JP2023173875A - 吸着剤の製造方法 - Google Patents

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猛 奥谷
Takeshi Okuya
和男 井場
Kazuo Iba
勇一 谷中
Yuichi Yanaka
康充 山中
Yasumitsu Yamanaka
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Abstract

【課題】優れた吸着特性を有する吸着剤を提供する。【解決手段】本発明の吸着剤は、シリカの含有率が0.3重量%以上の酸洗浄ケイ酸植物由来の材料のすり潰し圧縮固形物を炭化すると活性炭とシリカの混合物になる。この混合物中のシリカとアルカリ金属化合物の反応によりケイ酸アルカリを活性炭の細孔内に生成させ、ケイ酸アルカリ表面をシリカゲルで覆うことにより、窒素BET法による比表面積が5m2/g以上、BJH法による細孔の容積が0.05cm3/g以上であるケイ酸アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル複合吸着剤、あるいは、ケイ酸アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル-シリカ複合吸着剤が製造できる。【選択図】図2

Description

本発明は、ケイ酸植物由来のバイオマスから吸着剤を製造する方法に関するものである。
籾殻などの植物由来の材料を原料とする吸着剤として利用される多孔質炭素材料の製造に関しては、ケイ素集積バイオマスの炭化処理物と水酸化ナトリウムや塩化カリウムなどのアルカリ金属化合物との混合物を高温で焼成し、得られた焼成物中に残存するアルカリ金属分を溶出除去することにより、多孔性シリカ-炭素複合体が製造でき、BET表面積が900m/g以上の吸着剤として利用できる。アルカリ金属分としては未反応の水酸化ナトリウム、水酸化カリウムや塩化カリウムなどと反応生成物である水溶性のケイ酸アルカリもアルカリ金属化合物に含まれるが、ケイ酸アルカリなどのアルカリ金属化合物を完全に溶出除去することは難しい。その結果、多孔質シリカ-炭素複合体としているが、どの程度シリカ分が含まれるかは記載がない。多孔性シリカ-炭素複合体において、アルカリ金属分未溶出のものは、BET表面積が900~1000m/gであるが,アルカリ金属分溶出のものは、BET表面積が2000~4000m/gという極めて高い表面積を有する。これらのものはいずれも高い表面積を有することから吸着剤や公害防止用資材等として有効に利用される。ケイ素集積バイオマスの炭化処理物には、炭素分:57重量%、SiO:43重量%含まれており、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属化合物との混合物を高温で焼成すると、炭化処理物中のSiOはNaSiOやKSiOになる。これらのケイ酸アルカリはHOに可溶で、これを煮沸することにより、焼成物中のアルカリ分やケイ酸分を溶出させるとしている。アルカリ金属化合物の添加量は、ケイ素集積バイオマス1重量に対してアルカリ金属化合物は0.1~7重量比、好ましくは3~5重量比としている。実施例1を見ると、SiOを約25重量%含む籾殻を炭化処理し、SiOを43重量%含む炭化物を得、これにKOHを籾殻重量の5倍加え、加熱し、得られた焼成物を煮沸して、焼成物中のカリウム分及びケイ酸分を溶出した後、乾燥して多孔性シリカ-炭素複合体をえたと記載している。KOHはSiOと反応し、(SiO+2KOH→KSiO+HO)で水に可溶なKSiOが生成する。SiOをすべて水に可溶なKSiOに変換するには、理論的には、籾殻重量1に対してKOHは0.81重量必要なだけで、実施例1では6.17倍のKOHを添加していることになる。得られた多孔性シリカ-炭素複合体には、理論的にはSiOは含まれず、炭素のみとなる。実際にはSiOを完全に除去することは難しく、製造できるのは多孔性シリカ-炭素複合体としている(特許文献1)。
ケイ素の含有量が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、これを酸又はアルカリで処理をすることにより、ケイ素の含有量を1重量%以下とする多孔質炭素材料の製造方法を提示している。酸としてフッ化水素酸を用いる場合は、シリカ(SiO)がフッ化水素(HF)と反応し、ヘキサフルオロケイ酸(HSiF)あるいは四フッ化ケイ素(SiF)を生成し、前者は沸点108.5℃、後者は昇華点-95.5℃で加熱等により、ケイ素分は気体として植物由来の材料の炭化物から分離できる。アルカリを用いる場合は、アルカリ化合物との反応でケイ酸アルカリとなる。KSiOなどのケイ酸アルカリは水に可溶で、植物由来の材料の炭化物から水洗により分離できる。残留物である炭素分は、水蒸気などで賦活後、吸着剤として利用できる。植物由来の材料である籾殻から製造した炭素材は、従来の活性炭よりも性能が良く、細孔径がマクロ孔からミクロ孔まで幅広く分布し、各種の有害分子やウイルスなどをその細孔により、吸着補足できるとしている(特許文献2)。この方法でもSiOを完全に除去することは難しく、ケイ素の含有量を1重量%以下とする多孔質炭素材料としている。
活性炭はヤシ殻や石炭などを酸素のない状態で500~800℃に加熱し、炭化物に変換し、炭化物を750~1050℃で水蒸気賦活を行うか、塩化亜鉛を含浸させた炭化物を750~1050℃で加熱処理する薬品賦活を行い、活性炭を製造する(非特許文献1)。活性炭による吸着は、活性炭の表面と吸着種との接触とそこにおける相互エネルギーによって決まるもので、細孔径と吸着種径の関係が最も重要となる。細孔には直径が2nm以下のマイクロ孔、直径が2~50nmのメソ孔、直径が50nm以上のマクロ孔がある。活性炭は三種の細孔が持つ微細な細孔構造と複雑な表面性状による吸着性と触媒性を持ち、広範な有害成分、悪臭成分の除去に用いられているが、その吸着力はVen der Waal’s力に基づく物理吸着によるものとされている。Ven der Waal’s力に基づく物理吸着では、アンモニア、硫化水素、アセトアルデヒドのような極性分子に対する吸着性能は高くないので、活性炭表面にこれらの物質に吸着性能の高い被吸着種を添着し、吸着性能を改善する方法が取られている。例えば、空気中の酸性ガス(SO、NO)を除去するのにKOHなどのアルカリを添着した活性炭、アンモニアやアミンなどの悪臭成分をリン酸、硫酸などの無機酸を添着した活性炭で除去されている(非特許文献2、非特許文献3、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8)。
