JP2023176590A - 遺伝子導入ブタの製造方法、体細胞クローニング原料、遺伝子導入ブタ、樹立された体細胞、及び組織ないし臓器 - Google Patents

遺伝子導入ブタの製造方法、体細胞クローニング原料、遺伝子導入ブタ、樹立された体細胞、及び組織ないし臓器 Download PDF

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Abstract

【課題】組織ないし臓器選択的に、当該組織ないし臓器内で特定の機能性タンパク質を発現するための遺伝子群が導入された遺伝子導入ブタの製造方法、それに使用される体細胞クローニング原料、遺伝子導入ブタ、それから樹立された体細胞等を提供する。【解決手段】機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、組み換え酵素によって前記機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクトを含む遺伝子カセットをセーフハーバー領域へ導入して得られた遺伝子改変ブタ細胞を体細胞クローニングして得られる遺伝子改変クローンブタの精子と、ベクター(1)とを含む液を卵に顕微授精することにより遺伝子導入する工程を含む遺伝子導入ブタの製造方法であって、前記ベクター(1)が、特定の組織ないし臓器で発現するプロモーター、特定の組織ないし臓器で発現する前記プロモーターの下流に存在し制御下にある前記組み換え酵素をコードする遺伝子を含む、製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、遺伝子導入ブタの製造方法、それに使用される体細胞クローニング原料、遺伝子導入ブタ、それから樹立された体細胞、及びそれから摘出された組織ないし臓器に関する。
組織ないし臓器選択的なコンディショナル(条件的)に、更には時期選択的なコンディショナルに当該組織ないし臓器内で特定の機能性タンパク質を発現することができる遺伝子導入ブタの開発が求められている。
ブタは、例えば、マウス等のげっ歯類と比較して、繁殖ないし交配が煩雑であることから、コンディショナルな遺伝子発現を行うための制御遺伝子カセットと、機能性タンパク質をコードする遺伝子を含む機能遺伝子カセットとの両方を含むベクターをブタに遺伝子導入して遺伝子導入ブタを製造することを、本発明者らは当初試みていた。
しかしながら、本発明者らは、コンディショナルな遺伝子発現を行うための制御遺伝子カセットと、機能性タンパク質をコードする遺伝子を含む機能遺伝子カセットとの両方を含むベクターをブタに遺伝子導入すると、コンディショナルに特定の組織ないし臓器内で上記機能性タンパク質を発現するための遺伝子群が導入された遺伝子導入ブタを製造することは困難であることを見出している(後述の比較例)。
本発明は、以上のような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、組織ないし臓器選択的に、当該組織ないし臓器内で特定の機能性タンパク質を発現するための遺伝子群が導入された遺伝子導入ブタの製造方法、それに使用される体細胞クローニング原料、遺伝子導入ブタ、それから樹立された体細胞、及びそれから摘出された組織ないし臓器の提供にある。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、機能性タンパク質をコードする遺伝子を含む機能遺伝子カセットによる遺伝子導入と、コンディショナルな遺伝子発現を行うための制御遺伝子カセットを含むベクターによる遺伝子導入とを分割して2段階の遺伝子導入とすることにより、コンディショナルに当該組織ないし臓器内で機能性タンパク質を発現ための遺伝子群が導入された遺伝子導入ブタを製造することができることを見出した。つまり、機能性タンパク質をコードする遺伝子を含む機能遺伝子カセットを遺伝子導入した遺伝子改変クローンブタを構築した後、構築された遺伝子改変クローンブタを、制御遺伝子カセットを含むベクターにより更に遺伝子導入することにより、コンディショナルに当該組織ないし臓器内で機能性タンパク質を発現するための遺伝子群が導入された遺伝子導入ブタを製造することができることを見出した。
本発明は、上記知見に基づき完成されるに至ったものである。
すなわち本発明は以下の通りである。
<1>機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、組み換え酵素によって前記機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクトを含む遺伝子カセットをセーフハーバー領域へ導入して得られた遺伝子改変ブタ細胞を体細胞クローニングして得られる遺伝子改変クローンブタの精子と、
ベクター(1)とを含む液を卵に顕微授精することにより遺伝子導入する工程を含む遺伝子導入ブタの製造方法であって、
前記ベクター(1)が、
特定の組織ないし臓器で発現するプロモーター、特定の組織ないし臓器で発現する前記プロモーターの下流に存在し制御下にある前記組み換え酵素をコードする遺伝子を含む、製造方法。
<2>前記セーフハーバー領域がROSA領域である、<1>に記載の方法。
<3>前記ベクター(1)がプラスミドベクター、又は、人工染色体ベクターである、<1>に記載の方法。
<4>上記<1>~<3>請求項1~3のいずれか1項に記載の方法により製造された遺伝子導入ブタから樹立された体細胞。
<5>機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、組み換え酵素によって前記機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクトを含む遺伝子カセットをセーフハーバー領域中に含む遺伝子改変ブタ細胞を含む、体細胞クローニング原料であって、
下記ベクター(1)共存下の顕微授精による遺伝子導入用原料を提供するための、体細胞クローニング原料。
(1)特定の組織ないし臓器で発現するプロモーター、特定の組織ないし臓器で発現する前記プロモーターの下流に存在し制御下にある前記組み換え酵素をコードする遺伝子を含む、ベクター
<6>特定の組織ないし臓器で発現するプロモーター、特定の組織ないし臓器で発現する前記プロモーターの下流に存在し制御下にある前記組み換え酵素をコードする遺伝子を含み、
機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、前記組み換え酵素によって前記機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクトを含む遺伝子カセットをセーフハーバー領域中に含む、遺伝子導入ブタ。
<7>上記<6>に記載の遺伝子導入ブタから樹立された体細胞。
<8>上記<6>に記載の遺伝子導入ブタから摘出された組織ないし臓器。
本発明によれば、組織ないし臓器選択的に(好ましくは組織ないし臓器特異的に)、当該組織ないし臓器内で特定の機能性タンパク質をコンディショナルに発現させるための遺伝子群が導入された遺伝子導入ブタの製造方法、それに使用される体細胞クローニング原料、遺伝子導入ブタ、それから樹立された体細胞、及びそれから摘出された組織ないし臓器を提供することができる。
図1は、参考例1において構築したloxP-Venus遺伝子を含む遺伝子カセットを示す概略図である。 図2は、参考例2において構築したCreERT2発現ベクターを示す概略図である。 図3は、参考例3において構築したloxP-DTA遺伝子を含む遺伝子カセットを示す概略図である。 図4は、上記遺伝子カセットのROSA領域へのノックイン確認結果を示す電気泳動図である。 図5は、loxP-DTA遺伝子を含む遺伝子カセットをブタROSA領域に導入した遺伝子改変ブタ細胞のタモキシフェンによる細胞死誘導確認結果を示す図である。 図6は、雌雄判定結果の電気泳動図を示す図である。 図7は、遺伝子導入判定結果の電気泳動図を示す図である。 図8は、胎仔後腎でのCreERT2発現確認結果を示す電気泳動図である。 図9は、個体(二倍体ゲノム)中のトランス遺伝子のコピー数決定結果を示す図である。 図10は、比較例のmSix2プロモーター及びCreERT2並びにloxP-DTA遺伝子の両方を含むオールインワン型ベクター1を示す概略図である。 図11は、比較例のmSix2プロモーター及びERT2CreERT2並びにloxP-DTA遺伝子の両方を含むオールインワン型ベクター2を示す概略図である。
以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
≪遺伝子導入ブタの製造方法≫
本発明の第1の態様は、機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、組み換え酵素によって前記機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクトを含む遺伝子カセットをセーフハーバー領域へ導入して得られた遺伝子改変ブタ細胞を体細胞クローニングして得られる遺伝子改変クローンブタの精子と、
ベクター(1)とを含む液を卵に顕微授精することにより遺伝子導入する工程を含む遺伝子導入ブタの製造方法である。
(1)特定の組織ないし臓器で発現するプロモーター、特定の組織ないし臓器で発現する前記プロモーターの下流に存在し制御下にある前記組み換え酵素をコードする遺伝子を含む、ベクター。
第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタは、上記遺伝子カセットの上記セーフハーバー領域への遺伝子導入(第1の遺伝子導入)、及び、上記顕微授精を介した上記ベクター(1)による第2の遺伝子導入がなされており、二重遺伝子導入ブタ(ダブル遺伝子改変ブタ)とも言える。
本発明において、上記遺伝子導入ブタは、組織ないし臓器選択的に、当該組織ないし臓器内で特定の機能性タンパク質をコンディショナルに発現させることができる遺伝子導入ブタであることが好ましい。
第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタは、機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、組み換え酵素によって前記機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクトを含む遺伝子カセットを含む。
また、第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタは、特定の組織ないし臓器で発現するプロモーター、上記プロモーターの下流に存在し制御下にある上記組み換え酵素をコードする遺伝子を含む。
それにより、上記組み換え酵素を上記コンストラクトと(好ましくは細胞内で、より好ましくは核内で)共存させることにより、コンディショナルに(条件的に(好ましくは、上記組み換え酵素発現依存的に))上記機能性タンパク質を発現することができる。
つまり、第1の態様に係る製造方法において、上記組み換え酵素をコードする遺伝子を含むベクター(1)を含む液を卵に顕微授精させることにより、コンディショナルに(条件的に(好ましくは、上記組み換え酵素発現依存的に))上記機能性タンパク質を発現可能とする遺伝子導入ブタを製造することができる。
その結果として、第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタは、組織ないし臓器選択的に(好ましくは組織ないし臓器特異的に)、当該組織ないし臓器内で上記機能性タンパク質を発現することができる。
ブタにおいては、コンディショナルな遺伝子発現を行うための制御遺伝子カセットは多い(多コピー数)ことが要求されることと比較して、機能性タンパク質をコードする遺伝子を含む機能遺伝子カセットは、少量(少コピー数)で十分である。制御遺伝子カセットによるコンディショナルな発現を行うために十分な遺伝子導入(トランスフェクト)が達成されると、上記機能遺伝子カセットのコピー数が多すぎて、制御遺伝子カセットと機能遺伝子カセットとの量的なバランスが、ブタにとっては十分に適切ではないことが、従来技術の問題として、上記遺伝子導入ブタの製造を困難にしていると本発明者らは推測している。また、機能遺伝子カセットの非特異的発現(リーク)の発生も、上記遺伝子導入ブタの製造を困難にしている従来技術の問題の理由と本発明者らは推測している。
