JP2023178572A - 暖房促進装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】暖房要求の指令時における暖房能力を高めることが可能な暖房促進装置を提供する。【解決手段】暖房促進装置100は、ヒータコアと、エンジンの冷却水との熱交換により、排気ガスから排熱を回収する排熱回収機と、暖房要求の指令に応じて排熱回収機の作動および点火プラグ26の点火時期を制御するコントローラ50と、を備える。コントローラ50は、暖房要求が指令されると、排熱回収機を作動させるとともに、暖房要求が指令されないときよりも、点火時期を進角させるように、排熱回収機の作動および点火プラグ26の点火時期を制御する。【選択図】図3
Description
本発明は、車両の暖房動作を促進する暖房促進装置に関する。
従来より、ヒータ要求を満たすために、排熱回収機を介して排気熱を回収するようにエンジンの冷却水の流路を構成するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置は、ヒータ要求熱量が充足されないとき、排熱回収機を通過する冷却水の流量を増加させる、または、排熱回収機とエンジンとに冷却水を通過させ、これによりヒータ要求を満たすように構成される。
しかしながら、上記特許文献1記載の装置のように、排熱回収機を介して冷却水の温度を上昇するだけでは、暖房の促進にとって十分とはいえず、改善の余地がある。
本発明の一態様である暖房促進装置は、燃料を含む混合気が供給される燃焼室と、燃焼室内で混合気を点火する点火部と、を有する内燃機関と、内燃機関を冷却する媒体との熱交換により、車室内に吹き出される空気を昇温するヒータコアと、媒体との熱交換により、内燃機関から排気された排気ガスから排熱を回収する排熱回収機と、暖房要求を指令する指令部と、指令部による暖房要求の指令に応じて排熱回収機の作動および点火部の点火時期を制御する制御部と、を備える。制御部は、指令部により暖房要求が指令されると、排熱回収機を作動させるとともに、暖房要求が指令されないときよりも、点火時期を進角させるように、排熱回収機の作動および点火部の点火時期を制御する。
本発明によれば、暖房の促進効果を十分に高めることができる。
以下、図1~図8を参照して本発明の一実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る暖房促進装置は、内燃機関としてのガソリンエンジンを搭載する車両に適用される。すなわち、エンジンのみを駆動源として走行するエンジン車およびエンジンと走行モータとを駆動源として走行するハイブリッド車両に適用される。以下では、特に、暖房促進装置を、ハイブリッド車両に適用する例を説明する。ハイブリッド車両は、エンジンを停止して走行モータの駆動力で走行する場合があり、走行モータを有しないエンジン車等に比べ、エンジンを停止する頻度が高い。
図1は、エンジン1の要部構成を概略的に示す図である。エンジン1は、火花点火式の内燃機関であり、動作周期の間に吸気、圧縮、膨張および排気の4つの行程を経る4ストロークエンジンである。吸気行程の開始から排気行程の終了までを、便宜上、エンジン1の燃焼行程の1サイクルまたは単に1サイクルと称する。エンジン1は4気筒、6気筒、8気筒等、複数の気筒を有するが、図1には、単一の気筒の構成を示す。なお、各気筒の構成は互いに同一である。
図1に示すように、エンジン1は、シリンダブロック10に形成されたシリンダ11と、シリンダ11の内部に摺動可能に配置されたピストン12と、ピストン12の冠面(ピストン冠面)12aとシリンダヘッド13との間に形成された燃焼室14と、を有する。ピストン冠面12aには、例えばシリンダ内のタンブル流に沿うように凹部12bが形成される。ピストン12は、コンロッド15を介してクランクシャフト16に連結され、シリンダ11の内壁に沿ってピストン12が往復動することにより、クランクシャフト16(エンジン出力軸に相当)が回転する。このクランクシャフト16の回転は、図示しない減速機を介して車輪に伝達され、車輪が回転駆動される。
