JP2023182440A - 二酸化炭素排出低減セメント、セメント組成物、およびセメント質硬化体 - Google Patents

二酸化炭素排出低減セメント、セメント組成物、およびセメント質硬化体 Download PDF

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Yoshifumi Ogi
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Abstract

【課題】本発明は、セメントの製造時において、二酸化炭素の排出量がより少ないセメント等を提供する。
【解決手段】本発明は、下記(a)~(c)を含む焼成物、並びに、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、フライアッシュ、生コンクリートスラッジ、および廃コンクリート微粉末から選ばれる1種以上の混合材を含む、二酸化炭素排出低減セメントである。
(a)2CaO・SiO 100質量部に対し、3CaO・Alを0~15質量部
(b)2CaO・SiO 100質量部に対し、2CaO・Al・SiOおよび4CaO・Al・Feを合計で10~100質量部
(c)2CaO・Al・SiO 100質量部に対し、4CaO・Al・Feを0~210質量部
【選択図】なし

Description

本発明は、セメントの製造時において、二酸化炭素の排出量の少ないセメント(以下「二酸化炭素排出低減セメント」という。)等に関する。なお、前記セメント質硬化体とは、モルタルおよびコンクリートを含む概念である。
地球温暖化の抑制のため、地球温暖化の主な原因物質である二酸化炭素の排出量を低減する方法が種々提案されている。その一つに、コンクリート等のセメント質硬化体の製造過程で生成するセメント水和物と、二酸化炭素の反応を利用して、該混錬物や硬化体等に二酸化炭素を吸収させる方法がある。
例えば、特許文献1では、粉体成分として、γ-CS(2CaO・SiO)、および製鋼スラグ粉末の1種以上と、ポルトランドセメントを含み、γ-CS粉末、および製鋼スラグ粉末が合計で25~95質量%、および水セメント比が80~250%であるコンクリート混練物が提案されている。
また、特許文献2では、(A)ムライトとアノーサイトのいずれか一方または両方を含むセメント混合用粉末とポルトランドセメントを含む粉末状セメント組成物、(B)水、および、(C)骨材、を含むセメント混練物の硬化体を、炭酸化してなるセメント質硬化体が提案されている。
さらに、特許文献3では、(A)CS(2CaO・SiO)100質量部に対し、CAS(2CaO・Al・SiO)を10~200質量部含有し、かつ、CA(3CaO・Al)が20質量部以下である焼成物の粉砕物と、ポルトランドセメントを含む粉末状セメント組成物と、(B)水と、(C)骨材、の各材料を含むセメント混練物の硬化体を、炭酸化してなるセメント質硬化体が提案されている。
そして、前記セメント質硬化体はいずれも、養生過程において多量の二酸化炭素を吸収するため、二酸化炭素の総排出量を低減できる。ここで、二酸化炭素の総排出量とは、セメントの製造過程で排出される二酸化炭素量から、セメント質硬化体の養生過程等で吸収される二酸化炭素量を引いた二酸化炭素量をいう。
特開2011-168436号公報 特開2016-153357号公報 特開2016-47788号公報 特願2021-207628号
本発明者は、前記セメント質硬化体で得られた知見をさらに発展させた発明として、材齢初期(材齢1日)のセメント質硬化体の水和を速めることにより、生成した水和物に、より多くの二酸化炭素を吸収させて、二酸化炭素の総排出量を低減できる水硬性組成物等を出願しているが(特許文献4)、地球温暖化のさらなる抑制のため、本発明は、セメントの製造時において、二酸化炭素の排出量がより少ない二酸化炭素排出低減セメント等を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、2CaO・Al・SiO2、4CaO・Al・Fe、および長期に水和反応が持続する2CaO・SiO、並びに、高炉スラグ等の混合材を含むセメントは、前記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の構成からなる二酸化炭素排出低減セメント等である。
[1]下記(a)~(c)を含む焼成物、並びに、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、フライアッシュ、生コンクリートスラッジ、および廃コンクリート微粉末から選ばれる1種以上の混合材を含む、二酸化炭素排出低減セメント。
(a)2CaO・SiO 100質量部に対し、3CaO・Alを0~15質量部
(b)2CaO・SiO 100質量部に対し、2CaO・Al・SiOおよび4CaO・Al・Feを合計で10~100質量部
(c)2CaO・Al・SiO 100質量部に対し、4CaO・Al・Feを0~210質量部
[2]前記混合材のブレーン比表面積が2000~10000cm/gである、前記[1]に記載の二酸化炭素排出低減セメント。
[3]前記二酸化炭素排出低減セメント100質量部に対し、高炉スラグ微粉末を10~95質量部、石灰石微粉末を0~30質量部、フライアッシュを0~25質量部含む、前記[1]または[2]に記載の二酸化炭素排出低減セメント。
[4]ポルトランドセメントまたはポルトランドセメントクリンカ100質量部に対し、前記[1]~[3]のいずれかに記載の二酸化炭素排出低減セメントを65~300質量部含む、セメント組成物。
[5]前記[4]に記載のセメント組成物100質量部に対し、水を25~70質量部、および骨材を含む、セメント質硬化体。
