JP2023502496A - 肝臓再生に使用するための血漿画分 - Google Patents

肝臓再生に使用するための血漿画分 Download PDF

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Abstract

【解決手段】加齢に関連する疾患の処置、並びに肝臓の再生、肝臓変性の予防及び肝臓の維持のための方法及び組成物が記載されている。この方法で使用される組成物には、疾患を処置及び/又は予防する際に有効性がある血漿及び血漿から得られた血漿画分が含まれている。

Description

本発明は、加齢性疾患を含む疾患の予防及び処置に関する。本発明は、肝臓の成長、維持及び再生に関連付けられる加齢に伴う症状を処置する及び/又は予防するための、血漿及び血漿画分などの血液製剤の使用に関する。本出願は、米国特許法第119 条(e) に従って、2019年11月20日に出願された米国仮特許出願第62/937965号明細書、及び2020年2月12日に出願された米国仮特許出願第62/975637号明細書の出願日の優先権を主張しており、その開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる。
肝不全は、現在単独の治療介入-肝移植で大規模な市場である。米国人の10人に1人、約3500万人が何らかの形で肝疾患にかかっている。この数は、ますます増える肥満した市民の肝硬変の有病率のために増加している。NAFLD (非アルコール性脂肪肝疾患)は、最終的に肝不全に至る可能性がある肝硬変の一因となる主要な危険因子である。一般市民の健康状態の低下のため、移植に使用できる臓器は少なくなっている。その結果、肝移植リストの患者の約1/3 だけが移植を受ける。この肝移植リストには一般に、臓器移植に伴うリスクが加齢に関連して増加するため65歳を超える患者は含まれていない。肝移植を待っている肝硬変の患者にとって、統計情報は特に悲観的である。米国では1年間に肝硬変に基づく入院は300,000 件あり、肝硬変による死が36,000件あり、これらの患者の半数以上は移植の対象外である。代替の治療法を利用できる場合、他に利用できる処置がない大部分の肝疾患患者に大きな影響を及ぼし得る。
肝不全は急性又は慢性であり得る。急性肝不全は、ウイルス感染(例えばB型肝炎及びC型肝炎)、薬物又は毒素(例えばアセトアミノフェン)の過剰使用、並びに自己免疫性肝炎及びウィルソン病などの代謝障害又は血管障害によって生じることが多い。慢性肝不全は通常、肝硬変として分類され、ウイルス感染、アルコール中毒、(肥満、高コレステロール及びトリグリセリド及び高血圧による)NAFLD 、自己免疫疾患、閉塞又は損傷した管、例えば肝臓から腸への胆管、毒素又は特定の薬剤への曝露、寄生虫、肝臓での血液の蓄積をもたらす心不全によって生じ得る。
肝臓の切除及び移植は、上述したような肝不全に対して実施される場合があり、移植はより一般に慢性の肝不全に対して実施される。更に、これらの処置は原発性悪性腫瘍及び二次性悪性腫瘍(つまり癌)に対して実施され得る。肝臓の切除及び移植の成果の向上は、術前、術中及び術後のケアに対する配慮に関連付けられている(Wrighton LJ, et al., J Gastrointest Oncol., 3(1): 41-47, (2012))。これらには、外科技術及び麻酔技術の進歩、肝臓生理機能の理解の向上、栄養支援、血糖管理、及び術後感染の低下が含まれる(上記文献)。肝移植の場合、免疫抑制剤が最も一般的に使用される。肝臓の拒絶反応の管理並びに高血圧及び肥満などの長期合併症への対処における主治医の役割は、成果の向上の重要な部分である(Issa DH, Cleveland Clinic J of Med., 82(6):361-72 (2015)参照)。
肝不全を患う患者及び/又は切除若しくは移植を受けた患者の成果を向上させるための新たな治療法が依然として著しく欠いている。更に、肝移植手術の場合でも、全ての患者に対してドナーの肝臓が全く足りない(例えば、Helwick C, The ASCO Post, (Sep 25, 2017) stating that the“problem with transplantation is organ allocation.”参照)。
肝硬変の処置のために研究されている1つの化合物がアルブミンである。これは、肝硬変の肝臓自体によるアルブミン生成の低下のため、失われたアルブミン生成を置き換えるためである。その理論的根拠は、アルブミンが浸透圧の補充、有害物質の結合、恒常性の調節に役立ち、抗炎症薬として機能するためである(Carvalho JR, et al., Annals of Hepatology, 17(4): 547-60 (2018))。このため、この分野での従来の考えは、アルブミンの純度が高いほど、濃度が高くなり、その結果、有効性が高くなるということである。治療用のアルブミンは一般に血漿分画によって生成される。分画法は、望ましくないタンパク質「混入物」又は「不純物」を含むもののアルブミン溶液を生成することができる。
本発明は、肝疾患を患う患者の罹患した肝臓、切除した肝臓又は移植された肝臓の回復を向上させて促進するために血漿の画分を用いた新たな治療法を提供する。更に、肝臓が再生可能な唯一の内臓器官であるため、本発明は、肝臓に関連する一部の徴候では、例えば手術からの回復を促進することができる、既存の肝臓の増殖及び再生を刺激するための方法を提供する。更に、本発明は、肝疾患をより効果的に処置するために血漿分画から得られた「混入物」又は「不純物」とみなされているものを活用する。
参照による組み込み
本明細書で言及されている全ての文献及び特許出願は、個別の文献又は特許出願が夫々参照によって組み込まれることが具体的且つ個別に示されているのと同じ程度まで参照によって本明細書に組み込まれる。
高脂肪食(「HFD 」)を受けた20ヶ月齢のC57BL/6 マウスの体重の進行を示す図表である。HFD で8.5 週間経過した後、マウスは著しい体重増加を示した。 図1に示されているようなマウスからの肝臓のオイルレッドO染色を示す図である。HFD のマウスは、普通食(「通常の食事」)を受けたマウスと比較して脂肪肝を発症した。 脂肪肝を有する20ヶ月齢のC57BL/6 マウスに対するPPF1の効果を評価するための実験の計画を示す図である。マウスは、60%の高脂肪食を7週間受けて、その後、PPF1又はビヒクルを用いて7日間連続して処置を受けた。PPF1又はビヒクルの最後の投与の翌日に手術(70%肝切除)を行い、肝切除中、術前の中葉及び左葉(切除)を取り除いた。肝切除の48時間後に右葉及び尾状葉(残り)を採取した。 図3に示されているように処置されたマウスの70%肝切除によって切除された葉及び残りの葉を示す図である。 図3に示されているようにビヒクル及びPPF1で処置されて肝切除されたマウスにおける、肝臓の切除部分の重量対体重の比の決定結果を示す図表である。 図3に示されているようにビヒクル及びPPF1で処置されたマウスの肝臓の切除部分の重量を示す図表である。 血清ALT レベルが、肝切除前にHFD を受けてPPF1で処置されたマウスで正常であり、影響を受けていないことを示す図表である。 図3に示されているように、肝切除の48時間後の残りの肝臓を有するビヒクル及びPPF1で処置されたマウスにおける肝重量対体重の比の決定結果を示す図表である。 図3に示されているように、肝切除の48時間後の残りの肝臓を有するビヒクル及びPPF1で処置されたマウスの肝重量を示す図表である。 図3に示されているように、肝切除の48時間後のビヒクル及びPPF1で処置されたマウスの血清ALT レベルの結果を示す図表である。 肝切除後の細胞増殖割合を示す図表である。EdU を、肝切除の24時間後に送達し、増殖割合を、EdU 陽性細胞のClick-itラベリングによって追跡した。PPF1は、ビヒクルで処置された動物と比較して領域当たりの細胞のEdU 陽性数を著しく増加させた。 領域当たりのKi67陽性細胞の数で測定した、肝切除の48時間後の細胞増殖を示す図表である。PPF1は、ビヒクルで処置された動物と比較して領域当たりの細胞のKi67陽性数を著しく増加させた。 qPCR遺伝子発現による残りの肝臓における細胞増殖割合を示す図表である。細胞周期マーカのサイクリンB1の相対発現が示されている。残りの肝臓切片では、ビヒクルで処置されたマウスと比較してPPF1で処置されたマウスでサイクリンB1の発現が著しく上方制御された。 切除された肝臓における1つのマーカのqPCR発現を示す図表である。細胞周期マーカのサイクリンB1(図14A)の相対発現が示されている。術前対照として肝切除中に取り除かれている切除された肝臓切片では、PPF1は意外なことに、この細胞周期マーカでビヒクル対照と比較して細胞増殖を著しく増加させた。 切除された肝臓における1つのマーカのqPCR発現を示す図表である。細胞周期マーカのサイクリンA2(図14B)の相対発現が示されている。術前対照として肝切除中に取り除かれている切除された肝臓切片では、PPF1は意外なことに、この細胞周期マーカでビヒクル対照と比較して細胞増殖を著しく増加させた。 切除された肝臓における1つのマーカのqPCR発現を示す図表である。細胞周期マーカのKi67(図14C)の相対発現が示されている。術前対照として肝切除中に取り除かれている切除された肝臓切片では、PPF1は意外なことに、この細胞周期マーカでビヒクル対照と比較して細胞増殖を著しく増加させた。 切除された肝臓における1つのマーカのqPCR発現を示す図表である。図14Dは、切除された肝臓切片におけるTNF αの相対発現レベルを示す。TNF αは、肝臓再生中に肝細胞の増殖を促進することにより、機能性肝臓質量の回復の一因となることが知られている。 図14Cに示されているような、切除された肝臓におけるKi67免疫染色の代表的な画像を示す図であり、これにより、PPF1で処置されて切除された肝臓が、ビヒクル対照と比較して著しくより多い数のKi67陽性細胞を有したことが確認される。 図15の免疫染色の定量化を示す図表であり、PPF1で処置されて切除された肝臓のKi67陽性細胞の数が増加していることを示す。 肝切除を受けた動物の総数及び処置毎の生存率を示す図表である。 肝切除の24時間後にEdU が組み込まれた残りの肝臓からの2つの代表的な共焦点顕微鏡領域を示す図である(図3参照)。組織切片をGFAP抗体(星細胞マーカ)で染色して、GFAPとEdU との共局在のレベルを観察した。EdU とGFAPとの共局在の欠如から、PPF1投与に関連した細胞増殖が星細胞では生じなかったことが判明した。 肝切除の24時間後にEdU が組み込まれた残りの肝臓からの2つの代表的な共焦点顕微鏡領域を示す図である(図3参照)。組織切片をCD68抗体(クッパー細胞マーカ)で染色して、CD68とEdU との共局在のレベルを観察した。EdU とCD68との共局在の欠如から、PPF1投与に関連した細胞増殖がクッパー細胞では生じなかったことが判明した。 肝切除の24時間後にEdU が組み込まれた残りの肝臓からの代表的な共焦点顕微鏡領域を示す図である(図3参照)。組織切片をHNF4a 抗体(肝細胞マーカ)で染色して、HNF4a とEdU との共局在のレベルを観察した。EdU とHNF4a との共局在の欠如から、PPF1投与に関連した細胞増殖が肝細胞では生じなかったことが判明した。 肝切除の24時間後にEdU が組み込まれた残りの肝臓からの代表的な共焦点顕微鏡領域を示す図である(図3参照)。組織切片をCD3 抗体(T細胞マーカ)で染色して、CD3 とEdU との共局在のレベルを観察した。EdU とCD3 との共局在の欠如から、PPF1投与に関連した細胞増殖がT細胞では生じなかったことが判明した。 肝切除の24時間後にEdU が組み込まれた残りの肝臓からの2つの代表的な共焦点顕微鏡領域を示す図である(図3参照)。組織切片をCD31抗体(類洞内皮細胞マーカ)で染色して、CD31とEdU との共局在のレベルを観察した。EdU とCD31との明確な共局在から、PPF1投与による細胞増殖が、肝臓の類洞内皮細胞(LSEC)に関連付けられることが判明した。矢印は、EdU 陽性細胞を含むLSECを示す。 20ヶ月齢のC57BL/6 マウスにおけるPPF1(血漿画分「PF」)及び組換えヒトアルブミン(rhアルブミン)の効果を評価するための実験の計画を示す図である。