが見出された、または提案された特定の実施形態に関して説明されている。当業者であれば、本開示に照らして、本発明の意図された範囲から逸脱することなく、例示される特定の実施形態において、数多くの変形および変更を行うことができることを理解するであろう。
特許刊行物を含む引用されたすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。公開されたゲノム位置または他の記載によって言及されるヌクレオチドおよび他の遺伝子配列もまた、参照により本明細書に明示的に援用される。

Claims (37)

  1. 少なくとも1000の遺伝的多様性を有する宿主細胞の集団から宿主細胞を選択するための方法であって、前記宿主細胞の少なくとも一部が、対象となる遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列を含み、当該方法は、
    前記宿主細胞の集団を培養することであって、それにより前記対象となる遺伝子産物が、前記集団の宿主細胞の亜集団によって発現され、それによって前記亜集団が発現された宿主細胞含むものである、培養することと、
    前記亜集団の当該発現宿主細胞の少なくとも一部を標識化することであって、前記標識化することが、前記対象となる遺伝子産物が検出可能部分と結合し、それによって、標識された発現宿主細胞を産生することを含むものである、標識化することと、
    標識された発現宿主細胞のサブセットを選択することであって、前記選択することは、細胞選別装置により前記検出可能部分を検出することを含むものである、選択することとを含む、方法。
  2. 前記宿主細胞の集団の遺伝的多様性は、当該宿主細胞集団のうちの宿主細胞の少なくとも一部で構成される、宿主細胞ゲノム変異、一つもしくは複数の発現構築物のポリヌクレオチド配列変異、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記宿主細胞集団の遺伝的多様性が、200,000~1,000,000である、請求項2に記載の方法。
  4. 複数の遺伝的バリアントを含む遺伝的多様性を有する宿主細胞集団から、発現された宿主細胞を選択する方法であって、当該宿主細胞の少なくとも一部は、対象となる遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列を含むものであり、当該方法は、
    前記宿主細胞集団を培養することであって、前記対象となる遺伝子産物が、当該集団の宿主細胞の亜集団によって発現され、それにより前記亜集団が発現された宿主細胞を含むものであり、当該発現宿主細胞からの対象となる遺伝子産物の発現のレベルは、遺伝的バリアントに基づいて変動するものである、培養することと、
    前記亜集団の前記発現宿主細胞の少なくとも一部を標識化することであって、前記標識化することが、前記対象となる遺伝子産物が検出可能部分と結合することを含むものであり、当該標識の量は、前記発現宿主細胞における対象となる遺伝子産物の発現レベルに比例するものであり、それによって、標識された発現宿主細胞を産生することを含むものである、標識化することと、
    標識された発現宿主細胞のサブセットを選択することであって、前記選択することは、細胞選別装置により前記検出可能部分および標識の量を検出することを含むものである、選択することとを含む、方法。
  5. 複数の遺伝的バリアントを含む遺伝的多様性を有する宿主細胞集団から、発現された宿主細胞を選択する方法であって、当該宿主細胞の少なくとも一部は、対象となる遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列を含むものであり、当該方法は、
    前記宿主細胞の集団を培養することであって、前記対象となる遺伝子産物が、前記集団の宿主細胞の亜集団によって発現され、それにより前記亜集団が発現された宿主細胞を含むものであり、当該発現宿主細胞の所定の特性は、遺伝的バリアントに基づいて変動するものである、培養することと、
    前記亜集団の前記発現宿主細胞の少なくとも一部を標識化することであって、前記標識化することが、前記対象となる遺伝子産物が検出可能部分と結合することを含むものであり、当該標識の量は、前記発現宿主細胞における対象となる遺伝子産物の所定の特性に比例するものであり、それによって、標識された発現宿主細胞を産生することを含むものである、標識化することと、
    標識された発現宿主細胞のサブセットを選択することであって、前記選択することは、細胞選別装置により前記検出可能部分および所定のものを検出することを含むものである、選択することとを含む、方法。
  6. 前記発現宿主細胞の前記所定の特性は、対象となる活性遺伝子産物の発現レベル、対象となる遺伝子産物の発現レベル、対象となる遺伝子産物の適切なタンパク質フォールディング、対象となる遺伝子産物の適切に折り畳まれたタンパク質の発現レベル、細胞生存率、および/またはバイオマスの量を含む、請求項5に記載の方法。
  7. 遺伝的バリアントごとに前記対象となる遺伝子産物の相対的な発現レベルを測定することをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記選択することが、蛍光により活性化される細胞の選別を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記検出可能部分は蛍光部分を含み、また前記選択することは、最も高い蛍光放射である細胞の0.01%~5%を選択することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記選択することが、最も高い蛍光放射である細胞の0.5%を選択することを含む、請求項9に記載の方法。
