JP2023181426A - 細胞培養用基材 - Google Patents

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Tomomi Makino
史明 島
Fumiaki Shima
浩二 中澤
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Abstract

【課題】簡便に調製することができ、細胞培養も効率的に行なうことが可能な、細胞培養用基材、その製造方法、該基材を用いる細胞の培養方法、及び該基材を用いるスフェロイドの製造方法を提供すること。【解決手段】細胞接着性表面を有する層と、該層の表面に設けられた細胞非接着性物質の微細パターンを有し、前記細胞接着性表面が細胞培養面である、細胞培養用基材、及び細胞接着性表面を有する層に、細胞非接着性物質を印刷して微細パターンを形成する工程を含む、細胞培養用基材の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞培養用基材に関する。より詳しくは、本発明は、細胞培養用基材、その製造方法、該基材を用いる細胞の培養方法、及び該基材を用いるスフェロイドの製造方法に関する。
近年、様々な加工表面を有する基材で細胞培養を行なう技術が注目されている。
例えば、特許文献1には、疎水性の基材上で、特定構造の分岐ポリアルキレングリコール誘導体を含む感光性組成物を硬化させることで、親水性の架橋体が形成される一方で該基材上に疎水性領域が複数露出することになって、該疎水性領域にて均一な大きさのスフェロイドが得られることが記載されている。また、特許文献2では、感光性樹脂組成物の樹脂膜を基材に形成させる技術において、感光性基としてアジド基を有する水溶性高分子を含有する樹脂組成物を用いて、該アジド基を基材表面のアミノ基に結合させ、必要に応じて所望のパターンに露光するなどして基材が露出した部位のみに細胞が接着する培養基材を調製している。
特許文献3では、細胞培養床となり得る、円形、多角形または楕円形の小領域を、親水性かつ細胞非親和性ポリマーで処理された支持体表面に、プラズマ処理等を用いた微細パターン化によって基材表面を露出させて形成した培養基材が開示されている。
特開2009-278960号公報 特許第4373260号 特許第4336756号
しかしながら、細胞接着性表面の上に、細胞非接着性領域を形成して培養基材とする概念は従来なかった。
また、従来技術の方法においては、例えば、感光性組成物を用いる場合、その硬化に触媒を使用することになり、残存した触媒や反応が不完全な組成物が培養物に影響を及ぼす畏れがある。また、プラズマ処理を用いるパターニングは、装置準備やプラズマ処理後にポリマー層の除去が必要となるため、煩雑なものである。よって、更なる改良が望まれている。
本発明は、新規な細胞培養用基材を提供することを目的とする。
また、本発明は、簡便に調製することができ、細胞培養も効率的に行なうことが可能な、細胞培養用基材、その製造方法、該基材を用いる細胞の培養方法、及び該基材を用いるスフェロイドの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、感光性組成物やプラズマ発生装置などの特殊な装置を用いることなく、細胞培養面となるベースに細胞接着性の層を用い、かかる層の表面に細胞非接着性物質で微細パターンを形成することによって、新規な細胞培養用基材を提供できること、また、このような細胞培養用基材は、その組成や製法の選択等によっては、培養基材の調製が簡便になるだけでなく、得られる細胞やスフェロイドの均一性が向上しうること等を見出し、更なる検討を行って本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記〔1〕~〔16〕に関する。
〔1〕 細胞接着性表面を有する層と、該層の表面に設けられた細胞非接着性物質の微細パターンを有し、前記細胞接着性表面が細胞培養面である、細胞培養用基材。
〔2〕 細胞接着性表面を有する層が細胞接着性を示す物質で構成される、前記〔1〕記載の基材。
〔3〕 細胞接着性表面がポリイミド樹脂を含む、前記〔1〕又は〔2〕記載の基材。
〔4〕 細胞非接着性物質が、エチレングリコール、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ヒドロキシエチルメタクリレート及びそれらの誘導体、あるいは、それらの重合体[それらを少なくとも重合成分とする重合体(例えば、単独又は共重合体)]、ならびに、セグメント化ポリウレタン及びその誘導体;アルブミン、アガロース、ならびにセルロースから選ばれる、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の基材。
〔5〕 微細パターンが、複数の単位形状で構成されるパターン、又は、隣り合う単位形状間の間隙で構成されるパターンである、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の基材。
〔6〕 微細パターンが、メッシュ状、ドット状、ストライプ状、ハニカム状、及びこれらの逆パターンから選ばれる模様である、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の基材。
〔7〕 間隙の最短距離が1μm以上である、前記〔5〕又は〔6〕に記載の基材。
〔8〕 単位形状の平均円相当径が1000μm以下である、前記〔5〕~〔7〕のいずれかに記載の基材。
〔9〕 隣り合う単位形状に対応する真円間の中心間距離が1500μm以下である、前記〔5〕~〔8〕のいずれかに記載の基材。
〔10〕 微細パターンの厚みが10μm以下である、前記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の基材。
〔11〕 微細パターンが、マイクロコンタクトプリンティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ロールコーティング法、ダイコーティング法、グラビアコーティング法、スプレイコーティング法、バーコーティング法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、インクジェット法、及び、ベース材表面に形成された凹凸構造の間隙に生じる毛細管力によって所望の物質を間隙内に注入して形成するパターニング法からなる群より選択される方法により形成される、前記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の基材。
〔12〕 微細パターンが、基材表面中、5%以上を占める、前記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の基材。
〔13〕 1~1000μmの厚みを有する、前記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の基材。
〔14〕 細胞接着性表面を有する層に、細胞非接着性物質を印刷して微細パターンを形成する工程を含む、細胞培養用基材の製造方法。
〔15〕 前記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の基材を用いて細胞を培養する工程を含む、細胞の培養方法。
〔16〕 前記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の基材を用いて細胞を培養する工程を含む、スフェロイドの製造方法。
本発明では、新規な細胞培養用基材を提供しうる。
このような本発明の細胞培養用基材の一態様では、簡便に調製することができ、かつ、細胞培養の作業自体も効率的に行なうことが可能となる。
また、本発明の細胞培養用基材の別の態様では、予め脱泡処理を施すことなく細胞培養に使用することができる。
また、本発明の別の態様では、接着させて培養するにもかかわらず、培養した細胞を容易に回収できる細胞培養基材を提供しうる。
また、本発明の細胞培養用基材のさらに別の態様では、所望のサイズの細胞(スフェロイド)を効率よく製造しうる。