マウスは、60%の高脂肪食を8週間受けて、その後、PPF1、rhアルブミン又はビヒクルを用いて7日間連続して処置を受けた。PPF1、rhアルブミン又はビヒクルの最後の投与の翌日に手術(70%肝切除)を行い、肝切除中、術前の中葉及び左葉(切除)を取り除いた。肝切除の48時間後に右葉及び尾状葉(残り)を採取した。 領域当たりのKi67陽性細胞の数で測定した、切除された肝臓における肝切除の48時間後の細胞増殖を示す図表である。PPF1は、ビヒクルで処置された動物と比較して領域当たりの細胞のKi67陽性数を著しく増加させた。対照的に、rhアルブミンで処置された動物は、ビヒクルで処置された動物との有意差を示さなかった。 残りの肝臓における肝切除後の細胞増殖割合を示す図表である。EdU を、肝切除の24時間後に送達し、増殖割合をクリックケミストリーによって追跡した。PPF1は、ビヒクルで処置された動物と比較して領域当たりの細胞のEdU 陽性数を著しく増加させた。対照的に、rhアルブミンで処置された動物は、ビヒクルで処置された動物と比較して著しい増殖傾向を示さなかった。 20ヶ月齢のC57BL/6 マウスに対するPPF1及びHAS1の効果を評価するための実験の計画を示す図である。マウスは、60%の高脂肪食を8週間受けて、その後、異なる血漿画分(PF)のPPF1及びHAS1又はビヒクルを用いて7日間連続して処置を受けた。PPF1、HAS1又はビヒクルの最後の投与処置の翌日に手術(70%肝切除)を行い、肝切除中、術前の中葉及び左葉(切除)を取り除いた。肝切除の48時間後に右葉及び尾状葉(残り)を採取した。 肝切除の24時間後の細胞増殖割合を示す図表である。EdU を、肝切除の24時間後に送達した。PPF1及びHAS1の両方が、残りの肝臓においてビヒクルと比較して細胞のEdU 陽性数を著しく増加させた。 肝切除の48時間後の細胞増殖割合を示す図表である。肝切除の48時間後に採取した残りの肝臓にKi67免疫染色を行った。PPF1及びHAS1の両方が対照動物と比較して細胞増殖を著しく増加させた一方、PPF1は更に、HAS1で処置された動物と比較してより著しい増殖を誘発した。 20ヶ月齢のC57BL/6 マウスに対する最後の投与の2時間後のPPF1の効果を評価するための実験の計画を示す図である。 図29に示されているように処置されたマウスのTNF α遺伝子発現解析の結果を示す図表である。ビヒクルで処置された動物と比較して、PPF1で処置された動物は、QPCRによるTNF α遺伝子発現を著しく増加させた。 図29に示されているように処置されたマウスのKi67免疫染色解析の結果を示す図表である。ビヒクルで処置された動物と比較して、PPF1で処置された動物は、最後の投与の2時間後、Ki67陽性細胞を著しく増加させて、PPF1による肝細胞増殖の増加を示している。
A.導入部
本発明は、肝臓の障害又は疾患の処置に関する。血漿分画の産物を含む血漿画分は、肝切除後の肝臓の回復を誘発する際に顕著な活性を有することが示されている。更に、血漿画分は、(肝切除前に)静止状態の肝臓及び無傷の肝臓で細胞増殖を活性化することが示されている。血漿分画処理は、問題の凝固因子を取り除いて、血液の交差試験の必要性を不要にすることができるので、血漿画分は血漿血清全体に対して複数の利点を示す。更に、血漿画分は、特定の分析において若齢血漿と比較して有効性の予想外の向上を示している(例えば米国特許出願第15/499694号明細書及び米国特許出願第16/432114号明細書参照。これらの両方全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。従って、血漿血清全体から血漿分画の産物の有効性を予測することは、合理的な予測可能性の対象にならない。
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、言うまでも無くそれ自体が変わり得るように、説明された特定の方法又は組成物に限定されないことを理解すべきである。本明細書に使用されている専門用語は、特定の実施形態について説明するためだけのものであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定的であることを意図するものではないことも理解されたい。
本明細書に記載されている刊行物は、本出願の出願日に先立ってその開示のためだけに提供されている。本明細書では、先行発明を理由として、本発明がそのような刊行物に先行する権限がないことを認めるものであると解釈されるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は実際の刊行日とは異なる場合があり、実際の刊行日は個々に確認する必要があり得る。
ある範囲の値が与えられる場合、その範囲の上限及び下限の間の、文脈が別段に明示しない限りは下限の単位の10分の1までの各介在値が更に具体的に開示されていることを理解されたい。記載された範囲内の任意の記載された値又は介在する値とその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在する値との間のより小さい範囲が夫々本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲内に独立して含まれてもよく又は除外されてよく、上限及び下限の一方又は両方がより小さい範囲内に含まれているか又はいずれも含まれていない各範囲は、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限度を条件として本発明に更に包含される。記載された範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、含まれるこれらの限界値のいずれか又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
特許請求の範囲は、あらゆる選択要素を除外するように起草され得ることに留意されたい。従って、この記載は、請求項の要素の記載に関する「唯一の(solely)」、「のみの(only)」等の排他的用語の使用、又は「否定的な(negative)」限定の使用のための先行記載として機能すべく意図される。
当業者が本開示を読むと明らかであるように、本明細書に説明され例示された個々の実施形態は夫々、別々の構成要素及び特徴を有しており、別々の構成要素及び特徴は、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の複数の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されてもよく、又はいずれかの特徴と容易に組み合わされてもよい。記載される方法はいずれも、記載される事象の順序で行われてもよく、論理的に可能なあらゆる他の順序で行われてもよい。
B.定義
本明細書で使用されている全ての技術的用語及び科学的用語は、特に定義されていない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって共通して理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料と同様又は同等の全ての方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することができるが、幾つかの可能性がある好ましい方法及び材料を本明細書に記載している。本明細書に記載される全ての刊行物は、引用されるこれらの刊行物との関連で方法及び/又は材料を開示して説明するために、参照によって本明細書に組み込まれる。本開示が、矛盾が存在する程度まで組み込まれた刊行物のあらゆる開示に優先することを理解されたい。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」及び「the 」は、文脈上明らかに別段の規定がない限り、複数の指示対象を含むということに留意されたい。従って、例えば、「細胞」への言及はこのような複数の細胞を含んでおり、「ペプチド」への言及は、当業者に公知の一又は複数のペプチド及びこの等価物、例えばポリペプチドなどへの言及を含んでいる。
本発明の方法を記載する際、「宿主」、「対象」、「個体」及び「患者」という用語は互換的に使用されており、開示された方法に従って、このような処置が必要なあらゆる哺乳類を指す。このような哺乳類には、例えばヒト、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ科動物、ネコ科動物、非ヒト霊長類、マウス及びラットが含まれている。ある実施形態では、対象は非ヒト哺乳類である。一部の実施形態では、対象は家畜である。他の実施形態では、対象はペットである。一部の実施形態では、対象は哺乳類である。場合によっては、対象はヒトである。他の対象には、飼いならされたペット(例えばイヌ及びネコ)、家畜(例えばウシ、ブタ、ヤギ、ウマなど)、齧歯類(例えば疾患モデル動物などの、例えばマウス、モルモット及びラット)並びに非ヒト霊長類(例えばチンパンジー、サル)が含まれ得る。そのため、本発明の対象は、哺乳類、例えばヒト及び他の霊長類、例えばチンパンジー及び他の類人猿及びサル種及び同種のものを含むが、これらに限定されず、ある実施形態では対象はヒトである。対象という用語は、あらゆる年齢、体重又は他の物理的な特性のヒト又は有機体を含むことを更に意味し、対象は成体、小児、幼児又は新生児であってもよい。
「若齢」又は「若齢の個体」は、40歳以下、例えば35歳以下、30歳以下、例えば25歳以下又は22歳以下の暦年齢の個体を意味する。場合によっては、若齢の血漿を含有する血液製剤の源として機能する個体は、10歳以下、例えば5歳以下、1歳以下の個体である。場合によっては、対象は新生児であり、血漿製剤の源は臍帯であり、この場合、血漿製剤は新生児の臍帯から採取される。そのため、「若齢」及び「若齢の個体」は、0歳と40歳との間の年齢、例えば0歳、1歳、5歳、10歳、15歳、20歳、25歳、30歳、35歳又は40歳の対象を指してもよい。他の場合、「若齢」及び「若齢の個体」は、(暦年齢とは対照的に)生物学的年齢、例えば比較的高齢の個体の血漿中の炎症性サイトカインのレベルを示さなかった個体を指してもよい。対照的に、「若齢」及び「若齢の個体」は、(暦年齢とは対照的に)生物学的年齢、例えば比較的高齢の個体のレベルと比較して血漿中の抗炎症性サイトカインのより高いレベルを示す個体を指してもよい。限定することなく例として、炎症性サイトカインはエオタキシンであり、若齢の対象又は若齢の個体とより高齢の個体との倍率差は少なくとも1.5 倍である。同様に、高齢の個体と若齢の個体との間の、他の炎症性サイトカインの倍率差が、生物学的年齢を指すために使用されてもよい(参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願第13/575437号明細書参照)。通常、個体は健康であり、例えば、個体は採取のときに血液悪性腫瘍又は自己免疫疾患を患っていない。
「処置」は、本明細書で使用する場合、(i) 疾患若しくは障害の予防、又は(ii)疾患若しくは障害の症状の軽減若しくは除去のいずれかを指す。処置は、(肝障害又は肝不全の発症前に)予防として行われてもよく、(a) 対象での症状の発生を予防する、(b) 症状を阻害する、つまり症状の発生を阻止する、又は(c) 症状を軽減する、つまり症状の消失を引き起こすことを含む。処置の結果、様々な異なる身体的徴候、例えば遺伝子発現の調整、組織又は器官の若返り、炎症の低下などがもたらされてもよい。治療薬は、症状の発症前、発症中又は発症後に投与されてもよい。本治療法を、症状の有症状期中、場合によっては症状の有症状期後に行ってもよい。処置は、肝臓の切除若しくは移植前、肝臓の切除/移植中、及び/又は肝臓の切除/移植後に、血漿、血漿画分、又は血漿成分を含む血液製剤などの介入の実施によって更に行われてもよい。