[6]前記骨材が、クリンカ骨材、並びに、再生骨材、廃コンクリート、高炉スラグ、および製鋼スラグから選ばれる1種以上に二酸化炭素を固定した骨材である、前記[5]に記載のセメント質硬化体。
[7]前記セメント質硬化体が、炭酸化養生したセメント質硬化体である、前記[5]または[6]に記載のセメント質硬化体。
[8]前記セメント質硬化体が、セメント質硬化体1mあたり80~200kgの二酸化炭素を固定したセメント質硬化体である、前記[7]に記載のセメント質硬化体。
本発明の二酸化炭素排出低減セメントは、セメントの製造時において、二酸化炭素の排出量がより少なく、また、二酸化炭素の総排出量を低減することができる。
モルタル供試体およびコンクリート供試体の切断位置を示す図である。 モルタル供試体およびコンクリート供試体の中性化深さの測定位置を示す図である。
本発明は、前記のとおり、前記(a)~(c)を含む焼成物、並びに、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、フライアッシュ、生コンクリートスラッジ、および廃コンクリート微粉末から選ばれる1種以上の混合材を含む、二酸化炭素排出低減セメント等である。
なお、これ以降は、記載を簡略にするため、2CaO・SiOはCS、3CaO・AlはCA、2CaO・Al・SiOはCAS、および4CaO・Al・FeはCAFと略記する。
以下、本発明を、二酸化炭素排出低減セメント、セメント組成物、セメント質硬化体、および焼成物の製造方法に分けて説明する。
1.二酸化炭素排出低減セメント
本発明の二酸化炭素排出低減セメントは、下記(a)~(c)を含む焼成物、並びに、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、フライアッシュ、生コンクリートスラッジ、および廃コンクリート微粉末から選ばれる1種以上の混合材を含む、二酸化炭素排出低減セメントである。
(a)CS100質量部に対し、CAが0~15質量部である。
Aの含有割合が15質量部を超える焼成物の製造は困難であるとともに、モルタルやコンクリートにした際に流動性が低下する。なお、CAの含有割合は、CS100質量部に対し、好ましくは0~10質量部、より好ましくは0~5質量部である。
(b)CS100質量部に対し、CASおよびCAFが合計で10~100質量部である。
ASおよびCAFの合計の含有割合が、CS100質量部に対し、10質量部未満では、水和反応が遅いCSが多くなって炭酸化が進まないため、材齢初期において二酸化炭素の吸収量が少なく、100質量部を超えると、CSの割合が減少するため、長期において二酸化炭素の吸収量が少なくなる。なお、CASおよびCAFの合計の含有割合は、CS100質量部に対し、好ましくは20~90質量部、より好ましくは30~80質量部である。
(c)CAS100質量部に対し、CAFが0~210質量部である。
AFの含有率がCAS100質量部に対し、210質量部を超えると初期の水和活性が低下する。なお、本発明の焼成物中のCAFの含有率は、CAS100質量部に対し、より好ましくは0~120質量部、さらに好ましくは10~100質量部である。
なお、焼成物の鉱物組成(CS、CA、CAS、およびCAF等の含有割合)は、各鉱物の理論プロファイルを、本発明のクリンカ粉末の粉末X線回折チャート(実測プロファイル)にフィッティングしてリートベルト解析により定量でき、この定量には市販の解析ソフトが使用できる。また、顕微鏡観察や電子線後方散乱回折を用いたポイントカウンティングなどによっても定量できる。
次に、本発明で用いる高炉スラグ微粉末等の混合材について、以下に説明する。
(i)高炉スラグ微粉末
本発明で用いる高炉スラグ微粉末は、高炉で銑鉄を製造する際に副生する溶融状態のスラグを、水で急冷および破砕して得られる水砕スラグの粉砕物等が挙げられる。
また、高炉スラグ微粉末の塩基度は、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.75以上、さらに好ましくは1.8以上である。前記塩基度が1.7以上であれば、強度発現性がより向上する。
なお、塩基度は下記(A)式により算出する。
塩基度=(CaO+MgO+Al)/SiO ・・・(A)
ただし、式中の化学式は、高炉スラグ微粉末中の、該化学式が表す化合物の含有率(質量%)を表す。
前記高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積は、好ましくは2500~7000cm/g、より好ましくは3500~6000cm/g、さらに好ましくは4000~5000cm/gである。前記ブレーン比表面積が2500cm/g以上であれば、モルタルやコンクリートの強度発現性がより向上し、7000cm/g以下であれば、モルタルやコンクリートの流動性および作業性はより向上する。
(ii)石灰石微粉末
本発明で用いる石灰石微粉末中の炭酸カルシウムの含有率は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。該含有率が90質量%以上であれば、強度発現性がより向上する。
また、石灰石微粉末の製造方法は、特に制限されず、例えば、天然の石灰石を粉砕して作製した微粉末、大気中に排出されるボイラー排ガス中の二酸化炭素と高アルカリ廃水を反応させて作製した微粉末、生コンスラッジやコンクリートの粉末を炭酸化した微粉末を用いることができる。ただし、セメント製造時の二酸化炭素の排出量の低減の観点からは、好ましくは、ボイラー排ガス中の二酸化炭素と高アルカリ廃水を反応させて作製した微粉末や、生コンスラッジやコンクリートの粉末を炭酸化した微粉末である。これらの微粉末は、排ガスや大気中に存在する二酸化炭素を固定したものであり、カーボンネガティブ(製造時の二酸化炭素の排出量よりも吸収した二酸化炭素の量が多い状態)な材料であるため、混合材として使用することにより、セメント製造時の二酸化炭素の排出量を低減できる。