特許第2506600号公報 特許第4618308号公報 特公昭55-20732号公報 特公昭57-2368号公報 特公昭60-2089号公報 特公昭60-57888号公報 特公昭62-726号公報 特公昭62-729号公報
真田雄三,他2名,「新版 活性炭 基礎と応用」、株式会社講談社、2000年8月、p.44-70 西野博、"添着活性炭による悪臭成分の除去"、環境技術、1990、第19巻、第10号、p.643-645 梶間智昭、他1名、"添着活性炭による空気中の酸性ガスの除去に関する研究"、清水建設研究報告、1987、第45号、p.95-107 B.O. Juliano,"Chapter 19: Rice Hull and Rice Straw," in Rice: Chemistry and Technology, B.O. Juliano (Ed.). St Paul (Minnesota): The American Association of Cereal Chemists Incorporated, 1985, pp. 689-755 T.Okutani et al.,"Synthesis of conjunctive zeolite-activated carbon composite adsorbent from rice hulls for simultaneous adsorption of CO2and H2O", 42nd International Conference on Environmental Systems, International Conference on Environmental Systems (ICES). https://doi.org/10.2514/6.2012-3429. 真田雄三、他2名、「新版 活性炭 基礎と応用」、株式会社講談社、2000年8月、p.21 梶間 他1名、"アルカリ添着活性炭による空気中の二酸化窒素の除去"、日本建築学会計画論文集、2001、第539号、p.51-58 梶間 他1名、"アルカリ添着活性炭による空気中の二酸化硫黄の除去"、日本建築学会計画論文集、2002、第554号、p.21-26 丸茂ら 他1名、"抗酸菌に対するNaOHの殺菌作用 1.生理食塩水中での抗酸菌の生存率"、結核、1983、第58巻10号、p.515-520 丸茂ら 他1名、" 抗酸菌に対するNaOHの殺菌作用 2.人工的抗酸菌含有喀痰中の生存率"、結核、1986、第61巻4号、p.265-271 長澤ら 他3名、" 石灰系化合物の殺菌特性"、Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan、2002、第9巻、p.492-497 中田ら 他4名、"籾殻からのSiO2の製造及びその性状"、日本セラミックス協会学術論文誌、1989、第97巻8号、p.842-849 D.F. Houston, Rice: Chemistry and Technology, American Association of Cereal Chemists, Inc., St. Paul, MN, USA, 1972, p. 324.
これらのケイ素を含有する植物由来の材料から多孔質材料を製造しているが、ケイ素分であるシリカをできるだけ除去し、多孔質炭素材料を製造して、吸着剤などに利用するもの、あるいは、シリカを残し、多孔性シリカ-炭素複合体として吸着剤に利用するものである。シリカはシリカゲルに変換することにより、吸着特性に優れた吸着剤として利用できる。しかし、これらの発明では、シリカをシリカゲルとした吸着剤として利用しようとはしていない。本発明では、シリカを除去しようとするのではなく、活性炭と同様に吸着剤として利用できるシリカゲルが共存する活性炭-シリカゲル複合剤の製造法を提供することをその課題の一つとする。
ケイ素を含有する植物由来の材料から、ケイ素、すなわちシリカを除去するには水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどと煮沸し、シリカを水溶性のケイ酸アルカリにするが、これを完全に除去するのではなく、多孔質炭素材料に残し、すなわち、多孔質炭素材料に添着した状態にし、吸着剤として利用する。吸着剤を水中で使用する場合、水溶性のアルカリ金属化合物から、アルカリイオンが溶出するので、これを防ぐ吸着剤の製造法を提供することもその課題とする。
ケイ素を含有する植物由来の材料の一つである籾殻には、約80wt%のセルロース、リグニンなどの有機物と約20wt%のシリカなどの無機物が含まれている。無機物の90wt%以上はシリカ(SiO)である(非特許文献4)。吸着剤として籾殻を利用する場合、セルロース、リグニン、クチクラなどの有機物の非酸化雰囲気下での熱分解により、炭素とする。シリカを利用する場合、多孔質のシリカゲルとする必要がある。シリカゲルはシリカと水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属化合物と反応させ、ケイ酸アルカリとし、ケイ酸アルカリ水溶液に塩酸-水を反応させて、シリカゲルとするが、初生のシリカは不純物が少なく、比表面積が大きいのが適している。