肝臓の機能、再生又は回復に関連した「改善する」、「改善」又は「改善される」とは、本技術分野で知られている標準的な方法を使用して測定した肝臓の機能のあらゆる明らかな増加を意味する。限定することなく例として、これは、アラニントランスアミナーゼ(ALT) 、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST) 、アルカリホスファターゼ(ALP) 、アルブミン及び総タンパク質、ビリルビン、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT) 、L-乳酸脱水素酵素(LD)などの特定のタンパク質の血中濃度、プロトロンビン時間(PT)の測定を含んでもよい。前記タンパク質の正常レベルの例は、ALT(7 ~55 U/L)、AST(8 ~48 U/L)、ALP(40~129 U/L)、アルブミン(3.5 ~5.0 g/dL)、総タンパク質(6.3 ~7.9 g/dL)、ビリルビン(0.1 ~1.2 mg/dL)、GGT (8 ~61 U/L)、LD(122 ~222 U/L )及びPT(9.4 ~12.5秒)とすることができる。
血漿成分を含む血液製剤
本方法を実行する際、血漿成分を含む血液製剤を、その必要性のある個体、例えば肝障害及び肝不全の症状の一又は複数を患う個体に投与する。そのため、本発明の実施形態に係る方法では、個体(「ドナー個体」又は「ドナー」)からの血漿成分を含む血液製剤を、肝障害及び肝不全の症状の一又は複数を患う個体(「レシピエント個体」又は「レシピエント」)に投与する。「血漿成分を含む血液製剤」とは、血漿を含む血液(例えば全血、血漿又はその画分)から得られたあらゆる製剤を意味する。「血漿」という用語は、約92%の水と、7%のタンパク質、例えばアルブミン、γグロブリン、抗血友病因子及び他の凝固因子と、1%の無機塩類、糖、脂肪、ホルモン及びビタミンとで構成された血液の淡黄色/微黄色の液体成分を指すために従来の意味で使用されている。本方法での使用に適している血漿含有血液製剤の非限定例は、抗凝固剤(例えばEDTA、クエン酸塩、シュウ酸塩、ヘパリンなど)で処置された全血、白血球を除去すべく(「白血球除去」のために)全血を濾過することにより生成された血液製剤、プラスマフェレーシス又はアフェレーシスによって得られた血漿で構成された血液製剤、新鮮凍結血漿、精製血漿で本質的に構成された血液製剤、及び血漿画分で本質的に構成された血液製剤を含んでいる。場合によっては、使用される血漿製剤は非全血血漿製剤であり、非全血血漿製剤は、少なくとも赤血球、白血球などの全血に見つけられる一又は複数の成分が全血に存在する程度と比較すると、非全血血漿製剤がこのような成分を欠いているため、非全血血漿製剤は全血ではないことを意味する。場合によっては、血漿製剤は、完全ではないにしても実質的に無細胞であり、このような場合、細胞含有量は5体積%以下、例えば1体積%以下、0.5 体積%以下であってもよく、場合によっては、無細胞血漿画分は細胞を完全に欠く組成物であり、すなわち、無細胞血漿画分は細胞を含まない。
血漿成分を含む血液産物の採取
本明細書に記載されている方法の実施形態には、ヒトボランティアを含むドナー由来とすることができる血漿成分を含む血液製剤の投与が含まれる。「ヒト由来」という用語はこのような製剤を指すことができる。血漿含有血液産物をドナーから採取する方法は本技術分野では公知である(例えば、参照によって本明細書に組み込まれるAABB TECHNICAL MANUAL, (Mark A. Fung, et al., eds., 18th ed. 2014)参照)。
一実施形態では、静脈穿刺によって供血を行う。別の実施形態では、静脈穿刺は、単回のみの静脈穿刺である。別の実施形態では、生理食塩水の補充を採用しない。好ましい実施形態では、プラスマフェレーシスの処理を用いて血漿含有血液製剤を得る。プラスマフェレーシスでは、重量調節した血漿量の血漿を取り出し、細胞成分をドナーに戻すことができる。好ましい実施形態では、細胞の凝固を防ぐためにプラスマフェレーシス中にクエン酸ナトリウムを使用する。ドナーから採取される血漿量はクエン酸塩の投与後、好ましくは690 ~880 mLの範囲内であり、好ましくはドナーの体重と適合する。
C.血漿画分
第二次世界大戦中、戦場で兵士が大量の血液を失った際に用いることができる安定した血漿増量剤の必要性が生じた。結果として、凍結乾燥血漿を調製する方法が開発された。しかしながら、再構成に滅菌水が必要であったため、戦闘状況下での凍結乾燥血漿の使用は困難であった。E.J.Cohn博士は、代替策としてアルブミンが使用され得ることを提案し、ショック処置のために直ちに導入され得る使用準備済の安定した溶液を調製した(Johan, Current Approaches to the Preparation of Plasma Fractions in (Biotechnology of Blood) 165 (Jack Goldstein ed., 1st ed. 1991)参照)。Cohn博士の血漿画分を精製する手順は、冷エタノールをその変性効果のために利用し、分離するためにpH及び温度の変化を用いる。
本明細書に記載されている方法の実施形態には、対象への血漿画分の投与が含まれる。分画は、特定のタンパク質サブセットを血漿から分離する処理である。分画技術は本技術分野では公知であり、1940年代にCohnらによって開発された工程を基にしている(参照によって本明細書に組み込まれるE. Cohn, Preparation and properties of serum and plasma proteins. IV. A system for the separation into fractions of the protein and lipoprotein components of biological tissues and fluids. 68 J Am Chem Soc 459 (1946))。この処理には複数の工程が含まれ、各工程は、選択的なタンパク質の沈殿をもたらす特定のエタノール濃度並びにpH、温度及び浸透圧の変化を含む。沈殿物を遠心分離又は沈殿によって更に分離する。元の「コーン分画処理」には、タンパク質を沈殿物によって画分I、画分II+III、画分IV-1、画分IV-4及び画分Vと称される5つの画分に分離することが含まれる。アルブミンは、この処理の最初に識別されたエンドポイント(画分V)産物であった。本発明の実施形態によれば、各画分(又は前の分離工程からの流出物)は治療上有用なタンパク質画分を含有する又は含有する可能性がある(参照によって本明細書に組み込まれるThierry Burnouf, Modern Plasma Fractionation, 21(2) Transfusion Medicine Reviews 101 (2007);Adil Denizli, Plasma fractionation: conventional and chromatographic methods for albumin purification, 4 J. Biol. & Chem. 315, (2011);及びT. Brodniewicz-Proba, Human Plasma Fractionation and the Impact of New Technologies on the Use and Quality of Plasma-derived Products, 5 Blood Reviews 245 (1991)、並びに米国特許第3869431 号明細書、米国特許第5110907 号明細書、米国特許第5219995 号明細書、米国特許第7531513 号明細書及び米国特許第8772461 号明細書参照)。特定のタンパク質画分を得るために上記の実験パラメータを調節することができる。
より近年では、分画は更に複雑になり、従って本発明の更なる実施形態を構成する。こうした近年における複雑さの増加は、寒冷沈降物、脱クリオ血漿(cryo-poor plasma)及びコーン画分などの既存の画分から新しいタンパク質を単離するクロマトグラフィの導入、クロマトグラフィ及びエタノール分画処理の統合によるIgG 回収量の増加、並びにウイルスの低減/不活性化/除去を通じて生じた(上記文献)。生理学的なpH及びイオン強度でタンパク質を捕捉するために、アニオン交換クロマトグラフィを利用することができる。これによってタンパク質及び/又はタンパク質画分の機能活性が保持される。ヘパリン及びモノクローナル抗体も親和性クロマトグラフィに使用される。更に、ゲル濾過を使用した分画、塩による分画、及びポリエチレングリコールによる分画を使用する(参照によって本明細書に組み込まれるHosseini M Iran J Biotech, 14(4): 213-20 (2016))。当業者は、特に所望の血漿タンパク質を含有する画分を得るために上述されたパラメータ及び技術を調節してもよいことを認識する。
血漿分画を、硫酸アンモニウムに基づく分画とすることが更に可能である(例えば、参照によって本明細書に組み込まれるOdunuga OO, Biochem Compounds, 1:3 (2013);Wingfield PT, Curr Protoc Protein Sci, Appx. 3 (2001)参照)。硫酸アンモニウムに基づく分画は、特定の血液画分を得ることに加えて、血漿から大量のタンパク質を減らすために用いられている(参照によって本明細書に組み込まれるSaha S, et al., J. Proteomics Bioinform, 5(8) (2012))。
本発明の実施形態では、工業的環境で血漿を分画する。凍結血漿を1℃~4℃で解凍する。解凍された血漿に連続冷却遠心分離を行い、寒冷沈降物を単離する。回収された寒冷沈降物を-30℃以下で凍結して保存する。不安定な凝固因子、例えば第IX因子複合体及びその成分、並びにプロテアーゼ阻害剤、例えばアンチトロンビン及びC1エステラーゼ阻害剤を(例えば一次クロマトグラフィにより)捕捉するために、寒冷沈降物欠乏(cryoprecipitate-poor)(「脱クリオ」)血漿を直ちに処理する。その後の工程で連続遠心分離及び沈殿物の単離を適用することができる。このような技術は当業者に知られており、開示内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる、例えば米国特許第4624780 号明細書、米国特許第5219995 号明細書、米国特許第5288853 号明細書、米国特許出願公開第2014/0343255 号明細書及び米国特許出願公開第2015/0343025 号明細書に記載されている。
本発明の実施形態では、血漿画分は実質的な濃度のアルブミンを含有する血漿画分を含んでもよい。本発明の別の実施形態では、血漿画分は実質的な濃度のIgG 又は静注用免疫グロブリン(IGIV)(例えばGamunex-C(登録商標))を含有する血漿画分を含んでもよい。本発明の別の実施形態では、血漿画分は、例えばプロテインA介在の枯渇などの当業者に周知の方法によって免疫グロブリン(IgG) が実質的に枯渇しているGamunex-C(登録商標)などのIGIV血漿画分を含んでもよい(Keshishian, H., et al., Multiplexed, Quantitative Workflow for Sensitive Biomarker Discovery in Plasma Yields Novel Candidates for Early Myocardial Injury, Molecular & Cellular Proteomics, 14 at 2375-93 (2015)参照)。更なる実施形態では、血漿画分は、血栓症のリスクが低下した画分の有効性を保持するために実質的に全ての凝固因子が取り除かれているものであってもよい。例えば、血漿画分は、開示内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2016年8月18日に出願された米国特許第62/376529号明細書に記載されているような血漿画分であってもよい。
D.アルブミン製剤