より具体的には、例えば、上記制御遺伝子カセットと、上記機能遺伝子カセットとの両方を含むオールインワン型ベクター(後述の比較例参照)の組込みコピー数が低い場合、組織特異的に組み換え酵素を発現する遺伝子の発現量が不十分となり、その結果、機能性タンパク質をコードする遺伝子の発現が不十分となる。
一方、上記制御遺伝子カセットと、上記機能遺伝子カセットとの両方を含むオールインワン型ベクターの組込みコピー数が多い場合、機能性タンパク質をコードする遺伝子の発現が、リークにより過剰となり、遺伝子導入ブタの作出効率への影響等が生じる。
第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ、後述する第3の態様に係る遺伝子導入ブタにおいて、上記機能性タンパク質をコードする遺伝子のコピー数としては特に制限はないが、ブタ個体(二倍体ゲノム)当たり、例えば、1コピー以上が挙げられ、2コピー以上が好ましく、4コピー以上が更に好ましい。
上記機能性タンパク質をコードする遺伝子のコピー数の上限としては特に制限はないが、ブタ個体(二倍体ゲノム)当たり、例えば、200コピー以下、100コピー以下、550コピー以下等が挙げられる。
第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ、後述する第3の態様に係る遺伝子導入ブタにおいて、上記組み換え酵素をコードする遺伝子のコピー数としては特に制限はないが、ブタ個体(二倍体ゲノム)当たり、例えば、1コピー以上が挙げられ、2コピー以上が好ましく、4コピー以上がより好ましく、7コピー以上が更に好ましく、15コピー以上が特に好ましく、30コピー以上がとりわけ好ましい。
上記組み換え酵素のコピー数の上限としては特に制限はないが、ブタ個体(二倍体ゲノム)当たり、例えば、500コピー以下、300コピー以下、100コピー以下等が挙げられる。
第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ、後述する第3の態様に係る遺伝子導入ブタにおいて、上記機能性タンパク質をコードする遺伝子のコピー数/上記組み換え酵素をコードする遺伝子のコピー数の比率としては、1/2~1/300が挙げられ、2/3~2/100が好ましく、3/5~3/50がより好ましく、4/6~4/20が更に好ましい。
第1の態様において、上記コンストラクトとしては、上記機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、かつ組み換え酵素によって上記機能性タンパク質が発現可能となる限り特に制限はなく、DNAコンストラクト、cDNAコンストラクト、RNAコンストラクト等の核酸コンストラクト(好ましくは遺伝子コンストラクト)が挙げられる。
第1の態様において、上記コンストラクトは、上記組み換え酵素が選択的に(好ましくは特異的に)認識する特定配列を含むことが好ましく、上記組み換え酵素が選択的に(好ましくは特異的に)認識する少なくとも1対の特定配列を含むことがより好ましい。
それにより、上記組み換え酵素が少なくとも1対の特定配列(好ましくは少なくとも1対の特定配列)を選択的に認識することにより、コンディショナルな(条件的(好ましくは、上記組み換え酵素発現依存的))組み換えを起こすことができる。
上記組み換え酵素と、それにより選択的に認識される特定配列(好ましくは少なくとも1対の特定配列)の組み合わせとしては、下記(イ)~(ニ)の組み合わせが挙げられ、下記(イ)Creリコンビナーゼと、少なくとも1対のLox配列との組み合わせが好ましい。
(イ)Creリコンビナーゼと、少なくとも1対のLox配列との組み合わせ、
(ロ)出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来の組換え酵素FLPと、下記FRT配列との組み合わせ(Broach, J.R., Guarascio, V.R., & Jayaram, M. (1982). Recombination within the yeast plasmid 2mu circle is site-specific. Cell, 29(1), 227-34.)
FRT配列:5'-GAAGTTCCTATTCTCTAGAAAGTATAGGAACTTC-3'(配列番号7)
(ハ)醤油酵母(Zygosaccharomyces rouxii)由来の組換え酵素RとRS配列との組み合わせ(Araki, H., Jearnpipatkul, A., Tatsumi, H., Sakurai, T., Ushio, K., Muta, T., & Oshima, Y. (1985). Molecular and functional organization of yeast plasmid pSR1. Journal of molecular biology, 182(2), 191-203.)
(ニ)バクテリオファージMu由来の組換え酵素Ginとgix配列との組み合わせ(Maeser, S., & Kahmann, R. (1991). The Gin recombinase of phage Mu can catalyse site-specific recombination in plant protoplasts. Molecular & general genetics : MGG, 230(1-2), 170-6.)
上記特定配列としては、上記Lox配列が好ましく、上記Lox配列の中でも、バクテリオファージPに由来する34塩基のloxP配列が代表例であり、いわゆるCre-loxPシステムを構築することができる。
1対のloxP配列の一例を以下に示す。
5'-ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTAT-3'(配列番号1)
上記の通り、Cre結合部位である両末端の13塩基は対称で、中心部の8塩基は非対称であることが分かる。
loxPには方向性があり、1対のLox配列が同じ方向(同じ向き)に配置されていれば、その間の配列が、Creによって環状DNAとして切り出される。切り出された環状DNAが元に戻ることは稀であり、上記切り出しは実質的に不可逆的と言える。
一方、1対のLox配列が逆方向(逆向き)に配置されていれば、その間の配列が反転する(向きが入れ替わる)。上記反転は可逆的と言える。
第1の態様において、少なくとも1対のLox配列は1~4対のLox配列が好ましく、1~3対のLox配列がより好ましく、1又は2対のLox配列が更に好ましい。
少なくとも1対のLox配列としては、代表例として上記したloxP配列のみならず、lox511配列、lox2272配列、loxFAS配列、loxRE配列、loxLE配列等が挙げられ、これらのうちの2対以上を組み合わせて使用してもよい。
lox511配列、lox2272配列、loxFAS配列、loxRE配列、loxLE配列の一例を以下に示す。下記配列中、小文字はloxP配列と相違する塩基である。
lox511:5'-ATAACTTCGTATAGtATACATTATACGAAGTTAT-3'(配列番号2)
lox2272:5'-ATAACTTCGTATAGgATACtTTATACGAAGTTAT-3'(配列番号3)
loxFAS:5'-ATAACTTCGTATAtacctttcTATACGAAGTTAT-3'(配列番号4)
lox RE:5'-ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAcggta-3'(配列番号5)
lox LE:5'-taccgTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTAT-3'(配列番号6)
loxP-loxP間、lox511-lox511間、lox2272-lox2272間はそれぞれ特異的に組換えを起こす一方、loxP-lox511間、loxP-lox2272間では組換えを起こすことはないことが知られている。
この特異的組み換え特性を利用して、2対以上のLox配列(各々の1対の配列間では逆方向(逆向き)に配置)を使用して、目的遺伝子(機能性タンパク質をコードする遺伝子)を逆向きに配置し(不活性型)、Creによって「不可逆的に」組換えを起こしてエクソンフリップにより活性化するFLEx(Flip-excision)switchとすることができる(実験医学2014年11月号Vol.32No.18)。これにより、1対のLox配列が逆方向(逆向き)に配置されている場合の反転の可逆性を克服することができる。
FLEx switchとする場合、2対のLox配列の組み合わせとしては、1対のloxPと、1対のlox2272との組み合わせ、1対のloxPと、1対のlox511との組み合わせ等が挙げられる。
FLEx switchとは別に、1対のLox配列を使用する形態例を以下説明する。
上記遺伝子カセットにおいて、目的遺伝子(機能性タンパク質をコードする遺伝子)を活性型の向きに配置し、目的遺伝子の上流に、同じ方向(同じ向き)に配置された1対のLox配列で挟まれた(Floxed)STOP配列を配置することができる。
1対のLox配列が同じ方向(同じ向き)に配置されていることから、CreによってSTOP配列が実質的に不可逆的に切り出され、目的遺伝子(機能性タンパク質をコードする遺伝子)を発現することができる。
上記STOP配列としては、転写停止用配列である限り特に制限はないが、SV40 poly A signal配列が挙げられ、SV40 poly A signalカセットが3つ連結された配列が好ましい。
非特異的組み換え(リーク)の防止の観点から、同じ方向(同じ向き)に配置された1対のLox配列で挟む(Floxed)配列として、上記STOP配列とともに、更に、Pause配列を含んでいてもよく、STOP配列の下流に含んでいることが好ましい。
上記Pause配列としては特に制限はないが、ヒトα2 globin gene RNA polymerase II transcriptional pause signal配列等が挙げられる。
第1の態様に係る製造方法において、上記組み換え酵素は核内移行タンパク質との融合タンパク質であることが好ましく、つまり、上記組み換え酵素をコードする遺伝子が、核内移行タンパク質をコードする遺伝子と直接又は間接に融合していることが好ましい。
核内移行タンパク質としては、核内へ移行し得る限り特に制限はないが、核移行シグナルを有するタンパク質が挙げられ、具体的には、エストロゲン受容体ERが好ましい。
上記組み換え酵素がCreリコンビナーゼであり、上記組み換え酵素をコードする遺伝子が、上記Creリコンビナーゼ及びエストロゲン受容体ERを含む融合タンパク質をコードする遺伝子であることがより好ましい。
上記Creリコンビナーゼは、特異的塩基配列(例えば、2つのLox配列からなる対)を認識してDNA相同組み換えを起こす酵素(バクテリオファージPに由来する酵素)として知られている。
エストロゲン受容体ERは、核移行シグナルを有することが知られている。
上記融合タンパク質がCreリコンビナーゼ及びエストロゲン受容体ERを含む融合タンパク質である場合、ベクター(1)を含む液を卵に顕微授精させることにより、上記融合タンパク質のCreリコンビナーゼ部分が少なくとも1対のLox配列を認識することにより、コンディショナルな(条件的(好ましくは、Cre発現依存的))組み換えを起こす遺伝子導入ブタを製造することができる。
第1の態様に係る製造方法において、上記エストロゲン受容体ERがERT2であり、上記融合タンパク質がCreERT2又はERT2CreERT2であることがより好ましい。
タモキシフェン化合物(タモキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT)等)は、細胞質内に存在するERと結合し核内に移行し得る。
ERT2はERをタモキシフェン化合物のみに結合するように改変され、核移行シグナル(エストロゲンとの)を欠損したタンパク質であることが知られている。
CreERT2、ERT2CreERT2はいずれも、前記ERT2とCreとの融合タンパク質であり、タモキシフェン化合物存在下で核内に移行することができ、Creにより組み換えを起こすことができる。
(Feil R, Brocard J, Mascrez B, LeMeur M, Metzger D and Chambon P (1996): Ligand-activated site-specific recombination in mice. Proc Natl Acad Sci U S A, 93: 10887-10890. 1996.