前記石灰石微粉末のブレーン比表面積は、好ましくは2500~25000cm/g、より好ましくは3000~20000cm/g、さらに好ましくは4000~15000cm/g、さらに好ましくは4200~10000cm/g、特に好ましくは4500~9500cm/gである。前記ブレーン比表面積が2500cm/g以上であれば、モルタルやコンクリートの強度発現性がより向上し、25000cm/g以下であれば、モルタルやコンクリートの流動性および作業性がより向上する。
(iii)フライアッシュ
本発明で用いるフライアッシュは、原粉である石炭灰、JIS A 6201に規定するフライアッシュI種、II種、III種、IV種、およびこれらの粉砕物から選ばれる1種以上が挙げられる。前記フライアッシュのブレーン比表面積は、好ましくは2000~12000cm/g、より好ましくは2500~8000cm/g、さらに好ましくは3000~6000cm/g、特に好ましくは3500~5500cm/gである。該値が2000cm/g未満では、モルタルやコンクリートの強度が低下するおそれがあり、12000cm/gを超えるとセメントがコスト高になる。
また、前記フライアッシュのガラス化率は、好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下である。なお、フライアッシュのガラス化率、およびフライアッシュの鉱物の構成相当量(鉱物組成) は、リートベルト法(XRD)、偏光顕微鏡を用いた顕微鏡法、およびXRD内部標準法等を用いて求めることができる。
(v)生コンクリートスラッジ
本発明で用いる生コンクリートスラッジは、生コンクリート工場やコンクリート製品工場において、コンクリートの製造工程で発生するスラッジを、適当な目開きのふるいを用いてふるい分けすることにより、セメント水和物やセメント未水和物を含む微粉として採取したものである。生コンクリートスラッジに含まれるセメント水和物やセメント未水和物は、二酸化炭素中や、炭酸カルシウムの製造時におけるスラリー中において、炭酸化が容易であり、またCaOの含有率は30質量%以上であるため、二酸化炭素の吸収量は多い。
(vi)廃コンクリート微粉末
本発明で用いる廃コンクリート微粉末は、コンクリート構造物を解体する際に発生するコンクリート廃棄物を破砕した後、該破砕物から骨材を除去した、セメント水和物やセメント未水和物を含む微粉末である。
廃コンクリート微粉末のその他の性状は前記生コンクリートスラッジと同じであるため、廃コンクリート微粉末は炭酸化が容易で、また、CaOの含有量は15%以上であるため二酸化炭素の吸収量は多い。
なお、前記混合材全体のブレーン比表面積は、好ましくは2000~10000cm/g、より好ましくは2500~8000cm/g、さらに好ましくは3000~6000cm/gである。該ブレーン比表面積が該範囲にあれば、モルタルやコンクリートの流動性や強度発現性に優れる。
また、本発明の二酸化炭素排出低減セメントは、好ましくは、前記二酸化炭素排出低減セメント100質量部に対し、高炉スラグ微粉末を10~95質量部、石灰石微粉末を0~30質量部、フライアッシュを0~25質量部含む含むセメントである。前記各成分の含有率が前記範囲にあれば、モルタルやコンクリートの流動性や強度発現性に優れる。
また、本発明の二酸化炭素排出低減セメントは、石膏をSO3換算で0~6.0質量%含んでもよい。石膏の含有率が6.0質量%を超えると、二酸化炭素排出低減セメントを用いたセメント質硬化体の強度が低下する場合がある。なお、石膏の含有率は、好ましくはSO3換算で1.0~3.0質量%である。
また、前記石膏は、特に制限されず、二水石膏、α型半水石膏、β型半水石膏、および無水石膏等から選ばれる1種以上が挙げられる。
そして、焼成物と石膏の混合方法は、特に制限されず、焼成物と石膏を同時に粉砕する方法や、焼成物を粉砕した後、該粉砕物と石膏を混合する方法等が挙げられる。
2.セメント組成物
本発明のセメント組成物は、ポルトランドセメントまたはポルトランドセメントクリンカ100質量部に対し、前記二酸化炭素排出低減セメントを65~300質量部含む。前記二酸化炭素排出低減セメントの含有割合が65質量部未満では、材齢初期において二酸化炭素の吸収量が少なく、300質量部を超えると前記二酸化炭素排出低減セメントを用いたセメント質硬化体の強度が低下する場合がある。
前記ポルトランドセメントまたはポルトランドセメントクリンカは、普通、早強、中庸熱、および低熱等の各種ポルトランドセメント、および、これらのセメントクリンカが挙げられる。なお、前記セメント組成物は、要求される強度発現性、耐久性、および作業性等の特性に応じて、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、シリカ粉末、および石灰石粉末等の混和材を1種類以上含んでもよい。
また、前記ポルトランドセメントまたはポルトランドセメントクリンカと二酸化炭素排出低減セメントの混合方法は、特に制限されず、ポルトランドセメントまたはポルトランドセメントクリンカと二酸化炭素排出低減セメントを同時に粉砕する方法や、ポルトランドセメントまたはポルトランドセメントクリンカを粉砕した後、該ポルトランドセメントまたはポルトランドセメントクリンカの粉砕物と二酸化炭素排出低減セメントを混合する方法等が挙げられる。
3.セメント質硬化体
本発明のセメント質硬化体は、前記セメント組成物100質量部に対し、水を25~70質量部、および骨材を含む。