シリンダヘッド13には、吸気ポート17と排気ポート18とが設けられる。燃焼室14には、吸気ポート17を介して吸気通路170が連通する一方、排気ポート18を介して排気通路180が連通する。吸気ポート17は吸気バルブ21により開閉され、排気ポート18は排気バルブ22により開閉される。吸気バルブ21の上流側の吸気通路170には、スロットルバルブ23が設けられる。スロットルバルブ23は、例えばバタフライ弁により構成され、スロットルバルブ23により燃焼室14への吸入空気量が調整される。吸気バルブ21と排気バルブ22とは動弁機構25により開閉駆動される。
シリンダヘッド13には、それぞれ燃焼室14に臨むように点火プラグ26および直噴式のインジェクタ27が装着される。点火プラグ26は、吸気ポート17と排気ポート18との間に配置され、電気エネルギーにより火花を発生し、燃焼室14内の燃料と空気との混合気を点火する。
インジェクタ27は、吸気バルブ21の近傍に配置され、電気エネルギーにより駆動されて燃料を噴射する。より詳しくは、インジェクタ27には、燃料ポンプを介して燃料タンクから高圧の燃料が供給される。インジェクタ27は、燃料を高微粒子化して、燃焼室14内に所定のタイミングで斜め下方に向けて燃料を噴射する。なお、インジェクタ27の配置はこれに限らず、例えば点火プラグ26の近傍に配置することもできる。
動弁機構25は、吸気カムシャフト251と排気カムシャフト252とを有する。吸気カムシャフト251は、各気筒(シリンダ11)にそれぞれ対応した吸気カム251aを一体に有し、排気カムシャフト252は、各気筒にそれぞれ対応した排気カム252aを一体に有する。吸気カムシャフト251と排気カムシャフト252とは、不図示のタイミングベルトを介してクランクシャフト16に連結され、クランクシャフト16が2回転する度にそれぞれ1回転する。
吸気バルブ21は、吸気カムシャフト251の回転により、不図示の吸気ロッカーアームを介して、吸気カム251aのプロファイルに応じた所定のタイミングで開閉する。排気バルブ22は、排気カムシャフト252の回転により、不図示の排気ロッカーアームを介して、排気カム252aのプロファイルに応じた所定のタイミングで開閉する。図示は省略するが、シリンダ11の周囲には、エンジン1の冷却水が流れるウォータージャケットが設けられ、冷却水の流れによってエンジン1が冷却される。
排気通路180には、排気ガスを浄化するための触媒装置2が介装される。触媒装置2は、排ガス中に含まれるHC、CO、NOxを酸化・還元作用によって除去・浄化する機能を有する三元触媒である。なお、排ガス中のCO、HCの酸化を行う酸化触媒等、他の触媒装置を用いることもできる。触媒装置2に含まれる触媒の温度が高くなると触媒が活性化し、触媒装置2による排ガスの浄化作用が高まる。
さらに排気通路180には、触媒装置2の下流かつ消音器の上流に排熱回収機が設けられる。図2は、排熱回収機3の周囲の構成を模式的に示す図である。図2に示すように、排気通路180は、略直線状に延在するメイン通路181と、分岐点180aでメイン通路181から分岐し、合流点180bでメイン通路181に合流するバイパス通路182と、を有する。排熱回収機3は、バイパス通路182に設けられる。
合流点180bには、第1位置と第2位置とに切り換え可能な切換弁4が設けられる。切換弁4が第1位置に切り換えられると、メイン通路181が開放かつバイパス通路182が遮断され、排気ガスは、矢印A1に示すように、メイン通路181を通過し、排熱回収機3をバイパスして排気される。切換弁4が第2位置に切り換えられると、メイン通路181が遮断かつバイパス通路182が開放され、排気ガスは、矢印A2に示すようにバイパス通路182および排熱回収機3を通過して排気される。なお、メイン通路181を流れる排気ガスとバイパス通路182を流れる排気ガスの流量割合を連続的にまたは段階的に変更可能に切換弁4を構成し、これにより排熱回収機3を通過する排気ガスの流量を調整するようにしてもよい。
排熱回収機3には、排熱回収機3の内部を貫通し、冷却水通路183に連通する内部通路が設けられる。冷却水通路183には、不図示のウォーターポンプによって供給されたエンジン1の冷却水が流れる。排熱回収機3は、排気ガスと冷却水とが熱交換することで排気ガスから排熱を回収する熱交換器である。冷却水通路183には、排熱回収機3の下流にヒータコア5が設けられ、排熱回収機3で昇温された冷却水は、矢印A3に示すようにヒータコア5を流れる。なお、図示は省略するが、冷却水通路183には、排熱回収機3への冷却水の流れを制御する制御弁が設けられ、制御弁により、排熱回収機3を通過する冷却水の流れが許容または禁止される。