本発明の細胞培養用基材は、微細パターンにより細胞培養部位が区画分けされているため、この区画に応じた所望のサイズの細胞を効率よく得やすい。特に、パターンの形状(規則)を適宜選択することで、所望のサイズで、均一な(サイズないし粒径の揃った)細胞を効率よく得ることもできる。細胞のサイズを所望のものにできることで、不良なもの(例えば、大きくなりすぎたもの、スフェロイドの中心において酸素欠乏したもの等)の産生を抑えたり、細胞の種類に応じた機能の均一化(例えば、薬効を揃える等)等の点で有利である。
しかも、前記のように、脱泡処理を経ることなく細胞培養できたり、得られた細胞の回収を簡便に行うこともでき、総じて細胞培養を効率よく行うことができる。そのため、本発明の細胞培養基材によれば、本来、両立しがたい、効率よい細胞培養と、所望のサイズ(さらには均一なサイズ)の細胞の取得とを両立しうる。
また、本発明のさらに別の態様の細胞培養用基材を用いることで、所望のサイズや均一性の高い細胞やスフェロイドを安全に調製することができ、ひいては、細胞の品質管理が容易になるという優れた効果を奏することができる。
図1は、本発明の細胞培養用基材における微細パターンの一例の模式図を示した図である。 図2は、実施例1の細胞培養用基材における微細パターンの写真である。 図3は、実施例1の細胞培養用基材を用いてヒト脂肪由来幹細胞を培養した細胞形態(培養期間:8日)の写真である。 図4は、実施例1の細胞培養用基材を用いてヒト脂肪由来幹細胞を培養した細胞形態(培養期間:14日)の写真である。 図5は、実施例1の細胞培養用基材を用いてHCT116細胞(ヒト大腸菌癌細胞株)を培養した細胞形態(培養期間:7日)の写真である。 図6は、実施例1の細胞培養用基材を用いて初代ラット肝細胞を培養した細胞形態(培養期間:7日)の写真である。
本発明の細胞培養用基材は、細胞接着性表面を有する層と該層の表面に設けられた細胞非接着性物質の微細パターンを有し、該微細パターンが存在しない細胞接着性表面が細胞培養面となるものであり、該細胞培養面で細胞を接着して培養することができる。本発明の細胞培養用基材は、細胞接着性表面を有する層に、細胞非接着性物質の微細パターンのマスクを有するものであるとも言える。
本発明における微細パターンは、複数の単位形状で構成される場合と、隣り合う単位形状間の間隙に相当する形状で構成される場合を含み、細胞非接着性物質で形成されている。例えば、細胞非接着性物質の微細パターンが単位形状で構成される場合は、単位形状間の間隙となる部分に細胞接着性表面が露出する。細胞非接着性物質の微細パターンが隣り合う単位形状間の間隙に相当する形状で構成される場合は、単位形状となる部分に細胞接着性表面が露出する。また、図1に本発明の細胞培養用基材の一例を模式的に示すが(1が単位形状、2が間隙)、1が細胞非接着性物質の微細パターン、2が細胞接着性表面である態様と、1が細胞接着性表面、2が細胞非接着性物質の微細パターンである態様とが例示される。なお、ここでいう単位形状とは、単位パターン、単位型ともいう。
単位形状は、その形状に特に制限はなく、直線で構成されるもの、曲線で構成されるもの、面で構成されるもの、それらが組み合わさって構成されるものなどが含まれる。
具体的には、例えば、多角形、楕円形、円形、扇形などで構成されるものが挙げられ、これらは2種以上を組み合わせて一つの単位型を構成してもよい。多角形としては、六角形、五角形、四角形(例えば、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、台形を含む)、三角形、星型などが含まれ、円形としては円のほか、略円形も含まれる。前記単位形状は、微細パターンを形成することができれば複数の単位型が同じ大きさを有するものであっても、異なる大きさを有するものであってもよい。
例えば、領域(区画)を有する単位形状の場合、該単位形状の平均円相当径(最大直径)は、1000μm以下のものが挙げられ、900μm以下であっても、800μm以下であってもよい。下限は、細胞が培養できるのであれば細胞の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、30μmが挙げられる。また、隣り合う細胞同士の会合を防ぐ理由から、隣り合う単位形状に対応する真円間の中心間距離が、例えば、1500μm以下、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下であってもよい。
単位形状が線形である場合には、その幅は、隣接する細胞が産生する液性因子の相互作用を受けられるようにする理由から、10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましく、5mm以下が更に好ましい。下限は、細胞が培養できるのであれば細胞の種類に応じて適宜設定することができ、例えば、5μmが挙げられる。
また、隣り合う単位形状間の間隙は、細胞同士の相互作用の理由から、最短距離として1μm以上のものが挙げられ、5μm以上であっても、10μm以上であってもよい。上限は、細胞が培養できるのであれば細胞の種類に応じて適宜設定することができ、例えば、100mmが挙げられる。
微細パターンが形成する模様としては、例えば、円形が並んだドット状や多角形が点在する模様の他、ハニカム状、格子状(メッシュ状)、うろこ状、幾何学模様、ストライプ状、放射状、またはそれらの逆パターンから選ばれる形状などが例示される。前記パターンに連続性や対称性があっても、連続性や対称性のない任意の模様でもよい。
微細パターンの平均高さ(平均厚み)は、10000nm以下が好ましく、1000nm以下がより好ましく、500nm以下が更に好ましい。
微細パターンの平均高さ(平均厚み)の下限値は、微細パターンを形成できる限り、特に限定されないが、例えば、1nm、2nm、3nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm等であってもよい。
また、単位形状が細胞非接着性物質である場合と露出した細胞接着性表面である場合のいずれにおいても、微細パターンの平均高さと単位形状の平均円相当径の比(平均高さ/平均円相当径)は、0.5以下となるものが好ましく、0.1以下がより好ましく、0.01以下が更に好ましい。下限は、細胞が配列培養できるのであれば細胞の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、0.00001が挙げられる。
細胞培養用基材では、細胞接着性部位[露出した細胞接着性部位(細胞接着性表面のうち、微細パターンが形成されていない部位)]が、細胞培養部位(例えば、図1において、1が細胞非接着性物質の微細パターンである場合には2が細胞接着性部位であり、2が細胞非接着性物質の微細パターンである場合には1が細胞接着性部位)となる。
このような細胞接着性部位は、細胞接着性表面が微細パターンで区切(仕切)られた部分ということができる。
細胞接着性部位の最小幅[例えば、単位形状が細胞非接着である場合には隣接する単位形状の間隙の最小長さ(最短長さ)、単位形状が細胞接着性である場合には単位形状の最小径(最短径)]は、培養する細胞の大きさや得ようとする細胞(スフェロイド)の大きさに応じて選択できるが、例えば、10μm以上(例えば、15μm以上)、好ましくは20μm以上(例えば、30μm以上)、さらに好ましくは50μm以上(例えば、80μm以上)等であってもよく、100μm以上等であってもよい。
細胞接着性部位の最小幅は、例えば、2000μm以下、1500μm以下、1200μm以下、1000μm以下、900μm以下、800μm以下、700μm以下等であってもよい。
基材表面における細胞非接着性物質の微細パターンの占める割合は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上である。基材表面における細胞非接着性物質の微細パターンの占める割合の上限値は、特に限定されないが、例えば、95%、90%、80%、70%等であってもよい。