前記骨材は、通常用いられる、石灰石骨材、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、スラグ、軽量細骨材等、またはこれらの混合物のほかに、クリンカ骨材、並びに、再生骨材、廃コンクリート、高炉スラグ、および製鋼スラグから選ばれる1種以上に二酸化炭素を固定した骨材(CCU骨材)が挙げられる。
また、セメント質硬化体が粗骨材を含む場合、細骨材率(s/a)は、好ましくは5~70%、より好ましくは10~60%である。細骨材率が前記範囲内であれば、モルタルやコンクリートのワーカビリティや成形のし易さが向上する。
さらに、セメント質硬化体中の前記骨材の含有割合(細骨材と粗骨材を併用する場合はその合計量)は、セメント組成物100質量部に対し、好ましくは200~750質量部、より好ましくは200~650質量部である。該含有割合が前記範囲内であれば、炭酸化養生したセメント質硬化体の強度が高くなり、また、該硬化体の収縮率は低くなる。
次に、前記クリンカ骨材、およびCCU骨材について説明する。
(i)クリンカ骨材
前記クリンカ骨材は、CSおよびCASを含む骨材であって、CS100質量部に対するCASの含有割合は5~100質量部であり、かつ、CAを含まないか、またはCAをCS100質量部に対し20質量部以下含む骨材である。前記含有割合が5質量部以上では、骨材の焼成温度が高い場合でも、フリーライム(未反応のCaO)が増加しにくく、焼成が容易になり、また、二酸化炭素の吸収量はより多くなる。また、前記含有割合が100質量部以下では、クリンカ骨材を製造する際に、高温下で発生する融液の量が減少するため、焼成が可能な温度範囲が広くなる。また、相対的にCSの量が多くなるため、セメント質硬化体の脱型工程において、脱型時のセメント質硬化体の強度が高くなる。
なお、CS100質量部に対するCASの含有割合は、好ましくは6~75質量部、より好ましくは7~50質量部、さらに好ましくは8~40質量部、特に好ましくは12~30質量部である。
前記クリンカ骨材は、水硬性組成物の流動性向上等の観点から、好ましくはCA(アルミネート相)を含まないか、またはCS100質量部に対しCAを20質量部以下含む骨材である。前記含有割合が20質量部を超えると、モルタルやコンクリートの流動性が低下するおそれがある。なお、クリンカ骨材がCAを含む場合、CS100質量部に対するCAの量は、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。
前記クリンカ骨材中のCSの含有率は、炭酸化養生したセメント質硬化体の強度をより高くする観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
また、前記クリンカ骨材中のCASの含有率は、好ましくは5~25質量%、より好ましくは6~20質量%、さらに好ましくは7~15質量%である。前記含有率が5質量%以上では、骨材中のフリーライムが増加しにくくなり、また、二酸化炭素の吸収量がより多くなる。また、前記含有率が25質量%以下では、炭酸化養生したセメント質硬化体の強度がより高くなる。
なお、クリンカ骨材の鉱物組成(CS、CAS、CAの各割合:質量%)は、クリンカ粉末の鉱物組成と同様の方法で求めることができる。
前記クリンカ骨材中のフリーライムの含有率は、骨材の膨張劣化防止の観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.2~1.5質量%である。
また、クリンカ骨材中の鉱物は、前記CS等の他に、CAF、12CaO・7Al(C12)、ムライト、アノーサイト、非晶質相、SiO、クリストバライト、ランキナイト、およびウォラストナイト等から選ばれる1種以上が挙げられる。
クリンカ骨材中の、CS、CAS、およびCA以外の含有物の合計の割合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
前記クリンカ骨材の製造方法は、例えば、産業廃棄物、一般廃棄物、および建設発生土から選ばれる1種以上を含む焼成用骨材材料を、1250~1500℃で焼成して焼成物を得る焼成工程と、焼成物を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、粉砕物を分級してクリンカ骨材を得る分級工程を含む方法等が挙げられる。
前記焼成用骨材材料、該材料の焼成温度、および焼成方法は、一般のセメントの製造に用いる焼成用クリンカ材料、該材料の焼成温度、および焼成方法と同じである。
また、分級工程において、篩等の一般的な分級方法を用いて、粉砕物の粒径を調整することにより、クリンカ骨材を、所望の粒度分布を有する粗骨材または細骨材として得ることもできる。
なお、通常のセメントクリンカの焼成工程で得られるクリンカを、前記焼成物の焼成工程で粉砕する焼成物として用いてもよい。
前記クリンカ骨材は、細骨材または粗骨材のいずれにも用いることができるが、より多く二酸化炭素を固定する観点から、好ましくは細骨材に用いるとよい。
また、細骨材が、クリンカ骨材と、クリンカ骨材以外の骨材の両方を含む場合、細骨材全量中のクリンカ骨材の含有率は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。前記含有率が40質量%以上で、より多くの二酸化炭素を固定できる。
(ii)CCU骨材
CCU骨材は、前記のとおり、再生骨材、廃コンクリート、高炉スラグ、および製鋼スラグから選ばれる1種以上に、排出ガスや大気中に存在する二酸化炭素を固定した骨材であり、二酸化炭素の低減の観点からは、最も好ましい骨材である。
