JP2023177329A - 植物体地下部の食害を抑制する方法 - Google Patents

植物体地下部の食害を抑制する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】植物が有する「アレロパシー効果」を利用する農業資材を提供すること。【解決手段】酢酸および/またはその塩を有効成分とする組成物を、植物体地下部に処理することにより、植物体地下部にアレロパシー物質を産出させて、害虫による植物体地下部の食害を抑制する方法。【選択図】図3

Description

本発明は、酢酸および/またはその塩を有効成分として、植物体地下部にアレロパシー物質を産出させて害虫による食害を抑制する方法に関する。
近年、使用者の安全志向の向上により、天然物由来の除草剤のニーズが高まっている。
このニーズに対する提案として、植物から放出される化学物質が、他の生物に対して阻害的あるいは促進的な影響を及ぼし、生物の生長や生育を促進/阻害する効果(「アレロパシー効果」または「他感作用」)を利用する植物生長調整剤がある(例えば、特許文献1、2等)。
インドセンダンの一種の樹木であるニームから採れるニームオイルが有する、病虫害駆除効果は古くから知られている。ニームオイル中のアザジラクチン以外の多種多様な成分(約26種)の相乗効果により、病原菌や害虫が耐性を得ることがなく、哺乳類・鳥類・魚類に対して毒性を示さないことから、ニームオイルは病害虫防除剤として提案されている(例えば、特許文献3等)。
また、除蟲菊のピレスリンの殺虫活性や、ユーカリのp-メンタン-3,8-ジオールの蚊やマツノザイセンチュウに対する忌避効果も、よく知られた効果である。
これらの植物が有する「アレロパシー効果」を利用することは、従来から研究されてきたものの、その発現メカニズム等の詳細が明確になっておらず、「アレロパシー効果」自体を促す農業資材は未だ報告されていない。
特開2006-089400号公報 特開2009-274970号公報 特開2002-154909号公報
本発明は、植物が有する「アレロパシー効果」を利用する農業資材の提供を目的としている。
本発明者らは、植物がアレロパシー物質を産出することに着目し、これらの植物のアレロパシー物質産出を促進させることができれば、害虫による被害を抑制できると考え、鋭意研究を重ねた結果、植物体地下部に対して酢酸および/またはその塩を施用することにより、アレロパシー物質が植物体の地下部において産出されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、詳しくは以下の事項を要旨とする。
1.酢酸および/またはその塩を有効成分とする組成物を、
植物体地下部に処理することにより、
植物体地下部にアレロパシー物質を産出させて、
害虫による植物体地下部の食害を抑制する方法。
2.酢酸および/またはその塩を有効成分とする、植物体地下部におけるアレロパシー物質誘発剤。
本発明によれば、植物体地下部が産出したアレロパシー物質により、害虫の食害から植物体地下部を保護することが出来る。これにより、植物体全体の生育を促進することが可能となる。
本発明によれば、化学農薬を使用することなく害虫による食害被害を抑制するなど、新たな防除効果を得ることができ有用である。
なお、本発明における「産出」とは、植物体地下部がアレロパシー物質を新たに生成することだけでなく、植物体地下部が通常状態で生成するアレロパシー物質を、さらに増加生成させることも意味する。
実施例の「食害抑制作用の確認試験2」における、供試虫の放虫から2週間後に、6号鉢から抜き取った地下部を含む植物体全体を示す写真である。左から、実施例1の試験検体を400mL、200mL、100mL、50mL処理した植物体であり、右端が比較例1の試験検体を200mL処理した植物体である。 実施例の「食害抑制作用の確認試験3」における、供試虫の放虫から2週間後に、6号鉢から抜き取った地下部を含む植物体全体を示す写真である。左が実施例1の試験検体を処理した植物体であり、右が比較例1の試験検体を処理した植物体である。 実施例の「アレロパシー物質の確認試験1」における、確認されたカテコール、レゾルシノール、メチルカテコール、ピロガロール、パルミチン酸の実施例1の試験検体の処理量と得られた補正面積との関係を示すグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
<本発明におけるアレロパシーについて>
本発明におけるアレロパシー効果とは、植物体が産出する化学物質が、昆虫に対して阻害的な何らかの影響を及ぼす現象を意味する。
また、本発明におけるアレロパシー物質とは、上記アレロパシー効果により植物体が産出する化学物質を意味する。本明細書においては、後述する試験例により詳細に説明するように、例えば、植物体地下部が産出した化学物質を、ガスクロマトグラフ質量分析装置により同定した化合物群を、アレロパシー物質と表現した。
<酢酸および/またはその塩について>
本発明における有効成分は、酢酸および/またはその塩である。
酢酸は、分子式Cと表されるカルボン酸であり、食酢に含まれる弱酸で、強い酸味と刺激臭を持つ化合物である。本発明に使用できる酢酸は、純粋な酢酸の他、食酢である醸造酢や合成酢にも含まれる。これらは市販されており、例えば、穀物酢や特濃酢、高濃度醸造酢、粉末食酢(酢酸とデキストリン等の混合物)などを利用することができる。また、ワインビネガーやアップルビネガーといった果実酢も利用可能である。