切換弁4が第2位置に切り換えられた状態で、排熱回収機3を冷却水が流れると、排気ガスの熱によって排熱回収機3で冷却水が昇温され、排熱回収機3が作動状態となる。一方、切換弁4が第1位置に切り換えられると、排熱回収機3での冷却水の昇温は行われず、排熱回収機3は非作動状態となる。このように、排熱回収機3が作動または非作動は、切換弁4の切換により切り換えられる。
ヒータコア5は、冷却水と車室内に吹き出される空気とを熱交換する熱交換器であり、冷却水が通るチューブと放熱用フィンとを有する。ヒータコア5は、車両用空調装置の一部を構成し、暖房要求が指令されると、ヒータコア5で空気が加熱され、ファンの作動により車室内に温風が吹き出される。ヒータコア5を通過した冷却水は、不図示のラジエータで冷却され、冷却水通路183を循環する。
上述したように排気通路180に排熱回収機3を設けることで、冷却水が早期に昇温され、暖房効果を高めることができる。一方、乗員の快適性を高めるためには、暖房能力を一層向上することが好ましい。特に、ハイブリッド車両では、エンジン1を停止して走行モータの駆動によって車両が走行する頻度が高いため、排熱回収機3を設けただけでは、暖房の促進にとって十分とはいえない。そこで、本実施形態では、車両用空調装置の暖房能力をより向上するため、以下のように暖房促進装置を構成する。
図3は、本実施形態に係る暖房促進装置100の制御構成を示すブロック図である。図3に示すように、暖房促進装置100は、コントローラ50を中心として構成され、コントローラ50にそれぞれ接続された設定器51と、室温センサ52と、水温センサ53と、吸気量センサ54と、インジェクタ27と、切換弁4と、点火プラグ26と、スロットルアクチュエータ55と、を有する。
設定器51は、ユーザからの指令に応じて車室の目標温度を設定する。ユーザからの指令によらず、車両用空調装置の作動時に、所定温度(例えば25度)を目標温度として設定するようにしてもよい。室温センサ52は、車室の温度を検出する温度センサである。水温センサ53は、冷却水の温度(冷却水温)を検出する温度センサである。吸気量センサ54は、吸入空気量を検出するセンサであり、例えば吸気通路170に配置されたエアフロメータにより構成される。スロットルアクチュエータ55は、スロットルバルブ23を駆動する電動モータなどのアクチュエータである。図示は省略するが、コントローラ50には、エンジン回転数を検出する回転数センサ、アクセルペダルの操作量を検出するアクセル開度センサ、排気ガスの空燃比を検出するAFセンサなども接続される。
コントローラ50は、電子制御ユニット(ECU)により構成され、CPU等の演算部と、ROM,RAM等の記憶部と、その他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。コントローラ30は、機能的構成として、暖房要求部50Aと、インジェクタ制御部50Bと、排熱回収機制御部50Cと、点火プラグ制御部50Dと、スロットル制御部50Eとを有する。
暖房要求部50Aは、設定器51により設定された目標温度Taと、室温センサ52により検出された車室温度Tとの大小を比較する。そして、目標温度Taから車室温度Tを減算した温度差ΔTが0より大きいとき、すなわち目標温度Taが車室温度Tよりも高いとき、暖房要求ありと判定し、暖房要求を指令する。暖房要求部50Aは、暖房要求の指令時に、暖房要求量αを併せて指令する。暖房要求量αは、暖房要求の程度を表す値であり、温度差ΔTが大きいほど、暖房要求量αは大きくなる。例えば温度差ΔT自体が暖房要求量αに相当する。
インジェクタ制御部50Bは、AFセンサにより検出された実空燃比が目標空燃比(例えば理論空燃比)となるようなフィードバック制御を行いながら、吸気量センサ54により検出された吸入空気量に応じて1サイクル当たりの目標噴射量を算出する。そして、目標噴射量を、運転状態に応じた噴射モードで噴射するようにインジェクタ27に制御信号を出力する。この場合の噴射モードには、例えば吸気行程での1回または複数回の噴射、圧縮行程での1回または複数回の噴射、吸気行程から圧縮行程にかけての範囲内での1回または複数回の噴射等、種々のものがあり、エンジン始動時、触媒暖機時等、運転状態に応じて所定の噴射モードが選択される。