微細パターンは、その表面が細胞非接着性の表面となればよく、例えば、細胞非接着性物質が微細パターン表面に物理的又は化学的に固定されて形成されたものでもよく、微細パターンそのものが細胞非接着性物質からなるものであってもよい。微細パターンの形成方法は特に限定されないが、例えば、感光性の樹脂組成物を硬化して形成したり、プラズマ処理等によって所望のパターンに露光して形成することもできるが、硬化に用いる触媒が残存して細胞に影響を及ぼしたり、プラズマ処理を施す場合にはプラズマ発生装置が必要である他、プラズマ処理によって形成されたパターンは経時的に変化して不安定であったり、除去しきれなかったポリマーが細胞に影響を及ぼしたりすることから、また、脱泡処理が簡便あるいは不要となる観点から、次の方法が好ましい。具体的には、例えば、マイクロコンタクトプリント法、スピンコーティング法、キャスティング法、ロールコーティング法、ダイコーティング法、グラビアコーティング法、スプレイコーティング法、バーコーティング法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ナノインプリント法、インクジェット法の他、ベース材表面に形成された凹凸構造の間隙に生じる毛細管力によって所望の物質を間隙内に注入して形成するパターニング法などを用いることができる。これらは、公知の条件に従って実施することができる。具体的には、例えば、所望の微細パターン形状を有する転写型を公知の方法に従って作製し、該転写型のパターン面に細胞非接着性物質を接触させ、細胞接着性表面を有する層の表面に該パターン面を印刷(転写)して形成することができる。かかる方法に従って作製された微細パターンを有する細胞培養用基材は、前記効果の他、経時的な安定性に優れるという効果も奏する。
このように、微細パターンは、プラズマ処理を経たり、感光性成分を用いることなく、形成できる。
そのため、微細パターンは、プラズマ処理されていないパターンであってもよく、非感光性成分[例えば、感光性でない樹脂(樹脂組成物)]で形成されたパターンであってもよい。
細胞非接着性物質としては、培養に用いる細胞が接着しないか、又は用いる細胞の細胞膜に存在するたんぱく質や糖鎖等の細胞表面分子に対して結合しない物質であれば特に限られず用いることができ、生体適合性を有するものであっても、有さないものであってもよい。また、疎水性を示すものであっても親水性を示すものであってもよく、例えば、超撥水性(超疎水性)のものや超親水性のものであってもよい。細胞の非接着性、スフェロイドの均一性および形成性等の観点から、疎水性(特に超疎水性)[例えば、疎水性又は親水性(特に疎水性)の細胞接着性表面又は当該表面を構成する樹脂(さらにはその接触角)に対してより疎水性(特に超疎水性)]のものが特に好ましいが、親水性(特に超親水性)[例えば、親水性又は疎水性(例えば、疎水性)の細胞接着性表面又は当該表面を構成する樹脂(さらにはその接触角)に対してより親水性(特に超親水性)]を示す物質も好ましい。
このような物質の一例を示すと、エチレングリコール及びその誘導体、MPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)及びその誘導体、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)及びその誘導体等を含む化合物あるいはそれら化合物の重合体、SPC(セグメント化ポリウレタン)及びその誘導体等を含む化合物や、生体から取得されたタンパク質(アルブミン等)、細胞が接着しない糖鎖(アガロース、セルロース等)を、細胞の種類に応じて適宜選択して用いることができる。なかでも、細胞接着性表面との接着性の観点から、または、細胞培養用基材の製造工程を簡素化できる観点から、または得られる細胞又はスフェロイドの均一性が向上する観点等から、MPC及びその誘導体あるいはそれらの重合体が好ましい。
なお、物質は、取扱性、所望の疎水性(例えば、超疎水性)・親水性(例えば、超親水性)の程度等に応じて、適宜、変性したものを使用してもよい。例えば、親水性の物質を架橋処理等することで、親水性と水に対する低溶解性を両立させてもよい。また、原料となる物質(例えば、疎水性又は親水性)を、適宜、疎水化処理ないし親水化処理(例えば、疎水性基ないし親水性基の導入等)し、所望の疎水性ないし親水性の材質を得てもよい。
細胞非接着性物質(又は微細パターン、非接着性分子)は、分解性の成分(例えば、光及び/又は熱に応答して分解する成分)であってもよい。このような成分で細胞非接着性物質(又は微細パターン)を形成すると、段階的なパターンの追加や培養経過中のパターン形状の変更等も可能となりうる。
また、細胞非接着性物質の微細パターン表面は、形成される細胞組織体のサイズを均一にしたり、円形度を向上させる観点から、その表面特性として、例えば、後述する静的水接触角を指標として判断することができる。例えば、前記したような物質で形成された疎水性表面である場合、静的水接触角は好ましくは90°以上、より好ましくは93°以上、更に好ましくは95°以上となる。また、150°以下となってもよく、好ましくは130°以下、より好ましくは120°以下である。
一方、親水性表面である場合、静的水接触角は好ましくは65°以下、より好ましくは55°以下、更に好ましくは50°以下となる。また、0°以上となってもよく、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上である。
一例を挙げると、疎水性が高いMPC(又は当該MPCで形成された表面)では、静的水接触角が、例えば、90°以上、100°以上のような静的水接触角を実現しうる。
なお、このような静的水接触角は、細胞非接着性表面における値であってもよく、細胞非接着性を示す物質(又は細胞非接着性表面を構成する物質)における値であってもよい。
細胞接着性の表面とは、例えば、培養に用いる溶液中において、細胞が当該表面上に沈降した場合に、当該細胞が、ある一定の接着点を持って接着することである。または、ピペッティング等の液流等によって剥離可能な程度に固定化されるように接着する表面のことである。また、細胞が接着して二次元的に維持又は増殖されるような表面ではなく、層状やスフェロイド状等の立体的な又は三次元の組織体を形成することが可能な程度に接着する表面を挙げることができる。かかる表面は、例えば、細胞接着性を示す物質がベース材表面に物理的又は化学的に固定又は配置されて形成されたものでも、ベース材そのものが細胞接着性を示す物質からなるものであってもよい。また、微細パターンが印刷(転写)等で形成されやすいように、凹凸のない平滑な表面であってもよい。細胞接着性表面を有する層は、その表面が少なくとも細胞接着性を示す物質で構成されていればよい。
細胞接着性を示す物質としては、培養に用いる細胞が接着するか、又は用いる細胞の細胞膜に存在するたんぱく質や糖鎖等の細胞表面分子に対して結合し得る物質であれば特に限られず用いることができる。親水性を示すものであっても疎水性を示すものであってもよいが、細胞接着性やスフェロイドの形成性等の観点から、親水性(特に、超親水性ではない親水性)又は疎水性(特に、超疎水性ではない疎水性)のものが好ましく、更に好ましくは、疎水性を示すものが好ましい。また、細胞接着性を示す物質の接着性の程度は、細胞が細胞培養面から外れない程度であってもよい。このような物質の一例を挙げると、生体から取得され若しくは合成された物質が挙げられ、例えば、タンパク質(コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等)や、合成樹脂(フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリジメチルシロキサン、これらの混合物等)が含まれる。合成樹脂を選択する場合、合成樹脂自体の強度や耐熱性から、取り扱い性に優れる細胞培養用基材を得ることができる。また、生体適合性の観点から、接着性の細胞やスフェロイドが得られる観点から、得られる細胞やスフェロイドの均一性が向上する観点から、または種々の細胞と適度に接着することにより培地交換作業が容易となる観点から、ポリイミド樹脂のような合成樹脂を選択することが好ましい。ポリイミド樹脂のような非生物由来の成分を選択することで、ポリイミド樹脂を含む本発明の細胞培養用基材を用いて得られる細胞やスフェロイドは、再生医療や創薬等の分野への適用が容易となる。