Feil R, Wagner J, Metzger D and Chambon P (1997): Regulation of Cre recombinase activity by mutated estrogen receptor ligand-binding domains. Biochemical and Biophysical Research Communications, 237: 752-727. 1997.)
第1の態様において、CreERT2又はERT2CreERT2を使用することにより、タモキシフェン化合物により、コンディショナルな(例えば、時期特異的)組み換えを起こすことができる。
第1及び2の態様において、上記エストロゲン受容体ERがERT2が好ましく、上記融合タンパク質がCreERT2又はERT2CreERT2が好ましい。
(上記機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、組み換え酵素によって前記機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクトを含む遺伝子カセットをセーフハーバー領域中に含む遺伝子改変ブタ細胞)
本発明は、上記機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、組み換え酵素によって前記機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクトを含む遺伝子カセットをセーフハーバー領域中に含む遺伝子改変ブタ細胞を含む、体細胞クローニング原料であって、上記ベクター(1)共存下の顕微授精による遺伝子導入用原料を提供するための、体細胞クローニング原料に関する発明でもあり、本発明の第2の態様は、当該体細胞クローニング原料である。
第1及び2の態様において、上記遺伝子改変ブタ細胞は、培養が安定的であり、また、細胞の均一性が高い観点から、樹立された(例えば、株化された、クローン化された)遺伝子改変ブタ細胞であることが好ましい。
また、樹立されることにより、遺伝子カセットをセーフハーバー領域中に導入する等の樹立前の各工程を省略して、特定の組織ないし臓器でコンディショナルに上記機能性タンパク質を発現するための遺伝子群が導入された遺伝子導入ブタを、上記顕微授精という1段階(例えば、実質的に1工程)で製造することができる観点から、遺伝子導入ブタの工業的量産性に優れる。
上記遺伝子改変ブタ細胞としては、セーフハーバー領域を(好ましくはゲノム中に)有するブタ細胞である限り特に制限はないが、線維芽細胞、前駆脂肪細胞、胚由来多能性細胞、体性幹細胞、人工多能性幹細胞等が挙げられ、線維芽細胞が好ましく、胎仔線維芽細胞がより好ましい。
第1及び2の態様における遺伝子カセットを導入するセーフハーバー領域は、ゲノム上、安全にトランス遺伝子を挿入し得る領域をいい、ゲノム上、安全にトランス遺伝子を挿入し得る非コード領域等が挙げられる。
上記セーフハーバー領域としては、ブタROSA領域又はH11領域が好ましく、ブタROSA領域がより好ましい。
ブタROSA領域としては、ROSA領域である限り特に制限はないが、13番目のブタ染色体のエクソン1及び2の間に存在するROSA領域が好ましい。
第1及び2の態様において、上記組み換え酵素の作用により上記機能性タンパク質が発現可能となることは、当該ブタ個体全身の細胞においてであってもよいし(全身的発現可能性)、特定の組織ないし臓器の細胞においてであってもよいが(局在的発現可能性)、少なくとも上記ベクター(1)で規定された「特定の組織ないし臓器」で発現可能となることが好ましい。
ブタは、例えば、マウス等のげっ歯類と比較して、繁殖ないし交配が煩雑である。
様々な組織ないし臓器で発現するプロモーターを含む様々な上記ベクター(1)を用意し、様々な上記ベクター(1)共存下で顕微授精を行うことで、各々特定の組織ないし臓器でコンディショナルに上記機能性タンパク質を発現することができる様々な遺伝子導入ブタバリエーションを、上記顕微授精という1段階(例えば、実質的に1工程)で製造することができる観点から、当該ブタ個体全身の細胞において、上記機能性タンパク質が発現可能(全身的発現可能性)であることが好ましい。
上記コンストラクトを含む上記遺伝子カセットがゲノム中のセーフハーバー領域に導入される場合、当該ブタ個体全身の細胞において、発現可能(全身的発現可能性)となり得る。
第1及び2の態様における遺伝子カセットにおいて、上記機能性タンパク質としては、任意の機能を発揮するタンパク質である限り特に制限はなく、例えば、発光(例えば、蛍光、UV光)機能、標識機能(放射線標識、任意のタグ)、遺伝子発現調節機能、遺伝子認識機能、細胞に対して致死的な機能(例えば、細胞質膜に作用してそれを破壊するなど)等の任意の機能を発揮するタンパク質が挙げられ、より具体的には、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein,GFP)、Venus等の改変GFP)、代謝関連酵素(例えば、チミジンキナーゼ、薬物代謝酵素(CYP)など)、細胞増殖関連因子(例えば、アポトーシスの調節因子BAX、線維芽細胞増殖因子FGFなど)、成長関連遺伝子タンパク質(例えば、成長ホルモン受容体、インスリン様成長因子受容体など)、細胞毒素、自殺遺伝子タンパク質(例えば、iCaspase9など)等が挙げられる。
蛍光タンパク質は一般に細胞毒性を有することが知られている。
上記細胞毒素としては細胞に対して致死的な作用(例えば、細胞質膜に作用してそれを破壊するなど)を引きおこす限り特に制限はなく、高分子の毒性物質が好ましく、毒性タンパク質がより好ましい。上記細胞毒素として具体的には、ジフテリア毒素(Diphtheria Toxin)、θ毒素、ストレプトリジンS、α,δ毒素、ロイコシジン等が挙げられ、ジフテリア毒素が好ましく、ジフテリア毒素Aがより好ましい。
ジフテリア毒素はジフテリア菌が産生する細菌毒素であり、A鎖及びB鎖の2つのドメインからなり、A鎖は毒素本体の役割を、B鎖は細胞表面にある受容体と結合し、A鎖を細胞内に取り込む機能を有する。
第1及び2の態様における遺伝子カセットにおいて、細胞毒素をコードする遺伝子としては、上記細胞毒素をコードする遺伝子が挙げられ、ジフテリア毒素をコードする遺伝子が好ましく、ジフテリア毒素A(以下、単に「DTA」ともいう。)をコードする遺伝子がより好ましい。
第1及び2の態様における遺伝子カセットにおいて、上記セーフハーバー領域のプロモーター又は上記セーフハーバー領域の上流に存在するプロモーターによる転写を当該遺伝子カセットへ受容させるために、AG等を含むスプライシングアクセプター配列(スプライスアクセプター配列)を更に含んでいてもいなくてもよいが、更に含んでいることが好ましく、「機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、組み換え酵素によって前記機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクト」の上流に更に含んでいることがより好ましく、「特定配列、及び、機能性タンパク質をコードする遺伝子」の上流に更に含んでいることが更に好ましい。
第1及び2の態様における上記コンストラクトを含む遺伝子カセットにおいて、上記機能性タンパク質の発現を制御するために、機能性タンパク質をコードする遺伝子(好ましくは特定配列、及び、機能性タンパク質をコードする遺伝子)の上流に任意のプロモーターを更に含んでいてもいなくてもよい。上記任意のプロモーターとしては、任意の細胞(好ましくは、多種の細胞)に機能するプロモーターが挙げられ、CAG(cytomagalovirus immediate early enhancer-chiken β-actin hybrid)、CMV、RSVプロモーター等が好ましく、CAGプロモーターがより好ましい。
第1及び2の態様における上記コンストラクトを含む遺伝子カセットにおいて、遺伝子改変ブタ細胞(遺伝子ノックインブタ細胞)の選抜のための薬剤選抜用配列を更に含んでいてもいなくてもよい。更に含んでいる場合、機能性タンパク質をコードする遺伝子の下流に含んでいることが好ましい。
上記薬剤選抜用配列として特に制限はないが、SV40promoter、puromycin N-acetyltransferase、及びherpes simplex virus thymidine kinase HSV-TK)のpA(ポリA)で構成される遺伝子カセット等が挙げられる。
第1及び2の態様における遺伝子カセットを上記セーフハーバー領域へ導入する方法(第1の遺伝子改変方法)としては、ゲノム編集法を使用することができ、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法等の任意のトランス遺伝子導入技術により、上記遺伝子カセット及びゲノム編集ツールを細胞内(好ましくは核内)へ導入後、ゲノム編集法により上記セーフハーバー領域へ導入することが好ましい。
ゲノム編集法による導入としては、CRISPR(Clusterd Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)/Casヌクレアーゼ等のゲノム編集用の人工ヌクレアーゼを含むゲノム編集ツールによる導入が挙げられ、Transcription Activator-Like Effector Nuclease(TALEN)及びジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を用いた人工制限酵素(人工ヌクレアーゼ)を含むゲノム編集ツールによる導入であってもよい。