排熱回収機制御部50Cは、暖房要求部50Aにより暖房要求が指令されると、排熱回収機3が作動状態となるように切換弁4を第2位置に切り換える。これにより冷却水温の昇温が促進される。一方、暖房要求部50Aにより暖房要求が指令されないとき、排熱回収機3が非作動状態となるように切換弁4を第1位置に切り換える。但し、触媒装置2の暖機が完了していないとき、排気ガスに含まれるPMを低減するためにエンジン1を早期に昇温する必要があり、冷却水温の早期上昇が望まれる。このため、排熱回収機制御部50Cは、触媒装置2の暖機が完了していないとき、暖房要求部50Aにより暖房要求が指令されない場合であっても、切換弁4を第2位置に切り換える。
点火プラグ制御部50Dは、触媒装置2の暖機運転が必要なとき、点火プラグ26による点火時期が、最大トルクが得られる最適点火時期MBTよりもリタード(遅角)されるように点火プラグ26を制御する。点火時期のリタードによって混合気を後燃えさせることで、触媒装置2を早期に暖機することができる。点火プラグ制御部50Dは、触媒装置2の暖機運転が完了した後、暖房要求部50Aにより暖房要求が指令されないとき、点火時期が最適点火時期MBTとなるように点火プラグ26を制御する。一方、暖房要求部50Aにより暖房要求が指令されると、点火時期が最適点火時期MBTよりも進角されるように点火プラグ26を制御する。
点火時期が最適点火時期MBTよりも進角すると、燃焼圧力が上昇し、燃焼室内の燃焼ガスの温度が上昇する。その結果、燃焼室壁面と燃焼ガスとの温度差が増大し、燃焼室壁面および冷却水へと流れる熱流束が増加する。これにより、冷却水へ伝達される熱量が増大し、冷却水の温度上昇が促進される。
点火時期の進角による効果を、図4を用いてさらに説明する。図4は、排熱回収機3が作動した状態における点火プラグ26の点火時期とエンジン1の熱収支との関係を示す図である。図4では、熱収支が4つの領域A~Dに大別される。図中の領域Aは、図示熱効率(供給された燃料がもっているエネルギー量に対する図示出力の割合)を、領域Bは、冷却損失(燃焼室壁面やシリンダ壁面から冷却水に伝えられる熱損失)を、領域Cは、排気冷却損失(排気ガスから冷却水に伝えられる熱損失)を、領域Dは、完全排気損失(排気ガスとして捨てられる熱損失)を、それぞれ示す。領域Bの冷却損失と領域Cの排気冷却損失が、主に冷却水の昇温に寄与する。
図4に示すように、点火時期が上死点TDCよりも進角した最適点火時期MBTであるとき、図示熱効率は最大となる。このとき、冷却損失と排気冷却損失との和(全冷却損失と呼ぶ)はW1となる。点火時期が最適点火時期MBTよりも進角すると、領域Bの冷却損失が増加する。例えば点火時期が所定点火時期AD1まで進角すると、全冷却損失がW1よりも大きく最大値W2となる。その結果、冷却水へ伝えられる熱量が増加し、冷却水の昇温が促進される。
点火時期が所定点火時期AD1であるとき、点火時期が最適点火時期MBTのときよりも図示熱効率は減少するが、減少の割合は小さい。このため、図示熱効率と全冷却損失との和(総合効率)は、最適点火時期MBTのときよりも大きく、最大である。換言すると、点火時期が所定点火時期AD1であるとき、排気冷却損失は、最適点火時期MBTのときよりも小さく、最小となる。
点火時期の最適点火時期MBTからの進角量ADは、所定点火時期AD1を上限点火時期として、上限点火時期を超えない範囲で、目標温度Taと車室温度Tとの温度差ΔTに応じて定められる。図5Aは、温度差ΔTと進角量ADとの関係を示す特性図であり、図5Bは、温度差ΔTと進角速度d/dt・AD(単位時間当たりの進角量)との関係を示す特性図である。図5A,図5Bの特性は、予めコントローラ50のメモリに記憶される。