ポリイミド樹脂としては、以下の式(I)で示される構成単位を含むポリイミド樹脂が例示できる。また、スフェロイド形成が良好であるという観点から、分子内にフッ素原子を有する樹脂が好ましく、含フッ素ポリイミド(含フッ素ポリイミド樹脂)がより好ましい。本発明で用いられるポリイミド樹脂は、典型的には、酸二無水物とジアミンとを各々1種以上重合させて得られるポリアミド酸をイミド化することにより得られる。ポリイミド樹脂は、ポリアミド酸を化学構造の一部に含んでいてもよい。ポリイミド樹脂を製造する方法としては、公知の手法で製造すればよい。一例として二段合成法が使用できる。ポリイミド樹脂の二段合成法は前駆体としてポリアミド酸を合成し、ポリアミド酸をポリイミドに変換する方法である。前駆体としてのポリアミド酸はポリアミド酸誘導体であってもよい。ポリアミド酸誘導体としては、例えばポリアミド酸塩、ポリアミド酸アルキルエステル、ポリアミド酸アミド、ビスメチリデンピロメリチドからのポリアミド酸誘導体、ポリアミド酸シリルエステル、ポリアミド酸イソイミドなどが挙げられる。ポリイミドとしてはピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の酸無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからなるポリイミドが例示できる。フッ素原子を有する樹脂としては、例えば、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)/1,4-ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン(TPEQ)共重合体、6FDA/1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPER)共重合体、6FDA/4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)/TPEQ共重合体、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸(BPADA)/2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、6FDA/2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP)共重合体等の以下の式(I)で示される構成単位を含む含フッ素ポリイミド樹脂;エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等が例示できる。
上記式(I)中、Xは酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、または2価の有機基のいずれかを示し;
Yは2価の有機基を示し;
、Z、Z、Z、Z、及びZは互いに独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のいずれかを示し、
pは0または1である。
なお、ポリイミド樹脂において、式(I)で示される化学構造は、樹脂の構成単位ごとに異なってもよく、同一であってもよい。X、Y、Z、Z、Z、Z、Z、及びZの少なくとも1つはフッ素原子を1個以上含むことが好ましい。
上記式(I)中、p=0である場合にはXは存在していなくても(換言すれば、左右のベンゼン環が直接結合していても)よいが、p=1である場合には、左右のベンゼン環はXを介して結合する。
で示される2価の有機基としては、具体的には、アルキレン基、アリーレン基、アリーレンオキシ基、アリーレンチオ基等が挙げられる。また、縮合環式の2価の炭化水素基、ヘテロ環縮合環式の2価の炭化水素基、及びこれらのオキシ基、チオ基であってもよい。これらの中でも、アルキレン基、アリーレンオキシ基、アリーレンチオ基が好ましく、アルキレン基、アリーレンオキシ基がより好ましく、これらはフッ素原子で置換されていてもよい。上記アルキレン基の炭素数は、例えば1~12であり、好ましくは1~6である。
の例であるフッ素原子で置換されたアルキレン基としては、例えば、-C(CF-、-C(CF-C(CF-等を例示することができる。Xの例である上述したアルキレン基の中では、-C(CF-が好適である。
の例であるアリーレン基としては、例えば、以下のものを例示することができる。
の例であるアリーレンオキシ基としては、例えば、以下のものを例示することができる。
の例であるアリーレンチオ基としては、例えば、以下のものを例示することができる。
基材上にスフェロイドを良好に形成しうるという観点からは、Xで示される2価の有機基としては、上記b-2~b-10およびc-2~c-10からなる群から選択されるものでもよく、上記b-7~b-9およびc-7~c-9からなる群から選択されるものでもよく、b-8で表される構造であってもよい。
の例である上述したアリーレン基、アリーレンオキシ基及びアリーレンチオ基は、各々独立して、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子または塩素原子であり、より好ましくはフッ素原子である)、メチル基およびトリフルオロメチル基よりなる群から選択される基により置換されていてもよい。これら置換基は複数であってもよく、その場合には置換基の種類は互いに同一であっても異なっていてもよい。アリーレン基、アリーレンオキシ基およびアリーレンチオ基に置換している好適な置換基は、フッ素原子および/またはトリフルオロメチル基であり、好適にはフッ素原子である。アリーレン基、アリーレンオキシ基およびアリーレンチオ基は、Yにフッ素原子が含まれない場合、少なくとも1つ以上のフッ素原子で置換されることが好ましい。
上記式(I)中、Yで示される2価の有機基としては、特に制限されないが、例えば、芳香環を有する2価の有機基が挙げられる。詳しくは、1個のベンゼン環からなる基もしくは、2個以上のベンゼン環が炭素原子(すなわち、単結合、またはアルキレン基)、酸素原子、硫黄原子を介してまたは直接結合した構造を有する基が挙げられる。具体的には、以下の基を例示することができる。
Yの例である上述した芳香環を有する2価の有機基は、置換可能であれば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子または塩素原子、より好ましくはフッ素原子である)、メチル基およびトリフルオロメチル基からなる群から選択される基により置換されていてもよい。これら置換基は複数であってもよく、その場合には置換基の種類は互いに同一であっても異なっていてもよい。芳香環を有する2価の有機基に置換している好適な置換基は、特にXにフッ素原子が含まれない場合は、フッ素原子および/またはトリフルオロメチル基であることが好ましく、より好適にはフッ素原子である。
スフェロイド形成性の観点から、上記式(I)中、Yはd-3、d-9、e-1~e-4、f-6、およびf-7からなる群から選択される構造であることが好ましく、より好ましくはe-1、e-3またはe-4の構造である。
上記式(I)中、Z、Z、Z、Z、Z、及びZは、各々同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子から選ばれ、XおよびYの少なくとも一方にフッ素原子が含まれない場合、Z、Z、Z、Z、Z、およびZの少なくとも1つはフッ素原子であることが好ましい。
スフェロイド形成性の観点から、本発明の好ましい一実施形態では、上記式(I)中、Xで示される2価の有機基が、-C(CF-、上記b-2~b-10およびc-2~c-10からなる群から選択され;かつ、Yが、d-3、d-9、e-1~e-4、f-6、およびf-7からなる群から選択される。本発明のより好ましい一実施形態では、上記式(I)中、Xで示される2価の有機基が、-C(CF-、b-7~b-9およびc-7~c-9からなる群から選択され;かつ、Yが、e-1、e-3およびe-4からなる群から選択される。