CRISPR/Casヌクレアーゼは、ガイドRNA及びCasヌクレアーゼ(好ましくはCas9)を含む。
標的となる上記セーフハーバー領域中の少なくとも部分配列は、上記セーフハーバー領域中に含まれるオリゴヌクレオチドが挙げられる。
上記セーフハーバー領域中の少なくとも部分配列に特異的なガイドRNAもしくはガイドRNAをコードするDNA、及びCasヌクレアーゼをコードする核酸もしくはCasヌクレアーゼを含有する組成物を、上記セーフハーバー領域を含む真核細胞又は真核生物にトランスフェクトすることにより上記コンストラクトを含む遺伝子カセットを導入することができる。
Casヌクレアーゼをコードする核酸又はCasヌクレアーゼ、及びガイドRNA又はガイドRNAをコードするDNAは、当技術分野において公知の様々な方法、例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、DEAE-デキストラン処理、リポフェクション、ナノ粒子媒介性トランスフェクション、タンパク質形質導入ドメイン媒介性形質導入、ウイルス媒介性遺伝子送達、及びプロトプラストへのPEG媒介性トランスフェクションなどによって、細胞内に移入されうるが、これらに限定されない。また、Casヌクレアーゼをコードする核酸又はCasヌクレアーゼ及びガイドRNAは、注入などの遺伝子もしくはタンパク質を投与するための、当技術分野において公知の様々な方法によって、生物内に移入されうる。Casヌクレアーゼをコードする核酸又はCasタンパク質は、ガイドRNAとの複合体の形態で、もしくは別々に、細胞内に移入されうる。Tatなどのタンパク質形質導入ドメインと融合されたCasヌクレアーゼもまた、細胞内に効率的に送達され得る。
好ましくは、真核細胞又は真核生物は、Cas9ヌクレアーゼ及びガイドRNAが同時トランスフェクトまたは連続トランスフェクトされる。
連続トランスフェクションは、最初にCasヌクレアーゼをコードする核酸によるトランスフェクション、続いて裸のガイドRNAによる第二のトランスフェクションによって行われうる。好ましくは、第二のトランスフェクションは、3、6、12、18、24時間後であるが、それらに限定されない。
ガイドRNAの発現は、ガイドRNA発現ユニットを用いてもよい。ガイドRNA発現ユニットとしては、標的配列(上記セーフハーバー領域中の少なくとも部分配列)とガイドRNAとを含むCRISPR-Cas9系の転写ユニットとすることが好ましく、ガイドRNAを発現するためのプロモーター領域(RNAポリメラーゼIIIのプロモーター(例えば、U6プロモーターおよびH1プロモーターから選択されるプロモーター))、標的配列(上記セーフハーバー領域中の少なくとも部分配列)及びガイドRNAを有することが好ましく、プロモーター、標的配列(上記セーフハーバー領域中の少なくとも部分配列)に相補的な配列及びガイドRNAがシームレスに連結していることがより好ましい。
CRISPR/Casヌクレアーゼは、オフターゲットを防ぐために、ニッカーゼとして二本鎖DNAの一方の鎖のみを切断するCas9変異体を用いることもできる。一本鎖切断型Cas9変異体としては、例えば、Cas9(D10A)が挙げられる。一本鎖切断型Cas9変異体は例えば、標的DNAの一方の鎖に相補的な標的配列を有するガイドRNAと、そのごく近傍の他方の鎖に相補的な標的配列を有するガイドRNAとを組み合わせて用いると、一方の鎖を20塩基の特異性で切断し、他方の鎖をさらに20塩基の特異性で切断するため、併せて40塩基の特異性でDNAを切断することになり、標的の特異性を大幅に向上させることが可能となる。
第1及び2の態様における遺伝子カセットを上記セーフハーバー領域へ導入して得られた遺伝子改変ブタ細胞(遺伝子ノックインブタ細胞)は、1穴当たり1細胞未満の限界希釈、遺伝子解析、薬剤耐性等任意の手法により選抜し、樹立することができる。
下記文献(イ)~(ハ)にはゲノム編集による遺伝子改変ブタ細胞の樹立、及び上記樹立された遺伝子改変ブタ細胞の体細胞クローニングによる遺伝子改変クローンブタの作出が記載されている。
(イ)Masahito Watanabe, Kazuhiro Umeyama, Kazuaki Nakano, Hitomi Matsunari, Toru Fukuda, Kei Matsumoto, Susumu Tajiri, Shuichiro Yamanaka, Koki Hasegawa, Kazutoshi Okamoto, Ayuko Uchikura, Shuko Takayanagi, Masaki Nagaya, Takashi Yokoo, Hiromitsu Nakauchi and Hiroshi Nagashima (2022) Generation of heterozygous PKD1 mutant pigs exhibiting earlyonset renal cyst formation. Laboratory Investigation, 102:560-569; https://doi.org/10.1038/s41374-021-00717-z
(ロ)Hitomi Matsunari, Michiyo Honda, Masahito Watanabe, Satsuki Fukushima, Kouta Suzuki, Shigeru Miyagawa, Kazuaki Nakano, Kazuhiro Umeyama, Ayuko Uchikura, Kazutoshi Okamoto,Masaki Nagaya, Teruhiko Toyo-oka, Yoshiki Sawa, Hiroshi Nagashima (2020) Pigs with δ-sarcoglycan deficiency exhibit traits of genetic cardiomyopathy. Laboratory Investigation, 100:887-899; https://doi.org/10.1038/s41374-020-0406-7
(ハ)Masahito Watanabe, Kazuaki Nakano, Hitomi Matsunari, Taisuke Matsuda, Miki Maehara, Takahiro Kanai, Mirina Kobayashi, Yukina Matsumura, Rieko Sakai, Momoko Kuramoto, Gota Hayashida, Yoshinori Asano, Shuko Takayanagi, Yoshikazu Arai, Kazuhiro Umeyama, Masaki Nagaya, Yutaka Hanazono, Hiroshi Nagashima (2013) Generation of Interleukin-2 Receptor Gamma Gene Knockout Pigs from Somatic Cells Genetically Modified by Zinc Finger Nuclease-Encoding mRNA. PLOS ONE, Volume 8, Issue 10, e76478
上記遺伝子カセットの上記セーフハーバー領域へ導入、遺伝子改変ブタ細胞の樹立は上記文献(イ)~(ハ)に記載の方法に準じて実施することができる。
(遺伝子改変クローンブタ)
第1の態様において、上記得られた(樹立された)遺伝子改変ブタ細胞(遺伝子ノックイン細胞)から遺伝子改変クローンブタ(遺伝子ノックインクローンブタ)を得る体細胞クローニング(体細胞クローン技術)としては特に制限はない。
体細胞クローン技術は、クローンを作製したいブタ細胞(好ましくは遺伝子改変ブタ細胞)を培養してドナー細胞とし、このドナー細胞をレシピエント除核卵子(卵母細胞)に細胞融合等の融合法等により核移植したのち、培養後、仮親に移植及び受胎させクローンを作製する技術をいう。
具体的には、一回目の核移植において、上記得られた(樹立された)遺伝子改変ブタ細胞(遺伝子ノックインブタ細胞)を、成熟した除核未受精卵に導入することができる。この導入にはセンダイウィルス、電気刺激による細胞融合法や細胞質内注入法を用いることができる。続いて、活性化処理を行い核を形成することができる。この活性化処理法には、ストロンチウム、エタノール、電気刺激、等が挙げられる。この核を二回目の核移植のドナーとして除核受精卵に導入することができる。
上記作業はフリーハンド(例えば、熟練者による顕微鏡下でのフリーハンド)で行っても行わなくてもよいが、マイクロマニピュレーターを使用して実施してもよい。
得られた遺伝子改変ブタ細胞由来構築卵は培養後、移植可能胚へ発生したものを仮親の子宮内に移植することで、遺伝子改変ブタ細胞(遺伝子ノックインブタ細胞)由来の遺伝子改変クローンブタ(遺伝子ノックインクローンブタ)の個体を発生することができる。
また、上記文献(イ)~(ハ)には、上述したように、遺伝子改変ブタ樹立細胞の体細胞クローニングによる遺伝子改変クローンブタの作出が記載されており、遺伝子改変ブタ樹立細胞の体細胞クローニングによる遺伝子改変クローンブタの作出は上記文献(イ)~(ハ)に記載の方法に準じて実施することができる。