  11. 前記対象となる遺伝子産物が、シグナルペプチドを欠くポリペプチドを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  12. 対象となる遺伝子産物は、蛍光ポリペプチドおよび生物発光ポリペプチドからなる群から選択される第二のポリペプチドにインフレームで融合した第一のポリペプチドを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  13. 対象となる遺伝子産物に結合する検出可能部分は、蛍光ポリペプチドおよび生物発光ポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドを含む、請求項12に記載の方法。
  14. 対象となる遺伝子産物は、酵素活性を有する第二のポリペプチドにインフレームで融合した第一のポリペプチドを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  15. 対象となる遺伝子産物と結合する検出可能部分は、酵素活性を有するポリペプチドの活性部位に結合する、請求項14に記載の方法。
  16. 対象となる遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列は、発現ベクターである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記発現ベクターが、染色体外発現ベクターである、請求項16に記載の方法。
  18. 前記亜集団の前記発現宿主細胞の少なくとも一部を標識化することは、前記発現宿主細胞の亜集団を固定することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記発現宿主細胞の亜集団を固定することは、前記亜集団の前記発現宿主細胞の少なくとも一部をアルデヒドと接触させることを含む、請求項18に記載の方法。
  20. 前記アルデヒドがパラホルムアルデヒドである、請求項19に記載の方法。
  21. 前記亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部を標識化することは、前記亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部を透過化処理することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部を透過化処理することは、前記亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部をリゾチームと接触させることを含む、請求項21に記載の方法。
  23. 前記亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部を標識化することは、前記亜集団の発現宿主細胞の少なくとも一部をDNAを標識する化合物と接触させることをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  24. 前記DNAを標識する化合物がヨウ化プロピジウムである、請求項23に記載の方法。
  25. 前記宿主細胞集団の前記宿主細胞が、原核細胞である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記宿主細胞集団の前記宿主細胞が、大腸菌(Escherichia coli)細胞である、請求項25に記載の方法。
  27. 前記宿主細胞集団の前記宿主細胞が、大腸菌(Escherichia coli)521細胞である、請求項26に記載の方法。
  28. 標識された発現宿主細胞のサブセットからポリヌクレオチドを回収することをさらに含み、それによって回収されたポリヌクレオチドを産生する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  29. 前記回収されたポリヌクレオチドからDNA配列情報を取得することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
  30. 前記DNA配列情報に基づいて宿主細胞のゲノムを改変することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
  31. 前記DNA配列情報に基づいて発現ベクターのライブラリーを構築することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
  32. 前記発現ベクターのライブラリーを用いて親宿主細胞株を形質転換することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
  33. 前記回収されたポリヌクレオチドが発現ベクターである、請求項28に記載の方法。
  34. 一つまたは複数の前記発現ベクターを用いて親宿主細胞株を形質転換することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
  35. 形質転換された宿主細胞を培養することをさらに含む、請求項32または請求項34に記載の方法。
  36. 前記形質転換された宿主細胞の少なくとも一部が、前記対象となる遺伝子産物を発現する、請求項35に記載の方法。
  37. ゲル電気泳動、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、高速液体クロマトグラフィー(HP-LC)を含む液体クロマトグラフィー(LC)、固相抽出・質量分析法(SPE-MS)、および増幅発光近接均質アッセイからなる群から選択される方法により、対象となる遺伝子産物の発現レベルを決定することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
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