当業者にとって、血漿タンパク質画分(「PPF」)及びヒトアルブミン溶液(「HAS」)の2つの一般的なカテゴリーのアルブミン血漿製剤(「APP」)が存在する。PPFはHASより収率が高い処理から得られるが、HASより低い最小アルブミン純度を有する(PPFについては83%より高く、HASについては95%より高い)(Production of human albumin solution: a continually developing colloid, P. Matejtschuk et al., British J. of Anaesthesia 85(6): 887-95, at 888 (2000))。場合によっては、PPFは83%~95%の範囲内又は83%~96%の範囲内のアルブミン純度を有する。アルブミン純度は、電気泳動又は他の定量アッセイ、例えば質量分析によって決定され得る。更に、PPFは、PKAなどのタンパク質「混入物」の存在のために不利な点を有すると一部では指摘されている(上記文献)。結果として、PPF調剤はアルブミン血漿製剤としての人気を失い、更にはある国々の薬局方から外されている(上記文献)。これらの懸念に反して、本発明は、これらの「混入物」を有効利用する。本発明の方法は、αグロブリン、βグロブリン及びγグロブリン並びに前述のPKAに加えて、細胞増殖及び組織再生などのプロセスを促進する「混入物」内の追加のタンパク質又は他の因子を利用する。
当業者はPPF の複数の市販の供給源(「市販のPPF 調剤」)がある又はあったことを認識する。これらには、Plasma-Plex(商標)PPF (Armour Pharmaceutical Co., Tarrytown, NY)、Plasmanate(商標)PPF (Grifols, Clayton, NC)、Plasmatein(商標)(Alpha Therapeutics, Los Angeles, CA)及びProtenate(商標)PPF (Baxter Labs, Inc. Deerfield, IL)が含まれる。
当業者はHAS の複数の市販の供給源(「市販のHAS 調剤」)がある又はあったことを認識する。これらには、Albuminar(商標)(CSL Behring)、AlbuRx(商標)(CSL Behring)、Albutein(商標)(Grifols, Clayton, NC)、Buminate(商標)(Baxatla,Inc., Bannockburn, IL)、Flexbumin(商標)(Baxatla,Inc., Bannockburn, IL)、及びPlasbumin(商標)(Grifols, Clayton, NC)が含まれる。
1.血漿タンパク質画分(ヒト)(PPF)
米国食品医薬品局(「FDA」)によれば、「血漿タンパク質画分(ヒト)」つまりPPFは「ヒト血漿に由来するアルブミン及びグロブリンで構成されるタンパク質の滅菌溶液」として定義される産物の正式名称である(参照によって本明細書に組み込まれる連邦規則集「CFR 」21 CFR640.90)。PPFの原料は、(参照によって本明細書に組み込まれる)21 CFR 640.1-640.5に規定されているように調製された全血又は(参照によって本明細書に組み込まれる)21 CFR 640.60-640.76に規定されているように調製された血漿源から回収された血漿である。
PPFは、(参照によって本明細書に組み込まれる)21 CFR 640.92に従って、以下の基準を満たすことを判定するために調べられる。
(a)最終産物はタンパク質の5.0 ±0.30パーセント溶液であるべきである。
(b)最終産物中の総タンパク質は少なくとも83パーセントのアルブミン及び17パーセント以下のグロブリンから構成されているべきである。総タンパク質の1パーセント以下はγグロブリンであるべきである。タンパク質の組成は、食品医薬品局の生物製剤評価研究センターのセンター長によって夫々の製造元について認可されている方法により決定される。
本明細書で使用される「血漿タンパク質画分」すなわち「PPF」は、ヒト血漿由来のアルブミン及びグロブリンから構成されるタンパク質の滅菌溶液を指し、電気泳動により決定されるとき、アルブミン含有量が少なくとも83%であり、グロブリン(α1グロブリン、α2グロブリン、βグロブリン及びγグロブリンを含む)並びに他の血漿タンパク質の含有量が17%以下であり、ガンマグロブリン含有量が1%以下である(Hink, J.H., Jr., et al., Preparation and Properties of a Heat-Treated Human Plasma Protein Fraction, VOX SANGUINIS 2(174) (1957))。PPFは、溶媒に懸濁すると、同様の組成を有する固体形態を指す場合もあり得る。総グロブリン画分は、総タンパク質からアルブミンを差し引くことによって決定され得る((Busher, J., Serum Albumin and Globulin, CLINICAL METHODS: THE HISTORY, PHYSICAL, AND LABORATORY EXAMINATIONS, Chapter 10, Walker HK, Hall WD, Hurst JD, eds. (1990))。
2.アルブミン(ヒト)(HAS)
FDAによれば、「アルブミン(ヒト)」(本明細書では「HAS」とも称される)は、「ヒト血漿由来のアルブミンの滅菌溶液」と定義される産物の正式名称である(参照によって本明細書に組み込まれる連邦規則集「CFR 」21 CFR640.80)。アルブミン(ヒト)の原料は、(参照によって本明細書に組み込まれる)21 CFR 640.1-640.5に規定されているように調製された全血又は(参照によって本明細書に組み込まれる)21 CFR 640.60-640.76に規定されているように調製された血漿源から回収された血漿である。アルブミン(ヒト)に関する他の要件は、(参照によって本明細書に組み込まれる)21 CFR 640.80-640.84に列記されている。
アルブミン(ヒト)は、21 CFR 640.82に従って、以下の基準を満たすかどうかを判定するために調べられる。
(a)タンパク質濃度
最終産物は、タンパク質の4.0 ±0.25パーセント溶液;5.0 ±0.30パーセント溶液;20.0±1.2 パーセント溶液;及び25.0±1.5 パーセント溶液の濃度の内の1つに適合すべきである。
(b)タンパク質組成
食品医薬品局の生物製剤評価研究センターのセンター長によって夫々の製造元について認可されている方法により決定されるとき、最終産物の総タンパク質の少なくとも96パーセントはアルブミンであるべきである。
本明細書で使用される「アルブミン(ヒト)」つまり「HAS」は、ヒト血漿由来のアルブミン及びグロブリンから構成されるタンパク質の滅菌溶液を指し、アルブミン含有量が少なくとも95%であり、グロブリン(α1グロブリン、α2グロブリン、βグロブリン及びγグロブリンを含む)並びに他の血漿タンパク質の含有量が5%以下である。HASは、溶媒に懸濁すると、同様の組成を有する固体形態を指す場合もあり得る。総グロブリン画分は、総タンパク質からアルブミンを差し引くことによって決定され得る。
当業者に認識され得るように、PPF画分及びHAS画分は、凍結乾燥形態又は他の固体形態とすることもできる。このような調剤を適切な添加剤と共に使用して、例えば錠剤、粉末、顆粒又はカプセルを生成することができる。固体形態では、必要に応じて可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤及び防腐剤などの従来の添加剤と共に、水性又は非水性の溶媒、例えば植物油又は他の同様の油類、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸又はプロピレングリコールのエステルにPPF画分及びHAS画分を溶解、懸濁又は乳化させることにより注射用調剤に製剤化することができる。
E.凝固因子を減らした画分
本発明の別の実施形態では、血栓症のリスクを減らして画分の有効性を保持するために実質的に全ての凝固因子が取り除かれている血漿画分を使用する。簡便なことに、血液製剤は若齢ドナー又は若齢ドナーのプールから得られ、ABOが適合する若齢血液製剤を提供するためにIgMを欠くようにすることができる。現在、A抗原及びB抗原に対して天然に存在する抗体の存在が輸血反応を生じさせ得るので、輸注される血漿をABOの血液型と一致させる。IgMは、ABOが一致しない血漿を患者に与えるときの輸血反応に関与するようである。血液製剤又は血液画分からIgMを除去することにより、本発明の血液製剤及び血漿画分が投与される対象の輸血反応を回避することに役立つ。
従って、一実施形態では、本発明は、以下の肝障害又は肝不全のいずれかに関連する望ましくない症状に苦しむ対象を処置する方法に向けられている。本方法では、個体又は個体プールからの全血由来の血液製剤又は血液画分を対象に投与し、血液製剤又は血液画分は、(a)少なくとも1つの凝固因子及び/又は(b)IgMを実質的に欠いている。一部の実施形態では、血液製剤又は血液画分を得る一又は複数の個体は若齢の個体である。一部の実施形態では、血液製剤は、少なくとも1つの凝固因子及びIgMを実質的に欠いている。ある実施形態では、血液製剤は、フィブリノゲン(第I因子)を実質的に欠いている。更なる実施形態では、血液製剤は、赤血球及び/又は白血球を実質的に欠いている。更なる実施形態では、血液製剤は実質的に無細胞である。他の実施形態では、血液製剤は血漿由来である。本発明のこのような実施形態は、参照によって全体が本明細書に組み込まれる2016年8月18日に出願された米国特許出願第62/376529号によって更に裏付けられている。
F.タンパク質を濃縮した血漿タンパク質産物の処理
本発明の更なる実施形態では、PPFと比較してアルブミン濃度は減少しているが、グロブリン及び他の血漿タンパク質(一部では「混入物」と称されるもの)の量は増加している血漿画分を使用する。このような実施形態では全て、PPF、HAS、流出物I及び流出物II/IIIと同様に、凝固因子が効果的に存在しない。このような血漿画分を、以降「タンパク質濃縮血漿タンパク質産物」と称する。例えば、本発明の実施形態では、82%のアルブミンと、18%のαグロブリン、βグロブリン及びγグロブリン並びに他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用してもよい。本発明の別の実施形態では、81%のアルブミンと、19%のαグロブリン、βグロブリン及びγグロブリン並びに/又は他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用してもよい。本発明の別の実施形態では、80%のアルブミンと、20%のαグロブリン、βグロブリン及びγグロブリン並びに/又は他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用してもよい。本発明の更なる実施形態では、70~79%のアルブミンと、対応する21~30%のαグロブリン、βグロブリン及びγグロブリン並びに他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用してもよい。本発明の更なる実施形態では、60~69%のアルブミンと、対応する31~40%のαグロブリン、βグロブリン及びγグロブリン並びに他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用してもよい。本発明の更なる実施形態では、50~59%のアルブミンと、対応する41~50%のαグロブリン、βグロブリン及びγグロブリン並びに他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用してもよい。本発明の更なる実施形態では、40~49%のアルブミンと、対応する51~60%のαグロブリン、βグロブリン及びγグロブリン並びに他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用してもよい。本発明の更なる実施形態では、30~39%のアルブミンと、対応する61~70%のαグロブリン、βグロブリン及びγグロブリン並びに他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用してもよい。本発明の更なる実施形態では、20~29%のアルブミンと、対応する71~80%のαグロブリン、βグロブリン及びγグロブリン並びに他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用してもよい。本発明の更なる実施形態では、10~19%のアルブミンと、対応する81~90%のαグロブリン、βグロブリン及びγグロブリン並びに他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用してもよい。本発明の更なる実施形態では、1~9%のアルブミンと、対応する91~99%のαグロブリン、βグロブリン及びγグロブリン並びに他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用してもよい。本発明の更なる実施形態では、0%のアルブミンと、100 %のαグロブリン、βグロブリン及びγグロブリン並びに他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用してもよい。