上記レシピエント除核卵子(卵母細胞)としては、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、霊長類(例えば、ヒト、類人猿(チンパンジー、サル等))、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)等の任意の哺乳類のレシピエント除核卵子が好ましく、げっ歯類よりも体格等の特徴がヒトに近い哺乳類のレシピエント除核卵子がより好ましく、ブタ、ヒツジ、ヤギ、霊長類(例えば、ヒト、類人猿)のレシピエント除核卵子が更に好ましく、ブタのレシピエント除核卵子が特に好ましい。
上記移植可能胚を移植される仮親としてはブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、霊長類(例えば、ヒト、類人猿(チンパンジー、サル等))、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)等の任意の哺乳類が好ましく、げっ歯類よりも体格等の特徴がヒトに近い哺乳類がより好ましく、ブタ、ヒツジ、ヤギ、霊長類(例えば、ヒト、類人猿)が更に好ましく、ブタが特に好ましい。
(遺伝子改変クローンブタの精子)
上記得られた遺伝子改変クローンブタ(遺伝子ノックインクローンブタ)の個体から、後述の顕微授精による遺伝子導入に供される精子(遺伝子ノックインクローンブタの精子)を任意の方法で取得ないし採取することができる。
(ベクター(1))
第1の態様において後述する顕微授精による遺伝子導入に使用する上記ベクター(1)において、上記特定の臓器ないし組織としては、内臓(例えば、膵臓、腎臓、尿管、膀胱、肝臓、心臓、胃、腸等)、生殖器(例えば、卵巣、精巣等)、受精卵、胚、胎仔、骨髄(例えば、造血器官)、脳、眼、鼻、口、皮膚、神経、若しくは、それらに由来する組織、又は人工組織(軟骨細胞シート等の細胞シート、オルガノイド等)が挙げられ、内臓、生殖器、受精卵、胚、胎仔が好ましく、内臓、生殖器がより好ましく、膵臓(例えば、膵島)、腎臓(例えば、後腎、特に、後腎、尿管及び膀胱を含む泌尿器)がさらに好ましい。
上記ベクター(1)において、上記特定の組織ないし臓器で発現するプロモーターとしては、上記特定の組織ないし臓器で発現するプロモーターである限り特に制限はないが、Six2の転写を制御するプロモーター(以下、単に「Six2プロモーター」ともいう。)又はSall1の転写を制御するプロモーター(以下、単に「Sall1プロモーター」ともいう。)、Six2プロモーター、FGF20プロモーター等が挙げられ、Six2プロモーター又はSall1プロモーターが好ましい。
Six2、Sall1はいずれも、例えば、腎臓等で発現することが知られ、なかでも、腎臓前駆細胞等で発現することが知られ、特に、後腎間葉領域等で発現することが知られ、とりわけ、後腎間葉領域の前駆細胞で発現することが知られている。
Six2は、特に、尿管芽先端周囲を取り囲む未分化な後腎間葉領域等で発現することが知られている。
第1の態様における上記ベクター(1)としてはプラスミドベクター、ウイルスベクター、人工染色体ベクター等が挙げられ、プラスミドベクター、又は、人工染色体ベクターが好ましい。
プラスミドベクター、ウイルスベクターとしては、任意のクローニングベクターが挙げられる。クローニングベクターとして、例えば、pCR4Blunt-TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific社製)等が市販されており、本発明に使用し得る。
人工染色体ベクターとしては、細菌人工染色体(Bacterial Artificial Chromosome;BAC)、酵母人工染色体(YAC)、P1ファージ由来人工染色体(PAC)、ブタ人工染色体、等が挙げられ、BAC、YAC、又はPACが好ましい。
上記ベクター(1)は直鎖状であっても、環状であってもよいが、下記顕微授精に供する観点、及び、増幅する観点から、直鎖状が好ましい。直鎖化は任意の方法で行うことができる。
(顕微授精することにより遺伝子導入する工程)
上記遺伝子改変クローンブタの精子(遺伝子ノックインクローンブタの精子)及び上記ベクター(1)を含む液と卵(好ましくは卵子、より好ましくは成熟卵子)との顕微授精(卵細胞質内精子注入;ICSIともいう。)により、顕微授精を介した上記ベクター(1)による更なる遺伝子導入(第2の遺伝子改変)を行うことができる(ICSI mediated gene transfer method)。
顕微授精は、上記精子及び上記ベクター(1)を含む液を任意の方法(例えば、注射、ガラス管、毛細管)により上記卵(好ましくは成熟卵子)へ注入し、受精させることにより行うことができる。
上記注入作業はフリーハンド(例えば、熟練者による顕微鏡下でのフリーハンド)で行っても行わなくてもよいが、マイクロマニピュレーターを使用して実施してもよい。
得られた受精卵を超音波処理により活性化してもしなくてもよい。
次いで、上記受精卵をレシピエント雌(仮親)の子宮内に移植して目的の遺伝子導入ブタ(二重遺伝子改変ブタ)の個体を発生させることができる。
上記精子及び上記ベクター(1)を含む液としては、上記精子及び上記ベクター(1)を共存させ得る限り特に制限はないが、無機塩、緩衝剤、栄養成分、血清アルブミン等を任意に含んでいてもよい、pH7.0~8.0付近の、任意の水溶液、任意の緩衝液、任意の培養液等が挙げられる。
上記顕微授精に供されるブタの卵としては、卵子が好ましく、成熟卵子がより好ましい。
≪遺伝子導入ブタ≫
本発明の第3の態様は、特定の組織ないし臓器で発現するプロモーター、特定の組織ないし臓器で発現する前記プロモーターの下流に存在し制御下にある上記組み換え酵素をコードする遺伝子を含み、
機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、前記組み換え酵素によって前記機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクトを含む遺伝子カセットを含む、遺伝子導入ブタである。
「特定の組織ないし臓器で発現するプロモーター、特定の組織ないし臓器で発現する前記プロモーターの下流に存在し制御下にある上記組み換え酵素をコードする遺伝子」は、当該遺伝子導入ブタ(好ましくは、当該遺伝子導入ブタの細胞)中の任意の位置に存在していて(組み込まれていて)よく、例えば、当該遺伝子導入ブタ(好ましくは、当該遺伝子導入ブタの細胞)の細胞質中、ゲノム中、ミトコンドリアゲノム中等に存在する(組み込まれる)ことが挙げられ、細胞質中又はゲノム中に存在する(組み込まれる)ことが好ましい。細胞質中に存在する場合、プラスミドに含まれる形態で存在していてもよい。
機能性タンパク質をコードする遺伝子を含む上記コンストラクトを含む上記遺伝子カセットが含まれる上記セーフハーバー領域中に、「特定の組織ないし臓器で発現するプロモーター、特定の組織ないし臓器で発現する前記プロモーターの下流に存在し制御下にある上記組み換え酵素をコードする遺伝子」も存在しても(組み込まれても)しなくてもよいが、制御遺伝子カセットと機能性遺伝子カセットとの発現量のバランスの観点から、上記セーフハーバー領域中に存在しない(組み込まれない)ことが好ましい。
第3の態様に係る遺伝子導入ブタは、第1の態様に係る製造方法により製造することができる。
第3の態様において、「特定の組織ないし臓器で発現するプロモーター」、「組み換え酵素」、「組み換え酵素をコードする遺伝子」、「機能性タンパク質」、「機能性タンパク質をコードする遺伝子」、「機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクト」、「遺伝子カセット」、「遺伝子導入ブタ」の具体例、及び好ましい例としては、第1の態様について上述した具体例、及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ(二重遺伝子改変ブタ)、第3の態様に係る遺伝子導入ブタは、胎仔、幼体、成体のいずれであってもよいが、免疫原性が低い観点から、胎仔であることが好ましい。
第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ、第3の態様に係る遺伝子導入ブタは、上述のように、組織ないし臓器選択的に(好ましくは組織ないし臓器特異的に)、当該組織ないし臓器内で特定の機能性タンパク質をコンディショナルに発現させることができる。
第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ、第3の態様に係る遺伝子導入ブタは、上記機能性タンパク質が細胞毒素である場合、当該組織ないし臓器内の細胞の少なくとも一部(好ましくは、当該組織ないし臓器の表面及び表層の細胞を除いた当該組織ないし臓器内部の細胞)をコンディショナルに死滅させることができる。
これにより、所望の組織ないし臓器だけ、内部の細胞の少なくとも一部(好ましくは、当該組織ないし臓器の表面及び表層の細胞を除いた当該組織ないし臓器内部の細胞)をコンディショナルに死滅させることができる。
また、第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ、第3の態様に係る遺伝子導入ブタは、上述のように、時期特異的なコンディショナルに特定の機能性タンパク質を発現することもできる。
第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ、第3の態様に係る遺伝子導入ブタは、上記機能性タンパク質が細胞毒素である場合、組織ないし臓器内の細胞の少なくとも一部(好ましくは、当該組織ないし臓器の表面及び表層の細胞を除いた当該組織ないし臓器内部の細胞)を時期特異的なコンディショナルに死滅させることもできる。