籾殻中のシリカは非晶質シリカとしてクチクラ中に非常に細かく分布している。シリカは土壌中や灌漑水中のケイ酸イオン(SiO 2-)が籾殻のクチクラまで運ばれ、水を失い非晶質シリカとなる。ケイ酸(HSiO)の溶解度は非常に小さいが、カリウムなどのアルカリ金属が結合したケイ酸アルカリの溶解度は非常に大きく、SiO 2-が多くなる。Kは肥料から供給され、土壌中のSiOはケイ酸イオンとなって根から吸収される。カリウムイオンはSiOの表面にケイ酸カリウム(おそらくポリケイ酸カリウム(KSi2n+1))を生成し、比表面積の低下を招く。(非特許文献12)比表面積が小さいことは、吸着剤として好ましくない。さらに本発明で行うアルカリ金属化合物との反応でも比表面積が小さいことは不利である。また、籾殻に含まれる無機物質は18.8~22.3重量%で、この無機物質のうち、SiO:86.9~97.3重量%、KO:0.58~2.5重量%、NaO:0~1.75重量%、CaO:0.2~1.5重量%、MgO:0.12~1.96重量%、Fe:Trace~0.54重量%、P:0.2~2.85重量%、Cl:Trace~0.42重量%と報告されている(非特許文献13)。多孔質を阻害し、比表面積の低下を招くシリカ以外のアルカリ金属化合物の不純物を如何に取り除くのかが課題である。
典型的な活性炭である木質系活性炭やヤシ殻活性炭の表面形態は、木質やヤシ殻の骨格構造をそのまま残した形態を示している(非特許文献6)。酸洗浄籾殻の断面構造は、表皮細胞の外側に硬い連続状の膜状のクチクラがあり、籾殻の中心付近には繊維状や薄片状のセルロースやリグニンなどが空隙の多い形態を示している。この籾殻は酸素を含まない不活性ガス中で炭化するとクチクラの硬い膜状構造とセルロースなどの繊維状や薄片状の組織を反映した空隙の多い形態とその空隙中に細かい炭素粒子が観察される。この炭素粒子はセルロースなどの有機質のうちの低分子有機質が空隙の多い個所で熱分解を受け、メタン(CH)や一酸化炭素(CO)となり、これが熱分解や化学反応により、細かい炭素粒子となる。この炭素粒子は吸着性能に寄与しない。細かい炭素粒子を含まない吸収能の高い多孔性炭素を如何に製造するかが課題である。
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明を完成するに至った。本発明の製造方法に原料として用いるケイ酸植物としては、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、ハトムギ、キビ、アワ、ヒエ、トウモロコシ、ススキなどのイネ科植物が挙げられ、その中でも、ケイ酸含有量が高いイネの籾殻や藁などが好ましく、さらに籾殻が特に好ましい。ケイ素を含有する植物として籾殻を取り上げ説明する。
籾殻中のシリカは灌漑水や土中のシリカがケイ酸イオンとして根を通して吸収され、籾殻のクチクラ層に蓄積される。このとき、シリカだけでなく、数%含まれているカリウムや少量のカルシウム、アルミニウム、鉄などの元素も含まれている。これら不純物の内、アルカリとアルカリ土類金属の化合物、水酸化物や炭酸塩などはシリカと反応し、その表面を溶解し、その表面を平滑にする。シリカを吸着剤とする場合やシリカゲルに変換する場合は、表面積が大きい方が望ましい。たとえば、籾殻を塩酸で洗浄し、籾殻に含まれているカリウムやカルシウムなどのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を完全に、もしくは減量化した籾殻から得られた籾殻燃焼灰のSiOは92.4%から99.5%に含有率が上がり、KOは0.98%から0%に、CaOは0.56%から0.02%に減少し、その比表面積は89m/gから311m/gへと上昇する。このようにアルカリ金属、アルカリ土類金属塩を除去する塩酸などの酸洗浄により、シリカの比表面積は大きく増加し、吸着剤製造にとって好ましいし、後述するアルカリ金属化合物との反応にとっても好ましい。籾殻中のKイオンなどのアルカリイオンは、籾殻を酸で洗浄することで容易に除去することができる。酸として、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)、リン酸(HPO)、酢酸(CHCOOH)、クエン酸((CHCOOH)COOH)などが使用できる。濃度は0.01mol/Lから未希釈の酸まで、好ましくは0.1から1mol/Lの濃度。処理温度は室温から100℃まで、好ましくは50から100℃の温度で、処理時間は5分から5時間、好ましくは、15分から180分である。ソックスレー抽出器などで温酸を循環させてもよい。この酸洗浄により、アルカリ化合物以外の酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化鉄(Fe)、酸化マンガン(MnO)、五酸化リン(P)、酸化硫黄(SO)、塩素(Cl)の完全に除去、もしくは、減量化が可能である。
典型的な活性炭である木質系活性炭やヤシ殻活性炭の表面形態は、木質系やヤシ殻の骨格構造をそのまま残した形態を示している(非特許文献6)。酸洗浄籾殻の断面構造は、表皮細胞の外側に硬い連続状の膜状のクチクラがあり、籾殻の中心付近には繊維状や薄片状のセルロースやリグニンなどが空隙の多い形態を示している。この籾殻は酸素を含まない不活性ガス中加熱によって炭化すると、クチクラの硬い膜状構造とセルロースなどの繊維状や薄片状の組織を反映した空隙の多い形態とその空隙中に細かい炭素粒子が観察される。この炭素粒子はセルロースなどの有機質のうちの低分子有機質が空隙の多いところで熱分解を受け、メタン(CH)や一酸化炭素(CO)となり、これが熱分解や化学反応により、細かい炭素粒子となる。この炭素粒子は吸着性能に寄与しない。不飽和脂肪酸の重合物質であるクチンを主成分とし、このクチンが層状になったのがクチクラで、籾殻の炭化後もその組織の形態は残り、籾殻活性炭の組織構造となる。クチクラは固く層状で、籾殻中のシリカはクチクラに存在し、分散している。アルカリ化合物でクチクラ由来の炭素からシリカを除去することにより、細かい穴が多くでき、大細孔容積で幅広い細孔分布を持つ活性炭になる。そこで本発明では、籾殻の外側と内側に存在するクチクラと籾殻の中心近くに存在する空隙の多い繊維状、薄片状のセルロースなどの有機質からなる籾殻をすり潰し圧縮することにより空隙を減少もしくは消滅させ、すり潰し圧縮した籾殻を炭化することで遊離した細かい炭素粒子の生成を抑える。性能の良い活性炭を作るためには籾殻をすりつぶし圧縮することが必要となる。しかしながら、酸洗浄した籾殻をそのまま炭化し、細かい炭素粒子を残存させた状態で活性炭を製造してもクチクラ層のシリカの抜けた穴からなる活性炭は、細かい炭素粒子が残ったとしても従来の木質やヤシ殻活性炭よりは性能は良く、使用目的に応じて籾殻をすり潰し圧縮したり、籾殻のまま利用しても良い。