上記の式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂は、酸二無水物とジアミンとの重合により得られるポリアミド酸を焼成する手法により得ることができる。なお、上記「式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂」のイミド化率は、100%でなくともよい。すなわち、式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂は、上記式(I)で表される構造単位のみからなるものであってもよいが、本発明の目的効果が損なわれない範囲において、環状イミド構造が脱水閉環せずにアミド酸のままである構成単位が一部に含まれていてもよい。
ポリアミド酸合成反応は有機溶媒中で行われることが好適である。ポリアミド酸合成反応に用いられる有機溶媒としては、原料である酸二無水物とジアミンとの反応が効率よく進行でき、かつこれらの原料に対して不活性であれば、特に限定されるものではない。例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、ニトロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、メタノール等の極性溶媒;トルエンやキシレン等の非極性溶媒等が挙げられる。中でも、極性溶媒を用いることが好ましい。これらの有機溶媒は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物として使用されてもよい。アミド化反応後の反応混合物をそのまま熱イミド化に供してもよい。前記溶液中のポリアミド酸の濃度は特に限定されないが、得られる樹脂の重合反応性と重合後の粘度、その後の製膜、焼成での取り扱いやすさの観点から、好ましくは、5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。前記樹脂組成物の粘度は特に限定されるものではないが、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができ、例えば、23℃において1~20Pa・s、好ましくは3~15Pa・sの範囲内である。
前記ポリアミド酸を、熱イミド化または化学イミド化のいずれかによりイミド化して含フッ素ポリイミドを含む樹脂を得る。特定の実施形態では、前記ポリアミド酸を、加熱処理によりイミド化(熱イミド化)して含フッ素ポリイミドを含む樹脂を得る。熱イミド化で得られたポリイミドは、触媒の残存の可能性がなく、細胞培養用途ではより好ましい。
熱イミド化によりイミド化する場合、例えば、前記ポリアミド酸を、空気中で、またはより好ましくは窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、或いは真空中で、好ましくは温度50~400℃、より好ましくは100~380℃、好ましくは時間0.1~10時間、より好ましくは0.2~5時間の条件下で焼成してイミド化反応を行うことによりポリイミドを含む樹脂を得ることができる。
熱イミド化反応に供する前記ポリアミド酸は、適当な溶媒中に溶解された形態であることが好ましい。溶媒としては、ポリアミド酸を溶解するものであれば良く、ポリアミド酸合成反応に関して上記した溶媒を用いることもできる。
化学イミド化によりイミド化する場合では、適当な溶媒中で後述の脱水環化試薬の使用によりポリアミド酸を直接イミド化することができる。
前記脱水環化試薬は、ポリアミド酸を化学的に脱水環化してポリイミドとする作用を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。このような脱水環化試薬としては、第三級アミン化合物を単独で用いるか、または、第三級アミン化合物とカルボン酸無水物とを組合せて用いることが、イミド化を効率よく促進させうる点で好ましい。
第三級アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン等が挙げられる。これらの中でも特に、ピリジン、DABCO、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタンが好ましく、DABCOがより好ましい。3級アミンは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
カルボン酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。これらの中でも特に、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。カルボン酸無水物は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
化学イミド化においてポリアミド酸を溶解する溶媒としては、溶解性に優れる極性溶媒が好適である。例えば、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらの中でも特に、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドおよびN-メチルピロリドンからなる群より選ばれる1種以上であることが均一反応をする観点から好ましい。アミド化反応の溶媒としてこれらの溶媒を用いた場合、アミド化反応後の反応混合物からポリアミド酸を分離せずそのまま化学イミド化に用いることができる。
ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、例えば、5000~2000000、好ましくは8000~1000000であり、さらに好ましくは20000~500000である。なお、本明細書において、樹脂の重量平均分子量は後述の実施例に記載の方法に従って測定することができ、重量平均分子量が上記範囲であることにより、ポリイミド樹脂の合成および取扱い、フィルム化、スフェロイド形成性がより良好となる。
細胞接着性表面には、前記した細胞接着性を示す物質以外に、可塑剤、酸化防止剤等の添加剤成分がさらに含まれていてもよい。
細胞接着性表面を有する層は、細胞が接する面が細胞接着性表面となるのであれば、細胞接着性表面が層の全部又は一部であってもよい。例えば、細胞接着性を示す物質が層の表面に物理的又は化学的に固定又は配置されて形成されたものであっても、層そのものが細胞接着性を示す物質からなるものであってもよい。
表面への物質の固定化は、これらを含有する溶液をベース材表面上で乾燥させる方法、当該物質を溶融させて圧着する方法、ベース材に塗布した当該物質をUV等のエネルギー線で硬化させる方法、当該物質が有する官能基とベース材上の官能基との間で化学反応(例えば、カルボキシル基やアミノ基等の官能基間の縮合反応等)を起こさせて共有結合を形成させる方法、又は当該物質が有するチオール基とベース材に予め形成された金属(プラチナ、金等)薄膜とを結合させる方法により、当該ベース材表面上に固定化することができる。固定化する際の厚みは特に限定されず、0.01~1000μmが例示される。また、例えば、表面を剥離処理した離型シート(例えば、ポリエチレン基材等の有機ポリマーフィルム、セラミックス、金属、ガラス等)の上に、当該物質をキャスティング、スプレイコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに塗工して加熱することにより、かかる物質からなる層をシート状に成形することができる。
なお、細胞接着性表面(細胞接着性表面を有する層)は、プラズマ処理を経たり、感光性成分を用いることなく、形成できる。
そのため、細胞接着性表面(細胞接着性表面を有する層)は、プラズマ処理されていない表面(層)であってよく、非感光性成分[例えば、感光性でない樹脂(樹脂組成物)]で形成された面(層)であってもよい。
細胞接着性物質又は細胞接着性表面[疎水性(特に、超疎水性でない疎水性)の細胞接着性物質又は細胞接着性表面]は、好ましくは、静的水接触角が70°以上であってもよく、転落角が15°以上であってもよく、また、静的水接触角が70°以上かつ転落角が15°以上であってもよい。
細胞接着性物質又は細胞接着性表面がこのような条件を満たすことにより、スフェロイド形成がより一層促進される。