ここで、CCU骨材の製造にあたり、骨材への二酸化炭素の固定方法は、80~120℃の温水または蒸気と二酸化炭素の存在下で、骨材に二酸化炭素を固定する方法などがあるが、特にこの方法に限定されない。
製鋼スラグは、遊離CaOを含むため、膨張性を有しており、そのままモルタルやコンクリートに用いた場合、ポップアウトなどの劣化現象が生じる可能性がある。しかし、製鋼スラグに二酸化炭素を固定させると、遊離CaOが炭酸カルシウムになるため、非膨張性となり、モルタルやコンクリートの骨材として好適に使用できる。
そして、前記CCU骨材は、排ガスや大気中に存在する二酸化炭素を固定したものであり、カーボンネガティブ(製造時の二酸化炭素の排出量よりも吸収した二酸化炭素の量が多い状態)な材料であるため、骨材として使用することにより、モルタルやコンクリートの製造時の二酸化炭素の排出量を低減できる。
また、前記CCU骨材は、細骨材または粗骨材のいずれにも用いることができるが、より多く二酸化炭素を固定できるから、好ましくは細骨材に用いるとよい。
また、細骨材が、CCU骨材と、CCU骨材以外の骨材の両方を含む場合、細骨材全量中のCCU骨材の含有率は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。前記含有率が40質量%以上で、より多くの二酸化炭素を固定できる。
(iii)その他の材料
また、前記セメント質硬化体は、本発明の目的を阻害しない範囲内で、目的に応じて、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、収縮低減剤、シリカフューム、およびメタカオリン等の各種混和材や、有機繊維、およびガラス繊維等を配合してもよい。
本発明のセメント質硬化体に配合するその他の材料である前記シリカフュームのBET比表面積は、好ましくは12~25m/gである。BET比表面積が前記範囲を外れるシリカフュームは入手が困難である。なお、前記BET比表面積は、より好ましくは13~20m/gである。また、前記シリカフュームの中でも、特に好ましくは粒体シリカフュームおよび凝集シリカフュームから選ばれる1種以上である。ここで粒体シリカフュームとは、JIS A 6207に記載されているシリカフュームをいう。本発明で用いる粒体シリカフュームの嵩密度は、好ましくは0.4~0.8g/cmである。嵩密度がこの範囲を外れる粒体シリカフュームは入手が困難である。また、前記凝集シリカフュームは、例えば、レーザー回折・散乱型粒度分布測定装置で測定した、粒径が1μm以上の粒子の含有率が20質量%以上のシリカフュームである。
(iv)セメント質硬化体の炭酸化養生
本発明のセメント質硬化体は、炭酸化養生を行えば、二酸化炭素を固定して組織が緻密化し、強度が向上する。前記炭酸化養生したセメント質硬化体中の二酸化炭素の固定量は、強度の向上の観点から、好ましくはセメント質硬化体1mあたり80~200kgである。
また、前記炭酸化養生方法は、セメント質硬化体を、二酸化炭素に晒して炭酸化養生する方法のほかに、二酸化炭素をより多く吸収する観点から、モルタルまたはコンクリート等の混錬時に、該混錬物中に二酸化炭素を吹き込む方法が挙げられる。なお、セメント質硬化体の炭酸化は、コンクリート製品、コンクリート構造物、またはコンクリート舗装等の形態で、長期間にわたり二酸化炭素を吸収して自然に炭酸化を行う態様もある。
また、炭酸化養生工程における二酸化炭素ガスの濃度は、好ましくは1体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上、特に好ましくは60体積%以上である。該濃度が1体積%以上であれば、炭酸化養生工程における二酸化炭素の吸収をより多くできる。
二酸化炭素の濃度が高いほど、二酸化炭素の吸収量が多くなるが、養生設備費等を低減する等の観点から、二酸化炭素ガスの濃度は、好ましくは90体積%以下、より好ましくは85体積%以下、さらに好ましくは80体積%以下である。
また、前記炭酸化養生工程における温度は、好ましくは5~100℃、より好ましくは10~70℃、さらに好ましくは15~50℃、特に好ましくは20~35℃である。前記温度が5℃以上で、炭酸化の効率やセメント質硬化体の強度がより高くなり、100℃を超えると、炭酸化養生にかかるエネルギーコストが過大になる。
また、前記炭酸化養生工程における相対湿度は、好ましくは20~90%、より好ましくは30~80%、特に好ましくは40~70%である。前記相対湿度が20%以上で、炭酸化の効率やセメント質硬化体の強度がより高くなり、90%を超えると設備等にかかるコストが過大になる。
4.焼成物の製造方法
本発明に用いる焼成物は、産業廃棄物、一般廃棄物、および建設発生土から選ばれる1種以上を原料として、1000~1350℃で焼成して製造することができる。
該製造方法は、必須の工程として(a)原料調合工程、(b)焼成・冷却工程、および、任意の工程として(c)粉砕工程を含む。ここで、粉砕工程を任意の工程としたのは、二酸化炭素排出低減セメントの製造において、前記焼成物と石灰石微粉末等の混合材を混合して粉砕(同時粉砕)する場合は、焼成物の製造において粉砕工程は不要になるからである。
以下に、(a)原料調合工程、(b)焼成・冷却工程、および(c)粉砕工程について説明する。
(a)原料調合工程
該工程では、原料として、産業廃棄物、一般廃棄物、および建設発生土から選ばれる1種以上の廃棄物を用いて、前記焼成物の鉱物組成の範囲になるように調合する。前記廃棄物を原料として使用することは、廃棄物の有効利用の観点から好ましい。
そして、前記産業廃棄物は、石炭灰、生コンクリートスラッジ、コンクリート廃材、浄水汚泥、建設汚泥、製鉄汚泥、建設廃材、鋳物砂、ロックウール、廃ガラス、高炉二次灰、およびボーリング廃土等が挙げられる。また、前記一般廃棄物は、下水汚泥、都市ごみ焼却灰、下水汚泥乾粉、貝殻、および下水汚泥焼却灰等が挙げられる。さらに、前記建設発生土は、建設現場や工事現場等から発生する土壌、残土、および廃土壌等が挙げられる。