酸で洗浄した籾殻をすり潰し圧縮固形化する。酸洗浄籾殻を円錐形の鋳鉄の内側と外側に螺旋形に溝を入れ、表面にタングステンカーバイトを溶射した円錐の間に籾殻を押し込め押し出すことで、棒状のすり潰した籾殻の圧縮物を製造できる。溝の表面にタングステンカーバイドを溶射して用いるが、すり潰しによる摩滅発生後、その部品を取り替える頻度が多くなるだけで、特別にタングステンカーバイドで溶射する必要もない。硬度、強度の高い炭化ケイ素や超硬合金やマルテンサイト系のステンレス鋼や鋳鉄のバルク又はそれら材料に溶射を行っても好い。籾殻を0.02~5mm、好ましくは0.05~0.2mmの大きさにすり潰して細かい粒子にし、圧力0.1~10MPa、好ましくは0.5~1.5MPaで、温度は200~400℃、好ましくは300~320℃で0~30分、好ましくは0~5分で円柱状の型に押し込む。この操作により、棒状の圧縮固形籾殻が製造でき、圧縮固形籾殻の比重は約1.2となる。すり潰し圧縮なしの籾殻の比重は0.1で、約12倍に圧縮できることになる。籾殻を酸素のない雰囲気で加熱すると、230℃から籾殻中のセルロースなどの熱分解によるガスとタールの生成が徐々に始まり、310℃で急激なガスとタールの発生はおさまり、その後、温度上昇と共に徐々に発生する。固形化は急激に発生するタールを利用し、発生と同時に温度を下げ、タールを固化することにより、すり潰し籾殻が固形化することになる。長時間加熱し、十分タールを十分発生させると、タールはすり潰し籾殻の外に放出されるので、固化が難しくなる。本発明では、温度を200~400℃、好ましくは300~320℃で0~30分、好ましくは0~5分とし、すり潰し籾殻間にタールを固化するのに必要なタール分を放出させるように設定している。最も効果的な条件は、広島県三原産の籾殻で310℃、0分であったが、この条件は籾殻中のセルロースなどの含有率と関係、すなわち籾殻中のタールの発生挙動と関係があり、産地によって異なるが、上記の条件の範囲内である。
酸洗浄籾殻から製造したすり潰し籾殻固形物を窒素雰囲気などの酸素のない雰囲気下で加熱し、籾殻炭化物を製造する。雰囲気は酸素のない状態下で気流を流通させ、籾殻有機質が分解してガス及びタールが気化したガスを籾殻炭化物から排出する必要がある。これらのガスが残留すると温度は下がったときに微細な炭素粒子が生成する。微細な炭素は比表面積を大きくするが、吸着特性を低下させる。すり潰し籾殻固形物を炭化原料に用いることにより、微細な炭素粒子の発生は抑制される。酸洗浄籾殻をそのまま炭化しても微細な炭素粒子は発生するが、ヤシ殻活性炭のような他の活性炭と比べ、比表面積、細孔容積とも大きく、籾殻のまま利用しても通常の使用に十分利用できる。温度は、300~1000℃、好ましくは、700~900℃、時間は5~180分、好ましくは30~120分である。雰囲気は窒素ガスやアルゴンガスなどの非酸化性ガスを空間速度0~3(Hr-1)、好ましくは0~1(Hr-1)の空間速度で流通させれば良い。また、加熱初期に一部の籾殻を燃焼させ、燃焼ガスで籾殻加熱部雰囲気を満たしても好い。この場合、燃焼ガスは300℃付近で発生し、その後の700~900℃への温度上昇に伴って、炭化炉内の圧力は大きくなり、膨張した燃焼ガスは外部に放出されるので、炉内に空気が逆流することはない。籾殻有機質の燃焼ガスにはCO、CO、H、CHなどが含まれる。あるいは、炭化炉内で重油等の燃料を燃焼させ、温度を上昇せしめた後、炉内への空気の流入を絶ち、燃焼ガスで充満した状態で籾殻固形物を熱分解させ、籾殻固形物を得ても良い。または、炉を外界から遮断し、電熱器により炉内の温度を上昇せしめ、籾殻炭化物を得ても良い。酸洗浄籾殻を炭化する場合もすり潰し籾殻固形物を炭化する条件と同一である。
ケイ素集積バイオマスである籾殻では、シリカは籾殻の表皮細胞の外側にあるクチクラ内に存在している。クチクラは、表皮細胞がその外側に分泌することで生じる丈夫な膜で、表皮細胞の内側の空隙が多く、繊維状、膜状のセルロースなどの有機質を保護する役割を果たしている。クチクラは、主として繊維状に配列するキチン(アセチルグルコサミンの重合体)と繊維間を埋めるキノン硬化されたタンパク質からなり、強固で固く水を通さず、蒸散を妨げている。シリカはケイ酸イオンとして灌漑水や土壌中から根を通して吸収され、維管束内の道管中を籾殻のクチクラ部まで運ばれ、気孔から水を放出して非晶質シリカ(Amorphous SiO)として、クチクラ中に分子レベルで分散する。(非特許文献5)。籾殻を炭化すると籾殻中心部に存在するセルロース、リグニンなどの有機質はほとんど、メタンなどのガス、あるいは、タールとなって炭化物外に放出され、高分子であるクチクラが炭化して細孔を多く発達させ、活性炭の主成分となる。SiOはクチクラ中に分散しているので、細孔内に存在している。