スフェロイドの接着性およびスフェロイド形成性の観点から、静的水接触角は、より好ましくは75°以上(例えば、75°超)であり、さらに好ましくは77°以上、さらに好ましくは79°以上、よりさらに好ましくは80°以上(例えば、80°超)であり、静的水接触角の上限は、例えば150°未満であり、好ましくは120°以下(例えば、120°未満)であり、より好ましくは110°以下であり、さらに好ましくは100℃以下(例えば、99℃未満、98℃以下、97℃以下、95℃以下等)である。
一方、細胞接着性物質又は細胞接着性表面[親水性(特に、超親水性でない親水性)の細胞接着性物質又は細胞接着性表面]は、静的水接触角65°以下、より好ましくは55°以下、更に好ましくは50°以下を有していてもよい。なお、下限値は、0°以上となってもよく、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上であってもよい。
スフェロイド形成性の観点から、転落角は、18°以上、19°以上、20°以上、22°以上、24°以上、26°以上、28°以上、30°以上の順で高いほど好ましい。転落角の上限値は、例えば80°未満であり、好ましくは70°以下(例えば、70°未満)であり、より好ましくは60°以下(例えば、60°未満)であり、さらに好ましくは50°以下(例えば、50°未満)である。なお、上記の静的水接触角や転落角は、以下の方法により測定される値であってもよい。
(静的水接触角の測定方法)
装置:自動接触角計(協和界面科学製:DM-500)
測定方法:表面(細胞非接着性表面又は細胞接着性表面)又はフィルム(細胞非接着性又は細胞接着性の物質で形成したフィルム)上に水2μLを滴下した直後の液滴の付着角度を測定する(測定温度:25℃)。
(転落角の測定方法)
装置:自動接触角計(協和界面科学製:DM-500)
測定方法:表面(細胞非接着性表面又は細胞接着性表面)又はフィルム(細胞非接着性又は細胞接着性の物質で形成したフィルム)上に水25μLを滴下した後、基材を連続的に傾けていき、流れ落ちた際の角度を転落角とする(測定温度:25℃)。
また、得られるスフェロイドのサイズ均一性や円形度を向上させる点においては、細胞接着性表面と細胞非接着性物質の微細パターン表面の接着程度のバランスをとることが重要でもある。よって、仮に、細胞非接着性物質の微細パターン表面が接着性を示すものであっても、細胞接着性表面より低接着性であればよい。例えば、上記の静的水接触角を指標とした場合、細胞接着性表面(又は細胞接着性物質)と細胞非接着性物質の微細パターン表面(又は細胞非接着性物質)における静的水接触角の差(又はその絶対値)が3°以上(例えば、5°以上)となることが好ましく、10°以上(例えば、12°以上)となることがより好ましく、15°以上となることがさらに好ましい。また、上限は、細胞非接着性物質(表面)及び細胞接着性物質(表面)の疎水性・親水性の組み合わせ等に応じて適宜選択でき、特に限定されないが、例えば、100°、90°、80°、70°、60°、50°、40°、30°などであってもよい。
細胞接着性表面を構成する樹脂は、可塑剤、酸化防止剤等の添加剤成分をさらに含んでもよい。
本発明の細胞培養用基材は、厚みは特に限定されないが、取り扱い性の観点から、1~1000μmが好ましく、10~1000μmがより好ましい。シート面積も特に限定されず、例えば、0.01~10000cm2、好ましくは0.03~5000cm2が例示される。
かくして得られた細胞培養用基材は、そのまま用いることもできるが、公知の細胞培養装置にそのまま設置して用いる観点から、対象装置の大きさに合わせて、適宜サイジング加工してもよい。その一方の表面に細胞を含む培地を載せて細胞培養を実施すればよく、該細胞培養用基材を培養用のプレート、プレートの各ウェル、培養シャーレ(培養ディッシュ)、フラスコ、培養バック等の筐体に収容して固定し、固定したシートの一部または全面において細胞培養を実施することができる。
本発明の細胞培養用基材は、上記した構成を有することにより、細胞播種時に区画ごとに充填する操作や脱泡操作が不要となり、効率よく細胞培養を行なうことができる。また、細胞培養用基材を、例えば、培養庫から取り出す程度の振動では基材上の培養細胞は細胞非接着性物質の微細パターンが形成されていない部分に接着しているため培養時の観察も容易になる一方で、例えば、容器を傾けて生じる液流や送液などの振動を与えることで培養細胞の回収も容易である。
また、本発明の細胞培養用基材は、硬化などの反応によらず、微細パターン(さらには細胞接着性表面)を形成することもできるので、このような細胞用基材を用いて得られる培養細胞の安全性が高いものである。また、細胞培養用基材表面が所定のパターンを有するため、細胞が接着しうる箇所が均一な形状で露出していることも可能であるから、均一な培養物を得ることができる。例えば、培養物のサイズのバラツキ(SD)が平均値の0.35倍以下、好ましくは0.33倍以下のものを得ることができる。さらには、本発明の細胞培養基材は、経時的に変化するものではなく安定なものとすることも可能であることから、このような細胞用基材を用いて得られる培養物の品質も良好となる。
本発明の細胞培養用基材の好適な製造方法としては、細胞接着性表面を有する層に、細胞非接着性物質を印刷して微細パターンを形成する工程を含む方法を挙げることができる。
微細パターンの形成には、公知の印刷手法を用いることが出来る。印刷方法としては、例えば、マイクロコンタクトプリント法、スピンコーティング法、キャスティング法、ロールコーティング法、ダイコーティング法、グラビアコーティング法、スプレイコーティング法、バーコーティング法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ナノインプリント法、インクジェット法の他、ベース材表面に形成された凹凸構造の間隙に生じる毛細管力によって所望の物質を間隙内に注入して形成するパターニング法などを用いることができる。
例えば、マイクロコンタクトプリント法による微細パターンの形成には、微細パターンを有する転写型を用いて印刷すればよい。転写型の調製方法に特に制限はない。例えば、エラストマースタンプなどの公知の転写型を調製する方法が挙げられる。具体的には、シリコーン材料などのエラストマーシートへ前述のような所望の形状を公知の加工機を用いて作製し直接微細加工を行って調製する他、微細加工を施したマスター基板からエラストマーで型取りする手法が挙げられる。型取りする場合は、先ず、基板に前述のような所望の形状を公知の加工機を用いて作製したものをマスター型として用い、そこに、エラストマー樹脂溶液を導入して硬化後、該マスター型を剥離して得られたものを複製型として用いる。ここで、複製型は、所望の形状の反転形状を有することになる。次いで、前記複製型に対して、必要により表面処理を施した後、再度前記樹脂溶液を導入して硬化後、該複製型を剥離することで所望の形状を有する転写型を調製することができる。
用いられる基板に特に限定はない。例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、シリコーン系樹脂などの樹脂;天然ゴム、EPDMなどのゴム;ガラス;ステンレス鋼などの金属材料;セラミックなどを挙げることができる。これらは、機械的強度や寸法安定性、透明性などを有するので好適に用いることができる。
基板への形状加工に用いる加工機としては、特に限定はなく、例えば、ドリルによる切削、フォトリソグラフィやインクジェット印刷、スクリーン印刷、レーザーパターン化法に用いられる装置が用いられる。具体的には、例えば、微細掘削加工機、レーザー加工機等が挙げられる。
エラストマー樹脂溶液としては、公知のものであれば特に限定なく用いることができ、例えば、転写型の離型性の観点から、シリコーン材料を好適に用いることができる。シリコーン材料としては、シリコーンゴム、又は、シリコーン樹脂となる硬化性シリコーンゴムオリゴマー若しくはシリコーンモノマー、又は、硬化性シリコーン樹脂オリゴマー若しくはモノマーなどの硬化性シリコーン材料が好ましく、硬化性ポリシロキサンがより好ましい。前記硬化性シリコーン材料としては、通常、液状シリコーンと称されているものが用いられ、剥離性に優れ、機械強度に優れる観点から、硬化剤と組合せて用いる二液混合型のものが好ましい。低粘度の硬化性シリコーン材料を使用すれば、作製時に巻き込む泡の除去等の加工性や転写パターンの精細な型取りをすることができる。また、前記硬化性ポリシロキサンは、一液硬化型若しくは二液硬化型のものでも良く、熱硬化型のものでも室温硬化型のものでも良い。硬化性シリコーン材料の具体例としては、例えば、アルキルシロキサン、アルケニルシロキサン、アルキルアルケニルシロキサン、及びポリアルキル水素シロキサンを含むものが好ましく、中でも、アルキルアルケニルシロキサンとポリアルキル水素シロキサンの2成分混合系で低粘度、室温硬化するものが、剥離性、加工性の点から好ましい。