図5Aに示すように、温度差ΔTの増加に伴い進角量ADが比例的に増加する。図5Bに示すように、温度差ΔTの増加に伴い進角速度d/dt・ADが比例的に増加する。点火プラグ制御部50Dは、図5Aおよび図5Bの特性に従い、目標温度Taと車室温度Tとの温度差ΔTに応じて目標進角量ADおよび目標進角速度d/dt・ADを設定する。そして、点火時期が目標進角速度d/dt・ADで目標進角量ADまで進角するように点火プラグ26を制御する。これにより温度差ΔTが大きいほど、冷却水温を早期に昇温することができる。なお、図5A,図5Bの特性は、横軸を暖房要求量αに置き換えることができる。
点火時期が進角すると、ノッキングが生じるおそれがある。このため、所定点火時期AD1まで進角する前にノッキングが検出される、または検出されるおそれがある場合、点火プラグ制御部50Dは、ノッキングが生じないような点火時期を上限点火時期として設定する。なお、ノッキングの発生は、例えばノックセンサにより検出される。
車両用空調装置が十分な暖房能力を発揮するためには、冷却水温が所定温度Tw1以上であればよい。したがって、水温センサ53により検出された冷却水温が所定温度Tw1以上である場合、点火プラグ制御部50Dは、暖房要求が指令されても点火時期を進角させず、点火時期を最適点火時期MBTに制御する。なお、このとき、排熱回収機3を非作動状態としてもよい。
スロットル制御部50Eは、点火時期が進角されたとき、進角量ADに応じてスロットルアクチュエータ55に制御信号を出力する。すなわち、図4に示すように、点火時期が進角すると、最適点火時期MBTのときよりも、図示熱効率(出力トルク)がわずかに減少する。その減少分を補填するように、スロットル制御部50Eは、スロットルアクチュエータ55に制御信号を出力し、スロットル開度を増大する。これにより、燃焼室14への空気供給量が増加して燃料噴射量が増加し、出力トルクの低下を抑えることができる。
図6は、予め定められたプログラムに従いコントローラ50で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば触媒装置2の暖機運転完了後に、冷却水温が所定温度Tw1未満において開始され、冷却水温が所定温度Tw1以上となるまで所定周期で繰り返される。
図6に示すように、まず、ステップS1で、設定器51と各種センサ52~54からの信号を読み込む。次いで、ステップS2で、車室の暖房要求があるか否かを判定する。具体的には、設定器51により設定された目標温度Taから室温センサ52により検出された車室温度Tを減算した温度差ΔTが0より大きいか否かを判定する。
ステップS2で否定されると(ΔT≦0)、ステップS3に進む。この場合には、冷却水温を早期に昇温する必要がないため、切換弁4に制御信号を出力して切換弁4を第1位置に切り換え、排熱回収機3を非作動状態とする。次いで、ステップS4で、点火プラグ26に制御信号を出力して点火時期を通常の点火時期、すなわち最適点火時期MBTに制御する。
一方、ステップS2で肯定されると(ΔT>0)、ステップS5に進む。この場合には、冷却水温を早期に昇温する必要があるため、切換弁4に制御信号を出力して切換弁4を第2位置に切り換え、排熱回収機3を作動状態とする。次いで、ステップS6で、予め記憶された図5A,図5Bの特性に従い、温度差ΔTに応じた目標進角量ADと目標進角速度d/dt・ADとを算出する。このとき、目標進角量ADは、所定点火時期AD1以下であり、かつ、ノッキングが生じない値に制限される。次いで、ステップS7で、点火時期が最適点火時期MBTから、ステップS6の目標進角速度d/dt・ADで目標進角量ADまで進角するように点火プラグ26に制御信号を出力する。
本実施形態に係る暖房促進装置100の動作をより具体的に説明する。図7は、時間経過に伴う暖房要求指令、暖房要求量α、排熱回収機3の作動状態、点火時期の進角量AD、図示熱効率(図4の領域A)、および総合効率(図4の領域A+B+C)の変化を示すタイムチャートである。なお、図7には、本実施形態の動作の一例を実線で、本実施形態の比較例の動作の一例を点線で示す。比較例は、暖房要求に応じて排熱回収機が作動するものではなく、点火時期が進角するものでもない。