また、前記廃棄物だけでは、前記焼成物の鉱物組成が前記範囲内になるように調合することが難しい場合は、カルシウム原料、ケイ素原料、アルミニウム原料、および鉄原料等の天然原料で補ってもよい。ここで、カルシウム原料は、石灰石、生石灰、消石灰、および製鋼スラグ等が挙げられ、ケイ素原料は、珪石および粘土等が挙げられ、アルミニウム原料は、粘土等が挙げられ、鉄原料は、鉄滓および鉄ケーキ等が挙げられる。
また、前記原料の粒度を調整する必要がある場合は、ボールミル等の粉砕機で所定の粒度になるまで粉砕して調整する。また、前記原料は、焼成を容易にするため造粒してもよい。この造粒方法は、転動造粒法、押出し造粒法、および圧縮造粒法等が挙げられる。
(b)焼成・冷却工程
前記調合原料をロータリーキルン等の焼成炉で焼成した後、クーラーで冷却して焼成物が得られる。
ここで、焼成物の焼成温度は、1000~1450℃である。焼成温度が1000℃未満では、焼成物中のフリーライムを減らすことが難しく、1450℃を超えると原料が溶融して焼成物が減少するおそれがある。なお、前記焼成温度は、好ましくは1150~1350℃、より好ましくは1200~1350℃である。
また、前記焼成時間は、好ましくは30~150分である。該時間が30分未満では焼成が十分でなく、150分を超えると生産性が低下する。なお、前記焼成時間は、より好ましくは40~120分である。
また、焼成炉は、特に制限されないが、連続生産が可能で製造効率が高いことから、好ましくはロータリーキルンである。
また、焼成用の燃料は重油のほかに、石炭、廃油、廃タイヤ、および廃プラスチック等の燃料代替廃棄物も使用できる。
なお、焼成物の鉱物組成(CS、CAS、CAF、CAの各割合:質量%)は、焼成物の原料中または焼成物中のCaO、SiO、Al、Feの各含有割合(質量%)から、以下の式を用いて算出することができる。
S=1.02×CaO+0.95×SiO-1.69×Al-0.36×Fe
AS=-1.63×CaO+3.04×SiO+2.69×Al+0.57×Fe
AF=3.04×Fe
A=1.61×CaO-3.00×SiO-2.26×Fe(ただし、CAがマイナスになる場合は、CAは「0」とみなす。)
(c)粉砕工程
粉砕方法は、特に制限されず、例えば、ボールミルやロッドミル等の粉砕機を用いて粉砕するとよい。
また、粉砕物のブレーン比表面積は、水和反応の促進、二酸化炭素の吸収量の増大、およびセメント質硬化体の強度発現性の向上のため、好ましくは2500~5000cm/g、より好ましくは3000~4500cm/gである。
また、前記粉砕の効率を高めるために、好ましくは粉砕助剤を添加して粉砕するとよい。該粉砕助剤は、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、およびトリイソプロパノールアミン等が挙げられる。これらの粉砕助剤の添加割合は、焼成物100質量部に対し、好ましくは0.01~1質量部である。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.CAS含有焼成物の製造
下水汚泥、建設発生土、石灰石、および粘土を原料に用いて、表1に示す化学組成に従い調合した後、ロータリーキルンで表1に示す温度で焼成して、表2に示すCAS含有焼成物を得た。なお、焼成燃料は重油のほかに、廃油や廃プラスチックを使用した。
また、表2に示すCAS含有焼成物の鉱物組成は次の方法で算出した。すなわち、
(i)CAS含有焼成物を粉砕した後、D8 ADVANCE A-25型(ブルカージャパン社製)を用いて粉末X線回折(XRD)パターンを取得した。
(ii)前記粉末XRDの測定条件は、ターゲットCuKα、管球条件40kV- 40mA、走査範囲2θ=5~65°、ステップ幅0.023°/step、および測定時間0.13秒/stepである。
(iii)XRDパターンをDIFFRAC.EVA(ブルカージャパン社製)により定性分析したところ、CS(β-CS)、CAS、およびCAFのピークが認められた。そして、DIFFRAC.TOPAS ver.6(ブルカージャパン社製)により、リートベルト法によって、CS(β-CS)、CAS、およびCAFの各鉱物の理論プロファイルを、粉末XRDの結果から得らえた実測プロファイルにフィッティングすることにより各鉱物相の含有率を求めた。
Figure 2023182440000001
Figure 2023182440000002
2.CAS含有セメントの製造
前記CAS含有焼成物100質量部に対し、ニ水石膏をSO換算で2.0質量部添加した後、バッチ式ボールミルで前記焼成物と二水石膏を同時に粉砕して、ブレーン比表面積が3400±200cm/gのCAS含有セメントを製造した。
3.モルタル供試体の製造
表3に示すモルタルの配合に従い、表4に示す山砂(全量の半分の量)、(B)前記CAS含有セメント、高炉スラグ微粉末および表5に示す化学組成の普通ポルトランドセメント(本発明のセメント組成物に該当:実施例)、並びに、残りの半分の量の山砂の順に、20±3℃の室内において、容量が20リットルのホバートミキサに投入して30秒間空練りした。また、表4に示す山砂(全量の半分の量)、(C)前記CAS含有セメントおよび前記普通ポルトランドセメント(セメント、比較例)、並びに、残りの半分の量の山砂の順に、同様にして、20±3℃の室内において、容量が20リットルのホバートミキサに投入して30秒間空練りした。