第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ(二重遺伝子改変ブタ)、第3の態様に係る遺伝子導入ブタは、体細胞クローン用の材料であってもなくてもよい。
具体的には、第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ(二重遺伝子改変ブタ)、第3の態様に係る遺伝子導入ブタから任意の方法により体細胞を取得ないし採取して、上記体細胞をドナー細胞とし、このドナー細胞をレシピエント除核卵子(卵母細胞)に細胞融合等の融合法等により核移植したのち、培養後、仮親に移植及び受胎させクローンを作製してもよい。
本発明は、第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ(二重遺伝子改変ブタ)、第3の態様に係る遺伝子導入ブタから樹立された(例えば、株化された、クローン化された)体細胞に関する発明でもある。
上記体細胞が、樹立されていることにより、培養が安定的であり、また、細胞の均一性が高い。その結果、第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ(二重遺伝子改変ブタ)、第3の態様に係る遺伝子導入ブタのクローンを工業的量産性に優れる。
第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ(二重遺伝子改変ブタ)、第3の態様に係る遺伝子導入ブタは、上記クローンを含んでいてもよい。
第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ(二重遺伝子改変ブタ)又は第3の態様に係る遺伝子導入ブタを、このような体細胞クローン用の材料として使用することにより、第1の態様に係る製造方法により製造される遺伝子導入ブタ(二重遺伝子改変ブタ)又は第3の態様に係る遺伝子導入ブタから組織ないし臓器を工業的に製造することができる。
≪組織ないし臓器≫
本発明の第4の態様は、第1の態様に係る製造方法により製造された遺伝子導入ブタ(二重遺伝子改変ブタ)又は、第3の態様に係る遺伝子導入ブタから任意の方法により摘出した組織ないし臓器である。
上記臓器ないし組織としては、内臓(例えば、膵臓、腎臓、尿管、膀胱、肝臓、心臓、胃、腸等)、生殖器(例えば、卵巣、精巣等)、受精卵、胚、胎仔、骨髄(例えば、造血器官)、脳、眼、鼻、口、皮膚、神経、若しくは、それらに由来する組織、又は人工組織(軟骨細胞シート等の細胞シート、オルガノイド等)が挙げられ、内臓、生殖器、受精卵、胚、胎仔が好ましく、内臓、生殖器がより好ましく、膵臓(例えば、膵島)、腎臓(例えば、後腎、特に、後腎、尿管及び膀胱を含む泌尿器)がさらに好ましい。
第4の態様に係る組織ないし臓器は、上記組織ないし臓器内で特定の機能性タンパク質をコンディショナルに発現することができる。
第4の態様に係る組織ないし臓器は、上記機能性タンパク質が細胞毒素である場合、上記組織ないし臓器内の細胞の少なくとも一部(好ましくは、当該組織ないし臓器の表面及び表層の細胞を除いた当該組織ないし臓器内部の細胞)をコンディショナルに死滅させることができる。
第4の態様に係る組織ないし臓器において、上記機能性タンパク質が細胞毒素である場合、上記細胞の少なくとも一部(好ましくは、当該組織ないし臓器の表面及び表層の細胞を除いた当該組織ないし臓器内部の細胞)をコンディショナルに死滅させた部分を外来物に置き換えることができる。
ここで、上記外来物は、上記組織ないし臓器以外に由来する物質を意味し、ヒト又は動物由来の物質、薬物(例えば、医薬品)等が挙げられる。物質としては、例えば、細胞、成長因子、ホルモン、サイトカイン等が挙げられ、中でも細胞が好ましい。上記細胞は樹立済みの細胞(例えば、遺伝子組み換え細胞、ES細胞、iPS細胞)であってもなくてもよい。
以下に本発明の実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
<参考例1>
(loxP-Venus遺伝子を含む遺伝子カセットの構築)
スプライシングアクセプター配列にloxP-STOP-Pause-loxP配列が続き、その下流にVenus-pA、薬剤選択用のPuroR(ピューロマイシン耐性遺伝子カセット)で構成されたノックインベクターを構築した。当該ベクターの両末端(5’側及び3’側)にノックインのためのホモロジーアームとしてROSA領域の配列(それぞれ700塩基対程度)が連結されている。
図1は、上記構築したloxP-Venus遺伝子を含む遺伝子カセットの概略図である。
図1中、SAは、ROSAプロモーターによる転写を当該遺伝子カセットへ受容させるためのスプライシングアクセプター配列を示し、STOPはSV40 poly A signalカセットが3つ連結された配列を示し、Pauseは、ヒトα2 globin gene RNA polymerase II transcriptional pause signal配列を示し、VenusはVenus配列を示し、pAは、Rabbit β-globin遺伝子の3’-UTR(非翻訳領域)を示し、PuroRはSV40promoter、puromycin N-acetyltransferase、及びherpes simplex virus thymidine kinase HSV-TK)のpA(ポリA)で構成される遺伝子カセットを示す。
<参考例2>
(組織ないし臓器特異的CreERT2発現ベクターの構築)
マウスSix2遺伝子の開始コドン周辺領域より上流の約7k塩基をmSix2プロモーターとし、当該mSix2プロモーターの3’末端にCreERT2及びpAが連結されている遺伝子カセットをpCR4Blunt-TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific社製)に導入して組織ないし臓器特異的CreERT2発現ベクターを構築した。
図2は、上記構築したCreERT2発現ベクターを示す概略図である。
図2中、pAは、Rabbit β-globin遺伝子の3’-UTRを示す。
得られた組織ないし臓器特異的CreERT2発現ベクターはリニアライズ後、下記顕微授精法(ICSI mediated gene transfer method)で使用した。
<参考例3>
(loxP-DTA遺伝子を含む遺伝子カセットの構築)
スプライシングアクセプター配列にloxP-STOP-Pause-loxP配列が続き、その下流にDTA-pA、薬剤選択用のPuroR(ピューロマイシン耐性遺伝子カセット)で構成されたノックインベクターを構築した。当該ベクターの両末端(5’側及び3’側)にノックインのためのホモロジーアームとしてROSA領域の配列(それぞれ700塩基対程度)が連結されている。
図3(a)は、上記構築したloxP-DTA遺伝子を含む遺伝子カセットの概略図である。
図3(a)中、SAは、ROSAプロモーターによる転写を促進するためのプライシングアクセプター配列を示し、STOPはSV40 poly A signalカセットが3つ連結された配列を示し、Pauseは、ヒトα2 globin gene RNA polymerase II transcriptional pause signal配列を示し、DTAはジフテリア毒素Aフラグメント配列を示し、pAは、Rabbit β-globin遺伝子の3’-UTR(非翻訳領域)を示し、PuroRはSV40 promoter、puromycin N-acetyltransferase、及びherpes simplex virus thymidine kinase HSV-TK)のpA(ポリA)で構成される遺伝子カセットを示す。
図3(b)は、上記遺伝子カセットのROSA領域へのノックインの概略図である。
(ROSA領域にloxP-DTA遺伝子を含む遺伝子カセットをCRISPR/Cas9により導入した細胞の樹立)
ブタ胎仔繊維芽細胞5.0×10cellに対し、上記loxP-DTA遺伝子を含む遺伝子カセット、gRNA複合体及びリコンビナントCas9からなるRNP複合体を上記細胞にエレクトロポレーション法により導入した。
ここで、上記gRNA複合体はtracrRNA(Trans-activating crRNA)及び下記配列で表されるブタROSA領域-gRNA(ガイドRNA)からなる。下記ブタROSA領域-gRNA(ガイドRNA)が有する下記配列は、ブタ染色体13番目の65,757,140から65,757,159に位置し、ROSAのエクソン1及び2の間に存在する配列である。ただし、上記遺伝子の位置番号は、2022年5月24日時点でのUCSCゲノムブラウザにおける位置番号であり、データベースのアップデートにより変動することもある。

ブタROSA領域-gRNA
5’-GTAGTGCTCTAGATTAGCAC-3’(配列番号8)

ピューロマイシン耐性による選抜を行った後、1穴当たり1細胞未満の限界希釈を行い、増殖したシングルセル細胞由来のクローンについて遺伝子解析を行い、上記構築したloxP-DTA遺伝子を含む遺伝子カセットをブタROSA領域に導入した遺伝子改変ブタ細胞を樹立した。
図4は、上記遺伝子カセットのROSA領域へのノックイン確認結果を示す電気泳動図である。
図4に示された結果から明らかなように、上記遺伝子カセットがROSA領域へノックインされたことが確認された。