図7に示すように、時点t1で暖房要求が指令されると、目標温度Taと車室温度Tとの温度差ΔTに応じて、暖房要求量αがα1(例えば0)からα2に急増する。さらに排熱回収機3が作動状態となり、点火時期が最適点火時期MBTから温度差ΔTに応じた所定の進角量AD10まで進角する(ステップS5、ステップS7)。これにより図示熱効率は一定ないしほぼ一定のまま、排熱回収機3の作動と点火時期の進角とにより総合熱効率が上昇し、冷却水温の上昇が促進される。
その結果、温度差ΔTが徐々に減少して暖房要求量αが減少し、進角量ADも同時に減少する。時点t2で、温度差ΔTが0になると、暖房要求量αが0になり、進角量ADも0になる(図5A)。一方、排熱回収機3は、暖房要求が指令されているので、作動状態のままである(ステップS5)。総合熱効率は、時点t1以降に一定量だけ増加する部分Waと、時点t1からt2にかけて点火時期の進角に応じて増加する部分Wbとを含む。Waは排熱回収機3の作動による総合効率の上昇分であり、Wbは点火時期の進角による上昇分である。
本実施形態では、暖房要求の指令時に、排熱回収機3を作動するとともに、点火時期を進角させるので、エンジン1の冷却水温の上昇が促進され、時点t1から時点t2までの短時間で車室温度Tを目標温度Taまで上昇させることができる。その結果、暖房を要求する乗員の快適性が高まる。これに対し、本実施形態の比較例では、冷却水温の早期上昇が困難であるため、車室温度Tが目標温度Taに到達するまでに本実施形態のものよりも時間を要し、乗員の快適性を損なう。
図8は、暖房要求指令時の初期の暖房要求量αが異なる場合を比較したタイムチャートである。図中の実線は、暖房要求量αが小さいとき(α=α2)の特性であり、点線は、暖房要求量αが大きいとき(α=α3)の特性である。例えばα3はα2の2倍程度である。図8の実線の特性は、図7の実線の特性と同一であり、時点t1から時点t2の範囲で点火時期が所定の進角量AD10まで進角された後、徐々に減少し、時点t2で進角量ADは0になる。
これに対し、図8の点線に示すように、暖房要求指令時における温度差ΔTが大きく、時点t1で、暖房要求量αがα3(>α2)まで上昇すると、進角量ADの増加の程度(傾き)が実線のものよりも大きくなり、進角速度d/dt・ADが増加するとともに、点火時期が所定の進角量AD20(>AD10)まで進角する。すなわち、図5Bの特性より、温度差ΔTの増加により進角速度d/dt・ADが増加するとともに、図5Aの特性より、進角量ADも増加する。その結果、総合効率が実線のものよりも大きくなって、より効率よく冷却水温を上昇することができ、暖房要求する乗員の快適性を高めることができる。この場合、進角量ADは時点t2よりも後の時点t3にかけて徐々に減少する。
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)暖房促進装置100は、燃料を含む混合気が供給される燃焼室14および燃焼室内で混合気を点火する点火プラグ(点火部)26を有するエンジン1と、エンジン1を冷却する冷却水との熱交換により、車室内に吹き出される空気を昇温するヒータコア5と、冷却水との熱交換により、エンジン1から排気された排気ガスから排熱を回収する排熱回収機3と、暖房要求を指令する暖房要求部50Aと、暖房要求の指令に応じて排熱回収機3の作動および点火プラグ26の点火時期を制御するコントローラ50と、を備える(図1~図3)。コントローラ50は、暖房要求部50Aにより暖房要求が指令されると、排熱回収機3を作動させるとともに、暖房要求が指令されないときよりも、点火時期を進角させるように、排熱回収機3の作動(切換弁4の切換)および点火プラグ26の点火時期を制御する(図6)。
(1)暖房促進装置100は、燃料を含む混合気が供給される燃焼室14および燃焼室内で混合気を点火する点火プラグ(点火部)26を有するエンジン1と、エンジン1を冷却する冷却水との熱交換により、車室内に吹き出される空気を昇温するヒータコア5と、冷却水との熱交換により、エンジン1から排気された排気ガスから排熱を回収する排熱回収機3と、暖房要求を指令する暖房要求部50Aと、暖房要求の指令に応じて排熱回収機3の作動および点火プラグ26の点火時期を制御するコントローラ50と、を備える(図1~図3)。コントローラ50は、暖房要求部50Aにより暖房要求が指令されると、排熱回収機3を作動させるとともに、暖房要求が指令されないときよりも、点火時期を進角させるように、排熱回収機3の作動(切換弁4の切換)および点火プラグ26の点火時期を制御する(図6)。