本発明では、ケイ酸植物由来のバイオマス中のシリカを吸着剤として利用するためにシリカをアルカリ金属化合物と反応させ、ケイ酸アルカリに変換する。溶けたケイ酸アルカリに酸-水を加えてケイ酸(HSiO)に変換し、これを乾燥して、シリカゲルを製造する。アルカリ金属化合物には、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物や炭酸塩があるが、ここでは水酸化ナトリウムを取り上げ説明する。クチクラが熱分解を受け生成した炭素中に細かく分散しているので、炭素の細孔内にSiOは存在している。NaOH溶液は細孔のSiOと反応してケイ酸ナトリウムになる。(例えば、2NaOH+SiO→NaSiO+HO)溶液中の水酸化ナトリウムや水溶性であるケイ酸ナトリウムは水洗により取り除かれるが、細孔に入り込んだケイ酸ナトリウムは水洗では取り除かれないと考えられる。塩酸洗浄籾殻圧縮物の炭化物には39.5重量%のSiOが含まれ、そこにNaSiOを合成するのに必要なNaOHを4.8倍投入し、反応させ、余分なNaOHと水溶液中のNaSiOを水洗で洗浄液がpH12.0まで取り除いてもSiOは21.2重量%もNaSiOとして細孔内に残っていた。反応経路は図1に示した。具体的には、籾殻炭化物中のシリカに対してアルカリ化合物を0.1~9.4モル比、好ましくは1~5モル比加えた溶液に籾殻炭化物を入れ、80~100℃で30分~2時間煮沸し、シリカをケイ酸アルカリとして溶解する。籾殻炭化物中のシリカを溶解するための理論的なアルカリ化合物のモル比は2であるが、上記のモル比は最高9.4であるが、シリカは多孔質の炭素の細孔内に存在するので、アルカリ-水と接触しづらく、アルカリ量を多く投入、もしくは長時間煮沸しないとシリカをケイ酸アルカリとして溶解できない。煮沸時間は5分~6時間、好ましくは1時間~3時間である。籾殻を圧縮加熱して籾殻表層のクチクラをすり潰した凝固物は直径0.1mmから5cm塊にすることは簡単で、液体物質や気体が塊の間を通過する吸着剤としては直径1mmから1cm塊が好ましい。酸洗浄籾殻をすり潰し圧縮することなく籾殻炭化物(実際はクチクラ炭化物)をアルカリで処理をするとクチクラ炭化物は、長径5mm、短径2mm、厚さ0.04mmになり、適切な粒径に粉砕するか、造粒する必要がある。煮沸後、籾殻炭化物塊を取り出し、たとえば、目開き0.1mmのナイロンメッシュに入れ、これにpH7の水を数回以上流し、流出した濾液のpHが13から12、好ましくは12まで洗浄する。水溶性のNaSiOなどのケイ酸ナトリウムは細孔内に存在している。
図1に示した反応経路に従い、ケイ酸ナトリウムをシリカゲルに変換した。ナイロンメッシュに入れたNaOHで処理した籾殻炭化物塊を10倍から100倍、好ましくは25倍から50倍の50~80℃、好ましくは60~70℃の温0.1N塩酸溶液に入れ、0.5~3時間、好ましくは1~2時間、攪拌しながら処理をする。0.1N塩酸溶液の代わりに0.01N塩酸溶液から濃塩酸までの塩酸溶液を用いてもよいが、籾殻炭化物に対する塩酸の量を上に述べた比率に等しく用いる必要がある。塩酸溶液の代わりに硫酸または硝酸溶液を用いても良い。籾殻炭化物は塩酸溶液中に浸され、溶液外に飛び出さず、攪拌ができる酸溶液量が必要である。酸溶液内で攪拌後の籾殻炭化物塊は流水で洗浄し、濾液のpHが7.0まで繰り返し、濾過する。次に、籾殻炭化物塊を90~120℃、好ましくは100~110℃の温度で2~24時間、好ましくは10~12時間真空乾燥を行う。これらの一連の工程で、NaSiOはシリカゲルとなる。クチクラ由来の炭素中に分散し、細孔内に存在するシリカはNaOHの添加量によってシリカの全てもしくは一部がケイ酸ナトリウムになっており、炭素の細孔内に存在している。その後、酸-水とケイ酸ナトリウムと反応させてシリカゾルを作製するが、酸-水は炭素細孔内には十分入り込めず、細孔入口付近、あるいは、細孔内に生成したケイ酸ナトリウム表面にシリカゾル(乾燥・脱水によりシリカゲルになる)が生成し、細孔入り口やケイ酸アルカリ表面を覆う。ケイ酸ナトリウムは水溶性でNaは水中に溶出すると考えられるが、シリカゲルに覆われるためNaは溶出せず、水中でも吸着剤として利用できる。ケイ酸ナトリウムのNaはシリカゲル中を移動しやすいので、シリカゲル表面のシラノール基(≡Si-OH)、Naなどのアルカリイオン、または、アルカリイオンに誘起されるOHやO2-が吸着点になる化学吸着、及び、活性炭による物理吸着が存在する吸着剤となる。ケイ酸植物炭化物中のシリカに対し0.1~2.0モル比のアルカリ化合物を使用して製造した吸着剤は、シリカがアルカリ化合物と未反応で残るため、ケイ酸アルカリ添着籾殻活性炭-活性炭-シリカ-シリカゲル複合吸着剤となる。また、ケイ酸植物炭化物中のシリカに対し2.0~9.4モル比のアルカリ化合物を使用して製造した吸着剤は、シリカがアルカリ化合物と全て反応するため、ケイ酸アルカリ添着籾殻活性炭-活性炭-シリカゲル複合吸着剤となる。ケイ酸アルカリ添着籾殻活性炭-活性炭-シリカゲル複合吸着剤の模式図を図2に示した。
比表面積が5m/g以上、BJH法による細孔の容積が0.05cm/g以上の吸着剤は、活性炭の水蒸気賦活を行わなくても達成可能であり、吸着剤の使用目的によってアルカリ処理とシリカゲル化でも良い。活性炭部の水蒸気賦活を行い、比表面積、細孔容積を大きくすることが可能である。水蒸気賦活は、750~1050℃で吸着剤に対して毎分1/150~20/150重量の水を1分~30分流し、水蒸気賦活を行う。
本発明のケイ酸アルカリ添着籾殻活性炭-活性炭-シリカゲル複合吸着剤及びケイ酸アルカリ添着籾殻活性炭-活性炭-シリカ-シリカゲル複合吸着剤は窒素BET法による比表面積が5m/g以上、BJH法による細孔の容積が0.05cm/g以上を有する。シリカゲルが水溶性のケイ酸アルカリを覆っているためケイ酸アルカリの水中への溶出はないので、水の浄化などに利用できる。また、吸着サイトは活性炭の細孔の大きさに合致する物理吸着とシリカゲル表面のOHサイトへの化学吸着が生じるため、吸着力は強く、幅広い吸着種に適用できる。抗酸菌に対するNaOHの殺菌作用(非特許文献9、非特許文献10)は、報告されており、また、強アルカリに属する酸化カルシウムや水酸化アルカリなどから放出される水酸イオン(OH)による殺菌作用は古くから知られている(非特許文献11)。本発明の複合吸着剤もウイルスを破壊したり、細菌類の殺菌の利用が考えられる。