酢酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられ、本発明における有効成分として、酢酸塩を使用する場合には、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩、アンモニウム塩、カリウム塩が好ましい。これらの塩は単体として、本発明の組成物中に加えても良いが、酢酸と対応する中和剤とを別々に加えて製剤調製時に塩を形成させてもよい。例えば、酢酸と、中和剤として水酸化ナトリウムを別々に加えて、ナトリウム塩として使用することができる。なお、中和剤は、酢酸を中和するものであれば、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
本発明における有効成分としては、上記の酢酸および/またはその塩を含有するものを、1種のみ使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤は、有効成分である酢酸および/またはその塩を、組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤全体の好ましくは0.002重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.08重量%以上となるように用いることができる。また、酢酸および/またはその塩をあまり多量に用いると、酢酸臭が気になる使用者もいるため、10重量%以下の含有量とすることが好ましく、4重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。
本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤は、そのまま植物体地下部に処理することができるが、所定の有効成分を含有した製剤を使用時に水で希釈して植物体地下部に処理することもできる。希釈して使用する場合は、組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤全体における有効成分である酢酸および/またはその塩の濃度に応じて、希釈倍率を適宜調整することが好ましい。水で希釈された製剤においても、有効成分である酢酸および/またはその塩の含有量を、好ましくは0.002重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.08重量%以上となるように、また、好ましくは10重量%以下、より好ましくは4重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下となるように調製して使用することが好適である。
本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤は、各種製剤として用いることができる。
製剤としては、例えば、油剤、乳剤、水和剤、フロアブル剤(水中懸濁剤、水中乳濁剤等)、マイクロカプセル剤、粉剤、粒剤、錠剤、液剤、スプレー剤、エアゾール剤等が挙げられる。その中でも、液剤をスパウト付きパウチ、ジョウロヘッド付き容器、スタンディングパウチ、例えば土壌に挿入可能な注入口を有する形状の容器等に充填した散布剤等が、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の性能を、最大限に活用することができる製剤型として好適である。スパウト付きパウチ、ジョウロヘッド付き容器、スタンディングパウチとするには、所定の吐出パターン、吐出量を供給する散布装置を備えたボトル、スパウト付きパウチを用いることができる。
本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤は、本発明の効果を奏する限り、液剤に限らず、粉剤、顆粒剤、微細粒等の固形剤として用いることもできる。
上記製剤の1つの製造例としては、有効成分である酢酸および/またはその塩と、必要に応じて界面活性剤を用いて溶剤に溶かして溶液(A液)を調製し、このA液を適量の水に混合、撹拌して製剤とすることにより、使用時に希釈する必要がない、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤とする方法を挙げることができる。
水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水、濾過処理した水、滅菌処理した水、地下水などを用いることができる。
製剤時に用いられる液体担体としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸エチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族または脂肪族炭化水素類(キシレン、トルエン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ケロシン、軽油、ヘキサン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、ヘテロ環系溶剤(スルホラン、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、酸アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、炭酸アルキリデン類(炭酸プロピレン等)、植物油(大豆油、綿実油等)、植物精油(オレンジ油、ヒソップ油、ハッカ油、レモン油等)、及び水が挙げられる。