上述した本発明の実施形態では更に、全ガンマグロブリン濃度が1~5%であってもよい。
血漿画分中のタンパク質の特定の濃度を、関連技術分野の当業者に周知の技術を使用して決定してもよい。限定することなく例として、このような技術には、電気泳動、質量分析、ELISA解析及びウエスタンブロット解析が含まれる。
G.血漿画分の調製
PPF及び他の血漿画分を調製する方法は当業者には周知である。本発明の実施形態では、ヒト血漿タンパク質画分の調製に使用される血液を、凝固を阻止するためにクエン酸塩溶液又は抗凝固性クエン酸デキストロース溶液(又は他の抗凝固剤)を含むフラスコに収集し、Hinkらによって開示された方法(参照によって本明細書に組み込まれるHink, J.H., Jr., et al., Preparation and Properties of a Heat-Treated Human Plasma Protein Fraction, VOX SANGUINIS 2(174) (1957)参照)に従って画分I、画分II+III、画分IV及びPPFの分離を更に行うことができる。この方法によれば、2~8℃で混合物を収集することができる。続いて血漿を7℃で遠心分離により分離して取り出し、-20℃で保管することができる。その後、この血漿を、好ましくは-20℃の保管場所から取り出してから8時間以内に37℃で解凍して分画することができる。
5.1 ~5.6 パーセントのタンパク質濃度でpH 7.2及び-2~-2.5 ℃の温度で8%エタノールを使用して画分Iから血漿を分離することができる。血漿温度を-2℃に低下させている間、例えば450 mL/分の割合のジェットを使用して53.3パーセントの冷エタノール(176 mL/血漿1L)を酢酸塩緩衝剤(200 mLの4M酢酸ナトリウム、230 mLの氷酢酸、1Lまで適量のH2O )と共に追加することができる。超遠心分離により、流出物(流出物I)から画分Iを分離して取り出すことができる。当業者に周知の方法に従って、画分Iからフィブリノゲンを得ることができる。
4.3 パーセントのタンパク質濃度でpH 6.8及び-6℃の温度で21パーセントのエタノールに対して流出物を調節することにより、流出物Iから画分II+IIIを分離することができる。流出物Iの温度を-6℃に低下させている間、例えば500 mL/分の割合のジェットを使用して95パーセントの冷エタノール(176 mL/流出物I 1L)を、pH調節のために使用される10M酢酸と共に追加することができる。結果として得られる沈殿物(画分II+III)を、-6℃で遠心分離によって取り出すことができる。当業者に周知の方法を使用して、画分II+IIIからγグロブリンを得ることができる。
3パーセントのタンパク質濃度でpH 5.2及び-6℃の温度で19パーセントのエタノールに対して流出物を調節することにより、流出物II+III(「流出物II/III」)から画分IV-1を分離することができる。流出物II/IIIを6時間-6℃に維持しながら、H2O とpH調節のために使用される10M酢酸とをジェットを使用して追加することができる。沈殿した画分IV-1を-6℃で6時間に亘って安定させ、その後、同じ温度で遠心分離によって流出物から分離することができる。pH4.65、-7℃の温度及び2.5 パーセントのタンパク質濃度でエタノール濃度を30パーセントに調節することにより、流出物IV-1から安定した血漿タンパク質画分を回収することができる。このような回収は、冷酸・アルコール(2M酢酸2部及び95パーセントエタノール1部)を用いて流出物IV-1のpHを調節することにより行われ得る。-7℃の温度を維持しながら、調節した流出物IV-1に1リットル毎に170 mLの冷エタノール(95%)を追加する。沈殿するタンパク質を36時間に亘って安定させた後、-7℃で遠心分離によって取り出すことができる。画分IV-4ペーストを、コーン分画処理を使用して得ることもできる。実際、画分IV-4及びその製造プロセスは前述されている(全体が参照によって本明細書に組み込まれるSchopfer LM, et al., PLoS ONE, 14(1):e0209795 (2018))(全体が参照によって本明細書に組み込まれるSchopfer LM, et al., PLoS ONE, 14(1):e0209795 (2018), and Bertolini J, Goss N, Curlin J eds., PRODUCTION OF PLASMA PROTEINS FOR THERAPEUTIC USE, 16.4: 231:232 (2013))。
回収されたタンパク質(安定した血漿タンパク質画分)を(例えば凍結乾燥により)乾燥させて、アルコール及びH2O を除去することができる。結果として得られる乾燥した粉末を、例えば水15リットル/粉末1kgを使用して滅菌蒸留水に溶解させ、この溶液を1MのNaOHでpH 7.0に調節することができる。タンパク質5パーセントの最終濃度は、アセチルトリプトファンナトリウム、カプリル酸ナトリウム及びNaClを含有する滅菌蒸留水を追加し、アセチルトリプトファン塩0.004 M、カプリル酸塩0.004 M及びナトリウム0.112 Mの最終濃度に調節することによって実現され得る。最後に、この溶液を10℃で濾過して透明な溶液を得た後、病原体の不活性化のために60℃で少なくとも10時間熱処理することができる。
当業者は、肝障害又は肝不全などの症状を処置するために本発明の方法と共に、上述された様々な画分、流出物又はペーストの各々を使用し得ることを認識する。例えば、限定することなく、流出物I又は流出物II/IIIは、肝障害又は肝不全などの症状を処置するために利用されてもよく、これらは本発明の実施形態である。更なる例として、画分Iペースト、画分II+IIIペースト、画分IV-1ペースト、画分IV-4ペースト及び/若しくは画分V ペースト又はその懸濁液が、肝障害又は肝不全などの症状を処置するために使用されてもよく、本発明の実施形態である。
血漿画分及び血漿タンパク質画分(PPF)を調製する前述した方法は単なる例示であり、本発明の実施形態を単に含んでいるだけである。当業者は、これらの方法が変わり得ることを認識する。例えば、本発明の様々な実施形態及び方法で様々なバリエーションの血漿画分及び血漿タンパク質画分を生成するために、特にpH、温度及びエタノール濃度を調節することができる。別の例では、本発明の更なる実施形態で血漿画分及び血漿タンパク質画分中の病原体の除去/不活性化のためのナノ濾過の使用が想定される。
本発明の更なる実施形態では、追加の血漿画分を用いた及び/又は追加の血漿画分を含む方法及び組成物が想定される。例えば、本発明は特に、アルブミンの特定の濃度が、肝障害又は肝不全に関連する症状を処置するために重要ではないと想定する。従って、アルブミン濃度を下げた画分、例えば83%未満のアルブミンを有する画分が、本発明により想定される。
H.処置
本明細書に記載されている本発明の方法の態様は、例えば上述されているような血漿含有血液製剤、例えば血漿画分を用いた対象の処置を含む。実施形態は、血漿含有血液製剤を用いたヒト対象の処置を含む。血漿含有血液製剤を用いて対象を処置する方法が本技術分野で受け入れられることを当業者は認識する。限定することなく例として、本明細書に記載されている本発明の方法の一実施形態では、急性不全又は慢性不全などの肝臓に関連する障害を処置するために血漿画分又は新鮮凍結血漿を対象に投与する。本発明の更なる実施形態では、急性肝不全は、B型肝炎又はC型肝炎などの感染症、薬物又は毒素(例えばアセトアミノフェン、イソニアジド)の過剰使用、並びに自己免疫性肝炎及びウィルソン病などの代謝障害又は血管障害に関連付けられる。本発明の更なる実施形態では、慢性肝不全は、ウイルス感染、アルコール中毒、(肥満、高コレステロール及びトリグリセリド、高血圧による)NAFLD 、自己免疫疾患、閉塞又は損傷した管、例えば肝臓から腸への胆管、毒素又は特定の薬剤への曝露、寄生虫、肝臓での血液の蓄積をもたらす心不全に関連付けられる。
本発明の更なる実施形態は、遺伝性疾患に関連する肝障害又は肝不全を含み、遺伝性疾患は、限定することなく例として、α-1アンチトリプシン欠損症;胆汁酸合成障害(ウィルソン病、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症3型);糖代謝障害(遺伝性フルクトース不耐症、4型糖原病);アミノ酸代謝障害(チロシン血症I型);尿素サイクル異常症(アルギニノコハク酸リアーゼ欠損症、シトリン欠損症-CTLN2 、NICCD );脂質代謝障害(コレステロールエステル蓄積症);嚢胞性線維症;ヘモクロマトーシス;アルストレーム症候群;及び先天性肝線維症を含む(Scorza M, et al., Int’l J Hepatology, 2014, Article ID 713754 (2014))。
本発明の更なる実施形態は、感染病原体に関連する肝障害又は肝不全を含み、感染病原体は、限定することなく例として、ウイルス(エプスタイン・バ-ルウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス及び他のヘルペスウイルス、黄熱、デング熱、B型肝炎及びC型肝炎);バクテリア(腸チフス、結核菌、ブルセラ症、Q熱、レプトスピラ症、スピロヘータ-梅毒、ボレリア);寄生虫(住血吸虫症、マラリア);菌類(カンジダ菌)などである(Talwani R, et al., Clin Liver Dis., 15(1):111-30 (2011))。
本発明の更なる実施形態は、限定することなく例として、アセトアミノフェン、イソニアジド、肝臓によって代謝される薬物などの薬物又は有害物質に関連する肝障害又は肝不全を含む。
本発明の更なる実施形態は、肝臓が部分的又は完全に切除される肝障害を含む。更なる実施形態は、ドナーの肝臓が、肝障害に苦しむ対象に移植される肝障害を含む。更なる実施形態では、血漿含有血液製剤又は血漿画分などの治療薬を術前、術中及び/又は術後に対象に投与する。
一実施形態では、血漿含有血液製剤を直ちに、例えば、ドナーから採取されてから約12~48時間以内に、肝障害又は肝不全に関連する症状に苦しむ個体に投与する。このような例では、製剤を、例えば0~10℃で冷蔵保管してもよい。別の実施形態では、新鮮凍結血漿は、-18℃以下で冷凍保存(凍結保存)されているものである。新鮮凍結血漿は、投与前に解凍され、解凍されると、解凍処理が開始してから60~75分後に対象に投与される。各対象は、好ましくは単回単位の新鮮凍結血漿(200 ~250 mL)を受け、新鮮凍結血漿は、好ましくは所定の年齢範囲のドナーから得られる。本発明の一実施形態では、新鮮凍結血漿は、若齢個体によって提供される(若齢個体から得られる)。本発明の別の実施形態では、新鮮凍結血漿は、同じ性別のドナーによって提供される(同じ性別のドナーから得られる)。本発明の別の実施形態では、新鮮凍結血漿は18~22歳の年齢範囲のドナーによって提供される(18~22歳の年齢範囲のドナーから得られる)。
本発明の実施形態では、血漿含有血液製剤を供血後に血液型によってスクリーニングする。本発明の別の実施形態では、血漿含有血液製剤を、21 CFR 640.33の要件及びFDAの指針書に含まれている勧告に従ってHIV I&II、HBV 、HCV 、HTLV I&II 、抗HBc などの感染性病因物質についてスクリーニングする。