(上記loxP-DTA遺伝子を含む遺伝子カセットをブタROSA領域に導入した遺伝子改変ブタ細胞におけるERT2CreERT2及びタモキシフェンによる細胞死誘導の確認)
別途構築したERT2CreERT2発現ベクターを、エレクトロポレーションにより上記loxP-DTA遺伝子を含む遺伝子カセットをブタROSA領域に導入した遺伝子改変ブタ細胞に導入した。
その後、10nMのタモキシフェン(4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT))を添加した培地で培養した。結果を図5に示す。
図5に示した結果から明らかなように、loxP-DTA遺伝子を含む遺伝子カセットをブタROSA領域に導入した遺伝子改変ブタ細胞の細胞死が確認された。
(上記遺伝子改変ブタ細胞から遺伝子改変クローンブタの構築)
上記loxP-DTA遺伝子を含む遺伝子カセットをブタROSA領域に導入した遺伝子改変ブタ細胞を直径35mmディッシュに10%ウシ胎児血清(FBS)加ダルベッコ改変イーグル(DMEM)培養液中の5×10cell播種し、1回継代した。継代後14~18時間目に培養液の半量を除き、培養2時間後、軽くピペッティングしてから培養液を回収し、1000rpmで3分間遠心して細胞を集めた。これを核移植の核ドナー細胞として用いた。
核移植には野生型雌ブタの卵巣から採取した卵子を体外で成熟させて得た第二減数分裂中期の未受精卵の除核したものをレシピエント細胞質として用いた。核移植操作は卵子操作液中で行った。核ドナー細胞とレシピエント細胞質の融合には電気融合法を用いた。融合が完了した卵を30分~1時間培養液中で培養した後、直流電気刺激を与えた。それらの卵の少なくとも一部が正常に活性化し、発生を開始した。
体外培養した核移植胚のうち、1~2日目に正常分割した胚、あるいは5~6日目に胚盤胞に発生した胚を、発情周期を同期化した受胚ブタの卵管あるいは子宮へ移植した。
移植された胚の少なくとも一部から新生仔が生まれ、遺伝子改変クローンブタを構築できた。上記得られた遺伝子改変クローンブタから精子を回収した。上記精子は以降の顕微授精法(ICSI mediated gene transfer method)に使用することができる。
<参考例4>
(ICSIを介した組織ないし臓器特異的CreERT2発現ベクターによる遺伝子導入ブタの構築)
顕微授精法に用いる精子に超音波処理を加え、頭部と尾部とを分離した。超音波処理は、約70%の精子において頭部と尾部の分離が生じる強度とした。上記<参考例2>で構築した組織ないし臓器特異的CreERT2発現ベクター及びブタ精子頭部を培養液中で共培養した後1個の精子頭部を注入ピペット内へ吸い込み、1回以上のピエゾパルスを用いて注入ピペットを卵子内に注入した。注入ピペットが卵細胞質内に到達したことを確認し、速やかに精子頭部を卵子内に注入した。精子の注入は卵操作用溶液中で行った。
着床前の培養:ICSI後、精子を注入した卵子は、プラスチック製カルチャーディッシュ(IWAKI社製)の上に作製したPZM5培養液ドロップ中に移した。培養20及び44時間目に、正常1細胞期胚及び正常分割胚を観察した。あるいは116及び140時間目に、胚盤胞期胚を観察した。
胚移植:PZM培養液の微小滴中で上記期間培養した胚を、受胚レシピエントブタの卵管内あるいは子宮内へ移植した。正常1細胞期胚及び正常分割胚は、排卵後1日以内の卵管に、また胚盤胞は排卵後4日目の子宮へ移植した。
(雌雄判定試験)
受胚レシピエントブタ4頭(#236、#365、K364、#238)から合計42頭の胎仔が得られた。胎仔より尾を取得後、DNA抽出キット(DNeasy Blood and Tissue Kit,QIAGEN製)でゲノムDNAを抽出し、アメロゲニン(AMEL XとAMEL Y)を対象としたPrimerを用いたPCRにより雌雄判定を実施した。
得られた42頭についての雌雄判定結果の電気泳動図を図6に示す。
図6から明らかなように、#236-1、5、6、8、#365-1、2、4、9、10、11、12、13、K364-3、4、5、6、8、#238-1、3、5、6は雄であり、#236-2、3、4、7、9、#365-3、5、6、7、8、K364-1、2、7、#238-2、4、7~12であった。
(遺伝子導入判定試験)
上記42頭の胎仔のゲノムDNA(上記)を用いて、導入遺伝子上のmSix2プロモーターからCreERT2対象としたPrimerを用いたPCRを実施した。
PCR産物を1%アガロースゲル(トリス-酢酸-EDTA)を用いて電気泳動して遺伝子導入判定を行った。結果を図7に示す。
図7は、遺伝子導入判定結果を示す電気泳動図である。
図7中、MはDNA分子量マーカーであり、Nはネガティブ対照であり、野生型ブタのゲノムDNAを使用し、Pはポジティブ対照であり、CreERT2発現遺伝子ベクターを使用した。
図7から明らかなように、上記42頭の胎仔のうち、合計9頭の組織ないし臓器特異的CreERT2発現遺伝子導入ブタの胎仔が得られ、遺伝子導入ブタの作出効率は21%であった(#236-2、5、6、#365-3、4、12、K364-8、#238-5、7)。ただし、#365-12、K364-8は退行胎仔であった。
(胎仔後腎でのCreERT2発現確認試験)
上記組織ないし臓器特異的CreERT2発現遺伝子導入ブタの胎仔のうち、#236-2、5、6、#365-3、4、12について、各々から後腎1個を採取し、RNeasy Plus Mini Kit(QIAGEN社製)添付の組織溶液中でバイオマッシャー(ニッピ製)を用いてホモジナイズし、製品プロトコールに従ってtotalRNAを回収した。SuperScriptIII Reverese Transcriptase (Thermo Fisher Scientific社製)により逆転写反応を行いcDNAを得た。Veritiサーマルサイクラー(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてCreERT2プライマー及びPigSix2プライマーを用いて増幅反応を行い、RT-PCR(ネステッドPCR)にて胎仔後腎でのCreERT2発現確認試験を行った。
PCR産物を1%アガロースゲル(トリス-酢酸-EDTA)を用いて電気泳動して胎仔後腎でのCreERT2発現確認試験を行った。結果を図8に示す。

CreERT2プライマー配列
st: 5’-CATGTCCATGCTGCCCACCTTCG-3’(配列番号9)/ 5’-GTATATCCTGGCAGCGATCGC-3’ (配列番号10)
nd: 5’-TCGCAAGAACCTGATGGACA-3’ (配列番号11)/ 5’-CGCCGCATAACCAGTGAAAC-3’ (配列番号12)

PigSix2プライマー配列
st: 5’-AGTCGCAGCGTGCTGCGCGAG-3’ (配列番号13)/ 5’-CTAGGAGCCCAGGTCCACGA-3’ (配列番号14)
nd: 5’-ACCACGCAGGTCAGCAACTGG-3’ (配列番号15)/ 5’-TCCGAGCTGCCTAGCACCGAC-3’ (配列番号16)
図8は、胎仔後腎でのCreERT2発現確認結果を示す電気泳動図である。
図8中、+RTは、試料増幅のための逆転写酵素ありのデータである。
図8から明らかなように、上記組織ないし臓器特異的CreERT2発現遺伝子改変導入ブタの胎仔全て(#236-2、5、6、#365-3、4、12)の後腎でマウスSix2プロモーター下でのCreERT2遺伝子発現が確認された。
(トランス遺伝子のコピー数決定)
上記組織ないし臓器特異的CreERT2発現遺伝子導入ブタの胎仔のうち、#236-2、5、6、#365-3、4、12、#238-5、7について、上記尾組織から抽出したゲノムDNAを抽出し、デジタルPCRによりゲノム中のトランス遺伝子(導入遺伝子)のコピー数を決定した。結果を図9に示す。
図9は、二倍体ゲノム中のトランス遺伝子のコピー数決定結果を示す図である。図9中、β-アクチンは内部標準(2コピー)である。
図9に示した結果から明らかなように、二倍体ゲノム中、#236-2中のトランス遺伝子のコピー数は5コピーであり、#236-5中のトランス遺伝子のコピー数は2コピーであり、#236-6中のトランス遺伝子のコピー数は1コピーであり、#365-3中のトランス遺伝子のコピー数は16コピーであり、#365-4中のトランス遺伝子のコピー数は6コピーであり、#365-12中のトランス遺伝子のコピー数は19コピーであり、#238-5中のトランス遺伝子のコピー数は200コピー以上であり、#238-7中のトランス遺伝子のコピー数は10コピーであった。
以上のように、1個体(二倍体)当たり、1コピー又は2コピー以上、更には、200コピー以上の組織ないし臓器特異的CreERT2遺伝子が導入された遺伝子導入ブタの胎仔が得られた。
<実施例1>
(ROSA領域にloxP-Venus遺伝子を含む遺伝子カセットをCRISPR/Cas9により導入した細胞の樹立)
Neon Transfection System (Thermo Fisher Scientific)を用いたエレクトロポレーションにより、<参考例1>で上記構築したloxP-Venus遺伝子を含む遺伝子カセット、gRNA複合体及びリコンビナントCas9からなるRNP複合体を、5.0×10のブタ胎仔繊維芽細胞に導入した。