製剤時に用いられる界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル(例、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンラウレート)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテルなどが挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、例えば、硫酸アルキル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)フェニルエーテル硫酸またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー硫酸のナトリウム、カルシウムまたはアンモニウムの各塩;スルホン酸アルキル、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルベンゼンスルホン酸(例、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムなど)、モノ-またはジ-アルキルナフタレン酸スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸またはポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホサクシネートのナトリウム、カルシウム、アンモニウムまたはアルカノールアミン塩の各塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン、モノ-またはジ-アルキルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)化フェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーホスフェートのナトリウムまたはカルシウム塩などの各塩が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、例えば第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルオキサイドなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、例えばアルキルベタイン、アミンオキシドなどが挙げられる。
エアゾール剤とする時に用いられる噴射剤としては、例えば、ブタンガス、フロンガス、代替フロン(HFO、HFC等)、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、炭酸ガスが挙げられる。
また固体担体としては、例えば、粘土類(カオリン、珪藻土、ベントナイト、クレー、酸性白土等)、合成含水酸化珪素、タルク、ゼオライト、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、多孔質体等が挙げられる。
本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤は、製剤調製時に必要に応じて、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤及び増粘剤等を添加することができる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、有機窒素硫黄系複合物、有機臭素系化合物、イソチアゾリン系化合物、ベンジルアルコールモノ(ポリ)ヘミホルマル、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、及びビタミンE、混合トコフェロール、α-トコフェロール、エトキシキン及びアスコルビン酸等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、グアーガム、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。
<植物体地下部の食害抑制について>
本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤は、植物体地下部に処理することにより、植物体地下部にアレロパシー物質を産出させて、そのアレロパシー物質が害虫の食害を抑制する効果を発揮するものである。
本発明における植物体地下部とは、植物体の基本的な地下器官である根に加え、地下茎、塊茎、根茎、ラッカセイなどの地下部に形成される種子、球根、塊根、偽球根、鱗茎などが挙げられる。
植物体地下部を食害する害虫としては、例えば、コガネムシ類、ハムシ類、ハナバエ類、ゾウムシ類、コメツキムシ類、カミキリムシ類、キクイムシ類、ゴミムシダマシ類の幼虫のほか、線虫類、ケラ類の成虫又は幼虫などが挙げられる。この中でも、コガネムシ類、ハムシ類の幼虫、線虫類の成虫又幼虫への適用が好ましく、コガネムシ類、ハムシ類の幼虫に対する適用が特に好ましい。
<植物体について>
本発明における植物体として、具体的には、例えば、バラ、キャベツ、サツマイモ、ジャガイモ、エダマメ、キュウリ、トマト、メロン、ネギ、ナス、ピーマン、イチゴ等が挙げられる。