本発明の更に別の実施形態では、血漿画分を用いて対象を処置する。本発明の実施形態では、血漿画分はPPF、HAS、画分IV-1、画分IV-1ペースト、画分IV-4又は画分IV-4ペーストである。本発明の更なる実施形態では、血漿画分は市販のPPF調剤又は市販のHAS調剤の内の1つである。本発明の別の実施形態では、血漿画分は、若齢個体などの特定の年齢範囲の個体のプールから得られたPPF、HAS、画分IV-4若しくは画分IV-4ペーストであるか、又は、更なる分画若しくは処理が施されている改変されたPPF、HAS、画分IV-4又は画分IV-4ペースト(例えば、一若しくは複数の特定のタンパク質が部分的若しくは実質的に除去されたPPF、HAS、画分IV-1、画分IV-1ペースト、画分IV-4又は画分IV-4ペースト)である。本発明の別の実施形態では、血漿画分は免疫グロブリン(IgG)を実質的に枯渇させているIGIV血漿画分である。IgGなどの特定のタンパク質が「実質的に枯渇している」又は「実質的に除去されている」血液画分とは、本技術分野では周知の標準的なアッセイを使用して測定した場合、基準産物又は全血血漿中で生じる量の約50%未満、例えば45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5 %未満、0.25%未満、0.1 %未満、検出不可能なレベル又はこれらの値の間の任意の整数を含む血液画分を指す。
I.投与
本明細書に記載されている本発明の方法の態様は、例えば上述されているような血漿含有血液製剤、例えば血漿又は血漿画分を用いた対象の処置を含む。実施形態は、血漿含有血液製剤を用いたヒト対象の処置を含む。血漿含有血液製剤を用いて対象を処置する方法が本技術分野で受け入れられることを当業者は認識する。本明細書に記載されている本発明の方法の一実施形態では、限定することなく例として、肝障害又は肝不全などの症状を処置するために新鮮凍結血漿を対象に投与する。一実施形態では、血漿含有血液製剤を直ちに、例えば、ドナーから採取されてから約12~48時間以内に、肝障害又は肝不全などの望ましくない症状に苦しむ個体に投与する。このような例では、製剤を、例えば0~10℃で冷蔵保管してもよい。別の実施形態では、新鮮凍結血漿は、-18℃以下で冷凍保存(凍結保存)されているものである。新鮮凍結血漿は、投与前に解凍され、解凍されると、解凍処理が開始してから60~75分後に対象に投与される。各対象は、好ましくは単回単位の新鮮凍結血漿(200 ~250 mL)を受け、新鮮凍結血漿は、好ましくは所定の年齢範囲のドナーから得られる。本発明の一実施形態では、新鮮凍結血漿は、若齢個体によって提供される(若齢個体から得られる)。本発明の別の実施形態では、新鮮凍結血漿は、同じ性別のドナーによって提供される(同じ性別のドナーから得られる)。本発明の別の実施形態では、新鮮凍結血漿は18~22歳の年齢範囲のドナーによって提供される(18~22歳の年齢範囲のドナーから得られる)。
本発明の実施形態では、血漿含有血液製剤を供血後に血液型によってスクリーニングする。本発明の別の実施形態では、血漿含有血液製剤を、21 CFR 640.33の要件及びFDAの指針書に含まれている勧告に従ってHIV I&II、HBV 、HCV 、HTLV I&II 、抗HBc などの感染性病因物質についてスクリーニングする。
本発明の更に別の実施形態では、血漿画分を用いて対象を処置する。本発明の実施形態では、血漿画分はPPF又はHASである。本発明の更なる実施形態では、血漿画分は市販のPPF調剤又は市販のHAS調剤の内の1つである。本発明の別の実施形態では、血漿画分は、若齢個体などの特定の年齢範囲の個体のプールから得られたPPF若しくはHASであるか、又は、更なる分画若しくは処理が施されている改変されたPPF画分若しくはHAS画分(例えば、一若しくは複数の特定のタンパク質が部分的若しくは実質的に除去されたPPF又はHAS)である。本発明の別の実施形態では、血漿画分は免疫グロブリン(IgG)を実質的に枯渇させているIGIV血漿画分である。IgGなどの特定のタンパク質が「実質的に枯渇している」又は「実質的に除去されている」血液画分とは、本技術分野では周知の標準的なアッセイを使用して測定した場合、基準産物又は全血血漿中で生じる量の約50%未満、例えば45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5 %未満、0.25%未満、0.1 %未満、検出不可能なレベル又はこれらの値の間の任意の整数を含む血液画分を指す。
本発明の実施形態では、肝障害又は肝不全などの症状に苦しむ対象に有効量の血漿又は血漿画分を投与することによって、その対象を処置する。本発明の別の実施形態では、有効量の血漿又は血漿画分を投与し、その後、肝臓機能の改善、肝臓の再生、マーカの存在、疼痛の軽減又は炎症の減少について対象をモニタする。本発明の別の実施形態では、肝障害又は肝不全などに関連する症状に苦しむ対象に有効量の血漿又は血漿画分を投与することによって、その対象を処置し、ここで血漿又は血漿画分は、直近の投与量に対して血漿タンパク質又は血漿画分タンパク質の平均半減期又は中央半減期に達した後に肝臓機能の改善、肝臓の再生、マーカの存在、疼痛の軽減又は炎症の減少をもたらすように投与される(本明細書では「パルス投与」又は「パルス投与される」と称する)(全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願第15/499697号明細書及び米国特許出願第62/701411号明細書参照)。本発明の別の実施形態では、少なくとも2日連続の投与計画によって血漿又は血漿画分を投与し、最後の投与日から少なくとも3日後に肝臓機能の改善又はHSCマーカのレベルについて対象をモニタする。本発明の更なる実施形態では、少なくとも3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日又は14日連続の投与計画によって血漿又は血漿画分を投与し、最後の投与日から少なくとも3日後に肝臓機能の改善、肝臓の再生、マーカの存在、疼痛の軽減又は炎症の減少について対象をモニタする。本発明の更に別の実施形態では、少なくとも2日連続の投与計画によって血漿又は血漿画分を投与し、最後の投与日の後、血漿又は血漿画分中のタンパク質の平均半減期に達すると、肝臓の機能改善、マーカの存在、疼痛の軽減又は炎症の減少についてモニタする。本発明の別の実施形態では、2~14日の非連続の投与計画によって血漿又は血漿画分を投与し、ここで投与の間隔は夫々0~3日間の範囲内であってもよい。
場合によっては、本発明に従ってパルス投与する際、例えば上述されているように、第1の用量セットを投与し、この後に投与無しの期間、例えば「無投与期間」が続き、その後、別の用量又は用量セットを投与する。この「無投与」期間の長さは様々であってもよいが、一部の実施形態では、7日以上、例えば10日以上、例えば14日以上であり、場合によっては、無投与期間は15~365日間、例えば30~90日間、例えば30~60日間に及ぶ。従って、本方法の実施形態は、非慢性(すなわち非持続)投与、例えば血漿製剤の非慢性投与を含む。一部の実施形態では、パルス投与後に無投与期間が続くパターンを必要に応じて複数回繰り返し、場合によっては、このパターンを1年以上、例えば2年以上、最長で対象の生涯に亘って継続する。本発明の別の実施形態では、5日間連続の投与計画によって血漿又は血漿画分を投与し、2~3日間の無投与期間の後に2~14日間連続して投与する。
本発明の更なる実施形態は、肝臓が部分的又は完全に切除される肝障害を含む。更なる実施形態は、ドナーの肝臓が、肝障害に苦しむ対象に移植される肝障害を含む。更なる実施形態では、血漿含有血液製剤又は血漿画分などの治療薬を術前、術中及び/又は術後に対象に投与する。肝臓を切除して移植する方法は本技術分野ではよく知られている。
生化学的に、活性剤の「有効量」又は「有効用量」とは、肝障害又は肝不全などの望ましくない症状を、約20%以上、例えば30%以上、40%以上又は50%以上、場合によっては60%以上、70%以上、80%以上又は90%以上、ある場合には約100%、すなわち無視できる程度まで阻止する、弱める、減少させる、軽減する又は抑制し、場合によっては反転する活性剤の量を意味する。
J.血漿タンパク質画分
本発明の方法を実施する際、血漿画分を対象に投与する。実施形態では、血漿画分は血漿タンパク質画分(PPF)である。更なる実施形態では、PPFは、市販のPPF調剤から選択される。
別の実施形態では、PPFは、電気泳動により決定される場合、88%の正常なヒトアルブミン、12%のアルファグロブリン及びベータグロブリン並びに1%以下のガンマグロブリンで構成されている。本発明の方法を実施する際に使用される本実施形態の更なる実施形態は、例えば炭酸ナトリウムで緩衝し、0.004 Mのカプリル酸ナトリウム及び0.004 Mのアセチルトリプトファンで安定化したPPFの5%溶液の実施形態を含む。更なる製剤、例えば溶液中のPPFの割合(例えば約1%から約10%、約10%から約20%、約20%から25%、約25%から30%)並びに溶媒及び安定剤の濃度が変更された製剤を、本発明の方法を実施する際に利用してもよい。
K.特定のドナー年齢の血漿画分
本発明の更なる実施形態では、ある年齢範囲の個体の血漿から得られた血漿タンパク質画分を投与する。実施形態では、若齢個体の血漿から得られたPPF又はHASを投与する。本発明の別の実施形態では、若齢個体は単一の特定の年齢又は特定の年齢範囲である。更に別の実施形態では、ドナーの平均年齢は、対象の年齢未満、又は処置される対象の平均年齢未満である。
本発明のある実施形態では、特定の年齢範囲の個体から得られた血液又は血漿をプールし、上述されているように血漿を分画して、PPF又はHASなどの血漿タンパク質画分産物を得る。本発明の代替的な実施形態では、血漿タンパク質画分又は特定の血漿タンパク質画分を、指定された年齢範囲に当てはまる特定の個体から得る。
L.適応症
本発明の実施形態では、肝臓の増殖又は再生の改善によって恩恵を受け得る肝障害又は肝不全と診断された対象に投与するために血漿画分又は血漿分画の産物を使用する。本発明の更なる実施形態では、前記疾患は、急性肝不全、慢性肝不全、又は急性増悪する肝不全に関連付けられる。急性増悪する肝不全は、慢性肝疾患が比較的安定している患者で発症するが、突然急性肝不全になる。このため、通常、死亡率が非常に高くなる。本発明の別の実施形態では、急性不全は、B型肝炎又はC型肝炎などの感染症、薬物又は毒素(例えばアセトアミノフェン、イソニアジド)の過剰使用、並びに自己免疫性肝炎及びウィルソン病などの代謝障害又は血管障害に関連付けられる。本発明の更なる実施形態では、慢性肝不全は、ウイルス感染、アルコール中毒、(肥満、高コレステロール及びトリグリセリド、高血圧による)NAFLD 、自己免疫疾患、例えば肝臓から腸への胆管などの管の閉塞又は損傷、毒素又は特定の薬剤への曝露、寄生虫、肝臓での血液の蓄積をもたらす心不全に関連付けられる。
本発明の更なる実施形態は、遺伝性疾患に関連する肝障害又は肝不全を含み、遺伝性疾患は、限定することなく例として、α-1アンチトリプシン欠損症;胆汁酸合成障害(ウィルソン病、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症3型);糖代謝障害(遺伝性フルクトース不耐症、4型糖原病);アミノ酸代謝障害(チロシン血症I型);尿素サイクル異常症(アルギニノコハク酸リアーゼ欠損症、シトリン欠損症-CTLN2 、NICCD );脂質代謝障害(コレステロールエステル蓄積症);嚢胞性線維症;ヘモクロマトーシス;アルストレーム症候群;及び先天性肝線維症を含む(Scorza M, et al., Int’l J Hepatology, 2014, Article ID 713754 (2014))。
本発明の更なる実施形態は、感染病原体に関連する肝障害又は肝不全を含み、感染病原体は、限定することなく例として、ウイルス(エプスタイン・バ-ルウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス及び他のヘルペスウイルス、黄熱、デング熱、B型肝炎及びC型肝炎);バクテリア(腸チフス、結核菌、ブルセラ症、Q熱、レプトスピラ症、スピロヘータ-梅毒、ボレリア);寄生虫(住血吸虫症、マラリア);菌類(カンジダ菌)などである(Talwani R, et al., Clin Liver Dis., 15(1):111-30 (2011))。
本発明の更なる実施形態は、限定することなく例として、アセトアミノフェン、イソニアジド、肝臓によって代謝される薬物などの薬物又は有害物質に関連する肝障害又は肝不全を含む。