図1は、段落[0018]と《実施例3》におけるNaSiOとシリカゲルの生成反応の経路を示す図である。 図2は段落[0019]の説明で、ケイ酸アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル複合吸着剤の細孔、細孔内のケイ酸アルカリ、ケイ酸アルカリを覆っているシリカゲルの様態を示す模式図である。 図3は後述《実施例2》の説明で、籾殻の破断面の形態を示す走査電子顕微鏡写真である。 図4は後述《実施例2》の説明で、隙間の多い繊維状または鱗片状の有機物がなくなったすり潰し籾殻の圧縮物の破断面の走査電子顕微鏡写真である。 図5は後述《実施例2》の説明で、シリカを含む半球状のクチクラの有機質部も熱分解を受け、隙間がなく、微細な炭素が観察されないすり潰し籾殻の圧縮物の炭化物の破断面の走査電子顕微鏡写真である。 図6は、後述《実施例2》の説明で、籾殻のまま炭化された籾殻炭には微細な遊離炭素が籾殻の細胞壁の組織が残っている活性炭の表面に残っていることを示す走査電子顕微鏡写真である。
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、実施例に示したBET比表面積、細孔分布及び細孔容積の測定は、日本ベル株式会社製自動蒸気吸着量測定装置BELSORP-max/N-VPを用いて行った。吸着剤の形態分析には走査電子顕微鏡(日立ハイテク、TM4000PlusII)、吸着剤に含まれる元素の同定には蛍光X線分析装置(堀場製作所、XGT-5000TypeHT)、吸着剤に含まれる官能基の同定にはフーリエ変換赤外分光光度計(日本分光、FT/IR6600)、籾殻、籾殻炭化物、吸着剤の熱的挙動は示差熱熱重量計(SII、TG/DTA6200)、籾殻すり潰し圧縮物はモミガライト製造機スタンダードモデル(トロムソ、TRM-120F)を用いた。モミガライト炭化物の製造には炭焼き窯「すみっこ」(トロムソ、TCK-200B)を用いた。吸着剤中のシリカの定量は、フッ化水素酸処理により、シリカをフッ化ケイ素として揮散させ、試料の損失量から行った。アンモニア吸着量測定は、室温で飽和アンモニア蒸気に吸着剤を曝して増量分を吸着量とした。籾殻灰中のSi、Al、Ca、Fe、K、Mg、Mn、Naの定量分析は、ICP-MS(HITACHI、P-4010)で行った。
《実施例1》
籾殻約500mLを蒸留水2Lで30分撹拌しながら洗浄し、ホコリや汚れを取り除いた。0.1N塩酸溶液2Lで2時間煮沸還流させて不純物を減少・除去した。この籾殻を温水で濾過し、濾液がpH7まで洗浄し、80℃12時間真空乾燥して塩酸洗浄籾殻を得た。水洗浄籾殻と塩酸洗浄籾殻を各々5g取り、窒素100mL/分流通下、600℃1時間加熱処理し、炭化物を得た。水洗浄籾殻炭化物と塩酸洗浄籾殻炭化物の各1gを空気100mL/分流通下、燃焼させ、各燃焼灰を得た。燃焼後の灰は、水洗浄籾殻炭化物では灰色、塩酸洗浄籾殻炭化物では白色であった。灰色の灰は、微量の炭素によるものである。燃焼による減量は籾殻炭化物に含まれる炭素分とした。水洗浄籾殻炭化物と塩酸洗浄籾殻炭化物の炭素分は各々57.0wt%、49.6wt%でシリカを含む無機物は各々43.0wt%、50.4wt%であった。水洗浄籾殻炭化物のほうが炭素の含有率が高いのは、塩酸によって有機質の一部が溶解したためである。無機物の化学組成は表1に示した。塩酸洗浄籾殻炭化物の燃焼灰には99.5wt%ものシリカが含まれている。各々の灰の窒素を使うBET比表面積は89m/g、311m/gで、塩酸洗浄籾殻中のシリカの比表面積が大きいことがわかった。
《実施例2》
径5cm長さ35cmの中心に径が1.5cmの穴に圧縮成形した固形棒であるモミガライトをモミガライト製造機スタンダードモデルTRM-120F(株式会社トロムソ社製)で製造した。塩酸洗浄籾殻を120kg/hrの供給量でハウジング内に設置したローターに送り、籾殻を200μm以下に粉砕し、ローターの回転を利用して径5cm長さ35cmの中心に径が1.5cmの穴があいたノズルに0.98MPaの圧力で押し込んだ。ノズルは270~310℃に加熱されており、籾殻の熱分解で生成するタール成分で固形化する。円筒状の固形物を約15cmの長さに切断し、炭化炉(炭焼き窯「すみっこ」TCK-200B)内に設置した。酸素不足の状態で800℃100分処理をし、炭化物を製造した。また、塩酸洗浄籾殻と比較のため、籾殻を用いて塩酸洗浄籾殻に用いた同じ炭化条件で炭化物を得た。
図3に籾殻破断面の走査電子顕微鏡写真を示した。籾殻断面の中心部には、空隙の多い繊維状、あるいは薄片状の有機質セルロース、ヘミセルロース、リグニンが存在している。籾殻を不活性ガス中で加熱し、これら有機質を炭素化すると300℃近辺から有機質は分解し、ガス、タールが生成する。さらに時間が経過するとこれらはさらに分解が進み、炭素となる。その際に発生するガス、タール分は空隙部に残り、このような気相の有機物が炭素へと変換されるとき、炭素は微粒子になる。籾殻の表皮細胞の外側にあるケイ素を含むクチクラ部は空隙がない。クチクラは不飽和脂肪酸が重合した有機物質で連続的な層状構造を形成するので、シリカを含む炭素へと炭化が進んでもそのままの形状か、あるいは若干収縮した形状を維持する。分解生成物であるガスやタール分はクチクラ外に放出され、炭化が進んでも炭素微粒子は生成しない。籾殻をすり潰し、圧縮すると図4に示したように空隙のない断面で、硬いクチクラ部の半球部はそのまま残っている。これを炭化した断面は、図5に示した。クチクラは熱分解を受け、半球部はほとんど消失しており、籾殻の骨格組織が細かくなっている。図6には、籾殻のまま炭化した走査電子顕微鏡写真で、籾殻の細胞壁の組織が残った表面に覆い被さるように膜状の遊離炭素が観察される。細胞壁が残った組織の活性炭の吸着特性は炭素微粒子のある活性炭より良い。この活性炭組織の表面を遊離炭素微粒子が覆い、吸着を妨げていることがわかる。一方、すりつぶし籾殻の圧縮物の炭化物(図5)では、遊離炭素微粒子が観察されず、細胞壁の組織が残っている活性炭部を覆いかぶさっている物体は観察されていない。
《実施例3》