次に、前記各材料を混練しながら、それぞれ混和剤を溶かした水を投入し、さらに60秒間混練してモルタルを書き落とした後、続けて60秒間混練して排出し、各フレッシュモルタル(ただし、1バッチの混練量は4リットルである。)を製造した。
Figure 2023182440000003
Figure 2023182440000004
Figure 2023182440000005
次に、前記フレッシュモルタルを用いて、JIS A 1132「コンクリートの強度試験用供試体の作り方」に準拠して打設後2日で脱型し、直径5cm、長さ10cmのモルタル供試体を製造した。モルタルの脱型性については後掲の表8に示す。
次に、該供試体を、二酸化炭素濃度80体積%、温度30℃、および相対湿度60%で炭酸化養生を、また温度20℃で水中養生を、表8に示す各材齢まで行った。ただし、表8に示す材齢は、養生を開始してからの日数である。
3.コンクリート供試体の製造
表6に示すコンクリートの配合に従い、表7に示す粗骨材、山砂(全量の半分の量)、前記普通ポルトランドセメント単独、または前記普通ポルトランドセメントと前記CAS含有セメントからなるセメント、および、残りの半分の量の山砂の順に、20±3℃、相対湿度80%以上の室内において、容量が55リットルのパン型ミキサ(太平洋機工社製)に投入して30秒間空練りした。
次に、前記各材料を混練しながら、混和剤を溶かした水を投入し、さらに60秒間混練してコンクリートを書き落とした後、続けて60秒間混練して排出し、フレッシュコンクリートを製造した。
Figure 2023182440000006
Figure 2023182440000007
次に、前記フレッシュコンクリートを用いて、スランプはJIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に準拠して、また、空気量はJIS A 1128「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法―空気室圧力方法」に準拠して測定した。これらの結果を後掲の表9に示す。
さらに、前記フレッシュコンクリートを用いて、JIS A 1132「コンクリートの強度試験用供試体の作り方」に準拠して打設後1日で脱型し、直径10cm、長さ20cmのコンクリート供試体を製造した。
次に、該供試体を、二酸化炭素濃度80体積%、温度30℃、および相対湿度60%で炭酸化養生を、また温度20℃で水中養生を、それぞれ表9に示す各材齢まで行った。ただし、養生日の起算点は、炭酸化養生ではコンクリートの脱型時、水中養生ではコンクリートの打設時である。
4.モルタル供試体およびコンクリート供試体の圧縮強度の測定
前記モルタル供試体は、JSCE-G 505「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法(案)」に準拠して、また、前記コンクリート供試体は、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して、それぞれ表8および表9に示す材齢において圧縮強度を測定した。これらの結果を、それぞれ表8および表9に示す。
表8に示すように、本発明の実施例は、本来、圧縮強度の低下を招く高炉スラグを含むのにも拘わらず、その圧縮強度は比較例と比べ同程度であった。
Figure 2023182440000008
Figure 2023182440000009
5.モルタル供試体およびコンクリート供試体の中性化深さの測定
モルタル供試体およびコンクリート供試体の中性化深さの測定は、いずれもJIS A 1152「コンクリートの中性化深さの測定方法」に準拠して行った。
具体的には、モルタル供試体およびコンクリート供試体は、3日、7日、14日、および28日の炭酸化養生期間が終了した後、切断機を用いて、図1に示すように、供試体の高さの中間の位置で切断し、該切断面をエアブローとハケを用いて清掃して測定面を調整した。次に、該測定面にフェノールフタレイン溶液を噴霧し、図1および図2に示すように、供試体の側面から赤紫色に呈色した部分までの8カ所の距離を0.5mmの単位でノギスを用いて測定して平均し、中性化深さを求めた。なお、材齢14日および材齢28日の供試体は、圧縮強度を測定した後の供試体を使用し、前記材齢で呈色部が確認された水準のみ測定した。これらの結果を表10および表11に示す。
Figure 2023182440000010
Figure 2023182440000011
6.二酸化炭素の固定量の測定
(1)試料の調製
(i)モルタルおよびコンクリート
前記炭酸化養生したモルタル供試体およびコンクリート供試体は、耐圧機により粗砕した後、さらにジョークラッシャーを用いて5mm以下に粉砕した。これを50g程度まで縮分した後、ディスク型振動ミルを用いて微粉砕したものを二酸化炭素の固定量の測定に用いた。
(ii)粗骨材および細骨材
粗骨材および細骨材はジョークラッシャーを用いて5mm以下に粉砕した。これを50g程度まで縮分した後、ディスク型振動ミルを用いて微粉砕したものを測定に供した。
(iii)セメント組成物およびセメント
そのままを試料として測定に供した。
(2)炭素の定量分析
下記の炭素計を用いて、モルタル、コンクリート、粗骨材、細骨材、セメント組成物、およびセメントに含まれる炭素量を求めた。その条件を以下に示す。
測定装置:炭素・硫黄分析装置 EMIA-Step(堀場製作所社製)
測定方法:酸素気流中燃焼-赤外線吸収方式であり、温度は1250℃で時間は120秒である。
加熱方法:管状電気抵抗加熱炉方式であり、脱水材は過塩素酸マグネシウムを用いた。
(3)二酸化炭素の固定量の算出
二酸化炭素の固定量は、下記(i)→(ii)→(iii)の流れに従い算出した。なお、予め養生前後の供試体の重量を測定した。