本発明の更なる実施形態は、肝臓が部分的に切除される肝障害を含む。更なる実施形態は、ドナーの肝臓が、肝障害に苦しむ対象に移植される肝障害を含む。更なる実施形態では、血漿含有血液製剤又は血漿画分などの治療薬を術前、術中及び/又は術後に対象に投与する。
M.試薬、デバイス及びキット
上記の方法の内の一又は複数を実施するための試薬、デバイス及びキットを更に提供する。本試薬、デバイス及びそのキットは大きく異なる場合がある。
注目する試薬及びデバイスには、例えば抗凝固剤、凍結保存剤、緩衝剤、等張液など、必要とする対象に輸注するための血漿含有血液製剤を調製する方法に関して上述したものが含まれる。
キットは、採血バッグ、管類、針、遠心管などを更に備えてもよい。更に他の実施形態では、本明細書に記載されているようなキットは、血漿タンパク質画分などの血漿製剤の容器を2以上、例えば3以上、4以上、5以上、例えば6以上含む。場合によっては、キット内の血漿製剤の個別容器の数は9以上、12以上、15以上、18以上、21以上、24以上、30以上、例えば36以上、例えば48以上であってもよい。各容器は、この容器に含まれる血漿製剤に関する様々なデータを含む識別情報と関連付けられてもよく、この識別情報は、血漿製剤のドナーの年齢、血漿製剤に関する処理の詳細、例えば(上述したような)平均分子量を超えるタンパク質を除去すべく血漿製剤が処理されたか否か、血液型の詳細などの内の一又は複数を含んでもよい。場合によっては、キット内の各容器は、この容器に含まれる血漿に関する識別情報を含んでおり、この識別情報は、血漿製剤のドナーの年齢に関する情報を含んでおり、例えば識別情報によって、血漿製剤のドナーの年齢に関するデータを確認する(このような識別情報は、採取したときのドナーの年齢であってもよい)。場合によっては、キットの各容器は実質的に同じ年齢のドナーから得られた血液血漿製剤を含む、すなわち、容器の全ては同じではないにしろ、実質的に同じ年齢であるドナーから得られた製剤を含む。実質的に同じ年齢とは、キットの血漿製剤を得る様々なドナーの年齢が、場合によっては5歳以下、例えば4歳以下、例えば3歳以下、例えば2歳以下、例えば1歳以下、例えば9か月以下、6か月以下、3か月以下、例えば1か月以下だけ夫々異なることを意味する。識別情報は、ラベル、RFIDチップなどの容器のあらゆる簡便な要素に存在し得る。識別情報は、必要に応じて人間可読であってもよく、コンピュータ可読であってもよい。容器は、あらゆる簡便な構成を有してもよい。容器の容積は様々であってもよいが、場合によっては、この容積は10mL~5000mL、例えば25mL~2500mL、例えば50mL~1000mL、例えば100 mL~500 mLの範囲内である。容器は剛性又は可撓性を有してもよく、あらゆる簡便な材料、例えば医療用のプラスチック材料を含むポリマー材料から形成されてもよい。場合によっては、容器はバッグ又はパウチの構成を有する。このようなキットは、容器に加えて、例えば上述したような投与デバイスを更に備えてもよい。このようなキットの要素は、容器及びキットの他の要素を保持すべく構成されたあらゆる適した包装体、例えば箱又は類似の構造に設けられてもよい。
本キットは、上記の要素に加えて、本方法を実施するための使用説明書を更に備える。これらの使用説明書は、本キット内に様々な形態で備えられてもよく、使用説明書の内の一又は複数がキット内に備えられてもよい。これらの使用説明書が備えられてもよい一形態は、適した媒体又は基板上に印刷された情報であり、例えば、情報が印刷されている一又は複数の紙片、キットの包装体、添付文書等である。更に別の手段は、情報が記録されているコンピュータ可読媒体であり、例えばディスケット、CD、携帯型のフラッシュドライブ等である。存在してもよい更に別の手段は、離れた場所で情報にアクセスするためにインターネットを介して使用可能なウェブサイトアドレスである。あらゆる簡便な手段がキット内に設けられてもよい。
N.実験的実施例
1.実施例1
a)70%部分肝切除後の20ヶ月齢C57BL/6 マウスの肝臓のPPF1による機能回復
20ヶ月齢のオスのC57BL/6Jマウス(The Jackson Laboratory, Sacramento, CA)を使用した。全てのマウスを、特定病原体除去状態で12時間明るく12時間暗いサイクルで個々に収容し、全ての動物の取り扱い及び使用は、動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)が承認した標準ガイドラインに従った。7~8週間に亘って動物に60%の高脂肪食(Bio-Serv F3282)を与えて、食事後の体重及びALT レベルに応じてビヒクル処置グループ及びPPF1処置グループに無作為に分けて、同一の平均体重及び血清ALT レベルをグループ間で確保した。手術を、軽微な変更を加えて前述したように行った(Nevzorova, Y., et al., Lab. Anim. 49, 81-88 (2015))。切除した肝臓(左葉及び中葉)を術前対照として採取する一方、残りの肝臓(尾状葉及び右葉)を手術の48時間後に採取した。手術の24時間後、EdU (生理食塩水中2.5mg/mLのストック)を体重の30mg/kg で腹腔内に注射した。手術の46時間後、BrdU(生理食塩水中10 mg/mLのストック)を体重の30mg/kg で腹腔内に注射した。手術の48時間後、全ての動物の体重を測定し、ALT 解析のために残りの肝臓(中葉及び尾状葉)並びに血清を採取した。
5%溶液中の上記の市販のPPF調剤などの市販のPPF(「PPF1」)を4℃で保管した。PPF1は、電気泳動によって決定されるとき、(総タンパク質に対して)約88%の正常ヒトアルブミンと12%のアルファグロブリン及びベータグロブリンと1%以下のガンマグロブリンとを有するPPF である。言及される場合を除いて、PPF1は、本明細書の実施例では5%溶液(w/v ,50 g/L)を用いて投与される。
qPCR解析のために、液体窒素及び乳鉢/乳棒で粉末処理された、切除された肝臓又は残りの肝臓からRNA を抽出した。その後、Trizol (Ambion/Fisher 15-596-018)及びRNeasy Mini Kit (Qiagen 74106)を用いて抽出を行った。iScript Reverse Transcription Supermix (Bio-Rad 1030)を用いてcDNAを増幅した。SsoAdvanced Universal SYBR green master mix (Bio-Rad 1725272)を用いて増幅して、Quant Studio 6 Flex (Applied Biosystem)を用いてQPCRを行った。遺伝子発現をRPS18 (リボソームタンパク質s18 )に正規化した。
免疫染色のために、OCT 化合物(Sakura 4583) に埋め込まれた12ミクロンの厚さの凍結肝臓切片を免疫蛍光染色に使用した。抗原の回収を、クエン酸塩緩衝剤(Sigma C9999) を使用して95℃で30分間行った。EdU の標識付与のために、Click-IT Plus EdU Alexa Fluor 555を使用した(Fisher C10638) 。核の標識付与のために、Hoechst 33342 を3分間ddH2O 中で1~100,000 で使用した(Fisher H3570)。オイルレッドO染色を行って、肝臓でのトリグリセリドの蓄積を視覚化した。一時的に、凍結した肝臓部分をイソプロピルアルコール中で0.375 %のオイルレッドOに5分間浸した。切片を水道水で30分間洗浄し、Prolong gold antifade reagent (Invitrogen P36934)と共に取り付けた。
図1は、高脂肪食(「HFD 」)を受けた20ヶ月齢のC57BL/6 マウスの体重の進行を示す図表である。HFD で8.5 週間経過した後、マウスは著しい体重増加を示した。平均±SEM 、****p<0.0001、通常の一元配置ANOVA 。
図2は、図1に示されているようなマウスからの肝臓のオイルレッドO染色を示す。HFD を受けたマウスは、普通食(「通常の食事」)を受けたマウスと比較して脂肪肝を発症した。
図3は、上述されているような高脂肪食を受けた20ヶ月齢のC57BL/6 マウスに対するPPF1の効果を評価するための実験の計画を示す。
図4は、図3に示されているように処置されたマウスの70%肝切除によって切除された葉及び残りの葉を示す。
図5は、図3に示されているように処置されたマウスから肝切除されてビヒクル及びPPF1で処置されて切除された肝臓における肝重量対体重の比の決定結果を示す。
図6は、図3に示されているように処置されたマウスからのビヒクル及びPPF1で処置されて切除された肝臓の肝重量を示す。
図7は、血清ALT レベルが、肝切除前にHFD を受けてPPF1で処置されたマウスで正常であり、影響を受けていないことを示す図表である。ALT レベルは、1リットル当たり50~60単位未満である場合は正常とみなされる(例えば、Mazzaccara C, et al., PLoS ONE, 3(11):e3772 (2008))。
図8は、図3に示されているように、肝切除の48時間後の残りの肝臓を有するビヒクル及びPPF1で処置されたマウスにおける肝重量対体重の比の決定結果を示す。ビヒクルで処置された動物と比較して、PPF1で処置された動物は、肝切除の48時間後の肝重量の著しい増加を示した。平均±SEM 、**p<0.001 、ホイットニー補正を含む独立T検定。
図9は、図3に示されているように、肝切除の48時間後の残りの肝臓を有するビヒクル及びPPF1で処置されたマウスの肝重量を示す。ビヒクルで処置された動物と比較して、PPF1で処置された動物は、肝切除の48時間後の肝重量の著しい増加を示した。平均±SEM 、*p<0.05 、ホイットニー補正を含む独立T検定。
図10は、図3に示されているように、肝切除の48時間後の残りの肝臓を有するビヒクル及びPPF1で処置されたマウスの血清ALT レベルの結果を示す。ビヒクルで処置された動物と比較して、PPF1で処置された動物は、肝切除の48時間後に血清ALT レベルの著しい減少を示し、肝臓の損傷の程度がPPF1で処置された動物で更に著しく低下したことを示す。平均±SEM 、**p<0.001 、ホイットニー補正を含む独立T検定。
対照的に、切除した肝重量、肝重量/体重比、及びALT レベルの差は、ビヒクルで処置された動物及びPPF1で処置された動物間で有意水準に達しなかった。
図11は、肝切除後の細胞増殖割合を示す。EdU を、肝切除の24時間後に送達し、増殖割合を、EdU 陽性細胞のClick-itラベリングによって追跡した。PPF1は、残りの肝臓においてビヒクルで処置された動物と比較して領域当たりの細胞のEdU 陽性数を著しく増加させた。
図12は、領域当たりのKi67陽性細胞の数で測定した、肝切除の48時間後の細胞増殖を示す。PPF1は、残りの肝臓においてビヒクルで処置された動物と比較して領域当たりの細胞のKi67陽性数を著しく増加させた。
図13は、qPCR遺伝子発現による残りの肝臓における細胞増殖割合を示す。細胞周期マーカのサイクリンB1の相対発現が示されている。残りの肝臓切片では、ビヒクルで処置されたマウスと比較してPPF1で処置されたマウスでサイクリンB1の発現が著しく上方制御された。平均±SEM 、*p<0.05 、ホイットニー補正を含む独立T検定。
図14A~図14Dは、切除された肝臓における複数のマーカのqPCR発現を示す。細胞周期マーカのサイクリンB1(図14A)、サイクリンA2(図14B)及びKi67(図14C)の相対発現が示されている。術前対照として肝切除中に取り除かれている切除された肝臓切片では、PPF1は、意外なことに3つの全ての細胞周期マーカでビヒクル対照と比較して細胞増殖を著しく増加させた。図14Dは、切除された肝臓切片におけるTNF αの相対発現レベルを示す。TNF αは、肝細胞の増殖及び肝臓の再生を促進することにより、機能性肝臓質量の回復の一因となることが知られている。要約すると、PPF1処置により、ビヒクル対照と比較して(肝切除前の)静止状態の肝臓及び無傷の肝臓で細胞増殖を活性化した。平均±SEM 、*p<0.05 、ホイットニー補正を含む独立T検定。
図15は、図14Cに示されているような、切除された肝臓におけるKi67の免疫染色を示し、これにより、PPF1で処置されて切除された肝臓が、ビヒクル対照と比較して著しくより多い数のKi67陽性細胞を有したことが確認される。