このように排熱回収機3の作動だけでなく、点火時期を進角させることで、エンジン出力トルク(図示熱効率)を一定ないしほぼ一定とした状態で、冷却損失と排気冷却損失との和である全冷却損失を増加することができる。このため、冷却水温を迅速に昇温させることができ、車室温度Tを目標温度Taに早期に近づけることができる。
(2)コントローラ50は、暖房要求が指令されないとき、点火時期を最適点火時期MBTに制御し、暖房要求が指令されると、所定の制限値(AD1)を超えない範囲で点火時期を最適点火時期MBTよりも進角させるように、点火プラグ26の点火時期を制御する。これにより、点火時期の進角によって最適点火時期MBTのときよりも全冷却損失が増加するため、冷却水温の早期上昇が可能である。
(3)暖房要求部50Aによる暖房要求には暖房要求量αが含まれる。コントローラ50は、暖房要求量αが多いほど、点火時期の進角量ADを大きくするように点火プラグ26の点火時期を制御する(図5A)。このように暖房要求量αに応じて進角量ADを決定することで、目標温度Taと車室温度Tとの温度差ΔTが大きいほど、エンジン1から冷却水へ伝達される熱量が増加するようになり、車室温度Tを目標温度Taへ素早く近づけることができる。
(4)コントローラ50は、暖房要求量αが多いほど、点火時期の単位時間当たりの進角量である進角速度d/dt・ADを増加するように点火プラグ26の点火時期を制御する(図5B)。これにより進角量ADが目標進角量に至るまでの時間を短縮することができ、乗員の快適性の悪化を最小限に抑えることができる。
(5)暖房促進装置100は、車室の目標温度Taを設定する設定器51と、車室温度Tを検出する室温センサ52と、をさらに備える(図3)。暖房要求量αは、目標温度Taから車室温度Tを減算した温度差ΔTである。これにより、温度差ΔTに応じて進角量ADが決定されるため、進角量ADを最適に設定することができる。
(6)暖房促進装置100は、燃焼室14に吸い込まれる吸気量を調整するスロットルアクチュエータ55をさらに備える(図3)。コントローラ50は、暖房要求の指令に応じて点火時期を進角させるとき、進角量ADに応じて吸気量が増加するようにスロットルアクチュエータ55をさらに制御する。これにより点火時期の進角による図示熱効率の低下分が補填され、エンジン1は所望の出力トルクを発生することができる。
上記実施形態は種々の形態に変更することができる。以下、いくつかの変形例について説明する。上記実施形態では、ヒータコア5での空気と冷却水との熱交換により車室内に吹き出される空気を昇温するようにしたが、エンジン1(内燃機関)を冷却する媒体は冷却水以外であってもよい。上記実施形態では、切換弁4の切換により排熱回収機3の作動および非作動を切り換えるようにしたが、排熱回収機を作動および非作動するための構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、設定器51(温度設定部)で設定された目標温度Taの方が室温センサ52(温度検出部)により検出された車室温度Tよりも高いときに暖房要求を指令するようにしたが、乗員により暖房スイッチが操作されると、暖房要求を指令するようにしてもよく、暖房要求を指令する指令部の構成は上述したものに限らない。
上記実施形態では、暖房要求が指令されないとき、点火時期を最適点火時期MBTに制御し、暖房要求が指令されると、所定点火時期AD1(制限値)を超えない範囲で点火時期を最適点火時期MBTよりも進角させるようにしたが、暖房要求が指令されると、指令されないときよりも、点火時期を進角させるように点火部を制御するのであれば、制御部としてのコントローラ30の構成はいかなるものでもよい。例えば点火時期の制限値は上述したものに限らず、所定点火時期AD1より小さい進角量であってもよい。暖房要求が指令されないときの点火時期は最適点火時期MBTでなくてもよい。上記実施形態では、目標温度Taと車室温度Tとの温度差ΔTを暖房要求量αとして扱うようにしたが、温度差ΔTだけでなく他のパラメータを考慮して暖房要求量を算出するようにしてもよい。上記実施形態では、暖房要求量αが多いほど、点火時期の進角量ADが大きく、かつ、進角速度d/dt・ADが増加するように点火時期を制御したが、点火部の点火時期の制御はこれに限らない。