(i)炭酸化養生後の供試体に含まれる二酸化炭素量(養生後の二酸化炭素量)を下記(1)式により算出した。
Figure 2023182440000012

(ii)炭酸化養生前の供試体に含まれる二酸化炭素量(養生前の二酸化炭素量)を下記(2)式により算出した。
Figure 2023182440000013



(iii)前記(1)式および(2)式により算出した養生後の二酸化炭素量と養生前の二酸化炭素量の差を供試体が固定した二酸化炭素量とし、下記(3)式により算出した。
Figure 2023182440000014

なお、セメント組成物およびセメント1トンあたりの二酸化炭素の固定量(それぞれ、kg/t―B、およびkg/t―C)は下記(4)式により算出した。また、モルタルおよびコンクリート1mあたりの二酸化炭素の固定量(それぞれ、kg/m―M、およびkg/m―con.)は、供試体の二酸化炭素の固定量を、直径10cm、長さ20cmの供試体、および直径5cm、長さ20cm供試体の体積で除して求めた。
Figure 2023182440000015

これらの二酸化炭素の固定量は、上掲の表10および表11に示す。
表10に示すように、実施例と比較例の二酸化炭素の固定量に差はなかった。
7.二酸化炭素の排出抑制率の算出
二酸化炭素の排出抑制率は、次の式により計算した。

二酸化炭素の排出抑制率=[普通ポルトランドセメントの排出原単位(kg/t)-普通ポルトランドセメントの排出原単位(kg/t)×セメント組成物中の普通ポルトランドセメント質量分率-CAS含有セメントの排出原単位(kg/t)×セメント組成物中のCAS含有セメントの質量分率-高炉スラグ微粉末の排出原単位(kg/t)×セメント組成物中の高炉スラグ微粉末の質量分率+二酸化炭素の固定量(kg/t)]/普通ポルトランドセメントの排出原単位(kg/t)×100
なお、普通ポルトランドセメントの二酸化炭素の排出原単位は、セメント協会「セメントのLCIデータの概要」に記載された値(762.7kg/t)を用いた。

また、CAS含有セメントの二酸化炭素の排出原単位は次の(a)~(g)の手順で計算して、560.6kg/tとした。
(a)普通ポルトランドセメントを製造するために必要なエネルギーをJIS R 0303のクリンカ焼成用熱により計算した。
(b)普通ポルトランドセメントを製造するために必要なエネルギーに石炭を燃焼させたときの「排出係数」を乗じ、普通ポルトランドセメントを製造した場合に排出される化石エネルギー由来の二酸化炭素の排出量を計算した。
(c)セメント協会「セメントのLCIデータの概要」に示される化石エネルギー由来の二酸化炭素の排出量(283.6kg/t-セメント)を計算によって求めた二酸化炭素の排出量(前記(b)で算出した値)で除し、「キルン効率係数」として算出した。
(d)CAS含有セメントを製造するために必要なエネルギーをJIS R 0303のクリンカ焼成用熱により計算した。
(e)CAS含有セメントを製造した場合に排出される化石エネルギー由来の二酸化炭素の排出量を、必要なエネルギー(前記(d)で算出した値)に「排出係数」と「キルン効率係数」を乗じて算出した。
(f)CAS含有セメントの製造における各原料に含まれる二酸化炭素量および調合比率から、原料脱炭酸由来の二酸化炭素の排出量を計算した。
(g)CAS含有セメント製造における化石エネルギー由来の二酸化炭素の排出量(前記(e)で算出した値)と原料脱炭酸由来の二酸化炭素の排出量(前記(f)で算出した値)の和を算出し、CAS含有セメントの二酸化炭素の排出原単位を計算した。
なお、高炉スラグ微粉末の二酸化炭素の排出原単位は0kg/tとした。二酸化炭素の排出抑制率は、モルタルでは表12に、コンクリートでは表13に示す。
表12に示すように、本発明の実施例は、比較例と比べて二酸化炭素の排出抑制率が高い。
Figure 2023182440000016
Figure 2023182440000017

Claims (8)

  1. 下記(a)~(c)を含む焼成物、並びに、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、フライアッシュ、生コンクリートスラッジ、および廃コンクリート微粉末から選ばれる1種以上の混合材を含む、二酸化炭素排出低減セメント。
    (a)2CaO・SiO 100質量部に対し、3CaO・Alを0~15質量部
    (b)2CaO・SiO 100質量部に対し、2CaO・Al・SiOおよび4CaO・Al・Feを合計で10~100質量部
    (c)2CaO・Al・SiO 100質量部に対し、4CaO・Al・Feを0~210質量部
  2. 前記混合材のブレーン比表面積が2000~10000cm/gである、請求項1に記載の二酸化炭素排出低減セメント。
  3. 前記二酸化炭素排出低減セメント100質量部に対し、高炉スラグ微粉末を10~95質量部、石灰石微粉末を0~30質量部、フライアッシュを0~25質量部含む、請求項1または2に記載の二酸化炭素排出低減セメント。
  4. ポルトランドセメントまたはポルトランドセメントクリンカ100質量部に対し、請求項1~3のいずれか1項に記載の二酸化炭素排出低減セメントを65~300質量部含む、セメント組成物。
  5. 請求項4に記載のセメント組成物100質量部に対し、水を25~70質量部、および骨材を含む、セメント質硬化体。
  6. 前記骨材が、クリンカ骨材、並びに、再生骨材、廃コンクリート、高炉スラグ、および製鋼スラグから選ばれる1種以上に二酸化炭素を固定した骨材である、請求項5に記載のセメント質硬化体。
  7. 前記セメント質硬化体が、炭酸化養生したセメント質硬化体である、請求項5または6に記載のセメント質硬化体。
  8. 前記セメント質硬化体が、セメント質硬化体1mあたり80~200kgの二酸化炭素を固定したセメント質硬化体である、請求項7に記載のセメント質硬化体。

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