ここで、上記gRNA complexはtracrRNA(Trans-activating crRNA)及び配列番号8の配列で表される上記ブタROSA領域-gRNA(ガイドRNA)からなる。下記ブタROSA領域-gRNA(ガイドRNA)が有する下記配列は、ブタ染色体13番目の65,757,140から65,757,159に位置し、ROSAのエクソン1及び2の間に存在する配列である。ただし、上記遺伝子の位置番号は、2022年5月24日時点でのUCSCゲノムブラウザにおける位置番号であり、データベースのアップデートにより変動することもある。
ピューロマイシン耐性による選抜を行った後、1穴当たり1細胞未満の限界希釈を行い、増殖したシングルセル細胞由来のクローンについて遺伝子解析を行い、上記構築したloxP-Venus遺伝子を含む遺伝子カセットをブタROSA領域に導入した遺伝子改変ブタ細胞を樹立した。
(上記遺伝子改変ブタ細胞から遺伝子改変クローンブタの構築)
上記loxP-Venus遺伝子を含む遺伝子カセットをブタROSA領域に導入して得られる遺伝子改変ブタ細胞を直径35mmディッシュに10%ウシ胎児血清(FBS)加ダルベッコ改変イーグル(DMEM)培養液中の5×10cell播種し、1回継代する。継代後14~18時間目に培養液の半量を除き、培養2時間後、軽くピペッティングしてから培養液を回収し、1000rpmで3分間遠心して細胞を集める。これを核移植のドナー核として用いる。
核移植には野生型雌ブタの卵巣から採取した卵子を体外で成熟させて得た第二減数分裂中期の未受精卵の除核したものをレシピエント細胞質として用いた。核移植操作は卵子操作液中で行った。核ドナー細胞とレシピエント細胞質の融合には電気融合法を用いた。融合が完了した卵を30分~1時間培養液中で培養した後、直流電気刺激を与えた。それらの卵の少なくとも一部が正常に活性化し、発生を開始した。
体外培養した核移植胚のうち、1~2日目に正常分割した胚、あるいは5~6日目に胚盤胞に発生した胚を、発情周期を同期化した受胚ブタの卵管あるいは子宮へ移植した。
移植された胚の少なくとも一部から新生仔が生まれ、遺伝子改変クローンブタを構築できた。上記得られた遺伝子改変クローンブタから精子を回収した。上記精子は以降の顕微授精法(ICSI mediated gene transfer method)に使用することができる。
(ICSIを介した組織ないし臓器特異的CreERT2発現ベクターによる遺伝子導入ブタの構築)
上記<参考例2>で構築した組織ないし臓器特異的CreERT2発現ベクター及び上記ブタ精子の頭部を培養液中で共培養し上記<参考例4>と同様のICSI操作、卵子培養、及び受胚レシピエントブタの子宮への胚移植により、受胚レシピエントブタから遺伝子導入ブタの正常発達胎仔を得る。
上記正常発達胎仔を孕む雌ブタにタモキシフェンを投与、あるいは上記正常発達胎仔から採取した後腎を免疫不全マウス体内に移植後、そのマウスにタモキシフェンを投与、あるいは採取した後腎を体外培養し、培養液にタモキシフェンを添加することにより、特定の組織ないし臓器においてコンディショナルにVenus蛍光を観察することができる。
<実施例2>
(ICSIを介した組織ないし臓器特異的CreERT2発現ベクターによる遺伝子導入ブタの構築)
上記<参考例2>で構築した組織ないし臓器特異的CreERT2発現ベクター及び上記<参考例3>で得た上記loxP-DTA遺伝子を含む遺伝子カセットを導入した遺伝子改変クローンブタの精子を培養液中で共培養し上記<参考例4>と同様のICSI操作、卵子培養、及び受胚レシピエントブタの子宮への胚移植により、受胚レシピエントブタから遺伝子導入ブタの正常発達胎仔を得る。
<比較例>
(mSix2プロモーター及びCreERT2並びにloxP-DTA遺伝子の両方を含むオールインワン型ベクター1の構築)
マウスSix2遺伝子の開始コドン周辺領域より上流の約7k塩基をmSix2プロモーターとし、当該mSix2プロモーターの3’末端にCreERT2及びpAが連結され、更に上記pAの下流にCAGプロモーターが連結し、更にCAGプロモーターの3’末端にloxP-STOP-loxP配列が続き、その下流にDTA-pAで構成されたオールインワン型ノックインベクターを構築した。
図10は、上記構築したmSix2プロモーター及びCreERT2並びにloxP-DTA遺伝子の両方を含むオールインワン型ベクター1を示す概略図である。
(mSix2プロモーター及びCreERT2並びにloxP-DTA遺伝子の両方を含むオールインワン型ベクター2の構築)
マウスSix2遺伝子の開始コドン周辺領域より上流の約7k塩基をmSix2プロモーターとし、当該mSix2プロモーターの3’末端にP2A(ブタテスコウイルス-1由来自己切断2Aペプチド)が更にERT2CreERT2及びpAが連結され、更に上記pAの下流にCAGプロモーターが連結し、更にCAGプロモーターの3’末端にFLEx switch型のloxPlox2272とloxPlox2272(逆向き)とで挟まれたDTA-pA配列(逆向き)で構成されたオールインワン型ノックインベクター2を構築した。
図11は、上記構築したmSix2プロモーター及びCreERT2並びにloxP-DTA遺伝子の両方を含むオールインワン型ベクター2を示す概略図である。
得られたmSix2プロモーター及びCreERT2並びにloxP-DTA遺伝子の両方を含むオールインワン型ベクター1及び2はリニアライズ後、下記ICSIで使用した。
(ICSIを介したオールインワン型ベクター1及び2による遺伝子導入ブタの構築)
「組織ないし臓器特異的CreERT2発現ベクター」を上記mSix2プロモーター及びCreERT2並びにloxP-DTA遺伝子の両方を含むオールインワン型ベクター1又は2に変更する以外は実施例1と同様にしてICSIを介した遺伝子導入ブタの構築を行った。
ICSIを介したオールインワン型ベクター1又は2による遺伝子導入ブタの構築結果を下記表1及び2にまとめる。
Figure 2023176590000002
表1から明らかなように、ICSIを介したオールインワン型ベクター1による遺伝子導入では、正常発達遺伝子導入胎仔が1頭得られたものの、遺伝子導入ブタ胎仔の作出効率は0.35%未満であり作出効率は極めて低かった。CreERT2遺伝子のコピー数に対する、loxP-DTA遺伝子のコピー数のバランスが悪かった(過剰であった)ことが影響しているものと考えられる。
Figure 2023176590000003
表2から明らかなように、ICSIを介したオールインワン型ベクター2による遺伝子導入では、正常発達遺伝子導入胎仔は得られなかった(遺伝子導入ブタ胎仔の作出効率0%)。また、遺伝子導入された胎仔は全て退行してしまった。
以上のように、mSix2プロモーター及びCreERT2並びにloxP-DTA遺伝子の両方を含むオールインワン型ベクターでは、遺伝子導入ブタの構築は困難であった。

Claims (8)

  1. 機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、組み換え酵素によって前記機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクトを含む遺伝子カセットをセーフハーバー領域へ導入して得られた遺伝子改変ブタ細胞を体細胞クローニングして得られる遺伝子改変クローンブタの精子と、
    ベクター(1)とを含む液を卵に顕微授精することにより遺伝子導入する工程を含む遺伝子導入ブタの製造方法であって、
    前記ベクター(1)が、
    特定の組織ないし臓器で発現するプロモーター、特定の組織ないし臓器で発現する前記プロモーターの下流に存在し制御下にある前記組み換え酵素をコードする遺伝子を含む、製造方法。
  2. 前記セーフハーバー領域がROSA領域である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ベクター(1)がプラスミドベクター、又は、人工染色体ベクターである、請求項1に記載の方法。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の方法により製造された遺伝子導入ブタから樹立された体細胞。
  5. 機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、組み換え酵素によって前記機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクトを含む遺伝子カセットをセーフハーバー領域中に含む遺伝子改変ブタ細胞を含む、体細胞クローニング原料であって、
    下記ベクター(1)共存下の顕微授精による遺伝子導入用原料を提供するための、体細胞クローニング原料。
    (1)特定の組織ないし臓器で発現するプロモーター、特定の組織ないし臓器で発現する前記プロモーターの下流に存在し制御下にある前記組み換え酵素をコードする遺伝子を含む、ベクター
  6. 特定の組織ないし臓器で発現するプロモーター、特定の組織ないし臓器で発現する前記プロモーターの下流に存在し制御下にある前記組み換え酵素をコードする遺伝子を含み、
    機能性タンパク質をコードする遺伝子を含み、前記組み換え酵素によって前記機能性タンパク質が発現可能となるコンストラクトを含む遺伝子カセットをセーフハーバー領域中に含む、遺伝子導入ブタ。
  7. 請求項6に記載の遺伝子導入ブタから樹立された体細胞。
  8. 請求項6に記載の遺伝子導入ブタから摘出された組織ないし臓器。
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