本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の処理時期は、植物体の生育状況に応じて適宜選択すればよい。
本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤は、単回施用、連続施用の何れの施用でも良い。その施用頻度は、1~120日に1回、好ましくは1~90日に1回、より好ましくは1~60日に1回の頻度で施用するのがよい。施用手段は特に制限されないが、灌注処理、散布処理、浸漬処理又は水耕栽培への水耕処理などの方法が挙げられ、特に、灌注処理を行うことが好ましい。
本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の植物体地下部への処理量としては、施用頻度に関わらず、有効成分である酢酸および/またはその塩を土1Lに対して、0.0005~15gの範囲で処理することが良く、0.0025~10gの範囲で処理することが好ましく、0.005~5gの範囲であることがより好ましく、0.01~2.5gの範囲であることがさらに好ましい。バラ地下部に処理する場合は、有効成分である酢酸および/またはその塩を土1Lに対して、0.005~10gの範囲で処理することが好ましく、0.01~5gの範囲がより好ましく、0.02~2.5gの範囲がさらに好ましい。また、キャベツ地下部に処理する場合は、有効成分である酢酸および/またはその塩を土1Lに対して、0.0025~5gの範囲で処理することが好ましく、0.005~3gの範囲がより好ましく、0.01~1gの範囲がさらに好ましい。
本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の植物体地下部への積算処理量としては、施用頻度に関わらず、有効成分である酢酸および/またはその塩を土1Lに対して、1週間の積算量として0.0005~10gの範囲が好ましく、0.001~5gの範囲がより好ましく、0.0025~2.5gの範囲がさらに好ましい。なお、この1週間の積算量は、1週間に1回未満の頻度で処理する場合は、1週間当たりの平均処理量を意味する。例えば、2ヶ月に1回5g処理した場合、1週間の積算量は0.625g(5÷8週間=0.625g)となる。
<植物体地下部への処理について>
本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤は、植物体地下部に処理するものである。本発明における植物体地下部への処理とは、例えば、処理対象の植物体が土壌に生育するものであれば、生育している土壌に、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤を処理することを意味する。水耕栽培されている植物体はその栽培溶液中に、また、バーミキュライトやパーライトなどの土壌改良剤により栽培されている植物体はその土壌改良剤に、それぞれ本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤を処理することを意味する。
本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤は、植物体地下部に処理することにより、当該植物体地下部にアレロパシー物質を産出させて、その産出されたアレロパシー物質により、害虫による植物体地下部の食害を抑制するものである。
後述する試験例に基づき、以下説明する。
育成するバラの株元に、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤を処理すると、バラの地下部は、カテコール、レゾルシノール、メチルカテコール、ピロガロールといった成分を産出することが、さらには、有効成分である酢酸(塩)の処理量と、カテコール、レゾルシノール、メチルカテコール、ピロガロールの産出量およびバラ地下部の根の長さに関連性があることが、それぞれ確認された。この根の長さは、供試虫であるコガネムシの食害程度を示すものであり、根が長いことは食害抑制効果が高いことを意味する。すなわち、有効成分である酢酸(塩)の処理により、バラの地下部は、カテコール、レゾルシノール、メチルカテコール、ピロガロールといった成分を産出し、その産出された成分により、コガネムシによる食害が抑制されるという事象が確認された。アレロパシー物質として、水酸基を有する化合物、例えば、カテコール等のフェノール骨格を有する化合物群が従来公知であることから、有効成分である酢酸(塩)の処理によりバラの地下部が産出した成分は、バラのアレロパシー物質であると推測される。
すなわち、バラは酢酸(塩)を感受し、アレロパシー物質を産出したものと考えられる。
有効成分である酢酸(塩)の処理により、アレロパシー物質が産出されるメカニズムは不明であるものの、産出されたカテコール、レゾルシノール、メチルカテコール、ピロガロールといった成分が、バラの地下部に蓄積または滲出して、コガネムシの食害を抑制することは、後述する試験例により明らかとなった。