エラストマー樹脂溶液を鋳型に導入した際には、必要により、公知の方法に従って脱泡処理などを行ってもよい。
転写複製型を取るための表面処理としては、型離れを容易にし転写の均一性を向上するよう非接着性面を形成する処理が挙げられる。例えば、フッ素系溶媒等を用いた離形処理の他、表面に、金属(Au、Pt、Ag、Ti、Al、Cr、Pdなど)やカーボンなどを蒸着させた後、コーティングする処理が挙げられる。また、残存する反応性官能基を減少させる処理などを行ってもよい。
かくして得られた転写型の微細パターンに前述の細胞非接着性物質を付着させてから、細胞接着性表面を有する層に該細胞非接着性物質の微細パターンをコンタクト(密着)させて印刷する。かかる方法により、薄膜で精度よく微細パターンを形成することができる。また、上記工程で反転型を取った状態で、細胞培養基材へエラストマーパターンを設置し、側面から毛細管現象を利用して細胞非接着性物質を注入・形成することでパターンを得ることもできる。
印刷工程後には、細胞非接着物質を細胞接着性表面を有する層へ定着させる目的で、得られた細胞培養基材を乾燥するなどの公知の後処理工程を含んでもよい。
本発明はまた、本発明の細胞培養用基材を用いて細胞を培養する工程を含む、細胞の培養方法を提供する。
適用可能な細胞としては特に制限はない。例えば、ヒト又はヒト以外の動物(サル、ブタ、イヌ、ラット、マウス等)の任意の臓器又は組織(脳、肝臓、膵臓、脾臓、心臓、肺、腸、軟骨、骨、脂肪、腎臓、神経、皮膚、骨髄、胚等)に由来する初代細胞、樹立された株化細胞、又はこれらに遺伝子操作等を施した細胞を用いることができる。また、昆虫細胞、植物細胞、微生物などであってもよい。
より具体的に、例えば、多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)、体性幹細胞(神経幹細胞、間葉系幹細胞、造血系幹細胞、癌幹細胞その他の未分化な幹細胞)又はその前駆細胞を用いることができる。また、例えば、肝臓系細胞や膵臓系細胞等の消化器系臓器由来の細胞、腎臓系細胞、神経系細胞、心筋細胞等の循環器系臓器由来の細胞、脂肪細胞、皮膚真皮等の結合組織由来の線維芽細胞、皮膚表皮等の上皮系組織由来の上皮細胞、骨系細胞、軟骨系細胞、網膜等の眼組織由来の細胞、血管系細胞、血球系細胞、生殖系細胞等の分化した細胞を用いることもできる。また、癌化した細胞を用いることもできる。酵母、大腸菌、枯草菌、コリネ型細菌、乳酸菌等も用いることができる。このような細胞としては、1種類の細胞を単独で用いることができ、又は2種類以上の細胞を任意の比率で混在させて用いることもできる。
細胞培養の条件としては、本発明の細胞培養用基材を用いるのであれば特に制限はない。例えば、用いる培地は、細胞に合わせて適宜選択すればよい。例えば、任意の細胞培養基本培地や対象細胞の為に開発された専用培地、分化培地、初代培養専用培地等を用いることができる。具体的には、イーグル細小必須培地(EMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、α-MEM、グラスゴーMEM(GMEM)、IMDM、RPMI1640、ハムF-12、MCDB培地、ウィリアムス培地E、Hepatocyte thaw medium、およびこれらの混合培地等が挙げられる。細胞が増殖や分化に必要な成分が含まれる培地であれば利用可能である。さらに、血清、各種成長因子、分化誘導因子、抗生物質、ホルモン、アミノ酸、糖、塩類等を添加した培地を使用してもよい。培養温度も特に制限されないが、通常は25~40℃程度で行う。
前記細胞培養によって細胞がスフェロイドを形成してもよいことから、本発明の一態様として、本発明の細胞培養用基材を用いて細胞を培養する工程を含む、スフェロイドの製造方法も挙げることができる。
得られたスフェロイドは、細胞を大量に含むことから種々の組織・臓器発生や再生などの研究に使用したり、再生医療への応用、創薬分野においては毒性試験等に使用することができる。得られるスフェロイドの直径は、特に限定されず、例えば10~1000μm、好ましくは10~800μmである。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、室温とは20~30℃を意味する。
実施例1
<基材> 6FDA/TPEQポリアミド酸の調製
500mL容量の三口フラスコに、1,4-ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン14.882g(50.9ミリモル)、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物22.618g(50.9ミリモル)、N-メチルピロリドン212.5gを仕込んだ。窒素雰囲気下、室温で、2時間攪拌後、6日間熟成することで、含フッ素ポリアミド酸樹脂組成物(固形分濃度15.0質量%)を得た。該ポリアミド酸の重量平均分子量は15.7万で粘度(23℃)は7Pa・sであった。なお、ポリアミド酸の重量平均分子量と、焼成後の含フッ素ポリイミドの重量平均分子量とは実質的に同一である。
上記で得られた含フッ素ポリアミド酸樹脂組成物を、焼成後の含フッ素ポリイミドフィルムの厚みが40μmとなるようにダイコーターを用いてガラス基体上に塗布し、塗膜を形成した。次いで、360℃にて1時間、窒素雰囲気下で塗膜の焼成を行った。その後、焼成物をガラス基体から剥離して、含フッ素ポリイミドフィルムを得た。この含フッ素ポリイミドフィルムの静的水接触角は83.4°、転落角は20.2°であった。
上記における物性の測定方法は以下の通りである。
(重量平均分子量の測定)
装置:東ソー株式会社製HCL-8220GPC
カラム:TSKgel Super AWM-H
溶離液(LiBr・H2O、リン酸入りNMP):0.01mol/L
測定方法:0.5重量%の溶液を溶離液で作製し、ポリスチレンで作製した検量線をもとに分子量を算出する。
(粘度の測定)
装置:アズワン製 粘度計 VISCOMETER TV-22
設定:VI RANGE:H ROTOR No.6 SPEED:10rpm
粘度計校正用標準液:日本グリース(株) JS 14000
測定方法:粘度計校正用標準液で校正後、ワニス0.3gを用いて測定する。(測定温度:23℃)
(静的水接触角の測定)
装置:自動接触角計(協和界面科学製:DM-500)
測定方法:フィルム上に水2μLを滴下した直後の液滴の付着角度を測定する(測定温度:25℃)。
(転落角の測定)
装置:自動接触角計(協和界面科学製:DM-500)
測定方法:フィルム上に水25μLを滴下した後、基材を連続的に傾けていき、流れ落ちた際の角度を転落角とする(測定温度:25℃)。
<パターン転写型の作製>
微細掘削加工機((株)ピーエムティー(福岡)製)を用いて、0.7mm厚みのポリメチルメタクリレート(PMMA)板に、直径300μm[この例では細胞接着性部位の幅(最小幅)に相当]の円形をピッチ(円の中心と隣接円の中心との最短距離)500μmで千鳥配置となるよう、微細パターン構造を掘削してマスター型を作製した。なお、前記パターンの間隙の最短距離は200μmである。
次に、複製型を得るために、100mmディッシュへPDMS(ポリジメチルシロキサン)室温硬化型樹脂液(SILPOT:東レダウコーニング製)を所定の割合(主剤:開始剤=10:1)で計量し、5分間撹拌混合した。その後、PDMSの気泡を除去する為、1時間真空脱気を行った。脱気したPDMS樹脂液へ、PMMA掘削マスター型を表面を上向きにした状態でディッシュ底面まで沈め、もう一度気泡が抜けるまで1時間程度真空で脱気を行った。脱気後、PMMAマスター型入りディッシュを水平台上で通常大気下、室温条件で3日間放置し、PDMSを硬化させた。PDMSの硬化後、PMMAマスター型を剥離してPDMS複製型を得た。