上記実施形態では、暖房要求の指令時に点火時期を進角させたとき、スロットルアクチュエータ55に制御信号を出力して燃焼室14に吸い込まれる吸気量を増加するようにしたが、吸気量調整部の構成は上述したものに限らない。例えば吸気バルブ21の開閉タイミングを調整することで、吸気量を調整するようにしてもよい。すなわち、吸気バルブ21の開タイミングを早めるとともに、閉タイミングを早めることで、吸気通路170への吸気の逆流量を低減し、燃焼室14内の吸気量を増加するようにしてもよい。スロットルアクチュエータ55によるスロットルバルブ23の開度の調整よりも吸気バルブ21の開閉タイミングの調整の方が、応答性の観点が優れる。そこで、スロットルバルブ23の開度調整に代えて、あるいは、開度調整とともに、吸気バルブ21の開閉タイミングの調整を行うようにしてもよい。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
1 エンジン、3 排熱回収機、4 切換弁、5 ヒータコア、14 燃焼室、26 点火プラグ、50 コントローラ、50A 暖房要求部、50C 排熱回収機制御部、50D 点火プラグ制御部、50E スロットル制御部、51 設定器、52 室温センサ、55 スロットルアクチュエータ、100 暖房促進装置
Claims (6)
- 燃料を含む混合気が供給される燃焼室と、前記燃焼室内で混合気を点火する点火部と、を有する内燃機関と、
前記内燃機関を冷却する媒体との熱交換により、車室内に吹き出される空気を昇温するヒータコアと、
前記媒体との熱交換により、前記内燃機関から排気された排気ガスから排熱を回収する排熱回収機と、
暖房要求を指令する指令部と、
前記指令部による暖房要求の指令に応じて前記排熱回収機の作動および前記点火部の点火時期を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記指令部により暖房要求が指令されると、前記排熱回収機を作動させるとともに、暖房要求が指令されないときよりも、点火時期を進角させるように、前記排熱回収機の作動および前記点火部の点火時期を制御することを特徴とする暖房促進装置。 - 請求項1に記載の暖房促進装置において、
前記制御部は、前記指令部により暖房要求が指令されないとき、点火時期を最適点火時期に制御し、暖房要求が指令されると、所定の制限値を超えない範囲で点火時期を前記最適点火時期よりも進角させるように、前記点火部の点火時期を制御することを特徴とする暖房促進装置。 - 請求項1または2に記載の暖房促進装置において、
前記指令部による暖房要求には暖房要求量が含まれ、
前記制御部は、前記暖房要求量が多いほど、点火時期の進角量を大きくするように前記点火部の点火時期を制御することを特徴とする暖房促進装置。 - 請求項3に記載の暖房促進装置において、
前記制御部は、前記暖房要求量が多いほど、点火時期の単位時間当たりの進角量を増加するように前記点火部の点火時期を制御することを特徴とする暖房促進装置。 - 請求項3に記載の暖房促進装置において、
車室の目標温度を設定する温度設定部と、
前記車室の温度を検出する温度検出部と、をさらに備え、
前記暖房要求量は、前記温度設定部により設定された前記目標温度から前記温度検出部により検出された前記車室の温度を減算した値であることを特徴とする暖房促進装置。 - 請求項1または2に記載の暖房促進装置において、
前記燃焼室に吸い込まれる吸気量を調整する吸気量調整部をさらに備え、
前記制御部は、前記指令部による暖房要求の指令に応じて点火時期を進角させるとき、進角量に応じて吸気量が増加するように前記吸気量調整部をさらに制御することを特徴とする暖房促進装置。
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2022
- 2022-06-06 JP JP2022091331A patent/JP2023178572A/ja active Pending
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