植物体地下部を観察可能なプラスチック製透明容器で育成したバラを用いた試験系における詳細な観察では、当初は、酢酸(塩)を処理したバラの地下部にコガネムシが定着することはあるものの、摂食する様子は確認されず、結果として、酢酸(塩)を処理したバラの地下部の大きさや長さは、酢酸(塩)を処理しないバラの地下部の大きさや長さと、大きく相違することが確認された。この観察結果より、有効成分である酢酸(塩)の処理により産出した、カテコール、レゾルシノール、メチルカテコール、ピロガロールといったアレロパシー物質は、バラの地下部から滲出しているというよりは、バラの地下部に蓄積されたものであり、コガネムシが摂食した際に継続して摂食することを避ける/嫌がる作用を誘起する、すなわち、バラが産出する、害虫に対する摂食阻害物質または抵抗性物質ともいえる物質であると、本発明者は考えている。
上記バラと同様に、キャベツの地下部が産出する、3-フェニルプロパンニトリルやフェネチルイソチオシアネートも、キャベツのアレロパシー物質であると推測される。
酢酸(塩)が、植物のアレロパシー物質の産出を誘発することは全く知られておらず、酢酸(塩)が有する新たな機能を本発明者が今回初めて見出したものである。
この他、目的に応じて、例えば、殺菌剤、防カビ剤、殺虫殺ダニ剤、忌避剤、香料、精油等を併用してもよい。例えば、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ヘキサコナゾール、イマザリル、ミクロブタニル、シメコナゾール、テトラコナゾール、チアベンダゾール、ペンチオピラド、マンゼブ等の殺菌剤;塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ヒノキチオール、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール等の防カビ剤;除虫菊エキス、天然ピレトリン、プラレトリン、イミプロトリン、フタルスリン、アレスリン、ビフェントリン、レスメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、サイパーメスリン、エトフェンプロックス、シフルトリン、デルタメトリン、ビフェントリン、フェンバレレート、フェンプロパトリン、エムペントリン、シラフルオフェン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン等のピレスロイド系化合物、カルバリル、プロポクスル、メソミル、チオジカルブ等のカーバメート系化合物、メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物、フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物、アミドフルメト等のスルホンアミド系化合物、ジノテフラン、イミダクロプリド等のネオニコチノイド系化合物、クロルフェナピル等のピロール系化合物等、フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、ピリダフェンチオン、プロチオホス、ホキシム、クロルピリホス、ジクロルボス等の有機リン系化合物等の殺虫殺ダニ剤;ディート、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、エチル-ブチルアセチルアミノプロピオネート、イカリジン(ピカリジン)、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル(IR3535)等の忌避剤の1種または2種以上を用いることができる。香料、精油としては、用途に応じて天然香料及び合成香料、天然抽出物等からなる群から適宜選択される1種または2種以上の組み合わせを用いることができる。
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<食害抑制作用の確認試験1>
(1)試験検体
実施例1
酢酸0.125重量%、展着剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)0.14重量%およびイオン交換水を使用して、全体量を100重量%として、実施例1の試験検体を調製した。この試験検体の比重は、1.0g/mLであった。
比較例1
展着剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)0.14重量%およびイオン交換水を使用して、全体量を100重量%として、比較例1の試験検体を調製した。この試験検体の比重は、1.0g/mLであった。
(2)食害抑制作用の確認試験方法
供試植物として、地上部が約20~30cmのミニバラを使用した。
プランター(60cm×20cm:容量12L)に、土10Lを入れ、上記供試植物2株を30cm離して植え付けて、プランター中央に供試虫(コガネムシ2齢幼虫)4頭を放し、実施例1の試験検体と比較例1の試験検体を、一方の供試植物の株元に、実施例1の試験検体を、供試植物1株への処理量が500mL、土1L当たりの処理量が100mLになるように土壌処理した。もう一方の供試植物の株元には、比較例1の試験検体を、供試植物1株への処理量が500mL、土1L当たりの処理量が100mLになるように土壌処理した。
また、上記供試植物2株を30cm離して植え付けた供試虫なしのプランターには、供試虫を接種せず、比較例1の試験検体を、供試植物1株への処理量が500mL、土1L当たりの処理量が100mLになるように土壌処理した。
その後、各プランターを25℃に設定したガラス温室内に載置し、1~2日に1回、1.5L水やりをして栽培した。