得られた複製型の表面に厚みが6nmとなるようにPt蒸着を行った。続いて、PEG-SH溶液(2mMのPTE-200SH、日油製)でPt表面を覆うように塗布し、遮光状態で30分反応後、PDMS複製型を40~50%EtOH溶液に浸漬して未反応のPEG-SHを除去し、ミリQ水に浸漬させて洗浄後、乾燥することでPEG修飾して非接着面を形成した。得られたPDMS型を洗浄、乾燥することで未反応PEG-SHを除去し、PDMS複製型(PEG修飾のPDMS複製型)を完成した。
上記のPEG修飾のPDMS複製型を用いて上記の型取り操作を繰り返し更にPDMSの反転型を作製することで、PMMAマスター型と同じ微細パターンを有するPDMS転写型を完成した。
<パターン付細胞培養用基材>
上記作製した、PDMS転写型のパターン面をMPCポリマー溶液(1%エタノール溶液(疎水性MPCポリマー)に浸漬後気吹きで余剰液を除去し、マイクロコンタクトプリント法によって、上記で得られた含フッ素ポリイミドフィルム培養基材上へパターンを転写させた。転写後のフィルムを50℃の乾燥機で2時間乾燥し、顕微鏡で観察したところ、フィルム上にMPCポリマーのパターンが転写されていることを確認した(図2)。尚、転写したMPCポリマーの静的水接触角はフィルム(細胞非接着性表面)において107.5°であった。得られたパターン付細胞培養用基材は、培養用基材中、MPCポリマーの微細パターン面積が61%、含フッ素ポリイミドフィルムの露出面積が39%であり、微細パターンの厚みは0.04μm(キーエンス製:レーザー顕微鏡)であった。また、MPCポリマーの平均高さと、含フッ素ポリイミドフィルムに露出した円の平均円相当径の比(平均高さ/平均円相当径)は1.3×10-4であった。
試験例1
ヒト脂肪細胞由来幹細胞(Human adipose derived stem cell:ADSC、ロンザ社:PT-5006)を5%FBSと1%抗生物質を含んだKBM-ADSC-2培地(コージンバイオ製)にて培養し、2.5×105細胞/mLの濃度となるように細胞懸濁液を調製した。
<スフェロイドの作製>
上記で作製したパターン付細胞培養用基材を脱泡処理することなく、そのまま35mmシャーレの細胞培養面に配置し、上記で調製した細胞懸濁液を0.2mL播種(5.0×104細胞/シャーレ)し、1時間後、KBM-ADSC-2培地を3.5mL加え、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーターに入れて培養した(培養0日目)。なお、前記懸濁液をシャーレ内に注入することで、分注することなく各パターン内に細胞を均一に播種できたことが確認された。培養は培地交換無しで14日目まで実施した。
播種された細胞は、フィルム培養基材上の細胞接着領域(含フッ素ポリイミド領域)において接着・増殖し、培養の経過に伴い、パターン付細胞培養用基材に保持された(接着した)スフェロイドが出現することが光学顕微鏡を用いた観察によって確認された(図3:培養8日目、図4:培養14日目)。
<スフェロイドの形態評価>
培養8日目、14日目にスフェロイドを撮影し、画像解析ソフトであるWinROOF(三谷商事製)でスフェロイドの円相当径を解析した。
得られたスフェロイドは、サイズの均一性(培養8日目:平均円相当径125.9μm,SD 33.5μm、培養14日目:平均円相当径126.1μm,SD 29.4μm)が高いものであった。よって、本発明の細胞培養用基材を用いることで、均一でかつ大量のスフェロイドが安定的かつ容易に取得することができた。また、撮影後には、シャーレに培養液を送液することで、簡単にスフェロイドを基材から脱離させることができ、回収することが容易であった。
試験例2
HCT116細胞(ヒト大腸癌細胞株、理化学研究所:RCB2979)を用いて、実施例1と同様にしてスフェロイドを作製した。培養培地には、DMEM基本培地(ギブコ製)に10%FBSを添加した血清培地を用いた。
結果、図5に示すとおり、培養の経過に伴い、パターン付細胞培養用基材に保持された(接着した)スフェロイド(培養7日目:平均円相当径239μm, SD 21μm)が出現することが観察され、細胞種が異なっても本発明の細胞培養用基材で培養できることが確認できた。
試験例3
細胞は初代ラット肝細胞(播種密度:1.0×105細胞/シャーレ)を、培地はDMEM+サプリメント培地(無血清)を用いる以外は、試験例1と同様にしてスフェロイドを作製した。
結果、図6に示すとおり、培養の経過に伴い、パターン付細胞培養用基材に保持された(接着した)スフェロイド(培養7日目:平均円相当径160μm, SD 32μm)が出現することが観察され、細胞種が異なっても本発明の細胞培養用基材で培養できることが確認できた。
本発明の細胞培養用基材は、簡便に調製することができ、細胞培養の作業自体も効率的に行なうことが可能となるので、例えば、スフェロイド含有製剤などの細胞製剤の分野に好適に用いることができる。
1 単位形状
2 隣り合う単位形状間の間隙

Claims (16)

  1. 細胞接着性表面を有する層と、該層の表面に設けられた細胞非接着性物質の微細パターンを有し、前記細胞接着性表面が細胞培養面である、細胞培養用基材。
  2. 細胞接着性表面を有する層が細胞接着性を示す物質で構成される、請求項1記載の基材。
  3. 細胞接着性表面がポリイミド樹脂を含む、請求項1又は2記載の基材。
  4. 細胞非接着性物質が、エチレングリコール、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ヒドロキシエチルメタクリレート及びそれらの誘導体、あるいは、それらの重合体、ならびに、セグメント化ポリウレタン及びその誘導体;アルブミン、アガロース、ならびにセルロースから選ばれる、請求項1~3のいずれかに記載の基材。
  5. 微細パターンが、複数の単位形状で構成されるパターン、又は、隣り合う単位形状間の間隙で構成されるパターンである、請求項1~4のいずれかに記載の基材。
  6. 微細パターンが、メッシュ状、ドット状、ストライプ状、ハニカム状、及びこれらの逆パターンから選ばれる模様である、請求項1~5のいずれかに記載の基材。
  7. 間隙の最短距離が1μm以上である、請求項5又は6に記載の基材。
  8. 単位形状の平均円相当径が1000μm以下である、請求項5~7のいずれかに記載の基材。
  9. 隣り合う単位形状に対応する真円間の中心間距離が1500μm以下である、請求項5~8のいずれかに記載の基材。
  10. 微細パターンの厚みが10μm以下である、請求項1~9のいずれかに記載の基材。
  11. 微細パターンが、マイクロコンタクトプリンティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ロールコーティング法、ダイコーティング法、グラビアコーティング法、スプレイコーティング法、バーコーティング法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、インクジェット法、及び、ベース材表面に形成された凹凸構造の間隙に生じる毛細管力によって所望の物質を間隙内に注入して形成するパターニング法からなる群より選択される方法により形成される、請求項1~10のいずれかに記載の基材。
  12. 微細パターンが、基材表面中、5%以上を占める、請求項1~11のいずれかに記載の基材。
  13. 1~1000μmの厚みを有する、請求項1~12のいずれかに記載の基材。
  14. 細胞接着性表面を有する層に、細胞非接着性物質を印刷して微細パターンを形成する工程を含む、細胞培養用基材の製造方法。
  15. 請求項1~13のいずれかに記載の基材を用いて細胞を培養する工程を含む、細胞の培養方法。
  16. 請求項1~13のいずれかに記載の基材を用いて細胞を培養する工程を含む、スフェロイドの製造方法。
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