図16は、図15の免疫染色の定量化を示し、PPF1で処置されて切除された肝臓のKi67陽性細胞の数が増加していることを示す。平均±SEM 、*p<0.05 、ホイットニー補正を含む独立T検定。
図17は、肝切除を受けた動物の総数及び各処置を受けた動物の生存率を示す図表である。PPF1で処置された動物は、ビヒクルで処置された動物と比較して生存率の上昇傾向を示した。
図18は、肝切除の24時間後にEdU が組み込まれた残りの肝臓からの2つの共焦点顕微鏡領域を示す(図3参照)。組織切片をGFAP抗体(星細胞マーカ)で染色して、GFAPとEdU との共局在のレベルを観察した。EdU とGFAPとの共局在の欠如から、PPF1投与に関連した細胞増殖が星細胞では生じなかったことが判明した。
図19は、肝切除の24時間後にEdU が組み込まれた残りの肝臓からの2つの共焦点顕微鏡領域を示す(図3参照)。組織切片をCD68抗体(クッパー細胞マーカ)で染色して、CD68とEdU との共局在のレベルを観察した。EdU とCD68との共局在の欠如から、PPF1投与に関連した細胞増殖がクッパー細胞では生じなかったことが判明した。
図20は、肝切除の24時間後にEdU が組み込まれた残りの肝臓からの共焦点顕微鏡領域を示す(図3参照)。組織切片をHNF4a 抗体(肝細胞マーカ)で染色して、HNF4a とEdU との共局在のレベルを観察した。EdU とHNF4a との共局在の欠如から、PPF1投与に関連した細胞増殖が肝細胞では生じなかったことが判明した。
図21は、肝切除の24時間後にEdU が組み込まれた残りの肝臓からの共焦点顕微鏡領域を示す(図3参照)。組織切片をCD3 抗体(T細胞マーカ)で染色して、CD3 とEdU との共局在のレベルを観察した。EdU とCD3 との共局在の欠如から、PPF1投与に関連した細胞増殖がT細胞では生じなかったことが判明した。
図22は、肝切除の24時間後にEdU が組み込まれた残りの肝臓からの2つの共焦点顕微鏡領域を示す(図3参照)。組織切片をCD31抗体(類洞内皮細胞マーカ)で染色して、CD31とEdU との共局在のレベルを観察した。EdU とCD31との明確な共局在から、PPF1投与による細胞増殖が、肝臓の類洞内皮細胞(LSEC)に関連付けられることが判明した。これらの結果は、PPF1が肝臓の毛細管細胞増殖を増加させ、損傷部位に血液がより多くもたらされることを示唆しており、これは、PPF1処置で組織の修復及び再生がどのように行われるかのメカニズムを示唆している(矢印は、EdU 陽性細胞を含むLSECを示す)。
2.実施例2
a)70%部分肝切除後の20ヶ月齢C57BL/6 マウスの肝臓のPPF1、組換えヒトアルブミン及びHAS1の効果
組換えヒトアルブミン
追加のコホートを組換えヒトアルブミン(「rhアルブミン」)で処置したことを除いて、オスのC57BL/6Jを上記の実施例1で説明したように処置した。PPF1処置グループ、rhアルブミン処置グループ及びビヒクル処置グループの比較を行った。
図23は、高脂肪食を受けた20ヶ月齢のC57BL/6 マウスにおけるPPF1(血漿画分「PF」のタイプ)及び組換えヒトアルブミン(rhアルブミン)の効果を評価するための実験の計画を示す。マウスは、60%の高脂肪食を8週間受けて、その後、PPF1、rhアルブミン又はビヒクルを用いて7日間連続して処置を受けた。PPF1、rhアルブミン又はビヒクルの最後の投与の翌日に手術(70%肝切除)を行い、肝切除中、術前の中葉及び左葉(切除)を取り除いた。肝切除の48時間後に右葉及び尾状葉(残り)を採取した。
図24は、領域当たりのKi67陽性細胞の数で測定した、切除された肝臓における肝切除の48時間後の細胞増殖を示す。PPF1は、ビヒクルで処置された動物と比較して領域当たりの細胞のKi67陽性数を著しく増加させた。対照的に、rhアルブミンで処置された動物は、ビヒクルで処置された動物との有意差を示さなかった。平均±SEM 、***p<0.0001 、ホイットニー補正を含む独立T検定、nsは非有意である。
図25は、残りの肝臓における肝切除後の細胞増殖割合を示す。EdU を、肝切除の24時間後に送達し、増殖割合をクリックケミストリーによって追跡した。PPF1は、ビヒクルで処置された動物と比較して領域当たりの細胞のEdU 陽性数を著しく増加させた。対照的に、rhアルブミンで処置された動物は、ビヒクルで処置された動物と比較して増殖の有意性に達しなかった。
これらの結果から、PPF1の最も豊富な成分であるアルブミンが、増殖、組織修復及び再生活動に関与するPPF1の成分ではない可能性が高いことが明らかになった。代わりに、血漿分画の残りの不純物とみなされることが多いPPF1の他の成分が意外なことにPPF1のこれらの活性を促進していることが示唆されている。
ヒトアルブミン溶液(HAS)
追加のコホートをヒトアルブミン溶液(「HAS1」)で処置したことを除いて、オスのC57BL/6Jを上記の実施例1で説明したように更に処置した。PPF1処置グループ、HAS1処置グループ及びビヒクル処置グループの比較を行った。
図26は、高脂肪食を受けた20ヶ月齢のC57BL/6 マウスに対するPPF1及びHAS1の効果を評価するための実験の計画を示す。マウスは、60%の高脂肪食を8週間受けて、その後、PPF1、rhアルブミン又はビヒクルを用いて7日間連続して処置を受けた。PPF1、HAS1又はビヒクルの最後の投与の翌日に手術(70%肝切除)を行い、肝切除中、術前の中葉及び左葉(切除)を取り除いた。肝切除の48時間後に右葉及び尾状葉(残り)を採取した。
図27は、肝切除の24時間後の細胞増殖割合を示す。EdU を、肝切除の24時間後に送達した。PPF1及びHAS1の両方が、残りの肝臓においてビヒクルと比較して細胞のEdU 陽性数を著しく増加させた。*p<0.05 ,ウェルチのt検定。エラーバーはS.E.M.である。HAS1は、5%溶液中の上記の市販のHAS 調剤などの市販のHAS であり、4℃で保管された。
図28は、肝切除の48時間後の細胞増殖割合を示す。肝切除の48時間後に採取した残りの肝臓にKi67免疫染色を行った。PPF1及びHAS の両方が対照動物と比較して細胞増殖を著しく増加させた一方、PPF1は、HAS1で処置された動物と比較してより著しい増殖を更に誘発した。*p<0.05 ,**p<0.005 ,***p<0.0005 ,ウェルチのt検定。エラーバーはS.E.M.である。
これらの結果から、血漿画分による肝細胞の増殖がHAS1で処置された脂肪肝及びPPF1で処置された脂肪肝の両方で観察されたことが明らかである。しかしながら、異なる血漿画分(HAS1及びPPF1)の両方が、24時間後、ビヒクルと比べて増殖を著しく誘発したが、48時間後のPPF1の効果は、HAS1に比べて大幅により有意であり、ビヒクルに比べて更に有意である。これは、PPF1と比較してHAS1でより純度が高くより豊富なアルブミンが、意外なことに増殖、組織修復及び再生に対する血漿画分の作用に関与する主要な成分ではないことを更に示している。代わりに、血漿画分の他の成分、又は血漿分画の残りの「不純物」がこれらの活性を予期せず促進することが示唆されている。
3.実施例3
a)最後の処置投与の2時間後の20ヶ月齢C57BL/6 マウスの肝臓に対するPPF1の効果
20ヵ月齢のオスのC57BL/6Jマウスを、体重に応じてビヒクル処置グループ及びPPF1処置グループに無作為に分けて、同一の平均体重をグループ間で確保した。マウスを、高脂肪食ではなく通常の食事で育てた。動物に毎日150 μLのビヒクル又はPPF1を7日間連続して静脈投与した。7日目に、投与の2時間後に肝臓を取り除いた。遺伝子発現解析のために、RNA を抽出して逆転写し、TNF αに関してSYBR qPCR を行った。遺伝子発現をRPS18 に正規化した。免疫染色のために、Ki67抗体を使用して、採取された肝臓の増殖細胞に標識を付与した。
図29は、20ヶ月齢のC57BL/6 マウスに対する最後の投与の2時間後のPPF1の効果を評価するための実験の計画を示す。
図30は、図29に示されているように処置されたマウスのTNF α遺伝子発現解析の結果を示す。ビヒクルで処置された動物と比較して、PPF1で処置された動物は、QPCRによるTNF α遺伝子発現を著しく増加させた。**p<0.005 。ウェルチt検定,エラーバーはS.E.M.である。
図31は、図29に示されているように処置されたマウスのKi67免疫染色解析の結果を示す。ビヒクルで処置された動物と比較して、PPF1で処置された動物は、最後の投与の2時間後、Ki67陽性細胞を著しく増加させて、PPF1による肝細胞増殖の増加を示している。*p<0.05 。ウェルチt検定,エラーバーはS.E.M.である。
これらの結果は、健康で非脂肪性の老齢肝臓であっても、PPF1などの血漿画分が増殖及び再生の両方の誘発に効果的であり得ることを示している。
4.実施例4
a)70%部分肝切除後の20ヶ月齢C57BL/6 マウスの肝臓に対する画分IV-1ペースト状懸濁液の効果
20ヶ月齢のオスのC57BL/6Jマウス(The Jackson Laboratory, Sacramento, CA)を使用する。全てのマウスを、特定病原体除去状態で12時間明るく12時間暗いサイクルで個々に収容し、全ての動物の取り扱い及び使用は、動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)が承認した標準ガイドラインに従う。7~8週間に亘って動物に60%の高脂肪食(Bio-Serv F3282)を与えて、食事後の体重及びALT レベルに応じてビヒクル処置グループ及び画分IV-1ペースト状懸濁液処置グループに無作為に分け、同一の平均体重及び血清ALT レベルをグループ間で確保した。手術を、軽微な変更を加えて前述したように行う(Nevzorova, Y., et al., Lab. Anim. 49, 81-88 (2015))。切除した肝臓の葉(左葉及び中葉)を術前対照として採取する一方、残りの肝臓の葉(尾状葉及び右葉)を手術の48時間後に採取した。手術の24時間後、EdU (生理食塩水中2.5mg/mLのストック)を体重の30mg/kg で腹腔内に注射した。手術の46時間後、BrdU(生理食塩水中10 mg/mLのストック)を体重の30mg/kg で腹腔内に注射した。手術の48時間後、全ての動物の体重を測定し、ALT 解析のために残りの肝臓(中葉及び尾状葉)及び血清を採取した。これらの実験の読出し情報に対する画分IV-1ペースト状懸濁液の影響をビヒクルと比較する。更に、これらの実験の読出し情報に対する画分IV-1ペースト状懸濁液の影響を他の血漿画分と比較する。

Claims (12)

  1. 肝障害と診断された対象を処置する方法であって、
    前記対象に有効量の血漿画分を投与する方法。
  2. 前記血漿画分は、血漿タンパク質画分である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記血漿タンパク質画分は、83%~95%の間のアルブミンを含む、請求項2に記載の方法。
  4. パルス投与計画を使用して投与を行う、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
  5. 前記肝障害は急性肝不全である、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
  6. 前記肝障害は慢性肝不全である、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
  7. 前記肝障害は、急性増悪する肝不全である、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
  8. 対象の肝臓切除手術からの回復を向上させる方法であって、
    前記対象に有効量の血漿画分を投与する、方法。
  9. 投与する工程を術後に行う、請求項8に記載の方法。
  10. 対象の肝移植手術からの回復を向上させる方法であって、
    前記対象に有効量の血漿画分を投与する、方法。
  11. 投与する工程を術後に行う、請求項10に記載の方法。
  12. 前記血漿画分は、画分IV-1ペーストから構成されている、請求項1に記載の方法。
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