上記土壌処理から11日後、供試植物をそれぞれのプランターから抜き取り、地下部に付着した土を取り除いて、地下部の土壌表面の部分から一番長い根の先端部までの長さを、根を伸ばした状態で計測した。
実施例1、比較例1の試験検体の酢酸濃度と処理量と共に、試験結果を、下記表1に示す。
Figure 2023177329000002
(3)結果
表1に示したとおり、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の具体例である実施例1の試験検体を土壌処理したバラと、酢酸を含有しない比較例1の試験検体を土壌処理したバラを、1つのプランターに並列させて供試虫を放虫した場合は、供試虫は、酢酸を含有しない比較例1の試験検体を土壌処理したバラを好んで摂食することが明らかとなった。
供試虫を放虫しなかった(供試虫なし)試験区の根の長さが12cmであり、酢酸を含有しない比較例1の試験検体を土壌処理したバラの根の長さが5cmであることから、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の具体例である実施例1の試験検体は、コガネムシ幼虫によるバラの根の食害を大きく抑制することが確認された。
すなわち、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の具体例である実施例1の試験検体処理が、コガネムシ幼虫の摂食嗜好を変化(好まない方向に)させる効果を発揮することが明らかとなった。
<食害抑制作用の確認試験2>
(1)試験検体
上記「食害抑制作用の確認試験1」の実施例1、比較例1の試験検体を使用した。
(2)試験方法
供試植物として、地上部が約20~30cmのミニバラ5株を使用した。
5株の供試植物を6号鉢にそれぞれ移植し、500mL水やりをした後に、株元の土2L(6号鉢の土全量)に対して実施例1の試験検体を50mL、100mL、200mL、400mL、比較例1の試験検体を200mL、それぞれ土壌処理した。1週間後に、それぞれの供試植物の根本に供試虫(コガネムシ2齢幼虫)3頭を放した。
その後、各6号鉢を25℃に設定したガラス温室内に載置し、1~2日に1回、500mL水やりをして栽培した。
供試虫の放虫から2週間後に、供試植物を6号鉢から抜き取り、地下部に付着した土を取り除いて、地下部の土壌表面の部分から一番長い根の先端部までの長さを計測した。6号鉢から抜き取った地下部を含む植物体全体の写真を図1に示す。図1の左から、実施例1の試験検体を400mL、200mL、100mL、50mL処理した植物体であり、右端が比較例1の試験検体を200mL処理した植物体である。
また、土壌中の供試虫の生存を確認した。
実施例1、比較例1の試験検体の酢酸濃度と処理量と共に、供試虫の生存と試験結果を、下記表2に示す。なお、表2中の「生存」は、供試虫3頭全てが生存していることを意味する。
Figure 2023177329000003
(3)結果
表2、図1に示したとおり、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の具体例である実施例1の試験検体は、土1Lに対する処理量が25mL程度でも、酢酸を含有しない比較例1に対して、コガネムシ幼虫によるバラの根の食害抑制効果を発揮することが、加えて、土1Lに対する処理量が100~200mL程度で、コガネムシ幼虫によるバラの根の食害をより大きく抑制できることが明らかとなった。
<食害抑制作用の確認試験3>
(1)試験検体
上記「食害抑制作用の確認試験1」の実施例1、比較例1の試験検体を使用した。
(2)試験方法
供試植物として、地上部が約20~30cmのミニバラ2株を使用した。
2株の供試植物を6号鉢にそれぞれ移植し、500mL水やりをした後に、株元の土2L(6号鉢の土全量)に対して実施例1の試験検体を200mL、比較例1の試験検体を200mL、それぞれ土壌処理した。
2カ月後に、それぞれの供試植物の根本に供試虫(コガネムシ2齢幼虫)3頭を放した。
その後、各6号鉢を25℃に設定したガラス温室内に載置し、1~2日に1回、500mL水やりをして栽培した。
供試虫の放虫から2週間後に、供試植物を6号鉢から抜き取り、地下部に付着した土を取り除いて、地下部の食害状況を観察した。6号鉢から抜き取った地下部を含む植物体全体の写真を図2に示す。図2の左が実施例1の試験検体を、右が比較例1の試験検体を処理した植物体である。
(3)結果
実施例1の試験検体を処理した植物体は、供試虫による食害を受けておらず、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の具体例である実施例1の試験検体は、処理から2カ月経過後においても、優れた食害抑制効果を発揮することが確認された。
一方、酢酸(塩)を含有しない比較例1の試験検体を処理した植物体は、図2に示す通り、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の具体例である実施例1の試験検体に比べて、供試虫による食害被害が大きく、地下部の密度が小さくなっていることが確認された。
<アレロパシー物質の確認試験1>
(1)試験検体
上記「食害抑制作用の確認試験1」の実施例1の試験検体を使用した。
(2)試験方法
供試植物として、地上部が約20~30cmのミニバラ8株を使用した。
8株の供試植物を6号鉢にそれぞれ移植し、500mL水やりをした後に、株元の土2L(6号鉢の土全量)に対して実施例1の試験検体を0mL、100mL、200mL、400mL、それぞれ供試植物2株に土壌処理した。なお、0mLの処理とは、実施例1の試験検体を処理しなかったことを意味する。