塩酸洗浄籾殻からモミガライト製造機で製造した籾殻圧縮物(モミガライト)から炭化炉(炭焼き窯「すみっこ」)でモミガライト炭を製造した。5~10mmの大きさのモミガライト炭塊をNaOHと反応させ、モミガライト炭中のSiOをケイ酸ナトリウムに変換した。NaOHの処理では、炭素分もアルカリ賦活され、また、一部または全部のSiOは水溶性のケイ酸ナトリウムになるので、SiOもアルカリ賦活される。表2にアルカリ賦活の条件を示した。アルカリ賦活の操作は、300mLのビーカー内の100mLの水にNaOHを8~50g入れ溶解した。これにHCl洗浄モミガライト炭塊を約20g投入し、撹拌しながら1時間煮沸した。NaOHがSiOと反応し、次式によって水に可溶なケイ酸ナトリウム(NaSiO)が生成する。
2NaOH + SiO → NaSiO + H
煮沸後、モミガライト炭塊を100メッシュ(目開き0.132mm)のナイロンメッシュで濾し、セルロースなどの有機質由来の細かい炭素粉末(細かい炭素粒は吸着に関与しない)を取り除いた。ナイロンメッシュ内のモミガライト炭塊は数回流水でメッシュのまま洗浄した。最終の洗浄液はpH12であった。
次に、ナイロンメッシュのまま、撹拌中の1Lの温水0.1N HCl(60℃)に1時間入れ撹拌、その後、1Lの温水で1時間撹拌した。ナイロンメッシュを取り出し、流水で洗浄液がpH7になるまで洗浄した。このプロセスでは、図1の反応経路に従って、CとSiO表面に生成したNaSiOをシリカゾルに変換するものである。これを110℃15時間オーブンで脱水、乾燥し、シリカゲルに変換した。
Sample7では、炭化物中のシリカが全てNaSiOに変換するのに必要なNaOH量の76%添加したが、Sample8では2.4倍、Sample9では4.7倍のNaOH量を添加した。ケイ酸ナトリウムには、NaSiO、NaSiO、NaSi、NaSiなどが存在し、Na分の多いケイ酸ナトリウム(NaSiO)としてSample8とSample9には存在すると考えられる。Sample7中にはC、未反応のSiOが残存し、CとSiOの細孔内に溶液から固化したNaSiOなどのケイ酸ナトリウムがCやSiOの細孔に残存し、添着されたと考えられた。Sample8~10では、SiOと反応しないNaOHは洗い流され、Cの細孔内にNaSiOなどのケイ酸ナトリウムが残存し、添着された。得られた生成物は、ケイ酸ナトリウム添着活性炭-活性炭-(シリカ)複合材である。(シリカ)としたのはSample7では未反応のシリカが含まれるためである。
次に、ケイ酸ナトリウム添着活性炭-活性炭-(シリカ)複合材と塩酸-水と反応させ、ケイ酸ナトリウムをシリカゾルにし、続いて加熱脱水することによりシリカゲルを生成させた。乾燥後の試料のFT-IR分析結果からO-H、Si-O、Si-O-Na、Si-O-H官能基が同定され、蛍光X線分析からSi、Naが顕著に検出された。これらの結果から、活性炭細孔内にケイ酸ナトリウムが添着され、ケイ酸ナトリウムで充填されている細孔の入り口、あるいは、細孔内に生成したケイ酸ナトリウムの表面ではケイ酸ナトリウムからシリカゲルが生成し、Na、SiO 2-、OHの溶出を防ぐ栓の働きをしていることが確認できた。
複合吸着剤の水蒸気賦活を行った。アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル複合吸着剤14~15gを100meshのSUS304メッシュのボート(25×25×90mm)に入れ、電気炉に設置した。窒素200mL/minの気流中で温度を750~1050℃まで上昇させ、5分間保持、その後、窒素を停止、チュービングポンプで1mL HO/minを均熱帯まで送り、水蒸気を試料に送り込んだ。15分後、窒素気流に切り替え、100℃まで放冷し、吸着剤を取り出し、水蒸気賦活アルカリ添着活性炭-シリカゲル複合吸着剤を得た。水蒸気賦活後の吸着剤は、磁性乳鉢で粉砕、篩い分けを行い、50メッシュ(目開き300μm)~100メッシュ(目開き150μm)間の粒度とし、これらを最終的な吸着剤とした。
表3には、各種吸着剤の炭素、灰、含水率、SiO含有率、水蒸気賦活による減量を示した。Sample7では、添加したNaOH量からHCl洗浄モミガライト炭中のSiOの3/4がNaSiOとシリカゲルに変換し、1/4のSiOはシリカとして吸着剤中に残存していることになる。灰からSiO含有率を差し引いたのがNaO含有率で、NaSiOなどのケイ酸ナトリウムとして吸着剤内に残ることになる。ケイ酸ナトリウムには、NaSiO、NaSiO、NaSi、NaSiがあり、Sample8~10では、モミガライト炭中のSiOはすべてNaOHと反応し、NaSiOなどのケイ酸ナトリウムとシリカゲルになったと考えられる。シリカゲルはモミガライト炭にNaOHを加え、SiOをケイ酸ナトリウムに変換し、水に可溶とし、その後流水で洗い流すが、ケイ酸ナトリウムは活性炭の細孔内に残存している。ケイ酸ナトリウムの一部分は塩酸-水と反応し、ゾル(HSiO)となり、乾燥後、シリカゲルになる。アルカリ量をSiOがNaSiOになるための2.4倍量、4.7倍量を添加したSample8、9は、SiOと反応しなかった余分なNaOHは水中に溶出する。
吸着剤100mgを100mLの水に入れ、1時間煮沸し、冷却後の液のpHを測定した。結果を表4に示した。また、比較のために市販籾殻活性炭であるトリポーラスについての結果も示した。モミガライト炭/NaOH重量比が0.8以上のSample7、8ではpH7.0でNaの溶出は無く、重量比0.4と多いNaOHで処理されたSample9ではpH8.0で、Naの溶出が認められた。Sample7,8はNaの溶出がないことから、水中及び乾式で使用でき、Sample9は乾式でのみ使用できる。