その後、各6号鉢を25℃に設定したガラス温室内に載置し、1~2日に1回、500mL水やりをして栽培した。
3日間後に、全ての供試植物を6号鉢から抜き取り、地下部を水で洗い付着した土を全て取り除いた。
各処理量(0mL、100mL、200mL、400mL)毎の供試植物2株の地下部の内、側根部約1gを切り取り、各処理量の検体として、その新鮮重量を秤量した。
切り取った供試植物の地下部は液体窒素で凍結させて、乳鉢で粉砕し、アセトン5.0mLを入れて混和させたものを、マイクロチューブに移して、5分間遠心分離(5℃、2000回転/分)を行った。マイクロチューブ内の上澄み液を、フィルター(GLサイエンス製、クロマトディスク水系/非水系用、直径25mm、孔径0.45μm)でろ過したものを、下記分析装置と分析条件により分析を行い、供試植物の地下部に含まれる成分をライブラリー検索に基づいて同定した。
各処理量の検体におけるピーク面積値を、各処理量の検体の根の新鮮重量値で除した値を、「補正面積」とした。
補正面積=ピーク面積値÷新鮮重量(g)
[分析装置、分析条件]
測定装置:ガスクロマトグラフ質量分析装置(島津製作所製)
カラム:DB-1MS0.25mmI.D.×30m df=0.25μm(agilent technologies 製)
カラム温度:50℃(5分)→昇温20℃/分→280℃(8分)→昇温30℃/分→300℃(1分)
キャリアガス:ヘリウム、120kPa
インジェクション温度:250℃、Splitless1分
ディテクション:MS Scan(m/z:40-400)
サンプル注入量:1.0μL
実施例1の試験検体の酢酸濃度と処理量と共に、確認された成分名と上記補正面積を下記表3に示す。
また、確認されたカテコール、レゾルシノール、メチルカテコール、ピロガロール、パルミチン酸の実施例1の試験検体の処理量と上記補正面積との関係を示すグラフを図3に示した。表3中の「ND」は、各成分が検出されなかったことを意味する。
Figure 2023177329000004
(3)結果
表3、図3に示したとおり、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の具体例である実施例1の試験検体を、バラ地下部に処理することにより、カテコール、レゾルシノール、メチルカテコール、ピロガロールをバラ地下部に産出させることが明らかとなった。
また、土1Lに対する処理量が100mLから200mLと増量することにより、カテコール、レゾルシノール、メチルカテコール、ピロガロールの産出量が大きく向上することも明らかとなった。
一方、表3中のパルミチン酸のように、実施例1の試験検体をバラ地下部に処理しても、処理前後でバラ地下部から産出する量が変化しない成分も存在することが確認された。
これらのカテコール、レゾルシノール、メチルカテコール、ピロガロールは、コガネムシ類に対して摂食抑制効果を有することが別途試験により確認された。
<アレロパシー物質の摂食抑制効果の確認試験1>
上記「アレロパシー物質の確認試験1」において、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の具体例である実施例1の試験検体を処理することにより、バラ地下部が産出することが確認されたカテコール、レゾルシノール、ピロガロールの各成分およびパルミチン酸による、コガネムシ幼虫の摂食抑制効果を確認する試験を行った。
(1)試験検体
処理区の試験検体として、下記市販試薬0.01gを昆虫用飼料(インセクタ LFS、日本農産工業製)1g(直径約3cm、表面積約7cm、厚さ約1.3mm)の表面に塗付したものを用いた。また、無処理区の試験検体は、昆虫用飼料1gの表面に下記市販試薬を処理しないものを用いた。
カテコール:東京化成工業製
レゾルシノール:メルク製
ピロガロール、パルミチン酸:富士フィルム和光純薬製
(2)試験方法
処理区の試験検体と無処理区の試験検体を、プラスチック製容器(直径10cm、深さ4.5cm、KP200-MB、鴻池プラスチック製)内壁面高さ2cmを中心として、それぞれ対向する位置に貼り付け、容器内を腐葉土(バイオ幼虫腐葉マット、フジコン製)で満たした。当該容器内の腐葉土表面の中央に、試験虫(コガネムシ2齢幼虫)2頭を接種して、容器に蓋をした。
試験虫を容器内に接種7日後に、無処理区/処理区の各試験検体の重量を測定して、試験虫の摂食量を確認した。
試験は、3反複繰り返し実施した。
下記計算式により、各成分の「摂食率(%)」を算出した。
「計算式」
摂食率(%)=「処理区の摂食量平均値」÷「無処理区の摂食量平均値」×100
カテコール、レゾルシノール、ピロガロールおよびパルミチン酸の、上記計算式により算出された各「摂食率(%)」を、下記表4にまとめて示す。
Figure 2023177329000005
表4に示すとおり、上記「アレロパシー物質の確認試験1」において、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の具体例である実施例1の試験検体を処理することにより、バラ地下部が産出することが確認されたカテコール、レゾルシノール、ピロガロールは、試験虫(コガネムシ2齢幼虫)の摂食を抑制することが、特に、カテコール、レゾルシノールは摂食を大きく抑制することが確認された。
一方、実施例1の試験検体の処理前後でバラ地下部からの産出量に変化がない成分であるパルミチン酸は、試験虫(コガネムシ2齢幼虫)の摂食を抑制しないことも確認された。
なお、試験虫を接種しない場合、昆虫用飼料単体の重量は変動しないことを確認した。
<アレロパシー物質の確認試験2>
(1)試験検体
上記「食害抑制作用の確認試験1」の実施例1の試験検体を使用した。
(2)試験方法
供試植物として、地上部が約10cmのキャベツ4株を使用した。
4株の供試植物を6号鉢にそれぞれ移植し、500mL水やりをした後に、株元の土2L(6号鉢の土全量)に対して実施例1の試験検体を0mL、200mL、それぞれ供試植物2株に土壌処理した。なお、0mLの処理とは、実施例1の試験検体を処理しなかったことを意味する。
その後、各6号鉢を25℃に設定したガラス温室内に載置し、1~2日に1回、500mL水やりをして栽培した。
3日間後に、全ての供試植物を6号鉢から抜き取り、地下部を水で洗い付着した土を全て取り除いた。
処理量(0mL、200mL)毎の供試植物2株の地下部を全て切り取り、各処理量の検体として、その新鮮重量を秤量した。
上記「アレロパシー物質の確認試験1」と同様に、供試植物の地下部に含まれる成分をライブラリー検索に基づいて同定し、各処理量の検体の補正面積を得た。
実施例1の試験検体の酢酸濃度と処理量と共に、確認された成分名と上記補正面積を下記表5に示す。また、200mL処理した供試植物から検出された数値を、0mL処理の供試植物から検出された数値で除した「成分増加度」も、表5に合わせて示す。
Figure 2023177329000006
(3)結果
表5に示したとおり、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の具体例である実施例1の試験検体を、キャベツ地下部に処理することにより、キャベツ地下部が産出する3-フェニルプロパンニトリルとフェネチルイソチアシネートを大きく向上させ得ることが明らかとなった。
また、3-フェニルプロパンニトリル、フェネチルイソチアシネートは、コガネムシ類やハムシ類に対して摂食抑制効果を有することが別途試験により確認された。
これらの3-フェニルプロパンニトリル、フェネチルイソチアシネートは、植物の防御応答によって生成されることが知られており、これらもコガネムシ類に対して摂食抑制効果を有するものと考えられる。
<アレロパシー物質の摂食抑制効果の確認試験2>
上記「アレロパシー物質の確認試験2」において、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の具体例である実施例1の試験検体を処理することにより、キャベツ地下部が産出することが確認された3-フェニルプロパンニトリル、フェネチルイソチアシネートが、コガネムシ幼虫の摂食抑制効果を確認する試験を行った。
(1)試験検体
処理区の試験検体として、下記市販試薬をエタノール(99%濃度、発酵アルコール)に希釈した10%溶液(w/w%)0.1gを、昆虫用飼料(インセクタ LFS、日本農産工業製)1g(直径約3cm、表面積約7cm、厚さ約1.3mm)の表面に塗付し、重量が変動しなくなるまで十分に乾燥したものを用いた。また、無処理区の試験検体は、昆虫用飼料1gの表面にエタノール(99%濃度、発酵アルコール)のみを塗布し、重量が変動しなくなるまで十分に乾燥したものを用いた。
3-フェニルプロパンニトリル、フェネチルイソチアシネート:東京化成工業製
(2)試験方法
上記「アレロパシー物質の摂食抑制効果の確認試験1」と同じ試験方法を、3反複繰り返し実施した。
上記計算式により、各成分の「摂食率(%)」を算出した。
3-フェニルプロパンニトリル、フェネチルイソチアシネートの、上記計算式により算出された各「摂食率(%)」を、下記表6にまとめて示す。
Figure 2023177329000007
表6に示すとおり、上記「アレロパシー物質の確認試験2」において、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の具体例である実施例1の試験検体を処理することにより、キャベツ地下部が産出することが確認された3-フェニルプロパンニトリル、フェネチルイソチアシネートは、試験虫(コガネムシ2齢幼虫)の摂食を抑制することが、特に、フェネチルイソチアシネートは摂食を大きく抑制することが確認された。
なお、試験虫を接種しない場合、昆虫用飼料単体の重量は変動しないことを確認した。
上記「アレロパシー物質の摂食抑制効果の確認試験1、2」において、本発明における組成物あるいはアレロパシー物質誘発剤の具体例である実施例1の試験検体を処理することにより、キャベツ地下部が産出することが確認された3-フェニルプロパンニトリル、フェネチルイソチアシネートは、コガネムシ類幼虫の摂食を抑制することが確認されたが、コガネムシ類幼虫以外のハムシ類幼虫においても、同様に摂食抑制効果が得られることが確認された。

Claims (2)

  1. 酢酸および/またはその塩を有効成分とする組成物を、
    植物体地下部に処理することにより、
    植物体地下部にアレロパシー物質を産出させて、
    害虫による植物体地下部の食害を抑制する方法。
  2. 酢酸および/またはその塩を有効成分とする、植物体地下部におけるアレロパシー物質誘発剤。

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