吸着剤の分析結果では、吸着剤中にNaSiOなどのケイ酸ナトリウムが活性炭の細孔内に残存していた。これらのアルカリ化合物は細孔内に溶液として入り込み、その後のNaSiOとHCl-HOとの反応で細孔がケイ酸ナトリウムで満たされている場合は、細孔入口にシリカゲルが析出し、ケイ酸ナトリウムが細孔壁に付着している場合は、ケイ酸ナトリウムを覆うようにシリカゲルが析出している。Sample7、8では、吸着剤を水中においても内部のアルカリ化合物は吸着剤の外に出てこない。シリカゲルは空隙が多く、アルカリイオンは動きやすく、シリカゲル表面まで移動したNaイオン、あるいは、Naイオンに引きつけられたOHイオンが吸着点となるものと考えられる。その模式図を図2に示した。
表5には、Sample7、8、9、10と籾殻活性炭であるトリポーラスのBET法による比表面積とBJH法による全細孔容積を示した。
籾殻炭化物からSiOをアルカリ金属化合物で極力取り除いた籾殻活性炭であるトリポーラス(アルカリでは籾殻中のSiOを完全には取り切れないので、トリポーラス中にはケイ素の含有率が1重量%以下、カリウムの含有率が0.05~3重量%と規定している)の比表面積と比べ、アルカリ添着活性炭-シリカゲル複合吸着剤では、およそ半分以下になっている。細孔容積は1/3程度と小さくなっている。複合吸着剤の活性炭の細孔はケイ酸ナトリウムとシリカゲルで埋まっていたり、細孔内部壁に付着しているものと考えられ、その結果、比表面積と細孔容積は小さくなっている。BJH法によるメソ細孔分布はトリポーラスと複合吸着剤では相似形を示し、細孔半径が1.5~10nmの細孔半径の細孔は1/3程度になっている。Naイオンの溶出が観察されたSample9では、比表面積、細孔容積とも他の吸着剤よりも小さい値であった。
表6に各種吸着剤の吸着剤のNH吸着量、HO吸着量、NH脱着率を示した。アルカリ添着活性炭-シリカゲル複合吸着剤及びトリポーラスとも、同程度のNH吸着量を示している。無機系の化学吸着型吸着剤である市販NH吸着剤の消臭容量とは吸着点にすべてNHが吸着する量である。トリポーラスに吸着するNHは細孔のサイズがNH分子と合致するためであるが、複合吸着剤では添着されているケイ酸ナトリウム-シリカゲル表面のNaサイト及びそれに誘起されたOHサイトがNHの吸着点と考えられる。脱着率もSample7~9とトリポーラスとも同程度で、Sample7~9では、比表面積、細孔容積ともトリポーラスよりは小さいが、NH吸着能及び脱着能とも高性能吸着剤であるトリポーラスとほとんど変わらない値であった。
シリカゲルは含まれているシラノール基(≡Si-OH)同士が水素結合で惹きつけ合うので、空隙の多い構造となっている。その空隙をNaは動きやすく、シリカゲル表面にはNaやNaに引き寄せられたO2-やOHが吸着点になり、細菌の細胞壁を透過するので、殺菌効果がある。また、ウイルスのタンパク質を破壊する。
空気中や水中の有害物質の吸着による除去に利用できる。NaやNaに誘起されるOHあるいはO2-サイトが吸着点となり、細菌、ウイルスの殺菌・破壊に利用できる。Naの代わりにLiを用いることによりリチウムイオン二次電池の負極活物質に利用できる。また、Naを用いるナトリウムイオン二次電池の負極活物質に利用できる。

Claims (11)

  1. シリカの含有率が0.3重量%以上のケイ酸植物由来の材料から窒素BET法による比表面積が5m/g以上、BJH法による細孔の容積が0.05cm/g以上の吸着剤の製造方法。
  2. ケイ酸植物炭化物中に含まれるシリカに対し、0.1から2モル比のアルカリ金属化合物を添加し、作製したケイ酸アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル-シリカ複合吸着剤の製造方法。
  3. ケイ酸植物炭化物中に含まれるシリカに対し、2から9.4モル比のアルカリ金属化合物を添加し、作製したケイ酸アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル複合吸着剤の製造方法。
  4. ケイ酸アルカリの一部または全てをシリカゲルの変換したケイ酸アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル-シリカ複合吸着剤、あるいは、ケイ酸アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル複合吸着剤の製造方法。
  5. 炭素-シリカ複合体中のシリカ成分が2.1wt%以上になるようにアルカリ金属化合物溶液でシリカの一部あるきは全部を取り除き、ケイ酸アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル複合吸着剤、あるいは、ケイ酸アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル-シリカ複合体を製造する方法。
  6. ケイ酸アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル-シリカ複合体あるいはケイ酸アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル複合体でアルカリイオンとして2~20wt%添着させた吸着剤を製造する方法。
  7. ケイ酸植物炭化物中のシリカとアルカリ金属化合物との反応を促進するために炭化物中の不純物のアルカリ金属化合物を除去する方法。
  8. ケイ酸植物炭化物作製時に微細な炭素の生成を抑制するためにケイ酸植物をすり潰し圧縮して炭化する方法。
  9. ケイ酸アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル複合吸着剤あるいはケイ酸アルカリ添着活性炭-活性炭-シリカゲル-シリカ複合吸着剤を750~1050℃で水蒸気賦活をおこない吸着剤を製造する方法。
  10. 添着したケイ酸アルカリを水中に投入してもアルカリイオンが溶出しない吸着剤の製造方法。
  11. ケイ酸植物由来の材料が、イネの籾殻又は藁であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のケイ酸植物加工品の製造方法。
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